「no」と一致するもの

BPは1月18日、北京の人民大会堂で、訪中している Gordon Brown 首相と中国の温家宝首相の見守る中、中国での事業を拡大する一連の契約書の調印を行なった。

BPは、「30年前に進出して以来、中国への投資は40億ドルを超えるが、これらは中国の消費者の生活水準を向上させ、環境を保護するための高品質の製品、資材を供給するという明確な目的を持って行なってきた」とし、これを更に推し進めたいとした。

BP は1970代初めから中国に進出しており、これまでに43億ドル以上を投資している。
その中には、天然ガスの製造、航空機燃料の供給、LPGの輸入販売、燃料販売、潤滑油ブレンドと販売、石油化学、太陽光発電などがある。石油化学には
上海SECCO石油化工(Sinopec とのJV)と下記の酢酸、PTA事業がある。

BPは中国に30以上の子会社・JVを持ち、約4,000人の従業員を抱えている。

今回の契約は以下の通り。

1)クリーンエネルギー商業化センター

BPと中国のAcademy of Sciences (CAS) はこれまで検討してきた Clean Energy Commercialization Centre (CECC) を共同で設立するFSを実施する契約を締結した。

中国内外の個別のクリーンエネルギー技術(石炭ガス化、石炭液化、Coal to chemicalCO2捕捉・貯蔵、炭床メタンなど)を統合し、Polygeneration(複数のエネルギーを併給する熱電併給システム)のような競争力のある統合フィードストック製造流通システムを構築しようとするもの。

200111月にBPはCASと共同でクリーンエネルギー計画を打ち出した。

2)風力発電

BPはBeijing Tianrun New Energy Investment との間で、共同で内蒙古自治区の白雲鄂博(Bayan Obo 近郊に49.5メガワットの風力発電3基を建設、運営する契約を締結した。
両社は内蒙古自治区の他の場所での風力発電に投資することを検討することに合意した。

3)酢酸

BP Sinopec は重慶にある両社のJVのYangtze River Acetyls Company (YARACO) で65万トンの酢酸の新工場建設の覚書に調印した。2011年に生産開始の予定。

1995年にBP 51%、Sinopec 44%、地元 5%のJVでYARACOを設立、当初能力は15万トンであったが、その後増強し、現在は35万トンとなっている。このほか8万トンのエステルも生産している。

なお、BPとSinopecは江蘇省南京市に50/50JVのBP Yangtze Petrochemicals Acetyls Company (BYACO) を設立し、50万トンの酢酸工場を建設している。

BPは石油化学では酢酸とパラキシレン及びPTAに注力している。

PTAに関しては、BPは中国では珠海富華集団とのJVのBP 珠海ケミカル(BP 85%)が第1期 35万トン(その後増強して現在 50万トン)の工場を持つが、現在、第2期 90万トンを建設中で、間もなく完成すれば合計能力は140万トンになる。

 


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Chevron Phillips Chemical は昨年12月、同社のサウジでの3番目の石化事業NCP Project に関し、日本の日揮、韓国の大林産業と設計、機材調達、建設工事EPC)契約を締結したことを発表した。(日揮も受注を発表)

NCP Project Chevron Phillips とサウジの投資会社 Saudi Industrial Investment Group SIIG)の50/50JV Saudi Polymers Companyが実施するもので、オレフィン、ポリオレフィンを製造する。

計画は以下の通り。

立地:ジュベイル工業地区

製品   能力 EPC担当 技術
エチレン エタンクラッカー  1,200千トン 日揮 Lummus
プロピレン metathesis   200千トン 日揮 Lummus OCT(Olefins Conversion Technology)
1-hexene     100千トン 日揮 Chevron Phillips
PE     550千トン 2系列 Daelim  
PP     400千トン Daelim  
PS     100千トン 2系列 Daelim  

日程:建設開始 2008年1月、商業生産開始 2011年9月
原料のエタン、プロパンは
Saudi Aramco から供給を受ける。

 

Chevron Phillips SIIGは、同じジュベイル工業地区に既に2つのJVを持っている。
いずれも
50/50JVとなっている。
今回の計画の
PS用のスチレンモノマー、PP用の不足プロピレンはここから供給する。

1)Saudi Chevron Phillips Petrochemical
   製品:Benzene   485千トン ( CPChemAromax (R)技術)
      
Cyclohexane 220千トン
      
ガソリン
   2000年に生産開始 

2)Jubail Chevron Phillips Company
   製品:ベンゼン
       エチルベンゼン
       SM     715千トン
       プロピレン 140千トン
       ガソリン   300千トン      

   スチレンモノマーのEPCは日揮が受注している。

ーーー

今回の発表では、Saudi Polymers Company の出資は、最終的には、Chevron Phillips 35%となり、新しくサウジに設立されるNational Petrochemical Company (Petrochem65%となるとしている。
(記載はないが、他の2つの
JVも同様と思われる)


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1月11日に薬害肝炎救済法が成立し、15日に原告・弁護団と政府は和解基本合意書を締結した。

被告側の田辺三菱製薬などは未だに何らの発表もしていない。
(報道では田辺三菱製薬広報部では「現在、国との間で補償の配分などを協議している。1月末までに何らかの対応がとれるはず」としているという。) 

ーーー

田辺三菱製薬の前身の三菱ウェルファーマは2007年7月9日に、薬害肝炎事件と同じく血液製剤が原因となった薬害エイズ事件(HIV事件)について、「HIV事件に関する最終報告書」を発表している。
   
http://www.mt-pharma.co.jp/release/nr/mpc/2007/pdf/HIV070709report.pdf

1996年にミドリ十字の株主が起した株主代表訴訟が2002年3月に和解したが、その和解条件として、
役員側が(後継の)三菱ウェルファーマに1億円の和解金を支払うのと同時に、
ミドリ十字がHIV薬害事件の惹起を阻止できなかった原因について調査検討し、薬害事件の再発防止策についての提言をとりまとめること
が決められた。

上記報告はこれに基づくもので、
  
第1編 HIV薬害事件の惹起を阻止できなかった原因
  第2編 再発防止策についての提言
から、成っている。

原因の背景としては、当時のミドリ十字に関して、以下の点を挙げている。
 ・行政当局の意向・動向を窺うに汲々とし、自主的な判断で実行する意識に欠けていた。
 ・上司の指示がなければ動かないという企業風土
 ・創業者の死後、全社横断的な観点で総括・指揮する人・組織の欠落
 ・業績回復を急ぐ意識
 ・製造元の子会社アルファ社(アボットから買収)の管理が不適切

そして、再発防止策として
 ・意識改革・社内風土の改善
 ・コーポレート・ガバナンスの強化
 ・組織の改善
 ・安全性確保の措置
 ・グループ全体での取組み
を挙げている。

ーーー

HIV事件は、血友病等の治療のために投与された血液製剤にHIVが混入していたため、多くの患者がHIVに感染し、エイズを発症した事件である。

1989年、非加熱製剤の投与によりHIVに感染したとする被害者らが、国および製薬企業5社に対して、東京地裁と大阪地裁に損害賠償請求訴訟を提起した。

製薬企業5社
(1)ミドリ十字:製造販売:原料血漿を米国子会社Alpha Therapeutic (Abbott
から買収)から輸入
(2)
化学及血清療法研究所:製造販売
(3)
バクスター:親会社の米 Baxter International から輸入
(4)バイエル薬品(カッタージャパンを合併継承):米 Bayer Corp. から輸入
(5)日本臓器製薬:オーストリア
Immuno AG から輸入

1995年10月6日、東京、大阪両地裁が統一的な解決を図るため協議し、一次和解勧告を同時に提示した。

和解案概要:

  : 原告の感染者、発症者、死亡者全員に一人一律 4,500万円を払う。
  和解金の負担割合は製薬会社6、国4とする。
  原告らが和解成立時までに製薬会社など出資の友愛福祉財団から受けた給付金のうち、特別手当、遺族見舞金、遺族一時金の5割に相当する額を和解金から控除する。
  未提訴者についてはなお協議する。
  和解一時金による救済を補完する恒久対策はなお協議する。

裁判長は以下の見解を示した。
 ◆原告らの被害を放置することは許されない
 ◆製薬会社、国は救済責任がある
 ◆早期・全面的に救済する和解が必要とした。

このまま裁判で判決を出せば、最終的に確定するまで被害の救済が行われないという問題点を重視、「一刻も早く和解によって原告らHIV感染者の早期かつ全面的救済を図ることがぜひとも必要で、(約2千人にのぼるエイズウイルス感染者全員を)一律かつ平等に救済する内容でなければならない」と述べ、和解の成立に向けた関係者の努力を促した。

しかし、特に⑤の「恒久対策」の負担などをめぐって難航した。
恒久対策に伴う追加負担分を聞いた外資系企業が、「本国への影響が大きすぎる」として和解協議をポイコットする姿勢を見せた。
国も、手当などを予算年度を超えて継続して支払うことには難色を示した。

膠着した状況が変わったのは1996年2月9日、菅直人厚相の「AIDSファイル」発見の記者会見だった。
「確認できない」はずの資料が見つかって、菅厚相が初めて国の責任を認める姿勢を示した。
バイエル薬品も裁判所に基金方式で救済資金を出す「試案」を出した。

1996年3月7日、両地裁は第二次和解案と所見を出した。
以下の点が追加された。(国は和解金以外の各費用も、4割を負担する)

・健廉管理手当
  HIV感染者でエイズを発症しているものに対し、一人当たり月額15万円を給付する。(国の負担割合は4割)
・友愛福祉財団による救済事業継続(5年程度)
  (国が救済事業に要する資金のうち4割相当額を拠出)

・弁護士費用等
 原告らに対し、弁護土費用・訴訟費用として、感染者一人当たり350万円を支払う。
 第七次訴訟以降の原告らについては、150万円。(負担割合は製薬会社6、国4)

・被告製薬会社間の負担割合
 1983年当時の国内の非加熱濃縮製剤のシェアによる。

・その他の恒久対策は国がHIV感染者と引き続き協議を行い、適切な措置を取る。
  HIV感梁症の研究治療センターの設置、
  拠点病院の整備充実、
  差額ベッドの解消、
  二次・三次感染者の医療費等のHIV感染症の医療体制

1996年3月29日、東京地裁103号法廷で和解が成立した。 
その後、同地裁別室で確認書調印式が行なわれ、菅直人厚相が「国を代表して心からおわびします」と述べた。

確認書では、「本件和解及びその前提とされた裁判所の各所見に基づき、本件非加熱濃縮製剤の使用によりHIV感梁被害を受けたすべての血友病患者及びその遺族が被った物心両面にわたる甚大な被害を救済するため、次のとおり合意に達したことを確認する」とし、最初に以下の誓約を行なっている。

1)厚生大臣及ぴ製薬会社は、本件について裁判所が示した前記各所見の内容を真摯かつ厳粛に受けとめ、わが国における血友病患者のHIV感染という悲惨な被害を拡大させたことについて指摘された重大な責任を深く自覚、反省して、原告らを含む感染被害者に物心両面にわたり甚大な被害を被らせるに至ったことにつき、深く衷心よりお詫びする。

2)厚生大臣は、サリドマイド、キノホルムの医薬品副作用被害に関する訴訟の和解による解決に当たり、前後2回にわたり、薬害の再発を防止するため最善の努力をすることを確約したにもかかわらず、再び本件のような医薬品による悲惨な被害を発生させるに至ったことを深く反省し、その原因についての真相の究明に一層努めるとともに、安全かつ有効な医薬品を国民に供給し、医薬品の副作用や不良医薬品から国民の生命、健康を守るべき重大な責務があることを改めて深く認識し、薬事法上医薬品の安全性確保のため厚生大臣に付与された各種権限を十分活用して、本件のよろな医薬品による悲惨な被害を再ぴ発生させることがないよう、最善、最大の努力を重ねることを改めて確約する。

3)製薬会社は、安全な医薬品を消費者に供給する義務があることを改めて深く自覚し、本件のような医薬品による悲惨な被害を再び発生させることがないよう、最善、最大の努力を重ねることを確約する。

なお、この和解の当事者とならなかった被害者については、訴訟上一定の手続を踏んだ上で、同一内容にて和解することとされ、1996年3月の和解以降、2007年6月末現在までに1,378名の被害者と和解が成立しており、現在もなお係属中の訴訟がある。

注1)サリドマイド訴訟

サリドマイドは「安全な」睡眠薬として開発・販売されたが、妊娠初期の妊婦が用いた場合に催奇形性があり、四肢の全部あるいは一部が短いなどの独特の奇形をもつ新生児が多数生じた。
日本においては、諸外国が回収した後も販売が続けられ、この約半年の遅れの間に被害児の半分が出生したと推定されている。
大日本製薬と厚生省は、西ドイツでの警告や回収措置を無視してこの危険な薬を漫然と売り続けた。
1974年10月13日、全国サリドマイド訴訟統一原告団と国及び大日本製薬との間で和解の確認書を調印、続いて26日には東京地裁で和解が成立した。以後、11月12日までの間に、全国8地裁で順次和解が成立した。
(企業と国の負担比率は2:1)

確認書
  「厚生大臣及び大日本製薬は、前記製造から回収に至る一連の過程において、催奇形性の有無についての安全性の確認、レンツ博士の警告後の処置等につき落ち度があったことに鑑み、右悲惨なサリドマイド禍を生ぜしめたことにつき、薬務行政所管庁として及び医薬品製造業者としてそれぞれ責任を認める」
  「厚生大臣は、本確認書成立にともない、国民の健康を積極的に増進し、心身障害者の福祉の向上に努力する基本的使命と任務をあらためて自覚し、今後、新規薬品承認の厳格化、副作用情報システム、医薬品の宣伝広告の監視など、医薬品安全性強化の実効をあげるとともに国民の健康保持のため必要な場合、承認許可の取消、販売の中止、市場からの回収等の措置をすみやかに講じ、サリドマイド事件にみられる如き悲惨な薬害が再び生じないよう最善の努力をすべきことを確約する」
    

注2)キノホルム(スモン)訴訟

スモンは、腹部膨満のあと激しい腹痛を伴う下痢がおこり続いて、足裏から次第に上に向かって、しびれ、痛み、麻痺が広がり、ときに視力障害をおこし、失明にいたる疾患である。膀胱・発汗障害などの自律障害症状・性機能障害など全身に影響が及ぶ。
スモンは、整腸剤「キノホルム」を服用したことによる副作用だと考えられている。1970年8月に新潟大学の椿忠雄教授が疫学的調査を踏まえてキノホルム原因説を提唱し、厚生省はこれを受けてキノホルム剤の販売を直ちに停止した。
国と製薬会社の武田薬品、日本チバガイギー、田辺製薬に対する裁判が行なわれた。
田辺製薬はウイルス説を全面展開し和解を拒否してきたが、1979年、キノホルムとスモンの因果関係を認め、9月15日に、国及び製薬企業がその責任を認め、被害者救済の道筋を定めた確認書に調印した。
(企業と国の負担比率は2:1)
このスモン被害者の運動は1979年9月の薬事二法(薬事法の改正と医薬品副作用被害者救済基金法成立の原動力となった。

確認書
  「被告国は、安全かつ有効な医薬品を国民に供給するという重大な責務をあらためて深く認識し、今後薬害を防止するために、新医薬品の承認の際の安全確認、医薬品の副作用情報の収集、医薬品の宣伝広告の監視、副作用のおそれのある医薬品の許可の取消など、薬害を防止するために必要な手段をさらに徹底して講ずるなど行政上最善の努力を重ねることを確約する。」
  「被告製薬3社は、スモン被害者が強く訴えてきたノーモア・スモンの要求が極めて当然のものであることを理解し、これを機会に、医薬品の製造・販売等に直接携わるものとして、医薬品の大量販売・大量消費の風潮が薬害被害発生の基盤ともなり得ることを深く反省し、医薬品の有効性と安全性を確保するため、その製造・販売開始時はもとより、開始後においても、副作用の発見及び徹底した副作用情報の収集につとめ、それらに対する適切な評価や必要かつ充分な各種試験を実施し、更にそれらのデータを厚生省に提出し、医者や使用者にも副作用情報を提供し、効能や用法・用量に関しては、適正な宣伝、情報活動をなすなどし、薬害を発生させないための最高最善の努力を払う決意を、スモン被害者のみならず国民全体に表明する。」
    

ーーー

本件では、上記の民事訴訟、株主代表訴訟の他に、以下の刑事訴訟がある。

①元帝京大学副学長 安部英業務上過失致死事件

1985年5月、6月頃の帝京大学医学部附属病院における非加熱製剤(日本臓器の非加熱製剤)の投与によって、血友病患者がHIVに感染し死亡したという被害事実について、元帝京大学副学長である医師安部英が、業務上過失致死罪にて東京地裁に起訴された。
2005年4月に被告人が死亡したため、公訴棄却となって終結している。

②元厚生省生物製剤課長松村明仁 業務上過失致死事件

1996年10月、上記帝京大学ルート刑事事件およびミドリ十字元3社長業務上過失致死事件で採り上げられた2件の被害事実について、厚生省の元生物製剤課長である松村明仁が、業務上過失致死罪で東京地裁に起訴された。
2001年9月、帝京大学ルート刑事事件における被害事実については無罪(検察官は上告せず、無罪確定)、
ミドリ十字ルート刑事事件における被害事実については執行猶予付有罪(禁鋼刑)の第1審判決が出された、双方が控訴したが、双方の控訴が棄却された。被告人は、現在上告中。

③ミドリ十字 元3社長業務上過失致死事件

大阪医科大学附属病院における1986年4月の肝臓病治療の際に、止血を目的とした非加熱濃縮第Ⅸ因子製剤(クリスマシン)の投与によって,患者がHIVに感染し死亡したという被害事実について、ミドリ十字の当時の歴代3社長(松下廉蔵・須山忠和・川野武彦)が、業務上過失致死罪で大阪地裁に起訴された。
2000年2月、それぞれ禁鋼刑に処する旨の有罪判決があり、被告人3名は控訴したが、被告人川野武彦は死亡のため公訴棄却となり、その余の被告人2名については、大阪高裁が第1審判決を破棄し、刑期が短縮された。

ーーー

この後、薬害ヤコブ訴訟が起こった。

脳外科手術の際、ヒトの死体から取った脳硬膜(脳を覆っている硬い膜)の移植を受けた患者がクロイツフェルト・ヤコブ病(以下「ヤコブ病」)を発症した。
ドイツのB.Braun Melsungenから輸入(輸入は日本ビー・エス・エス)したヒト乾燥硬膜ライオデュラが、病原体に汚染されていた。

B.Braun は製造に当たり、ドナーの選択をせず、ドナーの記録もなく、多くの硬膜をプール処理し、滅菌が十分でないなど、ずさんな管理をしていた。

厚生省は、1973年に単なる書面審査でライオデュラの輸入を承認したが、1997年の使用禁止までの間、硬膜移植によるヤコブ病伝達の危険性に関する多くの論文や報告があったにもかかわらず、全く何の措置も取らなかった。
1987年に硬膜移植後にヤコブ病を発症した第1号患者の報告論文が発表され、アメリカではその年に使用を禁止したが、厚生省は何もしなかった。

感染した患者と家族・遺族が1996年11月に大津地裁に、1997年9月に東京地裁に訴訟を提起した。

両地裁は和解案を示し、2002年3月25日に確認書に調印した。(企業と国の負担比率は2:1)
確認書には国と企業のおわびが明記された。

厚生大臣は、(これまでの訴訟の和解による解決で)薬害の再発を防止するための最善の努力をすることを確約したにもかかわらず、本件のような悲惨な被害が発生するに至ったことを深く反省し、--- としている。

2007年3月、2005年に提訴した患者(2006年に死亡)の和解が大津地裁で成立した。
計42件の大津訴訟(患者42人は全員死亡)は、これですべて和解が成立した。
東京訴訟は65件のうち55件で和解し、10件で協議している。

ーーー

上記の4件の和解で、ミドリ十字の入っている薬害エイズ事件のみ、企業と国の負担が6:4で、他はすべて2:1となっている。
今回の薬害肝炎事件での負担割合について、舛添厚労相は、これまでの薬害事例などを参考に2:1で折衝中としている。

 


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アラブ首長国連邦アブダビの国際投資会社IPICはこのたび、カザフスタンの国営石油・ガス会社のKazMunayGas との間で、西カザフスタンで石油化学コンプレックスを建設する覚書を締結した。現在、FSを実施中。

IPIC (International Petroleum Investment Company) はアブダビ国営石油会社 ADNOC50%、アブダビ投資公社とアブダビ国営銀行のJVが50% 出資する会社で、アブダビ政府の石油・化学分野での海外投資を担当する。

デンマークの石油会社 Borealis は当初はStatoil 50%Neste 50% JVであったが、現在は IPIC 65%、オーストリアのOMV 35% 出資となっている。 

カザフスタンには現在、KazMunayGas 15%、私企業で多角化したコングロマリットのSat & Company 85%出資する合弁会社 Kazakhstan Petrochemical Industries (KPI:旧称 Atoll ) Aktau Polystyrene Plant SM 300千トン/ PS 54千トン) と Atyrau Polypropylene Plant PP 30千トン)がある。

カザフスタン政府は世界市場でのプレーヤーになることを目指し、海外大手と提携して石油化学コンプレックスを建設することを決めた。
KazMunayGas Sat & Company のJVのKPI で、西カザフスタンの天然ガスを利用して大規模石油化学コンプレックスを建設することとした。
Shellや韓国のLG、中国企業などが提携相手として挙げられた。

第一期として、Tenghiz ガス田のドライガスからKulsary 近郊でエタン抽出を行い、Atyrau でエタンクラッカーとプロパン脱水素設備、PEPPプラントを建設し、第二期ではKashagan ガス田のドライガスを利用してコンプレックスを拡大するというもの。

第一期はエチレン120万トン、プロピレン40万トン、HDPE 40万トン、LLDPE 40万トン、PP 40万トンを考えており、12億ドルの投資を想定、最終的にはPE 150万トン、PP 45万トンを計画している。

Tenghiz ガス田1993年から開発されている。
開発会社は
Tengizchevroil で、株主はChevron (50%)ExxonMobil (25%)KazMunayGas (20%) とロシアのLukArco (5%)
となっている。
KazMunayGas は現在、Chevron との間で、ガスの価格を交渉している。

Kashagan ガス田はカスピ海北部にある海上ガス田で、Eni が主体で開発しており、日本の国際石油開発 (Inpex) も参加している。
出資比率は、Eni (18.52%)Shell (18.52%)Total (18.52%)ExxonMobil (18.52%)ConocoPhillips (9.26%)KazMunayGas (8.33%)、Inpex (8.33%)

 参考 2007/9/6 カザフスタンの石油開発中断 

2008年1月14日、カザフスタン政府はKashagan 油田の持分変更で合意したことを発表した。17.8億ドルを支払い、KazMunayGas持分を倍増し、トップ4社に並ぶ。スタート時期は2011年末に延期された。
   新比率 KazMunayGasEniShellTotalExxonMobil 各
16.81%
        ConocoPhillips 8.40%Inpex 7.55%

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

2005年12月、Foster Wheeler KazMunaiGas との間で新しい石油化学コンプレックスの詳細FS実施契約を締結した。

20063月にBasell KazMunayGaz SAT との間でこの石化計画参加の覚書を締結した。2010年のスタートを目指すとした。
Sat KPI の持株のうち35%Basellに譲渡し、Sat 50%Basell 35%KazMunayGaz 15% 出資とすることも含まれている。

しかし、その後の進展は報道されていない。

今回の IPICとの覚書締結はこれに代わるものと思われる。

IPICは現在 110億ドルの海外投資を行なっており、2007年初めには、世界の石油・エネルギー産業での戦略的投資者として5年間で海外投資を200億ドルまで増やす方針を明らかにしている。  


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SABICはこのたび、OSOS Petrochemical (新設)との間で、PBT などを生産するJV設立の覚書を締結した。

JVは投資額10億ドルで、Yanbu で以下の製品を製造する。

 PBT  60,000t/y
 ブタンジオール  50,000
 テトラヒドロフラン   3,500
 無水マレイン酸  85,000

SABIC2ヶ月以内でJV計画を検討する。参加する場合は同社は35%の出資をすることとなっている。

OSOS Petrochemical Yanbu PBT を生産するため、サウジの私企業 United Maritime Lines によって設立された。
原料の
ブタンは石油鉱業省により割当を受けている。

同社は同社の目標を、エンプラとスペシャルティ製品製造のワールドリーダーになることとしている。製品は世界中で販売することを目指している。

2007年2月にFoster Wheeler は同社から計画の基本設計(FEED) とプロジェクト管理 (PMC) の業務を受託した。
 

なお、SABICは GE Plastics を買収しSABIC Innovative Plastics と改称したが、同社でもPBTを扱っている。

 


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EUは1月16日、PfizerGlaxoSmithKlineSanofi Aventis などの医薬メーカーを立ち入り調査した。

EU Competition Commissioner のNeelie Kroes は、全医薬業界を調査しており、なぜ新薬が出ないのか、ジェネリック医薬品の発売が遅いのかを調べるとしている。調査には1年以上かかるとみられている。
立ち入り調査は極秘資料が廃棄されるのを防ぐため。

世界の三大医薬メーカーのPfizer (米)、GlaxoSmithKline (英)、Sanofi-Aventis (仏)のほか、AstraZenecaMerck Sharp & DohmeJohnson & JohnsonWyethSandoz Novartis の部門)、Teva (ジェネリック医薬品メーカー)は調査を受けていることを明らかにしている。

EUは米国の当局とも連携をとっているとしている。

医薬メーカーが特許権を濫用したり、訴権を濫用したりして新しい企業が市場に参入するのを妨害しているのではないかを調べる。

AstraZeneca が潰瘍薬のLosec のジェネリック品出現を遅らせるため特許当局に誤った情報を提出したとして2005年に 60百万ユーロの罰金を科せられたのが一つのきっかけとなっている。
1995年から1999年までに40 の新薬が出たが、2000年から2004年の間には28 しか新薬が出ていないが、これは競争力が働いていないことを示しているのではないかと見ている。

EUは競争を制限するような合意があるのか、支配的地位の一方的な濫用がこれに結びついているのかどうかを調べたいとしている。
また、特許紛争の解決のような医薬メーカー間の取引も調べ、
EUの競争ルールに違反していないかどうかチェックする。

欧州は医薬品に毎年2000億ユーロ(一人当たり400ユーロ)を使用している。

EUではテレコミュニケーション、エネルギー、ファイナンシャルサービスなどの分野で同様の調査を行なっている。


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INEOS 1月11日、BPから酢ビモノマーとエチル酢酸事業を買収することで合意したと発表した。
取引には英国の
Hull 近郊の Saltend 工場にある25万トンの酢ビモノマー工場(2002年稼動)と25万トンのエチル酢酸工場(2001年稼動)とTeesside からSaltend までのエチレンパイプラインを含んでいる。

買収完了後、酢ビモノマーはINEOS Enterprises に属し、エチル酢酸はINEOS Oxide に属することとなる。

INEOS Enterprises は旧称 INEOS Chlor Enterprises で、電解などのほか、エステルも扱っている。
INEOS Oxide EO、EGが主力だが、2001年にBPから酢酸エステル事業(オランダの工場を含む)を買収している。

INEOS は2005末にBPが同年4月に石油化学の大半を分離して設立した Innovene を買収している。
  
2006/6/14 事業買収で急成長した化学会社 

ーーー

BP20073月に、これら事業の売却を決めたことを発表している。
これにより、酢酸と無水酢酸に集中するとしている。

BP は当初、石油化学については7つのコア事業を決めていた。
エチレン、
HDPEPP、アクリロニトリル、PTA、パラキシレン、酢酸であった。

20043月に同社は、アジア市場で成長が著しく、BPが技術面で優位に立つadvantaged products(PTA、パラキシレン、酢酸)に集中するとの戦略を発表、同年4月にオレフィンと誘導品の売却の意向を発表した。

200541日に石油化学の大半をInnoveneとして分離2005年末にIneosに売却した。

なお、石油化学のうち、上海SECCO石油化工(Sinopec とのJV)については、Sinopec との間で2つの酢酸JV(重慶のYarco Acetyls、南京のBP YPC Acetyls Company (Nanjing) Ltd. をもつ関係で、BPに残している。
   
2006/4/6 中国のエチレン合弁会社ー1 

 

BPの現在の石化事業の体系は以下の通り。

BPの Saltend 工場には、今回売却する酢ビモノマー 25万トン、エチル酢酸 25万トンのほかに、酢酸 60万トンと無水酢酸 15万トンのプラントがある。

BPとそのJVの世界全体の能力は、酢酸 290万トン、無水酢酸 15万トン、酢ビモノマー 40万トン、エチル酢酸 30万トンとなっている。

PTAではBPは30年以上にわたり世界のリーダーで、2006年4月現在で、アジア、米大陸、欧州に21の工場を持ち、合計能力は900万トンを超え、JVを含めた世界シェアは31%となっている。
中国では珠海富華集団とのJVのBP珠海ケミカル(BP 85%)が第1期 35万トン(その後増強して現在 50万トン)の工場を持つが、現在、第2期 90万トンを建設中で、間もなく完成すれば合計能力は140万トンになる。

PTA状況について
 
2006/7/26 
BPが韓国のPTA事業から撤退 


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

重慶ケミカルパークで2007年12月に、一つのメタノール計画が商業生産開始の式典を、他の一つの計画(三菱ガス化学が参加)が定礎式を執り行った。

いずれも原料は同地の天然ガス田からの天然ガスである。

国家発展改革委員会(NDRC)は2007年夏に、新しい天然ガス活用政策を発表した。
限られた天然ガスの消費を最適化し、省エネを推進することを狙い、
2007年8月30日以降、天然ガスを原料とするメタノールの生産を禁止した。
   
2007/9/7 四川-上海の天然ガスパイプライン「川気東送プロジェクト」工事開始 後半部分
   

この結果、前者の第二期計画は実現不可能となった。
三菱ガス化学の計画は、8月30日以前に事業実施の承認を得ており、かつ、それまでに天然ガスの供給契約を締結しているため、禁止の対象外となる。おそらく、中国での最後の天然ガス原料のメタノールプラントとなる。

1)KingBoard Chemical Holdings 建滔化工集団)

香港のラミネート会社 KingBoard Chemical は12月17日、重慶ケミカルパークでメタノール工場の商業生産開始の式典を行なった。
2005年の第2四半期に建設を開始し、本年8月に完成した。

能力は45万トンで、運営は KingBoard 天然ガス化学 (重慶) 社が担当する。
原料の天然ガスは同地の天然ガス田から供給を受ける。
製品メタノールは揚子江の水運を利用して中国東部の市場に輸送する。

KingBoard では当初、第一期の完成後、市場の状況にもよるが、能力を135万トンまで拡大することを検討していた。
しかし、上記の規制により、増設は不可能となった。

ーーー

KingBoard Chemical Holdings 建滔化工集団)は1998年に香港で設立されたラミネートを製造する会社で、中国各地に工場をつくるとともに、ラミネート原料に遡及してきた。

メタノールについては、KingBoardは重慶計画に先立ち、中国海洋石油との合弁会社 CNOOC-KBChemical (CNOOC が60%、KingBoard が40%)を設立して、 2006年9月から海南島の東方市で 60万トン/年の天然ガスベースのメタノールを生産している。
184百万ドルを投じたもので、ルルギ技術を採用、CNOOCの東方市近辺のガス田からの天然ガスを原料とする。

KingBoard はまた、2007年3月に河北省Xingtai 市の内丘で100万トンの固焦炉コークス、10万トンのメタノール、12千トンのベンゼンの建設を開始した。第一期と同じ能力で、完成すればメタノール能力は合計20万トンとなる。

ここでは更に、河北省に本拠を置く上場会社、Jinniu
金牛Energy Resources との合弁で大規模メタノール事業を計画している。
450百万ドルを投じて、年産180万トンの石炭ベースのメタノールを生産するもので、KingBoard が60%、金牛が40%を出資する。
現在FS中で、完成時期は未定。
これに加え、原料の石炭を確保するため、金牛51%、King
Board 49%出資のJVの石炭会社を設立する予定。

同社は山西省呂梁でも、コークス180万トン、メタノール20万トンの石炭化学プロジェクトをもっている。

NDRC は20067月に通達を出し、小規模石炭化学を禁止した。(乱立防止)
年産300
万トン未満の石炭液化、100万トン未満の coal-to-methanol DMT、60万トン未満のcoal-to-olefin は禁止された。

上記のKingBoard 河北省Xingtai 市(メタノール10万トン)、山西省呂梁(メタノール20万トン)は、いずれも、禁止対象の石炭液化によるメタノール生産ではなく、コークス炉のオフガスを原料とするため、規制から外れる。

ーーー

2)三菱ガス化学

三菱ガス化学と重慶化医集団の合弁のメタノール計画の定礎式が2007年12月26日、副市長その他の出席のもと、重慶市の重慶ケミカルパークで行なわれた。

投資額は21億人民元(約290百万ドル)で、公称能力は年産85万トンだが、重慶化医集団によると、実能力は100万トンになるという。
本年上半期に着工し、2010年の下半期のスタートを目指す。

2004年8月に国家発展改革委員会(NDRC)から詳細事業化調査を行う正式許可を得て、FSを続けていた。

当初の計画では2005年上半期に三菱ガス化学 51%、重慶化医 49%出資で JV を設立し、投資額 2億ドルで2008建設完了を予定していた。

重慶化医集団によると、2007年7月5日に事業実施の承認を取得した。
(このため、8月30日からの天然ガス原料によるメタノール新規事業禁止から外れる)

注. 本件には不思議な点がある。

   この記事は重慶ケミカルパークのホームページに記載されており、式の写真も載っているので、
   式典が行なわれたことは事実である。
   しかし、三菱ガス化学側は何も発表していない。
   三菱ガス化学としては本事業をやるかどうかについて、まだ結論を出していないとしているとの情報もある。
    中国側の今回の発表も、合弁会社の社名や出資比率などを明らかにしていない。

   上記の天然ガス規制などに関連して(承認取り消しを恐れて)、中国側が実績つくりをしている可能性もある。

ーーー

なお、三菱ガス化学では南京市の南京ケミカルパークにメタノール誘導品の子会社を設立している。
2006年4月に建設を開始し、昨年9月に完成、11月から試運転に入っている。

社名: 菱天(南京)精細化工 Lingtian (Nanjing) Fine Chemical Company Ltd.
出資:三菱ガス化学 85.1%
    伊藤忠ケミカルフロンティア 10.0%
    伊藤忠商事 4.9%
製品:ジメチルアミン、ジメチルホルムアミド(40千トン)及びジメチルアセトアミド10千トン)
    第二期計画として、トリメチロールプロパン

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参考   2007/10/2 内蒙古で100万トンのメタノール工場竣工 

 


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

2007年12月21日(金)午前11時32分頃に、茨城県神栖市の三菱化学鹿島事業所第2エチレンプラントにおいて、火災事故が発生し、協力会社従業員4名が亡くなった。

  2007/12/24 三菱化学鹿島事業所 火災事故 

ーーー

三菱化学は 12月27日、経済産業省 原子力安全・保安院および茨城県に対し、中間報告資料を提出した。
  http://www.m-kagaku.co.jp/newsreleases/2007/20071228-2.html#tmp1 

この中で、漏洩原因としては、
「直接原因」として、仕切板の抜き出し作業中に何らかの原因により空気駆動弁(AOVair operated valve )が開いて、クエンチオイルが流出したものと推察されるとし、
「間接原因」として、
AOVの誤作動を回避するため、バルブ施錠等の安全措置を講ずるべきであったが、作業指示書等による明確な手順が示されていなかったとしている。

尚、着火原因については、
①自然発火
②高温部接触
③静電気着火
の可能性が考えられるが、詳細について調査・検討中であるとしている。

 

付記 本報告に対してMETI から追加報告の指示があり、2008年1月9日、追加報告が提出された。
 
http://www.meti.go.jp/press/20080109001/M.pdf

それによると設備設置後の最初の工事(2006年2月)実施前の安全打合会で、「AOV施錠」などの安全措置を決め、工事安全指示書を作成したが、今回、メンテナンス担当による施錠の確認がされていなかったという。
メンテナンス担当と運転担当の間で、安全措置の実施に関する仕組みが明確に定められていなかったことが挙げられている。

付記 三菱化学が1月9日に出した追加報告に、過去の事故の記録が出ている。(報告書 P.19)

事故:1999年1月に第1エチレンで死亡事故(死亡1、負傷 6 )発生

状況: 
熱交換器の配管を修理するため、保温材を剥がしていたところ、配管が破裂、水蒸気が噴出し、作業員が被災した。

原因: 
工事に係わる安全措置確認の不足により、本来閉止すべき弁の閉止操作が行なわれず、低圧系配管に超高圧蒸気の圧力が加わったため、エロージョンで減肉していた部位が破裂した。

対策:
・運転指示、作業指示に係わる管理の徹底
・作業発生時の「作業安全確認書」使用の徹底(義務付け)
「バルブ等施錠管理」の制定

ーーー

年明けの1月7日、茨城県警は三菱化学鹿島事業所と、同事業所内にあってプラントの維持・管理などを請け負っている三菱化学エンジニアリング鹿島支社を家宅捜索した。

三菱化学は中間報告のなかで、バルブの誤作動を回避するための安全対策を作業指示書などに記載していなかったことを明らかにしているが、捜査本部では、メンテナンス作業中の安全対策を怠っていた可能性があるとして、業務上過失致死容疑での立件も視野に捜査を進める。

また、茨城県が設置した事故調査委員会(委員長:長谷川和俊・千葉科学大教授、危機管理)の第1回会合が8日午前、同事業所で開かれた。
調査委は危険物や高圧ガスの保安、高温火災を含む特殊災害、危機管理システムなどについての専門家6人で構成され、三菱化学からの聞き取りや現地調査を実施し、事故原因や再発防止策について検討する。
施設の老朽化が進む鹿島コンビナート全体の課題についても議論するという。

会合では、作業手順について三菱化学と下請け会社の間で安全意識が共有されていたか検討する必要があるとの意見が出たという。
調査委は月に1回程度、会合を開いて3月末までに報告書をまとめたいとしている。

 

第2エチレンプラントの操業再開には、まだ時間がかかりそうだ。

三菱化学は化学各社に原料や製品の融通を要請しているが、各社工場とも高水準の稼働が続いており国内からの供給には限界があり、商社を通じて海外調達の可能性も探っている。

この結果、アジア市場で石化製品の取引価格が年明けから急騰している。
エチレン価格は昨年12月下旬に比べ 8%アップ、ブタジェンは同じく 15%アップし過去最高値を更新した。

ーーー

三菱ケミカルホールディングスは1月7日、小林喜光社長の社員向けの新年挨拶の要旨を発表した。
  
http://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1199668375.pdf

この中で、小林社長は、三菱化学の鹿島事業所火災事故について、「事故に対する猛省と、決意新たに徹底した安全意識を」と呼びかけた。
また製品供給について、「製品の融通など他社のご協力も得ながら、お客様第一との考えであらゆる方策を考え、最大限お客様の要請にお応えするよう努力していただきたい」と述べた。

また昨年10月に新しく発足した田辺三菱製薬の薬害C型肝炎問題、本年4月1日にグループの機能材料分野の事業を包含して新発足する三菱樹脂については塩ビ管価格カルテル容疑での公取委の調査が継続していることについて触れ、「グループの社会的信頼回復に向け、誠実かつ真摯に対応」するよう、求めた。

そのうえで、三菱ケミカルホールディングスグループは極めて大きな課題を抱えており、まさに「グループ゚存亡の危機」にあり、“崖っぷちに立っている”という危機感を共有して危機を乗り切ろうと、呼びかけている。

 

同社では社長、取締役、役付執行役員、関係執行役員の役員報酬の一部を12月分から当分の間(時期は未定)返上することとした。
また、既に発表していた1月1日付人事異動のうち、一部については、事故対応に注力するため、当面の間延期した。

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Mitsubishikinouzai2

薬害肝炎問題では、1月8日に肝炎救済法案が衆院を通過し、週内に成立する見通しだが、原告・弁護団は、国側と基本合意を結んで裁判上の和解を進める一方、製薬企業(田辺三菱製薬と子会社のベネシス、日本製薬)に対しては加害責任を認めた謝罪などがない限り、形式的に訴訟を続ける方針を明らかにしている。

新生三菱ケミカルホールディングスは苦しいスタートとなった。

 

付記  2008年2月1日 三菱化学鹿島事業所 火災事故 その後(2)

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 総合目次、項目別目次は
   
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アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国を訪問した甘利明経済産業相は1月6日、アブダビ石油公社のユセフ総裁と会談した。
総裁は「油田開発には日本企業の関与継続を求める」と述べ、2012年から順次失効するアブダビ石油など日系4社の自主開発油田の権益延長・拡大を認める方針を示唆した。

昨年12月17日、福田康夫首相は、来日中のムハンマド・アブダビ皇太子と会談したが、その席でアブダビ石油の自主開発油田の契約更新に向け、原油の安定供給について意見交換している。
また、会談後にコスモ石油や丸紅などとアブダビ側との発電などのエネルギー事業契約に関する署名式を、首相と皇太子が同席して官邸で行った。

アラブ首長国連邦結成(1971年)以前の1968年にアブダビ石油が石油利権を取得。その後も1970年に合同石油開発がエル・ブンドク油田に参加、1973年にジャパン石油開発が設立されアドマ鉱区の事業に参加、1996年に国際石油開発がアブダビ沖合アブ・アル・ブクーシュ油田に権益を保有していたAmerada Hess社から権益を取得(Inpex ABK)するなど、二国間関係は石油関係を中心に発展している。

* 石油公団解散により、国際石油開発(Inpex)がジャパン石油開発(JODCO)の親会社となった。

2005年現在、UAEは日本の原油輸入量第2位(24.5%:このうち99%はアブダビで産出)、ガス輸入量第4位(12%:ほぼ100%アブダビで産出)を占めており、わが国自主開発原油の中でUAEが占める割合は約50%(約20万B/日)。

2007年9月に、アブダビ首長国の政府系投資機関、国際石油投資会社IPICが約900億円を投じコスモに20%出資し、筆頭株主になることが発表されている。コスモヘの出資を機に対日輸出を拡大、日本市場への影響力を強める。
また、アブダビ政府が同国で計画する石油精製と石油化学の複合事業にコスモが出資することも検討する。

Abudabi_4  

 地図 http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/0/231/0511_out_f_ae_expansion_adco_zadco.pdf

ーーー

アブダビ石油

丸善石油と大協石油(現在は両社合併しコスモ石油)と日本鉱業(現ジャパンエナジー)が1967年12月にアブダビ土侯国より海上4,416km2の石油開発利権を獲得した。
  A地域 2,810km2、B地域 1,596km2
  ロイヤリティ 12.5%
  鉱区使用料 5万ドル/年
  利権協定 45年 探鉱期間8年
  8年の探鉱期間に最低1300万ドル投資

1968年1月、3社均等でアブダビ石油を設立
   現在の株主:コスモエネルギー開発 63%、ジャパンエナジー石油開発 31.5%、
           東京電力 1.8%、関西電力 1.8%、中部電力 1.8% 

1969年9月、ムバラス1号井 出油

1973年、
ムバラス油田が生産開始。
その後、子会社のムバラス石油が1989年にウム・アル・アンバー油田、1995年にニーワット・アル・ギャラン油田で生産を開始した。
(ムバラス石油は2006年1月、アブダビ石油が吸収合併した。)

アブダビ石油が同地域で生産する原油量は2006年実績で日量約2万3,800バレルとなっている。
2012年に45年の契約期限を迎える。

ーーー

合同石油開発

株主
コスモエネルギー開発 35%
ジャパンエナジー石油開発  35%
三井物産 20%
三井石油開発 10%

合同石油開発は、アラブ首長国連邦・カタール国両国境線上に位置するエル・ブンドク油田の利権保有者であるブンドク社の株式の1/3を所有、またブンドク油田の開発所要資金の97%(残る3%はBP)を負担しているため、これに見合う生産原油の97%を取得している。

ブンドク油田は1970年11月より商業生産を開始し、2006年3月に累計生産量2億バレルを達成した。

ーーー

ジャパン石油開発(JODCO)
(当初 石油公団の子会社、現在は
国際石油開発:Inpex の子会社)

石油ショックに際し、政府も財界も新たな油田を求めて奔走した。

1972年、BPからアブダビ・マリン・エリアズ(ADMA)の持つ利権の30%を780百万ドルで買収したが、1974年に国営石油会社ADNOCが参加比率を引き上げた結果、比率は12%に下がった。

当時操業していたのは下部ザクム油田、ウムシャイフ油田で、これらの権益比率は、
 JODCO 12%、ADNOC 60%、BP 14.67%、TOTAL 13.33%

JODCOでは未開発の上部ザクム油田(既存の下部ザクム油田の上層)の開発を要請したが、先ずウムアダルク油田開発を指示された。
実際はメジャーも投げ出した油田で、1985年に生産を開始したが、油と一緒に水が噴き出し始めた。
シミュレーションで圧力を調整して水を止めることに成功、その後、水平掘りを実施して生産量を上げた。

その後、上部ザクム油田(可採埋蔵量世界4位)、サター油田の掘削にも成功した。

ウムアダルク、上部ザクムの権益比率はJODCO 12%、ADNOC 88%であったが、
上部ザクムの権益については、2006年1月1日を発効日としてADNOC社の権益88%のうち28%をExxonMobil Abu Dhabi Offshore Petroleum社(EM社)に譲渡された。

  JODCO ADNOC BP TOTAL(仏) ExxonMobil
下部ザクム油田   12%   60%  14.67%  13.33%   ー
ウムシャイフ油田   12%   60%  14.67%  13.33%   ー
ウムアダルク油田   12%   88%   ー   ー   ー
上部ザクム油田   12%   60%   ー   ー   28%
サター油田   40%   60%   ー   ー   ー

   資料 NHKライブラリー「プロジェクトX⑩ 夢遥か、決戦への秘策」より、「炎のアラビア」の後半部分

ーーー

インペックスエービーケー石油

設立:1996年2月29日

出資:国際石油開発 95%、三菱商事 5%
   (当初は石油公団が40%、国際石油開発=石油公団子会社が55%)

1996年、アブダビ沖合アブ・アル・ブクーシュ油田に権益を保有していたAmerada Hessから権益を取得した。


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

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