「no」と一致するもの

SABICは10月18日、第3四半期の業績速報を発表した。

                                    単位:百万SR
  2009/1Qの営業損益にはノレン償却 -1,181を含む。

第3四半期
 純損益は36億SRで、前年同期(72億SR)の50%減、前期(18億SR)の倍増となった。

 営業損益は64億SRで、前年同期(125億SR)の48%減となった。

 前年同期比減の理由はグローバルな経済危機による石油化学、合成樹脂、金属製品の価格の暴落である。
 前期比では需要の回復でほとんどの製品の価格が上昇した結果、倍増益となった。

 アナリストの純損益予想(ロイター調査)は30億SRで、これを上回った。

1-9月の9ヶ月の純損益は108億SRで、前年同期(356億SR)の69%減となった。

SABICでは「経済危機の最中でも操業は維持してきた。本年の9ヶ月の生産は44百万トンで前年比4%増、販売数量も34.5百万トンで3%増となった」としている。

また、SABICの業績には、健全な資金状況、コストダウンの絶えざる努力、設備増強(YANSAB、SHARQ、Saudi KAYAN中国でのSinopecとのJVなど)などが好影響を与えているとしている。

SABICの連結対象会社については 2009/7/29  SABICの第2四半期業績参照

SABICではサウジと中国での増設で、2年後に生産量を12百万トン増やす計画。

 


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


2009/7/14 中国政府系ファンドCIC、カナダの資源大手に出資で以下の報告をした。

中国投資有限責任公司(CIC) 73日、100%子会社の Fullbloom Investment Corporation を通じて、資金難のカナダの資源大手Teck Resources Limited の株17.2%を現金15億米ドルで購入することで合意したと発表した。

CICはこれまで主として金融機関に投資してきたが、資源権益の獲得を目指したものと見られている。
中国の企業は政府の支援を受け、石油、石炭、鉄鉱石、その他、資源権益の獲得に積極的である。

CICは最近、資源関係に相次いで投資している。

ドル安予想の下で、CICのコモディティへの投資は中国の巨大な外貨準備高のリスク軽減によいオプションであるとみられている。CICは当初、金融部門に投資したが、運用を多様化し、エネルギーやコモディティ関係に関心を移している。

1)Nobel Oil Group(ロシア)

CICはロシアのNobel Oil Group45%の出資を行う。

3億米ドルの投資は2回に分けて行われ、1回目の1.5億ドルの決済がこのたび行われた。1億ドルは株式の代金で、0.5億ドルは油田の運転資金に使われる。残り1.5億ドルは9ヶ月内に支払われ、既存の油田の周辺の150百万バレルの石油・ガスの権利の買収に使われる。

この結果、CICは45%の株主となり、50%は既存の株主、残り5%は香港のOriental Patron Financial Group という株主構成となる。

なお、香港の凱順能源集団(Kaisun Energy:旧称 挑戦者集団 Challenger Group)がNobel Oil 買収に乗り出し、due diligenceを行うこととなったと報じられている。
この場合、
CICは出資を続ける。

Nobel Oil はロシアに3箇所の油田を有し、合計生産能力は150百万バレルとなっている。

2)カザフスタンの石油・ガス会社 JSC KazMunaiGas Exploration Production

CICはこのたび、939百万米ドルを払ってカザフスタンの JSC KazMunaiGas Exploration Production 国際預託証書(GDR) 11%を取得した。取引は7月に始まり、既に必要な手続きは全て完了している。

Global Depositary Receipt (GDR)
自国以外の国に株式を上場させる場合に、株式そのものは自国に預け、株式に代わってそれに見合う証書を上場させて、投資家の便宜をはかるものをDepositary Receiptという。GDRは主に欧州で発行されるものをいう。

同社のGDRは20069月にLondon Stock Exchangeに上場された。

JSC KazMunaiGas Exploration Productionはカザフスタンの国営石油会社KazMunayGasの中核をなす探鉱・開発部門(陸上)子会社。

なお、カザフスタンと中国の関係は深く、20094月にCNPCPetroChina)は KazMunaiGas50億ドルを融資することで合意した。
両社は共同で、カザフスタンで
36箇所の油田の権益を有する MangistauMunaiGasをインドネシアのCentral Asia Petroleumから買収した。両社の合弁会社がこの株式を保有する。

CNPCはまた、PetroKazakhstan67%を保有している。

3)インドネシア Bumi

CICはインドネシアの石炭業者PT Bumi Resources Tbk19億米ドルを融資した。

このうち、6億ドルは4年返済、6億ドルは5年返済、残り7億ドルは6年返済となっている。
今後、両社で共同で投資を行う。

CIC12%の金利を受け取るとともに、投資利回りとして19%IRRを受け取る。

IRR (internal rate of return)
投資した金額に対して、分配金を現在価値に引き直して複利計算し、その結果を年率で表示する。

インドネシアは石炭の世界最大の輸出国。

Bumiは政商の Bakrie 一族が支配する会社で、これを借入金返済と新規投資に使用する。

4)Glencore

CICGlencore は最近、"Commodities product investment agreement"を締結した。詳細は明らかにされていないが、8Glencoreのトップが北京で、CICGlencoreの製品に投資する覚書を締結している。

Glencoreは、スイスの貿易グループで、創立者のMarc Richらが74年に設立した非上場企業。

同社のビジネスは、非鉄金属、鉄鋼、石油及び石油デリバティブ、石炭等の資源関係の他、電気、農産物(砂糖、米、穀物)等で、年商は、約300億ドル程度と推定されている。地下資源関係では、鉛、亜鉛、バナジウム、銅、ニッケル、アルミニウム、石油、鉄など鉱山開発にも進出している。

ロシアのRUSALSUAL GroupGlencore 3社は200610アルミ事業を統合して United Company RUSAL'(ロシースキー・アルミニウム)とすることで合意したと発表した。
新会社はボーキサイト鉱山、アルミナ、アルミ精錬、アルミフォイル生産設備を所有する。
出資比率は
RUSAL 66%SUAL 22%Glencore 12%

2006/9/5 ロシアのアルミ最大手RUSAL、同国2位のSUALを買収

5)Noble Group

CICはコモディティ商社のNoble Group14.5%850百万ドルで取得した。

Nobleは香港に本社を置き、シンガポールに上場するグローバルなコモディティ商社で、扱い商品は多岐にわたる。

農業分野(27%):コメ、小麦、大豆、砂糖、コーヒー、ココアなど
金属、鉱物、鉱石(17%):鉄鉱石、フェロアロイ、クロム鉱、マンガン鉱、アルミ、鉄
エネルギー(51%):石炭、コークス、エタノール、炭素クレジット
物流(4%)

Noble5月に豪州のGloucester Coal 430百万ドルで買収している。株を売却した資金で更に買収を行うとみられている。

6)その他

CICはレアアースを専門とする内蒙古のBaotou Steel Rare-Earth Hi-Techと交渉している。

このほか、CICが狙っているとみられているのに、マレーシアでプランテーションや発電を行うSime Darby、シンガポールに本拠を置く石炭業者の Straits Asia Resources、インドネシアのAdaro Energy and Berau Coalなどがある。

 

付記

トロントに本社を置くSouthGobi Energy Resourcesは10月28日、モンゴル南部のOvoot Tolgoi 炭鉱の拡大(150万トン→800万トン/年)の資金としてCICが5億ドルを融資することで合意したと発表した。CICは見返りに取締役1名を派遣する。

カナダの資源会社への投融資は2件目。

2009/7/14 中国政府系ファンドCIC、カナダの資源大手に出資

 


* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


アブダビで新しい石油化学コンプレックスを建設中のChemaWEyaatのトップはこのたび、第一期計画は順調に進んでおり、2015年に完成すると述べた。

ーーー

アラブ首長国連邦のアブダビにはAbu Dhabi National Oil CompanyADNOC60%/Borealis 40% 出資のAbu Dhabi Polymers Company Limited Borouge)などがある。

2006/6/2 湾岸諸国の石油化学ー3 アラブ首長国連邦(UAE)

アブダビ政府所有の国際石油投資会社(IPIC)は、20091月、「IPICは新規部門への投資を拡大している。IPIC はエネルギー部門、非エネルギー部門での良い機会を探している」と述べ、今後の投資活動の拡大に意欲を見せた。

アブダビ政府の投資計画のなかには、以下のものがある。

1)アブダビでの新しい石油化学事業

2)ホルムズ海峡迂回石油パイプライン事業

総延長距離370kmHabshan(アブダビ首長国)~Fujayrah(フジャイラ首長国)間の石油パイプライン事業(通油能力150万B/D)を建設中。
Fujayrahに能力1000万バレルから1200万バレルのタンクを建設、ホルムズ海峡を通らず、ここから出荷する。

3)パキスタンのKhalifa Coastal Refinery 事業(能力25万B/D)

IPIC 76%、Pak-Arab Refinery Company24%を出資し、50億ドルを投じるもの。Khalifa UAE大統領(アブダビ首長)の名前を取った。

基本的問題の解決まで延期

4)カスピ海事業

Abu Dhabi National Energy(Taqa:アブダビ政府75%出資)とKuwait Energyがカスピ海での共同石油・ガス事業を進める協定に調印している。

これには最大20億ドルまで投資する。

ーーー

新しい石油化学については、2008年にAbu Dhabi National Chemicals Company (ChemaWEyaat)が設立された。(ChemaWEyaatChmical の意味)
出資は
IPIC40%、アブダビ投資評議会(ADIC)が40%、Abu Dhabi National Oil ADNOC)が20%である。

ChemaWEyaat はアブダビの Taweelah地区のMina Khalifa Industrial Zone ChemaWEyaat工業都市(Madeenat ChemaWEyaat) の建設を行う。

ここで石油化学事業に少なくとも700億ドルを投資する。

全てが完成するとChemaWEyaat工業都市はサウジのJubail Industrial Cityのようになり、石化コンプレックスはBASFVerbund” のように完全統合されたものとなる。

現在、第一期としてTacaamol 計画が既に建設準備を行っており、第二計画の Al ChemeyaFS中である。

第一期計画の遂行のため、Chemaweyaat 51%/IPIC 49%出資でTacaamol が設立された。

 


Tacaamol
100億ドル以上を投じて、以下のコンプレックスを建設する。
 世界最大級の改質設備:
70千バレル/日
 ナフサクラッカー: エチレン
1,450千トン、プロピレン 690千トン
 
BTX設備:パラキシレン 1,370千トン、ベンゼン 860千トン
 エチレンオキサイド:
790千トン
 メラミン:
80千トン

最終製品の能力は以下の通り(単位:千トン)
 パラキシレン
1,370、ベンゼン 340、キュメン 400、フェノール 60、アセトン 110
 ビスフェノール
A 160、ポリカーボネート 130
 
PP 420PE 950
 
MEG 900DEG 46TEG 3、エタノールアミン 100
 ブタジエン
200MTBE 140
 尿素
1,000、メラミン 80

本年5月に、Neste Jacobs(Neste Oil 60 %/Jacobs Engineering 40 %)が基礎設計エンジニアリング(FEED)を実施する契約を締結した。

本計画は上記の通り、2015年に完成する。

なお、第二期計画の Al Chemeya650千トンのプロパン脱水素2系列を中心としたプロピレン誘導品のコンプレックスとなる。


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


MTBEによる水道水の汚染を巡って ExxonMobil New York市の裁判が行われた。

8月の1審及び2審ではExxon が敗訴、10月に始まった3審で負ければ、次の4審では賠償額が審議されることとなっていた。

10月14日、3審の判決があり、判事は「市当局は懲罰的賠償を命じるに足る十分な証拠を陪審員に示さなかった」とし、ExxonMobil に軍配を上げた。

ーーー

2006/4/29 米国のMTBE市場の激変MTBEについて述べた。

200655日以降、米国のほとんどのガソリンからMTBEが除かれる。

MTBE やエタノールは従来、オクタン価向上のためにガソリンに添加されていた
Oxygenateとしては、MTBE 85%以上使用され、エタノールは8%程度であった。

ところが、MTBEによる地下水汚染が大問題となった。ガソリンスタンドの地下タンクには必ず漏れがある。ガソリンの漏れは微生物が分解するが、MTBEの場合には分解する微生物は少ない。このためMTBE が地下水を汚染することとなる。

この結果、カリフォルニア州ニューヨーク州、コネティカット州などが2004年からMTBEの使用を禁止した。ニューヨーク等はエタノールに切り替えた。

55日以降は Oxygenateの添加義務はなくなるが、オクタン価向上剤は必要である。しかし、MTBEを使用して地下水汚染が起こった場合に免責はされない。

この結果、従来MTBEを添加していたガソリンはエタノールをオクタン価向上剤として添加することとなる。

2008年にMTBEに関する最大の和解が行われた。

153の公共水道会社と340人の個人が17の州で水道汚染に関して石油会社に対して裁判を起こした59のケースについて和解したもので、石油会社側 10数社は423百万ドルを支払うとともに、30年間にわたってクリーンアップの費用の70%を負担する。

石油会社側は責任がないとしていたが、裁判を続ける費用などを勘案し、また裁判の結果がどうなるかの不安もあり、和解に応じることとした。

石油会社は、政府はMTBEの使用に関し、最初の段階で特に反論しなかったのだから、浄化に要するコストを払うべきではないと主張した。
また、
MTBEの人に対する長期的な健康影響は証明されておらず、したがってMTBEは汚染物質と見なされるべきではないと主張した。
和解はするが、これらの主張に変わりはないとしている。

和解した石油会社には以下が含まれる。各社の分担金は明らかにされていない。
 
BPChevronConocoPhillipsTosco Corp.Shell Oil Co.Ultamar Inc.Valero Energy Corp.Hess Corp.

ExxonMobilを含む少なくとも6社は和解を拒否した。

ーーー

8月4日、マンハッタンの連邦地裁でExxonMobilに対する裁判が始まった。

Queens区のJamaica地区にある井戸の汚染に関するもので、この井戸は緊急時や渇水時に川からの取水が出来ない場合のためのバックアップの井戸である。汚染により、これが使えなくなった。
もう一度使えるようにするには、
250百万ドルをかけて処理設備を作る必要があるとされている。

2003年にNew York市は23の石油会社を訴えたが、ExxonMobilを除く22社と和解、15百万ドルを得た。

裁判でNew York市は、ExxonMobil 1980年代にMTBEの使用を始めたが、ガソリンの添加物が地下水を汚染することを知っていたが、儲けのために使い続けたと非難した。汚染問題がないエタノールを使うことが出来たが、ガロン当たり3セントを惜しんでMTBEを使ったとしている。

他方ExxonMobil は責任を否定、地下水汚染は他の業界によるものだとしている。同地区は産業廃棄物の溜まり場で、汚染はMTBEのためではないとした。
また、市は処理設備をつくる積もりはなく、バックアップ用に他の方法を計画しているとした。

陪審員は8月12日、市側の勝利を決めた。

828日、ExxonMobil は第二審でも敗れた。11名の陪審員は、MTBEが井戸水に長く残り、6つの井戸の水の汚染が2033年に10ppbのレベルになるであろうとした。

10月に第三審が始まった。

ExxonMobil は井戸はMTBE以外の汚染で閉鎖されており、使用できない状況にある。汚染の原因はドライクリーニングに使われるパークロルエチレンによるものであり、同社はこれを生産していないと主張した。 


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


LG Chemが第3四半期に過去最大の業績を上げた。
同社の金磐石(キム・バンソク)副会長は13日の企業説明会で、第3四半期の売上が4兆3643億ウォン(約3350億円)、営業利益が7299億ウォン、純利益が5430億ウォンを記録したと明らかにした。
売上、営業利益、純利益のすべてが四半期ベースで過去最大となった。
売上は前年同期比で9.7%増、営業利益は75.3%増、純利益は82.8%増と急増した。

金副会長は、「液晶パネルの需要増にともなう偏光板など光学素材事業の収益性が改善し、ノキアやヒューレット・パッカードなど大口顧客への電池供給量が増えた」と説明した。
また、「石油化学部門でエチレン・プロピレンなどで価格が上昇したことから利益が増え、PVC需要が回復したことで業績が改善した」と述べた。

連結損益 (単位:10億ウオン)

  2008 2009
1Q 2Q 3Q 4Q 合計 1Q 2Q 3Q 4Q 合計
売上高 - - - - - - - - - -
 Petrochemicals  2,835  3,131  3,380  2,470  11,816  2,587  2,884  3,074       8,545
 I & E Materials 620 654 654 750 2,678 786 1,015 1,234 - 3,035
 Total 3,494 3,749 3,980 3,332 14,555 3,400 3,921 4,364 - 11,685
営業損益 - - - - - - - - - -
 Petrochemicals 285 393 319 -85 912 374 531 519 - 1,423
 I & E Materials 84 102 107 172 466 114 130 216 - 460
 Total 362 484 416 59 1,321 487 660 730 - 1,878
  注. 「その他」があるため、両部門の合計は全社と一致しない。

LG Chem によると、各部門の状況は以下の通り。

石油化学部門
 ナフサ分解/ポリオレフィン:原油価格アップ、製品市場好調で増益
 PVC:原油価格アップ、国内と途上国市場好調で増益
 
ABS/エンプラ:中国市場の需要安定
 アクリル/可塑剤: 需要維持で安定
 合成ゴム/特殊樹脂: 自動車業界の回復

 今後の予想
 中東と中国の新増設でポリオレフィン価格下落

 
ポリオレフィン以外は安定

I & E Materials部門
Electronics & opticalsLCD需要の急増で増益
                  品質改善も貢献
 
Battery:主要需要家(Nokia, HP, LGE)の需要増
       ハイブリッド自動車向け販売開始(現代自動車、起亜自動車)

ーーー

液晶パネル世界第二位のLG Display は第3四半期の営業利益が9040億ウオンで前年同期比3.6倍になったと発表した。純利益も90%増の5591億ウオンとなった。

ーーー

LG Chemだけでなく、サムスン電子、現代自動車など韓国の主要企業は好調である。

これについて、韓国内で議論が分かれている。

大統領府(青瓦台)の姜万洙経済特別補佐官は10月13日、「主要企業は、為替効果と政府の財政政策がなければ過去最高の赤字を出したはずだ」とし、「二番底(ダブルディップ)がやって来る懸念があり、経済は今後2年間にわたり現在の不況が続く」と発言した。

これに対し、韓国貿易協会の司空壱会長は14日、「為替相場が企業(の業績改善)に役立っているのは事実だが、 1990年代後半にアジア通貨危機を経験し、企業の基礎が丈夫になり、企業が新製品開発と新市場開拓に取り組んだ結果だ」と反論、「最近世界経済に表れている民間消費の伸びや投資シグナルが持続しなければ、一部で二番底に陥る可能性があるが、G20が政策協調を行えば、二番底を防ぐことができる」と述べた。

本年7-9月期の平均レートは1ドル=1239.22ウォンだった。
昨年同期のレートは1ドル=1066.09ウォンだった。

証券各社が予想する今年7-9月期のサムスン電子の営業利益は、およそ2兆6000億ウォンだが、レートが昨年と同じ水準だったと仮定すれば、営業利益は昨年同様1兆ウォン程度にとどまっていたと推定されている。


* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


2000年のポリプロカルテルについては、トクヤマ、出光興産、住友化学、サンアロマーの4社が2007年8月8日の審決を不満として東京高裁に審決取消を求めて提訴していたが、その判決が9月25日にあったことが、10月13日付けの公正取引委員会メールマガジンで明らかになった。

4社は
(1)本件審決は原告ら7社の間でポリプロピレンの販売価格の引上げに関する合意を行ったと認定しているが、そのような事実はなく、
(2)本件審決の事実認定は、引用する証拠自体が実験則や経験則に反しており、実質的な証拠がないなどとして、本件審決の取消しを求めた。

東京高裁は、本件審決の認定は、経験則、採証法則等に反するとはいえず、実質的証拠があって、本件審決が(上記)会合において本件合意(意思の連絡)が成立したと認めたことは合理的であるということができ、本件審決には、原告らの主張するような違法はなく、原告らの請求は理由がないとして、原告らの請求をいずれも棄却した。

判決文 http://snk.jftc.go.jp/JDS/data/pdf/H210925H19G09000035_/090925.pdf

このなかで、「意思の連絡」について、下記の通り述べている。

独禁法3条で禁止されている「不当な取引制限」すなわち「事業者が、他の事業者と共同して対価を引き上げる等相互に事業活動を拘束し、又は遂行することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」(2条6項)にいう「共同して」に該当するというためには、複数事業者が対価を引き上げるに当たって、相互の間に「意思の連絡」があったと認められることが必要であると解される。
この「意思の連絡」とは、複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し、これと歩調をそろえる意思があることを意味し、一方の対価引上げを他方が単に認識、認容するのみでは足りないが、
事業者間相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく、相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りる
と解するのが相当である。(中略)
特定の事業者が、他の事業者との間で対価引上げ行為に関する情報交換をして、同一又はこれに準ずる行動に出たような場合には、その行動が他の事業者の行動と無関係に、取引市場における対価の競争に耐え得るとの独自の判断によって行われたことを示す特段の事情が認められない限り、これらの事業者の間に、強調的な行動をとることを期待し合う関係があり、上記の「意思の連絡」があるものと推認されるのもやむを得ないというべきである(以上につき、東芝ケミカル事件に関する前掲東京高裁平成7年9月25日判例参照)。なお、事業者としては、特段の事情の立証により上記の推認を破ることができるほか、
対価引上げに関する情報交換という不明朗な行為自体を避けさえすれば、上記の推認を受けないものである。

住友化学は14日、「主張が認められなかったことは残念だが、上告しないことにした」とのコメントを発表した。
残りの3社はいずれも「今後の方針を現在検討中」としているが、事態は収束の方向に向かうと見られる。

ーーー

本件の経緯は下記の通りで、公取委の立入検査(2000/5/30)から9年もかかっている。

2000 1 21 部長会で値上げの必要性について意見交換
    2 7 現状のPPの販売価格で採算が取れるナフサ価格の水準 17,000~18,000円/kl で共通認識
(各社:共通認識はない)
    2 21 PPの値上げについて意見の一致をみず
    3 6 4月以降のナフサ価格の見通し 22,000から23,000円/klで一致
10円/kg目処の
引き上げで合意
(各社は「合意なし」と主張)
    3 17 各社の値上げの打出しの内容、対外発表時期等を確認
(各社:値上げ手続き後であり、事前合意がなくとも進捗状況の話はする)
    3 27 各社の責任分担ユーザーを取り決め
(各社:送別会の集まり。酒席で,各社が値上げ交渉に入っている中での難物ユーザーの名を挙げることは、カルテル合意
     の存在を前提としなくても行われ得る)
   4   (4/15~5/1)各社の値上げ実施予定日 →課徴金計算始期
   5 30 公正取引委員会が立入検査   →前日が課徴金計算終期(2007/6/19 審決:日本ポリプロ、チッソ)
  9   チッソ、日本ポリケム、グランドポリマー 
 本件合意から離脱する旨等を他の各社に文書で通知→課徴金計算終期(2003/3/31納付命令:三井化学
2001 5 30 公取委勧告
 

 拒否:住友化学、サンアロマー、出光石油化学(→出光興産)、トクヤマ
      
2001/6/27 審判開始決定
          9/12 第1回審判
      2006/8/4  第28回審判(審判手続終結)


 応諾:日本ポリケム
(→日本ポリプロ)、グランドポリマー(→三井化学)、チッソ

 ○日本ポリケム:
   勧告を厳粛に受け止めている
 ○グランドポリマー:
   ・
合意が成立など認識と異なる部分もあり、応諾するか否か苦慮
   ・まぎらわしい行為があったことも事実
   ・早く結論を出して欲しいという社員の気持にも配慮し、応諾
   ・認識と異なる点については上申書提出

 ○チッソ:
   早く事業に専念したいため応諾

2003 3 31 応諾3社に課徴金納付命令
日本ポリケム  8億4517万円 →審判
三井化学
(グランドポリマー)
 7億6008万円 →応諾
チッソ  4億3513万円 →審判
2007 6 19 日本ポリプロ、チッソ審決
日本ポリプロ
(日本ポリケム)
 2億2087万円
チッソ  1億1662万円

課徴金計算終期の見直しで当初の命令より大幅減額

2007 8 8 勧告拒否4社に審決

  結論 独禁法違反あり(各社は否定しているが)

住友化学、サンアロマー 価格引き上げ合意の消滅の確認とその周知徹底等
出光興産、トクヤマ 格別の措置なし(PPの製造販売業を実質的に営んでいない)

その後、4社全てが東京高裁に控訴

2008 6 20 公取委、残り4社に対し課徴金納付命令

各社の課徴金は以下の通り。(青字が確定分)

  当初課徴金 審判課徴金 今回の命令
三井化学(グランドポリマー)  7億6008万円    
日本ポリケム  8億4517万円  2億2087万円  
チッソ  4億3513万円  1億1662万円  
出光興産      1億4215万円
住友化学      1億1716万円
サンアロマー         5097万円
トクヤマ         4781万円

公取委は8月29日、4社からの審判手続の開始請求を受け、審判を開始すると発表した。

2009 5 19 公取委、住友化学とトクヤマに対し、課徴金納付を命ずる審決
  2008/6/20命令 2009/5/19審決
出光興産  1億4215万円  
住友化学  1億1716万円  1億1716万円
サンアロマー     5097万円  
トクヤマ     4781万円     4779万円

出光興産、サンアロマーは審判継続中

2009 9 25 東京高裁、審決取消請求事件で原告らの請求を棄却する判決

 


* 総合目次、項目別目次
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


デュポンは10月7日、証券取引委員会への報告の中で、2008年の利益水準に戻るのは早くても2012年になるとの見通しを発表した。

Vergnano副社長は前日の投資家への説明で、2008年の利益水準(前年比33%減)に戻るのに2.5年~3年はかかると述べた。
2008年の同社の1株当たり利益は2.20ドルであったが、アナリストは2009年予想を1.82ドルとみている。

副社長によると、この予想には医薬部門の減益を折り込んでいる。

2008年の税引前損益36.5億ドルのうち、医薬部門は10.25億ドルと28%を占める。(2007年では19%)

                          単位:百万ドル
  2008年  2007
Net Sales   30,529   29,378
税引前損益   2,391   3,743
Net profit   2,007   2,988
     
税引前内訳    
Agriculture & Nutrition   1,087    894
Coatings & Color Technologies    326    840
Electronic & Communication Technologies    436    594
Performance Materials    128    626
Safety & Protection    829   1,199
Pharmaceuticals   1,025    949
Other    -181    -224
(小計)   (3,650)   (4,878)
Net exchange loss    -255    -85
Corporate expenses & net interest   -1,004   -1,050
合計   2,391   3,743

DuPont 1991年にMerck との50/50JVDuPont Merck Pharmaceutical を設立した。パーキンソン病の薬Sinemet(R)、心臓画像診断剤Cardiolite(R)、抗高血圧薬のCozaar(R)Cozaarチアジド系利尿剤 との合剤 Hyzaar(R)などが上市された。
Cozaar Hyzaar Merckで販売された。

1998年にDuPont DuPont MerckのMerck 持分を買収し、同社をDuPont Pharmaceuticals と改称した。その後、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)用の薬としてSustiva (R) が上市された。

しかし、DuPont の力をもっても医薬事業で生き抜くのは難しく、販売減と、研究開発費・販売費の増大により、1999年から2000年に営業利益が半減した。

DuPont は2001年、世界の事業の構造改革を実施した。
4月に競争力を失ってきたポリエステルおよびナイロン工場の閉鎖を発表、3カ月後にはポリエステル事業の一部を売却した。

同年6月、
DuPont PharmaceuticalsBristol-Myers Squibbに売却するという決断をした。医薬品事業に必要な巨額投資は、同社にとっても、あまりにリスキーだったからである。

売却額は78億ドルで、税引き後利益は38億6,600万ドルであった。
但し、条件として、
Cozaar抗高血圧薬)と HyzaarCozaar利尿剤との合剤の権利は DuPont が維持し、Merckにライセンスした。
現在の「医薬部門」の利益はこの特許料である。

しかし、これらの医薬品の特許は9月にEUで失効、米国でも来年4月に失効する。

これに伴う利益の減少が大きい。


* 総合目次、項目別目次
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


1.100%子会社の違反に対する親会社への制裁金問題

欧州委員会は200412月に、BASFUCBAkzo Nobel の欧州3社と米国のBioproducts DuCoa、カナダのChinook の6社が、992年から1998年にわたって、家畜用のビタミンB4 (塩化コリン)で国際カルテル(価格、市場割当)を結んだとして欧州3社に制裁金を科した。

これに対し、欧州3社は第一審裁判所に控訴、2007年に判決があった。

BASFとUCBの主張は1992年から94年は国際カルテル、それ以降は欧州カルテルで別カルテルであり、前者は時効だとするもので、第一審裁判所はこれを認め、制裁金の計算をやり直した。(UCBは大幅減額、BASFは増額)

Akzo は子会社が行なったカルテルで親会社に制裁金を科すのはおかしいとしたが、判決はこれを却下した。このため、Akzoは上告した。

2007/12/14 欧州第一審裁判所がカルテルの制裁金を増額 

欧州の最高裁判所は9月10日、 「親会社は、自ら独禁法違反行為をしていなくとも、子会社の行為に責任を持つ」との委員会の主張を認め、Akzoの上告を却下した。

裁判所の判断は以下の通り。

重要なことは親会社が子会社と一つの経済体をつくっているかどうかである。

子会社の100%を保有している場合、親会社は子会社のポリシーに決定的な影響を与えている。子会社が日常の活動を独立して行っているというだけでは反論できない。

EUの独禁法では"undertakings(事業体"の活動が問題とされる。
親会社と子会社が一つの
undertakingsを形成しておれば、委員会は親会社に制裁金を科すことが出来る。
親会社が子会社のポリシーに決定的な影響を与えているということを示すためには、親会社が子会社の
100%を保有していることを示すだけでよい。

 

2.コンクリート用棒鋼カルテル事件
   裁判所で敗訴した事件で再度 制裁金

欧州委員会は9月30日、1989年12月から2000年5月までのコンクリート用棒鋼での価格カルテルでイタリアの8社に合計83百万ユーロの制裁金を科した。

本件は2002年12月、欧州委員会が当時の 欧州石炭鉄鋼共同体条約65(1)の違反で、同条約65 (4) (5)に基づき、制裁金を科した。

1951年にパリ条約が調印され、フランス、西ドイツ、イタリア、ベルギー、オ ランダ、ルクセンブルクが参加し欧州石炭鉄鋼共同体が設立された。

条約の第65 (1)ではundertakings(事業体)のカルテル行為を禁止している。

All agreements between , decisions by associations of undertakings and concerted practices tending directly or indirectly to prevent, restrict or distort normal competition within the common market shall be prohibited, and in particular those tending:

(a) to fix or determine prices;
(b) to restrict or control production, technical development or investment;
(c) to share markets, products, customers or sources of supply.

65 (4) (5)では手続きを決めている。

2002年にパリ条約が失効し、欧州石炭鉄鋼共同体の活動や資源は欧州共同体に吸収された。

EC条約では81条と82条で上記65 (1)の独禁法規定を引き継いでいる。
   
81条:競争制限の禁止
   
82条:独占的地位

しかし裁判所は、欧州石炭鉄鋼共同体条約が20027月に切れているため、同条約65 (4) (5)に基づいた制裁金命令は違法であるとし、敗訴となった。

欧州委員会は今回、当時の欧州石炭鉄鋼共同体条約 65(1)違反とし、旧法に置き換わったEC条約8182条執行手続きである7 (1)及び2003年のRegulation No 123 (2) に基づき、再度制裁金を科したもの。

同じ案件であるため、制裁金の額は(1社の少額の減額を除き)前回と同じである。

Neelie Kroes 委員(競争政策担当)は、「カルテル参加者は手続き面の理由で制裁金を逃れることは出来ないとの明確なメッセージを送った」と述べた。

 

3.変圧器カルテル

ECは10月7日、富士電機、日立、東芝を含む7社に変圧器カルテルで合計67,644千ユーロの制裁金を科したと発表した。

7社は1999年から2003年にかけて「紳士協定」を結び、日本メーカーは欧州に売らない、欧州メーカーは日本に売らないことを決めたというもの。年に1~2回、アジアと欧州の高級ホテルで会合を開いていた。

     Leniency 制裁金
(
Euro)
備考
減額(%) 減額(千Euro
Siemens (Germany)    100   33,360     0 カルテルを通知
ABB (Switzerland)      33,750 重犯で50%増し
ALSTOM SA(France)      16,500  
AREVA T&D SA (France)     18    2,970 うち 13,530
Fuji Electrics (Japan)     40    1,156   1,734  
Hitachi (Japan)     18     450   2,460  
Toshiba (Japan)      13,200  
合計      67,644  

東芝は以下の通り発表した。

欧州委員会の調査に協力して参りましたが、当社の調査では欧州競争法に違反する行為を行っておらず、欧州裁判所において今回の決定を争っていく方針です。決定書を正式に受領後、その内容を検討の上適切に対応していきます。

ーーー

日本のメーカーが欧州で販売しないために制裁金を科せられたのは、これまでに送電設備(ガス絶縁開閉装置)カルテルがある。

   2007/1/26 EU、電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルで1200億円の制裁金 


* 総合目次、項目別目次
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


中国中化集団公司(Sinochem)は9月28日、28億豪ドルでNufarmを買収する非拘束契約を締結した。先ずSinochem がdue diligenceを行い、その後、独占ベースの売買契約を締結し、株主及び両国当局の承認を得る。

Nufarm 2007115日に中国化工集団公司 (ChemChina)Blackstone Group 及び Fox Paine Management III, LLC からの26億米ドルでの買収提案を受けた。

コンソーシアムはその後、Nufarm との話し合いに基づき、due diligence を行なった。

しかしながら、コンソーシアムは交渉期限の同年1210日までに正式提案をすることが出来ないと通知し、その結果、交渉は打ち切られた。グローバルな信用収縮により、有利な借入ができなくなったのが理由とみられている。

2007/12/15 ChemChina 等の豪州の農薬会社Nufarm 買収交渉、破談

Sinochem はエネルギー、農業資材、化学品、ファイナンス、不動産をコア事業として展開する国営企業で、農業資材では肥料、農薬、種子を扱う中国最大の企業である。

Nufarmジェネリック農薬の大手で、特に豪州、欧州、北中南米に強みをもつ。

この買収はこの分野での研究開発、製造、販売、サービスのチェーンのグローバル企業になるというSinochemの戦略に合うものである。 

ーーー

豪州では資源会社や鉱山権益の獲得に走る中国の動きに警戒感が広がっており、事実上の買収防衛に踏み切った。
外国投資審査委員会(
FIRB)は本年9月に、国内大手資源会社に対する外資の出資比率を15%未満に、鉱山開発などの新規案件で外資が地元資本と合弁会社などをつくる場合は50%未満に制限する方針を示した。 

西豪州にあるレアアース鉱 Mt Weld 鉱を開発する Lynas Corp. は本年5月、中国の国有非鉄大手、中国有色鉱業集団(China Nonferrous Metal Mining Co.)から252百万豪ドルの出資(マジョリティ)を受け入れることを決めた。
2009/5/16 中国、レアアースでも豪州に進出

豪州のForeign Investment Review Board924日、中国有色鉱業の出資を50%未満、取締役を50%未満にするよう要求、有色鉱業はこれを拒否し、撤退した。

本件について資源会社ではないため上記は該当しないが、豪州政府の対応が注目される。

ーーー

Sinochem国務院国有資産監督管理委員会の管理下の主要な国営企業の一つ。2009年の“Fortune Global 500”では170位にランクされている。

1950年設立で、農業資材、エネルギー、化学品、ファイナンス、不動産の5つのセグメントから成っている。
2008年の売上高は452億ドル、純損益は9.44億ドルである。

1)農業資材(肥料、農薬、種子)

・中国最大の肥料のサプライヤーで、中国に13箇所に工場を持ち、輸入品を含め2008年の販売数量は1,622万トンで、中国でのシェアは18%となっている。
子会社Sinofert (中化化肥)が中心となっている。

・農薬の2008年の売上高は70億人民元で、中国の農薬の輸入、輸出の最大の会社となっている。

2007年に旧化学工業省の下のファインケミカルの研究開発機関であった瀋陽化工研究院(SYRICI
)と合併した。
2008年には浙江石油化学の大株主となり、その子会社の浙江化工科技(南中国)を傘下に収め、SYRICI(北中国)と合わせ技術力を強化した。

2008年に瀋陽
New Pesticide Industrial Park の建設を開始した。

・種子では2007年に 中国種子集団(China National Seed Group)と合併した。 

2)エネルギー

Sinochemは中国の国営石油会社4社の1社である。
(他は、
Petro China:中国石油天然ガス、Sinopec:中国石油化工、CNOOC :中国海洋石油)

元々国営の石油トレーディング企業であるが、探鉱開発,生産,精製まで一貫操業を行う会社を目指している。

E&PExploration & Productionについては、主に国外の石油ガス田買収や製油所への資本参加等により参入を図る計画で、2000年に海外油ガス田の探鉱開発を行う「中化石油勘探開発」を設立,2002年に2億500万米ドルでノルウェーの油田サービス会社Petroleum Geo-Serviceの子会社Atlantis社を買収し,オマーン,UAE,チュニジア等の石油ガス権益を取得した。

8月12日、同社はロンドンで上場しているEmerald Energy社の全株を5億3,200万ポンド(8億7,500万US ドル相当)で買収すると発表した。これにより、シリア、コロンビア、ペルーにおける石油・天然ガス事業に乗り出す。

3)Chemical

当初からのコア事業の1つで、主たる製品は、フッ素化学品、医薬品(原体、中間体を含む)、ゴム製品、石油化学原料などである。

鎮江奇美化工(Zhenjiang Chi Mei Chemical) は本年2月に江蘇省鎮江市で10万トンのABSプラントをスタートさせたが、同プラントの一部の機器は、Sinochemから購入した。

Sinochemは江蘇省太倉市で6万トンのABSと2万トンのPTMEGプラントの建設を計画したが、ABSについては計画を中止。現在太倉には、2万トンのPTMEGと2万トンのHFC-134a (フロン代替)がある。

2009/2/26  中国のABSメーカー 


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


ダノンとワハハは9月30日、両社が友好的に和解したと発表した。

ダノンはワハハとのJVの51%の権利をワハハに売却する。売却代金は明らかにされていない。
中国政府の承認を得て実施する。
これに伴い、両社間の法的争いは全て終了する。

ダノンのCEOは、「ダノンは1987年以来、中国に注力してきたが、更に活動を強める」と述べた。

ワハハの宗慶後会長は、「中国は開放されており、中国国民は寛大だ。中国企業は平等と相互利益の原則で世界の大企業と協力し、成長していくことを望んでいる」と述べた。

ーーー

フランスのダノンはヨーグルト等の新鮮乳製品で世界一、Evian、Volvic、Aqua 等のブランドの炭酸飲料水で世界一、ビスケットやCereal 製品で世界第二のメーカーである。

1996年にダノンと 全国人民代表大会の浙江省代表を務める有力者の一人で Forbes 誌で中国で23位の金持ちとされる宗慶後氏のワハハグループが、ダノン51%のJV 「杭州娃哈哈集団」を設立し、「娃哈哈(ワハハ)」ブランドの炭酸飲料水を売り出した。

1996/2/29   Wahaha Group Ltd DanoneJV契約締結
 
商標移転契約(WahahaブランドをJVに)、非競合契約、守秘契約を含む。
1996/3/28   中国で5つのJV設立で合意、宗慶後が会長に就任。その後JVは39社に。
     
2000年   Wahaha Group Ltd.が改組、杭州市政府が46%所有の会社に。
    6年間で独自に17社を設立し、Wahahaブランドで製品を販売。
     
2006年末   DanoneがWahahaに対し、これらの会社の51%の買収を提案(519百万ドル)、Wahahaが拒否(「安すぎる」)
     
2007/5/9   DanoneがJV契約に関する仲裁をストックホルム商工会議所に申請
(JV契約では仲裁はストックホルム商工会議所で行うこととなっている)
    Wahaha613日に杭州市の仲裁委員会に仲裁を要請。
     
2007/6/4   Danoneがロスアンジェルスの裁判所に訴訟、その後訴訟合戦。 

その後、商標移転契約を政府が承認しなかったことが明らかになった。ワハハ側はダノン側に伝えたとしている。
しかし商標移転契約が発効しなくても、競合禁止の契約は生きており、別会社でワハハブランドの製品を販売することは認められるものではない。

逆にワハハ側はダノンが競合禁止に違反していること、ダノン側の経営上の問題などを主張した。

過去の記事
  2007/6/15 仏食品メーカーのダノン、中国で「ブランド流用」で合弁企業と対立
  2007/7/12 ダノンとワハハの争い、更に深刻化
  2007/9/14 ニュースのその後 ダノンとワハハの争い
  2007/11/30 ダノンとワハハのその後
  2007/12/23 ダノンとワハハ、和解交渉へ
  2008/4/28 ダノン/ワハハのその後 ー 宗慶後会長の脱税事件

ーーー

明らかにダノン側の完敗である。
1996年に設立し、中国最大の飲料会社となったJVを中国側に渡すことになり、最初からやり直すこととなる。

Wahaha Group 杭州市政府が46%所有の会社になっており、会長の宗慶後は全国人民代表大会の浙江省代表を務める有力者の一人である。

今回の争いで、中国の企業や住民はDanoneに対し民族主義的な感情(「外国の悪魔」)を持った。

中国での訴訟や仲裁はワハハ側に圧倒的に有利である。

仮にダノンがストックホルムの仲裁で勝ったとしても、中国でボイコットを受けて事業が出来なくなる可能性が強い。
(現実に、多くの
JVのディストリビューターがJV製品の販売を止め始めた。)


敗因はJVのブランドを世界的に有名なダノンではなく、中国側パートナーのワハハにしたことである。
ブランドをダノンにしておけば、このような事態は起こらなかった筈である。

中国での事業の難しさを示す一つの例である。


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

最近のコメント

月別 アーカイブ