2015年5月アーカイブ


国際通貨基金(IMF)は5月26日に公表した中国経済に対する年次審査報告書で、中国の人民元はもはや過小評価されていない、と指摘した。

「人民元の過小評価がこれまで大きな不均衡の要因だったが、実効為替レートの過去1年間の大幅上昇により、もはや過小評価されているとは言えない水準になった。」

しかし、人民元の上昇にもかかわらず中国の貿易収支が引き続き高水準の黒字を記録しており、改革の必要性を示していると指摘、過度の貯蓄を減らし、持続可能な対外バランスの達成に向けて改革を実行することが当局の課題 であるとしている。

中国は、より柔軟な人民元相場などの改革を加速させるべきで、2-3年以内に変動相場制を実現させることを目指すべきだとした。

中国政府は人民元をSDR(IMFの特別引出権)に含めることに関心を示したが、IMFとしてはこれを歓迎し、実現に向け中国政府と密接に協力するとしている。
このためには、人民元が貿易規模、取引の自由度などで国際通貨にふさわしい条件を満たす必要がある。

 

IMFの発表を受け、米財務省の高官は同日、人民元相場について「著しく過小評価された状況にとどまっている」と述べた。
中国経済を巡っては「多額の貿易黒字を計上し、経済には数多くの不均衡がある」と強調し、人民元が大幅な過小評価の状態にあるとの認識を改めて示した。


人民元は、ドル以外の大半の通貨に対して、大幅に上昇している。(グラフは週間平均の買レート)

しかし、 米ドルに対しては、あまり上昇していない。

米ドルに対する元高の程度が他の通貨に対するものより少ないのは、ドル高の影響が大きい。
米ドルはユーロや円に対しても上昇している。
その米ドルに対し、元は少しは上昇している。

人民元は、米ドルに対しては2014年前半に大きく下落、その後上昇に転じたが、2014年11月頃から再度下落、本年2-3月頃には2%の変動幅の下限一杯まで下落した。



中央銀行が毎日定める中央値も本年3月頃までの1年間はほぼ同水準であったが(政府の方針)、2014年11月頃から毎日の取引価格は下限ぎりぎりまで下落したのは、昨年後半から中国からの資金流出が続いていることが指摘される。米国の利上げをにらんだ投機的な資金の引き揚げや、中国企業による海外進出の増加などが要因。

中国銀行は、3月ごろにはこれまでとは逆にドル売り・元買いの介入を行って、人民元の価値が下がらないように買い支えに動いたとされる。


ーーー

IMFは5月22日、日本に関する報告も発表した。

低迷していた日本経済はアベノミクスにより浮上したが、「またとない」制度の転換を果たすという約束を果たすために、改革プログラムの矢を早急に強化する必要がある。

経済見通しは改善しているが、脆弱性が残っている...

インフレ率は徐々に上昇する見込み、中期的には約 1.5%まで徐々に上昇
緩和的な金融政策を継続する...

追加緩和
市場を誘導するために、コミュニケーションを強化
日銀が2%の インフレ目標を安定的に達成するというコミットメントを再確認

経済見通しにかかるリスクは下振れ方向に傾いている。

一層の構造改革が求められる
より効果の大きい改革が、堅調な長期的見通しをもたらし短期的に需要を支えるだろう。

労働市場改革
コーポレート・ガバナンス改革
規制緩和
金融改革

堅調な賃金動向が下支えとなる...

具体的かつ信頼のおける財政健全化...

財政健全化の信頼性を高めるため、財政制度の強化が必要である。
財政再建には、歳出・歳入両面の措置が必要
 

 


 

旭化成と三菱ケミカルホールディングスは5月28日、水島地区のエチレンを統合し、1基に集約したエチレン製造設備を運営する合弁会社の詳細について合意したと発表した。

 

両社は水島地区に隣接して各年産50万トンのエチレン設備を運営しているが、2009年6月に水島コンビナートでエチレン事業を統合することを検討していることを発表した。

両社は折半出資で西日本エチレン有限責任事業組合を設立し、2011年4月から、水島地区の両社のエチレンセンター事業の一体運営を開始した。

両社は2014年2月25日、水島地区の両社エチレンセンターを1基に集約することで合意した。

(1)集約時期 2016年4月
(2)集約方法 三菱設備に集約し、旭化成設備は廃棄。
(3)対象製品 エチレン、プロピレン、C4、分解ガソリン(C5、ベンゼン、トルエン、キシレン、
C9などの混合物)、粗水素その他の副生ガス(メタン、エタン、プロパン)、ヘビーエンド
(4)集約後の運用形態 両社折半出資の株式会社を設立しエチレン設備を共同運用
(5)集約後の生産能力 57万トン/年(非定期修理年)
圧縮機の主要部品(ローター)の交換を行い、現状の50万トン/年(非定期修理年)から
増強する。

2014/2/27  旭化成と三菱ケミカル、水島地区エチレンセンター集約で合意 


新しく設立するエチレン製造設備を運営する合弁会社の概要は下記の通り。

(1)運営開始 2016年4月1日
(2)社名 三菱化学旭化成エチレン株式会社
(英文:Asahi Kasei Mitsubishi Chemical Ethylene Corporation)
(3)資本金 20億円(旭化成ケミカルズと三菱化学が折半出資)
(4)売上高 約1,600億円
(5)事業内容 基礎石化原料の製造と両親会社への販売、原材料の調達
2014年2月の合意の通り、エチレン設備は三菱化学に集約し、現状の年産50万トンを57万トンに増強する。旭化成の50万トンのエチレン設備は廃棄する。


現在、両社のエチレン製造設備を運営する西日本エチレン有限責任事業組合は、新合弁会社の運営開始後、集約に伴い不要となる設備の撤去等を行う。




 

リコーは5月18日、圧力や振動により高い発電性能を発揮する新しい柔軟材料「発電ゴム」の開発に成功した と発表した。

数十~数百μmという薄いシートの両面に電極を配置した形状をとる。
リコーは「複合材料を利用している」とするが、発電ゴムの組成は公開していない。


圧力による発電材料(圧電材料)としては、セラミックスや高分子樹脂などがあるが、活動範囲が限られている。

セラミックスの一種であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)は、 機器設備の圧力・振動センサーなどの電子部品として普及しており、高出力ではあるが、壊れやすい、鉛を含む、重いなどの課題がある。(鉛を含有するが、他に代替可能な材料がないため、EUにおける電子機器類への使用制限令の適用免除対象となっている)

PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子樹脂は、薄くすることによる柔軟性はあ るが、取り出せる電力は微量。
逆圧電効果による作用が弱く、さらに熱により電荷が生じるため、電気電子部材としての使用が難しく、用途はセンサーなどに限られている。

ともに、圧電性能を発現させるために製造過程で直流高電界を与える必要があり、エネルギー負荷の高い製造方法となっている。

帝人と関西大学は2012年9月、ポリL乳酸とポリD乳酸の2 種類のポリ乳酸フィルムを用いることで、簡便な積層プロセスにより製造することができる、透明かつ柔軟性があり、従来にない高い圧電効果を有する圧電材料を開発したと発表した。


リコーが開発した「発電ゴム」は、柔軟性の高いフレキシブルなシート状でありながら、セラミックス圧電材料と同等の高い発電性能を有する。 数百万回の繰り返し負荷試験でも性能劣化がないという耐久性も有している。

柔軟性、高出力に加え、耐久性、加工性、生産性にも優れる「発電ゴム」はセラミックスや高分子樹脂の課題を解決し、それぞれの利点である高出力と柔軟性を両立した 。

発電ゴムは厚さ数百マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの薄いシート。通常とは組成が異なり、押したり曲げたりして変形すると瞬間的に数百ボルトの電圧が生じる。

5cm×10cmの発電ゴムシートを手で軽くたたくと、数百V、数百μAの電力を生み出す。実験では 約200個の発光ダイオード(LED)をつないでたたくと、一斉に点灯した。

軽量ではさみやカッターで切れ、曲面にも貼れる。原料を塗布するだけで作れ、製造コストも安くなる見通し。

発電は一瞬だが出力は大きく、電気信号を無線で飛ばすことも可能とみられる。

体に貼ればそこを動かすたびに、衣類などに付ければ風に揺れるたびに発電する。

医療などで体の動きを検知するセンサーや、構造物の急な変形を知らせる警報装置、侵入者を検知するカーテンなどに応用すれば、電源なしに動作する。
風に揺れると光るドレスや遊具などの用途開発も進める。

リコーでは、微弱な圧力を感知するセンサーとしての用途と、環境からわずかな電力を集める環境発電の2つの応用を考えている。

ーーー

圧電効果は、セラミックなどに圧力を加えることで生じるひずみに応じて、電圧が発生する現象をいい、1880年にピエール・キュリーと兄のジャック・キュリーが発見した。

固体結晶内のイオンの位置のずれが圧力を加えることによって大きくなり、結晶の一方の端がプラスの電気を帯び、もう一方の端がマイナスの電気を帯びる「電気分極」という現象が起こり、電圧が発生する。身近なものとして、ライターの発火石がある。

PVDFの場合は、引っ張りや圧縮が内部ひずみを生み、電気エネルギーを生じる。

 

「発電ゴム」の発電機構は、従来の圧電材料とは異なる。圧電効果を示す材料と同じような挙動を示すものの、なぜ電力を生み出すのか、はっきりとは分かっていない 。

現在、東京理科大学(山本貴博准教授)との共同研究により、最先端の計算化学技術を用いた分子レベルでの発電機構の解析を始めており、材料の可能性をさらに拡張して将来の多岐にわたる応用展開を目指 す。

 

 

インドのReliance Industries Limited (RIL) は本年4月10日にグジャラート州 Dahej でPTA工場とPET工場の操業を開始した。

PTAプラントの能力は115万トンで、PETプラントの能力は65万トン。原料パラキシレンはRILのJamnagar 製油所から供給する。

同社では同じ工場で同規模のPTAプラントを建設中で、年内にも完成する予定。
同社のこれまでのPTA能力は205万トンで、第二工場が完成する年末には合計能力は435万トンとなる。

同社はこのほかにマレーシアにBPから買収した 61万トンのPTAプラントを持っている。
          2012/10/3 BP、マレーシアのPTA事業をインド Relianceに売却 

インドは世界で第二位のポリエステル生産国で、能力は540万トンとされている。
インドは年間25万トンのPTAを輸入しており、RILでは今回の増設でインドがPTA自給に近付くとしている。

PETプラントは2ライン合計65万トンで、ボトルグレードのPETレジン工場としては最大となり、同社の合計能力は115万トンとなる。
Dahej 工場にはPET原料のPTAとMEGの両方を生産している。

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JBF Petrochemicals もKarnataka州 Mangalore Special Economic Zone (SEZ)  でPTA工場を建設中で、年内にも生産を開始する。

能力は125万トンで、1系列ではインド最大となる。
原料のパラキシレンは同じSEZ のOMPL Aromatics Refinery から供給を受ける。

JBF Petrochemicals は繊維会社のJBF Industries が原料への遡及のため設立した子会社。

ーーー

インドの現在のPTAの生産能力は400万トン弱だが、355万トンの増設となり、ほぼ倍増となる。

  現状 増強 増強後
Reliance 205万トン 230万トン 435万トン
MCC PTA India
三菱化学 66%
127万トン   127万トン
Indian Oil Corporation (IOC) 55万トン   55万トン
JBF Petrochemicals   125万トン 125万トン
合計 387万トン 355万トン 742万トン

 

三菱化学子会社のMCC PTA Indiaの第1期プラントは、三菱化学の最新鋭の自社技術を採用し、2000年に年産35万トンの規模でスタートし、その後数次に渡る能力増強を重ね、年産47万トンとなっている。

インドの需要の伸びに対応するため、第2期として80万トンの増設を決めた。約370百万ドルの投資で2006年1月にプラント建設に着手し、2008年6月に完工した。

三菱化学は2009年2月、テレフタル酸事業の事業構造改革を発表した。
国内生産から撤退、本社機能
を海外に移す。

本社機 シンガポール 2009年6月
技術に関する本社機能 インド(西ベンガル州ハルディア) 2009年末


松山工場停止後の三菱化学のテレフタル酸供給基地は以下の通り。

場所 会社名 能力  
インドネシア メラク 三菱化学インドネシア(旧バクリー化成)   640千トン 83.2%出資
韓国 麗水 三南石油化学(三養社とのJV)  1,700千トン 40%出資
インド 西ベンガル州ハルディア MCC PTA   470千トン
  
800千トン
66%出資
中国 浙江省寧波市 寧波三菱化学   600 千トン 日本側90%x61%出資
合計  4,210千トン  


2009/2/24  三菱化学、テレフタル酸事業の事業構造改革

 


  

    

医薬品会社の多くが特許切れによる後発品の影響、日本の薬価改定の影響を受け、業績は伸びない。

多くの企業がIFRS方式に切り替えている。(上の斜線)

この結果、これまでの日本基準とは下記のような差が出る。(武田薬品による)
特に、これまで営業外損益、特別損益としていたもののうち、金融損益以外はほとんど、営業損益に含まれることとなる。

  日本基準 IFRS
のれん償却 20年以内で償却 償却せず、毎期現存テスト実施
有形固定資産償却 定率法も可能 定額法に統一
特定目的研究開発設備の一括費用処理 資産計上、定額法償却
一時金、マイルストン等 発生時に研究開発費 無形資産計上、上市後定額償却
減損テスト実施
退職給付引当の過不足 5年償却 損益認識せず
発生時に「その他包括利益」
営業外、特別損益 営業損益に含めず 営業外は金融損益のみ
他は営業損益に含める。


ーーー

武田薬品

2014年3月期からIFRS方式に切り替えた。

本年は巨額の訴訟補填引当を行い、上場以来初の赤字に転落した。

                                                                                                                                                          単位:億円 (配当:円)

    売上高 営業損益 除く
訴訟補
経常損益 株主帰属
損益
除く
訴訟補填

 配当

税引前
損益
中間 期末
2013/3  日本式 15,573 1,225   1,132 1,312   90 90
IFRS 15,570 650   1,331 1,486  
2014/3 日本式   1,557         90 90
IFRS 16,917 1,393 1,393 1,589 1,067 1,067
2015/3   17,778 -1,293 1,448 -1,454 -1,458 322 90 90
前年比   861 -2,685 55 -3,043 -2,524 -745
2016/3予   18,200 1,050   1,150 680   90 90




上記の通り、日本式では営業外損益、特別損益として扱うものが、IFRSでは営業損益に含まれることとなる。

今回は特に、アクトスの訴訟補填引当 2,741億円(税引き後では1,779億円)を計上したため、営業損益は大幅な赤字となった。
これを除くと営業損益は1,448億円(前年比 55億円増)、株主帰属損益は322億円(前年比 745億円減) となる。

武田薬品は4月29日、米国における2型糖尿病治療剤「アクトス®」に起因する膀胱癌を主張する製造物責任訴訟で、大多数を解決する和解に向けた合意に至ったと発表した。

和解金は原告の95%が受け入れた場合は23.7億ドル、97%以上が受け入れた場合は24億ドルとなる。

同社は和解に参加しない訴訟の費用等を含め、2015年3月期に27億ドル(3,241億円)を引当計上するとしたが、決算では、製造物責任保険に基づく予想保険金額 500億円を相殺し、差引 2,741億円を計上した。

   2015/4/29  武田薬品、米国での2型糖尿病治療剤「アクトス®」の製造物責任訴訟の和解に向けた合意 

その他の特別損益による前年比営業損益増減には下記のものがある。

・Amgenから導入した癌治療薬モテサニブの試験中止による減損 -109億円

・URL Pharma買収に伴う痛風治療薬コルクリスの条件付取得価格の洗替 +179億円

・遊休不動産売却益 +280億円

ーーー

アステラス製薬

増収・増益となった。

2014年4月に、普通株式1株につき5株の割合で株式分割実施。

    売上高 営業損益 経常損 株主帰属
損益

 配当

税引前
損益
中間 期末
2013/3  日本式 10,056 1,539 1,572 829 65 65
IFRS 9,819 1,216 1,271 925
2014/3 日本式 11,645 1,773 1,317 924 65 70
IFRS 11,399 1,168 1,220 909
2015/3   12,473 1,857 1,897 1,359 14(70) 16(80)
前年比   1,074 689 677 450 (5) (10)
2016/3予   13,620 2,380 2,390 1,700 16(80) 16(80)

 

営業損益の増益の理由の一つが減損損失で、前年度が -556億円であったのが、-103億円にとどまっている。

ーーー

第一三共

2015年3月期中にRanbaxy Laboratories がインドのSun Pharmaceutical Industries に吸収合併されたことにより、連結除外となった。
これに伴い、2014年3月期も修正した。(下表で新ベースとして表示)

2015年4月に、交換で取得したサン・ファーマ株式を3,784億円で売却した。

2014/4/10 第一三共、ランバクシーを実質売却 

    売上高 営業損益 経常損益 株主帰属
損益

 配当

税引前
損益
中間 期末
2013/3  日本式 9,979 1,005 991 666 30 30
IFRS 9,947 987 959 640
2014/3 日本式 11,188 1,159 1,093 657 30 30
IFRS 11,182 1,116 998 609
新ベース 8,991 1,129 1,130 609
2015/3   9,194 744 799 3,221 30 30
前年比   202 -385 -330 2,612
2016/3予   9,200 1,000 950 600 40 30

 

2015/3 の株主帰属損益のうち、継続事業による分が467億円、非継続事業による分が2,754億円。

Ranbaxyの連結除外ベースでの対比で、営業損益は385億円減少した。

売上高増や共同販売促進費の減などはあったが、円安による経費増(237億円)や連結子会社 Plexxikon Inc.の抗悪性腫瘍剤 Zelboraf (収益性の低下が見られる)の営業権の減損(350億円)、日本の人事関連費用(139億円)、米国司法省への和解金(47億円)などで減益となった。

2014年度の非継続事業の損益は下記の通り。(億円)

  税引前 税引後
子会社合併差益 3,602 2,787
合併関連諸費用 -50 -34
Ranbaxy事業損益 -18 -0.5
合計   2,754

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エーザイ

減収減益となった。株主帰属損益は法人税の関係で増益となっている。

    売上高 営業損益 経常損 株主帰属
損益

 配当

税引前
損益
中間 期末
2013/3  日本式 5,737 705 656 483 70 80
2014/3 日本式 6,004 711 649 330 70 80
IFRS 5,995 664 623 383
2015/3   5,485 283 259 433 70 80.
前年比   -510 -381 -364 50
2016/3予   5,565 460 428 270 70 80




営業損益は前年比で381億円の減となったが、主な理由は下記の通り。(億円)

増益    
  グローバルブランドの増 91  
  中国・アジア拡大 52  
  2013年構造改革効果 197   一時費用 133、2014労務費減 64
       
減益    
  先行投資 -294  
  国内減益 -352   薬価 -160、ジェネリックによる減収
  その他 -75  


法人税は前年が238億円に対し、本年は-176億円となっている。

米子会社の払込資本の払い戻しによる譲渡損失等での278億円の減が影響

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田辺三菱製薬、大日本住友製薬については、下記参照

2015/5/19  主要企業の2015年3月決算 - 三菱ケミカルホールディングス、 住友化学


 


 

米内務省は5月11日、Shellに対し、アラスカ西海岸沖のChukchi Sea の6カ所で今夏に石油や天然ガスを掘削を開始することを認めた。

Shellが、内務省の安全・環境執行局の許可や海洋哺乳類保護法に基づく認可を含む連邦政府と州の許可を得ることを条件にしている。同社はこの追加的許可を今後数週間内に得られることを期待している。

Shellは何年にもわたり、開発承認を求めていた。

Obama政権は2012年夏にShellに許可を与えている。
しかし、Shellは多くの安全上、操業上の問題に悩まされた。石油リグの一つのKullukは座礁し、沿岸警備隊が安全地帯にまで曳航しなければならなかった。

2013年に内務省は安全対策が出来るまでは掘削を再開してはならないと決めた。
内務省は、Shellは重要な作業を行うコントラクターの管理などの幅広い基本的な作業が出来ていないと結論付けた。

この地域では150億バレルの原油があると見込まれている。

Chukchi 海は石油掘削には最も危険な場所のひとつで、大都市への道路はなく、数百マイル内に深海港がなく、事故が発生した場合にクリーンアップや救援の作業員が到着するのが難しい。最も近い沿岸警備隊の基地は1000マイル以上離れている。気象状況は極めて厳しい。更に、 ホッキョク鯨やセイウチなどの海洋生物の移動ルート、摂食地域である。

利点としては非常に浅い海(140フィート)での開発であることで、メキシコ湾での事故は5000フィートの深海であった。

Shellは同地域での掘削事業に過去8年間で60億ドル を投じており、今年は10億ドルを追加投資する計画。

内務省の海洋エネルギー管理局長は声明で、掘削が同海域へ及ぼす可能性のある影響を十分検討した上で許可を与えたとした。

「Chukchi 海の掘削可能性について慎重な検討を重ねた。同海域は環境、社会、生態上の大変豊富な資源があるためだ 」とし、北極海のエコシステムとアラスカの原住民の文化的伝統の保護に高い基準の設定の必要性を認識しており、石油探索には厳格な安全基準が適用されるとしている。

同海域は冬、長期間海面が氷結するため、通常は7月から10月までの短い期間しか安全に掘削が出来ない。
Shellによると、試掘によって商業的な掘削が可能と判断された場合でも、実際に油田が操業を開始するには10年以上掛かるという。

しかし、環境団体が起こした北極海での掘削差し止めを求めた訴訟と、シアトル市がShellの掘削船に同市の港への係留を認めていないことが障害となっており、Shellの計画に遅れが出る可能性がある。

環境保護団体は北極海での掘削が2010年のメキシコ湾の原油流出事故よりもはるかにひどい結果を生むことを恐れて、政府に認可しないよう要求しており、今回の承認を批判している。

北極海の資源開発では、ウクライナ危機を受けたロシア経済制裁の余波で、各社の計画中断が目立つ。米 ExxonMobilが石油大手のロシア国営Rosneftとの北極海大陸棚の共同探査を中断。Shellも西シベリアで石油大手 Gazprom Neft  とのシェールオイルの共同開発を停止した。


ーーー

Shell は世界各地で北極及び亜北極で石油・ガス開発に取り組んでいる。

アラスカのBeaufort海とChukchi 海は、それぞれ 2005年 と2008年 に開発権を取得した。

カナダのNiglintgakガス田は1973年にShell Canada が発見した。

サハリンではサハリン2プロジェクトに参加している。

Shell  55%→ 27.5%-1株
Gazprom 0%→ 50%+1株
三井物産 25% 12.5%
三菱商事 20% 10%

サハリン2では液化設備第三期(年間能力1000万トン→1500万トン)を計画中。


西シベリアの Salym油田ではGazprom Neft とのシェールオイルの共同開発を行っていたが、現在は停止している。
 

ノルウェーでは深海のOrmen Langeガス田で開発している。ここではガスを120kmの海底パイプで陸上の処理場に送っている。

2010年にグリーンランドの西岸のBaffin Bayでリース権を取得した。

東岸のKanumasでは2010年にShellとGDF Suez、Statoil、Nuna Oil のコンソーシアムが2ブロックの権益を取得した。
JX日鉱日石開発は2013年12月、Chevron及びShellと共同で2ブロックの権益を取得した。


 

 

米議会上院は5月22日夜の本会議で、TPP妥結に不可欠となる大統領貿易促進権限(TPA)法案を賛成多数で可決した。

法案は下院に送付され、議会が一時休会明けする6月から下院での攻防が本格化するが、下院では共和党の一部も反対に回るとみられ、難航する見通し。


ーーー

米超党派議員は4月16日、TPA法案で合意し、議会に提出した。

4月22日に上院財政委員会で可決、4月23日に下院歳入委員会で可決した。

上院は5月12日にTPA 法案の審議入りを一旦否決したが、5月14日に再度投票を行い、民主党から13名が賛成し、65対33で本会議での審議入りが決まった。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 52 13   65
反対   31 2 33
棄権 2     2
合計 54 44 2 100

2015/5/14    米上院、TPA法案審議入りを否決   一転可決


同時に、為替操作国に対し制裁を科すことを可能にする修正案、為替操作に対し制裁は科さずに対応を強化するのみの修正案、TPPに追加で参加する国がある場合は議会に承認を求める修正案などが審議された。

5月21日に審議打切りの動議が出され、可決した。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 49 13   62
反対 5 31 2 38
棄権        
合計 54 44 2 100

上院では5分の3以上の議員(60人以上)の賛成がないと可決されず、廃案となる。


5月22日に各法案に対して投票が行われた。

TPA法案は 62 対37で可決した。民主党から14議員が賛成した。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 48 14   62
反対 5 30 2 37
棄権 1     1
合計 54 44 2 100

為替操作国に対し制裁を科すことを可能にする修正案は48対51で否決された。共和党から12議員が賛成している。
オバマ政権は可決されても拒否権を行使する構えを示していた。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 12 34 2 48
反対 41 10   51
棄権 1     1
合計 54 44 2 100

一方、為替操作に対し制裁は科さずに対応を強化するのみの修正案は70対29で可決した。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 47 23   70
反対 6 21 2 29
棄権 1     1
合計 54 44 2 100

TPPに追加で参加する国がある場合は事前に議会の承認を要するという法案は否決された。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 9 36 2 47
反対 44 8   52
棄権 1     1
合計 54 44 2 100


上院ではTPA法案は可決に必要な60票を辛うじて 2票上回り、可決した。

下院は現在、総議席 435のうち、共和党 245、民主党 188、欠員 2 となっており、可決には217票の賛成が必要。

2年ごとに改選となる下院では、輸入増を懸念する自動車や鉄鋼産業を地元に抱える議員は党派に関係なく反対に回るなど地域の事情が複雑に絡むため、共和党からも多数の反対が出るとみられており、難航が予想される。

5月下旬に開く予定であったTPP閣僚会合は、TPA法案の成立のめどが立たず、見送りとなった。



ニコンのデジタル一眼レフカメラ「D600」で写真を撮ると黒い点のようなものが現れる問題をめぐり、上海市民が「ニコンが虚偽の宣伝で消費者の権利を侵害した」としてニコンの中国法人を訴え、商品の返品と返金、および代金の3倍にあたる賠償金の支払いを求めた裁判で、上海市黄浦区人民法院(地裁)はこのほど判決を下し、返品の要求は支持したが、3倍の賠償金については要求を退けた。

ーーー

「中国消費者の日」にあたる2014年3月15日、中国中央テレビ(CCTV)は、毎年恒例の消費者保護番組で、「ニコンのデジタルカメラには欠陥がある」と批判した。
デジタル一眼レフカメラ「D600」で撮影した画像に黒い斑点が写り込むなどの不具合が多発し、部品交換などの保証対応も不十分だとした。

上海市の工商局は3月16日、ニコンに対し「D600」の中国国内での販売停止を命じた。

ニコン中国法人は、正式な謝罪を行うとともに、D600の利用者に無償で点検とクリーニングサービスを提供すると発表した。問題が解決されない場合は、新しい機種と交換する。

 

原告は2013年5月にD600を1万2999元(約25万4千円)で購入したが、撮影した写真のあちこちに黒い点が現れるのに気付いた。

上記の報道を受け、「ニコンの虚偽の宣伝は詐欺にあたる」とし、返品・返金と3倍の賠償金支払いを求めた。

改正消費者権益保護法には代金の「3倍返し」、懲罰性賠償額の明確化の規定があるが、今回の判決では、ニコンが虚偽の宣伝を行って権利を侵害したとする十分な証拠がないとし、3倍の賠償金の要求を却下した。

しかし、カメラには黒点が現れるという瑕疵があり使用に差し支えることは確かであり、保管方法が適切でなかったために問題が生じたと示す証拠もないと判断した。

原告が交換を望まなかったため、裁判所はニコンに返品と返金に応じるよう命じた。

ーーー

中国では「消費者権益保護法」(1994年1月1日施行)が改正され、2014年3月15日から施行された。

主な改正は次の通り。

・リコールなどの義務化
・7日以内の返品が可能に (「三包」(包修:修理、包換:交換、包退:返品)規定の拡大)
・通販のクーリングオフ
・個人情報保護の義務化
・行政による抜取り検査、検査結果の公開の義務化
・ネット取引プラットフォーム提供者の義務
・罰則の強化(代金の「3倍返し」、懲罰性賠償額の明確化など)


参考  2015/3/14  中国、美白歯磨き粉の虚偽広告に最高罰金

 


 
米独立系石油会社 Noble Energyは5月11日、 米国のシェール開発のRosetta Resources を21億ドルで買収すると発表した。

21億ドル相当の全額株式交換でRosettaを買収、Rosetta の約18億ドルの負債も引き継ぎ、買収総額は約39億ドルに達する。
Rosettaの株価に28%のプレミアムを乗せた勘定となり、Rosettaの株主はNobleの株の9.6%を所有することとなる。

原油価格の低迷で資金繰りが悪化していたRosetta を実質的に吸収する。
Rosettaは積極的に権益を獲得したことで、2014年の売上高は13億ドルと前年比 1.6倍に拡大したが、投資が先行して手元資金が急減、負債が18億ドルに膨らんでいたところに、長引く原油価格の低迷が追い打ちをかけ資金繰りが悪化していた。

今回の買収で、NobleはRosettaが保有する全米屈指のシェール鉱区で知られるテキサス州のEagle FordとPermianの権益を初めて獲得する。Nobleでは「米国でも最も優良な2つの鉱区での権益は保有資産の質を高めてくれる」 としている。

RosettaはEagle Ford Shaleに50千エーカー、Permianに56千エーカー(Reeves County のDelaware Basin に46千エーカー、Gaines CountyのMidland Basinに10千エーカー)の liquids-rich shale の権益を有している。

2015年の第1四半期には原油換算日量66千バレルを生産しており、2014年末の確認埋蔵量は282百万バレルとなっている。生産量の60%以上が液体である。
Nobleでは今後5~6年にわたり、年間15%の生産の伸びを見込んでいる。

ーーー

1932年設立のNoble Energyは世界中で石油とガスの開発を行う独立系のエネルギー会社で、主たる開発場所は 米国のMarcellus shale とNiobraraシェール及びメキシコ湾深海と、西アフリカと東地中海その他。

2014年の販売量は原油換算 日量298千バレルで、内訳は次の通り。

内訳 米国 西部 Niobrara shale
米国 Marcellus shale 米 メキシコ湾深海  
 
西アフリカ 東地中海



原油価格の値下がりでシェール業者の倒産も増えている。

本年1月初めにテキサス州でシェール開発を手掛けるWBH Energy がChapter 11を申請した。

3月にはQuicksilver Resources Incが、その後、 BPZ Resources Inc.、Dune Energy Inc.、Endeavour Operating Corp、Cal Dive International Inc. が相次いでChapter 11を申請した。

4月30日には、ERG Resources LLC(旧称 Energy Reserves Group L.L.C.) がChapter 11を申請、資産をオークションにかけることとした。

 


 


増収増益となった。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益

 配当

中間 期末
2013/3 10,254 1,570 1,702 1,057 50 50
2014/3 11,658 1,738 1,806 1,136 50 50
2015/3 12,555 1,853 1,980 1,286 50 50
前年比 897 115 174 150 - -
2016/3予

未定

 

営業損益推移 (単位:億円)

  13/3 14/3 15/3 増減
塩ビ・化成品 456 602 503 -99
シリコーン 286 318 334 16
機能性化学品 145 128 153 25
半導体シリコン 219 245 356 112
電子・機能材料 409 410 462 52
その他 56 37 48 12
全社 -0 -0 -3 -3
合計 1,570 1,738 1,853 115


半導体シリコン、電子・機能材料が好調。
塩ビではShintechが若干の減益となったが、原料の供給を受けるパイプラインにトラブルが発生したことも影響したと報じられている。

2010年3月期からセグメントが変更となった。

このため2009年までと2010年以降の各セグメント実績は直接対比はできないが、傾向は示している。

塩ビは一旦減少したが、その後回復、最近は過去を上回っている。
シリコーンの損益は安定。
半導体シリコンは2008年3月期を最高に、2010年3月期に激減、その後も余り増加していない。

Shintechの損益は下記の通りで、同業他社も若干の減益となっている。

Georgia Gulf は2013年1月にPPG Industriesのcommodity chemical divisionと合併し、Axiall Corp.となった。

 




コスモ石油は5月14日、千葉における東燃ゼネラル石油との共同事業の検討状況を報告するとともに、新たに、四日市で昭和四日市石油との事業提携を発表した。

千葉では共同事業会社へ精製設備を一元化する際に、コスモの2系列のうちの1系列(100千バレル/日)を廃棄する。

四日市では両社は今後想定される石油需要減少および高度化法二次告示に対応するため、コスモ四日市の常圧蒸留装置1基を停止する。

ーーー

経産省は、2014年6月に産業競争力強化法第50条に基づき、石油精製業に関する市場構造調査を実施し、石油精製業は、①需要に見合った生産体制にする「設備最適化」や②総合エネルギー企業化も視野に入れた資本や地理の壁を越えた「事業再編」の早急な実施が必要であると結論付けた。

この結果を踏まえ、7月末にエネルギー供給構造高度化法の新たな判断基準を告示し、10月末を期限に、対象となる石油会社に対して、「設備最適化の措置」と「事業再編の方針」を含む目標達成計画の提出を求めた。

残油処理装置の装備率(残油処理装置の処理能力÷常圧蒸留装置の処理能力)の2016年度までの改善を求めている。

2014/3/31時点の装備率 改善率
   55%以上    9%以上
   45%以上55%未満    11%以上
   45%未満    13%以上
 
各社の2014/3/31の装備率
JX日鉱日石エネルギー 46.2% 鹿島石油、大阪国際石油精製を含む。
出光興産 51.5%  
コスモ石油 43.4%  
昭和シェル石油 59.4% 東亜石油、昭和四日市石油、西部石油を含む。
東燃ゼネラル石油 35.9% 極東石油を含む。
富士石油 48.3%  
太陽石油 24.6%  

2014/7/4 経済産業省、2年続きで石油精製能力削減を強制

ーーー

コスモ石油、三井石油、東燃ゼネラル石油の3社は2013年9月30日、コスモ石油千葉製油所と極東石油工業千葉製油所の効率化および最適化機会の追求に向けて、両製油所の共同事業に関する検討を開始することで合意したと発表した。

コスモ石油と東燃ゼネラルは2014年12月19日、下記内容の基本契約書を締結した。

 ・2015年1月に両社で共同事業会社「京葉精製共同事業合同会社」を設立する。
 ・両製油所を結ぶパイプライン敷設を正式合意。
 ・パイプライン完成に先行して両製油所の生産計画を一体的・総合的に立案し、生産効率の向上を目指す。
   また、常圧蒸留装置を含めた設備の最適化についても併せて検討する。
 ・パイプライン完成後、共同事業会社へ精製設備を一元化し、パイプラインを活用することで、年間100億円程度の収益改善を見込む。

2013/10/4 コスモ石油と極東石油工業、千葉製油所の共同事業検討

両社は2015年1月に京葉精製共同事業合同会社を設立し、製油所間のパイプライン建設に着手すると共に、両製油所の常圧蒸留装置を含めた設備の最適化および効率化を検討してきた。

その結果、コスモ千葉の第1常圧蒸留装置を廃棄することが最も合理的であるとの結論に至った。

なお、東燃ゼネラルは2015年3月31日、川崎の公称能力を日量1万バレル削減すると発表した。

ーーー

四日市では、コスモ石油と昭和シェル石油は、コスモ石油の四日市製油所(132,000バレル/日)と昭和四日市石油四日市製油所(255,000バレル/日)の事業提携を2017年3月末から開始し、設備の最適化を通じて両社の競争力強化を図ることで合意した。

(1) 両社は、今後想定される石油需要減少および高度化法二次告示に対応するため、四日市地域における原油処理能力の削減を実施する。

(2)上記の両社原油処理能力の削減は、コスモ四日市の常圧蒸留装置1基を停止することにより実施する。
     昭和シェル石油は、自社の高度化法二次告示対応に相当する石油製品・半製品を昭和四日市石油からコスモ石油に供給する。

(3)両製油所の2次装置を有効活用することにより、高付加価値製品の生産による両社の競争力強化および持続的な安定供給の確保を実現する。

(4)製品タンクなどのオフサイト設備についても、広く連携の可能性を検討する。

各社の製油所とトッパー処理能力は下記の通り。(千bbl/d)

 

トッパー処理能力

 
 当初 高度化法 現状
東燃ゼネラル石油

 

川崎 335 268 258 2015/3/31 10 削減
156 156 156  
和歌山 170 132 132  
合計 661 556 546  
極東石油工業 千葉 175 152 152  
東燃グループ合計   836 708 698  
 
コスモ石油 千葉 240 240 220

No.1 100 →今回廃棄

No.2 120

四日市 175 112 132

No.5   63

 →いずれか1基を停止

No.6   69

80 100 100

 

坂出 140 0 0   
コスモ石油合計 635 452 452  
 
昭和四日市石油 四日市 205 255 255

 コスモ石油に石油製品・半製品を供給

西部石油 山口 120 120 120  
東亜石油 京浜

70

70 70  
昭和シェル 扇町 120 0 0  
昭和シェル合計 515 445 445  


ーーー

 
出光興産は2015年3月30日、高度化法二次告示に則り、4月1日から千葉製油所の常圧蒸留装置の処理能力を200千バレル/日とすると発表した。20千バレル/日削減する。
対応完了には、さらに35千バレル/日削減する必要がある。


社名 当初高度化法今回
出光興産 北海道 140 160 160
千葉 220 220 200
愛知 160 175 175
徳山 120 0 
合計 640 555 535


 


1.三井化学 

若干の減収だが、営業損益は増益となり、当期損益は3年連続の赤字が続いた後、黒字に転換した。
2015年3月期も黒字を見込む。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2014/3 15,660 249 225 -251 3.0 0.0
2015/3 15,501 420 444 173 2.0 3.0
前年比 -160 171 219 424 -1.0 3.0
2015/3 14,100 520 470 250 3.0 3.0

 

 

営業損益対比(億円)           
  2013/3 2014/3 2015/3 前年比 差異内訳   新区分
数量差 交易条件 固定費他 決算期
変更
  2015/3
 
2016/3予
石化 77 253 209 -44 1 -36 11 -20 石化 216 205
基礎化学品 -189 -174 -74 100 -24 63 62 0 基礎化学品 -83 -25
ウレタン -26 -52 -35 17 -17 22 13 -1 ウレタン -35 -15
機能樹脂 84 119 189 70 32 40 7 -9 機能樹脂 187 195
機能化学品 124 150 146 -4 31 1 -30 -6 ヘルスケア 95 120
フィルム・シート -33 9 37 28 8 8 12 0 Food & Package 91 100
その他 -6 -6 8 14 0 0 4 0 その他 -51 -60
全社 12 -50 -60 -10 全社
合計 43 249 420 171 31 98 79 -36   420 520


主に、基礎化学品と機能樹脂事業での交易条件の改善、基礎化学品における固定費削減が貢献し、昨年の増益に続き、更に大幅増益となった。


 

特別損益は、前年の -330億円に対し、-85億円にとどまった。

前年には、ポリウレタン材料事業とフェノール事業の事業再構築費用 257億円を計上している。

   2014/5/16  
 主要企業の2014年3月決算 - 三井化学、東ソー、旭化成 

 

ーーー

2.東ソー

増収増益となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2014/3 7,723 416 495 296 3.0 3.0
2015/3 8,097 514 602 623 5.0 5.0
前年比 374 98 107 327 2.0 2.0
2016/3予 8,100 670 670 430 5.0 5.0

 

 

営業損益対比(億円)           
  2012/3 2013/3 2014/3 2015/3 前年比 差異内訳   2015/3
予想
数量差 交易条件 固定費他
石油化学 125 105 148 69 -79 6 17 -102 151
クロルアルカリ -100 -16 39 83 44 -21 90 -24 134
機能商品 131 90 192 300 108 53 54 1 329
エンジニアリング 57 44 13 33 21 23 0 -3 33
その他 24 22 24 28 4 4     22
合計 237 245 416 514 98 65 161 -128 670

石油化学は、在庫受払差の悪化等により、減益となった。
クロルアルカリは交易条件の改善等により、機能商品は交易条件と数量差で、それぞれ増益となった。

 

ーーー

3.旭化成

増収増益となった。
「円安と原燃料安で外需向け事業が牽引した」としている。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2014/3 18,978 1,433 1,429 1,013 7.0 10.0
2015/3 19,864 1,579 1,665 1,057 9.0 10.0
前年比 886 146 237 44 2.0 -
2016/3 20,000 1,640 1,665 1,060 10.0 10.0





営業損益対比(億円)           
  2013/3 2014/3 2015/3 前年比 差異内訳   2016/3
予想
数量差 売値差 コスト差他
  ケミカルズ 229 389 542 153 4 -20 169 560
繊維 40 86 105 19 16 30 -27 110
  住宅 543 630 592 -38 8 116 -162 580
建材 40 55 41 -14 -9 6 -11 50
エレクトロニクス 28 142 143 1 59 -67 9 165
  医薬・医療 159 303 267 -36 -18 -34 17 255
クリティカルケア -37 -35 41 76 166 -1 -89 80
その他 22 17 9 -8 1   -9 5
全社 -105 -153 -161 -8     -8 -165
合計 920 1,433 1,579 145 227 30 -111 1,640


住宅や医療など国内が中心の事業は停滞したが、ケミカルズ(樹脂、繊維原料、合成ゴム) が好調だった。

 

前年には、 特別損益で事業構造改善費用 225億円を特別損失に計上したが、本年は40億円のみ。

2014/2/27  旭化成と三菱ケミカル、水島地区エチレンセンター集約で合意 

また、前年には特別利益に 受取損害賠償金 535億円 も計上した。

旭化成ファーマが開発したRho-kinase 阻害剤「ファスジル」のライセンス契約に関連して、スイスのActelion社およびその関連会社・役員を被告とする損害賠償請求訴訟で、2014年3月にカリフォルニア州最高裁判所から勝訴確定の決定が下された。

2011/8/24  旭化成、医薬品開発中止に対する損害賠償請求の第一審で勝訴 の付記

 

 

アイルランドの製薬大手のEndo International は5月18日、米同業のPar Pharmaceutical の買収で合意したと発表した。
Par Pharmaceutical 株を所有する TPG Capital North America から負債を含め80億5千万ドルで買収する。

Parの株主には、Endoの株式 15.5億ドル相当と現金41億ドルが支払われる。Par の負債24億ドルも引き継ぐ。

両社の売上高は合算で約42億ドルとなり、米国のジェネリック市場で5位に浮上する。

ーーー

Endo International plc はアイルランドの製薬会社で、DuPont とMerckのJVであったDuPont Merckから分離した。

DuPontが1969年にEndo Laboratories を買収して血液溶剤Coumadin(R) を上市

1991年にMerck との50/50JVのDuPont Merck Pharmaceutical を設立

1997年に3人の役員がEndo Laboratories のジェネリック製品を買収してEndo Pharmaceuticals Inc. を設立(Management Buyout)

DuPont は翌1998年にDuPont Merck Pharmaceutical のMerck持分を買収し、DuPont Pharmaceuticals と改称、2001年6月、DuPont Pharmaceuticals をBristol-Myers Squibb に売却した。

Endoは1999年にAlgos Pharmaceutical Corporation を買収・統合し、上場した。

2014年2月にカナダのスペシャルティ医薬会社 Paladin Labs を買収・統合し、Endo International plc と改称、主に米国で事業展開するが、本社をアイルランドに置いた。

同社は2014年10月、米国のAuxilium Pharmaceuticals Inc の買収で合意した。
現金と株式の組み合わせで約26億ドルを支払う。(前月に22億ドルでの買収を持ちかけたが、拒否されていた。)


2015年2月にカナダの製薬大手
Valeant Pharmaceuticals International が米同業Salix Pharmaceuticals買収することで合意したが、Endo International plcが3月11日、Salix Pharmaceuticalsに対して1株当たり175ドル、総額112億ドルの現金と株式での買収提案のレターを送った。

しかし、Valeant Pharmaceuticals は3月16日、新しい条件での買収で Salix Pharmaceuticals と合意、Endo International は買収提案を取り下げた。

2015/3/18  Salix Pharmaceuticals の買収合戦

今回、Par Pharmaceutical を買収する。


下記の通り、買収合戦が続いている。

Par Pharmaceutical は1978年に設立されたジェネリック医薬品メーカーで、TPG Capital North America が2012年に約19億ドルで買収し、非公開会社とした。
     (公開会社を買収して非公開化するのを、take-private transactionと呼ぶ。)

次の3つの会社に分かれている。
 
Par Pharmaceutical :high-barrier-to-entry generic drugs
 Par Specialty Pharmaceuticals :niche, innovative brands
 Par Sterile Products :branded and generic aseptic injectable (無菌注射)pharmaceuticals

ーーー

ジェネリック医薬品会社も買収合戦を続けている。

2015/4/16    ジェネリック医薬品大手のMylan、アイルランド製薬大手に買収提案

2015/4/24 イスラエルのTeva Pharmaceuticals、同業のMylanに買収提案




1. 三菱ケミカルホールディングス

増収増益となった。

下期から大陽日酸が連結対象となったことも増益に貢献した。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2014/3 34,988 1,105 1,031 322 6.0 6.0
2015/3 36,563 1,657 1,631 609 6.0 7.0
前年比 1,574 552 600 286 1.0
2016/3予 40,000 2,270 2,140 650 7.0 7.0




営業損益対比(億円)           
  2014/3 2015/3 前年比 増減内訳   2016/3
予想
売買差 数量差 コスト
削減
その他
ケミカルズ 7 92 85 25 -14 45 29 520
ポリマーズ 23 268 245 389 4 78 -226 350
エレクトロニクス -55 -27 28 -33 18 42   5
デザインドマテリアルズ 475 561 86 2 65 51 -32 660
ヘルスケア 673 770 97 -231 277 68 -17 775
その他 57 65 8   2 6   40
全社 -75 -71 4     4   -80
合計 1,105 1,657 552 152 352 294 -246 2,270



ポリマーズ(ポリオレフィン、MMAなど)が売買価格差などで大幅増益となった。
ケミカルズでは 下期から大陽日酸が連結対象となったことが増益に貢献した。(産業ガス 184億円)
ヘルスケアは薬価改定で大幅値下がりとなったが、ロイヤリティ増などもあり、増益となった。


グループ別の営業損益は以下の通りで、  2011年3月期と比較すると、三菱化学(ケミカルズ、ポリマーズ等)と三菱レイヨン(MMA等)の減益が大きい。
三菱レイヨンは前年比では大きな増益となっている。

大陽日酸を下期から連結対象とした。
   2014/5/19   三菱ケミカルホールディングス、大陽日酸株式の公開買い付け 

  2011/3 2012/3 2013/3 2014/3 2015/3
三菱化学 881 231 42 231 194
田辺三菱製薬 766 690 690 591 671
三菱樹脂 166 106 128 201 278
三菱レイヨン 410 303 68 88 289
生命科学Institute - - - - 55
大陽日酸 - - - - 189
調整 42 -24 -26 -6 -19
合計 2,265 1,306 902 1,105 1657


当期の特別損益には以下を含む。(億円) 

段階取得差益  341  大陽日酸子会社化に伴うもの
固定資産売却益 130  
     
減損損失 -312  
     

減損損失 -312億円の主な内容 (前年は-31億円) 

インド テレフタル酸 104億円
田辺三菱 かずさ事業所 44億円
同   鹿島工場 22億円
同   販売権 16億円
同   大阪事務所 12億円
中国 負極材 17億円
水島 正極材 17億円
マレーシア 産業ガス 12億円


田辺三菱製薬の実績は以下の通り。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2014/3 4,127 591 619 454 20.0 20.0
2015/3 4,151 671 677 395 20.0 22.0
前年比 24 80 58 -59 - 2.0
2016/3予 3,960 675 670 405 22.0 22.0


薬価改定による値下がり損 -290億円
ロイヤリティ収入 604億円(前年比 +60.7%)


 

ーーー

2.住友化学 

増収増益となったが、医薬品が大幅減益となった。

前年に続き、特別損益に多額の減損損失を計上したが、当期損益は522億円の黒字となった。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2014/3 22,438 1,008 1,111 370 6.0 3.0
2015/3 23,767 1,273 1,574 522 6.0 3.0
前年比 1,329 265 463 152 - -
2016/3 22,500 1,450 1,600 800 8.0 6.0

 



営業損益対比(億円)           
  2013/3 2014/3 2015/3 前年比 増減内訳   新区分
価格差 コスト差 数量差等   2015/3 2016/3予
基礎化学 -64 -109 -4 105 100 15 -10 エネルギー・
機能材料
8 40
石油化学 -32 49 212 163 110 -5 58 石油化学 208 170
情報電子化学 117 349 324 -25 -340 55 260 情報電子化学 324 410
健康・農業関連 263 382 569 187 65 5 117 健康・農業関連 561 630
医薬品 309 471 290 -181 -90 60 -151 医薬品 290 320
その他 80 84 157 73   -15 31 その他 -118 -120
全社 -222 -218 -275 -57       全社
合計 450 1,008 1,273 265 -155 115 305   1,273 1,450


石油化学、基礎化学が価格差により大きく採算向上した。基礎化学はほとんどトントンになった。
健康・農薬関連も好調。
情報電子化学は大幅値下がりで若干の減益、医薬品は大幅減益となった。

なお、営業外損益に含まれる持分法投資損益は増加した。
 
PetroRabighなどがようやく、損益に貢献し始めた。

2013/3 54億円
2014/3 120億円
2015/3 239億円

 

特別損益の推移は以下の通りで、減損損失と事業構造改善費用として、前年に続き、多額の損失を計上した。 


2011/3 2012/3 2013/3 2014/3 2015/3
投資有価証券売却益 98 34  
減損損失 -32 -36 -229 -218 -333
事業構造改善費用 -41 -64 -108 -106  
投資有価証券評価損 -47 -15 -322
持分法投資損失 -260  
その他 -11 -7 4 56 247
合計 -84 -268 -379 -249 -407


減損損失は以下の通り。

(2013/3 229億円)
千葉 エチレン等 63 2013/2/4 住友化学、エチレン国内生産から撤退
大分  レゾルシン 66 事業環境悪化で収益性低下
中国 偏光フィルム 57 環境変化で事業計画見直し(建設途中)
ポーランド 偏光フィルム 32 営業停止を決定
 
(2014/3 218億円 )
新居浜  カプロラクタム

 73

2015年末 1系列停止
米国  研究開発費用  43  
サウジ 工業団地インフラ      37  
遊休厚生施設      24  
千葉 日本オキシラン     18 2013/11/29 日本オキシランのSM、PO、PGを2015年に停止
 
(2015/3  333億円)    
英国 EL材料、デバイス 126  
新居浜 アルミナ 64  
新居浜 医薬品(撤去) 52  
韓国 サファイア基板 48  
韓国 ダッチセンターパネル 16  


大日本住友製薬の実績は以下の通り。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2014/3 3,877 421 406 201 9.0 9.0
2015/3 3,714 233 233 154 9.0 9.0
前年比 -163 -189 -173 -46 - -
2016/3予 3,920 270 265 180 9.0 9.0


売上高は、米国や中国など海外販売は好調だったが、薬価改定の影響で国内販売が大幅に落ち込んだ。

抗精神病薬「ラツーダ」の広告宣伝費が膨らみ販管費が増え、営業利益は45%減の232億円。


 

 


2015年3月期決算がほぼまとまった。

 各社の決算状況は https://www.knak.jp/kessan/ 参照


化学会社の場合、全体として、前々年、前年と比べ、好決算である。

但し、巨額の特別損失を計上している会社もある。追って、個別に分析する。

 

営業損益対比  
   
経常損益対比  
   
当期損益対比  

                      2014/11/3 トクヤマ、マレーシアの多結晶シリコン計画で特別損失計上


但し、医薬品会社は必ずしも好調ではない。(グラフの斜線はIFRS方式)

売上高対比
 
営業損益  
  武田薬品はIFRS方式のため、訴訟補填引当を含む
 
経常損益 (IFRS方式会社は税引前損益)
 
当期損益(株主帰属損益)
第一三共はランバクシーがサン・ファーマに吸収合併されたことによる子会社合併差益2,787億円を計上

 


世界保健機関(WHO)は5月9日、西アフリカで広がったエボラ出血熱感染で死者数の最も多いリベリアでの流行が終息したと宣言した。西アフリカの主要な感染拡大国での終息宣言は初めて。

エボラ熱の潜伏期間は最長21日で、WHOは潜伏期間の2倍の42日間、新たな感染例が出ない状態を終息の目安としているが、最後の感染者確認から42日が経過したことを受けて終結を宣言した。

今回のエボラ熱流行は、2013年12月にギニアで始まり、2014年3月にエボラ熱と確認された。
WHOによると、死者数(疑い例を含む)は約1万1000人で、リベリアは最多の4716人
感染者は1万564人)となっている。

リベリア政府は2014年7月、感染拡大を防ぐため国境を封鎖し、同8月には非常事態宣言や夜間外出禁止令を出して抑え込みをはかった。

他の感染拡大国のギニア、シエラレオネでは5月3日までの1週間の感染者の確認件数がそれぞれ9件と鈍化しているものの、引き続き感染例が報告されている。

「国境なき医師団」では、「3カ国全てで、42日間感染例なしを記録するまでは手綱を緩めることはできない」と話している。

ーーー

WHOは潜伏期間の2倍の42日間、新たな感染例が出ない状態を終息の目安としているが、異なる情報も報道されている。

米疾病対策センター(CDC)の医師らは5月7日、エボラ出血熱からほぼ回復し、血液からウイルスが検出されなくなって数か月たった男性の目の中で、エボラウイルスが生き残っているのを発見したと、New England Journal of Medicine に発表した。
       http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1500306?query=featured_home

男性は米国の医師で、2014年9月、西アフリカのシエラレオネで医療活動中に感染、米アトランタの病院で未承認薬などによる治療を受け、1か月半後に血液からウイルスが検出されなくなって退院した。

しかし、その約2か月後、左目が痛くなり、青い瞳が緑に変色した。検査の結果、目の内部を循環する水「房水」からエボラウイルスが見つかった。
現在は目の症状も回復しつつあるという。

WHOは5月8日、エボラ出血熱から回復した男性から女性への性交渉による感染の可能性について、「かなり強い」とする見解を発表した。
   http://www.who.int/reproductivehealth/topics/rtis/ebola-virus-semen/en/

WHOは、症状が出てから82日間たった後でも精液からエボラウイルスを分離することがあるとの研究事例を紹介し、回復後に血液からウイルスを検出しなくなった後かなり経過してからも、性交渉による感染拡大がありえるとした。

そのため、回復後も診断を受け、精液を2回検査してウイルスを検出しなくなるまでか、検査できない場合は少なくとも発症後半年間、男性がコンドームを正しく装着することを勧告した。

回復した女性から男性への性交渉による感染について、可能性は低いとしつつも「理論上は可能性あり」とした。




DuPontの株主総会が5月13日に開催され、取締役12名全員の留任が承認された。
 

昨年来、物言う株主(Activist)のNelson Peltz が率いる米Trian Fund Management が会社の分割を要求している。

既に発表されているPerformance Chemicals部門に加え、DuPontを2社に分割する。
   GrowthCo      (Agriculture, Nutrition and Health, Industrial Biosciences)
   CyclicalCo/CashCo    (Performance Materials, Safety and Protection, Electronics and Communications)

しかし、DuPont が反対姿勢を崩さないので、要求の実現を目指すため、Peltz氏を含めて4人の取締役を選任するよう求め 、委任状争奪戦となった。

DuPontは4月6日、株主に対して同社の過去の実績、今後の方針などを説明する詳細資料を発表した。

資料では、DuPontのこれまでの方針、今後の方針が正しいこと、Trianの要求する会社分割がいかに問題であるかを説明、Trianが退任を求めている4人の現取締役が適任であるとし、逆にTrian が推薦している4人の取締役候補が経験などの点からDuPontの取締役には適していないとしている。

2015/4/10  DuPont、「物言う株主」と株主総会で対決

米上院は5月12日、大統領に強力な通商交渉権限を与える貿易促進権限(TPA) 法案の審議入りを否決した。

下院も審議入りをしておらず、5月中の法案可決は極めて難しくなり、TPP交渉の大筋合意は6月以降に遅れる公算が大きい。

早期可決を目指す共和党は、改めて動議の採択を求める。  末尾の付記参照

ーーー

米超党派議員は4月16日、TPA法案で合意し、議会に提出した。

法案名は、Bipartisan Congressional Trade Priorities and Accountability Act of 2015 (TPA-2015 ) となっている。

民主、共和両党の議員が法案の最終的な細部をめぐって半年間議論を進めてきた。

4月22日に上院財政委員会で可決(多くの修正案が出されたが原案で可決)、4月23日に下院歳入委員会で可決(為替操作への報復措置を盛り込む修正案は否決)した。

しかし、与党・民主党内での反対論が根強く、審議が順調に進むかは見通せない。

2015/4/18 米超党派の議員、TPA法案を議会に提出  


上院は5月12日にTPA法案について、本会議での審議開始に必要な動議を採決したが、結果は次の通り。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 51 1   52
反対 1 42 2 45
棄権 2 1   3
合計 54 44 2 100

野党の共和党は51名が賛成したが、与党民主党からは賛成は1名だけで、52対45で否決された。

米国の上院では規則により上院の5分の3以上の議員(60人以上)の賛成がないと可決されない。

一つはフィリバスター制度で、演説を長時間続けて議事妨害することが出来る。
上院規則22条によりフィリバスターを宣言するだけでフィリバスターが有効となる。
上院の5分の3以上の議員(60人以上)が打ち切りに賛成した場合は、1時間以内に演説者は演説をやめなければならない。

更に、審議を終わらせて採決に進むには、全会一致の賛成が必要となり、上院議員が1人でも反対すると、採決に進むには再び5分の3の賛成票が必要となる。5分の3の賛成が得られない場合は、その法案は廃案とみなされる。

結局のところ、過半数の賛成を得ても、60人以上の賛成がないと、否決となる。

民主党は、為替操作に関する措置などを含む他の通商関連法案とTPA法案を一緒に扱うことを要求していた。
しかし
オバマ大統領や下院が為替条項に反対しているため、審議開始の対象から外し、民主党が反発した。

民主党が求める関連法案には、交渉参加国が「自国の為替政策を制約する」と懸念する条項が含まれ、米政府高官は「TPP交渉を頓挫させかねない」としている。


これを受け、日本の鶴岡首席交渉官は、「これは交渉をまとめるための必須の条件が整わないということになり、その中で交渉を進展させることは、なかなか難しいだろうと思う」と懸念を示した。



付記

上院は5月14日、再度投票を行い、民主党から13名が賛成し、65対33で本会議での審議入りが決まった。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 52 13   65
反対   31 2 33
棄権 2     2
合計 54 44 2 100


オバマ大統領の身内の民主党議員に対する説得活動が功を奏した。

米メディアは「前日の否決がオバマ大統領の優先政策を阻害したと受け止められ、民主党が軟化した」との見方を伝えた。

今回の合意で、上院ではTPA法案が通過する公算が大きくなったが、下院では依然、民主党を中心に反対論が根強い。

 

 


ニューヨーク近郊にあるIndian Point 原子力発電所で5月9日午後6時ごろ、変圧器から火が出て運転中の原子炉が自動停止するトラブルがあ った。

運営するEntergy Corpによると火はすぐに消し止められ、けが人などは出ていない が、2基の原子炉のうちのUnit 3が手順に基づき自動停止した。

NRCによると、火が出た変圧器は原子炉の建屋から180メートルほど離れた場所にあり、原子炉の状態も安定して おり、外部への影響はないという。

しかし、この火災で変圧器が破裂して石油が地面に流れ出し、保水タンクからあふれてハドソン川に大量の石油が流出し、環境への影響が懸念されている。
NRCは、流出した石油の量を数千ガロンと推定している。

クオモ知事はハドソン川の野生生物に及ぼす影響について、「明らかに良くない」との見方を示し、生態系への影響についてさらに詳しく調査すると表明した。

Indian Point 原発はニューヨーク中心部から北におよそ60キロほど北のハドソン河沿いにある。

現在、2基が動いている。

  炉型 能力 運転開始 状況  
1号機 加圧水型 275MW 1962 1974停止  
2号機 同上 1,025MW 1973 運転中 2013/9に40年期限、20年延長審査中
3号機 同上 1,040MW 1976 運転中 2015/12に40年期限、20年延長審査中


2号機は既に40年期限が到来しているが、期限の5年前に延長申請を提出している場合、"Period of Extended Operation" 規定で稼動継続が認められる。
 

ニューヨーク市民の総電気使用量の30%は Indian Point 原発から供給されている。
ニューヨークは送電線が過密状態のため遠方から電力を受け入れる能力が制限されており、市への電力供給の安定性はIndian Pointに大きく依存している。


同原発はこれまでも変圧器事故などを起こしており、2012年の変圧器事故での川への石油流出では罰金を課せられている。
いくつかの環境グループが原発の永久停止を要求していた。

福島の原発事故では、米国は在日米国人に対し80km 圏内を立ち入り禁止としたが、Indian Point原発から半径80km 内には、ニューヨーク市の800 万人を含め2,000 万人近くの人々が居住している。

仮に事故が起こった場合、これだけの人数を避難させることは不可能で、東日本大震災後、ニューヨーク州知事の側近が運営会社に施設閉鎖の方針を伝えたと報じられた。

同原発は、日に25 億ガロン(94.6 億リットル)の水を冷却水としてハドソン川から取水しているが、NRCからライセンス更新許可を得るためには、州政府からハドソン川の取水許可を得る必要がある。

今回の石油流出を含め、厳しい立場に立たされている。


日本人の多く住むWhite Plaines も近くにある。
ニューヨークの日本総領事館でもホームページにIndian Point原発の「緊急災害のための心構え」を掲載している。
   http://www.ny.us.emb-japan.go.jp/jp/j4/01.html

 

 

ここから本文です

Syngentaは5月8日、MonsantoからSyngentaの株式を1株449スイスフラン、総額450億米ドル(うち45%を現金 )で買収する提案を受けたが、取締役会はいろいろな観点から十分に検討したうえで満場一致で拒否することを決めたと発表した。

現在のSyngentaの株価は短期的な通貨変動とコモディティの価格変動の影響を受けて下げっているが、売上の50%以上を占める発展途上国市場で事業が好調である。

同社の戦略はこれらの市場で成功し、2014年には5年連続で2桁の伸びを示した。新製品もグローバルに売上が伸びており、開発中の製品も多い。

Monsantoの提案額はSyngenta の価値を過小評価している。また、多くの国で行われる独禁法等によるチェックのリスクを過小評価している。


これを受け、Monsantoも買収提案をしたことを発表した。

両社の統合は両社の株主に大きな価値を生む。

統合は大きいシナジーをもたらし、需要家に総合的な解決策を供与できる。

独禁法については、専門家と十分な検討をしており、必要な認可を得る自信があるとしている。

関係者によると、統合事業の一部の売却を検討しており、既に Bayer などに売却を打診したという。


アナリストは、Singentaの将来は明るく、もっと高いプレミアムを望んでいるのは理解できるとするとともに、両社の企業カルチャーは異なっており、統合すればかなりの問題が出るだろうと見ている。

Monsantoの買収価格は、過去12ヶ月のSyngenta の金利・税・償却前利益の17倍に相当する。過去10年のアグロケミカル大企業の取引価額の中間値は約12倍であり、成立すれば高価格での取引の一つとなる。

ーーー

Syngentaは2000年にAstraZeneca (ICIから独立したZeneca とスウェーデンのAstra が1999年に合併)の農薬部門と、Novartis(Ciba Geigy とSandozが1997年に合併)の種子部門が2000年に統合してできた会社で、農薬(殺虫剤、除草剤、殺菌剤)と穀物・野菜・花の種子、ローン&ガーデン製品を扱う。

Monsantoについては下記を参照。

2015/4/7    国際がん研究機関、米モンサントの除草剤に発癌性の恐れを発表   


Syngentaは農薬の世界最大のメーカーであり、Monsantoは種子と遺伝子組替作物(コーンや大豆など)の世界最大のメーカーである。

仮に買収が成功すれば、農業におけるグローバルなリーダーとなり、Bayer、BASF、DuPont、Dow などにとり、恐ろしい競争相手となる。





 

 


全米鉄鋼労組(USW:United Steelworkers) の石油精製産業の労働者が35年目に初めてのストライキを始めた。

全国水準の団体交渉は3年ごとに行われる。3万人のうち多くの労働契約は1月31日付で終了した。

石油労働者を代表する鉄鋼労組と、エネルギー業界を代表するShellは、1月21日から賃金と作業場の安全条件などをめぐる交渉を行ったが、意見の相違を狭められなかった。

労組側は、賃上げの他にも超過労働、不安定な労働条件、火災や化学ガス放出と漏出、爆発などの危険な作業場の安全要件、労組弾圧、非組合員の契約職拡大などの問題の改善の要求をしている。

2月1日正午から9つの工場でストライキに突入、2月8日に更に2工場が参加し、その後更に、Shell とSaudi Aramco のJVのMotivaの3製油所とShell のNorcoの石化工場が参加し、合計15工場となった。

これ以外の工場では、旧労働協約を1日ごとに延長して操業を続ける。

2015/2/17    米国で石油精製産業のストライキ


参加工場は下記の通り。

    製油所 その他
Shell Deer Park, Texas Chemical
Norco, Louisiana   Chemical
Motiva
 (
Shell / Aramco)
Norco, Louisiana  
Port Arthur, Texas  
Convent, Louisiana  
Tesoro Anacortes, Washington  
Martinez, California  
Carson, California  
Marathon Catlettsburg, Kentucky  
Texas City, Texas Co-Generation
BP Whiting, Indiana  
BP-Husky JV Toledo, Ohio  
LyondellBasell Houston, Texas  
合計   12 3


3月12日に暫定合意に達した。

概要は下記の通り。

・これまでより1年長い4年の契約。

・賃上げ:初年度 2.5%、次の2年に各3%、4年度に3.5%

・健康保険:保険金を会社/従業員 80/20で分担

具体的には各工場ごとに組合員の投票で賛否を決め、更に会社側と協定を結ぶこととなる。


この結果、ストに入っていた15工場のうち、下の(黄色表示)の5工場を除き、職場復帰した。

スト中の5工場の状況は以下の通り。

Marathon 交渉中
BP BPとUSWは5月7日にスト終結の仮合意に達した。
職場復帰の契約を結んでから、組合員による賛否の投票を行う。
BP / Husky 交渉中
Lyondell Basell 会社側は "last, best and final" という提案を行ったが、以前の契約にあった残業時の premium pay 条項がなかったため、組合は圧倒的多数でこれを拒否した。

この結果、会社側は新提案を行い、組合側は5月7日、これを受け入れた。 premium pay 条項
はないが、double-time 条項が入ったとされる。

職場復帰契約はまだ締結されていない。

 

 

 

希少病の治療薬を手掛ける米Alexion Pharmaceuticalsは5月6日、同業の米Synageva BioPharma を総額84億ドルで買収すると発表した。

AlexionSynageva1株あたり、現金115ドルとAlexion株 0.6581株を支払う。買収により、2017年までに少なくとも150百万ドルの節約効果が見込めるとしている。

Synagevaの開発品を取り込み、品ぞろえを強化する。今年の半ばの手続き完了を見込む。

ーーー

Alexion はSoliris® (eculizumab) を開発し、現在世界中で命に係わる超稀少の2つの病気、発作性夜間血色素尿症(PNH) と非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の患者に供給している

2007年に上市し、2014年には20億ドル以上の売上高となっている。2014年1月にはFDAがSolirisを
腎移植患者の移植後臓器機能障害の予防に対しOphan Drug 指定した。

Alexion は2011年12月28日、Enobia Pharmaの全株式を取得する契約に署名した。

Enobiaはモントリオールおよびマサチューセッツ州ケンブリッジに本社を置き、極めてまれな生命を脅かす遺伝的代謝疾患患者の治療法の開発を専門とした民間のバイオ製薬会社。

Enobiaの開発したStrensiq™(Asfotase alfa)は、承認済みの治療法がない極めてまれな生命を脅かす遺伝的代謝疾患の1つである低ホスファターゼ血症(HPP)患者を対象としたヒト組換えアルカリホスファターゼ酵素補充療法で、2015年の上市が期待されている。

今回買収するSynageva BioPharmは、血液と肝臓に脂肪成分が蓄積し死に至る Lysosomal Acid Lipase Deficiency(リソソーム酸性リパーゼ欠損症)の治療薬の Kanuma™ (sebelipase alfa) を持ち、現在米国と欧州で販売の認可を申請中。

既に上市しているSoliris® に、2015年にも承認を得る見込みのStrensiq™ とKanuma™ を加え、3つの稀少薬を持つこととなる。

Alexionの上市、開発中の製品は下記の通り。

Synageva BioPharmは以下の稀少病のための医薬品を開発中。

ーーー

希少疾病治療薬メーカーの買収が続いている。

2015/4/4   希少疾病治療薬メーカーの買収 続く    



アジア開発銀行(ADB)の関連会合が5月2日、年次総会が5月4日、アゼルバイジャンの首都バクーで開幕した。

中尾武彦総裁は記者会見で、ADBの融資能力を2017年に、現在の年間約130億ドルから最大で200億ドルに拡大すると発表した。

中所得国に市場の水準に応じた金利で貸し出す「通常資本財源」と低所得国に低金利で融資する「アジア開発基金」とを一本化する。

ADBの借入限度枠は、払込資本+準備金と、非借入加盟国からの請求払資本の合計額を超えることはできないこととなっている が、別途ドナー供与国が資金を拠出するアジア開発基金をADBの自己資本に統合することで信用の裏付けとなる資本力を高め、拡大した融資枠の8割をインフラ向けにあてる。

2013年末で171億ドル、現在約180億ドルの自己資本(調整後払込資本+準備金)を2017年1月に530億ドルに拡大する。

協調融資と合わせ、年間融資額は2014年の230億ドルから400億ドル近くまで増える。

現在ADFローンを受けている貧しい開発途上国は拡大したOCRから現在のADFローンと同じ条件で融資を受けられる。ADFローンはグラント用のみが残ることとなる。

中尾総裁は「アジアインフラ投資銀行(AIIB) とは関係ない」としたが、中国主導でAIIBの設立準備が進む中、日米が主導するADBは機能を強化する。

計画には「融資契約までにかかる期間を半年短縮」、「調達手続きの迅速化」などが盛り込まれた。加盟国からは、手続きが煩雑で時間がかかるとの不満が上がっていた。

融資対象事業の調査から実際の契約までにかかる期間は平均21カ月かかっているが、これを15カ月まで短縮する。

加えて、現地駐在員事務所に決裁権限の一部を委ねる、事務所職員を増員などの改革を行い、業務を迅速化する。

また、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)と、協調融資を行う考えも示した。

 

ADBは5月4日、アジアでのインフラ整備に民間企業が資金を投じやすくするための信託基金を設立したと発表した。

日本が4千万ドルを拠出し、カナダ、オーストラリアの各政府とADBからの拠出分を足して計7400万ドルを集めた。欧州も関心を示しており、規模は将来的に最大1億5千万ドルまで拡大する見通し。

ADBは、三菱東京UFJ、みずほ、三井住友銀行を含む日英仏などの8銀行と協力し、当事国政府に代わって事業調査や事業者の選定、契約書の作成などに資金を出し、民間企業の投資判断を手助けする。

中尾武彦総裁はAIIBとの協力を明言しており、新基金がAIIBの投融資先の発掘にも活用される可能性がある。

ーーー

ADBの活動の財源は、通常資本財源(OCR) と特別基金で構成されるが、特別基金の中心はアジア開発基金(ADF)である。

通常資金財源(OCR)は中所得国に市場の水準に応じた金利で貸し出すもので、財源は 1) 払込資本金、2) 準備金(累積利益)、3) 借入金からなる。

2013年末の状況は下記の通り。

   授権資本   163,840 百万ドル  
   応募済資本    162,809   日本は25,510百万ドル
   請求払資本   154,640         24,230百万ドル
   払込資本   8,169                    1,280百万ドル
         
   同 調整後   5,885    
   準備金   11,253    
   自己資本 合計   17,138    
   借入残高   61,615    


応募済資本と払込資本の差である請求払資本は、ADBの借入先の大規模な債務不履行という不測の事態が発生した場合にのみ、ADBの債権者(ADB債券を保有する投資家と ADB保証債務の保有者)保護を目的として利用することができ るが、過去にADBが請求払資本の実行を請求した例はない。

メンバー各国とその出資比率は下の表の通り。

参加国は、域内が48カ国、域外が19カ国の合計67カ国。
域内のうち、借入国が40カ国、非借入国が8カ国で、借入国のうち17カ国はADFのみ、12カ国はOCRとADFの両方、残り11カ国がOCRのみとなっている。

出資比率は日本が15.67%、米国が15.56%であるのに対し、GDPが日本の約2倍の中国は6.47%にすぎない。

中国など新興国は経済規模に応じた資本構成にするための増資を求めてきたが、今回の改革に増資は盛り込まれなかった。

IMFも2010年に、新興国の出資比率を引き上げ、理事会への登用を増やす「IMF改革」に合意したが、米国では議会の賛成が得られず、批准されていない。

IMFへの出資比率 (%)
現状   改革後
米国 17.67 米国 17.41
日本 6.56 日本 6.46
ドイツ 6.11 中国 6.39
英国 4.51 ドイツ 5.59
フランス 4.51 英国 4.23
中国 4.00 フランス 4.23
イタリア 3.31 イタリア 3.16
サウジ 2.93 インド 2.75
カナダ 2.67 ロシア 2.71
ロシア 2.50 ブラジル 2.32
 

「米国議会は中国の影響力拡大を懸念しており、増資の承認を得るのは難しい」とされており、これらに対する反発がAIIBの設立の契機の一つとなった。


中国の楼継偉財政相は講演で現在のADBの出資比率を批判し、ADBが資本の不公平問題に取り組むことを期待する 」と述べた。

これを受け、中尾総裁は5月4日の講演で、 「近い将来、加盟国に増資の支持を求める」と各国に検討を依頼した。

実施時期は未定。増資の際には「出資比率の変更をあり得る」との認識を示したが、調整は難航すると思われる。


アジア開発基金(ADF)は、1人当たりのGNP が低く債務返済能力に限りがある開発途上加盟国に対して、OCRよりも緩やかな条件で貸付けするもの。

貸付条件は、
(1)プロジェクトに対する貸付の返済期間は8年の据置期間を含む32年、
(2)セクター開発などプログラム・ローンの返済期間は8年の据置期間を含む24年、
(3)新規貸付はすべて、据置期間中は1%の金利、その後は1.5%の金利(元本は均等償還)である。

30ヵ国のドナー供与国が資金を拠出し、約4年ごとに増資が行われる。
日本はADFの最大ドナー国で、 2014年末現在、全体31,794百万ドルの約44%(13,877百万ドル)を拠出している。
その他の主なドナー国は、日本に次いでアメリカ(3,972)、ドイツ(1,940)、オーストラリア (1,936)、カナダ (1,904) の順となっている。

特別基金にはそのほかに、日本が全額拠出し、プロジェクト準備技術援助や、技術移転に関する支援に使う日本特別基金(JSF) 、日本が拠出するADB研究所特別基金、日本が焼く100億円を出資した貧困削減日本基金(JFPR)がある。

加盟国は以下の通り。

   参考 アジア開発銀行(ADB) とアジアインフラ投資銀行(AIIB) 加盟国対比  

    参加 出資
比率
投票権

ADF
拠出額
2014/end

ADB
借入
対象
ADF
借入
対象
AIIB
参加
(域内)   % % 百万ドル      







日本 1966 15.670 12.835 13,877     X
豪州 1966 5.810 4.946 1,936    
韓国 1966 5.058 4.345 437    
ニュージーランド 1966 1.542 1.532 153    
台湾 1966 1.094 1.173 92     X
香港 1969 0.547 0.736 94     X
ブルネイ 2006 0.354 0.581 18    
シンガポール 1966 0.342 0.572 18    
(小計8カ国)   30.417 26.720        





中国 1986 6.470 5.474 81  
インド 1966 6.357 5.384 15  
インドネシア 1966 5.173 4.437 15  
マレーシア 1966 2.734 2.486 23  
フィリッピン 1966 2.392 2.212    
パキスタン 1966 2.187 2.048  
タイ 1966 1.367 1.392 15  
バングラ 1973 1.025 1.119  
カザフスタン 1995 0.810 0.946 2  
ウズベキスタン 1995 0.676 0.840  
スリランカ 1996 0.582 0.764  
ミャンマー 1973 0.547 0.736  
アゼルバイジャン 1999 0.447 0.656    
ジョージア 2007 0.343 0.573  
ベトナム 1966 0.343 0.573  
アルメニア 2005 0.300 0.538   X
キルギス 1994 0.300 0.539  
タジキスタン 1998 0.288 0.529  
トルクメニスタン 2000 0.254 0.502     X
ネパール 1966 0.148 0.417  
パプアニューギニア 1971 0.094 0.374   X
フィジー 1970 0.068 0.353     X
カンボジア 1966 0.050 0.338  
アフガニスタン 1966 0.034 0.326   X
モンゴル 1991 0.015 0.311  
ラオス 1996 0.014 0.310  
チモール 2002 0.010 0.306   X
ソロモン諸島 1973 0.007 0.304   X
バヌアツ 1981 0.007 0.304   X
ブータン 1982 0.006 0.303   . X
キリバス 1974 0.004 0.302   X
モルディブ 1978 0.004 0.302  
ミクロネシア 1990 0.004 0.302   X
ナウル 1991 0.004 0.302   X
トンガ 1972 0.004 0.302   X
クック諸島 1976 0.003 0.301     X
マーシャル諸島 1990 0.003 0.301   X
パラウ 2003 0.003 0.301   X
サモア 1966 0.003 0.301  

X

ツバル 1993 0.001 0.300   X
(小計 40カ国)   33.079 38.405        
合計 48カ国   63.496 65.125        
               
(域外)              
米国 1966 15.560 12.747 3,972     X
カナダ 1966 5.252 4.500 1,904     X
ドイツ 1966 4.344 3.773 1,940    
フランス 1970 2.337 2.168 1,335    
英国 1966 2.051 1.939 1,248    
イタリア 1966 1.815 1.750 938    
オランダ 1966 1.030 1.122 806    
スイス 1967 0.586 0.767 524    
オーストリア 1966 0.342 0.572 283    
ベルギー 1966 0.342 0.572 241     X
デンマーク 1966 0.342 0.572 296    
フィンランド 1966 0.342 0.572 165    
アイルランド 2006 0.342 0.572 72     X
ルクセンブルグ 2003 0.342 0.572 50    
ノルウェー 1966 0.342 0.572 246    
スペイン 1986 0.342 0.572 403    
スウェーデン 1966 0.342 0.572 378    
トルコ 1991 0.342 0.572 115    
ポルトガル 2002 0.114 0.390 103    
合計 19カ国   36.504 34.875        
    % % 百万ドル      
総合計 67カ国   100.00 100.00 31,794      


2013年の実績は下記の通り。(百万ドル)

  ソブリン ノンソブリン 合計
OCR 特別
基金
合計 OCR 特別
基金
合計 OCR 特別
基金
合計
融資 8,761 3,007 11,768 1,425   1,425 10,186 3,007 13,193
出資       142   142 142   142
グラント   849 849         849 849
保証       35   35 35   35
技術協力   150 150   6 6   156 156
小計 8,761 4,006 12,767 1,602 6 1,608 10,363 4,012 14,375
協調融資 3,715 2933 6,648
合計 16,482 4,541 21,023

中長期資金として11,975百万ドル (2012年は13,217百万ドル)、短期資金として2,518百万ドル (2012年は5,684百万ドル) の借入金を調達した。

 


ADBの融資残高(2014年6月末現在のOCR 残高 793億ドル)の内訳は下記の通り。

 
 

 




だいぶ前になるが、浜田宏一・安達誠司著 「世界が日本経済をうらやむ日」を読んだ。        


内容紹介

アベノミクスにより、株価は約2倍、円安にもなり、景気は回復しつつある。とはいえ、いまだに「賃金が上がっていない」「生活はよくなっていない」など、アベノミクスに懐疑的な人もいる。
そこで本書では、ノーベル経済学賞に最も近いといわれ、イェール大学名誉教授、兼、内閣官房参与である著者が、「経済の真実」について、経済が苦手な人にでも理解できるよう、わかりやすく伝授。

カスタマーレビューでは次のようなコメントが続く。

日本経済の現状を正しく理解させるタイムリーな良書
アベノミクス効果をわかりやすく説明

デフレ論者には痛い内容

経済学の素人が浜田大先生の批判をするなど恐れ多いことだが、本書での主張がアベノミクスの根本原理であるとすれば問題である。

ーーー

昨年初めに竹中平蔵氏の講演で、浜田教授によるアベノミクス評価というのを聴いた。

第一の矢の金融緩和は5段階評価で A
第二の矢の機動的財政政策は、中期の財政再建が出来ておらず B
第三の矢の成長戦略は全くダメで E
即ち、ABEノミクス

しかし今回、本書を読んで、まったく異なるので驚いた。

浜田教授によると、そもそも、第一と第二の矢は供給(潜在GDP)と需要(実質GDP)の差を埋めるための不況対策であるが、第三の矢の成長戦略は、将来供給と需要の差が埋まったときに供給力を引き上げるための政策であるという。

第二の矢については、マンデル・フレミング命題から、変動相場制のもとでは景気刺激のためには財政政策の効果は少ないとしている。

デフレギャップを埋めるには金融政策だけでよく、成長戦略は 「短期の景気回復には関係のない政策」である。金融緩和政策が成功した後に成長戦略が必要になる。

このため、第三の矢の評価は、(全くダメのEではなく)、今後のEffortのEであるという。

なお、成長戦略とは産業政策ではなく、規制緩和政策であるとしている。

具体的には下記を挙げ、抵抗勢力を潰す必要を強調している。
  労働規制・金融規制の軽減撤廃
  法人税の実効税率の軽減
  TPPを通じた貿易・投資の自由化
  女性労働力の積極的活用
  海外労働者受入(社会・文化を損なわない範囲で)


毛利元就の「三本の矢」は、「矢一本なら一人の力で折ることができるが、3本束ねると折ろうとしても折れない」ことからきている。

しかし、浜田理論では、当面は第一の矢だけが重要で、その効果が出てから第三の矢の出番が来るということで、3本を束ねるということではなくなる。
3本の矢があっても、1本ずつなら折れてしまうのではなかろうか。

ーーー

同書では以下の通り述べている。

「流動性の罠」問題がある。デフレが続くと考えると、不要不急品は買わず、カネを溜め込む。

以前の日銀は、景気回復途中で引き締めなどを行ったため、疑心暗鬼となり、企業も積極投資をしなかった。  

第一の矢(ゼロ金利政策、量的緩和政策、インフレ目標政策)はこれへの対策であり、将来物価が上がるという予想を抱かせる。

この結果、個人消費は増え、企業も安心して投資する。

現在は企業も家計も貯蓄が十分あるが、企業と家計が先ず貯蓄を取り崩し、その後、企業が資金不足になると銀行貸出を使って投資する。

これにより、供給と需要のギャップが埋まる。   

この後が第三の矢の出番で、規制緩和により供給力(潜在GDP)を増やし、経済をさらに成長させる。

 

問題は供給と需要のギャップを埋めるのに第一の矢だけで出来るのかということである。

現実は 「供給 > 需要」 の状態にある。

しかし、将来物価があがるという予想を抱かせるだけで、需要が増え、ギャップが埋まるであろうか。

アダムスミスの時代ならこれは正しい。その当時なら、需要の内容が変われば、それに合わせて供給を自由に変えることが出来た。
このため供給総量と需要総量の比較だけでよい。

実際には、長い間の規制により、供給体制と需要構造が食い違っており、供給できる製品の需要が激減し、潜在需要に対する供給力がないという状況になっている。

少子高齢化が進むと、住宅、自動車、家電や、その原材料の鉄鋼、化学品などの需要は減っている。

既存品の輸出も様変わりで、鉄鋼、石油化学品などは今や、中国が過剰能力で悩むほどで、日本の出番はない。
家電も輸出どころか、日本のほとんどの需要を輸入に頼っている。
自動車さえも、電気自動車になると部品の組み立て化でやれるようになり、中国では
リチウムイオン電池製造のBYDが自動車に進出した。

しかし、少子高齢化による医療、健康維持、保育所・託児所など新しい需要が満たされていない。

医薬品や医療技術、IT、新規材料などでも新しい輸出製品の可能性は大きい。
農業なども企業が進出できればオランダのように輸出国になることも可能であろう。

現状では既存の業界が保護され、新規事業への参入が規制されている。

 以下はOECDによる分析で、経済のダイナミズムの欠如が指摘されている。

http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/15041601_ja.pdf

また、「日本をダメにした10の裁判」の一つの解雇権濫用法理により、労働人口が減るなかで、既存企業は仕事が減っても解雇が出来ず、多数の社内失業者を抱えている。
新しい需要分野に人材が流れるという状況にない。

このような、必要なものの供給がなく、需要のない供給力が保護され残っている状況では、将来物価が上がるという予想を抱かせることだけで 「供給=需要」の状態にはなり得ない。

本書では、経済学の常識から、デフレは金融現象であり、金融政策で解決できるとしている。(安倍首相は同じ意味で「デフレは貨幣現象」としている。)
しかし、上記の点から、これは
今の日本では誤りである。

デフレギャップを埋めるには金融政策だけではなく、規制緩和によって需要に合わせた供給力の整備を行うことが絶対的に必要である。
下記のような状況になれば、(仮にインフレ目標政策がなくても)需要は増えるであろう。

やはり、三本の矢は3本を束ねて初めて、効果が生まれる。

 

ちなみに、同書では金融緩和の成功例としてレーマン後の米国をあげている。

しかし、米国の場合は日本の状況とは全く異なる。

規制はほとんどなく、需要の変化を先取りして、新しい「供給」が加えられている。
主に移民の増により、人口は増えている。
ローンにより賄われる需要は旺盛である。

しかし、レーマンショックで、銀行は貸し出しを絞ったため、企業投資や個人消費が抑えられた。

この状況下では、デフレは金融現象であり、金融緩和は成功した。

カネがあるが需要が無い日本とは全く異なる。

ーーー

浜田教授の言うとおり、成長戦略とは産業政策ではなく、規制緩和政策である。

教授は、抵抗勢力を潰す必要を強調している。

その通りであり、抵抗勢力を潰すのは大変である。

特に、管轄する業界と結びつく官僚の対策が難しい。業界の支援を受けている国会議員、地方議員の圧力もある。

経団連なども献金と経済産業省などとの連携により、いろいろの恩恵を受けている側である。たとえば租税特別措置法の全廃などの案に対しては猛反対するであろう。

最高裁判決の解雇権濫用法理を取り消すような法律も必要である。

中国の習近平主席並みの権力が欲しい位である。

Thomas L. Friedman は著書「Hot, Flat, and Crowded」で "China for Day (but Not for Two)" という1章を書いている。

「2日はいやだが、1日だけなら中国になりたい」というもので、米国では何年もかかる案件、レジ袋の有料化、ガソリン無鉛化、自動車燃費規制、等々をトップダウンの命令で直ちに実施したことを取り上げ、中国のやり方を(その部分だけは)羨ましく思っている。

それでも、これをやらないと、しかも、徹底的にやらないと、日本経済の再生は難しい。

官僚の上層部を全て異なる省庁に移すとか、省益に反する決定をしたものしか昇格させないなどの措置が必要であろう。

---

気の毒なのは日銀の黒田総裁である。

2013年11月の記者会見でアベノミクスの評価を問われ、以下の通り述べている。

「第1の矢」の金融緩和、「第2の矢」の財政出動を含めて日本経済を緩やかに回復させており、今後も回復が持続すると思っている。

なかんずく第3の矢の成長戦略が非常に重要。
成長力を底上げするための成長戦略の実行を加速し、強化することが極めて重要だ。

これらの言動から、総裁は「デフレは貨幣現象」とは考えておらず、三本の矢が一体となってデフレを解消させると考えている節がある。

第三の矢は今後の問題とされると、梯子を外されたのと同じであろう。

もう一つ、黒田総裁の考え方と異なる点は消費税の引き上げである。

浜田教授は、景気がよくなれば法人税、所得税が増えて財政赤字が減少するとし、逆に回復途上で消費税を引き上げると、景気が悪化し、法人税、所得税が減少 して財政赤字が増えるリスクがあると主張する。

安倍首相も同じ考えのようで、消費税の10%への引き上げを延期したが、10%から更に引き上げる考えはないとしている。

これに対し、黒田総裁は消費税の引き上げ延期には反対であった。

2014年10月の追加の金融緩和は消費税引き上げ実施をバックアップするためとされた。

2月の経済諮問会議(議事要旨)で次のとおり述べている。

持続可能な財政構造を確立することは、日本経済が持続的な成長を達成していく上で必須の前提であり、日本が国全体として取り組まなければならない課題である。この点、基礎的財政収支を「2020年度までに黒字化」するという財政健全化目標の達成に向け、具体的な計画を策定していくことは重要であり、諮問会議でもしっかり議論していくべきだと思う。
日本銀行としては、政府による財政健全化に向けた取組が着実に進んでいくことを強く期待している。

議事録からは外されたが、次のように懸念を表明したと報道されている。

実はドイツ、アメリカ、イギリスなどが強硬に、銀行が自国の国債を持つことについても資本を積むべきであると主張している。

アナリストは日本の銀行がどれほど国債を持っているか、同じルールが適用されればどれほど資本が不足しているか言い立てるようになる。
国債の格付けが低いほど必要な資本は多くなりかねない。資本不足と言われるのを恐れ(銀行は)国債を手放してしまうかもしれない。


安倍総理は浜田教授の考え方を完全に受け入れていると見られるが、黒田総裁との考え方の相違は今後、広がっていくと思われる。

 

付記

内閣府試算(平成24年1月)によれば、2011~2020年度の平均成長率が名目3%、実質2%となる「成長戦略シナリオ」でも、国・地方の公債残高の対GDP比は増加を続ける。
黒田総裁の発言のとおり、持続可能な財政構造を確立することは、日本経済が持続的な成長を達成していく上で必須の前提である。

ーーー

なお、浜田教授は「金融緩和で物価は上がる」と主張する。

望ましい物価上昇は需要が増えた結果としての物価上昇であり、付加価値が増えるため望ましいものとなる。

最近の物価上昇は円安による食品や原料品の輸入価格アップによるものが多いが、単なる転嫁は付加価値の増加にはつながらず、需要家の生活が苦しくなるだけである。
この結果、消費が抑えられ、結果として値下がりがおこり、メーカーの採算が悪化する。

逆に原油価格の下落による値下がりは、需要家の購買力が増えて消費増につながり、望ましい。

デフレ対策での「物価上昇」は、原油価格のような外的要因や、円安による輸入価格の影響を除外して考えるべきである。

今後、原油価格がまた大幅上昇し、それによりCPIが前年比 2%アップしたとしても、それだけではデフレ解消とは言えない。

 

 ーーー

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タイ PTT Global Chemical (PTTGC) と丸紅の米国石油化学計画が取りざたされている。

PTTGC は、米国のMarcellus シェールガスを利用した50億ドルの石油化学計画の検討を行っていることを明らかにしていた。

エタンクラッカーの能力は100万トンを予定しており、誘導品として、HDPE(70万トン)、EG(50万トン)、EO(10万トン)などを考えており、2020年のスタートを予定している。

丸紅は何も発表していない。

丸紅はPTTグループと、石油製品・天然ガス並びに各種設備取引等で良好な関係を構築している。

ーーー

4月22日、Ohio州知事John R. Kasich は以下の発表を行った。

タイのPTTGCとそのパートナーの丸紅は、Ohio州 Belmont County の土地をワールドスケールのエタンクラッカーの建設予定地として選んだ。
両社は今後12~16ヶ月かけて、詳細設計や認可申請を行う。

両社は過去2年にわたり、Utica 及びMarcellus シェール地域で立地の検討を行ってきた。

両社は2016年に投資の最終決定を行う。

現地紙の報道では、Belmont CountyのMead Township にあるオハイオ川沿いのFirstEnergyのR.E. Burger バイオマス発電所(木材や農業廃棄物を燃料とするもので2010年末に停止)の跡地が選ばれた。

Utica 及びMarcellus シェールの安いエタンを利用する。

なお、隣接のMonroe Countyでは新設のAppalachian Resins Inc. がMarcellus シェールガスを利用する石油化学計画を検討している。

能力27万トンの小規模エタンクラッカーとPEプラントを建設するもので、ローカル市場に合わせたとしている。

 

 

ーーー

PTTGCはタイ石油公社(PTT) 傘下のPTT Chemical と PTT Aromatics & Refining が2011年に合併したもの。

PTTGCは米国計画とは別に、インドネシアで国営石油プルタミナと西ジャワ州バロンガン製油所に隣接して石化コンプレックスを建設する方向を固め ている。

2013/7/25 インドネシアのPertaminaとChandra Asri、石油化学計画で混戦 

 


 

電力会社の決算が出揃った。

事業活動の儲けを示す経常損益は下記の通りで、中部、中国、四国が黒字転換し、7社が黒字になった。原油安が寄与した。

原発依存度の高い北海道、関西、九州は赤字を続けたが、北海道は2014年11月の再値上げで赤字幅は縮小した。

関西電力は家庭向けを6月に再値上げする。

九州電力は川内原発の早期稼動を目指す。


 
 
 
 
   
     
東京電力の当期損益は下記の通り。    
 
     
    11/3 12/3 13/3 14/3 15/3
特別利益 支援機構資金交付   24,262 6,968 16,657 8,685
  その他   907 2,172 1,581 193
  合計 0 25,169 9,140 18,238 8,878
             
特別損失 損害賠償 0 25,249 11,619 13,956 5,959
  災害損失 10,205 2,978 402 267 0
  その他 572 452 467 399 204
  合計 10,777 28,679 12,488 14,622 6,163
             
特別損益   -10,777 -3,510 -3,348 3,615 2,715
0

 


中国の習近平国家主席は就任後初めてパキスタンを訪問し、4月20日、シャリフ首相と首脳会談を行った。会談後の共同声明によると、両国は協力してパキスタンの道路や港湾、水力発電所の大規模なインフラ整備を進めることで合意した。


パキスタン政府によると、その規模は280億ドルで、このうち、水力発電所のプロジェクトには、昨年末に設立されたばかりの中国政府系の投資ファンド「シルクロード基金」が初めての投資を行う。

 総事業費は約450億ドルで、中国側は投資や低利融資で支援するが、まず、約280億ドル分について着手する。

中国政府は一帯一路」と呼ぶ「21世紀の陸と海のシルクロード」を造る構想を掲げているが、新疆ウイグル自治区の喀什(カシュガル) からパキスタンのアラビア海を臨むGwadar 港を結ぶ中国・パキスタン経済回廊をその一区間と位置づけている。

パキスタン政府は2013年1月30日、パキスタン南西部のGwadar港の港湾管理権をシンガポールのThe Port of Singapore Authority (PSA)から中国のChina Overseas Port Holding Companyに移譲することを閣議決定した。

この調印式が2月18日、イスラマバードの大統領府で駐パキスタン中国大使らが出席して行われた。

Gwadar港は南アジアと中東を結ぶインド洋の戦略的要衝で、中国は中東やアフリカから石油を運ぶための拠点を確保したことになる。
今後、原油貯蔵設備や製油所を建設するとされる。


2013/2/20 中国、パキスタンのグワダル港の運営権を取得

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習近平主席は2014年11月4日、中央財経指導グループの第8回会議を招集し、 「シルクロード経済ベルト」と「21世紀の海のシルクロード」計画 (一帯一路構想)、アジアインフラ投資銀行(AIIB)およびシルクロード基金の設立という「中国版マーシャルプラン戦略」について検討を行った。

APEC閣僚会議が開かれた2014年11月8日にバングラデシュ、タジキスタン、ラオス、モンゴル、ミャンマー、カンボジア、パキスタンの首脳と「相互接続パートナーシップ強化対話会議」を開催した。

習主席は「『シルクロード経済圏』と『21世紀の海のシルクロード』を建設しよう」と呼びかけ、中国が400億ドルの「シルクロード基金」を創設すると表明した。

2014/11/13 中国のシルクロード経済圏構想 

シルクロード基金を運用する絲路(シルクロード)基金有限責任公司は外貨準備、中国投資有限責任公司、中国進出口銀行、国家開発銀行の共同出資で、2014年12月29日に北京市内で登記され、第1弾として100億米ドルの資金募集を終えている。

シルクロード基金は市場化、国際化、専業化の3原則を順守、アジアインフラ投資銀行(AIIB)と連携し、アジア地域のインフラ整備や経済交流を進める「一帯一路」構想を実現する。

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シルクロード基金は中国長江三峡集団傘下でパキスタンのPrivate Power and Infrastructure Board と共同で開発に当たる三峽南亜公司(China Three Gorges South Asia Investment)に出資し、パキスタン北東部のJhelum川のKarot 水力発電所の整備に乗り出す。

この水力発電所計画は李克強首相が2013年5月に提案したもので、水力発電所は容量72万キロワット、年間3,213メガワット時の規模で、投資額は16億5000万ドルを見込んでおり、2020年の稼働を目指し、15年末に着工する。

シルクロード基金は中国輸出入銀行や他の金融機関とともに融資を行う。

基金は更に、三峡集団などとともにこの地域での水力発電をすすめ、能力を3,350メガワット時にまで拡大し、電力供給を改善し、パキスタンの経済発展に資する。




 

大阪ガスは4月28日、米国・メリーランド州で建設中のSt. Charles 天然ガス火力発電事業に参画すると発表した。同事業の特別目的会社であるCPV Maryland LLCの出資権益の25%を、丸紅から取得する持分取得契約を締結した。

2014年8月に丸紅と豊田通商が本計画に参画した。
出資比率は、丸紅が50%、豊田通商が 25%、米国のクリーン電源ディベロッパー のCompetitive Power Ventures Holdings, LLC(CPV)が25%であった。

米国では老朽化した石炭火力発電所の廃止による電力供給源の減少に対応するため、天然ガス火力発電が期待されているが、St. Charles発電所は発電効率58%の高効率(コンバインドサイクル方式)で環境にも優しい新規電源として、米国首都圏地域の電力供給に貢献する。

発電容量725MWで、2017年の商業運転開始を予定しており、北米最大のPJM(Pennsylvania-New Jersey-Maryland)電力卸売市場で電力を販売する。


大阪ガスグループは、長期経営計画「Field of Dreams 2020」において、海外エネルギー事業を成長事業領域の1つとして、米国、豪州等において発電事業を展開している。

米国では2004年に天然ガス火力発電事業に参入した。Tenaska Gateway 発電所の持分(40%) をShell US Gas & Power から譲り受けた。

発電所 Tenaska Gateway 発電所 Mount Enterprise. TX
出資者 Shell US Gas & Power  → 大阪ガス 40%
Tenaska (米国のIPP事業者)
Diamond Generating (三菱商事)
発電容量 84.5万kW
発電方式 天然ガス コンバインドサイクル
完成年月 2001年7月
電力販売先 Coral Powr  (シェル系列電力マーケティング会社)

 

参考  2015/4/23   中部電力、米国の天然ガス火力発電事業に参画     


 

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