「no」と一致するもの

先週、NHKBS世界のドキュメンタリー 「ガスランド ~アメリカ 水汚染の実態~」のアンコール放送を見た。

昨年12月の放映を見逃し、再放送は東日本大震災で2度も中止となっていた。

世界の資源地図を塗り替えると期待される、新しい天然ガス「シェールガス」。その開発に疑惑を持ち、コロラド、ワイオミング、テキサス、ルイジアナ・・・ と自家用車で旅を続けるジョシュが見たものは、飲み水や大気の汚染で深刻な健康被害に怯える人々と、無残な姿をさらすアメリカの大地だった。

行政担当者や環境問題の専門家などに話を聞くうち、汚染の原因は、岩石層の水圧破砕のために地下に注入する特殊溶液にある可能性が浮上してくる。アメリカでは飲料水の安全確保のため、水源地帯の土中に異物を混入する行為は厳重に規制されている。ところが、住民の要請を受け当局が調査を行った形跡はなく、ガス会社には溶液の成分を公表する義務さえないという腑に落ちない事実が明らかになっていく。

こうしたガス開発を優先する特例を推し進めたのは、巨大エネルギー会社のCEOからブッシュ政権入りしたチェイニー前副大統領だった。特例を認めるべきか?否か?安全な水を求めるジョシュの取材の旅は、ついに連邦議会での攻防の場へとたどり着くことに・・・ 
(NHK ホームページから)

見終わってゾッとした。米国でこんなことが許されるのか。

 

米国各地でオイルシェールが発見され、開発が進んでいる。

日本の企業も多数、参加している。
   2011/7/4  
三井物産、テキサス州のシェール開発に参加;米国でシェール論争

オイルシェールの採掘には水圧破砕法(Hydraulic fracturing 又は fracking)が使われている

これは1940年代にHalliburton Energy Servicesが開発したもので、同社はまた、水圧破砕溶剤の3大製造会社の1社である。
坑井内に高い圧力を加えて採収層に割れ目(フラクチャー)を作り、その中に砂などの支持材を充填することによりその閉塞を防ぎ、採収層内に非常に浸透性の高い油・ガスの通り道を形成するもの。
大量の水と600種類にも及ぶ薬剤を投入する。一つの井戸で18回も投入する。

第一の問題はこの薬剤が漏れて、近くの民家の井戸に混入したり、河川を汚染することである。

放送では井戸水に火がついたり、健康被害で苦しむ住民や河川の汚染の状況が 多く出てくる。

米国では水道用地下水源を保護するために、1974 年安全飲料水法で、固体、液体及び気体を含む流体の地下注入を規制する法律上の権限をEPAに与えている。

但し、石油とガス業界は危険物質を地下の飲料水の源泉の近くに注入する事を許可されている。

1995-2000年にHalliburtonのCEOであったDick Cheney副大統領のエネルギーポリシー特別対策委員会の努力で、2005年連邦エネルギーポリシー条令が水圧破砕を飲料水安全条令から適用除外にした。
これは「Halliburtonの抜け穴」と呼ばれる。

ガス会社は危険はないとしながらも、クレームがあれば井戸水を検査し、飲用不可の場合にはタンクを設置して飲み水を供給している。

放送ではまた、廃棄物処理の無茶苦茶を写している。

回収された薬剤入りの水は仮の溜池に保管されているが、池の土手から水が漏れている。
また、溜池から薬剤がどんどん蒸発している。

コンデンセートタンクからもガスがもうもうと蒸発しており、大気汚染を起こしている。

天然ガスのパイプラインは途中でガスを放出している。

環境当局は以下の通り述べている。

世の中に完全無欠なエネルギーはない。
オイルシェールも完璧ではない。
飲料水で問題のある所帯には水を供給している。
雇用や石油の外国依存によるリスクも考える必要がある。
水素エネルギーが利用できるまでは妥協が必要だ。

カナダのタールサンド開発での環境汚染に関して、クリントン国務長官は、
「中東の汚い石油か、カナダの汚い石油か、アメリカの選択肢は2つです」と述べている。

2011/4/14 「岐路に立つタールサンド開発」

放送では、コロラド、ワイオミング、テキサス、ルイジアナと移動する間、井戸は絶え間なく続き、各地で被害が出ている。

しかし、問題はこれからのMarcellus Shaleの開発である。

地図の赤い部分は未開発で、間もなく 5万本の井戸を掘る予定地域だが、ここはNew York 680万人、Pennsylvania 540万人、Delaware70万人、New Jersey 290万人の合計1,580万人に飲み水を供給する水源である。

これが汚染されれば、いったいどうなるのか。これだけの人口密集地に代わりの水を供給することは不可能である。

いつまでも、このようなことが許されるとは思えない。

 


 

格付け会社Standard & Poor's(S&P)は8月5日、米国債の長期格付けを最上位の「AAA」から、「AA+」に1段階引き下げた。
米国債を格下げするのは1941年の現行制度開始以来初めて。 

 S&Pは7月14日に米国債を「クレジットウオッチ」に指定し、90日以内に格下げする確率が50%以上あると公表、信頼に足る財政再建には今後10年で4兆ドル程度の財政赤字の圧縮が必要だとの考え方も示していた。

米連邦政府の債務の上限額引き上げを巡り与野党が鋭く対立し、期限当日の8月2日に、債務上限を引き上げる一方、財政赤字額を今後10年で2.4兆ドル減らすことで決着した。
S&Pはこれが、「政府の中期的な債務構造の安定に不十分と判断した」としている。

発表文(まとめ部分)
- The downgrade reflects our opinion that the fiscal consolidation plan that Congress and the Administration recently agreed to falls short of what, in our view, would be necessary to stabilize the government's medium-term debt dynamics.
 
- More broadly, the downgrade reflects our view that the effectiveness, stability, and predictability of American policymaking and political institutions have weakened at a time of ongoing fiscal and economic challenges to a degree more than we envisioned when we assigned a negative outlook to the rating on April 18, 2011.
 
- Since then, we have changed our view of the difficulties in bridging the gulf between the political parties over fiscal policy, which makes us pessimistic about the capacity of Congress and the Administration to be able to leverage their agreement this week into a broader fiscal consolidation plan that stabilizes the government's debt dynamics any time soon.

同時に、S&Pは長期的な格付け見通しを「Negative(弱含み)」に指定した。
向こう2年間に歳出削減の動きが鈍ったり、金利急上昇などで財政への圧力が高まったりした場合には、格付けを「AA」にもう1段階引き下げるとしている。

米国債を巡っては、Moody'sは8月2日、最上位の「Aaa」で維持すると発表、Fitchも「AAA」に据え置くと発表している。 

S&Pによる主要国の長期国債(外貨建て)の格付けは以下の通り。(青字はPIIGS諸国)  

AAA 

 

フランス、ドイツ、英国、カナダ、シンガポール、豪州

AA+

 

米国、ベルギー

AA 

 

スペイン(S)、カタール、クウェート  付記 10/13 スペインをAA- に引き下げ

AA-

 

日本、中国、サウジ、台湾

A+ 

 

イタリア(I)、チリ     付記 9/19 イタリアをAに引き下げ

A

 

韓国

BBB+

 

アイルランド(I)

BBB 

 

ロシア

BBB- 

 

ポリトガル(P)

CC 

 

ギリシャ(G)

S&Pは日本の国債の長期国債の格付けについて、本年1月に「AA」から上から「AA-」に下げ、見通しは4月に「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた。

付記
Moodysは8月24日、
日本国債の格付けを上から3番目の「Aa2」から4番目の「Aa3」(S&Pと同じレベル)に1段階引き下げると発表した。
東日本大震災で政府支出の増加が見込まれるなか、財政赤字削減の具体策が見えないと指摘。債務返済の可能性が低下したと判断した。

米国債保有高を1兆1600億ドル(5月時点)保有する中国は今回の格下げで「国際金融市場が混乱し、中国は大きな影響を受ける」と強く非難した。

新華社は「中国は最大の債権者として、米国に構造的な債務問題への対処と中国のドル資産の安全確保を要求する当然の権利がある」と強調、「借金依存症」を改め、「巨額の軍事費と社会保障費を削減しなければ、国債のさらなる格下げを招く」と警告した。

ーーー

S&Pの格下げに先立ち、中国の格付け機関、大公国際資信評価有限公司(Dagong Global Credit Rating Co.)は8月3日、米国債の格付けをA+からAに引き下げ、見通しを「ネガティブ」とした。

同社は2010年7月に初めて世界50カ国の信用格付けを発表した。

中国は自国通貨建てがAA+で外貨建てはAAA。
一方、米国はAA、AAで、いずれも中国の格付けを上とした。
英国とフランスは自国通貨建て、外貨建ていずれもAA-、ドイツはいずれもAA+とした。
 
その後、2010年11月に米国をA+に引き下げた。
さらに本年7月にマイナス観察リストに入れ、債務返済能力が実質的に改善される大きな出来事がなければ、格付けを引き下げると表明していた。

大公国際資信評価は格付けの引き下げの理由として、以下の通り述べている。

米連邦議会は政府の債務上限引き上げをめぐる決議を採択したが、国の債務の増加速度が経済・財政収入の伸びを上回るという基本的状況は変わっていない。このことは米政府の債務返済能力の一層の低下に向けたターニングポイントとなった。

米政党間の争いにより、政治体制の弊害が明るみに出た。
米政府が国のソブリン債務危機を根本的に処理するのが難しく、政治・経済制度による債権者の利益保障が十分でないことを示している。

   
国の債務返済能力は改善されておらず、政府の債務負担は引き続き重くなり、米国のソブリン債務危機は深刻化すると見られる。
   
米国の財政赤字削減の速度は、新たな債務の増加速度を大きく下回っている。
   
米議会は、国の経済成長の原動力不足を根本的に解決するための建設的決議を打ち出していない。
経済成長率の低さと財政赤字、債務増加が債務返済能力に及ぼす根本的な影響を解決することができず、債務返済能力の低下が避けられないことを示している。

日本触媒のインドネシア子会社PT. Nippon Shokubai Indonesiaは7月28日、アクリル酸(AA)8万トン/年および高吸水性樹脂(SAP)9万トン/年設備建設の起工式を行った。

2013年8月に商業生産開始の予定で、これにより生産能力はAAが14万トン、SAPが9万トンとなる。

世界トップクラスのシェアを維持するため、SAP増産を当初の計画(30千トン)より拡大し、原料であるAAも含め増強する。

2011/4/6 日本触媒、インドネシアでアクリル酸と高吸水性樹脂を増強

 同社は8月2日、2013 年5 月末完工を目途に姫路製造所内に生産能力年8万トンのアクリル酸の新プラントを建設すると発表。
 合わせて、
アクリル酸特殊エステル年産能力2万トンの新プラントを川崎製造所に建設し、姫路と合わせ6万トンにすると発表した。
 

日本触媒の現状と計画は下記の通り。(千トン)

  アクリル酸 SAP
現状 計画 現状 計画
日本 460   80 320  
US 60   60  
ベルギー     60  
インドネシア 60 80   90
シンガポール 40      
中国     30 30
Total   620   160   470  90
780 560 +30


付記

日本触媒は2012年1月31日、中国の能力を倍増すると発表した。
2014年3月末完成、7月から商業運転を開始する予定。

 

ーーー

住友精化は7月26日、高吸水性樹脂の堅調な需要の伸びに対応するため、姫路工場での増設を決定したと発表した。
新設備の能力は54千トンで、増強後の姫路の総能力は164千トンとなる。

併せて、7,000KWHの自家発電設備も増設する。
いずれも2012年12月に完成の予定。

同社は5月31日に、フランスで高吸水性樹脂を増設すると発表した。

同社は2008年4月にArkemaからこの事業を買収して、ArkemaのCaring工場で製造委託を行っているが、ここに27千トンの設備を増強し、合計能力を47千トンとする。
完成は2013年春を予定している。
販売はSumitomo Seika Europeが行っている。

このほかSumitomo Seika Singapore(住友精化 80%、住化シンガポール 20%)が、シンガポールSakra島で製造している。

住友精化の現状と計画は下記の通り。(千トン)

  現状 増強 完成後
姫路工場   110   54 164
フランス 20 27 47
シンガポール 69   69
合計 199 81 280

ーーー

なお、三洋化成工業 60%/三菱化学 40%のJVのサンダイヤポリマーは2010年4月、中国の子会社三大雅精細化学品(南通)有限公司で70千トンの増強を行うと発表した。2011年7月完成予定。

同社の現状と計画は下記の通り。(千トン)

  現状 増強 完成後
名古屋工場   105    105
大垣工場 20   20
中国 65 70 135
合計 190 70 260

 

同社では完成後は年産26万トンで世界第4位になるとしている。
しかし、各社とも増強しており、増強後には、日本触媒、BASF、Evonik、住友精化に次ぐ5位と思われる。

各社の詳細は 2009/9/26 高吸水性樹脂業界の動き

ーーー

日本触媒は世界の主要SAPメーカーの生産能力を以下の通りとしている。(2010/11/5決算説明会資料)
(筆者の数値と若干異なる。日本触媒以外の社名は筆者の推定) 

付記 
BASFは2011年8月19日、ブラジルの
Camaçariに5億ユーロ以上を投じて、アクリル酸、ブチルアクリレート、SAPプラントを建設すると発表した。能力は明らかにしていない。アクリル酸とSAPは南米で初めての工場となる。

 

BASFは2010年12月17日、ベルギーと米国の高吸水性樹脂の能力を増強すると発表した。
ベルギーのAntwerpと米国のFreeportのプラントをデボトルネッキングなどで2012年までにそれぞれ35千トン増強し、同社の合計能力を年産47万トンとする。

BASFの高吸水性樹脂の主工場はAntwerpとFreeportで、ほかにドイツのMannheim とタイのRayongにもプラントを持つ。

同社の能力は以下の通り。(単位:千トン)
現在、SinopecとのJVのBASF-YPC(南京市)で60千トンのプラントを建設中。

    過去 現状 増強後  
欧州 Antwerp   115   175 210  
Mannheim 25 25 25  
米国 Portsnmouth,VA 115 - - 元Clariant
Aberdeen, MS 65 - - 元Chemdal
Freeport,TX - 180 215  
タイ Rayong 20 20 20 元Chemdal
合計   340 400 470  
中国JV 南京(BASF-YPC) - - 60  
再計   340 400 530  

 

2010/12/22  BASF、高吸水性樹脂を増強 

8月2日の期限切れでの米国史上初のデフォルトを目前にし、米与野党指導者は7月31日夜、連邦政府の債務上限を2.1兆ドル引き上げるとともに、その条件として今後10年間で2.5兆ドルの財政赤字を削減することで合意に達した。

下院は8月1日、賛成269票、反対161票で可決した。
上院は8月2日、賛成74、反対26で可決した。

オバマ大統領は直ちに署名し、法律となり、デフォルトは寸前に回避された。

しかし、最大の焦点だった財政赤字削減の具体策は先送りされ、米国債の格下げ懸念も続く。

 

連邦政府の債務については、 1917年成立の公債法(Second Liberty Bond Act)で上限が定められている。
1917年には限度額が4000億ドルと決められたが、1962年3月以降74回、2001年以降では10回引き上げられている。

現在の上限は14.29兆ドル(約1130兆円)で、 5月に上限に達し、つなぎの資金繰り対策でしのいでいるが、8月2日までに上限が引き上げられなければ、米国は新たな借り入れができなくなり、米国債の利払いなどの資金が不足して、米国史上初のデフォルトに陥るおそれが指摘されていた。

しかし、前提となる財政赤字削減策で、民主党と共和党が争い、ぎりぎりまでもつれ込んだ。

民主党は富裕層向けの増税を主張、共和党は増税に反対、社会保障費のカットを主張した。

草の根保守派運動「Tea Party」の支持を受ける共和党議員らは上限の引き上げ自体に反対した。

共和党は半年程度の資金手当てに必要な1兆ドル規模の上限引き上げを実施した後、総額3兆ドルの赤字削減で合意すれば再度引き上げに応じる2段階方式を提案 した。
これに対し、民主党は来年末まで資金を手当てできるよう2兆7千億ドルの引き上げを行い、同額の赤字を10年間で削減する案を主張したが、共和党は「赤字削減の実現性が疑わしい」と批判した。

7月29日、下院は共和党のベイナー下院議長が提出した法案を、賛成218票、反対210票の小差で可決した。

まず9000億ドルだけ債務上限を引き上げ、2012年2月までに与野党で総額3兆ドルの赤字削減で合意すれば、更に1.6兆ドルを引き上げるもの。

法案は上院に即日送付されたが、与党民主党が賛成多数で同法案を審議しないことを決め、廃案となった。 

 

今回の合意内容は以下の通り。(細目追加

 ・今後10年間で約1兆ドルの支出を削減(先行決定)

10月1日から10年間9170億ドルの削減(初年度は210億ドル)

 ・大統領に2.1兆ドルの債務上限引き上げ権限

デフォルトを避けるため、直ちに4000億ドル
9月中に追加の5000億ドル(議決必要だが、大統領に拒否権)

12月末に予算修正案が通れば、追加の1.5兆ドル、通らなければ1.2兆ドルの引き上げ権限授与

 ・超党派の特別委員会が11月末までに1.5兆ドル規模の財政赤字の追加削減策を大統領と議会に報告    

11月23日までに1.2~1.5兆ドルの削減案決定(増税、福祉費、軍事費を含める)
議会は12月23日までに採決(修正なしで yes or no、遅延認めず) 

付記 米議会の超党派委員会が、11月23日の期限を前に、決裂した。
    民主党:2.3兆ドルの赤字削減、うち富裕層向けに1兆ドルの増税
    共和党:年金、医療保険の大幅縮減

否決の場合、10年間1.2兆ドルの予算カット条項発動(2013年1月から)
  半分は国防・安全保障費、メディケアも一部カット、
Social Security とMedicaidは除外

      12月末に予算修正案(シンボリックなもの)
     通れば、追加の1.5兆ドル、通らなければ1.2兆ドルの債務上限引き上げ権限授与

 

先行決定の1兆ドルの支出削減には、大統領が強く求めていた富裕層向けなどの増税措置は盛り込まず、基本的に歳出削減で対応する。

追加赤字削減策の対象には、
  社会保障費や高齢者医療保険への切り込み:民主党リベラル派にとり妥協の余地は少ない、
  税制改革も対象:共和党主張の「増税なき財政赤字削減」路線が覆る可能性
  軍事費削減
が含まれ、難航は必至であり、今回は単に時間稼ぎをしたに過ぎない。

また、2012会計年度の予算教書ベースでは、米財政赤字は向こう10年で累計7兆ドル超に上る見込みで、仮に2.5兆ドル規模の赤字削減が実現しても、巨額の財政赤字が残ることとなる。 

 

付記

米格付け会社Standard & Poor'sは8月5日、米長期国債の格付けを最上位の「AAA」から1段階引き下げて「AA+」に格下げしたと発表した。
米政府の債務削減計画が格付けを維持するには不十分と判断した。

さらに今後の格付けの見通しを、追加引き下げの可能性がある「Negative(弱含み)」とした。今後2年以内にさらに1段階格下げして「AA」にする可能性があるという。

日本の国債の長期国債の格付けについては、本年1月に「AA」から上から4番目の「AA-」に下げ、見通しは4月に「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた。

 

  

韓国鉱物資源公社(Korea Resources Corp.) とPOSCOのコンソーシアムは7月30日、ボリビアで国営鉱業会社COMIBOL:Corporacion Minera de Boliviaとリチウムバッテリー事業推進のための合弁会社を設立する覚書を締結した。

覚書は韓国をボリビアのリチウム事業推進の戦略的パートナーと認定し、来月にも合弁事業推進のためのタスクフォースを構成し、詳細を詰める。

SK Innovation とLG Chem もこれに参加する予定。

SK Innovationは旧称 SK Energy。
2011年1月に石油事業(SK Energy)と化学事業(SK Global Chemical)を分離し、2009年設立のSK Lubricantsとともに100%子会社とした。

SK Innovationは持ち株会社で、主に研究開発(R&D)分野と資源開発(E&P)分野を担当し、リチウムイオン電池用分離膜(LiBS)事業も受け持つ。

LG Chemは電気自動車用バッテリーを現代・起亜自動車、CT&T、GM、Eaton Corporation、長安汽車、ボルボ、Fordなどに供給、子会社のCompact Powerがミシガン州Hollandでリチウムイオン電池工場を建設している。

2010/7/17 オバマ大統領、LG化学の米工場起工式で祝辞

覚書に基づき、韓国各社はリチウム採掘の共同調査のため、近くウユニ塩湖に調査団を派遣する。

また世界4位の鉄鋼メーカーであるPOSCOは、ウユニでの炭酸リチウム製造・加工設備建設にも応札する予定。

ーーー

鉱物資源公社は2009年8月、ボリビア科学委員会および国営鉱業企業と了解覚書を締結し、ウユニ湖の塩水で炭酸リチウムを製造する技術を開発してきた。

2009/5/5 韓国鉱物資源公社、ボリビアでリチウム鉱開発へ

2010年8月、ボリビアのモラレス大統領が韓国を国賓訪問した。同大統領と李大統領は、韓国鉱物資源公社とボリビア鉱山公社の「ウユニ塩鉱山の蒸発資源産業化研究開発に関する了解覚書」締結式に立ち会った。

モラレス大統領は訪韓中、LG化学研究所を訪問し、韓国の最先端リチウムイオン電池生産技術を見学した。

2010/8/27 韓国とボリビア、リチウム開発で覚書

ボリビアのピメンテル鉱業・金属相は2010年11月、リチウムの共同開発のパートナー国の選定については、国内のリチウムイオン電池の生産が条件となると明言した。

日本とフランスなど約10か国がCOMIBOLと交渉を続けているが、鉱物資源公社では、今回の覚書締結で、リチウム開発で有利な地位に立ったとしている。

 

富士フィルムは7月28日、ジェネリック医薬品大手のインドのDr. Reddy's Laboratories Ltd(DRL)と、日本市場向けのジェネリック医薬品事業で業務提携し、国内に合弁会社を設立する基本合意を締結した。

設立する合弁会社はジェネリック医薬品の開発・製造をするもので、出資比率は富士フイルムが51%、DRLが49%となる。
2014年のジェネリック医薬品の市場導入を目指す。

富士フイルムが写真フィルムで培った高度な品質管理技術や生産技術と、DRLがグローバル展開の中で蓄積してきた原薬や製剤中間体の低コスト生産技術などを融合して、高品質でコスト競争力に優れたジェネリック医薬品を開発・製造する。
日本市場のニーズを取り入れた製品設計を行なうことで、信頼性の高いジェネリック医薬品を提供し、さらなる普及を図る。

また、DRLとの提携を足がかりに、DRLのネットワークを通じて、ワールドワイドにスーパージェネリック医薬品を提供することも検討していくとしている。

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DRLは1984年設立のインドのトップクラスの大手医薬品会社で、世界でもトップ10に入るジェネリック医薬品の開発・製造・販売会社。
売上高2011年3月期で1,667百万米ドル、その31%を北米、22%を欧州、15%をロシア、32%をインドを含むその他地域で占めている。
事業構成は医薬品原薬事業、開発薬事業、後発医薬品事業、委託生産サービス事業となっており、後発医薬事業は欧米市場向けに伸びている。

2009年にGlaxoSmithKline (GSK)と提携、GSKはDRLの100以上の製品をアフリカ、中東、アジア太平洋、ラテンアメリカで販売する権利を得た。特定の市場では両社が販売する。

本年6月には、DRLはGSKから米国のペニシリン事業を買収した。テネシー州Bristolの工場と、2つのブランドを取得した。他の地域ではGSKが引き続き販売する。

同社は昨年8月に、日本の後発医薬品市場に参入するため、提携先と協議中であることを明らかにした。
当時は、東和薬品、沢井製薬、富士製薬工業などが相手ではないかと推測されていた。

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富士フイルムは、メディカル・ライフサイエンス事業を重要な成長分野として位置付け、「予防~診断~治療」の全領域をカバーする総合ヘルスケアカンパニーを目指した事業展開を進めている。

2008/2/19 富士フイルム、富山化学を買収、総合ヘルスケア企業を目指す

2010/2/22  富士フイルム 医薬品開発・販売に本格参入

2010/9/3  富士フイルム、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングと資本提携

2011/2/28  富士フイルム、米メルクからバイオ医薬事業買収

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世界のgeneric医薬品メーカー大手は以下の通り。医薬品大手が含まれている。
シェアは日経推計 (2011/5/3)

企業 備考 シェア
 
(%)
日本の活動
Teva Pharmaceutical イスラエル 米国 Barr Pharmaceuticals を買収
ドイツRatiopharmを買収
12.0 興和テバ 
大洋薬品を買収
Sandoz ドイツ Novartis のgeneric 部門 6.3 サンド
ニプロと業務提携
Mylan アメリカ ドイツMerck のgeneric部門買収
インド Matrix Laboratories を買収
4.0 マイラン製薬
Watson Pharmaceuticals アメリカ Andrx を買収 1.7  
Greenstone アメリカ Pfizerのgeneric 部門   ファイザー
Apotex カナダ      
Stada Arzneimittel ドイツ      
Winthrop 英国 Sanofi-Aventis のgeneric 部門    
Bayer ドイツ      
Actavis Group アイスランド 米 Amide Pharmaceutical を買収
Alpharmaを買収
(
AlpharmaCoxを含む
Hoechstgeneric部門を買収)
  あすかActavis製薬
Dr. Reddy's Laboratories インド     富士フィルムとJV設立
Ranbaxy Laboratories インド 第一三共が買収    
Sanofi Aventis フランス     日医工サノフィ・アベンティス

 

政府は7月29日、第2回エネルギー・環境会議を開催した。

  議題 1.当面のエネルギー需給安定策について 
      2.「革新的エネルギー・環境戦略」策定に向けた中間的な整理について

概要は以下の通り。

1.当面のエネルギー需給安定策
   http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20110729/siryo1_1.pdf

原子力発電所が再起動しない場合の電力需給動向は以下の通り。 (単位:万kw

    ピーク需要 供給能力 過不足 対策
今夏 東日本 7,986 7,401   -585 -7.3% 平日昼間における15%の節電要請と
大口需要家への電力使用制限
中西日本 9,968 10,070 102 +1.0% 関西電力管内は、平日昼間における10%超の節電要請
合計 17,954 17,471 -483 -2.7%  
     
今冬 東日本 7,149 7,069 -80 -1.1% 平日昼間における節電要請に加えて
補正予算などを活用した政策支援
中西日本 8,662 8,629 -33 -0.4% 同上
合計 15,811 15,698 -113 -0.7%  
     
来夏 東日本 7,986 7,152 -834  -10.4% 同上
中西日本 9,968 9,145 -823 -8.3% 同上
合計 17,954 16,297 -1,657 -9.2%  

前提
①最大電力需要は、昨年実績 or 各社の今後の見通し
   (需給調整契約によるカットを折り込まず)   →対策余地あり
②定期検査に入った原子力発電所について再起動なしの場合
③火力発電所等は、7月27日時点の見通し
   →電力会社による供給力の積み増し、自家発による供給力積み増しを期待

原発を再稼働させない場合の電力コストアップは3.16兆円(経産省試算)
 原発発電量 x (火力燃料費 ー 原発燃料費)

 原発発電量 2745億kwh(2009年実績稼働率)
 火力燃料費 12.5円/kwh (LNG 11円、石油 16円)
 原発燃料費 1円/kwh

 LNG価格上昇など、折り込まず。

基本的な対処方針5原則

(1)原子力発電所の停止が広範に生じた場合でもピーク時の電力不足とコスト上昇を最小化する
(2)計画停電、電力使用制限、コストの安易な転嫁を極力回避する。
(3)政策支援や規制・制度改革で持続的かつ合理的な国民行動を全面支援し、エネルギー構造改革を先行実施。
(4)経済活性化策としてエネルギー需給安定策を位置づける。
(5)国民参加の対策とするため、3年間の工程を提示する。
 

目標達成へ向けた具体的な対策

 (1)需要構造の改革
      省エネ商品の導入促進
  産業の省エネ投資の促進
  住宅や工場、ビルの省エネ投資促進等
  家庭も含む需要家による投資促進
  スマートメーター(通信機能付き高性能メーター)の導入促進及び活用
  地域ぐるみの節電行動への支援、地域における分散型エネルギーの地産地消システムの構築、地域主体の発電事業者の育成
  就業日・時間のシフト等、社会行動改革の促進
     
 (2)効率性と環境性を重視、あらゆる主体の電力供給への参加を促す
  再生可能エネルギーの導入拡大
  火力発電の増強、高効率化支援等
  資源確保戦略の強化
  ピーク電力供給力強化
  分散型電源(再生可能エネルギー、熱やガスを併給する燃料電池やコジェネレーションシステム等環境性の高いエネルギー)、スマートコミュニティー(次世代エネルギー・社会システム)の導入促進
     
 (3)電力システムの改革(需要構造改革と供給構造の多様化の視点で)
  柔軟な料金メニューの設定などの需要家のピークカットの誘引強化、小売事業の自由化などを通じた需要家の選択肢の拡大
   電力卸売市場の整備など、電力会社間及び電力会社と自家発の間の競争促進
  電力会社の調達改革によるコスト構造のスリム化
  送電・配電システムの機能強化
 (送電・配電網のスマート化や連系送電網の整備、再生可能エネルギー導入の基礎となる送電網の拡充) 
  送電・配電事業の中立性・公平性の強化
     
 (4)再起動も含め原子力安全対策を徹底するという国の姿勢を明示
     

 

2.「革新的エネルギー・環境戦略」策定に向けた中間的な整理
  http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20110729/siryo2_1.pdf
 

戦略の基本理念

 基本理念1:新たなベストミックス実現に向けた三原則

   原則1:原発への依存度低減のシナリオを描く。
   原則2:エネルギーの不足や価格高騰等を回避するため、明確かつ戦略的な工程を策定する。
   原則3:原子力政策の徹底検証を行い、新たな姿を追求する。

 基本理念2:新たなエネルギーシステム実現に向けた三原則

   原則1:分散型のエネルギーシステムの実現を目指す。
   原則2:課題解決先進国としての国際的な貢献を目指す。
   原則3:分散型エネルギーシステム実現に向け複眼的アプローチで臨む。

 基本理念3:国民合意の形成に向けた三原則

   原則1:「反原発」と「原発推進」の二項対立を乗り越えた国民的議論を展開する。
   原則2:客観的なデータの検証に基づき戦略を検討する。
   原則3:国民各層との対話を続けながら、革新的エネルギー・環境戦略を構築する。
 

戦略工程

(1)短期(今後3年の対応)
   エネルギー構造改革の先行実施。当面は需給安定に全力。
   原発への依存度低減について、国民的議論を深め、対応を決定。

(2)中期(2020年を目指して)
   新たなベストミックスとエネルギーシステムを目指す。

(3)長期(2020年から、2030年又は2050年を目指して)
   新たなベストミックスとエネルギーシステムの成果を実現する。


「革新的エネルギー・環境戦略」策定に向けた論点を整理する
  ①原子力をはじめとしたコストの徹底的な洗い出し及び中長期的な見通し、
  ②再生可能エネルギーをはじめとした技術革新と経済拡大効果の見極め、
  ③化石燃料をはじめとした環境性能向上の可能性の評価等、前提となる検証事項について具体化する。

「コスト等試算・検討委員会(仮称)」の設置
 「客観的なデータの検証に基づき戦略を検討する」ことが原則となる。
 原発をはじめとする電源別のコスト、再生可能エネルギーの導入可能量等などを検討し、方針策定に反映。

① どのような試算方法が適当か。
② 前提条件の設定が適切か。
③ 政策経費を勘案すべきではないか
④ 各電源別に、それぞれ考慮すべき重要な項目があるのではないか。
⑤ その他、試算にあたっては影響を考えるべき事項もあるのではないか。

 

資料:発電コスト試算比較(今後の方向性)

筆者注
各エネルギーの縦棒の上下にある数値は、これまでに発表された発電コストの幅を示す。
それに対し、点線の矢印(紫の上向き、ブルーの下向き)で今後の変動の可能性を示している。

太陽光発電の、2020年14円、2030年7円はNEDO「太陽光発電ロードマップ」(2009年6月)

原子力の「バックエンド」は
放射性廃棄物の処分費用で、現在一部だけが計算に入っている。
(原子力では、一般会計のエネルギー対策費や電源開発促進対策特別会計もコスト計算に入っていない)

 

原子力のコストについては大島堅一立命館大教授の分析がある。


    詳細な解説は http://iwakamiyasumi.com/archives/8207

             水力発電には揚水発電(原発の夜間電力利用)が含まれ、これを除くともっと安い(最近で3.5円)としている。

 

ニプロは727日、医薬用硝子容器事業でインド、ロシア、欧米への進出を発表した。

同社は、1954年の創業以来、アンプル用・錠剤瓶用の硝子管販売等の素材・材料関連事業に携わり、そこで培われた技術を礎に医療機器、医薬品等の事業に拡大展開を図ってきた。

2020年度に向けてのグループ長期計画では、連結売上高5,000億円を目指すが、材料関連事業を1,000 億円の事業規模に成長させるとなっている。

同社では、長期計画を遂行するは、市場規模の拡大が見込める海外における展開が必須と考え、手を打ってきた。

20109月に、海外展開の一環として、中国四川省でアンプル・管瓶などを製造販売する成都平原尼普洛薬業包装有限公司の60%を取得し、合弁事業を開始した。
日本で培った技術で品質を向上しつつ低コストでの生産を実現し、中国を含めた世界各国における展開を行う計画で、今後、他の中国企業数社とも合弁事業を行う予定。

20113月には日本電気硝子の株式の10.62%を取得して主要株主となり、材料硝子について協働して世界展開を図ることとした。

今回、以下の3件を発表した。

1)インドにおける合弁事業の開始

ンドでアンプル・バイアルなどを製造販売するTube Glass Containers Ltd.の発行済株式の55%を取得し、合弁事業を開始した。

ニプロは、既に20104月に医薬用硝子生地管の製造販売を行うNipro Glass India Ltd.を立ち上げており、生地管供給からアンプル・バイアルの加工までをグループ内で一貫して行う体制が整う。

2)ロシアにおける合弁契約締結

ロシアにおける医薬用硝子事業の展開のため、医療事業において長年の取引関係がある現地企業Freesom Holdings Ltd.と合弁契約を締結した。(ニプロ 51%出資)

スイスに合弁持株会社Nipro Pharma Glass AGを設立し、ロシアへの投資を行う形態をとる。

合弁パートナー企業が保有する硝子工場を基盤にし、本年12月には操業開始の予定で、将来的には生地管製造から加工までの完全内製化した製品の流通を視野に入れる。
高品質と低価格を武器にロシアの医薬用硝子容器市場におけるロシア国内トップシェアを目指し、周辺CIS諸国への販売も行う。

3)Amcor 社のガラス事業取得

オーストラリア最大の包装資材メーカーのAmcorから、医薬品容器用等の硝子事業および子会社株式を161百万米ドルで譲り受けた。

Amcorの医薬用硝子事業は120年余りの歴史があり、高品質の製品を製造する技術力を蓄積してすでに欧米の有力製薬企業の多くと取引関係を確立している。
この取得により、欧米での事業を一気に拡大する。

譲受けの対象は以下の通り。
Amcor Packaging Glass Pharma SASの全株式
   フランスで医薬用アンプル、バイアル、生地管等硝子製品の製造販売
   
Nipro Glass France S.Aと改称

Amcor Verrerie Amiable Industrie et Commerce SAの全株式
   ベルギーで医薬用バイアル等硝子製品の製造販売
   
Nipro Glass Belgium N.V.と改称

Amcor Pharmaceutical Packaging USA Incの硝子事業
   米国でアンプル、バイアル、硝子生地管等、硝子製品の製造販売
   ニプロが新規設立した子会社
Nipro Glass Americas Corporationが取得

ーーー

なお、これらとは別に、ニプロは711日、Novartis generic 部門であるSandozとの間で、日本国内における後発医薬品の開発、販売、製造等の事業活動において、広く協力する旨を定めた戦略的業務提携契約を締結したと発表した。

両社は2007年から、複数の後発医薬品について提携を開始している。
これをベースに、開発品および既販売の後発医薬品について、共同開発、共同販売、その他導出入等を通じて、より効率的な事業活動を行う。資本提携は行わない。

イラン、イラク、シリア3国の石油相は7月25日、イランのSouth Parsガス田からイラク、シリア、レバノンを経由し、地中海の海底を通って欧州まで通じるガスパイプラインの建設の覚書を締結した。

1か月内に3つのワーキンググループが技術面、資金面、法律面の検討を開始する。年内に最終契約の締結を目指す。

実際のルートは不明

2008年から検討が続けられてきたもので、総投資額は100億ドル程度と見積もられている。資金の確保後、35年が必要とみられている。

Islamic Pipelineと呼ばれる56インチのパイプラインは延長5600kmで、完成すれば日量110百万m3(年間400m3)の天然ガスを輸送できる。

イランのガス生産量は23年内に倍増し、日量250百万m3のガスの輸出が可能となる。
イラクの必要量は
10-15百万m3、シリアは15-20百万m3、レバノンは5-7百万m3とされる。

イランとイラクはこのパイプラインを通して欧州にイランのガスを送ることでの協力を決めている。

ーーー

イランはまた7月23日に、トルコに天然ガスを送る660kmのパイプラインを建設する契約を締結した。
3年以内に建設され、日量50~60百万m3のガスを輸送できる。
全体の23%はイランが建設し、残りはトルコ側(
Som Petrol)が建設する。

イランは欧州へのガス輸出のため、トルコを横断するパイプラインの使用料を支払う。

ーーーーーーーーーー

欧州の天然ガス需要を満たすため、現在、NabuccoSouth StreamNord Stream3つのパイプラインが計画されている。

これらについての詳細は下記参照。

2010/9/22  カスピ海の天然ガス、黒海経由で輸出へ

2011/3/30  BASFがロシアの South Stream 天然ガスパイプライン計画に参加

Nabuccoガスパイプラインの建設・運営会社はこのほど、着工時期を2011年末から 13年に延期し、2014年末に予定していた稼働時期も2017年に先延ばしした。「カスピ海地域と中東からの供給時期の変更」を理由に挙げた。

South Streamでは20115月中旬、投資計画決定が12年末に延期された。通過国の許可取得やルート選定で調整が遅れている。稼働時期は15年末から変更せず、Nabuccoに先行したい考え。

Nord Streamはシベリアの天然ガスであるが、他は全て、中央アジアの天然ガスを狙ったもので、量的にも全てが実現することはないとみられている。

このため、米国による制裁にもかかわらず、イランの天然ガスの重要度が増大している。

 

 

Dow727日、ポリプロ事業を340百万ドルでBraskemに売却する契約を締結したと発表した。

Dowは、この売却金額は金利償却前利益の6.7倍になり、これにより売却益を計上するとしている。

売却するのはダウの米国の2工場とドイツの2工場、および、在庫、事業ノウハウ、特定の技術、需要家リスト。

米国の工場はテキサスの
Freeport Seadriftにあり、合計能力は50万トン。(後者は100%子会社のUCCの工場)
ドイツの工場は
Schkopau Wesselingにあり、合計能力は54.5万トンとなっている。

Braskem2010年に米国の石油会社Sunocoからポリプロ事業を買収し、ペンシルベニア州Marcus Hook、テキサス州La Porte、ウエストバージニア州Neal3工場を取得しており、今回の買収で米国最大のPPメーカーに躍り出る。

2010/2/3 Sunoco、ポリプロ事業をブラジルのBraskemに売却

Braskemは今回の買収で米国の能力は5割増しの140万トンになるとしている。
Sunocoの事業買収時には合計能力は95万トンとしていた。)

また、今回の2つ目の買収により、グレード多様化、経費削減、運転資金や物流の最適化を通じ、140百万円のシナジー効果が見込めるとしている。

Dowではこれを、付加価値の高い技術差別のつけられる分野への移行方針の一環であるとしている。

Dow5月後半にPPレジン事業と触媒事業の売却先を探していることを明らかにしていた。
今回の売却には触媒事業は含まれていない。

Dowはこの2週間で、三井物産とのブラジルでのバイオプラスチック事業サウジでのAramcoとの石油化学事業と立て続けに新規事業の発表を行っている。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

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