「no」と一致するもの


アメリカ国際貿易委員会(USITC)は1月21日、中国及び台湾の太陽電池製品が実質的な損害を与えたと認定、反ダンピング関税と反補助金関税の徴収が決定した。

商務省は昨年12月にダンピングと補助金の最終認定を行い、税率を発表していた。


中国は太陽光パネル関連で米国及びEUと熾烈な争いを繰り広げてきた。

2014/5/5  中国、EUの太陽光パネル用ポリシリコンの反ダンピング・反補助金調査でクロの最終決定


米国は中国の太陽光パネルについて、2012年に反ダンピング(AD)、反補助金(CVD)課税を行った。

単位:%   AD:反ダンピング、CVD:相殺関税
  仮決定   最終決定
AD CVD 合計 AD 輸出
補助金
調整後
 AD
CVD 合計
Wuxi Suntech 31.22 2.90 34.12 31.73 -10.54 21.19 14.78 35.97
Trina Solar 31.14 4.73 35.87 18.32 -10.54 7.78 15.97 23.75
他の59社  31.18 3.61 34.79 25.96 -10.54 15.42 15.24 30.66
他の全て 249.96 3.61 253.57 249.96 -10.54 239.42 15.24 254.66


2012/10/13 米国商務省、中国製太陽電池のダンピングを最終認定


更に、2014年に入り、台湾製を含む中国の太陽電池製品(バッテリー、モジュール、合板、パネル、建築一体化材料などを含む)についてAD、CVDの調査を開始した。

上記の課税後、多くの中国のモデュールメーカーが台湾製のセルを使用することにより、これを回避しようとしたため、この抜け道を塞ぐため、台湾製も含めた。

米商務省は2014年7月25日、中国と台湾のメーカーの結晶シリコン太陽電池製品に反ダンピング関税の適用を、6月3日に中国製の結晶シリコン太陽電池製品に反補助金関税を課す仮決定を行っている。

2014/7/30  米商務部、中国・台湾製の結晶シリコン太陽電池製品に反ダンピング関税適用の仮決定



2014年12月16日、商務省は反ダンピング、反補助金の最終決定を行い、詳細を発表した。

 

仮決定

 

最終決定

反補助金(CVD) 反ダンピング(AD) 合計
保証金
反補助金(CVD) 反ダンピング
(AD)
dumping
 margin
保証金
China Wuxi Suntech Power 35.21 42.33 14.03 49.24 27.64 52.13
Trina Solar 18.56 26.33 10.74 29.30 49.79 26.71
Renesola/Jinko 26.89 58.87 55.49 82.38 38.72 78.42
調査協力41社 42.33 20.38 47.27 52.13
        うち  5社 27.64
調査非協力 165.04 165.04 191.93 38.72 165.04
Taiwan Gintech - 27.59   27.59 - 27.55
Motech - 44.18   44.18 - 11.45
Others - 35.89   35.89 - 19.50


今回、ITCが実質的な損害が生じていると認定したため、上記が最終決定された。

(米国では商務省がダンピングの認定、ITCが損害の認定を行い、両者が揃って、確定となる。)

最終合計税率はADとCVDの重複分を除外し、追って発表される。

 

中国商務部はこれを受け、「米国の決定は両国間の太陽光パネル製品をめぐる貿易紛争をさらに激化させ、両国産業の貿易や協力に深刻な損害を与えるもので、中国企業はこの決定に強い不満を表明する。中国はWTOの枠組内、および米国の司法システム内で権利を行使し、自国の権利を守ることを検討する」とコメントした。

 

米国内でも、輸入パネルを使用するメーカーは失望を表明した。

Solar Energy Industries Associationは、「USITCの決定は米国太陽光産業の後退を意味しており、提訴したソーラーワールド米国支社でさえほとんど何のメリットも得られないもの」との見方を示した。

また、別の業界団体のCoalition for Affordable Solar Energyは、「USITCの今回の決定は米国国内の太陽光エネルギー製品の価格を引き上げ、米国企業の利益を損なうことになる。データによると、2014年には太陽光パネルユニットの価格低下により米国の太陽光エネルギー産業の雇用は21.8%増加した。米国と中国が交渉を通じて貿易摩擦を解決することを呼びかける。貿易障壁の設置は解決策ではない」とコメントした。

 

 

欧州単一通貨ユーロを使う19カ国の金融政策を決める欧州中央銀行(ECB)は1月22日、定例理事会を開き、ユーロ加盟国の国債などを購入し、資金を大量に金融市場に供給する「量的緩和政策」の導入を決めた。

ユーロ圏は物価が下落し続けるデフレの懸念が強まっており、量的緩和はこれを払拭する狙いで、量的緩和の導入は1998年のECB創設以来初めて。

ECBの狙い:

購入する国債の価格が上昇(金利が低下)し、企業向け融資や住宅ローンの金利も低下して、企業の生産や家計の消費を促す。
ユーロが大量に出回ると、ユーロの価値がドルや円に対して下がるため、外国為替市場でユーロ安が進む。
ユーロ圏からの輸出を後押しするほか、ユーロ圏が輸入する原材料や製品の価格が上昇し、ユーロ圏の物価を押し上げる。

2014年12月のユーロ圏消費者物価指数速報値は前年比で -0.2%となった。マイナスとなったのは2009年10月の -0.1%以来で、原油安でエネルギー価格が大幅に下落した。

欧州中銀は 過去の平均値の2%弱の上昇を目標としているが、原油安で下落が続く可能性が高い。

付記 2015年1月は前年比0.6%下落 (うちエネルギー 8.9%下落、エネルギー除くと +0.4)



量的緩和政策の概要は下記の通り。

1) 2015年3月から2016年9月末まで、毎月 600億ユーロ(約8兆円)、総額1兆1400億ユーロ(約156兆円)の金融資産を買い取る。

2) ユーロ圏の全加盟国の残存期間2~30年の国債を購入対象とする。購入はECBへの出資比率に応じて行う。

National central bank 比率%
Deutsche Bundesbank (Germany) 25.57
Banque de France (France) 20.14
Banca d'Italia (Italy) 17.49
Banco de España (Spain) 12.56
De Nederlandsche Bank (The Netherlands) 5.69
Nationale Bank van België/Banque Nationale de Belgique (Belgium) 3.52
Bank of Greece (Greece) 2.89
Oesterreichische Nationalbank (Austria) 2.79
Banco de Portugal (Portugal) 2.48
Suomen Pankki - Finlands Bank (Finland) 1.78
Central Bank of Ireland (Ireland) 1.65
Národná banka Slovenska (Slovakia) 1.10
Lietuvos bankas (Lithuania) 0.59
Banka Slovenije (Slovenia) 0.49
Latvijas Banka (Latvia) 0.40
Banque centrale du Luxembourg (Luxembourg) 0.29
Eesti Pank (Estonia) 0.27
Central Bank of Cyprus (Cyprus) 0.21
Central Bank of Malta (Malta) 0.09
Total 100.00


出資比率が最大のドイツの国債を最も多く買うこととなるが、ドイツは財政が健全で景気も堅調なため、国債購入の効果は少ないとみられる。
一方、景気停滞と財政難が続くギリシャなど南欧諸国の国債の購入が少なくなると、そうした国の国債金利が低下せず、効果が限定的になる恐れがある。

3) 購入した国債の信用が低下し、国債価格が急落して、ECBに損失が生じた場合、
          損失の2割は全加盟国で分担
          残る8割は、国債を発行した国の中銀が負担。

ギリシャ国債のリスクは他の国は負わないということ。

負担を懸念するドイツなどに配慮したものだが、ユーロ圏の結束の原則に反し、高水準の債務を抱える国の財政をさらに圧迫する可能性があるとの批判が上がっている。

4) ギリシャの場合、EU、ECB、IMFの3機関で構成する国際債権団がまとめた支援プログラムの条件を順守する必要がある。

ギリシャでは1月25日に総選挙が行われるが、急進左派連合(SYRIZA)が優勢となっている。

SYRIZAの党首は、ギリシャがユーロ圏にとどまる意向を示しながらも、勝利した場合には債権国から課された緊縮財政政策に終止符を打つと約束 しており、EUとIMFから借りた2400億ユーロの一部帳消しも望んでいる。

場合によってはギリシャ国債は対象外となる可能性もある。


ユーロ圏は景気や財政など経済状況がばらばらな19カ国が加盟している。

ECBへの出資比率に応じた国債購入が景気や物価の押し上げにつながるのかは明確でなく、金融市場にも効果に懐疑的な見方がある。

 

国債購入は賛成多数で決まった。
銀行筋によると、ドイツ、オランダ、オーストリア、エストニアの中銀総裁とラウテンシュレーガー専務理事の計5人が資産買い入れに反対した。

ドイツはこれまで、効果が少ない、財政規律の改革に支障、財政ファイナンスを禁止したEUの条約に反するといった理由で反対していた。
EUの基本条約「リスボン条約」は、ECBによる参加国国債の購入は、「財政ファイナンス」にあたるとして禁止している。

欧州司法裁判所の法務官は1月14日、ECBの無制限債券買い入れ策「OMT(Outright Monetary Transactions)」について、「原則的に」EU条約に沿っているとの意見を示し、条件付きでこれを支持した。

Pedro Cruz Villalon法務官は、OMTは「必要」であり「妥当」との見解を示す一方、ECBはOMT実施を正当化する根拠を示す必要がある、と指摘 した。
また、OMT実施の条件として、ユーロ圏の特定の国への支援プログラムにECBが直接関与しないことを挙げている。

同法務官は「ECBはEUの金融政策を策定かつ実施するに当たり、幅広い裁量を与えられるべきであり、裁判所はECBの活動を査定するに当たって相当程度の慎重姿勢が求められる」と述べた。

法務官の見解に拘束力はないものの、それに沿った判断を司法裁が最終的に下すケースが大半。

 


伊藤忠商事は1月20日、タイのCharoen Pokhand Group (CP) 及び中国最大の政府系企業グループ「中信集団」(CITIC Group) の3社間で戦略的な業務・資本提携を行うと発表した。

伊藤忠は下記の通り、両社とそれぞれ提携しているが、今回、3社間で戦略的な業務・資本提携を行うもので、伊藤忠とCPが共同でCITICグループの中核企業「中国中信」(CITIC) に約20%出資する。出資金額は合計で約1兆2040億円で、伊藤忠の約6千億円の投資は日本企業の対中出資としては過去最大となる。

中信集団は、金融から不動産、資源開発まで手がける中国最大の政府系企業グループで、伊藤忠は今回の提携により、成長が見込める食料事業や活発化している商業施設の開発などの不動産事業を一段と強化したい考え。
中信集団としても、今回の提携を通じて海外ビジネスを加速させるねらいがあるものとみられる。

ーーー

報道では、日本の総合商社の出資額も、中国の国有企業への外国企業の出資額もいずれも過去最大という異例の巨額投資が実現するのには、習近平指導部の強い意向があるという。

日中関係の悪化を受けて、日本から中国への直接投資実行額は2年連続で減少しているが、習指導部としては、海外企業の対中投資を再び増やす呼び水として、また、国有企業改革の目玉として、今回の出資を後押ししており、伊藤忠に決断を迫っていたという。

伊藤忠は丹羽宇一郎前会長が中国大使を務めるなど中国政府と関係が深く、タイのCPグループも習政権と近いとされる。

ーーー

伊藤忠は1972年に総合商社では初めて、中国から友好商社に指定された。

2011年4月 に中信集団との間で幅広い事業分野での提携検討を目的とする「包括戦略提携協議書」を締結するとともに、第1号案件として、CITICグループ傘下の金融事業会社であるCITIC International Assets Managementに25% 出資した。

協業可能性として、中国国内や金融事業分野に限定せず、全ての地域及び幅広い分野において実施するとし、下記を想定した。
- 中国における中間所得者層拡大を見据えたリーテイル金融分野における共同取り組み 
- 日中間クロスボーダーM&A及び日本企業の中国進出サポートに関するアドバイザリー業務
- 住宅、オフィスビル、商業施設、物流施設等の不動産共同開発・運営・ファンド事業
- 新車販売事業等自動車関連事業における共同取り組み
- 海外における資源開発及びニューエナジー分野における共同取り組み
- 中国における消費市場拡大を見据えた生活消費関連分野での共同取り組み

伊藤忠はまた、2014年7月にタイのCharoen Pokphnad Group (CP)と資本・業務提携契約を締結している。

CPは1979年、中国改革開放直後の中国に最初に進出した外資企業で、農業と食料品を中心に、情報通信、流通、金融、医薬品等の事業を手掛け、アジア地域で更なる事業展開を推進中である。

今回の3社間の戦略的な業務・資本提携の概要は下記の通り。

(業務提携)

強み

伊藤忠  総合商社トップクラスの非資源分野収益力
         幅広い分野における総合力
         グローバルな調達・販売網と事業展開

CP    非資源分野(農業・食品、小売、通信他
         中国・アジアでの強固な地場事業基盤
         中国・アジアにおける華僑ネットワーク

CITIC   中国における総合金融サービス
         中国政府との強固な関係
         中国におけるブランド力

   
シナジー創出可能分野  

(資本提携)

伊藤忠とCPの50/50JVのChia Tai Bright Investment (CTB)がCITICグループの中核会社の中国中信(CITIC Limited) に出資する。
2段階で総額 約803億HK$(約1兆2040億円)で、20.61%を取得する。

株主関係

  現状 2015/4 2015/10
CITIC Group 77.90% 67.90% 10%分購入
約5150億円
既存1%は売却
59.89%  
CTB 1.00% 10.00% 20.61% 優先株引き受け・転換
約6890億円
一般株主 21.10% 22.10%   19.50%  
合計 100% 100%   100% 優先株で13.36%増


出資するCITIC Limited の事業は下記の通り。

金融事業 中国第1位の信託会社、第1位の証券会社、第7位の銀行
不動産・インフラ 中国29都市のオペレーション
建設・プロジェクト 中国第6位の建設業
資源・エネルギー アジア、豪州、南米での石油、石炭、鉄鉱石事業
製造業 世界第1位のアルミホイール製造
中国第1位の建材製造機器
中国第1位の特殊鋼製造
その他 IT、通信、医療、運送、出版、旅行、スポーツ等

 

2013年度の連結純利益は約7300億円。


伊藤忠にとっても巨額投資であるが、今後、どのような形で提携が効果を生み、投資を回収できるのか、注目される。







宇部興産は1月16日、リチウムイオン二次電池向け電解液事業をさらに強化するため、Dow Chemical との50/50JVのAdvanced Electrolyte Technologies LLC(AET)を子会社化したと発表した。


今回、出資比率を70%としたが、2015年3月末には80.5%とする予定。この時点でDow出資は19.5%となり、持分法対象から外れる。
実質的にはDowの離脱だが、後述の通り、AETの米国と中国の工場はDow の工場内にあるため、出資を残したと思われる。

宇部興産では、今回の子会社化は、AETと宇部興産の電池材料事業との一体運営を強化し、事業の更なる拡大を図っていくものとしており、今後、需要増が見込まれる車載用リチウムイオン二次電池向けを中心に、研究開発・生産・販売等でのシナジーをより一層発揮することで拡販やコストダウンを推し進めるとしている。

ーーー

宇部興産は2011年7月、Dow Chemical との間でリチウムイオン二次電池向け電解液の製造及び販売等を行う合弁会社を設立することで合意したと発表した。

宇部興産は、リチウムイオン二次電池の主要四部材のうち、電解液とセパレーターを事業化している。

電解液事業については、独自の有機合成技術を用いた高純度溶剤、炭酸ジメチル(DMC)等をベースに電解質を混合したリチウムイオン電池用電解液「ピュアライト®」を販売している。

同社は堺工場年産能力1万トンのプラントを持つが、民生用携帯機器に加え、今後、ハイブリッド自動車や電気自動車などの車載用途をはじめとして、蓄電用途や産業用途などへの応用も期待され、大幅な需要の増加が予想されているため、グローバルな生産・販売体制を早急に構築することが不可欠であると判断し、Dowとの合弁会社設立を決めた。

Dow Chemical は韓国最大のリチウム電池メーカーKokam Engineering の米国子会社、投資会社のTownsend Ventures, LLC、SAIL Venture Partners と組んで、合弁会社Dow Kokam を設立、リチウム電池を製造している。

2009/5/27 ダウ、ミシガン州にリチウム電池工場

これとは別にDow Energy MaterialsがNickel-Manganese-Cobalt (NMC) リン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)の正極材料を製造している。


2011年12月にAdvanced Electrolyte Technologies LLC(AET)が設立された。
宇部興産は、電解液の技術を合弁会社にライセンスし、合弁会社は順次、米国・中国・欧州に電解液の製造設備を有する100%子会社を設立することを決めた。

(米国) 

2011年12月、AET設立と同時に同社の米国子会社Advanced Electrolyte Technologies (USA) LLCが設立された。
同社はDow Chemical のミシガン州Midland工場内に年産5,000トンの工場建設に着手した。

(中国) 

2012年6月、AET Electrolyte Technologies (Zhangjiagang) Companyが設立された。
江蘇省張家港市のDow Chemical の工場内に年産 5,000トンの工場建設に着手した。宇部技術で原料の炭酸ジメチルから生産する。

(欧州)

2012年6月、スペインにAdvanced Electrolyte Technologies LLC を設立した。

宇部興産は電解液の開発体制を整えるため、2011年UBE Chemical Europe S.A.Castellon 工場で分析装置や小ロット電解液の調合設備を稼動させたが、これを引き継いだ。
デュッセルドルフに販売事務所を設け、
欧州市場向けにサンプル出荷を始めた。

日本での生産・販売は宇部興産が行うが、日米中の合計能力は20,000トンとなる。

ーーー

中国工場は2013年6月に営業運転を開始した。

米国工場も2013年3月に工場は完成した。しかし、EV市場拡大の遅れにより米国の電解液需要が当初見通しを大幅に下回っているため、2014年2月の報道では、工場稼動を当面見送るとしていた。(現時点での状況は不明)


リチウムイオン電池の各材料の競争は激化している。

 

 


オバマ米大統領は1月20日に行う2015年の一般教書演説で、富裕層が保有する株式などの資産課税を強化する方針を打ち出す。

White House は1月18日、下記の発表を行うとともに、これについてのFact Sheet を発表した。

米国の経済復興はミドルクラスの努力のおかげである。

ミドルクラス家族に役立つ、より簡単な、より公平な税制が必要だ。

一般教書演説に先立ち、大金持ちや大企業が税金を免れている抜け道を塞ぎ、それをミドルクラスが21世紀経済での地位を強化する手助けに使うという計画を発表した。

改善案は、
1)相続税の抜け穴を塞ぎ、金持ちに相続資産への税金を支払わせる
2)キャピタルゲインタックスの強化:最高税率をReagan大統領時代の28%に戻す。
3)巨大金融機関の仕事の仕方の改善:借入金へのFeeの設定

増税分の使い道は下記の通り。
1)共稼ぎ家族
(育児や老人介護などの負担が大きい)への新しい税額控除
2)子育て支援
3)教育支援
4)退職のための貯蓄支援

米連邦準備理事会のJanet Yellen 議長は2014年10月17日、ボストン連邦準備銀行が開催したカンファレンスで講演し、「所得や富の不平等は100年ぶりに最高レベルに近づいている」とし、「米国で不平等が深刻化していることは、大変懸念すべきことだ」と 述べた。

2014/10/24 Janet Yellen 米連邦準備理事会議長、米国の不平等の深刻化を懸念 

2013/10/23 米国の政治・経済の問題点

大統領は、「1%対99%」に象徴される歴史的な水準の米経済格差を是正する一方で、ウォール街へのけん制強化でリベラル色を鮮明にする。

ただ、連邦議会上下両院の多数を占める野党・共和党の反発は確実で、実現の見通しは険しそうだ。

ーーー

米国では国民のたった1%が全所得の25%を得ている。
1980年代初めには10%程度に過ぎなかったが、その後、急増した。Reagan大統領の時代である。



今回の提案の1)と2)は金持ち優遇の税制の改正である。

1)Trust fund loophole

   キャピタルゲイン税制には問題があり、税率を上げるだけでは解決しない。
  米国には(相続税ではなく)遺産税の制度はあるが、大きな抜け穴があり、大金持ちは実質的に課税を免れている。

最大の抜け穴は "stepped-up basis" と呼ばれるもの。
大きな含み益をもつ株式をTrust に入れておくと、無税で相続できるだけでなく、相続時に相続株式の簿価が時価に
"stepped-up"され、売却しても売却益がゼロとなるため課税されない。

10百万ドルで取得した株が50百万ドルに値上がりした場合、売却すれば40百万ドル分が課税される。
しかし、Fundに入れておくと、相続した時点で株式の取得価額は10百万ドルではなく 50百万ドルとみなされるため、相続人は売却しても課税されない。

FacebookのMark Zuckerberg CEOGoldman SachsLloyd Blankfein CEOなど、企業経営者など何百人もが使っていることはSECへの届け出資料が示しており、連邦税逃れの規模は2000年以降で1000億ドル以上に上るかもしれないとされる。

2)Capital gain tax

 米国のCapital gain tax は、一般所得の額に応じて決まるが、最高税率は2012年までは15%に過ぎなかった。
  庶民は一般所得が中心だが、大金持ちはCapital gainの割合が大きく、この税率が低いのは大金持ちを利する。

   ヘッジファンドマネージャーは通常、管理報酬と成功報酬を受け取るが、「管理報酬は預かり資産の2%、
   成功報酬は預かり資産の上昇幅から20%」が通常である。
 
IRSのルールで、成功報酬はキャピタルゲインとされ、納税額はきわめて少ない。

最高税率は Carter 時代に35%から28%に下がり、Reagan時代に20%になった。
一旦、28%に上がったが、Clinton時代に20%に、Bush時代に15%に下がった。

米国の著名な投資家Warren Buffett は自身の2010年の税率が17.4%で、同氏の秘書の約半分ということを知り、2012年11月にNew York Timesに寄稿し、年収100万~1000万ドルの富裕層については30%、1,000万ドル以上は35%の税率を適用するよう主張した。("Buffet rule")

2013年に最高所得層のみ20%に引き上げた。これに所得25万ドル以上の層のみにAffordable Healthcare Actにより3.8%が追加された。

課税収入
(夫婦合算:2015)
Ordinary Income Tax Rate
Long-term Capital Gains Tax Rate
2008-2012 2013- Obama提案
$0〜$18,450 10% 0% 0%  
$18,451〜$74,900 15%
$74,901〜$151,200 25% 15% 15%  
$151,201〜$230,450 28%
$230,451〜$250,000 33%
$250,001〜$411,500 15%+3.8%  
$411,501〜$464,850 35%
$464,850以上 39.6% 20%+3.8% 28%


今回の提案は、最高層のみ、Reagan時代の28%に戻すというささやかなものである。

Fact sheet でも、28%になるのは夫婦の所得が約50万ドル以上の層だけであると説明している。


以上の2つについて、Fact sheet は以下の通り説明している。

・影響はほとんどがトップの1%の人だけである。

 トップ1%の人への影響が99%で、所得200万ドル以上のトップ0.1%への影響が80%以上である。
 それでも金持ちのCapital gain の税率は低い。但し、全く税金を払わずに富を蓄積するのは出来なくなる。

・税金の不公正の是正である。

・カネを投資に
 "stepped-up"システムでは税金がかからないため、何世代もカネを貯める傾向がある。
 このインセンティブを失くし、成長のためにカネを使わせる。

・ミドルクラスは保護される。

夫婦の場合、二人とも死ぬまでは遺産税はかからない。
夫婦で20万ドル(単身では10万ドル)までのCapital gain は遺産税はかからない。
上記に加え、自宅については50万ドル(単身は25万ドル)が免税となる。
高価な美術品などを除き、衣類、家具などの資産は免税である。

 中小企業についても、遺産税支払いのために事業を売却するなどのことはない。

相続した個人経営の事業は、事業が売却されない限り、課税されない。
個人経営の事業の場合、15年分割の税支払いのオプションもある。 

3)巨大金融機関へのFee

巨大金融機関(500億ドル以上の資産を持つ約100社)の負債に0.07%のフィーを徴収する。

銀行が多額の借入金を積み上げて危うい投資に動かないようにする狙いで、この案は金融機関にExcise tax を課するという共和党のDave Camp 元歳入委員長の税制改革案に沿ったものとしている。

ーーー

米国の金持ち優遇税制はひど過ぎ、Janet Yellen 議長も「大変懸念すべきことだ」とし、Warren Buffett も金持ちを増税せよとしている。

しかし、これを是正しようという動きには反対が多いのは不思議である。

Robert Reichはその著 "Aftershock"で、米国の不況の原因は富の偏重であるとし、このまま放置すると国民の反乱が起こり、大変なことになるとしている。

2013/10/23 米国の政治・経済の問題点



 

スイス国立銀行(中央銀行)は1月15日、対ユーロでのスイス・フランの上昇を抑えるため導入していた無制限介入を終了し、1ユーロ=1.20スイスフランの上限を撤廃した 。

これにより、急激なスイスフラン高が進み、ユーロ/スイスフランは短時間のうちに大暴落した。


    (毎日新聞 2015/1/17)

2011年9月以降、スイス国立銀行はフランのレートが上限を超えると外国為替市場で無制限にスイスフランを売り、ユーロを買ってフラン高を防いできた。

スイスは永世中立国で地域紛争の影響を受けにくく、国民1人あたりの金保有高も世界一であることから、スイスフランは「有事の際の避難通貨」とされる。

当時は欧州危機で、ユーロを売ってフランを買う動きが高まっており、輸出企業も多いスイス経済にとって、フラン高は大きな脅威であり、国立銀行はたびたび「為替レートの上限値は、金融政策の柱」と繰り返してきた。

しかし、欧州中央銀行(ECB)理事会の開催を1週間後に控え、量的緩和の可能性を考え、異例の政策の継続を断念したとみられる。

量的緩和が行われば大量のユーロが出回ってフラン買いの圧力が高まり、ユーロを買い続ける為替介入で抑えきれなくなる恐れがある。
膨大なユーロを抱えてから上限を撤廃すれば、ユーロ急落でスイス中銀が巨額の含み損を抱えかねないリスクがあった。


この決定は大きな衝撃を生んだ。

通貨高による輸出下押しへの懸念からスイス株は急落した。

国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は米CNBCの番組で「事前に私に連絡がなかったのは驚きだ」と苦言を呈した。

自国通貨より金利が低いスイスフラン建てで住宅ローンを組むことが珍しくない東欧にも及んだ。ポーランドは住宅ローンの約4割がスイスフラン建てという。

英国の外国為替証拠金取引業者Alpari は、スイス・フラン相場が急激に変動した影響を受けて、1月16日付で破綻したと発表した。
日本の金融庁はAlpari の破綻を受け、日本法人のアルパリジャパンに対して、顧客から預かった資産が流出しないように求める命令を出した。



 

SABICは1月5日、米国のMolecular Rebar Design との間で、特定の市場向けのカーボンナノチューブ(CNT)を開発・販売するため、合弁契約を締結したと発表した。

JVの名称はBlack Diamond Structures LLC で、Molecular Rebar Design 社のユニークなCNT技術 "Molecular Rebar" を使う。

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カーボンナノチューブは幅広い用途を持つが、実際のCNTは一般的な製法(アーク放電法レーザーアブレーション法、流動床リアクターなど)では、沢山のナノチューブが絡まった束の"fuzzy balls"の状態で生成する。長さ、直径、らせん度が揃っていないだけでなく、ナノチューブの配向や配列もまったくのランダムということが多い。

絡まった束をほぐし、理想的なチューブにしないと利用できないが、通常のやり方では難しく、これが商業利用を妨げている。

Molecular Rebar Design の"Molecular Rebar"は、一般に入手できる"fuzzy balls"の状態のCNTからスタートし、いくつかの工程を経て、理想的なアスペクト比(60~100)の 綺麗なチューブになる。

両社のJVのBlack Diamond Structures LLC は、エネルギー貯蔵、発電、自動車・軽トラック、家電、建築などの特定の市場に的を絞る。

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SABICは以前からカーボンナノに関心を持っており、2014年5月には、多方面の市場向けにカーボンナノ構造材料を開発するため、Lockheed Martin とのJVをサウジに設立することに向けパートナーシップをつくると発表した。

Lockheed Martin の子会社のApplied NanoStructured Solutions, LLC はナノテクノロジーの開発、商業化を行っており、カーボンナノ構造体を連続製法でいろいろな物質に浸出する革命的方法を開発した。

2014/5/31 SABIC、Lockheed Martinとカーボンナノ構造材料のJVを設立






Dow Chemical は1月8日、LG Electronicsにカドミウムフリーの量子ドット(Quantum dot) を供給すると発表した。

LGは1月6日にLas Vegasで開かれた2015 Consumer Electronics Show で量子ドット技術により色再現性や視野角などを向上させた4K対応テレビを発表した。
2015年の液晶テレビや有機ELテレビに順次対応を拡大していく。

液晶バックライトの前に量子ドットのフィルムを加えることで、映像の色再現性や彩度、全体の明るさなどを大幅に向上する。 「広色域で表現でき、4Kコンテンツに理想的」としている。
量子ドットのフィルムにより、IPSパネルの色再現性は既存のLEDバックライト液晶テレビに比べ30%以上改善され、IPSの特徴である広視野角性も向上するとしている。

サムスン電子も量子ドット技術使用の新型テレビ「SUHDテレビ」をブース入り口に掲げた。

2014年9月にベルリンのエレクトロニクスショー「IFA2014」で、中国のTCLと海信グループ(Hisense)が量子ドットテレビを発表し、TCLは間もなく発売するとしている。

LGはDowとの提携により、安定的に必要な量子ドットの供給を受けることが出来ることとなる。

量子ドットとは、数n~数十nmの大きさを持つ化合物半導体や酸化物半導体の微粒子で 、青色LEDからの光の波長変換を行い、望む光の色を得ることができる。
大きさが一様にそろった量子ドットを用意すれば、スペクトルのピークの鋭い、色純度の高い発光が得られ、これによって、ディスプレーの色再現性の向上や低消費電力化が実現可能にな る。

量子ドット技術はもともと1970年代に開発されたが、これまで実用化されていないのは、量子ドット素材として、毒性の強いカドミウムが使われていたため である。

たとえば、Quantum Designの量子ドットの中心核(コア)は、セレン化カドミウム(CdSe)でできており、その外側を硫化亜鉛(ZnS)の被覆層(シェル)が覆っている構造で、この金属化合物の直径を変えることで、発する蛍光波長が変わる特長を持っている。

例えば
直径3.0nmの場合:530nm(緑色の蛍光)
直径8.3nmの場合:620nm(赤色の蛍光)
この間も直径を変えることで任意の蛍光波長を作製可能

量子ドットの蛍光は非常にシャープなバンドを描くため、他色への波長の重なりが少ないという特長を持つ。

しかし、最新のRoHS 指令では、カドミウムの最大許容値は0.01%となっており、これが障害となる。

英国の Nanoco Group PLCはカドミウムや重金属を全く使用しない量子ドットを開発した。
同社は量子ドットの製法として分子シーディング法を開発したが、この方法は他の化合物半導体材料(III族~V族元素など)にも適用することが可能で、CdSeと同等の光学特性を有するにもかかわらず重金属を含まない半導体材料が作られる。

。 Nanoco社の分子シーディング法は他の化合物半導体材料(III族~V族元素など)にも適用することが可能で、CdSeのQDと同等の光学特性を有するにもかかわらず重金属を含まない半導体材料が作られています。 - See more at: http://www.sigmaaldrich.com/japan/materialscience/nano-materials/lumidots/quantumdot-commercial.html#sthash.HXg1xlkE.dpuf
。 Nanoco社の分子シーディング法は他の化合物半導体材料(III族~V族元素など)にも適用することが可能で、CdSeのQDと同等の光学特性を有するにもかかわらず重金属を含まない半導体材料が作られています。 - See more at: http://www.sigmaaldrich.com/japan/materialscience/nano-materials/lumidots/quantumdot-commercial.html#sthash.HXg1xlkE.dpuf

Dow Chemicalは2013年1月28日、Nanoco Groupと、カドミウムフリーの量子ドット技術に関するグローバルライセンス契約を締結したと発表した。
この契約により、ダウはNanocoの持つカドミウムフリーの量子ドットを販売、マーケティングおよび製造する全世界での完全独占権を得た。

Nanocoは契約期間中、製品改良のための技術供与を続けるとともに、Dowと共同で製品のマーケティングおよび技術サービスを顧客に提供 する。

Nanocoは2001年創業の量子ドットの開発と商業生産における世界的なメーカーで 、同社の量子ドットは重金属を含まず、RoHS規制に適合しており、照明、太陽電池、生体画像など、さまざまな分野で使われている。(太陽電池では光を電気エネルギーに変換する「光電素子」として使われる)

Nanocoは研究開発レベルから少量の量産レベルに拡大させつつあるが、市場のニーズに応えるためには、大規模な生産体制が必要であり、そのためにDow と提携した。

Dowは以下の通り述べた。

Nanocoのカドミウムフリーの量子ドットがディスプレー産業における新基準になると確信してい る。
Nanocoの量子ドットはコスト効率が良く、LCDディスプレーの色彩を向上させ、同時に重金属の使用を避けることができる。Nanocoの技術とDowのフィルム、LCD、LED、有機ELディスプレー産業における知見が一つになることにより、顧客に対して強力な材料技術を提供することができる。

Dow Chemical は2013年1月に韓国の天安(Cheonan)市 に100万ドルを投資し、世界初の大規模、カドミウムフリー量子ドット製造工場を建設すると発表した。

同社は2014年9月30日に製造開始を発表した。年間数百万台のテレビに供給可能な量子ドット素材を生産する計画。

Dowは2012年3月、韓国の京畿道器興区にディスプレイ・テクノロジーおよび半導体関連の技術向上に注力したグローバル研究開発センター Dow Seoul Technology Center を開設している。

京畿道器興区は、ダウの顧客である半導体企業やディスプレイ企業も数多く所在し、戦略上重要な地区となっている。

Centerでは主にリソグラフィ、有機EL、ディスプレイ材料、半導体パッケージングなどの用途で、先端技術の研究開発に取り組 む。

なお、Nanocoは2014年10月、一般照明でのナノコ量子ドット利用に関連して、ドイツのOsramとの共同開発契約を締結した。


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日本メーカーは量子ドット以外の技術に注力しているとされる。

ソニーはTRILUMINOUS Displayで量子ドット技術を採用していたが、「コスト的に高く付く量子ドット光学シートをあえて使わなくても、同等の広色域は新世代のLEDバックライトシステムで実現出来る」としている。

  http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/dg/20150109_683147.html

 

 

 


Solvay は1月5日、Chevron Phillips Chemical CompanyからのPPS事業買収を完了した。

2014年9月4日に買収契約を締結したもので、Chevron Phillips のRyton® polyphenylene sulfide (PPS) 事業を220百万ドルで買収した。

取引の一部として、Solvay は下記のプラントを手に入れる。

テキサス州 Borger のRyton® PPS resin 生産プラント(2系列、合計2万トン)
オクラホマ州 Bartlesville のパイロットプラントと研究所
ベルギー Kallo-Beveren のコンパウンド工場

なお、テキサス州La Porte のコンパウンド工場は売却対象外だが、需要家のスムースな引継ぎのため、一定期間受託製造を行う。

PPSは、1967年にPhillips Petroleum のEdmondsとHillがパラジクロルベンゼンと硫化ソーダから合成する方法を発明、1972年Phillips Petroleum が商標名"Ryton®"で最初に工業化した。

2000年7月にChevronとPhillips Chemical のオレフィン、ポリマー、芳香族部門を統合し(PPSを含む)、Chevron Phillips Chemical が設立された。

Chevron Phillips Chemical では、PPSの発明者としてこの事業に誇りを持つが、Chevron Phillips がPPS事業を単一事業として行うより、エンプラ事業を幅広く行う Solvay が行う方が、戦略的に適しているとしている。

Solvay Specialty Polymers は高機能性プラスチック の分野における世界的リーダーで、世界中のどのポリマーメーカーよりも高性能で豊富な製品群を提供していると自称している。

今回買収するPPSは、コスト、機械的強度、耐薬品性、熱安定性の組み合わせがユニークで、Solvay の既存の製品群を補完する。


 

不思議なことだが、Solvay は以前にPPSコンパウンドを扱っていたが、2011年9月30日にDICにPPSコンパウンド事業を譲受している。

2011/10/14 DIC、PPS事業を増強

今回、Chevron Phillipsから米国のPPS resin 生産プラントとベルギーのコンパウンドプラントを買収する。(米国では当面コンパウンドを生産委託)

2013年のChevron PhillipsのPPSの売上高は1億ユーロで、欧州の販売が46%、北米が22%、アジアその他が32%となっている。


世界のPPSの需要は64千トンで、自動車向けが30%を占める。

ーーー

日本では、大日本インキ化学(現 DIC)がPhillips Petroleumからベース樹脂を輸入し、ガラス繊維補強材や充填剤を混練し成形用コンパウンドとして市場開発を進めた。
1984年11月のPhillips Petroleum の基本特許の失効後、大日本インキを含む数社が相次いでPPS国産化プラントを稼働させた。

現在の世界のPPSの能力は下記の通りで、ほとんどが日本勢だが、中国のLumena Resources(旭光資源)が最大メーカーである2014年に25千トンの増設を行った。

  立地 現状 (トン)  
Chevron Phillips Chemical Borger, Texas

20,000

2009年に倍増した。
DIC EP 鹿島工場 19,000  
千葉工場
東レ
   東レ尖端素材
東海工場 19,000  
韓国・セマングム産業団地 (8,600) 2016/4稼動
クレハ
   Fortron Industries LLC
錦工場 10,000 コンパウンドはポリプラスチックが担当
Wilmington, N.C 15,000 (JV of Ticona and Kureha )
東ソー 四日市工場    2,700 当初 東ソー・サスティール
  (東ソー70%、保土ヶ谷化学30%)
1992/6 東ソー100%、1996吸収合併
出光ライオンコンポジット
(出光興産 50%、ライオン50%)
千葉工場 10,000 2013/10/1 出光興産から移管 
INITZ(帝人/SK Chemical) 韓国・蔚山 (12,000) 2015年稼動
Lumena Resources(旭光資源) 四川省成都 6,000 2010年SINO Polymerを買収
(当初、華東理工大學華昌聚合物有限公司
2014年 25千トン増設
四川省徳陽 49,000


2011/10/14 DIC、PPS事業を増強

2013/10/9    帝人、韓国SK Chemical とPPS樹脂JV設立、東レも韓国でPPS樹脂生産


中国の芒硝石メーカーのLumena Resources(旭光資源)が2010年に買収したSINO Polymer は1981年に華東理工大學Huachang Polymer華昌聚合物)の名で設立した企業で、PPSレジンからPPSコンパウンド、PPS繊維までを扱う世界最大のPPSメーカー。

能力はレジンが30千トン、コンパウンドが30千トン、PPS繊維が5千トンであったが、2014年にレジン25千トンの増設が完了し、6月に試運転を開始した。
レジンは、射出成形グレード、コーティンググレード、繊維グレードを持ち、各種のコンパウンドを扱う。

SINO Polymer は2012年にPolysulfone (PSU) の生産を開始した。




 

三菱樹脂と三菱レイヨンは1月7日、炭素繊維・複合材料事業の強化を目的とし、三菱樹脂のピッチ系炭素繊維事業と三菱レイヨンのPAN 系炭素繊維事業を統合すると発表した。

PAN 系炭素繊維事業を行う三菱レイヨンが、三菱樹脂のピッチ系炭素繊維事業を会社分割の方法で継承し、2015年4月1日付で統合新組織を発足させる。

三菱ケミカルグループはPAN 系炭素繊維と石炭ピッチ系炭素繊維の両方の技術を持つ世界で唯一の炭素繊維メーカー。

両社は2012年9月に炭素繊維コンポジットプロジェクトを発足させ、共同マーケティングや技術交流などを通じてグループシナジーを追求してきたが、今後、ピッチ系炭素繊維事業に由来する知見をPAN 系炭素繊維の領域に応用し、戦略重点分野である自動車、圧力容器、風力発電翼など産業用途における顧客へのソリューション提案力を強化する。

また、すでにグローバルに展開中のPAN 系炭素繊維・複合材料事業の製造・販売・開発に係る事業インフラを活用し、ピッチ系炭素繊維事業の価値を最大化していく。

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三菱レイヨンのPAN 系炭素繊維事業


炭素繊維トウ

炭素繊維を数千~数万の単位で束ねたもの。クロスに織ったり、一方向に揃えて樹脂を含浸させたり、さまざまな使い方をする。

中間材料(クロス、プリプレグ)

炭素繊維を織ったクロス、炭素繊維を一方向に引き揃えて樹脂を含浸させたUDプリプレグなど、様々な形態の材料を提供している。
釣竿、ラケットなどスポーツ・レジャー用品から、各種工業機器、X線関連の医療機器、土木建築、航空宇宙分野まで、幅広い用途に使用される。

成型加工品

印刷機用ロールなどの一般産業用品、航空機部品製造用ツール材、自動車部品等、成形加工品の製造も行っている。


 
炭素繊維の製造能力は下記の通り。
(トン)

   

能力

   
三菱レイヨン 豊橋 5,400    
大竹 2,700 2011/6稼動  
小計 8,100    
Mitsubishi Rayon Carbon Fiber and Composites Sacramento, CA 2,000 2016年増強
増強後 4,000
1991年 Courtauldsから買収
Grafil, Inc.
に改称
2013年 三レ100%のNewport Adhesives and Compositesと統合し、改称
SGLに生産委託 スコットランド 750    
三菱レイヨン合計 10,850 米増強後 12,850  
SGL Automotive Carbon Fibers 3,000 2015年増強後 9,000 BMWが49%、SGL Technologiesが51%出資


SGL Automotive Carbon Fibersにプレカーサーを供給するMRC-SGL Precursor は、三菱レイヨンが66.66%、SGLが33.34%出資。

2014/5/14     BMW、米で炭素繊維の生産能力を3倍に


三菱樹脂のピッチ系炭素繊維事業

三菱樹脂はピッチ系のなかでも、コールタールを液晶化(メソフェーズ化)し、紡糸・不融化後、高温焼成して製造する、光学的に異方性を示すメソフェーズピッチ系と呼ばれる炭素繊維「ダイアリード®」を製造しており、現在、世界約7割のシェアを誇って いる。(坂出で製造、能力は1,000トン/年)

軽量・高剛性・高熱伝導・ゼロ熱膨張(熱変形がほとんどない)などの特性を活かし、人工衛星、ブレーキ材、工業用ロール、ロボットハンド、大型アンテナ、鉄橋の補強プレートなどさまざまな分野で活躍してい る。

ダイアリード®は、三菱化学の永年にわたる石炭化学の成果。

2000年4月1日に、三菱化学の機能資材カンパニー所管事業の内、アルミ・樹脂複合板、石炭ピッチ系炭素繊維、耐震補強炭素繊維シート、アルミナ繊維、透湿性フィルム、耐熱ラップフィルム事業を三菱化学産資に移管し、同社に統合 した。

三菱ケミカルホールディングスは三菱樹脂をTOBを行って100%取得し、2008年4月1日付けで三菱化学ポリエステルフィルム、三菱化学産資、三菱化学MKV及び三菱化学の機能材料分野の事業も含めて、 三菱樹脂に再編・統合した。

 

三菱グループは2012年9月、炭素繊維コンポジットプロジェクトを発足した。
グループの有する材料・成形加工技術を融合するとともに、これまで築いてきたマーケットチャネルを活かし、用途展開を積極的に進めてきた。

PAN系とピッチ系の特性を生かしたゴルシャフトも発売した。
手元部のフープ層には、三菱樹脂のピッチ系炭素繊維「ダイアリード®」を用いてつぶれ変形を防ぎ、切り返しのパワーを損なうことなくダウンスイングに移行することができる。
シャフト先端部には三菱レイヨンが開発した速硬化/高靭性プリプレグシート「タフキュア」を採用、当たり負けしない振りぬき感と、心地よいインパクトフィーリングを実現した。

Aldila, Inc.TK Industries㈱チャレンヂを経営統合し、炭素繊維と、それを基材とした中間材から加工品に至るまでの一貫したプロダクトチェーンをさらに強化し、将来の成長分野である自動車、圧力容器、風力発電など、大型産業用途における事業拡大に向け、競争優位なバリューチェーンを構築することとした。

・Aldila, Inc. (米):2012/12 買収、プリプレグ、炭素繊維製ゴルフシャフト、アーチェリー製品の製造販売
・TK Industries GmbH(独):2012/10 買収炭素繊維製多軸ファブリック開発製造
・㈱チャレンジ(
狭山市):2012/11 買収、炭素繊維強化樹脂(CFRP)部品の製造販売


今回
、これを更に進め、統合することとした。
 

 



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