「no」と一致するもの

日本経済新聞(4月10日)は三菱化学が年内にもPSとPVC事業から撤退すると報じた。
PSについては事業統合会社のPSジャパンへの出資を引き揚げ、PVCについてはヴィテックを解散する方針としている。

内需縮小とアジア勢などの生産拡大で採算が悪化、国内で過当競争となっている事業を切り離し、太陽電池向けなどの新素材、医薬品など成長分野を中心にした構造に転換するもの。

これに関して三菱化学は発表はしていないが、時事通信も「三菱化学は、年内にも塩化ビニール樹脂と汎用プラスチックであるポリスチレンの2事業からの撤退を検討していることを明らかにした」と報じている。
需要家への影響が大きいため、もし事実でないなら、即刻否定の発表をするはず。

三菱化学は本年3月末でABS事業から撤退したほか、テレフタル酸事業の構造改革も発表している。

2008/11/28 三菱化学、ABS事業から撤退

2009/2/24  三菱化学、テレフタル酸事業の事業構造改革

ーーー

付記

三菱化学は5月7日、ヴイテックが全製造設備を2011年3月末までには停止することを決定したと発表した。

  カ性ソ-ダ VCM PVC
水島工場 180千トン 400千トン  
四日市工場     100千トン
川崎工場     120千トン

顧客やコンビナート内との調整次第では前倒しで実施する。

ただ、東亞合成の川崎工場内に位置する川崎の設備については、ヴイテックとしては停止するものの、その後については東亞合成が方向性を検討する。

ーーー

PS事業:

三菱化学は四日市に188千トンのプラントを有していたが、1998年10月に旭化成との50/50JVのA&Mスチレンを設立し、両社のPS事業を統合した。

統合に当たり、両社は設備処理を行った。

統合前 処理 統合後
旭化成 371 - 56 315
三菱化学 188 -103 85
合計 559 -159 400

旭化成、三菱化学と出光石油化学は2002年7月、A&Mスチレンと出光のPS事業を再編・統合、合弁会社を設立することで合意したと発表した。

2003年4月、PSジャパンが営業開始した。

統合前 処理 統合後 出資比率
A&M
スチレン
旭化成・水島   108   108   45.0%
旭化成・千葉   207   207
三菱化学・四日市    85    85   27.5%
合計    400    400
出光石化・市原   130  -85    45   27.5%
合計   530  -85   445   100.0%

2006/10/7 日本のPS業界の変遷

今回、三菱化学はPSジャパンの持株を旭化成と出光興産に売却する。

PS業界では4月2日に、住友化学と三井化学が共同出資会社の日本ポリスチレンのプラントを9月末を目途に停止し、その後解散すると発表したばかり。PS業界の状況については下記を参照。

2009/4/4 日本ポリスチレン 2009年9月末に操業停止、解散へ

四日市のプラントは除却すると思われる。現在、原料のスチレンモノマーは鹿島工場から輸送している。

日本ポリスチレンと同様に、PSジャパンも2008年3月期決算までは黒字を続けている。
PS事業の将来性を考えてのものと思われる。

                                         単位:百万円
売上高 営業損益 経常損益 当期損益 前期繰越 利益処分 次期繰越
06/3 58,600    2,700  2,700  1,600  1,200   826  2,800
07/3 67,334  1,224  1,233   709  1,974     385  2,298
08/3 77,167  1,851  1,846   933  2,298  3,231

ーーー

PVC事業:

三菱化学は1996年に東亜合成と塩ビ事業で業務提携を行なった。

三菱化学は1996年末にS&Bにより水島で100千トンプラントを建設した。
 (その後、既存の老朽設備を停止)
東亜合成はセントラル硝子、東燃化学とのJVの川崎有機で年産80千トン設備を稼働させているほか、徳島工場に同20千トン設備を持っていたが、徳島の老朽化した20千トン設備を廃棄し、川崎に三菱化学の技術で100千トン設備を新設した。
 (その後、旧川崎有機のPVCプラントは停止した。)

その後の業績悪化を受け、両社は事業統合を決め、200041日、統合会社がスタートした。

会社名 ヴイテック㈱
資本金 60億円 
 出資比率 三菱化学 60%、東亞合成 40%
事業 電解製品(水島)の製造、VCM(水島)及びPVCの製造・販売及び研究開発
  電解製品の販売は三菱化学100%のダイアケミカルに委託
能力 電解(水島) 135千トン(苛性ソーダ97%換算) 
VCM(水島) 300千トン 
  *セントラル化学はVCM(132千トン)生産を継続、ヴイテックに供給→その後停止
PVC 合計 390千トン(三菱化学水島 100、四日市 110、東亞合成川崎 100+80

2005年3月、ヴイテックは再編を行い、出資比率を三菱60%、東亜40%であったのを、三菱 85.1%、東亜 14.9%に変更した。
2003年末には累積損失が162億円にも達しており、水島工場の拡大等で事業の中心となる三菱化学が主導権を取り、東亞合成が実質的に撤退した。

2006/9/13 日本のPVC業界の変遷と現状-1 (前史)
2006/9/14 日本のPVC業界の変遷と現状-2 (事業統合時代以降)

2008年4月、ヴイテックは、5月末でPVCの輸出を停止するとともに、水島のPVCプラントを停止し、国内販売に集中した体制に移行すると発表した。国内需要減少を補うため、輸出を行なってきたが、輸出の採算改善が見られないため。
なお、川崎工場では7月の定期修理時に一部手直し増強を行なう。

工場別能力は以下の通りとなる。(単位:トン)

2000/4/1
(設立時)
2006年末 2007年末  新体制
川崎(東亞合成内)   180,000 115,000 95,000 121,000
四日市(三菱化学内)   110,000 104,000 99,000 99,000
水島(三菱化学内)   100,000 115,000 110,000 0
 (390,000) (334,000) (304,000) (220,000)

2008/4/15 ヴイテック、PVC生産体制見直し

同社は設立以来、大幅赤字が続き、2004年度から3年間は若干の黒字となったが、2007年度に再び赤字に転落、2008年末の累積損失は資本金の60億円をはるかに上回る170億円の巨額に達している。
固定資産残高は51億円となっている。

今回、ヴィテックを解散し、水島の電解、VCM(現在の能力は391千トン)と四日市のPVCは除却すると思われる。
VCM停止は20万トン近いエチレンの使用減となるが、三菱化学と旭化成が水島のエチレン統合の交渉を行っており、三菱化学のエチレン(定修スキップ年 496千トン)を休止すると伝えられており、符合する。

川崎のPVCについては東亞合成との交渉がどうなっているのか分からないが、昨年秋に手直しをしており、場合によっては他社への売却の可能性があるかも分からない。

ーーー

PVC業界は2000年以降の「選択と集中」時代に撤退企業が相次いだ。

現在は実質5社体制となっている。

                単位:千トン/年
会社名 2007/12/末 備考
ヴィテック   304 → 220
カネカ   466
信越化学   550
新第一塩ビ   292
大洋塩ビ+東ソー   586 東ソーのペースト 28
徳山積水   115 積水化学自消
合計 2,313 2,229

PVCの内需は一時200万トンを超えたこともあったが、その後毎年減少し、2008年は1,174千トンと産構法時代の水準にまで落ち込んでいる。
内需の落ち込みを輸出で補ってきたが、2008年はそれも減少した。

2008年の能力2,229千トンに対し、内需は50%に過ぎない。
内需、輸出ともに、今後大幅に増加する見込みはなく、輸出採算の悪化も予想されることから、大幅な設備削減が必要である。

2007 2008
内需 1,279 1,174
輸出   839   551
合計 2,118 1,725
能力 2,313

PVC業界の変遷は以下の通り。


* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


Ineosは3月25日、インドのBrahmaputra Cracker and Polymer Limited (BCPL) LLDPE/HDPE技術をライセンスしたと発表した。能力は22万トン。

2006年4月にGAILの主導でアッサム州のLepetkata, District Dibrugarh に石油化学コンプレックスを建設するAssam Gas Cracker Project がインド政府の承認を得た。

アッサム州はインド北東部に位置し、ブータンおよびバングラデシュと国境を接している。
アッサム州は天然自然に恵まれており、1901年にはインド初の石油精製所が州内ディグボイに設置された。アッサム石油機構(AOD)のディグボイ精油所は、現在操業している石油精製所としては世界で2番目に古い。

Assam Gas Cracker Project のために2007年1月にBCPLが設立された。出資は以下の通り。

  GAIL  70%
  Oil India Ltd (OIL)   10
  Numaligarh Refinery Ltd(NRL)  10
  Government of Assam  10

天然ガスとナフサを原料にクラッカーと誘導品プラントを建設する。

  エチレン  220千トン
  プロピレン  60
  HDPE/LLDPE  220
   PP  60
  Pyrolysis Gasoline  55
  Fuel oil  12.5

OIL NRL 600万m3/日の天然ガスと16万トン/年のナフサをそれぞれ供給する。不足の天然ガスはONGC Ltd.から供給を受ける予定。

今回、HDPE/LLDPE技術が発表されたが、PP Lummus Technologies とされており、エチレン技術はまもなく発表される。

GAILでは杭打ちをした2007年4月9日から60ヶ月での完成を目指している。

 

参考   2006/6/5  インドのエチレン計画 


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イラク政府は37年ぶりに油田権益を外資企業に開放し、増産体制を整備して、2013年に原油生産能力を現状の日量250万バレルから460万バレルに引き上げる。

現在、第一次、第二次開放対象が発表され、一次、二次審査で入札資格社が選ばれている。

第一次開放対象は北部の主要油田キルクークや南部の大油田ズベイル、ルメイラなど油田6カ所と、西部のアッカスなど天然ガス田2カ所。

  発見 埋蔵量
(億バレル)
現状
(千b/d)
北ルメイラ油田(Rumaila)
南ルメイラ油田
1953      92
    73
    470
    585
キルクーク油田(Kirkuk) 1927     65     360
西クルナ油田(Qurna) 1973     74     300
ズベイル油田(Zubair) 1949     40     240
ミサン油田群(Missan)
(アブギラブ、ブズルガン、
ジャバルファウキ)
1969
1971
1974
    25     114
バイハッサン油田(Bai Hassan) 1953     23      7.5
アッカス ガス田(Akkas)     7tcf  
マンスーリヤ ガス田(Mansuriyah)     5tcf  

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2008年12月31日に発表された第二次入札対象油ガス田は以下の通り。

  埋蔵量
 
bn bbl
生産能力
 ‘
000 b/d
現状生産量
 ‘
000 b/d
<油田>      
Majnoon(マジヌーン)  8.20  600-800  40-50
West Qurna 2(西クルナ)  13.50   600  na
Halfaya(ハルファーヤ)  4.60  250-600 ** 10-15
East Baghdad(東バグダッド)  0.80  80-350 ** 7
Gharaf(ガラフ)  1.00  100-140  -
Kifl(キフル)  0.21  28  -
West Kifl(西キフル)  *0.18  25  -
Marjan(マルジャン)  *0.15  20  -
Badrah(バドラ)  0.50  70  -
Qayara(カイヤラ)  0.80  80  -
Najmah(ナジマ)  0.85  85  -
Qarmar(カマール)  0.15  20  -
Gilabat(ギラバット)  0.20  30  -
Nauduman(ナウドマン)  0.05   >10  -
<ガス田>      
Kashm al-Ahmar(カシムアルアマール)  1,550 Bcf 150mn cf/d  -
Siba(シバ) 4,000 Bcf 300mn cf/d  -

  * 未確認、 ** パイロット生産

 

2008年10月の一次審査では日本の4社を含む35社が選ばれた。本年第2四半期に第一次開放対象の入札が行われる。

イラク石油省は
20094月1日、年内に実施する油田開発入札に参加できる外国企業9社を追加で発表した。
申請した38社から応札資格を得た。第2次入札から参加できる。
日本からは
石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が選ばれている。

入札資格を得たのは次の各社。

  一次審査(2008/10) ニ次審査(2009/4)
日本  新日本石油、国際石油開発帝石、
石油資源開発、三菱商事
石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)
米国 AnadarkoChevronConocoPhillipsExxonMobil
HessMarathonOccidental
 
英国 BGBP Cairn Energy
豪州 BHPWoodside  
イタリア EdisonEni  
オランダ Shell  
ドイツ Wintershall  
フランス Total  
ノルウェー StatoilHydro  
スペイン  Repsol   
中国 CNOOCCNPCSinochemSinopec  
韓国 韓国ガス公社Kogas  
インド ONGC Oil India Ltd.
マレーシア Petronas  
インドネシア Pertamina  
ロシア GazpromLukoil RosneftTatneft
デンマーク Maersk  
カナダ Nexen  
トルコ TPAO  
カザフスタン   KazMunaiGas
ベトナム   Petrovietnam
アンゴラ   Sonangol
パキスタン   Pakistan Petroleum

 

新日本石油、国際石油開発帝石および日揮の日本側コンソーシアム3社は、イラクの石油開発等の入札に参加するため、各社会長が本年2月、バグダッドを訪問し、マリキ首相、シャハリスターニ石油大臣他、イラク政府首脳と会見した。マリキ首相はイラク北部のキルクーク油田などの入札に対し、応札を要請した。

ーーー

この中で、韓国の韓国石油公社とSKエナジーが除外された。

韓国石油公社などが参加する韓国コンソーシアムは2008年2月14日、イラクの北部クルド自治区内の油田4つの鉱区の開発とインフラ建設を並行して進める内容の覚書をクルド自治政府と締結した。

コンソーシアムは石油公社 38%、SKエナジー 19%、デソン産業、三千里(サムチョンリ)、ボムア資源開発(各 9.5%)、GSホールディングス、マジュコ通商(各 4.75%)、ユーアイエナジー(5%)などが構成している。

2008/2/20 韓国エネルギーコンソーシアム、イラク油田開発

イラクのシャハリスタニ石油相は4月2日、イラク駐在の河泰允(ハ・テユン)大使に会い、「韓国石油公社やSKエナジーなどの韓国企業がクルド自治政府と締結した油田開発事業は、中央政府との協議を経ずに行われた違法なものだ。そのため両社は今後、イラクでの油田開発に関する入札に参加できない」と通知した。

イラク政府は昨年の第1回油田開発入札資格審査で両社を排除、今回の第2回審査でもSKエナジーを脱落させた。
現在イラクで入札資格を得ている韓国企業は、クルドでの油田開発に参加していない韓国ガス公社だけ。

本件はコンソーシアムのクルド自治政府との契約当初からイラク政府が問題視していた。

しかし、本年2月にイラクのタラバニ大統領が韓国を訪問した際、イラク南部バスラの油田開発と現地でのインフラ整備を行うために必要な35億5000万ドルを韓国側が投資するという覚書を交わしたことで、一旦は解消するかのように思われた。

しかし、クルド族出身のタラバニ大統領とシーア派でエネルギー相を兼任するジャアファリ首相の考えが異なっていたもの。

イラク側は「クルドとの契約を取り消せば入札への参加を認める」としているが、韓国政府は「取り消すことはできない」との立場。

韓国内では政府があまりにも楽観的かつ早急に事業を進めたとの批判が出ている。韓国政府は現地調査団を派遣し、イラク国内の道路、港湾、石油精製施設の建設など、イラク再建事業への参加拡大を名目にイラク政府との再交渉に臨みたいとしている。


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BASF42日、米国のFTCと中国商務部がBASFによるCiba買収を、ECによる条件以外の追加条件なしで、承認したと発表した。

BASFは2008年9月15日、スイスの特殊化学薬品メーカー Ciba を買収する意向だと発表した。

2008/9/19  BASFがCiba買収へ

3月12日にはECが条件付きで承認しており、これで公開買付けの条件は満たされたこととなる。
この結果、4月9日に1株50.00スイスフランでの買付けが行われ、BASFはCibaの95.8%を取得する。

ECが問題ありと指摘した点について、BASFは以下の処理を約束した。

DMA3 (dimethylaminoethyl acrylate)BASFLudwigshafen の資産の処分
・製紙向けEEA synthetic dry strength agentCiba  事業全体を売却
bismuth vanadate(顔料):Ciba の全世界の事業を売却
・顔料
indanthrone blueCiba know-how、供給契約、需要家リスト、在庫を処分
紙用接着剤のstyrene acrylicCiba のフィンランドの事業(及びPVC、アクリレート事業)を処分
HALS (ヒンダードアミン系光安定剤)Ciba Chimassorb 119 FL事業を処分
UV filters :第三者に技術ライセンス

BASFは今回、Ciba のChimassorb 119 FL事業(HALS)をイタリアのSabo S.r.l. に売却する契約を締結したと発表した。

BASFは本年24日、Cibaの買収承認を前提に、4月1日からの新しい組織を発表している。<p>HTML clipboard</p>
Cibaの事業は Performance Products に帰属することになる。

2009/2/14 BASFCiba 統合で組織改正

ーーー

両社の業績は以下の通り。

BASF (単位:ユーロ)

  Net Sales    Income from operations
2008 2007 増減   2008 2007 増減
Chemicals  10,324   9,358   966    1,376  1,903  -527
Plastics   9,675   9,976   -301     530  1,172  -642
Performance Products   8,967   8,862   105     787   681   106
Functional Solutions   9,388   9,491   -103     151   434  -283
Agricultural Products   3,409   3,137   272     705   516   189
Oil & Gas  14,445  10,517  3,928    3,844  3,031   813
Other   6,096   6,610   -514     -930   -421  -509
合計  62,304  57,951  4,353    6,463  7,316  -853

Ciba (単位:スイスフラン)  1スイスフランは約 0.65ユーロ

  Net Sales    Operating income
before restructuring
charges
2008 2007 増減   2008 2007 増減
Plastic Additives  1,930  2,161  -231    154  323  -169
Coating Effects  1,604  1,837  -233    158  219   -61
Water & Paper Treatment  2,385  2,525  -140    96  116  -20
Corporate and others          -100  -106  6
Total  5,919  6,523  -604    308  552  -244

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三井化学と住友化学は4月2日、両社の共同出資会社である「日本ポリスチレン(JPS)」を解散し、ポリスチレン事業から撤退することを決めたと発表した。本年9月末を目途に大阪と千葉の工場の操業を停止し、その後解散する。

今後ますます厳しさを増す事業環境下においては、中長期にわたって安定的に収益を確保することは困難であると判断した。

同社の損益は2004年3月期以降、昨年までは黒字であった。
                      単位:百万円
   売上高 営業損益 経常損益 当期損益
07/3  23,443   557   531   224
08/3  24,248   919   902   675

日本ポリスチレンは三井化学(旧三井東圧)と住友化学の50/50JVとして1997年8月に設立され、199710月に営業開始した。 (同じ 1997年10月に三井化学が誕生)

三井東圧は宇部にSMプラントを持ち、大阪工業所に年産 133千トンの生産設備(GP,HI各2系列)を保有していたほか、サンスチレン(電気化学と三井東圧の合弁会社)から年間17千トンのPSを引き取っており、実質的には年産150千トンの生産設備を保有していた。
一体化に伴い、サンスチレンの株式は電気化学に譲渡した。

なお、三井化学は2004年1月、宇部のSMプラントを太陽石油に譲渡した。

住友化学は、昭和電工とのJV・日本ポリスチレン工業(
NPSのプラントが停止、同社から離脱したが、千葉に独自に建設した92千トンの設備(GP、HI各1系列)を保有していた。

現在の能力は大阪が62千トン、千葉が100千トンで、合計162千トンとなっている。

日本のポリスチレン業界は再編が進み、現在は
・PSジャパン(
旭化成  45%三菱化学 27.5%出光石油化学 27.5%)
・東洋スチレン(電気化学 50%
新日鉄化学 35%ダイセル化学 15%)、
・JPS

DIC(旧 大日本インキ化学)
4社体制となっているが、JPSの解散で3社体制となる。

2004年6月、PSジャパンの3社と大日本インキ化学(現 DIC)はポリスチレン事業を再編・統合することに基本合意したと発表した。DICのPS事業をPSジャパンに営業譲渡し、出資比率を旭化成 40%、三菱化学 20%、出光興産 20%、DIC 20% とするもの。

しかし、これに関しての公取委との交渉は難航し、予定の2004年10月の統合は延期され、2005年4月、各社は公取委の「競争を実質的に制限する恐れがある」との指摘を受け、基本合意を解消した。

この公取委判断に対する批判: 
  
2006/02/20  競争政策研究会の「企業結合審査における改革の進展状況と今後の課題」

 

PS業界の再編の推移は以下の通り。

PS業界の再編については 2006/10/7 日本のPS業界の変遷 

 

工場別能力は以下の通り (2007/12/末 単位:千トン/年)

会社名 工場 能力 備考
PSジャパン
旭化成・千葉   207 旭化成      45%
三菱化学    27.5%
出光石油化学 27.5%
三菱化学・四日市    85
旭化成・水島   108
出光・千葉    45
合計   445
DIC 四日市   131 (旧 大日本インキ化学)
東洋スチレン 電気化学・千葉    87 電気化学    50%
新日鉄化学  35%
ダイセル化学 15%
新日鉄化学・君津   138
ダイセル化学・姫路    53
合計   278
日本ポリスチレン 住友化学・千葉   100 住友化学   50%
三井化学   50%
三井化学・大阪    62
合計   162
合計    1,016 JPS撤退後は854

PS業界は2つの点で他のレジン業界と異なっている。

第一は「需要に合わせた能力」で、PSジャパンの前身のA&Mスチレンの発足時に親会社負担で老朽設備を廃棄した。
東洋スチレン発足時には電気化学が、PSジャパン発足時には出光石化が設備を廃棄している。

第二は儲からない輸出をやめたことで、2001年2月に中国がPSのダンピング調査を開始、同年12月には「損害なし」として調査が終結したが、業界では2002年頃から輸出を減らし、現在では月2千トン弱となっている。

2007年の能力が1,016千トン、内需が862千トン、輸出が44千トン、内需計906千トンとなっている。

この余剰能力がないことが、逆にPSジャパンとDICの統合時に公取委から「供給余力がない中で一層高度な寡占市場となる」とされ、不承認の理由の一つとされた。

2008年下期から内需が前年比で大きく減少、本年に入っても更に減少が続いている。

 
  2007 2008
内需   862   768
輸出   44   37
合計   906   806
能力 .1,016  

石化業界では2000年頃にようやく「選択と集中の時代」に入り、三菱化学の四日市エチレン停止や、三井と住友の合併(のちに破談)、塩ビ各社の撤退、ポリオレフィン統合会社の再再編などが相次いだ。

その後、中国バブル(と原油価格高騰化での値上げ)で石化は一転して儲かる事業となり、この動きは止まった。

今回のグローバルな経済危機の中、再び「選択と集中」が動きだしたようだ。

昨年11月には三菱化学がABS事業から撤退することを決定、ABSの統合会社テクノポリマーJSRの100%子会社とすることを発表している。

2008/11/28 三菱化学、ABS事業から撤退

 


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ダウは4月1日、Rohm & HaasR&H)の買収を完了したと発表した。

R&Hは同日付で上場廃止となり、ダウの新しい事業部門 Advanced Materials division に帰属する。

なお、当初より
売却を予定していたR&Hの製塩事業の子会社Morton Salt については、ドイツの肥料、園芸、製塩会社のK+S Aktiengesellschaft に16.75億ドルで売却することが決まったと発表した。

Morton Salt は米国の塩メーカーで、1848年創業で、1889年にJoy Morton が買収して Joy Morton & Companyに改称、更に1910年にMorton Salt Companyとなった。1999年にR&Hが買収した。

包装にあるMorton Umbrella Girl とスローガン When it rains it pours” で有名で、1914年から使用されている。

When it rains it pours は通常は「雨が降れば土砂降り」という意味だが、ここでの後の it はMorton Salt のことで、「雨が降っても、(固まらずに、図のように)さらさらとこぼれる」という意味。

ーーー

ダウ は昨年7月10日、 188億ドルでRohm and Haas (R&H)を買収する契約を締結したと発表した。
現金153億ドルで全株式を買収し、R&Hの35億ドルの借入金を引き継ぐ。

2008/7/11 速報 Dow ChemicalRohm and Haas を買収

同社はクウェートのPICとの合弁会社 K-Dow Petrochemicals 設立により、事業売却額マイナス出資で75億ドル、配当15億ドルで、合計90億ドル(税引後では70億ドル)を受け取ることとなっていた。

Dow はR&H 買収資金188億ドルを、つなぎ融資 130億ドル、Warren Buffett のBerkshire Hathaway Inc. からの投資 30億ドル、Kuwait Investment authorirty からの投資10億ドルで賄うことにしており、PICへの売却資金でつなぎ融資の一部を返済する予定であった。

しかし、本年1月1日のスタートを目前にして、昨年12月28日、K-Dow Petrochemicals が破談となり、この金が入らなくなった。

2008/12/29 ダウとクウェートの石油化学合弁、一転破談に

1月23日、ダウはR&H との統合でFTCの承認を得たと発表した。ECは既に1月8日に承認しており、買収の全ての条件が満たされた。

2009/1/26 FTC、Dow と Rohm and Haas の統合を条件付で承認

契約ではすべての条件が満たされた2日後に買収を実行することとなっており、1月27日が期限となる。

しかし、DowはR&Hに対して27日に買収を実施しない旨伝えた。

つなぎ融資は1年間の契約のため、 K-Dow 破談により、このまま買収を行えば資金繰りが危うくなるとして、格付会社が投資基準以下への格下げを行うことを明言しており、格付を投資適格にとどめることが必須であるとするダウとしては資金繰りの目処をつけるまでは買収を行えない状況に陥っていた。

R&Hは1月26日、契約の履行を求め、Delaware州の裁判所にDow を訴えた。この裁判は3月9日と決まった。

そして、裁判の始まる当日、ダウはR&H 及びその大株主との間で、これまでと異なる条件で41日までに買収を行うことで合意した。

2009/3/10  ダウ、Rohm & Haas 買収で合意 

当初発表の1株 $78 でのR&H株式買収(153億ドル)のうち、$63 124億ドル)は現金で支払い、残りの$1529億ドル) は優先株で渡す。

R&H2大株主(ヘッジファンドのPaulson & Co. Inc.Haas Family Trusts はダウの出す永久優先株25億ドルを購入、更に、そのうちのHaas Family Trusts はダウのオプションでダウの株式に5ドル投資する。
(ダウはオプションを行使し、
Haas Family Trusts に追加の5億ドルの投資をしてもらうこととなった)

ダウはつなぎ融資の条件変更に成功した。
 当初契約  130億ドル 20104月まで
  
改正    合計125億ドル、うち45億ドルは2010480億ドルは20114まで(1延長)

このほか、Berkshire Hathaway Inc. から30億ドル、Kuwait Investment authorirty から10億ドルは従来どおりとなっている。

また、ダウは史上初の減配を行い、年間10億ドルの資金を節約した。
   2009/2/23 
Dow Chemical、史上初の減配

今回のMorton International の売却額は16.75億ドルで、当局の承認などを経て、年央に完了する見込み。

ダウは上記の処理を通じ、つなぎ融資の額を減らすとともに、融資期限の延長により、その間に有利な事業売却を検討できることとなった。

しかし、化学業界の不振はしばらく続くと見られており、同社の将来の資金繰りに対する懸念は依然収まっていない。

Standard & Poor's は4月1日、ダウの格付けをBBBからBBB-(ジャンクボンドの1ランクだけ上)に引き下げた。

ダウでは
K-Dow Petrochemicals PICの代わりを求めて、国営の石油・ガス会社2社と交渉しているとされるが、そのほか、
・Total Group
との合弁のオランダの石油精製 Total Raffinaderij Nederland NV のダウ持分(45%)の売却
・東南アジアのオレフィン及び誘導品JVのダウ持分の売却
の交渉をしている。

ーーー

R&H の各事業が組み込まれる Advanced Materials Division は以下の通りとなっている。

なお、FTCと同意審決で、ダウの以下の設備が売却対象として指定されている。
1) DowClear Lake, Texas のアクリルモノマー製造設備
2) Dow St. Charles, Louisiana のアクリルポリマー製造設備
3) DowAlsip, Illinois のアクリルポリマー製造設備
4) Dow Torrance, California のアクリルポリマー製造設備
5) DowSouth Charleston, West Virginia のアクリルモノマー研究開発グループ
6) Dow Cary, North Carolina のアクリルラテックスポリマー研究開発グループ
7) その他、これら事業の関連施設

 


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Rio Tinto 本年2月12日、中国国有アルミ大手、中国アルミ業公司(Chinalco)から現金で195億ドルの出資を受けると発表した。

1)Chinalco はRio が世界各地に持つアルミ、銅、鉄などの利権をJVへの出資の形で取得する。対価は合計123億ドル。
2)Chinalco
 は Rio の両本社の転換社債を72億ドルで取得する。
  全て転換されれば、Rio Tinto 全体への出資比率は現在の9%
から18.0%に増える。

2009/2/13  中国アルミがRio Tintoに出資、鉱山利権を取得

本件の現状は以下の通り。

資金問題:

Chinalco は327Rio Tinto との提携のための資金 210億ドルがアレンジできたと発表した。

China Development Bank が主導するコンソーシアムとの契約を締結したもので、今回の取引のための195億ドルの融資契約と、運転資金や本取引に関係するその他の支出のための15億ドルのスタンドバイ・ファシリティから成っている。

コンソーシアムの他のメンバーはいずれも国営銀行の、Export-Import Bank of ChinaBank of China (国営商業銀行)、Agricultural Bank of Chinaである。

ーーー

豪州政府の承認問題:

本件の成立には2つの政府承認が必要となる。

第一は豪州の独禁法当局(Australian Competition and Consumer CommissionACCC)で、 Trade Practices Act 1974 に基づき、取引が競争を制限するかどうかを審査する。

第二はForeign Investment Review Board (FIRB) で、Foreign Acquisitions and Takeovers Act 1975 に基づき、国の利益に反するかどうかで判断する。FIRBの勧告に基づき、財務相が最終決定を下す。

ACCC325日、本件に反対しないと発表した。
Chinalcoによる事業参加が競争を著しく減らす可能性が少ないと判断した。

Rio Tinto の豪州の鉄鉱石事業と中国の製鉄メーカーChinalco との垂直統合が、中国の製鉄メーカーのために鉄鉱石価格を競争レベルよりも下げるような影響力を与えることはないと判断した。

ボーキサイト、銅、アルミナについての豪州市場での競争についても、Rio Tinto Chinalco の事業の重なりは少なく、これら市場で競争を減らす可能性は少ないと判断した。

一方、FIRB316日、レビューを6月まで延長した。
(原則
30日で判断するが、重要案件については90日間の延長が可能)

Rio Tinto の第三位の株主のAustralian Foundation Investment Co (AFIC) ChinalcoRio Tintoの事業経営に参加することに対し、懸念を表明している。Chinalcoが中国の国営企業であること、需要家であるとともに競合会社でもあることを問題視した。
AFICの取締役にBHP Billiton の会長が入っている)

豪州の資源の需要家である中国が価格や生産に影響を与えるのを懸念する声がある一方、これを拒否すると中国と豪州の貿易に悪影響を与えるとの懸念もある。

2008年の調査では外国政府がコントロールする企業に対する投資規制強化を強く支持する人が85%に達する。

これに対し、Rio Tintoは、この取引で390億ドルの借入金で苦しむ同社にとって必要な金利の安い資金が手に入ると反論している。
この取引が成立しない場合、借入金返済のため資産売却を急ぐ必要が出てくるとする。
2009年に入って大手鉱山会社が世界的経済不景気を理由に多数の解雇を発表しているが、更なる解雇を示唆している。

最終的には条件付きで認めるのではないかとの見方が強い。

ーーー

豪州3位の鉱業会社で世界2位の亜鉛メーカーのOZ Minerals と、中国の国有企業五鉱集団(Minmetals)の子会社の五鉱有色金属Minmetals Non-ferrous Metals)は2月16日、Minmetals OZ Minerals 1株82.5豪セントで全株式を取得する実現案契約を締結したと発表した。

2009/2/21 中国五鉱集団、豪州OZ Minerals を買収 

これに対しては3月27日、豪州財務相が声明を発表、OZ Minerals Prominent Hill 鉱山は南豪州のWoomera Prohibited Area (豪軍の武器テスト場)にあり、これが含まれる限り、本案は承認できないとした。

Prominent Hill の銅/金プロジェクトは本年2月に生産開始した。

 Reserves 確定鉱量  1.4Moz gold, 0.95Mt copper
 Resources 埋蔵鉱量(確定鉱量+推定鉱量)  7.4Moz gold, 2.5Mt copper

これを受け、OZ Minerals は五鉱集団と協議するとしている。 

ーーー

中国の豪州進出が目立つなか、首相や国防相の姿勢を巡り、政治問題化してきた。

発端は国防相Joel Fitzgibbonとシドニー在住の豪州籍を持つ中国系ビジネスウーマンHelen Liu との関係で、軍治安当局が安全保障上の問題があるとして調査を始めた。
LiuWorld Federation of Overseas Chinese Association の副会長で、一族は中国人民軍と密接な関係をもっていると言われている。

国防相はLiuを個人的な友人としているが、2002年と2005年(野党時代)に訪中旅行の費用をLiuに出してもらっていた。しかも先週まで、議会の証言でそれを隠していた。Liuの家族の所有するタウンハウスを借り、洋服もプレゼントされていた。

Kevin Rudd 首相は中国語を話す元外交官で中国通を自負しており、政権発足以来、中国との関係強化を進め、最近では、国際通貨基金での中国の役割拡大について、G20首脳会議の場で取り上げると表明している。

野党党首のMalcolm Turnbull は国防相の辞任を要求、首相を北京の移動大使のように行動していると批判した。

これに対し財務相は野党党首が国民の間の潜在的な反中感情をあおり、黄禍論をあおっていると逆批判した。


豪州財務相が五鉱集団のOZ Minerals 買収に関し、Prominent Hill 鉱山が含まれる限り、本案は承認できないとしたことに対し、Sydney Morning Herald は、政府は恣意的な投資障壁をつくり、「中国に立ち向かっている」ように見せかけているが、これは中国マネーは危険だとのメッセージを国民に与えるもので、「赤禍ヒステリア」を起こしかねないとしている。

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鉱山は武器テスト場から150km離れており、安全保障上の懸念はないという。


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中国海洋石油(CNOOC)が広東省恵州市大亜湾で建設していた製油所が試運転を開始した。

CNOOCとしては最初の製油所で、総投資額170億人民元、能力は年12百万トン(日量25万バレル)で、原油はCNOOCの渤海湾の蓬莱油田(Penglai offshore field )から持ち込む。

2004年に政府から認可を取り、2005年12月に建設を開始した。当初は2008年上半期に操業開始の予定であったが、経済情勢から延期されていた。

CNOOCによると、正常操業に入るのに1ヵ月半程度かかる。また、市場の情勢がよくないため、正常操業後も当面は70~80%の操業を予定している。

製品は年産150万トンのナフサ、80万トンのPX、730万トンの高品質ガソリン、ディーゼル、灯油で、ナフサは隣接する中海シェル石油化学に送られ、他は広東省で販売される。

中海シェル石油化学のエチレン能力は年80万トンで、CNOOCの製油所からのナフサが供給されるまでの間はイランやカタールから輸入のコンデンセートを原料としていた。
(なお、中海シェル石油化学のエチレンは110万トンへの増設の認可を得ており、2010年に完成の予定)

CNOOCでは2011年までに製油所の能力を12百万トンから20百万トンに増強する考えで、現在FSを行っている。また、新しく年産100万トンのエチレン建設も考えているとされるが、中海シェル石油化学との関係など、今のところはっきりしていない。

ーーー

CNOOCはペトロチャイナ、シノペックに次ぐ第三の国営石油・天然ガス企業グループで、石油および天然ガスの探査、採掘、開発が事業の中心である。

中国は第2次オイルショック後の原油価格高騰のため、自国領海付近の大陸棚での海上油田開発に期待をかけていたが、外資に対し海上油田開発を開放した。
この際、 海外企業のパートナーとして共同で開発を行い、海上石油採掘事業に関する中国側の責任を負うためにCNOOCが設立された。
こうした経緯から、CNOOCは中国沖合での石油資源開発に関して独占的な地位を得ていたが、最近ペトロチャイナとシノペックが参入する許可を政府から得ている。

組織としては、国営石油会社である中国海洋石油総公司(CNOOC)と、その子会社でニューヨークと香港に上場する中国海洋石油有限公司(CNOOC Ltd.)がある。
前者は後者に対し、70.6%を保有している。

中国国内の主な生産地は渤海沿岸、Eastern South China Sea(珠江河口沖合)、Western South China Sea(海南島周辺)となっている。

2005年6月、CNOOCはアメリカの石油会社Unocal 買収を図ったが、米国議会が米国の安全を損なうとして反対したため、諦めた。

同社はEast China Sea の日中中間線付近にある春暁ガス田(日本名:白樺ガス田)の開発を行っている。

2008/6/20 日中、ガス田開発合意 

同社の開発実績は次の通り。

2008年3Q時点の生産量
  Crude
Oil (b/d)
Natural 
Gas
(mmcf/d)
Bohai Bay 224,280    75
Western South China Sea 67,315   305
Eastern South China Sea 115,158    25
East China Sea    960    18
Overseas インドネシアほか 23,016   255
Total 430,729   679
Total boe/d (原油換算)    549,589

CNOOCは石油精製、石油化学進出を目指し、シェルと大亜湾での石油精製・石油化学JVを計画したが、当初NDRCは石油化学計画だけを認可した。このためShell が50%、CNOOCほかが50%の中海シェル石油化学を設立し、エチレンコンプレックスの建設を行った。

2006/4/7 中国のエチレン合弁会社ー2

その後、NDRCは製油所についても認可したが、諸般の事情でシェルはこれに参加せず、CNOOCの単独事業となった。 


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PetroChina とベネズエラの国営石油公社PDVSA は3月12日、広東省掲陽(Jieyang)市惠来(Huilai)で大規模製油所を建設する戦略的協力契約を締結した。

投資額81億ドル、能力は年20百万トンで、原料の重質原油はPDVSAがベネズエラから供給する。
両社のJVで、PetroChina が少なくとも51%を出資する。

現在FSを実施中で、2010年前半にNDRCの認可を受け、2013年に完成させる予定。

業界筋によると、PetroChina は製油所能力を将来20百万トンから50百万トンに増強するとともに、年産100万トンのエチレンを建設し、惠来を
、シノペックの浙江省寧波市鎮海(20百万トンの製油所、100万トンのエチレン)のような、PetroChina の重要な石油化学基地にすることを考えている。

惠来は恵州市大亜湾の東にある。


大亜湾にはシェルと中国海洋石油(CNOOC)のJVの中海シェル石油化学(
エチレン80万トン、110万トンへの増強計画あり)があり、CNOOCの12百万トン(20百万トンへの増強計画あり)の製油所がまもなくスタートする。

ーーー

ベネズエラは石油と交換に開発資金を得ようとし、また米国依存からの脱却を目指し、中国やロシアとの関係を強化している。

ベネズエラは315日(OPEC総会時)に、ロシアとの間でオリノコ川流域のフニン6区画の石油の共同探査・採掘に関して合意した。
ガスプロム、
TNK-BP、ルクオイル、スルグトネフチェガスのコンソーシアムが、PDVSA と合弁企業を設立する。
事業規模は
60億ドルで、採掘量は日量20万バレルとなる見込み。

チャベス大統領は2月17日、同国を訪問した中国の習近平国家副主席や企業家らとの会合で、「ベネズエラの石油は中国のお役に立つ。今後200年にわたって中国が必要とするすべての石油がここ、ベネズエラにある」と述べた。

ベネズエラは現在、日量30万バレルの石油を中国に輸出しているが、2012年までに日量100万バレルに増やすという。


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中国商務部は3月18日、公告22号を出し、米コカ・コーラによる中国最大の果汁メーカー、中国匯源果汁集団(China Huiyuan Juice Group Limited)の買収を認めないと発表した。

昨年8月に施行された中国の独占禁止法で初めての不認可となった。

中国は海外の合併ケースについて、ベルギーのビール会社
InBev による Anheuser Busch 買収を、中国のビール会社への出資を制限する条件付きで承認している。   2008/12/1 中国の独禁法、初の海外での合併ケース

コカ・コーラは1979年に中国市場に復帰して以降、Coca-ColaSpriteFanta などの炭酸飲料を販売、最近はMinute Maid PulpyOriginal Leaf Tea などの無炭酸飲料の販売も始めている。

中国匯源果汁集団は1996設立の中国最大のジュースメーカー。

コカ・コーラは匯源のジュースが成功しており、同社と補完関係にあるとし、買収を決め、匯源も賛成した。買収額は24億ドル。

コカ・コーラは中国のソーダ市場において2008年に52.5%のシェア(数量ベース)を占めており、ペプシが33%となっている。
果物や野菜ジュースではコカ・コーラは
12%のシェア、匯源は8.5%のシェアで、買収が成功すれば、この分野でもシェアは大きくなる。

コカ・コーラとペプシは途上国で競争でジュースや乳製品のブランドを買いあさっている。
ペプシは昨年、ロシア最大のジュース
メーカーのOAO Lebedyansky の株式の75.5%14億ドルで買収、残りも買おうとしている。

 

今回、商務部は買収の不承認について、以下の通り述べている。

関係法令に基づき調査した結果、本取引は市場での競争を阻害することが判明した。

<p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>

買収後に、コカ・コーラは炭酸飲料市場での支配的な地位を利用して、 ジュース飲料の抱き合わせ販売やセット販売を行ったり、排他的な取引条件を設定したりして、ジュース飲料市場の競争を大幅に制限し、消費者に少ない種類の中 から高い商品を選ぶことを余儀なくさせる。

この分野ではブランドが重要であるが、コカ・コーラは匯源社の「美汁源果粒橙」と「匯源果汁」という有名ブランドを押さえ、炭酸飲料での支配力と合わせ、潜在的競争者の参入を妨げる。

買収は国内の中小ジュースメーカーの生存を脅かし、中国ジュース飲料市場の競争局面にマイナス影響を与える。

この買収が競争に与えるマイナス影響を軽減するため、商務部の要請によりコカ・コーラは修正プランを提出したが、修正プランではマイナス影響を効果的に軽減することはできないと判断した。

 

コカ・コーラは318日、この決定を受け、買収をとりやめた。「失望したが、商務部の決定を尊重する」としている。

同社では長期的に中国市場を重視しており、これまでに16億ドルを中国に投じているが、新工場建設や流通網整備、研究開発等に今後3年間で20億ドルを投じるとしている。
36日に上海で90百万ドルをかけ、Global Technology and Innovation Centre を開設した。

この決定に対しては、買収後のジュースのシェアは25%以下のため、おかしいとの意見も出ている。

ブログには、中国で買収をしようとすると、①政府が関心を持たない中小企業、②大企業の場合は赤字で苦しみ、外国資本がそれを再生させる場合、又は③マジョリティでない場合で、かつ、技術移転や海外市場進出などのメリットがある場合、に限られてしまうとのコメントも出ている。

商務部の報道官は新華社通信に対し、決して保護主義によるものではないと反論している。外資導入方針には変わりはなく、今回の決定はあくまで事実に基づき、十分に調査した結果で、目的は市場での競争を維持し、消費者を保護し、公共の利益を守ることにあるとしている。

ーーー

中国の反壟断法(独占禁止法)は昨年81日に施行された。

2008/8/4 中国、独占禁止法施行

独占禁止委員会が国務院に設置されたが、この職責は競争関連政策の研究・制定、独占禁止ガイドラインなどの制定、競争状況の調査などで、執行はしない。

独禁法の執行は3機関が分担して行うこととなっている。
 発展改革委員会:価格独占行為の調査・処分を担当
 商務部:事業者結合行為に対する独占禁止審査
 工商総局:独占協定、市場支配的地位の濫用、行政権力を濫用した競争の排除・制限に対する執行(価格独占を除く)

今回のような事業買収は商務部の担当となっている。


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