「no」と一致するもの

 

世界の四大ウラン濃縮企業の1社の米国のUSEC Inc.は3月5日連邦破産法11条(Chapter 11) の適用を裁判所に申請した。

USECは米国を中心とした原子力発電用濃縮ウランの供給等を行っており、新技術を採用した新型遠心分離機(American Centrifuge Plant)の開発を進めている。

この資金需要に対応するため、同社は2010年5月に、東芝及び米国の原子力発電所向け大型機器メーカーのBabcock & Wilcoxとの間で、2社が各1億ドルを出資して優先株を得る契約を締結、両社は2010年9月に第1回分として各3750万ドルを出資している。

その後の 東京電力福島第一原発の事故のあと、日本やドイツで多くの原発が運転を停止したことなどから燃料の濃縮ウランが供給過剰となって価格が3割以上下落したことなどが影響し、 同社は経営に行き詰まった。

このため、USECでは先ず、債権の60%を占める債権者との間で2013年12月に、2014年10月満期の転換社債を新たな債権と資本金に交換することで合意に達し、優先株を持つ東芝とBabcock & Wilcoxと同様の処理を行う交渉を行ってきた。

今回、リストラ案がまとまったことから、Chapter11を申請し、裁判所の許可を得てリストラを実行する。
同社では
3ヶ月~4ヶ月で処理が完了し、Chapter 11 から離脱できるとみている。

子会社のUnited States Enrichment Corporation がDIP(Debtor In Possession:占有継続債務者)ファイナンスを行うため、外部からの支援は必要としない。

Chapter 11 申請で、日常業務や新型遠心分離機開発に影響を受けない。

リストラの概要は以下の通りで、減資増資を行い、既存株主には新株式を5%与え、債権者には旧債権の放棄の代わりに新債権と残り株式を与える。

転換社債は2014年10月に満期となるもので、交換する新債権は期間5年だが、条件付で更に5年延長できる。

  債権(百万ドル) 資本金
既存債権の放棄 新債権 減資 増資割当
債権者(債権の60%) 転換社債  530.0 200.00   79%
Toshiba 優先株  37.5 20.19   8%
Babcock & Wilcox 優先株  37.5 20.19   8%
既存株主       -100% 5%
total   605.0 240.38 -100% 100%

ーーー

USEC Inc.は世界の四大ウラン濃縮企業の1社。2011年のシェアは以下の通り。

USEC:
エネルギー省が所管していたウラン濃縮事業が1993年7月に公社化され、合衆国濃縮公社(US Enrichment Corporation:USEC)が発足した。
1994年7月に米国政府が民営化を承認し、1998年7月28日までに株式を公開し完全に民営化されたUSEC Inc.が発足した。
ケンタッキー州Paducahにガス拡散法プラントを持つ。

URENCO:
英国、オランダ、ドイツが1/3ずつ出資する国際共同企業体で、英国とオランダは政府、ドイツはRWEとE.ON が出資する。
英国の
Capenhurst、オランダのAlmelo、ドイツのGronauで遠心分離法による濃縮工場の操業を行っている。

ROSATOM:
ロシア政府の原子力関連企業で、Novouralsk、Zelenogorsk、Seversk、Angarskに工場を持つ。

EURODIF:
フランス、イタリア、スペイン、ベルギー、およびイランの合弁会社で、フランスのArevaが約60%を出資する。

各社の詳細は:http://www.jaea.go.jp/03/senryaku/topics/t13-1.pdf

ーーー

原子力産業の民営化政策に沿って原子力国営企業の民営化を進めてきた英国政府は2013年4月22日、保有するウラン濃縮会社 URENCOの持ち株(1/3)の全て、または一部を売却する方針を明らかにした。

ドイツ側の株主E.ONとRWEも、ドイツの原子力発電所の停止対策と再生可能エネルギーや天然ガス火力発電などの代替エネルギーへの投資のための資金確保のためにURENCOの株の売却の検討を始めている。

英国政府とドイツ政府がURENCO株の売却を望んでいるのに対し、オランダ政府は現状維持を望んでいると伝えられている。

英国政府は、英国の安全保障や核技術の不拡散が担保され、かつ売却額が妥当と判断された場合にのみ売却する方針。

URENCO創設時の取り決めにより、株式取得者は3カ国の承認を得る必要がある。

フランスの原子力関連企業Areva、カナダのウラン鉱会社Cameco Corp や東芝などが株式取得を目指しているとされている。

核拡散につながる機微情報管理の問題を抱えており、売却先企業については多くの制約と関係国間の新たな条約が必要となるため、今後、紆余曲折が予想される。

 


"讃岐のこんぴら酒"で有名な琴平の西野金陵は3月5日、三菱化学のゼオライト膜を使った三菱化学エンジニアリングの脱水装置を使用し、同社の純米大吟醸「大瀬戸の花嫁」の旨みとアルコール成分を濃縮して製造した新ジャンルの酒「琥珀露」を4月1日に発売すると発表した。

三菱化学は新しい分離精製技術としてゼオライト膜に関する知見を多く保有しており、2010年から三菱化学エンジニアリングと共同でエタノールやイソプロパノールの脱水用途に展開しているが、西野金陵がこの技術を日本酒に応用した。

  純米大吟醸
 「大瀬戸の花嫁」
琥珀露」
アルコール度数 14度以上15度未満 30度以上31度未満


アルコール分のほか、
有機酸、アミノ酸、芳香成分、糖類などの成分濃度が高くなる。

酒税法における品目 清酒
(アルコール分22度未満)
雑酒②
(いかなる分類にも属さないもの)

 ちなみに、清酒の酒税はアルコール度数に関係なく、1kl当たり12万円。
 雑酒は21度未満は22万円で、1度ごとに11,000円加算(30度なら33万円)


エタノールの脱水の仕組みは以下の通り。

ゼオライト膜の応用例としては、他に、食品の旨み成分濃縮や、天然ガスからの二酸化炭素の分離などがある。


三菱化学エンジニアリングは三菱化学のMSM-1膜を使用し、有機溶剤中の水分を選択的に除去する有機溶剤脱水回収システムを販売している。

ゼオライト浸透気化膜を使用し、従来のゼオライト膜で対応不可能だった酸性有機溶剤や、含水率の高い有機溶剤も安定的に処理することができるようになった。また、同社が開発したイオン交換器や蒸発缶を付加することにより、金属イオンなど水以外の不純物を除去することも可能。

 

 



アイスランドの国家エネルギー機関(Orkustofnun)は1月22日、中国海洋石油(CNOOC)に対し、北極圏での石油開発の認可を与えた。同社が最近発表した。

アイスランドは同国の東北の北極圏にある Jan Mayen海嶺の一部 Dreki Area の権益を持つ。(残り地域はノルウェー )

「北極圏」は北緯66度33分以北の地域

今回、Dreki Area での3番目の認可で、権益者は以下の通り。

CNOOC 60%
アイスランドのEykon Energy 15%
アイスランド国営石油 Petoro Iceland 25%

Petoro Icelandは全ての鉱区で25%の権益を取得することとなっている。


アイスランドは2013年1月に2つのライセンスを与えている。

下図 赤色地区 Faroe Petroleum(Norway)  
Iceland Petroleum   
Petoro
 Iceland
67.5%
7.5%
25.0%
 
下図 青色地区 Valiant Petroleum  
Icelandic Kolvetni
Petoro
 Iceland
 56.25%
 18.75%
25.0%
2013年にカナダの Ithaca Energyが買収

 

それぞれの区域は下記の通り。

中国企業にとって、最初の北極圏での採掘となる。

中国は2013年に280百万トンの原油を輸入している。国内生産は208百万トンにとどまっており、輸入比率は58.1%に達する。

中国の石油会社はグローバルに展開しているが、北極海域の油田開発についてもチャンスを窺っており、ロシアのRosneftの社長が2013年上半期に中国を訪問、CNOOCその他の石油会社とロシア北極海域に眠る油田開発について 議論したと報道されている。

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中国とアイスランドは2013年4月15日、自由貿易協定(FTA)を締結した。
中国にとって欧州の国との最初のFTAとなる。

中国は、地熱探査やグリーンエネルギーなどの分野での協力強化、氷河や火山、地震などの共同研究と技術協力、海洋と極地共同研究センターの構築に力を入れていきたいとしている。

中国にとっては、北極圏進出の象徴としての意味合いもあると報じられている。

また、SinopecはアイスランドのOka Energy Holdings と提携し、地熱開発に取り組んでいる。

アイスランドにとっては、水産物などの中国向け輸出は約6100万ドルとなっており、FTAにより更に恩恵を受けるとみられている。

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北極圏開発のルールづくりを各国が話し合う北極評議会は2013年5月、中国と日本、韓国、インド、イタリア、シンガポールの6カ国を評議会の「オブザーバー」に加えることを決めた。


北極評議会の構成は下記の通り。

 




 

中国の浙江恒逸産業は2月25日、ブルネイのPulau Muara Besarでの石油精製・芳香族プロジェクトのため、ブルネイ政府の Strategic Development Capital Fundの子会社Damai Holdings とJVを設立したと発表した。

JVは恒逸実業(文莱)有限公司:Hengyi Industries (Brunei)で、浙江恒逸石化の香港子会社が70%、Damai Holdingsが30%を出資する。

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ブルネイ湾に位置するPulau Muara Besarでは、ブルネイ経済開発委員会が総合開発事業を行っている。
 
 

島を経済水域、生活文化と観光事業区域、地域共同体の3つの主要な区域に発展させる。


初期段階では、①島発展のための浚渫及び開拓並びに新しい東回り水路、②道路、本土への連絡橋のような基本的インフラ、③コンテナーターミナルのための660メートルの埠頭を建設し、産業施設としては、コンテナーターミナル、製油所、船舶用品基地を建設する。

ブルネイ政府は、1990年代から本格的な製油所建設を検討してきたが、いろいろの計画が頓挫した。

2011年7月になり、中国の浙江恒逸石化 の製油所プロジェクトを、サルタンが承認した。
2013 年3月には、中国の国家発展・改革委員会(NDRC)が、浙江恒逸の石油精製・石油化学プラント建設プロジェクトを認可した。

全体計画は、2期に分け、1期では製油所および合繊原料を生産する芳香族プラント、2期でエチレンコンプレックスを建設する。

承認されているのは、第1期の石油精製・芳香族プロジェクトで、年間800万トンの原油を処理してガソリン、ジェット燃料、軽油などを生産する精製ユニットとベンゼン(50万トン)やパラキシレン (150万トン)を生産するプラントから構成される。

ほかに原油や石油製品埠頭、発電プラント、海水淡水化プラントなどを建設する。

概要は以下の通り。

原油およびコンデンセートは、ブルネイ、カタール、そのほかの原油をそれぞれ3分の1ずつ処理する方針で、2011年11月の温家宝首相のブルネイ訪問を機に、Brunei Shellとの間で15年間にわたり年間275万トンの原油を供給するという協定に調印している。

生産した石油製品のかなりの部分は中国に輸出される可能性が高い。

浙江恒逸は高純度テレフタル酸(PTA)からポリエステル繊維まで一貫生産しており、本プロジェクトによってPTA およびカプロラクタムの原料が確保する。

資料:JPEC レポート ブルネイの石油・ガス産業

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Brunei では三菱ガス化学と伊藤忠がBrunei石油と共同で2010年4月からメタノールの生産を行っている。

合弁会 Brunei Methanol Company
出資比率 三菱ガス化学      50%
伊藤忠            25%
PB Petrochemical  25% (PetroleumBRUNEIの関連会社)
生産能力 年産 850,000トン
立地 スンガイ・リアング工業地区


2007/4/23 三菱ガス化学、ブルネイのメタノール事業決定

 



 




Bayerは2月27日、雲南省昆明市の市販薬 (OTC)と漢方薬(herbal traditional Chinese medicine:TCM) のメーカーの滇虹集団(Dihon Pharmaceutical Group)を買収すると発表した。

買収額等は明らかにしていない。今後、詳細を詰め、独禁法等の手続きを終えて、2014年下期に買収完了の予定。

滇虹集団は、1997年に米国の Great Eastern Enterprises Inc.と雲南滇虹集団のJVとして設立された。
マジョリティを持つ
雲南滇虹集団は1993年に雲南滇虹天然藥物として設立され

1993年に一つの製品で出発した小さな製薬メーカーが、従業員2400名の大企業となり、皮膚炎、にきび、口内炎、骨過成長、子宮内膜症の5分野で市販薬と漢方薬を製造販売している。

代表的な製品は、OTCではふけ用等の"康王"Kang Wang®、抗菌クリームの"皮康王"Pi Kang Wang®)等と、漢方薬では女性疾患治療の"丹莪婦康煎膏"(Dan E Fu Kang®)など。

2013年の売上高は123百万ユーロで、中国国内のほか、ナイジェリア、ベトナム、ミャンマー、カンボジア等でも販売している。

Bayerでは、グローバルに戦略的買収を行ってLife Sciences事業を強化しようとしており、実績のある市販薬メーカーの取得により、中国のOTC事業で多国籍企業のなかで主導的ポジションを得ることになるとし、更に、中国のOTC部門で半分を占める漢方薬に参入できることも重要であるとしている。


Bayer は2013年5月にドイツのハーブ薬メーカーSteigerwald Arzneimittelwerk を買収する契約を締結した。
同社の製品には、機能性胃腸疾患治療用のIberogast®や、軽度~中軽度のうつ病用の Laif®がある。


Bayerはこの時も今回も、消費者により幅広いself-care options を与えられるものとしている。

 



アルゼンチン政府は2012年4月16日にスペインの石油会社 Repsol-YPF のアルゼンチン子会社 YPF を国有化する方針を示し、アルゼンチン下院は5月3日、国有化法案を可決した。

YPFはもともとアルゼンチンの国有石油会社だったが、1999 年の民営化に伴う政府放出株式をRepsol が購入した。
アルゼンチン政府は0.2%の"golden-share"を持ち、買収拒否権などの重要事項についての権利を持つ。

Repsol はYPF の買収後、2008年にアルゼンチンの億万長者Eskenazi 一族に15%を売却、2011年には更に10%をEskenazi に売却した。

アルゼンチン政府はRepsolの持ち株57.4%のうち、51%分を接収した。
時価による買収ではなく、資産没収で、補償額は国家評価裁判所(National Appraisal Tribunal)が決定するとするだけで詳細は明らかにされなかった。

Repsolは2012年5月にニューヨークの裁判所に105億米ドルの損害賠償を求めて民事訴訟を起こし、2012年12月3日にアルゼンチン政府を相手取り、世界銀行傘下の投資紛争解決国際センターに仲裁を提訴した。

2012/4/19  アルゼンチン大統領、スペイン石油大手傘下を国有化へ、スペインは反発

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Repsolは2014年2月25日、アルゼンチン政府との間の合意書を取締役会が承認したと発表した。
Repsolの株主総会による承認と、アルゼンチン議会の承認を得て発効する。

合意書は、YPF の51%持分の接収の補償として50億米ドルを支払うとしている。

支払いは米ドル建てのアルゼンチン政府の長期債で行われるが、アルゼンチン政府債は2002年のデフォルト以降、大幅な割引率で取引されているため、複雑な仕組みとなった。

1)基本パッケージ 額面合計50億米ドル

Bonar X債 5.0億米ドル 年利7%、2017年償還
Discount 33債 12.5億米ドル 年利8.28%、2033年償還
Bonar 2024債 32.5億米ドル 年利 8.75%、2024年償還
合計 50.0億米ドル  

2)補完パッケージ 額面合計10億米ドル

Boden 2015 4.0億米ドル 2015年償還
Bonar X債 3.0億米ドル 年利7%、2017年償還
Bonar 2024債 3.0億米ドル 年利 8.75%、2024年償還
合計 10.0億米ドル  


政府債の市価が下がった場合、補完パッケージの政府債で調整する。

Repsolは満期まで保持しても、売却してもよいが、利息とコストを除いて50億米ドルを超えた分は政府に返却する。

この債券がデフォルト(債務不履行)に陥ってもRepsol が50億ドルを受け取るまではこの債務は返済されたことにならない。

もし政府債が支払われない等の場合、Repsolは未払い分を国連国際商取引法委員会を通して期限前支払いを求める権利を有する。

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アルゼンチンはYPFの持つVaca Muerta油田の開発に外資を必要とするが、Repsol からの訴訟を恐れ、外資は参入をためらっていた。

今回の解決には、両国の政治家のほか、メキシコ政府も関与した。
メキシコ国営石油のPemexはRepsol の第3位(9.4%)の株主であり、メキシコはアルゼンチンと密接な関係を持つ。PemexはVaca Muerta油田の開発参入に関心を示している。

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なお、RepsolからYPFの株を2回にわたり買収(15%+10%)したアルゼンチンの億万長者Eskenazi 一族のPetersen Groupは、2回目の買収資金の借入金でデフォルトを起こし、グループの持ち株は金融機関等が担保として取り上げた。

債権者の一社であるRepsolはこれにより、接収後の持ち株 6.4%を12%に増やした。

Repsol では、YPFの持ち株売却やスペインのGas Natural Fenosaの持ち株(30%)の売却を行い、それらの資金と今回の補償金で北米で石油資産を購入し、YPFで失った分を補填する構想を持っている。


 



中国商務部は2月19日、公告第9号を出し、EU原産のX線セキュリティチェック機の反ダンピング措置を同日付で終了すると発表した。

WTOの決定を受け、再調査していたが、当初の申請者が申請取り消しを申し出たため、国務院関税委員会が2月19日付けでのダンピング課税の終了を決めた。

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中国は2009年10月にEU原産のX線セキュリティチェック機の反ダンピング調査を開始、2010年6月にクロの仮決定を行い、2011年1月にクロの最終決定を行った。

反ダンピング関税はドイツのSmiths Heimannが33.5%、その他が71.8%で、実質的に欧州のX線セキュリティチェック機を中国市場から締め出した。

これに対し、EUは2011年7月に本件について世界貿易機構(WTO)に提訴を行った。

中国の決定は実質的にも手続き的にも正当性がない。
損害的ダンピング(injurious dumping)ではなく、2010年6月にEUが中国製の
貨物スキャナーについて反ダンピング課税を行ったことに対する報復である。

2013年2月、WTO紛争処理小委員会は、本件がWTO反ダンピング規定に違反するとの判断を下した。

反ダンピング関税は「損害的ダンピング」への対処として厳格な条件の下でのみ課すことができるが、今回の事案において、中国はこれらの条件を満たしていないとのEUの訴えに同意、また、中国が適正な手続きと透明性の規定要件を尊重することを怠ったとの結論を下し、同国にWTO規定に則るよう要請した。

本件では以下のような問題点が明らかになった。

 ・X線セキュリティチェック機の価格について

X線セキュリティチェック機には貨車やトラックを丸ごとチェックする"high-energy" スキャナーと空港での荷物チェックの "low-energy" スキャナーがあり、EU製は後者の安い "low-energy" である。
中国はこれを、"high-energy"も含めた中国での全体の加重平均価格との比較でダンピングと認定した。

 ・被害の検証について

国内産業の状況等の関連状況を勘案していない。客観性を欠き、必ずしも理屈が通っておらず適正でない。
 'price effects analysis'に欠陥があり、被害と輸入品との関係が不明確。
中国メーカーの積極的な拡大政策や価格戦略、品質、技術等々を客観的にみていない。

 ・適正な手続きと透明性の規定要件に欠ける。

WTOの判断を受け、中国商務部は2014年1月10日、公告2014年第1号で本件について再調査を行うと発表したが、今回の決定となった。

ーーー

中国がダンピングと認定し、反ダンピング課税を開始した後で取り止めたのは、これが2例目。

商務部は2005年9月に、米国・韓国・タイ・台湾原産の無漂白クラフト紙をダンピングと認定し、課税を開始した。

米国政府は被害の認定や調査手続きを問題視し、強く反発、WTOの協議を要請すると中国に伝えた。

米国企業が中国の行政再審法(1999/10/1発効)に基づき再審を要請したところ、商務部は再審の結果、この決定がアンチダンピング法に合致しないとして、2006年1月9日付けでこの決定を取り消し、同日付でダンピング課税を終了した。




東レは2月19日、サウジのAbunayyan Holdingとの間でサウジアラビアのダンマン市に水処理・排水処理技術の合弁会社を設立する契約に調印した。

調印式には来日中のサウジのサルマン・ビン・アブドルアジーズ皇太子と安倍晋三首相が立ち会った。

安倍首相は同日、公賓として来日中の皇太子と首脳会談を行ったあと、下記の調印に立ち会った。

1)サウジアラビア総合投資院と中東協力センター間での投資促進協力に関する覚書
2)本件
3)日本・サウジアラビア・ビジネスカウンシルの共同声明への署名

合弁会社は以下の通り。

社名 Toray Membrane Middle East LLC
出資 Toray Membrane Europe AG(スイス)50%
Abunayyan  50%
事業 水処理膜の製造・販売および技術サービス
総投資額 300百万サウジリアル(80百万米ドル)

サウジアラビアのダンマン第3工業区内に世界規模の逆浸透(RO)膜エレメント生産工場を新たに建設し、2015年から東レの生産技術と世界品質管理基準を適用した生産を開始する。

海水からの飲料水製造は従来、蒸発法が主流であったが、現在は省エネルギーとライフサイクルコストで利点のある逆浸透法の採用が増加している。
東レはナノテクノロジーをベースとした高分子分離膜技術などの深化により、海水淡水化に最適な逆浸透(RO)膜を開発、現在では世界市場の 30%のシェアを獲得している。

Abunayyan は、水・電力・エネルギー分野における統合的なソリューションを提供する総合企業。
東レとAbunayyan は、急速に成長する巨大な中東および北アフリカ全域(Middle East and North Africa, MENA)市場の需要に対応し、水処理膜分野でリーディングカンパニーとしての強固な地位を確立する。

これにより東レグループのRO膜エレメントは世界4工場体制となる。

日本 愛媛 東レ  
米国 カリフォルニア Toray Membrane USA 東レ 51%、三井物産 6%、 Ionics, Inc. 43%
 Ionicsは世界最大級の水処理プラントメーカー
  同社からR
Oエレメント生産設備を買い取り、東レ技術で改造・増設 
中国 北京 藍星東麗膜科技(北京) 東レ 40.1%、東麗(中国)投資 10%中国藍星(集団) 49.9%
サウジ ダンマン    


ーーー

サウジでは既に東洋紡が海水淡水化用RO膜エレメントの製造・販売を行っている。

 社名  :Arabian Japanese Membrane Company, LLC
 出資者Arabian Company for Water & Power Development 49%
       東洋紡 36.1%
       伊藤忠 14.9%

 
場所  :ラービグ
 設立  :2010/3
 竣工  :2012/5

東洋紡の海水淡水化逆浸透膜は、独自の技術と20年を超える実績により、中東で最大級のサウジアラビア・シュケイク地区(日量24万立方メートル)やラービグ地区(日量22万立方メートル)の海水淡水化施設に採用されており、中東湾岸諸国では50%以上のシェアを誇っている。

2012年にはサウジアラビアのラスアルカイル地区に建設される世界最大級の大型海水淡水化設備「Ras Al Khairプラント」(日量約100万立方メートル)に採用が決定した。
日量約100万立方メートルのうち、34.5万立方メートル分を逆浸透膜法、残りを蒸発法により生産するが、逆浸透膜法設備に納入する。
2014年に運転開始の予定。



ブリヂストンは2月18日、2013年12月期の決算を発表した。

この決算には
特異な点がいくつもある。円安と原料価格安で営業利益が大きく増加したこと、多額の特別損失を計上したことである。

売上高は3兆5681億円(前年比 5284億円増)、営業利益は4381億円(前年比 1521億円増)、当期利益は2021億円(前年比 304億円増)となり、2005年以来8年ぶりに最高益を更新した。25円の増配とする。

                               単位:億円、配当は円
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益

配当

中間 期末
2010/12 28,616 1,665 479 989 10 10
2011/12 30,244 1,913 1,793 1,030 10 12
2012/12 30,397 2,860 2,850 1,716 16 16
2013/12 35,681 4,381 4,348 2,021 27 30
前期比 5,284 1,521 1,498 304 11 14
2014/12予 38,000 4,600 4,420 2,850 40 40

 

この決算には、特異な点がいくつもある。

1) 円安

同社は円安効果をフルに受けている。

売上高は前年比 5283億円の増となったが、このうち為替変動によるものが 5290億円ある。
すなわち、売り上げ増は全て円安によるものである。

営業損益も、前年比で1521億円増となったが、このうち円安によるものが1140億円ある。
為替変動以外の売上高の影響(売価、数量、売上ミックス)は逆に 629億円のマイナスである。

  営業損益 前年比

前年比 増減内訳

為替変動 原材料 売値・数量・
売上Mix
戦略商品 その他
2010 1,665 907 -270 -1,310 2,527 300 -340
2011 1,913 248 -370 -2,550 3,138 210 -180
2012 2,860 947 -120 920 226 -50 -29
2013 4,381 1,521 1,140 1,000 -629 150 -140
2014予 4,600 219 210 -230 488 290 -539

2)原材料

日本の石油化学会社の場合、円安によりナフサ等の価格が上昇し、コストアップとなっている。

それに対し、同社の場合、上の表の通り、原材料価格差で前年比1000億円もの差益となっている。
報道では、このうち天然ゴム価格の下落で500億円の益とされる。

天然ゴム市況は下記の通りで、2010年、2011年の差損も理解できる。

天然ゴム以外でも500億円程度の原料価格差益がある。

2013年では、ブタジエン市況の下落に伴い、合成ゴムの海外市況が下落している。

3)特別損失

営業損益、経常損益が大きく増加しているのに対し、当期損益の増益幅は小さい。

これは特別損失によるものである。

特別損失                (億円)
  2012 2013
減損損失 140 113
米国独禁法関連損失   448
リコール関連損失   225
国内生産体制再編費用   87
欧州生産体制再編費用   50
その他 101 74
合計 241 997

 1)米国独禁法関連損失:448億円

米国で日本企業を中心とした自動車部品のカルテルの摘発が続いている。
司法省は2014年2月13日、
ブリヂストンが自動車の防振ゴム部品の価格カルテルで有罪を認め、罰金425百万ドルの支払いに同意したと発表した。

同社は米国でマリーンホースカルテル事件で有罪となったが、その際に本件について開示しなかったため、高額の罰金となった。

これで自動車部品カルテルでの摘発は26社と29名となった。 詳細は https://www.knak.jp/blog/2013-10-1.htm#cartel

ブリヂストンは以下の通り発表した。

マリンホースに関する2007年5月のカルテル捜査及び(ラテンアメリカその他での)外国公務員に対する不適切な支払の可能性についての自主公表を受けて、種々の施策により再発防止策を実行してきた。

今回のカルテル行為は、これらのガバナンス・コンプライアン体制の強化・改革をきっかけに2008年に終了した。
しかしながら、2008年時点で本件を見つけ出すことができなかった。

同社は本件の影響を勘案し、社内取締役全員及び関連執行役員が本年3月に支給される予定の賞与全額を辞退し、更に代表取締役は月次報酬の50%を6か月、関連執行役員は月次報酬の25%を6か月の自主返上を行う。

 2)リコール関連損失:225億円

栃木工場と普利司通(瀋陽)輪胎で製造した中・大型トラック及びバス用タイヤの一部でリコールを実施

 3)生産体制再編費用:137億円

日本:黒磯工場の閉鎖

欧州:Bridgestone Italia のバリ工場における競争力向上計画

 

 

 

2014年1月20日、国際石油開発帝石(INPEX)の 子会社ジャパン石油開発上部ザクム油田の権益の契約期間が、15年延長されることになった。
2026年3月9日までの契約が2041年12月31日まで延長されることになった。1日あたりの生産能力は全体で約55万バレルで、INPEXの取り分はその12%分の日量6万バレル以上になる。

他油田の延長については先送りとなった。

 

 期限   

ジャパン石油開発 アブダビ国営石油
  ADNOC
BP TOTAL(仏) ExxonMobil
下部ザクム油田       2018   12%   60%  14.67%  13.33%   ー
ウムシャイフ油田 2018   12%   60%  14.67%  13.33%   ー
ウムアダルク油田 2018   12%   88%   ー   ー   ー
上部ザクム油田 2041   12%   60%   ー   ー   28%
サター油田 2018   40%   60%   ー   ー   ー


アブダビ石油
コスモ石油63%、JX日鉱日石開発31.5%)の権益は2012年が45年間の期限であったが、2011年2月に30年更新(2042年まで)の新利権協定を締結した。

既存のムバラスなど3油田の24千バレルに加え、同程度の生産量が見込めるヘイル油田の権益も取得した。
ヘイル油田は2017~18年の生産開始を目指す。

2009/1/23 アブダビ石油の油田権益 20年延長へ

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これに対し、BP等の陸上油田の権益は2014年1月10日に期限切れで失効した。

陸上油田は1939年以降、外国の石油会社に採掘権を与えられてきた。
1971
年の独立を機に、
Abu Dhabi 国営石油会社(ADNOC)が参加し、Abu Dhabi Company for Onshore Oil Operations (ADCO)を設立した。

当初 ADNOCの出資比率は15%であったが、1974年に60%となった。
他のメンバーは以下の通り。

BP、Shell、Exxon Mobil、Total  各9.5%、計38%
Portugal
のPatex Oil and Gas 2%


ADCO は現在、主に下記の6つの油田で採掘し、日量160万バレルを生産している

Asab、Sahil、Shah、Bab、Buhasa、North-East Bab (Dabbiya、Rumaitha & Shanayel)

期限切れを目前に、各社は期限の延長を求めたが、Abu Dhabi政府は40年間の新しい生産契約の入札を行うこととした。

BP、Shell、Exxon Mobil、Total の4社には入札を求めたが(PortugalのPatex Oil and Gasには求めず)、新しい競合者からの入札も求めた。
そのなかには、Eni、Statoil、Oc
cidental Petroleum のほか、
国際石油開発帝石(INPEX)ロシアのRosneft、韓国のKorea National Oil Corporation、中国のCNPCPetroChina) などが含まれる

条件は非常に厳しく、40年間にわたり、通常の2倍の回収率70%を達成する計画の提出を義務付けている。
各社は 5~10%の権益を与えられる。鉱区は4つに分けられる。

これまでの権益保有者5社は1月10日で権益を失ったが、Patexを除く4社は新しい権益が決まるまでの間、作業を継続し、一定価格で従来の数量の引取りを行う。

現在各社の提案を比較検討中で、3月に結果を発表する予定だが、2015年までかかるとの見方もある。

Abu Dhabiには、石油の重要顧客である日本、中国、韓国との関係を強化しようという考えがある。

Abu Dhabiの最高石油評議会は中国政府と話し合いをしていると報じられている。

2013年初めにCNPCとADNOCは戦略的協力協定を結んだ。

CNPCは未開発地区の評価を技術と経済性の面から研究して、研究結果を ADNOCに提出する。
また、CNPCと ADNOCは、石油・天然ガスの探査開発、技術サービス、事業建設、設備と物資、石油貿易や人員の教育訓練
などの面でも全面的に協力を展開する。

CNPCは西部の7ブロックの評価を行ったが、最高石油評議会はこれに満足しているとされ、CNPCへの権益供与を検討しているとされる。

2013年2月にアブダビ首長国を訪問したの茂木経済産業相は、石油関係の同国高官と会い、2018年に期限切れとなる海上鉱区の権益更新と、陸上鉱区の新規参入をそれぞれ要請した。アブダビ側は「しっかり検討したい」と応じた。

これに対し、欧米勢も巻き返しを図っている。

 

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