「no」と一致するもの

カタールでLNGの増産工事が完了、国家目標としてきた年産7700万トン体制が完成した。本年2月のRasGas の第7系列780万トン完成に続き、Qatargasの第6、第7系列、各780万トンが完成した。

同国のLNG生産能力 は
2008年末と比べ2.5倍となり、世界のLNG生産能力の約3割を一国で握る。

1213日に生産設備がある工業都市ラスラファンで祝賀式典を行い、ExxonMobilShellConocoPhillipsなど大手エネルギー企業のCE0や、QatarLNGを輸入する中部電力など日本企業の首脳級も多数出席した。

カタールは1996年にLNG生産を開始した。単一鉱区としては世界最大級のNorth Fieldガス田から産出する天然ガスを液化、2006年にインドネシアを抜いて世界最大の生産国となった。
2008年末の生産能力は年3,000万トンだったが、09年から10年に大型プラントが相次ぎ稼働、残っていた2系列の設備が完成した。

日本は世界最大のLNG輸入国で、カタールからも電力・ガス会社が全輸入量の12%に相当する800万トン(2008年、スポット取引含む)を輸入している。プラント建設や海運、商社、銀行など広範な分野でも日本企業がカタールのLNG事業に関与している。

1992年に中部電力がQatargasとの間でLNG 400万トンの売買契約を締結、1994年に他の電力・ガス会社7社が200万トンの売買契約を締結した。
8社は「カタールLNGプロジェクト」で輸送船10隻を就航させ、19971月に第一船、20008月に第10船が入港した。

千代田建設が1998年完成のQatargas 1(第1~3系列)、2001年受注の同プラント増強工事、RasGas3・第4系列に続き、その後、Qatargas 2(第45系列)、Qatargas 3(第6系列)、Qatargas 4(第7系列)などほとんどのプロジェクトの基本設計業務を実施している。

同社は1976年にアブダビに年産100万トンクラスのLNGプラントを建設して以来、35年以上にわたり数多くのLNGプラントを設計・建設している。

 

ガス田 North Field

LNG基地 Ras Laffan

North Fieldで採掘されたガスは現地で分離、前処理される。
ガスとコンデンセートは海底パイプで
Ras Laffanに送られ、LPGが生産され、コンデンセートはナフサ等に精製される。

石油化学基地 MesaieedRas Laffan

副生エタンガスはMesaieedRas Laffanの石化プラントの原料となる。

LNGはいずれもQatar Petroleumのプロジェクトで、内訳は以下の通り。

計画名 系列 能力 出資者
Qatar
 Petroleum
その他
Qatargas 1 1 320万トン* 65%  ExxonMobil  10%
Total         
 10%
三井物産   7.5%
丸紅      7.5%
2 320万トン*
3 320万トン*
Qatargas 2 4 780万トン 70%  ExxonMobil 30%
5 780万トン 65%  ExxonMobil  18.3%
Total          16.7%
Qatargas 3 6 780万トン 68.5% ConocoPhillips 30%
三井物産    1.5%
Qatargas 4 7 780万トン 70%  Shell            30%
  合計   4,080万トン    
RasGas
Ras Laffan
 Liquefied Natural Gas
1 330万トン 70%  ExxonMobil 30 %
2 330万トン
3 470万トン
4 470万トン
5 470万トン
6 780万トン
7 780万トン
  合計   3,630万トン    
  総合計   7,710万トン    
         
なお、LNGに副生するコンデンセートを原料とするRefineryがある。
Laffan Refinery   Naphtha 
  
61,000 bpsd
Kerojet
 
  
52,000 bpsd
Gasoil
  
  
24,000 bpsd
LPG
   
   
9,000 bpsd
51%  ExxonMobil    10%
Total 
-------10%
出光興産    10%
コスモ石油   10%
三井物産---- 4.5%
丸紅       4.5%

 * Qatargas1 3系列の当初能力は各 200万トン。2005年にdebottlenecking
  
bpsdbarrel per stream day(フル能力1日当たり)

 


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


 

Lanxess とRoyal DSM はDSM Elastomers のLANXESSへの売却で合意した。1214日に発表した。
売却額は
310百万ユーロ。DSM Elastomers はKeltanブランドのEPDMを生産している。

DSMはLife SciencesとMaterials Sciences 及び中国を中心とするEmerging Business Areaを今後のCore businessにしている。

DSM Elastomers部門は、世界シェアの約16%を占めるEPDM(商標名 Keltan)とEPDMベースの熱可塑性エラストマー(商標Sarlink)から構成されていたが、いずれもこれから外れていた。

DSMは9月15日、DSM Elastomers部門の熱可塑性エラストマー事業(商標Sarlink)を米国のコンパウンド会社のTeknor Apex に売却すると発表した。EPDMについても売却の意向を示していた。

2010/9/17  DSM、熱可塑性エラストマー部門を売却、EPDMの売却交渉も

DSMはEPDMをSittard-Geleen(オランダ)とTriunfo(ブラジル)で生産している。
能力は前者が
16万トン、後者が4万トンで、合計20万トン。
2010年の売上高は380百万ユーロの見込み。従業員は420人。

DSMは1989年に出光とのJVの出光DSMを設立し、千葉でEPDM 年産4万トンの生産をしていたが、2003年にオランダに8万トンのプラントを建設、2004年9月末に千葉での生産を停止し、JVを解散した。
(1999年からはDSMが販売を担当し、合弁会社はDSMの製造委託会社となっていた。)

DSMはまた2004年に、老朽化した米国ルイジアナ州Addisの工場を停止している。

Bayerから分離独立したLanxessもTechnical Rubber Products部門でBayerから引き継いだBuna EPブランドのEPDMを販売している。
プラントはドイツのMarlと米国のOrangeで、
合計能力は12万トン。
今回の買収で全世界能力は
32万トンになる。

2009/7/6 合成ゴム100年

DSM Elastomersの買収で、LanxessACE技術を入手し、技術ベースを強化する。

DSM Elastomersは2008年に、NOVA Chemicalsから全世界独占実施権を得たシングルサイト触媒を使用したEPDMの生産を開始した。同社はこれをACE(Advanced Catalysis Elastomers)と呼んでいる。
エネルギー消費を節約、コストダウンとなるほか、適用分野の拡大が可能となる。

LanxessのTechnical Rubber Products部門は2009年の売上高が24億ユーロで、EPDMのほか、Polychloroprene rubber (CR)、 Hydrogenated nitrile rubber (HNBR)、Ethylene vinyl acetate rubbers (EVM)、Nitrile Rubber (NBR)などを持つ。
工場は
EPDM製造のMarl、Orangeのほか、ドイツのLeverkusenとDormagen、フランスのLa Wantzenauにある。

このほか、2007年にブラジルのBraskem とUnipar などからブラジルの合成ゴムメーカー Petroflex の株式の70%を購入、2008年に残りの株式についてTOBを行い、100%を買収した。

Lanxessは2008年2月、シンガポールに年産10万トンのブチルゴム生産拠点を新設すると発表した。2010年稼動の予定であった。
しかしその後、需要の減少を受け、2014年稼動に再延期すると発表している。
この期間を利用し、製造技術の更なる改良を行う。

同社の合成ゴムの総生産能力は1,404千トンとなっている。(日本ゼオン ファクトブック2010



目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


Occidental Petroleum 1210日、アルゼンチンの石油・ガス事業をSinopecに税引後で24.5億米ドルで売却する契約を締結したと発表した。

同社は同時に下記の資産の買収も発表した。

資産 売り手 買収額 内容
South Texas Shell 18億ドル 日量2億cubic feet
North Dakota private seller 14億ドル 石油換算日量5,500バレル
Plains All-American
(oil pipelines operator)
    13%追加買収で合計35%に
Elk Hills Power Plant Sempra Generation   50%買収で100%に

同社ではこれまでの北米での買収と合わせると、生産量はアルゼンチン資産売却分で失う分を上回るとしている。

Occidental200510月にラテンアメリカとカリフォルニアでの事業拡大のため、Vintage Petroleum35.2億ドルで買収した。
今回売却するアルゼンチンの権益はこれに含まれていたもの。

アルゼンチンのSanta CruzMendozaChubut 州に23箇所の権益を有している。
現在の生産量は原油換算で日量44千バレル。
(Sinopec発表では、2009年の生産量は原油換算 51千バレル以上、確認及び推定埋蔵量は同じく393百万バレルとなっている。)

アルゼンチン政府は石油・ガスの価格コントロールをしており、利益を得るのが難しくなっている。

アルゼンチンの経済政策の中心課題は、経済成長優先の低金利政策を取る中でのインフレ対策である。

消費者物価を抑えるために、エ ネルギー価格を低位安定させなければならない。
アルゼンチンは原油及び石油製品を自給できる状況にあるため、政府による価格統制で、エネルギーの国際価格の高騰にも関わらず、ガソ リン、電気料金を低位で安定させた。
当局者は「アルゼンチンの原油 生産コストは非常に低価であり、現在のような低価でも十分に利益を上げることができるはず」としている。

さらに、十分に国内需給が満たされているということが確認できないと原油輸出をすることができないとか、輸出に対して非常に重い税金が課せられるといった規制が講じられたままの状態にある。

海外メーカーにとっては、魅力のない市場ということになる。

カナダ紙の試算では、Sinopecの買値は原油換算バレル当たり19ドルとなる。

BP11月にアルゼンチンのPan American Energyの株式をCNOOC50%を保有するBridas Corporationに売却する契約を締結したが、これは8ドルとなっており、Occidentalは有利な条件で売却したとみている。

Sinopec によれば、本年上期時点で、同社の海外資産は全体の23%となっている。

Sinopecは10月にRepsol Brazilの71億ドルの増資の全額を引き受けている。

2010/10/9  SinopecRepsol Brazil71億ドル出資

 

 


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


 

Siam Cement は12月8日、同社の持つPTT Chemicalの株式 20.02%のうち、15.6%を約11億米ドルで売却することを明らかにした。
売却資金を国内外の自社のコア事業の拡張と買収に充てる。
なお、残りの
4.42%は持ち続ける。

過去の経緯から出資をしているが、PTT Chemicalは実質、国有石油ガス会社のPTTの会社であり、Siam Cement はマイナリティ株主で経営に参加していないため、売却を決めた。

PTT Chemicalは2005年12月に、タイのオレフィンメーカー、National Petrochemical Corp. (NPC) Thai Olefins (TOC)が合併して誕生した。

NPCとTOCには国有石油ガス会社のPTTSiam Cement が、それぞれ出資していた。

当初、Siam Cement グループは石化誘導品だけでオレフィンは持っておらず、オレフィンメーカーの両社に出資した。
その後、最後発として
Rayong Olefins を設立し、オレフィンにも進出した。
このため、
Siam CementグループはPTT Chemicalの株主ではあるが、オレフィンから誘導品まで、PTT Chemicalと競合関係にある。

タイにはこのほか、IRPC Public Company (当初名 Thai Petrochemical Industry:TPI)がオレフィンを製造している

合併はPTTの方針によるもので、PTTが株式の50.03%を保有し、同社の連結子会社となった。
現在の
PTT出資比率は49.16%だが、第三位株主は2.81%のHMC Polymersであり、実質的にPTTの子会社である。

両社の出資関係は以下の通り。 

  NPC TOC 合併
 →
PTT Chemical
当初 現在
PTT  38%  49%    50.03%  49.16%
Siam Cement 35% 7%    21.79%  20.02%→売却15.6%
      保有
4.42%

PTT Chemical国有石油ガス会社PTTの石油化学部門として、自らエチレンやPEの設備を持つとともに、PTTの元子会社を傘下に持っている。

100%子会社
社名 製品 能力
 千トン
 
Bangkok Polyethylene HDPE    250  
PTT Polyethylene エチレン    1,000  
LDPE 300
LLDPE 400
Thai Styrenics PS       90 三菱化学のHMT Polystyrene
のプラント買収
TOC Glycol EO          85  
MEG 423
Thai Ethanolamines Ethanolamine  50  
Thai Oleochemicals Methyl ester      200  
Fatty alcohol 100
Glycerin 31
Thai Fatty Alcohol Fatty alcohol 100  
 
関連会社
  出資比率 JV相手 製品  能力
 千トン
 
Thai Ethoxylate 50% Cognis Fatty alcohol ethoxylate  50  
PTT Phenol 30% PTT 40%
Aromatics (Thailand) 30%
Phenol 200  
Aceton 124  
BPA 150 三菱化学技術
Vinythai 20% Solvay 49.99%
PTT Chemical 24.98%
Charoen Pokphand 11.87%
ソーダ 266  
VCM 400
PVC 280
Epichlorohydrin 100 菜種油→バイオディーゼルの
副生グリセリンを原料
HMC Polymers 0 PTT 40%
LyondellBasell
Bangkok Bank
PP 455 2006年にPTT本体が出資

Siam Cement も石油化学で傘下に下記の子会社やJVを持ち、多くの分野で競合している。  

  製品 能力
 千トン
 
子会社
   Rayong Olefins エチレン 800  
プロピレン 400
Thai Polyethylene LDPE  100  
LLDPE 120
HDPE 580
Thai Polypropylene PP 320  
ダウとのJV
  Siam Polyethylene LLDPE 300  
Siam Polystyrene PS 150  
Siam Styrene Monomer SM 320  
Siam Synthetic Latex      
Pacific Plastics (Thailand) Polyether Polyol 25 2007/11 ダウ100%
Synthetic Latex 20
三井化学とのJV
  Siam Mitsui PTA PTA 1,400 三井 49%、Siam 49%
Grand Siam Composites PPコンパウンド 84 三井 48.2%、Siam 46.2%
Thai PET Resin PET Resin 100 三井 40%、東レ 40%、Siam 20%
その他JV
  Thai MMA MMAモノマー 90
(+90)
三菱レイヨン50.01%
Siam 46%
ブチルメタクリレート 10
Thai MFC     日本カーバイド
海外JV(Indonesia)
  PT. TPC Indo Plastic & Chemicals
(
旧称 Siam Maspion Polymers)
    Siam TPC 100%
Thai Plastic & Chemicals 40% / Siam Cement 60%
  新第一塩ビが技術輸出
関係会社
  Thai Plastic & Chemicals VCM 545 Siam 44.24 %
PVC 540
Paste PVC 35

ダウ2008年6月、サイアムセメントとの合弁会社のSCG-Dow がタイで過酸化水素法PO工場の建設に着手したと発表した。生産能力は年産39万トンと世界規模。同時にプロピレングリコールも生産する。稼動開始は2011年の予定。
過酸化水素(HP)は、ダウとソルベイが設立する合弁会社が、隣接地に新工場を建設する。

  2008/6/16 Dow、タイで過酸化水素法PO工場建設

なお、ダウは2006年10月、タイでサイアムセメントとのナフサクラッカーJV計画を進めると発表した。
11億ドルを投じてRayongに新しいナフサクラッカーを建設するもので、能力はエチレン90万トン、プロピレン80万トン。
サイアムが
67%、ダウは33%出資する。2010年稼動を目指すとしていた。

しかし、その後、本件についての発表はない。

   2006/10/24 ダウ、アジア進出を促進

PTT Chemical Group と株主のSiam Cement のグループとの競合状況は以下の通り。

  エチレン

  エチレン プロピレン
TOC 915 360
NPC 461 127
PTT Chemical 1,376 487
512
PTT Polyethylene 1,000  
PTT Chemical Group 2,376 512
     
Rayong Olefins 800 400
Siam Cement Group 800 400

  合成樹脂  

  LDPE LLDPE HDPE/
LLDPE
HDPE PP PS
PTT Chemical (NPC       250
(+50)
   
BPE (Bangkok Polyethylene)        250
(+250)
   
PTT Polyethylene 300 400        
HMC Polymers         455  
Thai Styrenics           90
PTT Chemical Group  300  400   500
(+300)
455 90
             
Thai Polyethylene 100   120 580    
Siam Polyethylene   300        
Thai Polypropylene         320  
Siam Polystyrene            150
Siam Cement Group 100 300 120 580  320 150

参考  

   2006/6/8  タイの石油化学の現状
   2006/10/6  タイで年産100万トンエチレン建設


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


法人税率の5%引き下げの2兆円の財源として石化原料用ナフサの免税措置の縮小・見直し案が取り上げられた。

2010/11/3 法人税率引き下げとナフサ課税

この案は消えた模様だが、財源が不足し、法人税率の5%引き下げが危うくなっている。
12月12日の閣僚協議でも、野田財務相は「財源がなければ下げ幅は5%未満にすべき」という考えを変えず、5%の引き下げを主張するほかの閣僚との間で意見が対立した。
   

付記   

菅直人首相は13日夜、焦点となっている法人税率の引き下げについて、国と地方をあわせた実効税率(40.69%)を5%幅引き下げるよう、野田務相や玄葉国家戦略相に指示した。企業の税負担を減らすことで首相が掲げる「経済成長と雇用拡大」につなげる。   

実効税率を5%幅引き下げると、税収は国と地方合わせて1兆5千億円程度減る。政府税調は、減収分を企業向けの減税措置の縮小などによる増税でできるだけ穴埋めしたい考えだが、「繰り越し欠損金」や減価償却制度の見直しなど、企業増税で捻出できる財源は6500億円にとどまり、企業にとっては、差し引きで「実質減税」となる。    

ーーー

経済評論家の池田信夫氏が12月10日のブログ「日本の法人税率は高いか」で、6月24日付の赤旗の記事を引用しているが、そのなかにナフサ免税に関し、以下のような、誤解を生じかねさせない記載がある。

法人税率の引き下げをめぐる論争が大詰めを迎えた。財務省は租税特別措置の削減を交換条件にしようとしているが、日本経団連は強く抵抗している。他方、赤旗は「日本の法人税率は高くない」と、次のような調査結果を示している。どれが正しいのだろうか?

正しいのは赤旗である。経常利益の上位100社というバイアスはあるが、日本の法人税がいかに歪んでいるかをよく示している。ニューズウィークでも書いたように、日本の大企業に対する実効税率は、租税特別措置(租特)を入れると必ずしも高くない。法人税収(国・地方)の9.7兆円に対して租特は5.9兆円もあり、国の歳入に占める法人税収の比率は5.5%で先進国では低いほうだ。

ソニーやパナソニックの税率が低いのは海外法人に利益を分散しているためだが、
住友化学が16.6%しか税金を払っていないのは、ナフサの租特が原因だ。これは3.7兆円も免税されており、税調でも1兆円ぐらい減らしてはという話が出たが、日本経団連が「石油製品が値上がりしてもいいのか」と反対して見送りになった。しかし環境税が議論になっているときに、こういう「負の炭素税」を残すのはおかしいのではないか。

同氏は追記やコメントで記事の補正をしている。

赤旗の集計は単純に法人税額を本社(単体)の税引き前利益で割ったも のと思われます。これでは海外法人の利益のように二重課税として控除すべき項目と、租特のような特例措置が混同されるので正確ではないが、日本の法人税に 抜け穴が多いという共産党の主張は正しい。

ナフサの租特は法人税ではないので、赤旗の記事は不正確だ。ただ共産党は、ソニーの海外法人の利益も住友化学のナフサの利益も「課税されるべき利益」として計算していると思われる。
日本の法人税率は、本則では高いので、引き下げが必要です。税率を下げて租特には手をつけるなという財界の主張は老人エゴで、租特を削減して税率を下げるのが本筋。
ナフサについては、共産党の集計は租特を「本来の負担」として計算しているので、こういう税率になっているのだと思います。これについては「原料費には課税すべきでない」とか「課税している国はない」というのが財界の主張ですが、これは揮発油税の暫定税率と同じで、むしろ炭素税として恒久的に課税すべきです。

今回の税制改正を単なる法人税率論争に終わらせず、抜け穴だらけでスパゲティ化している税制を簡素化する突破口にしてはどうでしょうか。

最後の結論は賛成だが、この補正でも問題点が残っている。

1)ナフサの利益

ナフサの減免分は石化会社の利益にはならず、需要家に還元され、最終的に国民全部が恩恵を受けている。

世界中で原料ナフサは課税されていないため、石化製品の国際価格は非課税ベースで形成されている。
このため、日本の石化製品の価格も、ナフサの課税がない水準で決まっており、ナフサ特措は会社の利益になっていない。

従って、本来、法人税の対象になるものではない。

記事ではナフサの特措は3.7兆円とあるが、日本のエチレンセンター全体の連結営業損益が最も儲かった2006年でも4,000億円を下回っている。

逆に、もし3.7兆円を課税されれば、日本のメーカーだけがそれを転嫁することはできず(もしやれば輸入品に置き換わる)、各社はほぼ確実に破たんする。

その意味では、法人税収(国・地方)の9.7兆円に対する租特も、5.9兆円ではなく、2.2兆円である。
(これには赤字の繰り越しや研究費の税額控除などが含まれ、今後の議論の対象となる)

2)配当の非課税

同氏は海外法人の配当を上げているが、国内子会社からの配当も同様である。

海外法人からの受取配当は2009年4月から非課税となった。
それまでは、海外の税率が低い場合、国内税率との差が課税された。

国内については、25%以上の子会社等の場合、配当が全額非課税となる。

いずれも子会社で税金を払っているため、二重課税を避けるもの。

赤旗は「海外進出を進めている多国籍企業には外国税額控除などの優遇措置があり、40%の税率は骨抜きにされています」とし、二重課税防止を「優遇措置」としている。

住友化学の税率が低いのは、このためである。

赤旗と同様、2003~09年度の同社の決算を分析すると以下のようになる。(単位:百万円)

税引前損益累計 (a)  250,105
受取配当累計 (b) 209,820
受取配当除外 損益累計 (c=a-b) 40,285
   
支払法人税等累計 (d) 41,417
表面税率 (d/a) 16.6%
実質税率 (d/c) 102.8%

表面税率は赤旗の言う通り16.6%であるが、受取配当を除くと100%を超える。

実際には海外子会社の配当は以前は一部課税されており、厳密な計算ではない。
また、税金計算では、租特の研究費の税額控除や赤字の繰り越しのほか、交際費・寄付金の課税など、いろいろの調整がある。

住友化学は自社の利益が非常に少なく(ナフサの利益がないことを示す)、子会社等からの配当が大きい。

同社自身の税金は41,417百万円となっているが、子会社の大日本住友製薬(2005年9月までは住友製薬)は同期間で88,254百万円の税金を払っている。(住友化学の持株比率は50.22%)

連結決算をみると、支払法人税等の累計は239,243百万円、表面税率は36.6%で、税引間損益から受取配当と持分法損益(税引き後の損益の持分が加算されている)を除いたものでみると44.2%となる。

このため、住友化学全体でみると、税金の支払額は多く、税率はむしろ高い。
表面税率が低いのは、決してナフサの利益のせいではない。


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


スウェーデンに本拠を置くゴムコンパウンドメーカーのHEXPOL11月30日に同業のExcel Polymersの買収を完了したと発表した。
Lion Chemical Capitalから買収したもので、買収価格は現金で212.5百万ドル。

HEXPOLでは、この買収でゴムコンパウンドの世界リーダーとなるとともに、特にコスト面でシナジー効果が期待できるとしている。

ーーー

HEXPOLの事業は2つに分かれる。2009年の売上高では前者が77%、後者が23%となっている。
(1) HEXPOL Compounding
(2) HEXPOL Engineered Products
    プレート式熱交換器用ガスケット、フォークリフト用ポリウレタン車輪、ゴム押出製品

従業員は2200人で、中国、スリランカ、米国、スウェーデンに拠点を持つ。

ーーー

Excel PolymersLion Chemical Capital ACI Capital 2004年にPolyOneから北米のゴムコンパウンド事業を買収して改称した。

PolyOne2000年に塩ビ樹脂及び塩ビコンパウンドメーカーのGeon 1993年にGoodrichからスピンオフ)とコンパウンドメーカーのM.A. Hanna が合併して出来た会社。

同社は200310月に、将来のコア事業はグローバルな樹脂コンパウンドとマスターバッチ事業であるとし、これに入らないゴムコンパウンド等の事業を売却する方針を出した。

ーーー

Lion Chemical Capital2005年9月にDSM Copolymer Inc.SBR事業を買収し、Lion Copolymer, LLCと改称した。

Lion Chemical Capital は2006年にChemturaのEPDMとゴム薬事業とオゾン劣化防止剤事業を買収し、Lion Copolymerに統合した。

Lion Copolymer201010月、Acrylonitrile-styrene-butadiene terpolymer (NSBR)の導入を発表した。

これにより、Lion Chemical Capital は、SBREPDM、ゴム薬、ゴムコンパウンドを揃えることとなった。

 2006/11/14 合成ゴム会社 Lion Copolymer, LLC

但し、Lion Chemical Capital はゴム薬についてはLion Copolymerに統合せず、Excel Polymersのままとしていた。
今回の売却に当たり、同社では
Excel Polymersはコア事業ではないとしている。

ーーー

Excel Polymers 2006年に中国に三井物産とのゴムコンパウンド製造のJVを設立した。

社名は
EXLP Global (Foshan) Co., Ltd. で、Excel 61%、三井物産が 39% 出資する。広東省の順徳科学技術産業団地に年産 23千トンの天然ゴム、合成ゴムのコンパウンド工場を建設する。

2006/12/9 ニュースのその後

同社は2007年7月に英国のコンパウンド会社British Vitaから特殊ゴム加工のVita-Calenderを買収、同年秋にはChase Elastomer UKの特殊ゴム加工事業を買収している。

ーーー

HEXPOLExcel Polymers買収により、同社のゴムコンパウンド事業は以下の通り拡大する。

HEXPOL
Belgium 16千トン  
Sweden 16千トン  
Germany 35千トン  
China。   Qingdao 12千トン ガスケット、車輪も生産
Czech 32千トン  
Mexico 18千トン  
USA   North Carolina 16千トン  
Ohio  40千トン GoldKey Processing
(2007
年買収)
Canada ー  2009年夏閉鎖
合計 185千トン  
 
Excel Polymers
USA Burton, OH  
Dyersburg, TN  
Jonesborough, TN  
Kennedale, TX Chase Elastomer
Santa Fe Springs, CA  
Mexico Queretaro, Mexico EXLP Global (Mexico), S.A. de C.V
England  Cheshire, England EXLP Global (UK), Ltd
(含むVita-CalenderChase Elastomer UK事業)
China Foshan, Guangdong EXLP Global (Foshan) Co. Ltd
(三井物産が 39%

 


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


 

Rio Tinto12月3日、中国アルミ業公司(Chinalco)との間で中国で鉱物探査を行うための合弁会社を設立する覚書を締結した。

来年上期に事業を開始する。先ず、3~5箇所の大規模地域で探査を行い、その後、探査地域を増やす。
Chinalco51%Rio Tinto49%を出資する。

ーーー

Chinalco と米国のAlcoa は20082月、英国Rio Tintoの株式の12%を141億ドルで取得した。
Rio Tinto 全体への出資比率は9%となる。

2008/2/8 中国アルミとアルコア、Rio Tinto に出資

2008年8月豪州の財務相は中国アルミがRio Tinto の英国本社の株を14.99%(全体の11%)まで買収することを承認している。

Rio Tinto 2009年2月、Chinalcoから現金で195億ドルの出資を受けると発表した。
Rio 2007年のアルキャン買収に伴い抱えた389億ドルの負債を軽減することを狙った。

2009/2/13 中国アルミがRio Tintoに出資、鉱山利権を取得

しかし、Rio Tinto は6月5日、中国アルミの出資取り止めを発表した。

中国勢の豪州進出が相次ぎ、これに不安を感じる反対派と中国との関係強化を図る賛成派が互いを攻撃し、政治問題化した。

資金市場の変動や、Rio Tinto の株主や利害関係者の意見などを背景に、Rio Tinto Chinalco は契約の変更の交渉を行った。

かなりの進展を見たが、最終的に契約変更に至らず、この結果、Rio Tinto 取締役会は株主に対する本契約の推奨を取り消し、契約を解消することとした。

これに対し、中国側は猛反発した。

2009/6/6  中国アルミのRio Tinto への出資 取り止め

7月5日にRio Tinto の上海事務所の社員4名が上海の国家安全局に拘束され、本年3月に重刑に処された。

2010/3/31 中国、Rio Tinto 社員に重刑 

出資問題で両社の関係は悪化したかとみられたが、その後も協力関係は続いている。

Rio Tinto は200910月、モンゴル政府との間でモンゴル南部のOyu Tolgoi 銅・金鉱山開発のための投資契約を締結したが、Rioはこの計画をすすめるため、Chinalco と交渉を行っていると伝えられた。〔未定〕

2009/11/28 Rio Tinto、モンゴルの鉱山開発で中国アルミと提携か?

Rio TintoChinalcoは本年7月、ギニアの Simandou鉄鉱石開発でJVを設立する契約を締結した。

2010/3/26 Rio Tinto Chinalco、ギニアの鉄鉱石開発でJV 

ーーー

Rio Tinto は同じ123日、中国中鋼集団(Sinosteel) との間の西豪州Pilbara地区のChannar鉱山JVを延長し、生産する鉄鉱石を50百万トン追加すると発表した。

Channar鉱山JVRio Tintoの完全子会社Hamersley Ironが60%、Sinosteelが40%出資するJV

Channar鉱山は西オーストラリア州のPilbara地域の都市Tom Priceの南、Paraburdoo鉄鉱山の近隣にある。
鉄鉱石は近隣の
Paraburdoo鉱山の処理施設へ運ばれる。

当初のJV契約は1987年に締結された。中国による豪州の鉱業への最初の大投資で、両国政府の強い支持を受けた。

JVの期間中に200百万トンのハイグレードの鉄鉱石を産出するもの。
199011日に生産を開始、初年度に350万トンを産出、1998年に目標の10百万トンに達した。2005年までに131百万トンを産出している。

Rioが運営を担当し、産出した全量はSinosteel を通して中国市場で販売される。

現在の年10百万トンのペースでは2012年の第1四半期に当初の契約の200百万トンに到達する。

今回、JVの延長により、Sinosteel は更に50百万トンを引き取ることとなる。

今回の契約に合わせ、両社は戦略的協力枠組み契約を締結した。
Channar鉱山及びその周辺で、新たな鉄鉱山での協力又は共同開発を目指す。

ーーー

別途、Rio Tintoは、中国のダイヤモンドの卸売業者の周大福(Chow Tai Fook)との間で戦略的パートナー契約を締結した。
中国で既存のブライダル市場とは別に、ファッション宝石市場を開発する。

Rioはダイヤモンドの大メーカーで、周大福は中国のダイヤモンドのデザイン、製造、販売で力を持っている。

Rioでは、中国のミドルクラスの急拡大とファッションで他人と差を付けようとする行動が需要拡大を進めると見ている。


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


中国政府は12月1日、これまで中国企業だけに課してきた「都市維持建設税」と「教育費付加制度」を外国企業からも徴収する措置を施行した。
外資に対する優遇策を縮小する政策の一環で、今回の措置で国内企業と外国企業に対する税制上の取り扱いは対等となる。

国務院は10月21日、「国内外資企業および個人の都市維持建設税および教育費付加制度統一に関する通知」(国発〔2010〕35号) でこれを通知した。

都市維持建設税は、都市のインフラ整備に充てる資金を確保するためのもので、教育費付加制度は、教育振興の資金を集めるためのもの。これまで外国企業は免除されていた。

企業の支払う(増値税+消費税+営業税)の合計額に下記の税率をかけた金額を納めることになる。

都市維持建設税  教育費付加
市区  7% 3%
県城・鎮 5%
その他 1%

北京にある大手日系企業は「1割強の課税強化となり、年間約100万元(約1250万円)の増税になる」と説明。日本円換算で年1億円を超える新たな税負担を求められる企業もあるとの見方もでている。

---

中国政府はこれまで、外資系企業から資金と技術を得るために税制面も優遇してきたが、2008年に外資系企業の法人税率を国内企業並みに引き上げるなど徐々に外資優遇税制を撤廃してきた。

2008年1月外資系と中国企業の法人税率を段階的に同じにする「企業所得税法」施行
   2008/1/4 
中国、新企業所得税法施行
労働者の権利を強化する「労働契約法」施行
   
2007/7/3 中国、労働契約法を可決
 8月外資系企業による中国企業買収の規制を強化する「独占禁止法」施行
   
2008/8/4 中国、独占禁止法施行
2009年11月政府調達で自国製品を優遇する「国家自主開発製品認定制度」の導入を通知
   2009/6/29 
中国の現状 最後の部分
2010年12月外資系企業には免除していた都市維持建設税と教育費付加制度を内外無差別化

今回の措置で国内外企業の税制上の扱いは同等となる。
新華社は「外資が“超国民待遇”を受ける時代は終わった」と強調した。

消費市場の巨大化や生産拠点の集積を背景に「優遇策を取り除いても外資は逃げないという自信の表れ」(国際金融筋)でもある。

ーーー

「都市維持建設税」と「教育費付加制度」はいずれも、企業の支払う(増値税+消費税+営業税)に対して課せられる。

 増値税(原則17%)

増値税の納付額は、日本の消費税と同様、売上税額から仕入税額(専用インボイス記載額)を控除した差額。
但し、日本と異なり、固定資産の仕入税額控除は認められない。

輸出品については課税されない。
これの仕入れ税額は全額ではなく、輸出価格に還付税率を乗じたものが還付される。
輸出還付税率は、中国政府の産業政策や貿易摩擦対策、国内の需給動向等を勘案して、輸出管理政策のツールとして、毎年変更されている。
仕入れ税額との差額は輸出業者の負担となる。

  2006/9/26  中国、輸出増値税リベート変更
  
2007/6/28 中国、輸出抑制のため輸出増値税還付率を引き下げ その他  

 消費税

嗜好品と呼ばれる特定の物品の生産に課される。

 ・過度な消費をすると健康・社会、環境に悪い影響を与えると考えられている商品
   (煙草、酒、爆竹、花火等)
 ・贅沢品、非生活必需用品(化粧品、アクセサリー等)
 ・大量エネルギーを消耗する商品、高級商品(乗用車、バイク等)
 ・再生できない石油類商品(ガソリン、軽油等)
 ・財政的に意義のある物(タイヤ、リンス等)

 営業税 

中国国内においてなされる労務役務の提供、無形資産取引、不動産取引、建設等を対象とした流通税のひとつ。
増値税の対象となる加工、修理補修、組立労務の提供は除く。

増値税の課税対象は主として(有形)商品で、営業税の課税対象は主として労務・サービス。
増値税は「売上」と「仕入」の「差額」に対して課税となるが、営業税は「売上」に対して課税される。

税率
 運送業、建築業 3%
 金融保険業、サービス業、不動産販売等 5%
 娯楽業(クラブ、バー、ゴルフ等) 20%

 


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


 

中国財務部は11月30日、来年春のシーズンの国内の肥料供給を確保するため、12月から肥料の輸出に110%の輸出税を課することを発表した。

新しい輸出税は一時的な増税の35%と特別関税75%からなる。

これまでは 7%(但し価格が 1トン2,300元を超える部分については100%)の輸出関税が課せられることになっていた。
これを110%とする。

今回の新しい関税の対象は、尿素、リン酸水素2アンモニウムとリン酸アンモニウム及びその混合物。

財政部は、今回の関税引き上げは、肥料輸出を抑制し、国内の肥料供給を確実にし、国内の農産品の急激な価格上昇を調整するためとしている。

ーーー

中国では消費者物価指数が上昇しているが、特に食品、農産品の値上がりが大きい。

このため、中国国務院は11月19日、高騰する物価の抑制に向け、農産物の増産や流通コストの低減など16項目からなる緊急対策を発表した。

2010/11/19 中国の消費者物価指数アップ

今回の肥料の輸出税は、農産物の増産のため、国内向け肥料を確保するもの。

中国では今秋から省エネルギー目標を達成するために電力を大量消費する企業向けの電力供給を制限している。
これまでは生産量減少による価格上昇を容認していたが、農作物の値上げを無視できないため、肥料会社などへの電力供給制限の解除に踏み切った。また、製糖会社への電力制限も解除する。

化学肥料の尿素の10~11月の国内生産量は前年同期比で約2割減り、価格が約3割上昇した。
農作物の総費用に占める肥料の比率は2割を占めるため、肥料会社への供給制限を中止する。

ーーー

肥料の3要素のうち、窒素を除くリン酸とカリウムは産地が偏在しており、上位3国のシェアが6割近い。

2009年の生産量、埋蔵量は以下の通り。(U.S. Geological Survey) 

リン鉱石   カリ
  生産量(千t) 埋蔵量(百万t)
中国 55,000  35% 3,700  23%
USA 27,200 17% 1,100 7%
モロッコ・西サハラ 24,000 15% 5,700 53%
ロシア 9,000   200  
チュニジア 7,000   100  
ブラジル 6,000   260  
ヨルダン 6,000   1,500  
その他 23,800   3,440  
合計 158,000   16,000  
  
  生産量(千t) 埋蔵量(百万t)
カナダ 6,500  26% 4,400 52%
ベラルーシ 3,850 15% 750 9%
ロシア 3,600 14% 1,800 21%
中国 2,750   200  
ドイツ 2,300   710  
イスラエル 2,000   40  
その他 4,000   600  
合計  25,000    8,500  

リン鉱石の経済埋蔵量の過半がモロッコに集中。
塩化カリの経済埋蔵量の過半がカナダに集中。

米国はすでに1990年代後半からリン鉱石の輸出を徐々に止め始めたとされ、資源の囲い込みを図る動きが見える。

ーーー

BHP Billiton8月18日にカナダのPotash Corporation of Saskatchewan Inc. に対し、1株130ドルでの全株のTOBを行うと発表した。

China Daily は、カリは中国にとって重要であるため、Sinochem子会社で、PotashCorp 22%を出資する中国の肥料輸入販売会社SinofertBHPに対抗してPotashCorpの買収を図る可能性があると報じた。

最終的にはSinochemは対抗TOBを諦め、カナダ政府がBHPによる買収を拒否したため、BHP1115日、敵対的TOB提案の取り下げを発表した。

2010/8/23 BHP Billiton、カナダのPotashCorpに敵対的TOB

ーーー

我が国は、肥料原料のほとんどを海外に依存しているが、輸入国は限られている。

我が国の肥料原料及び肥料の輸入先を国別に見ると、
 尿素は中国(51%)、マレーシア(39%)及びカタール(10%)、
 りん鉱石は中国(38%)、ヨルダン(21%)、モロッコ(18%)及び南アフリカ(17%)、
 塩化加里はカナダ(71%)及びロシア(16%)で大宗を占める。〔2008/7 農林水産省生産局〕

肥料原料の価格は最近上昇している。〔同上〕
中国の輸出税が110%になると、中国からの輸出は止まり、他のソースに集中するため、価格は更に上がる。

各国が戦略物品として囲い込みを始めた場合、価格の問題にとどまらず、レアアースの場合のようになる可能性も出てきた。


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


BASFIneos1130日、両社のスチレン、PSABSSBC、その他スチレン系コポリマーとそのブレンドの事業を新しい50/50 JVStyrolutionに統合すると発表した。
独禁法の審査を受けて
JV
を設立する。

付記

両社は2011年5月27日にJV契約を締結した。

2011年10月1日に営業開始した。

BASF107日、スチレン系ポリマー事業を戦略的に発展させるため、Styrolution社を設立すると発表した。
分社は、
201111日に完了する予定で、将来の同事業の売却に備えるものであった。
今回、両社の事業統合に先駆け、予定通り分社化を行う。

BASFは2007年7月に、利益率が低く、原料の動向に左右されるコモディティからの離脱を狙って、スチレン事業の「戦略的な選択肢」を検討していることを発表、その後、事業の売却先を探していた。

2010/10/11 BASF、スチレン系ポリマー事業を別会社Styrolutionに移管 

Ineosはスチレン系事業をNova Chemicalsとの50/50JVのIneos Novaで行っているが、Novaは1112日にIneosとの間で、Ineos NovaNova持分をIneosに売却する交渉に入ったことを明らかにしている。

2009年
7月にアブダビ国営の投資会社 IPICInternational Petroleum Investment Company )がNovaを買収したが、これは新しい株主のIPICの方針によるものと見られる。

今回のJVはIneos NovaNova持分の買収を前提としている。

2010/11/22 Nova ChemicalsIneos Novaから撤退

新しいJVの設立後、BASFIneosIneos Novaの事業を含めたスチレン系事業をStyrolutionに移管する。

なお、発泡ポリスチレンは取引から除き、両社ともこの事業を自社に残す。
発泡ポリスチレン用の
Ludwigshafen SM/PS事業と、南京のBASF-YPCSM/PS事業はBASFに残る。

2010年ベースで、新しいStyrolution の売上高は50億ユーロを超える。
BASFは事業価値の差額を受け取ることとなるが、詳細は明らかにされない。

ーーー

BASFの拠出する事業

 対象製品

Commodities SM
PS
ABS
SBS
(スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体)
コポリマー Luran® (SAN) :スチレン/アクリロニトリル コポリマー
Luran® HH (AMSAN):α-Methylstyrene-acrylonitrile copolymers
Luran
® S (ASA)styrene acrylonitrile copolymers that have been impact-modified with acrylic ester rubber
Terblend
® N (ABS/PA)ABS/Polyamide 6
Terluran
® HH (ABS-High Heat)modified ABS that meets the requirements for thermally stressed components
Terlux® (MABS)Methyl methacrylate-acrylonitrile- butadiene-styrene-polymer
Styroflex
® (SBS)Styrene/butadiene block copolymer

 対象外製品

発泡ポリスチレン  
発泡ポリスチレン用のLudwigshafen SM/PS事業  
南京のBASF-YPCSM/PS事業
(旧
Yangzi-BASF Styrenics
SM 120千トン
PS 200
EPS
 52

 対象工場

ドイツ Ludwigshafen, Schwarzheide PS能力 540千トン
 (
200980千トン減)
ベルギー Antwerp
韓国 Ulsan PS 250千トン、EPS 80千トン、ABS 250千トン
SM 320千トンは2009年にSK Energy に売却)
インド Dahej  
メキシコ Altamira  

 従業員  1,460
 
2010年売上高  30億ユーロ以上

ーーー   

Ineosの拠出する事業 

Ineos ABS
ドイツ  Cologne  
スペイン  Tarragona
  (付記 独禁法当局指示で除外、売却)
 
インド  Vadodara  
タイ  Map Ta Phut  
  Lanxessから買収 能力:730千トン
Ineos Nova SM/PS
  SM
 千トン
PS
 千トン
EPS
(対象外)
Sarnia, Ontario 430    
Indian Orchard, MA   165  
Channahon, Illinois   410  
Decatur, AL   193  
Bayport, TX 770    
Texas City, TX 455    
(北米合計)  (1,655)  (768)  
Trelleborg, Sweden   85  
Breda, The Netherlands   90 90
Marl, Germany   180 85
Wingles, France   200 100
Ribecourt, France     90
(欧州合計)   (555)  (365)
       
総合計 1,655 1,323 365
Ineos SM ドイツ Marl
 エチルベンゼン 550千トン、SM 380千トン

 従業員 合計2200
 
2010年売上高 20億ユーロ

Ineosは当初、2005年にBASFの米国・カナダのPS事業を買収。
その後、
BPからInnoveneを買収したのに伴い、NovaとInnovene の欧州の 50/50JVのNOVA InnoveneをIneos Novaとし、両社の北米事業をJVに統合した。

今回の統合でBASFの昔の米・加のPS事業が戻ることとなる。 

ーーー

なお、BASFと並ぶスチレン系の大手であったダウも6月に、スチレン系事業のスタイロンを投資会社Bain Capital Partnersに売却している。
(ダウはスタイロン7.5%を出資)

2010/6/18 ダウ、スチレン系事業売却完了

 


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

最近のコメント

月別 アーカイブ