中国の李強首相は10月10日、訪問先のラオスで豪州のアルバニージー首相と会談した。

会談後、アルバニージー首相は、中国が2020年から豪州産ロブスターに課してきた輸入制限を撤廃し、年内に貿易を再開することで合意したと明らかにした。

これで中国が豪州に課している貿易制限は一部肉製品を除いて全て解除される。

李首相は会談で豪州との関係は「着実に進展している」と評価した。

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中国は2020年に入り、関係が悪化している豪州からの多額の輸入を妨げる貿易制限措置を相次ぎ講じた。

豪州が中国通信機器最大手の華為技術(Huawei)の次世代高速通信「5G」への参入を禁じたことなどを契機に関係が悪化していた。

豪州政府は2019年8月に、次世代通信規格「5G」の通信網について、「安全保障上の懸念」から、Huawei とZTEの参加を認めない方針を出した。

中国人富豪の永住権取り消し

2019/3/2 豪州と中国の関係悪化か?

更に、モリソン豪首相が2020年4月23日に、新型コロナウイルスの感染経路について独立した調査が必要と主張、中国が猛反発した。

豪州産の牛肉や大麦、石炭、ロブスター、ワイン、木材を対象とした制限措置はさまざまな形態で導入された。(下記)

2020/12/20 中国・豪州の関係悪化、豪州が中国をWTOに提訴


2022年5月の豪州の労働党政権への交代後は、中国との関係改善に向けて豪州から要人が訪中するなどしたことで、順次、問題は解決、ロブスターの輸入制限だけが残っていた。


経緯

石炭:

2020年10月に中国で豪州産石炭の通関手続きに遅れが出ていることが明らかになった。
中国の国有発電大手関係者が「税関当局の指導を受け、発電用の石炭の輸入手続きに支障が出ている」と述べた。
中国の税関当局は同日、輸入管理を強化していることを認めた。「関係する産品の輸入の監督管理をさらに強化している」と、水面下で輸入手続きを遅らせていることを示唆した。

中国の2019年の石炭の消費量は約28億トンで、輸入量は約1割の約3億トン。豪州からの輸入量は7700万トンで、インドネシア(約1億3700万トン)に次いで国別で2位。

事情に詳しい複数の関係者が明らかにしたところによると、中国は発電所や鉄鋼メーカーに豪州産石炭の輸入を一時停止するよう口頭で指示した。このため、停止措置がいつまで続くのかや既存の長期契約にどのような影響が及ぶのかを巡り不透明感が漂っていた。

人民日報系の環球時報や財新など複数の中国メディアは12月14日、中国当局が国内発電所に対して、豪州産の石炭は除いて、制限なしに石炭輸入を認めることを決定したと報じた。

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中国は2023年1月に輸入規制を解除した。


大麦:

中国商務部は2018年11月19日に豪州産の輸入大麦に反ダンピング調査を開始、同年12月21日には反補助金調査を開始したが、その後、進展がなかった。

豪州が華為技術(Huawei)の次世代高速通信「5G」への参入を禁じたことなどを契機に関係が悪化していたが、2020年4月23日にモリソン豪首相が新型コロナウイルスの感染経路について独立した調査が必要と主張、中国が猛反発した。

中国商務部は直後の5月18日に、反ダンピングと反補助金調査でクロの最終決定を行った。

豪州は2021年3月に世界貿易機関(WTO)へ提訴を行った。

中国外務部は、「豪州政府こそ中国側の懸念に真剣に対応し、中国企業に対する差別的なやり方を是正すべきだ」と反論した。Huawei の問題などを指しているとみられる。

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2023年4月、中国側による豪州産大麦輸入に対する高関税の見直しと、豪州側によるWTO提訴の一時停止を行うことで合意した。


ワイン:

中国商務部は2021年3月26日、豪州産の輸入ワインについて反ダンピング及び反補助金調査でクロの最終決定を行なった。中国は2020年9月までの1年間で12億豪ドル(約920億円)相当を輸入しており、豪州産ワインの最大の購入国。

豪州政府は2021年6月28日、中国による豪州産ワインへの関税は不当としてWTOに提訴した。

一方中国は2021年6月24日、豪州が中国のステンレス製シンクなどに課した追加関税が不当だとして豪州をWTOに提訴した。

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中国商務部は2024年3月28日、豪州産ワインに対する反ダンピング関税と補助金相殺関税を撤廃すると発表した。3年間適用していた懲罰的な関税を解除する。

声明で「中国のワイン市場の状況が変わったため、豪州からの輸入ワインに課した反ダンピング・反補助金関税はもはや必要ない」と述べた。

豪州産ワインの関税は2015年のFTA締結後にゼロ%に引き下げられていた。


牛肉:

中国税関当局は2020年5月12日、豪州の食肉処理場4か所からの輸入を停止した。輸入停止はラベリング・衛生認定要件に関連しているとされた。

Kilcoy Pastoral Company、JBS(2工場)、Northern Cooperative Meat Companyの食肉処理場4箇所が対象で、豪州の対中輸出の約35%を占める。

中国外務部報道官は世界の食肉処理場での新型コロナウイルス感染が報道される中で、国内消費者の健康と安全を守るための措置だと説明した。

新型コロナ発生源調査についての質問に、この2つの問題が結び付いていることはないとし、「間違った政治的解釈をすべきではない」などと語った。

続いて8月27日に、中国の税関総署は豪州産牛肉の輸入を一部停止したと発表した。豪食肉会社John Dee Warwick からの牛ヒレ肉から中豪両国が使用を禁じる薬物クロラムフェニコールが検出されたとのことで、薬物が検出された牛肉は廃棄処分され、市場には出回っていないという。

更に2022年1月に、中国は南豪州州のTeys AustraliaのNaracoorte処理場からの牛肉の輸入を停止した。

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豪州のワット農業相は2024年5月30日、牛肉生産を手掛ける国内主要業者に対する輸入禁止措置を中国が解除したと発表した。


木材:

中国外務省の汪文斌副報道局長は2020年11月2日の記者会見で、豪州産の原木の輸入を止めていると明かした。「害虫」がついていたためという。豪州産のロブスターの通関手続きが遅れていることも認めており、対豪圧力を強めている可能性がある。

汪氏は「今年に入り、豪州から輸入している木材から何度も害虫が検出された」と述べた。原因は豪州側にあると主張した。

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中国が豪州産木材の輸入を2023年5月18日に再開すると、肖千・駐豪大使が明らかにした。アルバニージー豪首相の中国訪問についても協議が行われているという。


ロブスター:

中国は豪州が新型コロナウイルスの起源に関する調査を求めたことに反発し、2020年終盤に豪州産ロブスターの輸入を事実上禁止した。

中国で豪州産ロブスターの通関手続きが遅れていることを中国側が認め、「中国の消費者の安全を守るためだ」と主張した。ロブスターにどんな問題があったのかは触れていない。

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その後、両国関係は改善に向かい、ロブスターを除く全ての輸入制限が解除されているが、今回、ロブスターも解除されることになった。