「no」と一致するもの

Sinopec は4月30日、カナダBritish Columbia 州North Montney地域でのシェールガス開発・生産プロジェクトおよび同州西海岸のNorthWest LNGプロジェクトに参画することでPetronasとの間で合意したと発表した。

両プロジェクトに同社が10%、パートナーの中國華電集團(China Huadian Corporation)が5%の合計15%を出資し、LNG設備能力の15%の年間180万トンを20年間引き取る。
これに加え、Sinopecは年間300万トンのLNGを20年間購入する覚書を締結した。

Sinopecは合計480万トン(うち60万トンは華電集團分)のLNGを中国沿岸部の現在拡張中及び将来建設するターミナルに運び、天然ガス市場での国内のシェアをアップし、クリーンエネルギー需要の増大に対応する。


この計画は、カナダのProgress Energy Resources Corporationが行っていたものだが、Petronasは2011年6月にシェール鉱区の権益の50%を取得し、その後2012年6月に、PetronasはProgressを55億カナダドルで買収することで合意し 、年末に取得した。

石油資源開発(JAPEX)は2013年3月、このプロジェクトに参画することで基本合意したと発表した。

2013/3/7   石油資源開発、カナダのシェールガス開発計画及びLNG計画に参画

Petronasはその後も参加者を募り、2013年12月にPetroleum Brunei がこの計画に3%の出資を行った。
2014年3月にはインド最大の石油会社 Indian Oil Corporation Limited (IOCL) が10%の参加を決めた。

2014/3/15   Petronas と石油資源開発のカナダのシェールガス開発・LNG輸出計画にインドとブルネイが参加


今回の合意により、Petronasのシェアは62%となる。

Progress Energy Resources
 
   →
 参加
Progress Energy Resources 50%
Petronas 50%
  →
買収


  Petronas

 
   →
  参加
Petronas 62%
Japex                 2013/3 10%
PetroBRUNEI  2013/12 3%
IOCL                 2014/3 10%
Sinopec 10%
中國華電集団 5%


中国はエネルギーミックスでの天然ガスのシェアを現在の5%以下から2020年には10%に倍増することを計画しているが、自国でのシェールガス等の開発には時間がかかるため、LNGでの輸入が当面の目標となる。

このため、LNG受入基地の建設が進んでいる。

JOGMEC 輸入LNGインフラ整備の現状 から

これらが全て完成し、中国がLNGの買い漁りを行う場合、LNG価格は大幅に上昇するのではないか、懸念される。

ーーー

Sinopecは4月29日に15%の取得を発表したが、翌日5%分を華電集團に譲渡すると発表した。

華電集団は国営電力会社で、本年1月に単独で Petronasとの交渉を開始していた。
中国の電力業界は石炭依存から、よりクリーンな燃料に多様化するよう圧力を受けている。

華電集団は江蘇泰州市に38億ドル強を投じて年間1200万トンのLNGを受け入れるLNGターミナルを建設することを計画している。

 


米政府は4月28日、ウクライナ東部の緊張緩和に向けた措置を講じていないとして、ロシアに対する追加制裁を発動すると発表した。

軍事産業に用いられる恐れのあるハイテク製品の輸出を禁じ、プーチン大統領側近で国営石油会社Rosneftの Igor Sechin 社長 ら7人を新たに資産凍結と渡航禁止の対象に指定、大統領に関係する企業17社の資産も凍結する。

企業としてのRosneft や天然ガス大手のGazprom は含まれていない。Gazpromの社長の名前もない。

http://www.treasury.gov/resource-center/sanctions/OFAC-Enforcement/Pages/20140428.aspx

さらに、ロシアがウクライナとの国境付近に集結させている部隊をウクライナ東部に進軍させるようであれば、エネルギーや防衛セクターを含むロシアの主要産業に対する制裁を発動する構えを鮮明にした。

ーーー

エネルギーに対する制裁が発動された場合、多くの欧米企業が影響を受ける。欧州諸国はガスの30%をGazpromから輸入しており、EUはロシアの最大の貿易相手国である。


EUの産業担当委員は「ロシアへのいかなる制裁措置も、欧州の企業をたくさん傷つけることになる」と語った。

BPは「欧州連合が厳しい制裁を課した場合に危機にさらされる」と述べ、BASFは「用心している」としている。


エネルギー関連の欧米各社の状況は以下の通り。

1)BP

BPはRosneft に19.75%を出資し、CEOのBill Dudley など2人がRosneft の取締役になっている。

BPはTNK-BPの持分(50%)をRosneftに譲渡し、現金171億ドルとRosneftの株式 12.84% を取得、同時に、ロシア政府からRosneft株式 5.66%を48億ドルで買収した。
BPは既にRosneft株式 1.25%を保有しており、この取引で合計19.75%を保有することとなった。

BPは2013年にRosneft から配当4億5600万ドル(約467億円)を得たと明らかにしている。

2012/10/24 ロシアのRosneft、TNK-BPを買収

今回、Rosneft のIgor Sechin 社長 が制裁対象となったが、BPのBill Dudley CEO がIgor Sechinが社長のRosneft の取締役となっていることが問題となる。

米国務省によると、米国民は一般的に制裁ブラックリストに載った人物と取引することを禁止されるが、Bill Dudleyは米国市民である。

2)Centrica (英国の電力・ガス会社でBritish Gas の親会社)

2012年9月にGazpromとの間で、2014年後半から3年間で24億m3の天然ガスを購入する契約を締結した。

3)BASF

ロシアの天然ガスはウクライナ経由、ベラルーシ経由のパイプラインのほか、バルト海の海底約1200キロを通ってドイツ北東部まで繋ぐ Nord Stream Pipelineで欧州に供給される。

Nord Stream PipelineにはGazprom が51%、BASF子会社のWintershallが15.5%、オランダのGasunieが 9%、フランスの GDF SUEZ が9%出資する。

Wintershallはロシアの South Stream 天然ガスパイプライン計画に参加することで合意している。

2011/8/27 Nord Stream Pipeline、欧州ネットワークに接続

4) ExxonMobil

Rosneft とExxonMobil は2011年に戦略的協力協定を締結し、2012年4月にこれを実施する契約を締結した。

・黒海と北極海(Kara Sea)開発
・北海の7ブロック追加
・西シベリアのタイトオイル開発
・ロシア極東でLNGプラント建設

2013/6/24 Rosneft とExxonMobil、戦略的協力関係を促進

同社はまた、サハリン1プロジェクト を主導している。日本企業も参加。

事業主体 ・エクソンネフテガス社
 (米、エクソン・モービル子会社、オペレーター、30%)
・サハリン石油ガス開発(株)(通称:SODECO)
 (日、石油公団・伊藤忠・丸紅等 出資30%)
・ONGCヴィデッシュ社(インド、20%)
・サハリンモルネフテガス・シェルフ社(ロシア、11.5%)
・ロスネフチ・アストラ社(ロシア 8.5%)
投 資 額 約120億ドル以上
開発鉱区 オドプト、チャイヴォ、アルクトン・ダギ
推定可採
埋 蔵 量
①石油    約23億バレル
②天然ガス 約4,850億立方メートル

5)Shell

Shellは三井物産、三菱商事と共に、Gazpromが過半数を獲得したサハリン2プロジェクト に参加している。

事業主体 Shell 55%→27.5%-1株
・Gazprom 0%→50%+1株
・三井物産 25%→12.5%
・三菱商事 20%→10%
投 資 額 200億ドル
開発鉱区 ピルトン・アストフスコエ、ルンスコエ
推定可採
埋蔵量
原油 10億バレル
天然ガス 4,080億立方メートル

2007/1/9 サハリン2計画 再スタートとその背景


更に、Shell とGazprom Neftは50/50の合弁会社 Salym Petroleum Developmentを設立し、本年1月から西シベリアのBazhenov formation でシェールオイルの試験掘削を開始した。

両社はまた、ロシアの北極圏の東部のチュクチ湾、西部のペチョラ湾で、Gazpromが過半を出資する合弁会社を設立して石油・ガスの探査を進める。

北極海ではRosneftとExxonMobilがKara、Laptev、Chukchiで、GazpromとShellがPechoraとChukchiで開発する。

ーーー

欧米によるロシア制裁はロシア経済に大きな影響を与えるのは確実で、ルーブルは急落している。

しかし、4月29日付 日本経済新聞 によると、当面はプーチン政権の基盤は揺らいでいないという。

一つは原油価格の高止まりで、ロシアの代表的な油種であるウラル原油は、ロシア政府が当初予算に盛り込んだ2014年の年間予想の101ドル/bbl を上回り、108ドル/bbl前後で推移している。

そして皮肉なことに、制裁によるルーブルの急落で、ドル建てで取引される資源輸出の収入(ルーブル建て)が増加、資源輸出に対する課税額が膨らみ、2014年1~2月の歳入額は2兆3681億ルーブルで、前年同期を19.5%上回った。



Solvay と Invista は4月25日、フランスの両社の50/50 JVの Butachimie について新しいJV契約を締結し、2008年から争っていた知的所有権問題を解決した。

ーーー

ButachimieはDuPontのGen I technologyを使用してアジポニトリル(ADN)を生産するため、DuPontと Rhone-Poulenc のJVとして設立された。

ナイロン66 はヘキサメチレンジアミン(炭素数6)とアジピン酸(炭素数6)からつくるが、アジピン酸はアジポニトリルの加水分解により生産する。

Koch Industries は2004年にDuPont の繊維部門であった Invista を42億ドルで買収した。

Rhone-Poulenc は化学品部門をRhodia として分離した。
2011年に
SolvayがRhodiaを友好的買収 した。

この結果、ButachimieはSolvayとInvista のJVとなった。

2008年にInvistaは、Rhodia とDuPont が組んで、Invista の世界のトップレベルの技術をアジアでの競合工場建設のために不当に利用しようとしているとして、両社に対し、これの差し止めと、被害に対する補償を求めて提訴した。

2006年9月にInvistaは需要の伸びが大きいアジアでワールドスケールのナイロン6,6 プラントを建設すべく、設計業務を開始したと発表、同時に新設備はアジアで低コストで競争力ある地位を占めるため、次世代のブタジエンベースのADN技術を使用することを明らかにした。

その1週間以内に、RhodiaがアジアでADNプラントを建設するFSを実施していることを明らかにした。

Invistaによると、RhodiaはInvistaのブタジエンベースのADN技術のライセンスを受けておらず、同様の技術を無から自ら開発できるはずがない。
このため、Rhodiaが計画を実施しようとするなら、JVのButachimieで学んだ秘密情報を勝手に使用するか、若しくは、DuPontが違法に秘密情報をRhodia に渡したかのどちらかしかないというもの。

2008/8/22 Invista、ナイロン原料技術でDuPont とRhodia を提訴

2010年9月13日、DuPontとInvista は3つの訴訟(polymers technology、adiponitrile technology、 供給契約に関する紛争)で和解したと発表した。両社の権利と義務を明らかにしたとするが、詳細は明らかにしていない。

今回はRhodiaを買収したSolvayとInvistaとの間で和解を見たもの で、内容は以下の通り。

InvistaはButachimieで使っているADN技術の独占的保有者であり、JVのフランスの設備を最新のADN技術で改良することを検討する。
・SolvayはInvistaが中国で検討している新しいADNプラントから一定量を引き取るオプションを持つ。

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Shanghai Chemical Industry Park)でヘキサメチレンジアミン

Invista の最新鋭の



JXエネルギーと韓国のSK Innovationは2011年8月5日、韓国でパラキシレンと潤滑油ベースオイル製造のJV設立製造に係る合弁会社を設立することで合意したと発表した。

  パラキシレン製造JV 潤滑油ベースオイル製造JV
1.社名 未定→2012/6/8 Ulsan Aromatics 未定
2.所在地 蔚山広域市(SK Energy 蔚山コンプレックス内) 蔚山広域市(SK Energy 蔚山コンプレックス内)
3.設立時期 未定→2012/6/8 未定
4.出資比率 JXエネルギー       50%-1株
SK Global Chemical 50%+1株
JXエネルギー    28%
SK Lubricants 72%
5.事業内容 パラキシレンの製造 潤滑油(ベースオイル)の製造
6.生産能力 約100万トン/年 (世界最大) 約135万kl/年
7.商業生産 2014年予定  
8.総投資額 約1兆ウォン(約800億円) 約3,500億ウォン(約280億円)


2011/8/9  JXエネルギーとSKグループ、韓国でパラキシレンと潤滑油ベースオイル製造のJV設立

Ulsan Aromatics は2012年11月6日、パラキシレン製造工場の建設に着手した。2014年8月の商業運転開始を予定した。
JX日鉱日石は日本国内の製油所より新工場にパラキシレン原料を供給する。

ーーー

Ulsan Aromatics は2012年6月に設立され、同年11月に工場の建設に着工したものの、その後に独禁法の改正があり、現在は施行前の猶予期間だが、法施行後はUlsan Aromatics へのSK Global Chemical の出資が違法とされることとなった。

韓国の公正取引法に持株会社規制が追加され、「持株会社の孫会社が子会社を設立する場合、持分100%を保有しなければならない」こととなった。
財閥がタコ足式に事業を拡張し、他の財閥と相互に結びつくのを防止するための規定である。

上図のとおり、SK Global はSKの孫会社であり、この規定によりUlsan Aromatics はSK Global 100%でなければならなくなり、JXとのJVは認められなくなる。
これは潤滑油ベースオイルのJVにも当て嵌まる。

韓国の財閥は、財閥本社の下に分野別持株会社があり、その下が事業会社となっており、実際に事業をおこなう事業会社は財閥本社の孫会社となるため、外国企業とのJVが出来なくなる。このため、本件のほか、既に契約を締結している多くのJVが頓挫することとなる。

韓国の石油化学業界を初めとする産業界では、大規模な投資は外国企業とのJVの形でないとやれないとして、この規定の改正を強く要請した。

日本企業は、2011年の東日本大震災直後には、「韓国投資ラッシュ」と呼べるほど韓国に対する投資を増やした。しかし、2012年をピークにして一変した。
一つはアベノミクスによる円安であるが、この規定も影響している。

このため、産業通商資源部は2013年5月の貿易投資振興会議で外国人投資促進法を改正し、外国企業との合同投資に限り孫会社の義務持分比率を50%に下げることを決め、2013年6月に国会に外促法改正案を提出、これが2014年1月に国会本会議を通過した(3月11日施行)。

当初の案ではUlsan Aromaticsへの出資比率は、JXエネルギーが  50%-1株、SK Global が 50%+1株となっていたが、JXエネルギーとSK Global が交渉の結果、改正法の規定を考慮し、JXエネルギーが 44.1%、SK Global が 55.9%に変更した。

産業通商資源部は4月24日、外国人投資委員会を開き、改正法の適用第1号として、SK Global のUlsan Aromaticsへの出資を承認した。
Ulsan Aromatics は本年6月に生産を開始する予定である。

潤滑油ベースオイル製造のJVも前向きに動くこととなる。

ーーー

昭和シェル石油と太陽石油は2012年4月13日、韓国GS Caltexとの間で韓国でのパラキシレン事業に関わる新規プロジェクト基本覚書を締結した。
麗水市のGS Caltexの年産能力135万トンのPXプラントを2014年末に年産235万トンまで増強し、PXの単一工場として世界最大とする。

2012/4/13   昭和シェル・太陽石油・GS Caltex、韓国でのパラキシレン事業で基本覚書締結

実は、このJVも同じ問題を抱えていた。

GSグループは、2005年にLGグループから分離独立した。
GSの下にGS Holdings があり、その子会社がChevronとのJVのGS Caltex (旧称 LG Caltex)  で、孫会社に当たるため、規定では昭和シェル・太陽石油とのJVは設立できないこととなっていた。

今回の法改正で障害が無くなった。

 

韓国政府は、外国人投資促進法案の可決で、2兆3000億ウォン(約2,300億円)の直接投資誘発、5兆8,000億ウォンの売り上げ増加、1万4000人分の雇用創出 などの効果があると分析している。
 


 


Novartisは4月22日、大規模な事業再編を発表した。

GlaxoSmithKline (GSK) から抗がん剤製品群を買収するとともに、大衆薬事業はGSKの事業と統合し、GSK主体のJVとする。更にインフルエンザ以外のワクチン事業をGSKに売却する。
これとは別にインフルエンザワクチンの売却を進めており、動物薬事業はEli Lillyに売却する。

これにより、Novartisは事業を医薬品、Eye care製品、Generics の3つに絞り込む。

1.抗がん剤製品

GSKの抗がん剤製品を買収し、この分野でのNovartisの主導的地位を更に強化する。
対価は145億ドルのほか、今後の成果に応じ最高15億ドルのMilestoneが付く。

GSKの現在開発中および今後開発する抗がん剤について商業化の権利(opt-in rights) を持つ。

2.大衆薬事業

Novartisの大衆薬(OTC)事業とGSKのConsumer Healthcareを統合し、JVを設立する。
JVは売上高が約100億ドルで、中心となる4分野、健康、口腔衛生、栄養、皮膚の健康において主導的地位を占める。
先進国のみでなく、ブラジル、中国、メキシコ、ロシア等の成長著しい途上国にも拠点を持つ。


NovartisはこのJVに36.5%を出資し、市場株価を基準にする事前に決められた方式に基づく株価で持株を売却する権利を持つ。

3.ワクチン

インフルエンザを除くワクチン事業をGSKに71億ドル(52.5億ドル+18億ドルのMilestone)+ ロイヤリティで売却する。

インフルエンザワクチンについては別途、売却を進めている。

4.動物薬

別件で、Eli Lillyに54億ドルで売却する。

ーーー

Novartisは1997年にSandoz とCiba Geigyが統合して設立された。

Sandozの化学品は1995年にClariantとして、Ciba Geigyの化学品は1997年にCiba Specialtyとして、それぞれ独立している。
種子事業は2000年にAstraZenecaの農薬部門から独立したSyngentaに売却した。

このほか、2007年に医療用栄養食品のMedical Nutrition とベビーフードのGerberをNestleに売却している。
逆に、NestleからEye care 製品(医薬品、手術製品、コンタクトレンズ、OTC製品)のAlconを買収した。(2008年に25%、2010年に52%で、合計77%)

 

2013年の同社の部門別業績は下記の通り。(百万米ドル)

  Sales Operating Income



Pharmaceuticals 32,214 9,376
Alcon (Eye care) 10,496 1,232
Sandoz (Generics) 9,159 1,028

Vaccines and Diagnostics 1,987 -165
Consumer Health 4,064 178
Others - -739
Total 57,920 10,910

   


 

日東電工は2008年から札幌医科大学の新津洋司郎特任教授と共同で、肝硬変をはじめとする臓器線維症治療薬の開発を進めてきたが、2013年6月から米国で開始した治験第相試験で、このたび健常人に対する投与を完了した。引き続き第Ⅰ/Ⅱ相試験で患者への安全性と薬効の検証を行う。

相試験後半以降は製薬企業との連携も視野に入れ、最終的には2018年度以降の実用化を目指す。

医薬品の承認を得るための臨床試験(治験)では先ず第相試験で、自由意思に基づき志願した健常成人を対象とし、被験薬を少量から段階的に増量し、被験薬の薬物動態(吸収、分布、代謝、排泄)や安全性(有害事象、副作用)について検討する。

その結果を受け、第相試験では比較的軽度な少数例の患者を対象に、有効性・安全性・薬物動態などの検討を行う。
その後、第
III相試験で、実際にその化合物を使用するであろう患者を対象に有効性の検証や安全性の検討を主な目的として、より大きな規模に行う。

肝硬変や脳梗塞などに代表される臓器線維症は、ウィルス感染などで臓器中のある細胞が活性化 してコラーゲンを過剰につくりだし、線維化して硬くなってしまうもので、これまで根本的な治療法がほとんどなかった 。(活性化の原因となる遺伝子に作用する核酸医薬品は見つかっていたが、体内で分解されやすいため、実用化に至っていなかった。)

今回の治療は、線維化の原因を選択的に抑えるsiRNA(核酸医薬品の一つ)を薬物として用い、ビタミンA誘導体を標的化剤として患部にのみ選択的に送達するもの(DDS:Drug Delivery System)で、線維症の根本的な治療に繋がる世界初の薬であり、肝硬変のみならず各種の臓器線維症に展開することが可能とされる。

この治療方法に関する基本特許については、日本、中国、豪州、米国、カナダに次いで、欧州と韓国でも取得し、更に治療薬の構成(siRNA、DDS)に関する特許も成立している。

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核酸医薬は、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)の働きを利用して、病気を引き起こす遺伝子やタンパク質に作用するタイプの医薬品で、低分子医薬(化学合成により作られる一般的な医薬品)、抗体医薬に続く、第三世代の医薬品として、近年注目されている。

核酸医薬品は遺伝子にじかに働きかけるため、従来型の医薬品と比べて治療効果が高く、副作用が少ないとされる。

ただし、病気を起こす遺伝子まで到達させるため、体内での安定性やDrug Delivery System(DDS)などの課題を解決する必要がある。今回、日東電工はこれを解決した。

核酸医薬品にはいろいろの種類があり、世界の多くの企業が開発に当たっている。(主としてsiRNAを開発している)
 
しかし、現状では市販されているのは3品目しかない。

核酸医薬品の原料は、日東電工の米子会社Nitto Denko Avecia と米 Agilent Technologiesが合計8割程度の世界シェアを持つ。
2013年11月に住友化学がこれに加わった。

2013/11/28   住友化学、核酸医薬原薬の受託製造開始 

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日東電工は2008年5月から札幌医科大学に下記の研究を行う分子標的探索講座(新津洋司郎 特任教授)を寄付した。

  1. 臓器線維症(肝硬変、慢性膵炎、腎硬化症、骨髄線維症、肺線維症など)に対するsiRNAHSP47を用いた治療法の開発
  2. 1.のテーマを発展させ、組織にもともと存在する固有の幹細胞を活性化する再生医療を確立
  3. がん細胞特にK-ras変異、B-raf変異がん細胞に基づく、新規分子標的薬の開発(合成致死作用を示す薬剤の開発)
  4. 細胞の運動シグナルを解明する事により、がんの転移や炎症細胞の浸潤を抑制する新薬の開発
     

日東電工は新津特任教授と共同で、2008年より肝硬変をはじめとする臓器線維症治療薬の開発に向けて取り組んだ。

その結果、新津特任教授のグループが開発した線維症の治療戦略に、日東電工のキャリア技術を組み合わせ、分子標的DDS(Drug Delivery System)を用いた臓器線維症治療に関する基本特許を、日本・中国・豪州に次いで2012年に米国でも取得した。

この特許は抗線維症薬物を含むキャリア材の表面に、線維症の原因細胞への標的化剤を結合させたDDSとそれを用いた治療に関するものであり、その際、様々な薬物やキャリア材を使用することが可能である。
分子標的DDSは、病気の原因となる細胞にのみ直接薬物を届けるシステムで、従来治療が困難な疾患に対し、副作用が少なく高い治療効果を期待できる。

日東電工では、薬効と安全性を両立させた薬物(線維化の原因を選択的に抑えるsiRNA)、新規キャリア材、標的化剤(ビタミンA誘導体)が完成したため、まずは、肝硬変を対象に実用化を目指し、2013年6月から米国で臨床試験を開始した。
今後は、臓器線維症をはじめとする難治性疾患の治療薬に取り組む。
 

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日東電工は2011年2月に、今後成長が期待される核酸医薬の分野において事業基盤の強化を目的に、米国マサチューセッツ州にある核酸医薬の製造受託分野でトップのAvecia Biotechnologyを買収した。(→Nitto Denko Avecia Inc.)

Avecia Biotechnologyは、核酸医薬の製造受託分野でトップシェアを誇り、前臨床段階から商業的製造までのステージにおいて、 世界最大のcGMP製造能力をベースに、分析方法開発、プロセスバリデーション、安定性試験、品質管理及び薬事面サポートと幅広いサービスを提供している。

日東電工は2012年11月、Nitto Denko Aveciaを通して、 核酸医薬の分野において更なる事業拡大を目的に、核酸医薬の受託製造において主要な製薬会社やバイオテック会社へのサービス提供の経験を有し、またRI標識能力及び有機合成能力を有するGirindus America Incと資産買収契約を締結した。




米財務省は4月15日、半期に一度の主要貿易相手国の為替政策に関する報告書( Semi-Annual Report to Congress on International Economic and Exchange Rate Policies)を公表した。

中国を為替操作国と認定することは見送ったが、人民元はなお「著しく過小評価」されているとし、今後の相場動向を注視する姿勢を示した。

報告概要は以下の通り:

人民元は2013年には ドルに対し2.9%上昇したが、円や開発途上国通貨の下落で、貿易の加重平均ベースでは名目で7.2%、実質で7.9%上昇した。
2013年では毎日、基準値の上限の1%近くで推移し、更に上昇すると期待された。

しかし、2014年に入り、方向が逆転し、現在まで2.68%下落している。交換レートの調整プロセスが不十分で、元は均衡点に達するまでに更に下落する兆候が多い。

中国は経常収支の黒字を続け、外国からの直接投資の誘致を続けている。人民元は今も著しく過小評価されている。

中国政府は3月17日に変動幅を上下 1%から上下 2%に拡大した。直前に中央銀行は大幅介入して元を下落させた。これまでにない大幅な下落である。

変動幅の拡大は介入を減らし、交換レートを決めるのに際し市場の役割を広める。中国は今後、介入を止め、市場に任せるべきだ。

最近の人民元の推移が、もし、中国が人民元の上昇に再び抵抗したり、あるいは介入の度合いを弱めて市場主導の相場形成を目指すとした中国政府の方針の後退を示唆している場合は、深刻な懸念となる。

今後もこの問題を注意深く監視する。

他のG-20諸国のように、中国は市場への介入を公開し、金融政策のフレームワークの信頼性を高め、金融透明性を高めるべきだ。

人民元の推移は下記の通り。

本年1月14日には、2010年6月18日の弾力化前に比べ、終値で12.99%、一時的には13.01%高の最高値を更新したが、その直後、下落に転じた。

人民銀行は1月14日に基準値を過去最高値の6.0930人民元に設定した後、低目の設定をしていたが、2月中旬以降、 基準値を急に下げた。

人民銀行が基準値を元安方向に設定して、下落を誘導しており、大手国有銀行も人民銀行の要請で元を売っているとされた。

この結果、旧正月の連休直前に下落に転じ、2月20日頃からは急落、2月末には終値は基準値を下回るに至った。

2014/3/1   人民元が急落 

その後の推移は下記の通り。


 

中国は3月17日に変動幅をこれまでの±1%から2%に変更した。

その直後の終値は6.2275人民元/$と大幅下落し、その後も低迷している。4月21日には6.2274人民元/$となった。
人民銀行もは基準値を下げ続け、4月21日には6.1591人民元
/$と昨年9月11日以来の低い水準に設定した。

中国への資本流入が再び増加していることが先週末の統計で示唆されたことを受け、人民銀行が元相場を押し下げる市場介入を実施したとの観測が広がった。



中国国有資源大手の中国五砿集団(China Minmetals Corp.) は4月14日、同社を中心とするコンソーシアムがスイスの資源商社Glencore Xstrata plc からペルーのLas Bambas 銅鉱山を58億5000万ドルで買収すると発表した。2014年第3四半期末までに売買手続きが完了する予定。

国営新華社によると、中国企業による金属資源分野の買収では過去最大となる。

コンソーシアムには五砿集団の子会社のMMG(五礦資源有限公司)が62.5%、1999年に国家発展改革委員会(NDRC)が設立したGuoxin Group(國信招標集團)のGUOXIN International Investment Corporation (國信國際投資) が22.5%、中国の国有複合企業のCITIC(中信集団)のCITIC Metal Co. (中信金属公司) が15.0%出資する。

Las Bambas 銅鉱山は2015年から年間40万トンの生産が予定され、これは世界最大の銅消費国である中国の2013年の輸入の12.5%に相当する。

2017年には世界のトップ3鉱山の一つになるとされ、埋蔵量は0.73%純度で9億5千万トンとされる。

鉱山の開発は昨年末時点で約56%進捗しており、全体の開発費59億ドルのうち、あと24億ドル程度が残っている。


スイスの商品取引大手Glencore は2012年2月7日、同国の資源大手Xstrataを買収し、対等合併すると発表した。
その後、Xstrataの株主のカタールの政府系ファンド Qatar Holdingなどの合併条件見直し要請を受け入れた結果、2012年11月にそれぞれの株主総会で合併案が承認され、2013年5月にGlencore Xstrata Plc となった。

2012/11/26 Glencore とXstrataの合併

EUはこの合併を欧州の資産を売却して事業を縮小することを条件に2012年11月に承認、南アも2013年1月に条件付きで承認したが、中国商務部は合併会社が世界最大の銅の生産者になるため、中国企業が値上げを呑まされるのを恐れ、審査が長引いた。

このため、Glencore側からXstrataのペルーのLas Bambas 銅鉱山を売却する案を提示し、2013年4月22日、中国商務部は合併を承認した。

承認に当たり、この鉱山の売却の手続きが細かく決められている。
このほか、
Glencoreは中国のメタル不足の懸念を緩和するため、2020年12月31日まで中国企業に対し最低量の銅、亜鉛、鉛を供給する。

2013/4/26    中国、丸紅の米穀物大手Gavilon買収を条件付きで承認、GlencoreとXstrataの合併も

今回の買収はこれに基づくもの。

対価の58億5000万ドルは売買手続き完了時に現金で払われる。このほかに、2014年1月1日から売買手続き完了時までの間の投資額と費用(3月末時点で約4億ドル)もコンソーシアムが負担する。

 


 

シリコーンと石英事業のMomentive Performance Materialsは資金繰りに困り、債権者とリストラクチャリングの協議を行っていたが、60百万ドルの金利支払日の前日の4月13日にChapter 11を申請した。

今後、これまで協議してきた案に沿って、30億ドル以上の債務をカットする予定としている。
当面、J.P. Morgan Securities から570百万ドルのDIP(Debtor In Possession:占有継続債務者)ファイナンスを受け、事業を継続する。


同社は2006年にApollo Management, L.P.
がGEのシリコーン事業を38億ドルで買収して設立した会社であるが、多額の負債を抱えての出発となり、その後の金融危機と景気後退で痛んだ。

GEは2006年9月、シリコーン事業のGE Advanced Materials を38億ドルで売却すると発表した。
GE1971年に東芝と設立したGE Toshiba Silicones1998年にBayerと設立したGE Bayer Silicones 2つのJVを持つが、両社からJV持分を買い取ってGE 100%とした上で、本体とともにApollo に売却する。なお、GEApollo の新会社に10%出資する。

その後、この新会社はMomentive Performance Materialsと命名された。

2006/9/21 GE、シリコーン事業を売却

なお、同グループの熱硬化性樹脂メーカーのMomentive Specialty Chemicals(旧称 Hexion Specialty Chemicals) は資本金・借入金は別構造となっており、今回のChapter 11の対象外である。

Momentive Performance Materials Hexion Specialty Chemicalsは2010年101日合併した。

Hexion2005年設立で、Apollo Management100%子会社であったBorden Chemical(接着剤等)、Resolution Performance Products(エポキシ、バーサチック酸等)、Resolution Specialty Materials(塗料、接着剤等)と、Bordenが買収したBakelite AG(フェノール、エポキシ樹脂)を統合した。

2010/9/16  Apollo Management傘下のMomentive Performance Materials とHexionが合併

現在の体制は下記の通り。

 

 

 

 

 

信越化学は4月15日、米国子会社のShintech がPVCの主原料の一つであるエチレンを生産する工場の建設許可(Air Permit application)をルイジアナ州の環境庁(Louisiana Department of Environmental Quality)に申請したと発表した。

この申請におけるエチレンの生産能力は年産50万トンで、工場の立地はShintechが既に所有している工業用地が有力候補となる。
申請から許可までは1年ほどかかるため、並行して、工場建設に係る投資額及び採算性や、建設時期などの検討を進めた上で、最終決定を行う 。

日本の化学会社が米国でエチレン生産に踏み込むのは初めて。
シェールガス由来の原料から大幅にコストを低減してエチレンを生産する体制を整え、PVCの競争力を高める。

  LyondellBasell 資料

立地は未定だが、ルイジアナ州環境庁への申請書では、ルイジアナ州Plaquemineの近くのShintechのコンプレックスになるだろうとしている。

別の発表では、投資の最終決定は数ヶ月先とし、所有している4箇所を立地として評価していると述べている。
但し、現在のところ、テキサス州でのAir Permit application は出されていない。

 ・ルイジアナ州 AddisのPVC 58万トンプラント
 ・ルイジアナ州 Plaquemine の電解・VCM・PVCのコンプレックス

   ・上記の近く

 ・テキサス州 Alvin (ShintechのFreeportのPVCプラントから数マイル北)

 

 


信越化学は2013年6月、Shintech がルイジアナ州(Addis or Plaquemine) での電解、塩ビモノマーおよび塩ビ樹脂の生産能力の増強を決定したと発表した。

増強する生産能力はVCM 約30万トン/年、カ性ソーダ 約20万トン/年、PVC 約30万トン/年で、完成は2015年頃を目指す。投資額は5億ドル。

増設後のシンテックの塩ビ樹脂の生産能力は、ルイジアナ州の工場の既存分とテキサス州の工場を併せて295万トン/年となる。

                        単位:万トン
立地 PVC VCM カ性ソーダ
Texas州 Freeport  145   -   -
Louisiana州 Addis   58   -   -
Plaquemine   60   160  106
今回増設 32 30 20
合計  295  190   126


2013/6/21 Shintech、生産能力拡大を決定 


エチレンが完成すると、原料からPVCまでの一貫体制が完成、一層のコストダウンが期待出来る。

米国でのエチレンはシェールガスからのエタンを利用することで低コストが期待できる。
工業塩は工場近辺の土地の地下の岩塩層から採取でき、電解の電力料も安い。

ーーー

Shintechは当初、Dow Chemical と提携し、FreeportでPVCの生産を開始した。

ダウは電解~VCM事業、シンテックはPVC事業に専従して共存共栄体制をとり、VCM価格の決定にはPVC価格を反映させた。PVC価格が暴落した場合は値下がり損の半分をVCM価格引下げでダウが負担、逆にPVC価格が上がれば値上がり分の半分がVCM価格に反映されるというものである。

1996年にシンテックはルイジアナ州コンベントに工場用地を取得、電解、VCM(50万トン)、PVC(50万トン)の一貫生産体制をつくる構想であったが、グリーンピースの反対に会い1998年に立地をAddisに変更し、一貫生産を棚上げしてPVC 58万トンのみの生産とした。VCMは 隣接のDowから購入する。

2004年12月、信越化学は新計画を発表した。
総額10億ドルをかけて塩素 45万トン、VCM 75万トン、PVC 60万トンの一貫生産を行うという
もので、第一段階として、塩素 30万トン、VCM 50万トン、PVC 30万トンを2006年末に完成させ、残りを2007年末に完成させる。
立地はPlaquemineの
  Ashland Chemical の工場敷地である。

2006/5/16 世界一の塩ビ会社 信越化学

ShintechのVCM進出とDow Chemical の汎用品見直しに伴い、紆余曲折を経て、両社の共存共栄体制はつぶれ、Dow は塩素事業からの撤退を決めた。

2013/12/5 Dow Chemical、塩素事業からの撤退を発表


 

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