「no」と一致するもの

GEは6月26日、今後の事業構造を発表した。

 

GEは2017年6月12日、GE Healthcareの社長John Flanneryが8月1日付でGEのCEOになり、2018年1月1日付で会長兼CEOになると発表した。
Jeff Immelt 会長兼CEOは2017年12月31日に会長を退任し、引退する。

2017/6/16 GEのJeff Immelt 会長、退任

Jeff Immelt 氏は2001年9月にJack Welch, Jr. の後を継いで会長兼CEOに就任した。在任16年 で、前任のWelch 路線を大転換させ、本来の中核事業である産業機器を中心とする製造業に回帰する戦略に突き進んだ。

2000年のGEの売上高は金融が50%を占めた。2016年の売り上げ構成は産業機器がほとんどを占める。
また、Industrial Internetを標榜し、IoTや3次元プリンターを駆使した新たな製造業の姿を模索した。

GEは2006年9月、シリコーン事業のGE Advanced Materials をApollo Management, L.P. に38億ドルで売却すると発表した。

    2006/9/21 GE、シリコーン事業を売却 

2007年5月にはGE PlasticsをSABICに売却した。

    2007/5/22 速報 GE、GE PlasticsをSABICに116億ドルで売却

2015年6月、金融事業の大幅縮小を打ち出し、2017年末ごろまでに2500億ドルの資産を売却する方針を決めた。

2016年1月15日、厨房機器など家電製品部門を中国の海爾集団 ( Qingdao Haier Co., Ltd.) に54億ドルで売却する契約に調印したと発表した。

2016/1/20 GE、厨房機器など家電製品部門をハイアールに売却 

Flannery CEO は2017年11月、電力、航空、ヘルスケアの3事業を中核と位置づけ、その他の分野で200億ドルの事業売却を進めるリストラ策を発表していた。

だが、その後も過去に手掛けた金融事業で1兆円近い追加損失が発生するなど業績悪化に歯止めがかから.ず、戦略の抜本的な見直しを迫られた。

今回定めた新しい方針は次の通り。

売上高
(億ドル)

中心
事業
Aviation 273 71 Commercial Engines
126 Commercial Services
40 Military
13 Business & General Aviaton  
Industrial Solution
20 Avionics, Avio, Additive
(航空機の電子機器)
Power 359 92 Gas Power
132 Power Services
54 Grid
24 Steam
27 Nuclear, Power conversion
55 Disposition ( Water, IS, DP)
分散電源向け発電機器事業売却 (*1)
Renewable 102 77 Onshore Wind
3 Offshore Wind
3 LM Wind Power
(GEが買収したデンマークの風力発電会社)
9 Hydro
処分
事業
Transportation
(機関車)
40 WABTECと合併 (*2)
HealthCare 190 分離 (*3)
Baker Hughes
(石油・ガス)
220 売却 (*4)


GE Capital については、引き続き縮小し、コア事業を支える方向
に進める。

処分事業:

*1 GEは2018年6月25日、分散電源向け発電機器(Distributed Power )事業を投資会社 Advent International に32億5000万ドルで売却することで合意した。

は分散型電源対応用のJenbacher 及びWaukesha ガスエンジンに加え、オーストリアと米国、カナダの製造拠点を取得する。

*2 GEは2018年5月21日、Transportation(機関車)部門を米鉄道機器メーカーのWABTECと合併することで合意した。
(WABTECの売上高は約40億ドル)

GEは29億ドルの現金を受け取るほか、GEと同社株主は合併後の統合会社の50.1%を保有する。WABTEC株主は残りを保有。今回の統合は非課税で、来年初めに完了する見通し。

*3 GEは2018年6月26日、ヘルスケア事業を分離すると発表した。

子会社GE HealthCareの株式の20%を売却、80%をGEの既存株主に割り当てる。

この分社化で誕生する新会社が180億ドルの負債をGE本体から引き継ぐという.

売却や割り当ての条件は今後詰める。一連の手続きが完了するまでには12~18ヵ月かかる見込み。

*4 GEは2~3年以内にBaker Hughesの持分を売却する。

GE は2016年10月31日、GEの石油・ガス事業と油田サービス会社のBaker Hughes を統合することで合意した。
GE はPartnership の権益の 62.5%を、Baker Hughesの既存株主は権益の37.5% を受け取る。
Baker Hughesの既存株主は更に、GEがPartnership に拠出する74億ドルを使って、1株当たり17.50ドルの特別配当を受け取る。

2016/11/8 GE、Baker Hughes と石油・ガス事業統合

GEはこれらの事業売却などで2020年までに250億ドルの有利子負債を圧縮する計画。

Flannery CEOは、これまで以上に、事業分野を絞り込んでいく方針を明確にし、「GEはこれから航空、電力、再生可能エネルギーの企業として進んでいく」とコメントした。


トランプ大統領の強硬策に米国内でも反対が広がっている。


鋼商社や自動車など鉄鋼ユーザー企業で組織する米輸入鉄鋼協会(American Institute for International Steel :AIIS)は6月27日、トランプ米大統領が鉄鋼に課した輸入関税が違憲だとして、ニューヨーク市の米国際貿易裁判所(U.S. Court of International Trade)に提訴した。

AIISでは、追加関税により値上げせざるを得なくなり、商売を失い、従業員をレイオフせざるをえなくなると懸念している。

今回の追加関税は議会の権限を大統領に不当に移したもので、権限の分離、チェック&バランスの原則に違反し、違憲であるとし、政権が追加関税を課することを止めさせるよう求めている。

国際貿易裁判所は、国際貿易及び関税問題に関する事件を取り扱う特別の一審裁判所である。

1926年に設立された合衆国関税裁判所 (United States Custome Court) が1980年に関税裁判所法によって改組されたもので、9人の裁判官で構成され、裁判官は上院の助言と同意の下、大統領から任命される。

国際貿易に関する法律の下で発生した合衆国又はその職員・機関に対する訴訟は同裁判所が専属的に管轄する 。

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欧州委員会は6月6日、米国がEUなどに適用した鉄鋼・アルミニウム製品への輸入関税に対抗し、米国からの輸入品に報復関税を課す方針を正式決定した。

2018/6/7 EU、米国の鉄鋼・アルミニウム輸入制限への報復関税、7月発動へ

欧州委員会は6月20日、報復措置の第1段階を発動すると発表した。EUが農産物やオートバイを含む米製品に25%の関税措置を発動した。

トランプ大統領は6月22日、「EUが関税や障壁をすぐに取り除かないなら、輸入自動車全てに20%の関税をかける。米国で生産せよ!」と呟いた。


トランプ大統領は本年5月、自動車、トラック、部品の輸入を巡り通商拡大法232条に基づく調査開始を検討するよう商務省に指示した。

「自動車や自動車部品など中核的な産業は国力の重要な要素だ」と主張し、
これらの輸入が米国の安全保障を脅かすかどうかを判断するとした。

米商務省は5月23日、乗用車やトラックなどの車両や関連部品の輸入が国内の自動車産業を侵害し、安全保障を脅かしたかどうか通商拡大法232条に基づき調査を開始すると発表した。
鉄鋼・アルミニウム輸入制限と同様の手段を自動車にも用いる。

ロス商務長官は声明で「外国からの輸入によって、数十年にわたり米国内の自動車産業が侵害されていることを示唆する証拠がある」と指摘、「商務省は、自動車や部品の輸入が米国の経済を弱体化させているかどうか、安全保障を脅かす可能性があるかどうかについて、本格的で公正な調査を行う」と述べた。

国内の自動車生産の減少が経済を弱くし、コネクテッドカーや自動運転車、燃料電池、電気モーター・バッテリーなどを開発する能力が低下したかを調査する。

米紙は最大25%の関税を課す可能性があると報道した。

ロス米商務長官は最近、輸入自動車と同部品に対する追加関税を視野に入れた調査を「7月下旬か8月」までに完了させる考えを示した。


これについて、米国の自動車業界から反対の声が相次いだ。

GM、Ford、Daimler、トヨタ などが加盟し、米国の自動車と軽トラックの70%を占める米自動車工業会(Alliance of Automobile Manufacturers :AAM) は6月27日、輸入自動車及び部品に関する232条調査について声明を発表した。

自動車と部品の関税は全ての需要家にとって値上げとなり、消費者の選択を制限し、貿易相手の報復を招く。我々は貿易の制限ではなく、貿易障壁を取り除き、フェアネスを達成することを望む。

国内及び海外の自動車メーカーは、14の州で45プラントを持ち、米国で700万人以上を雇用する。NAFTAの近代化で米国の製造業と雇用を伸ばし、EUとの貿易協定を結んで双方の障壁を取り除き、その他の方策で米製自動車の市場を拡大するのが、米国の自動車業界と国の経済的セキュリティが強化されると信じる。

AAMのメンバー:
BMW、Fiat Chrysler、Ford、GM、Jaguar、Mazda、Mercedes-Benz、Mitsubishi Motors、Porche、Toyota、Volkswagen、Volvo

AAMは、米国が25%の自動車関税を導入すれば、米消費者が負担するコストは車両1台当たり5800ドル、年間で450億ドル増加するとの見通しを示した。  

付記 トランプ大統領はこれを聞き、「実際には20%だ。正しい数値を使うよう言ってくれ」と語った。

自動車の輸入が national securityへの脅威になるというのは根拠がなく、米国の輸入車の98%は同盟国からであるとしている。

電気自動車や自動運転で熾烈な国際競争のなかにおり、関税で部品コストが上がれば、これらの先進技術の開発での競争力を失うとする。


また、トヨタ自動車やVolkswagen、BMW、現代自動車などの海外 の自動車及び部品メーカーでつくる世界自動車メーカー協会(Association of Global Automakers:AGA)は、関税がメーカーや米消費者に打撃となると指摘 した。

世界自動車メーカー協会は"national security"の名目で輸入自動車・部品に高関税を課すという政府の提案に反対する。

これらの関税は、メンバーの14の自動車メーカーを害するものだ。各社とも米国での自動車生産に米国人を雇用している。

輸入車や部品に関税をかけ、米国に本社を置くか同盟国に本社を置くかで差別するのは、"national security"では正当化できない。全ての米国工場はnational emergency 時には利用できる。これらの企業で直接働く13万人の米国人は他の米国人と同じく愛国的で、危機の際には国に奉仕する。

関税を課すことになれば、米国の輸出品への報復は避けられない。既に米国からの自動車に高関税をかけると発表されており、米国の自動車の労働者を貿易紛争の最前線に置くこととなる。

欧州の報復関税で、米オートバイ製造大手Harley-Davidsonは6月25日、欧州向けオートバイの生産を米国から海外に移す方針を明らかにした。

2018/6/27 Harley-Davidson、一部生産を米国外に移転

我々は、直接・間接に129万の米国人を雇用し、米国での自動車生産、設計、研究開発に750億ドルを投資し、2017年に500万台の自動車とトラック(米国の生産の47%)を生産し、毎年約100万台を輸出している。

AGAのメンバー:
Aptiv(旧 Delphi Automotive )、Aston Martin、Byton(中国の電気自動車メーカー)、Ferrari、Honda、Hyndai、Isuzu、KIA (起亜自動車)、Maserati (イタリアのスポーツカー)、McLaren (英)、Nissan、Subaru、Suzuki、Toyota

Bosch (独自動車部品)、Denso、NXP(車載半導体)、SiriusXm (自動車向け衛星放送ラジオ)

トヨタ自動車は声明を発表し、追加関税に改めて反対する考えを示した。

同社の製造拠点が米国内に10カ所ある。

自動車輸入への25%関税は消費者への課税となる。米国内で販売される全ての車のコストを押し上げる。
ケンタッキー州ジョージタウンで製造され、米国で最も売れている車である『トヨタ・カムリ』でさえも、
部品への課税が響き、 1800ドルのコスト増となる 。


アルバータ州の最高裁(Alberta Court of Queen's Bench)の裁判長は6月20日、Dow Canadaが契約違反を理由にエチレンJVの相手のNova Chemicals を訴えた裁判で、Dowの主張を認め、Nova Chemicals に10億6千万米ドルの支払いを命じた。

Novaは30日以内に控訴するとしている。

問題のJVは、Nova Chemicals のAlberta 州Joffre 工場にある能力年産130万トンのエチレン第3系列(E3)で、操業はNovaが行い、製品は50/50で引き取っている。

Dowの訴え:

NovaはDowの持分のエチレン及び副産品の一部を取り込んだ。契約違反である。

JV契約での義務に違反し、設備をフル稼働しなかった。

エタンの不足はなかった。JVプラントをフルに動かすエタンはあり、Novaは追加のエタンを取得する能力も自由も持っている。

Novaの反論:

エタン不足でフル稼働できなかった。Joffreの3つのエチレンプラントへのエタンの割り当てに起因する。Dow はその時点でエタンの割り当て問題を知っていたが、反対しなかった。

メカニカル問題の際を除き、出来る限り稼働させた。

契約では、カナダ西部ではNovaのみがエタンを取得できるとなっているが、Dowはこれに違反して、エタンを取得した。
(これについてはDowは、契約の解釈の誤りとし、その後、この条項はコモンローの競争制限に違反し、競争法にも違反するため無効であると主張した。)

JV契約上の責任条項には限度がある。

要は、Novaが原料エタンを3つのエチレンプラントのうち自社の2つのプラントに優先的に廻し、JVのプラントが減産になった。結果として、Dowが受け取るべきエチレンの一部がNovaに盗られたということ。
エタンが不足した場合の配分方法を事前に決めておかなかったのが問題と思われる。

判事は、Dowの「JVプラントをフルに動かすエタンはあり、Novaは追加のエタンを取得する能力も自由も持っている」とする主張を受け入れ、Novaの主張を却下した。

「Dowは、Novaが操業担当者として、かつ共同所有者としてJV契約に違反し、Dowが利用する権利のあるエタンの一部をJVのプラントから横流ししたということの作為の蓋然性(作為の可能性が高いこと)を示した」とした。更に、Novaの操業担当としての行為は、故意の不正行為(Wilful Misconduct)で、重大な過失(Gross Negligence)であるとした。

判事はまた、「JVプラントの能力はNovaが試運転時に示したよりもっと多く、Novaは生産量を最大にしなかった」というDowの主張を受け入れた。

ーーー

Nova Chemicals の Joffre 工場の概要は次の通り。

Capacity
(千トン)
Owner Start
Ethylene E1 545→726 Nova 1979
E2 680→816 Nova 1981
E3 1,300 Nova/Dow 2000  50/50JV
PE PE 1 670 Nova 1984 Unipol gas phase LLDPE
PE 2 430 Nova 2001 NOVA' Advanced SCLAIRTECH process
PE1
増設
450 Nova 2017 Novapol butene LLDPE

カナダのNOVA Chemicals、ポリエチレン拡大計画NOVA 2020 をスタート
Linear α Olefins 265 Inneos 2001 BP Amoco が建設、2005年にINEOSがBPから買収
Cogeneration 450MW Nova 20% / CU Power 40% / EPCOR Utilities 40%


米最高裁は6月27日、
Anthony Kennedy判事(81歳)が7月31日付で引退すると発表した。

Kennedy判事はレーガン大統領に指名された。

判事は過去10年間にわたって同裁判所の重要な判決を左右してきた。

選挙資金規制や銃規制など、多くは保守派と行動を共にした。
トランプ大統領が指名し、反対が多かったNeil Gorsuch 判事については、どの最高裁判事よりも賛成した。トランプ政権がテロ対策を目的に導入した中東・アフリカ圏からの入国規制についても認めた。

しかし、同性婚の合法化を支持し、妊娠中絶、死刑反対、Afirmative actionでもリベラル派に加わった。


トランプ大統領はケネディ判事の後任候補探しを直ちに開始すると明らかにした。


Neil Gorsuch 判事が加わり、時にはリベラル派に賛同したKennedy判事が引退することで、後任次第では、過去数世代で最も保守的な法廷となり可能性がある。

人工妊娠中絶を合法化した画期的な「Roe v. Wade」判決がリスクにさらされる可能性もあると報道されている。


米国の最高裁判事には定年がない。

米連邦最高裁は6月26日、トランプ政権がテロ対策を目的に導入した中東・アフリカ圏からの入国規制を支持する判断を示した。

「イスラム教徒差別だ」として批判が出ていたが、最高裁判断は「政権は国家安全保障上の正当な措置であることを適切に説明した」として訴えを退けた。

ロバーツ最高裁長官は、この措置は「大統領権限の範囲内にあり、どの大統領であれ実施した可能性がある」と強調した。

トランプ大統領は twitter で「SUPREME COURT UPHOLDS TRUMP TRAVEL BAN. Wow!」と呟き、「今日の最高裁の判決は、アメリカ市民、そして憲法にとって途方もない成功であり、勝利だ」と述べた。

現在の入国規制は2017年9月に導入された改訂版で、イラン、リビア、ソマリア、シリア、イエメンからの入国を実質的に禁止している。また、北朝鮮とベネズエラも入国規制の対象となっている。

ーーー

これまでの経緯は次の通り。

Trump大統領は2017年1月27日、移民の入国を一時禁止する大統領令を出した。

・移民国籍法 217(a)(12) と連邦法1187(a)(12)で規定した国(イラン、イラク、シリア、イエメン、リビア、スーダン、ソマリアの7か国へのビザ発給を90日間停止
・シリア難民受け入れを無期限停止、他国の難民受け入れも120日間停止
・全体の難民受け入れを年5万人に半減

サンフランシスコの連邦控訴裁判所は2月9日、7カ国からの入国を一時禁止する大統領令について、3人の判事の全員一致で、即時停止を命じた連邦地裁の仮処分を支持する判断を示した。

このため、3月6日、大統領令の問題個所を修正し、新たな大統領令を出した。

2017/3/14 Trump大統領の新たな入国禁止命令 

米連邦最高裁判所は6月26日、10月以降 (のち、10月10日に決定)に同大統領令の合憲性を巡る審理の最終判断を行うとし、それまでの間、イスラム圏6カ国からの入国を制限する米大統領令を巡り、一部を執行することを認める判断を下した。

2017/6/28 Trump 大統領の米入国制限令、最高裁が一部容認

ハワイ州連邦地裁は7月13日トランプ政権が「近い親族」に祖父母やおじ・おば、甥、姪、いとこ、義理の兄弟姉妹を含めなかったことは、条件付きで施行を認めた最高裁の決定に反するとして、全米で親族の定義を広げて運用するよう命じた。また、難民については、難民の再定住を支援する団体から支援を保証されていれば入国を認めるべきとの判断を示した。

政府による控訴による裁判で、サンフランシスコの Ninth U.S. Circuit Court of Appealsは9月7日、ハワイ地裁の判断を支持した。

これについて最高裁大法廷は9月12日、難民入国制限を巡る件では、控訴裁判断の差し止めを求めた司法省の主張を認めたが、「近い親族」の範囲については認めなかった。

2017/9/11 トランプの入国制限令、また敗北

トランプ大統領が出したイスラム圏諸国からの入国禁止令については、これを問題とする裁判所の判決が続出しており、休会明けの10月10日に最高裁が口頭弁論をする予定であった。

しかし、大統領が9月24日に新しい大統領令を出したことから、最高裁が審議を取り止める事態となった。

入国制限の対象国は次の通り。

    2017/1/27 2017/3/6 2017/9/24 理由
イスラム イラン  
シリア  
リビア  
イエメン  
ソマリア  
チャド  
スーダン X

公共の安全と情報交換での米国政府との協力関係

イラク X

対IS共闘、ビザ申請者の情報提供など

北朝鮮

渡航者に関し一切の情報提供がない

ベネズエラ

政府がその国民が危険人物かどうかを通知するのに非協力

合計   7か国 6か国 8か国  

このうち、イスラム圏からの移民については、ハワイ州連邦地裁やメリーランド州連保地裁宗教による差別にあたるとして入国制限令を暫定的に差し止める命令を出した。

これを受け、米連邦最高裁判所は12月4日、訴訟継続中の入国禁止令の執行を認めた。

最高裁の判事9人のうち7人が禁止令の執行を差し止めた下級審命令を無効とした一方、2人は反対した。

最高裁は、控訴栽が「適切な早さで」結審するのを期待すると述べた。

Richmondの第4巡回控訴裁判所は2018年2月15日、9対4の評決で、Marylnd地裁の判断を支持、憲法のEstablishment Clause(国教条項)に違反すると判断した。

2018/2/20 米入国禁止令、控訴裁が違憲判断 「イスラム教徒差別」

米最高裁は2018年1月19日、2017年9月24日に発表された新しい入国禁止令の合憲性を審理するとの決定を出した。
大統領令が違法である可能性が高いとする下級審の判断に対し、政権が上訴していることを受け、口頭弁論を開くこととした。

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今回の最高裁の審議で、9人いる最高裁判事のうち保守派5人が規制を支持し、リベラル派4人が反対した。

2016年に保守派のScalia 判事が死去し、保守派4人(中道1人含む)、リベラル派4人と勢力が拮抗してが、米上院本会議が2017年4月7日に禁じ手の「核オプション」(nuclear option)を使い、トランプ大統領が指名した保守派のNeil Gorsuch 連邦控訴裁判事を54 対 45 の賛成多数で承認したのが効いた。

最高裁で保守色が強まり、銃規制や人工妊娠中絶やこの移民の入国禁止など、米世論を二分する問題を巡る司法判断に影響すると見られていた。

2017/4/8 米上院、異例の手続きで最高裁判事を承認 



米オートバイ製造大手Harley-Davidsonは6月25日、欧州向けオートバイの生産を米国から海外に移す方針を明らかにした。これを受けてトランプ米大統領はツイッターで同社を批判した。


米国がEUなどに適用した鉄鋼・アルミニウム製品への輸入関税に対抗し、EUが農産物やオートバイを含む米製品に25%の関税措置を発動した。

欧州委員会は6月20日、報復措置の第1段階を発動すると発表した。

米国からの輸入品28億ユーロ相当に25%の関税賦課を最終承認した。対象品目はハーレーダビッドソンの二輪車やリーバイストラウスのジーンズなど。米国製のトランプカードにも10%の関税をかける。

 2018/6/23 米国の鉄鋼・アルミ関税問題のその後  

Harley-DavidsonはEUでのコスト増に伴う値上げは実施せず、生産移転で対応する方針。

Harley-Davidsonがフランスで販売する最も安いモデルは7490ユーロ(8766ドル)で、EUの報復関税によって米国から欧州に輸出するオートバイ1台当たりのコストが平均約2200ドル増加する。

「拡大するコストを販売業者や顧客に転嫁すれば、欧州事業に即時かつ永続的な悪影響が及ぶと確信している」との認識を示した。

同社は、EUの報復関税の影響で、年末までのコストが3000万~4500万ドル増え、通年では8000万~1億ドル拡大するとの見通しを示した。

「海外移転は好ましくはないが、EUでオートバイを販売し、事業を続ける唯一のオプションだ」としている。

Harley-Davidsonは海外市場への依存度を上げており、その結果、生産の一部を移転している。同社は現在、オートバイと部品をブラジル、オーストラリア、インド、タイで生産している。インドやタイの高関税を避けるため、生産をこれらの国に移している。

欧州では昨年、4万台の新車を販売、米国に次ぐ最も重要な市場である。

2015 2016 2017
US 168,240 161,658 147,972 60.9%
Europe、Middle East、Africa (EMEA) 43,287 45,838 44,935 18.5%
(うち Europe) (36,894) (39,942) (39,773) (16.4%)
Asia-Paciafic 32,258 32,889 30,348 12.5%
Canada 9,669 10,203 10,081 4.2%
Latin America 11,173 9,701 9,452 3.9%
Worldwide 264,627 260,289 242,788 100%


米国では2017年に販売が急減した。同社は米国では4カ所で生産しているが、本年2月、生産体制の統合整理を発表した。2019年秋までにミズーリ州のカンザスシティー工場を閉鎖し、生産をペンシルベニア州のヨーク工場に移管する。

トランプ大統領は就任直後の2017年2月2日、ホワイトハウスに並べられた5台のHarley-Davidsonのバイクの前で「選挙中はバイク乗りたちがずっと私を追い掛けてくれた」と目を輝かせた。その後の同社幹部との昼食会で「Harley-Davidsonは米国の象徴だ」と称賛した。

しかし、この称賛は同社にとっては有難迷惑で、Harley-DavidsonのCEOは環太平洋経済連携協定(TPP)加盟を訴え、公然とロビー活動を行っていた。同社はTPP離脱を受け、タイ東部ラヨーン県の工業団地に工場の建設を決めた。米国から輸入した部品の組み立て工場で、2018年後半の操業開始を予定している。

今回のHarley-Davidsonの生産の海外移転の報を聞いて、大統領はツイッターで驚きを示した。

全ての企業の中でHarley-Davidsonが最初に白旗を振るとは驚きだ。同社のために最大の努力をしてきたが、最終的に欧州への販売で同社は関税を支払わないことになる。
税金はHarley-Davidsonの言い訳に過ぎない、忍耐強くあるべきだ。Make America Great Again。

Surprised that Harley-Davidson, of all companies, would be the first to wave the White Flag.
I fought hard for them and ultimately they will not pay tariffs selling into the E.U., which has hurt us badly on trade, down $151 Billion.
Taxes just a Harley excuse - be patient! #MAGA


富士フイルムホールディングスは6月18日、同社による買収合意を破棄した米事務機器大手 Xeroxを相手取り、正当な理由なく当該契約を終了することは契約違反であるとして、10億ドル超の損害賠償などを求める訴訟を米 New York州南部連邦地方裁判所に起こした。

2018/6/21 富士フイルム、米Xerox を提訴


これに対し、Xeroxの副会長兼CEOのJohn Visentin(今回、株主代表として富士ゼロックスの取締役に就任)は6月25日付の富士フィルム古森重隆会長に宛てた書簡を公表した。内容は次の通り。

今回の提訴は、経営統合を頓挫させまいと捨て身で交渉に誘い出そうとしている誤った策略でしかない。
Xeroxは、富士フィルム側の明らかな重要な違反により、契約の終了規定に従って契約を終了させたもの。
悪いのは富士フィルムであり、Xeroxではない。
富士ゼロックスの75%株主の富士フィルムは、富士ゼロックスの大規模な経理不正(これは富士フィルムのひどい経営ミスによるもの)の実態をXeroxに隠してきた。
富士フィルムと富士ゼロックスによるJV契約違反である。
富士ゼロックスの売り上げの大きな部分は中国からだが、富士ゼロックスの他のテリトリーで経理不正が蔓延しているのに、中国では正式に経理不正の調査がされていない。
報道では、富士ゼロックスの経理報告についての内部監査はまだ効果を見せていない。
富士ゼロックスは米国企業に適用される法と規則を守れる体制にない。何年もかかるだろう。富士フィルムは合弁契約で決められたことをやれない。
新聞報道にある、Xeroxが富士フィルムに新しい統合提案をするだろうというのは幻想にすぎない。絶対にない。
富士フィルムの多くの義務違反などから、Xeroxとしては技術契約が2021年に期限が来た際に、更新する考えは今のところ無い。
XeroxがXeroxの商号を独占的に使って、今より優れたサプライチェーンで、成長するアジア太平洋地域に直接製品を販売すれば、物凄い成長機会があることを投資家に説明する。
そのために、現在、富士ゼロックス以外から製品を調達するよう動き出しており、今後ますます努力する。
先週、富士フィルムの役員が日経に、「ゼロックスは製品供給を富士ゼロックスに依存しており、世界の事務用機器市場が縮小している中で自分で生き延びるのは難しい」と述べたのは皮肉だ。
富士ゼロックスは富士フィルムの売上高の約半分を占めているが、最大の顧客であるXeroxからの10億ドル以上の収入がゼロになると悲惨なこととなる。
法的には富士フィルムはこれをどうしようもない。
Xeroxが富士ゼロックスから購入するのを止めた場合、裁判所は富士ゼロックスがXeroxに対し懲罰的行動をとるのを許す筈がない。


現在、Xeroxと富士ゼロックスの技術契約に基づき、富士ゼロックスはアジア太平洋で「Xerox」の商標を使って独占的に販売する権利を持つ。事務機器市場が縮小するなかで、アジア太平洋市場は成長が続いている。

この契約では営業地域などを決めており、5年ごとに更新する。次回は2021年の更新で、更新がなければ、2021年からはXeroxが「Xerox」の商標で独占的に販売できることになる。

Carl Icahn とDeasonは2月20日、Xeroxの株主に対し「競合他社との合併や身売り」や「買収ファンドへの身売り」を提案する書簡を公開した。

Xeroxが敵対的買収で株式の30%を売却する場合、アジア太平洋の360億ドルの市場でのXeroxの知的財産権と製造権を富士フィルムに渡すという企業買収防衛策としての重要資産の売却条項("crown jewel" lock-up right)があり、このため、他社への身売りは出来ないとされているが、これに対しては手があるとする。

一つは、富士ゼロックスの経理スキャンダルを理由に契約違反としてJV契約を打ち切ることで、それが出来ない場合でも、これまで明らかにされていないが、Xeroxは2020年に契約を終息するプロセスを始める権利を持つとしている。Xeroxは富士ゼロックスから製品の供給を受けているが、それまでに供給ソースを探すべきだとしている。

2018/2/22 ゼロックス大株主、富士フイルム以外への身売り提案

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富士フイルムは6月25日、「会計問題は解決済みであり、しかも経営統合に向けて、中国を含む全ての営業地域で監査済みであり、Xeroxの主張は正しくない」と反論した。

「内容は想定の範囲内である」とも指摘し、「Xeroxがアジアで販売することは現実的には非常に難しい」とコメントした。 今後は「当社の正当性を裁判を通じて訴えていく」としている。

このコメントからは、契約更新が無ければ、アジアでの販売権がXeroxに戻るというのは事実らしい。

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富士フイルムがXeroxの株式を過半数取得した上で富士ゼロックスと経営統合させる計画を、米ニューヨーク州のマンハッタン地方裁判所が暫定的に差し止める仮処分を下したことを巡り、同地裁の判事は6月21日、仮処分の取り消しを求めていた富士フイルムの請求を退けた。

Darwin Deasonが富士フィルムによるゼロックス買収は不正だとして、差し止めを求めた裁判で、4月27日に米国ニューヨーク州裁判所が、Darwin Deason の主張を認め、買収手続きの一時差し止めを認める仮処分命令を下した。

裁判では、富士フィルムとXeroxのメールが開示され、裁判官は、複数のメールを引用したうえ、当時のXerox社長らについて「自身の地位を守ろうとして富士フイルム側と協力した」などと認定し買収の暫定差し止めを命じ た。

Xerox は5月4日、異議申し立てをした。
「差し止め命令はニューヨークの法律に反する。買収提案を認めるかどうかは裁判所ではなく、Xerox の株主が決めるものだ」と主張し、裁判所による差し止めの無効を訴えた。

富士フィルムホールディングスも同日、異議申し立てをした。

米ニューヨーク州の裁判所は、上訴の審理を9月から始めると決めた。

2018/4/30 富士フイルムの Xerox買収、NYの裁判所が差し止め仮処分


富士フィルムは今回、Xerox株主とXeroxがもはや対立しておらず、法的な争いの終結を目指している点を指摘し、富士フイルムだけが仮処分の対象となるのは不当だとし、これが解除されなければ、Xeroxとアクティビストらは自由に富士フイルムを「攻撃」できると主張。仮処分を取り消すよう判事に求めたもの。


イタリアのサルビーニ内相が難民問題で過激な発言をしている。難民問題でのEUの対応を求め、EU予算拠出見直しや国境検問を示唆、「統合欧州がまだ存在しているかどうかは1年以内に決まるだろう」と発言したと報じられている。

他方、難民受け入れで動くメルケル首相のドイツでは、内相が、難民を域内で最初に登録した国に送り返すEU合意を求め、メルケル首相に最後通牒を突き付けた。 メルケル連立内閣がつぶれる可能性も出てきた。

EUは6月28、29日に首脳会議を開き、難民問題を巡る議論を行うが、解決策は考え難い。統合欧州の危機である。

サルビーニ内相は、EUの移民政策を批判する「同盟」の書記長で、移民問題を扱う内相 兼 副首相である。

イタリアでは、3月4日の総選挙でジェンティローニ首相の「民主党」が大敗、その後、政治の空白が続いていたが、反EUの「五つ星運動」と「同盟」が連立することとなった。

両党は反EUの立場では同じだが、政治姿勢が異なる。

「五つ星」は失業者らへの最低所得保障など「ばらまき型」の経済刺激策を重視する。
「同盟」は、EUの移民政策を批判、違法移民の強制送還の強化や、難民が域内で最初に到着した国で保護申請することを義務づけたEUのダブリン規則の見直しを強く求める

6月1日、連立内閣が発足した。

行政法の専門家で、「五つ星」と近いジュセッペ・コンテ教授(フィレンツェ大)が首相に就任した。

「五つ星」のディ・マイオ党首が経済発展・労働相、同盟のサルビーニ書記長は移民問題を扱う内相として入閣し、ともに副首相となった。

2018/6/5 イタリアの混迷

EUには、難民が最初に入国したEU 加盟国のみが難民申請手続きを受け付けるという「Dublin 規則」があるが、「玄関口」にあたる国に負担が集中するため、EUの内相会議は2015年9月、加盟国の経済規模などに基づいて難民を割り当てることを賛成多数で決めた。

実際にはほとんど進んでいない。

ハンガリーでは2016年10月に、難民を分担して受け入れることの是非を問う国民投票が行われたが、投票率が43%しかなく、無効となった 。投票では反対が98%を超えた。

2016/10/8 EUの難民分担を問うハンガリー国民投票、投票率低く成立せず

ギリシャ、イタリア、フランス、ポルトガル、キプロス、マルタ、スペインのEUの南欧7カ国の首脳は2016年9月、アテネで初の南欧諸国会議を開き、難民・移民問題や失業、安全保障など南欧が苦しむ課題について提言をまとめ、EUに一層の対応を求めることで一致し、「アテネ宣言」を採択した。

2016/9/15 EUの南欧7カ国がEU構造改革を求めアテネ宣言採択 

欧州への難民の流入ルートには、地中海ルート(海路)とバルカン・ルート(陸路)があるが、地中海ルートが約8割を占めるといわれる。

アフリカからの難民が多数上陸するイタリアは、下記の諸点を望んでいる。

・負担の集中を避けるためEU が合法的移民について強制的な受け入れ枠を設定すること
・北アフリカに移民の管理センターを設けること
・リビアとチュニジアの当局が陸および海上でのコントロールを強化するための資金をEUが負担すること
・人道支援団体の移民船がイタリアの港に入るのを禁止すること

サルビーニ内相は国営放送RAI とのインタビューで、イタリアへの移民流入を抑制するために他のEU加盟国が協力しない場合、EU予算へのイタリアの拠出について見直す可能性があると発言した。

「年間60億ユーロも払っていて小突き回されるのではたまらない。この拠出について再協議を求めざるを得なくならないことを望む」と暗に警告した。

イタリア紙は、内相がコンテ首相との20日の会談で国境検問を開始する案に言及したと報じた。

また、ロマ(以前はジプシーと呼ばれていた)の人口調査を実施した上で、イタリア国籍を持たない者について国外追放する考えを示した。

サルビーニ内相はフェイスブックに投稿した動画で、難民の「マフィア」がやって来るのを止めたいと発言、難民船への対応でチュニジア当局の介入を求めたとも述べた。

「海上からの難民と非政府組織(NGO)をもうイタリアの港に入れない」とし、NGOは難民をオランダの港に連れて行くべきだと論じ、「制御不可能な状態になった難民問題の負担をイタリアだけで負うことは最早できない」と主張した。

「統合欧州がまだ存在しているかどうかは1年以内に決まるだろう」と発言したと報じられている。

他方、ドイツではゼーホーファー内相が、移民を域内で最初に登録した国に送り返すEU合意を求めた。

現在の第4次メルケル政権は、CDU・CSUと第2党のドイツ社会民主党(SPD)の大連立政権であるが、内相は、メルケル氏率いるキリスト教民主同盟(CDU)と組むキリスト教社会同盟(CSU)の党首である。

2018/3/17 メルケル首相 再選

内相は、寛容な難民政策が「欧州を分断させた」と糾弾し、他のEU諸国で難民登録済みの場合はドイツへの入国を許さず、元登録国に送還する措置の即時導入を要求した。

メルケル首相は「他国の負担になる」とこれに反対し、月末のEU首脳会議での協議を待つべきだと主張したが、内相はメルケル氏に18日までの同意を迫り、最後通告を突き付けた。 最終的には首脳会議まで待つこととなった。

しかし、首脳会議でこれが認められることはあり得ない。
今後、内相が送還措置の命令→首相が内相解任→CSUの連立離脱となり、
「連立政権は発足3カ月で終わりを迎える」 可能性もある。

EUは6月28、29日に首脳会議を開くが、その前に6月24日に緊急の非公式首脳会議を開いた。

問題点は分かっており、解決策としてEUの内相会議が2015年9月に加盟国の経済規模などに基づいて難民を割り当てることを賛成多数で決めている。
受入側がどの国も、これを実行できないのが問題である。 受入側の政府がこれを強行すれば、政府は倒されるだろう。

メルケル首相は緊急首脳会議の終了後、「多くの前向きな意思が示された」と述べたが、具体的な結論はなかった。「不法移民を減らし、EUの域外国境を守り、あらゆる移民・難民をめぐる問題に全員が責任を持つことで合意した」と総括したが、具体的な合意はなく、当初予定していた共同声明もイタリアの反対で採択を見送った。

月末の首脳会議で結論が出るとは思えない。

EUは内部を固めることで英国のEU離脱が他に広がることを抑えようとしているが、この問題が解決できなければ、サルビーニ内相のいうように、「統合欧州がまだ存在しているかどうかは1年以内に決まる」かも分からない。

そもそも、英国がEU離脱を決めたのは、移民(この場合は主に東欧)反対が理由である。

欧州連合(EU)は6月21日開いたユーロ圏財務相会合で、ギリシャを8年に及んだ金融支援から8月に「卒業」させる政策枠組みで合意した。

第3次支援の枠組み内で最終的な150億ユーロの追加融資を実施することや、過去の支援融資の返済期限を10年間延長することを決めた。

現在の第3次支援枠組みが終了する8月以降は、新たな融資を受けることなく自力再建を進め、支援から脱却する。

EU欧州委員会のモスコビシ委員は記者会見で「ギリシャの財政危機は今夜終息した」と述べ、2010年から続くギリシャ支援が完了するとの認識を示した。

ただGDPの1.8倍に達した債務をギリシャが計画通りに返済できるか不透明感はぬぐえていない。

合意には、8月20日に期限を迎える第3次支援の終了後に、財政再建の取り組みを厳しく監視していくことも盛り込まれた。ギリシャによる返済の持続可能性も今後再検討する。

付記

ユーロ圏救済基金である欧州安定メカニズム(ESM)は8月20日、ギリシャが2015年8月に合意した3カ年の第3次金融支援を終了したと明らかにした。

ESMはギリシャに対し、マクロ経済の調整や銀行の資本再構成のため、3年間で619億ユーロを支援。241億ユーロの追加融資は必要ないと判断した。

今回の合意事項は次の通り。

現在実施中の第3次支援策(860億ユーロ)のうち、最後の150億ユーロが今後実施される。約250億ユーロ分は未使用となる。

最後の150億ユーロのうち55億ユーロは債務返済用の勘定に、95億ユーロは非常時のためのバッファー勘定に、それぞれ振り分けられる。

付記 欧州安定メカニズム(ESM)は8月6日、ギリシャに150億ユーロの融資をしたと発表した。ドイツが融資の承認を留保し、遅れていた。

バッファー勘定には既にギリシャ自体も拠出しており、8月20日の支援策終了までに241億ユーロに達する見通し。
終了後約1年10カ月間にわたってギリシャの財政ニーズをまかなうことになる。

欧州委員会の推計では、2022年まで基礎的財政収支の黒字をGDP比3.5%に維持し、2023年から2060年まではEU財政規律に則って年平均2.2%の黒字を保つことになる。

第2次支援策の下で欧州金融安定基金(EFSF)が提供した969億ユーロ相当の融資は利払いを含めて10年間繰り延べられる。

第2次支援策に基づく債務買い戻しに関する金利マージン上乗せは今年をもって撤廃される。

欧州中央銀行およびユーロ圏各国の中央銀行が購入したギリシャ債から出た利益は、2018年から2022年6月まで半年ごとにギリシャに移管される。
ギリシャが合意した改革を実行するのが条件。資金はギリシャ政府のグロス借入所要額の削減に充てられる。

ユーログループは2032年、グロス借入所要額を上限以内に納めるために追加的な債務軽減策が必要かどうかを検証し、必要であれば適切な措置をとる。

ギリシャが想定外の厳しい経済シナリオに見舞われた場合、ユーログループは合意したグロス借入所要額の基準値を達成できるよう、利払いについてさらに調整を行うことができる。

欧州委員会、ECB、IMF、EFSFが四半期毎にギリシャの経済動向を監査する。

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ギリシャ債務問題の経緯

2009/10 ギリシャの財政赤字粉飾が表面化
2010/5 ギリシャに対する支援策(2010~2012年で1,100億ユーロの協調融資)
欧州金融安定化メカニズム(European Stabilization Mechanism)創設
 EFSF 最大4400億ユーロ
 IMF 2500億ユーロ
 欧州委員会が発行する債券 600億ユーロ
 最大合計 7500億ユーロ


  2010/5/10  統一通貨ユーロの危機

2010/11 アイルランド支援(850億ユーロ)
2011/5 ポルトガル支援(780億ユーロ)
2011/6 EFSF拡充決定(2011/10 最後のスロバキアが一旦反対した後、賛成し、成立)
2011/7 ギリシャ向け第二次金融支援
 公的支援 1090億ユーロ、民間金融機関による支援 370億ユーロ(21%の損失負担)
2011/10 欧州債務危機克服に向けた「包括戦略」で合意。

ギリシャ問題については

民間銀行によるギリシャ債務の損失負担は7月時点の21%から50%に アップ
・ギリシャ債務残高は2020年にGDP比120%に削減へ
・ギリシャの財務状況を常時監視
・ギリシャに下記の改革を求める。
 ・女性年金支給開始 60歳→65歳
 ・一定額以上の受給者への支給額減額
 ・公務員3万人の削減、給与カットも
 ・民間企業の賃下げのための規制緩和
 ・保有不動産からの利益に対する課税の導入
 ・付加価値税 21%→23%(実施済み)
 ・ガス(DEPA)、通信(OTE)など国営企業の民営化
 ・公共事業の凍結、削減(2011年度は前年比3.3%減)
 ・軍事費の大幅削減

2011/11 ギリシャ首相は、国民の反対を受け、一度は国民投票実施の意向。
EUとの協議の後、首相は11月3日、緊急閣議を開き、国民投票を撤回

G20首脳会議は11月4日、首脳宣言を採択。
・EUが合意したギリシャの債務削減などの包括対策の速やかな実施を要請

2011/11/7 EU 金融危機

2012/2 EU・IMF、第2次支援

EUがギリシャに課した3条件をようやく達成
1)「財政緊縮関連法案の議会承認」

2)「財政緊縮策実行の誓約書」
3)「歳出削減策の具体化」(これが難航した。)

   

ギリシャ支援を巡る合意内容の骨子は以下の通り。

 ・EUとIMFが1300億ユーロ(約13兆6500億円)を支援
 ・民間債権者が保有するギリシャ国債の元本削減率を50%から53.5%に引き上げ
 ・ECBとユーロ圏各国の中央銀行が支援に参加
 ・ギリシャの対GDP債務比率を現状の160%から2020年に120.5%に
 ・ギリシャをEUの監視下に置き、財政緊縮策を確実に履行させる

2012/2/23 ギリシャ第二次支援決定  

2012/6 総選挙で数々の緊縮策を打ち出してきた連立与党が敗れる。

2012/6/26  ギリシャ、連立政権発足

ギリシャ支援凍結

2012/11 EUとIMF、融資再開で合意

2012/11/29 ユーロ圏、ギリシャへの融資再開へ

2015/1 ギリシャ総選挙で、反緊縮派の急進左派連合(SYRIZA)が勝利
2015/2 欧州中央銀行(ECB)、ギリシャ国債に対する適格担保ルールの適用除外を停止

2015/2/9 ギリシャ問題

2015/6 ギリシャ、IMFへの債務返済を先送り

EU、金融支援の条件となる改革案で合意できず。

2015/6/20 ギリシャ支援合意できず 
2015/7/13 ギリシャ対策 難航

2015/7/1 
ギリシャ支援が失効 

2015/7 7月5日の国民投票で、反対派の勝利
2015/7/6 ギリシャ国民投票、EUの財政緊縮策に反対

ギリシャ議会、新たな金融支援の条件としてEUから求められた財政改革案を承認

ユーロ圏首脳会議、ギリシャ金融支援で合意(最大860億ユーロの支援)

2015/7/14 ユーロ圏首脳会議、ギリシャ金融支援で合意 

2015/7/16 ギリシャ、財政改革法案可決後も綱渡り

ギリシャ、中国等への接近

2015/7/15 ギリシャへの中国、ロシアの接近

2016/4/12 ギリシャ、最大のピレウス港を中国に売却

2015/9 2015/9/24 ギリシャ総選挙でチプラス首相信任 

2015年8月の最大860億ユーロの支援合意で、合計214億ユーロの融資を実行したが、その後はギリシャ政府の財政再建努力を見極めるため、融資を中断

2016/5 ギリシャ国会、EUによる金融支援継続の前提となる財政改革法案を可決

ユーロ圏とIMF、ギリシャ支援協議で合意

2016/5/31 ギリシャ追加支援決定 

103億ユーロの融資を実施したが、約束していた増税や年金の削減など構造改革が進んでいないとして、これを最後に融資を中断

2017/5 ギリシャ、年金削減や増税策などの財政構造改革法成立
2017/6 ユーロ圏財務相会合で、中断していたギリシャへの支援融資を再開することで合意

2017/6/19 ユーロ圏財務相会合、ギリシャ融資再開で合意

2018/6 ギリシャ議会、ユーロ圏からの追加融資を受け取るために必要な財政構造改革法案を可決

欧州安定メカニズム(ESM)、ギリシャに対し10億ユーロの追加融資を正式決定
2015年夏に合意の第3次金融支援(3年間で最大860億ユーロ)融資額の累計は469億ユーロに。

今回 ユーロ圏財務相会合、ギリシャの債務軽減策などで合意


1) 経済産業省

経済産業省は6月18日、2018年版の不公正貿易報告書を発表した。

http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004532/2018/houkoku01.html

米国については、鉄鋼・アルミニウムの輸入制限をはじめ、保護主義的な通商政策を強めるトランプ米政権を名指しで批判。「対抗措置の応酬を通じて負の影響がグローバルに拡散しかねない」と懸念を示した。
日本は世界貿易機関(WTO)協定を柱とする国際ルールに基づき、貿易問題を解決していくとする対応方針も打ち出した。

最近の動き>
米国は、2017年4月、輸入鉄鋼および輸入アルミについて、232条調査を開始した。調査開始の背景として、外国政府による補助金、その他不公正な措置による過剰供給構造が生じた結果、米国市場および世界市場が歪曲し、米国国内産業が損害を受けている旨が指摘された。また、アンチ・ダンピング税や相殺関税措置では、かかる不公正な輸入品に対抗できず、過剰供給構造問題も解決に至っていないとし、232条調査に踏み切ったともされた。
(中略)
WTO協定上、輸出自主規制をとろうとすることも、とることも禁止されている(セーフガード協定11条)。上記割当がどのように運用されるのか、注視が必要である。
EU、中国、インド、ロシア、トルコは、米国の措置は実質的にはセーフガード措置に該当するとして、セーフガード協定に基づく対抗措置(リバランス措置)を見据え、補償協議を要請するなどしている。これに 対し、米国は、232条措置は安全保障に基づく措置であり、セーフガード措置ではない、と反論している。

我が国からの鉄鋼やアルミの輸入は、米国の安全保障に悪影響を与えることはないとして、我が国は、米国に対し、累次にわたり懸念を伝え、除外を求めて働きかけを行っている。
また、米国の232条に基づく措置は、単に米国の市場を閉ざすのみならず、世界の鉄鋼及びアルミニウム市場を混乱させ、多角的貿易システム全体に大きな悪影響を及ぼしかねない。我が国は、産業への影響を極力回避するよう多様なレベルで働きかけを行っている。
http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004532/2018/pdf/01_02.pdf


2) WTO

世界貿易機関(WTO) は6月19日、ノルウェーが、鉄鋼とアルミニウムを対象とする米国の輸入制限は国際的な貿易ルールに違反しているとしてWTOへの提訴手続きを始めたと発表した。
ノルウェーのNorsk Hydro はアルミニウムメーカーで、米国にも輸出している。

これまでに、中国、インド、欧州連合(EU)、カナダ、メキシコが既に提訴手続きに入っており、 これで6カ国・地域となった。

付記 ロシア、スイスも手続きに入り、8か国・地域となった。


日本政府は5月18日までに、対抗措置を取る権利を有すると世界貿易機関(WTO)に通知した

WTOは6月22日、日本が検討している対抗措置が年4億4000万ドルに上ると明らかにした。日本のほか、ロシアとトルコも米国による追加関税額を通知、それによると、ロシアは5億3800万ドル、トルコが2億6700万ドルと推計しているという。

このほか、中国は6億1200万ドル、EUは16億ドル、インドは1億6500万ドルとしており、対抗措置による総計は35億ドルに上る。

3) EU

欧州委員会は6月20日、報復措置の第1段階を発動すると発表した。

http://europa.eu/rapid/press-release_IP-18-4220_en.htm

米国からの輸入品28億ユーロ相当に25%の関税賦課を最終承認した。対象品目はハーレーダビッドソンの二輪車やリーバイストラウスのジーンズなど。米国製のトランプカードにも10%の関税をかける。

残りの36億ユーロ(38億ドル)相当の製品には、3年後又はWTOでの裁定のあった時のいずれか早い時期に課税する。

これを受け、トランプ大統領は6月22日、「EUが関税や障壁をすぐに取り除かないなら、輸入自動車全てに20%の関税をかける。米国で生産せよ!」と呟いた。

Based on the Tariffs and Trade Barriers long placed on the U.S. and it great companies and workers by the European Union, if these Tariffs and Barriers are not soon broken down and removed, we will be placing a 20% Tariff on all of their cars coming into the U.S.  Build them here!


欧州委員会は6月6日、対抗措置として、米国からの輸入品に報復関税を課す方針を正式決定した。

2018/6/7 EU、米国の鉄鋼・アルミニウム輸入制限への報復関税、7月発動へ

付記 3)-2 カナダ

カナダ政府は6月29日、米国が課した鉄鋼とアルミニウムの関税に対し、7月1日に報復関税を発動すると発表した。
鉄鋼やアルミ、食品など166億カナダドル相当の製品を対象に10~25%の追加関税を課す。

米国から輸入する鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を課す。
ウイスキーやイチゴジャム、トマトケチャップなどの食品のほか、食洗機やトランプ札などにも10%を上乗せする。
米産地に打撃を与えつつ、カナダ経済への打撃を抑えるため、国内で代替品が用意できるものを選んだ。

あわせて国内の鉄鋼・アルミ産業の雇用維持などのために20億カナダドルの支援策を実施する。

また、だぶついた鉄鋼がカナダに流入しているのに対応するため、数週間以内にセーフガード(緊急輸入制限)を含む対策も検討する。


4) ロシア

ロシアのオレシキン経済発展相は6月19日、米国の鉄鋼・アルミニウムの輸入関税に対抗し、一部米製品に対し輸入関税をかけると発表した。

具体的な対象品目は向こう数日以内に公表する。

米商務省は6月20日、日本など5カ国から輸入する鉄鋼製品42品目について追加関税の適用を除外すると発表した。

鉄鋼やアルミニウムの輸入制限は米東部時間3月23日午前0時1分に発動された。

ある国を輸入制限の対象外とするかどうかについては大統領が最終決定するが、米国内で調達しにくい特定製品について関税の適用除外するかどうかは商務省が決定する。

商務省は米国企業からの申請に基づき、製品ごとに、①満足できる水準の品質と②十分な利用可能の量で、米国内で製造されているかどうかを審査する。

3月19日から受け付け、最長90日で判断する。

2018/3/26 米国、鉄鋼とアルミの輸入制限を発動

今回が適用除外の第1弾となる。

対象は、日本、スウェーデン、ベルギー、ドイツ、中国からの輸入品42品目で、下記の各社が認められた。

Schick Manufacturing, Inc. of Shelton, Connecticut カミソリ・髭剃のシック
Nachi America Inc. of Greenwood, Indiana  不二越アメリカ
Hankev International of Buena Park, California
Zapp Precision Wire of Summerville, South Carolina
U.S. Leakless, Inc. of Athens, Alabama  日本リークレス工業(自動車・工業製品向けガスケット・パッキン)
Woodings Industrial Corporation of Mars, Pennsylvania
PolyVision Corporation of Atlanta, Georgia

他方、11社からの申請 56件は拒否された。

ロス商務長官によると、鉄鋼・アルミで計2万件以上の除外申請が出ている。商務省は今後も審査の進展に応じて除外の是非を決める方針で、今回、承認されたのはそのごく一部になる が、審査に時間がかかっている。

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