「no」と一致するもの

米司法省は10月3日、日本ケミコンが電解コンデンサのカルテルで司法取引に応じたと発表した。

日本ケミコンはこれまでの電解コンデンサカルテルでは最大の罰金60百万ドルを支払う。また5年間の保護観察となり、その間、コンプライアンス計画を実行し、毎年その報告を行うことを義務付けられた。
同社の社員4名が起訴された。

同社は他社と共謀し、2001/11~2014/1の期間、電解コンデンサの競争を阻害したとされた。

これで電解コンデンサカルテルで合計8社と個人10名が起訴された。8社は全て罪を認め、合計150百万ドル以上の罰金支払いに応じた。
個人10名のうち、2名は罪を認め、それぞれ禁固刑(1年と1日)となっている。

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電解コンデンサカルテルでは、2015年9月2日に NEC TOKIN が罪を認め、13.8百万ドルの罰金を支払うことで合意した。

司法省はその前の2015年3月に日本のコンデンサメーカー(Company A とし、社名を明らかにしていない)の1名を起訴したと発表している。

司法省は2016年4月27日、日立化成が司法取引を行ったと発表した。この時点では司法省と日立化成ともに、罰金額については明らかにしなかったが、後の司法省の発表では 3.8百万ドルとなっている。

2016/4/30  日立化成、コンデンサ事業でのカルテルで米国司法省と司法取引

司法省は2016年8月、ルビコンエルナーHoly Stone の3社と司法取引を行ったと発表した。罰金額はいずれも明らかにしていない。エルナーの1名が罪を認めた(禁固1年と1日)。


日立化成エレクトロニクスは2010年に、三春工場のタンタル・ニオブコンデンサ事業を台湾の禾伸堂企業股份有限公司(Holy Stone Enterprise Co., Ltd. )に売却した。
(Holy Stoneはその後2014年に、これを米国の
Vishay Intertechnologyの子会社ビシェイポリテックに売却した。)

司法省は2016年12月に3名を起訴したと発表した。Company Aの2名、Company Dの1名としている。

2017年2月に松尾電機が司法取引に応じた。罰金額は明らかにしていない。同社の1名が罪を認めた(禁固1年と1日)。

2017年7月にニチコンが司法取引に応じ、罰金 42百万ドルを支払った。(同社は別途、需要家に和解金として21.5百万ドルを支払うことで合意)

今回の日本ケミコンが8社目となる。個人の起訴は10人目となる。

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コンデンサー業界は日本のほか、中国、台湾、米国、韓国、欧州でカルテルの調査を受けている。中国以外で全て有罪となった。

2015/12/15 台湾、日系などのコンデンサーメーカーの価格カルテルに多額の課徴金

2016/4/2  公取委、コンデンサーメーカーに課徴金納付命令

2018/3/30 EU、コンデンサーカルテルで制裁金

2015/10/3 韓国公取委、日本のコンデンサーメーカーの価格カルテル調査


韓国公取委は2018年9月16日、日本のコンデンサー製造・販売企業9社が、アルミニウム・タンタルコンデンサーの供給価格を共同で引き上げまたは維持することで合意していた行為を摘発し、是正命令と共に課徴金360億ウォン(36億円)を賦課したと発表した。

制裁を受けた日本企業は、
アルミニウムコンデンサーではニチコン、三洋電気(現 パナソニック)、エルナー、日立化成エレクトロニクス、ルビコン、日本ケミコンの6社。
タンタルコンデンサーは、ニチコン、三洋電気、エルナー、日立化成エレクトロニクス、トーキン、松尾電気、ビシェイポリテックの7社。

公取委は、ビシェイポリテック、松尾電気、エルナー、日本ケミコンの4法人と日本ケミコン所属の職員1人を検察に告発した。

企業側発表の課徴金:

日立化成:2,012百万ウォン
松尾電機:1,840百万ウォン




ロッテの辛東彬(重光昭夫)会長が被告となっている2つの裁判を併合して審理が行われた控訴審で、ソウル高裁は10月5日、懲役2年6月、執行猶予4年(求刑は懲役14年)を宣告した。

実刑を免れた辛被告は同日、保釈された。ロッテの経営に復帰する。

判決を受けてロッテは「裁判所の賢明な判断を尊重する。ロッテが国家経済を支え、社会的な責任を果たせるよう努める」とのコメントを発表した。

会長は10月8日に早速出社した。

ロッテ関係者は「総帥不在のため経営の重要事項を決定できない状態だった」とし、「当分は山積した懸案を迅速に検討、決定を下し、経営正常化に取り組む」と説明した。

同じ控訴審で、ロッテグループの経営不正疑惑などで1審で懲役4年を言い渡された父親の辛格浩(重光武雄)名誉会長は減刑され、懲役3年と罰金30億ウォンとなった。
裁判所は1審と同様に実刑を言い渡した一方、辛会長の健康状態を考慮して法廷拘束はしなかった。

ツエを手にして車椅子に乗ったまま法廷に入った辛名誉会長は自身の名前と年齢などを直接話したが、裁判所と円滑な意思疎通はできない姿だった。

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ロッテグループの企業内の不正事件で横領や背任などの罪に問われた同グループ会長の辛東彬(重光昭夫)被告ら創業者一族に対する判決公判が2017年12月にソウル中央地裁であった。

2015年ごろまで経営の実権を握った創業者が、会社の資金を横領し、内縁の妻やその娘らに実態に見合わない多額の報酬を払ったほか、系列映画館の売店運営権を親族の会社に渡し、グループに損失を与えたとし、横領と背任の主犯と認定し、懲役4年と罰金35億ウォンを命じたが、収監は見送った。

辛東彬・会長については、経済的利益を受けていないとする一方、犯行を黙認した責任を指摘した。「たとえ父の言うことを拒否できないと言っても、犯行の実現過程での役割は無視できない」と指摘し、 懲役1年8カ月、執行猶予2年とした。この時点では、執行猶予のため、勤務を続けた。

多額報酬に絡み横領の罪に問われた長男の辛東主被告は無罪だった。

検察側と被告側はそれぞれ控訴した。

もう一つは、辛東彬(重光昭夫)会長の朴槿恵前大統領の事件に絡む裁判である。

免税店事業認可に絡み、朴槿恵被告の要請で「Kスポーツ財団」に70億ウォンを賄賂として提供したとして贈賄罪で在宅起訴された辛東彬(重光昭夫)会長に対し、ソウル中央地裁は2018年2月13日、懲役2年6月の実刑判決を言い渡した。

会長は上記の裁判で懲役1年8カ月、執行猶予2年の判決を受けており、今回の有罪で執行猶予が無効となって収監された。懲役は合計4年2か月となる。

2018/2/13 朴前大統領親友に懲役20年、ロッテ重光会長も実刑 

会長は控訴した。

控訴審は2つの裁判を併合して行われた。

辛東彬(重光昭夫)会長については、裁判長は次のように判断した。

まず、原則論として、「被告人が財閥グループのトップである点や、裁判の結果が企業や経済全般に影響を及ぼす可能性がある点が裁判に影響してはならず、考慮すべき事情でもないと思う」と述べた。

そのうえで、グループの経営不正事件については、ロッテシネマの売店の独占運営権を親族の経営企業に与え、背任罪に問われたことについて、一審と同様に有罪とした。
ただ、勤務実態のない親族に給与を支給し、横領罪に問われたことに関しては「(父で創業者の)辛格浩(重光武雄)総括会長の指示で給与が支給されることを容認したとしても、共謀したとはいえない」として、無罪とした。

国政介入事件での贈賄罪については、「Kスポーツ財団」に70億ウォンを拠出したことを賄賂として認めた。
ただ、「朴大統領が先に要求して受動的に応じたが、応じない場合は企業活動全般に不利益を受ける恐れを感じるほどだった」として、「意思決定の自由が多少制限された状況で賄賂供与の責任を厳しく問うことは難しい」とした。
裁判所は、私益の追求など大統領が支援金を要求した目的を全く知らないまま、社会貢献として金銭を渡したという辛会長側の主張も受け入れた。

最終的に、懲役2年6月、執行猶予4年とし、保釈を認めた。

辛名誉会長については、1審と同様、トップ一家に無料給与を支給し、ロッテシネマ売店に営業利益を与えたなどの一部横領・背任疑惑を有罪と認定し、刑量を多少減軽した。

まとめると次の通りとなる。

  一審判決 二審判決
辛東彬(重光昭夫)会長 (62) ① 懲役1年8カ月、執行猶予2年
懲役2年6月

計 
懲役4年2か月、執行猶予取消、収監
懲役2年6月、執行猶予4年、保釈
辛格浩(重光武雄)創業者(95) ①懲役4年と罰金35億ウォン 収監は見送り 懲役3年と罰金30億ウォン 収監は見送り
辛東主(重光宏之)(63) ①無罪  

トランプ米政権は9月30日、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しでカナダと合意したと発表した。

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メキシコとの間では、8月27日に基本方針に関する暫定合意が成立している。

米国とカナダが進めていたNAFTA改定を巡る協議は、期限の8月31日中の合意には至らず、物別れに終わった。


トランプ政権は12月1日のメキシコの政権交代までに新協定の署名を終えたいとしており、トランプ大統領は、カナダとの合意のないまま、メキシコとのNAFTA改定案を11月下旬までに署名する意向であることを議会に正式通知した。

米国内法は議会が十分な審議を行えるよう、署名から90日前の通知を求めている。また、新協定文書を1カ月後に議会に送付することとなっている。

付記 3国は11月30日(メキシコ政権交代の前日)、「USMCA」に署名した。


カナダを含めた3カ国が新協定に合意し、新協定文書を9月末に議会に提出できるかどうかが焦点で、米国は、間に合わなければ、米国とメキシコだけの新協定を結ぶとして、カナダに妥協を迫っていた。

2018/9/3 米国とカナダのNAFTA再交渉、再協議へ  メキシコとの合意内容も記載

カナダとの交渉は難航した。

トランプ米大統領は9月26日の記者会見で、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を巡るカナダとの協議について「カナダの交渉スタイルに強い不満を持っている」と述べた。カナダのトルドー首相との会談を拒否したとも主張した。米政権は9月末までの合意を目指しているが、カナダは譲歩する姿勢をみせておらず、自動車に関税を課すと改めて圧力をかけた。

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期限ぎりぎりの9月30日に合意した。

NAFTA(North American Free Trade Agreement)の名称を「USMCA(the United States-Mexico-Canada Agreement=米国・メキシコ・カナダ協定)」に変更する。

"Free Trade"が名称から消えた。トランプ大統領は1994年に発効したNAFTAが米国の貿易赤字を膨らませて国内の雇用を奪った元凶だと批判し、名称変更を求めていた。

米国が求める乳製品の市場開放でカナダが一定の譲歩を示した。米国が撤廃を求めてきた NAFTA 19条の紛争解決メカニズムは、新協定ではそのまま残される。

3カ国政府は11月末の署名をめざす。発効に向けては各国議会の批准手続きが焦点となる。米国は11月の中間選挙で選出された新議会が年明けに審議する見通しだ が、中間選挙の結果、上院・下院のいずれかで民主党が過半数を取れば、否決される可能性もある。

USTRは概要を発表した。

農業分野 Agriculture: Market Access and Dairy Outcomes of the USMC Agreement

カナダ乳製品の市場開放:米国のみに新しい関税割当

カナダの乳価クラスシステムの変更:問題となっていたClass 6(低価格な原料乳製品向け生乳 の支持価格)、Class 7(無脂乳固形の支持価格)の廃止

カナダのチキン、卵と卵製品、七面鳥の新しい関税割当

貿易に関する事項 Modernizing NAFTA into a 21st Century Trade Agreement

知財の規定

DIGITAL TRADEの規定

為替問題:Macroeconomic Policies and Exchange Rate Mattersの章

競争のための通貨切り下げや目標レートを決めることでの不公正な通貨政策をやめ、透明性を増やし責任あるメカニズムをとるとの high-standard のコミット 。

これまでに例のない規定で、マクロ経済と、為替の安定を強化する。

(通貨政策に関する項目を貿易協定に明記するのは異例。韓国とのFTA改正の付属書にもあるが、韓国側はFTAとは別だとしている。)

労働規定

トランプ大統領は米国の労働者に利益がでることを再交渉の目的とした。Labor obligation を協定のコアとする。

団体交渉の権利を認める法制(メキシコ)やILOが認める労働者の権利を尊重するなど。

自動車について、時給16ドル以上の地域での生産割合 40~45%とする。

環境規定:労働規定とともに協定のコアとする。

違法漁業を助ける補助金の禁止、鯨や海亀の保護、野生動植物の税関検査強化、大気浄化・海洋投棄ゴミの減・森林管理のサポートと環境評価手続きなど

製造を守るための貿易のリバランス Rebalancing Trade to Support Manufacturing

自動車のRules of origin

域内部品調達比率 62.5%→75%
時給16ドル以上の地域での生産割合 40-45%

付記 10月26日の日経は、現地生産する自動車について、エンジンや変速機といった主要部品を3カ国で生産するように義務付けていることが分かったと報じた。

下記の主要部品が1つでも域外製の場合、関税がゼロにならないという。日本や欧州の自動車メーカーの場合、主要部品を域外から持ち込んでいるモデルも多く、新たな設備投資や調達先の変更を迫られる可能性が出てきた。

商品市場のアクセス:非関税障壁、輸出入ライセンス

繊維:繊維とアパレル市場のサプライチェーンの強化

各分野のANNEX

自動車の数量規制については、上記の発表文にはなく、別文書で定められた。

カナダ、メキシコからの乗用車輸入にそれぞれ年260万台の数量枠を設け、枠内であれば高関税を課さない。
米国で人気が高い小型トラックは輸入制限の対象から外す。

自動車部品でもカナダに年324億ドル、メキシコに年1080億ドルの輸入枠を設ける。

カナダ メキシコ
自動車関税ゼロ 条件

域内部品調達比率 62.5%→75%
時給16ドル以上の地域での生産割合 40-45%

自動車関税ゼロ 限度 乗用車 年260万台
小型トラック 対象外
自動車部品関税ゼロ 年間324億ドル限度 年間1080億ドル限度

なお、ガット第 11条により原則として輸出入数量制限を行なうことを禁止されている。
   国際収支が著しく悪化している場合には,第 12条により最小限の輸入制限が認められる。
   途上国の場合には,第 18条によってより緩やかな条件で国際収支擁護のための輸入制限が行なえる。

日米自動車紛争で、日本は1981年に1980年実績から14万台減らした168万台という輸出枠を設定したが、自主規制という形をとった。


カナダ、メキシコでの
日本車の最近の状況は次の通り。

カナダ メキシコ
生産 対米輸出 生産 対米輸出
トヨタ 57万台 45万台 15万台 14万台
ホンダ 43万台 32万台 21万台 13万台
日産 80万台 35万台
マツダ 18万台 7万台
合計 100万台 77万台 133万台 69万台
関税無し限度     260万台 260万台

2017年のメキシコから米国への自動車輸出は約180万台だったが、現状ペースでは2021年にはこれに達する見込み。

限度を超えた場合、メーカー別に枠をどう割り当てるのかは決まっていない。日本企業が不利となる恐れもないではない。


協定は16年間有効で、発効後、原則6年ごとに再評価し、各国が次の16年間の更新意思を示さないと失効する「サンセット条項」も盛り込んだ。


トランプ米大統領は9月26日、 国連安全保障理事会の会合で「中国は私の政権に逆らい、11月の米中間選挙に介入しようとしている」と指摘した上で「中国は私やわれわれ(共和党)に勝利して欲しくない。私が貿易問題で中国に立ち向かった最初の大統領だからだ」と述べたうえで「介入も干渉もされるつもりはない」と警告した。


名指しで批判された中国は「不当な非難は受け入れられない」(王毅外相)と反発している。

トランプ大統領は中国による介入の具体的な証拠は示さなかったが、その後、記者団に「中国が(米中西部の)農業地帯を標的にしている」と語り、アイオワ州の新聞 Des Moines Register に中国が出した「記事型広告」の写真を自身のツイッターに掲載した。

China is actually placing propaganda ads in the Des Moines Register and other papers, made to look like news. That's because we are beating them on Trade, opening markets, and the farmers will make a fortune when this is over!


アイオワ州新聞大手のDes Moines Registerは9月23日、4ページにおよぶ記事を掲載した。「中国国営のChina Dailyが執筆、広告費用を負担した 。本紙は内容に関与しない。」との但書を付けている。

容は、最近のChina Dailyの記事の転載である。

1.メイン記事  「米中対決は貿易のメリットを破壊させる」という題で、副題は「貿易紛争は中国の輸入業者を南米に向かわせる」となっている。

これはChina Daily 2018/8/23 の記事 US tariffs threaten economic interdependence の転載で、副題は Trade row forces Chinese importers to look to South America である。

米国の大豆7万トンを積んだ貨物船が7月6日に大連港に到着した。しかしタッチの差で、高関税が課せられたという話で始まる。以下概要。

トランプ大統領が中国品に追加関税を課したため、中国も米国品に追加関税を課したもの。

中国は世界最大の大豆輸入国で、米国の輸出大豆の60%を輸入している。ブラジルに次ぐ。中国は昨年127億ドルの大豆を米国から輸入した。

米中貿易紛争で、中国の輸入業者はブラジル、アルゼンチン、ウルガイなどの南米に向かわざるを得ない。

農業貿易では中国と米国は極めて補完的だが、トランプ大統領の貿易戦争の結果、中国は他のパートナーを探さざるを得ず、そうなれば、米国の農家は中国での市場シェアを取り戻すのは難しくなる。

米中の補完関係は農業だけではない。Boeingは昨年、次の20年間で中国の航空会社が1.1兆ドル相当の7240機のコマーシャルジェットを購入すると予想した。今回中国は大型ジェットには追加関税を課さなかったが、事態が悪化すれば、そうはいかないだろう。 

これまで長年、米中は対話を続けてきた。しかしトランプはこれをぶち壊した。中国や他国に、時代遅れの301条を使ったり、national securityを口実にして、追加関税の脅しをかけている。

対中貿易赤字はミスリーディングで、iPhoneを例にとると、米国は中国からの輸入を1台300ドル以上と計算するが、部品を世界中から受入れ、中国は労務費10ドルを稼ぐだけである。
iPhoneだけで昨年の対中貿易赤字の4.4%、157億ドルと計算されている。

トランプは中国のせいで米国の雇用が失われたとするが、多くの経済学者は、米国の失業の原因は、中国やメキシコのせいではなく、オートメーションであるとしている。

オバマ政権とは相互投資協定を締結し、現在、約15万の雇用が中国の投資で支えられている。トランプ政権になって、相互投資の対話は中断した。

Yale Universityの Roach 教授は、中国の産業政策を米国が攻撃しているのについて、どの国でもやっていることだとして否定した。また、中国が外国企業が中国にJVを設立する際に知財の移転を強いているとの考えを否定している。

2.この記事の左の記事

2018/5/4 の記事 New book tells story of Xi's 'fun' days in Iowaの転載である。

アイオワ州のSarah Landeが書いた本 " Old Friends: The Xi Jinping - Iowa Story" を紹介し、彼女と周近平夫妻との永年の交流を描いている。


アイオワ州は1983年に河北省と姉妹州(省)となった。彼女は姉妹州組織の常務理事を務め、習近平の1985年の来訪時にアレンジをし、2012年の再訪時にも会い、直後に訪中して会っている。

他の紙面の記事の内容は不明だが、他に「中国は世界の良いお手本」を題とする記事や中国のカンフーなどの内容とされる

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Des Moines Registerの記事については、外国政府が貿易振興のため米国の新聞の広告スペースを購入することは広く行われており、国家情報機関が行う秘密の作戦とは異なる との報道もあるが、中国当局がアイオワ州の有権者を対象に広告を掲載したのは、11月の中間選挙が背景にあることが原因だとする報道もある。

トランプ大統領のやり方を猛烈に批判し、このままでは中国は南米から農産物を買うことになるとしている。

アイオワ州は農業が盛んで、大豆生産量は全米1位を誇っている。

また、アイオワ州は、米国のなかでも共和党と民主党が互角の戦いを展開する「スイング・ステート」として知られている。選挙のたびに勝利政党が変わるため、その動きが常に注目されている。11月の中間選挙でも再び激しい攻防戦が予想される。

中間選挙を控えたこの時期に、このような記事を掲載したのは、選挙介入と見られる可能性はある。

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トランプ米大統領は9月12日、米国の選挙に介入した外国人に制裁を科すことを可能にする大統領令に署名した。

Executive Order on Imposing Certain Sanctions in the Event of Foreign Interference in a United States Election

米国では2016年の大統領選挙をめぐり、ロシアがトランプ氏のため選挙戦に干渉したとの疑惑が持ち上がった。また、投票システムへのサイバー攻撃が試みられたほか、メディアやインターネット上で偽情報が拡散された 。

今回の大統領令はどちらの行為についても、実行者に金融制裁を科すための正式な手続きを設ける。

大統領令を発表したDan Coats国家情報長官は、11月6日の議会選挙が迫るなか、介入が「ロシアだけでなく、中国からも行われている兆候がある。またイラン、さらには北朝鮮にも潜在的な実行能力がある」と述べた。

2019会計年度(2018年10月~2019年9月)の米連邦予算の法案が9月28日にトランプ大統領が署名し、成立した。

トランプ大統領がメキシコとの間の壁の建設費用を認めない場合に政府を閉鎖するとの脅しを続ける中、国防省等については正式予算、メキシコとの間の壁の建設を担当する国土安全保障省 等については12月7日までの「つなぎ予算」とする異例の形となった。

11月6日の中間選挙後に壁の問題での大統領と民主党の争いが再開されることとなる。

トランプ米大統領は9月6日、メキシコの壁建設予算を巡って政府機関が閉鎖される可能性は11月6日の中間選挙まで「おそらくない」との考えを示した。中間選挙に出馬する共和党候補に打撃を与える事態を望まないため、と理由を説明した。しかし、「選挙が終われば即座にするつもりだ」と発言した。

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米国では10月1日から新年度(2018/10~2019/9)が開始する。

問題はメキシコとの壁の予算である。

トランプ大統領は、壁建設費50億ドルの歳出予算を盛り込むことを求めている。

民主党はこれに反対しており、上院民主党はかねてから、国境の壁建設予算16億ドルなら支持する方針である。

上院可決には60票が必要であるが、共和党は51議席しか持たない。

トランプ大統領は7月29日のツイッターでこう述べた。民主党が壁を含むBorder Securityに賛成しなければ、政府を閉鎖する。

I would be willing to "shut down" government if the Democrats do not give us the votes for Border Security, which includes the Wall!
Must get rid of Lottery, Catch & Release etc. and finally go to system of Immigration based on MERIT! We need great people coming into our Country!

9月16日にも、「壁がなければ犯罪以外に何もない」と述べ、共和党に決断を求めている。

"When will Republican leadership learn that they are being played like a fiddle by the Democrats on Border Security and Building the Wall?
Without Borders, we don't have a country. With Open Borders, which the Democrats want, we have nothing but crime! Finish the Wall!"

壁の予算は 民主党の反対で通らない。そうなると、大統領は政府閉鎖を決める。

米議会の共和、民主両党は、政府機関閉鎖の回避を目指し、面白い案を考えた。

トランプ大統領も賛成する部分(国防省、労働省、教育省、保健福祉省などの予算)については正式予算を作成する。

壁の建設を担当する国土安全保障省や、国務省や商務省、司法省、科学関連省庁の予算については、正式予算ではなく、12月7日までのつなぎ予算とし、現行の予算水準を維持する。

これにより、11月6日の中間選挙までこの問題を棚上げにするというものである。

上院は9月18日、これを承認した。

共和党 民主党 無所属 合計
賛成 45 47 1 93
反対 6 1 7
合計 51 47 2 100

下院は9月26日、これを可決した。

共和党 民主党 合計
賛成 176 185 361
反対 56 5 61
棄権 3 3 6
合計 235 193 428

国防省予算は6065億ドルで、前年比で170億ドル増となっている。

労働省、教育省、保健福祉省は合計1780億ドルで、前年比で10億ドル増、政権の要求より110億ドル増となっている。政権は軍事費以外の増については反対しているが、民主党に軍事費予算を呑ませるための見返りである。

歳出予算は裁量的経費(Discretionary Spending)と義務的経費(Mandatory Spending)に分けられているが、裁量的経費の75%を決めたこととなる。

裁量的経費が75%だけとはいえ、年度開始前に決まったのは20年ぶり。

最近の状況は下記の通り。

大統領 当初
Obama
(2009/1~ 2017/1)

オバマ政権は成立以来、予算案と債務上限問題で苦しんだ。
本予算が期限に一度も通らず、それまでの支出のペースを維持する短期の暫定予算をつないだ。

背景については 2013/3/25 米議会が暫定予算可決 

2012/10~
2013/9
暫定予算 2013年3月、政府機関の閉鎖回避のための年度末(9月30日)までの暫定予算案を承認
  2013/3/25 米議会が暫定予算可決
2013/10~
2014/9
暫定予算 17年ぶりとなる政府機関の一部閉鎖
  
2013/10/1 米国、予算成立せず、政府機関を一部閉鎖

2014年1月16日に、2014年9月30日までの歳出法案を可決

2014/10~
2015/9
暫定予算 米上院本会議は12月13日深夜、2015年9月までの包括的歳出法案を可決した。
移民制度改革(不法移民の大量受け入れ)の所管事項が多い国土安全保障省の予算については、2015年2月までとされた。
  
2014/12/18 米国、包括的歳出法案が可決するも、問題を残す
  2015/3/6 米、国土安保省の予算可決 
2015/10~
2016/9
暫定予算 米議会下院と上院は2015年12月18日、1兆1500億ドル規模の予算法案を可決した。
  2015/12/21 米議会、予算案を可決
2016/10~
2017/9
暫定予算 2016/12/10 米国議会、来年4月28日までの暫定予算を可決

米議会共和党と民主党は2017年4月30日夜、2017年9月末までの資金を手当てする約1兆ドル規模の予算案について合意した。

2017/10~
2018/9
Trump
(2017/1~
暫定予算 2018年3月23日の暫定予算期限が近づく中、共和・民主両党の議会トップ4人は3月21日夜、10月までの政府予算を手当てする歳出法案で合意した。
  
2018/3/23 米、暫定予算期限切れ1日前に予算案承認

その後、つなぎ予算を延長したが、2018/1/19に4度目の延長に失敗、時間切れで政府機関の閉鎖
  2018/1/20 米政府機関、閉鎖 
  
2018/1/23 米国、政府機関閉鎖解除へ 
  2018/2/10 米国政府機関、再度の閉鎖、数時間後に予算合意で解除
  2018/3/23 米、暫定予算期限切れ1日前に予算案承認


東レ・カーボンマジックと科学技術振興機構、内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)は9月28日、新素材「しなやかなタフポリマー」を活用した革新的コンセプトカーが完成したと発表した。

内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」に「超薄膜化・強靭化 『しなやかなタフポリマー』の実現 」プログラムがある。

ここで創出した「しなやかなタフポリマー」を、自動車を始めとする輸送機器の構造材や構成部品に適用することにより、軽量性・機能性・安全性・信頼性を飛躍的に向上させる可能性を検証することを目的として、それらの材料をふんだんに活用し、適用の効果を具現化した電気自動車(EV)のコンセプトカー"I toP "(Iron to Polymer) をつくったもの。

車両の樹脂化を従来比約4倍の47% まで進めた。

樹脂製の大きなサイドウインドや透明ルーフとフロントウインドの一体化など、これまでにないフォルムと空力を両立させつつ、革新的な一体成形モノコック構造ボディ・フレーム(重量140kg 、一般的な金属製モノコックの約半分)により、強度・剛性にも優れた衝突安全構造を実現した。

さらに、サスペンション・スプリング・ホイールなどの足回り部品にも炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を適用したことで、大幅な軽量化(車両重量850kg、軽量化率38%)を達成することができた。

その結果、製造工程も含めた10万km 走行時点での温室効果ガス(GHG)排出量が、従来素材の鉄、ガラス、タイヤなどで作った場合と比べて11% 低減できる可能性が示された。

伊藤耕三 東大教授は「自動車の重さが半分になれば燃料も半分でいい。開発した樹脂やプラスチックが普及すれば、自然環境に対して絶大な効果が期待できる。課題はコストで、量産化するなどして乗り越えていきたい」と述べた。

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内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」を主導している。

究極的な目的を「イノベーションに最も適した国」「起業、創業の精神に満ちあふれた国」の実現とし、それを成功に導くために、「非連続イノベーションの創出」と「イノベーション創出の行動モデルの提示」を目標とする。

構想を実現するため、トップクラスの研究開発力を結集し、研究開発プログラム全体を統率して機動的なマネジメントを実施しながら、ハイリスク・ハイインパクトな研究開発に取り組み、非連続イノベーションの創出にチャレンジする。

16の研究開発プログラムがあり、その一つが、東大の伊藤耕三教授がリーダーの「超薄膜化・強靭化 『しなやかなタフポリマー』の実現 」である。


超薄膜化・強靭化 「しなやかなタフポリマー」

人類の発明した素材で最も用途が広いとも言われる便利なポリマー。しかし、薄くすると壊れやすく、厚く硬くすると脆くなる性質が課題でした。

本プログラムは、従来の限界を超える薄膜化と強靱化を同時に達成する「しなやかなタフポリマー」の実現を目指します。

タフネス性・柔軟性・自己修復性(熱や光で元に戻る)という特徴をもつタフポリマーは、自動車部品や輸送機器を飛躍的に向上させるブレークスルーにつながります。さらに高分子材料が利用される産業全般に広い波及効果が期待され、将来的に安全・安心・低環境負荷という社会的ニーズに貢献します。

体制は次の通り。

「燃料電池電解質膜薄膜化プロジェクト」において、燃料電池を構成するフッ素系の電解質膜を対象に、従来トレードオフの関係にあった薄膜化と高水準の機械的耐久性とを両立させるという難しい課題に挑戦している。

AGC(旧称 旭硝子)が有するフッ素系ポリマー技術と、大学などによる膜の構造解析技術やシミュレーション技術との連携により、ポリマーの化学構造に遡って検討を重ね、機械的耐久性を向上する上で最適な物性を有する膜の具現化に成功した結果、従来膜の1/5の厚さにおいて5倍以上の乾湿サイクル耐久性を示すという、従来は考えられなかった特性を実現した。

「Li電池セパレーター薄膜化プロジェクト」において、リチウムイオン電池のセパレーターを構成するPP系多孔質フィルムを対象に、従来技術では両立が困難であった薄膜化と高強度化を両立させるという課題の解決を目指している。

三菱ケミカルが培ってきた独自の材料技術と、学術機関による膜の高次構造解析技術やシミュレーション技術との連携により、多孔質フィルムを高強度化する上で最適な細孔構造などに関する指針の構築とその実現に成功した。その結果、PP系多孔質フィルムを1/3の厚みにしても突刺し強度が落ちないという、従来技術では不可能であった特性を達成した。

これは、多孔質フィルムをタフ化する新たな材料設計指針の確立につながるとともに、リチウムイオン電池の高容量化を実現可能な画期的成果と言える。

「車体構造用樹脂強靭化プロジェクト」において、ポリマー材料への環動ポリマー構造の導入により、高剛性と高靭性を高水準で両立した車体構造用材料を開発している。

東レが保有するナノアロイ®技術の活用や学術機関との種々の連携を通して、環動ポリマー構造をCFRPのマトリックス樹脂中にナノメートルオーダーで均一に分散させることに成功した結果、強度、剛性を保ちながら一般的なCFRPと比較し約3倍の耐疲労特性を実現した。

「タイヤ薄ゲージ化プロジェクト」において、タイヤを構成する各種部材を強靭化し薄くすることで、タイヤの省資源化および軽量化、並びに低燃費性能の向上を目指している。

これまで、亀裂進展挙動の本質を明らかにすることで、ゴム材料における高速き裂進展を大幅に抑制する高強度化を達成した。

北海道大学がタフポリマー化の手法として提唱するダブルネットワーク構造をゴム材料に導入することにより、さらなる高強度化とともに、従来トレードオフの関係にあった低燃費性能の向上との両立に成功した。これは、ゴム材料においてもダブルネットワーク構造がタフポリマー化に有効であることを実証するとともに、タイヤとしての実用化を目指す上でも極めて重要な成果と言える。

「透明樹脂強靭化プロジェクト」において、代表的な透明樹脂であるPMMAを対象に、高透明性を維持したまま、従来トレードオフの関係にあった高剛性と高タフネスを高水準で両立させるという非常に難しい課題に取り組んでいる。

住友化学が有する各種材料技術と、アカデミアによる破壊に関する分析・解析技術やシミュレーション技術との連携により、分子レベルでの高次構造制御に成功した結果、高透明性と高剛性を保ったまま、従来の10倍以上の耐衝撃性を実現した。これは、タフポリマー化のための新たな材料設計指針を示唆するとともに、自動車の前面窓やルーフを樹脂製に変える可能性を示す画期的な成果と言える。

その後、タフポリマーの材料開発プロジェクトに続き、「コンセプトカー製作プロジェクト」がスタート した。

「しなやかなタフポリマー」の社会実装や新しい価値創造の可能性をクルマで示す目的で、上記5つの材料開発プロジェクトの各種研究開発成果を適用して、実用性・安全性を備えた未来車のプロトタイプ(コンセプトカー)の製作に取り組んできた。

タフネスをもたらす原理を具体的部材に落とし込んだ。

部材 担当
ゲル 電解質膜 燃料電池セパレータ AGC
多孔性樹脂膜 LIBセパレータ 三菱樹脂
エラストマー タイヤ ブリヂストン
結晶性樹脂 車体用樹脂 東レ
非晶性樹脂 透明樹脂 住友化学

極限まで樹脂化を進めたコンセプトカー"I toP "の特徴的な研究・開発内容は次の通り。

(1)スタイリングデザインと空力

外観形状は、しなやかさとタフさをテーマにボディ全体を樹脂化することでのみ成立するデザインコンセプトを具現化している。

連続的な曲面からなる面構成、大きなグラスエリアとドア開口、独立したフロントフェンダー、カバーされたリアホイールなど、未来感覚のスタイリングと省エネルギー化に貢献する優れた空力性能を両立している。

(2)モノコックボディ

軽量性と高剛性、さらには耐衝突性能の観点から、車両のフレームは外板ボディを兼ねたモノコック構造を採用、下図部分を一体成形品として構築した。炭素繊維と熱硬化性樹脂からなる複合材の優れた物性と相まって、コンセプトの成立に大きく貢献している。

重量は、一般的な金属製モノコックフレームの300kgから140kgへと50% 以上の低減を果たしている。

(3)サスペンション

従来、樹脂化が困難とされてきたサスペンション部品にも、今回開発された環動ポリマー構造を導入したCFRPを用いることで、求められる性能や機能が達成され適用に至った。

(4)窓材料

本プログラムで開発された高剛性・高タフネス性を両立した透明樹脂をウインドガラスに適用した。これによりガラス部材の軽量化が見込めるとともに衝撃を受けた際の耐破断性が増すことで、飛来物の貫通や破片の飛散防止など安全性向上に効果が期待される。

(5)タイヤ・ホイール

今回のプログラムで創出された革新的なゴム素材を用いた専用タイヤを装着している。摩耗性の向上はタイヤ材料の省資源化に貢献するとともに、5%と推算される転がり抵抗と幅狭・大径化による低空気抵抗は、省エネルギーに直結する。

またホイールは、サスペンション部品同様に環動ポリマー構造を導入したCFRPを用いることで、耐衝撃特性が改善されており、タイヤを含めたバネ下回転部位の軽量化は、車両全体の性能向上に大きく寄与している。

(6)クラッシュボックス

環動ポリマー構造を導入したポリアミドとグラスファイバーの複合材からなる衝撃吸収体を側部および前部に配している。複合材化することで軽量化を実現してる。

(7)バッテリーパック

EVシステムのリチウムイオン2次電池モジュールを収めるボックスおよびそのベース部材もCFRP化し、軽量化(約30%)と耐衝撃性向上を図っている。

(8)インテリア

インテリアパネルの大半をCFRP化し、モノコックフレームやドア構造の一部とすることで、効率の良い車体剛性確保と軽量化に貢献している。またシート構造部材を、環動ポリマー構造を導入したCFRP製とすることで、軽量化に加え靭性に優れた薄肉シートシェル構造を採用することができた。

(9)その他の特徴

前席1名・後席2名の乗員配置、収納可能なフロントシートやツインレバー式ステアリングは、将来の完全自動運転を意識したものであり、後部に着席する乗員の快適性を追求している。

またドアの開閉から運転に関わる操作・情報モニターに至るまで、スマートフォンとタブレット型PCを用いるシステムを採用している。

さらに、大きく前上方に開く電動アシスト付きドア(重量35kg/片側)は、モノコックボディ同様の材質と構造を持ち軽量化が達成されたことで成立している。

Tesla, Inc.のElon Musk CEOが8月にツイッター上で公表した株式非公開化の計画をめぐり米証券取引委員会(SEC)から訴えを起こされていた問題で、両者が和解したことが9月29日分かった。
Musk CEOは罰金の支払いに応じるほか、Teslaの会長職から退くことなどで合意した。CEOとしては留任する。

付記

TeslaのElon Musk CEOは10月4日、ツイッターでSECを "Shortseller Enrichment Commission " (空売り筋:ショートセラーを富ませる組織)に名称変更するよう促し、挑発した。

Just want to that the Shortseller Enrichment Commission is doing incredible work. And the name change is so on point!

付記

Teslaは11月7日、新たな会長にRobyn Denholm女史を指名した。同氏はこれまで、オーストラリアの通信大手、Telstra Corporation LimitedのCFOであり、2014年からTeslaの社外取締役も務めていた。また、過去にはToyota Motor Corporation Australiaに勤務し、財務管理を担当していた時期もある。

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Elon Muskは、投資家から四半期決算など短い期間で好業績を出すように圧力がかかることを嫌っているとされるが、8月7日に突然ツイッターで「1株当たり420ドルでTeslaを非公開にできないか考えている。資金は確保した(Funding secured)」と発信した。

株式市場は一時騒然としTesla株は前日比11%高となった。

その後、「資金は確保した」との発言も、サウジの政府系ファンドとの交渉での感触によるものであることが分かった。

Tesla は8月24日、株式非公開化の計画を撤回すると発表した。

Elon Musk CEO は、株式非公開化について「当初予期していたよりもはるかに時間がかかり、混乱を招くことが明らかになった」と指摘。「モデル3を普及させ、収益を改善することに注力する上で問題になる」と撤回の理由を説明した。

Tesla, Inc.のCEOのElon Muskがツイッターで株式非公開化の方針を公表した情報開示の手法をめぐり、米証券取引委員会(SEC)が同社に証言や書類提出を求める召喚状を送ったことが分かった。
米メディアが8月16日に一斉に報じた。

2018/8/21 Teslaの株式非公開化、米SECが本格調査へ

米証券取引委員会(SEC)は9月27日、投資家を欺いたとしてMusk CEO を提訴した。

ニューヨーク南部地区連邦地裁にSECが出した訴状によると被告はMusk 氏個人で、8月7日のツイートを問題視した。1株あたり420ドルでテスラ株を買い取り、非公開にする計画を示し「資金は確保した」としていた。この発言についてSECは価格や原資が「議論も確定もしていなかった」と指摘した。

SECは訴えでMusk氏に民事上の制裁金の支払いなどのほか、公開企業の経営に関わることを禁じるよう求めている。TeslaはNASDAQに上場している。

訴えが認められれば同社の経営に大きな打撃となる。

一方でMusk氏は同日出した声明で「不当だ」と反論。「自分は常に投資家の利益を最大限考えてきた」と述べた。

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SECは9月29日、訴訟の提起からわずか2日間での「スピード和解」を発表した。

内容:

SECはTesla Inc. のElon Musk CEO兼会長との間で、証券詐欺罪問題で和解することで合意した。
同時にこの問題での開示を怠ったことでTeslaを
訴え、同社は和解することで合意した

Elon Musk は会長職を退任し、独立した会長に交代する。Muskは3年間は会長に再就任できない。
Teslaは独立した取締役の委員会を設立し、Muskの対外的なコミュニケーションを監督する。

Musk本人とTesla はそれぞれ20百万ドルの罰金を支払う。合計40百万ドルは、裁判所が承認するやり方で被害を受けた投資家に配分する。

SECによると、Musk は8月7日のツイッター発言の時点で、Teslaを非公開にするための取引が不確かであり、多くの問題があることを知っていた。またどの相手方とも価格を含めた詳細を議論していなかった。このため、彼の発言は事実に基づいていなかった。Muskのミスリーディングな発言で8月7日に株価は上がり、市場を混乱させたとしている。

Teslaについては、MuskのツイートがTeslaがSECに届け出て開示すべき情報を含んでいるかどうかを決める手続きをもっておらず、また、ツイートが正確か完全かを判断することをしていなかったとした。

Elon Muskは会長職を辞めるが、引き続き CEO の役職にはとどまる。

SECと早期に和解することで、経営への打撃を抑える狙いとみられるが、司法省も刑事捜査を始めているほか、損失を被ったとする一部の投資家の間では集団訴訟を起こす動きが広がっており、問題はまだ解決していない。

New York 株式市場では、この問題が嫌気され、Tesla株は9月28日に前日比14%近く下落 した。

9月28日の終値ベースの時価総額はTeslaが約451億ドル、GMが475億ドルで、GMが1年5カ月ぶりに首位に返り咲いた。

トランプ米大統領と韓国の文在寅大統領は9月24日夕、ニューヨーク市内で会談し米韓自由貿易協定(FTA)改正案に署名した。

改正FTAは両国の国内手続きを経て年明けにも発効する見込み。トランプ大統領は署名式で「新協定は貿易赤字を削減し、米国産品の輸出を大幅に拡大する」と強調し、「米国と韓国が貿易のための友好協力関係の例を示した」と語った。

鉄鋼への追加関税を回避するため、韓国が大幅に譲歩したもの。

トランプ大統領にとっては、追加関税の脅しで貿易協定を改正する最初の成功例であり、次いでメキシコとの間で自動車の追加関税の脅しでNAFTA協定の改正に成功している。
但し、NAFTAのもう一方の相手のカナダとの交渉は難航している。

2018/9/3 米国とカナダのNAFTA再交渉、再協議へ 後半部分にメキシコとの交渉内容

EUとの間では、関税引き下げに向け交渉することで合意した直ちにExecutive Working Group を設置する。加えて、短期的な対策を検討する。

この間は、どちらかが交渉を取り止めない限り、この合意の精神に反する行動を行わないこととした。

2018/7/27 米国とEU、関税撤廃交渉へ

日本は、EUのやり方を真似た。

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韓国と米国との自由貿易協定(FTA)が2012年3月15日に発効した。最初の交渉妥結から5年かかった。

工業製品などの9割弱について両国で関税が即時撤廃され、5年以内に工業製品などの約95%で関税が撤廃される。

2012/3/15 韓米FTA発効 

対韓貿易赤字に不満を持つトランプ米大統領は 2017年6月30日の米韓首脳会談で米韓自由貿易協定(FTA)の再交渉に言及した。
米通商代表部(USTR)は7月12日、FTAの改定交渉を韓国政府に正式に要求した。

協定では、米韓のいずれかが特別共同委員会は招集を要求した場合、相手国は原則的に30日以内に応じなければならないこととなっている。

2017/7/20 米国、韓国とのFTAの再交渉を要求 

米韓政府は8月22日、FTAを見直すかを議論する特別合同委員会をソウルで開いた。

米側は米韓FTAで貿易赤字が拡大しているとして改定を要求。一方、韓国は米国の対韓貿易赤字とFTAは無関係とし、改定には応じないと反論した。

2017/8/25 韓国、米国のFTA 即時改定要求に応じず

トランプ米大統領は2018年3月1日、鉄鋼とアルミニウムの輸入増が安全保障上の脅威になっているとして輸入制限を発動する方針を表明した。

鉄鋼には25%、アルミには10%の追加関税をかけると述べた。

2018/3/3 トランプ大統領、鉄鋼とアルミに追加関税、日本も対象

トランプ大統領は3月8日午後、鉄鋼とアルミニウムに輸入制限の発動を命じる文書に署名した。 

それぞれ25%、10%の関税を課す。
15日後に発効する。
全ての国に適用するが、カナダとメキシコは当面猶予する。

今回の命令は、いくつかの国を除外するようになっており、国ごとに税率を変えたり、適切と思う国をリストに加えたり、リストから除外する権限を大統領に与えていると述べた。

2018/3/9 トランプ大統領、鉄鋼・アルミの輸入制限発動を命令

両国は3月25日、米韓FTAの改正・延長交渉で合意した。交渉に参加した韓国の金鉉宗通商交渉本部長は、「韓米FTAと貿易拡大法第232条の鉄鋼製品の関税賦課について原則的に合意・妥結した」と明らかにした。

鉄鋼に関しては25%の追加関税を免除する代わりに、韓国は米国向け輸出数量を減らす。(2015~2017年平均輸出量383万トンの70%を限度)

FTAの改正点は次の通り。

農産物市場関連の追加開放はない。

米国製自動車部品の使用義務など原産国関連の米国側の要求は反映されない。

一方、米自動車を輸入する際に適用してきた非関税障壁の自動車安全・環境基準のハードルを下げる
韓国の安全基準を満たさなくても、米基準を満たす車両の韓国輸入台数の拡大などを受け入れた模様。
(現在、米国車は年間2万5000台まで米国基準にだけ合わせれば韓国で販売できるが、これを5万台に引き上げる。

米国に輸出する韓国製ピックアップトラックに対する関税撤廃日程を2041年まで遅らせる。
(現行FTAでは、米国はピックアップトラックの25%の関税を来年から段階的に引き下げ、2021年までに完全撤廃となっている。)

両国が競争的な通貨切り下げを禁じる「為替条項」の導入でも合意した。
為替条項は(1)競争的な通貨切り下げを禁じる(2)金融政策の透明性と説明責任を約束するといった内容。
「付帯協定」との位置づけのため強制力は持たない。

米国への輸出拡大を狙った韓国の通貨安誘導を防ぐためで、米国が同条項を結ぶのは初めて。

2018/3/26 韓米FTA改正交渉妥結、鉄鋼の追加関税免除 

なお、上記の為替条項については、米国は「 (FTA交渉のなかで)FTAの条項とは別に、韓国と合意している」と説明するが、韓国側は「FTAとは別の事案」としている。


四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを命じた2017年12月の広島高裁仮処分決定を巡る異議審で、同高裁は9月25日、四国電力が申し立てた異議を認め、仮処分決定を取り消した。

差し止めの理由とした阿蘇カルデラの破局的噴火について社会通念上、想定する必要がなく、立地は不適でないと判断した。決定を受け、四電は10月27日に3号機を再稼働させ る予定。

住民側は他の訴訟への影響などを考慮し、最高裁への特別抗告はしない方針。

伊方3号機については、9月28日に大分地裁が決定を出すほか、高松高裁や山口地裁岩国支部でも係争中。

付記

大分地裁は9月28日、住民側の申し立てを却下する決定をした。

住民側は原発事故が起きれば危険が及ぶと主張。阿蘇カルデラが破局的噴火をした場合の危険性などを訴えていた。


付記

広島市の住民らが、10月以降の運転差し止めを求めた仮処分申請で、広島地裁は10月26日、申し立てを却下した。

下記の通り昨年末の広島高裁仮処分が9月末までの停止を命じたため、10月以降の停止を求めていた。

裁判長は「巨大噴火が阿蘇で発生する可能性は非常に低く、噴火によって事故が起こるリスクは、直ちに除去しなければならないほど差し迫った危険には当たらない」と判断した。 

伊方3号は10月27日未明に再稼働した。


付記

高松高裁は11月15日、愛媛県の住民の申し立てを退けた2017年7月の松山地裁決定を支持し、運転を認める決定をした。阿蘇カルデラで運用期間中に「破局的噴火」が起きる根拠は不十分で「立地が不適とは考えられない」とした原子力規制委員会の判断を追認した。

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伊方原発3号機について、広島高等裁判所は2017年12月13日、運転の停止を命じる仮処分の決定をした。
運転停止の期間については、広島地方裁判所で並行して進められている裁判で異なる結論が出る可能性があるとして、2018年9月30日までとした。

「熊本県の阿蘇山で、巨大噴火が起きて原発に影響が出る可能性が小さいとは言えず、新しい規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は、不合理だ」と指摘した。

伊方原発3号機は、2016年8月に再稼働を行ったが、2017年10月3日から定期検査のため運転を停止中で、決定が覆されない限り続くため、定期検査が終了する2018年2月以降も運転できない状態が続く。

なお、野々上裁判長は2017年12月末で定年退官のため、今後は別の裁判官が扱うこととなる。

問題となったのは、日本では1万年一度程度とされる「破局的噴火」の影響である。

破局噴火とは、地下のマグマが一気に地上に噴出する壊滅的な噴火形式で、しばしば地球規模の環境変化や大量絶滅の原因となる。大規模なカルデラの形成を伴うことからカルデラ噴火と呼ぶ場合もある。

阿蘇山では分かっているだけでも過去4回大きな噴火を起こし、約9万年前に起きた噴火は最大級の「破局噴火」であった。

2017年12月13日の仮処分では、四国電力が想定する地震の最大の揺れや周辺の火山の噴火の危険性をどのように評価するかなどが争われた。

原子力規制委員会が2013年に作成した「火山影響評価ガイド」 ではまず、原発の運用期間とされる約40年間に噴火するかどうかや、その規模を推定する必要がある。推定できない場合は、過去最大の噴火規模を想定する手順になっており、判決はこれを厳格に適用し、約9万年前という大昔の破局的噴火が審理の対象になった。

裁判長は、熊本県にある阿蘇山が噴火しても火砕流が原発に到達しないと主張する四国電力の根拠となった噴火のシミュレーションについて、「過去に阿蘇山で実際に起きた火砕流とは異なる前提で行われており、原発に火砕流が到達していないと判断することはできないため、原発の立地は不適切だ」などと指摘した。

そのうえで、「阿蘇山の地下にはマグマだまりが存在し、原発の運用期間中に、巨大噴火が起きて原発に影響を及ぼす可能性が小さいとはいえない。巨大噴火が起きた場合、四国電力が想定した火山灰などの量は少なすぎる」と述べた。

そして、「火山の危険性について、伊方原発が新しい規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理で、住民の生命、身体に対する具体的な危険が存在する」として、運転の停止を命じた。

2017/12/15 広島高裁 

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今回の広島高裁の三木裁判長は、差し止めの仮処分決定が重視した原子力規制委員会の手引書「火山影響評価ガイド」について「噴火の時期や程度が相当程度の正確さで予測できるとしていることを前提としており不合理」と批判 した。火山の噴火リスクについても「わが国の社会が自然災害に対する危険をどの程度まで容認するかという社会通念を基準として判断せざるを得ない」とした。

「破局的噴火」について、「発生頻度は著しく小さく、国が具体的対策を策定しようという動きも認められない。国民の大多数はそのことを格別に問題にしていない」と指摘。「破局的噴火が伊方原発の運用期間中に発生する可能性が相応の根拠をもって示されているとは認められない」とした。

仮処分 今回
火山影響評価ガイド ガイドに基づき、阿蘇の過去最大噴火(約9万年前)を想定。 ガイドは噴火の正確な予測 を前提としているが、実際には正確な予想不能で、ガイドそのものが不合理。
火山の危険性 火砕流が原発敷地に達した可能性が小さいと言えず立地は不適 原発運転中に阿蘇で破局的噴火が起きる根拠が示されておらず、立地不適でない。
噴火の影響 降下火砕物の厚さや大気中濃度の想定が不適 降下火砕物の想定は合理的
社会通念の捉え方 社会通念を踏まえても、科学的知見に基づくガイドの限定解釈は許されない 国は破局的噴火の対策を作らず、国民の大多数も問題にしていない。
安全性に欠けないとするのが現時点の社会通念
想定する地震や津波など火山以外の危険性 新規制基準、規制委の適合判断とも合理的 同左

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2017年12月の広島高裁仮処分決定の際に、安井至氏の「市民のための環境学ガイド」は「 原発とカルデラ噴火のリスク」(2017/12/23) で、巽好幸氏の「富士山大噴火と阿蘇山大爆発」を紹介している。

巽先生の予測によれば、阿蘇カルデラなどの7大カルデラの一つが、今後100年間で巨大カルデラ噴火を起こす確率は約1%であるとのこと。もし起きてしまえば、最悪の場合、火砕流による死亡者700万人に加え、その後の食糧不足によって、1億人の命が失われるとのことである。火山灰が10cm 積もるだけで、農地は完全 に失われ、その復活には1000年程度の年月が必要となる、とのこと。

阿蘇でおきるカルデラ爆発だと、火砕流は時速100kmで伝達するので、カルデラ爆発の2時間以内に700万人が死亡すると考えられている。巨大な火砕流が発生すれば、その地域は数 百年間復活できないと考えられるが、実は、それ以外にも、火山灰が西風にのって日本全国を覆う可能性が高い。火山灰が10cm 覆うだけで、農業は一切行うことができない。国内の食糧生産は ゼロになる。そのため、最悪1億人が命を落とすというのが、巽先生のシナリオのようだ。

阿蘇カルデラ爆発が起きたときに、何が起きるか、恐らく裁判長は知っていたと思われる。しかし、それを述べてしまったら、伊方原発の存在に、全く迫力が無くなってしまう。恐らく、カルデラ爆発の被害は、意図的に無視したのだと考えられる。

下図の通り、この破局的噴火で火砕流は伊方原発に到達している。同時に九州ほぼ全土に到達しているため、全滅である。また日本のほぼ全土に15cmの火山灰で覆われ、農地が完全に失われる。

要するに日本全滅であり、伊方原発が稼働していようが、休止していようが、全く関係ない。国としても、破局的噴火の対策を作ることはできない。

今回の判決は、破局的噴火だけを判断の対象としており、この限りにおいては、今回の判決が常識的である。

なお、阿蘇には巨大噴火の兆候はないが、可能性のあるものが一つ存在している。

神戸大学海洋底探査センターは2016年から3回にわたって、大学の付属練習船「深江丸」で九州南方の海底に広がるくぼみ「鬼界カルデラ」の調査を行った。

最近の論文によると、海底からの高さが600メートルにもなる世界最大級の「溶岩ドーム」が、カルデラの内側で確認されたこの溶岩ドームは、カルデラができた後に、新しいマグマの活動によってつくられたと推定できるという。

巽教授によると、次の巨大カルデラ噴火の準備過程に入ったと言える。 今この鬼界カルデラで、7300年前と同規模の超巨大噴火が起きれば、九州南部は高温の火砕流で覆い尽くされ、関西でも20cm、首都圏でも数cmの火山灰が降り注ぐという。

富士フイルムは、iPS細胞を使った移植医療について臨床試験(治験)を国に申請する。

骨髄移植した人の約4割がかかる急性移植片対宿主病(GVHD:graft versus host disease) の患者数十人を対象に2019年に始める。

移植片対宿主病(GVHD)は、移植時に輸注されるドナーの造血幹細胞浮遊液中に含まれるドナー由来のリンパ球が引き起こす合併症で、患者の正常細胞を異物として認識して攻撃する。
皮膚炎や肝炎のほか下痢や嘔吐を繰り返し、命を落とすこともある。

造血幹細胞浮遊液中に含まれるドナー由来のT細胞が活性化され、炎症性サイトカインが放出されることで発症する。患者とドナーのヒト白血球抗原(HLA)の組み合わせの違いに関係する。

おおよそ移植後6-30日頃におこる急性GVHDと、移植後3ヶ月以降に発症する慢性GVHDに分けられる。

今回の治験は、他人のIPS細胞から、過剰な免疫の働きを抑えるとされ間葉系幹細胞(軟骨や脂肪などに変化する細胞)を量産して注射し、移植した骨髄に含まれる免疫細胞が患者の体を攻撃するのを抑え、症状を改善する。

他人の骨髄から採取した間葉系幹細胞を使ったGVHDの治療そのものは実績があり、日本でもJCRファーマが2015年に製品化した。

JCRファーマ(旧称 日本ケミカルリ) は2015年9月に、日本初の他家由来の再生医療等製品として急性移植片対宿主の治療製品「テムセル®HS注[一般: : (同種骨髄由来間葉系幹細胞]の製造販売承認を取得し、2016年2月に発売した。

健康な成人から採取した骨髄液からヒト間葉系幹細胞を分離し培養した

JCRフと医薬品卸のメディパルは2011年7月より共同で液体窒素を用いた超低温管理物流システムの研究をすすめてきたが、このシステムを稼働させることによってマイナス150℃以下という極めて低い温度を10日間以上維持した配送・保管が可能となり緊急時にも安定した品質の製品を全国の医療現場に届けられる。

ただ、間葉系幹細胞は増やすことが難しく、多くの提供者を探さなければならない。これには下記の問題があるが、iPS細胞の場合にはそれらの問題がない。

富士フィルムが 出資する豪州のCynata Therapeuticsは、他家iPS細胞由来間葉系幹細胞を用いた再生医療製品英国で治験中で、15人中14人が完治したり、症状が改善している。

Cynata Therapeuticsは下記の説明をしている。

富士フィルムではCynata Therapeuticsの技術を使って、白血病の治療に伴って重い合併症になった患者を対象として、2022年の製造・販売承認を目指す。

日本で年間1千人以上が重症化し、このうち通常の治療が効かず、今回の臨床試験の対象となるような最重症患者は年間数百人程度発生しているとされる

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富士フィルムは2016年9月、2013年設立の豪州のCynata Therapeutics に400万豪ドル(9%)出資することで合意した。

出資により富士フィルムは、Cynata社が移植片対宿主病の患者を対象に臨床試験を予定している他家iPS細胞由来間葉系幹細胞を用いた再生医療製品の開発・製造・販売ライセンス導入と製造受託の選択権を取得した。

(フェーズ 1 試験終了後90日まで)
・ 3百万ドルのマイルストーン投資
・ 富士フイルムはすべての開発と費用に対し責任を持つ


(フェーズ2 以降)
・ 富士フイルムはマイルストーン(60万ドル+)と製品販売に関する2桁台のロイヤルティを支払う。
富士フイルムのGvHD市場予測は年間3億米ドルのピーク収入を示しており、年間3,000万米ドル以上のロイヤルティの可能性

また、Cynata社の持つ、他家iPS細胞由来間葉系幹細胞を用いた再生医療製品開発に関する技術・ノウハウも取得可能となる。

Cynata Therapeuticsは富士フイルムの米子会社Cellular Dynamicsから、iPS 細胞の提供を受けており、この関係で出資が決まった。

Cellular Dynamics については  2015/4/14 京都大学iPS 細胞研究所、Cellular Dynamics Internationalと提携へ

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