「no」と一致するもの

大日本インキ化学は永年赤字が続いた米国の合成樹脂事業子会社ライヒホールドを中間期末に売却した。

Dicop 同社の営業損益は順調に増加している。2006年3月決算でも、主要原料価格の高騰に対し、販売価格の是正を積極的に進め、特に工業材料での販売価格是正の効果があり、前期比2.8%増益の495億円となった。欧米の工業材料はライヒホールドを中間期末で売却し、赤字から黒字に転じた。

しかし特別利益、特別損失は毎年膨大で、当期純利益は変動している。Dicpl

特に、欧米で合成樹脂事業(不飽和ポリエステル、塗料用樹脂、エマルジョン、接着剤等)を行う子会社のライヒホールドの赤字が続き、その関係で大きな特別損失を出していた。(単位:億円)

  02/3 03/3 04/3 05/3 06/3
営 業 利 益  309  402  438  482  495
経 常 利 益   80  204  314  452  485
特 別 利 益  187   24   92  318  290
特 別 損 失  384   95  170  464  647
税引前純利益 -117  134  237  307  127
           
税 金 -168  100  158  188   58
           
少数株主利益   7   10   15   13   16
当期純利益   44   24   64  106   53

特別利益、特別損失の主なものは以下の通り。(単位:億円)

  02/3 03/3 04/3 05/3 06/3
特別利益 合計  187   24   92  318  290
           
資本償還益          261
固定資産売却益   88    2    6    4   10
事業売却益   78       69   4
匿名組合投資利益   13        
退職給付債務減少益        234  
厚生年金基金
代行部分返上益
      66    
           
特別損失 合計  384   95  170  464  647
           
事業売却損          542
固定資産減損損失           30
営業権減損損失  146      196  
関係会社リストラ費用   65   61   77   50   61
事業損失引当金繰入額       40   26  
ゴルフ場事業関連損        137  
固定資産処分損  100   28   35   44   14
工場移転関連損   46   4      

2005/3までの特別損益の主なものは以下の通り。

事業売却益:02/3は米州のラテックス事業をダウ・ケミカル社に売却したもの、05/3はアグリケミカル事業を日本曹達に譲渡。

退職給付債務減少益:ポイント制キャッシュバランスプラン型の新しい退職金・年金制度に移行

営業権減損損失はライヒホールド、リストラ費用は同社を含む海外関係会社中心。

ゴルフ場事業関連損は関係会社の天ヶ代ゴルフ倶楽部。

2002/3の税金のマイナスはライヒホールドの株式について単独決算で609億円の評価損を計上したことにより、税効果額約 256億円が連結決算上では税金費用のマイナスとなったもの。 
ーーー 

2006年3月期でライヒホールドを売却し542億円の特別損失を出した。他に固定資産減損損失は、売却前にライヒホールド本社ビルの評価減をしたもの。

1987年にライヒホールドグループを買収して以来、欧米において合成樹脂事業を展開してきたが、近年業績不振が継続しているため、事業譲渡を中心に抜本的なリストラクチャリング策の検討を進めてきた。
商権の散逸を防止し損失を最小に抑えるためには、MBO方式により現経営陣に売却することが最善の策であるとの結論に至った。

なお同じ期の特別利益の資本償還益は米国の100%出資子会社サンケミカルとイーストマン・コダックとの折半出資の合弁会社コダックポリクロームグラフィックス(感光性アルミ版および製版用フィルムを中心とした印刷資材事業)の持分ををKodakに売却したもの。

同社ではライヒホールドの売却により、今後は安定した利益を予想している。(単位:億円)

  06/3実 07/3 08/3 09/3
営業損益  495  510  560  660
当期損益   53  200  260  310

 

大日本インキ化学は1987年にライヒホールドを買収して以来、欧米の多くの事業を買収してきた。
主な製品は、コンポジット(不飽和ポリエステル)、コーティング(塗料用樹脂)、エマルジョン(ラテックス)、接着剤である。

1927 Henry Reichholdが設立
1985 Swift Adhesives を買収
1987 DICがReichholdを買収
1987 Koppers のpolyester resin 事業を買収
1989 Spencer Kellog の coating resin 事業を買収
1995 Ashland Canadian の coatings 事業を買収
1995 Celanese Mexican の resin 事業を買収
1995 Reichhold Europe 設立
1995 Heitz Alsacol (France) の adhesive 事業を買収
1996 Costenaro SpA (Italy) の adhesives and resins 事業を買収
1996 Resana S/A (Brazil) のresins and polymer 事業を買収
1997 Lyons Coatings (Franklin, MA) を買収
1997 Jotun Polymer (Europe/Asia & Middle East)を買収
1998 社名をReichhold Chemicals, Inc.から Reichhold, Inc.に改称
1999 Czech Republic (JV) (Spolchemie)を買収
2000 Fibercenter Ltda. (Brazil)を買収
2001 Dow-Reichhold Synthetic Latex JV 設立
2002 接着剤事業 Swift Adhesives Ltd.(英)、
Swift Adhesifs S.A.(仏)他を売却
2005 Brazilian Resin Manufacturer IBRを買収
2005 MBO 方式による売却

 

大日本インキ化学では、1987年に印刷インキ、顔料、印刷材料の製造・販売のSun Chemical Group を買収したが、その後多くの事業を買収している。

1929 Morrill Co.が他の4つのインキ会社と統合しGeneral Printing Ink (GPI)を設立
1935 GPI が Sun Chemical and Colors of Harrsion, NJ を買収
1945 GPI が Sun Chemical と改称
1980 Sun がAmerican Cyanamidからphthalo pigment business を買収
1987 DICがSun を買収
1991 Sun がBASF Packaging and Commercial のインキ事業を買収
1992 Sun がデンマークの KVKを買収、欧州進出
1993 Sun が United States Printing Ink (known as US Ink)を買収
1994 Sun が Moscow Printing Inksを買収
1996 Sun が Zeneca Specialty Inksを買収、
北米のpackaging inks department強化
1997 Sun がEastman Kodak との 50/50 jv
Kodak Polychrome Graphics設立
  
2005/1 Sunが持分をKodakに売却(上記)
1999 Sun がトタルフィナから インキ部門Coates Lorilleuzを買収
 
 コーツ・ブラザース(米国)、コーツ・ブラザース(英国)、
  コーツ・スクリーン・インクス(ドイツ)他4社
  及びその関係会社 計約75社(約40ヵ国)
2003 Sun が Bayerの high performance organic pigment businessを買収
2004 Sun がトルコのCBS Holdingの印刷インキ事業CBS Printasの資産を買収

 

決算短信:    
  
http://www.dic.co.jp/ir/finance/2006/20060511_s_01.pdf

決算説明資料:
  
http://www.dic.co.jp/ir/finance/2006/20060511_s_02.pdf

帝人の2006年3月期は増収、大幅増益となった。ポリカーボネート(PC) の寄与が大きい。
2007年3月期は売上高・営業利益・経常利益・当期純利益とも過去最高を更新する予想。予想配当も過去最高となる。

                   単位:百万円(配当:円)
         連結決算  単独決算
売上高 営業
損益
経常
損益
当期
損益
当期
損益
配当
05/3  908,388  51,864 43,087  9,159 -25,421   6.5
06/3  938,082  76,757 68,162 24,852   2,025   7.5
07/3  980,000  85,000 75,000 45,000   8,500  10.0

連結営業損益のセグメント別、地域別推移は添付の通り。

Teijinseg Teijinchiikiセグメント別では化成品、地域別ではアジア(日本を除く)の伸びが著しい。

合成繊維部門では昨年、メキシコの衣料用・工業用ポリエステル長繊維、工業用ナイロン長繊維の製造販売子会社 Teijin Akra S.A.de C.V. 及び欧州のポリエステル長繊維衣料用テキスタイルの製造、販売子会社TMI Europe S.p.A.から撤退した。
(昨年の単独決算の赤字はこれらによる関係会社有価証券評価損 264億円、事業整理損失 386億円があったため。)

衣料繊維は赤字のアクラ、TMI撤収があったものの、市況低迷で減益となった。
しかしアラミド繊維、炭素繊維が増収増益で、これを補った。
これらは需給逼迫で増設中。

アラミド繊維関連の営業損益は183億円(前年153億円)、炭素繊維の東邦テナックス関連が42億円(同23億円)となっている。
(東レでも炭素繊維複合材料部門の営業損益は前年度56億円に対し本年度は118億円と倍増している)

化成品部門ではPETフィルム、PENフィルムが増収、増益。フィルム事業子会社の連結営業損益は97億円(前年66億円)となった。
PC樹脂はDVD、OA機器、電気・電子用途が好調で、中国浙江省の第一工場5万トンは昨年操業を開始し、第二工場5万トンも工事中。
PC事業関連の連結営業損益は315億円(前年125億円)と大幅増益である。アジアの大幅増益はPC樹脂が中心。

医薬医療部門では医薬品では主に骨粗鬆症領域が好調。在宅医療では主に在宅酸素療法(HOT)事業が販売量・レンタル台数増で増収・増益となった。

米州はアクラ撤収で黒字化、欧州はアラミド繊維、炭素繊維、PC樹脂等で増益となっている。

 

同社では各セグメント別にSBUを次の通り、成長SBU、安定収益SBU、再建SBUに分けている。

  成長SBU

積極的資源投入
安定収益SBU

安定収益と
キャッシュ・フロー
確保
再建SBU

抜本策による
再建実施
合成繊維 パラアラミド繊維、
炭素繊維、
PEN繊維
  ポリエステル
  繊維
化 成 品

PC、
PENフィルム、
PEN樹脂

  ポリエステル
  フィルム、
ポリエステル
  樹脂
医薬医療 医薬医療    
流通・リテイル   流通・リテイル  
IT   IT  

SBU=Strategic Business Unit
ミッション、経営資源、製品・サービス、顧客、競争相手などによって明確に区分することができ、且つ、独立した戦略・計画を立案すべき事業単位。

成長SBUとして積極的に資源を投入してきた各製品が利益に貢献している。

2007年3月期では減価償却費540億円に対して設備投資 900億円と、トワロン増強、炭素繊維増設、中国PCPC樹脂工場第二期等、成長SBUを中心に減価償却費を上回る設備投資を行う。

また、研究開発費の約70%は成長SBUで行っている。

 

決算短信
http://www.teijin.co.jp/japanese/ir/doc/tanshin/140a_060508.pdf 
決算説明資料
http://www.teijin.co.jp/japanese/ir/doc/setsumeikai/info060508.pdf 

参考 ポリカーボネートと原料ビスフェノールA

JSRの決算が好調である。

                 単位:百万円(配当:円)
         連結決算  単独決算
売上高 営業損益 経常損益 当期損益 当期損益 配当
05/3  305,368   45,332   44,075   27,563   25,148  14
06/3  338,159   53,357   52,980   30,554   27,463  20
07/3  372,000   56,000   56,000   35,000   31,000  24

Jsrsegeigyo本年度は合成ゴムやABSが値上げで営業利益が増加しているが、多角化事業も利益を伸ばしている。
多角化事業の営業利益率は27%と高く、全社営業利益に占める比率も72%と非常に大きい。

同社は日本における合成ゴム事業育成のために1957年12月に「合成ゴム製造事業特別措置法」により日本合成ゴム㈱として設立された会社だが(1997年12月にJSRと改称)、大分以前から名前だけでなく、実質的にも日本合成ゴムではなくなっている。

多角化事業の状況は以下の通り。

                                        (単位:億円)
  前期 当期 増減額
全社 売 上 高  3,054  3,382   328
営 業 利 益   453   534    80
うち
多角化事業
売 上 高  1,226  1,427   202
営 業 利 益   358   382    24
営業利益率  29.2%  26.8%  
全社比 売上高  40.1%  42.2%  
営業利益  78.9%  71.6%  

多角化部門のうち、メインのファイン事業の売上高内訳は次の通り(単位:億円)

  前期 当期
半導体材料  325  379
FPD材料  609  728
光学材料  112   97
機能化学品材料   21   23
ファイン事業合計 1,067 1,227

この他には包装資材、ポリマー等製造技術、健康食品等食品類、医薬品などがある。

<半導体製造用材料事業>
半導体製造用材料では、主力製品であるフォトレジストが、エキシマレジストを中心に国内、輸出とも好調。

<フラットパネル・ディスプレイ用材料事業>
液晶ディスプレイ(LCD)用材料が、モニター用、テレビ用などの液晶パネルの生産増加により需要が拡大し、特にアジア向けを中心とする輸出が大きく増加。
プラズマ・ディスプレイ(PDP)用材料もアジア向け輸出が拡大。

韓国のJSRマイクロコリア(JSR 100%)は第二期工事が完了、2005年8月より生産開始し売上高は前期を大幅に上回った。
台湾の
JSRマイクロ台湾(JSR 100%)もLCD用材料の工場が完工し、今年夏の商業生産を目指す。

<光学材料事業>
輸出用光ファイバーケーブルの需要回復を背景に、光ファイバー用コーティング材料が好調に推移。
2006年3月末にDSMグループから国内外のディスプレイ用コーティング材料及び光学メディア用材料を中心とする事業を譲り受けた。
(JVの日本特殊コーティングが日本で行う事業と、DSMが日本以外で行う事業)

<機能化学品材料>
耐熱透明樹脂アートン(R)の拡販に注力

* アートン:非晶質ポリオレフィン(COP)
・シクロペンタジェンを出発原料としたノルボーネン系モノマーを重合した樹脂
・薄型TVをはじめとした液晶ディスプレイ分野向けの位相差フィルム用途で需要が急拡大
・同社のレジン能力は年産3千トン
   
・四日市工場内に「アートンフィルム」工場を新設

ーーー

なお、ABSのJVのテクノポリマー(JSR 60%/三菱化学 40%)の業績も好調である。

         (単位:百万円)
  前期 当期
売上高  48,148  49,358
営業利益   1,410   3,163
経常利益   1,698   3,124
当期利益    946   1,467

決算短信
 
http://www.c-direct.ne.jp/japanese/uj/pdf/10104185/00045372.pdf
補足説明資料
 
http://www.c-direct.ne.jp/japanese/uj/pdf/10104185/00045371.pdf

 

 

2006年4月末にプノンペンで自由貿易協定(FTA)交渉を進めてきた韓国とASEAN加盟9カ国が商品分野交渉で妥結した。5月中旬の韓・ASEAN通産長官会議で署名され、国内批准を経て年内に発効される。
ただ、タイはコメ市場開放などに関連した国内事情を理由に参加しないことを決めた。

商品貿易協定に基づき、韓国とASEAN加盟国は、
・2010年までにそれぞれ輸入の9割に該当する品目の関税を撤廃し、
・2016年までに残りのうち7%の関税を0-5%水準に引き下げる。
・残りの3%は「超敏感品目」に指定、交渉除外または長期間の関税引き下げなどで保護する。

ーーー 

3国の状況は以下の通り。中国と韓国はASEAN、インド等、及び相互に関税引き下げを行っており、日本だけが非常に出遅れている。

相手国 中国 日 本 韓 国
ASEAN(加盟年)      
ブルネイ 1984 FTA   FTA
インドネシア 1967 FTA   FTA
マレーシア 1967 FTA   FTA
ミャンマー 1997 FTA   FTA
シンガポール 1967 FTA FTA FTA
タイ 1967 FTA    
カンボジア 1999 FTA*   FTA
ラオス 1997 FTA*   FTA
フィリッピン 1967 FTA*   FTA
ベトナム 1995 FTA*   FTA
中国  ー   バンコク協定
韓国 バンコク協定    -
インド バンコク協定   バンコク協定
バングラデシュ バンコク協定   バンコク協定
スリランカ バンコク協定   バンコク協定
(ラオス) バンコク協定   バンコク協定

ーーー

(中国)

中国とASEANの自由貿易協定が2005年7月に発効した。

中国は同月20日からブルネイ、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、シンガポール、タイの6カ国に対し、下記により関税を引き下げる。
残りのカンボジア、ラオス、フィリピン、ベトナムに対しては、各国が国内の承認手続きを終え次第、FTAに基づく関税率を導入する

対6カ国 関税率引き下げ計画
  2005 2007 2009 2010
20%以上  20%  12%  5%   0
15%~20%  15%   8%  5%   0
10%~15%  10%   8%  5%   0
5%~10%   5%   5%   0   0
5%未満 不変 不変   0   0
 

ーーー

(バンコク協定:中国/韓国/インド等)

「バンコク協定」は1975年、国連の指導下で発展途上国間の貿易拡大を目的に締結されたもので、現在、中国、韓国、インド、バングラデシュ、スリランカ、ラオスが加盟し、関税の減免などを実施している。

2005年11月、閣僚級会議が開催され、今後これを「アジア太平洋貿易協定」と改称し、新たな関税引き下げ策を共同で実施することで合意した。
2006年7月から、すでに優遇関税が適用されている品目に加え、農産物・繊維製品・化学工業製品などを含む計4千品目余りが、優遇措置の新たな対象となる。

ーーー

(日本)

日本・シンガポール新時代経済連携協定が2002年11月30日に発効した。
日本からシンガポールへの輸出にかかる関税は全て撤廃
・ シンガポールから日本への輸入も約94%は関税率ゼロとなる(
石化製品は例外

石化製品(例外)の扱いは以下の通り。
LDPE、LLDPEPolyisobutylenePropylene copolymers
 発効日から関税率を2.8%とし、
 2003年から8回(8年)にかけて毎年均等な引き下げをに行い、
 2010年において関税を撤廃する。
HDPEPP
 2004年1月1日から関税率を6.5%とし、
 2005年から6回(6年)にかけて毎年均等な引き下げを行い、
 2010年において関税を撤廃する。

ーーー

韓国のケースで開城(ケソン)工業地区の扱いが問題になっている。Nkoreamap2
2000年8月、金正日総書記と鄭夢憲・現代グループ会長との合意で、北側が土地と労働力を、南側が技術と資本を提供して、開城に一大工業団地を作ることが決まった。2003年8月に南北当局者間で投資保障、二重課税防止、清算決済、商社紛争合意書の4項目に関する経済協力合意書を交わした。第一段階100万坪のうち、まず28千坪について、15の企業を入居させるパイロットプラン(モデル団地)を実施中で現在11の企業が操業を開始している(化学品はない)。

韓・シンガポールと韓・EUの自由貿易協定は、開城工団製品を韓国産に認めた。「韓国産原料を60%以上使っていれば、韓国産に見なし、無関税の恩恵を与えてほしい」という韓国政府の要求が受け入れられた。
しかし、ASEANとの交渉では相当数の国が「WTOの原産地規定は、最終的な加工が行なわれた地域を基準とする」と反対し、ペンディングとなっている。
米国は、開城工団北朝鮮勤労者に対する労働搾取などを主張し、問題視している。

付記 2006/6/13 日・マレーシア経済連携協定発効

2006/8/24 韓国とASEANは、クアラルンプールで経済担当相会議を開き、北朝鮮の開城工業団地で韓国企業が製造する100品目についてASEAN側が「韓国製」と認定することで正式合意した。韓国側は同工業団地で生産した製品を輸出しやすくなる。

鎌田正二著 「北鮮の日本人苦難記 -日窒興南工場の最後ー」という本がある。

鎌田氏は元チッソの社員で、チッソの前身の日本窒素が戦前に北朝鮮の興南(今の咸鏡南道咸興市)に大規模コンビナートを築き、敗戦で社員が日本に引き上げる苦難を描いたものである。Nkoreamap

チッソは1906年に初代社長野口遵によって鹿児島県大口市に建設された水力発電所がその第一歩で、1908年に熊本県水俣市でカーバイドの製造を開始、社名を日本窒素肥料とし、石灰窒素や硫安の製造にも着手して、日窒コンツェルンの中心となった。
(第二次世界大戦後、日窒コンツェルンが解体され新日本窒素肥料となり、1965年にチッソと改称した。)

北朝鮮の屋根といわれる蓋馬高原には鴨緑江の大支流が北に向かっているが、これを堰きとめて大人造湖を造り、日本海に向かって落とせば素晴らしい大電力になるとの構想が立てられた。野口遵は1926年、日窒の全額出資で朝鮮水電を設立、1929年に第一期工事が完成して送電が開始された。 

この電力を消費するために建設されたのが興南工場で、1927年に朝鮮窒素肥料を設立、硫安の製造を開始した。

その後、工場はドンドン拡大された。

肥料工場では硫安、硫燐安のほか、過燐酸石灰や乾式燐酸からの燐安の設備をもつに至った。
また火薬の原料であるグリセリンを自給するための油脂工場が昭和7年に完成した。グリセリンは延岡及び興南に建設された朝窒火薬の火薬工場に送られた。
脂肪酸からつくる洗濯石鹸、化粧石鹸は、内地、朝鮮はもちろん、満州、台湾、中国の市場に向けられた。

興南肥料工場の東北に興南金属工場がつくられた。アルミニウム工場、マグネシウム工場、カーボン工場、製鉄工場などがあった。
アルミニウム工場は朝鮮木浦(モッポ)附近の明礬石を原料とした。

宝石工場ではアルミナを酸素水素焔で溶融して、軸受けなどに使われるルビー、サファイアの原石をつくった。

本宮工場では、苛性ソーダ、エチレングリコール、ブタノール、アセトン、アセチレンブラックなどアセチレンを原料とする諸工場ができ、またアランダム工場、塩化アンモニア肥料工場、アンモニア工場が建設された。

日窒燃料工業の竜興工場ではアセチレンからアセトアルデヒドをつくり、アルドール、クロトンアルデヒドを経てブタノールとし、これよりイソオクタンを製造した。

朝窒火薬では硝酸、硝酸アンモニア、過塩素酸アンモン、綿火薬、黒色火薬、導火線、カーリット、ダイナマイト、窒化鉛、ヘキソーゲン等の工場が並び、火薬綜合工場となった。

最盛期の能力は以下の通り。
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/chisso-konan.htm

日本窒素は興南以外の朝鮮で、咸鏡北道の永安工場、灰岩工場(朝鮮人造石油)、平安北道の青水工場(日窒燃料)、南山工場(日窒ゴム工業)の諸工場があり、永安、朱乙、吉州、竜門に石灰の鉱業所があった。
また満州で吉林人造石油、北支太原で華北窒素、台湾で台湾窒素、海南島で日窒海南工業、それにジャバ、スマトラ、マラヤなどに進出していた。
しかし日本窒素の事業の中心は興南であった。

ーーー

興南工場は第二次世界大戦中は、何等の損傷を受けなかった。

1945年8月19日、ソ連軍が元山に上陸、26日に興南工場はソ連軍に接収された。

しかし、朝鮮戦争が始まり、1950年7月末から8月初めに米軍の爆撃で工場は完全に破壊された。

ーーー

インターネットの記事に、1991年4月、在日朝鮮人企業との合弁の国際化学合弁㈱という会社が興南に工場を建設したという情報がある。事業内容は北朝鮮に眠るモナザイド等のレア・アース(希土類)の製錬で、さらに塩酸、硝酸、苛性ソーダ、アンモニアなどの関連工業の技術向上をはかるとの目標を掲げているという。

 

資料 鎌田正二著 「北鮮の日本人苦難記 -日窒興南工場の最後ー」

これまでエチレン事業への日本企業の参加をみてきたが、誘導品事業にも多くの企業が参加している。

PT Petrokimia Nusantara Interindo (PT PENI) :PE

BPアモコが中心に設立したポリエチレン会社で1992年に400千トンのLLDPE/HDPEスイングプラントでスタート、94年に450千トンにした。
出資は
BPが75%三井物産と住友商事が各12.5%である。当初はスハルト元大統領の長男シギットが経営するPT Arseto Petrokimiaが24%出資していたが、BPがその分を引き受けた。Indonesiamap_2

BPは当初から原料エチレンの自製を目指し、サリム、三井物産、住友商事、ニチメン、トーメンとともにエチレン進出(70万トン規模)を検討していた。しかし通貨危機で経営危機に陥ったサリムがIBRAの管理下に入り、これは取り止めとなった。
その後、チャンドラ・アスリとの統合案も出たが、同社の財務のひどさをみて断った。

3社はエチレンなしでのPE単独事業に見切りをつけ、2003年にスハルト元大統領の従兄弟で大富豪のスドィカトモノが率いるインディカ・グループ5千万ドルで売却した。

2005年12月、台湾のChaoが率いるマレーシアのTitan Chemicalsがこれを買収、社名をPT Titanと改称した。マレーシアからエチレンを供給するとしている。

PT Polytama Propindo:PP

さきに述べた通りツバン計画の中心であったティルタマス・グループの事業はPT Tuban Petro が引き継いだが、このなかにPPメーカーがある。

同社はティルタマスが80%、BPが10%、日商岩井が10%のJVとして設立され、1995年にボルネオ東カリマンタンのバロンガンにFCC回収プロピレン180千トンとPP180千トンを建設した。(同地にはプルタミナの製油所がある)

PPではほかに、チャンドラ創業の中心であったビマンタラ(スハルト次男バンバンの会社)やナパンによって設立されたトリポリタ・インドネシア(メラク:現有能力 34万トン)とプルタミナ(45千トン)がある。

スチリンド・モノ・インドネシア(SMI):SM

トーメン(現在は豊田通商)は出光石油化学、サリム・グループ、ビマンタラなどとSMIを設立し、92年末にメラクで10万トンのSM工場をスタート、95年末にはSM原料のエチルベンゼン11万トン設備も建設した。現在の能力はEB 44万トン/SM 40万トン。

当初の出資比率は
トーメン75%、出光5%、ビマンタラ10%、サリム10%であったが、
現在は、
豊田通商84.62%PT Bimakima 7.69%、Salim Chemicals 5.13% ほかとなっている。

誘導品としてはメラクにダウ100%のPT Pacific Indomas Plastic Indonesia のPS、PT Dow Polymers Indonesiaのラテックスなどがある。

付記 2007/3/29
 SMIはその後、豊田通商100%となった。
 豊田通商は3/27にSMIをPT. Chandra Asri に売却することを決めた。
  「国際競争の激化に伴い、安定した原料の確保と販路の拡大が課題となっております。
   一方、CA はスチレンモノマーの原料となるエチレンを製造しており、SMI との統合により大きなシナジーを期待できることから、
  SMI の譲渡先として最適であると判断」

ーー

サリム・グループはスドノ・サリムが一代にして築いたアジア屈指の財閥で、スハルト大統領一族との癒着で知られている。サリム・グループは塩ビでも事業を行っている。これに日本企業が参加した。

ンダード・トーヨー・ポリマー(スタトマー):PVC

東ソー 30%、三井物産 20%、現地サリム&ビマンタラ 50%(その後サリム 50%)の合弁で1977年にメラクで操業を開始した
現在の能力は9万トンで、1999年に日本側がサリム側の保有する全株式を買い取り、東ソー60%、三井物産40%となった。
通貨危機でのサリムの破綻と、
1998年7月の外資法改正で外資100%が認められた結果である。

 

Satomo Indovil 関連

サリムは子会社 PT Sulfindo Adiusaha で、メラクに台湾の中古の水銀法電解96千トンとEDC90千トンをもっていた。
当初、サリムは同社が50%、アトケム 25%、
住友商事 25% でJVを設立し、Sulfindoの電解をS&Bし、電解からPVCまでの一貫事業を構想した。
しかし、アトケムが離脱したため、東ソーを加えたが、東ソーがPVCのみに参加を希望したため、次の3会社となった。

PT Sulfindo Adiusaha 電解

サリム100%のままとし、水銀法電解をスクラップして、旭化成法で電解を新設(塩素200千トン)、EDCは下記会社に移管した。

Satomo Indovil Monomer :VCM

サリム50%、住友商事25%、香港のBrendswick25%で設立、EDCはSulfindo から90千トンを移管した上で175千トンを増設、VCMはアトケム法で100千トンを新設した。

Satomo Indovil Polymer :PVC

サリム50%、東ソー25%、住友商事25%で設立、1998年に東ソー技術でPVC 70千トンを建設した。

1997年の通貨危機でサリムは破綻、金融再編庁との交渉の結果、同社は資産管理会社 Holdiko に移管され、順次売却されることとなった。(上記スタットマーは日本側が買収)

Satomo関連については東ソー/住商によるサリム持分購入も検討したが入札が成立せず、2001年12月にサリム持分は香港のEmperor Groupに売却された。

2003年にトラブルが発生した。
Emperorは日本側を追い出して全体の支配権をとることを狙い、まず、Sulfindoからの塩素供給を停止してVCM、PVCの操業停止に追い込み、更に自ら、子会社のSatomo Indovil Monomer
の破産申請を行った。

一審では破産が認められたが、二審で破産状態ではないとの逆転判決が下り、三審も二審を支持して法的には住友商事サイドの主張が認められた。しかし原料の供給は切られたままで、住商はEmperorに対して同社持分の買収交渉を行った。

しかし交渉はまとまらず、結局日本側は撤退を決め、インドネシアのローカル銀行のPT. Pan Indonesia Bank Tbk.が全てを買収し、2004年10月に生産を再開した。

ーーー

Eastern Polymer:PVC

同社はインドネシア最初のPVC会社で香港のUnited Industriesがジャカルタに建設したが、建設以来休眠状況であった。1975年に徳山曹達が三菱商事と組んで技術援助を行い、軌道に乗せ、1981年に徳山曹達が20%、三菱商事が30%出資した。

その後三菱商事100%となり、徳山曹達(と子会社サン・アロー化学:当時)が技術指導を行っていたが、1998年に休止した。
その後、パイプメーカーのワービンが買収し、1998年12月に生産を再開している。現在能力48千トン。

アサヒマス・ケミカル:PVC 

旭硝子の子会社でアニールにプラントをもち、国内シェアNo.1のトップメーカー(ソーダのシェア66%、PVCシェア59%)。
現在の株主は旭硝子52.5%、ロダマス18%、エイブルマン・ファイナンス18%、三菱商事11.5%。
1986年設立で、その後順次能力を増強し、現在の能力は
電解37万トン(ソーダ37万トン/塩素33万トン)、VCM40万トン、PVC28万5,O00トンで2007年には25万トンのVCMと10万トンのPVCを増設し、老朽化した15万トンのVCMを廃棄する予定である。

インドネシアにはこれらのほか、サイアム・マスピオン・ポリマーズがある。タイのサイアムセメントが塩ビパイプ大手のマスピオンと組んでスラバヤに12万トンのPVCを建設した。技術は新第一塩ビの内部ジャケット方式(ゼオン、住化、トクヤマ、クレハの旧第一塩ビ販売グループの共同開発)を採用している。
2005年央にマスピオンが撤退し、現在はサイアムが60%、同社子会社のTPC(Thai Plastic & Chemicals)が40%となっている。

ーーー

三菱化学インドネシア:PTA

三菱化成とバクリー&ブラザーズは1990年10月にバクリー・カセイ・コーポレーションを設立、94年2月からメラクでPTA25万トンの操業を開始した。現在の能力は64万トンでボトル用ペット樹脂も製造している。

バクリー&ブラザーズは経営危機に陥り、金融機関から事業の再編成、化学事業からの撤退を要求され、2000年に全持株を日本側に売却し、同社は三菱化学とベンチャーキャピタルである日本アジア投資(JAIC)の日系100%企業となった。
2001年4月に社名を三菱化学インドネシアに変更、現在の持株比率は三菱化学83.2%、JAIC16.8%。

 

アモコ・ミツイPTAインドネシア(AMI):PTA

三井グループとアモコ・ケミカルズ現BPは、それぞれのPTA計画を統合し、1997年にアモコ50%、三井化学45%、三井物産5%出資でPT Amoco Mitusui PTA Indonesia を設立した。
97年8月に
メラクに35万トン設備を完成させ、その後増設により現在能力は45万トンとなっている。

三井化学と三井物産は、東レと現地企業との合弁でボトル用ペット樹脂の合弁会社ペットネシアレジンドを設立している。
出資比率は
三井化学 41.6%、東レ 36%、ITS 11%、ユオノパンチャトゥンガル5.9%、三井物産5.5%で、現在の能力は7.5万トン。

PTAではほかに、ナパン・グループのPolyprima Karyareska(西ジャワ・チレゴン 35万トン)、ポリエステル繊維メーカーのテキシマコ・グループのPolysindo Eka Perkasa(カラワン 34万トン)がある。

 

PT. Kaltim Methanol Industri :メタノール

1990年にスハルト元大統領三男のフトモ・マンダラ・プトラ(通称トミー)率いるフンプス・グルーブ80%、トミー自身が20%出資で設立されたが、間もなくフンプス100%となった。
立地はカリマンタンのボンタンで、当初33万トンで承認を得たが、66万トンへの増設が認められた。原料は天然ガス、製品は
輸出が41万トン、国内が15万トンの割合。

1997年に日商岩井(30%)とダイセル化学(5%)が資本参加し、99年からは日商岩井(現双日)85%、ダイセル5%、フンプス10%の出資比率となっている。

PT.Nippon Shokubai Indonesia:アクリル酸

1996年8月に日本触媒50%、PPメーカーのトリポリタ・インドネシア45%、卜一メン5%の出資でPT Nisshoku Tripolyta Acrylindoが設立された。
1998年9月にアニールでアクリル酸6万トン、同エステル4万トン(現在10万トン)の生産を開始した。

2000年8月にトリポリタの所有する全持ち株を日本側が買い上げ、出資比率が日本触媒93.8%、トーメン6.2%となり、2001年1月には社名をニッポン・ショクバイ・インドネシアに改称した。

 

PT Showa Esterindo Indonesia:酢酸エチル 

昭和電工は1997年に自社開発の酢酸エチル直接付加法プラントをインドネシアで建設することを決定、昭電51%、トーメン14%、インドネシアのCV Indo Chemical 30%、シンガポールのChin Leong (CLP) 5%のJV PT Showa Esterindo Indonesia を設立した。

1999年にメラクに5万トン設備を建設した。

酢酸エチルでは他に、BPがチャンドラ・アスリ系のインター・ペトリンド・インティ・シトラと合弁でシトラ・パシフィック・インターナショナル・エステルズを設立、5万トンの酢酸エステル、7万トンの酢酸エチル設備の建設を計画したが、その後BPがインドネシアから撤退し、取り止めとなった。

ーーー

インドネシアについては、化学会社のOBという中原洋氏の本 「腐敗と寛容 インドネシア・ビジネス」 (東洋経済新報社)が面白い。
前々回のチャンドラ・アスリの項で「インドネシア特有の理由で建設費が異常に高いと言われていた」としたが、この辺の事情も詳しく書かれている。
インドネシア全般に蔓延する汚職については止むを得ない点もあるとするが、政府関連の大規模なものは区別して批判的である。

日本経済新聞夕刊の「ドキュメント挑戦」が43日から関係再構築 インドネシアと日本」として、インドネシアのために努力しているいろいろな人の活躍を連載で報告している。

2、ツバン計画

ツバン計画が当初の形を変えて間もなくスタートする。

本計画はハシム・グループ傘下のティルタマス・マジュタマとタイのサイアムセメント日商岩井伊藤忠商事が合弁会社トランス・パシフィック・ペトロケミカル・インドタマ(TPPI)を設立し、東ジャワのツバンでエチレン/アロマの一大コンプレックスを建設しようというもので1996年末に着手した。Indonesiamap_1

事業内容はインドネシア国営石油ガス会社(プルタミナ)のコンデンセートを使い、70万トンのエチレン、100万トンの芳香族(50万トンのパラキシレン)、誘導品として10万トンのHDPE、30万トンのLDPE、20万トンのPP、50万トンのSMを生産するものである。

TPPIの出資はハシム・グループ傘下のティルタマス・マジュタマが70%、タイのサイアムセメントのシンガポール法人Tuban Petrochemical が20%、伊藤忠と日商岩井が各5%であった。
(その後
米国のKoch Refiningがティルタマスの5%を引き受けたが、離脱した。)

この計画は1999年央に完成予定で、市場、原料、内容面から世界で最もコスト競争力があるコンプレックスといわれた。

しかしながら1997年の通貨危機で資金手当てができなくなり、芳香族部分が6割、エチレン部分が2割まで完成しながら年末に工事中断に追い込まれた。その後エチレン機器は、受注したストーンウェブスターが中国南京市のBASF/SINOPECのJV・BASF-YPC用に売却した。

2001年に伊藤忠と日商岩井はプルタミナに事業の再開を要請した。
プルタミナはこれに応じてTPPIに15%を出資することとなり、調整の結果、ティルタマスが59.5%、Tuban Petrochemical(サイアム)が17%、伊藤忠と双日(日商岩井)が各4.25%の出資とした。

2002年にティルタマス・グループは金融再編庁(IBRA)との協議の結果、同社を再編して新会社PT Tuban Petroを設立、その70%をIBRAが保有、残り30%をティルタマスの元のオーナー・Honggo Wendratnoが個人保証をした上で保有することとなった。
これにより、Tuban Petroは、ティルタマスが株主であったTPPIの59.5%、PP会社の
PT Polytama Propindoの80%(残り10%は日商岩井、10%はBP),ブタノール等のPT Petro Oxo Nusantaraの50%(残り50%はエテリンド), ポリエステル繊維のPT Pacific Fibretamaの50%を保有することとなった。

2002年6月、インドネシア政府は近く国外の金融機関から新規融資を獲得して1998年から中断しているTPPIの建設工事を再開すると発表した。
日経夕刊に連載の「関係再構築 インドネシアと日本」(2006/4/25)には日揮の重久・会長兼CEOがワヒド大統領にプロジェクト再開を要請した際に、同席した当時鉱業エネルギー相で現大統領のユドヨノが「石油を製品化し輸出で外貨を稼ぐ事業の国家的意義を十分理解し積極的に動いてくれた」とある。

エチレン機器は売却済みのため、芳香族部分のみを実施することとした。100万トンの芳香族(うちパラキシレン50万トン、ベンゼン20万トン、トルエン15万トン)と100万トンのナフサ、160万トンのケロシンとディーゼル油を生産する。ナフサと芳香族は外販、燃料油はプルタミナが引き取る。

2004年5月、三井住友銀行を幹事行とする6行の国際協調融資団が2億ドルの融資を行い、日本貿易保険が保険を引き受けた。融資の返済はTPPIの株主であるプルタミナが三井物産に販売する低硫黄残渣油の代金で賄われる。

TPPIは間もなく6月に生産を開始する。

IBRAは任務を終わって解散し、Tuban Petroは後継組織に引き継がれた。しかし継続して化学企業の株主として機能する考えはなく、TPPIはティルタムス・グループが再度株主となるのではないかと噂されている。

ーーー

次回はシンガポールの誘導品事業への日本企業の参加をみる。

 

 

前にイラン、サウジ、シンガポール、韓国のエチレン計画への日本企業の参加について述べたが、他にも日本企業が参加したものがある。

インドネシアには3つのエチレン計画があった。チャンドラ・アスリツバン計画BP/サリムの計画で、チャンドラ・アスリは実現したが、ツバンは計画を変更してエチレンは中止、芳香族関連を本年にようやく完成する。BP/サリムの計画は中止となり、BPはPE事業のPENIを売却し撤退した。3計画ともに日本商社が参加していた。

1.チャンドラ・アスリ

20062月にインドネシア紙が、シンガポールの政府系投資機関のテマセク・ホールディングスがチャンドラ・アスリの株式 50.45% を7億ドルで買収したと報じた。コメルツバンク・インターナショナルの所有する 24.59% とマレーシア Glazers & Putnam Investment Ltd.の所有する 25.86% を買収したとしている。(テマセク側は現在に至るも本件の発表をしていない)

コメルツバンク所有の24.59%は2005年4月に丸紅がチャンドラからの撤退で株式を売却したものである。
チャンドラの残りの49.55%は、バリト・グループのPT Inter Petrindo Inti Citra が所有している。

ーーー

本計画はスハルト元大統領の次男のバンバンのビマンタラ・グループ、合板王と呼ばれる彭雲鵬が率いるバリト・グループ林紹良が率いるサリム・グループからスピンオフしたナバン・グループが中核となり1989年に設立され、これに丸紅と技術面で昭和電工が協力する形でアニールにエチレン、PEの建設を計画した。Indonesiamap
近くのメラクではビマンタラ、ナバンが設立したトリポリタのPP、トーメンが中心のSMIのスチレンモノマー、BP等のPENIのPEの工場が建設されていた。

プルタミナからナフサ供給の確約をとりつけ、1990年にはナフサクラッカー部分をTEC/丸紅連合に発注した。

しかし、所要資金の借入完了後の91年9月に、世銀から対外債務の大きさにクレームを付けられた政府は政府関連大型プロジェクトの一時凍結宣言を行い、本計画も中断された。

株主3社は、バリト・グループの香港法人を経由して75%出資し、残りを日本インドネシア石油化学投資(丸紅85%、昭和電工10%、TEC5%)が25%出資し、100%外資企業の形をとって規制をくぐり、再出発した。

1995年にプラントが完成した。エチレン 520千トン、プロピレン 270千トン、LLDPE/HDPE 240千トン、HDPE 100千トンで、当初計画したPPは取り止めた。Nesiarate

1997年にタイで始まった通貨危機はすぐに各国に伝わり、インドネシアのルピーは1998年1月には当初の20%にまで暴落した。需要の激減とルピア切り下げによる元利返済負担の増大で同社は危機的状態となった。
(元々、インドネシア特有の理由で建設費が異常に高いと言われていた。)

1997年10月には約6億ドルにのぽる借入金のキャピタライズ化を実施し、さらにインドネシア金融再編庁(IBRA)が融資の担保として現地企業の持分を保有した。
(他のJVでも現地企業持分の多くはIBRAが所有した。)

ーーー

BPは三井物産、住友商事と(当初はArceto Petrokimiaも参加)PENIを設立し、PE事業をしていたが、サリム、三井物産、住友商事、ニチメン、トーメンとともにエチレン進出(70万トン規模)を検討していた。しかし通貨危機で経営危機に陥ったサリムがIBRAの管理下に入り、これは取り止めとなった。

インドネシア政府はBPに接触し、チャンドラへの参加を呼びかけた。チャンドラとPENIを統合し、PE事業に安価なエチレンを安定的に供給するという案である。

1999年に政府はBPがチャンドラの50%を持ち、政府が25%、日本側が25%という案を発表した。しかしBPはチャンドラの内情を知り、参加を取り止めた。

IBRAと丸紅は再建のための財務リストラ交渉を行い、最終的に2001年10月に合意をみた。
・インドネシア側融資金約5.4億ドルの内約4.4億ドルの株式化、日本側融資金約7.8億ドルの内約1.5億ドルの株式化。
・日本側融資金の残額約6.3億ドルならびにインドネシア側融資金残額約1億ドルについては、今後15年間で返済される。
インドネシア側及び日本側の株式化後の残存融資金にかかる金利率は、年率 LIBOR+1.25%とする。

IBRAは2003年、チャンドラの本格的な経営再建を図るため、保有株式75%のうち49.1%をPT Inter Petrindo Inti Citraに、残る25.9%をマレーシアのグレイザー・プットナム・インベストメントに売却した。

ーーー

2005年4月、丸紅はチャンドラ・アスリからの撤退を発表した。
チャンドラは財務リストラの結果、2004年度には初の黒字転換を果たしたが、
同社にとってチャンドラは原料と製品の双方が市況りスクに晒される事業でおり、少数株主としてその発言権も著しく限定されていることから、撤退の検討をしてきた。

同社は重点事業としてバリトとの共同出資のムシパルプ事業の出資比率を段階的に引き上げていたが、バリトが大口債権者であるシンガポールのコメルツに転換オプション付き社債を発行する動きが出てきたことから、チャンドラの株式とこれとを交換することとなったもの。
日本インドネシア石油化学投資が保有するチャンドラ株式24.59%と同社向け融資581百万ドルを譲渡した。

2005年10にこの手続きを完了し、日本側は正式にチャンドラから撤退した。

なお、チャンドラは現在エチレンの増設中で、2007年央にエチレンが70千トン増の590千トンに、プロピレンが36千トン増の306千トンになる。

 

 

 




フェノール業界 - 化学業界の話題

2006/4/14のポリカーボネートと原料ビスフェノールAでPCとのカラミで一部の会社のビスフェノールAに触れた。

ここではフェノールとビスフェノールAの活動をまとめた。

各社能力 (単位:千トン)

         

フェノール

ビス
フェノールA

三井化学

大阪

 200

大阪

60

市原

 190

名古屋

   55

Singapore

 250

  230

中国

(120)

日本GE
プラスチック

市原

90

千葉フェノール

出光千葉

230

出光興産  千葉

70

三菱化学 鹿島

 250

100

黒崎

120

新日本
フェノール 
戸畑

0

新日本
ビスフェノール
戸畑

95

新日鐵化学
 (錦湖P&B)
韓国
 Yeochon


280


135

国内

三井化学は大阪に200千トン、市原に190千トンのフェノールをもつ。

ビスフェノールは大阪に60千トン、名古屋に55千トン、及び
日本GEプラスチックの工場として市原に90千トンをもつ。
大阪工場は1986年に三井東圧と三菱油化がビスフェノールAの50/50製造JVとして設立した「共同ビスフェノール製造」で、1997年3月に合弁を解消し、98年3月に吸収した。
日本ジーイープラスチックス(GEPJ)は1989年設立で、GEが51%、三井化学が41%、長瀬産業が8% 出資しており、GEPJ自消分以外の製品は三井化学が販売を受託している。

三井化学はまた、出光興産千葉工場内に、三井化学55%/出光興産(旧出光石油化学)45%出資の千葉フェノールを設立し、フェノール230千トン、アセトン80千トンをもっている。(2006年にそれぞれ200千トン、60千トンから増設)
出光興産はビスフェノールA 70千トンをもつ。(PCは千葉に
50千トンのほか、台湾に台湾プラスチックとの50/50のJVの台化出光石油化学100千トンをもつ)

三菱化学は鹿島にフェノール180千トンとビスフェノールA 100千トン、黒崎にビスフェノールA 100千トンをもつとともに、戸畑に新日鐵化学とのフェノール、ビスフェノールAのJVをもっていた。
フェノール(
改良トルエン法)は新日本フェノール(新日鉄化87.5%/三菱12.5%、120千トン)、ビスフェノールAは新日本ビスフェノール(当初は新日鉄化51.4%/三菱24.3%/東都化成24.3%で2001/3に東都化成持分が新日鉄化へ、95千トン)で、1993年に稼動を開始した。
東都化成は新日鐵グループで、新日鐵化学はビスフェノールAは東都化成のエポキシ用に供給するとともにとPCメーカーに販売した。

しかし、原料トルエンの高騰による採算悪化から2005年に合弁を解消、フェノールは停止、ビスフェノールAは新日鐵化学100%とした。
これに伴い、三菱化学は鹿島のフェノールを250千トンに、黒崎のビスフェノールAを120千トンに増設、新日鐵化学は韓国のJV(後記)を増設した。

国内の生産推移は添付の通り。Phenolseisan

海外

三井化学は、2006/4/3の「シンガポールの石油化学の歴史-2」記載のとおり、シンガポールのジュロン島で多くの事業をおこなっている。
当初はフェノール/アセトンは
Mitsui Phenol Singapore三井化学 90%、三井物産 10%)、ビスフェノールAはMitusi Bisphenol Singapore 三井化学100%)で生産していたが、2006/1/1に両社を合併しMitsui Phenols Singapore (三井化学 90%、三井物産 10%とした。
現在の能力はフェノール 250千トン、アセトン
 150千トン、ビスフェノールA 230千トンで、ビスフェノールAは隣接のTeijin Polycarbonate (180千トン)用に供給している。

三井化学は本年4月にビスフェノールAを製造・販売するSINOPECとの50/50合弁会社・上海石化三井化工有限公司の設立の認可を取得した。上海ケミカルパークに120千トンのプラントを建設する。原料フェノールはSINOPEC上海高橋分公司から供給を受ける。
製品は
帝人化成浙江省嘉興市に100%子会社として設立した帝人化成(中国)(50千トンのプラントをもち、現在、倍増中)に供給する。

新日鐵化学は韓国にフェノール及びビスフェノールAの製造販売のJV・錦湖P&B化学をもっている。
新日鐵化学 49%
錦湖石油化学及び系列会社 51% 出資で、麗川にフェノール 130千トン、ビスフェノールA 35千トンをもっていたが、日本での三菱化学とのJV解消に伴い、それぞれ280千トン、135千トンに増設した。

錦湖P&B化学は当初はShellと錦湖のJVの Kumho Shell Chemical で、1998年にShellが離脱して現社名に改称、2000年7月に新日鐵化学が参加した。

このほか、本州化学工業が三井物産、バイエルとのJVで、特殊PC樹脂、特殊エポキシ樹脂原料の特殊ビスフェノールをドイツのザクセンアンハルト州で事業化している。
2001年に
Hi-Bis GmbH を設立、5千トン設備を建設し、2004年12月から営業を開始した。

アクリル酸業界 - 化学業界の話題

アクリル酸は高吸水性樹脂向けを中心に世界中で需要が増えている。Tecnon(2004年:LG発表資料から)によればアクリル酸の需給は以下の通り。

                     単位: 千トン
  2004 2008予想 2010予想
能力 需要 能力 需要 能力 需要

Global

 3,617

 3,333

 4,351

 3,834

 4,491

 4,143

China

165

463

645

745

645

937

韓国 LG Chem によれば、2004年の能力順位は以下の通り。
①BASF 750千トン、②Rohm & Haas 575千トン、③Dow 516千トン、④日本触媒 450千トン、⑦LG 160千トン。

なおLGは新たに自社で開発した技術で80千トンプラントを建設中で、2007末に完成すれば能力は240千トンとなる。

日本のメーカーでは日本触媒と三菱化学が主メーカーで、海外にも進出している。

日本触媒が開発したアクリル酸製造技術は、海外の大手化学メーカーに数多く採用され、世界のアクリル酸製造能力の55%を占めている。(同社ホームページ)
同社は
姫路に220千トン設備(他にエステル 130千トン)をもつほか、米国テキサス州パサデナに高吸水性樹脂子会社NA Industries (当初はAlco社とのJVであったが、同社が他社に買収され、現在は日触100%)とElf Atochem North America との合弁会社American Acryl で120千トン(日触持ち分60千トン)プラントをもつ。
*
Elf Atochem は同敷地内にアクリル酸ブチルプラントを建設

更にインドネシアでは Nisshoku Tripolyta Acrylindo (当初 日触 50%、Tri Polyta 45%、トーメン 5%)の持分を増やし、現在 93.8%を所有している。同社の能力は60千トン(+エステル 100千トン)。

同社は2002年3月に住友化学との間でアクリル酸事業とMMAモノマー事業を交換した。日触としてはモノマーの販売だけのMMA事業を住化に譲り、アクリル酸に経営資源を集中投入し、強化・発展させていこうというものである。
この結果、住化・愛媛の80千トンの販売権と、
シンガポールのシンガポール・アクリリック社(粗製アクリル酸60千トン、住化 60%、東亞合成 40%)の51%の持分を住化から譲り受けた。
シンガポールではこのほか、スミカ・グレーシャル・アクリリック社(精製アクリル酸25
千トン、住化100%)の全持分を取得した。
なお、同地の
アクリル酸エステルJV(東亞合成 75%/住化 25%)は東亞合成 100%になり、高吸水性樹脂JV(住友精化 80%/住化 20%)は従来どおりである。

この結果、同社は全世界で450千トンのアクリル酸生産能力(持分ベース)を保有することになった。

その後、住化・愛媛のプラントは停止したが、姫路に老朽設備廃棄・愛媛停止集約で160千トンの新製法アクリル酸設備を建設中で2006年中に完成する。

三菱化学四日市に110千トン(ほかにエステル 116千トン)をもつ。

同社は2001年12月に
南アのSasol 社との間でアクリル酸及びアクリル酸エステルの共同事業について合弁会社を設立することで基本合意した。その後、20039月にEUの承認を得て2つの合弁会社を設立し、2004年4月に製品出荷を開始した。
①Sasol Dia Acrylates (Pty) Limited (本社:南ア)
 三菱化学 50%、Sasol 50% 出資で、アクリル酸及びアクリル酸エステルの販売、投資等の事業管理を目的とする。

②Sasol Dia Acrylates (South Africa) (Pty) Limited (本社:南ア)
 ①のJVが
50%、Sasol 50% 出資で、Sasol 社 Sasolburg工場敷地内に、アクリル酸 80千トン、アクリル酸ブチル 80千トン、アクリル酸エチル 35千トン、精製アクリル酸 10千トンを生産。

Sasol社の最新の石炭液化技術を用いて生産したプロピレン、エタノール、ノルマルブタノール(三菱化学技術)などの価格競争力をもつ原料と、三菱化学のアクリル酸及びアクリル酸エステル製造技術を組み合わせることにより、競争力ある製品を供給しようというものである。

*南アでは以前にアパルトハイト政策により欧米各国から石油の禁輸を受けたため、Sasol が同国の豊富な石炭を原料にしたエチレン生産技術を開発した。現在は中国にその技術を供与している。

なお、三菱化学は2004年8月に中国の藍星社に技術を供与した。藍星社のグループ会社の沈陽パラフィン社が遼寧省沈陽市で建設するアクリル酸(80千トン)、同エステル(120千トン)に生産技術を供与、製品の一部はSasol Dia Acrylates を通じて中国国内を含むアジア市場を中心に販売する予定である。

このほか、日本では出光興産(旧 出光石油化学)が愛知で50千トン(+エステル 50千トン)を、大分ケミカル(東亞合成90%、昭和電工10%)が大分で60千トンのプラントをもつ。大分ケミカルは1983年に廃業した日昭化薬(日本化薬/昭和電工)から事業を引き継いだもの。東亞合成は名古屋でアクリル酸エステル 114千トンのほか、シンガポールに100%子会社・Singapore Acrylic Ester(当初、東亞合成 75%/住化 25%)で同 82千トンをもつ。

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