「no」と一致するもの

EUと英国は5月15日、5日にわたった第3回会合(テレビ会議)を終えたが、「公正な競争環境の確保」や「漁業」など対立する重要分野での進展は今回も見られず、「期待外れだった」(EUのバルニエ首席交渉官)。

最大2年の期間延長を決定できる期限が6月末に迫る。6月初めに予定する次回会合で正念場を迎える。

付記

6月の交渉は6日に成果なしで終了した。

引き続き話し合いを重ねる意向だが、月内でトップ同士で月内に中間評価を実施する。

特に溝が深いのが「公正な競争の確保(Level Playing Field)」 で、EUは関税ゼロを目指すFTAの締結の条件として、労働者や環境保護、国家補助の規制、競争法、税制などのルールをEUの水準に合わせるよう求めている。

これは、2国間のFTAではなく、実質的に英国が重要な分野でEUに残留するものである。

世界のFTA交渉でこんな条件はなく、英国が受け入れる筈はない。

漁業に関しては、英国はEU離脱で主権を回復し、領海内での漁業を自国で管理しようとしているが、EUは従来通りのEU諸国の操業権を求めている。

2020/4/30 英国の「EU離脱後」交渉、難航

最後の交渉でEUが降りない限り、英国は年末に「FTAなし」で離脱する可能性が強まっている。

英・EUの間では移行期間を2022年末まで延長できることになっており、6月末に判断する。

しかし、仮に延長しても、EUが態度を変えない限り、今後決着する可能性は少ない。

また、移行期間中は英はEU域外とFTAを発効させることはできず、EU予算への拠出金の負担を強いられる。

ジョンソン首相は離脱関連法案に、EUとのFTAの締結が間に合わない場合でも本年12月末までの移行期間を延長したり、EU法の英国への適用停止日を延期したりできなくする条項を付け加えた。

2020/1/10 英下院、EU離脱法案を可決 1月末の離脱実現へ



英国は、最後の交渉でEUから良い条件を引き出すため、準備を加速している。

英国は5月19日、これまで適用してきた最恵国に対する関税率表(Common External Tariff)に代わる2021年1月1日以降の英国の関税率表(UK Global Tariff )を発表した。

企業が海外から製品を輸入するのを容易に、かつ安くすることで経済を支援する。現在のEUのそれより簡単で、使用が容易で、関税を引き下げる。複雑な手続きを無くし、不要なバリアを除去し、コストを下げ、消費者の選択を増やす。

無関税の貿易を拡大する。

農業、自動車、漁業などの分野では多くの製品で関税を維持する。

英国産業のバックアップ

  • 肉類などの農産物の関税維持
  • 自動車関税10%維持.
  • ほとんどのセラミック製品の関税維持.
  • 英国のサプライチェーンに入る300億英ポンド相当の製品の関税免除 

関税撤廃で消費者の選択が増え、コストが下がる。

  • 皿洗い機、フリーザー、衛生製品、ペンキ、鏡、ハサミ、クリスマスツリー等

再生エネルギー関連の100以上の製品の関税を撤廃し、再生可能経済を推進

ほとんど全ての医薬品や医療機器は関税を免除する。

ーーー

英国は北アイルランドを含め、EU関税同盟から離脱するが、アイルランド島の国境には物理的な関税等は設けないため、下記の特殊措置をとることとなっている。

2020年末までの移行期間終了後、名目上は北アイルランドを含む英全土がEUとの関税同盟から抜ける。
しかし、アイルランド島の国境付近での税関業務を省略できるよう、北アイルランドに限り関税手続きをEU基準に合わせる。
英本土から北アイルランド向けの品物はいったんEUの関税を徴収されるケースも出る。

本土から北アイルランドに入る段階でEU関税を支払い。(英国が実施するが、EUは立ち合いの権利を持つ。個人の荷物はチェックしない。)
北アイルランドに留まるものは関税還付。
アイルランドに運ばれるものは関税還付なし。

英国は5月20日、本土から北アイルランドに入る製品の扱いについて、北アイルランドに税関を設置しないと発表した。

既存の農業食品のチェックポイントは拡張するが、税関設備はつくらない。

英国の他地域から北アイルランドに入る製品のうち、アイルランド共和国向けのもの及びそこから輸出されるものだけに関税が課せられる。

中国CanSino Biologics(康希諾生物)の研究者は5月22日、医学誌 Lancetで、新型コロナウイルスワクチンの第1相臨床試験でワクチンの安全性と急速な免疫反応の誘導を確認したと発表した。

Safety, tolerability, and immunogenicity of a recombinant adenovirus type-5 vectored COVID-19 vaccine: a dose-escalation, open-label, non-randomised, first-in-human trial

CanSino Biologicsは旧称 天津康希諾生物技術有限公司で、中国を拠点し、主にヒト向けワクチン製品の研究開発、製造、および商品化に取り組む。

新型コロナウイルスワクチン(Ad5-nCoV)は、組換アデノウイルス5型をベクターとし、体内に新型コロナウイルスのスパイクタンパクの遺伝子を送り込むもの。

アデノウイルスは、呼吸器、目、腸、泌尿器などに感染症を起こす原因ウイルス 。

アデノウイルス遺伝子をHEK293(ヒト胎児腎細胞293)のゲノムに組み込むことで、組換えタンパク質を効率的に産生する。

中国メディアによると、中国軍の生物化学兵器防衛の最高責任者である陳薇少将が率いる軍事医学研究院生物工程研究(Beijing Institute of Biotechnology)の研究チームと共同で開発したという。

臨床試験は3月16日~27日に武漢市の健康な成人18-60歳の108人を対象に行なわれた。3つのグループに異なる量(5 × 1010、1 × 1011、1.55 × 1011 viral particles) を注射した。

主な副作用は、注射部位の軽度な痛みや発熱、疲労感、頭痛、筋肉痛などで、深刻な副作用は見られなかったという。

2週間でウイルス特異抗体(2週間でそれぞれ28%、31%、42%に、7週間ではそれぞれ50%、50%、75%)とT細胞の産生が見られた。

但し、ワクチンが新型コロナ感染症を予防するかどうかは一段の研究が必要としている。

ーーー

カナダの National Research Council of Canada (NRC) は5月12日、CanSino Biologicsとの新型コロナウイルスワクチンでの共同開発を発表した。

カナダ保健省は5月18日、CanSino Biologicsがこのワクチンの臨床試験をカナダのDalhousie UniversityのCanadian Centre for Vaccinology で実施することを承認した。

NRCは2013年にエボラウイルスのワクチン開発のため、CanSino BiologicsにHEK293(ヒト胎児腎細胞293)を提供した。今回のワクチンもNRCのヒト胎児腎細胞293を使っている。

但しカナダ国内では中国軍部の関与するワクチンに対する反対も見られる。

ーーー

これとは別に、CanSinoBIOは5月20日、ナノ粒子医薬品の発見、開発、製造のための革新的なソリューションのグローバルリーダーであるカナダのPrecision Nanosystems Inc.との間で、mRNA-LNPワクチンの共同開発契約を締結した。

PfizerとドイツのBioNTech のワクチンと同じ種類のものと思われる。

Precision NanosystemsのLNPデリバリーシステムとナノ医薬作製装置(NanoAssemblr®)を使うもので、Precision Nanosystemsはワクチンの開発を担当、CanSinoBIOは臨床試験や登録手続き、商業化を担当する。

承認取得後はCanSinoBioは日本を除くアジアでの販売権を持ち、Precision Nanosystemsはそれ以外での販売権を持つ。費用分担やロイヤリティも決めたが、公開されていない。


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日本や東アジア諸国の新型コロナウイルスの死者は欧米と比べ極めて少ない。

5月19日時点の人口100万人当たりの死者は、ベルギーが784人、スペインが593人、英国が513人、イタリアが495人、オランダが332人、米国が273人であるのに対し、ベトナムがゼロ、バングラデシュが2人、マレーシアが3人、パキスタンが4人、日本が6人となっている。 一覧表

本ブログはBCG接種(特に日本型)ではないかとしてきた。

BCG注射と死者数には明らかに相関関係がある。

上記のうち、ベルギー、イタリア、オランダ、米国はBCGの全員接種をしたことがない国である。BCG接種国でも、日本型の国とデンマーク型の国では、同じように接種していても、死者数が非常に異なる。

日本型・ソ連型BCGは欧州で使われるデンマーク株と細胞膜構成成分が異なる。また、日本株とソ連株は他の亜株に比し、結核に対して免疫を起こす力は同程度だが、生菌数が非常に多い。

2020/5/4 COVID-19とBCG接種(その4)

但し、日本型と同じ種類のソ連型をみると、デンマーク型の国よりもはるかに少ないが、日本型とはかなりの差がある。この理由は不明である。

ーーー

東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦名誉教授が、日本を含む東アジア人には新型コロナウイルスに対する免疫を持つのではないかとの仮説を唱えている。

「SARSの流行以来、実際にはさまざまなコロナウイルス(SARS-X)が東アジアに流行していた可能性があるのではないか。その結果として、免疫を持っていた可能性があるのではないかということも考えられる」

東京大学先端科学技術研究センターがん・代謝プロジェクトの研究によるもので、川村猛氏らによってまとめられ、The Lancetに投稿済みとのこと。

ーーー

ウイルスに感染すると、ウイルスを排除するための抗体が生産される。

最初に生産される抗体が「IgM抗体」で、早期対応のための幅広いウイルス認識力を持っている。

IgM抗体によってある程度ウイルスの認識が進むと、対象となるウイルスの排除に特化した「IgG抗体」が作られる。

その後、中和抗体が出てくると二度とかからないという免疫ができる。


       図は児玉名誉教授のスライドより


IgM抗体はその後消えるが、IgG抗体は感染を排除した後も残り続けるため、
再度ウイルスが侵入したときに素早く IgG抗体が増殖
できる。

今回、日本人で新型コロナウイルスに対する反応を調べると、上図の動きではなく、IgGが先に反応が起きた。またIgMの反応が弱いということが分かった。

これは、既にlgG抗体を持っている場合と同じである。


5月18日のNature誌に、重症急性呼吸器症候群(SARS)から回復した患者の抗体が、新型コロナウイルスの感染を阻止するとした研究論文が発表されている。

Davide Cortiたちの研究チームは2003年に、重症急性呼吸器症候群(SARS)から回復した患者に由来するモノクローナル抗体がヒト由来と動物由来の両方のSARS関連コロナウイルスを阻害できることを明らかにしていた。

今回、Cortiたちは、これらのモノクローナル抗体のうちの25種について、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を阻害する特性(交差反応性)を評価し、遊離ウイルスと感染細胞の双方に結合できる8種の抗体を見つけ出した。そして、これらの抗体候補の1つ(S309)が、SARS-CoV-2に対して特に強い中和活性を有することが示された。

今回の研究では、被験者による実験は行われていない。

SARSの流行以来、実際にはさまざまなコロナウイルス(SARS-X)が東アジアに流行していた可能性がある。

東アジアの人は、すでにさまざまなコロナウイルスの亜型にかかっており、 新型コロナウイルスに効く免疫が出来ているのではないか。


また、重症化は免疫の過剰反応が原因として知られているが、今回の研究では、IgM抗体の生産が緩やかな場合には、重症化しにくいことが明らかになった。

感染の初期において、広範な影響力を持つIgM抗体よりも、専門化されたIgG抗体が多く生産されることで、免疫も過剰応答を避けることができると考えられる。

日本人はIgMの反応が弱いため、重症化しにくい。死者が少ない理由である。


逆に、IgMの反応が普通に起こり、IgMの立ち上がりが早い場合は重症化する。


三菱
ケミカルは5月22日、新型コロナウイルス感染症対策支援のため、「知的財産する新型コロナウルス感染症対策支援宣言趣旨賛同参画したと発表した。

新型コロナウイルス感染症のまん延終結目的とした開発製造販売等行為しては権利者保有する特許権実用新案権意匠権著作権権利行使わないことを宣言するもの

これにより
本宣言対象となる知的財産権する侵害調査やライセンスをけるための交渉などを必要がなくなり迅速かつ最善開発および製造可能となる。

ーーー

世界大手企業や研究所は4月20日、新型コロナウイルス・パンデミックを収束させるために関連の知的財産権のライセンス利用を無償にするプロジェクト「Open COVID Pledge」に参画したと発表した。
新型コロナウイルス・パンデミック対策に研究機関が、幅広い知的財産権を無料で利用できるようになった。

これを受け、5月7日に、日本の20社の経営者、知財責任者が発起人となり、これを発表し、国内外の企業や研究機関などに広く参画を募った。

知的財産に関する新型コロナウイルス感染症対策支援宣言

我々は、新型コロナウイルス感染症のまん延防止の実現に向けた、医療の提供、感染管理、感染防止その他の感染症対策を一刻も早く進める上で、障害となる知的財産権の行使を行わない環境を整えることを目的に、一切の対価や補償を求めることなく、ここに宣言する。

1. 我々は、すべての個人および団体に対し、この宣言の日から世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症まん延の終結宣言を行う日までの間、新型コロナウイルス感染症の診断、予防、封じ込めおよび治療をはじめとする、新型コロナウイルス感染症のまん延終結を唯一の目的とした行為について、特許権、実用新案権、意匠権、著作権(以下「知的財産権」)の権利行使を行わない。

一部の権利者はその無償解放する知的財産の範囲や開放期間などに制限を加えたり、使用前の通知を条件に無償開放している。

以下略


5月22日時点の日本の宣言者は54、対象特許数は743,374 となっている。

  https://www.gckyoto.com/covid19


神戸大学分子フォトサイエンス研究センターの立川貴士准教授のグループは、赤錆の光触媒作用によって太陽光と水から水素を製造する際の効率を飛躍的に高める構造制御技術の開発に成功した。

本研究成果は、4月30日にドイツ化学誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版で公開された。

安全・安価・安定で、可視光を幅広く吸収できるヘマタイト(赤錆)のメソ結晶(5nm程度の超微粒子の集合体)を透明電極基板に焼き付けるだけで、極めて高い導電性を有する光触媒電極を作製できることを見出した。

ーーー

光触媒に光が照射されると、触媒表面に電子(e-)と正孔 (h+ :電子が抜けた孔)が生成し、この電子が水の水素イオンを還元することで水素が生成する。

h+ の働き H2O→2H+ + 1/2 O2
e- の働き 2H+ →H2

ヘマタイト (赤錆)は、安全・安価・安定な光触媒材料で、古くから太陽光を利用した水素製造への応用が期待されてきた。
他にも多くの光触媒が開発されてきたが、生成した電子と正孔のほとんどが触媒表面で再結合し、消失してしまうため、光エネルギー変換効率が非常に低いという課題があった。

太陽光と水から水素を作り出す光触媒の実用化には、現状数%にとどまっている太陽光エネルギーの変換効率を10%程度以上に向上させる必要がある。

チームは2019年10月に、光触媒の超微粒子を配向を揃えて三次元構造化した「メソ結晶」をソルボサーマル法(高温または高圧の溶媒を用いて固体を合成する方法)によって合成し、さらに、メソ結晶を透明電極基板に集積・焼結することで、導電性と水分解性能に優れたメソ結晶光触媒電極を開発した ことを発表した。

今回、メソ結晶を構成するヘマタイトを約5nmの超微粒子化し、さらにメソ結晶を透明電極基盤に集積・焼結することで導電性と水分解性能に優れたメソ結晶光触媒電極を開発した。

サイズを5nmまで小さくすることで粒子同士の接触面積を増やし、焼結する際に生成する酸素空孔(酸素の格子空孔)の量を飛躍的に増やすことができた。

酸素空孔の付与によって光触媒電極の導電性が向上するとともに、粒子表面に大きな電位勾配が生じ、電子(e-)と正孔 (h+)の分離が促進される。

同時に多数の正孔(h+)が粒子表面に移動し、水を高効率に酸化分解することで、ヘマタイト系電極で世界最高の光水分解性能を達成した。


擬似太陽光を照射したところ、1.23Vの電圧印加の下、5.5mAcm-2の光電流密度で水分解反応が進行することがわかった。
これは、光吸収特性とコストの両面において理想的な光触媒材料のひとつであるヘマタイトにおける世界最高性能である。

また、ヘマタイトメソ結晶光触媒電極は、100時間にわたる繰り返し実験においても安定に動作することがわかった。

本技術は、太陽光水素製造をはじめ、幅広い用途に向けた光触媒の開発に応用できる。

今後は、ヘマタイトメソ結晶光触媒電極の更なる高効率化と太陽光水素製造システムへの導入を産学協働で進めると同時に、人工光合成を含む様々な反応系への応用展開を図る。

AstraZenecaは5月21日、英オックスフォード大学と共同開発する新型コロナウイルスのワクチンについて、10億回分の生産体制を整えたと発表した。更に増設する。

このワクチンはまだ効果があることが未確認の段階である。4月に健康なボランティアでテストを開始したが、結果の判明は6月央である。その後にもっと広範なテストを開始する。

しかし、既に4億回分の受注契約を結んでおり、9月にも供給を始める。



ワクチンはOxford UniversityのJenner Instituteが開発したAZD1222。当初名はChAdOx1で、Chimpanzee Adenovirus Oxford 1の略語である。

チンパンジーに感染する風邪のアデノウイルスが人間の体内で増殖できないように、複製能を欠損させた改変ウイルスを作る。
そこに、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)粒子の表面に存在するスパイクタンパクの遺伝子を組み込む。


これをヒトに注射すると、人間の体内でSARS-CoV-2のスパイクタンパクが作られ、それに対する免疫反応が惹起され、中和抗体ができる。


AstraZenecaは同日、米生物医学先端研究開発局(BARDA)から10億ドルの支援を受けたことも明らかにした。

Financial Timesによると同社が受注した4億回分のうち、およそ3億回分は米国向けになるという。
米保健福祉省はAstraZeneca と協力しており、最初のワクチンが10月にも可能であるとしていた。これはトランプ大統領の爆速ワクチン計画(Operation Warp Speed)の一環である。

英国政府も6550万英ポンドを支援し、英国人用に1億回分(うち 9月までに3千万回分)を確保した。


付記  2020/6/8 AstraZeneca、新型コロナウイルスワクチン増産、開発途上国に供給

付記

AstraZenecaは6月13日、英オックスフォード大と共同開発している新型コロナウイルスワクチンを、欧州に最大4億回分供給することで、ドイツ、フランス、イタリア、オランダで形成するワクチンの早期確保のための「ワクチン同盟」と合意したと発表した。「利益なし」で、年末までに納入を始める。

独保健省も同日、EU全体向けに「少なくとも3億回分」のワクチン確保でAstraZenecaと合意したと表明、ワクチンは「同盟への参加を望む全ての加盟国に人口に応じて配分される」と説明した。
今後はEU欧州委員会とも連携を深める。


AGC(旧称 旭硝子)は5月21日、米国の CDMO (Contract Development & Manufacturing Organization)子会社であるAGC Biologicsが、タカラバイオから、新型コロナウィルス向けDNAワクチン中間体の製造を受託したと発表した。

本ワクチンは大阪大学およびアンジェスが有するDNAプラスミド製品の開発実績をもとに開発され、タカラバイオがその製造を担うもの。2020 年夏頃からの臨床試験開始を目指し開発されている。

ーーー

アンジェスは大阪大学医学部の森下竜一助教授による研究成果を基に1999年に設立され、マザーズに2002年に上場した。

同社は2019年3月に、「標準的な薬物治療の効果が不十分で血行再建術の施行が困難な慢性動脈閉塞症(閉塞性動脈硬化症及びバージャー病)における潰瘍の改善」を効能・効果とする「コラテジェン筋注用4mg」を条件付きで承認を受けた。

プラスミド(大腸菌などの細菌や酵母の核外に存在し、細胞分裂によって娘細胞へ引き継がれるDNA分子の総称)に、血管を新生する作用を持つHGF(肝細胞増殖因子)遺伝子を組み込み、それをベクターとして虚血部位に注射することで、細胞内で遺伝子が発現、血管新生が促され血流が確保されて潰瘍を改善するとされる。

2019/2/22 厚労省部会、国内初の遺伝子治療2品目の承認を了承

アンジェスは本年3月に、上記の実績をもとに大阪大学と共同で新型コロナウイルス対策のための予防用DNAワクチンの開発を行うことを決定した。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のゲノム配列に基づき、ウイルスのスパイク蛋白質の遺伝子を導入したプラスミドDNA(環状のDNA)を設計し、このプラスミドDNAを産生する組換え大腸菌を確立し、GLP試験に使えるDNAワクチンの原薬を製造した。

プラスミドDNAを体内に投与することで、体内で治療に必要とされる物質がつくられる。

DNAワクチンは、危険な病原体を一切使用せず、安全かつ短期間で製造できる特徴がある。

対象とする病原体のたんぱく質をコードするプラスミドDNAを接種することで、病原体タンパク質を体内で生産し、病原体に対する免疫を付与する。
弱毒化ワクチンなどとは異なり、病原性を全く持たないため、安全であると言われている。


アンジェスは本ワクチンの開発・製造に当たり、下記の体制を作り上げた。

 アンジェスおよび大阪大学(臨床遺伝子治療学・健康発達医学)が有するプラスミドDNA製品の開発実績を生かす。

 製造はプラスミドDNAの製造技術と製造設備を有するタカラバイオが担当

 ダイセルが、新規投与デバイスによる皮内への遺伝子導入法を開発

 臨床開発を促進するため、医薬品開発支援機関としてEPSホールディングスが参画

 ペプチド研究所が、抗体価測定のためのペプチド合成研究を担当

 新日本科学が、非臨床試験におけるDNAワクチンの安全性の検証業務を中心に担当

 
ワクチンの有効性等の評価指標となるバイオマーカーの探索でヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ社が参画

 スリー・ディー・マトリックス社と抗体検査キットの国内臨床利用可能性を検討

 AGCのCDMO事業子会社であるAGC Biologicsが、タカラバイオから、新型コロナウィルス向けDNAワクチン中間体の製造を受託

 Cytiva(旧称 GE Healthcare Life Science)


付記 6月18日、新たにシオノギファーマが中間体の分担製造でタカラバイオ社の協力体制に加わった。

 

付記 アンジェスは5月25日、ワクチン投与で抗体ができることを動物実験で確認したと発表した。7月から治験を始める。

ーーー

AGCは5月14日に、米国子会社AGC Biologicsについて、新型コロナウイルス関連で下記の発表をしている。

AGCの米国子会社が原薬製造を受託する医薬品がCOVID-19治療薬候補として臨床試験

AGCの米子会社、デンマークのAdaptVac社から新型コロナウィルス向けワクチン候補の製造を受託

付記 6/4  AGC Biologics、Novavaxから新型コロナウイルス感染症ワクチン候補アジュバントの製造を受託

付記 8/18 Novavaxからのアジュバント受託量を1.5倍に拡大、シアトル工場で製造。

付記 7/20 スイスのMolecular Partners AGの開発する新型コロナウイルス感染症向け治療薬候補「MP0420」の製造を受託

Molecularの保有するDARPin技術を用いて開発されている新型コロナウイルス感染症向け治療薬候補で、新型コロナウイルスの表面に存在するスパイクたんぱく質に特異的に結合することで、新型コロナウイルス感染症を治療する効果だけでなく予防する効果もあり得ると考えられている。

主力の液晶材料が赤字に転落した結果、営業損益、経常損益でも赤字が続く。

当期利益は4年連続の赤字で、2020年3月末の未処理損失は 1,602億円となった。
資本金は78億円で、純資産は
-1,308億円となっている。 

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 当期損益   配当
中間 期末
2018/3 1,600 29 48 -40 -33 0 0
2019/3 1,550 -38 -14 -38 -82 0 0
2020/3 1,449 -8 -13 -84 -119
前年比 -102 30 1 -45 -38 0 0
2021/3予

未定


特別損失:

  16/3 17/3 18/3 19/3 20/3
水俣病補償損失 -37 -35 -33 -31 -31
災害損失   -16 -7 -7
事業整理損 -20
減損損失 -38 -3 -1 -24


経常損益は次の通り。

これまでの主力であった液晶材料等の機能材料部門は、2015年3月期には最高の182億円の利益を計上したが、その後、128億円、83億円、26億円に激減し、2019年に赤字に転じた。

パネルの供給過多の状況が増幅され、顧客が引き続き稼働調整したことに加え、中国液晶材料メーカーの台頭が影響したとしている。
液晶パネルから有機ELパネルに切り替わっており、今後、液晶が元に戻る可能性は少ない。

液晶材料の不振を補うような製品は見当たらず、このままでは補償金の支払いも難しくなる。

  15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 増減
機能材料
(液晶材料等)
182 128 83 26 -28 -31 -3
加工品
(繊維製品、肥料、電子部品等)
21 16 15 18 5 15 10
化学品
(アルコール、樹脂等)
-11 17 -1 21 32 5 -27
商業事業 4 3 3 3 3 3 -0
電力 5 1 0 1 1 16 15
その他 2 1 2 2 -3 2 5
全社 -28 -28 -27 -23 -24 -23 2
合計 175 138 75 48 -14 -13 1


チッソは2011年1月に「事業再編計画」に記載した100%子会社
JNC㈱ を設立し、事業を譲渡した。

2011/1/12 チッソ、「事業再編計画」に基づく、新会社を設立

親会社のチッソは当面、子会社JNCの株式配当益で補償業務を担い、3年後をめどに株式を他者に全面譲渡し、譲渡益を熊本県に納付して補償業務を委ね、清算するという構想である。

特措法では、「救済の終了」と「市況の好転」をJNC売却の条件としている。

JNCの資本と損益の状況は次の通り(2019/3→2020/3)。現在のところは過去の蓄積分が残っている。

資本金 31,150 百万円
資本剰余金 27,149
利益剰余金 37,42424,745
株主資本合計 95,723→83,045



将来、チッソがJNCを売却して、譲渡益で補償を終える計画であるが、JNCの赤字が続くと、その構想も実現が難しくなる。

 

キオクシア(旧称 東芝メモリ)は5月14日、2020年3月期の連結決算概要を発表した。

ーーー

2017年4月1日に東芝からメモリ事業を会社分割し(旧)東芝メモリが発足した。

2018年6月1日にBain Capitalを軸とする企業コンソーシアムにより組成される㈱Pangeaが買収 、東芝メモリ㈱となった。
議決権は、東芝 40.2%、HOYA 9.9%、Bain Capital 49.9%である。

2017/9/30 東芝メモリの株式譲渡契約締結

2019年10月1日付で社名を「キオクシア㈱」 (Kioxia Corporation)に変更した。

2019/7/19 東芝メモリ、「キオクシア㈱」に改称 

同社の決算推移は次の通り。(億円)

(旧)東芝メモリ

東芝メモリ (2019/10 キオクシア)

2018/3月期 2019/3月期

2020/3月期

'18/4~5 '18/6~19/3

合計

1Q 2Q 3Q 4Q 合計
売上高 12,294 1,894 10,745 12,639 2,142 2,390 2,544 2,796 9,872
営業利益 4,568 704 459 1,163 -989 -658 -205 121 -1,731
 (うち一般) (4,568) (704) (2,731) (3,435) (-360) (-375) (72) (394) (-269)
 (PPA影響) (-2,272) (-2,272) (-285) (-282) (-288) (-273) (-1,128)
(停電) (-344) (-1) (11) (0) (-334)
当期純利益 7,186 489 116 605 -952 -560 -253 98 -1,667

 2018/3月期の当期純利益には、法人税調整額▲3,346億円(益)を含む。

キオクシアは 旧東芝メモリを時価(交渉価格)で買収したため、簿価との差が出る。
このため、
買収価額を、資産及び負債の時価を基礎として、適切な勘定科目に配分する。これをPPA(Purchase Price Allocation) と呼ぶ。

キオクシアは以下の処理を行った。

棚卸資産を1,388億円 増やした。これを2019年3月期に全額コスト化した。、

固定資産を4,295億円 増やした。2019年3月期に884億円を償却、残りは総額の95%まで、2022年3月期までに各年1,000億円程度償却する。

この結果、2019年3月期には 2,272億円の損失追加となった。
2020年3月期では1,128億円の損失追加となった。

2019年6月15日、四日市工場で停電が発生し、一部の生産ラインが停止した。復旧に7月中旬までかかり、これに伴い、334億円の赤字を計上した。

また、営業外損失として、借入金期限前返済、優先株期限前償還等で2019年4-6月に194億円の損失を計上した。

この結果、当期の営業損益は-1,731億円、当期損益は -1,667億円となった。特殊要因を除いた営業損益は -269億円である。

営業損益は、2018/3月期の4,568億円が2019/3月期の実質で3,435億円に下がったが、当期では-269億円と激減した。

これは主に主力製品であるNAND型フラッシュメモリーの価格下落が続いているためである。

128GBの大口取引価格の推移は下図の通り。

2018/3月期は年末までが4.8ドル、第4四半期が4.5ドルまで下がった。
2019/3月期は期首の4.5ドルから急降下で2ドル強まで下がった。
2020/3月期は通期2ドル前後で推移、期末に若干上がった。第4四半期で実質営業利益が121億円の黒字となったのはその為と思われる。

中国の新興勢力も含め、開発・販売競争は激化しており、今後、元の価格水準に戻ることは考え難い。

そのなかでキオクシアは後2年間はPPA関係で年間1000億円の費用負担があり、苦しい状況が続く。


同社は2018年6月の独立時に3年以内の上場を目指す方針を出した。出資の海外勢は再上場により高値で売却し、売却益を得ることを目的としている。

同社では、この方針に基づき、東京証券取引所への株式上場準備についても継続的に進めているとしている。

しかし、この損益状況では仮に再上場しても大きな売却益を得ることは難しい。


出資・融資内訳(億円)

  出資・融資 出資 融資  
議決権 転換社債 議決権なし
東芝 3,505 40.2% 1,096   2,409   議決権の一部は産業革新機構と日本政策投資銀行に指図権
HOYA 270 9.9% 270   0    
(日本側計) (3,775) (50.1%)         今後も過半を維持
Bain 2,120 49.9% 1,361   759    
SK Hynix 3,950   15% 1,290 2,660   10年間のファイヤーウォール(機密情報へのアクセス制限)
10年間は15%超の議決権は与えられない。転換には各国競争当局の承認要
(Bain/SK) (6,070)            
Apple 4,155     4,155    
Seagate
Kingston Technology
Dell Technologies Capital
合計 14,000 2,727 1,290 9,983    
金融機関借入 6,000  

6,000

 
再計 20,000

14,000

6,000  

三井化学

基盤素材(石油化学品・工業薬品)の交易条件悪化で大幅減益となった。

2021年3月期にはさらに営業利益の半減を予想する。

 単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 持分法 経常損益 特別損益 株主帰属
損益

配当

中間 期末
18/3 13,285 1,035 71 1,102 -160 716 9.0 9.0
19/3 14,829 934 108 1,030 23 761 10.0 10.0
20/3 13,390 716 32 655 29 379 10.0 10.0
増減 -1,439 -218 -76 -375 6 -382 0 0
IFRS コア営業 税引前
21/3予 11,450 350 340 200

未定


営業損益

17/3 18/3 19/3 20/3 増減

内訳

21/3予
数量差 交易条件 固定費他
モビリティ 407 423 427 392 -35 -23 6 -18 275
ヘルスケア 101 108 136 138 2 10 1 -9 105
フード&パッケージング 206 199 178 181 3 0 18 -15 160
基盤素材 385 389 278 87 -191 -64 -135 8 -115
その他 -3 -9 -14 -2 12 3 -75
全社 -75 -75 -71 -80 -9
合計 1,021 1,035 934 716 -218 -77 -110 -31 350

 

ーーー

東ソー

クロルアルカリの交易条件の悪化などで減益となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 特別損益 当期損益

 配当

中間 期末
2018/3 8,229 1,306 1,323 -19 888 12.0 16.0
(32.0)
2019/3 8,615 1,057 1,130 3 781 14.0
(28.0)
14.0
(28.0)
2020/3 7,861 817 860 -23 556 14.0
(28.0)
14.0
(28.0)
増減 -754 -241 -271 -26 -226
2021/3予

未定 

14.0
(28.0)
14.0
(28.0)

 普通株式2株を1株の割合で併合

営業損益は下記の通り。

 

 

18/3

19/3 20/3 増減

内訳

数量差 交易条件 固定費他
石油化学 225 134 103 -31 -16 7 -21
クロルアルカリ 666 460 282 -178 -22 -102 -54
機能商品 339 353 279 -75 -22 -28 -24
エンジニアリング 49 83 127 44 44 0 0
その他 27 27 25 -2 -1
合計 1,306 1,057 817 -241 -18 -124 -100

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

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