「no」と一致するもの

化学各社の2012年9月中間決算は惨憺たるものであった。

大半の企業の営業損益が前年同期を下回っている。

2012/11/12   2012年中間決算-4 まとめ

三菱ケミカルホールディングス、旭化成、住友化学三井化学ソー などで、石油化学基礎化学の損益が激減している。

石油化学だけが不振なのではなく、ポスト石油化学として注力してきた情報電子化学、エレクトロニクス
している。
石油化学だけが不振なのではなく、ポスト石油化学として注力してきた情報電子化学、エレクトロニクス関連で減益となった企業も多い。
信越化学とトクヤマでは半導体シリコンが大幅減益となった。

国内のエチレン能力は800万トンであるのに対し、エチレン換算内需は500万トン強である。
輸出については、円高が進んだうえ、中国経済の低迷と中国の設備能力過剰の顕在化で期待できない。

海外では中東で依然として設備新設が盛んである。
従来の計画と異なるのは、これらでは汎用品だけでなく、最新技術を入れた高付加価値製品が生産されることである。

10月にはChevron Phillips Chemical のJVのSaudi Polymers Company (SPCo) が商業生産に入った。
  
2012/10/5 Chevron Phillips Chemical のサウジ石化コンプレックス、商業生産開始

DowとSaudiAramcoは2011年11月に石化JVのSadara Chemicalの設立を発表、本年9月には米国のEx-Im Bankから49億75百万ドルの直接融資の承認を受け、建設を進めている。
  
2011/7/26  DowとSaudi Aramco、石油化学JV設立を最終決定

住友化学とSaudiAramcoのJVのPetro Rabigh は第二期計画の実施を決めた。
  
2012/5/28 住友化学、サウジ・アラムコとの「ラービグ第2期計画」実施へ

サウジ政府のJubail/Yanbu王立委員会は2月12日、Jubail Industrial Cityでの総額56.5億米ドルの石化計画を承認した。
  
2012/2/17 サウジ、Jubail地区の大規模石化計画を承認 

このほかにも、多くの計画が進んでいる。

さらにシェール革命を受けて、米国の天然ガス価格が大幅に下落し、米国の石油化学産業が大々的に復活しつつある。

DowのCEOは以下のように述べ 、米国への復帰を宣言、同時にLNGの輸出に反対している。

Dowはこれまで安いエネルギーを求めてサウジなど海外で石化事業を拡大してきた。
しかし、米国
の豊富で安いシェールガスの出現で、Dowは再び米国での投資を始めた。
10年ぶりに新しいエタンクラッカーを建設するとともに、米国の施設をリフレッシュする。

天然ガスを輸出する代わりに、液体形態ではなく、これを加工した固体形態で輸出するべきだ。
天然ガスからプラスチック、肥料、その他化学製品に加工して輸出すれば、LNGで輸出するよりも8倍もの価値を生む。

Dowは2011年4月に、安価なシェールガスを利用するエチレンとプロピレンの能力増強を発表した。
   2011/4/26 ダウ、エチレンとプロピレンの拡張計画を発表

このうち、プロピレンについては、2012年3月にテキサス州Freeportにプロパン脱水素により新しいプラントを建設することを発表した。
   2012/3/12  Dow、ワールドスケールのプロピレン建設を決定

エチレンについては、メキシコ湾岸に新しいワールドスケールのエチレン設備の建設することを明らかにしていたが、同社はこのたび、テキサス州Freeport に同社としては世界最大の年産150万トンのプラント建設を決定し、政府の認可を申請した。
投資額は17億ドルで、2014年に建設を開始し、2017年1月に操業開始の予定。

Dow以外にも多くの企業が米国でシェールガスの利用に動いている。

2011/6/14 Shell、アパラチア地方でエチレンクラッカー建設へ 
2011/12/20   LyondellBasellの成長戦略

2011/12/29  Chevron Phillips Chemical、シェールガス利用で大規模石化計画 

ExxonMobilもテキサス州Baytown に年産150万トンのエチレン工場を建設することを決め、認可手続きに入っている。

三菱ケミカルホールディングスの小林喜光社長は、日本経済新聞景気討論会で、米国のシェールガス革命による産業界の活性化 を挙げ、米国での事業も検討したいと述べた。

12月23日の日経報道ではダウの新エチレン(150万トン)プラントに隣接して、MMAモノマー25万トンを建設する計画とされる。三菱レイヨンが買収したLuciteのエチレンを原料とするアルファ法を採用すると思われる。

更に本日(12/25)の日経は、三菱ケミカルが医薬品カプセル製造で世界シェア2位の奈良のクオリカプスをカーライルから負債を含め約500億円で買収すると報じた。
クオリカプスは1965年に塩野義製薬と米国イーライ・リリーが50:50の合弁で設立した「日本エランコ」で、1992年に塩野義100%となり、その後「シオノギクオリカプス」と改称、2005年にカーライルが買収した。カプセル充填機等の機器も製造する。

三菱ケミカルは収益環境の悪化から、好調な医薬品事業を強化する。

ーーー

三菱ケミカルホールディングスの小林社長は、週刊ダイヤモンドで以下のとおり述べている。

日本の製造業は国際競争力が削がれる「6重苦」(円高、通商政策=FTAの立ち遅れ、③高い法人税率、④電力問題、⑤労働規制、⑥温暖化ガス削減の重いコミットメント)に見舞われているが、化学産業が背負うのは「⑦原料コスト高」も加わった「7重苦」だ。

コストが安い中東勢などの低価格製品が増え、国内生産は今後さらに輸出競争力を失っていく。

加えて高齢化で内需も減っていく。さまざまな石油化学製品の基礎原料であるエチレンを製造する設備は国内に15基。内需に対して設備の3分の1が余剰だといわれている。

この結果が上記の中間決算に表れている。
しかもポスト石油化学として注力してきた情報電子化学、エレクトロニクス関連でも問題が生じている。

エチレン能力800万トンに対し、エチレン換算内需は500万トンで、内需に対し300万トン(37.5%)が過剰であり、今後は輸出は利益の寄与が期待できない。
2000年頃の不況時にはその後中国需要という神風で業績が好転したが、今や状況が再度よくなる可能性はほとんどない。

三菱化学は鹿島第一エチレン(390千トン)を2014年の定期修理をもって停止(第二エチレン能力を50千トン増)するが、それ以外のエチレン停止はない。
水島と千葉でエチレン統合はあるが能力減は当面の計画に入っていない。

エチレンを止めるべきだと考えても、止められないというのが実態だろう。
石化に代わって雇用を続ける事業がないからだ。

上記の6重苦の⑤労働規制は、通常は「製造業の派遣禁止」などとされるが、最大の問題は
「解雇権濫用法理」である。

日本をダメにした10の裁判」では第一に解雇権濫用法理を挙げている。

東洋酸素事件の東京高裁判決(1979)では整理解雇の要件は以下の通り。
  ・事業部門を閉鎖することが企業の合理的運営上やむを得ない場合であること
  ・従業員を他の事業部門の同一又は類似職種に充当する余地がないこと
  ・具体的な解雇対象者の選定が客観的、合理的な基準に基づくものであること
  その後の判例では「労働組合との協議」が条件に加えられた。

具体的には、このままでは倒産もありうるというような状況でないと、解雇が認められない。
この結果、エチレンを動かし続けることとなる。

しかし、いつまでもこの状態を続けるわけにはいかないだろう。

某社の社長の発言が伝えられている。

需要が落ちているというが、その需要だって構造的な要因によるものか、景気循環によるものか、よく見極める必要がある」
「エチレンだけ見て、500万トンにしようというのはあまりにも短絡的だ。誘導品までみて、国際競争力のあるコンビナートにしていかないと意味がない」

本音ではないと思われるが、今や、そんなことを言っている時期ではない。
 

このなかで、住友化学は状況変化に適応するよう、明確な方針で進めているように思われる。

同社の十倉社長は11月21日の記者会見で石油化学事業の今後の展開について以下のように述べている。

サウジのペトロ・ラービグ社が第2期計画段階に入る。

今後、バルク製品はサウジで展開し、シンガポールを高付加価値製品の供給拠点とする。
千葉工場はマザー工場として、生産技術・製品・ノウハウの発信拠点としても活用していきたい。

    同社の株主向け中間決算報告から

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石油化学プラントでの大事故が相次いでいる。

古くは2006年の信越化学直江津工場、2007年の三菱化学鹿島事業所の事故があるが、この1年で3つの大きな事故があった。

2007/4/16 信越化学 爆発事故のその後

2008/3/17 三菱化学鹿島事業所火災事故 事故報告書

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2011/4/11  東ソー、南陽事業所爆発事故の調査報告書を発表

2012/9/11   三井化学、岩国大竹工場の事故のその後  

2012/10/1    日本触媒・姫路製造所で爆発事故

東ソーの場合は緊急停止の後、プラント点検のための液抜き作業中にガス漏れが起こり爆発したが、反応に対する知識が不十分で誤操作を行ったこと、異常時の対応マニュアルが十分でなかったこと等が指摘されている。

三井化学の場合はプラントの緊急停止の際に取った操作が関係したが、問題点についての認識が不足しており、またマニュアルにも記載が無かった。

日本触媒については事故原因等は調査中で未報告だが、タンク内の温度管理は管制室での監視ではなく、タンクに付いている温度計を目視するシステムであったとされている。
また、事故当時の報道では、出入りの業者は火災等の場合、消防への直接通報を禁止されていたという。

これらから見えることは、これら事故はいつ起こっても不思議でないということで、恐ろしいことである。

石化協では事故を受け、企業トップによる保安トップ懇談会を開催しているが、以下のような発言があったとされる。

トラブル対応経験の減少、自動化・デジタル化による現場感覚の希薄化、コミュニケーション機会の減少、プロセス全体の把握・理解の不足が問題である。
対策は従業員教育がポイントになる。ベテランOBを活用した伝承教育が不可欠。
トップとして保安・安全への方針を定め、確実に実行し評価、これを最先端まで浸透させることが重要だ。

世代交代で、マニュアル通りに運転するだけで、各プロセスでの反応の意味や潜在的な危険性を認識せず、異常事態時に対応が出来ないというのである。

トップからこのような発言があるのは驚く。

もう一つは、コスト認識のためか、いまだに安全軽視のケースが見られる。

日本触媒のケースは、報道が事実なら、これに当て嵌まる。

JX日鉱日石エネルギー の水島製油所では虚偽の保安検査記録のケースがあり、コスモ石油千葉でも市原市消防局の特別検査で消防用の屋外給水栓や、石油製造施設の排水管の老朽化など多数の不備が見つかり、改善命令を受けている。

国内の石油化学事業の採算が極めて悪化し、今後の見通しが暗いなか、これまで以上の十分な安全対策が取られるのか、懸念される。

更に、事故による工場休止で安全供給の問題も出てくる。今回にも供給不安が懸念される製品もあった。
他社製品に差をつける 特殊品の場合、需要家側が採用をためらうケースも出てくると思われ、供給責任体制も求められる。

アップルは、シャープのオンリーワン技術の新型液晶IGZOを新型の「iPad」で採用したが、これにはシャープ製のIGZOと韓国サムスン電子などのアモルファス液晶という2種類のパネルが混在しており、それが消費者に分からないよう、性能で勝るIGZOの解像度をわざと落としているという。
シャープに何かがあっても供給が止まらないよう、また価格を競わせるためという。

ーーー

日本の石油化学は7重苦という大きなハンディを持つが、なくなることはない。

アルミニウムの場合は電力料の高騰で競争力を失った結果、1978年に6社で「164万体制」であったのが、現在は日本軽金属・蒲原工場の7千トンが動いているだけである。

アルミの場合は全くのコモディティで品質に差がなく、安価な輸出品に対抗できなかった。

石油化学製品の場合も、モノマーのようにスペックが合えばよいような製品は既に輸入品に置き換わっている。今後も海外品の品質向上と価格差による置き換えは進む。

メタノールの場合、1970年代には東西の共同生産会社(東日本メタノール、西日本メタノール)、三菱ガス化学、三井東圧化学、協和ガス化学の5社体制であったが、安値海外品流入で相次ぎ操業停止、1995年に最後の国産メーカー・三菱ガス化学が新潟 264千トンを操業停止し、設備は中国内蒙古の伊克昭盟化工集団総公司に売却した。 

しかし、多くのポリマー製品は需要家のニーズに合わせた特殊品で、少数グレードを大量生産する輸入品に置き換えるのは難しい。

日本のメーカーはカタログに載った製品を供給するだけではない。

需要家の求める「機能」の充足のため、製法や触媒、添加剤の改良を行い、コンパウンド化するなどで、需要家の製品をより良くするための改良材料、新材料をつくり、需要家に提案を行っている。
多くの企業が開発センターを有し、例えば自動車バンパーの衝突試験でバンパー材料の改良検討を行うことまで行っている。
更には、これまでに無かった新しい機能を持つ材料を供給することで、新しい需要を創出している。

住友化学のように海外展開を図る場合も、日本のマザー工場での開発改良が役に立つ。

このやり方は日本独自のものであった。
その後、GE Plasticsが米国にこの方式を導入、次第に広がった。
(日本と異なり、追加費用は価格に上乗せしている)

しかし、頻繁なグレード切り替えによる多数グレード・少量生産で、Just in timeで供給するというのは、本来の装置産業製品に合ったものではなく、輸入品が入る可能性は少ない。

この「非合理性」で、逆に日本品が生き残ることが可能となる。

楠木 建「ストーリーとしての競争戦略」は、他社のようにハブ空港を使わない SouthWest 航空や大量の在庫を持つAmazon などを取り上げ、 「部分の一見不合理」が全体としての合理的戦略になるとしている。

但し、現在のような過当競争体制の下では、これらが無料のサービスと化している。
メーカー数を減らして追加費用を求償出来る体制にすることが必要である。

参考 2012/12/7   ベンゼン価格高騰 ー 市況ベース価格体系とコストベース価格体系 後半部分




BPは12月19日、海南島沖の崖城(Yacheng) ガス田の34.3%の権益をKuwait Foreign Petroleum Exploration Company に308百万ドルで売却することで合意したと発表した。

これで2010年以降の資産売却は378億ドルとなる。(過去の資産売却


中国は1980年代に初めて石油・ガス田を外資に開放したが、後にBPに統合されたARCOが1982年に南シナ海の鉱区を取得、1983年にYachengガス田を発見した。1996年に生産を開始している。

中国の最大級の海底ガス田(深さ90m)で、世界第二の長さの780kmの海底パイプラインで香港の青山發電廠(Castle Peak Company)に、また60kmの海底パイプラインで海南島のFuel & Chemical Corporation (CNOOC子会社)に天然ガスを供給している。

 

現在の権益は、 BP 34.3%、CNOOC 51%、Kuwait Foreign Petroleum Exploration 14.7%で、売却により、CNOOC 51%、Kuwait Foreign Petroleum Exploration 49%となる。

なお、操業は2004年1月にBPからCNOOCに移管された。

ーーー

BPは南シナ海の2つの鉱区で現在探査を行っている。

1) 42/05鉱区(油田)

2005年と2006年に, CNOOCはDevonとの間で、42/05、64/18、53/30の3鉱区について生産物分与契約を結んだ。
Devonは3鉱区の権利100%を取得した。
CNOOCは生産開始時に51%参加するオプションを有する。

Devonは又、15/34鉱区(Panyu Project) の24.5%の権益を持つ。
同社が1998年に発見した。

その後、Devon は2010年9月にこの3鉱区について、Chevron、BPと契約を締結し、CNOOCがこれを承認した。 

探査段階において
42/05鉱区では、Chevronに59.18%、BPに40.82%を売却、
64/18、53/30の2鉱区では、Chevronに100%を売却、
Chevronは3鉱区でオペレーターとなる。

なお、CNOOCは生産開始時点で最大51%の参加を行う権利を有する。

2) 43/11鉱区(天然ガス)

BPは2012年2月、商務部から、CNOOCとAnadarko Petroleumとともに43/11鉱区で天然ガスの探査を行うことの承認を得た。



探査段階では、BPは40.82%、Anadarkoは50%、CNOOCは9.18%の権益を持つ。
生産開始後は、CNOOCが55.5%となり、BPは20%、Anadarkoは24.5%となる。





中国の雑誌「新周刊」が「今年の漢字」と「2012流行語10選」を発表した。


今年の漢字には「微」が選ばれた。

日本の「今年の漢字」は金環日触や金メダルの「金」
シンガポール
華字紙・聯合早報は、政府高官、ビジネス関係者、教育関係者などに相次いで性的なスキャンダルが発覚したということで、色情を表す「色」

「微」を選んだ理由は以下の通り。
 ・中国版ツイッター「博」(ミニブログ)のユーザー数が3億6千万人となり、世論を形成
 ・インスタントメッセージQQのスマートフォン用アプリ「信」のユーザーが2億人超え
 ・ミニブログ「公益」で義捐金送付
 ・北京の豪雨被害の際のボランティアの「言」(簡単な言葉)
  
我们不要钱,我们是来救人的お金は要らない。助けに来た
 ・
背が低く容姿も劣り、しかも収入の低い負け組男性力薄」のことを表す言葉「吊絲」が流行

2012流行語10選」は以下の通り。

1. 「莫言」 ノーベル文学賞獲得
2. 「十八大」 中国共産党第18回全国代表大会
3 「釣魚島」 尖閣諸島問題
4 你幸福吗 「幸せですか?」中国国営中央テレビが実施した街頭インタビューで話題に
5 「香港」 Made in Hong Kong :中国本土の妊婦による永住権狙いの「越境出産
6 「北京暴雨」 7月の豪雨
7 「舌尖上的中国」 舌で味わう中国)食をテーマとしたドキュメンタリー番組
8 「中国好声音」 人気オーディション番組:世界15か国以上で広がる「The Voice」の中国版
 
4人の音楽人が各々で挑戦者を"弟子"にとり、4組に分かれて歌唱バトル
9. 「2012」 マヤの人類滅亡説(2012/12/23)
10 江南style」 韓国の歌手PSYの6番目アルバム『6甲』のタイトル曲
PSYは中国のミニブログ大手「新浪微博」の「今年最も話題になった有名人」で1位に選ばれた。

 



三井物産は12月17日、フランスの電気・ガス事業者のGDF SUEZの子会社GDF Suez Canadaがカナダで開発・運営する再生可能エネルギー発電事業に出資参画することで合意したと発表した。

三井物産は投資子会社MIT Renewables Inc.を設立、本事業の30%持分を取得した。

GDF SUEZはカナダのインフラファンドのFiera Axium Infrastructure が代表するコンソーシアムにも持分30%を売却しており、今後、GDF SUEZ、三井物産、Fiera Axiumの3社共同で運営する。

GDF Suez Canada

  40%

三井物産   30%
Fiera Axium  30%

GDF SUEZ では持分60%の売却額を20億カナダドル超としている。

本事業は、カナダにて風力発電と太陽光発電を行うIPP(独立系発電)事業で、各州の州営の電力会社との長期売電契約に基づき電力を販売する 。

現在開発・建設中のものを加えると、発電容量は730MWになる。

本事業の事業規模は20億カナダドル超となる。

資産名 所在州   運転
開始
発電
容量
持分 備考
Norway プリンス エドワード島 風力 2007 9MW 100% 商業運転中


 合計363MW
SOP オンタリオ州 2008 40MW 100%
West Cape プリンス エドワード島 2009 99MW 100%
Caribou ニューブランズウィック州 2009 99MW 100%
Harrow オンタリオ州 2010 40MW 100%
PAR オンタリオ州 2011 49MW 100%
Plateau オンタリオ州 2012 27MW 100%
ELSC オンタリオ州 2013(予) 99MW 100% 建設中
Erieau (#)  オンタリオ州 2013(予) 99MW 100%
Cape Scott(#) ブリティッシュコロンビア州 2013(予) 99MW 100%
Cape Scott拡張(#) ブリティッシュコロンビア州 2014(予) 50MW 100% 開発中
Brockville(#) ブリティッシュコロンビア州 太陽光 2013(予) 10MW 60%
(*)
建設中
Beckwith(#) ブリティッシュコロンビア州 2014(予) 10MW 2013年2Q建設開始
合計 730MW    

* 太陽光発電の2計画は、商業運転開始時に少数株主保有持分(40%)を買取予定

# 国際協力銀行及び市中銀行3行とプロジェクトファイナンスに係る融資契約を締結
   GDF SUEZ 発表ではこれら各行にManufacturers Life Insurance を加え、合計 11億カナダドルのproject financeとしている。

三井物産の保有する発電容量は開発・建設中案件を含め 5,764MWとな る。
このうち再生可能エネルギーによる発電事業は 384MWで、全体の約7%を占める。

ーーー

GDF SUEZはフランスに基盤を置く電気事業者・ガス事業者で、電力・ガスの供給で世界2位の売上高を誇る。

2008年7月にフランスガス公社Gaz de France(GDF)と水道・電力・ガス事業SUEZ S.A.が合併して設立された。
SUEZの水道事業は分離され SUEZ ENVIRONNEMENTとなった。(GDF SUEZは約35%保有)

同社は北米(米国、カナダ、メキシコ)ではGDF SUEZ Energy North America を設立、発電、コジェネ、天然ガスとLNGの流通・販売、エネルギー小売り等の事業を行っている。

能力は発電 13,000MW以上、蒸気 毎時600万ポンド、冷水 毎時38千トン。
このうち、再生可能エネルギー(風力、バイオマス、水力等)は668MW。


GDF Suez Canadaは
GDF SUEZ Energy North Americaの子会社。





 

EUとシンガポールは12月16日、自由貿易協定 (FTA) 締結で合意したと発表した。
EUにとってはアジアでは2011年7月発効の韓国に次ぐ2番目のFTAとなる。

EUはシンガポールからの全ての輸入品を5年間でゼロにする。協定発効時に関税品目の80%の品目の関税を撤廃する。
シンガポール通産省(Ministry of Trade and Industry)は、特にシンガポールのエレクトロニクス、医薬、化学品、加工食品の輸出業者は関税撤廃で恩恵を受けるとしている。

シンガポールはEUからの輸入品全てについて直ちに関税撤廃する。
EU当局者によると、FTA締結によって、シンガポールがEUの基準を受け入れることから、自動車の重複検査など非関税障壁が取り除かれることになる。

これに加え、シンガポールの銀行・金融サービスセクターや政府調達市場が一段と開放される。

EUにとってシンガポールは世界で13番目の貿易相手で、ASEAN各国では最大の取引相手で、2009年から2011年で財とサービスの取引は40%増加している。 (EUの貿易黒字の大部分は自動車輸出)

EU加盟各国は2009年12月に、欧州委員会にASEANの個別国とFTA締結に向けた交渉を開始する許可を与えた。

それまでは、FTA交渉を地域ベースで進める方針をとっていたが、十分な進展が見られなかったことから、個々の加盟国と個別に交渉を開始する方針に切り替え た。

第一歩として2010年3月に最も重要な貿易パートナーであるシンガポールとの交渉を開始した。

シンガポールのほかに、現在、マレーシアとベトナムと交渉を行っている。
EUは現在も、EU-ASEAN FTA (region-to-region agreement) を長期目標としている。

ーーー

シンガポールはこれまでに18のFTAを締結している。

1993/1  ASEAN
2001/1  New Zealand
2002/11  Japan
2003/1  (EFTA) Swiss、Liechtenstein、Norway、Iceland
2003/7  Australia
2004/1  USA
2005/7  China 〔ASEANとして〕 (サービスは2007/7)
2005/8  Jordan
2005/8  India
2008/3  S. Korea
2006/5  (TPSEP) Brunei、Chile、New Zealand
2006/7  Panama
2007/6  Korea〔ASEANとして〕(財のみ)
2009/1  China
2009/1  Japan〔ASEANとして〕
2009/8  Peru
2010/1  India〔ASEANとして〕
2010/1  Australia-New Zealand 〔ASEANとして〕


TPSEP(環太平洋戦略的経済連携協定)はSingaporeとNew Zealandの自由貿易協定にチリとブルネイを加えたもので、一定期間に例外品目なしで関税100%自由化を目指すなど、「質の高いFTA」と言われる。
その後、TPP (Trans Pacific Partnership)と改称され、現在拡大交渉が行われている。

 

 

 


BHP Billitonは12月12日、PetroChinaに豪州のBrowse LNG事業の権益を売却する契約を締結したと発表した。

同社の保有する権益(East Browse JVの8.33%、West Browse JVの20%)全てを16.3億米ドルで売却する。

なお、Browse LNG事業の他の参加者はPetroChinaに対抗して買収する権利を有しており、一定期間内に買収を提案することが出来る。

BHP Billiton は非戦略的資産を売却するものとしている。

中国の国有エネルギー各社は将来のエネルギー供給源確保のため、海外の石油およびガス資産を積極的に取得している。
2005 CNOOC 米 Unocal 〔米議会の反発で断念〕 (185億ドル)
CNOOC カナダのオイルサンド開発企業・MEGエナジーの株式の16.69% 1.5億加ドル
Sinopec Northern Lightsにおけるオイルサンド事業の権益の40% を
Synenco Energy から買収
2009年に50%にアップ
 
2008 CNOOC ノルウェー海底石油開発 Awilco Offshore  約25億ドル
2009 Sinopec スイス Addax Petroleum 約75.6億米ドル
PetroChina カナダのAthabasca Oil Sandsの事業に参加 19億加ドル
2010 CNPC Australia Arrow Energy Ltd.
(Shell との50/50JV=CS CSG (Australia) Pty Ltd.)
35億豪ドル
Sinopec Repsol Brazilに40%出資 71億ドル
Sinopec カナダのオイルサンド事業会社 Syncrude Canadaの9.03% 46.5億米ドル
CNOOC テキサス州のEagle Ford Shale projectに参加   Niobrara shaleを追加  
2011 Sinopec ポルトガルのGalp Energiaのブラジル子会社の30% 約52億ドル
PetroChina カナダの天然ガス権益取得 →交渉中止  
CNOOC カナダのオイルサンド企業OPTI Canadaを買収 21億米ドル
2012 PetroChina カナダのオイルサンド権益を100%にアップ  
Sinopec 米のシェールガスの権益取得 22億ドル
PetroChina カナダと米国での非在来型ガス開発での提携強化   
CNOOC Nexen Inc.
 カナダ産業相は12月7日、買収認可を発表した。
151億ドル
Sinopec Talisman UKの49% 15億ドル
Sinopec Repsolからエクアドルの石油権益の一部 明らかにせず

 ーーー

Browse LNG事業は豪西オーストラリア州沖合のBrowseコンデンセート田で生産する天然ガス・コンデンセートをKimberley地区に輸送し、精製・液化・出荷を行う大規模な開発計画で、Woodsideの子会社がオペレーターを務めている。

LNGの生産は年間1,200万トンの予定。

三井物産と三菱商事は2012年4月、両社が折半出資する豪Japan Australia LNG (MIMI) Pty Ltdを通じて、Woodsideの子会社Woodside Browse と権益売買契約を締結した。
Woodside Browseの持つ権益46%のうち、14.7%を20億ドルで買収する。

2012/5/8  三井物産と三菱商事、豪ブラウズLNGプロジェクトに参画

本事業は当初、Woodside、Chevron、Shell、BHP Billiton、BPの5社の事業であった。

2012年4月、Woodsideが一部を三井物産・三菱商事に20億ドルで売却した。

Chevronは2012年8月、同社の持分全てを、Shellの持つ豪州北西部のWheatstoneのClio-Acmeガス田の1
/3の権益と交換した。
Shellはこのほかに現金450百万ドルを支払う。
ChevronはClio-Acmeガス田の権益を100%保有することとなり、
同社主導のWheatstone計画の開発を促進する。

今回、BHP Billitonが全ての権益をPetroChinaに売却する。

Browse LNG事業の現在の権益関係は以下の通り。

  East JV West JV 合計持分
Woodside 34% 17% 31.3%
三井物産・三菱商事 16% 8% 14.7%
Chevron  (16.67%) (20%) (17.2%)
Shell 25% 35% 26.6%
BHP Billiton  (8.33%) (20%) (10.2%)
PetroChina 8.33% 20% 10.2%
BP 16.67% 20% 17.2%
合計 100% 100% 100%

 

 

 

米国のヘッジファンドが日本の大人用紙おむつに関心を示している。

Financial Timesが11月29日付で伝え、人民網日本語版が「日本経済 紙おむつのターニングポイントが到来か」でこれを引用している。

Financial Times:
何故ヘッジファンドマネジャーが日本の大人用紙おむつに関心を持つのか? 
それは多くのヘッジファンドが次の稼ぎどころと見る日本の国債バブル破裂の手掛かりになるからだ。

日本では本年に大人用おむつの販売が乳幼児用を初めて上回る。
空売りを狙う業者は、これを数か月後に起こると予想する危機の原因の一つと見ている。

Hayman Capital Managementの創始者のKyle Bassが需要家へのレターで、これを取り上げ、日本国債は暴落するので売りだとしている。

大人用紙おむつが乳幼児用を上回るということは
、介護を必要とする高齢者数が新生児数を上回るということで、日本の社会保障のコストは今後どんどん増えていき、歳入不足のなかで国債を増やしてきた報いを受けることになるとする。

別のヘッジファンドマネジャーは、衆院選が変化のきっかけになると見ている。

安倍晋三が首相になるのは確実だが、彼は物価上昇率2%を目指して日銀に無制限の金融緩和を求めている。
そうなれば、国債利回りは2%に上がり、国債の大幅値下がりで空売り業者は莫大な利益を得るとしている。

Kyle Bassも同じことを述べている。
「2011年度の日本の税収はざっと41兆円。これに対して国債の利払いが11兆円 。日本国債の金利が今の水準より1%上がるだけで、その利払いは20兆円以上で、税収の半分を金利に取られてしまうことを意味する。日本の財政が持続できなくなり、実質的に破綻することもあり得る。」

* この問題については、日銀白川総裁の講演「物価安定のもとでの持続的成長に向けて」が分かり易い。

ーーー

人民網は、日本と中国を比較して、以下の通り結論付けている。

20数年間に渡る低成長と高齢化により、日本が高度成長期に蓄えた優勢がほぼ消耗し尽くされており、米国式の「財政の崖」が間近に迫っている。

中国は安価な人件費による優勢が失われているが、これは実際には低所得層の所得増、中国の内需成長を促すことになる。内需主導型の経済成長方式は、産業構造のアップグレードを促し「中等収入の罠」を乗り越えるだろう。その際に、中国に対して空売りを仕掛ける身の程知らずはいなくなるに違いない。

ーーー

紙おむつなど衛生用品を扱うメーカーでつくる日本衛生材料工業連合会は、大人用紙おむつが数年後に乳幼児用を上回るとの予測を明らかにした。

少子高齢化により、2011年の生産数量は大人用が288千トンとなり、296千トンの乳幼児用に肉薄した。
乳幼児用が停滞しているのに対し、大人用は安定的に伸長。今後も高齢化が進むことから、日衛連では2015年までに大人用は生産数量で現在比15%増となるとみる。

政策研究大学大学院の松谷明彦・名誉教授によると、日本の今後の少子高齢化と人口減少の割合は他の諸国よりもはるかに大きい。

これは過去の2つの政策(当時は止むを得なかった)による人口構造の歪みによるもので、対策はない。

第一は戦前(1920~40年前半)の「産めよ増やせよ」政策で、出生数が急増している。
この年代は現在70歳~90歳で、今後人口急減の原因となる。

第二は1948年の優生保護法である。
1947~49年に復員や外地からの引き揚げ等で第一次ベビーブームが起こった。
食料不足のなか、餓死を避けるため優生保護法がつくられた。
産児制限により、年間270万人の出生数が160万人にまで減少した。

この結果、次の世代、その次の世代の出生数が激減することとなった。


        http://www.mhlw.go.jp/english/database/db-hw/dl/81-1a2en.pdf
    * 特殊出生率は一人の女性が一生に産む子供の平均数
 

松谷名誉教授は、現行の年金制度などは継続不可能で、少子高齢化・人口減を前提にした別の社会保障政策を検討すべきだとする。

例えば、100年債を出して、国有地に100年住宅を建設、住宅コストを大幅に下げるなど。





ロシアのGazpromとパートナーは12月7日、南ロシアの黒海東岸の Anapa市でSouth Stream pipeline の着工式を行った。

South Streamはロシアと中央アジアの天然ガスを欧州に送るもので、黒海の湖底を通って対岸のブルガリアに渡り (900km)、その後、2手に分かれる。
北西ルートはブルガリア、セルビア、ハンガリーを通ってスロベニア、オーストリーに通じる。
南西ルートはギリシャからイタリアに通じる。

式典にはPutin大統領のほか、ブルガリアの大臣、パートナーのイタリアのENI、フランスのElectricite de France、ドイツのBASFの代表が出席した。

Gazprom とパートナー各社は11月に投資計画を確定、実行会社のSouth Stream Transport BV の本社をアムステルダムに置くことを決めた。

本計画は当初、GazpromとENIとの均等出資で計画された。
2011年にBASF子会社のWintershallとフランスの
Electricite de France SAが15%ずつ参加し、ENIの比率は20%となった。

Wintershallは、ロシアのもう一つの欧州向けの天然ガスパイプライン、Nord Stream計画にも参加している。

2011/3/30  BASFがロシアの South Stream 天然ガスパイプライン計画に参加

欧州への天然ガス供給は2016年第1四半期にスタートする予定。

プーチン大統領は第1段階の供給先としてブルガリア、セルビア、スロベニア、ハンガリー、イタリア、クロアチアの6カ国をあげた。

既に完成しているバルト海を通るNord Streamに並び、ウクライナを迂回して欧州にガスを輸出するルートを確保する。

ロシアから欧州向けの天然ガスパイプラインは従来はベラルーシ(Belorussia)からポーランドを経由するもの(Yamal Pipeline)と、ウクライナを経由するものがある。

ロシアとベラルーシは2007年に石油抗争を起こしたが、和解した。
  
2007/1/10 ロシア・ベラルーシ 石油抗争
  2007/1/15 ロシアーベラルーシ石油抗争 解決

ベラルーシはロシアが主導する旧ソ連諸国の経済統合を支持しており、ロシアはその見返りとして2011年11月に天然ガスの値下げに応じた。
Gazpromが、ベラルーシの国営パイプライン運営会社ベルトランスガスの株式の5割を保有するが、残りの株式5割を25億ドルで取得し完全子会社にすることでも合意した。

これに対し、ロシアとウクライナの関係はよくない。

Gazprom は2009年1月1日、ウクライナへの天然ガス供給を完全に停止した。 (2006年に続くもの)
ロシアは欧州向けのガスをウクライナが抜き取っているとして、1月6日から欧州向けの供給も停止した。

その後、プーチン首相とウクライナのティモシェンコ首相がガス価格の引き上げに大筋で合意、1月19日に今後10年間のヨーロッパ向けガス輸送と、ウクライナへのガス供給を確認する合意文書に調印した。

2009/1/2 ロシア、ウクライナ向け天然ガス供給停止

ロシアとしては、EUへの加盟も視野にいれるウクライナに欧州向け天然ガスパイプラインを抑えられるのは問題で、この対策として北側のNord Streamを建設したが、今回、南側のSouth Streamを建設する。

Nord Streamからは欧州を縦断するOPAL natural gas pipeline(Baltic Sea Pipeline Link)と接続している。

  2011/8/27 Nord Stream Pipeline、欧州ネットワークに接続

 

ーーー

これに対し、トルコはSouth Stream計画には参加しないとしている。
トルコは、South Nabucco 計画とTransanatolian (TANAP) 計画を重視している。

Nabucco計画はEU主導で、カスピ海地域の天然ガスをトルコ、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー経由でオーストリアまで輸送する延長3300kmのガスパイプラインプロジェクト 。
EUはロシアの天然ガス依存度を減らしたい意向。

2005年にオーストリアのOMV、ハンガリーのMOL、ルーマニアのTransgaz、ブルガリアのBulgargazとトルコのBotasが各16.67%出資のJVNabucco Gaspipeline International を設立した。

2010年6月、トルコとアゼルバイジャンがアゼルバイジャン産天然ガスの供給をトルコが受けることで覚書に署名した。
アゼルバイジャンのカスピ海沖で
Shah Deniz天然ガス田の第2期開発で生産するガスを、トルコが欧州など他国へ再輸出する権利を持つことを明記した。

2013年のパイプライン建設着工、2017年の完成が計画されているが、予定通り実現するかは不透明。

アゼルバイジャンとトルコは2011年12月26日、Transanatolian (TANAP) を共同で建設することで基本合意した。
両国は天然ガス供給に続き、輸送手段でも「同盟」を結び、欧州への本格的なガス輸出を目指す。

TANAPが実現する場合には、Nabuccoを西部(バルカン諸国を通りオーストリアに至る欧州部分)だけを残し、TANAPに接続する案も出ている。

ーーー

なお、石油については、アゼルバイジャンとトルコを結ぶBTCパイプラインがある。

2006/6/7 BTCパイプライン完成

 




既報の通り、米エネルギー省は12月5日、LNGに関する2つの報告書を発表した。

1つは同省によるAnnual Energy Outlook 2013 の速報版(2040年までのエネルギーの予測)で、もう1つは、NERA Economic Consultingに委託したLNG輸出の影響に関する調査結果報告書である。

後者のNERA レポートでは、LNG輸出の米国経済への影響を、輸出の量、グローバルな市場状況、天然ガスコスト等々、いろいろな前提で検討したが、全てのシナリオで、LNG輸出は輸出をしない場合と比べ、ネットで経済的メリットがあるとしている。

2012/12/7 米エネルギー省、LNG輸出に向けての報告書を発表


これに
対し、Dow Chemical はその翌日にAndrew N. Liveris CEOによる以下の反論を発表した。

LNGの輸出に関するレポートは、欠陥だらけの、ミスリーディングなもので、古くて不正確で不十分なデータに基づいている。

報告は、米国の経済に対する製造業の重要性を見ていない。

製造業は米国で最大の天然ガスのユーザーであり、天然ガスを使って、他のどのセクターよりも多くの雇用を生み、より多くの価値を生み出している。
製造業で使われたエネルギーの価値は、バリューチェーンを通じて多くの高付加価値の製品をつくることにより、20倍にも拡大される。

これに対して、LNGとしてエネルギーを輸出すれば、その価値分しか得られない。

更に、工場で雇用が増えれば、経済全体では5~8倍の雇用がつくられることになる。

報告は更に、豊富な国内の天然ガスのとてつもない競争優位を見ていない。
報告は、製造業を通じて米国経済を強化し、安いエネルギーコストで消費者に利益を与える代わりに、米国の天然ガスの有利性を他国の成長と雇用のために使うことで米国がよくなるという不可解な結論を出している。

米国産業界は豊富な天然ガスを使い、900億ドルを投資し、数百万の新しい雇用を作り出す100件以上の投資計画を発表しているが、報告ではなんら触れられていない。

Liveris CEOは3月8日、エネルギー関連の調査機関が主催する年次会合CERAweek でスピーチし、シェールガスからのLNGの輸出を制限するよう求めている。

Dowはこれまで安いエネルギーを求めてサウジなど海外で石化事業を拡大してきた。
しかし、米国
の豊富で安いシェールガスの出現で、Dowは再び米国での投資を始めた。
10年ぶりに新しいエタンクラッカーを建設するとともに、米国の施設をリフレッシュする。

安い原料による圧倒的な競争力の維持は、米国経済にとって絶好の機会となる。
しかし、アメリカのこの安く豊富なガスの産業での有利性は、首尾一貫した国のエネルギー政策をつくらなければ消えてしまう。これを失ってはならない。

天然ガスを輸出する代わりに、液体形態ではなく、これを加工した固体形態で輸出するべきだ。
天然ガスからプラスチック、肥料、その他化学製品に加工して輸出すれば、LNGで輸出するよりも8倍もの価値を生む。

米国では、天然ガスは戦略商品であり、輸出に対する反対論がある。

Dowの主張は説得力があり、今後も主張を続けると思われ、政府の決定に影響を与える可能性がある。

ーーー

Dowは2011年4月に、安価なシェールガスを利用するエチレンとプロピレンの能力増強を発表した。

2011/4/26 ダウ、エチレンとプロピレンの拡張計画を発表

このうち、プロピレンについては、2012年3月にテキサス州Freeportにプロパン脱水素により新しいプラントを建設することを発表した。

2012/3/12  Dow、ワールドスケールのプロピレン建設を決定

エチレンについては、メキシコ湾岸に新しいワールドスケールのエチレン設備の建設することを明らかにしていたが、同社はこのたび、テキサス州Freeport に同社としては世界最大の年産150万トンのプラント建設を決定し、政府の認可を申請した。

投資額は17億ドルで、2014年に建設を開始し、2017年1月に操業開始の予定。

ーーー

Dow以外にも多くの企業がシェールガスの利用に動いている。

2011/6/14 Shell、アパラチア地方でエチレンクラッカー建設へ 

2011/12/20   LyondellBasellの成長戦略

2011/12/29  Chevron Phillips Chemical、シェールガス利用で大規模石化計画

ExxonMobilもテキサス州Baytown に年産150万トンのエチレン工場を建設することを決め、認可手続きに入っている。

Dowを初めとして各社は、LNGの輸出により、原料の天然ガス価格が高騰することを懸念、輸出に反対している。

 


Bayerは2013年に創立150年を祝い、世界中でいろいろな催しを行う。

1983年8月1日、染料セールスマンのFriedrich Bayerと染色業者のJohann Friedrich Weskott がヴッパー川沿いに位置する工業都市 WuppertalのBarmen地区に新会社Friedr. Bayer et compを設立した。数年前に発明されたコールタールからの合成染料の製造販売を業とした。

同社のCEO のDr. Marijn Dekkerは11月30日、以下の通り述べた。

Barmen地区で小さいが革新的な染料工場としてスタートしたBayerは今や従業員11万人以上のグローバル企業となった。
過去150年にBayerの発明品は人々の生活の質の向上に貢献してきた。

Bayer製品は我々の生活に不可欠になった。

1899年に上市したアスピリンは今もBayerのトップ製品の一つである。
現在はこの部門はBayer HealthCareに発展した。

1892年に世界最初の殺虫剤Antinonninを上市した。
Bayer CropScienceは現在、農業科学のグローバルリーダーである。

高機能材料分野では1930年代にポリウレタンを発見、1953年にはポリカーボネートの特許を取得した。

1981年に株式会社とし、Farbenfabriken vorm. Friedr. Bayer & Co. となった。

同社はその後拡張を続け、1912年に本社を現在のLeverkusen に移した。

ドイツは第一次世界大戦で敗戦、この結果、米国の資産と特許、商標は1917年に没収され、競売に付された。

Sterling Drug がBayer商標やアスピリン事業などを買収した。
1988年にEastman Kodak がSterling Drug を買収した。
1994年になって、ようやくBayerがKodakからSmithKline Beecham 経由でSterling Drug を買収し、米国でBayerの社名を使い、Bayer Aspirinを販売できるようになった。

2012/1/31 Kodak と Bayer

第一次大戦で世界市場を失ったドイツの染料業界は統合を決め、1925年12月に下記の各社が合併し、IG Farbenが設立された。

Bayer 27.4%
BASF 27.4%
Hoechst 27.4%
Cassella
Kalle
Agfa 9.0%
Griesheim-Elektron 6.9%
Weiler Ter Meer 1.9 %

IG Farbenは1951年に連合国軍により解散させられ、Bayerは1952年にFarbenfabriken Bayer AGとして再出発した。

Bayerは1988年の創立125周年後にコア事業への集約を開始し、1999年に子会社Agfaを売却、2004年7月にBayer Chemicalsの大半とBayer Polymersの一部を新会社 Lanxess として分離し、2005年に上場した。

2006/9/6 Bayer と Lanxess

他方、農薬部門では2001年に Aventis CropScience を、医薬部門では2006年にドイツのSchering AGを買収し、拡大している。

2006/6/12 2つの買収劇 の2



  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

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