「no」と一致するもの

Haifa イスラエル北部でイスラエル軍とヒズボラの戦闘が激しくなっているが、イスラエル北部のハイファ(添付地図)にあるイスラエル唯一のエチレン・ポリオレフィンメーカーのCarmel Olefins が操業を停止した。プラントはヒズボラのカチューシャロケット攻撃を受けているハイファの湾岸地区にある。

操業停止命令はイスラエル軍の民間防衛軍から出された。防衛軍はまた、同社などに在庫を最低限にするよう指示している。

Carmel Olefins 1991年に、イスラエル政府が出資する石油精製会社 Oil Refineries Ltd.の所有するエチレン設備と、Israel Petrochemical Enterprises Ltd.(IPE)のポリエチレン設備を統合して両社の50/50JVとして設立された。IPEは持株会社となった。

同社の現在の能力は、エチレン 185千トン、LDPE 165千トン、PP 205千トンで、他にコンパウンドを生産している。

2004年に同社と両株主とは同社の250百万ドルの増強計画を承認した。
内容は以下の通り。
・クラッカー増強によりエチレン能力を240千トンにアップ
・新しく
Olefins Conversion Unit を設置し、プロピレン150千トンを生産
・PPを1系列新設し、能力を倍増

 

なお、イスラエルには他に石化関係で次ぎの会社がある。

Dor Chemicals
 石油化学事業部ではメタノール、MTBE、フォルムアルデヒドその他を生産
 子会社
The Treofan Group OPPフィルム,CPPフィルムなどを生産
   Dor 51%/Bain Capital 49% のJVで、ドイツに本拠を置き、世界20カ国以上に拠点

Electrochemical Industries (1952) Ltd
 電解、EDC、VCM、PVCの一貫製造会社
 2005年1月にイスラエル環境省が環境問題でPVCを無期限停止とした。(その後不明)

Gadiv Petrochemical Industries Ltd.
 Oil Refineries Ltd. の100%子会社で、芳香族、脂肪族の溶剤、無水フタル酸、その他を生産

2006/6/21「石炭液化事業」及び 2006/6/23 「中国の石炭化学」で多数のプロジェクトを紹介した。

中国は「第11次五カ年計画」期に炭鉱の機械化生産を全面的に推し進めることとしており、豊富な石炭を原料に石炭化学を推進する。

中国石炭工業協会の範維唐会長は200511中国は2010年には、石炭のオイルへの転化、石炭ガス化を含めた石炭転化製品の生産高500万トンの実現を目指していることを明らかにした。

しかし、中国政府は多数のプロジェクトの乱立で過剰能力となることなどを懸念し、規制を行うことを決めた。

国家発展改革委員会(NDRC)は7日通達を出し、年間300万トン未満の石炭液化計画、年間100万トン未満の石炭からのメタノール又はDMT生産計画、年間60万トン未満の石炭からのオレフィン生産計画を承認しないとしている。

メタノール計画の規制は過剰能力を恐れてのことである。
中国のメタノールの生産能力は2005年末で536万トンとなったが、建設中のものは900万トン、計画中のものは1000万トンに達するとみられており、NDRCでは市場がまだ未成熟のため、これらが完成すると過剰能力になるのは必至とみている。

メタノール計画には石炭原料のもののほか、従来法の天然ガスを原料としたものも多い。

三菱ガス化学は重慶市に現地の重慶化医との合弁(51/49)で 85万トンのメタノールプラントを建設中。同社は伊藤忠とのJVで南京市にLingtian (Nanjing) Fine Chemical を設立し(三菱ガス化学 85.1%)、ジメチルアミン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどメタノール誘導品を生産する。

また中国海洋石油(CNOOC)は海南島で60万トンのメタノールをスタートさせたが、113万トンの第二期計画を検討中。

NRDCでは又、石炭液化計画については技術が未完成であるため、国としての開発計画が完成するまでは認めないとしており、石炭化学については環境基準を満たすのが条件としている。

但し、政府は石炭ベースの化学肥料生産は推奨しており、古い石炭化学であるカーバイドやコークスは規制するが、石炭液化や石油代替については着実に発展させるべきとしている。
ーーー

石炭液化計画については2006/6/21「石炭液化事業記載の国営石炭会社・神華集団の寧夏回族自治区の子会社がこのたび、シェル及びサソールとそれぞれ提携を決めた。

Shenhua Ningxia Coal Industry Companyは11日、Shell Gas & Power Development BVとの間で石炭液化事業の共同研究契約を締結した。
Shellの間接液化技術を使用、50-60億ドルを投じて2009年までに工場を建設、2012年までに年間300万トン(7万バレル/日)のオイルを生産する。
原油価格が25-27ドル/バレル以上であれば採算が取れるとしている。

もう一つはサソールとの提携で、神華は先月、寧夏での8万バレル/日の石炭液化プラント建設の共同開発契約に調印した。上記シェルとの計画とほぼ同時期の完成を目指している。

これらとは別に神華集団は2004年8月、内蒙古自治区鄂爾多斯(オルドス)市で世界最大規模の神華石炭液化プロジェクトに着工した。
こちらは直接液化法で、来年末にもスタートする予定。

 

 

イランの石油化学はBandar Imam のPetrochemical Special Economic Zone と Assaluyeh のPars Special Economic Zone を中心に展開されている。
(現状は 
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/ichiran/iran/index.html 参照) 

National Petrochemical Company (NPC) は2004年に、西部地方の経済発展を図るという政府の方針の下で、両Special Economic Zone から総延長2,285kmのエチレンパイプラインを西部国境沿いに建設した。年間280万トンのエチレンを北部に輸送、現在沿線の10箇所で石化プラントを建設しており、更に5箇所を検討中である。

立地 社名 製品
Mahabad Mahabad Petrochemical LLDPE/HDPE 300,000t/yButene-1 30,000t/y
Miyandoab Miyandoab Petrochemical Co. PVC 300,000t/y、苛性ソーダ190,000t/y
Sanandaj Kordestan Petrochemical LDPE 300,000t/y
Hamedan Hamedan Petrochemical Co. VAM 140,000 t/y、EVA 45,000 t/y
Kermanshah Kermanshah Polymer Company HDPE 300,000t/y
Khoramabad Lorestan Petrochemical LLDPE/HDPE 300,000t/yButene-1 30,000t/y
Andimeshk Andimeshk Petrochemical Co HDPE 300,000 t/y
Chaharmahal-va-Bakhtiyari Charmahal-va-Bakhtiari Petrochemical Co lldPE/hdPE  300,000 t/y
Dehdashtt Dehdasht Petrochemical Co. HDPE 250,000 t/y
Gachsaran Gachsaran Petrochemical EG/EO

検討中:Dehdasht, Andimeshk, Hamedan and Miandoab.

Iranmap2

これに加えて、NPCでは最近、東北部と東部に2本のガスパイプライン建設を検討していることを明らかにした。

一つはAssauyeh から東北部の Khorasan 州へガスを輸送するパイプラインで、沿線に Gas-to-Liquids (GTL) や肥料等を含むいくつかの石化プラントを建設する。

もう一つは東部のSistan and Baluchestan 州にある港市のチャーバハル(Chabahar)へのパイプラインである。チャーバハルはオマーン海に面した自由貿易港で、アジアに最も近い場所にある。現在、2008年の新しい国際ターミナル完成を目指して港の大拡張を行っている。

NPCではここで大規模な一連の投資を行う構想をたてている。

 

アラムコは7月10日、サウジ東部のラスタヌラで計画している世界規模の石化・プラスチック・コンプレックスのパートナー候補にダウを選定し、独占的に交渉すると発表した。

世界最大規模のアラムコのラスタヌラ製油所と一体化して建設するもので、完成すれば世界最大級のプラスチックと化学品のコンプレックスになるとしている。

計画の詳細は明らかにされていないが、一部報道によれば120万トンのエチレン、40万トンのプロピレン
、40万トンのベンゼン、46万トンのパラキシレンのほか、ベンゼン、パラキシレン、アクリロニトリル、ABS、SBR、PTA などを生産するとされる。(135万トンのエチレン、90万トンのプロピレン、100万トンの芳香族とする報道もある。)

 

サウジアラムコでは製油所と統合した3つの石油化学計画の構想をもっている。Saudimap

第1はラービグで、住友化学とのJVのペトロラービグを設立した。既存製油所をJVに移管し、石油精製2次処理設備を新設しガソリンを新たに生産するとともに、エタンクラッカーと流動接触分解装置(FCC)、さらにポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィンを中心とするエチレンやプロピレンの誘導品の生産プラントを新設する。
2006/3/25 「ペトロラービグ起工式 参照

第2が本件のラスタヌラ計画で、ラスタヌラの55万バレル/日の製油所に統合した石油化学基地の建設である。
ここでは2004年にJETROがアラムコと組んで、ブタン、ナフサおよび改質ガソリンを原料として、
(1)ベンゼンを抽出することによる既設ガソリンの品質改善および新規に生産されるアルキレートによるオクタン価の向上
(2) 輸出向け石油化学中間製品、エチルベンゼン、クメンおよびターシャルブチルアルコールの生産
の計画の事前FSを実施している。

今回の計画は、エタン分解に加え中東で初のナフサ分解を実施するものである。これによりプロピレン、ブタジェン、芳香族を原料とした各種製品が生産可能となる。2012年の商業生産開始を狙っている。

第3は現在検討中の
Yanbu Petrochemical Master Planである。235千バレル/日のヤンブーの製油所にオレフィン・芳香族コンプレックスを建設するものである。
こちらもラスタヌラと同様にエタンに加えナフサ分解を行う。2014年スタートを仮の目標としている。

 

現在のサウジの既存の石油化学はほとんどがエタンベースであり、PE、MEG、SM等の汎用のエチレン系製品が中心である。
(ラービグ計画ではFCCからのプロピレンでPP、POを生産する)

アラムコでは現在輸出しているナフサを原料として利用することで、プロピレン、ブタジェン、芳香族、及びこれらを原料にした各種製品を生産し、サウジに輸出用の川下産業を興すことを考えている。有利なコストポジションを利用し、高付加価値製品の生産により経済の多様化、雇用機会の増加を目標とするとしている。

サウジのナフサは日本や韓国に輸出されているが、将来はナフサの輸出がなくなる可能性がある。
(サウジのナフサは日本のナフサ輸入の約16%、国産を含めた総供給の約9%を占める)
 

今回のラスタヌラ計画ではパートナー候補にダウが選ばれた。
アラムコはラービグ計画のパートナーとして住友化学、SABIC、ダウの3社と交渉し、最終的に住友化学を選んだ経緯がある。

ダウはSABICの石油化学創設時にSABICとの合弁ペトロケミアを設立し、同じくSABICと日本側の合弁SHARQとの間でエチレン及びEGプラントの共同所有・共同生産契約を締結したが、1982年に突如撤退し、その結果ペトロケミアがSABIC100%となった経緯がある。
2006/4/1 SHARQ (Eastern Petrochemical) の歴史 参照

同社はその後サウジでは活動をしていないが、クウェートでは国営Petrochemical Industries CompanyPIC)と組み、現在第2期計画を遂行している。ダウは更に2004年にPICとの間で、MEG、DEGの製造販売、PET樹脂の製造販売とPTAの製造の2つの海外JV(いずれも50/50)を設立している。
2006/5/31 湾岸諸国の石油化学ー1 クウェート&バーレーン参照

原油価格が急上昇している。Oil_1

NY原油は5日に一時1バレル75.40ドルとなり、4月21日の75.35ドルを超え最高値をつけたが、7日には一時75.78ドル、13日には一時 76.40ドルをつけ、夜の時間外では78.40ドルとなった。イスラエルのレバノン侵攻など中東情勢緊迫で供給不安が広がったのを理由としている。

これを受けて東京市場のドバイ原油も13日1バレル69.90ドル、14日72.00ドルと2日連続で最高値を更新した。

東京市場ナフサ・オープンスペックも13日トン当たり666ドル14日 691ドルとなった。Naphtha_1

石油会社、石油化学会社は製品値上げを打ち上げているが、追いつかない状態である。



因みに今の原油価格72ドル/バレルを115円のレートで換算すると52千円/klとなり、石油ショック時の最高値に近い。
当時は円レートが250円に近かったため円建てでは高かったが、ドル建て価格は現在の半分程度であった。
(グラフは年平均、nowは72ドル/バレル、115円/ドル)

なお2005年平均では51.15ドル/バレル、35,435円/klであった。Oilprice_1

7月4日、南米南部共同市場メルコスル(MERCOSUR [Mercado Comun del Sur])加盟国4ヶ国とベネズエラはベネズエラの加盟を認める議定書に調印した。

ベネズエラ加盟により、人口2億5千万人、GDP1兆ドルの巨大経済ブロックが誕生する。Samerica

メルコスールは1995年1月1日に関税同盟として発足した。
正式加盟国はアルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイで、ベネズエラは2005年12月に正式加盟手続きを行った。
準加盟国はチリ、ボリビア、ペルー、エクアドル、コロンビア。

主な内容は
(1)域内関税の原則撤廃 1995年1月より域内関税は原則として撤廃
(2)対外共通関税の適用


なお、南米には共同市場形成を目指したアンデス共同体(Andean Community)がある。
1996年創立で、加盟国はボリビア、コロンビア、エクアドル、ペルー
ベネズエラはメンバーであったが、2006年4月に、ペルーとコロンビアの対米自由貿易協定前進により、関税撤廃等による域内の統合を目していたアンデス共同体の今後の発展の可能性が阻害されたとして脱退を表明した。
準加盟国はアルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、オブザーバー国はメキシコ、パナマ、チリ。
域内人口は約9,600万人、域内GDP合計は約2,048億米ドル。

SINOPECの2005年の決算と2004年の決算を比較すると大きな変化がある。Sinopec1

同社は原油・天然ガス探査・採掘、石油精製、石油製品の販売、石油化学の4部門を持ち、石油・天然ガス探査・採掘では中国で2位、石油精製及び石油化学では中国第1位である。
2005年の決算は原油価格高騰の影響で増収増益となっている。

しかし、部門的には前年と比べ大きな変化がある。
原油・天然ガス探査・採掘部門は大幅増益となっているのに対して、精製部門は赤字となっており、石化部門も前年は大きく伸びたのに対して減益となっている。Sinopec2

中国では政府が石油製品の価格の統制を行っており、精製部門は原油高を製品価格に一部しか転嫁できず、赤字となった。SINOPECの場合、精製部門は製品の内外価格差の補填として政府から9,415百万人民元もの補助金を受けたが、それでも3,505百万人民元の赤字となった。

石油化学部門も原料価格をフルに転嫁できず、減益となっている。

この傾向はペトロチャイナでも同様で、探査・生産部門が6割の営業損益アップになったのに対して、精製部門は前年の119億人民元黒字から199億人民元の赤字となり、石化部門の営業損益も57%の減益となっている。

ーーー

原油価格高騰を受け、中国石油天然気(ペトロチャイナ)、SINOPECや中国海洋石油(CNOOC)が空前の高収益を上げているのに対して、国内産業は原料・燃料価格の高騰で収益を圧迫されている。

このため、中国政府は本年3月26日から、石油採掘企業に対して特別収益金(Windfall-tax)を徴収することを決めた。一般には暴利税と呼ばれている。

原油価格が40ドル/バーレルを超える国産原油を販売する場合に超えた部分について20-40%の税金を課すもので、以下の算式で課せられる。

{(加重平均販売価格-40) 下記比率-下記控除額} 販売数量

原油価格(US$/bbl) 40~45 45~50 50~55 55~60 60以上
比率  20%  25%  30%  35%  40%
控除額(US$)   0  0.25  0.75  1.50  2.50

新聞報道ではペトロチャイナ、SINOPEC、中国海洋石油の3社からの特別収益金は年間で300億人民元に上ると見られている。

これとは別に、国家発展改革委員会は本年3月と5月の2回、ガソリンと軽油の卸売価格の引き上げを行った。石油製品の内外価格差の是正が目的で、段階的に自由化を進める方針といわれている。

なお、特別収益金は国庫に納められ、上記値上げにより打撃を受ける業界に対して補助金などの形で配分されるといわれている。

 

ペトロチャイナとSINOPECは特別収益金徴収で探査・生産部門の利益は減るが、石油製品価格値上げで精製部門の採算は好転する。一方、CNOOCは探査・生産部門のみのため採算は悪化する。

随分昔にポリプロ価格カルテル事件があった。

5年前の2001年5月30日に公正取引委員会が、当時の出光石油化学、住友化学、サンアロマー、トクヤマ、日本ポリケム、グランドポリマー及びチッソの7社に対して「排除勧告」を行った。

これに対して出光石油化学、住友化学、サンアロマー、トクヤマの4社は応諾せず、審判が開始された。

応諾した3社に対しては以下の課徴金納付命令が出された。

事業者名 課徴金額
日本ポリケム  8億4517万円
三井化学
(グランドポリマーを吸収合併)
 7億6008万円
チッソ  4億3513万円
合 計 20億4038万円

まぎらわしい行為があったことも事実であるとして勧告を受諾した三井化学はこれを受諾し課徴金を納付したが、日本ポリケムとチッソはこの課徴金納付命令に対して審判手続き開始を請求した。

なお本件は三井と住友のポリオレフィン事業統合(三井住友ポリオレフィン:後、解散)と、日本ポリケムとチッソのPP事業統合(日本ポリプロ)の公取委審査で、「PP分野におけるメーカーの協調的行動」があるとして問題視され、両グループともに、業界団体会合への出席禁止や制限で独禁法遵守体制を更に徹底すると約束して承認を受けている。
また石油化学工業協会ではこれを機に、ポリプロ委員会など協会内の各種委員会を廃止した。

ーーー

本件はとっくの昔に決着していると思ったが、調べてみると、まだ延々と審判を続けていた。次回の審判予定は以下の通り。

出光興産、住友化学、サンアロマー、トクヤマ 8月4日(第28回)
日本ポリプロ、チッソ 9月4日(第18回)

 * トクヤマはPP事業を出光興産に譲渡したが、会社としては当事者で残る。
 * 日本ポリケムはチッソのPPと統合して日本ポリプロとなった。
  チッソはPPは分離統合して日本ポリプロとなったが、会社としては当事者で残る。

一体なにを延々と議論しているのであろうか。5年前の詳細を誰も覚えていないのではないだろうか。
どう決着させるのだろうか。

本年の独禁法改正で手続きが変わったが、本件は従来手続きで処理される。
4社の場合は審決が出てから課徴金の納付命令となり、場合によればこれについての審判もありうることとなる。
2社の場合は審判手続き開始により、2社に対する課徴金納付命令は失効となり、後に審判で納付命令が確定しても金利を払う必要はない。

裁判に関しては2003年7月に「裁判の迅速化に関する法律」が成立、公布・施行されている。
「第一審の訴訟手続については二年以内のできるだけ短い期間内にこれを終局させ、その他の裁判所における手続についてもそれぞれの手続に応じてできるだけ短い期間内にこれを終局させることを目標」とするものである。

裁判の第一審に当たる審判がこんなに時間がかかるのは問題である。

 

なお、MBSに関する審判も続いている。

2003年11月に公取委はカネカと三菱レイヨンに対して排除勧告を出したが、両社は応諾せず、2004年2月、審判に入った。

クレハも関与したとされたが、同社は2003年1月に事業をローム・アンド・ハースに譲渡していたため、勧告からは除外された。しかし、過去の違反行為に対して2005年7月に2億6849万円の課徴金納付命令が出された。
クレハはこれに応諾せず、審判に入っている。

次回のカネカと三菱レイヨンに対する審判(第11回)、クレハに対する審判(第4回)はいずれも8月4日に行われる。

ーーー

因みに独禁法改正により、手続きは下記の通り変更された。「勧告制度」はなくなる。Ftckaisei

公取委の事前の通知に対して当事者は意見申述・証拠提出機会を与えられ、その後に命令が出されることとなる。これに応諾しない場合に審判手続きが開始される。審判で実体判断をするというのではなくて,原処分が適正かどうか,維持すべきかどうかを判断する審決ということになる。
課徴金納付命令に対する審判の場合は審判手続が開始された場合であっても失効しないこととなった。(確定すれば金利の支払いが必要)

これに加えて悪質かつ重大な事案についてより積極的に刑事告発を行うために,犯則調査権限が導入された。

Ftchansokuchosa

 

BASFの中国戦略-2 - 化学業界の話題

昨日の記事のアップ後、BASFはBASF-YPC Company の5億ドルの増強計画でSINOPECと合意したと発表した。

計画は以下の通りで2008年稼動予定。
1.エチレン能力は60万トンから75万トンに増強
2.エチレンオキサイドを増強し、洗剤用非イオン界面活性剤、溶剤ブチルグリコールエーテルを生産
3.ブタジェン、イソブテン、2プロピルヘプタノール(新世代可塑剤)、ポリイソブテン誘導品(燃料、潤滑油助剤)等のC4系製品
4.高吸水性樹脂生産

両社はまた、南京で隣接する両社の第二のJVの揚子BASFスチレン(Yangzi-BASF Styrenics )をBASF-YPCに統合することでも合意した。

BASF-YPC Company の現状能力は以下の通り。

製品 能力
 千トン
エチレン   600
エチレングリコール   300
LDPE   400
アクリル酸   160
アクリル酸エステル   215
C4オキソアルコール   250
蟻酸    50
プロピオン酸    30
メチルアミン    30
ジメチルホルムアミド(DMF)    40

BASF-YPC Company、Yangzi-BASF Styrenics はSINOPECの揚子石化に隣接している。Ypc_2

BASFの中国戦略 - 化学業界の話題

JETROの最新レポートに「欧州企業の中国戦略 2006年5月」がある。

多くの欧州企業が中国に進出し、地歩を築いている。JETROでは、中国に進出する日本企業にとっての参考とすべく、先行事例である欧州企業の中国における事業展開について、(1)中国事業の位置づけと規模、(2)中国における販売・マーケティング、(3)中国におけるR&D、(4)人材育成(現地化)戦略、(5)知的財産権など経営上の問題についての対処、などについての調査を実施した。
調査対象企業は、電気・電子、消費財、化学・医薬品、金融・保険、物流・流通などの分野の主要欧州企業12社である。
詳細はレポート参照 
http://www.jetro.go.jp/mail/u/l?p=YyktIcDBqxIZ 

化学・医薬品ではアクゾ・ノーベルとBASFの報告が載っている。
これを元に、BASFの中国戦略をまとめた。

BASFの2004年の売上全体に占めるアジア・太平洋地域(アフリカ含む)の比率は約16.8%(63億2千万ユーロ)だが、中国を牽引力とするこの地域の経済成長を基盤として、同社では2010年までに化学事業全体の売上及び営業利益に占める同地域のシェア20%達成を目指している。2004年の同地域への投資額は5億6300万ユーロで、全体の27.6%を占める。

BASFは事業戦略上、中国市場を香港、台湾も含めたグレーター中国として捉えている。
主力事業はポリマー分散、スチレン、ポリスチレン、ポリウレタン、エンジニアリング用プラスチック、コーティング剤、織物・皮革仕上げ剤、中間体、ビタミン、農薬などである。完全子会社14社、合弁会社9社を持ち、従業員数は4,000人を超える。
1996年以来、売上高は年率平均20%以上で伸び、2004年の売上高は約19億ユーロであった。

BASFは2010年までの達成を目指した中国戦略目標を次ぎの通りとしている。
・全社化学事業における中国シェアを10%に拡大
 (アジア・太平洋地域のシェア20%)
・主力製品市場で上位を確保
・現地売上高に占める現地生産シェア70%を達成
・業界で最高の企業チームを作る

同社は中国が今後数年間は基礎化学製品中心の市場にとどまるが、特殊化学製品の市場としても迅速に発展すると予測、特殊化学製品の生産能力拡大を進めている。また急拡大する需要に対応するため、南京化学コンビナートの拡充に投資する計画。

同社のグレーター中国における主な子会社、合弁会社は以下の通り。

完全子会社

BASF Auxiliary Chemicals Co. Ltd. (BACC)
  1994年JVとして設立、2000年完全子会社化
  産業用コーティング、プラスチック、染料、印刷用インク、皮革・織物用助剤に使われる染料、
  織物・皮革用助剤、アクリル系分散剤、共重合体を生産。

BASF Chemicals Co. Ltd. (BACH)
  2002年設立
  上海の化学産業パークにポリテトラヒドロフラン(Poly THF)とテトラヒドロフラン(THF)の統合生産施設として設立。
  年間生産量はPoly THFが6万トン、THFが8万トン。2005年操業開始。

BASF Polyurethanes (China) Co. Ltd. (BAPC)
  1998年設立
  南沙(広東省)にポリウレタンの生産拠点として設立。年間生産能カは3万トン。

BASF Polyurethanes(Taiwan) Co. Ltd. (BAPT)
  1988年設立
  Hsinchu(台湾)にポリウレタン生産拠点として設立。年間生産能カは1万1千トン。

合弁会社

BASF-YPC Co. Ltd.
  2000年設立
  SINOPECとの合弁会社(出資比率 50/50)
  2001年9月末、南京のコンビナート建設に着工、2005年6月稼動開始。総投資額は29億ドル。
 
 エチレン 600千トン、EG 300千トン、LDPE 400千トン、アクリル酸 160千トンほか

・上海イソシアネートコンプレックス
  上海化学産業パークにイソシアネートの統合生産拠点として設立。

 ①Shanghai Lianheng Isocyanate Co., Ltd.
  
BASF、ハンツマン、上海クロールアルカリ、上海華誼公司、SINOPEC上海高橋石化のJV
  
アニリン 160千トン、ニトロベンゼン 240千トン、MDI 240千トン

 ②Shanghai BASF Polyurethane Co., Ltd.
  BASF、上海華誼公司SINOPEC上海高橋石化のJV
  
硝酸 245千トン、DNT 150千トン、TDI 160千トン

 (③Huntsman Polyurethanes Shanghai Ltd.
  ハンツマンと上海クロールアルカリのJV
  MDI
精製

Yangzi-BASF Styrenics Co. Ltd. (YBS)
  1994年設立、
BASF-YPCに隣接
  揚子石油化工(YP)との合弁(BASF60%/YP40%)
  SM、PS、EPS

Shanghai Gaoquiao BASF Dispersions Co., Ltd. (SGBD)
  1988年設立
  上海高橋石化公司との合弁(50/50)
  コーティング加工紙やカーペット用の
スチレンブタジェン分散剤を生産
  2005年初に増設し、21万トン

BASF Shanghai Coatings Co. Ltd. (BSC)
  1995年設立
  Shanghai Coatings Co.Ltd.との合弁(BASF 60%)
  主として自動車装備に使われるコーティング剤の生産
  年間生産能カは17千トン

BASF JCIC Neopentylglycol Co. Ltd. (BJNC)
  1995年設立、立地:吉林
  Jilin Chemical Inustry Ltd.との合弁(BASF60%)
  パウダーコーティング剤、不飽和ポリエステル、可塑剤、薬品の原料Neopentylglycolの生産

BASF Vitamins Co., Ltd. (BVC)
  1995年設立、立地:瀋陽
  東北制薬集団有限責任公司との合弁(BASFシェア 2002年に70%から98%にアップ)
  各種ビタミン、ビタミン混合、非ビタミン飼料添加物、基礎混合物を生産

BASF Tai Ching Crop Protection Chemicals Corp. (BTCC)
  2002年設立
  台湾糖業公司との合弁(BASF 55/TSC 45)
  農薬の生産

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なお、同じくJETROの5月のレポートに「米国企業の対中国経営戦略 ~日系企業の飛躍に向けて~ 2006年5月」がある。

JETROは、米国、中国、日本でのインタビューや文献調査などを通じ、米国企業の中国拠点運営を検証した。調査項目としては、人事制度(求人市場・求人広告の状況、トップマネジメント・シニアマネジメント・新卒者の採用・登用、中国人帰国者・香港・台湾出身者の採用・登用、報酬、インセンティブ制度、離職率など)、販売・マーケティング戦略(製品開発、マーケティング・広告・PRなど)、流通経路、R&D(実施状況、人事政策など)を取り上げた。また、インテル、モトローラ、マイクロソフトなどのケースを紹介、モンタビスタ、パームソース、エデルマン、そのほか、自動車・部品企業、建材企業、食品企業といった米国企業や中国のメディア研究者などへのインタビューも併せて掲載した。(化学品のケーススタディはない)

詳細は以下を参照 http://www.jetro.go.jp/mail/u/l?p=5LOwaDnH_V4Z

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