2006年8月アーカイブ

新日本石油は8月23日、サハリン1プロジェクトの権益者であるサハリン石油ガス開発株式会社(SODECO)から「サハリン・ソコール原油」を初めてスポット購入することを決定したと発表した。

「サハリン・ソコール原油」は中東軽質原油に類似した性状を持ち、パイプラインで結ばれた不凍港の出荷地 De-Kastri が日本から至近距離(航海日数:京浜地区まで3.5日)にあるなど、日本にとって極めて有望な石油資源。Sakhalin_4

購入数量は70万バレル(約11万KL)で、10月に到着する。鹿児島市の新日本石油の喜入基地で荷揚げする。

サハリン1はエクソン・モービル子会社のエクソンネフテガスが30%、サハリン石油ガス開発(株)(通称:SODECO)が30%、インドのONGCヴィデッシュ社が20%、ロシアのサハリンモルネフテガス・シェルフ社が11.5%、ロスネフチ・アストラ社が8.5%を出資する。

SODECOには石油公団50%、海外石油開発株式会社9.45%、石油資源開発株式会社9.45%出資している。
その他の出資者は以下の通り。
 伊藤忠商事 9.45%、丸紅 7.65%、伊藤忠石油開発 2.4%、インドネシア石油 2.4%、
 日商岩井 1.55%、帝国石油 1.4%、兼松 1.3%、コスモ石油 1.25%、
 出光興産 1.25%、住友商事 1.25%、トーメン1.2%

サハリン計画については 2006/6/6 「新・国家エネルギー戦略」発表 参照

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8月26日の日本経済新聞は「サハリン開発 ロシア、外資に圧力 投資に影響も」との記事を載せている。

ロシアのプーチン政権が、資源・エネルギーの国家管理を一段と強化しようとしているというもの。
サハリン沖の原油・天然ガス事業に対して、ガスプロムの同事業への参加比率を高めるのを狙い、従来の取り決めを見直すよう間接的に圧力をかけている。

ロシア政府は「サハリン2」でロイヤル・ダッチ・シエル、三井物産、三菱商事と生産分与協定(PSA)を締結しているが、「合意事項が守られていない」などとして四半期ごとの会計報告書を要求。違反に対して罰金を科す可能性を示した。

また輸出基地に通じるパイプライン建設についても環境監視当局から環境汚染の懸念があると指摘されていたが、8月中旬に工事を停止した。再開時期は未定。

ガスプロムはロイヤル・ダッチ・シェルが所有する55%の権益のうち25%超を西シベリアのガス田の権益と交換することで昨年基本合意したが、条件面で折り合っていない。日本勢の権益の一部取得も働きかけており、日本側も株式を一部手放す可能性はあるが、交渉は難航している模様。今回の工事中断は、権益拡大を狙うロシア側の圧力とみられている。

「サハリン-3」では当初エクソン・モービル等が開発免許を得ていたが、2004年に免許を剥奪、本年中に再入札の予定となった。
* 本情報を基に、2006/6/6 「新・国家エネルギー戦略」発表 でのサハリン-3以下の記載を更新した。

ロシア政府はまた、仏トタルがPSAを結んで開発するロシア北部のハリャガ(Kharyaga)油田・ガス田にも一部権益譲渡を要求するなど圧力を加えている。

  ハリャーガ[ヤマロ・ネネツ自治管区]
   1996年4月にロシア連邦政府が承認。
   出資比率はLukoil 20%、TotalFinaElf 40%、Norsk Hydro 30%、Nenets Oil 10%。

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同じく8月26日の日本経済新聞は、イランがアザデガン油田の開発権を持ちながら本格工事を始めない日本の国際石油開発に対して、「9月15日までに着工で合意できなければ、中国やロシアなどとの共同開発も考える」と警告したと伝えている。

王子製紙は29日、北越製紙との経営統合は「不成立の方向」と明言、TOBの条件変更は断念した。
北越に対して仕掛けている敵対的なTOBの成立条件である50%超の株式取得を目指したが、最大で3割程度しか確保できない見通し。

日本の大手企業同士としては初の敵対的TOBとなった買収劇は、買収を仕掛けた王子側の敗北となる。
三菱商事を説得できなかったことと日本製紙の参戦が誤算。

関係各社の推移は添付の通り。Gyokai

本件は非常に興味ある案件である。

日本の大企業による初めての敵対的TOBである。
北越の増資に応じた三菱商事は、王子製紙ともカナダでのパルプ製造事業などでパートナーの関係がある。
三菱商事は紙パルプ分野での地位強化を狙うとともに、再編に乗り遅れた三菱製紙(北越との提携を解消)と北越の再連携による建て直しを意図。
業界2位の日本製紙が王子による北越のTOBに反対し、北越株8.49%を購入。
王子製紙と日本製紙は元々、旧 王子製紙であった。添付図参照
北越製紙と、同業の大王製紙が公取委に対し、TOBが独禁法上、問題ありとの上申書を提出。

経緯と問題点

本年3月頃、北越の増設計画が国内市況悪化要因になるとして、王子が北越に増設自粛、経営統合を打診したと言われる。
   
北越はこれを拒否し、5月18日に新潟工場での塗工紙生産設備増設を発表。
   
7月3日、王子の会長、社長が北越製紙を訪問して経営統合の申し入れを行うと同時に、具体的条件(1株860円でのTOBを含む)を盛り込んだ経営統合提案書を提出。
(但し、王子は取締役会決議をしておらず、北越は正式提案とはみなさないとした)
   
7月19日、北越は買収防衛策の導入を決定。
  (王子は、王子の提案後のもので、本件には有効でないと主張、北越は7月3日の提案は正式提案でないので有効と主張。
 なお、北越の独立委員会は、王子からの情報開示がないとして、防衛策発動を提案したが、北越ではペンディング扱い)
   
7月21日、北越は三菱商事に対する第三者割当増資と、同社との業務提携を発表
  ー 三菱商事は1株607円で約23%を引き受け、合計約24%の株主となる。
  (王子の1株当たり860円のTOBが分かっていて、607円で三菱商事に割り当てるのは妥当かどうかが問題。
   増資を前提にすれば、これは800円に相当。
   三菱商事が事前にTOBの件を知っておれば、三菱も問題となるが、同社では本件を聞いていなかったとしている。)
  (増資資金の使途は工場増設であることが明確なため、買収に対する取締役の身分保証のためとはみられない可能性が高い)
   
7月23日、王子製紙がTOBを発表。
   第三者割当増資と業務提携の解消を前提に、1株860円で 50.1%のTOB。
   (増設資金は融資を約束)
 
経営統合の趣旨(サマリー)                                      
 世界第5位の紙・パルプメーカーの誕生
 ・ 紙・パルプ業界における存在感ある地位を確立
 ・ 規模の経済によるコスト削減
 ・ 豊富な資金力を活かした設備投資・資源確保投資
 戦略的ベストマッチ
 ・ 地域的補完:生産・販売体制の最適化
 ・ 首都圏への効率的な製品供給
 ・ 商品ラインナップの充実
 会社を跨いだスクラップ&ビルドによる生産拠点の最適化
 ・
北越製紙新潟工場への集約化
 ・ 集中投資による生産性向上
 ・ 北越製紙の大型新鋭設備(N9)投資の有効活用
 北越製紙株主に対する魅力的な提案
 ・ 公表前営業日(2006年7月21日)終値株価に対して約35%の高いプレミアム 
 
現金による全株取得。全株主に売却機会
 ・ 北越製紙の業務・資本提携が撤回され次第、迅速に実行可能
 全ての関係者にメリットをもたらす経営統合
 ・ 王子製紙株主への貢献
 ・ 北越製紙従業員にとって更なる活躍の機会
 ・ 地域経済への貢献
   
8月1日、王子製紙、北越の第三者割当増資を前提に、1株800円でのTOBを発表。
   
8月3日、日本製紙グループ本社が、北越の株式8.49%を取得したと発表。
    8月8日購入完了  18,676千株 8.85% 15,185百万円
    平均単価 813円
(TOB不成立の場合、株価が200円下がると、37億円の含み損が発生する。
 競争相手の北越買収阻止のためだけのための損失負担を株主にどう説明するか)
   
8月7日、三菱商事への第三者割当増資 完了。
  (三菱商事と日本製紙を合わせ、保有比率が3分の1を超える可能性が高まる。=王子による北越統合阻止が可能)
   
8月9日、北越製紙が「王子製紙による経営統合案についての所見」を発表
  北越製紙の自主経営と株主価値向上について
 ~王子製紙による経営統合案についての所見~

弊社と王子製紙は株主価値向上のための発想が全く異なる

北越製紙の発想
 ・成長商品に特化
   ・得意分野への集中
   ・専門メーカーを志向
 ・シェア拡大より効率性を重視
 ・自律的な成長と互恵精神に
  基づく他社との事業提携
弊社のDNA
 ・新しいことに挑戦するパイオニア精神
 ・高い自主性と創意工夫
   
王子製紙の発想 
 ・総合メーカーを志向
   ・フルライン化による取引先
    への影響力増大
 ・規模拡大と市場プレゼンスを重視
 ・他社との統合をてこにした
  リストラクチャリングの推進
王子製紙のDNA
 ・業界の盟主を志向
 ・拡大志向
         
 王子製紙の一方的な提案は、弊社のDNAの崩壊につながる危険をはらんだ内容
   
その後、多くの株主がTOBに応じない旨表明。
  また、仮に王子が50.1%を取得しても、1/3の反対で重要事項が通らず、統合はほぼ不可能。

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なお8月28日、北越製紙が韓国の製紙大手、啓星製紙グループと提携することが明らかになった。2008年稼動の新潟工場の35万トンの大型設備を生かして啓星に印刷紙を供給し、啓星は老朽設備を廃棄するというもの。
北越の増設は、国内の紙市場が頭打ちとなる中で需給緩和に繋がると指摘され、王子は統合により自社の老朽設備を廃棄するとしているが、これへの対抗策となる。

8月29日、王子は北越に対抗して新設備を建設し、老朽設備を廃棄する意向を明らかにした。

 

王子は当初は過剰設備対策として北越に増設断念を働きかけ、増設決定後は経営統合により自社の老朽設備廃棄を考えたが、結果としては需要頭打ちの中で供給能力が更に増えることとなり、市況悪化は避けられず、価格競争の消耗戦が続くとみられる。

製紙大手の設備建設計画
社名 工場 投資額
(億円)
新設備の
年産能力
(稼働時期)
王子製紙 富岡工場
(徳島県阿南市)
500-600  30万-35万トン
 (08年後半)
日本製紙 石巻工場
(宮城県石巻市)
 630  35万トン
 (07年11月)
大王製紙 三島工場
(愛媛県四国中央市)
 450  28万8000トン
 (07年8月)
北越製紙 新潟工場
(新潟市)
 550  35万トン
 (08年末)

また、元々は同根の王子と日本製紙という業界1、2位会社が敵対したこと、大王製紙が下記の通り公取委に上申書を出すなど、業界としてバラバラの状態になっており、業界安定には時間がかかると思われる。

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独禁法問題

公正取引委員会は8月3日、本件が独禁法に抵触しないかどうか任意審査を始めたことを明らかにした。

王子は公取委に事前相談していたが、公取委が見解をまとめる前にTOBに踏み切ったため自主的な審査に切り替えたもの。
審査の結果、問題があれば、設備売却などを求める。
日本製紙の北越株取得は「議決権べースで10%未満なら審査対象にならない」としている。


北越製紙は8月17日付けで公取委に対して、「統合は独占禁止法上の問題がある」などとする上申書を提出した。

両社が統合すれば、ティッシュペーパーの箱などに使われる白板紙や印刷・情報用紙のシェアが高まり、価格支配力が強くなりすぎると主張している。
また、北越が新潟工場で計画している新製紙機の設置を見直すよう、王子が繰り返し圧力をかけてきたとして、この点も調査を求めたという。

大王製紙は8月1日に公取委に対し、「敵対的TOBに関する当社の基本的見解」を提出したが、18日に正式に上申書を提出した。
業界第3位メーカーとしての立場のみならず、北越製紙等から白板紙を購入している需要家としての立場から上申書を提出したとしている。
内容は以下の通り。添付資料も同社が提出したもの。

1. 北越製紙の主力商品である印刷・情報用紙及び白板紙について、公正取引委員会の企業結合に関するガイドラインによれば、本件 経営統合により市場において著しい競争制限が生じるので、独占禁止法に違反することは明らかである。
   
2. 製紙業界は現状において、すでに少数の有力メーカーによる高度な寡占化・複占化が進み、閉鎖的な業界となっている。本件統合により、白板紙及び塗工紙・微塗工紙のみならず紙全体において「独占的状態」に極めて接近した寡占(複占)状態が形成されてしまう。
   
3. 紙商品の販売及び配送を担う代理店・卸商の多くが、複数メーカーの製品販売の共通代理店であることから、その取扱いシェアの高いメーカーが代理店・卸商を実質的に支配する。本件経営統合により王子製紙が各代理店・卸商での取扱いシェアを高めることで流通に対する支配力が一層強化され、他メーカー品の販売を阻害する市場構造が更に進む。

<品種別の王子製紙他のメーカー別生産シェア> (単位:%)

         印 刷 用 紙 情報用紙   白 板 紙
非塗工 塗 工 微塗工 塗工・
微塗工計
小 計 マニラ
 ボール
白ボール 小 計
王子製紙グループ  26.8  32.5  36.3   33.4  30.6   26.2   31.9   49.5   42.6
北越製紙   9.3  11.4   4.6    9.8   9.6    1.2   26.9   12.8   18.3
王子+北越  36.1  43.9  40.9   43.2  40.2   27.4   58.8   62.3   60.9
日本製紙グループ  27.8  29.1  39.5   31.6  30.0   46.0   26.0   11.5   17.2
上記の合計  63.9  73.0  80.4   74.8  70.2   73.4   84.8   73.8   78.1

 

BPが石油化学に参入したのは、1947年にBP(当時はAnglo Iranian Oil) ウイスキーメーカーのDistillers とのJV British Petroleum Chemicals を設立したのがきっかけである。

 

The Distillers Company (DCL)は1877年に設立された会社で、スコッチウイスキーと副産品としてイーストや工業用アルコールを生産していた。

同社は第二次大戦前に、アルコールを利用して化学分野への進出を決定した。

・1937年 
  ペイントや熱硬化性樹脂のメーカーの
British Resin Products Ltd を買収
・1939年 
 
British Xylonite と50/50JVのBX Plastics Ltd を設立

・1941年
 
F.A.Hughes & Co(フェノール、セルローズアセテート、PVC等を生産)の48%を取得
・1947年Distillersmap_1
 
F.A.Hughes & Coの100%を取得し、British Resin Products Ltd に統合 
 Barryに工場建設

 
PS、PVCに関心を持ち、
British Resin Productsで小規模生産


・1945年 
 
DCLB F Goodrich が55/45のJV British Geon Ltd を設立
 BarryでPVC(と後にニトリルゴム)を生産

◎1945年、英国政府はアルコールからのアセチレン生産に関する特典を廃止、
  化学原料の石油への関税を免除
  → DCLは糖蜜からのアルコールから石油への原料転換を決める。

・1947年
 
DCLAnglo Iranian Oil Company(のち、BPと改称)が50/50のJV British Petroleum Chemicals を設立(1956年とBritish Hydrocarbon Chemicals 改称)
 
Grangemouth に工場を建設、DCLの化学事業に原料を供給

・DCL、Phillips Petroleum からHDPE技術の独占権を取得、Grangemouth でHDPE生産、British Resin Productsで販売   

・1953年
 
DCLとDow Chemical が55/45(後、50/50)のJV Distrene Ltd を設立
 BarryでPSを生産

・1959年
 
British Xylonite の残り50%と、持ち主のBX Plastics Ltd を買収
 ◎
BX Plastics Ltd ではPS、PVCを生産しており、両JVと競合

・1961年
 
DCLとUnion Carbide が50/50JV Bakelite Xylonite Limited を設立
  DCLは
British Xylonite/BX Plastics を拠出
  UCCは
Bakelite Ltd を含むUCCの英国のプラスチック事業を拠出
  
* Bakelite Ltdについては 2006/2/15 「プラスチック100周年」 参照

1966年になって、DCLの取締役会は30年間続いた化学事業から撤退し、元のウイスキー事業に専念することを決めた。
その後の交渉の結果、1967年に以下の通り決定した。 

BPが引き受け(DCLパートナー持分を含め)    
事業名 パートナー 製品
British Hydrocarbon Chemicals DCL/BP 石化原料
HDPE DCL100% HDPE
British Resin Products DCL100% 諸製品
British Geon Ltd DCL/Goodrich PVC、ニトリルゴム
Bakelite Xylonite Limited DCL/UCC British Xylonite/BX Plasticsの事業
UCCの英国のプラスチック事業
 
Dow が引き受け    
Distrene Ltd            DCL/Dow    PS                  

なお、DCLは1986年に敵対的買収で Guinness に吸収された。

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BPはこれを基にその後、石化事業を拡大した。

BPはその後、Barry工場の操業を停止、各事業は個別に売却された。
Grangemouth
はその後もBPの英国の拠点であった。

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BPは2005/4/1、石油化学の大半をInnoveneとして分離、2005年末にIneosに売却した。
 2006/6/14 
事業買収で急成長した化学会社」 参照

但し、PTAとその原料であるパラキシレン、酢酸、及び中国でのエチレンJVはその後もBPのコア事業である。
 2006/7/26 
BPが韓国のPTA事業から撤退 参照

 

参考資料 http://www.plastiquarian.com/styr3n3/pqs/pq10.htm
       
(Plastics Historical Societyのホームページ 
                     
http://www.plastiquarian.com/ から)

 

8月6日、BPは油送管に深刻な腐食と小さな原油漏れを発見し、プルドー湾の油田の操業を一時停止すると発表した。
同油田はBPがConocoPhillips、ExxonMobil と所有権を共同保有するもので、日量40万バレル、米国内原油生産量の約8%を占める。Transalaskapipeline

BPは11日、点検の結果、プルドー湾油田の西部地区の石油生産を継続すると発表した。全面稼働すれば日量20万バレルが生産される。

同油田はアラスカの北側のプルドー湾にあり、1968年に確認された北米最大の油田。Trans-Alaska-Pipeline が1977年に完成、プルドー湾からアラスカを縦断してバルディーズ港までの800miles を輸送する。

ーーー

BPは1909年に William Knox D'Arcy がペルシャ国王の認可を得てペルシャの油田探査を開始したのに始まる。
しかし、資金繰りが続かず、
Burmah Oil Companyが肩代わりした。
1909年に油田を発見、Anglo Persian Oil (APOC) が設立された。

その後の資金難に当たり、英国海軍に石油を供給、英国政府が2/3の株式を取得した。

1935年 Anglo Iranian Oil に、1954年 The British Petroleum Co Ltd. に改称した。

ーーー

現在のBPがあるのは、北海油田とアラスカ油田の発見によるところが大きい。
北海油田は
1959年にオランダが発見したが、1965年にBPは英国海域で West Sole gas fieldを発見した。

アラスカではBP10年の探査の結果、1969年にPrudhoe Bayで油田を発見した。
BPは米国の同油田の開発に当たり、Standard Oil of Ohio(ソハイオ)と提携することを決めた。
ソハイオが同油田におけるBPの権益を取得、BPは見返りに
ソハイオの株式25%を取得した。

その後、1987年に BPはソハイオの残りの株式を取得、同時にイギリス政府がBP株(31.5%)を市場に放出し完全民営化した。

1999年、BPはAmocoと合併し、BP Amocoとなる。

2000年、BPはARCOと合併、社名をBPに変更した。

なお、BPが石油化学に参入したのは、1947年に当時のAnglo Iranian Oil ウイスキーやアルコールのメーカーのDistillers とのJV British Petroleum Chemicals を設立したのがきっかけで、同JVは1956年にBritish Hydrocarbon Chemicals と改称した。
(詳細は次回)

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ところで、BPが合併・吸収したソハイオ(Standard Oil of Ohio)、Amoco、ARCOは、いずれもロックフェラーのStandard Oilから分離した会社である。プルドー湾油田のパートナーのConocoPhillips、ExxonMobil も同様である。

アメリカの石油王 John Davison Rockefellerは, ニューヨーク州の生まれで農民出身だが、クリーブランドで石油精製事業に成功する。
1870年1月10日にスタンダード・オイル・オブ・オハイオを創設、アメリカ全製油量の10%を握った。その後、次々と合併を行って1879年にはアメリカの全
石油精製の90%を独占した。その過程で弱小企業を倒産に追いこむなど世論批判を受けた。

1890年にアメリカ合衆国下院議会がシャーマン反トラスト法を可決、これがアメリカの全ての独占禁止法の源である。

1911年、スタンダード・オイルは分割された。

スタンダード・オイルの後継会社と、その後の姿は下記の通りである。

分割会社 その後 現在
Standard Oil of Ohio(ソハイオ)    BP
Standard Oil of Indiana(スタノリンド) アモコ
Atlantic & Richfield Atlantic Richfield(ARCO)
→Atlanticはサノコが買収
Standard Oil of New York(ソコニー) ヴァキュームと合併
→モービル
エクソンモービル
Standard Oil of New Jersey(エッソ) エクソン
Standard Oil of California(ソーカル) Gulf Oilと合併
→シェブロン
テキサコを買収
→シェブロンテキサコ
シェブロン
Standard Oil of Kentucky ソーカルが買収
Continental Oil (Conoco) Phillipsと統合 コノコフィリップス

韓国経済は3大指標、成長率・物価・経常収支が同時に悪化している。

投資・消費・雇用が不振の中で物価が上昇しており、経済の支柱となってきた経常収支までが原油価格の高騰とウォン高の影響で悪化し始めた。 5年前は1ドル1,300ウォンだったのが、今では1ドル970ウォンとなっている。

LG経済研究院は、「三重苦」の影が韓国経済に忍び寄るなか、景気が「長期沈滞」に陥る可能性を警告している。

朝鮮日報によると、韓国の上場企業は、原油高とウォン高などの影響で、今年上半期に10社中3社の割合で赤字となった。
特に製造業は輸出採算性の悪化で、純利益が13.7%減少した。

 

LG Chemの本年第2四半期(4-6月)の実績は以下の通り。本年第1四半期は比較的好調であったが、第2四半期になって大幅に悪化している。

       (単位:億ウオン、1ウオンは約 0.12円)
     単独決算    連結決算
05/2Q 06/1Q 06/2Q 05/2Q 06/1Q 06/2Q
営業損益  856  656  480 1,787 1,405  885
経常損益 1,302  986  465 1,654 1,453  672
純損益  876  682  450 1,102  994  617

Lgpl 単独決算の営業損益を部門的にみると、添付の通り、石油化学が前年第2四半期に690億ウオンの黒字であったのが、4Qから順次減少し、本年第2四半期には55億ウオンの赤字に転落している。

(I&E Materials は Information & Electronic Materials)

このほか、連結会社のLG Petrochemical の営業損益も前年同期 578億ウオンの黒字が本年は 112億ウオンに大幅に減少している。

同社では特にポリマー事業で、採算の悪化から減産もありうるとしている。

 

中国のアルミ業界の1、2位メーカーが拡大競争を繰り広げている。

2001年設立の国営Aluminum Corporation of ChinaChalcoは現在150万トンのアルミニウムを約300万トンに、833万トンのアルミナを1200万トンにアップすることを狙っている。Aluminumchalco
同社は中国でアルミナとガリウムを生産する唯一の会社でアルミニウムの最大のメーカーで、
広西壮族自治区、貴州省、河南省鄭州とZhongzhou、山東省、青海省、山西省に工場を持っている。

同社は事業買収での能力増を図っている。

本年8月、白銀紅鷺アルミから甘粛華鷺アルミ(Gansu Hualu Aluminum )の株式51%を買収すると発表した。同社は年間127千トンの電解アルミを生産している。

同社は2004年6月に蘭州アルミ(Lanzhou Aluminum との間で29%の株式保有で合意した。同社の能力はアルミが209千トン、アルミナが34千トン。
本年
3月には 遼寧省の撫順アルミ(Fushun Aluminum) の全株を購入した。能力 140
千トン。
6月には貴州省の遵義アルミ(Zunyi Aluminum)の株式66.4%を取得した。能力 113千トン。

更に7月には、臨沂江泰アルミと山東華盛江泉熱電から、山東華宇アルミ(Shandong Huayu Aluminum and Power Company )の株式をそれぞれ、40.69% 14.31%買収し、55%の株主となった。同社の能力は100千トン。

同社はまた昨年12月に、ベトナムのVietnam Charcoal Groupとの間でDak Nong Project を共同で行う旨の覚書を締結した。
同計画はボーキサイト採掘、アルミナ製造と、併せて発電及びアルミ製錬のFSを行うもので、アルミナ製造は2段階に分かれ、第一段階で190万トン、第二段階ではこれを400万トンにするというもの。

 

これに対して第二位の青銅峡アルミ(Qingtongxia Aluminium1964年設立で寧夏回族自治区に本拠を置く。同社は現在43万トンの能力を2010年までに70万トンに倍増する計画で、同社は外資との提携で拡大を図っている。

2004年3月、青銅峡アルミはカナダのAlcan 及び寧夏電力開発投資との間で合弁契約を締結した。Alcanは150百万ドルを投資し、既存の150千トンの製錬所と所要の電力の50%の権利を得る。加えて、追加の投資により、現在建設中の250千トン精錬所の権利を80%まで取得するオプションを得る。

本年8月、同社はスイスのコモディティ商社、Glencore International との間で、Glencoreによる出資の覚書を締結した。詳細については今後のDue diligennce により決まる。

 

Glencore International は1974年鉄、非鉄、鉱物、原油を扱う商社として設立された。その後オランダの穀物会社を買収して農産物も扱うようになった。
鉱物資源については買収により単なる商社から多様化した資源企業に成長した。

アルミ、アルミナについては傘下に以下の子会社をもつ。

  名称 立地 出資比率 JV相手 能力
アルミ Columbia Falls Aluminium Montana 100%   168,000 MT
Evergreen Aluminium Washington 100%   115,000
Kubikenborg Aluminium AB Sweden 100%   102,000
Century Aluminum   29% 上場(持株会社) 下記
アルミナ Aughinish Alumina Ireland 100%   1,850,000 MT
Windalco Alumina Jamaica 93%   1,265,000
Alpart Alumina Jamaica 65% Hydro Aluminium 35% 1,650,000
Eurallumina Alumina イタリア Sardinia 44% Rio Tinto Group 56% 1,080,000

Century Aluminumは持株会社で、以下の資産を持つ。

  名称 立地 出資比率 JV相手 能力
アルミ Ravenswood Aluminium Ravenswood, WV 100%   170,000 MT
Mt. Holly Aluminium Goosecreek, SC 49.7% Alcoa 50.3% 222,000
Hawesville Aluminium Hawesville, KY 100%   244,000
Nordural Aluminium Iceland 100%   90,000
to 180,000 by 2006
アルミナ Gramercy Alumina refinery Gramercy, LA 50% Noranda 50% alumina 1,200,000       
Smelter grade alumina 80%
Chemical grade alumina 20%

 

 

インド国営Oil and Natural Gas Corporation (ONGC)は石油化学進出を決めた。88日の取締役会でGujarat州Dahejに3400億円を投じて世界規模の石化コンプレックス建設計画を承認した。インド政府もこれに反対していない。Dahej

計画ではDahej Special Economic Zone年産110万トンのエチレンと、誘導品としてHDPE、LLDPE、PP、SBRを製造する。2010年央のスタートを目指す。

現在ONGCがDahejで建設中のメタン/プロパン回収工場(東洋エンジが受注)のメタン、プロパンと、同社のHazira及びUran の製油所からのナフサを原料とする。

JV形態を考えており、同社で26%を所有する。Gujarat州石油会社(GSPC)がパートナーとして出資を希望している。州政府からもGujarat 産業開発公社が出資する。公社では同地に加工製品メーカーも誘致する。

 

これとは別に、ONGCは本年6月、Karnataka 州のMangaloreの子会社Mangalore Refinery and Petrochemicals Ltd (MRPI) と共同で新会社Mangalore SEZ を設立し、芳香族の工場建設に着手した。 MRPI の製油所能力を969万トンから1500万トンにアップし、増産ナフサを原料に、95万トンのパラキシレン、15万トンのベンゼンを生産する。

既存のインドのエチレンについては 2006/6/5 「インドのエチレン計画」 参照

 

 

中国でのダウの活動

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ダウは8月9日、中国でエポキシ事業で5年間で2億ドルの投資をすると発表した。

まず、江蘇省張家港市の揚子江国際化学パークの既存の工場に世界最大級の10万トンの液体エポキシ樹脂(LER)プラントを建設する。2009年スタートの予定。
同地では2003年5月にスタートしたエポキシ樹脂(converted epoxy resins=CER)
41千トンのプラントがあるが、これを2008年に34千トン増設し、75千トンに拡大する。
さらに、エポキシ原料のエピクロルヒドリンの新工場15万トンを新設する。場所については近く発表する。これは2010年スタート予定で、ダウのグリセリン法新技術を採用する。バイオディーゼルの製造で副生するグリセリンを原料とするもの。
(本年1月にソルベーが菜種油からのバイオディーゼル製造での副生グリセリンを原料とするエピクロ製造を発表している。)

また、ダウは上海の張
江ハイテクパークに2007年完成予定で R&Dセンター及び ITセンターを建設中だが、これに加え、ダウ・エポキシではアジアでの応用開発及び技術支援のため、グローバル応用開発センターを設立する。

(ダウ・エポキシはアジアでは他に、日本の衣浦に40千トン、韓国の亀尾(Gumi)に30千トンのプラントをもっている。)

ーーー

ダウは張家港市ではエポキシレジンのほかに、SBラテックス、PS、「スタイロフォーム」の工場をもっている。

SBラテックス工場はダウの世界19工場の最新のもので2002に建設されたが、需要好調のため20045月には増設を決定している。

PSを製造するのは旭化成との50/50JVの斯泰隆石化(張家港)有限公司で、1998に設立、200211月に商業生産を開始した。HIPS 12万トンを製造する。
PSを中国の需要家及び東南アジアの日系需要家に販売するのが、同じく旭化成との50/50JVのスタイロンアジアで1994年に設立された。
旭化成は8月8日、両社からの撤退を発表した。
2006-8-11 「
旭化成、ダウとのPS合弁から撤退」 参照

ダウは2006年4月に、同地に新しいPOベースのグリコールエーテル工場を建設すると発表した。能力は12万トンで、2008年後半の完成を目指す。

本年8月8日、ダウとコーニングの合弁会社ダウコーニングとドイツのワッカーは、合弁会社ダウコーニング(張家港)が中国政府からシリコーン原料のシロキサンの張家港市での工場建設の承認を得たと発表した。
なお、TECがクロロシラン製造プラントのEPCマネージメント業務(設計、機器資材の調達および工事に関するマネージメント役務提供業務)を受注している。
両社は別途、同地に乾式シリカ工場を建設運営する。
ダウコーニングはシロキサン工場の建設、ワッカーは乾式シリカ工場の建設に責任を持つ。
 

張家港市については2006/6/9 「江蘇省・張家港市(Zhangjiagang」 参照

ーーー

ダウは浙江省寧波市にポリエーテルポリオール工場を持っている。
1989年に中国の浙江化学工場とのJV、Zhejiang Pacific Chemicals Corporation
を設立し、事業を開始し、その後、ダウ100%としている。
現在の能力は軟質及び硬質ポリオール 48千トン(他に、
formukated polyol 24千トン)。

 

ダウは逆浸透膜やイオン交換樹脂などの水処理事業を持っているが、本年6月、浙江省湖州市の欧美環境工程有限公司(OEE)の株を買収した。
同社は
限外ろ過(微孔を有する高分子膜を用い、コロイド状粒子や有機性物質を加圧ろ過する方法)、膜分離活性汚泥処理、電気再生式脱イオン装置などの技術をもち、ダウは欧美環境を世界、特にアジア地域の水処理プロジェクトの設備プロバイダーとし、世界での競争力を強化する。

ーーー

19976月、ダウはSINOPEC及び天津石化(SINOPEC子会社)と、天津でエチレン及び誘導品のコンプレックスを建設する覚書を締結した。

当初計画ではエチレン800~900千トン、プロピレン400~450千トン、L-LDPE 270千トン、VCM 500千トン、PVC 250千トン、SM 600千トン、PO 250千トン、PG 50千トン、エポキシ 120千トンなどであった。

しかし、2002年になって、ダウは経済環境が整わないとして、完成は2010年以降になるとの説明をし、他社の計画が進行するなかで、最終的に撤退した。

同計画はその後、SINOPEC天津分公司単独の100万トンエチレン計画として承認を受け、本年6月26日、天津浜海新区の大港石油化学基地で着工した。
2006/7/3 
SINOPEC天津分公司の100万トンエチレン計画着工」 参照

なお、本年7月26日にSINOPECとクウェート国営石油会社(KNPC)の広州市南沙経済開発区での石油精製プロジェクトが国家発展改革委員会の承認を受けた。
承認は石油精製能力12百万トンの新設だが、100万トンのエチレンコンプレックス建設も伝えられている。

本計画の交渉にはダウも参加していたとの報道もあり、今後ダウが参加するとの噂もある。
これが実現すれば、改めて中国の石油化学に本格的に進出することとなる。
2006/8/1 
クウェートの中国進出」 参照

ダウはまた、2004年12月に、中国の国有石炭最大手・神華集団との間で、陜西省楡林市で石炭からオレフィン(coal-to-olefin)を生産する計画のFSを共同で実施する契約を結んだ。大規模なオレフィンプラント建設のための経済性、市場分析、物流、技術等を検討する。

神華集団は1995年に設立された国有企業で、世界8大炭田の一つとされている神府東勝鉱区の開発・運営を担当しており、関連事業として鉄道、発電、貯炭設備、輸送設備を運営している。

 

 

 

SABIC Europe は先月末にドイツのGelsenkirchen工場でのHDPE 25万トンプラント建設でUhdeと契約を交わした。完成後は同工場にある10万トンプラントをスクラップする。インフラ整備を加え、投資額は2億ユーロとなる。

同社はもう一つのサイトのオランダのGeleen工場で52万トンのエチレンクラッカーを新設し、Gelsenkirchen工場でポリマーを増設する「Europe 1」計画を立てていたが、こちらは過剰投資が原因の建設費アップで経済性が問題としてペンディングとしている。

同社は3月にGeleen工場で14万トンのバイオETBEプラントをスタートさせている。バイオエタノールとイソブチレンからETBEをつくるもので、ガソリンに添加する。

 

SABIC Europe 2002年にSABICが22.5億ユーロでDSMの石化部門を買収したもの。Europeethylenepipeline_1  

オランダのGeleen工場にエチレン、HDPELDPELLDPEPPプラントを持つ。

ドイツのGelsenkirchen工場は、DSM199711月にHulsの子会社Vestolen GmbHを購入したもので、HDPEPPプラントをもつ。
Gelsenkirchen工場にはBPドイツのエチレンプラントがあるほか、
欧州エチレンパイプライン (ARG) でGeleen工場とつながっている。


各製品の工場別能力は以下の通り。
これらのほか、同社ではサウジのSABIC子会社で生産するメラミン、PVC、ポリエステル、PS等を販売する。

  立地 製法 能力(千トン)
2001 2005
エチレン Geleen (2系列)  1,250   →
PE    HDPE Geleen slurry   350   →
Gelsenkirchen slurry *   150   100
LDPE Geleen Tubular, autoclave   610   →
LLDPE Geleen Unipol, gas   300   →
Compact, solution **   120   →
合計  1,530  1,480
PP Geleen Innovene, gas   235   →
Mitsubishi-Yuka, slurry   320   →
Gelsenkirchen Innovene, gas   340   →
Huls, slurry *   100   →
Unipol, gas *   100   →
合計  1,095   →
ポリオレフィン合計  2,625  2,575
   
* Vestolen GmbH   
  HDPEは購入時は50千トンx3系列。その後、手直しで60千トンx2、100千トンx1としたが、2003年末に60千トンx2系列を廃棄した。
今回の
25万トンプラント新設時には残る10万トンプラントを廃棄する。
Innovene法PPは買収後に新設。
** LLDPEGeleen12万トンプラントはDSM ExxonMobil50/50JV として1996年に設立された Dex-Plastomers V.O.F で、ExxonMobilのメタロセン触媒を使用
   

なお、SABICDSMの石化部門買収に先立ち、イタリアのENIから、石油化学の100%子会社で当時の欧州の三大ポリエチレンメーカーの一つ、Polimeri Europa51%を買収する交渉をしていたが、途中で交渉が決裂した。
Polimeri EuropaENIUCC50/50 JVであったが、UCCDowの合併に当たり、ENIのポリウレタン事業のDowへの売却との交換でENI 100%とした。)

 

SABIC Europe Gelsenkirchen工場のHDPEについては「Vestolen A PPについては「Vestolen P という商標を使用している。
これは
Hulsの商標を引き継いだものである。

Hulsの歴史は古い。
1938年にドイツ政府の戦争準備のための4ヵ年計画に基づいて、スチレン・ブタジエンゴム Bunaの製造のため、I.G. Farben 74%Hibernia (当時は国営であったエネルギー会社Vebaの子会社の鉱山会社)26%出資でHulsが設立された。

Hiberniaはコークス炉ガスを供給、これからHulsがエチレンとアセチレンを製造、アセチレンからBunaを製造した。エチレンはEOにし、凍結防止などに利用した。

第二次大戦後、I.G. Farben はBayer、Hoechst、BASFに分割された。Hulsは占領軍からBunaの製造を禁止され、界面活性剤、塩ビ、 ワニス原料、PS、柔軟材などの生産を始めた。
現在、界面活性剤はSasol、塩ビはVestolitが引き継いでいる。PSはBPが引き継ぎ、その後Novaとの50/50JV NOVA Innoveneになった。)

他業種への進出に当たっては株を所有していたBayerから競合しないよう、注文がついたといわれている。

1950年代にHulsはPE(HDPE)、PP製造のため、同社の株の25%を所有していた Hibernia AGを通じてZieglerのライセンスを取得した。PE、PPの製造のため、HulsとHiberniaは合弁会社VESTOLEN GmbH を設立した。

1979 年にHulsはVebaの100%子会社となった。1988年にDynamit Nobel AG の化学部門を、1989年にRohm GmbH MMA事業)を、1991年にStockhausen GmbH (吸水性樹脂事業)を買収し、スペシャリティケミカルズに方向転換した。

1989年にHulsDegussaと合併してDegussa-Hulsとなった。
20006月、親会社Vebaはエネルギー会社VIAGと合併してE.On となり、Degussa-HulsVIAGの子会社SKW Trostberg と合併して、社名をDegussaに変更した。

2003年、E.On Degussa株の一部をRAGに売却、現在はRAGDegussaの主株主となっている。

HulsのPE、PP事業JVのVESTOLENは、1997年末、DSMが買収し、その後増強している。
DSMは1902に
国営炭坑会社Dutch State Mines として設立された。
1929年から
コークス炉ガスを利用した化学肥料製造を開始、化学事業に参入
1960年代に石油化学事業に構造転換した。
1989年に民営化を決定、96年に一般公開を完了した。
石化事業をSABICに売却した後、ロシュからビタミン、ファインケミカル事業を買収、現在は次の4つの事業を行っている。
Nutrition 
・Pharma
・Performance Materials
DSM Elastomers, DSM Engineering Plastics, DSM Resins and DSM Dyneema
・Industrial Chemicals
DSM Fibre Intermediates, DSM Melamine and DSM Agro

 

なお、Hulsの当初の株主であったI.G. Farben の承継会社のうち、BASFとHoechstもポリオレフィン事業を行っている。

このうち、PEについては、BASFは戦前にICIから高圧法PEの技術ライセンスを受け、戦後事業化した。
(ICI特許は日本で戦後、再審査の請求がないまま有効期限が切れたため、三菱油化がBASFからの技術導入で事業化できた)
HoechstはZieglerの中低圧法PE技術を世界で最初に事業化し、
Hostalenのブランドで発売した。(日本では三井石油化学がZieglerの技術を導入している)

両社のポリオレフィン事業はその後、多くの変遷を経て、Basellの一部となっている。

Hensen9

 

 

 

TVコマーシャルで「金鳥の夏、日本の夏」とやっている。

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殺虫剤で有名な「金鳥」は、商標であって会社名ではない。
製造販売しているのは大日本除虫菊株式会社である。同社の創業者が「鶏口となるも、牛後となるなかれ」を家訓としたため、これをもとに鶏の頭の図案と「金鳥」をTrade Mark としたものである。

蚊取り線香の原料は当初は除虫菊の粉であった。

除虫菊は中央アジアからペルシャ地方の山野に自生していた野菊で、赤花種と白花種の2種類があるが、白花種に除虫の効力があることを知り、これを最初に栽培したのはユ-ゴ-スラビアのダルマシア地方である。

これが後に北米に移植されて、カリフォルニアを中心としてかなり広い範囲でもっぱら防虫用を目的として栽培された。1885年頃にそれがわが国に伝えられた。

大日本除虫菊の創始者、紀州有田郡の上山英一郎は1885年に米国植物会社の社長に面会して珍しい植物種苗の交換を約束、翌年除虫菊を含む各種の種子を受け取った。
(上山家は紀州での大手の蜜柑業者で、紀州山勘蜜柑とうたわれ、東京では
イ片:にんべんの鰹節、山本の海苔と共に食通の間で三名物ともいわれていた当主は歴代上山勘太郎と称したため、山勘と呼ばれたもの)

上山英一郎は、その家に伝わる資力を投入し、これを農産物として
、地元有田郡ばかりでなく、瀬戸内の島々から中国九州に、さらに北海道の荒地にも除虫菊の栽培を説いてまわった。

その結果、最盛期の1935年の日本の収穫量は乾花換算で12,750トンにも達し、その75%は米国に輸出されるまでになっている。

ーーー

除虫菊は最初は米国での使用と同様、その乾花を粉にして炭火の上でくすべていたが、上山英一郎はこれを仏壇線香の中に練り込むことを考案した。1890年、世界初の棒状蚊取り線香を発明し、発売している。

しかし、仏壇線香ではすぐ消えてしまう。1890年に英一郎夫人が渦巻き型を着想、試作を続け、1902年に発売している。当時は手巻きで製造された。

ーーー     

日本の除虫菊生産はその後、戦中、戦後の食糧増産で激減した。
他方、ケニア、タンザニアでは1928
年に試作を行い、順次増産し、1933年からは輸出を始めた。1974/75年シーズンには収穫量は 15,300トンと最盛期の日本の収穫量を超えている。

ーーー
除虫菊がなぜ殺虫効果を持つのかは長い間分からなかったが、
1910年にスイスのチューリッヒ工科大学のH.Staudinger博士が除虫菊の有効成分を発見し、その化学構造式を発表した。教授はこれをピレトリンと命名し、それの虫の体内での作用や、温血動物には無害であることなどを発表している。
その後、StaudingerやL.Ruzicka、アメリカのF.B. La Forge らによって、ピレトリンⅠ&Ⅱ、シネリンⅠ&Ⅱが存在することを発見している。

La Forge1949年2月に、その類縁化合物の合成法も開発して特許を出願した。アメリカの殺虫剤協会はこれをアレスリンと名付け、アメリカ政府はこれを国有特許として開放し、Carbide & Carbon Chemicals Co.ほか2社が生産にあたることになった。
なお、これ以降開発された類縁化合物はピレトリン類という意味で
ピレスロイドと呼ばれる)

ーーー
このピレトリン説をいち早くわが国学会に紹介したのは京都大学の武居三吉教授で、武居博士はさらに色々の追試に研究員を動員した。

住友化学では戦後、復興とともに新分野の農薬部門へ進出を企てた。わが国農薬学の権威山本亮博士に種々意見を求め、東京・京都両帝国大学にそれぞれ技術者を一名ずつ派遣した。

京都帝大に派遣された松井正直博士は、かつて理化学研究所において、山本博士のもとで行なっていた除虫菊の花の有効成分の研究を継続した。そしてLa Forgeと同じアレスリンの合成に成功し、1949年10月にその使用特許を含む一連の特許を出願した。
しかしアメリカの出願より半年余り遅かったため、松井博士は米国法とは別個の方法の開発に努め、各工程にわたって特許を出願した。
(住友化学は最終的にはFMCから特許実施権を得ている)

住友化学ではこれをもとに、1953年大阪の酉島工場に月産100kgの設備を設け、厚生省の製造承認を得て、ピナミン(R)と名付けて、蚊取線香および殺虫剤メーカーに試験的に販売した。

しかし、その年は、ちょうど除虫菊の豊作年にあたり価格は大暴落した。当初のピナミンは、天然品の除虫菊と色合いや香りの違い、副原料との配合技術上の不安などが重なって、需要は全く伸びなかった。

1954年、和歌山の大同除虫菊の上山彦寿社長がピナミンを採用した。同氏は1943年に"渦巻線香打抜き"(7ペア自動打抜き)の特許を取得したが、使用するには至らなかった。たまたま洪水で工場が全壊したのを期に、社内の反対を押し切り、自動連続製造装置を採用するとともにピナミンに切り替えた。
他社もこれに追随し、ピナミン需要は次第に増加した。大日本除虫菊も当初、除虫菊にこだわったが、その後ピナミン使用に踏み切った。

(大同除虫菊はその後、「ライオンかとり」と改称、その後同名のよしみでライオン歯磨:現ライオンが買収、その後、日本ジョンソンが引き継いだが、現在は和歌山の地元企業が経営している)

ピナミンは、蚊取線香(燻煙)用に適していたが、エアゾール(噴霧)にすると、速効性(ノックダウン性能)で除虫菊の主成分ピレトリンに劣っていたので、速効性で優るピレスロイド化合物を開発、1965年にネオピナミン(R)として発売した。当初はクリスロン、後にはスミスリン(いずれも後記)などのKill剤と混合して使用する。

1963年にフマキラーが殺虫成分をマットに沁み込ませ電熱で放散させる電気蚊取り(ベープマット)を開発、販売した。
フマキラーは当初の社名は「大下(オオシモ)回春堂」で、1920年に殺虫剤「強力フマキラー」を販売した。フマキラーは「ハエ(
Fly)-蚊(mosquito)killer」から名付けたもので、1962年に商品名を社名にした。

日本人の生活様式の西洋化、テレビの普及等で線香、マット、エアゾールの需要が増え、ピレスロイドの販売は増加、輸出も拡大した。

なお、蚊取線香は戦前から日本のメーカーが東南アジアなどに輸出、現在世界各国で使用されている。
しかし、米国では室内利用についてEPAの承認が得られていない。EPAの考え方は、殺虫剤は対象害虫について使用するもので、人間がいる室内で、蚊がいてもいなくても常時使用するのは、この考え方に反するというもの。

ーーー

その後の住友化学の動き

1969年 英国NRDC(National Research & Development Corp.)から新しいエアゾール用ピレスロイド(一般名レスメトリン)を導入、クリスロン(R)として発売
1972年 大日本除虫菊が開発したフラメトリン(ピナミン-D)を生産、同社に供給
1973年 光学活性体ピナミン-フォルテの発売
      (原料菊酸には光学異性体があり、d-体にのみ殺虫効果がある)
1975年 スミスリン(R)発売(クリスロン代替)
1976年 農業用ピレスロイドのスミサイジン(R)の試験販売
1977年 NRDCからパーメスリンを導入、エクスミン(R)として発売

 エクスミンはゴキブリ用を中心にエアゾールや蒸散・燻煙剤(アースレッド、バルサンジェット等)に広く使われた。
 ゴキブリが明るいところに飛び出してきて死ぬ「フラッシング効果」が有名になった。

 その後も新しいピレスロイドが次々に開発、販売されている。

 金鳥の「タンスにゴン」も常温で蒸散する住友化学のピレスロイド、エンペンスリン:ベーパースリン(R)やプロフルトリン:フェアリテール(R)を使用している。

ーーー  

住友化学では酉島工場が市中にあり周囲が住宅となったため、需要の増加に対応するため、青森県三沢市に新工場を建設した。
将来の需要の伸びを考え、能力を倍増したが、1974/75シーズンにケニア、タンザニアの天然除虫菊が過去最高の収穫となったため、長期間低操業が続くと懸念された。

しかし工場完成前に旱魃のために両国の天然除虫菊の収穫が激減し、穀物への転作もあってその後全く勢いがなくなった。このため1978年に工場が完成した時には倍増能力が売り切れるという状況になった。

農業用ピレスロイドは大分工場で生産されている。

ーーー

ケニア、タンザニアの除虫菊生産は激減したが、現在、中国の雲南省で大量に栽培されている。
 
佐々田葉月の中国雲南省除虫菊視察記

日本では現在、尾道市因島の重井町馬神、フラワーセンター南側、白滝フラワーライン展望台の3箇所で、種子の保存と観光用として栽培されている。
http://www.city.onomichi.hiroshima.jp/kanko/data_inno/f_jochu.html

1929年、ユーゴスラビア国王アレキサンドル一世は、同国原産の除虫菊の用途を開発したことを評価し、上山英一郎に大阪駐在ユーゴスラビア王国名誉領事の称号を贈った。
ユーゴスラビアは第二次大戦後、チトー大統領が6つの共和国と2つの自治州によって構成されるユーゴスラビア社会主義連邦共和国を建設したが、チトーの死後、分裂、2003年ユーゴスラビアはセルビア・モンテネグロとなった。
2004年、現在の
上山直英社長が、在大阪セルビア・モンテネグロの名誉総領事に就いている。

ーーー

2005年8月、住友製薬は大日本除虫菊に対して、一般用医薬品を扱う住友製薬の全額出資子会社・住友製薬ヘルスケアの全株式を譲渡した。
住友製薬は大日本製薬との統合を控え、医療用医薬品への集中を図るもので、大日本除虫菊は一般用医薬品事業への本格参入を図るもの。

ーーー

◎ 蚊取線香についてのトリビア 金鳥の線香は左巻き、他社は全て右巻き

ーーー

参考
 
 西川虎次郎 「蚊遣り水」   医薬ジャ-ナル 1974/5 
  住友化学 社史
  大日本除虫菊ホームページ 
http://www.kincho.co.jp/

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お知らせ

2006/8/8 杉本信行著 「大地の咆哮 元上海総領事が見た中国」に「付記」を追加しました。
   
8月12日までのバックナンバーを見易く整理しました。下記をご覧ください。
  http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm
   
ホームページに下記をアップしました。半年前の作成です。
  日本の石油化学最近25年史
   

 

2006/6/23 「中国の石炭化学」の中で、下記プロジェクトをあげた。

内蒙古・新奥集団XinAo Group
2006年、Ordos(鄂尓多斯)でメタノール計画

 第1期 2007年末までにメタノール(600千トン)とDMT(400千トン)
 第2期 2010年までにメタノール 1,800千トン

世界銀行グループの国際金融公社(IFC)と中国の新奥集団XinAo Group)はワシントンで2日、本事業を支援するため、総額1億4500万ドルの包括融資契約に調印した。

IFCは新奥集団の株式(1千万ドル以内)を購入するとともに、新奥集団に4千万ドルの融資を行う。
また、新奥集団が他の商業銀行から9500万ドルのシンジケート・ローン(最終的に総額1億4千万ドルに達する見込み)を受けられるよう支援をする。

新奥集団はこれらの資金で内蒙古自治区の鄂爾多斯(オルドス)市で、石炭から年産
60万トンのメタノールを、メタノールから年産40万トンのジメチルエーテル(DME)を生産する。建設投資額は3億ドルで、4月に中国政府の認可を得ている。

IFCでは、本事業は中国のエネルギー需要の新しいソースであるとともに、家庭での料理や暖房用燃料をクリーン燃料に代替することで住民の健康に役立つとしている。中国では10億人以上が石炭や材木でストーブを燃やしており、毎年100万人以上が空気汚染で死亡、その6割以上は室内のスモグが原因としている。

新奥集団は1989年に設立された綜合エネルギー会社。http://www.xinaogroup.com/en/about/about.jsp

なお、中国政府はこのたび、多数のプロジェクトの乱立で過剰能力となることなどを懸念し、規制を行うことを決めた。
石炭からのメタノール又はDMT生産計画については年間100万トン未満のものは承認しないとしている。
2006/7/21 「
中国政府、石炭化学を規制」 参照

旭化成ケミカルズは8月8日、同社とダウ・ケミカルのJVのスタイロンアジアと斯泰隆石化(張家港)有限公司の旭化成ケミカルズ持分を、ダウ・ケミカルに譲渡することに合意したと発表した。

スタイロンアジア
 英文名: Styron Asia Limited
 株 主:旭化成ケミカルズ、ダウ・ケミカル両社折半(50/50)
 設 立: 1994年
 事 業:PSの中国顧客および東南アジア日系顧客へのマーケティング会社
 本 社: 香港
  
斯泰隆石化(張家港)有限公司
 英文名: SAL Petrochemical (Zhangjiagang) Co., Ltd.
 株 主:旭化成ケミカルズ、ダウ・ケミカル両社折半(50/50)
 設 立: 1998年設立、2002年11月商業運転開始
 事 業: ポリスチレンの製造・販売
 能 力: 120千トン/年、HIPSを製造
 本 社: 中華人民共和国江蘇省張家港市

譲渡理由として同社では、新中期経営計画 「Growth Action-2010」において、PS事業を、差別化、特殊化により付加価値アップを指向していく事業と位置付けており、この方針に基づき、汎用用途が主体であるアジアの2つのPS共同出資会社についてはダウ・ケミカルに譲渡することとしたとしている。今後、PS事業は、PSジャパンを事業主体として更なる差別化、特殊化戦略を推進するとしている。

* 新中期計画ではグローバル型事業拡大戦略の対象として、ケミカル系では、
  汎用系は優位性、独自性のある事業の拡大で、プロパン法ANM、直メタ法MMAなど
  高機能系では技術力に基づく未開拓・有望市場として、スパンデックス、メンブレンバイオリアクター、エラストマーを
  あげている。

同社は、旭化成グループとダウ・ケミカルは従来から友好的な関係にあり、今後も他分野での新たな提携の可能性を協議していく予定としている。

これは日本の化学企業での中国からの撤退の第1号である。

旭化成とダウがPS事業で別れるのは、これが2度目である。

最初は旭化成による旭ダウ(50/50JV)の吸収に伴うもので、当時の両社の事情が合致したことによる。

ーーー

1952年7月、旭化成とダウケミカルの50/50JVの旭ダウが設立された。

旭化成は1946年から2年以上労働争議が続いた。それが解決し、新生「旭化成」として、ベンベルグ絹糸、レーヨンの次に何をやるかが問題となり、ポリアミド繊維か、ダウが開発した塩化ビニリデン繊維(サラン)かの選択となった。

当時はナイロンはコークス副生の石炭酸を原料としたが、旭化成は石炭をもたず、逆に塩化ビニリデン原料の塩素をもち、カーバイドも近くで入手できることから塩化ビニリデンを選んだ。

旭化成は日本でのダウとのJVを計画し、ダウに当たった。呉羽化学も同様の計画でダウに接触した。
ダウは旭化成を選び、1952年7月、
50/50JVの旭ダウが設立され、延岡に塩化ビニリデン5t/dのチップ製造工場、鈴鹿に5t/dの紡糸工場を建設した。

塩化ビニリデンは米国では自動車用シートとして売れていたが日本では需要がなく、繊維としては着色面で欠陥があり、魚網用などで販売したが全く売れなかった。
(その後、塩化ビニリデンは食品包装材料として復活、1960年に「サランラップ」を販売開始した。)

旭ダウは3年半で累積損失が1億円になり、膨大は在庫を処分した損失が8億円発生した。旭化成はこれを全額負担することとし、ダウの信頼を得た。

ダウはポリスチレンの事業化を推奨、同社の技術と融資を受けて、1957年4月、ダウからの輸入SMを原料に、川崎でPS月産475t の生産を開始した。
(これは三菱モンサント化成のスタートの1ヶ月後である。三井石油化学の日本最初のエチレンのスタートは1958年2月であり、日本のPS事業はこれに先立つものである)

塩化ビニリデンと異なり、今回は事前に十分市場調査をしており、うまくスタートできた。

その後、日本石油のエチレンセンターに参加し、SMを国産化、その後、1964年にABSを自社技術で起業化(1975年にダウに技術輸出)し、SBRラテックスなども生産開始し、スチレン系を揃えた。

1960年8月にはスイス・ダウ・へミーから高圧法PE技術を導入した。
1970年の水島の旭化成のエチレンセンター稼動に合わせ、HDPE 4万トン/年を自社技術で生産している。

1960年のサランラップ発売後、旭ダウは他社が当時行っていなかった川下事業を順次行った。
 1962年 発泡ポリスチレン「スタイロフォーム」
 1967年 発泡HDPE
 1968年 二軸延伸PSシート
 1972年 合成木材(PS連続押出低発泡板「ウッドラック」)
 その他

当時の堀社長は「エチレンではめしは食えない」と述べ、誘導品や川下製品の需要を重視した。

堀社長は1974年7月に第7代の石油化学工業協会会長に就任した。石化協会長はそれまで、三菱油化、日本石油化学、三井石油化学、住友化学、三菱油化、三井石油化学と、主要センター会社が就任しており、センター会社で就任していない会社が多い中での旭化成の日米合弁会社の旭ダウ社長の就任は異例であったが、石油ショックのなかで、堀社長のリーダーシップが期待されたと言われている。

旭ダウは好業績を続け、優良会社として高い評価を得た。

旭ダウ業績
         10~9月決算 単位:億円
  売上高 経常損益 当期損益 配当率
   %
1975   910.9   31.8   20.9   20
  76  1122.3   72.9   35.3   20
  77  1163.2   88.6   43.6   20
  78  1078.6   89.7   44.1 株17.6
  79  1241.3  116.0   52.2    15
  80  1583.8  133.8   60.1   15
  81  1421.8   79.0   40.3   15

旭ダウは好業績を背景に親会社の旭化成、ダウと等距離を保ち、独立路線を維持した。

しかし、同社は石油危機に際し、原燃料高騰に危機感を抱き、安価原料入手を模索した。
これは水島コンビナート維持を図る旭化成にとり、受け入れがたいことであった。

他方、ダウは80年に入り業績悪化、欧米企業に珍しく借入金依存体制の同社には大問題で、ファイン、スペシャルティへ重点移行し、借入金依存体制からの脱却を目指し、韓国、サウジ、豪州の海外事業から撤退した。旭ダウも対象となった。
 1982 韓国ダウ、Korea Pacific(電解、EDC、VCMのJV)持株を韓国火薬に売却(現在のハンファ)
 1982 SABICとのJV(Petrokemya)から離脱

旭化成は旭ダウの合併を決意、ダウも合意した。
 1982/3/2 合弁解消契約
     6/1 旭化成100%
    10/1 合併

なお、この条件として、発泡PS(スタイロフォーム、ウッドラック)事業はダウへ移管された(ダウ化工設立)。
また、旭化成は15年間(1997年6月まで)は東南アジアでPSを、日本で押出発泡PSを生産できないと決められた。
(同様にダウも、日本でのPS生産やライセンスは15年間出来ない)

参考資料
 松尾博志「日本ジョイントベンチャー成功の秘密 旭ダウ物語」(1980年 日本工業新聞社)
 旭化成社史

ーーー

発泡PS事業のダウ化工への移管後も原料PSは旭化成が全量供給していた。

しかし、1988年4月、ダウと住友化学はポリカーボネート事業でJV契約を締結、ダウは住友ノーガタックに35%出資した。
(1992年4月にダウ50%出資とし、社名を住友ダウと改称した。
 PC工場完成後の1995年末にはABS、ラテックスを分離して住化ABSラテックス、現在の日本A&Lを設立した)

住友化学はこれの見返りにダウ化工に35%出資するとともに、原料PSの75%の納入権を得た。
(これが材料にもなり、住友化学と昭和電工は両社のJVの日本ポリスチレン工業とは別にそれぞれ千葉と川崎にPSプラントを建設することとなる。住友化学はBASF技術を導入した。昭和電工はAto技術。
その後、日本ポリスチレン工業は解散、昭和電工は旭化成に商権を譲渡し、撤退。住友化学は三井化学とPS事業を統合して新しく日本ポリスチレン㈱を設立)

旭化成ではこれにショックを受けた。
この後、旭化成はダウとの関係強化を図っている。

当初、運賃節約のためのスワップから出発したが、1994年香港に50/50出資のスタイロンアジアを設立して、PSの中国顧客および東南アジア日系顧客へのマーケティングを行った。

旭化成が東南アジアでPS事業を出来ない期間(1997年6月まで)が過ぎた後、旭化成は独自に生産するのではなく、ダウとのJVを選択、中国に50/50のJVの斯泰隆石化(張家港)有限公司を設立した。

今回、この両社の持分をダウに譲渡するもので、旭化成としてはPSのアジア市場から撤退することとなる。

 

なお、旭化成のPSの日本の拠点はPSジャパンで、出資は旭化成 45%、三菱化学 27.5%、出光興産 27.5%となっている。

三菱化学はタイに100%子会社の
HMTポリスチレン(9万トン)を持つ。
出光興産はマレーシアで
PetronasとのSM 製造JVの Idemitsu Styrene Monomer (M) Sdn Bhd (200千トン)98%出資のPS子会社Petrochemicals (Malaysia)(14万トン)を持ち、インドネシアとマレーシアにPS難燃コンパウンドの子会社を持っている。
また、台湾の高福化学工業にも35%出資している。

 

各社の第1四半期連結決算が発表になった。石油化学関係の営業損益が前年比で悪化しているのが目立つ。

 

三菱ケミカル

                  単位:億円
  2004/1Q 2005/1Q 2006/1Q
売上高  4,978  5,513  6,063
営業損益   324   376   294
経常損益   346   419   349
当期損益   163   190   218

20061qmitubishi

経常減益に対し当期損益が増となったのは、投資有価証券売却益等の特別損益が58億円(前年は10億円)あったため。

セグメント別営業損益は添付の通り。

合成樹脂、合繊原料等の石化部門の営業損益は前年比で大幅減となっている。
  2004  10,008百万円
  2005   7,663
  2006   1,558

同社では「原燃料価格の値上がりとそれに対応した製品価格是正との間の時間差及び海外市況が弱含みであったこと等により」、前年同期比61億円減(△79.7%))となったとしている。

ーーーー

住友化学

                 単位:億円
  2004/1Q 2005/1Q 2006/1Q
売上高  2,999  3,361  4,123
営業損益   241   297   340
経常損益   301   396   404
当期損益   167   217   204

20061qsumika当期損益は特別利益の減少(前年に事業譲渡益43億円)、特別損失の増加により、前年比減益となった。

 

セグメント別営業損益は添付の通り。

石油化学品、合成樹脂、合成ゴム等の石化部門の営業損益は前年比で減益となっている。
 2004   575百万円
 2005  5,797
 2006  3,629

但し、農業化学、医薬品が増益となり、全社では増益となった。

ーーーー

三井化学

                  単位:億円
  2004/1Q 2005/1Q 2006/1Q
売上高  2,814  3,473  4,019
営業損益   145   160   167
経常損益   144   165   191
当期損益   106   165    89

20061qmiui営業外収益の増加で経常損益は増益となったが、特別利益の減少(前年は持分変動利益86億円)、特別損失の増加(関連事業損失11億円を含む)で特別損益が差引前年比94億円の減益となり、当期損益は減益となった。

セグメント別営業損益は添付の通り。

    石油化学   基礎化学   機能樹脂  
 2005     5,022     9,365       -93 百万円
 2006     8,984     1,948     3,180  
   * 2004/1Qはセグメント別報告なし

石化原料、PE、PPの石油化学は増益となったが、合繊原料、フェノール等の基礎化学品は大幅減益で、差引大幅減となった。
同社ではPE、PPは製品価格の改定を行ったが、原料価格がさらに高騰したことにより、コストアップ分の全てをカバーすることが困難となったとしている。

これらの減益をウレタン樹脂原料等の機能樹脂、及び機能化学品で補い、全社としては前年比増益となった。

ーーーー

旭化成

                  単位:億円
  2004/1Q 2005/1Q 2006/1Q
売上高  2,948  3,286  3,485
営業損益   182   136   153
経常損益   192   146   151
当期損益   120    52    92

20061qasahi セグメント別営業損益は添付の通り。

ケミカルズ部門の営業損益
 2004
 5,100百万円
 2005  6,900
 2006  5,500

汎用事業は、ポリマー系事業においてエンジニアリング樹脂の海外子会社が好調に推移したものの、モノマー系事業のアクリロニトリルやスチレンモノマーが原燃料価格高騰の影響を強く受けたことに加え、プラントの定期修繕の影響もあり、前年同期に比べ減益となった。
これに対して高付加価値系事業は、リチウムイオン二次電池用の微多孔膜「ハイポア?」や、イオン交換膜事業が好調に推移し、前年同期に比べ増益となった。

ーーーー

東ソー

                  単位:億円
  2004/1Q 2005/1Q 2006/1Q
売上高  1,200  1,405  1,731
営業損益    61    87    47
経常損益    65    97    51
当期損益    45    58    18

20061qtoso売上高は前年同期に比べ増収となったが、積極投資による償却費、隔年大型定修による修繕費等の固定費の増加により、減益となった。

セグメント別営業損益は添付の通り。

    石油化学   基礎原料  
 2004     - 419     2,117 百万円
 2005     2,823     1,077  
 2006     1,076    -3,067  

オレフィン、SM、PE等の石油化学は減益、VCM、PVC等の基礎原料は40億円減益の30億円の赤字となった。

 

ーーーー

なお、12月決算の昭和電工は8日、上期中間決算を発表した。

                  単位:億円
  2004/中間 2005/中間 2006/中間
売上高  3,483  3,910  4,270
営業損益   222   271    338
経常損益   162   234    285
当期損益    64   209    151

セグメント別営業損益は添付の通り。Sdksegeigyo

    石油化学   電子・情報  
 2004/上     7,625     6,883 百万円
 2005/上     11,408      7,768  
 2006/上     6,738     15,848  

石油化学は減益となったが、電子・情報の増益が上回り、全社で増益となった。

 

各社の第1四半期連結決算が発表になった。

売上高、営業損益、経常損益、当期損益を3年並べてグラフ化した。
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/2006-1q-zensha.htm

昨年の第1四半期ではほとんどの会社が前年比増益であったが、本年は増益会社と減益会社に分かれた。

特に石油化学関係での損益悪化が目立つ。原油価格アップの転嫁遅れ、中国市況の悪化などによるものと思われる。
その中で信越化学の増収増益が目立つ。

次回は総合化学大手5社の決算を分析する。

 

なお、アステラス製薬の営業損益、経常損益が大幅減となっているが、これはライセンス料を含む研究開発費420億円増、販売促進費などの費用417億円増などによるもの。
当期利益はゼファーマ株売却益212億円があったこと、前年には事業統合費用の計上があったことなどから、111億円減にとどまった。

8月3日、前上海総領事の杉本信行氏が肺がんで亡くなった。
2004年11月に末期がんの診断を受け、治療を受けながら本書を著作した。

合計14年の中国駐在経験と膨大な資料をもとに、あらゆる面で中国の過去と現状を描いている。

岡本行夫氏も「この本は現在の中国を分析するものとして世界中で書かれた多くの著作のうちでも屈指のものだと思う。現代中国の真の姿をこれほどよく分からせてくれる本に出会ったことはない」としている。

ーーー

2006/2/21中国バブル説」で中国の需要の見方に関して、以下の通り述べた。

「特に需要面が問題で、グラフ(METI予測)から見てもこの数年の需要の急増を延長しているのが分かる。根拠の一つには13億人という膨大な潜在需要の存在と思われる。
しかし実際には三大成長エリア、広東、長江デルタ(上海)、渤海湾(北京、天津、大連)の3億人を現在のマーケットと考えるべきである。これと残りの10億人の所得格差は著しく大きい。

中国では戸籍が農民と都市市民に分かれており、農民は大学を出るなりしないと都市に住むことが出来ない。そのため多数の農民が出稼ぎの形で都市に流入し、低賃金で働いている。いってみれば、農民の犠牲の上で、都市市民の現在の繁栄ができているといえる。
最近は中国政府も西部(農村部)の開発に力を注いでいるが、これも実際には農村部の官吏が安い価格で農地を取り上げ、転売して儲けており、農地を失くした農民は生活が困窮しているといわれている。

将来は別としてこの数年をとってみると、これら10億人の需要を当てにすることはできない。」

ーーー

杉本氏はこの本の中で詳細に中国経済を分析し、上記の見方を裏付けている。また、高い経済成長率の実態も明らかにしている。

 

「第10章 搾取される農民」

戸籍登録条例によると、中国語で「農村戸口」と呼ばれる戸籍を持つ者が農民と定められている。対して、都市に住む者、あるいは農村に住むが行政に携わる役人は「城鎮戸口」を持つ。
仮に、農村戸口の女性が城鎮戸口の男性と結婚しても女性の戸籍は変わらず、生まれる子供も農村戸口となる。

この都市住民と農民の違い、城鎮戸口と農村戸口の違いは、天と地ほどの開きがある。

 「農民には生産手段として、国から一定の土地の使用権が認められている。ただし、その土地使用権を得ていることで、社会主義制度の下に都市住民が享受している年金、医療保険、失業保険、最低生活保障などの社会保障が受けられない。

 「都市住民に比べて所得が著しく低く、しかも、行政サービスをまったく受けられない農民の方が、税金、公共料金、教育費などの負担率が断然高いのである。これは所得再配分うんぬん以前の段階で、まるで
『生かさぬよう殺さぬよう』に農民から年貢を搾り取った、江戸時代の農村政策のようだ。
 そして最近の大問題は、農民の命といっても過言ではない彼らの
土地が奪われていることだろう。」

 「都市と農村の表面的な所得格差は、統計的に3倍程度と公表されているが、実質的な格差は、その10倍、すなわち30倍ほどあると内々報告されている。」

 「都市との格差を拡大させた要因の一つに、政府が農産物の買い付け価格を引き下げたことがある。・・・99年までほぼ5億トンを維持する豊作が続いた。在庫過剰を招いた政府が農産物の買い付け価格を引き下げ、農民の収入が減少、まさしく豊作貧乏を地で行くこととなった。」

 農民の負担には「農業税」、「合法的な費用徴収」、「非合法の制度外徴収」がある。

 「
農業税
 米、麦などの食料作物と、綿花など経済作物に農業税、これ以外の果物、お茶、水産物など(タバコを除く)には農業特産税をかけられ、農民が自分の耕地内に住宅を建てると税金がかかる。家屋や畜舎などの賃貸額にかかってくる契約税がある。

 「
制度内費用」は地方政府の権限で農民から徴収する合法的な税金以外の費用で、「五統三提」と呼ばれる。
 「五統」とは、郷鎮政府が徴収する教育費、退役軍人慰労費、民兵訓練費、道路建設費、計画出産管理費の5種類の費用
 「三提」とは、郷鎮政府の下部の生産大隊である村民委員会が農民から徴収する費用で、結局、村民委員会の役人の人件費のこと。

 「制度外費用」は、郷鎖政府や村民委員会が、五統三提に組み込めない種類の費用を農民から無理やり徴収するもので、道路費用、電力費用、学校建設費用、結婚交渉費用、住宅建設管理費用など。

 そのうえ農民は『両工』と呼ばれる二種類の義務労働を課せられている。一つは防波堤建設、二っ目は道路や学校建設である。農民はそれらの建設のために無償で労働力を提供しなければならない。

ーーー

別資料によると、土地を失ったり、出稼ぎのために都市に出る農民は「外地人」と呼ばれ、差別されている。

・職業選択の自由は農民戸籍者には存在せず
  上海市の94年条例では23職種にはつけない(3Kの仕事と低賃金職種のみ)
・子女に対する教育差別(公立小中学校に入れない)
・賃金差別
・都市に流入する農民工に課せられた諸費用
  暫住証、寄住証、身分証明書、就業証、婦人に対する2ヶ月1回の不妊検査証など
・都市戸籍者への各種補助金が与えられない
・社会保険上の差別
  年金、失業保険、医療保険、労災保険、生活扶養金が農民工には与えられない
・その他 

杉本氏は「中国のおおいなる社会矛盾の元凶である戸籍制度については、調べれば調べるほど義憤にかられてくる」とする。

なお、貧富の差を問題とする外部からの指摘に対し、中国側からは「高度成長の中で単純労働者の賃金が10年近くも上がらないのは、外国企業がこれら労働者を搾取しているからだ」と貧富格差の責任を外国企業に転嫁する批判的意見が表面化してきているという。
同氏は「近いうちに具体的なチャイナリスクとしてより顕在化してくるだろう」とみている。

 

杉本氏によると、中国の指導部が現在頭を悩ませている最大の懸念は、対外政策よりも国内政策で、なかでも「三農問題」といわれる「農村の貧困」、「農民の苦難」、「農業の不振」である。すでに中国社会、中国の政治体制を揺るがしかねないほど深刻化している。都市部の発展に比例して、農民の不満、共産党政府に対する怒りは高まっている。

しかし、中央政府の指示を地方が無視することも多く、どうしようもない状態である。

ーーー

「第13章 中国経済の構造上の問題」では以下のような問題を指摘する。

投資と消費のアンバランス

 全社会固定資産投資の伸びに対し、社会消費品小売総額の伸びは半分以下。 

 消費の伸びが減速したのは98年以降であるが、農民の収入が急減したことに加え、都市部においても朱鎔基内閣が国有企業の住宅保障制度の廃止や、医療保険などの社会保障機能を分離し、3年以内に再就職できない余剰人員をリストラするなどの大胆な経済改革を推進したため、国民の将来に対する不安が一挙に高まり、国民の貯蓄率は46%まで高まった

 日本同様、年金制度は実質破綻状態に陥っており、遠くない将来、1人が8人の面倒を見なければならないという試算もあるほどで、そのため、将来の不安から、貧困者のみならず一般の給与所得者の間でも消費を控える傾向が強まっている。

なぜ不動産バブルとなったのか

 任期5年の党大会のサイクルの中で結論を出す必要に迫られている指導者たちにとり、5年間で成果をあげるために一番てっとり早いのは、工場や住宅建設を中心とする固定資産投資を積極的に行うことにより経済成長率を上げることで、経済成長率を高めることが、国家レベルから地方レベルまでの各指導者の至上命題となり、その達成度が評価基準になった。消費が伸びなくてアンバランスであろうが、固定資産投資を伸ばせば一定の成績を上げられることから、彼らはそうした政策に走らざるを得なかった。

 不良債権の処理についても、貸出総額(分母)のうちの不良債権(分子)を減らすことが本来の姿なのだが、彼らは経済成長という至上命題を与えられているため、逆に分母を増やして、結果として不良債権比率を下げようとした。
(注 どこかの国の社会保険庁と同じ発想である)

ーーー

このほか、「深刻な水不足問題」として一章を割いている。

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付記

 

中国 2006年から農業税を全面撤廃 2600年の歴史に幕  

中国政府は2006年から農業税を全国規模で全面的に撤廃した。これにより、2600年にわたって続いてきた中国の農業税制度が姿を消した。温家宝総理が2004年政府活動報告で打ち出した5年以内の農業税撤廃を前倒しで実現したもの。

2005年には全国で「牧業税」と「農業特産税」(タバコ除く)が全面的に撤廃されたほか、28省の全域と3省の計210県・市で農業税が撤廃されている。2004年に232億元だった農業税収入は2005年は約15億元に減少した。

2005年は「三農」(農業、農村、農民)問題解決のための中央政府支出が3千億元を超える見通し。

 

なお、農業税の廃止に伴い、地方の幹部が、一人っ子政策違反者への罰金の強化など、いろいろな理由をつけて別途収入の増大を図り始めたといわれている。

 

昨年10月6日、テキサス州ポイント・コンフォートのフォモサ・プラスチックスの工場で爆発事故が発生した。

事故は原料の天然ガス又はナフサからエチレンやプロピレンをつくる OlefinⅡプラントで発生したもので、フォークリフトがバルブに当たって破損し、大量のプロピレンが流出、引火したもの。従業員2人が火傷で重傷、14人が逃げる際に軽症を負った。

* フォモサ・プラスチックスは台湾の台湾石化(FPC)の子会社
  2006/4/15 「台湾の石油化学」 参照

米国の化学品事故の調査のための独立政府組織 U.S. Chemical Safety and Hazard Investigation Board (CSB:米国化学物質安全性・有害性調査委員会)は7月20日、この事故の調査結果を発表した。

CSBの調査によると問題点は以下の通り。

OlefinⅡプラントに自動停止バルブがなかった。従業員は手動バルブに近寄れず、プロピレン流出を防げなかった。
破損したバルブはむき出しで、保護されていなかった。
鉄製の支柱が防炎処理されておらず倒壊した。このため通常ならプロピレンがフレアで処理される筈が、フレアに送れず、5日間燃え続けた。
従業員に防炎衣類が支給されていなかった。

CSBではこれを元にフォモサに対して勧告を行うとともに、本設備の設計に当たったKellogg, Brown, and Rootに対して、新設備の設計の際には最新の安全基準によるよう、勧告した。また、業界組織の化学プロセス安全センターに対し、ガイドラインの強化を指示した。

CSBでは調査結果の詳細を Case Study として発表した。
http://www.csb.gov/completed_investigations/docs/Formosa_TX_Case_Study_07-14-06.pdf

 

フォモサ・プラスチックスでは事故が続出している。
1998年12月にはポイント・コンフォートのEDCプラントで爆発があり、26人が負傷した。
2004年4月にはイリノイ工場でVCMの漏洩による爆発があり、4人が死
亡、6人が負傷した。また2005年4月にはVCM等の漏洩による環境基準違反で15万ドルの罰金を払っている。

ーーー

日本では独立行政法人 科学技術振興機構(JST)が科学技術分野の事故や失敗の事例を分析し、得られる教訓とともにデータベース化したものを「失敗知識データベース」として公開している。

JSTは、本事業に関する専門的指導・助言、全体調整、分野間調整等を行うため、畑村洋太郎工学院大学教授を統括に委嘱するとともに、畑村統括を委員長とする失敗知識データベース推進委員会(JST畑村委員会)を設置し、データベースの仕様や分析方法を検討した。

現在、化学198件、石油104件、石油化学30件が記載されている。

失敗知識データベース http://shippai.jst.go.jp/fkd/Search

 

 

Repsol YPF はスペインと南米を活動の中心とし、石油探査・石油精製・石油化学を事業とする会社である。

2005年の実績は添付の通りで、利益の源泉はスペインとABB(アルゼンチン、ブラジル、ボリビア)とその他がそれぞれ1/3を占める。
石油精製・販売はスペインが中心である。

Repsol YPF    2005年実績   単位:百万ユーロ
  Gross   Income from   うち
   Revenue    Operation   Spain ABB others 
Exploitetion & Production 9,203 3,246   21 1,600 1,625
Refining & Marketing 41,298 2,683   1,980 563 140
Chemicals 4,185 308        
Gas & Power 2,765 389        
Others   -465        
Total 57,451 6,161    33%  36%  31%
Net Revenue 51,045          
Financial expenses   -722        
Income before tax   5,439        

石油化学についてはスペインに2箇所、ポルトガルに1箇所のエチレンセンターを持つ。Spain

スペインにはPuertollano25万トン、Tarragona65万トン、合計90万トンのエチレンプラントを持っている。
(スペインには他にダウがTarragona
60万トンのエチレンプラントを持つ)

ポルトガルのシネス(Sines)のエチレンセンター(ポルトガル唯一のセンター)はBorealisが所有していたもので、2004年12月にRepsol が買収した。
2001-2003年は50百万ユーロ程度の赤字を続けていたが、2004年は赤字をほぼ解消、2005年は20百万ユーロの黒字となっている。
(Borealisについては2006/6/2 湾岸諸国の石油化学ー3 アラブ首長国連邦(UAE)参照)

Sinesのエチレンセンターはナフサを原料とし、以下の能力を持つ。

  エチレン   350千トン
  プロピレン   180
  LDPE   145
  HDPE   130

Repsolは先日、Sinesのエチレンセンターに2006-10年に6億ユーロ(約870億円)を投じ、増強すると発表した。
発電所とエチレンの増設、ポリオレフィン2プラントの新設を行う。

エチレン能力は350千トンを410千トンにアップすることとしているが、更に40%増設し、570千トンに増設する。
ポリエチレンは買収時能力275千トンを295千トンとし、更に L-LDPE 300千トン設備を新設する。
更に、PP 1系列300千トンを新設する。

これにより、Repsol のエチレン能力は現在の125万トンが147万トンとなり、添付の通り欧州で6位となる。Europeethylene

(同社の説明資料 http://www.repsolypf.com/comunes/archivos/Proyecto_Sines_eng__171867.pdf 16/37 参照。
 なお、本資料には同社の状況が詳しく記されている。)

なお、欧州のエチレンメーカーの能力は以下の欧州化学産業委員会(CEFIC)のホームページにある。
2004年末で西欧に51、中・東欧に10のクラッカーがあり、合計能力は26,524千トンとなっている。

http://www.petrochemistry.net/templates/shwArticle.asp?TID=3&SNID=9

 

先日、NovaのPS事業について述べた。

韓国のSKグループの商社SK Networks はこの度、中国の汕頭海洋集団との間で広東省汕頭市(スワトウ)の同社のPS事業子会社、汕頭海洋第一PSレジンを買収する契約を締結した。8月後半に引渡しが行われると見られている。

汕頭海洋第一PSレジンは汕頭市に自社技術のPS 3系列、合計能力15万トンのプラントを持っている。原料SMは購入し、製品PSは珠江デルタ地域で販売している。

原油価格高騰に伴い、中国のPSメーカーは原料SMの価格アップによるコスト高で利益が圧縮されているが、川下の家電メーカーや玩具メーカーの需要は極めて弱い状況にある。

汕頭海洋第一PSレジンでは原料SMをSK Networks から購入しているが、損益悪化により破産寸前にあり、SKへの原料代13-15百万ドルが未払いとなっていたと伝えられている。

このためSKでは1年ほど前から、企業買収の交渉を行ってきた。交渉が一時的に難航し、SKが原料供給を打ち切り、先月同社は原料切れで操業を停止している。
一つの問題は同社の株式を一部所有している汕頭市当局が、工場が都心にあるとして移転を求めたことで、これについては今後 8年から10年内に話し合うことで合意した。

汕頭海洋集団はほかに、広東省泉州市に子会社・汕頭大洋化学が5万トンのEPSプラント、同広州PSレジンが12万トンのPSプラントを所有している。

SKグループではSKC Chemical Business Group (当初の名称は油公ARCO)が蔚山のSKコンプレックスにPO 180千トン/SM 370千トンの併産プラントを持っている。(PS事業は直接は行っていない)
今回の買収により、SKは中国市場に初めて進出することとなる。

韓国勢ではLGが寧波でABS事業、天津でPVC事業(電解からVCMまでを新設中)を行っている。また、EPSメーカーのSH Chemicalが江蘇省常州市のShinho (Changzhou) Petrochemicals (常州塑料集団とのJV)でABSを製造している。 

 

中国で苦境にあるのはPSだけではない。

PVC大手の上海クロルアルカリも原材料価格の高騰の中で、供給過剰による値下がりの影響を受け、営業損益ベースで大幅な赤字となっている。

上海クロルアルカリ決算  単位:百万元
  売上高 営業損益 純損益
2003/12  3,906     55    25
2004/12  4,978    105    54
2005/12  4,120    -653     4
              1元は約15円
 

中国の6月のPVC輸出量は64千トンと飛躍的に増加、1ー6月合計は247千トンとなった。6月の中国のPVC輸入量は94千トンで、近いうちに純輸出国になると見られている。

日本の石化業界は中国需要で好調な決算を続けてきたが、そろそろ、風向きが変わりだしたようだ。

本年第1四半期決算では、石油化学部門の営業損益が各社とも前年同期比で減少している。東ソーの基礎原料(苛性ソーダ、VCM、PVC、セメント)の営業損益は前年同期の1,077百万円に対して3,067百万円の赤字となった。

各社が努力している値上げも、輸入増につながる可能性もある。

 

中国の国家発展改革委員会はこの度、2006年から2010年までの5年間に環境対策に1,750億ドル(約20兆円)の巨額を投じると発表した。毎年のGDP1.5%以上になる。(中国のGDP20052兆2257億ドル)

資金は水質汚染対策、都市の大気環境改善、廃棄物処理、土壌浸食対策、地方の環境改善に使用される。

このうち、225億ドルで10の河川沿いに合計日量40百万トンの下水処理施設が建設され、都市排水を処理する。また250億ドルを投じて産業排水処理施設が建設される。

また資金の一部は113の大都市の二酸化硫黄を減らすのに使用される。このほか、31の省レベルの廃棄危険物処理センターや、核廃棄物処理設備が建設される。

中国ではこの20年間の経済成長に伴い、環境汚染もひどい状態になっている。大気汚染が進み、世界の最もスモッグ被害のひどい30の都市のうち20が中国にある。化学品の漏洩で飲み水が汚染され、放棄廃棄物で疫病のおそれが出ている。全国で12百万トンの穀物が重金属で汚染されていると言われている。

今回の政策は過去の被害をある程度回復するとともに、今後の発生を防ぐ狙いをもっている。

 

2006/7/25 「独占禁止法に関する論点整理で「独占禁止法基本問題懇談会」の議論を踏まえた「論点整理」を紹介した。公取委では広く各層の意見を求めるとしている。

これに対して経団連では、8月1日、「独占禁止法の抜本改正に向けて、必要不可欠な論点を中心に、今後わが国における望ましい法改正の姿を具体的に示すことにより、今後の懇談会における検討が収束する方向に向かい、独占禁止法の抜本改正が現実のものとなることを期待して」、コメントを発表した。

「独占禁止法基本問題」に関するコメント
     ‐望ましい抜本改正の方向性‐
  
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2006/057.pdf

経団連の「望ましい法改正の姿」の概要は以下の通り。

1. 公取委の審判の廃止
公取委が、審査・審判の両方を兼ねることへの不信感を払拭するため、公取委による審判を廃止し、公取委の行政処分への不服申立ては、裁判手続に委ねる。
   
  本年1月の改正後の手続きは添付Ftckaisei2の通り。
 
  公取委が自ら審査を行い、排除措置命令・課徴金納付命令を出し、その当否を自らの審判において判断することは、公正な審理が本当に確保されるのか、不信感は払拭できないとし、現在の審判は廃止し、公取委の行政処分に対する不服申立ては行政訴訟の一般原則に立ち返って、地方裁判所に対する取消訴訟の提起という仕組みに改めるべきであるとする。
   
2. 課徴金と刑事罰の併科の解消
違反行為に対する制裁は、法人に対する独禁法上の課徴金に一本化して法人・個人に対する独禁法上の刑事罰は廃止するか、少なくとも法人については刑事罰を廃止し、制裁を課徴金に一本化することを検討すべき。

不当利得相当額以上の金銭を徴収する現行の課徴金は、違法行為の抑止を目的とする「行政上の制裁」であり、その機能は刑事罰と重なる完全な二重構造となっているとしている。

   
3. 課徴金制度の透明性、予見可能性の確保
課徴金と刑事罰の併科を解消するため、独占禁止法違反行為に対する制裁について、法人に対しては独占禁止法上の課徴金に一本化することを前提に、公正取引委員会による恣意的な裁量の余地を極力排除し、制度の透明性、予見可能性を確保する必要がある。
   
4. 適正手続の下での正当な防御権の保障
公取委による審査手続において、適正手続の下で、事業者に正当な防御権が保障されるよう、弁護士等の立会権の付与や調査者に対する「供述拒否権の告知」の規定等を、新たに公取委の「規則」ではなく「法律」に規定。
   
5. 排除措置命令の在り方の見直し
どのような事案に対して、どのような排除措置命令を講じるか等、一定のルールの設定。
   
6. 違反行為のあった会社の代表者に対する罰則の適正な運用
   
7. 公取委が行う警告制度の見直し
不服申立てができず、名誉挽回方法のない「警告」では、社名の公表は廃止。
   
8. その他
   

 

経団連の提言に対して公取委の竹島委員長は 「現行制度は合理的」として以下の通り述べている。(8/2 日経)

「公取委の審判の廃止」案に対して、
 「7人いる審判官のうち3人は法曹資格者であり、審査との独立性、中立性も保たれている」
 「第一審を裁判所が担うことになった場合に、どこまで競争法などの専門知識を備えた裁判官を確保できるかなど現実的な問題が残る。」

「課徴金と刑事罰の併科の解消」案に対して、
 「1月の独禁法改正で課徴金の水準を引き上げ、これまでの『不当利得の徴収』がら、それ以上の金銭的不利益を科す『行政上の制裁』に位置づけを変えた。だからといって刑事罰をやめるというのは反対だ。刑事罰には社会的に違反行為を糾弾する厳格な制裁としての効果があり、行政制裁金では肩代わりできない」
 「欧州でも一部の国で刑事罰を科しており、日本の制度が国際的に異例というわけではない。そもそも刑事告発するのは重大・悪質な事案に限っている。違反行為への抑止力を持たせるために刑事罰は維持すべきだ」

 

SINOPECとクウェート国営石油会社(KNPC)の石油精製プロジェクトが26日、国家発展改革委員会の承認を受けた。
SINOPECの広州石油化工がKNPCとのJVを設立し、
広州市南沙経済開発区で年間1,200万トンの石油精製を行うもの。

事前報道では15百万トンの石油精製と100万トンのエチレンコンプレックスと伝えられたが、石油精製能力は12百万トンで承認を受けた。エチレンコンプレックスについては今回の承認に含まれているかどうかは、まだ明らかになっていない。

昨年12月に中国とクウェートは広東省での石油精製計画について覚書を締結、クウェートの石油大臣がペトロチャイナと会談して協議を行った。しかし、この地域が本拠地であるSINOPECが巻き返し、政府を動かした。(石油でのSINOPECのメインテリトリーは東部と南部、ペトロチャイナが北部と西部となっている)

なお、直前の7月18日の報道では、SINOPEC、KNPCのほか、ダウともう1社欧米の石油会社が交渉に加わっているとされている。
ダウは当初、天津でのSINOPEC等とのエチレン合弁構想からは撤退したが、中国でのエチレン計画に関心を持っていると言われており、今後、同地での石油化学計画に参加する可能性もある。

Nanshamap 広州市は珠江の三角州にあり、市の南東部に黄埔地区、最も川下に南沙地区がある。

SINOPEC側で本計画を担当する広州石油化工は、同じ広州市の黄埔地区に石油精製・石油化学基地を持っており、精製能力を770万トンから1200万トンに増設中で、本年にスタートする。
(当初SINOPECはエクソンモービルと精製能力増強の共同実施の話し合いをしていたが、まとまらなかった)
また、本年2月にエチレンを既存の20万トンから80万トンに増設する計画の認可を取得した。現在の同社の誘導品能力は、PE200千トン、PP110千トン、SM80千トン、PS46千トン、ブタジェン35千トンで、
エチレン増設とともに HDPE、EVA等を新設するが、詳細は明らかにされていない。

 

サウジやクウェート、アラブ首長国連邦等は中国の石油需要増大を背景に中国への投資意欲を持っている。
他方、中国は原油確保のため産油国との関係強化を図っている。また、中国では自動車燃料や石油化学原料の需要増大に備え、今後5年間で石油精製能力を25%増やす考えである。

サウジ勢では既にアラムコが福建省泉州市の石油精製・石油化学計画に参加している。
ExxonMobil が25%、Saudi Aramco が25%、中国側(SINOPEC、福建省)が50%出資し、SINOPECと福建省の50/50合弁の福建煉油の既存の製油能力を400万トンから1,200万トンに拡張するとともに、エチレン80万トンのクラッカー、65万トンのPE、40万トンのPP、100万トンの芳香族プラントを建設するもの。投資額は35億ドルで、2005年7月に起工式を行った。2008年完成を予定している。

本計画は当初、エクソン/アラムコと福建煉油でエチレン60万トン計画のFSを実施、1999年11月の江沢民主席のサウジ訪問の際に、政府間で石油精製の増設計画に合意した。

SABICもいろいろの動きを見せている。
ダウ離脱の後、
SINOPECの天津石油化学 (旧称 天津聯合化学) は天津市の大港地区で既存の750万トンの製油所を1,250万トンに拡張し、エチレン100万トンを新設する計画をたてたが、SABICもこれに関心を示し、交渉した。
本計画は昨年末に
SINOPEC単独の計画として政府の承認を受けたが、本年1月のサウジのアブドゥッラー国王の最初の公式訪中を機に、SABICがSINOPECと再度交渉を再開したと伝えられた。
最終的にはSINOPEC単独実施となった模様。

またSABICは2004年6月に大連実徳グループと50/50のJVで、大連市の旅順港に50億ドルをかけて、年産1千万トンの製油所と年産130万トンのエチレンコンプレックスをつくる計画をたてている。現在、交渉が最終段階にあると伝えられている。

 




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