「no」と一致するもの

10月14日のMichael Woodward社長解任、その後の同氏による問題指摘に端を発したオリンパス事件は、11月8日に会社側が事実を認め、過去の損失先送りの穴埋め策であったことが明らかになった。

事実関係は以下の通り。

1)Gyrus社買収   

買収額  935百万ポンド(約2,117億円)

ファイナンシャルアドバイザーへのフィー
 (日本の証券会社出身者が代表を務める米国のAXESとケイマン諸島のAXAMインベストメント)

基本報酬   500万ドル 2006/6
成功報酬
 買収金額の5%
現金15%
 (上限1200万ドル)
1200万ドル 2007/11
株式オプション85%   優先株発行
ワラント付与
 →買取

5000万ドル

2008/9
優先株買い取り
(再上場断念により
 買取請求を受ける)
オプション分 1億7700万ドル 2008/9
優先株値上り分 4億4300万ドル 2010/3
 「価値上昇」
 「第三者への売却阻止」
合計 6億2000万ドル  
総合計 6億8700万ドル  

Gyrusの元最高幹部は、「AXESやAXAMという名前は聞いたこともなく驚きだ。オリンパスのアドバイザーとは接触したことも、電話を受けたこともない」と証言している。

 

2)子会社買収

いずれも2006年に40%を買収し、2008年4月に追加買収で100%とした。
 (オリンパスと関係の深い経営コンサルタント会社から買収)
 

 半年後の2009年3月に減損処理した。

社名 事業 買収金額 減損処理
アルティス 環境ソリューション  28,812百万円  19,614百万円
NEWS CHEF フードキット 21,408百万円 17,699百万円
ヒューマラボ 健康食品・化粧品販売 23,199百万円 18,370百万円
合計   73,419百万円 55,683百万円

3) 含み損  1千数百億円とされる。 

バブル時の財テク失敗による金融商品の含み損は1990年代に1千数百億円あり、「飛ばし」で社外に移した。
2000年頃には相場の回復で含み損は500億円程度に減ったが、処理を先送りした結果、再び1千数百億円になった。

 

不思議なのは、Gyrus社買収での多額のフィーの支払いや国内3社の買収と直後の減損処理等について、全国紙が報道したのはWoodward社長の問題指摘(および同氏が英米の監督官庁に資料を渡したとの報道)があってからである。
 

しかし、この問題は元日本経済新聞の論説委員兼編集委員で、月刊誌「選択」編集長もしていた阿部重夫氏が発行する月刊誌FACTAが早くに取り上げている。

7月15日のFACTA Online「オリンパスへの公開質問状と宣戦布告」では、3子会社の買収金額と直後の減損処理、ジャイラスの買収での優先株などについてオリンパスに質問している。(同社への質問がゼロ回答のため、公開した。)

FACTAの8月号は「オリンパス 『無謀M&A』 巨額損失の怪」を掲載、詳細に問題点を示した。

問題の3子会社は「オリンパスと関係の深い経営コンサルタント会社が05年ごろに休眠会社を業態転換させて活動を再開させたり、新規に立ち上げたりして、08年にオリンパスに売却した」としている。

ジャイラスについては、「製造業でありながら、総資産の半分以上をのれん代(買収された企業の時価評価純資産と買収価額との差額)が占め」、「株式市場は『買収価格は株価に40%ものプレミアムを上乗せしていて割高な買収』と冷ややかな目で見ていた。にもかかわらず、10年3月期にはさらに599億円出して優先株まで買い取った。この優先株取得についても、いったい誰から取得したのか不明で、『情報開示の面で大きな問題』と指摘するアナリストもいる。」

更に「コンサル会社との怪しい関係」について説明している。

Woodward氏は次のように述べている。

すべては、雑誌「ファクタ」8月号に載った記事が始まりだ。あれがなければ、私は今でも何も知らないまま社長を続けていただろう。

今回明らかになった過去の損失先送りについては10月24日のFACTA Online 「野村の元オリンパス担当、S氏の独り言」が、「闇株新聞」なるブログを紹介し、次のように述べている。

S氏は、90年代にはじけたバブルの損失の後処理をオリンパスがしていなかったとしており、それが雪だるま式に膨らんで、この巨額の背任M&Aにいたったと書いていますが、これはFACTAの見立てとほぼ一致している。

バブル期の1980年代から延々と、トップ主導で、財務担当役員やごく一部の財務担当者の間でひそかに「処理」され続けてきた。
これらの「損失先送り」などの処理も、ごく少数の「長い付き合い」の外部の人間にだけ相談されていたのです。

* 10月23日のNew York Times はファイナンシャルアドバイザー2名の名前を挙げている。

ーーー

何よりも、損失隠しが20年間も続いていたのに、取締役会も監査法人も問題視しなかったのは不思議である。

また、3子会社の買収価格の異常さやGyrus買収の際のフィーの異常さについて問題視しなかったことも同様である。

アナリストや経済紙がこれまで問題視しなかったのも不思議だし、FACTAが取り上げて以降も最近まで、各紙がこれを取り上げなかったのも不思議である。

 

付記

朝日新聞によると、オリンパスはあずさ監査法人から不正があると指摘され、直後に解約していた。

あずさ監査法人は2009年に、オリンパスがジャイラスを買収したときに支払った助言会社への報酬の大きさを不審に思い、理由や決算への反映の仕方でオリンパス側と意見が対立した。

また、ベンチャー3社買収で、3社にはそれだけの価値はないと指摘し、買収額と実際の企業価値の差額を損失計上するよう要求、オリンパスは2009年3月期決算で、あずさ監査法人の指摘を反映する形で損失を計上した。

監査法人は2010年3月期からは新日本監査法人に変更された。 

(含み損失隠しについては監査法人は見抜けなかったのであろうか?)

 

付記

警視庁はオリンパスに経理資料の提出を求めるなど、捜査に向けた情報収集を開始した。
証券取引等監視委員会も、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)に当たる可能性があるため、すでに調査を始めている。
 

 

武田薬品の中間決算は、売上高が円高の影響(-287億円)と米国での糖尿病治療薬、消化性潰瘍治療剤の減収などにより、全体として減収となり、これが影響して減益となった。

 

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
10/9 714,025 221,619 225,473 144,211 90.0  
11/9中 702,502 211,046 209,551 135,660 90.0  
増減 -11,523 -10,573 -15,922 -8,551    
             
11/3 1,419,385 367,084 371,572 247,868 90.0 90.0
12/3(7/29) 1,450,000 390,000 395,000 250,000 90.0 90.0
12/3予(今回 1,540,000 270,000 270,000 170,000 90.0 90.0
同 増減 90,000 -120,000 -125,000 -80,000    

 

2012年3月期の損益予想については、今回、7月29日発表のものから大きく下方修正した。

武田薬品は本年9月末に、スイスのチューリッヒに本社を置く Nycomed96億ユーロでの買収を完了し、100%子会社とした。

2011/5/23 武田薬品、Nycomed社を買収

武田薬品「ナイコメッド社について」  http://www.takeda.co.jp/pdf/usr/default/j02_47220_3.pdf

同社では、米国での糖尿病治療薬の伸び悩みに加え、この買収の影響と為替レートの見直しを加味して、前回発表の予想から修正した。

営業損益の下方修正の内訳は以下の通り。(億円)

Nycomed 買収
   の影響
Nycomedの営業損益(下期)  120
無形資産、ノレンの償却 -200
棚卸資産の時価評価 -570
小計 -650
糖尿病治療薬等の販売減 -390
円高の影響 -160
合計    -1,200

Nycomed買収の会計処理については、買収後1年以内に会計監査人による監査を経て確定する。
このため、現時点での予想値は同社による見通しで、確定額ではない。

なお、米国での糖尿病治療薬、消化性潰瘍治療剤の販売状況は以下の通り。(億円)

  2007 2008 2009 2010 上期 2011
年間予想
前年比
2010 2011 増減
糖尿病治療薬
(ピオグリタゾン)
3,186 3,017 2,974  3,062 1,551 1,394 -157 2,610 -452
消化性潰瘍治療剤
(ランソプラゾール)
452  1,731 1,190 428 315 140 -175 235 -193

 ーーー

武田薬品は11月4日、移転価格税制の適用による二重課税の排除を求め、2008年7月に国税庁に対し米国との相互協議を申し立てたが、国税庁から、相互協議が合意に至らず終了した旨の通知を受領したと発表した。

2006年6月に、米国アボットとの50:50の合弁会社であったTAPファーマシューティカル・プロダクツ(TAP:その後会社分割)との間の2000年3月期から2005年3月期の6年間の製品供給取引等に関して、米国市場から得られる利益が武田に過少に配分されているとして、移転価格税制に基づき、大阪国税局より所得金額で6年間で1,223億円の所得の更正を受け、約570億円の追徴税額を課せられたと発表した。

これに対し、武田薬品は、
①TAPとの取引価格はアボットの合意なしには決められず、独立企業間価格であり、移転価格税制が適用されるべきものではない、
②価格を安くすればTAPの利益が増えて半分がアボットにいくため、武田にとってTAPに所得を移転する意図や動機はない、
として、徹底抗戦の構えで、追徴税額は返還されるものとみなし、業績は修正せず、追徴分は貸借対照表には固定資産の「長期仮払税金」として計上した。

2006/6/29 武田薬品、移転価格税制に基づく更正

米国側との相互協議は、日本で更正した額を輸出価格の値上げとして米国で追加でコスト算入して利益を減らし、米国での税金を減らすというもの。

武田の主張の通り、通常は50/50JVとの取引価格は独立企業間価格とみられ、移転価格税制は適用されないため、米国側が応じないのは当然である。

同社は相互協議の申請に伴って一旦中断していた異議申し立て手続きにつき大阪国税局へ再開を申し入れる。

 

移転価格税制では、信越化学が2008年に約110億円の追徴課税を受けていた問題で、還付加算金を含めて日米合計で約119億円が還付された。

2010/6/11 信越化学の移転価格課税、119億円還付へ 

この2件については、国税庁の認識が明らかにおかしい。

 

 

総合化学5社と信越化学の中間決算及び通期予想は以下の通り。

業績の明暗を分けたのは液晶関連と円高。
 住友化学は液晶ディスプレー用偏光フィルムの価格下落が響いた。
 円高の影響は住友化学が年間で240億円程度、三菱ケミHDも140億円程度とされている。

ーーー

三菱ケミカルホールディングス

震災による鹿島地区の停止の影響が上期で146億円(通期で170億円)あり、これを除くと前期(前年)比の減益幅は縮まる。

単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
10/9中間 1,564,658 111,393 106,388 43,976 5.0
11/9中間  1,570,197 95,686 92,885 37,504 5.0 ー 
増減 5,539 -15,707 -13,503 -6,472    
             
11/3 3,166,771 226,493 223,899 83,581 5.0 5.0
12/3 3,350,000 200,000 195,000 77,000 5.0 5.0

                                                         

営業損益推移(億円)

  10/3 11/3 12/3  増減   10/9 11/9 増減
ケミカルズ 69 530 410  -120   219 194 -25
ポリマーズ -225 550 470  -80   243 233 -10
エレクトロ -14 10 10  0   32 -12 -44
デザインド 133 365 360  -5   208 173 -35
ヘルスケア 710 851 770  -81   446 397 -49
その 62 45 60  15   6 16 10
全社 -73 -86 -80  6   -41 -45 -4
合計 663 2,265 2,000  -265   1,114 957 -157
震災影響     -170  -170     -146  
震災影響なし 663 2265 2,170  -95   1114 1,103 -11

グループ企業別の営業損益は以下の通り。(億円)

三菱レイヨンの貢献が大きい。

  10/9 11/9 増減
三菱化学グループ 446 295 -151
田辺三菱製薬グループ 402 361 -41
三菱樹脂グループ 91 88 -3
三菱レイヨングループ 142 229 87
調整 33 -16 -49
合計 1,114 957 -157

ーーー

住友化学

情報電子化学(液晶フィルムなど)の価格下落の影響が大きい。

経常損益の減少は持分法投資損益の減少が大きい。(10/9 75億円→11/9 10億円)
PetroRabighは長期の定修が終わり、現在はフル稼働。

特別損失に豪州の株式市況低落による豪州農薬会社Nufarmの株式評価損 289億円を含む。
(前年上期にも計上しているが、2011年3月末には株価が回復し、下期に取り消している。)

単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
10/9中間 989,245 53,043 52,107 2,515 3.0  
11/9中間 998,281 54,035 48,993 -2,713 6.0  
増減 9,036 992 -3,114 -5,228 3.0  
             
11/3 1,982,435 87,957 84,091 24,434 3.0 6.0
12/3 2,020,000 75,000 72,000 10,000 6.0 6.0


営業損益推移(億円)

  10/3 11/3 12/3 増減   10/9 11/9 増減 内訳
net
価格差
数量差 コスト
基礎化学    206 170 -36   118 125 8 10 -22 20
石油化学   11 150 39   58 78 20 45 -35 10
情報電子化   261 130 -131   171 101 -71 -185 29 85
健康農業関連   233 290 57   144 148 4 -25 4 25
医薬品   287 200 -87   147 155 8   33 -25
その           9 35 26   26  
全社   -219 -190 29   -115 -101 14   4 10
 515 879 750  -129   530 540 10 -155 39 125

ーーー

三井化学

増収増益となった。フェノールなど基礎化学品が好調。ウレタンは赤字増。
当期損益の減益は、前期に退職給付引当金戻入額14,618百万円の益があったため。

単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
10/9 672,823 17,357 14,604 17,126 3.0  
11/9 755,764 28,748 27,888 13,365 3.0  
増減 82,941 11,391  13,284 -3,761     
             
11/3 1,391,713 40,548 38,851 24,854 3.0 3.0
12/3 1,510,000 50,000 51,000 26,000 3.0 3.0

 

営業損益推移(億円)  

  10/3 11/3 12/3 増減   10/9 11/9 増減 内訳
net
価格差
数量差 コスト
石化  -34  128 130 2    62  65 4 24 -11 -10
基礎化学品 -48 204 240 36   65 183 118 92 25 1
ウレタン -21 -90 -120 -30   -43 -71 -28 -43 -10 25
機能樹脂 -44 72 105 33   45 47 2 -4 2 6
加工品 8 14 40 26   12 22 9 -2   10
機能化学品 74 100 120 20   45 55 10 -6 12 4
その 11 1   -1   1 -6 -7     -7
全社 -41 -25 -15 10   -13 -8 6     5
合計 -95 405 500   95    174  287  114 61 18 34

ーーー

旭化成

住宅が好調。

単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
10/9 764,794 63,521 59,586 28,464 5.0  
11/9 802,168 63,768 62,136 38,214 7.0  
増減 37,374 247 2,550 9,750 2.0  
             
11/3 1,598,387 122,927 118,219 60,288 5.0 6.0
12/3 1,684,000 124,000 125,500 74,500 7.0 7.0

 

営業損益推移(億円)  

  10/3 11/3 12/3 増減   10/9 11/9 増減 内訳
売価差 うち
為替差
数量差 コスト
ケミカルズ  261  644 580 -64    373  341  -32 173 -91 2 -207
住宅 253 365 470 105   101 179 78     78  
医薬医療 40 70 85 15   42 56 14 -14 -3 36 -7
繊維 -28 42 35 -7   23 21 -2   -11 2 -3
エレクトロニクス 72 143 120 -23   107 70 -37 -109 -20 45 27
建材 12 21 25 4   11 8 -3 -2   -4 2
その 18 17 25 8   8 12 4     3 1
全社 -53 -72 -100 -28   -30 -50 -20       -20
合計 576 1,229 1,240    11   635 637 2 48 -125 162 -207

ーーー

東ソー

増収・増益。

  単位:百万円(配当:円)
 
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
10/9 322,135 10,056 7,119 2,437 3.0  
11/9 367,740 21,663 18,632 9,930 3.0  
増減 45,605 11,607 11,513 7,493    
             
11/3 684,398 33,531 29,821 10,014 3.0 3.0
12/3 730,000 41,000 36,000 17,000 3.0 3.0


営業損益推移(億円)
 

  10/3 11/3 12/3 増減   10/9 11/9 増減 内訳
数量差 交易条件 固定費他
石油化学 79 104 151    47    28 79 51 16 15 20
クロルアルカリ -143 -35 15 50   -56 1 57 19 -2 40
機能商品 148 203 171 -32   106 100 -6 24 -21 -8
エンジニアリング 20 36 46 10   10 22 11 12   -1
その 26 27 27 0   12 14 2 1   1
合計 130 335 410 75   101 216 115 72 -8 52

ーーー

信越化学

半導体デバイスメーカーの在庫調整等で減収となった。
当期損益の減は、前年に過年度法人税等戻し入れが10,698百万円あったため。

単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
10/9 532,562 76,143 81,203 62,342 50.0  
11/9 521,368 80,411 84,330 51,040 50.0  
増減 -11,194 4,268 3,127 -11,302    
             
11/3 1,058,257 149,221 160,338 100,119 50.0 50.0
12/3 1,065,000 155,000 165,000 102,000 50.0 50.0


営業損益推移(億円)
  

  10/3 11/3 12/3 増減   10/9 11/9 増減
ビ・化成品 196 197       93 134 41
シリコーン 249 341       175 174 -1
機能性化学品 139 129       60 70 10
半導体シリコン 226 389       210 211 1
電子機能材料 307 361       180 187 7
その 68 73       42 27 -14
全社 -13 3       2 0 -1
合計 1,172 1,492 1,550 58   761 804 43

なお、Shintechの損益は前期比では増益(ドル建では90→130百万ドルと大幅増)だが、過去の実績からは大きく下回っている。

ーーー

各社の営業損益と当期損益対比

三菱ケミカルと住友化学の当期損益は、高収益の医薬子会社の少数株主持分控除が大きいため、営業損益、経常損益と比較し、大きく減少する。

 

 

EUは10月19日、テレビやコンピュータに使われるブラウン管(CRT)用ガラスのカルテルで3社に128.736千ユーロの制裁金を科した。

カルテルは1999年2月から2004年12月まで続き、欧州経済領域(EEA)での販売価格を調整していた。
EUによる調査は2008年末から始まった。

韓国Samsung Corning Precision Materials は最初にカルテルの存在を報告して制裁金を全額免除された。
日本電気硝子は調査に協力して50%の免除を受けた。

また、各社とも、カルテルの存在について争わない「同意決定手続き」に応じたため、制裁金は10%減額された。

  Leniency
 減額
協力
 減額
同意決定
  減額
制裁金
(千Euro)
Samsung Corning Precision Materials 100%   10% 0
日本電気硝子 50%   10% 43,200
Schott AG   18% 10% 40,401
旭硝子     10% 45,135
合計       128,736

「同意決定手続Cartel Settlement Procedure)」は2008630日に制定され、同年71日から運用された。
裁判所への控訴による長期の争いを避け、他の事件の摘発に要員を向けることが目的。

適用の第1号は2010年5月のDRAMカルテル。
2010/5/21
 EUDRAMカルテルに制裁金、「同意決定手続き」初適用

その後、飼料カルテル家庭用洗剤カルテルで適用があり、今回は4例目。

 

付記

韓国の公正取引委員会は12月11日、ブラウン管用のガラスをめぐり、価格や生産量を調整する国際カルテルを結んでいたとして、日韓4社に総額545億ウォン(約37億円)の課徴金を課したことを明らかにした。

サムスンコーニング精密素材、旭硝子の子会社の韓国電気硝子、 日本電気硝子とそのマレーシア法人
  

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韓国Samsung Corning Precision Materialsは旧称Samsung Corning Precision Glassで、韓国Samsung Electronicsと米Corningの合弁会社。
主にSamsung向けにLCDガラス基板などを供給しているが、社名変更後は無機材料に関する材料メーカーへと業容拡大を狙う。

Schott は、125年以上にわたり、特殊ガラス、特殊素材、部品、システムの開発と製造に従事。

日本電気硝子は1944年に日本電気により設立、1949年に日本電気から分離独立した。

2011年3月にニプロが日本電気硝子の株式の10.62%を取得して主要株主となり、その後、電気硝子もニプロの株式の10.40%を取得している。
2011/7/30 ニプロ、医薬用硝子容器事業で海外展開

旭硝子は、CRT用ガラス事業から既に撤退している。
(過去も欧州において製造拠点を保有していない。)

旭硝子は同事業に関して、韓国の競争法当局からも調査を受けている。
 

なお、旭硝子とPilkington(日本板硝子)などは欧州での板ガラスカルテルで制裁金を科せられている。

2007/3/20 欧州委員会板ガラスカルテルを調査

Ineos Vinyls Italiaは、Ineosが元のオーナーで原料を供給しているEniとの争いで撤退を決め、Safi Spa に売却されてVinyls Italiaとなったが、Eniへのエチレン、塩素代の未払債務問題がこじれ、政府指名の委員の管理下"Controlled Administration")に入った。

2009/2/20 Ineos のイタリアのVCM/PVC事業、破産の危機を脱する  
2009/8/1  Vinyls Italia準破産処理

同社はPorto MargheraRavennaPorto Torres の3か所VCMとPVCの工場(Porto Torresはe-PVC)を持っている。
イタリア唯一のPVCメーカーで、イタリア政府はこの存続に注力してきた。

2年間の"Controlled Administration"の後、本年9月にイタリアの合成樹脂商社のIndustrie Generali spa (IGS) がRavenna 工場買収を決め、その後、Eniも同社に原料を供給することで合意した。

IGSでは年末にもPVCの生産を再開するとしており、初年度は年産140千トンとするが、将来は200千トンに増設する考え。

IGSはArkema、BASF、Carmel Olefins(イスラエル)、Hellenic Petroleum(ギリシャ)などのPE、PP、安定剤、BOPPフィルムなどを扱う商社で、イタリアに20千トンのPVCコンパウンド工場を持つ。
PVCコンパウンドの原料に遡及することとなる。

なお、他の2工場については、以下の通り、非塩ビ事業に転換される。

工場 従来製品 引き受け手 今後の製品
Ravenna VCM, s-PVC Industrie Generali PVC 140,000t→200,000t
Porto Torres VCM, e-PVC Polimeri(Eni)/Novamont Bio-based chemical complex
Porto Marghera VCM, s-PVC Oleificio Medio Piave 小麦粉、植物油

 

1)Porto Torres 

Polimeri Italia (Eni の子会社)とバイオプラスチックのメーカーのNovamontが50/50JVのMatrìcaを設立し、5億ユーロを投じてバイオベースのケミカルコンプレックスを建設する。

Porto TorresにあるVinyls Italiaのプラントを含むEniの全ての石油化学コンプレックスが(NBRを残して)すべて撤去され、植物油を原料とするバイオプラスチック、バイオ潤滑油、エラストマー用のバイオ添加剤などのバイオケミカルコンプレックス(合計能力年産350千トン)が建設される。

Eniは別途、250百万ユーロでバイオマス発電所を建設し、コンプレックスに電力を供給する。

計画では3期に分けて7工場が建設される。
 ・第一期 バイオモノマー、バイオ潤滑油
 ・第二期 合成ゴム用
のバイオ伸展油、バイオフィラー
 ・第三期 第一期プラントの増設、バイオプラスチック

2)Porto Marghera

土地の持ち主のSyndial(Eni子会社)の承認待ちだが、これまでの石油化学とは全く離れ、Oleificio Medio Piaveが小麦粉や植物油の生産を計画している。

丸紅と三菱商事は11月1日、石炭事業についての発表を行った。

1.丸紅、カナダの炭鉱運営会社を中国企業と共同で買収

丸紅は、中国のWinsway Coking Coal Holdings (永暉焦煤股份有限公司と共同で、カナダの炭鉱運営会社Grande Cache Coal Corporationの全株式を買収することでGrande Cacheの取締役会と合意したと発表した。

丸紅が40%、Winsway社が60%出資の合弁会社を設立し、カナダ法のPlan of Arrangementにより、現金総額約983百万カナダドル(約765億円)で友好的買収を行う。

 Plan of Arrangement:
被買収企業の取締役会決議、株主承認決議及び裁判所の承認、その他の条件を満たすことにより成立

Grande Cacheが運営するアルバータ州のGrande Cache炭鉱は、製鉄コークス原料用の強粘結炭の数少ないカナダ供給炭鉱として、1969年以来、操業を続けてきた。
現在年産2百万トンで、今後は3億トンを超える豊富な埋蔵量に下支えられた拡張を計画している。


丸紅は同炭鉱の石炭取引に関し、40年以上日本の鉄鋼メーカーのエージェントであると共に、2004年以降は対日独占販売権を獲得している。

新興国の粗鋼生産増加に伴い、強粘結炭は恒常的な供給不足にあり、同炭種の需要は今後一層強まることが予想される。同社では、本買収は日本への安定供給に貢献すると共に、同社の将来的なカナダにおける炭鉱事業拡大の基盤を築くことにもなるとしている。

Winsway Coking Coalはモンゴル等の原料炭の中国市場への輸送・販売を業とする企業。
モンゴル内陸部を含む陸路及び鉄道による輸送網から構成されるプラットフォームをベースとする。

同社では今回の買収の意義を以下の通り述べている。
・炭鉱の
豊富な埋蔵量
・採炭への最初の垂直統合
・今後のワールドクラス石炭企業へのプラットフォームになる。
・地政学的リスクの多様化
・1960年代からカナダの石炭事業に経験のある丸紅との提携

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2.三菱商事、豪州クイーンズランド州BMA原料炭事業の大規模拡張意思決定

三菱商事は、100%出資子会社のMitsubishi Development(MDP)とBHP Billitonの折半出資の豪州クイーンズランド州 BMA原料炭事業の大規模拡張に関する投資意思決定を行ったと発表した。

BMA(BHP Billiton Mitsubishi Alliance)は豪州最大の石炭生産企業で、原料炭の海上輸送シェアは世界一、世界の原料炭海上貿易量の約3割を占める

2001年にMDPがBHP Billitonから権益を取得することにより発足した。

MDPは1968年に、オーストラリア北東部のクイーンズランド州においてアメリカ企業とパートナーシップを組み、原料炭の炭鉱開発を行う目的で設立された。

三菱商事は原料炭需要が将来にわたって継続的に増加するとの判断の下、原料炭の安定供給を確実なものとするため、2001年に従来のマイノリティーとしての権益比率を50%まで引き上げ、世界最大手の資源会社BHP Billitonと対等の立場で石炭合弁事業BMAを立ち上げた。

豪州・クイーンズランド州の大規模石炭埋蔵地域のBowen Basinで21億トンにも上る埋蔵量を保有し、7つの炭鉱で高品位の原料炭を中心に年間約5,000万トンを現在生産している。生産された石炭を出荷するための港湾施設Hay Pointの操業も行う。

製品の大半をHay Point港湾施設より出荷、一部をその近隣のDalrymple Bay港湾施設や南部のGladstoneより出荷している。

 

今回の投資はCaval Ridge炭鉱の新規開発とPeak Downs炭鉱の拡張で、投資のMDP社負担分は約21億豪ドル(約1,700億円)となる。

Caval Ridge炭鉱: 年間550万トンの生産を計画
Peak Downs炭鉱:現行能力から年間250万トンの増産を計画

2014年から約60 年間に亘り、合わせて年間800万トンの輸出用高品位原料炭を増産する。

本年3月にもBMA生産能力拡張に関するMDP社負担分約31億豪ドル(約2,530億円)の投資意思決定を行っている。

Daunia炭鉱の新規開発:2013年より年間450万トンの原料炭を生産
Hay  Point港の第三次拡張(2014年に出荷能力を年間5,500万トンに拡張予定)

 

三菱商事はBMAとは別に、Rio Tinto及びJ-POWER(電源開発グループ)、JCD(石炭資源開発)と共同で、同地区でClermont一般炭炭鉱の開発を行っている。

同炭鉱に隣接するBlair Athol 炭鉱 は1984年から出炭を開始し、以来、年間1,000万トンから1,200万トンを生産し、日本向け電力用海外炭の安定供給に寄与してきた。
このBlair Athol 炭鉱が2010年代に生産終了するのに合わせ、Clermontを開発し、Blair Atholの貨車積み設備、鉄道、港湾等のインフラを利用することとした。

Clermont炭鉱は2006年に開発が決定され、2010年5月には第1船を日本向けに出荷、2010年の生産量は491万トンとなった。
今後、年間1,200万トン規模まで生産を伸ばす。

権益比率は以下の通り。
 MDP :31.4%(当初は34.9%)
 Queensland Coal (Rio Tintoグループ) :50.1%
 J-POWER オーストラリア(電源開発グループ):15.0%
  JCD オーストラリア(石炭資源開発): 3.5%(MDPから譲り受け)

 

 

韓国のS-Oilは10月20日、温山で1系列で世界最大のパラキシレン工場の竣工式を開催した。
商業生産は2011年6月に開始している。

S-Oil は1976年にKorea-Iran Petroleum Co., Ltd.として設立された。
第一次石油ショックで原油の安定購入が韓国の第一の課題であった時に、 双龍セメントがイラン国営石油会社(NIOC)との50/50 JV設立に成功した。

1978年のイラン革命で、イラン側が撤退し、1980年に 双龍精油(Ssangyong Oil Refining)と改称した。
1987年に上場。

1991年にAramco Overseas Companyが3億9500百万ドルを出資して35%を取得、20年間の原油供給を約束した。
 (現在のS-OilのCEOはSaudiAramcoの米国法人のCEOであったAhmed A. Al-Subaey 氏。)

1999年12月には、双龍セメントの持株 28.4%を自社株として買収し、双龍グループから法的に独立し、2000年3月に双龍精油からエスオイルに社名を変更した。

温山に製油所を持つ。
製油能力は
日量580千バレルであったが、コンデンセート凝縮装置を入れ、669千バレルとなった。

完成したのはNo.2 Aromatic Complexのパラキシレン年産90万トン、ベンゼン 28万トンで、これにより同社の能力はほぼ倍増し、パラキシレン 170万トン、ベンゼン56万トンとなった。 

 

李明博大統領が異例の出席をしたほか、サウジの石油鉱物資源大臣、 サウジアラムコの社長、韓進グループの会長らが出席した。SaudiAramcoはS-Oilに35%、韓進グループは28.4%出資している。

S-Oilには SaudiAramco の子会社 Aramco Overseas Company B.V. 1991年以降35%出資している。
(SaudiAramcoは日本では昭和シェル石油に15%の出資をしている。
 2004年に50%株主のシェルから10%分の譲渡を受け、2005年に更に5%分を購入した。)

S-Oil は2007年に、双龍セメントから買い取って金庫株としていた 28.4% を(時価の14%増しの)25億ドルで韓国航空など韓進グループに売却した。

韓進グループは本買収のため、2007年3月に韓進エネルギーを設立した。
グループの韓国航空が82.5%、韓進海運が14.6%、韓進空港サービスが
2.9%出資した。

S-Oilと韓進エネルギーは戦略的投資協定を締結、エネルギー運送及びマーケティング分野においてシナジー効果を生んだ。

2007/3/9 韓国の石油精製 S-Oil に韓進グループが参加

 

李大統領は挨拶で、韓国の石油精製産業が、輸入原油を精製する産業から、高付加価値の石油製品を製造し輸出する産業に転換することを期待すると述べた。

大統領はまた、サウジの石油鉱物資源大臣はアラムコのCEOであった20年前(1991年)にS-Oilに出資することを決断し、現在のS-Oilにしたと述べ、両社の協力が経済協力の成功モデルとなり、両国間の友好関係のシンボルになると述べた。

サウジの石油鉱物資源大臣は祝辞で、両社の関係は産油国と石油消費国の最も理想的な協力関係であり、サウジの世界中の計画の中で最も成功した事例だと述べた。

中国では石炭からのオレフィン製造"Coal to Olefins"が石炭化学の中心になりつつある。 

昨年に生産を開始した神華包頭石炭化学のCoal-to-Olefins 計画(PE 30万トン、PP 30万トン)が順調に生産しているほか、神華寧夏石炭グループのCoal-to-PP(52万トン)が本年第2四半期に商業生産を開始、大唐国際発電の Coal-to-PP(46万トン)も生産を開始する。

現在の石油価格と石炭価格を基にすると、Coal-to-Olefinsは非常に競争力があるとされる。 

神華とダウの陜西省楡林市でのCoal -to-Olefins のJVもFS段階を完了した。
Totalと中国電力投資は内蒙古でワールドスケールのCoal-to-PolyolefinsのJVを設立する契約を締結した。

Sinopecは石炭原料のS-MTO(Sinopec Methanol-To-Olefins)計画を推進している。

S-MTOプロセスはシノペック上海石油精製研究(SRIPT)、シノペックエンジニアリング、シノペック北京燕山石化により共同で開発された。
2007 年に燕山石化が日産100トンのパイロットプラントを建設、2008年にメタノール投入ベースで年産180万トンのS-MTOプロセスの技術パッケージが完成した。

10月10日、シノペック中原石化は河南省濮陽市で最初のS-MTO計画をスタートさせ、エチレンとプロピレンがオンスペックとなった。

投資額は15億人民元で、メタノール 60万トンからオレフィン 20万トンを生産、これから、PP 10万トン、PE 6万トンを生産する。
建設は2010年4月に始まり、PPは7月、MTOは8月にメカニカルコンプリーションとなった。

 なお、中原石化の既存設備はエチレン 18万トン、PE 20万トン、PP 6万トン。

本計画では原料メタノールは外部調達する。シノペック中原石化は河南煤業化工集団(HCCIG)中原大化(Dahua Chemical )との間で年間36万トンのメタノール売買契約を締結している。

Sinopecはこのほかに3つのS-MTO計画を推進している。

1)貴州省畢節市織金県

シノペックは本年9月末に貴州省畢節市織金県で石炭ペースポリオレフィンの建設を開始した。
フェース1として180億人民元を投じ、PE 30万トン、PP 30万トンを製造するもので、2014年に生産開始の予定。

シノペックは2010年10月に貴州省政府との間で戦略的協力協定を締結した。
総額815億人民元を投じ、近代的な石炭化学産業を創出するとともに、石油・ガスの開発、石油パイプラインと流通ネットワークの建設を行い、畢節市織金県循環経済新地区に新エネルギー・化学地域の建設を加速する。

今回のCoal-To-Olefin計画はこの第一段階となる。

2)安徽省淮南市

シノペックと皖北煤電集団の50/50JVの安徽中安聯合煤化工公司が安徽省淮南市でS-MTO計画(オレフィン年産60万トン)を建設中。2010年12月に建設を開始、2013年末にスタートの予定。

3)河南省鶴壁市

シノペックと河南煤業化工集団(HCCIG)が共同で鶴壁市寶山産業区で年産180万トン(メタノール投入ベース)のMTO建設を計画している。

現在同産業区で建設中の年産60万トンのメタノール設備を購入し、新たに120万トンのメガプラントを新設する。

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ASIACEMによると、現在20件以上のCoal -to-olefins が建設中か検討段階にある。

  立地 企業 事業内容 千トン 現状
1 内蒙古 Ordos Total /中国電力投資集団(CPIC) Coal to Olefins   Development
2 内蒙古 Ordos 兗礦集團(Yankuang Group) Coal to Olefins   Planned
3 内蒙古 Ordos 中天合創(Zhongtian Hechuang) Coal to Olefins   Development
4 内蒙古 包頭 神華集団 Coal to Olefins PE 300
PP 300
Operation
5 内蒙古 Ordos 蒙古源興能源(Yuanxing Energy) Methanol to Olefins   Planned
6 内蒙古 フルンボイル 神華集団 Coal to Olefins   Planned
7 内蒙古 フルンボイル 中国中煤集団(National Coal Group) Coal to Olefins   Planned
8 内蒙古 シリンゴル 大唐国際発電 Coal to Olefins PP 460 Commissioned
9 陝西榆林 神華集団 / Dow Chemical Coal to Olefins Olefin 1,220 Development
10 陝西榆林 陝西延長中煤集團榆林能源化工
(Yanchang ChinaCoal)
Oil/Gas/Coal/Salt
Complex based on Olefins
  Construction
11 陝西省 延安 延長集團延安能源化工 Oil/Gas/Coal/Salt
Complex based on Olefins
  Development
12 陝西省 渭南 陝西蒲城清潔能源化工 Coal to Olefins   Construction
13 寧夏自治区 寧東 神華寧夏煤業(Shenhua Ningmei) Coal to Olefins PP 520 Commissioned
14 寧夏自治区 寧東 神華寧夏煤業(Shenhua Ningmei) 同上 Phase 2   Planned
15 寧夏自治区 寧東 寧夏寶豐能源集団 Coal to Olefins   Development
16 安徽省 淮南 安徽中安聯合煤化工
(Sinopec / 皖北煤電集団)
Coal to Olefins olefin 600 Development
17 貴州省 畢節 Sinopec Coal to Olefins PE 300
PP 300
Development
18 河南省 濮陽 Sinopec 中原石化 Methanol to Olefins PP 100
PE  60
Construction
19 河南省 鶴壁 Sinopec / 河南煤業化工集団(HCCIG) Coal to Olefins olefin 600 Development
20 甘粛省 平涼  華能集団(中国最大の電力会社) Coal to Olefins   Planned
21 浙江省 寧波 寧波河源化工 Methanol to Olefins   Construction
22 浙江省 嘉興 Xingxing New Energy Technology Methanol to Olefins   Planned
23 山東省 棗荘 聯想(Legend Holding) Coal to Olefins   Development
24 江蘇省 連雲港 盛虹集団(Shenghong Group) Methanol to Olefins   Planned
25 新疆ウイグル イリ 中煤能源集团(China National Coal) Coal to Olefins   Development
26 青海省 ゴルムド 青海塩業 (Qinghai Salt Lake Industry) Mg / Methanol to Olefins C2 165
PP 160
Construction

1) Coal to Olefinsは石炭~メタノール~オレフィン、Methanol to Olefinsは購入メタノールからのオレフィン生産。
2) 現状の順序 Planned~Development~Construction~Commissioned~Operation

 

なお、中国は2010年にPEを736万トン、PPを387万トン輸入している。

 

米商務省は、10月19日、9月の住宅着工件数を発表した。

それによると、季節調整済みの年率換算で658千戸で、前月比で15%の増、前年同月比で10%の増と、久しぶりに高水準となった。

2011年1~9月の平均では、年率換算で589.9千戸となる。

米国の住宅着工はバブル最盛期の2005年の2,068千戸(月別では2006年1月の年率2,273千戸)を頂点に続落した。
2009年以降は500千戸台で横ばいで推移している。

2006年 1,802千戸
2007年 1,355
2008年   905.5
2009年   554.0
2010年   586.9
2011年  589.9  (1~9月)

 

バブル期の住宅需要の増加は2つの要因に支えられていた。

一つは住宅価格の高騰で、もう一つはこれを前提にしたサブプライムローンである。

Alan Greenspan FRB議長はITバブル崩壊による企業の投資削減に対応するため短期金利を一気に下げた。
この結果、住宅需要が増えてきたが、企業の資金需要が出れば金利が上がり、住宅需要も抑えられると考え、放置した。

2004年に企業のバランスシートがきれいになり、企業の投資が始まると考え、ようやく金利を上げた。

しかし、他方で中国など新興国や年金ファンドがどんどん米国債を購入し、国債価格がアップ(長期利回りが低下)していたため、短期金利を急速に上げても、長期金利に対応する住宅需要はむしろ増大し、住宅価格も急騰した。

全米住宅価格指数は1990年代半ば以降年平均2~8%の上昇が続いてきたが、2004年4~6月期以降は前年比+10%超に達した。

住宅価格の高騰により、担保価値が上がり、より高価な住宅への買い替え需要が増え、富裕層は転売目的に住宅を購入した。

他方、住宅価格の高騰で、NinjaNo Income, No Job, No Asset)ローンと呼ばれるサブプライムローンが急増した。
ローン返済が出来なくても、住宅価格は上昇を続けるため、取り上げた担保を売却すればよいという前提で、本来住宅購入が出来ない階層に住宅を売りつけた。

2006年1月には住宅着工件数は年率で2,273千戸にもなった。完全な住宅バブルであった。

これが破綻し、多額の不良債権を持つ金融機関が破綻、Lehmanショックに至った。

米国の住宅ローンは日本と異なりnon recourse型で、担保物件を売却しても借金が残っても、債務者は残りの債務を負担しない。
サププライムローンは債券化され、世界中にばら撒かれたため、問題が世界中に広がった。

ーーー

ギリシャ危機が起こるまでは、米国経済はLehman危機から立ち直ったかに見えた。

しかし、住宅着工件数は低い水準で低迷したままである。

住宅価格は依然として低迷したままである。

2011年6月の米国の家計の住宅資産評価額はピーク時比で6兆6000億ドル減って、16兆1000億ドルとなった。
この間、住宅融資残高はほぼ横ばいで、9兆9000億ドル。

従って、ネット資産は12.8兆ドルから6.2兆ドルへと、半分以下となっている。
住宅価値が借入額を下回るケースも多い。

このほかに、商業用不動産(非金融部門)もピークから2兆8500億円減っている。

(2011/10/9 日本経済新聞)

買い替え需要や転売目的の購入はなくなり、住宅を必要とするが資金を持たない階層は、これまでのようなサブプライムローンの利用は出来ない。

住宅在庫は9か月分とされるが、このほかに、銀行が差し押さえ、売却処分をしていない隠れ在庫が600万戸もあるとされる。

このような状況下では、近い将来に住宅着工が増える可能性は少ない。

PVCや板ガラスなど、住宅需要に依存する業界の復旧にも時間がかかると思われる。

中国で新通貨「潘」が誕生した。


冗談でできたものだが、実際に不動産の販売宣伝に使用されている。

発行元 SOHO中国不動産銀行(地産銀行)
1潘=1000人民元
/1m2

北京中心地区でオフイス物件や高級マンションの開発に従事し「三里屯SOHO」「SOHO現代城」などの物件を多数所有する不動産デベロッパー、SOHO中国有限公司のオーナーで有名な潘石屹(Pan Shiyi)がブログで次のように述べたことが発端。

「もしアップルが携帯電話を1台1000人民元(約1万2000円)で販売すれば、数百万人の中国国民が、アップル製品と死去したスティーブ・ジョブズ会長に限りない親近感を抱くだろう」

これに対し唐若丁9983の名前のブロガーが次のように応じた。

「潘董事長が死去したら、SOHO中国は1平方メートル当たり1000人民元で住居を販売してほしい。10億を超す国民が同氏を追悼すること間違いなし」

その後、これがどんどん広まった。

上のようなコンピュータで作った紙幣が現れた。潘氏の似顔絵が入り、発行元はSOHO中国不動産銀行となっている。

天津津浦偉業不動産はマンションの宣伝にこれを使った。
"Hot sales all over the city, up for grabs from 8.8 Pan!" 「お買い得、8.8潘から」
(1平方メートル当たり8800人民元から)

武漢市榮盛不動産開発も「アパートを"5 潘"から買えます」と宣伝している。

潘氏はこの動きを、「高い不動産価格に対する国民の不満の表れ」と述べている。

住宅価格の高騰は食料品の値上げとともに、若年層やこれまで政治に無関心であった都市の中間層に不満を引き起こしている。

中国全体ではアパートの平均価格は年収の7倍だが、北京や上海では17倍以上となっているとされる。

(2011/10/19 Financial Times から)

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