「no」と一致するもの

アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国を訪問した甘利明経済産業相は1月6日、アブダビ石油公社のユセフ総裁と会談した。
総裁は「油田開発には日本企業の関与継続を求める」と述べ、2012年から順次失効するアブダビ石油など日系4社の自主開発油田の権益延長・拡大を認める方針を示唆した。

昨年12月17日、福田康夫首相は、来日中のムハンマド・アブダビ皇太子と会談したが、その席でアブダビ石油の自主開発油田の契約更新に向け、原油の安定供給について意見交換している。
また、会談後にコスモ石油や丸紅などとアブダビ側との発電などのエネルギー事業契約に関する署名式を、首相と皇太子が同席して官邸で行った。

アラブ首長国連邦結成(1971年)以前の1968年にアブダビ石油が石油利権を取得。その後も1970年に合同石油開発がエル・ブンドク油田に参加、1973年にジャパン石油開発が設立されアドマ鉱区の事業に参加、1996年に国際石油開発がアブダビ沖合アブ・アル・ブクーシュ油田に権益を保有していたAmerada Hess社から権益を取得(Inpex ABK)するなど、二国間関係は石油関係を中心に発展している。

* 石油公団解散により、国際石油開発(Inpex)がジャパン石油開発(JODCO)の親会社となった。

2005年現在、UAEは日本の原油輸入量第2位(24.5%:このうち99%はアブダビで産出)、ガス輸入量第4位(12%:ほぼ100%アブダビで産出)を占めており、わが国自主開発原油の中でUAEが占める割合は約50%(約20万B/日)。

2007年9月に、アブダビ首長国の政府系投資機関、国際石油投資会社IPICが約900億円を投じコスモに20%出資し、筆頭株主になることが発表されている。コスモヘの出資を機に対日輸出を拡大、日本市場への影響力を強める。
また、アブダビ政府が同国で計画する石油精製と石油化学の複合事業にコスモが出資することも検討する。

Abudabi_4  

 地図 http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/0/231/0511_out_f_ae_expansion_adco_zadco.pdf

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アブダビ石油

丸善石油と大協石油(現在は両社合併しコスモ石油)と日本鉱業(現ジャパンエナジー)が1967年12月にアブダビ土侯国より海上4,416km2の石油開発利権を獲得した。
  A地域 2,810km2、B地域 1,596km2
  ロイヤリティ 12.5%
  鉱区使用料 5万ドル/年
  利権協定 45年 探鉱期間8年
  8年の探鉱期間に最低1300万ドル投資

1968年1月、3社均等でアブダビ石油を設立
   現在の株主:コスモエネルギー開発 63%、ジャパンエナジー石油開発 31.5%、
           東京電力 1.8%、関西電力 1.8%、中部電力 1.8% 

1969年9月、ムバラス1号井 出油

1973年、
ムバラス油田が生産開始。
その後、子会社のムバラス石油が1989年にウム・アル・アンバー油田、1995年にニーワット・アル・ギャラン油田で生産を開始した。
(ムバラス石油は2006年1月、アブダビ石油が吸収合併した。)

アブダビ石油が同地域で生産する原油量は2006年実績で日量約2万3,800バレルとなっている。
2012年に45年の契約期限を迎える。

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合同石油開発

株主
コスモエネルギー開発 35%
ジャパンエナジー石油開発  35%
三井物産 20%
三井石油開発 10%

合同石油開発は、アラブ首長国連邦・カタール国両国境線上に位置するエル・ブンドク油田の利権保有者であるブンドク社の株式の1/3を所有、またブンドク油田の開発所要資金の97%(残る3%はBP)を負担しているため、これに見合う生産原油の97%を取得している。

ブンドク油田は1970年11月より商業生産を開始し、2006年3月に累計生産量2億バレルを達成した。

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ジャパン石油開発(JODCO)
(当初 石油公団の子会社、現在は
国際石油開発:Inpex の子会社)

石油ショックに際し、政府も財界も新たな油田を求めて奔走した。

1972年、BPからアブダビ・マリン・エリアズ(ADMA)の持つ利権の30%を780百万ドルで買収したが、1974年に国営石油会社ADNOCが参加比率を引き上げた結果、比率は12%に下がった。

当時操業していたのは下部ザクム油田、ウムシャイフ油田で、これらの権益比率は、
 JODCO 12%、ADNOC 60%、BP 14.67%、TOTAL 13.33%

JODCOでは未開発の上部ザクム油田(既存の下部ザクム油田の上層)の開発を要請したが、先ずウムアダルク油田開発を指示された。
実際はメジャーも投げ出した油田で、1985年に生産を開始したが、油と一緒に水が噴き出し始めた。
シミュレーションで圧力を調整して水を止めることに成功、その後、水平掘りを実施して生産量を上げた。

その後、上部ザクム油田(可採埋蔵量世界4位)、サター油田の掘削にも成功した。

ウムアダルク、上部ザクムの権益比率はJODCO 12%、ADNOC 88%であったが、
上部ザクムの権益については、2006年1月1日を発効日としてADNOC社の権益88%のうち28%をExxonMobil Abu Dhabi Offshore Petroleum社(EM社)に譲渡された。

  JODCO ADNOC BP TOTAL(仏) ExxonMobil
下部ザクム油田   12%   60%  14.67%  13.33%   ー
ウムシャイフ油田   12%   60%  14.67%  13.33%   ー
ウムアダルク油田   12%   88%   ー   ー   ー
上部ザクム油田   12%   60%   ー   ー   28%
サター油田   40%   60%   ー   ー   ー

   資料 NHKライブラリー「プロジェクトX⑩ 夢遥か、決戦への秘策」より、「炎のアラビア」の後半部分

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インペックスエービーケー石油

設立:1996年2月29日

出資:国際石油開発 95%、三菱商事 5%
   (当初は石油公団が40%、国際石油開発=石油公団子会社が55%)

1996年、アブダビ沖合アブ・アル・ブクーシュ油田に権益を保有していたAmerada Hessから権益を取得した。


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  

アラビア石油は1月4日、クウェート・カフジ油田の操業から撤退した。カフジ油田は日本企業にとって戦後初の自主開発油田だったが、半世紀に及ぶ元祖「日の丸油田」の役割を終える。

アラビア石油はサウジとクウェートの旧中立地帯で、1957年に(前身の日本輸出石油が)サウジの採掘権を、1958年にクウェートの採掘権を取得、1960年1月にカフジ油田を発見して 1961年2月に生産を開始した。1963年11月にはフート油田を発見した。

アラビア石油はここで日本の石油消費量の5%に相当する日量27万バレルを生産して日本に持ち込み、エネルギーの安定調達に大きく貢献してきた。
(原油累計生産量は約39億バーレルに達し、その内、約28億バーレルを日本向けに供給)

しかし政府の全面的な後押しを受けて臨んだサウジとの権益更新交渉に失敗して2000年2月にサウジの利権協定が終了、2003年1月にはクウェートとの利権協定も終了した。

その後はカフジの操業は両国の国営石油会社子会社の共同操業に移行し、アラビア石油はKuwait Gulf Oil との技術サービス契約で、人員を派遣、技術、経営管理等のサービスを提供する形で共同操業に参画してきたが、今回、この契約の更新が出来なかった。

クウェート石油公社との間では2023年1月まで、最低日量10万バーレルのカフジ原油・フート原油あるいはクウェート原油の売買に関する取り決めを結んでおり、これは今後も継続する。
また、同社では両国政府の期待に沿って、クウェート国内において引続き事業を遂行する方策につき、クウェート政府当局との間で協議を継続している。

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立地

1922年12月に結ばれた国境協約(ウカイル協定)で、中立地帯が設定された。土地を両国で分割せず、双方が平等に半分ずつの権利を持つというもので、双方の遊牧民は自由に出入りできるとされ、両国が行政義務を果たすこととなった。

しかし、弊害が大きいので中立地帯は解消されることになり、1970年に南北に分割された。
但し、石油など天然資源の利権は引き続き双
方で平等に配分した。

2000年になって、サウジアラビアとクウェートは旧中立地帯の石油利権区域についても両国で境界線を定めて分割した。

  中立地帯地図は http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Lake/2917/zatsu/churitsu.html

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アラビア石油は “アラビア太郎” と呼ばれた山下太郎により設立された。

山下太郎は戦前の満州に進出、南満州鉄道の社宅建設などにより巨万の富を手にし、“満州太郎”の異名を得た。

1956年、「日本輸出石油株式会社」を設立し、石油の加工貿易を志した。
丁度、サウジが石油開発利権の分散政策を採ることを決め、未開発地域開発に日本の進出を求めていることを知り、サウジに飛んで交渉開始の覚書を交わし、帰国して財界を説得した。
1957年6月に政府が油田開発の閣議決定を行い、山下の事業を全面支援することとした。
1958年2月に電力、鉄鋼、商社など40社が参加し、アラビア石油が設立された。

メジャーが権利を押さえていない場所はサウジとクウェートの中立地帯の海底油田だけであった。
利権交渉は難航したが、1957年12月に協定を締結した。

引き続き、クウェートとの交渉を行ない、メジャーや独立系石油会社との競合となったが、1958年5月に契約を締結した。

  サウジ クウェート
探鉱期間の鉱区レンタル料 年額 150万ドル(540百万円) 年額 150万ドル(540百万円)
商業量発見後の年間最低支払額 250万ドル(900百万円) 250万ドル(900百万円)
利益配分率  サウジ側 56% クウェート側 57%
* それまでは利益分配率は50%が慣例であった。

アラビア石油の資本金は35億円しかなく(1959年に半額増資で52.5億円)、両国へのレンタル料その他を払うと、試掘井は1本しか認められなかった。(メジャーでさえも、油を掘り当てる確率は100本掘ってわずか3本なのに)

1959年7月に試掘が開始されたが、8月に暴噴が発生、火災が10日間続き、ダイナマイト爆破で消火した。

修理費は保険でカバーされたが、資金が切れた。このため、取締役会で100億円への増資決議を行い、議事録を担保に日本興業銀行から35億円のつなぎ融資を取り付けた。

燃えた掘削船を修理し、11月に試掘を再開した。

1960年1月、掘削に成功、カフジ油田と命名された。

1961年3月、第一船 鵜戸丸に22,958klの原油が積み出され、日本鉱業・水島製油所に送られた。

その後、1963年11月にフート油田が発見された。

更に、1967年2月にはルル油田、11月にはドラ・ガス田が発見されたが、これらはイランとの国境問題などで操業に至っていない。

   資料 NHKライブラリー「プロジェクトX⑩ 夢遥か、決戦への秘策」より、「炎のアラビア」

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2000年2月に40年の期限が切れ、サウジの利権協定が終了した。

サウジ政府は1990年代から、カフジ油田の利権は例外的な外国への特別扱いとし、よほどの日本側の見返りがなければ、延長を認めるわけにはいかないと、繰り返しアラビア石油に示唆していた。

サウジ政府は利権延長の条件として、日本側の資金提供による総額 2,000億円の鉱山鉄道を敷設するよう要求した。
アラビア石油が期限切れの際の設備接収リスクを恐れて維持・開発投資を手控えてきたため、原油の生産コストが高く、その分だけサウジ側が獲得できる利益が損なわれるので、利権を約30年延長するなら、その間の減収分を鉄道建設を通じて補償してほしい、というものである。

しかし、日本側は鉄道建設は採算性が見込めないとして拒否し、交渉は決裂した。

利権協定の期限は当初から決まっており、それに対して手を打ってこなかった後継首脳(天下り官僚)に対する批判がある。
  
アラビア石油破綻事件の深層  http://www2.tba.t-com.ne.jp/dappan/fujiwara/article/zaikai0104.htm

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サウジの利権協定終了後は、アラビア石油はクウェート政府との利権協定に基づきクウェート側の権益を代表するオペレーターとして、サウジ側の権益を代表する Aramco Gulf Operations との共同操業を行った。

並行して、2003年1月4日に終了するクウェート政府との利権協定以降の同国との新たな関係構築に向けて、同国政府と約2年間にわたり協議を重ねた。

1962年に制定された現行のクウェート憲法は外資への所有権付与を禁止しているため、アラビア石油は油田を直接所有するのではなく、操業権を維持する方向で交渉を進めたが、クウェート議会が操業権も憲法違反との解釈を示した。

この結果、油田で産出する原油と生産設備の所有権は2003年1月に失うが、クウェート政府から操業を受託する契約を結ぶこととなり、産出した原油の大半も同国から仕入れる形で日本へ輸入できることとなった。

2003年1月5日以降、カフジ操業はKuwait Gulf Oil と Aramco Gulf Operations のカフジ共同石油操業機構による操業へ移行
     
  アラビア石油とクウェート側の契約 
  技術サービス契約(5年間、双方の合意により、さらに5年間の更新を重ねることが可能)
    Kuwait Gulf Oilへの人員派遣による広範な技術、操業管理業務の提供、教育訓練等の諸サービスに関する取り決め
     
  原油売買契約(2003年1月5日から20年間)
    最低日量10万バーレルのカフジ原油・フート原油あるいはクウェイト原油の売買
     
  融資契約
    Kuwait Gulf Oil の分割地帯沖合操業に要する投資資金の融資
     

アラビア石油は5年間で切れる同契約の更新に向け交渉を進めてきた。

しかしながら、操業経験を積んだクウェートは、人件費の高い約50人のアラビア石油社員を自国技術者に置き換えた方が得策と判断、今回の打ち切りとなった。

これで「日の丸油田」に幕が降りることとなった。

ーーー

アラビア石油と富士石油は2003年1月31日に、株式移転により完全親会社 AOCホールディングスを設立した。

アラビア石油では現在、中国南シナ海およびノルウェー領北海において石油の開発・生産事業を行っている。

  ・新華南石油開発株式会社(珠江口沖プロジェクト)

設立:1985年12月12日
出資:アラビア石油 83.7/富士石油 0.6%)

新南海石油開発(石油資源開発 82%出資)および日鉱珠江口石油開発(ジャパンエナジー95%出資)との共同事業により発見した陸豊13-1油田(権益30%)において、1993年10月より原油の生産を開始し、現在、日量11千バーレルの水準で生産を行っている。

  ・Norske AEDC AS (ノルウェー領北海プロジェクト)

設立:1988年3月28日
出資:アラビア石油 100%

1990年6月より原油の生産を開始したギダ油田(権益比率5%、オペレーターはTalisman)において、現在、日量14千バーレルの水準で生産を行っている。

このほか、エジプトのスエズ湾で2件の開発を行なっている。

  ・ノースウェスト・オクトーバー鉱区(100%権益)
     2006年9月に試掘に成功、開発計画をエジプト石油公社と協議中。

  ・サウス・ゼイト・ベイ鉱区
     2007年10月、スイスのALEXOILから90%の権益を取得することにつきエジプト政府承認取得
     試掘第1号井(陸上)掘削中

 


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  

2006年2月15日にスタートして、現在600回を超えた。

当初は訪問者も少なかったが、最近は平日は1,000人近くの人が訪問している。
休日は当初は100人程度であったが、最近は300人程度に増えている。

ブログ作成者用のアクセス分析資料から、まとめてみた。

当初はアクセス数のみで、2006年9月から訪問者数のデータが出るようになった。
(平均でアクセス数は1人当たり、1.6回)

過去4ヶ月でみると、約40%がトップページにアクセスしている。これは、いつも見てくれる人と思われる。
残りの多くは検索でこのブログにアクセスした人のようだ。

グラフ記載の通り、信越化学爆発事故、GE Plastics 売却、三菱化学火災事故などの記事へのアクセスが突出している。
なにかが発生した場合に、Google などで検索して調べる人が多いことが分かる。

掲示板サイトの「2ちゃんねる」の威力にも驚いた。
本年12月23日の日曜日に 
2007/5/30の記事「キャノン SEDテレビ発売再延期」に 102人ものアクセスがあった。

調べてみると、12月22日に「2ちゃんねる」に
  【経済】BDレコーダー売り切れ状態。年末商戦に「大異変」[12/22]
   
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1198343015/
というテーマで議論がなされ、この記事のアドレスが記載されていた。
これをみてアクセスした人がこんなにいたということである。

どのプロバイダを通じて見ているかのデータもある。
会社のパソコンで見る場合は会社名が出る。
しかし、全く出てこない会社が多い。
多くの会社でインターネットへのアクセスを禁止しているためだ。
これらの会社の人は自宅で見てくれていると思われる。

 

ダウの会長兼CEOのAndrew N. Liveris は12月20日上海で会見し、同社が今後10年間に中国に50億ドルを投資すると語った。
現在、同社は
中国の国有石炭最大手・神華集団との間で、陜西省楡林市で石炭からオレフィンを生産する大計画のFSを共同で実施しているが、この分は上記の50億ドルには含まれない。

ダウと神華集団は2004年10月にワールドスケールのCoal-to-Chemicals コンプレックス建設のFS実施の契約を締結したが、2007年5月に詳細FS 実施の Cooperation agreement を締結した。検討に2年かかるとみている。

石炭からメタノールを生産、更にそれからエチレンとプロピレンを生産する。電解設備も建設し、苛性ソーダ、VCMや有機塩素類を生産する。計画にはグリコール、アミン、溶剤、界面活性剤、アクリル酸と同誘導品、プロピレン誘導品などが含まれている。

これも50億ドル程度といわれており、これが実施されると、ダウは中国に今後、100億ドル程度を投資することとなる。

ダウはこれまでに中国に5億ドルを投資済みで、これに加え、上海のダウセンター、江蘇省張家港市の世界最大級の10万トンの液体エポキシ樹脂工場、これの原料用の上海のグリセリンからのエピクロルヒドリン工場などに更に4億ドルの投資を行なっている。.

2006/8/23 中国でのダウの活動  

Liveris 会長は、中国はダウのグローバル戦略の中心であり、この役割は今後も増大すると述べ、成長する中国の石油化学分野でのダウの存在感を更に強めるとした。

 

中国政府はシノペックとクウェート石油との50億ドルの石油精製・石油精製計画の詳細FS実施を承認したばかり。

広東省南沙に建設するもので、製油所能力は年12百万トン、エチレンは100万トンとされている。
当初、シェルやダウが参加すると見られたが、クウェート石油がシェルの参加を拒否した。

シノペックは広州の広州石油化学で計画していたエチレンの増設(+60万トン)計画を中止し、南沙計画完成後には広州の既存の20万トンエチレンを停止する。

Liveris 会長は中国の大きな石油精製・石油化学計画に参加することに関心があると述べた。
ダウが先日発表したグローバル石油化学JVの相手のPICは、クウェート石油の100%子会社。

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ダウは以前に中国側(シノペック、天津石化、天津市)との50/50JVで、天津での石油化学事業を計画した。

計画では渤海湾に面した化学工業区塘沽に2008年稼動予定でエチレン 80~90万トンのほか、PE、PVC、PO/SM、その他を生産する予定であったが、ダウがその後消極的となり、経済性が悪いので 2010年以降の稼動になるとしたが、最終的に撤退している。

2006年6月、シノペック天津分公司(支社)の年産100万トン規模のエチレンコンプレックスが天津浜海新区の大港石油化学基地で着工した。
  2006/7/3 
SINOPEC天津分公司の100万トンエチレン計画着工 

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* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  

2007年は石油化学業界にとって激動の年であった。

石油価格は2006年秋から急降下し、ドバイ原油は2006/8/8の72.30ドルの最高値から本年1月19日には48.85ドルまで下がったが、その後再度上昇に転じ、11月21日には90.30ドルと、1年弱で85%も上昇した。
ニューヨークのWTI原油は11月20日に
一時 99.29ドルと、100円間際まで上昇した。

米国のサブプライム問題で、資金が石油になだれ込んだのが主な理由である。

中国は相変わらず猛烈な勢いで石化を拡大している。
大規模コンプレックスが多数計画されており、既に過剰生産が懸念されるPVCや、三菱化学が操業開始して間もない中国のプラントを一時停止したPTAでも新設計画が相次いでいる。

中東でも、安いエタンを原料に、大規模計画が相次いでいる。
アラムコは本年5月、ダウとの合弁で世界最大級の化学品・合成樹脂のコンプレックス(ラスタヌラ総合計画)の建設・運営についての詳細覚書を締結した。アラムコと住友化学のJVのペトロラービグも第二期計画を検討している。

中東の主要石化会社の8社が参加して昨年設立されたGulf Petrochemicals and Chemicals Association は最近、中東のエチレン生産能力が現在の13百万トンから2012年に29百万トン以上になるとの予想を発表した。

SABICは昨年10月にHuntsmanから英国の石化子会社を買収し欧州事業を拡大したが、本年5月にはGE Plastics を買収し、高機能製品分野にも進出した。

クウェートのPICはダウとのJVで一躍世界の石化のトップメーカーとなる。親会社のクウェート石油は中国でSinopecとの合弁での石油精製・石油化学計画を進めている。

原料価格の高騰による採算悪化を背景に欧米各社は「選択と集中」を一層進めた。

ダウはデュポンに買収を持ちかける一方、石化事業では Asset light 戦略でJV方式による拡大を世界中で行なっている。
(サウジでアラムコと、タイでサイアムと、最近はリビア、ロシアとのJVを検討している)

同社は既存事業のJV化も進めており、既にクウェートのPICとEGの、Chevron Phillips Chemical SM/PSのJVを決めているが、12月にはPICとのPE、PP、PC、エチルアミン、エタノールアミンのJVを発表した。

多くの買収の噂が飛び交い、まさかと思われた話が次々と実現していった。

GEはGEプラスチックをSABICに売却した。
   
Huntsman は一旦、Basellへの身売りを決めたが、その後、Hexion に売却した。
   
Huntsman に断られたBasell はLyondell を買収した。
   
Akzo Nobel はICIを買収、ICIの塗料事業を残し、残りの接着剤とエレクトロニック材料事業Henkel に売却、かつてポリエチレン等で世界を風靡したICIはこれでバラバラになり、消滅した。
   

デュポンに買収を持ちかけ断られたダウ自身を、Kohlberg Kravis Roberts と中東諸国の投資家が出資して500億ドルで買収するという報道がなされ、関係したとされるダウの役員が2名解雇されるという問題まで発生した。

BASFも新しい買収を検討している。
同社のCFOは、「世界の最大の化学企業10社を合計してもマーケットシェアはたった
20%で、最も集約化の遅れた分野のひとつである。更なる集約が必要だ」としており、サブプライム問題による信用収縮で M&A が停滞している中、買収のため 100億ユーロの借入が可能であるとしている。
その後、同社のCEOも更なる集約の必要性を説き、BASF自体も買収されないほど大きいわけではないと述べた。また12月12日には「同社は資金面では強力で、どんな買収でも可能である」ともしている。

ブラジルでもペトロブラス、ブラスケムが連携する大規模な石化事業の再構築が行なわれている。

(詳細は 項目別索 から各社記事参照) 

ーーー

そのなかで日本のみが、この激動の蚊帳の外である。

2000年頃には小規模多数プラントの中での過当競争で採算が悪化し、「2004年問題」(ポリオレフィン関税引き下げ)の懸念もあって、各社とも「選択と集中」に踏み切った。

三菱化学の四日市エチレン閉鎖、塩ビ各社の撤退、ポリプロ業界の再編、三井・住友の統合などの動きが出た。昭和電工も石化事業方針を転換し、石油化学を「再構築事業」とし、提携・売却も視野に入れるとした。

しかし、その後の中国需要の急増が神風となり、日本の石化は儲かる事業となった。
中国向け輸出が増え、採算が向上した。その後の原油価格上昇に際しても需給逼迫により、国内価格の値上げが可能となった。
(それまでは過剰能力による過当競争で原料価格上昇分の転嫁は全く出来なかった。)

それまでの石化の採算悪化で各社ともハイテク材料分野に進出していたが、折からの薄型テレビなどのブームで、これらも利益を生むようになった。

銀行救済のために行なわれた金利引下げと、その結果起こった円安も採算に好影響を与えている。
(韓国の企業はウオン高に悲鳴を上げている。金利も日本と比べると非常に高い。 2006/12/9 
ウォン高 更に進む 
  

各社の業績は向上し、過去最高の利益となる会社が続出している。

この結果、「選択と集中」の動きは完全にとまった。
三井・住友の合併は取り止めとなり、塩ビ業界の更なる統合の動きもなくなった。昭和電工は「再構築事業」であった石油化学を「基盤事業(Cash Cow)」としている。

三菱ケミカルホールディングスの小林社長は最近のインタビューで、「中東にまで原料を求めるつもりはない。 --- 石油化学は中東、インド、中国などの台頭があるが、当社もアライアンスやリファイナリーを含めて対応していけば、まだやっていける」と述べている。

 

日本のエチレンセンターは京葉エチレンを入れて14あり、三菱化学四日市の停止以降は変わっていない。1センター当たりの平均能力は定修なしベースで573千トン。最高が三菱化学鹿島の2系列合計926千トンで、400~600千トン台が中心である。
ポリオレフィンも統合で会社数は減ったが、プラントは減っていない。
相変わらず、小規模多数工場体制が続いている。

世界中が激動しているなかで、日本の石化のみが、現在の高収益に満足して、昔の体制のままで止まっている。
雇用問題などから抜本的な改革をやりにくいという面もある。

(始まって2年弱の本ブログでも、日本の石化の「選択と集中」に関する新しい記事は全くない。)

ーーー

「ガラパゴス鎖国」という言葉がある。「パラダイス鎖国」という流行語を更に進めたものである。

シリコン・バレー在住のIT関係コンサルタントで子育て中の主婦でもある海部美知さんが、「Tech Mom from Silicon Valley」 というブログを書いている。http://d.hatena.ne.jp/michikaifu/ 

彼女が2005年7月28日から5回連続で書いた記事「パラダイス的新鎖国時代到来」が評判になり、いろいろな所で使われるようになった。
本年11月6日に日本経済新聞主催で行なわれたシンポジウム「
日本経済 過去・いま・未来」でも、今井賢一・スタンフォード大名誉教授と伊丹敬之・一橋大学教授がこの言葉を使っている。

携帯電話業界でTDMA、GSM、CDMAという3つの方式が乱立し泥仕合が数年続いたアメリカに対し、日本はドコモが独自方式のPDCを全国展開して、一気にデジタル化で先行した。
日本の端末メーカー各社は、アメリカ市場に見切りをつけ、日本市場に安住した。

今や、日本の大手メーカーはアメリカでの地位を失い、欧州でも苦戦、日本が自国の殻に閉じこもる一方、韓国のメーカーがめざましい躍進を遂げている。

儲かる日本に安住して閉じこもる状況を彼女は「パラダイス的新鎖国」と呼んだ。

最近はこの状況を、儲かる日本に安住して鎖国をした結果、進化が止まってしまったとして、進化のとまった生物が住むガラパゴス島から取ってガラパゴス鎖国」との言葉が広まった。

ーーー

日本の石化は海外に大量に輸出しており、その点では携帯電話業界とは異なる。

しかし、現在の「天国」状況に満足して、選択と集中、大規模化という世界の石化の流れから完全に切り離されたという意味では「パラダイス鎖国」状況であり、海外の大規模化、統合の動きに対して以前の小規模多数プラント体制を維持したままであることは、まさに進化の止まった「ガラパゴス鎖国」状況である。

ガラパゴス諸島は1978年にユネスコの世界遺産第1号に登録されたが、その後、1980年に4,000人であった観光客が2006年には14万8,000人に激増、大陸からの移民などで定住人口も 5倍以上になり、ゴミ処理や地下水汚染の問題が深刻化している。
ゴミ処分場から一日中立ち上がる煙が周囲の原生林まで広がり、固有種の鳥のダーウィンフィンチが残飯をあせり、外来植物の流入で固有種が危機に瀕している。
ガラパゴスは最早、「天国」ではなくなり、本年6月に「危機遺産」リストに掲載された。

 

「鎖国」を続けるうちに、日本を取り巻く状況も変わりつつある。

中国は来年、北京オリンピックを迎える。

これが終わると、中国バブルが破裂するとの見方は以前から主流であった。

筆者はその以前にバブルが破裂する可能性を述べてきた。
中国の人口は13億人だが、頼りとなる需要人口は沿岸部の3~4億人であることから、既に供給過剰状態になりつつあるとの見方からである。
実際にPVCでは輸出が増加しつつあり(政府の政策で一時減少している)、PTAでは日本企業もその影響を受けている。
SMは供給過剰でタンクが満杯になっており、韓国メーカーは操業を停止した。

それでも、中国は大国であり、地方政府や企業の思惑で、中央政府の方針に関係なく、どんどん新増設が行なわれている。

他方、サブプライム問題で米国の景気が低迷する見通しで、中国からの輸出の減少も予想される。
中国の補助金に対して、米国政府はWTOに提訴するとともに、相殺関税をかけるなど、圧力をかけている。

また、輸出による外貨増大にもかかわらず、人民元引き上げを防ぐため政府がドルを買い上げているため、インフレとなり、株式市場には余剰の資金が流入して株価が暴騰している。
(中国では少し前からバブル崩壊を予想し、日本のバブル崩壊時の対策の研究が行なわれている。)
中国政府は来年、金融引き締めを強化することを決めたが、人民元切り上げの可能性も出てきた。

公害がひどくなり、飲み水に影響が出て、政府が工場閉鎖も含めた対策を打ち出し始めた。

いろいろな問題を抱えながら、オリンピックを目指して突っ走っているという感じである。

国の威信をかけて行なうオリンピックが終わると、今度こそ、バブルがはじける可能性が強い。

 

中国のバブルがはじけると、その影響は大きい。
石化製品は世界的に大幅な供給過剰となる。中国向けに設備をつくっている韓国や台湾の影響は甚大である。
場合によっては中国の需要増を主因に上昇した原油価格も暴落する可能性もある。

日本にとっては、これに加えて、ドル安が更に進む結果、円高となる可能性もある。
(輸出採算が悪化し、輸入価格が低下する)

以前は「2004年問題」を懸念したが、ASEANとの経済連携協定で将来はこれらの国からの輸入品への関税そのものがなくなる。

日本の需要家の品質や輸送等のサービス面での要求が強いことから、石化製品が輸入品に代替される可能性は低いが、日本の石化にとっての「天国」の理由の中国需要、円安などの要因がなくなると、輸出減による需給アンバランスと国際市況の下落で値下げ競争が始まり、再び赤字に陥ることになりかねない。

石化のほかの収益源となってきたハイテク材料分野でも、最終製品の競争激化により、部分的には採算悪化も見られている。

日本の石化事業もガラパゴスのように「危機遺産」とならなけばよいが。

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本号でこのブログも丁度 600回となります。ご愛読ありがとうございます。
出来れば1000回を目指したいのですが、それまでに日本の石油化学の再生がなるでしょうか。

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* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  

12月21日(金)午前11時32分頃に、茨城県神栖市の三菱化学鹿島事業所第2エチレンプラントにおいて、火災事故が発生し、協力会社従業員4名が亡くなった。

1 発生日時  2007年12月21日(金) 午前11時32分頃
          (午後11 時13 分に鎮火)
2 発生場所  三菱化学社 鹿島事業所第2エチレンプラント内
          分解炉(2F-208)クエンチフィッティング元弁フランジ部

付記  同社中間報告資料(12月27日)から

Kashima_3 

事故の詳細は以下の通り。(同社発表)

第2エチレン製造設備では、原料ナフサを分解炉(管式)で熱分解し、水素、メタン、エチレン、プロピレン、ブタジェン、ベンゼン、重質燃料油等の分解ガスを生成する。
分解炉からの高温(840℃)の分解ガスは急冷熱交換器で一次冷却され、更に急冷油により約200℃まで直接冷却される。
漏洩は、このクエンチフィッティング(直接冷却)装置へ急冷油を送る配管のフランジ部で発生した。

当該分解炉(2F-208)は12/17から12/20まで灯油分解を行い、12/20 16:45 から12/21 03:10 までデコーキング(系内の炭素分の除去)を行なった。
その後、11:20から通常運転に復帰させるため、縁切弁(AOV)の仕切り板の抜き出し作業を行なっていた。
その作業の最中に何らかの原因で縁切弁が開いて、急冷油が漏洩し、何らかの原因で着火、火災に至った。

 

第2エチレンには分解炉が8つあり、事故のあった分解炉 2F-208 は2006年稼動の第8炉。能力は最大150千トンで、ナフサのほか、灯油や軽油、コンデンセート(天然ガス随伴原油)などが使用でき、価格が高騰しているナフサ以外の原料が20%まで対応可能とされる。事故前日まで灯油を使用していた。

三菱化学のエチレン能力は以下の通り。(2006/12/末時点 単位:千トン/年)

  定修あり 定修なし 全国比
(定修なし)
鹿島第1   375   410   5.1% 
鹿島第2   476   516   6.4%
(小計)  (851)  (926) ( 11.5%)
水島   450   496   6.2%
三菱合計 (1,301) (1,422)   17.7% 
全国 〔7,289〕 〔8,023〕  

*同社の四日市事業所のエチレンプラント(270千トン)は2001年1月12日に停止している。

三菱化学鹿島コンビナートは以下の構成で、多くの企業が多岐に亘る製品を製造している。
(能力の一部は若干古い数字   単位:千トン/年)

*1  日本ポリエチレン   日本ポリケム 50%/日本ポリオレフィン 42%/三菱商事プラスチック 8%
(日本ポリケム
2003/6三菱化学100% ← 三菱化学 50%/東燃化学 50%)
(日本ポリオレフィン:昭和電工 65%/新日本石油化学 35%)
*1-2 日本ポリプロ   日本ポリケム 65%/チッソ 35%
*2  鹿島塩ビモノマー   信越化学 50%/三菱化学 25%/旭硝子 10%/鐘淵化学 10%/旭電化 5%
  製品引取は信越化学・鐘淵化学(三菱化学*、旭硝子は権利放棄)
  *当初は三菱油化(製品引取なし)、三菱化成合併後に引き取り
*3 鹿島電解   旭硝子 25%/旭電化 23%/信越化学 13%/三菱化学 21%/鐘淵化学 8%
*4 鹿島ケミカル   旭硝子 39.375%/旭電化 39.375%/三菱化学 11.25%/三菱商事 10%
(← 当初 旭電化 50%/旭硝子 50%、後、ライオン、三菱化学、三菱商事参加、
その後、ライオン離脱)
*5 ユポ・コーポレーション   王子製紙 50%/三菱化学 50%(←王子油化合成紙=王子製紙/三菱油化)
*6 油化スケネクタディ   三菱化学 50%/米Schenectady 50%
*7 JSRクレイトンエラストマー   JSR 50%/Shell Japan 50%(←JSRシェルエラストマー)
*8 三井化学ポリウレタン   三井化学 100%
(←三井武田ケミカル:三井化学 51%/武田薬品 49%)

 

事故を受け、第2エチレンは操業を停止、第1エチレンのみ操業している。
上記の各社の製品の原料であるエチレン、プロピレン、B-B留分(C4)、ベンゼン、トルエンなどの56%がカットされることとなる。

三菱化学では当面は他社への供給を優先し、自社グループに基礎原料を送るのを止めた。
このため、日本ポリエチレン、日本ポリプロなどは生産を停止した。

三菱化学では同業他社に応援を要請している。また、鹿島の稼働率低下で不要になったナフサを他のコンビナートが引取る。

しかし、各社とも高水準の生産を行なっているため、余力に限界がある。

化学業界の生産・製品供給への影響は避けられない。

付記

三菱化学は12月25日、同日現在のプラント稼働状況を発表した。

【現時点で停止中のプラント】
(1)第2エチレンプラント
(2)第2ベンゼンプラント

3)ポリエチレン  A,B,C 全系停止 →12/26 一部運転を再開
(4)ポリプロピレン   B,C 全系停止 →12/26 一部運転を再開

【稼動調整中のプラント】
(1)酸化エチレン・エチレングリコール 60%稼動
(2)エチルベンゼン   60%稼動
(3)キュメン      60%稼動
(4)フェノール     60%稼動

 

付記ー2

同社は
12月27日、経済産業省 原子力安全・保安院および茨城県に対し、中間報告資料を提出した。

http://www.m-kagaku.co.jp/newsreleases/2007/20071228-2.html#tmp1 

参考

     同社中間報告資料(12月27日)から

付記  2008/1/9 三菱化学鹿島事業所 火災事故 その後

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ダノンとワハハは12月21日、共同声明を出した。

中国政府とフランス政府の期待に沿い、両社は対立を終え、和平交渉に戻ることで合意した。一時的に全ての訴訟と仲裁を中断し、攻撃的な声明を止め、和平交渉のための友好的雰囲気を作る。
両社は対等と互恵の原則に基づき交渉を行い、小異を捨てて共通の場を求め、相互理解を行い、解決成功に向け努力する。ワハハブランドの全ての事業を更に発展させ、中仏友好を進め、両国の企業間の相互協力を推進する。

1126日、北京を訪問中のSarkozy大統領は胡錦濤国家主席との会談で、Wahaha Schneider問題を取りあげた。
大統領はこれらの問題が両国の支援の下で友好的に解決されることを希望すると述べ、胡錦濤主席も異論を唱えなかったという。

  2007/11/30 ダノンとワハハのその後 

12月10日、杭州調停委員会は決定を下した。
Wahaha ブランドをJVに移管する契約は終了しているというもので、また、Wahaha Group に商標移管契約を守れというDanone の要求は時効であるともした。

これを受けてか、ダノン側は12月14日、「もしワハハ側が再統一のための具体的な行動を示すなら、ダノン側は法的行為を中断する考えがある」との声明を出している。

また、ワハハ側はダノンが中国の他の食品関連企業と提携し、合弁事業の利益を損なっていると批判してきたが、ダノンは10月に中国乳業大手、光明乳業との資本・技術提携の解消を発表したのに続き、12月に入り、同じく乳業大手の中国蒙牛乳業との中国での乳製品分野での合弁事業を解消すると発表した。

 

参考

12月9日のNHKスペシャルでこの問題が取り上げられたが、この再放送が下記の通り行なわれる。

 2007年12月27日(木) 深夜【金曜午前】1時00分~1時49分 総合
   激流中国「訴えられたカリスマ経営者~追跡・ブランド騒動~」

 

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Solvay 12月14日、子会社のSolvay Indupa がブラジルのSanto Andre工場の拡張を行なうと発表した。
135百万ドルを投じるもので、ビニルチェーンの拡大とともに、サトウキビ原料のエタノールからのエチレン製造プラントを含んでいる。

バイオエチレンの能力は6万トン。
ブラジルではダウがサトウキビ原料のエチレンでLDPE、
BraskemHDPEの製造を検討しているが、バイオエチレンによるPVCの製造は世界で初めて。
    
2007/7/27  Dow、ブラジルでサトウキビからLDPE製造 
    
2007/11/5  Braskem、サトウキビからHDPEを製造  

Santo Andre工場の既存能力は苛性ソーダ10万トン、VCMとPVCが各24万トンだが、増設後は苛性ソーダ23.5万トン、エチレンが6万トン、VCMとPVCが各36万トンとなる。

Solvay Indupaではまた、アルゼンチンのBahia Blanca 工場で165メガワットのコンバインドサイクル発電所(高温の燃焼ガスでガスタービンを回すとともに、その排ガスの熱で発生させた高温・高圧の蒸気により蒸気タービンも回して発電)の建設も検討している。アルゼンチンのエネルギー会社Albanesi S.A. とともに検討しているもので、建設費は135百万ドル、工場の全エネルギーを賄う。

Solvay Indupa Solvay 70.1%を出資し、本社をBuenos Aires に置く。
ブラジルの
Santo Andre工場とアルゼンチンのBahia Blanca 工場を有しており、後者の能力は苛性ソーダ18万トン、VCMとPVCが各21万トンとなっている。

Solvay Indupa ではこれらの投資を賄うため、130百万ドルの増資を考えている。

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Brazil Braskem 2007年4月16日、Venezuela 国営石化会社 Pequiven との間で、Venezuela Jose Petrochemical Complex2つのJVを設立することで合意したと発表した。Venezuela の豊富な天然ガスを利用するもの。

   2007/4/24 Braskem Venezuela 国営Pequiven、石化JV計画で合意 
    

ーーー

12月13日、カラカスでの両国大統領の会談の席で、Braskem Pequiven の2つの50/50合弁会社設立が発表された。

いずれも Jose Petrochemical Complex に建設するもので、第一は Prolipropileno del Sur, S.A. Propilsur
プロパン脱水素で、PP 45
トンを建設する。
投資額は9
億ドルの見込みで、2010年下半期のスタートを目指す。

第二はPolietilenos de America, S.A. Polimericaで、天然ガスを原料にエタンクラッカーを建設、エチレン130万トンと、HDPE、LDPE、LLDPEの3系列合計110万トンを生産する。
投資額は26億ドルで、2012年下半期スタートの予定。

所要資金の70%をプロジェクトファイナンスで、残り30%を両社が出資する。
財務アドバイザーが既に資金手当の準備を始めている。

 

 

 

 

 

 

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ダウは12月13日、クウェート国営石油の子会社 Petrochemical Industries Company (PIC) との間でグローバルな石化JV50/50)を設立すると発表した。
    2007/12/14 
速報 ダウとクウェートのPIC、グローバル石化JVを設立 

同社は116-7日に予定していた機関投資家向けの説明会を延期したため、買収するのか、JV設立か、買収されるのかとの憶測を呼んでいたが、本件が詰めの段階にきていたものと思われる。

同社は12月13日に機関投資家向けの説明会を開催した。
概要及び解説は以下の通り。

 

1)ダウの基本戦略

ダウの基本戦略は下図の通り、基礎化学品と機能性化学品のバランスが取れ、多角化し、上流から下流までの統合会社で、グローバルに活動し、生産性と信頼性が高い、技術優位の企業となることである。

Business BalanceBasic + Performance
Diverse Portfolio
Major Basics chains + Performance markets
Fully Integrated
Upstream + downstream
Global Reach & Geographic Balance
Customers in 175+ countries, operations in 37
Operational Excellence
Productivity and reliability
Technology Leadership
Process technology and product innovation

2)基礎部門の戦略

20063月、同社は原料価格変動の影響を受けやすい基礎部門をAsset light strategy(JV化)により進めることを明らかにした。

Liveris
会長は本戦略のメリットとして以下の点を挙げている。
 ・
低コスト原料へのアクセス
 ・
パートナーのローカルな力の利用
 ・
設備投資減
 ・
リスク低減

同社は従来から各地で多くのJVを設立しているが、本年になってから、更に勢いを強めている。
   
2007/10/5 Dow、JV白書を発表 

Asset light strategyは新しい事業をJVでやるだけでなく、従来のダウの事業を出してJVにすることも含んでいる。
これの最初が、今回のJV相手のPICとの
MEGlobalEG)、Equipolymers(PET)である。(後記)

本年1月に同社はPSとPPについて分社化を考えていることを明らかにした。

このうち、PSについては4月10日に、Chevron Phillips Chemical との間で北南米のSM/PSの50/50JV設立のMOUを締結したと発表した。
JV名は Americas Styrenics となった。ダウが出す予定であったブラジルのSMプラントは休止が決まったが、別途、事業撤退を決めたABSプラントをPS用にJVに出すこととなった。
   
2007/4/11  Dow、Chevron PhillipsSM/PSのJV設立 

今回のJVは当初考えていたPPだけではなくなった。

3)今回のJV

今回のWorld-Class Petrochemicals Company の範囲は以下の通りである。
  
PEPPPC、エチレンアミン、エタノールアミン、
  関連技術
  下記のオレフィンソース
    
Fort Saskatchewan, Canada (cracker)
    Bahia Blanca, Argentina (cracker)
    Tarragona, Spain (cracker and octene manufacturing facility)
  なお、ダウの他のクラッカーとはエチレン供給契約を結ぶ。

新会社の売上高は108億ドルで、Fortune 250 に入る。

また、既存のPICとのJVEQUATE / MEGlobal / Equipolymers と合わせると、
 ・売上高 140億ドル、
 ・14箇所の立地、従業員6,300名、
 ・PEPPPCPETの幅広いプラスチックを供給する世界最大のポリオレフィンメーカーで、
 ・世界最大のEO/EG/EG誘導品会社の
World-Class Competitive Petrochemical Giant となる。

なお、既存のダウのJVが新しいJVに含まれるかどうか、明らかでないが、アジアのJVについては含まないことが12月17日に明らかになった。

4)PICとの関係

歴史
 ・1995
 Union Carbide PIC Equate を設立
 ・
2001 ダウがUnion Carbide を買収、 Equateのパートナーになる
 ・その後、
Equate-2 建設開始
 ・
2004 EquipolymersMEGlobal 設立(ダウの事業を拠出)

既存JV概要

  EQUATE Petrochemical EQUATE 2 Equipolymers MEGlobal
Formed: 1995 (建設中) 2004 2004
Ownership: Union CarbideDow
   
45%→42.5%
PIC
45%→42.5%
Boubyan Petrochemical
10%→ 9%  
Al-Qurain Petrochemical
 0 6%
同左 Dow  50%
P
IC  50%
Dow 50%
PIC
  50%
Headquarters: Jleeb Al-Shyoukh, Kuwait         同左 Horgen, Switzerland Dubai, United Arab Emirates
Production
facilities:
Shuaiba, Kuwait 同左 Ottana, Italy and
Schkopau, Germany
Fort Saskatchewan and
Red Deer, Alberta, Canada
Capacities:
  (tons/year)
エチレン 650千トン→800千トン
LL/HDPE 450千トン→600千トン
EG     300千トン→400千トン

PP   100千トン→120千トン
PIC資産、Equateが製造受託) 

エチレン850千トン
PE 
300千トン
EG 
600千トン  
PET 485千トン EG 1,000千トン

5)ダウのPerformance分野

4つのメガトレンド(健康、エネルギー、インフラ・輸送、エレクトロニクス・通信)に対して、ダウの得意とする技術を利用して対応する。

Trend Human health Energy Infrastructure
& Transportation
Electronics &
Communication
Dow の狙う分野 Food Nutrition
Wellness
Alternative Energy
   solution
Energy efficiency
  solution
Construction
Water treatment
Transportation
Advanced materials
対応部門 Dow AgroScience
Dow Wolff Cellulosics
Specialty Plastics &

 Specialty Chemicals
Dow Building Solutions
Dow Hydrocarbons
Dow Epoxy
Dow Automotive
Dow Coating Solusions
Dow Water Solusions
Wire & Cables
Polyurethanes & PU Systems
Advanced Electronics Business
得意技術 Biotechnology
Water Soluble Materials
Advanced Packaging

  Materials
Crop Protection
Insulation
Applied Energy Efficiency
CO2 Management
Building Integrated

  Photovoltaics
Building Materials
Advanced Materials

  Science
Filter/Membrance

  Elements
High Throughput

  Formulation
    Capability
Optical Materials
PCB Materials
Advanced Materials Science
Interlayer Dielectircs

 

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