2008年1月アーカイブ

ダウは129日、テキサス州フリーポートでクロルアルカリ設備の建設を開始すると発表した。
2011年のスタートを目指す。
同地の既存のプラントの多くは経済的な耐用年数に近づいており、今後3年間で順次停止する。
今回の投資はS&Bで、設備能力は差引減少する。

同社のAndrew N. Liveris 会長兼CEOは、「塩素はダウの機能製品事業の重要な原料で、ポリウレタン、エポキシ、特殊化学品、特殊プラスチック、農業化学品の将来の成長の鍵を担っている」と述べた。

同時にダウは、30年以上の需要家であるシンテックとのVCMの長期供給契約の更新を発表した。
(信越化学も30日に発表した。)
同会長はこれについて、「この供給契約は新投資の操業を保証するもので、JVの形はとっていないものの、シンテックはクロルアルカリ事業での戦略的パートナーである」としており、同社が石油化学事業で進めている
Asset-light 戦略の延長であるとしている。

     Asset-light 戦略については
       2007/2/3    
ダウ、PSとPP事業のJV化を検討
       2007/12/14 
速報 ダウとクウェートのPIC、グローバル石化JVを設立

Freeport の当局は昨年10月に新工場誘致のためダウに7年間の固定資産税免税の提案をしていた。

ーーー

ダウは2004年11月に、テキサス工場のEDCプラント1系列を2005年末までに停止し、VCMの生産も縮小すると発表した。
今後の設備の維持更新費が多額となるのに加え、エネルギー・原料価格の高騰に伴い、採算が合わなくなったためと説明した。
更に2006年8月には、カナダの電解、EDCプラント停止を発表している。27年間経過したプラントを今後長期間維持するためには多額の投資が必要で、現在の想定収益性ではこれを認められないのが理由。
これらの動きから、ダウがクロルアルカリ事業を重視しなくなったとみられた。

一方、シンテックはこれまで原料VCMを全量ダウに依存してきたが、現在ルイジアナ州で塩素45万トン、VCM75万トン、PVC60万トンの工場を建設中で、更に2007年5月には、テキサス州で電解工場(塩素50万トン)とVCM工場(825千トン)を建設する許可申請を同州環境庁に提出した。

       2007/6/1 シンテック、テキサス州にVCM工場の建設許可を申請 

これにより、両社の関係が薄まりつつあるとの見方がなされていた。

今回の動きは関係を再度強化するもので、シンテックのテキサス計画は延期されるのではないかとみられている。

なお、Freeport の当局はシンテックの計画に期待しており、本年1月初めにシンテックに対しても新工場建設に対して7年間の固定資産税免税を決めた。免税額は合計で13百万ドルに達する。

シンテックのルイジアナ州での塩素からの一貫増設の第一期 30万トンは、当初予定では2006年末の完成であったが、需要状況を勘案して1年遅らせ、昨年の中間発表時には本年2月の完成としていた。
今回の発表では本年5月完成予定としている。
(現在の需要の状況では難しいのではないか)

ーーー

ダウは昨年、中東と中国でのクロルアルカリの投資計画を発表している。

中東ではダウはサウジアラムコとの間で、サウジのラスタヌラに世界最大級の石油化学コンプレックスを建設する覚書を締結したが、これにはワールドスケールの電解設備と、VCM、ポリウレタン、エポキシレジンなどが含まれている。

       2007/5/15  アラムコとダウ、世界最大級の石油化学コンプレックス建設

中国では中国の国有石炭最大手・神華集団との間で、陜西省楡林市にワールドスケールのCoal-to-Chemicals コンプレックスを建設するための詳細FS実施の契約を締結した。
計画では "clean coal" technologies を使用し、石炭からメタノール、メタノールからエチレンとプロピレンを生産するが、電解設備も建設し、苛性ソーダ、VCM、有機塩素等を生産する。

       2007/5/21 ダウの海外進出  


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   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  

1月29日の放送「リーダーは太陽であれ」を見た。
主人公は、サウジアラビアのペトロラービグ計画で奮闘する日揮の現場所長・高橋直夫氏。

NHKのPR:
世界最大の産油国・サウジアラビアで建設が進む、投資額 1兆円の巨大石油化学プラント「ペトロラービグ・プロジェクト」。敷地面積は18平方キロ。完成すれば、その規模は世界最大級のものとなる。その中枢部の建設現場の総責任者を務めるのが高橋直夫(56歳)。高専卒業後、日本のプラントエンジニアリング会社に入社後、海外の現場一筋35年のたたき上げで現場トップに上り詰めた、世界屈指のプラント建設のプロだ。100万点に及ぶ部品を、7000人がひとつひとつ組み上げる高橋の現場。トラブルは日常茶飯事。
次々とふりかかる難問に対して、高橋は瞬時に解決策をひねり出していく。サウジアラビアの建設現場に一か月密着。重いプレッシャーのなか、あらゆる手を尽くして仕事を完遂させようとする巨大プロジェクトのリーダーの流儀を描く。

 

「ペトロラービグ・プロジェクト」は住友化学とサウジアラムコの大規模石化プロジェクト。
    
2006/3/25 ペトロラービグ起工式  

日揮はこのうち、エタンクラッカー130万トン/年)と流動接触分解装置High Olefin FCC プロピレン90万トン/年)及び、これら設備に係る設計、機材調達および建設役務をランプサム(一括請負)契約している。

中東の石油化学計画の難しさがよく分かる。

 

再放送予定 2月5日(火) 午前1時5分
        2月5日(火) 午後4時5分


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2007年4Qのナフサ輸入価格は次の通りとなった。

07/10  56,744円/kl
07/11  59,037
07/12  62,850
平均  59,560

この結果、4Qの国産ナフサ基準価格は61,600円/kl となり、1980年2Qの60,000円/kl を抜いて、史上最高となった。

* 国産ナフサ基準価格については 2006/7/29 2Qの国産ナフサ基準価格 49,800円/klに 


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イスラエル最大の石油精製会Oil Refineries Ltd. 124日、同社が50%出資するCarmel Olefins Ltd.が欧州のPPメーカーのDomo Polypropylene BV 49%出資する契約に調印したと発表した。

Carmel Olefins は昨年11月に、欧州PPメーカーの49%を買収する覚書を締結したと述べたが、社名等は明らかにしていなかった。
同社は
20百万ユーロを支払うとともに、2013年から5年間、年に1百万ユーロを支払う。

Carmel Olefins については 2006/7/24 イスラエルのCarmel Olefins、戦闘激化で操業停止 参照
   

Oil Refineries Haifa に年900万トンの製油能力を持っている。
Carmel Olefins に50%出資するほか、100%子会社のGadiv Petrochemical Industries Ltd.香族、脂肪族の溶剤、無水フタル酸、その他を生産している。
このほか、電力と蒸気をHaifa
湾周辺の需要家に供給している。

Domo Polypropylene BV はベルギーのカーペットメーカーのDomo Group の子会社。

Domo Group Domo Industries でカーペットや人工芝生などを製造販売しているが、原料遡及に熱心で、1983年にGent でポリアミドの生産を開始したが、1994年に当時のLeuna-Werke AG 200511月にBASFが買収、20065月にBASF Leunaと改称)からカプロラクタム プラント(能力27千トン)とフェノールプラントを買収した。
その後、350百万ユーロを投じて、この設備の近代化と拡張を行い、カプロラクタム能力を100千トンにすると同時に、次の設備を新設した。 

    
Polyamide 6BCF-yarns、Sulphuric acid、Cumene
        H
ydroxyl ammonium sulphate、Cyclohexanone

更に、Domo Group 2001年、Basell からオランダのRozenburg にある年産 18万トンのPP プラントを買収し、Domo Polypropylene とした。
同工場の生産量の
1/3 Domo が自家消費している。

ーーー

今回の投資はCarmel Olefins の最初の海外への投資で、海外も含めて同社の事業を拡大していくという戦略に基づいている。

 


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MBS価格カルテル問題

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三菱レイヨンは1月24日、同社と米国子会社が米国で提起されていた、モディファイヤー(塩ビ樹脂強化剤=MBS)事業に関する集団民事訴訟について、原告に対して500万ドルの和解金を支払い、和解することで合意したと発表した。

2003年2月、欧州委員会の要請に基づき、米国司法省、カナダ競争局、日本の公正取引委員会は塩ビ樹脂強化剤の販売を巡る国際カルテルに関する同時調査に着手した。

9カ国の14社以上のメーカーに調査が入った。
Akzo NobelRohm and Haas などのほか、日本では三菱レイヨン、呉羽化学(現クレハ)、鐘淵化学(現 カネカ)に調査が入った。

この価格カルテル事件は、公取委が米国や欧州の独禁当局と審査着手前から連携して取り組んだ初めてのケースであった。
公取委は日米間の協力協定を1999年10月に締結しており、EUともこの後、2003年7月に締結した。

ーーー

日本での容疑は、三菱レイヨン、呉羽化学、鐘淵化学の3社が、
19991121日からの価格引き上げ
200012月前後からの価格引き上げ
を合意し、
この分野における競争を実質的に制限したというもの。

3社の当時のMBS事業は以下の通りであった。

鐘淵化学 高砂  35千トン  
カネカ・テキサス  50千トン 鐘化 100%
カネカ・ベルギー  51千トン 鐘化 90%、三井物産 10%
カネカ・マレーシア  15千トン 鐘化 100%
呉羽化学  13千トン  
Kureha Chemicals (Singapore)  30千トン 呉羽 75%、R&H 25%
Rohm and Haas (Scotland)  55千トン 呉羽 25%、R&H 75%
三菱レイヨン 大竹  25千トン  
Metco North America  26千トン) (三レ/Atofina 50/50)*
Metablen Company B.V.(蘭)  ( 13.5千トン) (三レ/Atofina 50/50)*

     * 三菱レイヨンとAtofina のJVは、2002/5に合弁解消、Atofina 100% になった。

呉羽化学は「選択と集中」の観点に立ち、同事業からの撤退を決定し、2003年1月1日にこの事業を提携先のRohm & Haas に譲渡している。呉羽は1981年にMBS技術をRohm and Haas に供与し、その後、協力関係を深めていた。

1. 呉羽化学はプラスチック添加剤事業の全世界営業権をR&Hへ譲渡
 
対象:
    ①MBS系プラスチック改質剤
    ②アクリル系耐候性強化剤、加工助剤
   
2. 両社のMBS製造のJVで、呉羽75%出資Kureha Chemicals (Singapore) 、同25%出資のRohm and Haas (Scotland) Rohm and Haas 100% とする。
   
3. 日本国内では、呉羽が錦工場において製造を継続し、Rohm and Haas に供給する。

ーーー

2003年12月11日、公正取引委員会は、三菱レイヨンと鐘淵化学に対し、排除勧告を行なった。
(呉羽化学は既に事業を譲渡しているため、排除勧告は不要)

両社はこれに応諾せず、公取委は2004年2月に審判開始の決定を行なった。
この審判はまだ続いている。

呉羽化学に対しては、公取委は2005年7月、2億6,849万円の課徴金納付命令を出した。
しかし、同社は、事実関係を含めて、公取委の判断との間に看過できない相違があるとして、審判手続の開始を請求、この審判もまだ続いている。

ーーー

米国においては、米国司法省は、モディファイヤーの販売に関して、価格カルテル、独禁法違反の容疑で3社の米国子会社に対する刑事調査を行ったが、20064に容疑なしとして不起訴となり終了した。

(欧州委員会による調査も2007年1月に終了した。)

しかし、米国のMBSの購入者から、価格維持等の米国独占禁止法に違反する行為により損害を被ったとの主張で、3社の子会社に対してそれぞれ損害賠償請求訴訟(民事集団訴訟)が提起された。

・クレハは2005年11月、原告団に対して500万ドル(約565 百万円)の和解金を支払うとの内容で、原告団と和解した。

・カネカは2007年4月、原告に対して590万ドル(約7億円)の和解金を支払うとの内容で、原告と和解合意した。

・三菱レイヨンは上記の通り、本年1月に
原告に対して500万ドルの和解金を支払い、和解することで合意した。

各社とも、違法な行為は一切存在せず、原告の主張には根拠がないとしながら、今後の訴訟遂行に要する費用、関係者が負担する時間やエネルギー、それらの事業活動への影響等を総合的に考慮した結果、和解が最善であるとの判断に至ったとしている。


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BPは1月18日、北京の人民大会堂で、訪中している Gordon Brown 首相と中国の温家宝首相の見守る中、中国での事業を拡大する一連の契約書の調印を行なった。

BPは、「30年前に進出して以来、中国への投資は40億ドルを超えるが、これらは中国の消費者の生活水準を向上させ、環境を保護するための高品質の製品、資材を供給するという明確な目的を持って行なってきた」とし、これを更に推し進めたいとした。

BP は1970代初めから中国に進出しており、これまでに43億ドル以上を投資している。
その中には、天然ガスの製造、航空機燃料の供給、LPGの輸入販売、燃料販売、潤滑油ブレンドと販売、石油化学、太陽光発電などがある。石油化学には
上海SECCO石油化工(Sinopec とのJV)と下記の酢酸、PTA事業がある。

BPは中国に30以上の子会社・JVを持ち、約4,000人の従業員を抱えている。

今回の契約は以下の通り。

1)クリーンエネルギー商業化センター

BPと中国のAcademy of Sciences (CAS) はこれまで検討してきた Clean Energy Commercialization Centre (CECC) を共同で設立するFSを実施する契約を締結した。

中国内外の個別のクリーンエネルギー技術(石炭ガス化、石炭液化、Coal to chemicalCO2捕捉・貯蔵、炭床メタンなど)を統合し、Polygeneration(複数のエネルギーを併給する熱電併給システム)のような競争力のある統合フィードストック製造流通システムを構築しようとするもの。

200111月にBPはCASと共同でクリーンエネルギー計画を打ち出した。

2)風力発電

BPはBeijing Tianrun New Energy Investment との間で、共同で内蒙古自治区の白雲鄂博(Bayan Obo 近郊に49.5メガワットの風力発電3基を建設、運営する契約を締結した。
両社は内蒙古自治区の他の場所での風力発電に投資することを検討することに合意した。

3)酢酸

BP Sinopec は重慶にある両社のJVのYangtze River Acetyls Company (YARACO) で65万トンの酢酸の新工場建設の覚書に調印した。2011年に生産開始の予定。

1995年にBP 51%、Sinopec 44%、地元 5%のJVでYARACOを設立、当初能力は15万トンであったが、その後増強し、現在は35万トンとなっている。このほか8万トンのエステルも生産している。

なお、BPとSinopecは江蘇省南京市に50/50JVのBP Yangtze Petrochemicals Acetyls Company (BYACO) を設立し、50万トンの酢酸工場を建設している。

BPは石油化学では酢酸とパラキシレン及びPTAに注力している。

PTAに関しては、BPは中国では珠海富華集団とのJVのBP 珠海ケミカル(BP 85%)が第1期 35万トン(その後増強して現在 50万トン)の工場を持つが、現在、第2期 90万トンを建設中で、間もなく完成すれば合計能力は140万トンになる。

 


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EUの欧州委員会は1月23日、NBRのカルテルでバイエルと日本ゼオンに制裁金を科したと発表した。

2000年から2002年にかけて、両社が会合その他を通じて価格を引き上げたり、維持したりしたとしている。
欧州委員会は2003年3月に第三者(名前非公表)からの免責を求めた申告を受け、調査を開始した。

制裁金は以下の通り。

Name 減額
      %
減額
      (Euro)
Fine
      (Euro)
Bayer (Germany)   30  12 380 000  28 870 000
Zeon (Japan)   20   1 340 000   5 360 000
TOTAL      34 230 000

バイエルは再犯のため50%増しとなっている。
両社は調査に協力したため、バイエルは30%、ゼオンは20%の減額を受けた。

欧州委員会では、これが合成ゴム業界では3年程度の間で4度目のカルテル事件であり、これが最後としてほしいとしている。
また、合成ゴム需要家はカルテルでどれだけ高く買わされているかを注意すべきだし、違反企業の株主は制裁金でどれだけ損をしているかに関心を払うべきだと述べた。

日本ゼオンは米国で2002年5月から12月にかけて社名非公表の企業と共謀して価格の維持を図ったとして訴えられ、2005年1月に10.5百万ドルの罰金を支払っている。

また、これに関して米国のNBR需要家から損害賠償の民事集団訴訟を提起され、2005年9月に16百万ドルを支払って和解した。

ーーー

過去のケースは以下の通り。

1)200412月 ゴム薬品 

Name 減額
      %
減額
(Euro million)
Flexsys NV   100     0
Bayer AG    20    58.88
Crompton Europe Ltd.
+Crompton Manufacturing Company, Inc.
(former Uniroyal Chemical Company, Inc.)
+ Chemtura Corporation (former Crompton Corporation)
   50    13.60
General Quimica SA+ Repsol QuimicaSA
+ Repsol YPF SA
   10     3.38
TOTAL      75.86

2)200611月 BR/ESBR 

Name 減額
      %
減額
       (Euro )
Fine
       (Euro)
Bayer, Germany   100  204 187 500        0
Dow, USA    40   43 050 000   64 575 000
Eni, Italy      272 250 000
Shell, Netherlands      160 875 000
Unipetrol, Czech Republic       17 550 000
Trade-Stomil, Poland       3 800 000
TOTAL      519 050 000

   2006/12/5 EC、合成ゴム価格カルテルで5社に約800億円の罰金支払い命令
     

3)200712月 クロロプレン 

Name 減額
      %
減額
        (Euro)
Fine
        (Euro)
Bayer, Germany   100  201 000 000        0
Tosoh, Japan    50   4 800 000   4 800 000
DuPont, US
(うち Dow, US
   25   19 750 000
16 225 000
  59 250 000
  8 675 000
ENI, Italy      132 160 000
Denka, Japan       47 000 000
TOTAL      243 210 000

   2007/12/11 欧州委員会、クロロプレンゴムのカルテルで 243.2 百万ユーロの制裁金
     

   なお、電気化学は欧州第一審裁判所へ提訴した。
    

ーーー

日本ゼオンは、自動車用タイヤなどの汎用ゴム分野で世界屈指の生産量を誇るだけでなく、ゼットポールをはじめとする各種耐油性特殊ゴムでも、種類、量ともに世界のトップレベルを維持している。現在、日米欧三極の生産・販売体制を構築し、さらにマレーシア・タイでの合併事業、シンガポール・上海での販売拠点を通して、アジア市場への販売にも力を注いでいる。(同社HP)

同社は1999年に米Goodyear からNBR事業を買収した。
それ以前に DSM Copolymer から欧州のNBR事業を買収している。
このほか、Enichem からアクリルゴムの事業も買収している。
現在の同社のNBR能力は、日本が45千トン、米国で35千トン、欧州で15千トン、合計95千トンとなっている。

同社は1999年の発表時に、特殊ゴムの世界シェアを次の通りとしている。    

NBR  40%(日本55%、北米50%、欧州20%)
アクリルゴム  54%
ヒドリンゴム  76%
水素化NBR  75%


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Chevron Phillips Chemical は昨年12月、同社のサウジでの3番目の石化事業NCP Project に関し、日本の日揮、韓国の大林産業と設計、機材調達、建設工事EPC)契約を締結したことを発表した。(日揮も受注を発表)

NCP Project Chevron Phillips とサウジの投資会社 Saudi Industrial Investment Group SIIG)の50/50JV Saudi Polymers Companyが実施するもので、オレフィン、ポリオレフィンを製造する。

計画は以下の通り。

立地:ジュベイル工業地区

製品   能力 EPC担当 技術
エチレン エタンクラッカー  1,200千トン 日揮 Lummus
プロピレン metathesis   200千トン 日揮 Lummus OCT(Olefins Conversion Technology)
1-hexene     100千トン 日揮 Chevron Phillips
PE     550千トン 2系列 Daelim  
PP     400千トン Daelim  
PS     100千トン 2系列 Daelim  

日程:建設開始 2008年1月、商業生産開始 2011年9月
原料のエタン、プロパンは
Saudi Aramco から供給を受ける。

 

Chevron Phillips SIIGは、同じジュベイル工業地区に既に2つのJVを持っている。
いずれも
50/50JVとなっている。
今回の計画の
PS用のスチレンモノマー、PP用の不足プロピレンはここから供給する。

1)Saudi Chevron Phillips Petrochemical
   製品:Benzene   485千トン ( CPChemAromax (R)技術)
      
Cyclohexane 220千トン
      
ガソリン
   2000年に生産開始 

2)Jubail Chevron Phillips Company
   製品:ベンゼン
       エチルベンゼン
       SM     715千トン
       プロピレン 140千トン
       ガソリン   300千トン      

   スチレンモノマーのEPCは日揮が受注している。

ーーー

今回の発表では、Saudi Polymers Company の出資は、最終的には、Chevron Phillips 35%となり、新しくサウジに設立されるNational Petrochemical Company (Petrochem65%となるとしている。
(記載はないが、他の2つの
JVも同様と思われる)


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1月11日に薬害肝炎救済法が成立し、15日に原告・弁護団と政府は和解基本合意書を締結した。

被告側の田辺三菱製薬などは未だに何らの発表もしていない。
(報道では田辺三菱製薬広報部では「現在、国との間で補償の配分などを協議している。1月末までに何らかの対応がとれるはず」としているという。) 

ーーー

田辺三菱製薬の前身の三菱ウェルファーマは2007年7月9日に、薬害肝炎事件と同じく血液製剤が原因となった薬害エイズ事件(HIV事件)について、「HIV事件に関する最終報告書」を発表している。
   
http://www.mt-pharma.co.jp/release/nr/mpc/2007/pdf/HIV070709report.pdf

1996年にミドリ十字の株主が起した株主代表訴訟が2002年3月に和解したが、その和解条件として、
役員側が(後継の)三菱ウェルファーマに1億円の和解金を支払うのと同時に、
ミドリ十字がHIV薬害事件の惹起を阻止できなかった原因について調査検討し、薬害事件の再発防止策についての提言をとりまとめること
が決められた。

上記報告はこれに基づくもので、
  
第1編 HIV薬害事件の惹起を阻止できなかった原因
  第2編 再発防止策についての提言
から、成っている。

原因の背景としては、当時のミドリ十字に関して、以下の点を挙げている。
 ・行政当局の意向・動向を窺うに汲々とし、自主的な判断で実行する意識に欠けていた。
 ・上司の指示がなければ動かないという企業風土
 ・創業者の死後、全社横断的な観点で総括・指揮する人・組織の欠落
 ・業績回復を急ぐ意識
 ・製造元の子会社アルファ社(アボットから買収)の管理が不適切

そして、再発防止策として
 ・意識改革・社内風土の改善
 ・コーポレート・ガバナンスの強化
 ・組織の改善
 ・安全性確保の措置
 ・グループ全体での取組み
を挙げている。

ーーー

HIV事件は、血友病等の治療のために投与された血液製剤にHIVが混入していたため、多くの患者がHIVに感染し、エイズを発症した事件である。

1989年、非加熱製剤の投与によりHIVに感染したとする被害者らが、国および製薬企業5社に対して、東京地裁と大阪地裁に損害賠償請求訴訟を提起した。

製薬企業5社
(1)ミドリ十字:製造販売:原料血漿を米国子会社Alpha Therapeutic (Abbott
から買収)から輸入
(2)
化学及血清療法研究所:製造販売
(3)
バクスター:親会社の米 Baxter International から輸入
(4)バイエル薬品(カッタージャパンを合併継承):米 Bayer Corp. から輸入
(5)日本臓器製薬:オーストリア
Immuno AG から輸入

1995年10月6日、東京、大阪両地裁が統一的な解決を図るため協議し、一次和解勧告を同時に提示した。

和解案概要:

  : 原告の感染者、発症者、死亡者全員に一人一律 4,500万円を払う。
  和解金の負担割合は製薬会社6、国4とする。
  原告らが和解成立時までに製薬会社など出資の友愛福祉財団から受けた給付金のうち、特別手当、遺族見舞金、遺族一時金の5割に相当する額を和解金から控除する。
  未提訴者についてはなお協議する。
  和解一時金による救済を補完する恒久対策はなお協議する。

裁判長は以下の見解を示した。
 ◆原告らの被害を放置することは許されない
 ◆製薬会社、国は救済責任がある
 ◆早期・全面的に救済する和解が必要とした。

このまま裁判で判決を出せば、最終的に確定するまで被害の救済が行われないという問題点を重視、「一刻も早く和解によって原告らHIV感染者の早期かつ全面的救済を図ることがぜひとも必要で、(約2千人にのぼるエイズウイルス感染者全員を)一律かつ平等に救済する内容でなければならない」と述べ、和解の成立に向けた関係者の努力を促した。

しかし、特に⑤の「恒久対策」の負担などをめぐって難航した。
恒久対策に伴う追加負担分を聞いた外資系企業が、「本国への影響が大きすぎる」として和解協議をポイコットする姿勢を見せた。
国も、手当などを予算年度を超えて継続して支払うことには難色を示した。

膠着した状況が変わったのは1996年2月9日、菅直人厚相の「AIDSファイル」発見の記者会見だった。
「確認できない」はずの資料が見つかって、菅厚相が初めて国の責任を認める姿勢を示した。
バイエル薬品も裁判所に基金方式で救済資金を出す「試案」を出した。

1996年3月7日、両地裁は第二次和解案と所見を出した。
以下の点が追加された。(国は和解金以外の各費用も、4割を負担する)

・健廉管理手当
  HIV感染者でエイズを発症しているものに対し、一人当たり月額15万円を給付する。(国の負担割合は4割)
・友愛福祉財団による救済事業継続(5年程度)
  (国が救済事業に要する資金のうち4割相当額を拠出)

・弁護士費用等
 原告らに対し、弁護土費用・訴訟費用として、感染者一人当たり350万円を支払う。
 第七次訴訟以降の原告らについては、150万円。(負担割合は製薬会社6、国4)

・被告製薬会社間の負担割合
 1983年当時の国内の非加熱濃縮製剤のシェアによる。

・その他の恒久対策は国がHIV感染者と引き続き協議を行い、適切な措置を取る。
  HIV感梁症の研究治療センターの設置、
  拠点病院の整備充実、
  差額ベッドの解消、
  二次・三次感染者の医療費等のHIV感染症の医療体制

1996年3月29日、東京地裁103号法廷で和解が成立した。 
その後、同地裁別室で確認書調印式が行なわれ、菅直人厚相が「国を代表して心からおわびします」と述べた。

確認書では、「本件和解及びその前提とされた裁判所の各所見に基づき、本件非加熱濃縮製剤の使用によりHIV感梁被害を受けたすべての血友病患者及びその遺族が被った物心両面にわたる甚大な被害を救済するため、次のとおり合意に達したことを確認する」とし、最初に以下の誓約を行なっている。

1)厚生大臣及ぴ製薬会社は、本件について裁判所が示した前記各所見の内容を真摯かつ厳粛に受けとめ、わが国における血友病患者のHIV感染という悲惨な被害を拡大させたことについて指摘された重大な責任を深く自覚、反省して、原告らを含む感染被害者に物心両面にわたり甚大な被害を被らせるに至ったことにつき、深く衷心よりお詫びする。

2)厚生大臣は、サリドマイド、キノホルムの医薬品副作用被害に関する訴訟の和解による解決に当たり、前後2回にわたり、薬害の再発を防止するため最善の努力をすることを確約したにもかかわらず、再び本件のような医薬品による悲惨な被害を発生させるに至ったことを深く反省し、その原因についての真相の究明に一層努めるとともに、安全かつ有効な医薬品を国民に供給し、医薬品の副作用や不良医薬品から国民の生命、健康を守るべき重大な責務があることを改めて深く認識し、薬事法上医薬品の安全性確保のため厚生大臣に付与された各種権限を十分活用して、本件のよろな医薬品による悲惨な被害を再ぴ発生させることがないよう、最善、最大の努力を重ねることを改めて確約する。

3)製薬会社は、安全な医薬品を消費者に供給する義務があることを改めて深く自覚し、本件のような医薬品による悲惨な被害を再び発生させることがないよう、最善、最大の努力を重ねることを確約する。

なお、この和解の当事者とならなかった被害者については、訴訟上一定の手続を踏んだ上で、同一内容にて和解することとされ、1996年3月の和解以降、2007年6月末現在までに1,378名の被害者と和解が成立しており、現在もなお係属中の訴訟がある。

注1)サリドマイド訴訟

サリドマイドは「安全な」睡眠薬として開発・販売されたが、妊娠初期の妊婦が用いた場合に催奇形性があり、四肢の全部あるいは一部が短いなどの独特の奇形をもつ新生児が多数生じた。
日本においては、諸外国が回収した後も販売が続けられ、この約半年の遅れの間に被害児の半分が出生したと推定されている。
大日本製薬と厚生省は、西ドイツでの警告や回収措置を無視してこの危険な薬を漫然と売り続けた。
1974年10月13日、全国サリドマイド訴訟統一原告団と国及び大日本製薬との間で和解の確認書を調印、続いて26日には東京地裁で和解が成立した。以後、11月12日までの間に、全国8地裁で順次和解が成立した。
(企業と国の負担比率は2:1)

確認書
  「厚生大臣及び大日本製薬は、前記製造から回収に至る一連の過程において、催奇形性の有無についての安全性の確認、レンツ博士の警告後の処置等につき落ち度があったことに鑑み、右悲惨なサリドマイド禍を生ぜしめたことにつき、薬務行政所管庁として及び医薬品製造業者としてそれぞれ責任を認める」
  「厚生大臣は、本確認書成立にともない、国民の健康を積極的に増進し、心身障害者の福祉の向上に努力する基本的使命と任務をあらためて自覚し、今後、新規薬品承認の厳格化、副作用情報システム、医薬品の宣伝広告の監視など、医薬品安全性強化の実効をあげるとともに国民の健康保持のため必要な場合、承認許可の取消、販売の中止、市場からの回収等の措置をすみやかに講じ、サリドマイド事件にみられる如き悲惨な薬害が再び生じないよう最善の努力をすべきことを確約する」
    

注2)キノホルム(スモン)訴訟

スモンは、腹部膨満のあと激しい腹痛を伴う下痢がおこり続いて、足裏から次第に上に向かって、しびれ、痛み、麻痺が広がり、ときに視力障害をおこし、失明にいたる疾患である。膀胱・発汗障害などの自律障害症状・性機能障害など全身に影響が及ぶ。
スモンは、整腸剤「キノホルム」を服用したことによる副作用だと考えられている。1970年8月に新潟大学の椿忠雄教授が疫学的調査を踏まえてキノホルム原因説を提唱し、厚生省はこれを受けてキノホルム剤の販売を直ちに停止した。
国と製薬会社の武田薬品、日本チバガイギー、田辺製薬に対する裁判が行なわれた。
田辺製薬はウイルス説を全面展開し和解を拒否してきたが、1979年、キノホルムとスモンの因果関係を認め、9月15日に、国及び製薬企業がその責任を認め、被害者救済の道筋を定めた確認書に調印した。
(企業と国の負担比率は2:1)
このスモン被害者の運動は1979年9月の薬事二法(薬事法の改正と医薬品副作用被害者救済基金法成立の原動力となった。

確認書
  「被告国は、安全かつ有効な医薬品を国民に供給するという重大な責務をあらためて深く認識し、今後薬害を防止するために、新医薬品の承認の際の安全確認、医薬品の副作用情報の収集、医薬品の宣伝広告の監視、副作用のおそれのある医薬品の許可の取消など、薬害を防止するために必要な手段をさらに徹底して講ずるなど行政上最善の努力を重ねることを確約する。」
  「被告製薬3社は、スモン被害者が強く訴えてきたノーモア・スモンの要求が極めて当然のものであることを理解し、これを機会に、医薬品の製造・販売等に直接携わるものとして、医薬品の大量販売・大量消費の風潮が薬害被害発生の基盤ともなり得ることを深く反省し、医薬品の有効性と安全性を確保するため、その製造・販売開始時はもとより、開始後においても、副作用の発見及び徹底した副作用情報の収集につとめ、それらに対する適切な評価や必要かつ充分な各種試験を実施し、更にそれらのデータを厚生省に提出し、医者や使用者にも副作用情報を提供し、効能や用法・用量に関しては、適正な宣伝、情報活動をなすなどし、薬害を発生させないための最高最善の努力を払う決意を、スモン被害者のみならず国民全体に表明する。」
    

ーーー

本件では、上記の民事訴訟、株主代表訴訟の他に、以下の刑事訴訟がある。

①元帝京大学副学長 安部英業務上過失致死事件

1985年5月、6月頃の帝京大学医学部附属病院における非加熱製剤(日本臓器の非加熱製剤)の投与によって、血友病患者がHIVに感染し死亡したという被害事実について、元帝京大学副学長である医師安部英が、業務上過失致死罪にて東京地裁に起訴された。
2005年4月に被告人が死亡したため、公訴棄却となって終結している。

②元厚生省生物製剤課長松村明仁 業務上過失致死事件

1996年10月、上記帝京大学ルート刑事事件およびミドリ十字元3社長業務上過失致死事件で採り上げられた2件の被害事実について、厚生省の元生物製剤課長である松村明仁が、業務上過失致死罪で東京地裁に起訴された。
2001年9月、帝京大学ルート刑事事件における被害事実については無罪(検察官は上告せず、無罪確定)、
ミドリ十字ルート刑事事件における被害事実については執行猶予付有罪(禁鋼刑)の第1審判決が出された、双方が控訴したが、双方の控訴が棄却された。被告人は、現在上告中。

③ミドリ十字 元3社長業務上過失致死事件

大阪医科大学附属病院における1986年4月の肝臓病治療の際に、止血を目的とした非加熱濃縮第Ⅸ因子製剤(クリスマシン)の投与によって,患者がHIVに感染し死亡したという被害事実について、ミドリ十字の当時の歴代3社長(松下廉蔵・須山忠和・川野武彦)が、業務上過失致死罪で大阪地裁に起訴された。
2000年2月、それぞれ禁鋼刑に処する旨の有罪判決があり、被告人3名は控訴したが、被告人川野武彦は死亡のため公訴棄却となり、その余の被告人2名については、大阪高裁が第1審判決を破棄し、刑期が短縮された。

ーーー

この後、薬害ヤコブ訴訟が起こった。

脳外科手術の際、ヒトの死体から取った脳硬膜(脳を覆っている硬い膜)の移植を受けた患者がクロイツフェルト・ヤコブ病(以下「ヤコブ病」)を発症した。
ドイツのB.Braun Melsungenから輸入(輸入は日本ビー・エス・エス)したヒト乾燥硬膜ライオデュラが、病原体に汚染されていた。

B.Braun は製造に当たり、ドナーの選択をせず、ドナーの記録もなく、多くの硬膜をプール処理し、滅菌が十分でないなど、ずさんな管理をしていた。

厚生省は、1973年に単なる書面審査でライオデュラの輸入を承認したが、1997年の使用禁止までの間、硬膜移植によるヤコブ病伝達の危険性に関する多くの論文や報告があったにもかかわらず、全く何の措置も取らなかった。
1987年に硬膜移植後にヤコブ病を発症した第1号患者の報告論文が発表され、アメリカではその年に使用を禁止したが、厚生省は何もしなかった。

感染した患者と家族・遺族が1996年11月に大津地裁に、1997年9月に東京地裁に訴訟を提起した。

両地裁は和解案を示し、2002年3月25日に確認書に調印した。(企業と国の負担比率は2:1)
確認書には国と企業のおわびが明記された。

厚生大臣は、(これまでの訴訟の和解による解決で)薬害の再発を防止するための最善の努力をすることを確約したにもかかわらず、本件のような悲惨な被害が発生するに至ったことを深く反省し、--- としている。

2007年3月、2005年に提訴した患者(2006年に死亡)の和解が大津地裁で成立した。
計42件の大津訴訟(患者42人は全員死亡)は、これですべて和解が成立した。
東京訴訟は65件のうち55件で和解し、10件で協議している。

ーーー

上記の4件の和解で、ミドリ十字の入っている薬害エイズ事件のみ、企業と国の負担が6:4で、他はすべて2:1となっている。
今回の薬害肝炎事件での負担割合について、舛添厚労相は、これまでの薬害事例などを参考に2:1で折衝中としている。

 


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殺虫剤最大手のアース製薬が3位のフマキラーの筆頭株主になったことが、1月19日の日本経済新聞で報じられ、各紙がフォローした。

フマキラーの創業者一族の大下(おおしも)高明氏が8.5%を所有するが、アースは市場で買い進め、わずかだがこれを超えて筆頭株主になった。

国内の殺虫剤市場は成長が頭打ちで、販売促進競争が過熱気味となっており、これに対処するため経営統合を目指しているとみられている。また、フマキラーの海外の営業基盤もアースにとって魅力である。

アース製薬はこの報道を受け、フマキラーに正式に経営統合を申し入れした事実はなく、株式取得はあくまでも「純投資」が目的、としている。しかし、1997年ごろから取得を始めており、今後も買い進める方針。フマキラーに非公式に経営統合を打診したことも認めており、「統合する場合は合意のもとで行いたい」としているという。
フマキラーは、アースからの具体的な提案はなく、経営統合を検討したことはない、としている。

なお、フマキラーでは2006年5月に、買収防衛策を決めている。

特定株主グループの議決権割合を20%以上とすることを目的とする買付行為に対して、
 1)大規模買付情報の提供を求め
 2)取締役会による評価、検討を行なうというもの。

ルール遵守しない場合には、新株発行等の対抗措置を取る。
ルールを遵守した場合、反対意見の表明などはありうるが、原則として対抗措置とらない。

ーーー

フマキラーによると、国内の家庭用殺虫剤市場は約1,000億円となっている。 

国内の家庭用殺虫剤市場(2007年:フマキラー推定)

   種類別  
   電池式   75億円
   マット式   18
   リキッド式  139
   線香   92
   蝿・蚊エアゾール  113
   ゴキブリ 〃  129
   不快害虫 〃  155
   医薬品(薬局扱い)  115
   その他  158
   (合計)  995
 
害虫別  
 蚊  388億円
 蚊・蝿  113
 ゴキブリ  209
 ダニ   59
 蟻・蜂その他不快害虫  154
 ねずみ   42
 その他   30
 (合計)  995
   

アース製薬、大日本除虫菊(金鳥)、フマキラーが熾烈な競争をしており、これに、大正製薬の殺虫剤「ワイパア」の商標貸与を受けた白元、中外製薬の「バルサン」事業を譲受したライオンの5社で全国シェアの9割以上を占めている。
このほか、蚊取り線香の発祥の地の和歌山県有田市近辺などに多数のメーカーがある。

  蚊取り線香の歴史については  2006/8/21 蚊取り線香物語 ピレスロイドの歴史
     

これに対して、同じくフマキラーによると、全世界の家庭用殺虫剤市場は約 6,000億円(小売ベース)で、アジアが50%を占めている。

世界の家庭用殺虫剤の地域別シェア(フマキラー推定)

    アジア  日本  17%
 インドネシア   4
 インド   5
 その他  24
 合計  50%
  北米  20%
  中南米  13%
  欧州・アフリカ  17%
  合計 100%
       

フマキラーはインドネシア、インド、マレーシアに合弁会社を持ち、10カ国で現地ライセンス生産を行い、68カ国に輸出している。(77カ国で同社のブランドで販売している)
同社の2007年3月期の連結売上高201億円のうち、海外売上高は52億円で、25.7%を占めている。

フマキラー株式の4.8%を所有し、第3位株主のエステーは、フマキラーインドネシアで消臭芳香剤を生産している。

ーーー

フマキラーは1890年に大下(おおしも)回春堂(薬種商)として創業、1920年に専売特許殺虫剤「強力フマキラー」を開発した。
1924年に株式会社とし、1962年にブランド名をとって、社名をフマキラーに変更した。
(フマキラーの名は、
Fly, Mosquito Killer 「ハエ・蚊・キラー」から取っている)

1967年に世界ではじめての電気蚊取「ベープ」を開発した。

ーーー

アース製薬は1892年に木村秀哉が大阪で創業、1916年に炭酸マグネシウムの国産化に成功した。
1925年に木村製薬所を設立、1929年に家庭用殺虫剤アースを発売、その後、蚊取り線香、エアゾールを発売した。

1964年にアース製薬と改称したが、その後倒産、1970年に大塚製薬が資本参加し、大塚グループに入った。

1973年に「ごきぶりホイホイ」発売で売上を伸ばし、1978年には水を注いで蒸散させる「アースレッド」を発売している。

 


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ガソリン税に関する租税特別措置法の期限切れの可能性が高まり、与野党の攻防が激しくなってきた。

通称ガソリン税とは揮発油税と地方道路税法に基づき揮発油(ガソリン)に対して課せられる税金で、1954年に道路特定財源となった。

税率は、揮発油税法(第9条)でリットル 24.3円、地方道路税法(第4条)で同 4.4円と決められているが、1974年に第7次道路整備5箇年計画の財源確保のため「暫定的」に租税特別措置法で引き上げられ、その後、順次引き上げられている。

現行の租税特別措置法では以下の通りとなっている。

  基本税率 追加分 暫定税率
揮発油税  24.3円  24.3円  48.6円
地方道路税   4.4円   0.8円   5.2円
合計  28.7円  25.1円  53.8円

今回租税特別法の延長ができなければ、基本税率に戻り、リットル 25.1円だけガソリン代が安くなることとなる。

これは国民にとっては、道路を取るか、ガソリン代の値下がりを取るかの選択になる。

ーーー

問題は今回の期限切れの租税特別措置法がこれだけに止まるのではなく、合計で43件あることである。
研究開発税制や中小企業の投資促進税制など法人税減税が19件、他に土地の所有権移転登記や、産業再生法に基づくリストラ計画に伴う登録免許税の軽減措置も含まれる。

従来、租税特別措置法は一つ一つの措置を個別審議するのではなく、すべての措置を1本の租特法改正案としてまとめて審議されることになっていた。
ガソリン税で野党が反対すれば、改正案が成立せず、対象となる租税特別措置のすべてが期限切れとなる。

このため、野党側はガソリン税だけを分離して審議するよう要求しているが、与党側は要求には応じない構えである。

ーーー

石油化学業界にとって最大の問題は石油化学用ナフサの石炭石油税免税措置の延長が今回の租税特別措置法改正案に含まれていることで、改正案が通らない場合、免税措置が切れることとなる。

石油石炭税法(昭和53年4月18日法律第25号)では、原油及び石油製品、ガス状炭化水素(LPG及びLNG)、石炭に対して石油石炭税が課せられている。

現在の税額は次の通り。

  原油及び輸入石油製品  1キロリットルにつき 2,040円
  LNG  1トンにつき 1,080円 (平成17,18年度は960円)
  LPG   1トンにつき 1,080円 (平成17,18年度は940円)
  石炭  1トンにつき  700円 (平成17,18年度は460円)

租税特別措置法では、
 石油化学製品製造用の輸入ナフサ、灯油、軽油に関して、石炭石油税が免税となり(租特法第90条の4)
 石油化学製品製造用の国産ナフサ、灯油、軽油に関して、石炭石油税が還付されることとなっている。(同第90条の5)
 (灯油、軽油は2004年4月から対象に追加となった)

この租税特別措置はこれまで、2年ずつ延長されており、本年3月31日で期限となる。

なお、2006年にナフサは
  生産  21,758kl 
  輸入  28,360kl  
となっており、2,040円/kl が課税されると、年間約1,000億円のコストアップとなる。

2006年のエチレンセンター11社の経常損益は2,725億円であった。


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アラブ首長国連邦アブダビの国際投資会社IPICはこのたび、カザフスタンの国営石油・ガス会社のKazMunayGas との間で、西カザフスタンで石油化学コンプレックスを建設する覚書を締結した。現在、FSを実施中。

IPIC (International Petroleum Investment Company) はアブダビ国営石油会社 ADNOC50%、アブダビ投資公社とアブダビ国営銀行のJVが50% 出資する会社で、アブダビ政府の石油・化学分野での海外投資を担当する。

デンマークの石油会社 Borealis は当初はStatoil 50%Neste 50% JVであったが、現在は IPIC 65%、オーストリアのOMV 35% 出資となっている。 

カザフスタンには現在、KazMunayGas 15%、私企業で多角化したコングロマリットのSat & Company 85%出資する合弁会社 Kazakhstan Petrochemical Industries (KPI:旧称 Atoll ) Aktau Polystyrene Plant SM 300千トン/ PS 54千トン) と Atyrau Polypropylene Plant PP 30千トン)がある。

カザフスタン政府は世界市場でのプレーヤーになることを目指し、海外大手と提携して石油化学コンプレックスを建設することを決めた。
KazMunayGas Sat & Company のJVのKPI で、西カザフスタンの天然ガスを利用して大規模石油化学コンプレックスを建設することとした。
Shellや韓国のLG、中国企業などが提携相手として挙げられた。

第一期として、Tenghiz ガス田のドライガスからKulsary 近郊でエタン抽出を行い、Atyrau でエタンクラッカーとプロパン脱水素設備、PEPPプラントを建設し、第二期ではKashagan ガス田のドライガスを利用してコンプレックスを拡大するというもの。

第一期はエチレン120万トン、プロピレン40万トン、HDPE 40万トン、LLDPE 40万トン、PP 40万トンを考えており、12億ドルの投資を想定、最終的にはPE 150万トン、PP 45万トンを計画している。

Tenghiz ガス田1993年から開発されている。
開発会社は
Tengizchevroil で、株主はChevron (50%)ExxonMobil (25%)KazMunayGas (20%) とロシアのLukArco (5%)
となっている。
KazMunayGas は現在、Chevron との間で、ガスの価格を交渉している。

Kashagan ガス田はカスピ海北部にある海上ガス田で、Eni が主体で開発しており、日本の国際石油開発 (Inpex) も参加している。
出資比率は、Eni (18.52%)Shell (18.52%)Total (18.52%)ExxonMobil (18.52%)ConocoPhillips (9.26%)KazMunayGas (8.33%)、Inpex (8.33%)

 参考 2007/9/6 カザフスタンの石油開発中断 

2008年1月14日、カザフスタン政府はKashagan 油田の持分変更で合意したことを発表した。17.8億ドルを支払い、KazMunayGas持分を倍増し、トップ4社に並ぶ。スタート時期は2011年末に延期された。
   新比率 KazMunayGasEniShellTotalExxonMobil 各
16.81%
        ConocoPhillips 8.40%Inpex 7.55%

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

2005年12月、Foster Wheeler KazMunaiGas との間で新しい石油化学コンプレックスの詳細FS実施契約を締結した。

20063月にBasell KazMunayGaz SAT との間でこの石化計画参加の覚書を締結した。2010年のスタートを目指すとした。
Sat KPI の持株のうち35%Basellに譲渡し、Sat 50%Basell 35%KazMunayGaz 15% 出資とすることも含まれている。

しかし、その後の進展は報道されていない。

今回の IPICとの覚書締結はこれに代わるものと思われる。

IPICは現在 110億ドルの海外投資を行なっており、2007年初めには、世界の石油・エネルギー産業での戦略的投資者として5年間で海外投資を200億ドルまで増やす方針を明らかにしている。  


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SABICはこのたび、OSOS Petrochemical (新設)との間で、PBT などを生産するJV設立の覚書を締結した。

JVは投資額10億ドルで、Yanbu で以下の製品を製造する。

 PBT  60,000t/y
 ブタンジオール  50,000
 テトラヒドロフラン   3,500
 無水マレイン酸  85,000

SABIC2ヶ月以内でJV計画を検討する。参加する場合は同社は35%の出資をすることとなっている。

OSOS Petrochemical Yanbu PBT を生産するため、サウジの私企業 United Maritime Lines によって設立された。
原料の
ブタンは石油鉱業省により割当を受けている。

同社は同社の目標を、エンプラとスペシャルティ製品製造のワールドリーダーになることとしている。製品は世界中で販売することを目指している。

2007年2月にFoster Wheeler は同社から計画の基本設計(FEED) とプロジェクト管理 (PMC) の業務を受託した。
 

なお、SABICは GE Plastics を買収しSABIC Innovative Plastics と改称したが、同社でもPBTを扱っている。

 


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EU、医薬業界を調査

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EUは1月16日、PfizerGlaxoSmithKlineSanofi Aventis などの医薬メーカーを立ち入り調査した。

EU Competition Commissioner のNeelie Kroes は、全医薬業界を調査しており、なぜ新薬が出ないのか、ジェネリック医薬品の発売が遅いのかを調べるとしている。調査には1年以上かかるとみられている。
立ち入り調査は極秘資料が廃棄されるのを防ぐため。

世界の三大医薬メーカーのPfizer (米)、GlaxoSmithKline (英)、Sanofi-Aventis (仏)のほか、AstraZenecaMerck Sharp & DohmeJohnson & JohnsonWyethSandoz Novartis の部門)、Teva (ジェネリック医薬品メーカー)は調査を受けていることを明らかにしている。

EUは米国の当局とも連携をとっているとしている。

医薬メーカーが特許権を濫用したり、訴権を濫用したりして新しい企業が市場に参入するのを妨害しているのではないかを調べる。

AstraZeneca が潰瘍薬のLosec のジェネリック品出現を遅らせるため特許当局に誤った情報を提出したとして2005年に 60百万ユーロの罰金を科せられたのが一つのきっかけとなっている。
1995年から1999年までに40 の新薬が出たが、2000年から2004年の間には28 しか新薬が出ていないが、これは競争力が働いていないことを示しているのではないかと見ている。

EUは競争を制限するような合意があるのか、支配的地位の一方的な濫用がこれに結びついているのかどうかを調べたいとしている。
また、特許紛争の解決のような医薬メーカー間の取引も調べ、
EUの競争ルールに違反していないかどうかチェックする。

欧州は医薬品に毎年2000億ユーロ(一人当たり400ユーロ)を使用している。

EUではテレコミュニケーション、エネルギー、ファイナンシャルサービスなどの分野で同様の調査を行なっている。


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米国商務省は1月17日、2007年12月の住宅着工件数を発表した。

季節調整済みの年率換算は予想の1,150千戸を大きく下回って 1,006千戸となった。
1991年5月の 996千戸以来の16年7ヶ月ぶりの低水準となった。
2006年1月は2,265千戸で最高となっており、これと比較すると半分以下で、1,259千戸も低い。

2007年の合計も 1,353.7千戸と、1993年の 1,288千戸以来、14年ぶりの低さとなった。
前年比では 24.8%減で、これは1980年の26.0%以来の大きさ。

バーナンキ米連邦準備制度理事会議長は1月17日の下院予算委員会で証言し、サブプライムローンの焦げ付きは、現時点で1,000億ドルに達し、今後「その数倍」に膨らむ恐れがあるとの見方を示した。ただ5,000億ドルには達しないとしている。

米国の住宅ローン残高は約10兆ドルで、そのうち、サブプライムローンの残高は1兆3千億ドル。 変動型ローンで2008年末までに高利率に金利が改定されるものが8,000億ドル規模あるといわれる。

 


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INEOS 1月11日、BPから酢ビモノマーとエチル酢酸事業を買収することで合意したと発表した。
取引には英国の
Hull 近郊の Saltend 工場にある25万トンの酢ビモノマー工場(2002年稼動)と25万トンのエチル酢酸工場(2001年稼動)とTeesside からSaltend までのエチレンパイプラインを含んでいる。

買収完了後、酢ビモノマーはINEOS Enterprises に属し、エチル酢酸はINEOS Oxide に属することとなる。

INEOS Enterprises は旧称 INEOS Chlor Enterprises で、電解などのほか、エステルも扱っている。
INEOS Oxide EO、EGが主力だが、2001年にBPから酢酸エステル事業(オランダの工場を含む)を買収している。

INEOS は2005末にBPが同年4月に石油化学の大半を分離して設立した Innovene を買収している。
  
2006/6/14 事業買収で急成長した化学会社 

ーーー

BP20073月に、これら事業の売却を決めたことを発表している。
これにより、酢酸と無水酢酸に集中するとしている。

BP は当初、石油化学については7つのコア事業を決めていた。
エチレン、
HDPEPP、アクリロニトリル、PTA、パラキシレン、酢酸であった。

20043月に同社は、アジア市場で成長が著しく、BPが技術面で優位に立つadvantaged products(PTA、パラキシレン、酢酸)に集中するとの戦略を発表、同年4月にオレフィンと誘導品の売却の意向を発表した。

200541日に石油化学の大半をInnoveneとして分離2005年末にIneosに売却した。

なお、石油化学のうち、上海SECCO石油化工(Sinopec とのJV)については、Sinopec との間で2つの酢酸JV(重慶のYarco Acetyls、南京のBP YPC Acetyls Company (Nanjing) Ltd. をもつ関係で、BPに残している。
   
2006/4/6 中国のエチレン合弁会社ー1 

 

BPの現在の石化事業の体系は以下の通り。

BPの Saltend 工場には、今回売却する酢ビモノマー 25万トン、エチル酢酸 25万トンのほかに、酢酸 60万トンと無水酢酸 15万トンのプラントがある。

BPとそのJVの世界全体の能力は、酢酸 290万トン、無水酢酸 15万トン、酢ビモノマー 40万トン、エチル酢酸 30万トンとなっている。

PTAではBPは30年以上にわたり世界のリーダーで、2006年4月現在で、アジア、米大陸、欧州に21の工場を持ち、合計能力は900万トンを超え、JVを含めた世界シェアは31%となっている。
中国では珠海富華集団とのJVのBP珠海ケミカル(BP 85%)が第1期 35万トン(その後増強して現在 50万トン)の工場を持つが、現在、第2期 90万トンを建設中で、間もなく完成すれば合計能力は140万トンになる。

PTA状況について
 
2006/7/26 
BPが韓国のPTA事業から撤退 


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薬害肝炎救済法成立

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薬害肝炎救済法(特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第IX因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法)は1月8日、衆院本会議で全会一致で可決、1月11日、参院院本会議で全会一致で可決、成立した。

原告・弁護団と政府は15日、和解基本合意書を締結した。

福田総理は基本合意書に調印した「薬害肝炎訴訟」の原告・弁護団100人余りと面会し、「行政の対応が遅れたことを情けなく思っている」とあらためて謝罪し、薬害の再発防止に努める考えを伝えた。

これまでの経緯は以下の通り。

1964年、日本で初めて、フィブリノゲン製剤の製造・販売が、1972年には、第9因子製剤の製造・販売が開始された。これらの血液製剤は止血剤として使用され、とりわけフィブリノゲン製剤は、先天性低フィブリノゲン血症のほか、産科出血や重傷外傷、外科的治療などに伴う出血に対し、止血剤として幅広く投与された。

しかし、これらの血液製剤にはC型肝炎ウイルスが混入しており、その結果、多くの人がC型肝炎に感染した。

薬害肝炎訴訟は、このような血液製剤を製造・販売した製薬企業(現三菱ウェルファーマ、子会社のベネシス、日本製薬)の責任を追及し、さらには、血液製剤の製造を承認した国の責任を追及する訴訟である。

三菱ウェルファーマ(現 田辺三菱製薬)は2001年10月に三菱東京製薬とウェルファイドが合併して設立された。
ウェルファイド(旧称 吉富製薬)は1998年4月に(旧)吉富製薬がミドリ十字を吸収合併した。
* ミドリ十字は薬害エイズ事件の民事訴訟被告製薬5社の1社(他は、バイエル薬品、バクスター、化学及血清療法研究所、日本臓器製薬)

三菱ウェルファーマは2003年10月1日に、血漿分画製剤事業を安全分社化し、株式会社ベネシスを設立した。

日本製薬は、1951年に我国で初めてエタノール分画法によるガンマグロブリンの製造に成功し、以後日本の栄養輸液製剤及び血漿分画製剤のパイオニアとして事業基盤を固めた。
武田薬品グループ(連結企業群)の中で、血漿分画製剤、栄養輸液製剤、殺菌消毒剤、ドリンク剤の製造販売事業に事業領域を特化した、いわゆるスペシャリティファーマ。

2002年10月、東京13名、大阪3名の被害者が原告となり、東京地裁および大阪地裁で損害賠償を求めて提訴し、その後、福岡地裁、名古屋地裁、仙台地裁で次々と提訴した。

血漿製剤:

血液の45%は赤血球、白血球、血小板の血球成分から成る。
残りが血漿で、90%が水分で、残りの10%の固形成分のうちの70%がタンパク質で、アルブミン、免疫グロブリン、凝固因子などがある。

凝固因子は12種類あり、発見順にローマ数字がつけられており(但しⅥは欠番)、第1因子がフィブリノーゲン・フィブリンである。

フィブリノゲン製剤とは、このフィブリノゲンをプール血漿(一定数の供血者の血漿を混合中から分離精製して製造される血漿分画製剤である。

血液製剤は図のような工程でつくられる。(朝日新聞から)

アメリカではFDAが、プール血漿由来のフィブリノゲン製剤が肝炎ウイルスに汚染される可能性が高いことと効果が疑わしいこと及びフィブリノゲン製剤の代わりとなる製剤として、濃縮凝固因子(クリオプレシピテート)が利用可能であることを理由に、1977年12月、フィブリノゲンと同成分の製剤の製造承認を取り消した。

日本国内で当初販売されていた製剤では不活化処理がなされており、C型肝炎ウイルスを不活化していたが、1985年に不活化処理方法が変更され、B型肝炎ウイルスのみの不活化となり、非A非B肝炎発生報告例が増加した。

 

過去の各地裁の判決は以下の通り。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注 1985年8月は不活化処理方法の変更時で、これによりC型肝炎感染の危険性を一層高めた。
   1988年6月はミドリ十字が緊急安全性情報を配布し返品を要請(以後、販売数量激減)。

詳細は 2007/8/2 薬害C型肝炎で名古屋地裁判決    

ーーー

2007年10月、薬害C型肝炎訴訟の被告となっている田辺三菱製薬(旧三菱ウェルファーマ)が、2002年に提出した血液製剤投与でC型肝炎ウイルスに感染した恐れのある418人のリストを厚労省内に保管されていたことが明らかになった。
その後、田辺三菱製薬が、197人の実名と、170人のイニシャルか名前の一部を把握していることが判明した。

その結果、国と製薬会社側が投与を否定したため敗訴した原告のひとりについて、国側は、これまでの姿勢を一転、フィブリノゲンの投与を認めた。

リストが提出された時点で患者に連絡しておれば、早く治療を受け、病状がひどくなったり、亡くならずに済んだかも分からない。会社側と厚生省の責任が問われた。
(本年1月4日現在で、リストの患者のうち、死亡者は58人となっている)

 

大阪訴訟控訴審で、大阪高裁では9月14日に裁判長が和解による解決を打診、原告側は和解希望案(国が責任を認めて謝罪することを強く要求)を提出、国も和解協議に応じる意向を示した。
田辺三菱製薬は10月1日に合併会社が発足するため、回答を見送っていたが、10月31日、和解協議に応じる方針を示した。

ーーー

裁判とは別に、与党の肝炎対策プロジェクトチームは11月7日、ウイルス性肝炎治療の患者支援策の大枠を決めた。
インターフェロン治療はC型で 5~9割、B型で 3~4割の完治が見込めるとされるが、治療費の自己負担が年間80万円程度と高額なこともあり、インターフェロン治療を受ける患者は年間5万人程度にとどまっている。

このためインターフェロン治療を受ける患者の自己負担額を所得に応じて月1万~4万4400円とし、残りを国と地方自治体が半額ずつ負担するというもので、助成対象はC型肝炎とB型肝炎のインターフェロン治療で、感染原因は問わない。
2008年度予算案に129億円を計上した。

これに対し、民主党は、自己負担を月 0~2万円にし、肝炎が悪化して起きる肝硬変、肝がんなどへの医療費助成も早急に検討するという案を作成した。

(これについては今回は両案を継続審議とすることとなった。)

救済対象となる患者数の推定は以下の通り。

・薬害被害者(血液製剤で感染) 1万人以上
  うち、原告206人、投与証明可能な被害者 約1000名
・C型肝炎感染者(主に輸血や注射針の使いまわしで感染) 約200万人
・ウイルス性肝炎感染者(主に医療行為、母子間で感染) 約350万人

ーーー

大阪高裁(横田勝年裁判長)は12月13日、和解骨子案(非公開)を原告の肝炎患者と被告の国・製薬会社に示した。

骨子案は、2007年3月の東京地裁判決を踏まえ、フィブリノゲン製剤の投与をめぐって法的責任が生じる期間を、国については87年4月~88年6月、被告企業の田辺三菱製薬側は85年8月~88年6月と指摘、「クリスマシン」も84年1月以降、製薬会社に責任があるとした。

この範囲で被告側が責任を認め、原告らに謝罪するという趣旨の文言が盛り込まれた。
そのうえで被告側は、
(1)肝炎の発症患者に2200万円、感染者に1320万円の賠償を認めた同判決に沿い、この期間に投与を受けた人へ和解金を用意
(2)
それ以外の原告には「訴訟追行費」の名目で計8億円を支給
(3)これらの総額は原告側に一括して支払い、分配は原告患者200人に任せる――などとした。

国と製薬会社の負担割合は1対2としていたという。

なお高裁の「所見」で、「全体的解決のためには原告らの全員一律一括の和解金の要求案は望ましいと考える」が、国・製薬会社の過失時期の認定が異なる5地裁判決を踏まえればその内容に反する要求とし、「国側の格段の譲歩がない限り、和解骨子案として提示しない」としている。

患者全員救済を求める原告側は「被害者を製剤の種類や投与時期、提訴時期で線引きする不当な内容」と批判し、「受け入れ拒否」を表明した。

ーーー

福田首相は12月19日、官房長官、厚生労働相などと協議し、東京地裁判決の基準から外れた被害者を救済する基金を8億円から30億円に積み増す政府修正案にゴーサインを出した。

原告の数が現在の200人から、最大1000人まで増えると想定。東京地裁判決の認定外の原告が3割、300人いるとさらに計算し、1人あたり約1000万円を分配することを念頭に置いた案で、舛添厚労相は、「事実上全員を救済する案」と強調した。

しかし、この基金案は、あくまで認定外の被害者を薬害被害者と認定したものではなく、原告側が求める「一律救済」と相いれないもので、原告側はこれを拒否した。全国弁護団の鈴木利広代表は「要はお金の問題だという矮小化した理解しかしていない。かえって原告の感情を逆なでする案だ」と一蹴した。

政府は大阪高裁の和解勧告の枠組みを超えることは不可能、と説明する。町村長官は、「支持率のために司法の判断はどうでもいいということにはならない」と説明した。
実際には「被害者の一律救済を認めれぱ際限がなくなる」との厚労省の主張を前に身動きが取れなくなっていた。厚労省は仮に一律救済に踏み込めば対象は1万2000人に達し、1800億円が必要、との試算を明らかにしていた。

ーーー

福田首相は12月23日、「薬害肝炎患者を全員一律で救済する」と述べ、薬害肝炎患者を一律救済するための法案を議員立法で臨時国会に提出する方針を表明した。

報道によると、12月21日に与謝野前官房長官が首相に、「このまま放置すれば内閣も自民党も支持率が下がる一方だ」とし、次のように議員立法による解決を進言した。
①司法も行政も行き詰まった「国の責任」の壁を越え、人道的観点で全員一律救済を急ぐには、三権のうち残る立法府が乗り出すしかない。
②(「特別救済立法」の骨子案を用意) 「法務省の専門家にも相談してある」

ーーー

今回成立した薬害C型肝炎救済法の骨子は以下の通り。

府は甚大な被害が生じ、被害拡大を防止できなかった責任を認める
救済対象はフィブリノゲン製剤と第9因子製剤の投与(後天性の傷病に係る投与に限る)を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染した者及びその者の胎内または産道においてC型肝炎ウイルスに感染した者
  死亡の場合はその遺族
給付額
  慢性C型肝炎が進行して、肝硬変もしくは肝がんに罹患し、または死亡した者 4000万円
慢性C型肝炎に罹患した者 2000万円
それ以外 1200万円
投与の事実、因果関係の有無、症状は裁判所が認定
請求期限は5年以内、10年以内に症状が進行すれば追加給付金を支給
付金支給のため、独立行政法人医薬品医療機器総合機構に基金を設置
費用の負担の方法及び割合について、製造業者等と協議し、あらかじめ基準を定める

一方、血友病など先天性の病気で血液製剤が必要な患者らで作る23団体は、法案の対象が「後天性の傷病」に限定しているのは問題だとして、衆参両院に慎重な審議や国会決議を求める意見書を提出した。
血友病など先天性疾患の患者の多くは、原告団と同じ血液製剤で肝炎に感染したが、「治療として有用だった」として法案の救済対象から外れた。

衆院厚生労働委員会では、救済対象を血友病患者らに拡大することの検討を盛り込んだ5項目の委員会決議を全会一致で採決した。
参院厚労委でも同様の10項目の決議が採決された。

法案の前文には以下の通り記されている。

フィブリノゲン製剤及び血液凝固第9因子製剤にC型肝炎ウイルスが混入し、多くの方々が感染するという薬害事件が起き、感染被害者及びその遺族の方々は、長期にわたり、肉体的、精神的苦痛を強いられている。

政府は感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め、感染被害者及びその遺族の方々に心からおわびすべきである。さらに今回の事件の反省を踏まえ、命の尊さを再認識し、医薬品による健康被害の再発防止に最善かつ最大の努力をしなければならない。

もとより、医薬品を供給する企業には、製品の安全性の確保等について最善の努力を尽くす責任があり、本件においてはそのような企業の責任が問われるものである。

法案の成立を受けて1月11日、福田総理は談話を発表した。

本日、特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第IX因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法が成立いたしました。

これら製剤による感染被害者とその遺族の方々は、これまで長きにわたって、心身ともに言葉に尽くせないほどのご苦労があったと思います。感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止できなかったことについて、率直に国の責任を認めなければなりません。感染被害者とその遺族の皆さまに心からお詫び申し上げます。

私自身、一日も早くこの問題を解決したいと思ってまいりました。大阪高等裁判所における和解協議にも誠実に対応してまいりましたが、地方裁判所ごとに異なる内容の判決が出されてきたC型肝炎訴訟について、司法の判断を踏まえつつ、一方でこれらの製剤による感染被害者の方々の一律救済の要請に応えるには、現行法制の下では限界があり、議員立法による全面解決を決断いたしました。

一日も早い救済を実現するために、与党と弁護団との精力的な協議、迅速な立法化作業、会派を超えて国会での速やかな対応が行われ、本日、法案が成立し、長年にわたるC型肝炎訴訟の解決が図られることになりました。心より感謝を申し上げます。

感染被害者の方々は、国に対し、肝炎対策の充実を要請してこられました。その懸命な活動が一つの契機となり、政府・与党において肝炎対策について真剣に検討を進めることになりました。

その結果、無料で受けられる肝炎ウイルス検査を拡大するとともに、来年度から国と地方公共団体が協力して7か年で総額1800億円規模のインターフェロン治療に対する医療費助成を行うこと等を内容とする新たな肝炎総合対策を実施することといたしております。これにより、肝炎の早期発見、そして必要な方々すべての早期治療が進むことを期待いたしております。

さらに、今回の事件の反省に立ち、薬害を繰り返してはならないとの決意のもと、命の尊さを再認識し、医薬品による健康被害の再発防止に向けた医薬品行政の見直しに取り組んでまいります。

改めて、長年にわたる感染被害者の方々のご労苦にお詫び申し上げるとともに、再発防止に最善、最大の努力を重ねることをお約束いたします。

ーーー

全国弁護団の鈴木代表は1月14日、政府と締結する和解の基本合意書について仙台、東京、名古屋、大阪、福岡の各原告団が了承したことを明らかにした。
1月15日、原告・弁護団と舛添厚労相による基本合意書の調印式が行われた。

冒頭で「国は、甚大な被害が生じ、被害の拡大を防止し得なかった責任を認め、心からおわびする」と、救済法と同じ表現で国の責任と謝罪に言及した。

投与事実の証明などは「医療記録(カルテ)か、同等の証明力を有する証拠に基づく」とした。
国が認否にあたり、むやみに証拠を否定しないよう「新法の一律救済の理念を尊重する」との項目も加えた。
投与事実が争いになれば裁判所の判断を仰ぎ、所見は双方が尊重する。
厚労省は今後の提訴者について「カルテがない場合も一概に否定せず、投与を信じるに足る証拠が示されれば争わない」としている。

合意書では、国は血液製剤の投与を受けた人の確認の促進や投与患者への検査の呼びかけを約束。
肝炎の医療提供体制の整備のほか、第三者機関による薬害の検証、再発防止策について原告・弁護団と継続的に協議する場の設定、なども盛り込んだ。

現在の原告の中には血液製剤の投与事実や因果関係を争ってきたケースもあるが、全員を被害者として認定する。

政府は1月15日の閣議で、救済法を16日に施行することを決めた。
舛添厚生労働相は、閣議後の記者会見で、「襟を正して、新しい体制を一刻も早く打ち立てたい」と薬害根絶に向けた決意を述べた。
基本合意には製薬会社は含まれず、舛添厚労相は「製薬会社は責任を痛感し、謝罪してもらいたい」と要望。
被害者救済に向けた費用負担については、これまでの薬害事例などを参考に「国が3分の1、企業が3分の2という比率になる」と説明、折衝中であることを明らかにした。

製薬会社は大阪高裁の和解協議の席には着いたものの、その後は対応を明らかにしていない。
原告側は、謝罪などを求めた「全面解決要求書」を製薬会社3社に送付し、月内に文書で回答するよう求め、それがない場合は、製薬会社との訴訟を継続する意向。

三菱ケミカルホールディングスの小林社長は社員向けの新年挨拶で次のように述べている。
「我々としては、今後、行政、司法当局とともにこの問題の早期解決に向け、誠実かつ真摯に対応していかなければなりません。」

付記

厚生労働省は、1月17日の新聞折り込み広告で、C型肝炎の感染源となった血液製剤が使われた可能性がある約 7500 医療機関を公表し、そこで治療を受けた人にC型肝炎ウイルス検査を受けるよう要請した。


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資源大国 日本

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独立行政法人物質・材料研究機構は1月11日、危惧されている将来の金属資源の利用に対して、「都市鉱山」(アーバン・マイニング)と呼ばれるこれまで国内に蓄積されリサイクルの対象となる金属の量を算定し、わが国の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵する規模になっていることを明らかにした。

  「わが国の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵」 
      
http://www.nims.go.jp/jpn/news/press/pdf/press215.pdf

レアメタルやレアアースなど多様な機能を発揮する金属元素は枯渇性資源と呼ばれ、資源リスクは著しく増大している。
これに対し、「減量」、「代替」の重要性が指摘され、「希少資源・元素戦略」の研究プロジェクトが2007年から動き出している。
今回は、資源リスクを軽減させる、もうひとつの有力候補であるリサイクルの可能性を定量的に表した。

計算には貿易統計が用いられるが、産業連関表を用いて、部品や製品を通じて輸出される素材の割合を推定し、その割合を、工業統計から得られる部品などへの部材需要に掛け合わせることで、製品としての海外流出量を差し引いて計算した。

計算結果は以下の通り。

金属 世界の年間消費(A)
        (トン)
世界の埋蔵量(B)
       (トン)
わが国の
都市鉱山蓄積(C)
      (トン)
(C/B)
  (%)
(C/A) 埋蔵量
国別順位
 
アルミニウム Al     177,000,000  25,000,000,000     60,000,000   0.24   0.3   12  
アンチモン Sb        112,000      1,800,000       340,000  19.13   3.1   3  
クロム  Cr      20,000,000    810,000,000     16,000,000   2.08   0.8   4  
コバルト Co        57,500      7,000,000       130,000   1.87   2.3   6  
銅 Cu      15,300,000    480,000,000     38,000,000   8.06   2.5   2 ①チリ
金 Au         2,500        42,000        6,800  16.36   2.7   ①  
インジウム In          450        2,800        1,700  61.05   3.8   ①  
鉄  Fe     858,000,000  79,000,000,000   1,200,000,000   1.62   1.5   11  
鉛 Pb      3,300,000     57,000,000      5,600,000   9.85   1.7   ①  
リチウム Li        21,100      4,100,000       150,000   3.83   7.4   6  
モリブデン Mo       179,000      8,600,000       230,000   2.69   1.3   6  
ニッケル Ni      1,550,000     64,000,000      1,700,000   2.70   1.1   9  
白金 Pt          445       71,000        2,500   3.59   5.7   3 ①南ア ②ロシア
レニウム Re       123,000     88,000,000       300,000   0.35   2.5   6  
銀 Ag        19,500       270,000       60,000   22.42   3.1   ①  
タンタル Ta         1,290        43,000        4,400   10.41   3.5   3 ①豪 ②タイ
スズ Sn       273,000      6,100,000       660,000   10.85   2.4   5  
タングステン W        73,300      2,900,000        57,000   1.97   0.8   5  
バナジウム V        62,400     13,000,000       140,000   1.08   2.2   4  
亜鉛  Zn      10,000,000    220,000,000     13,000,000   6.36   1.4   6  

注 (A)、(B)は米国鉱山局 2006年データ

電子部品などに多用され今後世界的な需要増と供給リスクが予想される金、銀が、それぞれ、16%、22%と、世界の現有埋蔵量に比べても大きな影響を与える規模の都市鉱山が国内に存在している。
おなじく電子部品などに用いられるタンタルTaやスズSnも世界の現有埋蔵量の1割を超える蓄積量となっている。
なお、同じく比率の高いアンチモン Sbはプラスチックの難燃助剤として用いられる元素である。
また透明電極としてディスプレイや太陽光発電に用いられるインジウム In の比率が極めて大きいのも特徴的である。

多くの金属について、世界の2~3年相当の消費量に匹敵する蓄積がわが国の都市鉱山にはある。
特に、電池材料として期待されているリチウムLi 、触媒や燃料電池電極として不可欠とされる白金Ptでの蓄積量が大きい。

しかしながら、現状ではこのような国内の都市鉱山資源が、使用済製品の廃棄物処理で、本来得られる価値よりも安価に放出されている。

物質・材料研究機構では、都市資源をある程度金属を取り出しやすくした、天然資源で言う「精鉱」のようなかたちで付加価値をつけた取引にすべきであると考えられるとし、そのような「都市鉱山」からの「都市鉱石づくり」とでも呼べるようなシステムを今後提案していくとしている。


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国務院弁公庁はこのほど、各省・自治区・直轄市の人民政府、国務院の各部・委員会、直属の各機関に向けて、「ポリエチレン製レジ袋の生産・販売・使用の制限に関する通知」を出した。

通知によると、レジ袋が「白色汚染」(白いレジ袋のゴミによる汚染)の主要因になっていることを踏まえ、各地の人民政府や部門、委員会などは今後、
極薄(0.025mm 以下)ポリエチレン製のレジ袋の生産・販売・使用を禁止するとともに、レジ袋の有料化制度を実施しなくてはならないとしている。
極薄袋は簡単に破れ、ゴミとなって散らばるので「白色汚染」の主原因とされる。)

今年6月1日以降、スーパーマーケット、デパート、大型市場など商品を小売りするすべての場所でレジ袋を有料化し、無料での提供を一律禁止することになる。

商務部はレジ袋有料化についての詳細な規則を国家発展改革委員会(NDRC)と協議している。



これとは別に、チベット自治区政府は9日、本年から、有料であっでもレジ袋を顧客に渡すのを禁止する規則を発表した。
首都のラサ市では「白色汚染」防止のため、2004年にプラスチック袋の使用を禁止している。

ーーー

人民日報は今回のレジ袋有料化について、各界の声を伝えている。

中国加工工業協会:
中国加工工業協会の李国俊・副会長は、生産段階においてレジ袋のメーカーをなくすことは現実的に難しいため、スーパーなどでのレジ袋無料配布を禁止することは、レジ袋の削減にとって有効な手段だと述べた。
李副会長によると、プラスチック加工品メーカーは全国に約6万社あり、そのうち極薄ポリ袋メーカーのほとんどは投資規模が極めて小さい。数千元のポリ袋生産機が1台あればすぐに開業することが可能で、原料はすべて回収されたゴミ袋。そのため工商部門に登録していない零細企業も多く、極薄ポリ袋メーカーの会社規模や業界に占める割合を正確に把握することには困難があり、生産段階で超薄手ポリ袋を根絶することは難しいという。

中国消費者協会:
中国消費者協会の武高漢・副秘書長は、レジ袋有料化を支持しているばかりではなく、ペナルティーの意味もこめた高めの代金を課すべきだとも主張している。わずかなレジ袋代を徴収するだけでは十分な効果が得られないと考えているからだ。徴収されたペナルティとレジ袋コストとの差額は「環境保護事業に運用してはどうか」と提案している。

環境保護局:
北京市環境保護局の程霞・副総工程師は、「レジ袋有料化の実施によって、『白色汚染』は確実に減少するだろう。しかし、本当に100%禁止するためには、法律執行部門が管理の届きにくい一部の小さな自由市場やマーケットに対する法律執行をより厳格に実施する必要がある」と述べた。
程氏は、レジ袋の使用量の削減のほか、過剰包装の制限やゴミ収集などでも相応の措置を講じて初めて、汚染の減少が実現すると指摘した。

環境学教授
中央民族大学生命環境学院の薛達元教授は、レジ袋有料化政策は消費者のレジ袋乱用を抑制するための極めて効果的な措置だと評価し、「売り場ではリサイクル可能な紙袋を提供することも可能だが、最も理想的なのは買い物客がマイバッグを持参することだ」と指摘した。
薛教授はまた、「国家がレジ袋有料化政策によって真の効果を得ようとするなら、具体的な料金システムを打ち出す必要がある。庶民にとって無視できない程度の価格を設定すれば、レジ袋の使用は確実に減る」とコメントした。

販売店:
フランス系のスーパー「家楽福(カルフール)」の北京市の店舗では15日から、環境保護への貢献を目的としたキャンペーンが開始され、一定額以上の買い物をした市民には不織布製のショッピングバッグがプレゼントされるという。
カルフールではキャンペーン修了後もショッピングバッグの低価格での販売を長期的に行っていく予定だ。
スウェーデン系の家具屋「宜家家具(イケア)」の中国区広報担当を務める許麗徳さんによると、イケアの北京四元橋店では2006年からレジ袋有料制を開始している。レジ袋の値段は5角(0.5元)と1元の2種類、再利用できる環境保護バッグは3.5元だ。
許さんによると、有料制を始めて間もない頃は戸惑いを見せる消費者も多かったが、市民もまもなく支持してくれるようになり、自分で袋を持ってくるのが今では消費者の習慣となったという。「有料制をはじめてからイケアのレジ袋使用量は明らかに減りました」と許さんは胸を張る。イケアの経験からみれば、レジ袋の有料化が売り上げに影響を及ぼすことはないようだ。

市民:
レジ袋の有料化について意見を求められた北京の市民の多くは、この措置に対して支持の立場を示した。
支持理由としては、「資源節約と環境保護の習慣づけに役立つ」ことや、「資源の浪費を削減し、環境への汚染を緩和することにつながる」ことなどが挙げられた。
一方、「買い物に出るときに自分で袋を持っていくことを忘れてしまうこともあるのだから、レジ袋の値段が環境保護の名のもとにあまりに高く設定されるのには納得がいかない」との意見もあった。

ーーー

 なお、オーストラリアでも環境相が2008年末までにレジ袋税課税か、全面禁止かの決定を行なう意向を示した。昨年末に政権をとった労働党は2004年以来、レジ袋禁止の政策を主張している。


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中国商務部と関税総署は2007年12月24日、共同で第2回目の「加工貿易禁止商品目録」、合計589件(関税コードベース)の商品を発表した。この規定は2008年1月21日から実施される。
  目録(中国語) 
http://www.mofcom.gov.cn/accessory/200712/1198545071384.xls

商務部では「今回の加工貿易禁止商品目録は、中国の輸出商品の構造を適正化するため、付加価値の低い商品や、加工技術レベルの低い商品の輸出を抑制し、加工貿易をレベルアップさせ、貿易拡大方式への転換を目的としている」とした。

主に動物製品をはじめ、植物製品、動植物油脂、食品、飲料、原鉱製品、化学製品、プラスチックおよびプラスチック製品、鋼鉄および鋼鉄製品、アルミニウム製品にまで及んでいる。
また、皮革製品や動物の毛およびそれを使った織物、靴・ブーツなど、いくつかの絶滅に瀕している動植物を使った製品も禁止目録にリストアップされている。

なお、2007年4月に発表した第1回目の「加工貿易禁止商品目録」では、合計1
,138 の商品が加工貿易禁止対象として挙げられている。
(2005年と2006年に公布・施行された加工貿易禁止目録を整理統合したもので、
以前の目録は廃止される。)

  目録(中国語) http://www.mofcom.gov.cn/accessory/200704/1175767532591.xls

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加工貿易とは、中国国内に登記された製造業による、海外顧客・関連会社などから請け負った製品製造事業(委託加工生産)に伴う、原材料・部品・消耗品・設備などの輸入と製品の輸出業務のことを指す。

進料加工と来料加工がある。

進料加工は、対外貿易権を有する中国内登記企業が、原材料や部品等を有償輸入し、代金を外貨で対外支払いする。
加工後の製品、半製品を国外に輸出し、輸出代金を受領する。
外資系企業が行う加工貿易には、この進料加工がほとんど。

来料加工は、原材料や部品等を無償輸入し、加工生産後の製品を、すべて加工契約相手先へ輸出するという加工貿易形式のことで、部品・原材料の無償供給者と製品の輸出相手先は、海外に所在する同一企業であるため、対口貿易と呼ばれる。

加工貿易契約締結後、加工企業は所轄税関へ加工契約内容を登録し、登記手冊を取得する。
この登記手冊に登録・記載された資材・部品、及び製品リストの範囲内(品目・数量)で、
免税にて輸出入することが出来る。

ーーー

商務部が述べているように、中国政府は付加価値の低い商品や、加工技術レベルの低い商品の輸出を抑制し、加工貿易をレベルアップさせ、貿易拡大方式への転換を目的としている。

中国政府はまた、付加価値が高い重化学工業へと産業構造を転換するため、外資系企業に対する税制優遇を削減し、環境規制を強化するなどしている。

この結果、中国の低賃金を活用し、繊維など軽工業に従事する海外企業は苦しくなっている。

 

朝鮮日報によると、中国に進出した韓国企業が経営悪化で賃金や税金を支払わずに無断撤退し、現地でトラブルとなるケースが続出しているという。

2007年11月には上海市崇明県の和仁紡織で韓国人社員が現地労働者に監禁される事態となったほか、山東省青島市では従業員の給与を支払わないままに夜逃げした韓国系中小企業があったという。

このため、韓国の産業資源部は、外交通商部、労働部、法務部、大韓商工会議所と共同で対策チームを結成し、政府レベルで実態調査を進めることとなった。対策チームは1月21日から中国の山東省青島市、広東省広州市など韓国企業の進出が集中する地域を対象に現地調査を実施する。

 


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重慶ケミカルパークで2007年12月に、一つのメタノール計画が商業生産開始の式典を、他の一つの計画(三菱ガス化学が参加)が定礎式を執り行った。

いずれも原料は同地の天然ガス田からの天然ガスである。

国家発展改革委員会(NDRC)は2007年夏に、新しい天然ガス活用政策を発表した。
限られた天然ガスの消費を最適化し、省エネを推進することを狙い、
2007年8月30日以降、天然ガスを原料とするメタノールの生産を禁止した。
   
2007/9/7 四川-上海の天然ガスパイプライン「川気東送プロジェクト」工事開始 後半部分
   

この結果、前者の第二期計画は実現不可能となった。
三菱ガス化学の計画は、8月30日以前に事業実施の承認を得ており、かつ、それまでに天然ガスの供給契約を締結しているため、禁止の対象外となる。おそらく、中国での最後の天然ガス原料のメタノールプラントとなる。

1)KingBoard Chemical Holdings 建滔化工集団)

香港のラミネート会社 KingBoard Chemical は12月17日、重慶ケミカルパークでメタノール工場の商業生産開始の式典を行なった。
2005年の第2四半期に建設を開始し、本年8月に完成した。

能力は45万トンで、運営は KingBoard 天然ガス化学 (重慶) 社が担当する。
原料の天然ガスは同地の天然ガス田から供給を受ける。
製品メタノールは揚子江の水運を利用して中国東部の市場に輸送する。

KingBoard では当初、第一期の完成後、市場の状況にもよるが、能力を135万トンまで拡大することを検討していた。
しかし、上記の規制により、増設は不可能となった。

ーーー

KingBoard Chemical Holdings 建滔化工集団)は1998年に香港で設立されたラミネートを製造する会社で、中国各地に工場をつくるとともに、ラミネート原料に遡及してきた。

メタノールについては、KingBoardは重慶計画に先立ち、中国海洋石油との合弁会社 CNOOC-KBChemical (CNOOC が60%、KingBoard が40%)を設立して、 2006年9月から海南島の東方市で 60万トン/年の天然ガスベースのメタノールを生産している。
184百万ドルを投じたもので、ルルギ技術を採用、CNOOCの東方市近辺のガス田からの天然ガスを原料とする。

KingBoard はまた、2007年3月に河北省Xingtai 市の内丘で100万トンの固焦炉コークス、10万トンのメタノール、12千トンのベンゼンの建設を開始した。第一期と同じ能力で、完成すればメタノール能力は合計20万トンとなる。

ここでは更に、河北省に本拠を置く上場会社、Jinniu
金牛Energy Resources との合弁で大規模メタノール事業を計画している。
450百万ドルを投じて、年産180万トンの石炭ベースのメタノールを生産するもので、KingBoard が60%、金牛が40%を出資する。
現在FS中で、完成時期は未定。
これに加え、原料の石炭を確保するため、金牛51%、King
Board 49%出資のJVの石炭会社を設立する予定。

同社は山西省呂梁でも、コークス180万トン、メタノール20万トンの石炭化学プロジェクトをもっている。

NDRC は20067月に通達を出し、小規模石炭化学を禁止した。(乱立防止)
年産300
万トン未満の石炭液化、100万トン未満の coal-to-methanol DMT、60万トン未満のcoal-to-olefin は禁止された。

上記のKingBoard 河北省Xingtai 市(メタノール10万トン)、山西省呂梁(メタノール20万トン)は、いずれも、禁止対象の石炭液化によるメタノール生産ではなく、コークス炉のオフガスを原料とするため、規制から外れる。

ーーー

2)三菱ガス化学

三菱ガス化学と重慶化医集団の合弁のメタノール計画の定礎式が2007年12月26日、副市長その他の出席のもと、重慶市の重慶ケミカルパークで行なわれた。

投資額は21億人民元(約290百万ドル)で、公称能力は年産85万トンだが、重慶化医集団によると、実能力は100万トンになるという。
本年上半期に着工し、2010年の下半期のスタートを目指す。

2004年8月に国家発展改革委員会(NDRC)から詳細事業化調査を行う正式許可を得て、FSを続けていた。

当初の計画では2005年上半期に三菱ガス化学 51%、重慶化医 49%出資で JV を設立し、投資額 2億ドルで2008建設完了を予定していた。

重慶化医集団によると、2007年7月5日に事業実施の承認を取得した。
(このため、8月30日からの天然ガス原料によるメタノール新規事業禁止から外れる)

注. 本件には不思議な点がある。

   この記事は重慶ケミカルパークのホームページに記載されており、式の写真も載っているので、
   式典が行なわれたことは事実である。
   しかし、三菱ガス化学側は何も発表していない。
   三菱ガス化学としては本事業をやるかどうかについて、まだ結論を出していないとしているとの情報もある。
    中国側の今回の発表も、合弁会社の社名や出資比率などを明らかにしていない。

   上記の天然ガス規制などに関連して(承認取り消しを恐れて)、中国側が実績つくりをしている可能性もある。

ーーー

なお、三菱ガス化学では南京市の南京ケミカルパークにメタノール誘導品の子会社を設立している。
2006年4月に建設を開始し、昨年9月に完成、11月から試運転に入っている。

社名: 菱天(南京)精細化工 Lingtian (Nanjing) Fine Chemical Company Ltd.
出資:三菱ガス化学 85.1%
    伊藤忠ケミカルフロンティア 10.0%
    伊藤忠商事 4.9%
製品:ジメチルアミン、ジメチルホルムアミド(40千トン)及びジメチルアセトアミド10千トン)
    第二期計画として、トリメチロールプロパン

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参考   2007/10/2 内蒙古で100万トンのメタノール工場竣工 

 


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ダウのダイオキシン対策が問題となっている。

ダウはミシガン州Midland の本社工場で、何十年にも亘って、Tittabawassee 川に工場廃水を流していたが、それにダイオキシンとフラン類が含まれていることはダウも認めている。

この結果、川水及び川の氾濫に伴う周辺地域の汚染が問題となっている。ダウのMidland 工場の上流から始まり、下流のSaginaw 川、その氾濫地域、Lake Huron Saginaw 湾にいたる地域である。

EPAは昨年6月に本件をミシガン州環境局(Michigan Department of Environmental Quality)から肩代わりした。

EPAは昨年10月に Superfund 法に基づいて、ダウに対してクリーンアップ計画の提案を60日以内にするよう期限を切った。12月10日にダウは計画を提出し、EPAは残る問題を決着し最終合意を得るべく、期間を30日間延長した。
ダウは1月4日に修正案を出す予定であった。

EPAは1月4日、汚染のクリーンアップに関して、これまでダウとの間で続けてきた話し合いを取り止めると発表した。
クリーンアップをやめるのではなく、効果のない話し合いをやめるだけだとしている。詳細は秘密保持契約があるため、明らかにされていない。
EPAとしては、いろいろなオプションがあり、今後どうするか考えるとしている。

ダウ側はEPAの行動に対し驚きと失望を表明した。ダウとしてはEPAのガイドラインに沿ってクリーンアップを始めるべく、膨大な人的・金銭的資源の投入を用意していたとしている。

州の環境局は引き続きダウと話し合いを続ける。

昨年12月にはEPAの秘密メモが間違って流出した。
メモでは、ダウがクリーンアップをさせようとする州の努力を邪魔し、データや資料を隠し、公開すべき資料を秘密扱いとし、交渉を州の環境局とではなく州知事とするよう主張したり、ダイオキシンの危険性について住民をミスリードしてきたとし、政治家がダウのために介入し基準を弱めようとしたとしている。

これに対してダウでは、メモにあるのは昔の話しであり、最近では川の特にダイオキシンの濃度の高い部分(hot spot をクリーンアップしたり、洪水のあった場所で高いレベルのダイオキシンが見つかった300戸の土地をクリーンアップするなど、努力をしていると述べた。

確かに Hot spot は緊急措置としてクリーンアップされたが、1980年代の初めに議論が起こって以来、Saginaw Bay に至る50マイルの川及び洪水地のクリーンアップは未だに着手されておらず、住民の不安と、ダウ及び州当局に対する不満は高まっている。


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2007年12月21日(金)午前11時32分頃に、茨城県神栖市の三菱化学鹿島事業所第2エチレンプラントにおいて、火災事故が発生し、協力会社従業員4名が亡くなった。

  2007/12/24 三菱化学鹿島事業所 火災事故 

ーーー

三菱化学は 12月27日、経済産業省 原子力安全・保安院および茨城県に対し、中間報告資料を提出した。
  http://www.m-kagaku.co.jp/newsreleases/2007/20071228-2.html#tmp1 

この中で、漏洩原因としては、
「直接原因」として、仕切板の抜き出し作業中に何らかの原因により空気駆動弁(AOVair operated valve )が開いて、クエンチオイルが流出したものと推察されるとし、
「間接原因」として、
AOVの誤作動を回避するため、バルブ施錠等の安全措置を講ずるべきであったが、作業指示書等による明確な手順が示されていなかったとしている。

尚、着火原因については、
①自然発火
②高温部接触
③静電気着火
の可能性が考えられるが、詳細について調査・検討中であるとしている。

 

付記 本報告に対してMETI から追加報告の指示があり、2008年1月9日、追加報告が提出された。
 
http://www.meti.go.jp/press/20080109001/M.pdf

それによると設備設置後の最初の工事(2006年2月)実施前の安全打合会で、「AOV施錠」などの安全措置を決め、工事安全指示書を作成したが、今回、メンテナンス担当による施錠の確認がされていなかったという。
メンテナンス担当と運転担当の間で、安全措置の実施に関する仕組みが明確に定められていなかったことが挙げられている。

付記 三菱化学が1月9日に出した追加報告に、過去の事故の記録が出ている。(報告書 P.19)

事故:1999年1月に第1エチレンで死亡事故(死亡1、負傷 6 )発生

状況: 
熱交換器の配管を修理するため、保温材を剥がしていたところ、配管が破裂、水蒸気が噴出し、作業員が被災した。

原因: 
工事に係わる安全措置確認の不足により、本来閉止すべき弁の閉止操作が行なわれず、低圧系配管に超高圧蒸気の圧力が加わったため、エロージョンで減肉していた部位が破裂した。

対策:
・運転指示、作業指示に係わる管理の徹底
・作業発生時の「作業安全確認書」使用の徹底(義務付け)
「バルブ等施錠管理」の制定

ーーー

年明けの1月7日、茨城県警は三菱化学鹿島事業所と、同事業所内にあってプラントの維持・管理などを請け負っている三菱化学エンジニアリング鹿島支社を家宅捜索した。

三菱化学は中間報告のなかで、バルブの誤作動を回避するための安全対策を作業指示書などに記載していなかったことを明らかにしているが、捜査本部では、メンテナンス作業中の安全対策を怠っていた可能性があるとして、業務上過失致死容疑での立件も視野に捜査を進める。

また、茨城県が設置した事故調査委員会(委員長:長谷川和俊・千葉科学大教授、危機管理)の第1回会合が8日午前、同事業所で開かれた。
調査委は危険物や高圧ガスの保安、高温火災を含む特殊災害、危機管理システムなどについての専門家6人で構成され、三菱化学からの聞き取りや現地調査を実施し、事故原因や再発防止策について検討する。
施設の老朽化が進む鹿島コンビナート全体の課題についても議論するという。

会合では、作業手順について三菱化学と下請け会社の間で安全意識が共有されていたか検討する必要があるとの意見が出たという。
調査委は月に1回程度、会合を開いて3月末までに報告書をまとめたいとしている。

 

第2エチレンプラントの操業再開には、まだ時間がかかりそうだ。

三菱化学は化学各社に原料や製品の融通を要請しているが、各社工場とも高水準の稼働が続いており国内からの供給には限界があり、商社を通じて海外調達の可能性も探っている。

この結果、アジア市場で石化製品の取引価格が年明けから急騰している。
エチレン価格は昨年12月下旬に比べ 8%アップ、ブタジェンは同じく 15%アップし過去最高値を更新した。

ーーー

三菱ケミカルホールディングスは1月7日、小林喜光社長の社員向けの新年挨拶の要旨を発表した。
  
http://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1199668375.pdf

この中で、小林社長は、三菱化学の鹿島事業所火災事故について、「事故に対する猛省と、決意新たに徹底した安全意識を」と呼びかけた。
また製品供給について、「製品の融通など他社のご協力も得ながら、お客様第一との考えであらゆる方策を考え、最大限お客様の要請にお応えするよう努力していただきたい」と述べた。

また昨年10月に新しく発足した田辺三菱製薬の薬害C型肝炎問題、本年4月1日にグループの機能材料分野の事業を包含して新発足する三菱樹脂については塩ビ管価格カルテル容疑での公取委の調査が継続していることについて触れ、「グループの社会的信頼回復に向け、誠実かつ真摯に対応」するよう、求めた。

そのうえで、三菱ケミカルホールディングスグループは極めて大きな課題を抱えており、まさに「グループ゚存亡の危機」にあり、“崖っぷちに立っている”という危機感を共有して危機を乗り切ろうと、呼びかけている。

 

同社では社長、取締役、役付執行役員、関係執行役員の役員報酬の一部を12月分から当分の間(時期は未定)返上することとした。
また、既に発表していた1月1日付人事異動のうち、一部については、事故対応に注力するため、当面の間延期した。

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薬害肝炎問題では、1月8日に肝炎救済法案が衆院を通過し、週内に成立する見通しだが、原告・弁護団は、国側と基本合意を結んで裁判上の和解を進める一方、製薬企業(田辺三菱製薬と子会社のベネシス、日本製薬)に対しては加害責任を認めた謝罪などがない限り、形式的に訴訟を続ける方針を明らかにしている。

新生三菱ケミカルホールディングスは苦しいスタートとなった。

 

付記  2008年2月1日 三菱化学鹿島事業所 火災事故 その後(2)

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アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国を訪問した甘利明経済産業相は1月6日、アブダビ石油公社のユセフ総裁と会談した。
総裁は「油田開発には日本企業の関与継続を求める」と述べ、2012年から順次失効するアブダビ石油など日系4社の自主開発油田の権益延長・拡大を認める方針を示唆した。

昨年12月17日、福田康夫首相は、来日中のムハンマド・アブダビ皇太子と会談したが、その席でアブダビ石油の自主開発油田の契約更新に向け、原油の安定供給について意見交換している。
また、会談後にコスモ石油や丸紅などとアブダビ側との発電などのエネルギー事業契約に関する署名式を、首相と皇太子が同席して官邸で行った。

アラブ首長国連邦結成(1971年)以前の1968年にアブダビ石油が石油利権を取得。その後も1970年に合同石油開発がエル・ブンドク油田に参加、1973年にジャパン石油開発が設立されアドマ鉱区の事業に参加、1996年に国際石油開発がアブダビ沖合アブ・アル・ブクーシュ油田に権益を保有していたAmerada Hess社から権益を取得(Inpex ABK)するなど、二国間関係は石油関係を中心に発展している。

* 石油公団解散により、国際石油開発(Inpex)がジャパン石油開発(JODCO)の親会社となった。

2005年現在、UAEは日本の原油輸入量第2位(24.5%:このうち99%はアブダビで産出)、ガス輸入量第4位(12%:ほぼ100%アブダビで産出)を占めており、わが国自主開発原油の中でUAEが占める割合は約50%(約20万B/日)。

2007年9月に、アブダビ首長国の政府系投資機関、国際石油投資会社IPICが約900億円を投じコスモに20%出資し、筆頭株主になることが発表されている。コスモヘの出資を機に対日輸出を拡大、日本市場への影響力を強める。
また、アブダビ政府が同国で計画する石油精製と石油化学の複合事業にコスモが出資することも検討する。

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 地図 http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/0/231/0511_out_f_ae_expansion_adco_zadco.pdf

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アブダビ石油

丸善石油と大協石油(現在は両社合併しコスモ石油)と日本鉱業(現ジャパンエナジー)が1967年12月にアブダビ土侯国より海上4,416km2の石油開発利権を獲得した。
  A地域 2,810km2、B地域 1,596km2
  ロイヤリティ 12.5%
  鉱区使用料 5万ドル/年
  利権協定 45年 探鉱期間8年
  8年の探鉱期間に最低1300万ドル投資

1968年1月、3社均等でアブダビ石油を設立
   現在の株主:コスモエネルギー開発 63%、ジャパンエナジー石油開発 31.5%、
           東京電力 1.8%、関西電力 1.8%、中部電力 1.8% 

1969年9月、ムバラス1号井 出油

1973年、
ムバラス油田が生産開始。
その後、子会社のムバラス石油が1989年にウム・アル・アンバー油田、1995年にニーワット・アル・ギャラン油田で生産を開始した。
(ムバラス石油は2006年1月、アブダビ石油が吸収合併した。)

アブダビ石油が同地域で生産する原油量は2006年実績で日量約2万3,800バレルとなっている。
2012年に45年の契約期限を迎える。

ーーー

合同石油開発

株主
コスモエネルギー開発 35%
ジャパンエナジー石油開発  35%
三井物産 20%
三井石油開発 10%

合同石油開発は、アラブ首長国連邦・カタール国両国境線上に位置するエル・ブンドク油田の利権保有者であるブンドク社の株式の1/3を所有、またブンドク油田の開発所要資金の97%(残る3%はBP)を負担しているため、これに見合う生産原油の97%を取得している。

ブンドク油田は1970年11月より商業生産を開始し、2006年3月に累計生産量2億バレルを達成した。

ーーー

ジャパン石油開発(JODCO)
(当初 石油公団の子会社、現在は
国際石油開発:Inpex の子会社)

石油ショックに際し、政府も財界も新たな油田を求めて奔走した。

1972年、BPからアブダビ・マリン・エリアズ(ADMA)の持つ利権の30%を780百万ドルで買収したが、1974年に国営石油会社ADNOCが参加比率を引き上げた結果、比率は12%に下がった。

当時操業していたのは下部ザクム油田、ウムシャイフ油田で、これらの権益比率は、
 JODCO 12%、ADNOC 60%、BP 14.67%、TOTAL 13.33%

JODCOでは未開発の上部ザクム油田(既存の下部ザクム油田の上層)の開発を要請したが、先ずウムアダルク油田開発を指示された。
実際はメジャーも投げ出した油田で、1985年に生産を開始したが、油と一緒に水が噴き出し始めた。
シミュレーションで圧力を調整して水を止めることに成功、その後、水平掘りを実施して生産量を上げた。

その後、上部ザクム油田(可採埋蔵量世界4位)、サター油田の掘削にも成功した。

ウムアダルク、上部ザクムの権益比率はJODCO 12%、ADNOC 88%であったが、
上部ザクムの権益については、2006年1月1日を発効日としてADNOC社の権益88%のうち28%をExxonMobil Abu Dhabi Offshore Petroleum社(EM社)に譲渡された。

  JODCO ADNOC BP TOTAL(仏) ExxonMobil
下部ザクム油田   12%   60%  14.67%  13.33%   ー
ウムシャイフ油田   12%   60%  14.67%  13.33%   ー
ウムアダルク油田   12%   88%   ー   ー   ー
上部ザクム油田   12%   60%   ー   ー   28%
サター油田   40%   60%   ー   ー   ー

   資料 NHKライブラリー「プロジェクトX⑩ 夢遥か、決戦への秘策」より、「炎のアラビア」の後半部分

ーーー

インペックスエービーケー石油

設立:1996年2月29日

出資:国際石油開発 95%、三菱商事 5%
   (当初は石油公団が40%、国際石油開発=石油公団子会社が55%)

1996年、アブダビ沖合アブ・アル・ブクーシュ油田に権益を保有していたAmerada Hessから権益を取得した。


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  

韓国の公正取引委員会は2007年12月25日、LDPE の価格で11年間にわたり談合を繰り返していたとして、メーカー6社に合計541億7,500万ウォン(約65億8,400万円)の課徴金を科したと発表した。

公取委によると、湖南石油化学
を加えた7社は1994年から2005年にかけ、社長、営業本部長、営業チーム長など職位別の会合を定期的に開き、LDPE とLLDPE の価格と出荷量に関する談合を行っていた。11年間の7社の売上高は5兆616億ウォン(約6150億円)であった。

ハンファ石油化学、LG化学、サムスン綜合化学、サムスントタル、シーテック、SKエナジーの6社。
このうち、ハンファ石油化学、サムスントタル、SKエナジーの3社は検察に告発された。

談合に加わったが、談合事実を自主申告した湖南石油化学は課徴金と告発を免れた。
LG化学は2番目に自主申告したことから、課徴金の一部が減免され、告発対象から外れた。
また、サムスン綜合化学とシーテックは刑事訴訟法上の公訴時効(3年)前に事業譲渡しているため、告発されなかった。

シーテックは、旧現代石油化学がLGとロッテに買収・分割された際に、用役、輸送、研究、パイロットプラントなどのコンプレックスの共通業務を行うために設立された会社で、旧現代石油化学時代の課徴金と思われる。(現代石油化学のPE、PPのブランドは「シーテック」であった。)
サムスン総合化学はサムスントータルに事業を譲渡している。

 

公取委は2007年2月に、国内石油化学会社10社が1994年から談合を通じHDPE とPP価格を決めていたことを摘発し、是正命令を出すとともに、1,051億ウォン (134億円) の課徴金を科している。
このケースではポリミレイ(サンアロマー、バゼルが出資)のみが課徴金対象外となっている。

   2007/2/24 韓国公正取引委員会、石化メーカーを価格カルテルで摘発  

韓国のポリオレフィンメーカーと課徴金・告発対象       能力(千トン 2006/2時点) 

立地         2007/2        2007/12
HDPE
能力
PP
能力
課徴金 告発 LDPE
能力
LLDPE
能力
課徴金 告発
Daelim Industrial(大林産業) Yeochun   380    -  ○  ○    -    -  -  -
Polymirae Companyポリミレイ Yeochun    -   615  なし  -    -    -  -  -
Korea Petrochemical Ind.(大韓油化) Ulsan   390   310  ○  ○    -    -  -  -
三星総合化学 ↓ Daesan   175   270  ○  -   100   125  ○ 時効
Samsung Total   ○  -  ○  ○
GS Caltex Oil (旧 LGカルテックス Yeochun    -   180  ○  -    -    -  -  -
LG Chem LG Chem Yeochun   310    -  ○  ○   156    -
減額
(申告)
免除
(申告)
(旧 LG Daesan Petrochemical Daesan   160   280   135    80
Hyundai Petrochemicalシーテック Daesan (売却)   ↑↓  ○  -   ↑↓   ↑↓  ○ 時効
湖南石化 Lotte Daesan Petrochemical Daesan    -   250  ○  -   110   160 免除
(申告)
免除
(申告)
Honam Petrochemical Yeochun   370   380    -    -
SK Energy(旧 SK Corporation ) Ulsan   190   340  ○  ○    -   160  ○  ○
Hyosung Corporation(暁星) Ulsan    -   268  ○  ○    -    -  -  -
Hanwha Chemical Ulsan    -    -   -  -    76    -  ○  ○
Yeochun    -    -   290   351
Total    1,975  2,893     867   876  

 


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

アラビア石油は1月4日、クウェート・カフジ油田の操業から撤退した。カフジ油田は日本企業にとって戦後初の自主開発油田だったが、半世紀に及ぶ元祖「日の丸油田」の役割を終える。

アラビア石油はサウジとクウェートの旧中立地帯で、1957年に(前身の日本輸出石油が)サウジの採掘権を、1958年にクウェートの採掘権を取得、1960年1月にカフジ油田を発見して 1961年2月に生産を開始した。1963年11月にはフート油田を発見した。

アラビア石油はここで日本の石油消費量の5%に相当する日量27万バレルを生産して日本に持ち込み、エネルギーの安定調達に大きく貢献してきた。
(原油累計生産量は約39億バーレルに達し、その内、約28億バーレルを日本向けに供給)

しかし政府の全面的な後押しを受けて臨んだサウジとの権益更新交渉に失敗して2000年2月にサウジの利権協定が終了、2003年1月にはクウェートとの利権協定も終了した。

その後はカフジの操業は両国の国営石油会社子会社の共同操業に移行し、アラビア石油はKuwait Gulf Oil との技術サービス契約で、人員を派遣、技術、経営管理等のサービスを提供する形で共同操業に参画してきたが、今回、この契約の更新が出来なかった。

クウェート石油公社との間では2023年1月まで、最低日量10万バーレルのカフジ原油・フート原油あるいはクウェート原油の売買に関する取り決めを結んでおり、これは今後も継続する。
また、同社では両国政府の期待に沿って、クウェート国内において引続き事業を遂行する方策につき、クウェート政府当局との間で協議を継続している。

ーーー

立地

1922年12月に結ばれた国境協約(ウカイル協定)で、中立地帯が設定された。土地を両国で分割せず、双方が平等に半分ずつの権利を持つというもので、双方の遊牧民は自由に出入りできるとされ、両国が行政義務を果たすこととなった。

しかし、弊害が大きいので中立地帯は解消されることになり、1970年に南北に分割された。
但し、石油など天然資源の利権は引き続き双
方で平等に配分した。

2000年になって、サウジアラビアとクウェートは旧中立地帯の石油利権区域についても両国で境界線を定めて分割した。

  中立地帯地図は http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Lake/2917/zatsu/churitsu.html

ーーー

アラビア石油は “アラビア太郎” と呼ばれた山下太郎により設立された。

山下太郎は戦前の満州に進出、南満州鉄道の社宅建設などにより巨万の富を手にし、“満州太郎”の異名を得た。

1956年、「日本輸出石油株式会社」を設立し、石油の加工貿易を志した。
丁度、サウジが石油開発利権の分散政策を採ることを決め、未開発地域開発に日本の進出を求めていることを知り、サウジに飛んで交渉開始の覚書を交わし、帰国して財界を説得した。
1957年6月に政府が油田開発の閣議決定を行い、山下の事業を全面支援することとした。
1958年2月に電力、鉄鋼、商社など40社が参加し、アラビア石油が設立された。

メジャーが権利を押さえていない場所はサウジとクウェートの中立地帯の海底油田だけであった。
利権交渉は難航したが、1957年12月に協定を締結した。

引き続き、クウェートとの交渉を行ない、メジャーや独立系石油会社との競合となったが、1958年5月に契約を締結した。

  サウジ クウェート
探鉱期間の鉱区レンタル料 年額 150万ドル(540百万円) 年額 150万ドル(540百万円)
商業量発見後の年間最低支払額 250万ドル(900百万円) 250万ドル(900百万円)
利益配分率  サウジ側 56% クウェート側 57%
* それまでは利益分配率は50%が慣例であった。

アラビア石油の資本金は35億円しかなく(1959年に半額増資で52.5億円)、両国へのレンタル料その他を払うと、試掘井は1本しか認められなかった。(メジャーでさえも、油を掘り当てる確率は100本掘ってわずか3本なのに)

1959年7月に試掘が開始されたが、8月に暴噴が発生、火災が10日間続き、ダイナマイト爆破で消火した。

修理費は保険でカバーされたが、資金が切れた。このため、取締役会で100億円への増資決議を行い、議事録を担保に日本興業銀行から35億円のつなぎ融資を取り付けた。

燃えた掘削船を修理し、11月に試掘を再開した。

1960年1月、掘削に成功、カフジ油田と命名された。

1961年3月、第一船 鵜戸丸に22,958klの原油が積み出され、日本鉱業・水島製油所に送られた。

その後、1963年11月にフート油田が発見された。

更に、1967年2月にはルル油田、11月にはドラ・ガス田が発見されたが、これらはイランとの国境問題などで操業に至っていない。

   資料 NHKライブラリー「プロジェクトX⑩ 夢遥か、決戦への秘策」より、「炎のアラビア」

ーーー

2000年2月に40年の期限が切れ、サウジの利権協定が終了した。

サウジ政府は1990年代から、カフジ油田の利権は例外的な外国への特別扱いとし、よほどの日本側の見返りがなければ、延長を認めるわけにはいかないと、繰り返しアラビア石油に示唆していた。

サウジ政府は利権延長の条件として、日本側の資金提供による総額 2,000億円の鉱山鉄道を敷設するよう要求した。
アラビア石油が期限切れの際の設備接収リスクを恐れて維持・開発投資を手控えてきたため、原油の生産コストが高く、その分だけサウジ側が獲得できる利益が損なわれるので、利権を約30年延長するなら、その間の減収分を鉄道建設を通じて補償してほしい、というものである。

しかし、日本側は鉄道建設は採算性が見込めないとして拒否し、交渉は決裂した。

利権協定の期限は当初から決まっており、それに対して手を打ってこなかった後継首脳(天下り官僚)に対する批判がある。
  
アラビア石油破綻事件の深層  http://www2.tba.t-com.ne.jp/dappan/fujiwara/article/zaikai0104.htm

ーーー

サウジの利権協定終了後は、アラビア石油はクウェート政府との利権協定に基づきクウェート側の権益を代表するオペレーターとして、サウジ側の権益を代表する Aramco Gulf Operations との共同操業を行った。

並行して、2003年1月4日に終了するクウェート政府との利権協定以降の同国との新たな関係構築に向けて、同国政府と約2年間にわたり協議を重ねた。

1962年に制定された現行のクウェート憲法は外資への所有権付与を禁止しているため、アラビア石油は油田を直接所有するのではなく、操業権を維持する方向で交渉を進めたが、クウェート議会が操業権も憲法違反との解釈を示した。

この結果、油田で産出する原油と生産設備の所有権は2003年1月に失うが、クウェート政府から操業を受託する契約を結ぶこととなり、産出した原油の大半も同国から仕入れる形で日本へ輸入できることとなった。

2003年1月5日以降、カフジ操業はKuwait Gulf Oil と Aramco Gulf Operations のカフジ共同石油操業機構による操業へ移行
     
  アラビア石油とクウェート側の契約 
  技術サービス契約(5年間、双方の合意により、さらに5年間の更新を重ねることが可能)
    Kuwait Gulf Oilへの人員派遣による広範な技術、操業管理業務の提供、教育訓練等の諸サービスに関する取り決め
     
  原油売買契約(2003年1月5日から20年間)
    最低日量10万バーレルのカフジ原油・フート原油あるいはクウェイト原油の売買
     
  融資契約
    Kuwait Gulf Oil の分割地帯沖合操業に要する投資資金の融資
     

アラビア石油は5年間で切れる同契約の更新に向け交渉を進めてきた。

しかしながら、操業経験を積んだクウェートは、人件費の高い約50人のアラビア石油社員を自国技術者に置き換えた方が得策と判断、今回の打ち切りとなった。

これで「日の丸油田」に幕が降りることとなった。

ーーー

アラビア石油と富士石油は2003年1月31日に、株式移転により完全親会社 AOCホールディングスを設立した。

アラビア石油では現在、中国南シナ海およびノルウェー領北海において石油の開発・生産事業を行っている。

  ・新華南石油開発株式会社(珠江口沖プロジェクト)

設立:1985年12月12日
出資:アラビア石油 83.7/富士石油 0.6%)

新南海石油開発(石油資源開発 82%出資)および日鉱珠江口石油開発(ジャパンエナジー95%出資)との共同事業により発見した陸豊13-1油田(権益30%)において、1993年10月より原油の生産を開始し、現在、日量11千バーレルの水準で生産を行っている。

  ・Norske AEDC AS (ノルウェー領北海プロジェクト)

設立:1988年3月28日
出資:アラビア石油 100%

1990年6月より原油の生産を開始したギダ油田(権益比率5%、オペレーターはTalisman)において、現在、日量14千バーレルの水準で生産を行っている。

このほか、エジプトのスエズ湾で2件の開発を行なっている。

  ・ノースウェスト・オクトーバー鉱区(100%権益)
     2006年9月に試掘に成功、開発計画をエジプト石油公社と協議中。

  ・サウス・ゼイト・ベイ鉱区
     2007年10月、スイスのALEXOILから90%の権益を取得することにつきエジプト政府承認取得
     試掘第1号井(陸上)掘削中

 


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「中華人民共和国企業所得税法」、「中華人民共和国企業所得税法実施条例」が200811日から施行された。

    2006/12/28 中国、法人所得税率を統一、一律25%へ 

新企業所得税法は2007年3月16日に第10回全人代で可決承認され、同日公布された。

旧企業所得税法では原則税率は33%だが、外国企業は以下の通り優遇税率が適用され、かつ、2免3減制度で、黒字化から2年間は免税、その後3年間は上記の税率が半分になるという恩典があった。

  一般 輸出比率7割超
の企業など
中央指定の開発区  15%  10%
地方指定の開発区  24%  12%
 * 黒字化から2年間は免税、その後3年間は上記の税率が半分

 

2008年1月1日からは国内外企業に対する所得税率が一律25%に統一される。
輸出型企業への半減政策は取り消しとなり、生産型企業の再投資税還付政策も取り消しとなる。

また、公布日(2007年3月16日)付けで2免3減優遇を規定した旧税法が廃止され、同日以降に設立される企業への2免3減は廃止となる。

従来恩典を受けていた進出企業には、以下の過渡的措置が取られる。
(国務院 「企業所得税法経過優遇政策表」2007/12/29 
   http://www.gov.cn/zwgk/2007-12/29/content_847112.htm )

1)税率

  2007316日以前に工商登記を完了・設立した企業について、優遇税率は5年間にわたり調整される。 
  但し、輸出型企業への半減政策は取り消される。  

  優遇税率15%(及び10%)の企業は、
      2008年 18%
      2009年 20%
      2010年 22%
      2011年 24%
      2012年 25%となる。

  優遇税率24%(及び12%)の企業は2008年から25%となる。

2)2免3減
  (黒字化から2年間は免税、その後3年間は税率が半分になるという恩典)

  2007316日以前に工商登記を完了・設立した企業は、引き続き、この恩典を受けられる。

  まだ利益が出ていない企業については5年を限度にこの恩典を受けられる。
  5年間利益がなければ、恩典は消える。

 

また、新税法では、中国税務機関に移転価格問題に対処できる以下の権限が付与された。

  ・親会社との取引に関する正確な関連資料請求権限
  ・その取引を調査する権限
  ・虚偽の報告をした場合、納税額を決定する権限
  ・利息を含め所得税を追徴する権限

 

参考資料  中国の外資優遇税制の新動向 (唐山市日本事務所 2007/4/4) 
         
 http://www.e-tangshan.cn/jyouhou/zhongguoxinsuodeshuifa070411.pdf


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   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

1月2日のニューヨーク商業取引所の原油市場は、国際指標となる米国産WTI原油の先物価格が一時、1バレル 100ドルをつけ、史上初めて100ドルの大台に乗った。

正午すぎ(日本時間3日午前2時すぎ)に 100ドルをつけた。
終値は 99.62ドルで、終値として史上最高。

2007年12月31日の終値は 95.98ドルだった。

これまでの最高は、2007年11月20日の99.29ドル(終値は11月23日の98.18ドル)。

付記

1月3日も一時 100.09ドルと最高値を更新、終値は99.18ドルとなった。
1月4日は需要減予測で、終値 97.91$/bbl にダウン

1月4日の東京市場オープンスペックナフサ終値 887ドルで、東京市場ドバイ原油終値は92.40$/bbl で、いずれも過去最高となった。

   最新グラフは http://kaznak.web.infoseek.co.jp/new.htm


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

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