「no」と一致するもの

Dow Chemical と Saudi Aramco がJubail Industrial Cityにワールドクラスの統合石化コンプレックスを建設するため設立したSadara Chemical Company は6月17日、世界の輸出信用機構や商業銀行、サウディ公的投資基金との間で総額約105億ドルの協調融資契約を締結したと発表した。

これには2012年9月に
米国の
Ex-Im Bankが承認した過去最大の49億75百万ドルの直接融資を含む。
輸出信用機構としては、他に、フランスのCOFACE、ドイツのEuler Hermes、スペインのFIEM、韓国のK-Exim とK-sure、英国のUK Export Financeが含まれている。

銀行団は三井住友銀行など邦銀勢のほか、英HSBCやドイツ銀行、米大手銀、中東各国の銀行、Export Development Bank Canada、Islamic Development Bank、Saudi Public Investment Fund などで構成される。
 融資期間は2025年6月まで。

利率は当初はLIBOR + 1.25%、建設完了後の最初の5年は+1.55%、その後は +1.85% と報道されている。

Sadaraは本年4月には20億ドルのイスラム債(Sukuk)を発行しており、融資総額は125億ドルとなった。

Sadaraはイスラム債の発行を決めたが、当初発行予定の14億ドルに対し2.6倍の応募が殺到、最終的に20億ドルを発行した。
期間は16年で、6カ月物SAIBOR+95 basis points 相当の金利を支払う。(単なる金利支払とは異なる形態をとる)

総投資額は約200億ドル (現在の予算は193億ドル)で、借入は65%と想定しており、これで資金計画がまとまった。

ーーー

DowとSaudi Aramcoは2011年7月25日、両社の取締役会が、サウジのJubail Industrial Cityにワールドクラスの統合石化コンプレックスを建設するJVの設立を承認したと発表した。

JVの名称は "Sadara Chemical Company"(Forefront Chemical Companyの意味)で、一部を公募し(2014年初めを予定)、残りを両社が均等出資する。(Dowは一部を技術供与などの形で出資する)

両社は2011年10月8日、Sadara ChemicalについてのJoint Venture Shareholders' Agreementに調印、11月28日にJV設立を発表した。

総投資額は200億ドルと見込み、自己資本で35%、輸出信用機関や金融機関からの借入金で65%を賄う。

エタンからのエチレンのほか、ポリウレタン(イソシアネート、ポリエチレンポリオール)、酸化プロピレン、プロピレングリコール、エラストマー、LLDPE、LDPE、グリコールエーテル、アミンなど、合計26基のプラントを建設する。

2011/7/26  DowとSaudi Aramco、石油化学JV設立を最終決定


DowはサウディでのSadara計画と、米国での
安価なシェールガスを原料とする石化計画の二正面作戦をとる。

2011/4/26 ダウ、エチレンとプロピレンの拡張計画を発表

 


武田薬品は6月13日、イスラエルのTeva Pharmaceutical とインドのSun Pharmaceutical の両社と和解したと発表した。

両社が米国で同社の胃食道逆流性疾患を治療するプロトンポンプ阻害薬 Protonix®( 一般名 pantoprazole)の物質特許が満了する2011年1月より前に後発品を販売したことに対し、武田薬品(が買収したNycomed)とPfizer が特許侵害で訴えていたもの。
Nycomedは米国で
Pfizer の子会社のWyethに独占的使用を許諾している。

和解により、Tevaは16億ドル、Sunは5.5億ドル、合計21.5億ドルの和解金を 支払う。このうち、Pfizer が64%の13.76億ドル、武田が7.74億ドルを受け取ることとなる。

しかし、本件は2011年1月以前の特許侵害に対応するものであり、武田薬品はそれ以後の2011年5月にNycomedの買収契約を締結(2011年9月30日に買収完了)したため、Nycomedの買収契約に基づき、受領する和解金の全額をNycomedの旧株主に支払うことにな る。

Nycomedの株主は下記の投資ファンド
  Nordic Capital  41.2%
  DLJ Merchant Banking  25.6%
  Coller International Partners  9.7%
  Avista Capital Partners 8.9%
  Others  14.6%

ーーー

WyethはNycomedから米国におけるProtonixの独占的使用権を許諾されており、Protonixは同社の売れ筋商品であった。

Protonixに関する基本特許は、2011年1月まで有効であったが、TevaとSunはそれ以前にFDAからジェネリック版を販売する最終承認を取得した。

NycomedとWyethは基本特許の侵害を主張、訴訟を提起したが、仮差し止めが裁判所に却下され、Tevaは2007年12月、Sunは2008年1月にジェネリック版を発売した。
特許無効を理由に特許の失効前に販売するもので、特許が有効とされると3倍賠償となるため「リスクのある販売 at-risk launch 」と呼ばれる。

WyethのProtonix の売上高は2007年に19億ドルあったが、TevaとSunによるジェネリック品の発売後、2008年の売上高は58%ダウンし、8億ドルになった。WyethはTevaとSunに対抗して、公認ジェネリック薬を米国で販売した。
(損害賠償訴
訟でTevaとSunはこれを理由に賠償額の減額を主張したが、成功しなかった。)

WyethとNycomedは両社の特許満了前の販売から生じた損害賠償金を求め、訴えた。

2010年4月、陪審員は基本特許の有効性を支持し、Sunがこれを不服として起こした動議を7月に裁判所が却下した。

損害賠償額を争う裁判が始まった直後に双方は和解を決めた。

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Pfizerは2009年1月26日、Wyethを総額約680億ドルで買収する正式買収契約を締結した。

2009/1/27 Pfizer、Wyeth を買収


武田薬品は2011年5月、スイスのチューリッヒに本社を置く非上場製薬会社Nycomed A/Sを買収すると発表した。

買収額は株式価値+純負債ベースで96億ユーロ(約1.1兆円)で、武田の既存事業と重複するため買収対象外の米国の皮膚科事業(Nycomed US Inc.)の株式を除き、100%取得する。

同年9月30日に買収を完了し、同日をもって100%子会社とした。

2011/5/23  武田薬品、Nycomed社を買収  


イスラエルのTeva Pharmaceutical は後発医薬品(ジェネリック)メーカー最大手

2011/5/12 イスラエルの後発薬最大手テバ、日米で買収


Sun Pharmaceutical はインドのムンバイに本社を置くジェネリックメーカー。

1983年に設立後、ICNのハンガリー事業、Caraco Pharmaceutical、Taro Pharmaceutical などの買収、MSD(Merck)とのJV設立などで拡大、ジェネリック医薬品やノーブランド医薬品を中心にアメリカ合衆国やヨーロッパおよびアジアなど世界中に輸出している。

武田薬品は2012年にURL Pharmaを買収したが、その後同社の後発品事業をSunに売却している。

武田薬品とURL Pharmaは2012年4月、武田がURL Pharmaを800百万米ドルで買収することについて合意した。買収完了後、武田ファーマシューティカルズUSAに統合した。
URL Pharmaの2011年の売上高は約600百万米ドルで、そのうち痛風の予防および治療薬であるColcrysの売上高が430百万米ドル強を占めている。

武田薬品は2012年12月、URL Pharmaの後発品事業をSun Pharmaの100%子会社のCaraco Pharmaceutical に譲渡した。

 

 

 

米最高裁判所は6月13日、人の遺伝子は特許の対象にならないとの判決を全員一致で言い渡した。遺伝子に特許を与えた場合、科学的な研究や医療行為を妨げると主張した医師や患者のグループが勝訴したことになる。ただし、人工的に合成された遺伝子については特許の取得が可能とした。

この裁判は、米バイオ医薬品会社
Myriad Geneticsが乳がんと卵巣がんに関連した2つの遺伝子(BRCA1とBRCA2)の特許を取得したことに、医療研究者らが反対し、争われていた。

BRCA1,2 (breast cancer susceptibility gene 1,2 ) は、がん抑制遺伝子の一種であり、その変異により遺伝子不安定性を生じ、最終的に乳癌や卵巣癌を引き起こす。

今回、最高裁は人の遺伝子は特許の対象にならないとした。

Clarence Thomas判事は、Myriad が重要で有用な遺伝子を見つけたのは確かだが、遺伝子の分離は発明行為ではなく、同社は何も創造していないとした。

一方、 単離されたDNA分子や人工的に合成された遺伝子(cDNA) については「自然に発生はしない」とし、特許で保護されるとした。

オバマ政権は、自然に形成された遺伝子の抽出は特許対象とはならないが、人工的に合成された遺伝子はそうなるとの立場を取っており、最高裁はこれを受け入れた。

Myriad Geneticsでは判決を受け、最高裁はDNAに関する特許は否定したが、相補的DNA (cDNA)の特許を認めたとし、BRACAnalysis テストに関する24の特許(有効なクレイムは500以上)が維持されると述べた。

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Myriad Geneticsは1994年に特許を出願した。

同社は特許に基づき乳がんと卵巣がんの発症しやすさを調べる遺伝子検査の市場を支配してきた。

同社のBRACAnalysisテストで陽性になった女性は生涯で乳がんになる確率が82%高く、卵巣がんになる確率が44%高い。

女優のAngelina Jolieが最近、がんに関連した遺伝子変異が見つかったため予防措置として両乳房の乳腺切除手術を受けたことを明らかにして、こうした遺伝子検査が注目を浴びた。

2009年に研究者や患者らを代表するアメリカ自由人権協会(SCLU) が乳がんと卵巣がんの発症における遺伝子特許無効の訴えを行った。

同特許の対象範囲があまりに広いため、BRCA1やBRCA2に関する研究者の調査や比較を阻害すると主張。
あらゆる人間が持つ最も基本的な要素を知的財産として認めることの合法性・合憲性を問うものである

この特許が Myriad Genetics に対し乳がんや卵巣がんに関連する検査への独占的権利を与えるもので、該当する遺伝子の検査におけるすべての新しい科学的方法論なども、権利保護の対象にしており、同社が乳がんや卵巣がんの遺伝子検査のタイプや種類を決めるとともに、他の研究所の研究を阻害している。

この特許のもとでは、BRCA1やBRCA2の検査や分析を
Myriad Geneticsに依頼すると、テスト1回ごとに3,000ドル以上の支払いが課され、これらの遺伝子検査を求める女性の障害になっているという。 他の企業が安価な検査法を開発しようとしても、特許を盾に認められない。)

2010年3月29日、ニューヨーク州南部地区米連邦地裁が特許無効の判決を下した。

Myriad特許の「身体から取り出した遺伝子」は「ヒトの細胞の自然産物としての遺伝子」とは目立って違いもなく、取り出し精製することでその遺伝子の本質的特性が自然産物としての遺伝子の特性から変化したわけでもない。

検査方法も遺伝子情報集め以上のものではなく数学的アルゴリズムといえる。

Myriadは控訴した。

2011年7月29日、米連邦巡回控訴裁判所はMyriadの BRCA1とBRCA2の特許を認めた。

身体の中に自然にある遺伝子ではなく、遺伝子の特定の化学形態をテストするものとした。
但し、DNAの塩基配列を分析する方法は特許を認めなかった。

2012年3月、米最高裁は、別件のPrometheus社の投薬方法に関する特許について、特許適格性が無いとする判決を下した。 

同特許は、自己免疫疾患を治療するためのチオプリンが投与された患者の血中の代謝物量を測定し、それに合わせて投与量を増減させる方法に関するもの。

連邦巡回控訴裁判所の判決では、同特許は、薬物が人体内で代謝されることで物質として変化すること、そして、対象クレームでは人体内から血液を抽出し測定することを必然的に伴うから「トランスフォーメーション」があるとし、特許対象であるとしていた。

しかし最高裁は判事の全員一致でこれを覆し、特許適格性無しとしたもの。

「自然法則」あるいは「自然現象」は特許可能ではないが、それが公知の構造や方法に対する応用である場合には特許可能となる。
しかし、そのためには、クレームに具体的な応用に関する記載がなければならない。

本件のクレームは、投薬後の血中の代謝物の量と、当該薬剤による予想される効果、危険度との相関性を記載しているが、これは自然法則そのものである。
自然法則の応用を確実に具現化する追加的特徴を記載しない限り、特許適格性を満たさない。

工程を組み合わせたところで、自然法則以上のものを何ら付加するものとはいえない。

最高裁はPrometheus判決をもとに、米連邦巡回控訴裁判所に対し、2011年の判決の再検討を指示した。

2012年8月、米連邦巡回控訴裁判所は再度、Myriad のBRCA1 とBRCA2の特許を2:1で認めた。
しかし、DNA 塩基配列を「比較」したり、「分析」したりする特許は否定した。

原告は遺伝子は自然の産物と主張したが、判決では、
「全てのもの、全ての人間は自然の産物ではあるが、このBRCA1とBRCA2は自然の法則に従ってはいるが、自然物ではなく、人間のつくったものである」とした。

裁判では Dr. James Watsonが特許化に反対し、裁判所が人間の遺伝子の非常にユニークな性質を認めないのかと恐れると証言した。
「遺伝子は化学物質ではあるが、人間を創る指令を暗号化して伝えるもので、生命の指令を法律上の独占で支配するべきものではない」とした。

しかし判決は、特許はイノベーションを促進するとして特許を認めた。

今回の訴訟は、米国自由人権協会や15万人以上の研究者、医師、患者らが、特許対象の遺伝子を使用した今後の研究・調査の妨げになるとして、先の控訴審判決を覆すよう最高裁に申し立てたもの。

2013年6月13日、米最高裁判所は上記の判決を下した。

 


NOVA Chemicals は6月7日、アルバータ州Joffre でNOVA 2020計画の目玉の一つのポリエチレン拡大計画の起工式を行った。

Joffreには第一ポリエチレン(2系列)と第二ポリエチレンがあるが、第一ポリエチレンに第3系列(年産 43~50万トン)を新設する。
建設費は約10億ドル、2015年秋にスタートする予定。

シェール革命で北米の石油化学が生き返ったが、これもその一つ。

ーーー

Novaは2011年6月、コスト競争力のあるシェールオイル、シェールガスを活用し、拡大する北米のポリエチレン需要に対応するため、NOVA 2020計画を発表した。

同社はカナダ西部のアルバータ州Joffre と、東部オンタリオ州 Sarnia - Lambton に石化コンプレックスを持つ。
(Sarnia - Lambton地区にはCorunna、St. Clair River、Moore の3工場がある)

計画では、JoffreとMooreにそれぞれポリエチレン工場を建設する。更にMoore工場の既存プラントのデボトルネッキングを検討する。
Mooreの新工場は、同社が開発したポリエチレン技術 Advanced SCLAIRTECH 法を使用する第二のワールドクラスのプラントとなる。

原料のエチレンについては、既存のJoffreのエチレン利用増とCorunna のエチレンの増強で賄う。
エチレンの生産増には、シェールオイル・ガス、オイルサンドからのオフガスや、既存のエタンなど、多様化した原料ソースを使用する。
Corunnaのエチレンは原料を天然ガス100%利用できるよう改造する。2013年第3四半期からはMarcellus Shaleのエタンの使用を開始する。

NOVA Chemicals会長(親会社のアブダビのIPICの社長)は、IPICのグローバルの成長戦略の一環として北米におけるNOVAの拡大計画を喜んでおり、IPICはフルにサポートすると述べた。

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アブダビ国営の投資会社 IPIC(International Petroleum Investment Company )は2009年7月、カナダのNOVA Chemicals の買収を完了した。

その後、IPICはNovaの株式の24.9%を、Borealis(IPIC 65%:OMV 35%)に譲渡する構想が明らかとなった。
実際に当初はOMVのDeputy CEOがNOVAの会長になり、OMV主導でNova運営がなされた。
しかし、最終的にBorealisの出資はなかった。
2011年にはIPICが、NOVAとBorealisの合併を考えているとの噂が報道された。)

2009/2/24 アブダビのIPIC、カナダのNOVA Chemicals を買収

NOVAとIneos20073月に、NOVAの北米のSMPS事業を両社の欧州の50/50JVに移管することで合意したと発表、Ineos NOVAが200710月に発足した。 

しかし、2010年にNOVAは持分をIneosに譲渡し、撤退した。

2010/11/22  Nova ChemicalsIneos Novaから撤退


なお、NOVAは上記のカナダ西部のアルバータ州と、東部オンタリオ州のほかに、米国に2つの工場を持っている。
 
Beaver Valley 工場(Monaca, Pennsylvania):EPS(発泡ポリスチレン)とARCEL® 発泡レジン
  Painesville工場(Painesville, Ohio):EPS

同社は上記の通り、SM、PS事業をIneos NOVAに拠出し、後に離脱し持分をIneosに譲渡したが、「発泡PS ・機能製品」部門に属しているEPSについてはIneos NOVAに出していない。

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IPICは活動を全世界に広げている。日本のコスモ石油の筆頭株主である。

UAE 内陸油田ハブシャンからの全長360kmの原油パイプラインとフジャイラ港でのタンクターミナルの建設
フジャイラにて50万バレル/日の能力の輸出を主体とした製油所の建設
オーストリア 石油、ガス会社OMVに17.6%の出資
石化会社Borealisに65%の出資
  2006/11/10 
OMVとBorealis、オーストリアとドイツで石化増強

AMI Agrolinz Melamine International に50%出資(OMVが残り50%)
日本 コスモ石油に出資
韓国 Hyundai Oil Bankに出資(70%)
    ↓
2009/11/21 
現代グループ、Hyundai Oilbank の経営権を奪還
パキスタン パキスタンのPak-Arab Refinery Co.株式40%を保有(残りはパキスタン政府)。
キスタン政府との間で30万バレル/日規模の製油所建設を検討中(IPICが74%出資予定)
オマーン Oman Polypropylene に出資(出資するGulf Investment Corporationを通して)
エジプト Arab Company に出資
スペイン CEPSAに出資(47%にアップ)
中央アジア 2008/8/27 Abu Dhabi のIPIC、中央アジアに進出
カナダ 2009/2/24 アブダビのIPIC、カナダのNOVA Chemicals を買収

 


EUは6月4日、中国製太陽光パネルに対し、反ダンピング関税を暫定的に適用することを正式に決定した。6月6日から適用する。
12月に本調査を終え、5年間の反ダンピング関税を実施するかどうかを決める。

EUは当初平均 47.6%の税率を加盟国に提示したが、反ダンピング関税に中国が反発したことや、通商摩擦激化を避けたい加盟国の多くが慎重だったことに配慮し、当初は平均 11.8%とし、8月6日までに交渉を通じて中国側に改善がみられなければ 47.6%に引き上げることとした。

中国品はEU市場の80%以上を抑えており、その生産能力は世界の消費の1.5倍もある。中国企業の不公正な競争でEU企業は倒産の危機にある。2012年の中国の過剰能力は欧州の需要のほとんど2倍もあり、今回の措置はEUの25千人の職を維持し、更に業界で新しい仕事を作り出すこととなるとしている。

EUでは、平均ダンピング率は88%もあるが、47.6%にとどめたとしている。

EUは、中国の輸出業者、中国商工会議所との会話で問題を解決し、暫定関税を取り止める用意があるとし、また、EU・中国合同委員会を近いうちに開催し、WTOルールと戦略的パートナーシップの精神に基づき貿易関係の全ての問題を建設的に解決する用意があると述べた。

中国商務省は6月5日、欧州産ワインが中国で不当に安値販売されている疑いがあるとして、反ダンピング調査を始めると発表した。
昨年の中国の欧州産ワイン輸入量のうち約60%はフランス産で、EUの反ダンピング課税を強く支持したフランスを標的にした報復の可能性がある。

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中国の太陽光パネルの大増産により、米国やEUの企業で倒産が相次いでいる。
中国企業も経営難に落ち込んでおり、中央・地方政府による救済が行われている。

昨年来、中国の太陽光パネルを巡る貿易戦争が激化している。

EUは昨年9月に反ダンピング調査、11月に反補助金調査を開始、これに対し中国は、EU加盟国のイタリアとギリシャの"feed-in tariffs" (固定価格買い取り制度)現地の部品を中心に使っている電力会社を価格面で優遇しているのは協定違反だとして世界貿易機関(WTO)に提訴した。

更に中国商務部は欧州から輸入される多結晶シリコンに対するダンピング・補助金調査を開始した。

2012/11/14 太陽光パネルを巡る貿易戦争 

中国は世界の太陽光パネル生産量の6割を占めており、うち約85%を輸出している。中国の統計によると、2011年のEU向け輸出額は210億ドルで、中国の生産量全体の約60%を占め、反ダンピング課税が与える影響は大きい。

景気低迷が続くなか、欧州各国でこの問題で意見が分かれた。ドイツなどは太陽光パネルへの課税を決めた場合、中国が対抗措置をとることを警戒して消極的であり、中国もEU加盟国への働きかけを強めた。

メルケル独首相は5月26日、ベルリンでの中国の李克強首相との会談後、太陽光パネルへの反ダンピング課税を回避すべきだとの立場を鮮明にし、「ドイツは反ダンピング課税を避けるためにできるだけのことをする」と述べた。

EU加盟27カ国のうち、英国やオランダを含む少なくとも過半数の国が課税に反対し、賛成はフランスやイタリアなど少数派とされる。ギリシャのサマラス首相は5月中旬に訪中し、中国側と貿易や投資、海運などで協力する文書を交わした。

これに対し欧州委は、「仮決定をするのは欧州委だ」と強調。「中国が友好的な解決に動くべきだ」と述べ、中国にダンピングや不当な補助金の是正に向けた取り組みを求めた。さらに、「中国が個別国に圧力をかけているのは明らかだ」と不快感を募らせた。

EU発表の前日の6月3日、李克強総理は欧州委員会のバローゾ委員長と電話会談を行い、以下の通り述べた。

中国政府は中国・EUの太陽パネル製品を巡る貿易紛争に注目している。
本件は中国の重大な経済利益に関連し、適切に処理されなかった場合は中国側の利益を著しく損ね、また必然的に欧州側の利益を損ねることになり、中国・EU提携の大局に影響を及ぼす。
双方は貿易戦争ではなく、対話・協議により問題を解決するべきだ。貿易戦争に勝者は存在しない。

中国側は自国産太陽光パネル製品の輸出価格が安くなりすぎないように規制する案をEUに提案しているとされている。

EU発表を受けて中国が反発を強め、中国商務省は「中国政府は対話による解決に向けて誠意を示して最大限の努力をしたが、EUはこれを理解せず不公正な課税措置を取った。断固反対する」と批判する声明を発表した。

商務部は同時に、EU産ワインを対象にダンピング調査に入ると発表した。報復をちらつかせて太陽光パネルの課税に賛成に回ったフランスをけん制し、EU側から譲歩を引き出す狙いとみられる。

欧州各国の政府が補助金支給などでワイン産業を不当に保護しており、中国のワイン産業に打撃を与えていると主張、「貿易保護主義には一貫して反対する」とした。

2012年の中国のEUからのワイン輸入量は25万7千キロリットルと2009年比で4倍に膨らみ、約60%がフランスからとなっている。

 

 

6月4日に日本経済研究センター50周年記念国際セミナー「持続可能な開発と企業の役割」が開催され、コロンビア大学のJeffrey Sachs 教授の基調講演と、パネラーの三井物産・木下専務と東大・澤田康幸教授の発表があった。
 (録画 http://www.ustream.tv/recorded/33797605

このなかで期せずしてSachs教授と澤田教授が企業の活動例として住友化学の名前を挙げた。

Sachs教授は温暖化問題を取り上げ、人類世(Anthropocene)では既に安全に活動できる領域(Planetary boundries)を超えたとし、MDGs (Millenium Development Goals)からSDGs(Sustainable Development Goals)に変えるべきだと主張した。

昨年の大統領選で気候変動について双方が一切言及しなかったことを挙げ、石油会社の宣伝によるものと批判、企業が政治を動かすロビー活動を禁止すべきだと主張したが、企業もSDGsに大きな役割を果たせるとした。

企業はいろいろな技術で貢献できるとし、アフリカでトヨタ、住友化学、ソニーなどと一緒に仕事を出来て誇りに思っている、もっと多くの企業に加わって欲しいと述べた。

三井物産・木下専務は同社の方針を説明、「YOI SHIGOTO」を世界中でキーワードとしているとし、モザンビークの天然ガス開発、エネルギー分野、水事業、 マレーシアのSmart City計画の4つの活動例を説明した。 

Sachs教授は特にSmart City計画に関心を示し、ODAの対象にしてはどうか、もしかするとアベノミクスの3本目の矢になるかもと述べた。

澤田教授は世界の重心がアジアとアフリカに移っているとし、ODAの役割を強調した。

その中で住友化学のOlyset Net (防虫蚊帳)のマダガスカルでのインパクト評価の結果を説明した。

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住友化学のOlyset Net はポリエチレンにピレスロイド系殺虫剤を練り込んだ長期残効型防虫蚊帳で、WHOからも使用を推奨されている。

マラリアは「ハマダラカ」という蚊が媒介する。毎年3.5~5億人がマラリアを発症し、100万人以上が死に至っている。(その90%がサハラ以南のアフリカで発生、犠牲者の多くは5歳以下の子供 。)

以前はハマダラカの駆除にDDTが使用され、効果を生んでいたが、DDTの生態系への影響 から1980年代に各国で使用禁止となった。

スリランカでは1948年から62年までDDTの定期散布を行ない、それまで年間250万人を数えたマラリア患者の数を31人にまで激減させることに成功していたが、DDT禁止後には僅か5年足らずで年間250万人に逆戻りし た。

WHO2006年9月にマラリア蔓延地区においてDDTの室内散布を推奨すると発表したが、これには賛否両論が出ている。

2006/10/23  WHO、マラリア防止にDDT使用を推奨

WHOは当初、マラリア対策として既存の蚊帳に薬を何回もしみこませて繰り返し使用するよう指導したが、再処理が面倒で、この方法はうまく機能しなかった。

住友化学は防虫網戸の技術に着目し、Olyset Net を開発した。蚊帳の糸に練りこんだ ピレスロイドが、洗濯等により表面の薬剤が落ちても中から徐々に染み出し、防虫効果が5年以上持続するもので、世界各地でテストを行った。

1998年にWHO、UNICEF、UNDP、World Bank 主導でRoll Back Malaria Partnership が始まり、2001年にWHOからOlysetがマラリア防止に有効との認定を受けた。

2005年1月のダボス会議で米倉弘昌社長(当時)がこの蚊帳を紹介した。
タンザニア大統領が各国にODAの増額を訴えたが、反応はあまりなかった。

ムカベ大統領やBill Gatesなどが壇上に並び、国連の貧困対策運動を率いるJeffrey Sachs 教授が話している最中に、女優のSharon Stoneが客席から突如立ち上がり、「私はシャロン・ストーンと申します。マラリアを運ぶ蚊からアフリカ人の子供を保護するために、ムカパ大統領に1万ドル寄付します。 私に賛同する人、立ってください」と叫んだ。
会場は騒然となり、5分間で100万ドルの寄付が集まった。英国のブレア首相は後日、8500万ドルを寄付することを発表した。

CBS News 録画  http://www.cbsnews.com/1606-500251_162-670124.html

現在、国連児童基金(UNICEF)などの国際機関を通じて、 50以上の国々に供給されている。

住友化学は2003年からタンザニアのA to Z Textile Mills社にこの生産技術を無償提供し、2003年から年間1,200万張の生産開始した。

2007年からは JBIC(国際協力銀行)の資金提供を受け、A to Z 社と合弁で Vector Health Internationalを設立、年間670万張の生産を始めた。

2008年に当時のブッシュ大統領夫妻がA to Z社を訪問した。

2010年8月現在、タンザニアでの生産能力は年間約2900万張りになり、タンザニアではこの生産だけで約7,000人の雇用機会を創出している。

同社はまた、オリセットネット事業で得た売上を役立てたいと考え、特定非営利活動法人「ワールド・ビジョン・ジャパン」の協力を得て、ケニア、ウガンダ、タンザニア、ザンビア、エチオピアの各国で小中学校の校舎・給食設備の建設・教材・先生の宿舎などに取り組んでいる。



 

 

 

中国国家発展改革委員会(NDRC)は5月31日、開始から5年経ったレジ袋規制の状況を発表した。

中国は2008年6月1日にレジ袋の規制を開始した。
6月1日以降、スーパーマーケット、デパート、大型市場など商品を小売りするすべての場所でレジ袋を有料化し、無料での提供を一律禁止する。
また、ゴミ公害(白色汚染)対策として極薄(0.025mm 以下)ポリエチレン製のレジ袋の生産・販売・使用を禁止する。


同年7月10日には規制を強化する通達を出している。

2008/7/16 中国、「レジ袋規制」を強化

それによると、規制開始後、5年が経過したが、レジ袋の使用と廃棄は著しく減少し、ゴミ公害(白色汚染)もある程度減った。
レジ袋の使用は1/3になり、これまでに670億枚のレジ袋消費が減 った。これは600万トンの石油の節約となるとしている。

「白色汚染を減少し、美麗な家屋を建てよう」とのスローガンで、検査チームを各地に派遣し、従わない者を厳重に罰した。

しかし、まだレジ袋を無料で配ったり、禁止されている極薄の袋を使用するケースも残っており、今後も監視を続けるとしている。

実際には、International Food Packaging Associationが調査したところ、スーパーマーケット10店が全てレジ袋を有料としていたが、Wal-Martを含む4店のみが0.025mm以上のものであった。

一般の商店では調べた全てが無料で配っており、10店のうち1店のみが0.025mm以上のもので、他はすべて極薄品であった。

 

 


中国国家発展改革委員会(NDRC)は6月5日、SK GroupがSinopecの武漢エチレンに35%出資することを承認した。
Sinopecが27億ドルを投じて単独で建設し、2012年末に完成しているが、Sinopec 65%、SK Group35%出資のJVとなった。

SKは2008年5月にシノペックの武漢エチレン計画に35%出資することで合意したことを明らかにしたが、その後、2009年に中国SKのトップが中国メディアに対し、現在の経済危機のなかで、SKに十分な資金がないとして、この投資を延期することを明らかにしていた。

  
2008/6/2   韓国SK Energy、シノペックの武漢エチレン計画に出資

両社は2011年12月に予備契約に調印した。SKの出資額は明らかにされていない。

エチレン能力は80万トンで、以下の誘導品を含む。
  LLDPE 300千トン
  HDPE  300千トン
  PP    400千トン
  EO   100千トン

ーーー

NDRCは今回、下記の2件プロジェクトの承認も発表した。

1) CNOOC 惠州製油所2期計画

CNOOC(中国海洋石油総公司)は現在、広東省恵州市の大亜湾の大亜湾経済技術開発区に年産11百万トン(日量220千バレル)の製油所を持つ。
同社は同地にShellとの50/50JVの中海シェル石油化学
CNOOC and Shell Petrochemicals)を持ち、2006年1月にエチレン 年産80万トンの石化コンプレックスの本格生産を開始した。エチレン能力は現在、95万トンとなっている。

2006/4/7 中国のエチレン合弁会社

今回、製油所第二期(年産10百万トン)と、他に年産100万トンのエチレンが承認された。
CNOOC単独で、中海シェル石油化学については言及されていない。

2011/1/11付 China DailyはShellがこの第二期計画への参加を求めたと報道している。

CNOOCは第二期計画に必要な資金も技術も持つため、仮にShellの参加を認めたとしても、中海シェル石油化学のように50%参加は認めないだろうとされ、Shellは中海シェル石化の持分のうちの20%を放棄して、代わりに第二期計画への30%の出資を求めたとの説も伝えられた。

2)Sinopec 海南島石化計画(Hainan Refining & Chemical Company)

エチレン年産100万トンと製油所の増設が承認された。

製油所は海南島の洋浦経済開発区(Yangpu Development Zone)にあり、2006年9月に800万トン(日産16万バレル)の製油所がスタートした 。

計画では製油所を1300万トンに増設し、隣接してエチレン年産100万トンを新設する。

Sinopecは2008年4月、海南省政府との間で年産100万トンのエチレン計画に関する契約に調印した。

2008/4/14 Sinopec の新しいエチレン計画



昨日の記事の通り、Asia Mineralsは南アのKudunane Manganese Resourcesに出資する 。

Asia Minerals Limited (亜州砿業有限公司) は1993年に香港に設立されたマンガン専業メーカーで、鉱石からアロイ、メタル、化学品までを一貫して扱う。

日本人のHirotaka Suzuki 氏が創業者・会長である。

Asia Metals は2005年に内蒙古のフェロアロイ製錬会社 Inner Mongolia Resourceを取得した。
シリコンマンガン、中低炭素フェロマンガンなどを生産する。(年産7万トン)

2009年には第二の生産拠点として、遼寧省錦州市太和区にある製錬会社 Jinzhou AML Resources を買収した。

同社はAsia Metals (AML) が81.67%出資し、他に CITIC Jinzhou Ferroalloy(中信錦州フェロアロイ)、日本電工、豊田通商が出資する。シリコンマンガンの年産能力は5万トン。

同社は日本を初め、韓国、中国、米国、EU、CIS、中東のほとんど全ての製鉄メーカーにマンガンアロイを供給している。

ーーー

2012年5月にKudumane マンガン計画の最初の爆破の式典が鉱物資源相やAsia Metalsの鈴木社長やMr.Africaと称される矢野哲朗・アフリカ開発協会理事長が出席して行われた。

Kudunane Manganese Resourcesは、Northern Cape Manganese Company とDirleton Minerals & Energy が株主で、この2社にはAsia Minerals と現地のBBBEE企業のBold MovesとNWC Manganeseが出資する。
実質ベースでAsia Minerals が49.0%の出資となるが、将来は61.5%となる。

採掘はオープンピットと地下鉱山採掘の二つで、最初はオープンピットで始める。

鉱石は道路と鉄道でPort Elizabethに運び、輸出する。
現在Port Elizabethの近くで建設中のCoega Industrial Development ZoneとNgqura深水港が完成すると、そこから輸出する。

(昨日の記事参照)

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Asia Metalsはマレーシアのサラワク再生可能エネルギー回廊(Sarawak Corridor of Renewable Energy:SCORE)にマンガン精練所を建設している。

建設地はサラワク州ビンツル市北東のサマラジュ工業団地で、2013年7月〜9月から段階的に立ち上げ、2014年12月までにフル稼働に入る計画。

サマラジュ工業団地では、トクヤマが太陽電池向け多結晶シリコン生産工場を建設している。

年産能力はシリコマンガン12万トン、中低炭素フェロマンガン5.4万トン、フェロシリコン6万トン、原料用の焼結鉱20万トンで、投資額は約240億円 。

日本電工は2012年5月、この計画に参加することを発表した。事業会社はPertama Ferroally SDN. BHDで、Asia Mineralsが60%、日本電工が20%、神鋼商事が7%、中央電気工業が5%、マレーシアのCarbon Capital Corporation SDN.BHD.が8%出資する。

南アのマンガンもここで製錬する。

南アのTshipi E nete Manganese Mining に出資するOM Holdingsもサラワクに製錬所を建設している。
第一期はフェロシリコンアロイ年産308千トン。

ーーー

日本電工の主事業は合金鉄事業で、フェロマンガン、高炭素フェロクロム、フェロバナジウム、フェロシリコン、シリコンマンガンなど、ほとんどの品目をカバーして いる。他に機能材料事業として、マンガン酸リチウム、フェロボロン、酸化ジルコニウム、ほう素製品を扱う。

2010年に新日鉄(現・新日鐵住金)が14.86%を取得 した。

日本電工は南アに2つのJVを持っていたが、1社を売却した。

 NST Ferrochrome (Pty)Ltd ステンレス原料のフェロクロムの製造・販売

1993年設立。
Samancor Chromeとの50/50JV
(2009/11にInternational Mineral Resources がSamancor Chromeの70%を取得した)

日本電工は2012年5月、下記のマレーシアへの投資集中のため、JV相手への売却を決定した。

 SAJ Vanadium(Pty) Ltd. フェロバナジウムの製造・販売

2002年設立。
日本電工 50%、Vanchem 40%、三井物産 10%
(当初はHighveldとのJV)

 

 

5月31日付の日本経済新聞は以下のとおり伝えた。

南アでマンガン権益 レアメタル確保へ官民が連携 中国の攻勢に対抗

新興国でのレアメタル(希少金属)資源確保に向けた日本の官民連携が動き出す。世界最大の埋蔵量を誇る南アフリカの鉱山の採掘権を新日鉄住金グループの日本電工などが取得する。頑丈な鋼材を生産するのに不可欠なマンガン鉱石の権益を確保。中国の攻勢に対抗するため、日本の年間輸入量の2割にあたる20万トンを日本企業に優先して輸出する。

鉱物専門商社アジアミネラルズ(本社・香港)が南ア北部に広がるカラハリ鉱床の一部の鉱区で採掘権の49%を獲得し、特定目的会社(SPC)を設立する。日本電工が1割超の出資を検討している。

独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)も、鉱山開発など投資の回収に時間がかかる案件を対象とする「産業投資出資金」の枠から2.5%(約10億円)を出す計画。「産業投資出資金」から鉱物資源の案件に拠出するのは今回が初めてとなる。

記事はマンガン権益を初めて取得するような印象を与えるが、実際には既に住友商事が南アの二大マンガン生産企業の1社に約13%の権益を所有している。

記事にあるAsia Mineralsは香港の企業だが、創立者で会長は日本人。
マンガンその他の合金鉄を扱う日本電工は、本事業への参加は明らかにしていないが、Asia Mineralsがマレーシアのサラワク州サマラジュ工業団地に建設する合金鉄生産プロジェクトには参加を決めている。

南アのマンガン開発の状況と、Asia Mineralsの事業を2回に分けて紹介する。

南アのマンガン開発

南アフリカ共和国はアフリカ最大のマンガン生産国で、生産量では中国に次いで世界2位。

 

2012年の中国のマンガン輸入は1,223万トン と日本のおよそ10.5倍もある。資源メジャーは需要が急増する中国向けの供給を優先しており、「安定したマンガン鉱石の調達先を増やすことが産業界の課題」(資源エネルギー庁)。(日本経済新聞記事)

マンガン生産地域は北ケープ州北部のKalahari Basinに集中している。

これまではSamancorとAssmangの二大企業が生産を行ってきた。

SamancorはBHP Billiton とAnglo AmericanのJVで、Hotazel鉱山(Wessels坑内堀鉱山とMamatwan露天堀鉱山)を運営する。

Samancorの近隣にはAnglo Americanの傘下Kumba Iron Ore所有の同国最大のSishen鉄鉱山がある。

Assmangは高品位鉄鉱石、高品位マンガン鉱石及びクロム鉱石の3つの鉄鋼原料資源を保有する世界でも類を見ない資源鉱山会社で、African Rainbow Minerals とAssore(住友商事出資)のJV。

Nchwaningマンガン鉱山とGloriaマンガン鉱山を運営し、Port Elizabethから鉱石を輸出する。
また、Cato RidgeにあるCato Ridge Alloys(Assmang 50%、水島合金鉄 40%、住友商事 10% のJV)でフェロマンガンを生産し、Durbanから輸出する。

マンガン鉱の南部のKhumaniとBeeshoekに鉄鉱山があり、Saldanha港から輸出する。
北東部のDwarsrivierにクロム鉱山があり、近くのMachadodorpでクロム合金鉄にし、Richards Bayから輸出する。

住友商事は2007年1月、Assoreの持株会社Oresteel の株式20%をOld Mutualから取得。
その後、2回に分けて9%をSacco家から取得し2008年6月には更に20%を取得し、総額で約450億円の投資で49%とした。Assmangへの持分権益は約13%に増加した。

http://www.sumitomocorp.co.jp/ir/doc/2009f/mineral2_09.pdf

参考 Black Economic Empowerment政策(BEE政策)
南アでは不当な差別によって歴史的に不利な立場に置かれてきた黒人、カラード、女性など(HDSA: Historically Disadvantaged South Africans)に対するアファーマティブ・アクションとして、これらの経済進出を支援するBlack Economic Empowerment政策(BEE政策) が採られている。
従来のBEE企業は所有と経営参加だけを尺度としたが、少数の黒人のみが恩恵を受けるとの批判を受け、Broad-Based BEE (B-BBEE)が採用された。出来るだけ広範に富を配分するのが目的。

南アでは最近、新しいマンガン鉱が次々に稼働しつつある。

    年産
能力
生産
開始
株主  
Samancor Hotazel鉱山
・Wessels坑内堀鉱山
・Mamatwan露天堀鉱山
300万t   BHP Billiton
Anglo American
 
Assmang ・Nchwaning
・Gloria鉱山
300万t   African Rainbow Minerals
Assore
 
United Manganese
  of Kalahari
Smart、Rissik、
Botha 地区
2011年
271万t
2011 Renova (ロシア) 49%
Majestic Silver (BBBEE) 51%
現状では世界4位
中国のSinosteelがRenova持分の買収を考えている。
Tshipi E nete
  Manganese Mining
Tshipi Borwa鉱山
(Kalahari地区)
 
240万t 2012 POSCOが参加(下図)
 
OM Holdingsはサラワクに合金鉄プラント建設
Tshipi Bokone鉱山    
Kudunane
  Manganese
  Resources
York地区鉱山 2014年
300万t
2013 Asia Minerals 49.0% (61.5%)
Bold Moves(BEE) 25.5%(25.5%)
NWC Manganese(BEE) 25.5%(13.5%)
 (  )は将来
Asia Mineralsがサラワクに合金鉄プラント建設
Hotazelピット    
Kalagadi Manganese Kalahari地区 300万t   ArcelorMittal 50%
Kalahari Resorces 40%
南ア産業開発公社  10%
鉱山サイトに焼結鉱設備(240万トン)
Coegaに製錬工場(32万トン)

Tshipi E nete 株主

南アフリカでは港までの輸送と港湾設備の整備が問題である。

現在、カラハリ地区から積み出し港 Port Elizabethまでの鉄道輸送能力は年間400万トンで、輸送枠は既存2社でほぼフルとなっている。
このほかダ-バン港積みでトラック便による輸送が年間100万トンとなっている。


「Asia Mineralsの事業」に続く。



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