「no」と一致するもの

米連邦議会上院の超党派の議員グループは6月21日、銃規制を強化する法案を議会に提出した。

新法案は、21歳未満の銃購入希望者に対する身元確認を強化するほか、精神医療や学校警備の強化策に連邦予算150億ドルをあてる。
裁判官が危険とみなした人から銃を押収する緊急措置を導入している州を支援する資金提供なども盛り込まれている。
加えて、ドメスティックバイオレンス(DV)加害者による銃購入も規制を強める。「ボーイフレンド抜け穴」と呼ばれる法の抜け穴をふさぐ。

米国で銃規制法案が成立するのは28年ぶり。全米で相次ぐ銃乱射事件を受け、規制に慎重だった野党・共和党からも賛成が出た。共和党からも賛同者が出た背景には、5月にニューヨーク州バッファローのスーパーや、テキサス州ユヴァルディの小学校で相次いだ乱射事件がある。特に小学校の乱射事件では、多くの児童が犠牲になった。

まず上院が6月23日に賛成多数で可決した。共和党からミッチ・マコネル院内総務ら 15議員が賛成にまわり、賛成が議決に必要な60票を超えた。

共和党 民主党 民主系 合計
無所属
賛成 15  48  2 65
反対   33 33
棄権 2 2
合計 50 48 2 100



下院は翌24日、234対193で可決した。共和党から14議員が賛成に回った。

共和党 民主党 合計 欠員
賛成 14 220 234
反対 193 193
棄権 3 3
合計 210 220 430 5


バイデン大統領が6月25日に署名し、成立した。


他方、米連邦最高裁は6月23日、外から見えない形で拳銃を携帯するのに「適切な理由」を示して州当局から許可を受けることを義務づけた東部ニューヨーク州の州法が違憲だとの判断を示した。

銃規制強化を求める世論が強まっているが、公権力による規制よりも個人の権利を重んじる保守派判事6人の多数意見で、100年以上前に制定された州法が違憲だと判断された。 間もなく退任するBreyer判事を含めた3人のリベラル派判事は反対した。

銃規制の基準は州によって異なるが、ハワイや東部マサチューセッツなど5州と首都ワシントンはニューヨーク州と同様の規制をしている。
最高裁判決は、学校や裁判所、行政庁舎などへの銃持ち込みは制限可能だとした上で、ニューヨーク州法の規制が過剰だとの見解を示した。

その上で「銃を携帯する権利は、憲法修正第2条で保障されている。政府当局者に『適切な理由』を示せなければ、憲法上の権利を行使できないなどという例は(銃所持以外)他にない。法律を順守している市民が自衛のために銃を携帯することを妨げており、(州が適正な手続きなしに自由や財産を奪うことを禁じた)憲法修正第14条にも違反している」と指摘、州法は「合憲だ」とした控訴審判決を破棄し、下級審に審理を差し戻した。

JSRはライフサイエンス事業を石化事業、ファイン事業に次ぐ第三の柱と位置付け、医薬品開発プロセスの革新に貢献することで価値を提供し、同事業を拡大していくことを目指している。

石化事業は柱であったエラストマーを売却し、ABS等の合成樹脂だけが残る。

2021/5/13 JSR、合成ゴム事業をENEOSに売却、韓国の合成ゴムJVも相手先に売却

JSR の ライフサイエンス事業のグループ企業である医学生物学研究所と Crown Bioscience は5 月12 日、日本国内で前臨床向けサービスを更に拡大するため、ジョイントベンチャーCrown Bioscience & MBL を設立した と発表した。医学生物学研究所は現在、Crown Bioscience の代理店としてサービスの販売を行っている。

Crown Bioscience オンコロジー、がん免疫、免疫媒介炎症性疾患(IMID) 分野における前臨床とトランスレーショナル研究の世界的な CRO 企業である。2006 年に創業され、Cayman Islandsに登記上の本社を持ち、米国、欧州、アジアにおいて 10 カ所の事業所を有している。JSRが2021年5月に買収した。

トランスレーショナル研究は、アカデミアで研究者らが基礎研究を重ねて見つけ出した新しい医療の種(シーズ)を、実際の医療機関等で使える新しい医療技術・医薬品として実用化することを目的に行う非臨床から臨床開発までの幅広い研究を指す。

世界でがん、炎症性疾患、心血管疾患及び代謝性疾患領域に対して、医薬品の基礎研究成果を臨床研究や実用化にまで高める創薬探索開発受託サービスを提供する。 腫瘍オルガノイド(tumor Organoid )を用いたサービスや、世界最大の商業向け PDX コレクション(患者腫瘍移植モデルPatient-derived xenografts)を有している。 (詳細後記)

医学生物学研究所臨床検査薬、創薬支援、研究用試薬を扱う。JSRは2013年よりJSRの抗体・抗原・遺伝子関連技術および試薬開発技術と医学生物学研究所の保有する技術を統合し、医療分野での協業を進めてきたが、2021年3月 に全発行済株式の取得を完了した。

両社は㈱Crown Bioscience & MBL を設立し、初期段階において、製薬企業に対し前臨床およびトランスレーショナル研究(橋渡し研究)関連サービスを提供する。

医学生物学研究所の国内製薬市場における深い知識と経験と、Crown Bioscience が提供する世界的規模の前臨床とトランスレーショナル研究サービスを掛け合わせることにより、シナジー効果を生み出す。
JVは
2022 年9 月のサービス開始を目指す。

ーーー

Crown Bioscience は、世界でがん、炎症性疾患、心血管疾患及び代謝性疾患領域に対して、医薬品の基礎研究成果を臨床研究や実用化にまで高める創薬探索開発受託サービスを提供する。

腫瘍オルガノイド(tumor Organoid )を用いたサービスや、世界最大の商業向け PDX コレクション(患者腫瘍移植モデルPatient-derived xenografts)を有している。

腫瘍オルガノイド(tumor Organoid )はがん組織由来 の培養細胞500以上の腫瘍サンプルを有する優位性を発揮してがん薬効試験などの需要を取り込む。

ソース:福島医薬品関連産業支援拠点化事業

PDX コレクション(患者腫瘍移植モデル )は、免疫不全マウスに患者の腫瘍組織をそのまま移植する手法。

従来より抗がん薬の有効性を評価する手段として、患者の腫瘍組織を細分化しシャーレで培養する細胞株が用いられてきた。細胞株をマウスへ移植して腫瘍を作成するのが細胞株移植モデル(CDXモデル)だが、これで有効でも実際にがん患者で有効性を示す抗がん薬の割合は低い。

PDXモデルでは、作成された腫瘍の組織構造が患者の腫瘍の組織構造と近似しており、腫瘍の不均一性が保たれ、さらに遺伝子異常が維持されるという特性があり、より患者での有効性を予測できるモデルとして注目されている。

Crown Bioscience は2020年4月、ワシントン大学のCoMotionとダナ・ファーバー癌研究所との合意により、必要性が高いが作成が困難な前立腺癌モデルとリンパ腫モデルの提供が可能となったと発表した。

ワシントン大学のCoMotionとのライセンス契約により、入手可能な前立腺癌PDXモデル数が大幅に拡大し、CrownBioの確立された前立腺癌PDXコレクションを補強する。

ダナ・ファーバー癌研究所との協業により、T/NK、マントル細胞、濾胞性リンパ腫、難治性または再発患者のDLBCL等の様々なリンパ腫がCrownBioのポートフォリオに加わる。

CrownBioでこれらの新しいモデルのバイオバンク化とデータ集積をまず確立した後、薬効評価、マウス臨床試験、CAR-T細胞療法評価、ヒト化、及びオルガノイド開発を含む腫瘍学及び免疫腫瘍学研究に利用可能となる。

欧州委員会は2022年2月2日、持続可能な経済活動を分類するEUタクソノミーにおいて、天然ガスと原子力による発電を一定の条件下で「カーボンニュートラルへの移行期に必要な経済活動」に含めると発表した。一部加盟国や環境団体などが異論を唱える中、脱炭素社会実現へ「使える手段は全て活用する必要がある」との判断で押し切った。(詳細下記)

欧州議会欧州理事会は7月11日までに欧州委員会の提案に拒否権を発動するかどうかを決定する。

EUでは、法案提出権は特別の場合を除いて、欧州委員会が独占している。

欧州議会もEU理事会も、欧州委員会に法案提出を要請することはできるが、提出するか否かは欧州委員会の裁量。

欧州委員会の提案後、欧州議会の諮問を経て、EU理事会が法案を採択する。

異議申し立てには、欧州議会では単純多数決、欧州理事会では特定多数決(加盟国の72%以上=20か国以上、人口の65%以上)が必要である。

ドイツ政府は5月16日、原子力発電を持続可能な投資対象に含めたEUの「タクソノミー」に関する規則に反対する考えを示した。天然ガスを含めることは支持している。
フランスや東欧諸国は原子力に賛成する。

欧州議会の経済金融委員会と環境・公衆衛生・食品安全委員会の合同会議は6月14日、EU気候変動タクソノミーに原子力発電とガスエネルギーを加えるEUタクソノミー委託法令に対し、異議を唱える決議案を採択した。票数は異議76、異議なし62、棄権4だった。

決議案は天然ガスと原子力について、EUの法律に基づくと持続可能なエネルギーとはみなせず、「グリーン」に区分することは投資家を混乱させるとしている。

同決議案は7月上旬に本会議で採決にかけられる。議員の過半数が支持すれば、EUの提案は否決される。 修正か、撤退となる。

本会議で決議案が否決された場合(欧州委員会案が承認された場合)、欧州理事会での採択となる。

成立する場合は、2023年1月から実施に移される。ただ、グリーンウォッシュ(見せ掛けの環境保護)として原発の盛り込みに反対しているオーストリア とルクセンブルグは既に、その場合に欧州司法裁判所に欧州委を提訴するとしている。

付記

EUの欧州議会は7月6日、原子力発電と天然ガスを「環境に配慮した投資先」のリストに加える提案について審議した。

提案に反対する決議案が議題となったが、採決の結果、否決した。639票のうち328票が提案に賛成した。(単純多数決)

提案は欧州議会に事実上承認され、当初の予定通り2023年に発効する公算が大きくなった。

ただ、放射性廃棄物を出す原発や、石炭よりは少ないが温室効果ガスを排出する天然ガスを「環境保護に貢献する」と認めることに対しては、EU内外で反発が根強い。ロイター通信によると、反対派のオーストリアは6日、発効後に欧州司法裁判所に提訴する方針を示した。

ーーー

欧州委員会は2022年1月1日、原子力発電と天然ガスを地球温暖化対策に役立つエネルギー源と位置づける方針を発表した。

原子力発電と天然ガスについて、「再生可能エネルギーを基盤とする将来に向け、移行を促す手段」と位置付けた。

EUは、発電、交通、建築など様々な経済活動ごとに、持続可能で環境に配慮しているかどうかを仕分けするルール「EU Taxonomy(分類)」を設けている。

欧州委員会は、「電力、ガス、上記、空調の供給」に原発や天然ガスの項目を新たに追加し、持続可能かなどについての評価基準を示す。

加盟国の専門家との協議を開始した。

原案は以下の通り。

 原子力は生物多様性や水資源など環境に重大な害を及ぼさないのを条件に、2045年までに建設許可が出された発電所を持続可能と分類する。

 天然ガスは①1キロワット時あたりのCO2排出量が270グラム未満、②CO2排出の多い石炭の代替とする、③30年までに建設許可を得る――などを条件とする。

ただ、2022年末の脱原発をめざすドイツのほか、オーストリア、ポルトガルなど計5カ国は2021年11月、環境担当などの閣僚が連名で、「タクソノミーの信頼を損なう」として原発の組み入れに反対する共同声明を発表した。
一方で、原発が発電量の約7割を占めるフランスのほか、今は原発がないポーランドなど計10カ国はタクソノミーに原発を加えるよう求める姿勢を鮮明にした。 

2022/1/3 欧州委、原子力発電と天然ガスを地球温暖化対策に貢献するエネルギーと位置づけ 

ロシア国営 Gazprom は6月14日、天然ガスパイプラインNordstream 1 の供給量を40%減らすと発表、翌15日、さらに33%削減すると発表した。(合計60%カット)

従来の日量最大1億6700万立方メートル であったが、16日午前1時半をもって供給量は最大6700万立方メートルになる

「エンジンの技術的な状態」のためガスタービンの運転を停止すると説明するが、ドイツのウクライナ支援への報復とか、価格を更に引き上げるためとかの理由が噂されている。

2022/6/17 Gazprom、ドイツ向けの天然ガス供給を削減

ドイツはロシアの天然ガスに大きく依存している。侵攻前、ドイツはガスの55%をロシアからの輸入に頼っていた。

来冬の需要に備え、天然ガスの貯蔵が必要だが、現時点ではドイツのガス貯蔵量は最大能力の5~6割程度にとどまっている。

ドイツのハベック経済・気候相は6月19日、ロシアからの天然ガス供給が大幅に減る事態に備え、 発電に利用するガスの消費量を減らし、石炭火力発電の稼働を拡大させる法整備を進めると発表した。

ガス節約を促すため、消費量を減らした企業ほど有利になる新たな仕組み「ガスオークション」の導入も計画する。

「(冬までに)できるだけ多くのガスを蓄えることが必要だ」とし、2030年までに火力発電の全廃を目指す取り組みと逆行することについて、「つらいことだが、ガス消費量を減らすためには必要なことだ」と理解を求めた。

ーーー

ドイツの発電のエネルギーソース内訳は下図の通りで、再生可能エネルギーが40.9%を占め、石炭・褐炭が27.9%、原子力が11.8%、天然ガスが15.3%を占める。

 ソース:https://www.de-info.net/kiso/atomdata01.html

 

ドイツは2021年に、温室効果ガスを2030年までに1990年比で65%削減することを決めている。

2030年に国内総電力の80%を再生エネルギーにし、石炭火力については2030年までに段階的廃止する。原発については2022年中に全廃する。

 ドイツ新政権の連立協定

自然エネルギー
・ 2030年に、年間総電力需要680〜750TWhのうち80%を自然エネルギーで供給する。
・ 国土の2%を陸上風力発電に利用する。
・ 洋上風力発電の容量を大幅に拡大し、少なくとも2030年に30GW、2035年に40GW、2045年に70GWを目指す。
・ 2030年までに、太陽光発電容量をおよそ200GWまで拡大させる。
・ 新築事業用建築物への太陽光発電設備の設置義務化、新築住宅への設置も原則とする。
・ 2025年1月1日までに新しく設置される全ての暖房システムは、自然エネルギーによる運用比率65%を目指す。
・ 社会的公平性のため、2023年1月には電気料金を介した再エネ賦課金を廃止する。

石炭
・ 理想的には2030年に脱石炭完了を前倒す。
・ 脱石炭にむけた過渡期には、自然エネルギーの大規模な拡大と最新型ガス火力発電所の建設が必要である(H2-ready)。
・ 脱石炭の影響を被る地域に対する石炭地域構造強化法の施策を前倒し・加速し、調整手当などの労働政策上の措置も調整
・ 石炭火力発電の解体と土地の復旧のための財団・組織の設立を検討する。

原発
・ ドイツの脱原発を固持する。

気候変動対策
・ ドイツを「1.5度」の軌道へと導くことを主要課題とする。
・ 遅くとも2045年までに気候中立を達成する。
・ 2022年に連邦気候保護法を再度改正し、同年末までに必要な法整備をして新たな気候保護緊急プログラムを導入する。
・ 連邦経済・気候保護省を新設し、緑の党から連邦経済・気候保護大臣を設ける。
・ 気候チェック(Klimacheck)を行い、各省庁が起草する法案について気候への影響や国の気候保護目標との整合性を検証

その他
・ 2030年に、少なくとも1,500万台の電気乗用車(EV)を普及させる。
・ 水素経済・インフラの整備を加速化し、2030年に10GW程度の電解容量を実現する。

残るのは天然ガスであるが、今回、これが60%削減されることになり、やむを得ず、石炭火力を増やす。

なお、ロシアへのガス依存を減らすために原発稼働延長案が出たが、政府は3月8日、これを却下した。年内に残る3原発が廃止される。

2020/7議会 2021年 2021/12/31 2022年中
温室効果ガス 2030年までに1990年比 65%削減
2045年までにネットゼロ
(2021/6 連邦気候保護法 改正)
国内総電力 2030年に80%を再生可能エネルギー
(2021/11 連立政権)
石炭火力 2038年までに全廃「脱石炭法」 前倒し 、2030年までに段階的廃止
(2021/11 連立政権)
原子力発電 脱原発 維持
(2021/11 連立政権)
3基停止
 Brokdorf
 Grohnde
 Gundremmingen
残り3基停止(ゼロに)
 Emsland
 Isar
 Neckarwestheim

Bayerは2021年8月16日、同社の子会社Monsantoのグリホサート系除草剤「ラウンドアップ」が原因でがんになったと訴えた顧客への損害賠償を支持した米控訴裁判決(Edwin Hardeman訴訟)を不服として、米最高裁に上訴した。

米最高裁は6月13日、上訴案件のうち審議する対象案件を発表したが、本件は含まれていなかった。却下された。


これまでに多くの訴訟があり、かなりの部分が和解しているが、裁判で同社が敗訴になったのは下記の3件である。

原告   陪審員 裁判官判断
1 校庭の管理人   カリフォルニア 2018/8/10 Superior Court 2018/10/23
損害賠償 39百万ドル 39百万ドル
懲罰的損害賠償 250百万ドル 39百万ドル
2 Edwin Hardeman   カリフォルニア 2019/3/27 地裁 2019/7/16
損害賠償 527万ドル 527万ドル
懲罰的損害賠償 75百万ドル 20百万ドル
被害に対して15倍もというのは違憲
3 Pilliod 夫妻   カリフォルニア 2019/5/13 Superior Court 2019/7/25
損害賠償 55百万ドル 17 百万ドル
懲罰的賠償 20億ドル 69百万ドル 
陪審の懲罰的賠償は過大で憲法違反


2019/7/27 モンサントの除草剤 Roundup による発癌被害裁判、裁判官が陪審の懲罰的賠償を大幅減額 


Bayerが上訴したのは、このうちの
Edwin Hardemanの件である。
除草剤ラウンドアップの発癌性について、連邦法(FIFRA=Federal Insecticide, Fungicide, and Rodenticide Act )とカリフォルニア州法で意見が異なることから生じたもので、最高裁の判断を求めた。

(連邦法)米国で農薬承認を行うEPAは発癌性はないとしている。このため、ラベル(使用法等を記載)には「発癌性の危険」の表示はなく、仮に表示すれば違法となる。

(州法)カリフォルニア州はラウンドアップを発癌性製品のリストに含めており、その場合、「発癌性の危険」が表示されていないのは違法となる。

原告側弁護士は、連邦法ではなく、州法を基に訴訟を起こした。陪審員は、除草剤Roundupのラベルには発癌の危険が示されていないため違法であるとして有罪とし、一審の裁判官も、控訴裁の裁判官もこれを認めた。

米EPAと司法省は2019年12月20日、Friend of the court brief (=amicus curiae:個別事件の法律問題で第三者が裁判所に提出する情報または意見)を提出した。

このなかでEPAは、EPAはRoundupのラベルを調べ承認したこと、Roundupには発癌性はなく、このため、発癌性の危険を表示する必要性はないとした。判決は覆すべきであるとしている。

EPAは発癌性を認めず、製品ラベルには当然、発癌性の危険は表示されていない。しかし、カリフォルニア州は発癌性製品のリストに含めており、発癌性の危険が表示されていないのは違法となる。

EPAと司法省は、ラベルは法律で認めたもので、それと異なるやり方での使用は法律違反であるとし、州は農薬の販売や使用を制限することは出来るが、国が承認したラベルと異なるもの、追加したものを求めることは出来ないとしている。

2019/12/26 米EPAと司法省、除草剤Roundupの発癌被害裁判でBayer側支持の意見書 

最高裁は2021年12月13日、政権に対し、最高裁が本件を取り上げるべきかどうかについての意見を求めた。

2021/8/21 Bayer、除草剤ラウンドアップ訴訟で最高裁に上告

これに対し政権は2022年5月10日、Bayerによる上告を拒否するよう求めた。

訟務長官は、「FIFRAでのEPAラベル承認」が州法が求める「警告がなかった」ということに優先するというBayerの主張を拒否するよう求めた。「EPAが特定の疾病リスクを警告しないラベルを承認したこと自体は、州法がそのような警告をすることを求めることに優先するものではない」とした。

これまでのEPA、司法省の主張(トランプ大統領時代のもの)と真逆である。

EPAが発癌性を認めていないことは発癌性がないことを示している訳ではなく、「発癌性のおそれ」をラベルに書くことが違法であるというのは、無理があり、この回答は妥当である。

2022/5/13 バイデン政権、Bayerによる除草剤ラウンドアップ訴訟での最高裁上告に反対

今回最高裁は訟務長官の説明をそのまま受け入れたと思われる。

なお、Bayerはその後の4つの裁判で全て勝訴している。

1.2021/10 ロスアンジェルス地裁

原告 Destiny Clarkは住居の雑草処理にRoundupをスプレイしたが、息子がバーキットリンパ腫にかかったとしてMonsantoを訴えた。

陪審員は病気は除草剤が主な原因ではないとして訴えを退けた。

2.2021/12 カリフォルニア州San Bernardino County 地裁

原告Donnetta Stephens は、庭でRoundup を30年以上使用してきたが、2017年に非ホジキンリンパ腫に罹った。ラベルには発癌性の警告は書かれていない。癌は寛解期にあるが、複数回の化学療法の結果、記憶喪失に苦しんでいる。

裁判はコロナのため、ZOOMを使って行われたが、陪審員はRoundupが病気の原因でないと判断した。

3.  2022/6 ミズーリ州 Kansas City地裁

Allan Shelton が癌になったとして訴えた裁判で、Bayerが勝利

4. 2022/6/17 オレゴン州Jackson Countyの巡回裁判所

Bayerが4回連続で勝訴

ーーー

Bayerは2021年5月にグリホサート系除草剤「ラウンドアップ」の訴訟問題に関し、5つの進め方を明らかにし ている。

1) 連邦最高裁のルーリングを求める。

 8月16日に連邦最高裁に上訴した。

2) 将来の訴訟対策

 最高裁の判断が不利なものである場合のため、追加で45億ドルを引当てる。

3) 和解

 138千件のうち既に107千件を解決したが、残り31千件については最高裁が審理を決めた場合、その結果を待つ。

4) 家庭用・農園用(Lawn & Garden)農薬の新処方

 「ラウンドアップ」以外の有効成分の新処方の発売

 訴訟の大半はこの用途でのもので、処方変更で訴訟を減らす。

5) 「ラウンドアップ」の安全性を説明するWeb EPA's Review of Glyphosate Safety を新設


今回の最高裁の決定を受け、和解を進めると思われる。

英政府は6月13日、2019年に欧州連合(EU)と交わしたEU離脱後の通商協定の「北アイルランド議定書」を破棄する計画を発表した。

国益を守るために「ほかに道がない」としている。今回の「北アイルランド議定書法案」は今後、英議会で審議・採決される。

これに対しEUは、協定の一方的な破棄は国際法に違反するとして、英の動きに反対している。

ーーー

英は2021年1月にEUを離脱、北アイルランドとアイルランド間の貿易に関しては、2019年に英とEU間で交わされた「北アイルランド議定書」が発効した。この議定書では、北アイルランドとEU間の通商に支障が出ないよう、税関など国境管理措置を設けないと定められているが、これにより、北アイルランドと残りの英との間にEU法にのっとった税関が必要になっていた。

現在、議定書にのっとって検査や規制が行われており、北アイルランドへ物品を輸入している企業は、追加コストや手続きの煩雑さといった問題に直面している。特に規制の厳しい食品や園芸といった分野で苦労が多いという。

一方で北アイルランドからアイルランドへの輸出では、EU市場への摩擦のないアクセスが維持されているため、食品を含む輸出業者は恩恵を受けている。

英政府は2021年7月21日、北アイルランドで起きている物流などの混乱をおさめるため、英領北アイルランドでの通商ルールについてEUに再交渉を求めると発表したが、EUは再交渉に応じなかった。

2021/7/24 英、EU離脱ルール再交渉を要求、EUは拒否


今回の英国案では、英本土から北アイルランドに入る貨物の扱いについて、次のように改定する。

北アイルランドにそのまま留まる貨物はグルーンレーンを使い、チェック無し、書類も簡単。

北アイルランドを通ってアイルランドや他のEU諸国に運ばれるものはレッドレーンを使い、北アイルランド港湾でチェックを受ける。

物品検査に関する「不必要な」事務処理をなくし、北アイルランドの企業が英の他の地域の企業と同様の税制優遇措置を受けられるようにする。

また、あらゆる貿易紛争を欧州司法裁判所(ECJ)ではなく、「独立した仲裁」によって解決する。

  • green and red channels to remove unnecessary costs and paperwork for businesses trading within the UK, while ensuring full checks are done for goods entering the EU
  • businesses to have the choice of placing goods on the market in Northern Ireland according to either UK or EU goods rules, to ensure that Northern Ireland consumers are not prevented from buying UK standard goods, including as UK and EU regulations diverge over time
  • ensure Northern Ireland can benefit from the same tax breaks and spending policies as the rest of the UK, including VAT cuts on energy-saving materials and Covid recovery loans
  • normalise governance arrangements so that disputes are resolved by independent arbitration and not by the European Court of Justice

英政府は、国際法における「必要性」という言葉は、「国家が本質的な利益を守るために、他の国際的な義務を不履行にする(あるいは破る)しかない」という状況を正当化するために使われる、とし、現状はその状況に当たるとしている。また、今回の計画は他国の利益を「深刻に損なう」ものではないとしている。

また、北アイルランド議定書の16条で、議定書の適用によって経済的・社会的・環境的に深刻な問題が生じ、その結果として貿易が制限される場合、いずれかの側が保護措置を講じることができると定めているとする。

北アイルランドの平和維持のために結ばれた「ベルファスト合意」を保護し、北アイルランドと残りの英の経済的・社会的つながりを保全することが、英の「本質的な利益」であるが、議定書の問題が、先に総選挙のあった北アイルランドでの政権樹立の「障壁になっている」としている。

5月5日投票の英領北アイルランド議会選、隣国のアイルランドとの統一を訴えるシン・フェイン党が全90議席中27議席を獲得し、史上初めて第1党となった。改選前の第1党で親英派の民主統一党(DUP)は25議席にとどまった。

議会第一党の座を失ったDUPは、議定書が修正されるまでは、シンフェイン党が率いる合同政府に参加しない意向を表明しており、政権発足の目途が立たない状況にある。

バイデン大統領は6月14日、大手石油会社が生産量を増やさず高収益をあげていると非難する書簡を送り、ガソリンの増産を迫った。

送付先はMarathon Petroleum, Valero Energy, ExxonMobil, Phillips 66, Chevron, BP, Shell の各CEO。

石油製品のマージンが急増していると、グラフを添付した。

3月に原油が120ドル/バレルの際にガソリン価格はガロン当たり4.25ドルであったが、現在では(原油は若干下がっているが)ガソリン価格は75%上がっているとしている。

書簡は次の通り。

June 14, 2022

I am writing to you about the high prices our fellow Americans are paying at the pump, and how we can all play a part in addressing them. Since the beginning of this year, gasoline prices have increased by more than $1.70 per gallon.

Vladimir Putin's war of aggression, and the bipartisan and global effort to counter it, has disrupted the global supply of oil and driven up the global price. But the sharp rise in gasoline prices is not driven only by rising oil prices, but by an unprecedented disconnect between the price of oil and the price of gas. The last time the price of crude oil was about $120 per barrel, in March, the price of gas at the pump was $4.25 per gallon. Today, gas prices are 75 cents higher and diesel prices are 90 cents higher.

That difference -- of more than 15% at the pump -- is the result of the historically high profit margins for refining oil into gasoline, diesel and other refined products. Since the beginning of the year, refiner's margins for refining gasoline and diesel have tripled, and are currently at their highest levels ever recorded.

To be sure, the shortage of refining capacity is a global challenge and a global concern. Around 3 million barrels a day of global refining capacity have gone offline since the onset of the pandemic, inhibiting our ability to ramp up supply of gasoline, diesel and jet fuel. I am working with allies and partners and countries around the world to encourage global refinery capacity to come back online. But, in the United States alone, oil refiners significantly reduced their capacity during the pandemic. In the year before I took office, refineries in the United States reduced their capacity by more than 800,000 barrels a day, leaving American refinery companies today at their lowest level of capacity in more than a half decade.

I understand that many factors contributed to the business decisions to reduce refinery capacity, which occurred before I took office. But at a time of war, refinery profit margins well above normal being passed directly onto American families are not acceptable.

There is no question that Vladimir Putin is principally responsible for the intense financial pain the American people and their families are bearing. But amid a war that has raised gasoline prices more than $1.70 per gallon, historically high refinery profit margins are worsening that pain.

Your companies and others have an opportunity to take immediate actions to increase the supply of gasoline, diesel, and other refined product you are producing and supplying to the United States market. With prices for your product where they are today, you have ample market incentive to take these actions, and I recognize that some of you have already begun to do so. I also encourage you to continue maintaining and expanding fuel supply sefely.

In addition, my Administration is prepared to use all reasonable and appropriate Federal Government tools and emergency authorities to increase refinery capacity and output in the near term, and to ensure that every region of this country is appropriately supplied. Already, I have invoked emergency powers to execute the larger Strategic Petroleum Reserve release in history, expand access to E15 (gasoline with 15% ethanol ), and authorize the use of the Defense Production Act to provide reliable inputs into energy production. I am prepared to use all tools at my disposal, as appropriate, to address barriers to providing Americans affordable, secure energy supply.

The crunch that families are facing deserves immediate action. Your companies need to work with my Administration to bring forward concrete, near-term solutions that address the crises and respect the critical equities of energy workers and fence-line communities. I have directed the Secretary of Energy to convene an emergency meeting on this topic and engage the National Petroleum Council in the coming days. In advance of that, I request that you provide the Secretary with an explanation of any reduction in your refinery capacity since 2020 and any concrete ideas that would address the immediate inventory, price, and refining capacity issues in the coming month-- including transportation measures to get refined product to market.

The lack of refining capacity-- and resulting unprecedented refinery profit margins-- are blunting the impact of the historic actions my Administration has taken to address Vladimir Putin's Price Hike and are driving up costs for consumers. I appreciate your immediate attention to this issue and your efforts to mitigate the economic challenges that Vladimir Putin's actions have created for American families.

ロシア国営 Gazprom は6月14日、天然ガスパイプラインNordstream 1 の供給量を40%減らすと発表した。従来の日量最大1億6700万立方メートルから1億立方メートルになる。

Gazpromは翌15日、さらに33%削減すると発表した。モスクワ時間の16日午前1時半をもって供給量は最大6700万立方メートルになるとし、「エンジンの技術的な状態」のためガスタービンの運転を停止すると説明した。

ドイツ重電大手Siemens Energyなどによると、パイプライン内のガス圧力を高めるために使われるガスタービン(aeroderivative gas turbine) 1基をカナダで修理したが、カナダ政府の制裁措置によってGazpromに提供できなくなったという。Siemens Energyではドイツとカナダ政府に事態を連絡し、解決策を協議していると発表した。

しかし、15日の発表を受け、ドイツの副首相兼経済・気候保護相は、「政治的な決定であり、技術的に正当な解決策ではない」と非難、修理の必要性は認識しているとしながらも、関連作業は秋まで行われない予定だと指摘し、この削減規模は正当化できないと述べた。

仮にNordstream 1の問題であれば、他のパイプラインでの増量が可能だが、それは行なっていない。

ドイツのウクライナ支援への報復とか、価格を更に引き上げるためとかの理由が噂されている。

現在は暖房が必要でなく、今夏を乗り越えることが出来るが、冬に備えて備蓄を開始する時期であり、ドイツへの打撃は大きい。


イタリア国営エネルギー会社ENIは6月15日、Gazpromがイタリアへのガス輸出を前日から約15%削減したと明らかにした。削減理由について説明はないという。


ドイツは3月5日、国内初の液化天然ガス(LNG)輸入ターミナル建設を発表した。
ドイツ復興金融公庫(KfW)と大手エネルギー会社RWE、オランダ政府100%出資のガス大手Gasunieが、ドイツ北部のBrunsbüttel市でLNG輸入ターミナルの建設に関する覚書(MoU)を締結した。
出資比率はKfWが50%、Gasunieが40%、RWEが10%でターミナルの運営はGasunieが担当する。

同ターミナルの年間再ガス化能力は80億立方メートルで、ドイツの年間ガス需要約950億立方メートルの8.4%に相当する。


ドイツ政府は5月5日、LNGの輸入拠点となるターミナル建設を北部Wilhelmshavenで始めた。

既存の桟橋を改良し、LNGが貯蔵できる設備を備えた船4隻をリースして洋上に停泊させる。浮体式LNG貯蔵再ガス化設備と呼ばれる大型設備で、海外から到着するタンカーからLNGを船の設備に受け入れ、船上で液体からガスに戻し、陸上のパイプラインを通じて消費地に送る。80億立方メートル程度を供給できるという。

10年契約で、秋までに完成し、RWEが運営する。陸上受け入れ基地機能の代替となる、ドイツ政府は29億4千万ユーロの予算を付ける。

付記

ドイツ政府が導入を計画している6基の浮体式液化天然ガス(LNG)受け入れ設備のうち、1基の試験運転が12月17日、独北部ウィルヘルムスハーフェンで始まった。独エネルギー大手ユニパーが運営する。既存の港湾施設にFSRUを配置し、長距離の天然ガスのパイプライン網と接続される予定。

連邦政府はFSRUの設置を、当初予定していた3隻から4隻に増やした。ノルウェーのFSRU大手ホーグLNGおよびギリシャのLNG輸送会社ダイナガスから船を2隻ずつチャーターし、船の運営は、政府から業務委託されるドイツエネルギー大手RWEとユニパーが担当する。

ユニパーはウィルヘルムスハーフェンに設置するFSRU2隻をダイナガスから調達することも発表した。いずれも21年に竣工した17万4000立方メートル型。

RWEが担当するホーグLNGからチャーターする1隻目のFSRUは、2022年末ごろに稼働する予定。2隻目はブルンスビュッテル市で2023年初めに稼働する予定。2隻合わせて、年間100億~140億立方メートルの天然ガスをドイツ国内に供給できる。

ユニパーが担当するダイナガスからチャーターするFSRU2隻は、配置場所は未定だが、2023年初頭に稼働する予定。2隻とも年間最大75億立方メートルの天然ガスの供給能力を持つ。




付記

Venture Global LNG とドイツの電力会社EnBWは6月21日、年150万トンのLNGを2026年から20年間にわたって売買する長期契約で合意したと発表した。

Plaquemines LNGから年75万トン、CP2 LNGから75万トンを購入する。

ドイツが米国産LNGの長期購入契約を結ぶのは初めて

2022/2/21 米国で新しいLNGプラントが稼働

ーーー

Gazpromはパイプライン経由の天然ガスについてルーブル払いへの切り替えを要求しているが、多くの問題が出ている。

1)ロシアは下図の仕組みを提案した。

ロシア案の仕組みであれば、買い手は契約通りのユーロで支払ったと言え、売り手のGazpromはルーブルで支払いを受けたと言うことができる。

2)ポーランドの国営ガス会社PGNiGは4月26日、ロシア国営Gazpromから天然ガス供給を4月27日から停止するとの通知を受けたと発表した。ブルガリアも同様に4月27日からのガス供給停止を通知された。

3)ウクライナが同国のロシア占領地域経由のパイプラインを停止、ロシア非占領地帯経由パイプラインへの切り替えを要求

2022/5/12 ウクライナ、ロシア産天然ガスの欧州向けパイプラインを一部停止

4)Gazpromは5月12日、ポーランドなどを経由するパイプラインYamal Europeを通じた天然ガスの供給を止めると明らかにした。
  ロシア政府が5月11日に発表した制裁対象に、パイプラインの一部を所有するポーランド企業EuRoPol GAZが含まれていたため。

2022/4/28 ロシア、ポーランドとブルガリアに天然ガス供給停止 

5)Gazpromは、ルーブル払いを拒否したとの理由で、5月31日でオランダのガス会社Gas Terra、デンマークのØrsted、Shell Energy経由のドイツ向けの供給停止を発表した。

 

ーーー

ドイツ政府は6月14日、Gazpromの子会社だったGAZPROM Germaniaを長期的に管理下に置き、政府系金融機関が最大100億ユーロを融資する救済策を発表した。
ドイツ政府は「供給の安全性を維持するために今回の措置が必要」としている。

GAZPROM Germaniaはガスの取引、貯蔵、輸送を手掛けており、ロシアのウクライナ侵攻後の4月にGazpromが手放したことを受け、期間限定でドイツ政府の管理下に置かれていた。

Gazpromは4月1日、ドイツ子会社のGAZPROM Germaniaを手放し、独事業などから撤退することを決めた。

Gazprom傘下とみられる企業がGAZPROM Germaniaを買収した上で清算する動きがあったため、独連邦ネットワーク庁が9月30日までの期限付きで同社の議決権を取得した。
資産の処分などは同庁の許可が必要となる。

なお、ロシア政府は5月11日、ドイツ政府の管理下に置かれているGAZPROM Germaniaに対して経済制裁を科したと発表した。同社と、同社の子会社との取引を、ほかの企業などに禁じた。
同社へのガス供給をロシアが停止する可能性もある。

将来的にはEU域内でロシア産のガスを貯蔵することも禁止される可能性があるという。GAZPROM Germaniaは北西部ニーダーザクセン州にある国内最大のガス貯蔵施設を運営している。

今回、エネルギー安全保障法に基づく信託管理へと変更、政府が長期間、管理下に置けるようになる。長期管理に切り替えるのに合わせて企業名を「Securing Energy for Europe」に変更する。

ドイツ政府は4月25日、ロシアによるウクライナ侵攻の影響でエネルギー市況がさらに悪化する場合に備え、エネルギー安全保障法改正案を閣議決定した。

エネルギー供給が危機に瀕したり妨げられたりした際の危機管理の包括的な対策を定めている。具体的には、重要なエネルギーインフラを運営する企業が業務を十分に遂行できなくなり、エネルギーの安定供給が損なわれる恐れがある場合、同企業を一定期間、信託管理下に置くことが可能になる。
また、エネルギー安全保障が他の手段で確保できない場合には、最終手段として、具体的かつ厳密な条件の下で同企業の収用も可能にする。

政府系金融機関の復興金融公庫(KfW)が90億─100億ユーロを融資し、事業継続を支援する。

ドイツ政府は融資について「事業運営とガス供給の維持のみに使い、ロシアには流れない状態になっている」と説明している。

UAEのアブダビ首長国国営石油会社(ADNOC) とENEOS、三井物産3社は6月7日、共同事業化検討契約書を締結し、UAEと日本間のクリー水素サプライチェーン構築に向けた協業検討を開始すると発表した。

第一段階ではアブダビのRuwais工業地域内所在すADNOC製油所・石油化学工場由来の副生水素 を、 第二段階では天然ガスから生産されるブルー水素、効率的な水素の輸送形態であるメチルシクロヘキサン(MCHに変換日本輸出することを目的としている。

化石燃料由来の水素を「グレー水素」、再生可能エネルギー由来の水素を「グリーン水素 」と呼ぶが、化石燃料由来の水素だがCO2を回収するものを「ブルー水素」と呼ぶ。  

水素を海外から運ぶためにはセ氏零下253度まで冷やして液化し、専用の運搬船を使う必要がある。今回は水素をトルエンに反応させてメチルシクロヘキサンとし、常温で日本に輸送し、日本でこれから水素を取り出す 。

これまでメチルシクロヘキサンから水素を取り出すのは不可能とされていたが、千代田化工が開発した触媒がこれを可能にした。


2017/8/5 千代田化工ほかの国際間水素サプライチェーン実証事業



ADNOC、ENEOS、
三井物産3年間5万トン規模の水素生産設備の技術実証と、商用段階を想定した年間20万トン規模への拡張可能性に関するフィージビリティスタディ実施する。

ADNOC脱炭素ビジネスへの取り組みを加速させており、油田を活用したCO2回収・貯留に加え、製油所・石油化学工場などの既存設備を活用した競争力の高いブルー水素供給事業の確立を目指している。

2016年11月に中東で初となる商業規模のCO2回収プラントが、UAEのEmirates Steel Industriesの製鋼所において操業を開始した。ADNOCとMasdar(Abu Dhabi Future Energy Company)のJVが、Al Reyadah CCUS((Carbon capture, utilisation and storage) プロジェクトとして開発したもので、現在、年間80万トンのCO2回収能力を有している。

CO2は陸上油田での原油回収促進(CO2 EOR)に利用する。

ADNOCは、2030年までに年間500万トン- CO2を達成することを目指している。

ENEOSは水素とトルエンを反応させてMCHに変換し、石油と同じように常温で運ぶ研究を進めている。

LNG開発のノウハウを持つ三井物産がプロジェクトの管理を担当する。

ーーー

なお、JXTGエネルギー現 ENEOS)、千代田化工、 東京大学、 クイーンズランド工科大学は2019年3月15日、オーストラリアにおいて有機ハイドライドを低コストで製造し、日本で水素を取り出す世界初の技術検証に成功したと発表した。

2021年11月2日、世界で初めて実際に使用できるレベルまで規模を拡大し、燃料電池自動車充填することに成功したと発表した。
実際に使用できるレベル(約6kg)にまで規模を拡大し、日本においてMCHから水素を取り出し、実際に燃料電池車に充填、走行させることに成功した。

水とトルエンから一段階の反応でメチルシクロヘキサン(MCH) を製造する、ENEOSが開発した「有機ハイドライド電解合成法(Direct MCH)」を採用している。

これは、太陽光発電などからのグリーン水素を輸送するためのものであり、今回は使用しない。

2019/3/18 CO2フリー水素を低コストで製造する世界初の技術検証

ーーー

別途、INPEX、JERA、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は2021年7月、ADNOCとの間で、アブダビ首長国におけるクリーン・アンモニア生産事業の事業化可能性に関する共同調査契約を締結した。

アブダビにおいて、天然ガスを改質して製造した水素を基にアンモニアを合成し、同時に排出される二酸化炭素(CO2)をINPEXが参画するアブダビ陸上油田でCO2を用いた原油回収促進(CO2 EOR)に利用することで、CO2排出量を大幅に抑制したクリーン・アンモニアを日本に輸送する事業の事業化可能性を調査する。


INPEX
は2021年8月、ADNOCとの間でクリーンアンモニアの売買契約を締結した。ADNOCが既存のアンモニアプラントで天然ガスから生産されるもので、アンモニア生産時に排出されるCO2を回収し、INPEXが参画するアブダビ陸上油田においてCO2圧入することで、CO2排出量を抑制したクリーンアンモニアとなる。

クリーンアンモニア液体輸送用のコンテナアブダビから日本に輸送、発電燃料として実証を含めエネルギー分野で使用

参考 2018/10/25 日揮、再生可能エネルギー由来の水素を用いたアンモニア合成と発電に世界で初めて成功

世界貿易機関(WTO)の閣僚会議が6月12日、スイス・ジュネーブの本部で開幕した。ロシアのウクライナ侵攻で脅かされる食料安全保障や、漁業補助金の問題などを議論する。

世界貿易機関(WTO)の有志の加盟国・地域は6月12日、ウクライナへの連帯を示す共同声明を発表した。

声明要旨

ウクライナに対する侵略によって引き起こされた壊滅的な人的損失と深刻な​​苦しみに深い悲しみを表明する。2022年3月2日および2022年3月24日の国連総会決議への支持を改めて表明する。

戦争は、ウクライナの経済や貿易能力などに壊滅的な影響を及ぼしている。道路、橋、港、鉄道など、ウクライナの交通インフラの大部分が破壊されたことで、ウクライナの生産、輸出、輸入の能力が大幅に低下している。

特に農産物や食品、肥料、ひまわり油、重要な鉱物など、ウクライナが生産する多くの主要商品の国際市場への供給に関して深刻な懸念を抱いている。また、ウクライナから穀物が略奪されたという多くの報告にも深い懸念を抱いている。これらの行動は、WTOの原則と価値観と対立している。

ウクライナは、小麦、トウモロコシ、大麦、ひまわり油などの主要な農産物の世界最大の輸出国の1つで、世界食糧計画への主要な供給者である。ウクライナの黒海へのアクセスの遮断を含む戦争の影響は、開発途上国で世界の最も脆弱な地域のいくつかへの食糧供給を深刻に危うくしている。何百万人もの人々を食糧不安に追いやるリスクがあり、COVID-19によって引き起こされたすでに深刻な状況に追加される。

我々はウクライナを支援し、その輸出を促進することを目指す。

WTOには164カ国・地域が加盟するが、ロシア批判は抑えたものとなっているにもかかわらず、署名したのは欧州諸国、日米韓や台湾、中南米の一部など56カ国・地域にとどまった。アフリカの多くの国はウクライナの小麦等に依存しているが、署名したのはシェラレオネ1カ国のみである。

欧州では、EU加盟の27か国全てと、非加盟の11カ国の合計38か国が署名したが、NATO加盟国のアイスランドとトルコの2カ国は署名していない。
トルコは現在、ウクライナからの食糧輸出についてロシアと協議している。

米大陸では、米国、カナダと中南米の8か国の合計10カ国が署名。

アジアでは日本、韓国、台湾、シンガポールの4か国にとどまった。

その他では、豪州、ニュージーランドとイスラエル、シェラレオネの4国で、合計56か国である。他にEUが署名した。

ロシアと親しく、対ロ制裁に反対する中国や、厳しい批判を避けるインドやサウジアラビア、ブラジル、南アフリカなどは加わらなかった。
東南アジアではシンガポールだけが署名した。

署名  赤字は旧ソ連

非署名
NATO加盟 NATO非加盟 NATO加盟
欧州 EU イタリア、オランダ、フランス、ベルギー、ルクセンブルグ、デンマーク、ポルトガル、ギリシャ、ドイツ、スペイン,チェコ、ポーランド、ハンガリー、エストニア、ラトビア、リトアニア、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ルーマニア、クロアチア、 (21) アイルランド、オーストリア、フィンランド、スウェーデン、キプロス、マルタ(6)
non-EU 英国
ノルウェー、アルバニア、モンテネグロ、北マケドニア、(5)
ジョージア、リヒテンシュタイン、モルドバ、スイス、ウクライナ、アイスランド(6) アイスランド
トルコ

中東 イスラエル
北米 米国、カナダ
中南米 メキシコ、チリ、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、パラグアイ、ペルー、ウルグアイ(8)
アジア 日本、韓国、台湾、シンガポール
ANZ 豪州、NZ
アフリカ シエラレオネ
合計 28 カ国 28 カ国

56カ国

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

最近のコメント

月別 アーカイブ