「no」と一致するもの

シャープは3月4日、テレビ用の大型液晶パネルを生産する「堺ディスプレイプロダクト」について、現在80%を保有する海外ファンド World Praise Limitedから全株式を取得することで合意したと発表した。

シャープの経営危機時に手放したものを買い戻すもので、パネル調達を安定させて北米向けなどの販売を拡大する。

シャープは約3845万株の新株を発行、堺ディスプレイ 1株に対してシャープ株11.45株を割り当てる株式交換を実施する。実施日は未定。

同社は2021年2月15日には所有する全株式の売却を決定し、3月15日に実施すると発表していたが、売却を予定していた相手先から中止を申し込まれ、3月12日に売却断念を発表した。

堺ディスプレイプロダクトの20%を保有するが、2022年2月18日に今回の取得の協議を開始したと発表している。

今回、シャープの戴正呉会長兼CEOは昨今の国際情勢や大型パネル市場の動向などを踏まえて完全子会社化を判断したとしている。

同社は次のように説明している。

「テレビ事業及び業務用ディスプレイ事業においてグローバルレベルの事業拡大に取り組む上で、コスト構造上大きな割合を占める高品位パネルの安定的且つ優位性のある調達が極めて重要である」

「現在、大型液晶パネル市場において高いシェアを占める中国が米中貿易摩擦の最中にあることから、中国以外にある唯一の第10世代(マザーガラス2,880mm×3,130mm)以上の大型液晶パネル工場である堺ディスプレイプロダクトPは、米州市場向けのパネル供給において優位性が期待できる」

ーーー

シャープは2007年7月、新たに大阪府堺市に最先端の液晶パネル工場と、薄膜太陽電池を量産する太陽電池工場を併設することを決定したと発表した。

主な生産品目:40型・50型・60型クラスの大型テレビ用液晶パネル
 ・マザーガラスサイズ:2,850mm x 3,050mm(第10世代)
  (60型クラスのパネルが6枚、50型クラスは8枚、40型クラスは15枚取れる)
 ・投入能力:月72,000枚(稼動当初は月36,000枚)

液晶パネル工場は2009年10月に稼働した。太陽電池工場はその後、シャープ本体の「グリーンフロント堺」の愛称で事業を行っている。

凸版印刷と大日本印刷は同地にカラーフィルターの工場を建設した。

2007/12/5  シャープの「21世紀型コンビナート」

2009年4月にシャープとソニーは、この液晶パネル工場を分社化し、大型液晶パネル・モジュールの生産および販売を行う合弁会社シャープディスプレイプロダクトを設立した。

会社名称 シャープディスプレイプロダクト
設立日 2009年4月1日
稼動開始 2009年10月
出資比率 最終 シャープ66%、ソニー34% (当初 ソニー 7.04%)
事業 大型テレビ用液晶パネル・モジュールの生産およびシャープ、ソニーへの販売
生産能力 72,000枚/月(稼動当初は36,000枚/月)(マザーガラス投入ベース)

2009年12月29日、ソニーはシャープディスプレイプロダクトの増資を引き受け、7.04%を100億円で取得した。
ソニーは堺工場で生産されるパネルの7%にあたる55万台分(40型換算)を購入する。

2011年4月末までに最大34%まで引き上げられ、その時点で265万台分がソニーに供給されることとなっていた。

しかし液晶パネルの調達環境をめぐる変化を背景に、両社は2011年4月、ソニーの追加出資を先送りにした。

シャープは2012年3月27日、電子機器の受託製造サービスの世界最大手の鴻海グループ(Hon Hai) と戦略的グローバル・パートナーシップを構築すると発表した。

鴻海グループのシャープの第三者割当増資 9.88% 669億円
これは中止となり、その後2016年3月30日に鴻海は取締役会でシャープ買収を決めた。鴻海グループでシャープの3888億円の第三者割当増資を引き受け、議決権の66%を得た。

シャープディスプレイプロダクトを「ワンカンパニー」として共同で事業運営 シャープ 46.48%、董事長 46.48%、ソニー 7.04%

シャープとソニーは2012年3月28日、ソニーの追加出資を行なわないことで合意し、2012年5月24日にシャープディスプレイプロダクトについて、6月末までにソニーが保有する株式(出資比率:7.04%)すべてを譲渡し、両社の合弁を解消すると発表した。対価として、ソニーの出資時と同額の100億円が全額現金で支払われる。

また、シャープと凸版印刷、大日本印刷は2012年5月24日、凸版、大日本の堺工場における液晶カラーフィルター事業をシャープディスプレイプロダクトに吸収分割の方式により承継させることを決めた。

これらの結果、シャープディスプレイプロダクトの出資比率は以下の通りとなった。(吸収分割で株式発行)

シャープ 37.61%
郭台銘 37.61SIO International Holdings Limited)
凸版印刷 9.54
大日本印刷 9.54
自己株式 5.70 (ソニーから買収分 旧 7.04%相当)

2012年7月17日付で社名を「堺ディスプレイプロダクト」に変更した。

2016年12月28日、シャープが持ち株 436千株を 17,170 百万円で郭台銘氏の投資会社に譲渡した。

シャープディスプレイプロダクトの出資関係は次の通りとなった。

郭台銘 53.05%
シャープ  26.71%
凸版印刷 9.54%
大日本印刷 9.54%

その後、2019年6月に、シャープがテレビ向けの大型液晶パネルを生産する運営会社 堺ディスプレイプロダクトを子会社化する検討を始めたと報じられた。

2019/6/19 シャープ、堺の液晶パネル工場の子会社化検討

しかし、これは進展はなく、株主の異動についても全く報道されていない。今回、代表取締役がWorld Praise Limited邱啓華氏と発表されたが、これも初めてと見られる。

但し、情報として郭台銘氏の保有株が個人の都合により譲渡されたとの記事があった。

2022年2月18日、シャープは「堺ディスプレイプロダクトの子会社化(復帰)に向けた協議開始」の発表を行った。

現時点の出資が、シャープ 20.00%、World Praise Limited 80.00%で、シャープの子会社として復帰させることを目的として、World Praise Limitedから株式を取得することにつき協議することを確認したとした。

郭台銘氏 がWorld Praise Limited売却し、その時に凸版印刷、大日本印刷、およびシャープ(6.71%分)も合わせて売却したと見られる。

そして、3月4日に契約締結を発表した。

ーーー

World Praise Limited については詳細は不明である。判明事項は次の通り。

所在地:サモア島(Tax Havenと見られる。)
組成日:2001/3/8
組成目的:
Investment Holding
大株主:
Yau Leroy(邱啓華)83.08%   現 堺ディスプレイプロダクト代表取締役

Yau Leroy(邱啓華)は台湾人で、コンサルタント事業の Everiii のexecutive directorで、グローバル志向の企業家を養成し最も革新的な台湾スタートアップを世界に展開することを目標とする Taiwan Startup Stadium (台灣新創競技場)の共同設立者でCEOを務める。

Shellは2月28日、主要な液化天然ガスプラントを含むロシアの全事業から撤退すると発表した。サハリン沖の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」からも手を引き、「ノルドストリーム2」への関与も終了する。

2022/3/1 速報 Shell、サハリン2から撤退

しかし、同社がロシア産原油の調達を続けていることが明らかになり、波紋が広がっている。同社は3月4日にロシア産原油の購入を決めた。

これに対し、ウクライナのKuleba外相が、Shellのロシア原油の購入について、「SHELLへの質問は、ロシア原油はウクライナの血の匂いがしないかということだ。世界中の人に、多国籍企業がロシアとの全ての関係を切るよう要求してほしい」とツイートした。

Dmytro Kuleba

I am told that Shell discretely bought some Russian oil yesterday.
One question to @Shell: doesn't Russian oil smell Ukrainian blood for you? I call on all conscious people around the globe to demand multinational companies to cut all business ties with Russia.

これを受け、Shellは次の声明を発表した。

Shell はGazpromとのJVから離脱し、(Nordstream)パイプライン計画との縁を切った。

戦争がエネルギー供給に与える影響を各国政府と協議を続けている。

ロシア原油購入は苦肉の策である。継続的に原油を供給しないと、精油所はガソリンやディーゼルその他の製品を生産できない。ロシア原油以外の原油は入荷までに時間がかかり、間に合わない。

軽く考えての決定ではなく、皆さんの感情は理解している。

代替品入手に努力を続けるが、ロシアの原油シェアは大きく、一夜にできることではない。

ロシア原油からの利益の一部をファンドに寄付する。ウクライナの人に役立つよう、寄贈先を相談して決める。

Shell statement

We are appalled by the war in Ukraine and have already made clear our intention to exit joint ventures with Gazprom - which is majority-owned by the Russian government - and related entities, as well as intending to end our involvement with a significant project to pipe gas from Russia to Europe.

We have been in constant discussion with governments about the consequences of the war on the security of energy supplies. We have acted throughout in accordance with what we have understood was the intent to allow energy flows from Russia for the time being in order to provide security of energy supply.

Yesterday we made the difficult decision to purchase a cargo of Russian crude oil. Our refineries produce petrol and diesel as well as other products that people rely on every day. To be clear, without an uninterrupted supply of crude oil to refineries, the energy industry cannot assure continued provision of essential products to people across Europe over the weeks ahead. Cargoes from alternative sources would not have arrived in time to avoid disruptions to market supply.

We didn't take this decision lightly and we understand the strength of feeling around it.

We will continue to choose alternatives to Russian oil wherever possible, but this cannot happen overnight because of how significant Russia is to global supply. We have been in intense talks with governments and continue to follow their guidance around this issue of security of supply, and are acutely aware we have to navigate this dilemma with the utmost care. We welcome any direction or insights from governments and policymakers as we try to keep Europe moving and in business.

We will commit profits from the limited amount of Russian oil we have to purchase to a dedicated fund. We will work with aid partners and humanitarian agencies over the coming days and weeks to determine where the monies from this fund are best placed to alleviate the terrible consequences that this war is having on the people of Ukraine.

付記

Shellは3月8日、ロシア事業を全面的に終了すると発表した。

ロシアからの原油のスポット購入をやめ、石油製品や天然ガスなどあらゆる資源の調達を段階的に終える。ロシア国内での石油製品の販売も終える。


今後、日本のサハリン1、サハリン2 などへの出資継続も問題にされる可能性がある。

ウクライナのゼレンスキー大統領は2月28日、EUに正式に加盟申請した。通常手続きでなく、「新たな特別手続きによる即時加盟を求める」と訴えた。


ウクライナの南西に隣接する旧ソ連のモルドバのサンドゥ大統領は3月3日、 EU加盟を正式に申請する文書に署名した。
同じく旧ソ連のジョージアのガリバシビリ首相も同日、EUへの加盟を正式に申請した。

ロシアは強く反発している。

ウクライナ、モルドバ、グルジア(現 ジョージア)は2014年に南部クリミア半島をロシアに併合された直後に、EUとの貿易自由化を含む関係強化に向けた 「連合協定」に署名したが、正式にEUに加盟申請するのはこれが初めて。

EUは2014年6月27日、ウクライナ、モルドバ、グルジア(現 ジョージア)の3ヵ国と高度かつ包括的な自由貿易圏(DCFTADeep and Comprehensive Free Trade Areas)の構築を含む連合協定を調印した。

「連合協定」は、EUと非EU諸国との間の政治、貿易、社会、文化、安全保障上の結びつきを強める協定。
DCFTAは連合協定の一部として、関税障壁撤廃というFTA本来の課題に加えて、双方間の貿易経済活動にEUのルールを浸透させてヒト・モノ・カネの動きを活発化させようとするもの。

ゼレンスキー大統領は2月28日、EUのフォンデアライエン委員長と電話で会談したことを明らかにし、以前から希望しているEU加盟を重ねて求めた。

EUのフォンデアライエン委員長は27日、「いずれ、ウクライナはわれわれの一員となる。彼らに加わってほしい」などと述べ、加盟を支持すると受け取ることができる発言をした。

但し、EUの報道官は、「委員長の発言は、ウクライナがヨーロッパの国だという意味だ。委員長はあわせて、加盟には手続きがあるとも述べていて、これが重要なポイントだ」と強調し、実際の加盟までには時間がかかることを示唆した。

EUへの加盟にあたっては、全加盟国の承認が必要な上、法の支配や汚職の撤廃、経済の安定などの条件を満たさなければならず、加盟交渉には数年かかるのが一般的。

スロバキア、スロベニア、チェコの首脳陣は、ウクライナが速やかにEUに加盟できるような「まったく新しい道筋」をEUに作るよう求めているが、EU側は 消極的である。

ーーー

ウクライナのNATO加盟阻止が今回のロシアによる軍事進攻の口実である。

ウクライナ最高会議は1990年7月に「主権宣言」を採択したが、「対外安全保障」の項は次の通り であった。

「将来において恒久的に中立国家となり、軍事ブロックに加わらず、非核三原則――核兵器を受け入れず、使用せず、保持しないという自らの意向を厳に宣言する」。

ドイツの東西統合(1990年)に際し、NATOを統合ドイツより東に拡大しないという口頭の約束があったが、西側は順次東方に拡大、ロシアの隣国で、ロシアにとって特別な国であるウクライナの加盟を否定しなかった。

2021/12/22 ロシアの安全保障条約草案 
2022/1/2   プーチン大統領の怒り

2019年2月、ウクライナの議会に当たる最高会議は、ポロシェンコ大統領(当時)が提出したEUとNATOへのウクライナの加盟路線をウクライナ憲法に明記する憲法改正法案を可決した。

NATOについては、西側は建前として参加を求める国の要請は拒否しないとするが、北大西洋条約の第5条で、締約国に対する武力攻撃を「全締約国に対する攻撃とみなすことに同意する」と定めており、ロシアとの全面戦争になりかねないため、NATOは簡単には ウクライナの参加を認めないと思われる。

このため、ウクライナのゼレンスキー大統領はまず、EUへの加盟を求めたもの。


現在、EUに加盟しているのは27カ国で、東方への拡大に向け一部のバルカン諸国と加盟交渉を進めているが、西欧の慎重姿勢もあって協議は停滞している。最後に加盟したのは2013年のクロアチアが最後で、新規加盟は8年以上ない。

2007/1/5 EU 加盟国、27カ国に  → 28か国 (2013/7/1) → 27か国(2020年英国離脱)

加盟交渉はバルカンのモンテネグロとセルビアと始めており、コソボとボスニア・ヘルツェゴビナを潜在候補国と位置づける。

トルコとの加盟交渉は、キプロス問題やトルコの司法制度が依然として西欧法治国家の水準に達していないことなどから事実上停止している。

2020年3月にアルバニアと北マケドニアとEU加盟に向けた交渉に入ることで合意した。欧州委は2018年に交渉入りを加盟国に勧告したが、フランスやオランダ、デンマークが難色を示していた。

欧州委は交渉国について、「法の支配」「市場経済」などの分野でEU基準を満たすための改革が進んでいるかを年ごとに評価し、各国に報告する。

ウクライナについては、もしウクライナをEUに入れた場合、EUの一部がロシアに侵略されたことになり、ロシアに対し直接対応せざるを得なくなる。

また、ウクライナ(とモルドバ、ジョージア)を加盟審査を経ずに早期の加盟を認めるのは問題である。

欧州委は「法の支配」「市場経済」などの分野でEU基準を満たすかどうかを重視する。

EUは加盟国のうちで法の支配の後退が目立つハンガリーとポーランドに資金提供を禁止した。

2022/2/18 欧州司法裁、「法の支配」違反国へのEU資金停止を合法と判決

加盟国についてさえ、EU基準を守らない国に制裁をしているなかで、例外的にウクライナ等の早期のEU加盟を認めると、長年交渉を続けている他の候補国をどうするかが問題になる。

1987年に加盟申請を行ったが棚上げされているトルコのエルドアン大統領は早速、3月1日に同国のEU加盟手続きについて、ウクライナと同様に扱うよう求めた。トルコがNATO加盟国であることも付言している。

仮にEUの基準を満たしていない参加希望国をすべて加盟させた場合、その後のEUの運営は混乱すると思われる。

欧州連合(EU)は3月2日、ロシアへの追加の経済制裁として同国2位のVTBバンクなど大手7行を国際的な資金決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除することで合意した。

2022/2/28 ロシア追加制裁、国際決済網から排除

制裁は10日以内に発動される。

SWIFTから排除される7行の総資産は外銀を含む全体の2~3割とされる。欧州委は、ロシアの行動次第では「制裁リストにロシアの銀行を追加する用意がある」としている。

ロシア最大手のSberbank PJSCと、ガス大手Gazpromが出資するGazprombank は含まれていない。
これらを除外すれば石油、天然ガスなどの取引が出来なくなり、欧州経済への影響が大きいことを判断したとみられる。
当初から、エネルギー関連については対象外にするという考えが出ていると報道されていた。
米国もGazprombankについては新規借り入れを禁止するということに止まっている。 (欧州にSWIFT排除をやらせるための配慮とされる。)

SberbankはSWIFT排除からは外れたが、米国はSberbankに対し金融遮断しており、ドル取引ができない。

なお、Sberbankは3月2日、欧州市場から撤退すると発表した。預金流出で事業継続が困難と判断した、


別途、各国も独自の制裁を行っている。

日本は当初、下位3社のみであったが、3月3日に4銀行を追加した。

順位 SWIFT 米国 EU 英国 日本
Sberbank PJSC  1 対象外 金融遮断 *
対象外 資産凍結 対象外
VTB Bank PJSC
貿易決済を担う国営銀行
2 SWIFT除外 取引停止 資産凍結
(追加)
Gazprombank
(Gazpromが投資)
3 対象外 取引制限 対象外
Bank Otkritie SWIFT除外 取引停止 取引停止 資産凍結
(追加)
Novikombank 対象外
Sovcombank PJSC
Bank Rossiya 取引停止 資産凍結
VEB.RF
国営開発対外経済銀行 
(第一弾)

取引停止
Promsvyazbank PJSC
(軍とのつながり)
ロシア中央銀行 取引制限、外貨準備凍結


米国は2月24日、ロシア最大の銀行であるズベルバンクと第2位のVTBバンクを含む大手金融機関を幅広く制裁対象に加えた。

米国の金融機関にズベルバンクとの取引を拒否するよう求め、ズベルバンクと海外子会社25社の米金融システムへのつながりを断つ。

付記

米国は4月6日、追加制裁を発表した。ズベルバンクのほか、国内4位のアルファバンクも制裁対象とし、「米金融システムと接触する」両行の資産を凍結するとした。ただ、エネルギー取引は今回の制裁措置から除外された。


なお、既報の通り、SWIFTから排除された場合の抜け穴が2つある。

ロシアは2014年にウクライナ南部のクリミア半島を併合した際、SWIFTからのロシア排除案が浮上したのを機に、「SPFS」(FINANCIAL MESSAGING SYSTEM OF THE BANK OF RUSSIA)と呼ばれる独自の銀行間決済ネットワークを開発した。
現在、約400の金融機関などが利用しており、ロシア国内のSWIFT加盟数を上回っているが、ほとんどがロシア国内での利用にとどまっている。


http://www.cbr.ru/Content/Document/File/72210/pres_11102021.pdf


中国人民銀行は2015年、人民元の国際銀行間決済システム(CIPS :Cross-Border Inter-Bank Payments System)を導入した。

主な機能は、クロスボーダー人民元決済(貨物貿易、サービス貿易、直接投資、融資、個人送金など)にかかる顧客送金およびインターバンク決済となっている。

・直接参加行:CIPS内に専用口座を有し、直接CIPSにアクセス、中継銀行を介さず、中国人民銀行と決済することができる。
・間接参加行:直接参加行を通じてCIPSに参加

Standard LithiumとLanxess Corporationは米Arkansas州El DoradoのLanxessの工場に隣接して建設する最初のリチウム商業生産計画をまとめた。2月24日に発表した。


Standard Lithiumはリチウムの直接抽出技術(LiSTR:Direct Lithium Extraction Technology) を開発した。

リチウムリッチのかん水からリチウムを直接抽出するもの。

米国のアーカンソー州を中心にテキサス州南部からフロリダ州西部まで約1,000マイルに及ぶSmackover formationという地層がある。ジュラ紀に多孔質石灰岩帯水層に閉じ込められた有機化石堆積物と濃縮かん水で構成されており、かん水にはリチウムが含まれている。

Standard Lithiumはアーカンソー州El Doradoで臭素を生産する独 Lanxessと提携した。臭素工場群で副生される残渣のかん水から、環境に配慮したLiSTR技術でリチウムを抽出する。

2020年9月に最初の工場で生産を開始した。

今回、商業生産の計画をまとめた。

Lanxessの工場内に Li2CO3 20,900t/yのプラントを建設するが、建設はStandard Lithiumがコントロールする。技術はすべて同社が確保し、同社が最低51%を出資する。当初は同社が100%出資し、Lanxessの出資は今後決定する。

Lanxessは土地をリースし、かん水を供給、インフラやその他サービスを提供する。

Lanxessは製品の一部又は全てを「市場価格マイナスα 」(追って決めるが最大20%)で購入する権利を持つ。

また、第二、第三工場をJVベースで建設すること、Lanxessがこれらからの製品を別途決める価格で購入する権利を持つことも決めた。


Standard Lithumは別途、El Dorado の西のMagnolia近郊でのSouth West Arkansas Lithium Project(30,000t/y)を検討している。

また、カリフォルニア州の Mojave 砂漠で土地をリースすることも検討している。

東芝は3月1日、同日付での代表執行役の異動を発表した。

2人しかいない社内取締役が社長、副社長を退任し、新たに社内から3人の代表執行役(いずれも取締役ではない)を選任した。

但し、3人の選任は暫定とされており、本年6月開催予定の定時株主総会に付議する取締役候補者の選任案については追って決定するとしている。

ーーー

2021年4月14日付で当時の車谷社長兼CEOがで辞任し、前任社長の綱川智会長が社長に復帰した。

2021年6月25日の定時株主総会で、下記の取締役が選任された。

 智 取締役会議長、代表執行役社長 CEO
Paul J. Brought 社外取締役 元 KPMG
Ayako Weissman 社外取締役 元 投資会社
Jerry Black 社外取締役 イオン顧問
George Zage Ⅲ 社外取締役 元 投資銀行
畑澤 守 代表執行役副社長
綿引 万里子 社外取締役 元 裁判官
橋本 勝則 社外取締役 元 デュポン


2021/6/26 東芝、株主総会 

その後、社長は企業価値向上を求める「物言う株主」との対話を重視するとともに、後任社長の選定を進めていた。

しかし、「物言う株主」との交渉に基づき、企業価値を高めようと打ち出した「会社を3つに分割する」という方針は反対が強く、本年2月に半導体などのデバイス事業だけを分離して2分割とすると発表したが、これについても反対が多い。

今後、再編策をさらに見直す可能性もある。

今回の異動は次の通り。

従来 2022/3/1付
 智 取締役会議長、代表執行役社長 CEO 取締役会議長(暫定)及び取締役
畑澤 守 代表執行役副社長 取締役
島田太郎 執行役上席常務 (暫定)代表執行役社長 CEO
柳瀬悟郎 東芝エレベータ社長 (暫定)代表執行役副社長 COO
佐藤 裕之 デバイス&ストレージ所管 (暫定)代表執行役 専務


3人は代表権を持つが、取締役ではない。

島田新社長は、会社全体を2つに分割する改革案について「予定通り進捗する」としつつ、「全てのステークホルダーの意見を受け止め、全てのオプションを検討したい」と述べた。

Shellは2月28日、主要な液化天然ガスプラントを含むロシアの全事業から撤退すると発表した。

サハリン沖の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」からも手を引き、「ノルドストリーム2」への関与も終了する。

サハリン2のLNG年産能力は約1000万トンで、うち5割をJERAや東京ガスなど日本の電力・ガス会社8社が長期契約で調達している。

三井物産と三菱商事の対応が焦点となる。

ロシアからの撤退により減損が発生する見込みで、ロシアの事業に関連する非流動性の保有資産は2021年末で約30億ドルという。

付記

Shellは3月8日、ロシア事業を全面的に終了すると発表した。

ロシアからの原油のスポット購入をやめ、石油製品や天然ガスなどあらゆる資源の調達を段階的に終える。ロシア国内での石油製品の販売も終える。

付記

プーチン大統領は6月30日、「サハリン2」の運営をロシア側が新たに設立する法人に移管し、現在の運営会社の資産を無償譲渡するよう命じる大統領令に署名した。

新たな運営主体としてロシア側が設立する有限法人を指定。三井物産や三菱商事が出資する現在の運用主体であるサハリンエナジーから、すべての資産や従業員、権利関係を引き継がせる。

サハリンエナジーの外国株主は新しい有限法人の株主として参加できるが、ロシア当局から提示された条件に同意することが前提で、条件をのめなければ、日本の商社はサハリン2への関与を失うことになる。

付記

三菱商事は8月25日、ロシア極東の資源開発事業「サハリン2」の新たな運営会社に参画する通知を出す方針を決めた。ロシアは8月にサハリン2の運営を新会社に移管し、三井物産と三菱商事に出資を続けるかどうか判断を迫っていた。

三井物産も参画の意向を通知する方針を決めている。

両社ともロシア側の動向を精査しつつ、月内にも意向を伝える見通し。

付記

シア政府、8月26日の政令で、サハリン2新運営会社が三井物産の子会社に12.5%の株を譲渡することを承認 。三菱商事についても10%の株の譲渡を承認

Shell (27.5%) は9月1日、新運営会社に出資しない方針を通知した。

ロシアのエネルギー相は9月7日、Novatekが参加する見通しを示した。Shell分を引き継ぐ可能性。


サハリン2プロジェクト

事業主体 Shell 55%→27.5%-1株
Gazprom 0%→50%+1株
・三井物産 25%
12.5%
・三菱商事 20%
10%
投 資 額 200億ドル
開発鉱区 ピルトン・アストフスコエ、ルンスコエ
推定可採
埋蔵量
①原油 10億バレル
②天然ガス 4,080億立方メートル

<石油>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬後、新設港湾よりタンカーで日本等へ輸出
<ガス>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬、液化後、LNGをタンカーで輸出
 



2007/1/9 サハリン2計画 再スタートとその背景

サハリン2計画の概要については、2006/6/6 「新・国家エネルギー戦略」発表 の サハリン計画の項を参照。

ーーー

付記 

ExxonMobil は3月1日、Sakhalin-1事業から撤退すると発表した。
現状に鑑み、ロシアでの新規開発は行わないとしている。

サハリン1,2のいずれにも日本が参加しており、どうするかが注目されている。仮に撤退となれば日本のエネルギーへの影響は極めて大きい。

サハリン1プロジェクト

事業主体 ・エクソンネフテガス社
 (米、エクソン・モービル子会社、オペレーター、30%)
・サハリン石油ガス開発(株)(通称:SODECO)
 (日、石油公団・伊藤忠・丸紅等 出資30%)
・ONGCヴィデッシュ社(インド、20%)
・サハリンモルネフテガス・シェルフ社(ロシア、11.5%)
・ロスネフチ・アストラ社(ロシア 8.5%)
投 資 額 約120億ドル以上
開発鉱区 オドプト、チャイヴォ、アルクトン・ダギ
推定可採
埋 蔵 量
①石油    約23億バレル
②天然ガス 約4,850億立方メートル

原油:パイプラインで大陸のDe-Kastri に輸送し、輸出
ガス:

当初、日本までのパイプラインで輸送する計画:漁業補償問題、東京電力の反対で取り止め
サハリン2 に売り、LNGにする交渉をしたが、価格で折り合わず、取り止め
現状は、ほとんどは原油回収率向上のため油層圧入、一部は近くの既存パイプライン
SKV:サハリン~ハバロフスク~ウラジオ天然ガスパイプライン)ハバロスクなどで国内販売

2019年に
大陸のDe-Kastri 港湾620 万トンの自前の LNG 設備を建設することに決めたと報じられた。

ーーー

ノルドストリーム2

2015年9月にShareholders' Agreementが調印された。

  Nord Stream -1 Nord Stream -2
Gazprom 51.0% 51.0%
E.ON 15.5% 10.0%
Wintershall(BASF子会社) 15.5% 10.0%
Nederlandse Gasunie 9.0%
GDF SUEZ 9.0%
Shell 10.0%
OMV 10.0%
ENGIE  仏電気・ガス事業者 9.0%

2015/7/1 Nord Stream 倍増計画


付記

その他のShellとGazpromのJVは次の通り。

Salym Petroleum Development N.V.  Shell 50%、Gazprom Neft 50%

西シベリア Khanty Mansiysk Autonomous District

Gydan Shell 50%、Gazprom Neft 50%

北西シベリアのGydan 半島で開発を計画中

英BPは2月27日、ロシアのRosneftの持株19.75%全てを売却すると発表した。BP側が出している2人の取締役、BP のCEOのBernard Looney と元CEOのBob Dudleyは直ちに辞任する。

Rosneftと手掛けてきたロシア国内での合弁事業も全て解消し、ロシアから事実上撤退する。

BPの財務に最大250億ドル(約2兆8900億円)の打撃となる可能性がある。

Helge Lund会長は発表文で「今回の軍事行動は根本的な変化をもたらした」とし、「BP取締役会は徹底的なプロセスを経た末、国有企業であるロスネフチとの関係は断じて継続できないとの結論に達した」と説明した。

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BPは当初、ロシアの投資家グループAlfa-Access-Renova(AAR) との合弁で石油会社TNK-BPを運営していた。

露石油最大手 Rosneftは2012年10月22日、TNK-BPを、BP、AAR 双方から合計550億ドルで買収することを明らかにした。

BPはJVの50%を譲渡し、現金171億ドルとRosneftの株式 12.84% を取得する。
BPは同時に、ロシア政府からRosneft株式 5.66%を48億ドルで買収する。(BPはネットで123億ドルを受け取ることとなる。)

BPは既にRosneft株式 1.25%を保有しており、この取引で合計19.75%を保有することとなり、Rosneftの取締役会に2人の取締役を出す。

Rosneftにはロシア政府が75%出資し、残りは上場している。

BPは2013年3月21日、本取引を完了した。

2012/10/24 ロシアのRosneft、TNK-BPを買収

2014年にクリミヤ・ウクライナ紛争が起こった。

しかし、当時のBPのBill Dudley CEOは、「Rosneftが制裁対象ではない。ロシアの事業には影響はない」と語った。

BPとRosneftは5月24日、ボルガ・ウラル地域のドマニク累層のシェール鉱区などの開発を推進する覚書を締結した。

BPは6月27日にはRosneft から1200万トンの精製石油製品を購入する5年契約を締結した。

Dudley CEO は2014年11月、ロシアでの投資を継続する方針を示すとともに、Rosneftの持株(保有比率 19.75%)を売却する計画がないことを明らかにした。

2014/7/3 BP、ロシア制裁開始後にRosneft との関係を強化

BPとRosneft は2015年6月19日、両社の長期的な戦略提携を強化する数件の契約に調印した。

東シベリアの最大の油田の一つで、現在日量2万バレルを生産するSrednebotuobinskoye 油田・ガスコンデンセート田の開発権を有するTaas-Yuryakh Neftegazodobycha (Taas)の20%をRosneftから取得し、新しいJVを設立した。

これに加え、両社は西シベリアとYenisey-Khatanga 盆地の26万平方kmに及ぶ地域を共同で開発することで合意した。

各国によるロシア制裁で各社とロシアの石油事業での提携が停滞するなか、BPは提携強化を進めた

2015/6/23 BPとロスネフチ、長期戦略関係を強化 


BPの2021年12月期の決算でRosneft 事業は税引き・利払い前利益の2割弱を稼ぎ出した。

今回、ロシアは2月24日にウクライナに対する軍事侵攻に踏み切ったが、BPのBernard Looney CEOは2月14日の時点では、ロシアで手掛けている石油・ガス事業について、同国と西側の緊張の高まりによる影響を受けていないとし、引き続き事業を手掛ける方針を表明した。但し、西側がロシアに制裁を発動すれば、BPとして順守すると付け加えた。 

ロシアの軍事侵攻を受け、英国の民間企業・エネルギー・産業戦略相は2月25日、BPのBernard Looney CEOを呼び、ロシア事業について聴取した。複数の英メディアが報じた。ウクライナに軍事侵攻したロシアに国際社会が経済制裁を強めるなか、同国での事業展開に懸念を伝えたとされる。

米英独仏イタリア、カナダの6カ国と欧州委員会は2月26日、ロシアの大手銀行などを国際的な資金決済網 SWIFTから排除する追加の金融制裁を科すことで合意した。数日中に実行する。

SWIFTからの排除の対象になるのは、これまで金融制裁の対象となっていたロシアの大手銀行のほか、必要に応じてほかのロシアの銀行も追加する。

制裁にはロシア中央銀行の外貨準備に関する規制も含まれ、外貨準備を使って金融制裁全体の効果を弱められないようにする。

Joint Statement by European Commission, France, Germany, Italy, the United Kingdom, Canada, and the United States

First, we commit to ensuring that selected Russian banks are removed from the SWIFT messaging system. This will ensure that these banks are disconnected from the international financial system and harm their ability to operate globally.

Second, we commit to imposing restrictive measures that will prevent the Russian Central Bank from deploying its international reserves in ways that undermine the impact of our sanctions.

ロシアの全銀行を対象にしたSWIFTからの排除は、欧州経済への影響が大きすぎるため見送った。

また下記の通り、ロシアの天然ガスを欧州に輸入できない場合、他ソースからの補填はできず、欧州経済が大混乱に陥ることは必至である。

このため、エネルギー関連については対象外にするという考えが出ていると報道されている。


SWIFTから排除されたロシアの銀行は、世界での金融取引の大半ができなくなり、ロシアの輸出入を効果的に止めることになる。

SWIFTは世界中の銀行が出資する民間の非営利団体 Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunicationが運営するシステムで、金融機関同士の決済や送金指示といった情報をやり取りする国際インフラである。


SWIFTから排除されてもメールやファクスで送金情報を連絡できるが、セキュリティーが不完全なうえ、膨大なデータを手作業で送信することになり、極めて脆弱になる。

SWIFTは全世界で1日あたり4200万件の送金情報を扱っており、このうちロシアの金融機関は2020年時点で1.5%(約63万件)を占めている。

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付記

SWIFTから排除された場合の抜け穴が2つある。

ロシアは2014年にウクライナ南部のクリミア半島を併合した際、SWIFTからのロシア排除案が浮上したのを機に、「SPFS」(FINANCIAL MESSAGING SYSTEM OF THE BANK OF RUSSIA)と呼ばれる独自の銀行間決済ネットワークを開発した。
現在、約400の金融機関などが利用しており、ロシア国内のSWIFT加盟数を上回っているが、ほとんどがロシア国内での利用にとどまっている。


http://www.cbr.ru/Content/Document/File/72210/pres_11102021.pdf


中国人民銀行は2015年、人民元の国際銀行間決済システム(CIPS :Cross-Border Inter-Bank Payments System)を導入した。

主な機能は、クロスボーダー人民元決済(貨物貿易、サービス貿易、直接投資、融資、個人送金など)にかかる顧客送金およびインターバンク決済となっている。

・直接参加行:CIPS内に専用口座を有し、直接CIPSにアクセス、中継銀行を介さず、中国人民銀行と決済することができる。
・間接参加行:直接参加行を通じてCIPSに参加

中国や欧米の大手金融機関のほか、日本勢からも三菱UFJ銀行とみずほ銀行の中国法人が同システムに接続しており、中継銀を介さず、直接、人民銀と決済できるようになった。
中国は人民元建ての投資や貿易決済にCIPSを使うよう促しており、CIPSを使う取引は拡大傾向が続く公算が大きい。

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SWIFTからの遮断は「核兵器オプション」と呼ばれ、最終手段と位置付けられている。ロシアを追い詰める一方で、ロシアとの貿易が切れると欧州も大きな影響を受ける。

これまで欧州がこれに反対してきた理由である。

もし、ロシアの天然ガスが完全に遮断されると、現在高騰している価格が更に上がるほか、全体を他のソースに切り替えることは不可能である。欧州経済への影響は膨大である。

天然ガス価格の推移は下図の通り。これまでは欧州価格は米国のHenry Hub でのパイプライン渡し価格とほぼ同水準であったが、昨秋から欧州市況は急騰した。

欧州の天然ガスの4割はロシアからパイプラインで供給されている。

2021年夏のヨーロッパは風が弱く、各国の風力発電は軒並み不調に陥った。このため、ガス発電の比重が高まったが、ロシアが供給を削減した。(ロシアは否定)

このため、天然ガスのスポット価格は急騰した。

天然ガスの価格アップに加え、欧州に海外から天然ガスを供給する場合、液化して船で輸送する必要があり、液化費用と輸送費用がかかる。(試算では100万BTU当たりそれぞれ3ドル程度)

現状で既に、世界各地のLNGプラントから欧州にLNG船が大挙して向かっており、混乱が生じている。

仮にロシア産が輸入できない場合、価格の高騰だけでない。代替は不可能である。

天然ガスそのものの不足、液化設備の能力の不足、輸送船の不足から、ロシアからの輸入全量のカバーは不可能である。


なお、ドイツのショルツ首相は2022年2月22日、事実上の制裁としてノルドストリーム2の認可手続きを停止する考えを表明した。

2021/11/13

これも、場合によっては欧州側に不利に働く可能性もある。ロシア側が他のパイプラインを破壊すれば、天然ガスが受け入れられなくなる。

ウクライナ政府は2月27日、東部ハリコフにあるガスパイプラインがロシア軍の攻撃を受けて爆破したと発表した。

付記 パイプライン自体は破壊されておらず、天然ガスの輸送は行なわれている。

https://en.wikipedia.org/wiki/Natural_gas_transmission_system_of_Ukraine

LG Energy Solutionは2月15日、米国のNEC Energy Solutionsの買収が完了したと発表した。買収額は非公表。
買収は2021年9月に明らかになっていたが、
各国の規制当局の承認など必要な手続きの終了を条件としていた。

LG Energy SolutionsはLG化学の電池事業を引き継ぐ形で2020年12月に設立された100%子会社で、電気自動車、モビリティとITアプリケーション、蓄電システム向けのリチウムイオン電池事業を主な事業内容とする。

2020/9/19 LG Chem、電池部門を分社化 


日本電気は2021年9月3日、100%出資の米子会社 NEC Energy Solutions, Inc.の全ての株式を LG Energy Solutionに譲渡することを決めたと発表した。


NEC Energy Solutionsは、電力向け大規模蓄電システムおよび産業用高性能リチウムイオン電池ALMシリーズの設計・製造およびシステムインテグレーションを行うメーカー。

同社は下記の歴史を持つ。

2006年に米国電池メーカ A123Systems のPack & System部門としてA123 Energy Solutionsが発足した。

独自のオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)ベースの正極材料「Nanophosphate」を使ったリチウムイオン電池や、蓄電技術/制御/設備を含めたパッケージ提供で実績のある電力会社向け蓄電システム「Grid Storage Solution」によるSI技術、および顧客の課題を解決する優れたシステム提案力が特徴。

2012年10月に連邦破産法11条の適用を申請した。同年12月に行われた同社の資産売却の入札で、NECと 中国の万向集団(Wanxiang Group)が競合し、最終的には万向集団が2億5660万米ドルで落札した。

NECは2014年3月、その万向集団(Wanxiang Group)からA123 Energy Solutionsを約1億米ドルで買収すると発表した。
スマートエネルギー事業と統合してNEC Energy Solutions社として再出発した。

万向集団は、売却収入で、経営破綻した米国の高級プラグインハイブリッド車(PHV)メーカーFisker Automotive Inc.の資産を買収した。

その後、再生可能エネルギーの普及にともない、蓄電システム市場は拡大しているものの市場競争が激化しており、NEC Energy Solutionsは売上高が増加する一方で大規模な損失を改善できていなかった。

売上高 営業損益
2019年3月期 7700万米ドル -4,310万米ドル
2020年3月期 1億5240万米ドル -9,100万米ドル
2021年3月期 2億0730万米ドル -5,720万米ドル

NEC は2020年6月に、新規受注を停止し契約済プロジェクトの遂行および保守のみ継続することを決定した。

その後、事業収束プロセスと並行して株式譲渡の選択肢も検討した結果、LG Energy Solution への株式譲渡を決定した。

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LG Energy Solutionは買収したNEC Energy Solutionsを社名変更し、LG Energy Solution Vertech. Inc. とする。 競争力を強化するためシステムインテグレーション能力の内在化が必要だと判断し、買収した。

今回の買収をもとに、単純なバッテリー供給を超えてシステムインテグレーションまで提供する完結型事業とする。

ESS(エネルギー貯蔵)事業企画、設計、設置、メンテナンス等をすべて行う計画で、バッテリー、電力変換装置(PCS)を含めた必須資材などを統合し、ESS事業の最適化に至るまですべてのサービスを提供する。既存のバッテリー生産能力に、ESSシステム統合の管理力量が加われば、十分なシナジー効果が出せると判断した。

「今回の買収を通じ、顧客別の要求事項にオーダーメードで対応できるESS統合ソリューションの競争力を確保することになった」とし「差別化された技術と品質競争力をさらに強化し、世界のESS市場を主導していく」としている。

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