「no」と一致するもの

米食品医薬品局(FDA)は11月19日、成長が早くなるよう遺伝子を組み換えたAtlantic Salmonを食用に養殖し販売することを認めたと発表した。

米マサチューセッツ州の新興企業 AquaBounty Technologiesが開発した「AquAdvantage Salmon」で、Atlantic Salmonの卵に、Chinook Salmon (キングサーモン or マスノスケ)の成長遺伝子とOcean Pout(ゲンゲ)というウナギに似た魚の"promoter"を組み合わせた遺伝子を導入した。

通常のAtlantic Salmonは成長ホルモンを1年のうち一定期間しか出さないが、Chinook Salmonの成長ホルモンが加わり、Ocean Poutの遺伝子がホルモンのスイッチを"on" にすることで、成長ホルモンを年中出し続ける。

通常は3年の養殖期間を半分に縮めた 。同じ1年半の時点での通常のサケとの比較は下記の通りで、エサの量を25%カットでき養殖の効率が上がるという。
米国では消費するAtlantic Salmonの95%以上を輸入している。

遺伝子を組み換えた動物が食品として認可されたのは初めて。

FDAは、同社から提出されたデータや情報を検討した結果、食品として通常のサケと成分が変わらず、安全性を確認できたと発表 した。
成長が速いという同社の主張も確認した上で、遺伝子を組み換えていないサケとの間に生物学的な違いはないと認定した。
このため遺伝子組み換えのラベル表示は義務付けられない。

養殖施設から誤まって逃げても、基本的に不妊になるため、自然界で繁殖する可能性は極めて少ない。

通常種との交配を避けるため養殖はカナダとパナマにある2カ所の施設でのみ許可される。

AquaBounty では販売開始の時期は未定だが、複数の流通経路について検討している。、

一方、養殖業者や消費者などからは、遺伝子組み換えサケの承認に強く反対する声が上がっていた。
表示が義務付けられていないことに対しても「食品の製造方法について知る消費者の基本的権利がないがしろにされた」と訴えている。
一部では「FrankenFish」とも呼ばれている。


AquaBountyは1991年の設立で、Massachusetts州のMaynard とPrince Edward IslandのFortune に事務所を持つ。
遺伝子組替技術と
陸上での閉鎖循環式養殖システム(recirculating aquaculture systems:RAS) の組み合わせがサケの養殖に最適との信念でやってきたという。


スペインのエネルギー会社 Cepsa は11月12日、タイのIndorama Ventures にPTA /PIA/PET事業を売却することに合意した。 
スペイン南部
San RoqueGuadarranque Plant の能力は、PTA 480千トン/PIA 220千トン/PET 175千トンとなっており、PIAは欧州で唯一のプラント。

PIA(高純度イソフタル酸 )はPETの原料として使われるほか、ペイントなどの生産にも使われる。

メタキシレンを酸化して生産(オルソキシレン原料でフタル酸、パラキシレン原料でテレフタル酸となる)

現在、アジアでは次の各社がイソフタル酸を製造している。

1)韓国 KP Chemical(蔚山) 200千トン

KP Chemical はロッテグループの湖南石化の子会社であったが、2012年12月に湖南石化と合併し、Lotte Chemical となった。

2)台湾 東展興業 (Tuntex Petrochemical) 10千トン

Tuntexは台湾石化合成(Tasco Chemical)の子会社となった。

3)中国 北京燕山石化 36千トン

4)シンガポール Perstorp 70千トン

当初スイスの医薬会社 Lonza が建設したが、医薬に専念するため2007年にPerstopに売却した。

5)三菱ガス化学   水島で70千トン(当初は120千トン、停止した松山の100千トンと合わせ220千トン)

2012/3/22 三菱ガス化学、高純度イソフタル酸事業の構造改革で特別損失 

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Cepsaは現在、アブダビ国営の投資会社IPIC の100%子会社。

IPICは当初、CEPSAに25%出資していたが、 2009年に47.1% にまで増やし、2009年8月にTotal から48.83% を買収、最終的に100%をおさえた。

本年3月にカナダのMontrealにある年産60万トンのPTA工場をIndoramaに売却している。(6月1日に売却完了)

今回の売却で、Cepsa は40年以上続けてきたポリエステル事業から撤退する。

Indoramaを売却先に選んだのは、この分野のワールドリーダーに売却し、工場の従業員の労働条件を悪化させないためとしている。

Cepsaは今後ともこのPTA /PIA/PET工場に原料や燃料を供給し、サービス契約に基づき、メンテナンス作業を受託する。

Cepsa は今後、フェノール/アセトンやLAB/LABSAなどの事業に集中する。

CepsaはLABの世界のリーダーで、50万トン以上の能力を持ち、世界の供給の13%を占めている。

Cepsaは2015年3月にカナダのPTA工場をIndoramaに売却したが、同年7月には、カナダのBécancourのLAB工場(Cepsa 51%、Investissement Québec 49%、能力年産12万トン) のInvestissement Québecの持分を買収し、Cepsa 100% としている。

Puente Mayorga Plant (San Roque, Spain) 22万トン
Plant Becáncour (Quebec, Canada) 12万トン
Camaçari Plant (Salvador de Bahía, Brazil ) 22万トン 72%出資 


LABSAはリニアアルキル
ベンゼンスルフォン酸 。

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スペインのPalos de la Frontera Plant では、フェノール 60万トン/キュメン 80万トン/アセトン 37万トンを生産している。

中国では上海で、フェノール 25万トン/キュメン 36万トン/アセトン 15万トンの工場を建設しているが、2014年4月に住友商事が25%を出資した。

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Indorama Group 1974年にMohan Lal Lohia ML Lohia)によりインドで設立され、インド、インドネシア、タイなどでPTAPET、ポリエステルなどの事業を拡大した。
ML Lohia は事業を3人の息子に分割した。長男OP Lohiaはインド、次男 SP Lohia はインドネシア、三男 Aloke Lohia (APL) はタイを受け継いだ。同じような事業を行っているが、それぞれが独立して事業を行っている。 

Indorama Venturesは三男 Aloke Lohia が引き継いだ会社(その後、Aloke株を手放し、上場)で、現状は以下の通り。(単位:千トン)

    PTA PET  
タイ Rayong 770 90  
Map Ta Phut 600  
Nakhon Pathom     2008年Tuntexを買収
Lopburi   180  
タイ合計  1,370   270  
英国 Workington   168 2008年Eastmanから買収
オランダ Rotterdam 350
(+250)
400
リトアニア Klaipeda   274 2006年Orion Global PET設立
イタリア Ottana 161 Ottana Energia との50/50JV
2010年7月、Equipolymers(Dow/PIC)から買収
ポーランド Wloclawek 227
欧州合計 350 1,230  
USA Asheboro   252 2003年StarPet買収(当初116千トン)
Decatur   432 AlphaPet 2009年稼動
Spartanburg 387 元 Hoechst
カナダ Montréal 600 Cepsaから買収
メキシコ Querétaro 454 2011 Invista から買収
北米合計 600 1,525  
中国 広東 522
インドネシア Tangerang 88 2011 SK Chemicals から買収
West Java 500 Indorama Petrochemicals 43%保有
102 Indorama Polypet Indonesia
ナイジェリア 84
トルコ Corlu 252
その他 500 1,048
総合計 2,820 4,073  

2007/4/14 タイのIndorama Polymers、北米でPET工場新設へ
2010/11/18 タイのIndorama、米国と中国でポリエステル等の工場を買収
2010/4/1 Dow/PIC のPET合弁会社、イタリア工場をIndoramaに売却
2012/3/28 Indorama、ナイジェリアでPET製造

Pfizerとアイルランドに拠点を置く同業のAllerganの両取締役会は11月23日、満場一致で両社の合併を承認した。

株式交換方式で合併する。
Allergan株主は1株当たり統合会社の11.3株を、Pfizer株主は1株当たり統合会社の1株を受け取る。
実質的に、Pfizerによる1600億ドルでのAllergan 買収となる。

形式的には、Pfizerの事業とAllerganの事業は Allergan plc に統合され、アイルランド法での企業となるが、社名を"Pfizer plc" に改称し、New York Stock Exchangeに上場する。
実務上の本拠はNew Yorkに置く。

Allergan plc は10月29日、Pfizerから事業統合の提案を受け、友好的に予備的交渉を行っているという報道を認めている。

2015/11/12 Pfizer、Allergan と統合交渉 

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Allerganについては上記を参照。

Pfizerはこれまで、M&Aで成長を続けてきた。

2000年2月にWarner Lambert を買収した。

Pfizer と Warner-Lambert は1996年から高脂血症治療薬 Lipitor 開発の partnership を組み、Pfizer は販売権を有していたが、1999年11月にWarner Lambert はAmerican Home Products との友好的対等合併を発表した。
その数時間後、Pfizeは
Lipitor の販売権を失うことを恐れ、Warner Lambertの敵対的買収を発表した。

2007/10/11 高杉良 「挑戦 巨大外資」

Pfizer はWarner-Lambert を吸収後、2003年4月にはPharmacia を吸収合併し、世界の医薬メーカーのトップとなった。

有力な新薬を会社ごと買収して収益を上げる手法は Pfizer Model と呼ばれる。

Pfizer は2009年1月、Pfizerが以前にWarner-Lambert との統合を阻止したWyeth (旧称 American Home Products) を680億ドルで買収すると発表した。

2009/1/27 Pfizer、Wyeth を買収

Pfizer は2015年2月、同業の米 Hospira, Inc.を170億ドルで買収する契約を締結したと発表した。

2015/2/11 Pfizer、米製薬会社 Hospira, Inc. を買収


合併後の企業はPfizerの肺炎球菌ワクチンPrevnar (Wyethが開発) 、Allerganのしわ取り注射剤 Botox といったベストセラー製品を擁し、アルツハイマー病、がん、眼病からリウマチ性関節炎まで幅広い病気に対応する薬品やワクチンを提供する、業界最大の研究開発費を誇る巨大製薬会社となる。

Pfizerの売上高は、リピトールの特許切れなどで減少、2014年にはNovartisにトップを奪われたが、Allerganの買収により、再びトップを取り返す。

2014年の世界の処方薬売上高(億ドル、EvaluatePharma 調べ

Pfizer + Allergan 556
1 Novartis 461
2 Pfizer 445
3 Roche 401
4 Merck & Co 366
5 Sanofi 382
6 J & J 307
7 GSK 303
8 Astrazeneca 257
9 Gilead Science 245
10 AbbVie 199
11 Amgen 193
12 Teva Pharma 175
13 Eli Lilly 163
14 Bayer 163
15 Novo Nordisk 158
16 Boehringer-Ingelheim 134
17 武田薬品工業 130
18 BMS 120
19 Allergan(旧 Actavis) 111

以上 合計 

4,713
その他各社合計 2,717
総計 7,430

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この買収は過去最大の"inversion"(納税拠点の低税率国への移転)」となる。

米国は連邦法人税率が35%だが、アイルランドは12.5%と低く、形式的には、Pfizerの事業とAllerganの事業 を Allergan plc に統合し、アイルランド法での企業となることで、年間で約20億ドルの節税効果があると言われている。

世界一位のNovartis が本社を置くスイスのバーゼルは法人税率が20%強である。

Pfizerは2014年1月にAstraZenecaに買収提案を行った。

Pfizerの経営幹部は、この買収目的の一つを「効果的な租税負担を構築する」こととした。買収後は英国に多くの利益を留保・移転し、米国の高い税を回避するというもの

しかし、AstraZenecaはこの提案を拒否、2014年5月にPfizerは買収断念を発表した。

2014/5/12 Pfizer が AstraZenecaに買収提案

租税回避を巡っては、各国が対応策を検討しており、今後はメリットがなくなる可能性がある。

欧州委員会は10月21日、Starbucksがオランダ政府から、Fiat Finance and Tradeがルクセンブルグ政府から、それぞれEUでは違法となる優遇税制を受けていたと判断し、更に、アイルランドによる米 Apple、ルクセンブルクによる米 Amazonへの税優遇などでも正式調査を進めている。

G20は10月8日、ペルーの首都リマで財務相・中央銀行総裁会議を開き、タックスヘイブン(租税回避地)などを使った多国籍企業の税逃れを防ぐ新たなルールを採択した。

2015/10/27 欧州委員会、StarbucksとFiatの税優遇を違法と認定、追加徴税を指示

米財務省は11月19日、米国企業が節税を目的に納税地を国外に移転しにくくするための新たな規則を発表した。

この規則には米国企業が外国事業部門を新たな外国親会社に移転するのを制限する項目があり、2014年9月22日以降にインバージョンを完了させた全企業の将来の取引に適用される。このため、既にインバージョンを終えた後発薬医薬品メーカーのMylanにとって問題となる可能性がある。

2014/7/21  MylanがAbbottのジェネリック事業の一部を買収、本社移転も目的の一つ

既存の米国の税法では、企業は外国企業と合併しない限り米国の税制度を免れないが、新規則はこの部分をさらにてこ入れする。
現行の法律では、合併後の会社に対する米国企業の株主の保有率が80%未満であれば、インバージョンが認められている。

しかし、アイルランド企業のAllergan がPfizerを買収する形をとる今回のインバージョンは、今回の規制の対象外となる可能性が強い。

大統領候補のクリントン前国務長官は、「米国の納税者が貧乏くじを引く(holding the bag)」としてPfizerを強く批判した。

「大統領になれば、米国での成長、イノベーション、雇用に報いる税制改正を行う。米国の税基盤を破壊するInversion の厳重な取り締まりを遅らすわけにはいかない」と述べた。

Statoil は11月17日、アラスカ州沖合のChukchi Seaでの探査が同社のグローバルなポートフォリオの中で、もはや競争力はないとし、撤退すると発表した。

Statoil が運営する16区画と、ConocoPhillipsが運営し、Statoil が25%の権益をもつ50区画からの撤退となる。これらは2008年にリース権を取得し、2020年に期限が来るもの。

これは9月に同じ理由でShellが撤退したのに続くもの。

Shell とStatoil が経済性がないとして撤退したため、他の各社も撤退を決める可能性が強い。

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これまでUS Geological Surveyが行った調査では、アラスカ沖の海底油田は、全世界のガスの未採掘田の30%、石油に関しては13%を埋蔵量を持つとの調査結果が得られていた。

2008年2月、Chukchi Sea の探鉱ライセンスの入札が行われ、Shell は総額21億ドルで275の鉱区を取得した。
同社は、1990年代初頭に試掘して埋蔵量を発見していたものの、経済性に見合わないとして撤退していた。

ShellはBeaufort Seaにも鉱区を持つ。

Shell はChukchi Sea のBurger J 油田を含む北極圏での新油田探査のために既に70億ドルもの巨費を投資してきた。

Shell は9月28日、有望な油田層の発見に至らなかったことを理由にChukchi Seaで行ってきたBurger J 油田の探査活動を停止したことを発表した。
「Burger J 油田の採掘活動の結果、石油とガス田の発見に至ったが、今後も掘削を続けても十分な埋蔵量を持つ油田の発見に至る十分な保証を得ることはできないことが判った」としている。

探査の結果のほか、高コストと米政府の環境規制を撤退の理由にしている。

北海での石油掘削に反対する環境団体はこれを歓迎した。

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Chukchi Seaでの各社の鉱区は下記の通り。

環境省は11月13日、関西電力などが千葉県市原市と秋田市で計画している2件の石炭火力発電所の建設について「現段階では是認できない」とする環境影響評価(アセスメント)の意見を経済産業省に提出したと発表した。

本年に入り、合計5件となった。

2015/8/20 環境相、中部電力の石炭火力計画 是認せず

環境影響評価法及び電気事業法は、出力11.25万kw以上の火力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境相は、提出された計画段階環境配慮書について経産相からの照会に対して意見を言うことができるとされており、この手続きに沿うもの。

事業が、国の目標・計画と整合を取るためには、電力業界全体で二酸化炭素排出削減に取り組む実効性のある枠組が必要不可欠である 。

政府は7月17日、地球温暖化対策推進本部を開き、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量を「2030年までに2013年比26%削減」とする目標を正式決定した。

2015/7/18 温室効果ガス 2030年に2013年比 26%減 

政府は目標の検討にあたり、2030年時点の再生可能エネルギー比率を22〜24%、原発を20〜22%と決め、2013年比で排出量を21.9%削減できるとした。さらに代替フロン類削減などで1.5%減、森林整備などによるCO2吸収分2.6%を上乗せし、計26%削減を目指す。

    2015/6/4 エネルギーミックス最終案

しかし、電気事業連合会など電力業界が2015年7月に公表した「電気事業における低炭素社会実行計画」では、2030年度の販売電力量1kWh当たりのCO2排出量を2013年度比約35%減らすとするが、「参加各社はそれぞれの事業形態に応じた取り組みを結集する」というだけで、具体的な「実行計画」はない。
「実効性のある枠組」ではなく、単なる目標に過ぎず、これらの事業については、「日本の約束草案」及びエネルギーミックスの達成に支障を及ぼしかねない。

このため、環境省は今回も、本事業の計画内容について、国の二酸化炭素排出削減の目標・計画との整合性を判断できず、現段階において是認することはできないため、早急に具体的な仕組みやルールづくり等が必要不可欠であるとした。

石炭火力は、最新型であってもCO2排出量が天然ガス火力の2倍以上とされ、欧米各国は事実上、新設を不可能にする規制を導入しつつある。
日本が大量の石炭火力発電の増強を進めれば、温暖化対策に逆行するとして、国際的な批判にされるのは必至である。

少なくとも、(1)石炭火力のCO2排出量をどう減らすか(2)CO2排出が目標通りに収まらない場合どう対応するか−−を明確にしない限り、環境省は是認できない。

丸川珠代環境相は「石炭火力発電のCO2排出削減は極めて重要だ」と述べ、早急に実効性のある対策をまとめるよう電力業界に求めた。

ーーー

これを受け、経済産業省は11月17日、総合資源エネルギー調査会の専門委員会で、電力各社の火力発電に占める石炭火力の比率を上限5割(電力量ベース)に抑える案を正式に示した。年内にも省エネルギー法の告示を変え、2016年度以降、電力会社に指標の達成を求める。

新設する場合も現在普及している中で最新鋭クラスの高効率な設備のみ認め、老朽設備の廃止や稼働休止を求める。

既存設備では、ベンチマーク制度を活用し、発電効率に応じて事業者を評価する指標を導入、一定の基準を満たさず、改善の努力が見られない事業者名を公表する。

経産省によると、現時点では大手電力10社の大半が達成できていないという。

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環境省が「現段階では是認できない」との意見を提出した案件は下記の通りで、全て、超々臨界圧石炭火力である。

超々臨界圧発電所は超高温・超高圧(蒸気温度593℃以上、蒸気圧力24.1Mpa以上)の蒸気でタービンを駆動させ、発電効率を向上するとともに、燃料消費量・CO2排出量を低減する。

意見書 立地 事業者 石炭火力計画 備考
6月12日 山口県宇部市
西沖の山
(宇部興産所有地)
山口宇部パワー 120万kw(60万kw x2基) 運転開始:2020年代前半
電源開発 45%
大阪ガス 45%
宇部興産 10%
8月14日 愛知県知多郡武豊町 中部電力 5号機 107万kW 原油・重油燃焼の1号機は停止済み
同2号機~4号機(各37.5万kw)を2015年に停止、全機を撤去
運転開始:2021年度
8月28日 千葉県袖ケ浦市
出光興産
貯炭場に隣接
千葉袖ケ浦エナジー 200万kW(100万kW×2基) 運転開始:2020年代半ば
出光興産 33.3%
九州電力 33.3%
東京ガス 33.3%
11月13日 千葉県市原市
東燃ゼネラル石油千葉工場構内
市原火力発電 100万kW

運転開始:2024年
東燃ゼネラル石油 50%
関電エネルギーソリューション 50%
11月13日 秋田県秋田市 秋田港発電所 130万kW(65万kW×2基) 運転開始:
 1号機 2024/3
 2号機 2024/6

丸紅
関電エネルギーソリューション



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石炭火力発電所の輸出に関しては、国際規制の強化を主導したい米国と、輸出を推進したい日本が対立しているが、日米両政府が一部規制の導入で合意したことが分かった。

加盟国が石炭火力の輸出時に政府系金融機関を通じて行う公的融資について、発電効率が高く温室効果ガス排出が比較的少ない「超々臨界圧」技術を用いる場合は認める一方、効率が低い技術を用いた場合は原則として支援を禁止する。

パリで11月16日に開幕するOECDの作業部会に共同提案し、加盟各国に協調を呼びかける方向で最終調整している。

付記

OECD作業部会は11月17日、下記を除き、公的金融機関からの融資を制限することで合意した。
   ①「超々臨界圧」技術、
   ②低所得国と島嶼国向けに限り、出力50万kw以下の「超臨界圧」や30万kw未満の「亜臨界圧」

米政権の高官が匿名を条件に語ったところでは、石炭プロジェクト全体の85%に当たる案件で今後、金融支援が打ち切られる。
合意によると、融資制限は4年後に再び厳格化される見通し。

国際協力銀行(JBIC)が2003~2014年度に資金支援した石炭火力の輸出案件(計画段階を含む)23件のうち、超々臨界圧はわずか1件にとどまる。


国際通貨基金(IMF)は11月13日、外貨不足に陥った加盟国を支援する特別引き出し権(SDR)の構成通貨に中国の人民元の採用が妥当とする見解をまとめた。
11月30日のIMF理事会で正式決定する。

評価方法の決定は70%の賛成で決まるため、米国(17.67%)と日本(6.56%) が反対しても通る。

SDRの評価の原則の変更や現行の原則の適用の抜本的な変更には85%の賛成が必要。
IMFは2010年に、新興国の出資比率を引き上げ、理事会への登用を増やす「IMF改革」に合意したが、85%の賛成が必要で、米国議会が賛成しないため、実施できない。

SDRは、加盟国のIMFへの出資比率に応じて各国に割り振られており、金融危機などで外貨不足に陥った場合、SDRと引き換えにドルや円など構成通貨と交換できる。
構成通貨は5年に一度、見直しを検討する決まりで、今年が見直しの年にあたっている。

構成通貨に採用する条件は、「財とサービスの輸出額」と「通貨が自由に取引できるかどうか」−−の2点で、2010年の見直し時には、中国はすでに財とサービスの輸出額の基準は満たしていたが、取引の自由度が不足とされ、採用を見送られた。

中国は今年に入って、SDR入りを目指す方針を公式に示し、人民元の取引活発化に向けた通貨・金融市場改革を実施した。
IMF事務局が7月に、「運用上の課題がある」との報告書をまとめた後、中国が人民元相場を従来より市場実勢に従って変動させるなど一段の改革を約束したことで、今回の判断につながった。

中国人民銀行(中央銀行)は11月14日、「人民元のSDR入りは、現行の国際通貨体制を改善し、中国と世界にともに利益をもたらす」との声明を発表し、理事会での正式決定に向けて各国の支持を求めた。

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出光興産と昭和シェルは11月12日、対等の精神に基づく両社の経営統合に関する基本合意書を締結したと発表した。

出光興産は7月30日、昭和シェル石油の株式 33.24% をShellから取得する株式譲渡契約を締結したと発表した。
出光と昭和シェルはこの株式譲渡を前提に経営統合に向けた協議を進めてきたが、これを加速する。

2015/8/3 出光興産と昭和シェル石油、経営統合で基本合意 

その後、交渉を続け、今回、両社の経営統合に関する基本合意書を締結したもので、対等の精神をうたっている。

統合会社の国内石油下流事業及び石油化学事業の基本戦略として、以下を挙げている。

他社を効率性で凌駕する業界 No.1 の収益力を持つリーディングカンパニーを構築し、国内石油精製販売事業を安定的なキャッシュフローを生み出すビジネスにする。
内需の構造的な減少が避けられない中、両社が持つ資産の統廃合を積極的に進めるとともに、既存資産の有効活用につながる他社とのアライアンスを積極的に進める。
国内石油精製販売事業において事業の競争優位性がある領域においては規律の効いた投資を行う。
系列特約店・販売店との相互信頼関係をベースとした取引の価値を重視しつつ、特約店・販売店を中心としたサプライチェーンを更に強化する。
内需が減少し続ける中で競争力のある製油所のポテンシャルを活かす。プロフィットマックスの観点からフレキシブルな需給調整が可能な体制を構築する。
競争優位性がある石油化学事業の拡大を目指す。


統合の概要は以下の通り。

(1) 経営統合の方式 : 合併によることを基本方針とする。

(2) 経営統合の日程 : 2016年10月から2017年4月を目途に本統合会社を発足させることを目指す。

(3) 統合会社の商号 : 未定

(4) 取締役会の構成 : 代表取締役及び業務執行取締役は、当面は両社から同数ずつ候補者を指名。

(5) 統合会社のブランド : 一定期間は、両社の既存のブランドを併用

(6) シナジー統合 : 統合5年目に総額500億円程度(年間)
               需給・生産計画の最適化、物流最適化、販売・間接部門の効率化等による

両社では、製油所の統合は考えていない。海上オイルフローの最適化を図る。

「両社が持つ製油所の配置は、東から西まであり、バランスが良い。どこかの製油所を閉めるとそのバランスが崩れる。現在の体制を維持するため、輸出も含めて考えていきたい」

給油所については、「両社を合わせた数は7000カ所だが、8割が(直営でない)特約店や販売店だ。減らす、減らさないより、顧客に利便性を感じてもらうことや、付加価値のあるサービスの方に注力したい」としている。


トッパー処理能力(千bbl/d)

トッパー処理能力

 当初 高度化法 現状
昭和四日市石油 四日市 205 255 255
西部石油 山口 120 120 120
東亜石油 京浜

70

70 70
昭和シェル 扇町 120 0
昭和シェル合計 515 445 445
出光興産 北海道 140 160 160
千葉 220 220 200
愛知 160 175 175
徳山 120 0
出光興産 合計 640 555 535



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なお、11月16日付けの日本経済新聞は、JXホールディングスが東燃ゼネラル石油と経営統合に向けた交渉に入ったと報じた。

実現すれば日本の石油精製会社は実質3社体制となる。

ExxonMobil Chemical / Shell Chemical との間で、米国のシェールガスからのエタンを、IneosのスコットランドのGrangemouth工場からExxonMobilのエチレン工場に供給する契約を締結した。

Fife Ethylene Plant はスコットランドのMossmorran のExxonMobilの工場にあり、北海の石油・ガス田からのNGLを原料にエチレン年産83万トンを生産している。
Shell は製品の50%の引取権をもっている。

1986年に開所したもので、北海のNGLを原料とする最初のプラントである。(欧州に4基しかない天然ガス原料のスチームクラッカーの1基)

Ineosは2012年9月、欧州のエチレン原料用にエタンを輸入するため、Marcellus shaleを開発する独立系石油・ガス業者のRange Resourcesとの間で、2015年からエタンを購入する契約を締結した。
Ineosは、Sunoco 子会社のSunoco Logistics Partnersとの間で、エタンをペンシルバニア州Houstonから同州Marcus Hookまで輸送するため、パイプライン輸送契約とターミナルサービス契約を締結した。

Ineosは2014年2月3日、米国のCONSOL Energyとの間でMarcellus Shaleのエタンの購入契約を締結したと発表した。
エタンはSunoco LogisticsからMariner East pipeline で運ばれ、Marcus Hookから船積みされる。

2012/10/2   Ineos、米のシェールガスからのエタンを欧州のエチレン原料用に輸入

Ineosは4億5千万英ポンドを投じて、Grangemouth工場に新しいエタン輸入ターミナルを建設した。

今回、ExxonMobil とShell は、Ineos が米国から輸送しGrangemouthの輸入ターミナルに陸揚げしたエタンの一部をFife Ethylene Plant に受け入れる。
北海からの原料を補完して工場のフル稼働を維持するとともに、エチレン工場のコスト競争力を高め、長期的に熟練労働者の雇用を維持する。

ExxonMobil とShellでは、今回の契約でIneosの新しいインフラを活用して米国の競争力あるエタンを使用でき、需要家の長期的なニーズを満たすことができるとしている。

英製薬大手のAstraZenecaは11月6日、米のバイオ医薬品会社 ZS Pharma を27億ドルで買収すると発表した。

AstraZenecaはZSの株主に対し1株あたり90ドルを現金で支払う。11月5日終値に42%上乗せした水準になる。

主力の高脂血症治療薬 Crestor ®の特許が米国で切れたことを受け、心疾患治療薬のポートフォリオ拡充を目指す。

ZSが開発中の高カリウム血症 (hyperkalaemia) の治療薬「ZS-9」が将来、全世界で10億ドルを超える売上高になる可能性を評価した。
ZS-9 は現在、米当局が審査中で、来年5月26日までに承認の是非が判明する見通し。
欧州の販売申請も2015年末に行う。

AstraZeneca は循環器・代謝性疾患を中核に位置づけており、相乗効果が見込める。

カリウムの過剰摂取などが原因の高カリウム血症は、腎臓病や心不全を引き起こすリスクがある。

ZS-9は不溶解性、非吸収性のけい酸ジルコニウムで ion­-trap 技術によりカリウムイオンを取り込む。
ZS-9 は消化管を通り、大便に含まれ排出される。

AstraZenecaは昨年、米Pfizer からの買収提案を拒み独自路線を追求しており、買収で自社の治療薬を補完する。

Pfizerは2014年1月に合併の可能性についてAstraZenecaに打診した。

買収案は現金と合併後の新会社株式で支払う内容で、1株 46.61ポンド、時価総額は587億3000万ポンドとなる。

その後、数度増額したが、AstraZenecaは応じず、Pfizerは5月18日、最終案として1株55ポンド、総額約693億ポンドを提示した。
AstraZenecaは5月19日、この提案を拒否、5月26日、Pfizerは買収断念を発表した。

2014/5/12 Pfizer が AstraZenecaに買収提案


中国の重機械メーカーの三一重工の子会社Ralls Corp.は2012年3月に、オレゴン州の4つの風力発電企業を買収したのに対し、オバマ大統領が2012年9月に、「国の安全保障に関わる」として、風力発電企業4社の買収と所有を禁止し、売却も認めず、所有権を放棄することを求め、三一重工が理不尽だとして訴えていた事件で、11月4日、三一重工と米国政府の間で全面和解に至った。

三一重工側が訴訟を撤回し、米国政府も大統領令の強制執行を撤回する。

Ralls Corp.は風力発電企業4社を第三者に売却できる。
外国投資委員会(CFIUS)はRallsが買収した他の風力発電事業が国の安全保障上で問題がないことを認め、将来の更なる投資を歓迎する。

実質的には三一重工の勝利である。

経緯は下記の通り。

三一重工の子会社Ralls Corp.は2012年3月に、オレゴン州の4つの風力発電企業(合計発電能力40百万ワット)を買収した。
買収目的は、三一重工の子会社の 三一電機が製造する風力発電タービンで風力発電を行うこととされる。

買収直後に、米海軍が、風力発電の場所が軍用機の訓練の邪魔になるとの懸念を表し、設備を除去するよう求めた。

外国投資委員会(CFIUS)は安全保障を理由にRallの4つの風力発電の建設と操業を止めるよう命じ、すぐに設備を除去することを求めた。

これに対し、Rall側は土地と設備を売りたいと申し出たが、CFTUSは許可なしに売却することを禁じ、その土地での三一重工の製品の使用を禁止した。

オバマ大統領は2012年9月、「国の安全保障に関わる」として、風力発電企業4社の買収と所有を禁止し、取得した所有権を放棄することを求めた。

これまで中国企業の買収阻止を命じたのは、1990年2 月にGeorge Bush大統領が行ったもので、China National Aero-Technology Import and Export Corp(中国宇宙航空技術輸出入公司)による航空機部品メーカーのMAMCO Manufacturing, Inc.の買収のみ。

2012/10/4  オバマ大統領、米国内での中国企業の風力発電買収を阻止 

三一重工は10月18日、これを不服として、オバマ大統領と米政府の対米外国投資委員会(CFIUS)を米コロンビア地区連邦地裁に提訴した。

「一枚の禁止令により、2000万ドル以上の直接的な損失が生じ(間接的な損失を含まず)、企業の対外的なイメージも損なわれる。提訴はやむなきことだった。誰も裁判を望んでおらず、当社は潔白を証明するため仕方なく訴訟措置を講じた」

「米国は何の説明もなく、中国の風力発電プロジェクトを無理やり中止させた。中国製の設備の使用を禁じた上、当社が米国人の経営する米国企業に譲渡するのを禁じ、補償すら行わなかった」

2013年10月の一審では三一重工は敗訴したが、2014年7月15日、コロンビア特区連邦上訴合議法廷で、三人の判事が満場一致で、大統領令は多額の資産価値を奪うもので、明確な憲法違反であるとした

その後、話し合いを続け、和解に到った。

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