「no」と一致するもの

DuPontと英国のTate & Lyle の折半出資による合弁会社、DuPont Tate & Lyle Bio Products, LLC, 68日、テネシー州のLoudon 工場にBodman エネルギー庁長官を迎え、Bio-PDOの商業生産を祝う式典を行った。

同工場は世界で初めて再生可能原料(トウモロコシの糖分:corn sugar) から1,3-propanediol (商品名Bio-PDOをつくる工場で、年産能力45千トン、建設費は1億ドル。昨年11月に生産を開始している。

American Chemical Society は当日、Bio-PDOの開発チームに 2007年のHeroes of Chemistry 賞を授与した。

合弁会社は、DuPont と Tate & Lyle が共同開発した独自の発酵プロセスを導入している。propanediol の生産に必要なエネルギーは石油由来のものに比べ40%低減し、温室効果ガスの排出を20%減らす。

Bio-PDOの用途は多岐にわたり、化粧品、液体洗剤、不凍液やその他グリコールが使用されている分野のほか、不飽和ポリエステルや3GT繊維のDuPont Sorona、最新のDuPont Cerenol (高機能ポリオール)の原料となる。更に新しい熱可塑性エラストマー Hrtrel や自動車仕上げ材も間もなく上市される。昨年11月に販売開始されて以来、新用途が次々と出ている。

Soronaは、様々な用途において他にない数多くの特性を発揮する高機能ポリマーで、カーペット繊維(柔らかい感触と耐久性、優れた防汚性能)、アパレル素材(抜群の柔らかさ、快適な伸縮性、回復力、手入れが簡単、紫外線や塩素にも耐性)、自動車や室内装備、パッケージおよびエンジニアリングプラスチック材など、様々な用途での利用が可能。
これまでは石油ベースの原料で作られていたが、2007年初旬からBio-PDOでの製造が開始された。

DuPontは昨年10月に、Soronaを生産し、アジア全域で販売するため、中国の「張家港 Glory Chemical Industry」 と提携すると発表した。DuPont技術の年産30千トン連続重合設備を2007年第2四半期に商業生産を開始する予定で、原料のBio-PDOは米国から供給する。

現在、Bio-PDOは次の2つのブランドで販売されている。
  
ZemeaTM propanediol   パーソナルケアおよび液体洗剤等の市場向け(高純度、低刺激性) 
  Susterra
TM propanediol  解凍液、不凍液、熱媒体油などの工業用(低毒性、生分解性)

* DuPont Tate & Lyle Bio Products のサイト http://www.duponttateandlyle.com/about_us.html

 

Tate & Lyle 類を使った甘味料、デンプン、精糖、高付加価値食品および工業用原料、およびクエン酸などを扱っており、工業用デンプンでは世界第一位、SPLENDA®スクラロース(高甘味度甘味料)を製造する唯一のメーカー。
過去10年間で同社のテクノロジーの中核をなす発酵技術を確立し、現在では世界有数の発酵メーカーとして4大陸に17の発酵設備を所有している。

DuPont は再生可能なバイオベース素材、先進的なバイオ燃料、省エネ技術、高機能の安全防護製品、代替エネルギー関連製品および技術をはじめとする、製品の開発と商業化を推進している。昨年10月に持続可能性についての新しい公約を明らかにした。

   2006/10/17 デュポン、持続可能性について新たな公約を発表 

ーーー

参考 2007/5/8 植物ベースのバイオ製品の開発   

 

2006年11月、台湾資本のDragon Group(騰龍グループ)は福建省廈門の海滄投資区で芳香族とPTAプラントの建設に着工した。
PXはDragon Aromatics (Xiamen) Co.(騰龍アロマティックス)、PTAはXiang Lu Petrochemical (翔鷺石油化学) が担当する。

 
2006/7/31  台湾資本のDragon Group福建省廈門でPXからPETまで一貫生産へ
 

しかし、このたび、騰龍アロマティックスは住民の反対運動でPXプラントの建設中断を強いられた。
5月末に廈門市当局は住民やメディアの声を受け、Dragon AromaticsのPX計画について廈門地区環境評価が完了するまでの建設中断を決定した。住民の反対は収まらず、場合によっては計画の中止、立地の変更も考えられる。

廈門は旅行やレジャーに適した美しい島だが、PXプラントは廈門湾をへだて7km離れた海滄投資区にある。
(中国の規則ではそのような工場は住宅地から最低10km離れていることとなっている。)
両社は環境アセスメントを行い、国家発展改革委員会(NDRC)の認可を得ているが、環境アセスメントは一般に公開されていない。

香港の Asia Sentinel は経緯を以下の通り述べている。

当初、コラムニストがPXプラントの危険性を問題とする記事を新聞に書いたが、市当局は関連記事の記載を禁止した。
ところが、「事故が起こると何千トンもの毒物が放出される」といった内容の記事がインターネットに次々掲載された。

その内に “I Love Xiamen, No PX “. といったビラが廈門市中にばらまかれた。

これに対して、廈門市長は何も問題はないと言明した。

3月16日に北京で開催された中国人民政治協商会議(CPPCC)で、中国科学院メンバーで廈門大学の化学の教授のZhao女史が工場により引き起こされる健康問題について懸念を表明した。規則では危険な工場は住宅地から少なくとも10km離れる必要があることが喚起され、105名のCPPCCメンバーが工場移転を要請する手紙にサインした。
(Zhao女史にも騰龍アロマティックスの環境アセスメントは開示されていない)

その後、インターネットや携帯電話のSMS(Short Message Service)で情報が伝わり、爆発的に広がった。

3月25日のメッセージは次の通り。
「騰龍グループはベンゼン計画を開始した。非常に毒性の強い化学品が製造されると、廈門全体が原爆にやられるようなもので、みんなが白血病にかかり、奇形児が生まれる。我々は健康な生活をしたい。国際機関はこのような計画は住宅地から100km離すことを義務付けている。廈門は16kmしか離れていない。子孫のために、この情報を皆に知らせよう」

3月28日には地元のTVがこれを報じた。

5月30日に廈門市当局はDragon AromaticsのPX計画について、廈門地区環境評価が完了するまでの建設中断を決定した。
しかし、市民は中断は中止とは違うとし、これは単なる時間稼ぎだと批判した。

5月31日、人びとが集まり、「パラキシレン反対、廈門を守れ」のプラカードを先頭にデモが始まった。警官は何もせずに引き下がった。5,000人程度がデモに参加した。

 

騰龍アロマティックスの芳香族計画は13.5億ドルを投じて、パラキシレン800千トン、オルソキシレン160千トン、ベンゼン228千トンのほか、発電所や桟橋、タンクを建設するもので、2009年初めのスタートを目指していた。

なお、翔鷺石油化学のPTA第二期計画(150万トン)については問題となっておらず、既存プラントの増設であることから、同社ではこれに関係なく計画を続行する見込み。

ーーー

中国ではこれまで地方政府の業績はGDPGross Domestic Product)への貢献で評価されたため、住民の安全、環境保護に反することがしばしば起こった。住民無視の企業誘致が今回の事態を引き起こしたといえる。
環境アセスメントの段階で住民の意見も聞いておれば、こんな事態にはならなかったであろう。

「原爆」、「白血病」、「奇形児」などは、(どこまで知った上でのことか分からないが)、反対のために何も知らない住民をけし掛けているような感じも見られる。
これも住民への事前のPRが全くなされていなかったためであろう。問題が起こってからの対応も不十分なようだ。

相手が中国企業でなく、台湾企業であるからかどうかは分からない。

中国では2005年11月に発生した吉林石油化学の爆発事故やその他の多くの事故・環境問題で住民の不安が高まっている。
最近も
太湖のアオコ(藍藻)の発生で無錫市の飲み水供給が問題となっている。(6/16 に詳細)

中国ではようやく「省エネ・排出抑制総合工作方案」が出され、環境対策が重視されるようになったが、今後は、住民対策も必要になる。
中国に進出する日本の企業に、また新しい問題が生まれた。


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INEOSは5日、ノルウエーのBorealisの石化事業を290百万ユーロで買収することで合意したと発表した。

買収するのはBorealisPP175千トン)とLDPE140千トン)設備及び Norsk Hydro Borealis 50/50JVであったエチレン会社Noretyl 50%持分。

Borealis については下記参照。
  2006/11/10 OMVとBorealis、オーストリアとドイツで石化増強 

Noretyl の能力はエチレンが557千トン、プロピレンが80千トン。
(上記の
2006/11/10記事ではエチレン450千トンとなっているが、今回の発表では557千トン)

なお、同様に
Borealis PE能力は270千トンとなっていた。
内訳は
LDPE 140千トンとHDPE 130千トン(本年2月現在は110千トン)であるが、HDPEについては20072月に廃棄を検討すると発表しており、今回の売却からは除外されている。

既報の通り、INEOS Norsk Hydro からNoretyl 50%持分を含むポリマー事業を買収するため、今回の買収で INEOSNoretyl 100%所有することとなり、ノルウエーのオレフィン、電解~PVC、ポリオレフィンの一貫の事業を全て取得する。

  

 

  
2007/5/25 INEOS、Norsk Hydro からポリマー事業を買収

INEOS Norsk Hydro PVC事業買収で 既存のEVCの事業を強化するが、今回のBorealisのポリオレフィン事業買収で既存の元 Innovene のポリオレフィン事業の強化を図る。

更に、エチレンの取得で、既存のスコットランドGrangemouth)、ベネルックス AntwerpLilloGeel)、ドイツKölnWilhelmshaven)、フランス (Lavéraと合わせ、欧州市場を網羅した原料基地を持つこととなる。

INEOS については下記参照
  
2006/6/14 事業買収で急成長した化学会社  

 


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Monsantoは昨年8月に米国第1位の棉種子会社Delta and Pine Land Company Deltaを現金15億ドルで買収することで合意し、その後、独禁法問題で司法省と交渉を続けていたが、5月31日、米国の棉種子事業の一部を切り離すことで合意に達したと発表した。

MonsantoDelta は、アメリカの棉の種子市場で合わせて50%以上のシェアを持つ。Delta は中国、インド、ブラジル、メキシコ、トルコ、パキスタンなどの主要な市場を含む13カ国に関連会社を持つ。

買収の条件としてMonsanto は以下の事業を処分する。
Stoneville ブランドの棉種子と関連資産をBayer CropScience に310百万ドルで売却
NexGen ブランドの棉種子と関連資産をAmericot に売却
・その他

ーーー

実は、Monsanto 1999年にDelta 18億ドルで買収することで合意した。しかし、この買収は2つの大問題を抱えていた。
第一は独禁法問題で、第二が
Delta の持つTerminator 技術の問題であった。

この技術はDelta 米国農務省が共同で開発し、1998年3月Delta 「植物遺伝子の発現制御」という名で米国特許を取得した。
種子を死滅させる毒性タンパクを作る遺伝子を組み込むことにより、1回目
の発芽の時はその毒素遺伝子にカギがかけられ種子は収穫できるが、2回目の発芽の際には種子が死滅する。
一世代限りの種子で、農家は農作物を自家採種できなくなる。
環境保護団体がその危険性からTerminator 技術と名付けた。

農民や市民団体、多数の国の政府の反対にもかかわらず、Delta はこの技術の世界中での商業化を主張していた。
MonsantoによるDelta 買収で批判がMonsanto に集中した。

この結果、当時のMonsanto CEORobert Shapiro はこの技術の商業化は行わないと約束した。
1999年10月4日付けで、Rockefeller Foundation会長(Monsanto役員)及びその他宛てとしてOpen Letter を出した。

I am writing to let you know that we are making a public commitment not to commercialize sterile seed technologies, such as the one dubbed "Terminator." We are doing this based on input from you and a wide range of other experts and stakeholders, including our very important grower constituency.

今回買収する予定のDeltaの技術は開発段階であり、商業化するとしても最低5年はかかり、商業化できるかどうかも分からない。
Monsanto は不妊種子技術以外の遺伝子操作技術を持っているが、遺伝子保護や農業上の利便のために将来これらを利用することはあり得る。
各方面の意見は十分聞きたい。問題点が完全に明らかにされ、提起された懸念に公に対応するまでは
gene protection technology を商業化しないことを約束する。

しかし、第一の問題の司法省による独禁法の審査が大幅に遅れ、結局、Monsanto 199912月に買収を断念している。

ーーー

今回の買収で Monsanto はこの技術を棉に関しては商業化する模様である。

同社は毎年「公約」を発表しているが、2005年のMonsanto Pledge Report では以下の通り1999年の公約の内容を修正している。

1999年に農務省と種子会社が開発している不妊種子技術に関して懸念の声が上がった。
これに対して
Monsantoでは 「食料作物に対しては」 不妊種子技術を商業化しないと公約した。
この公約は今も有効だが、
Monsantoでは技術の発展に応じて絶えずこのスタンスを評価し直している。
Monsanto は将来この技術を使用する可能性を否定しない。常にケースバイケースでリスクとベネフィットの検討を続ける。

http://www.monsanto.com/monsanto/content/media/pubs/2005/focus_impacts.pdf

1999/10の公約では 「食料作物に対しては」 という限定はついていない)

 


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2007/5/28 「次の買収は?」 でいろいろの噂を報じた。

大規模買収が続く中で、投資家の間では更にいろいろの噂が飛び交っている。
なんらかの材料でもてはやし、株価を上げて儲けようとしているようだ。

1.Dow/BASF

5月31日に株式トレーダーの間でDow がドイツのライバルBASFを買うのではとの噂でBASFの株価が上昇した。

1日のロイターによれば、DowのLiveris CEO は、この噂に対してはノーコメントとしながらも、そんな大会社間のTOBは単なる資金問題だけでなく、難しい問題があるとして否定的なニュアンスを示した。
更に同社として関心のあるのは、今後伸ばしたい水処理事業とコーティング事業であり、そんな企業を狙いたいと述べた。

Dowは限外ろ過(微孔を有する高分子膜を用い、コロイド状粒子や有機性物質を加圧ろ過する方法)、膜分離活性汚泥処理、電気再生式脱イオン装置などの技術をもち、売上高は年間4億ドル程度。Liveris CEOは2~3年内にこの事業を20億~30億ドルにしたいとしている。
同社は昨年6月、浙江省湖州市の欧美環境工程有限公司(OEE)の株を買収している。

コーティング事業についても2~3年以内に同規模にしたいと述べた。

更に、Natreon oil のような健康・栄養事業の売上を伸ばしたいとしている。
Dow AgroSciencesは2004年に、品種改良された「Canola 種菜種」を使い、トランス脂肪酸、飽和脂肪酸を含まないNatreon oil を発売している。

ーーー

6月5日の日本経済新聞はLiveris CEOとのインタビュー記事が載っている。

大型M&Aについて
 「独BASF、米デュポンとの合計でも市場シェアは7、8%しかない。それでは規模の利益を得にくい」

デュポンの買収提案
 「それらは観測だ。・・・我々はどんな買収も急がない」
 「現在は川下分野で投資機会を探っている。先端分野で技術力を持つ会社などに関心がある」

解雇役員との訴訟合戦
 「彼らは会社を非上場化し、バラ売りしようとしていた。・・・会社を売るより、現在の経営戦略を続けた方が長期的な株主価値を生み出せると思う」

 

.2.Bayer

証券アナリストの間でBayerがプラスチック(MaterialScience)事業を売却するのではとの説がある。
同社のCEOが、プラスチック事業は同社の重要な部門であるとしているが、いつまでそれが続くだろうかとしている。

同社のMaterialScience 部門は以前のBayer Polymers と Bayer Chemicals から Lanxess が分離独立した残りの部門で、PC、ポリウレタンなどが中心となっている。 

Bayer は昨年Schering AG 230億ドルで買収しライフサイエンス会社に変身した。
(買収資金の一部を賄うため、MaterialScience の子会社、希少金属粉末の H.C.Starck、セルロースの Wolff Walstrode は売却された。)

その結果、MateriaScience 部門は異質な存在になりつつある。

更に、同部門の全社における比重も減っている。

昨年の同部門の全社における売上高比率は前々年の38%から35%に減少している。

営業損益もグラフの通り、同部門が減益となる一方、CropScience を含むライフサイエンスは、(Schering AG の分が半年分しか入っていないが)増益となり、全社での比重が高まっている。

      注 Schering AG の分は2006/6/23から算入

あるアナリストはGE Plastics の売値からみて、かなりの高値で売れるだろうとし、その収入を医薬事業に投入すれば世界のトップ10の医薬会社になれるとしている。

但し、現在のBayerSchering 買収で3月末で130億ユーロの借入金を持っており、返済のためにプラスチック事業のキャッシュフローが必要とする声もある。

ーーー

Bayer の医薬部門では、医療用医薬品に注力する一方、OTC 医薬品の買収を検討している。
同社は昨年
Schering AG を買収したが、医薬品のうち医療用医薬品の比率を 6070%にとどめたいとしており、OTC医薬品の拡大が必要としている。

Bayer 2004年にRoche Consumer Health 部門を23.8億ユーロで買収している。

買収の候補にスイスのPharmaton SA が入っているかとの質問にはノーコメントであった。
(昨年
8月、Boehringe Ingelheim は子会社rPharmaton を米国のIdeaSphere に売却する契約を締結したが、本年2月に売却はキャンセルされた。)

中国のPVCの輸出が急拡大している。

4月の輸出量は88,096トンとなり、同国のPVC輸出量88,804トンとほぼ並んだ。

同国のPVC輸入量は漸減しており、近いうちに輸出量が追い抜き、中国がネット輸出国になるのは間違いない。

 

これまでの中国のPVC輸入の最大は2001年の 1,916千トン(月平均で 160千トン)、月別では2002年3月(旧正月明け)の 208千トンであった。

  

中国のPVC輸出は 2005年9月まではごく少量であったが、同年10月から増え始めた。

2005年の輸出は119千トン、2006年は460千トンで、輸出先は下記の通り。(千トン)

  2005 2006
インド 25 89
トルコ 16 118
香港 13 11
韓国 12 32
米国 10 6
エジプト 9 32
ロシア 0 36
その他 34 136
合計 119 460

昨年の第4四半期に急減しているが、これは、6月にインドの地元企業が中国、韓国、日本等からのPVC輸入品に対してアンチダンピング提訴を行ったことが関係しインド向け輸出が激減したこと、及びトルコがPVCの輸入関税を引き上げたことが響いている。

その後、インドへの輸出は復活した。(トルコは減ったまま)

2007年の輸出先別数量は下記の通り。(千トン)

  1月 2月 3月 4月
インド   13   25   40   48
エジプト    3    5    8   18
UAE    2    3    4    4
ブラジル    5    5    1    2
ロシア    2    4    3    3
トルコ    3    4    3    2
その他   13   19   26   11
合計   41   64   85   88

 


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米投資会社のBlackstone Capital Partners はこのたび、Celanese社株式の売却を完了した。

Blackstone 2004年に Celanese TOBにより38億ドルで買収し、ドイツ株式市場から上場廃止とした。

同社は取得の7ヵ月後には米国証券取引委員会に7.5億ドル(その後10億ドルに修正)の株式発行(IPO)の予備登録を行い、2005年初めに株式発行して New York 市場に上場した。

同社はその後、順次持株を売却し、本年5月に残り株式を売却して、完全にCelanese から離脱した。

2005年初めのCelanese 株式の発行価格は16ドルであったが、その後の化学品の価格上昇と同社の営業面、及び事業戦略面での改善で株価は上昇し、35ドル前後となっている。

この結果、Blackstone Celanese の買収→売却で、短期間の間に50億ドル以上の利益を得たこととなる。

 

Celanese の基はドイツのHenri Dreyfus 1913年に設立したCellonit Gesellschaft Dreyfus (セルロイド製造)で、その後、航空機用ペイント、その原料の酢酸の製造を行った。英国、米国にも進出、第一次大戦後の需要減でアセテートの製造を始めた。

1961年に米Celanese はヘキストとの合弁で Ticona を設立、1964年には Celanese は日本でダイセルとの合弁でポリプラスチックを設立している。

1987年にヘキストがCelanese を買収したが、1997年にヘキストは事業再編でTiconaを分離、1998年に化学部門を新セラニーズとして分離した(Ticonaはセラニーズ子会社となる)。

元の親会社のヘキストとローヌプーランはライフサイエンス部門を統合してAventisとなり、その後、
Sanofi Aventis となっている。

Celanese については下記を参照
  2007/2/22 セラニーズの中国での活動  

 


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マレー半島を横断する石油パイプラインの建設計画が実現に向けて動き出した。

マレーシアの石油輸送会社 TRANS-Peninsula Petroleum Sdn Bhd は28日、建設工事を担当するマレーシアのエンジニアリング会社Ranhill Bhd 及び計画をマネージするインドネシアのPT Tripatra Engineers & Consultants と提携契約(Master alliance agreement )を締結した。今後、土地取得を行い、来年央に着工する。

調印式にはAbdullah首相、Yudhoyono インドネシア大統領のほか、スチールパイプを供給するインドネシアのPT Bakrie & Brothers Tbk、原油供給側としてサウジのAl-Banader International Group も出席した。

本計画は5月7日にマレーシア政府の承認を得た。

パイプラインはKedah州のYan からKelantan州 Bachok までの全長312キロで、貯蔵タンクはYan、Jeli、Bachokの3か所に建設される。

第1期(20億ドル)では、1日当たり200万バレルの輸送を目指す。
その後、第2期(25億ドル)、第3期(25億ドル)と総額70億ドルを投じ、2014年の完成時には600万バレルに拡大する。

完成すると中東から東アジアへの石油輸送で、海賊事件やタンカー渋滞が問題となっているMalacca海峡を回避し、かつ輸送期間も短縮できる。

TRANS-Peninsula Petroleum では「中東の主要な生産国からイスラム基金、東アジアの利用企業まで、投資はすべて歓迎だ」としている。

 


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キヤノンは5月25日、今年10-12月に予定していた新型薄型テレビ、SED(Surface-conduction Electron-emitter Display:表面伝導型電子放出素子ディスプレイ)テレビの発売を当面見送ると発表した。

キヤノンが1986年から研究を開始。1999年からはキヤノンの電子源と微細加工技術、東芝のブラウン管技術と液晶・半導体量産技術を結集して共同開発に着手し、200410月、合弁会社「SED」を設立。東芝姫路工場を量産拠点とし1800億円の投資を計画した。
2005
年8月から月産3,000台を生産し、同年中に両社別々のブランドのテレビとして発売する計画であった。

しかし、ライバルの液晶、プラズマの価格が急落したため、当初の想定より低コストで量産できる技術開発が必要になり、両社は発売時期を2006年春に延期したが、2006年に入り、発売時期を再延期していた。

 

SEDは薄型テレビ市場の大半を占める液晶やプラズマとは、仕組みが大きく異なる。

液晶は、白い光をカラーフィルターに通して色を表現。
プラズマは、気体を光らせ、その光に反応する蛍光体で色を出す。

SEDはブラウン管と同じ発光原理で、赤緑青の蛍光体に電子線を当てて画像を表示する。
ブラウン管は一つの電子銃が出す電子を偏向ヨークで曲げるために奥行きが厚くなるが、SEDは1つの蛍光体ごとに1つの電子をぶつけるため薄型にできる。画素を区切るワイヤーも不要で、無駄な発熱も防げる。
画質はブラウン管並みに明るく、高コントラストで、原理上は液晶、プラズマより低消費電力とされる。

キヤノン ホームページから

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発売延期には2つの理由がある。

第一は売価下落への対応。
両社は
重要技術の特許出願をせず、技術を社外に一切出さない方針を徹底したため、主要部品などを外注できず、開発スピードが思うように上がらなかったといわれる。

その間、ライバルの液晶、プラズマは価格が急落、当初1インチ1万円のテレビが最近では3千円に下がっている。
松下は2,800億円をかけて尼崎市にブラズマパネルの国内第5工場を新設し、液晶のシャープも高水準の投資を続け、巨額投資によるコスト削減に突き進んでいる。

第二の問題は、キヤノンに対するSEDの技術に関連する米国訴訟問題である。

キヤノンは1999年に米国の Nano-Proprietary から関連技術のライセンスを受けているが、東芝とのJVの「SED」の扱いに関してNP社は2005年4月にテキサス連邦地裁に提訴した。

訴状では
・SEDカラーテレビは特許ライセンス契約の範囲外である。
・東芝とのJVのSED社はライセンス可能な子会社ではない。
としている。

キヤノンは、同社がSED社株を東芝より1株多く持つため子会社であり、契約に基づいてSED社にもライセンスを移せると主張。
これに対し、NP社は「SED社の意思決定には東芝の同意が必要で、実質的には子会社ではない」と反論した。
キヤノンは「子会社」との判決を求める訴えを米連邦地裁に出したが、棄却された。

このため、キヤノンと東芝は本年1末に、キヤノンが東芝保有のSED株を買い取り、完全子会社とすることを決定した。東芝・姫路工場での量産計画も白紙に戻した。

しかし、NP社が契約違反として契約を破棄したため、これでNP社との問題は解決とはならなかった。
5月3日、NP社は訴訟で勝訴したと発表した。陪審は契約違反による当初のライセンス契約の終了を認めた。

これと同時に、NP社は新しい仕組みでキヤノンに対して再ライセンスすることを示唆している。

キヤノンはライセンス契約の終了を認めたことに関して控訴するとし、訴訟の解決と低コスト化技術の確立を早期に進めて、発売時期を改めて決定するとしている。

Nano-Proprietary, Inc.は、100%所有の2つの事業子会社を持つ持株会社で、200以上の特許(申請中を含む)を持ち、技術ライセンスを業としている。
・Applied Nanotech Inc. :カーボンフィルム/ナノチューブから電子放射への応用分野。
・Electronic Billboard Technology, Inc.:electronic digitized sign 技術。

2006年5月、同社は三井物産との間で、カーボンナノチューブ技術の商業化のための戦略的提携を発表している。

付記

2007年12月30日の朝日新聞報道

次世代の薄型テレビ「SEDテレビ」について、キヤノンが独自技術で開発に乗り出した。すでに試作段階に入っており、量産技術の開発を経て商品化を目指す。

キヤノンが開発したのは、映像を映し出すために電子を放出する部分を製造する基幹技術。
これまで使うことにしていたナノ・プロプライアタリーの特許では、ガラス基板上に電子を放出する膜を形成し、カーボンで覆っていたが、安定性に問題があることもわかり、キヤノンはカーボン以外を使う手法を開発した。

今年5月の地裁判決はキヤノンが契約違反をしていると判断、現在は控訴審で審理中。

ーーー

SEDテレビがモタモタしている間に次世代の目玉として有機ELが台頭してきた。

ソニーは本年4月、表示装置に有機ELエレクトロ.・ルミネッセンスを使い、液晶やブラズマよりも大幅に薄いテレビを世界で初めて年内に発売することを発表した。まず11型で商品化する。
豊田自動織機と折半出資のディスプレー製造会社、エスティ・エルシーディ
愛知県東浦町でパネルを量産する。

有機ELは電圧をかけると光を放つ有機化合物から成るパネル向け電子材料。
明暗がはっきりとした画面表示が可能で、応答速度が速い。材料そのものが発光するため、画面の背後から光を当てる必要がある液晶や、発光するための空間が要るプラズマに比べて大幅に薄型化できる。

東芝も2009年度末までに有機ELテレビを商品化することを表明、32型で発売を検討する。

先発する液晶TVとプラズマTVも競争は激しい。
2007年の液晶の出荷台数(37インチ以上)は2,270万台と前年の2.2倍となるに対し、プラズマは1,230万台と3割強の伸びに止まる見通し。2005年はプラズマが大きく上回り、2006年はいずれも1,000万台程度で液晶が若干上回った。

キヤノンがSEDの事業化に時間をかけるほど、状況は苦しくなる。 

 

付記

同社の社名は「キノン」ではなく、「キノン」である。

同社のホームページに以下の記載がある。 http://web.canon.jp/about/mark/index.html 

「ヤ」の字が大きく表記された「キヤノン」が生まれたのは、1947年に、社名を「精機光学工業株式会社」から「キヤノンカメラ株式会社」と変更したときでした。当時の登記簿や株主総会後に発表される営業報告書、朝日新聞に掲載した広告など、すべて「ヤ」が大きくなっています。では、なぜ「キャノン」ではなく「キヤノン」にしたかというと、全体の見た目の文字のバランスを考え、きれいに見えるようにしたからなのです。
「キャノン」では、「ャ」の上に空白が出来てしまい、穴が空いたように感じてしまうので、それを避けたのです。

 


* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

SABICARAMCOのトップが上海でのフォーラムで24、両社がそれぞれSinopecJV交渉を進めていることを明らかにした。
いずれも間もなく発表される予定。

SABICSinopec天津の新しい100万トンエチレン計画に10億ドルを投資して参加する。

本計画は当初、ダウケミカルと中国側(SINOPEC/天津市)の50/50 JVとして検討されたが、ダウが経済性を理由に撤退した。
その後、天津市は外資企業の参加を求め、
SaudiAramcoやSABICも検討対象となったが、進展はなかった。

SINOPEC天津分公司2005年末、政府から単独での大拡張計画の承認を受け、昨年6月26日、天津浜海新区の大港石油化学基地で着工した。2009年9月スタートの予定。

既存の500万トンの製油所を1250万トンに拡張し、エチレン100万トンを新設するもので、既存エチレンと合わせ、エチレン能力は120万トンとなる。誘導品は以下の通り。
 LDPE 300千トン
 HDPE 300千トン(INEOS 
Innovene S Process
 PP   450千トン
 EOG  420千トン(ダウ技術)
 その他

  2006/7/3 SINOPEC天津分公司の100万トンエチレン計画着工 

SABICはその後、参加に熱意を示し、昨年1月のサウジのアブドゥッラー国王の最初の公式訪中を機に、交渉を再開したといわれている。

 

SABICこのほか、2004年6月に大連実徳グループと50/50のJVで、大連市の旅順港に50億ドルをかけて、年産1千万トンの製油所と年産130万トンのエチレンコンプレックスをつくる計画をたてた。(その後、エチレン能力を100万トンに落とした。)
  2007/1/4 
SABIC、大拡張計画  

大連の計画は中国の11次5ヵ年計画(2006-2010)にも含まれておらず、当面承認の可能性がない。


中国政府がSaudiAramco の福建計画の承認で、とりあえずはサウジはお終いとしたとの見方もあった。
天津、大連のいずれの進出計画も一向に進展をみなかったため、SABICの会長のPrince Saud bin Thunayan Al-Saud は2月25日にメディアの取材に対し、「中国政府が出来るだけ早くプロジェクトを承認することを希望する」「わが社の投資先は中国だけではない。他にもたくさん投資先がある」と述べた。
但し、一方で「中国市場には未来がある。中国への投資は大きなチャンスだ」とも語っている。
 

なお、SABICはこのたび、北京と深センに事務所を開いた。既存の上海、香港を加え、4事務所となる。
SABIC会長は、中国はSABICにとって戦略的に最も重要な輸出国であり、世界で最も成長力のあるポリマーの市場であるとし、今回の事務所の開所は中国へのコミットメントを示すもので、SABICの新しい石化プラントの製品のほとんどは中国を中心とするアジアに輸出されると述べた。

SABICはこのたびGE Plasticsの買収を決めたばかりで、SABICの大拡張計画は着々と進展している。

ーーー

SaudiAramco はSinopecの山東省青島の製油所に参加する契約書を間もなく締結する。

Sinopecは青島製油所の持分の25%をSaudiAramcoに譲渡するといわれている。

青島製油所は第一期の能力10百万トンで、来年末に商業生産開始の予定。

本年4月に両社は、Aramcoが2010年まで、100万バレル/日の原油を毎年Sinopecとその子会社に供給する覚書を締結している。

今回の青島製油所への参加はAramcoにとっては福建石化計画に次ぐもので、潜在需要の大きい中国への進出を意味し、Sinopecにとっては原油の安定供給の確保に大きな意味がある。

    

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