「no」と一致するもの

旭化成は7月19日、米国の自動車内装材メーカーである Sage Automotive Interiors, Inc.を現金約700百万米ドルで買収することを決定したと発表した。

Sage社を100%保有するClearlake Sage Holdings, LLCとの間で合意した。

取得価額約700百万米ドルは、クロージング時点での現預金・借入金の残高や運転資金の増減等により変更される。なお、本取得価額にSage社の純有利子負債を加えて算出した買収価格は1,060百万米ドルとなる。

Sage社は自動車内装材に用いる各種繊維製品の開発・製造・販売を手掛けており、シートファブリック市場ではグローバルNo.1シェアを保持している。

同社の推移は下記の通り。

2009年に米国の繊維・化学品メーカーであるMilliken & Companyからスピンオフした。役員2人と投資会社のAzalea Capital, LLC. が買い取った。

2011年5月に、投資会社のThe Gores Group, LLCが買収した。

2014年10月に投資会社Clearlake Capital Groupが買収した。

同社は内装材に関する総合提案力、高いデザイン力、加工技術等により、自動車メーカーおよび部品メーカーに対し高いプレゼンスを有しており、ニット・織物の多様な技術的繊維を含め、車載用ボディークロスを世界の大手自動車メーカーに供給している。
生産拠点を米国、イタリア、ポーランド、ルーマニア、ブラジル、中国に持つ。

旭化成はスエード調人工皮革「ラムース」をSage社に販売しており、両社は従来より良好な関係を構築・維持してきた。
(Sage 社が「ラムース」を購入、染色などの加工を施した上で部品メーカー・ 自動車メーカーに供給している)

旭化成は、成長する自動車内装市場でのポジションを強化し、自動車分野向け事業の拡大実現を目指しており、 領域内横断で「自動車メーカーおよび部品メーカーとのコネクト(関係)強化」「グローバル拠点の確立」等に取り組んでいる。

自動車分野向け事業の拡大を加速させるためにSage社の事業を取り込むことを検討してきたが、2017年10月より両社で協議を始め、このたび本買収の合意に至 った。

買収を通じ、「川上」から「川中」へサプライチェーンを拡大する。


本買収による具体的な効果は以下のとおり。

自動車メーカーおよび部品メーカーに対するアクセスを強化し、自動車市場の動向やニーズを迅速かつ的確に把握

Sage社の有するマーケティング力・デザイン力と、 旭化成の有する繊維製品、樹脂製品、センサ等のさまざまな製品・技術を組み合わせて、車室空間に関する総合的なデザイン、ソリューションを提案・提供

Sage社の営業・製造・マーケティング拠点を、旭化成のグローバル展開にあたっての経営インフラ・リソースとして活用


旭化成は2012年に米救急救命機器大手 Zoll Medical を約1800億円で、2015年に米セパレーター(絶縁体)メーカーのPolypore Internationalを約2600億円で買収しており、買収金額でそれらに次ぐ規模になる。

2012/3/19 旭化成、米国ZOLL Medical Corporationを買収

2015/2/26 旭化成、米電池素材会社Polypore International を買収


付記

帝人は7月30日、子会社の帝人フロンティアが、欧州を中心に自動車向け内装材の生産・販売を展開する J.H. Ziegler GmbHの全株式を約125百万ユーロで取得し、完全子会社にすると発表した。

Ziegler は、長年培ってきた不織布の生産・加工技術を応用し、優れた静音性能を有する吸音材製品を市場投入しており、欧州で高いシェアを誇っている。欧州の自動車市場においては、シートワディング材のリーディングメーカー。欧州に4ヵ所の工場を有し、2014年には中国・浙江省に工場を新設して、グローバル展開を加速している。

帝人は、この買収により、欧州、北米、アジアにおける生産・販売拠点を取得することとなり、今後、自動車事業のグローバル展開を加速していく。

ロソア国営石油大手 Rosneft はこのたび、サハリン1 計画に参加する5社に対し、889億ルーブル(1411百万米ドル)の支払いを求め、提訴した。

各社に対する求償額は次の通りで、サハリン1の出資比率に応じている。
なお、
Sakhalinmorneftegzs-Shelf と RN-Astra はRosneft の子会社である。

出資 億ruble 百万$
Exxon Neftegas 30% 267 423.8
Sakhalin Oil and Gas Development 30% 267 423.8
Indian VIdesh 20% 178 282.5
Sakhalinmorneftegzs-Shelf 11.5% 102 161.9
RN-Astra 8.5% 75 119.0
合計 889 1411.0


サハリン石油ガス開発の株主構成は、日本政府50%、伊藤忠商事14.46%、石油資源開発15.3%、丸紅11.68%、伊藤忠石油開発 1.83%、国際石油開発帝石 6.08%などとなっている。

訴状を受理したサハリン州仲裁裁判所の発表によると、訴訟は2015~2018年の「不当な収入」と「他者の資金の利用による金利」(unjust enrichment as well as interest for using other entity's funds in 2015-2018) に対して申し立てられた。

サハリン1のオペレーターのExxon Neftegaz は、提訴内容については否定し、サハリン1 の権利を守るため戦うと述べた。

予備審問は9月10日に行われる。


訴因については、サハリン1に隣接するロスネフチ管轄の油田との原油生産の分配を巡り、5社とロスネフチの間で意見の相違があったとの情報もある。

これから考えると、サハリン1のChayvo 鉱区 & Arkutun-Dagl 鉱区と、これらに隣接するサハリン3のVeninsky鉱区との境界線での生産ではないかと思われる。

付記

提訴された5社が9月29日までにRosneft と和解した。日本側関係者が明らかにした。5社側は2億3000万ドルを支払う。


Rosneft
は同社の鉱区から隣接するサハリン1に地下を通じて原油が流れ、5社が不当に利益を得たとして、889億ルーブル(1411百万米ドル)の支払いを求めて提訴した。

今回、サハリン1からRosneft の鉱区に原油が流れた場合に同社に賠償請求しないなどの条件で和解が成立した。和解金は5社が権益比率に応じて支払う。サハリン石油ガス開発は30%。

サハリン1は3つの鉱区からなる。

実は、この付近は多くの鉱区が入り組んでいる。

株主 鉱区
サハリン 2 Gazprom 50%+1株
Shell 27.5%-1株
三井物産 12.5%
三菱商事 10%
Piltun-Astokhskoye (サハリン1のArkutun-Dagiの北隣)
Lunskoye(サハリン3のKirinskyの北西隣)
サハリン 3 Gazprom East Odopinsky (サハリン1のOdoptuの東隣)
Ayashsky(サハリン1のArkutun-Daglの東隣)
Kirinsky (サハリン2のLunskoye の東隣)
Rosneft 74.9%
Sinopec 25.1%
Veninsky(サハリン1のChayvo & Arkutun-Dagl の南隣)


2006/6/6 「新・国家エネルギー戦略」発表 のサハリン計画の項を参照

トランプ大統領はEUとの間で関税問題で揉めているが、NATOのと間でも問題発言をしている。

(防衛費)

トランプ大統領は7月11日に開幕した北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、加盟各国による防衛費の支出を国内総生産(GDP)比4%に引き上げるよう要請した。

NATOはこれまでに加盟国の防衛費を対GDP比2%以上とする目標を掲げているが、ドイツなど目標を達成してない加盟国は多く、トランプ大統領は首脳会談に先立ち、各国の拠出が不十分として批判していた。

2024年までに全加盟国がNATOへの防衛費支出を対GDP比2%に引き上げると公約したにもかかわらず、現在、GDPの2%を超えているのは、米国のほか、英国、エストニア、ラトビア、ギリシャだけである。

フランスは1.8%、ドイツにいたっては1.2%にとどまっている。

トランプ大統領自身は、NATO加盟国が直ちに防衛支出の対GDP比率を2%に引き上げる必要があるとツイッターに投稿し、「ドイツがロシアに対し天然ガスとエネルギーを巡り多額の支払いを行うなら(下記参照)、NATOにどのような価値があるのか。米国は欧州の防衛のために多額の支出を行う一方、貿易で多額の損失を出している。防衛支出の対GDP比率を直ちに2%に引き上げる必要がある。2025年までではない」との考えを示した。
そのうえで、4%まで増やすべきだと主張した。

ドイツはロシアとともに、シベリアの天然ガスをサンクトペテルブルク北方からバルト海海底約1200キロを通ってドイツ北東部グライフスバルトに運ぶ Nord Stream 2 計画を進めている。

2015/9/10 BASFとGazprom、Nord Stream 2 計画もスタート  

トランプ氏は、ドイツがガスパイプライン・プロジェクト「Nord Stream 2 」に参加することについて問われると、「それはドイツの選択だ。しかし、NATO加盟国であるため、難しい」と語った。

加盟国首脳らは共同声明で「加盟各国のコストや責務の負担において均衡を取ることにコミットする」とし、防衛費支出を拡大する目標の達成に向けた「揺るぐことのないコミットメント」を確認した。

(モンテネグロ)

旧ユーゴスラビアのモンテネグロは2018年6月5日、NATOに正式加盟した。これで加盟国は29カ国となった。

NATOの外相理事会は2015年12月2日、モンテネグロの新規加盟を承認した。その後、各国が批准手続きをとっていた。

バルカン半島に位置するモンテネグロはユーゴスラビア時代の1999年にNATOが空爆したかつての「敵国」だが、2006年に独立して以降はEU加盟を目指して民主化政策を推進し、NATOにも2009年から加盟手続きに入っていた。

旧ユーゴスラビアは現在、モンテネグロ、スロベニア、クロアチア、セルビア、マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ となっている。
このうち、スロベニアとクロアチアはEUとNATOの双方に加盟、モンテネグロは今回NATOに加盟したが、EUには入っていない。
他の3国はいずれにも入っていない。

モンテネグロのNATO加盟には、同国と歴史的につながりの深いロシアが強く反発していた。

トランプ米大統領は7月17日放送の米FOXニュースのインタビューで、NATO加盟国のモンテネグロに対して集団防衛義務を果たせば「第三次世界大戦になる」と、その必要性を疑問視するような発言をした。

NATO条約第5条は加盟国に対する攻撃をNATO全体への攻撃と見なす集団的自衛権を規定している。

だがトランプ氏はインタビューで、「モンテネグロは小国だが、国民は非常に強く攻撃的だ。(集団防衛義務を果たせば)彼らはもっと攻撃的になり、第三次世界大戦になる」などと答えた。

NATOとEUの加盟状況は下記の通り。

NATO EU
原加盟国 米国 対象外
カナダ
イタリア 1952
オランダ
フランス
ベルギー
ルクセンブルク
英国 1973
デンマーク 1973
ポルトガル 1986
アイスランド

非加盟

ノルウェー
1952/2

ギリシャ

1981
トルコ 非加盟
1955/5 ドイツ(西ドイツ) 1952
1982/5 スペイン 1986
1999/3 チェコ 2004/5
ポーランド
ハンガリー
2004/3 エストニア 2004/5
ラトビア
リトアニア
スロバキア
スロベニア
ブルガリア 2007/1
ルーマニア
2009/4 アルバニア 非加盟
クロアチア 2013/7
2017/6 モンテネグロ 非加盟
非加盟 アイルランド 1973
オーストリア 1995
フィンランド
スウエーデン
キプロス 2004/5
マルタ
非加盟 スイス 非加盟
ボスニア・ヘルツェゴビナ
セルビア
マケドニア
ベラルーシ
モルドバ
ウクライナ
29か国

28か国

千代田化工建設は7月17日、Nigeria LNG(NLNG)がナイジェリアの沖合で計画するLNGの第7 系列プロジェクトのFEED(基本設計)業務およびEPC(設計・調達・建設工事)業務をイタリアのSpaipem、韓国の大宇建設両社と共同受注したと発表した。

NLNGは同国リバーズ州ボニー島で、石油・ガスの開発プロジェクトを推進中で、既存のLNGトレインの拡張に加えて輸出用Jettyや周辺設備の拡張、既存設備との接続も業務範囲となっている。

Nigeria LNG はナイジェリアのNLNG Act に基づき、同国の豊富な天然ガスをソースにLNGとNGLsの生産のため、1989年5月17日に設立された。

株主は、政府を代表するNigerian National Petroleum (49%)と、Shell (25.6%)、Total Gaz Electricite Holdings ​ (15%) 及び Eni (10.4%)の4社。

原料ガスは次の各社と長期供給契約を締結している。

Shell Petroleum Development Company of Nigeria (SPDC)
Total Exploration Production Nigeria (TEPNG)
Nigerian Agip Oil (NAOC):
joint venture of Nigerian National Petroleum, Eni, and ConocoPhillips

現在、Bonny Island に6系列のLNGプラントが稼働している。

日量35億立方フィートの天然ガスから、年産2200万トンのLNG、500万トンのNGLs(LPGとコンデンセート)を生産する。

今回の第7系列の増設で、LNG能力は年産3000万トンになる。

LNGプラント 建設業者 他の工事 生産スタート
Base Project Train 1 Technip
Snamprogetti、
Kellog
Japan Gas Corp(日揮 )

(TSKJ コンソーシアム)

Gas Transmission System (GTS)
Residential Area
2000/2
Train 2 1999/9
Expansion Project Train 3 condensate stabilisation system 2002/11
NLNGPlus project Train 4 2005/11
Train 5 2006/2
NLNG Six project Train 6 condensate processing facility
LPG storage facility
2007/12
本件 Train 7 千代田化工
Spaipem
大宇建設
輸出用Jetty
周辺設備の拡張
既存設備との接続

なお、米司法省はTSKJコンソーシアムが、受注と引き換えにナイジェリアの公務員に対して贈賄を贈ったとして海外腐敗防止法( FCPA ) で起訴した。

今回はこの事件で4社が外れ、新しく3社が選ばれた。

起訴されたのは、TSKJの4社、Kelloggの元会長、英人弁護士、丸紅、Kollogg元社員。

1994年から2004年6月の間、4社は受注のため、ナイジェリア政府の役人に広範囲に賄賂を渡すことを決めた。
ナイジェリアの高官に賄賂を渡すため、英人弁護士を、下級役人に渡すために丸紅を雇った。
英人弁護士の Gibraltarの企業を通じ132百万ドルを、丸紅を通じ51百万ドルを支払った。

各社はそれぞれ下記の罰金を支払い、司法省と和解した。
 Technip:2010/6 240百万ドル
 Snamprogetti:2010/7 240百万ドル
 Kellog(の後継の
Kellogg Brown & Root LLC):2009/2 402百万ドル
 Japan Gas (日揮):2011/4 218.8百万ドル
 丸紅:2012/1 54.6百万ドル

次の3人の個人は、裁判所で下記の判決を受けた。英人2人は英国から米国に引き渡された。

 Kellogg元CEO:禁固30カ月+その後3年の仮釈放、および、別の賄賂事件被害者のKBRへの10.8百万ドルの返還

 英人弁護士:禁固21カ月+その後2年の仮釈放と罰金 2万ドル、及び報酬 149百万ドルの没収

 Kellogg 元社員(英国人):禁固1年、罰金2万ドル、及び報酬 727千ドルの没収

エーザイ及びアルツハイマー薬で同社と提携するBiogen, Inc は7月6日、両社が共同開発している抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体 BAN2401 の早期アルツハイマー病856人を対象とした臨床第Ⅱ相試験において、有意な結果を得たと発表した。

臨床第Ⅱ相試験の18カ月の最終解析で、統計学的に有意な臨床症状悪化抑制脳内アミロイドベータ蓄積減少を証明した。

米国イリノイ州シカゴで開催されるアルツハイマー病協会国際会議(Alzheimer's Association International Conference)において、7月25日に口頭発表する。

この発表を受け、同社の株価は高騰した。

ーーー

エーザイとBiogen は2017年10月23日、臨床第III相試験進行中のaducanumabを含むアルツハイマー病治療剤の開発・販売に向けた提携契約を拡大すると発表した。

両社はアルツハイマー関連で下記の製品を開発しており、エーザイが以前から販売しているアリセプトを除き、開発で提携している。

今回の提携契約拡大で、エーザイは、Biogenの抗アミロイドβ(Aβ)抗体BIIB037=aducanumab に対する共同開発・共同販促オプション権を行使した。

エーザイ アリセプト 〈既存製品〉
(donepezil)
エーザイの杉本八郎博士らが開発
アルツハイマーでは、神経伝達物質のアセチルコリンが脳内で減少している。

アセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼの作用を阻害することで、アセチルコリンの濃度を高める。

新規ヒト化モノクローナル抗体
「BAN2401」
2007/12 スウェーデンのBioArctic Neuroscience ABから全世界の研究・開発、製造、販売の独占ライセンスを受ける。 アルツハイマー病の原因と考えられるベータ・アミロイド成分を除去
βサイト切断酵素(BACE)阻害剤
elenbecestat「E2609」 x下記
エーザイが創製

βアミロイドの脳内の沈着はアルツハイマー型認知症の病因の一つ
アミロイド前駆体タンパク質のβサイト切断酵素であるBACEを阻害することでβアミロイドの総量を低下させる。
Biogen 抗アミロイドβ(Aβ)抗体
aducanumab
(BIIB037) x→申請へ
Neurimmune社より共同開発およびライセンス契約締結のもとに導入 アミロイド斑(プラーク)は、アミロイドβ蛋白が蓄積したもので、アルツハイマー病患者の脳にみられる。

aducanumab 投与でアミロイドプラークのレベルを下げる

2017/10/27 エーザイとバイオジェン、アルツハイマー治療剤での提携契約を拡大 

付記

Biogenとエーザイは2019年3月21日、aducanumab(BIIB037)の有効性、安全性を評価する臨床第III相国際共同試験(ENGAGE試験、EMERGE試験)を中止することを決定したと発表した。本試験において主要評価項目が達成される可能性が低いと判断されたことに基づくものであり、安全性に関する問題によるものではない。

    付記 2019年10月22日、新薬承認をめざす

付記

エーザイとBiogen は2019年9月13日、経口βサイト切断酵素(BACE)阻害剤elenbecestat「E2609」 について、早期アルツハイマー病(AD)を対象とした臨床第Ⅲ相試験(MISSION AD1、AD2)の中止を決定したと発表した。独立安全性データモニタリング委員会(DSMB)により行われた安全性レビューにおいて、本試験を継続しても最終的にベネフィットがリスクを上回ることはないとの判断から試験の中止が勧告されたことに基づく。

ーーー

今回の「BAN2401」は、スウェーデンのBioArctic Neuroscience ABが開発した、アルツハイマー病に対する免疫療法剤創製を目的としたベータ・アミロイド(Aβ)に対するヒト化モノクローナル抗体で、2003年1月に同社を設立した Uppsala UniversityのProf. Lannfelt により発見された家族性アルツハイマー病の原因であるアークティック変異Aβに関連する研究に基づいたもの。

アルツハイマー病発症には、神経毒性を有するAβの脳内への蓄積が重要な役割を果たしていると考えられている。病理学的には、繊維化し不溶性となったAβを主成分とする老人斑が脳内に認められる。

近年の研究により、アルツハイマー病の発症プロセスとしての神経毒性の本体は、繊維化し不溶性となったAβではなく、その前段階であるAβプロトフィブリルを含む可溶性のAβ凝集体であることが明らかにされている。

アルツハイマー病免疫療法には、
Aβを投与して生体内でAβに対する免疫反応を惹起させるワクチン療法や、
Aβをターゲットとしたモノクローナル抗体を投与する抗体療法がある。

BAN2401はBioArctic が有する技術を用いてAβプロトフィブリルをターゲットとした抗体療法を目指すもので、アルツハイマー病発症の原因の一つと考えられている脳内のAβプロトフィブリル量を低下させるもの。


エーザイとBioArctic は、2007年12月3日、BAN2401について、全世界におけるアルツハイマー病を対象とした研究・開発、製造、販売に関する独占ライセンス契約を締結した。

BAN2401は、Aβの可溶性凝集体の一種であるプロトフィブリルを選択的に認識するヒト化モノクローナル抗体であり、前臨床段階にある。

エーザイは、自社で創製したE2012(ガンマ・セクレターゼ・モジュレーター)とともに新規性の高い抗体であるBAN2401の開発を進めることで、低分子化合物と免疫療法という異なるアプローチで次世代のアルツハイマー病治療薬の創出を目指す。「アリセプト®」によって切り開かれたアルツハイマー病の薬物療法のパイオニアとしての使命を果たすため、自社開発および他社との提携を通じて、次世代のアルツハイマー病治療薬の開発を加速させていく 。

アリセプト(donepezil) は、コリンエステラーゼ阻害剤の1種であり、アルツハイマー型認知症(痴呆)、レビー小体型認知症進行抑制剤として利用される。

E2012はエーザイが創製した低分子化合物で、ガンマ・セクレターゼ・モジュレーターとして病因となるAβの産生を抑制する。
一方、BAN2401は免疫療法薬を目指すヒト化モノクローナル抗体で、アルツハイマー病の原因と考えられるAβ成分を除去する。

2014年3月にBAN2401に関する共同開発・共同販促契約をBiogenと締結した。

エーザイは2006年3月31日、ディナベック ㈱(NNAVEC:現在のIDファーマ)との間で アルツハイマー病に対するワクチン療法の創薬研究に関する契約を締結。
ディナベック ㈱
1995/3 遺伝子治療関連技術開発を目的とした、国家研究プロジェクトが開始され、医薬品機構及び製薬会社7社が出資し、㈱ディナベック研究所 設立
2003/9 経営陣と製薬会社4社(協和発酵工業、三共、久光製薬、山之内製薬)が出資、上記から営業譲渡を受け、ディナベック㈱を設立
2006/3 エーザイと「センダイウイルスベクターを用いたアルツハイマー病用ワクチンの開発」に関する研究協力契約を締結
2013/10 ㈱アイロムホールディングスの子会社に
2015/4 ㈱IDファーマに改称
エーザイは2002年以降、TorreyPines Therapeutics, Inc.との間でアルツハイマー病に関する遺伝子の発見の共同研究を行ってきたが、2008年11月にこれを終了し、TorreyPines Therapeuticsの研究結果を全て買い取った。


この領域で世界初の薬「アリセプト(一般名ドネペジル)」を1997年に発売すると、ピーク時の2010年3月期には世界で約2900億円を売り上げた。

しかし、アリセプトの特許は米国で2010年11月に、日本では2011年6月に切れ、売上高は激減した。

今回の発表を受けての株価高騰は、この新薬への期待を表している。

しかし、Nuclear Regulatory Commission は4月5日、今までの情報では資金面で十分であるとの認識は出来ないとし、両社に詳細な説明を求めた。
NRCがライセンスの移転を認めないと、売却は意味がない。

州のPublic Utility Commission は7月6日、NRCが結論を出すまで、売却承認の決定を延期すると発表した。

両社は依然、12月31日までに売却することを期待している。


米当局は7月10日、企業秘密の窃盗で米Appleの元社員 Xiaolang Zhang を起訴した。自動運転車に関連した設計図を個人のパソコンにダウンロードし、出国しようとしたという。

最高10年の懲役と25万ドルの罰金を科される可能性がある。

Xiaolang Zhang は、2015年12月に 自動運転車のソフトウエアとハードウエアの開発者として採用され、回路基盤の設計やテストに携わった。

Appleの 自動運転車プロジェクトのデータアクセス権限を持つ従業員はざっと5000人で、その中でもZhangは、より高度なアクセス権を認められた約2700人の「コア従業員」だった 。


本年4月に子供が生まれ、4月1日~28日の間、父親としての育児休暇をとり、家族と中国に一時帰国した。

米国に戻り、4月30日に上司に、Appleを辞めて病身の母親のいる中国に戻り、中国の電気自動車会社のXMotors (Xiaopeng Motors:小鵬汽車) に転職する意思を伝えた。

小鵬汽車は電気自動車のスタートアップ企業(2014年設立)で、インターネット通販のAlibaba と世界大手電子機器受託製造企業の鴻海科技(Foxconn Technology)から出資を受けている。

上司は 彼の言動を不審に感じ、社内のセキュリティ部門に連絡、調査を開始した。

その結果、下記が判明した。

4月30日までの数日間にAppleのネットワークへのZhangのコンタクトが過去2年と比べて「指数関数的に増加」して いる。
大部分は膨大な資料探索と秘密データベースからの情報のダウンロードである。

休暇中の筈の4月28日の午後に、自動運転車のソフトウエアとハードウエアの研究所に現れ、1時間後にコンピューターのキーボード、ケーブルと大きな箱を持ち出すのが映っていた。

AppleはZhangを呼び出し、証拠を示して尋問すると、下記を認めた。

Apple在籍中にXMotorsに移籍の話をしていたこと。
休暇の前に、ハードウエア研究所からの2枚の回路基板とLinuxサーバーを持ち出したこと。
その理由は、Appleの他の部署への異動の話があり、新職場で役立つと思ったためであること。
持ち出したデータは妻のパソコンにダウンロードしたこと。

そして、自宅に取りに戻り、妻のパソコンと持ち出した回路基板とLinuxサーバーを提出した。

AppleはFBIに通報、データの60%が問題を含むものであると伝えた。

Zhangは5月5日にAppleを退職、XMotors のMountain Viewオフィスに入社した。

FBIは6月27日、自宅の捜査令状をとり、尋問した。

FBIは7月7日に、Zhangが同日の北京行き飛行機の予約を取ったことを知り、空港で逮捕した。

小鵬汽車はZhangの起訴について、「非常に驚いており、事態を遺憾に思う」との声明を出している。法律事務所の協力の下で独自の社内調査を実施しており、Zhang はすでに「正式に解雇した」という。

ーーー

Appleが自動運転技術の開発に取り組んでいるという噂は数年前からあったが、詳細は不明だった。

今回の事件で、研究体制の概要が明らかになった。

Appleは本年4月、社内ブログで、昨年のうちに「29件の情報 漏洩が発覚し、12人が逮捕された」と述べるとともに「失業するだけでなく、他社での再雇用も非常に困難になるかもしれない」と警告したと報じられてい る。

ーーー

小鵬汽車(広東省)は4月23日、同社初の市販車「G3」を発表した。

人工知能(AI)を駆使し、ドライバーが降りたあと、リモコンのボタン一つで車が自動で縦列駐車をするなど便利な機能を搭載した。

価格は20万~28万元(約340万~約480万円)だが、政府の補助金を受けられるため、価格は実質200万円台となる。納車は年末になる見込み。

車の屋根部分に360度回転するカメラを搭載、風景を撮影しながらドライブし、車内のタブレット画面やスマホで見て楽しめるようにするといった工夫をした。
20分で、8割の急速充電ができる。

何小鵬・董事長は日経(2018/2/27)のインタビューで次のように話している。

来年半ばに年産20万台の自前の新工場も完成し、事業を本格化する。

米テスラからは自動運転の責任者を採用し、シリコンバレーに開発拠点を設け、優秀な人材を集めている。
日本メーカーの経験者も多く、元マツダのデザイナーもいる。
年内には自動運転の技術者は6倍の600人にする予定。

EU離脱を巡り、英国が混乱している。

7月8日夜、デービス欧州連合(EU)離脱担当相が辞任した。メイ首相がEUとの関係を重視する「穏健離脱」の方針を打ち出したことに反発した。
翌7月9日、ジョンソン外相が辞任した。

EUとの合意のないまま「無秩序離脱」を迎えるリスクが高まった。

メイ氏の責任論もくすぶり始めた。保守党内の規定では保守党議員の15%にあたる48人が同意すれば、首相の不信任投票の手続きが可能。

今後英政府が体制を立て直せても、EUは、通商協議のほか、アイルランド国境問題など離脱協定の全てで合意できなければ交渉を「白紙」に戻す方針。

2019年3月に混乱なく離脱するためには、英・EUは2018年10月までに離脱条件や将来関係の大枠で合意する必要がある。10月までの残り3カ月でメイ氏が党内融和とEUとの離脱交渉を進められなければ、EUと合意のないまま離脱する「無秩序離脱」 は現実味を帯びる。

ーーー

これまでの経緯は下記の通り。

2016年6月23日英国で実施されたEU離脱の是非を問う国民投票は、大方の予想を裏切る「離脱」という結果となった。

スコットランドは、全選挙区で「残留」支持であった。

2016/6/25 英国、EU離脱 

英国のTheresa May首相は2017年1月17日、EUからの離脱を巡り、移民制限や司法権独立など英国の権限回復を優先し、EU単一市場から完全に離脱すると表明した。

単一市場に残りながら移民を制限する "soft Brexit " は、「いいとこ取り」を認めると他に離脱国が出ることを恐れるEUが認めないことが確実なため、"hard Brexit" に踏み切った。

2017/1/19 BREXIT の12のポイント

欧州理事会(EU首脳会議)のDonald Tusk常任議長は2017年3月31日、今後のEUとしての交渉ガイドラインの原案を公表した。

課題として、次の4つを挙げている。

 1. 英国で生活・就労・就学するEU市民、EUで生活・就労・就学する英国市民の互恵・無差別の権利保全

 2. 英国でのEUの企業、EUでの英国企業に影響を与えるが、法的空白を避ける必要がある。

 3. EUも英国も、離脱前に決めた義務を守る必要がある。全ての法的、予算上の約束、偶発債務を含めた債務についてである。

 4. 英国(北アイルランド)とアイルランドの国境問題について、国境復活などの厳格な対応ではなく、柔軟で建設的な解決を模索すべきである。

2017/4/6 EUのBrexit 交渉ガイドライン

EUは2017年12月15日の首脳会議で、英が払う「清算金」などの離脱条件を協議してきた「第1段階」に「十分な進展」があったと判断。「第2段階」となる通商協議に入るための交渉指針を採択した。

2017/12/20 英のEU離脱交渉、第2段階へ 

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上の4つの課題のうち、英国とアイルランドの国境管理が解決不能の問題として残った。

アイルランド島は、EUに残留するアイルランド共和国と英国の北アイルランドに分かれており、英国が唯一、EU加盟国と陸路で接しているところである。
また北アイルランドは、先住のアイルランド人と後に英国から移住した英国人が、長年にわたり争いを続けてきた。

1998年の聖金曜日の和平合意により、争いが終結した。
北アイルランド人は英国籍かアイルランド国籍、あるいは両方を取得できるようになり、さらに、検問がなくなって国境地域は通商で大きな恩恵を受けるようになった。

英EU離脱はこれら全てを切り崩してしまう。

アイルランドは、逸早く国境問題を英EU離脱協議の優先課題にするようEU諸国を説得した。
英国がアイルランドの要求(北アイルランドの現状維持)に応じない場合、アイルランドは離脱交渉の進め方に拒否権を使うと明言している。

EUの交渉ガイドラインでは、「北アイルランドとアイルランドの国境問題について、国境復活などの厳格な対応ではなく、柔軟で建設的な解決を模索すべきである」としている。

しかし、これを実行すれば、[EU=アイルランド]と[北アイルランド=英本土]が結びつき、人やモノが自由に移動できることとなり、EU離脱の意味が無くなる。

逆に北アイルランドと英本土の間を遮断すれば英国が分断される。
メイ首相は、「北アイルランドは英国と同じ条件でEUから離脱しなければならない。経済的にも政治的にも英国との規制の違いは受け入れられない。英国との一体が損なわれることは認められない」と述べていた。

2017年12月に、下記の通り合意した。

南北アイルランドの間では従来通り、国境管理(規制)を行わない。

北アイルランドと英国本体との間に新たな規制の障壁を設けない。北アイルランドの企業の英国本体の市場へのアクセスを保証する。

英国は南北アイルランドの協力と、南北アイルランド国境に鉄条網や検問所などハードボーダーを設けないと約束する。これは英国とEUとの将来の関係を通じて達成する。

実際には詳細を先送りしているが、今回の合意で、北アイルランドは英国本体と一体となってEUの統一市場と関税同盟から離脱できると解釈でき、英国側の懸念が消えた模様。


しかし、実際には、南北アイルランドにハードボーダーを設けずに、北アイルランドが本土と一体になってEU統一市場と関税同盟から離脱する方法は見つかっていない。離脱交渉の最大の難関となった。

ここにきて、一時的対策「backstop措置」 が提案された。(Backstopは野球のバックネットの意味)

EU案は、英領北アイルランドとアイルランド共和国との国境を目に見えないままにし、北アイルランドを関税同盟に残す もの。

英国は、これは英本土と北アイルランドの間に関税国境をつくるものとして反対した。

英国は正式提案していないものの、EU案を英国全体に適用すべきだとの考えを示唆し た。これはアイルランド島内での国境設置を回避する最後の手段として、英国全体が単一市場と関税同盟の一部にとどまることを意味する。

  しかし欧州委員会はこれに反対しており、北アイルランドに特別な地位を与えるだけにとどめたい意向 である。

英国は6月7日、アイルランド問題解決のためのTechnical note: temporary customs arrangement を発表した。

EUの提案は、英本土と北アイルランドの間に関税国境をつくるもので、受け入れられない。
英国案は、2020年12月に移行期間が終了した後、一定期間、英国全体をEUと関税同盟を結ぶというもの。
但し、将来の協定ができるまでの臨時の措置であり、遅くとも2021年12月末までと期待する。

この期間中も英国は世界の他の国々と貿易協定を結び、施行できる。但し、モノの貿易はEUとの関税同盟があるため、他国との協定はサービスに関することに限られる。

EU側はこれに抵抗感を示した。

6月20日に、現在受け入れているEU法を国内法に置き換えるEU離脱法案が議会を通過した。離脱後も英国内の規則や規制を継続させるためのもので、スムーズな離脱を目指すメイ政権 にとり重要手続きの一つ。


この法案をめぐっては、英国がEUと合意に至らないまま離脱日を迎えた場合について激しい議論があった。
EUとの合意なしの強行離脱に反対する親EU派の議員が、内閣の強硬離脱の提案を認めない権限を英議会に与える修正案を付けた。

メイ首相は交渉の手足を縛られるのを嫌いつつ、親EU派にも配慮し、交渉決裂時には英議会で審議する時間を設けると約束 した。

この結果、修正案は303票対319票の僅差ながら反対多数で否決された。

メイ英首相は7月6日、閣議を開き、EU離脱後の通商関係について議論し、交渉方針で合意した。

EUとの関係を尊重する内容で、EUの影響力を排した完全な離脱を求めるジョンソン外相ら強硬派閣僚が反対し、メイ氏が約12時間かけて説得した。

離脱条件を巡るEUとの実質合意期限が10月に迫る中、「Hard Brexit(強硬な離脱)」から協調優先の「Soft Brexit(穏健な離脱)」路線に修正して交渉の局面打開を図る もの。

内容は次の通り。

「モノの自由貿易圏」創設を提案し、EUとの貿易面での緊密関係を維持する。EUが定める製品や農産物の規格などEUの一定の通商ルールに離脱後も従う。

関税面でもEUと連携し、現状並みの円滑な貿易を確保することで企業が国境を越えて展開するサプライチェーンを守る。

離脱後に米国などとの自由貿易協定(FTA)締結を目指すほか、TPP 11への参加も視野に入れる。

人の移動の自由を終わらせる。EU加盟国の漁船が英国領海内で操業することを認めず、英国の海域を自国でコントロールする。

但し、金融サービス分野の一部では、EUと現状通りの取引ができなくなることを受け入れる。 (EU側の「いいとこ取りは許さない」との主張に配慮)

この案には「いいとこ取り」の面が強く、EUのバルニエ首席交渉官は「実現可能性を吟味したい」と述べた。

強硬離脱派は、メイ氏の方針では部分的に事実上、関税同盟に残ることになり、「EUにさらなる譲歩を迫られやすい弱い立場に追い込まれる」と厳しく批判した。

7月8日夜、デービス欧州連合(EU)離脱担当相が辞任した。「政府方針は離脱を骨抜きにし、英国はEUに対して交渉で弱い立場になる」と述べた。

同氏は7月6日の閣議の前にメイ首相に宛てた書簡で、首相の案を実行不可能とし、首相の新提案は失敗すると指摘した。

デービス欧州連合(EU)離脱担当相に続き、ジョンソン外相が7月9日、辞任した。

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メイ首相のSoft Brexit 路線の新しい交渉方針では、離脱後に米国などとの自由貿易協定(FTA)締結を目指すほか、TPP 11への参加も視野に入れるとしている。

しかし、訪英中のトランプ大統領が冷水を浴びせた。

大統領は7月12日の英紙サンとのインタビューで、メイ英首相が進めるSoft Brexit 手法に賛同しない考えを示し、現状の離脱条件では米英の貿易協定にも悪影響が及ぶことになると警鐘を鳴らした。この案で進められれば英政府は米国との貿易協定を「おそらく結べない」と述べた。

また、辞任を表明したジョンソン前外相については、「非常に能力のある人物」と辞任を惜しみつつ「将来は偉大な首相になると思う」と付け加えた。

トランプ氏は米大統領予備選挙中の2016年5月、英国がEUから離脱した方が良いとの考えを示していた。

7月13日の首脳会議では、トランプ大統領はメイ首相に、英国はEUと交渉するよりEUを訴えるべきだと提言した。

インドネシアのジョコ大統領は7月12日、米鉱山大手 Freeport-McMoRan Inc.の現地法人 PT Freeport Indonesiaの株式の51%を国営鉱業大手のアサハン・アルミ(PT Indonesia Asahan Aluminium:Inalum)が取得すると明らかにした。世界第2の銅鉱山のGrasberg鉱山を取得する。

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アサハンアルミ(Inalum)はインドネシア国有のアルミニウム精錬会社であるが、2017年に政府の方針で、国有の鉱工業企業の持株会社となった。

2017年11月の政令で、非鉄金属のPT Aneka Tambang (ANTM) の65%、石炭のBukit Asam (PTBA)の65%、錫のTimah Tbk PT (TINS)の65.2%の政府持ち株がアサハンアルミに譲渡された。
各社固有の経営資源と技術の相乗効果を狙う。

シナジー効果の一つは、後述のアルミナ生産計画の加速化である。また、PTBAがこれら他の国有会社と共同で発電所を開発することにより、ANTMのフェロニッケル製錬所やInalumのアルミニウム製錬所に電気を供給するプロジェクトも計画されている。その他には、港湾建設の下流事業への投資も拡充する予定。

インドネシア政府は、国内の豊富な鉱石をそのまま輸出するのではなく、国内での加工を推進しようとしている。

2014年1月12日、国内での加工推進を目的とし、未加工の鉱石の輸出禁止措置を導入した。

2014/1/16 インドネシアが鉱石禁輸実施、直前に緩和 

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大統領は、世界第2の銅鉱山(金、銀も産出)のGrasberg鉱山を運営するFreeport-McMoRanに対し、採掘権や輸出を認める代わりに、株式の51%超を譲渡するよう求めていた。

今回の合意で、政府は現在 9.36%のFreeport Indonesiaの 持株を51.38%に引き上げる。将来的にはGrasberg鉱山があるパプア州政府や地元自治体も一定の株式を持つ見通し。

実際の取引にはRio Tintoも絡む。

Grasberg鉱山の運営会社は、Freeport Indonesiaが60%、Rio-Tintoが40%所有するJVである。

Rio Tintoはインドネシア政府の資源ナショナリズムに
対応し、離脱を模索していた。

Inalumは、JVのRio権益持分(40%)を35億ドルで 買収する。これをFreeport Indonesiaに譲渡し、見返りにFreeport Indonesiaの株式32.66%を取得する。

別途、InalumはFreeport Indonesiaに9.36%を出資するFreeport-McMoRanの投資会社PT Indocopper Investamaを3.5億ドルで買収する。

この結果、既存の政府持ち株を合わせ、Inalumは51.38%を取得する。

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アサハンアルミ(Inalum)は、日本とインドネシアのJVとして設立された。

1975年7月に日本側参加12社とインドネシア政府間の基本協定が締結された。

同年末に日本側投資会社の「日本アサハンアルミニウム」が設立された。

国際協力銀行 50%
精錬5社 各7.5%、計37.5%
7商社合計 12.5%

1976年1月、日本アサハン 90%、インドネシア政府 10%の出資で、P.T. Indonesia Asahan Aluminium (INALUM)が設立された。

北スマトラ、Kuala Tanjung地区にアルミニウム年産225千トンの製錬工場(75千トン3系列)
トバ湖から流れるアサハン川の上流のSiguragura、Tanggaの両瀑布に最大出力513千kwの発電所
原料アルミナは輸入(Alcoa of Australia)

2010/10/14  インドネシア、アサハンアルミの将来

インドネシアと日本のJVのアサハンアルミが操業30年を迎える2013年11月以降、インドネシア政府は日本の出資分を買い取る権利を持つ。

2010年現在の出資比率は日本側 59%、インドネシア側 41%となっている。
JV協定は「生産開始」(1983年11月1日)から30年後に満了、設備は簿価などの補償を条件として、インドネシア政府に移管されることとなっている。

日本の企業連合とインドネシア政府は2013年12月9日、日本側が全保有株を同政府に5億5670万ドルで売却するとの合意文書に調印した。
合弁は解消され、インドネシアが事業を国有化した。

2013/12/11 日本企業連合、アサハンアルミから撤退 

アサハンアルミの現在の能力は26万トンである。

同社は現在、ボルネオ島Kalimantan の新立地で、次の通り35億ドルの拡張を計画している。

アルミ精錬第二工場(20万トン) 7億ドル
 (当初の構想は、
アルミ精錬能力を2020年に50万トンに、2025年に100万トンとする というものであった。

800MW水力発電 10億ドル

アルミナ工場 50万トン 18億ドル

原料アルミナは現在輸入しているが、自製を開始し、輸入依存を減らす。

立地は西カリマンタン。

今回Inalumの子会社となった非鉄金属のPT Aneka Tambang (ANTM) とInalum のJV PT Inalum Antam Alumina が中国のAluminium Corporation of China (CHALCO) と合弁で生産する。
インドネシア側が過半数を持つ。

ANTMがカリマンタンで採取するボーキサイトを原料とする。

これまでANTMはボーキサイト全量を 中国などに輸出、アサハンはアルミナを全量、オーストラリアとインドから輸入している。(インドは最近)


Pfizerは7月10日、今月1日に米国で実施した医薬品の値上げを撤回し、当面は以前の値段に戻すと発表した。

値上げの撤回は、同社のCEOがトランプ大統領と直接話し合って決めた。価格据え置きはあくまで一時的な措置で、大統領が進めている薬価引き下げの取り組みを形にする「機会を与える」と説明している。

大統領は早速、呟いた。

Just talked with Pfizer CEO and@Sec Azar (Alex Azar, Secretary of Health & Human Services ) on our drug pricing blueprint.
Pfizer is rolling back price hikes, so American patients don't pay more.
We applaud Pfizer for this decision and hope other companies do the same.

Great news for the American people!

この問題は、大統領が医薬品値下げに懸命になっている時に、Pfizerほかが値上げを発表したことから発展した。

ーーー

トランプ氏は大統領就任直前の2017年1月11日、製薬会社は生死にかかわるような医薬品の価格を大幅に値上げし、「殺人」の罪を犯しているにもかかわらず、罰せられておらず、政府に多額の費用を負担させていると批判、薬価の改革を進める意向を表明した。

また海外へと拠点を移す動きが加速しているとして、製薬業界を国内に回帰させる必要があるとした。

トランプ氏は薬価をめぐり、新たな入札制度を導入し、費用を圧縮すると主張、「われわれは世界最大の医薬品の買い手であるにもかかわらず、適切な価格設定が出ていない。入札を開始し、数十億ドルを削減する」と述べた。

トランプ氏は選挙期間中、高騰する薬価の問題に言及してきた。公約では「製薬産業は民間部門だが、製薬企業は公共サービスを提供している」と指摘、メディケア(高齢者向け公的医療保険)プログラムについて、現在は法律で禁止されている政府と製薬会社との薬価交渉を可能にするとしていた。

2017年1月31日の製薬企業幹部との会談では、薬価の引き下げと米国内での製造拡大を求めると同時に、新薬承認の迅速化や規制緩和を約束した。

新薬承認の迅速化は、大統領選直前に公表した「有権者との契約」(就任後100日間で実行)にも盛り込まれていた。
「お役所的な複雑な手続きの打破」を含むFDAの改革を公約、「4000もの医薬品が承認を待っている。特に生命を救う医薬品の迅速な承認を望む」としていた。

2018年1月30日に行った一般教書演説では、薬価の高騰問題について、「政権にとって、最優先課題のひとつだ」と述べた。

医療関連としては、オバマケアの撤回、オピオイド乱用問題、薬価の高騰問題に言及した。

薬価については、「同じ薬剤に対して諸外国の人が払う額は、米国人よりもはるかに安い。非常に、非常に不公平だ」と指摘した。

その後も、医薬品価格の引き下げに度々言及した。

2018年5月11日、トランプ米大統領は処方箋薬の価格抑制に関する演説を行った。製薬会社、保険会社、薬剤給付管理会社(PBM)が処方箋薬を高価で手の届かないものにしたと非難し、競争強化と価格引き下げに向けた措置を取ると表明した。

製薬業界の「中間業者」が大きな富を得ているとして排除する方針を示したほか、医薬業界のロビー団体についても、納税者の金で富を得たと批判した。
外国政府についても、米製薬会社に不当な引き下げを強要しているとして批判した。

米保健社会福祉省は「American Patients First」と題した詳細な計画を公表。メディケア(高齢者向け公的医療保険)パートD(処方せん薬給付)管理会社の製薬会社との価格交渉能力を高めることなどが含まれる。

但し、専門家からは、レトリックにすぎないとの批判がなされた。

5月30日、大統領は突然、主要医薬品会社(複数)が2週間以内に医薬品価格を「自発的に、大幅に」引き下げると発表した。医薬会社の役員(名前を明らかにせず)がホワイトハウスを訪問し、発表すると述べた。

大統領は、末期患者が実験中の医薬品を使うのを容易にする法案にサインしながら、「我々はまた、医薬品のコストの引き下げに努力しており、国民はこの国で初めて、処方箋薬の大幅引き下げを経験することとなる」と述べた。

しかし、その後、値下げの発表はなく、大統領が予告した理由は不明のままである。

逆に、Pfizerは7月1日付で値上げを発表した。

「バイアグラ」を含む同社の代表的製品100品目を値上げした。値上げ率は大半の品目で9%強で、消費者物価指数を大きく上回る。
バイアグラは19.8%の値上がりとなった。
但し、5品目については、価格を16~44%引き下げている。

Pfizerでは、割引やリベート(割戻金)を計算に入れると値上げ幅は「1桁台前半」にとどまるとしている。

Pfizerのほか、イスラエル製薬大手 TevaやスイスのRoche なども最近値上げに踏み切っている。


トランプ米大統領は7月9日のツイッターで、「理由もなしに値上げした。自らを守ることができない貧しい人々などの弱みにつけこみ、他方で海外で安値販売している」と、Pfizer などの製薬大手を批判し、何らかの対策を講じると言明した。

Pfizer & others should be ashamed that they have raised drug prices for no reason.
They are merely taking advantage of the poor & others unable to defend themselves, while at the same time giving bargain basement prices to other countries in Europe & elsewhere.

We will respond!

これを受け、PfizerのCEOがトランプ大統領と直接話し合い、値上げ撤回を決めた。

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