「no」と一致するもの

日立製作所は3月31日、米GlobalLogicを総額95億ドルで買収すると発表し た。(詳細後記)


一方で、日立製作所は約53%の株式を保有する上場子会社の日立金属を売却すると報道されていたが、米投資ファンドのBain Capital と日本産業パートナーズ、ジャパンインダストリアルソリューションズのコンソーシアムが独占交渉権を得たことが分かった。

昨年8月から交渉されてきたもので、日立は持株全てを売却する。この場合、TOBとなる。

証券取引所内外、どちらの取引であっても、買付け後の株式等所有割合が1/3を超える場合はTOBによる実施が義務付けられている。

日立は全株売却を考えているため、日立化成の場合と同様、上限なしのTOBとなる。

日立金属の事業は下記の通り。電線事業は2013年7月に日立電線を統合したもの。

日立金属については、少し古いが、右を参照  2016/1/28  日立金属、米国の医療機器用部品会社買収 


日立製作所は「選択と集中」を旗印に、成長分野と位置づけるエネルギーなどのインフラやIoT(モノのインターネット)事業に経営資源を集中させる方針である。

非中核分野を次々に売却しており、2009年に22社あった上場子会社は2019年には日立化成、日立金属、日立建機、日立ハイテクノロジーズ (2020/2 日立ハイテクに改称)の4社に減った。

子会社 時期 持株比率
日立物流 2016/5/19 59.01%→30.01% 株式の29%をSGホールディングスへ譲渡
日立キャピタル 2016/10 60.61%→33.40% 株式の23.01%を三菱UFJフィナンシャル、4.20%を三菱UFJリースに譲渡
日立国際電気 2017/1   4割超→ゼロ グループで保有する4割超をKKRに売却(配当金を合わせ752億円で)
KKRはTOBを実施、傘下のHKホールディングスの完全子会社とし、2018年に工機ホールディングスと改称。

KKRは日立国際電気の半導体製造装置事業を分離、2018/6にKokusai Electricを設立したが、
2019/7 これをApplied Materialsに22億ドルで売却した。→中国の承認得られず、解約

日立工機
(電動工具)
2017 
  
40.25%→ゼロ
KKRに売却(KKRがTOB)
日立アーバンインベストメントも 10.90%→ゼロ
クラリオン 2018/10 6割超→ゼロ 仏自動車部品大手フォルシアに譲渡、売却価額は899億円 
日立オートモティブ
システムズ
2019/10 66.6% ホンダのケーヒン、ショーワ、日信工業と統合
ホンダが33.4%

2020年には上場4子会社のうちの日立化成株式を51.29%全てを 昭和電工に譲渡した。

2019/12/2 日立製作所、子会社日立化成を昭和電工に売却へ
2019/12/25 昭和電工、日立化成にTOB 

今回の日立金属の売却が実施されると、以前の御三家が全て売却されることとなる。

これにより日立製作所は以前の重工業企業から変身する。

日立製作所は2021年1月31日、上場子会社である日立ハイテクの完全子会社化に向けてTOB(@8000円、総額5311億円)を実施すると発表した。

日立ハイテク計測・分析技術を生かした社会イノベーション事業の成長加速を行なう。
これに加え、日立ハイテクの体外診断機器事業(グローバルNo.1)を中核事業として育成、ヘルスケア・アナリティクス分野に進出する。



日立製作所は3月31日、米GlobalLogicを総額95億ドルで買収すると発表した。

GlobalLogicはカリフォルニア州に本社を置くシステム開発企業で、日立が「Chip-to-Cloud」と呼ぶ、データを業務の現場からクラウドまで連携させながら活用するためのシステム開発を得意とする。

日立は本買収を通じてGlobalLogic先進的なデジタルンジニアリングのケイパビリティ大手テック企業をはじめとする強固な顧客基盤獲得し、日立のデジタルインフラ/データマネジメント/デジタルソリューション事業を担う米国子会社であるHitachi Vantara LLCグローバル展開をリードするLumadaを強化する。

Lumada:顧客のデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション/サービス/テクノロジーの総称

日立ハイテク計測・分析技術を生かした社会イノベーション事業の成長加速を行なうため、完全子会社に向け、TOBを実施した。

GlobalLogicとの統合で、ミッションクリティカルでの信頼性が重要な受託型から、アジャイル、クラウドベースの協創型へと事業ポートフォリオを高成長市場に拡大させる。


東原敏昭社長は「Lumadaを進化させてグローバル展開を加速させるための買収」と説明した。

東芝が4月7日に英投資ファンドのCVC Capital Partnersから買収を提案された。

CVCは前日6日終値に約30%のプレミアムを加え、1株5000円での買い取り価格を提案した。6日時点の東芝の時価総額は1兆7437億円で、TOBが成立した場合の買収額は2兆3,000億円弱となる。

産業革新投資機構(JIC)や事業会社の参加を想定し、早ければ10月の上場廃止を見込む。

背景には東芝とアクティビスト(物言う株主)との対立がある。

付記

東芝は4月20日、買収交渉の中断を発表した。

4月19日にCVCから新たな書面を受領したもののなんら具体的な詳細情報が記載されていない。非公開化が東芝経営陣及び取締役会の戦略的目的に合致するかについてのガイダンスを待つため暫時検討を中断する」(step aside to await your guidance as to whether a privatization of Toshiba will suit management's and the Board of Directors' strategic objectives)という内容である。

買収者の資本構成や買収後の具体的な経営方針、安全保障法制・外国投資規制・競争法制の適用関係等は、取締役会が提案の検討を行う上で必要不可欠なものであり、かかる情報が提供されないまま提案の検討を開始することできない。

3年半ぶりの東京証券取引所、名古屋証券取引所市場第一部復帰を果たしたことを誇りに思っている。

非上場化を含め様々な企業価値向上のための提案を選択肢として排除するものではないが、非上場化には様々な課題も存在する

客観的に見て具体的かつ実現可能性のある真摯な買収提案がなされた場合には真摯に評価・検討するが、その場合のプロセス及び内容は、株主をはじめとする当社ステークホルダーの多くが納得するものでなければならない。


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東芝子会社のWestinghouse は2017年3月29日、ニューヨーク州連邦破産裁判所に米国連邦倒産法第11章に基づく再生手続申し立てた。

2017/3/30 Westinghouse、Chapter11 申請 

2017年7月、米連邦破産法11条の適用を申請中の Westinghouse が手がける原発建設をめぐり、親会社の東芝が発注元の米電力会社に支払う債務保証額が 計6561億円に確定した。

2017/7/31 東芝、米原発の保証債務 6561億円で確定 

東芝株式は2017年8月1日、東京証券取引所の第1部から第2部に「降格」となった。2017年3月末時点で債務超過となり、1部上場基準に抵触した。
2018年3月末までに
債務超過の解消、2017年3月期有価証券報告書での適正意見、特定注意市場銘柄指定解除の3つのハードルの全てをクリアできないと上場廃止となる。

2017/8/2 東芝、東証2部降格 

東芝2017年9月28日、東芝メモリの株式譲渡契約を締結したと発表した。

売却先はBain Capitalがこの目的のために設立し、参加各社が出資する㈱ Pangeaで、売却額は2兆円、税引前利益で1兆800億円を見込む。メモリ事業承継に係る課税影響を加味しても約7400億円の増益が見込めるため、2017年度末には債務超過状態を解消できるとみている。

しかし、各国の独禁法当局の承認が2018年3月末までに取得できなければ、売却益を計上できず、2期連続の債務超過となり、上場廃止となる。特に中国の承認が得られるかどうか、懸念された。

(中国の独占禁止法当局が売却案を承認したことが2018年5月17日に分かった。既に日米欧など他の全ての国の独禁法当局の承認は得ている。6月1日付で売却した。)

2017/9/30 東芝メモリの株式譲渡契約締結

東芝は2017年11月19日開催の取締役会において、第三者割当による新株式の発行を決議した。

新株式の発行総額は約 6000億円(新株式1株あたりの発行価格262.8円) で払込みは12月5日に完了する予定。

経営再建の途上にある東芝が、公募増資を実施するのは事実上 困難なため、第三者増資を行う。旧村上ファンド出身者が設立したシンガポールのEffissimo Capital Management や米King Street Capital Managementなど、Goldman Sachs が集めた海外約60社の投資家に割り当てる。主な投資家には「物言う株主」も多い。

調達した資金は、Westinghouseの米国原子力発電所建設プロジェクトに関する親会社保証の一括弁済に充てる。

2017/11/24 東芝、増資を決定 

2018年4月、車谷暢昭氏が東芝の代表執行役社長 兼 最高経営責任者に就任、負の遺産処理を加速した。並行して、家電事業に加えパソコン事業を売却、東芝の事業ポートフォリオをB to B中心に再編した。

付記 正確には2018年4月に車谷氏は会長兼CEOに就任、綱川智氏が社長で、2020年4月に綱川会長、車谷社長兼CEOとなった。


 


2018/6/7 東芝、パソコン事業をシャープに売却 

車谷社長は、旧三井銀行に入行、2015年に三井住友フィナンシャルグループ副社長 兼 三井住友銀行副頭取となる。

2017年にCVC Capital Partnersの日本法人の代表取締役会長に就任したが、翌2018年2月、経営危機にあった東芝の取締役会指名委員会から指名を受け、2018年4月に正式就任した。

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2017年の増資は上場廃止を避けるための苦肉の策であったが、東芝には株主を選ぶ余裕は全く無く、Goldman Sachs が集めた海外約60社の投資家に割り当てた。Harvard Investmentのような大学のファンドもあるが、「物言う株主」のEffissimo Capital Management も含まれている。

筆頭株主で9.9%を所有するシンガポールのEffissimo Capital Management は2020年7月の定時株主総会で、ガバナンス強化などを求めて、取締役に同社の今井陽一郎氏ら3人を選任するよう要求した。

また、3D Investment Partners も自社の推薦する社外取締役2人の選任を提案し、車谷CEOらの選任への反対も表明した。

東芝は取締役選任案に反対を表明し、この案は総会で否決された。ただ、東芝の車谷CEOの賛成比率は57.96%にとどま った。

3Dは総会後、議決権の一部が結果に反映されていないとして投票の処理が適切だったか外部調査を要請し、東芝は議決権行使書を集計した三井住友信託銀行に調査を依頼した。

その結果、 集計作業した三井住友信託銀行が事前に郵送された1000通以上の議決権行使書を無効扱いにしていたことが判明した。
2020年12月に無効票を含めて議決権行使を再集計した結果、車谷社長の賛成比率を57.96%から57.20%に、反対比率を18.96%から20.13%にそれぞれ訂正した。

Effissimo は「議決権行使をめぐり、株主への不当な圧力があった」とも指摘した。一部の株主が圧力を受けて議決権を行使しなかったと報じられた 。

複数の外電が、東芝の議決権の4%を持つアメリカのハーバード大学の基金運用ファンドに対し、経済産業省の関係者が圧力をかけたと報じた。


東芝は監査委員会による調査の結果、「さらなる調査は必要ない」としたが、Effissimo は第三者委員会による再調査を要求。これを東芝が拒否したため、Effissimo などが臨時株主総会招集を求めた。

Effissimo は、2020年7月の定時株主総会が公正に運営されたかどうかを調査するために弁護士などの選任を要求 。
第二位株主で米ヘッジファンドのFarallon Capital Managementは、成長投資の方針についての合理的な説明を含む資本政策案の策定及び株主総会への上程を求めた。

東芝は2021年3月18日、都内で臨時株主総会を開催し、昨年7月に開催した定時総会の運営の適正性について独立した調査を求める筆頭株主 Effissimo の株主提案を可決した。 調査の期間は3カ月で、調査者として3人の弁護士を選任した。

Farallon Capital Managementの提案は否決された。

2020年5月時点の株主名簿には証券会社が記載されており、各社の出資比率は不明だが、下記の通りとされる。

Effissimo Capital Management 9.9% 筆頭株主
Farallon Capital Management (Chinook Holdings との共同で)5.37% (うちFarallonは2.12%)
Harvard Investment (Harvard Universityのファンド)4.7% →0 %
3D Investment Partners (Singapore) 2.5% → 7.2%  2位株主に

Harvardを除き、全てが「物言う株主」で、他にKing Street Capital Management、BlackRock Fund Advisors などを加えると全株主の3割強となるとされる。

2021年3月29日に異動があった。シンガポールの資産運用会社、3D Investment Partnersは3月29日付で市場外でHarvard Investment から 4.7%分を取得し7.2%となり、第2位の株主になった。

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東芝は今後も株主対応に苦労すると見られた。

しかし、臨時株主総会でEffissimo の株主提案が可決された直後の4月7日、CVC Capital Partners が買収提案を行った。

東芝の車谷CEOは東芝の社長兼CEOに就任する前はCVC Capital Partnersの日本法人の代表取締役会長であった。また、東芝の藤森義明・社外取締役は現在、CVC日本法人の最高顧問である。

このことから、物言う株主との対立が続いている東芝の株式を非公開化して、経営判断を速めるため、東芝側から持ち込んだものではないかとの見方もある。

東芝は、「詳細情報を受領した場合は慎重に検討する」としている。永山取締役会議長は声明の中で「(買収提案は)当社の要請によるものではなく、当社の事業についての詳細な検討を経た上で行われていない」としている。

筆頭株主のEffissimo Capital Managementや2位株主に浮上した3D Investment Partners などの対応が注目される。


また、東芝買収は他にも問題がある。

原子力事業を持つ東芝は2020年に施行した改正外為法で重点審査の対象となっており、財務省と経済産業省が事前審査することになる。

東芝はWestinghouseからは撤退したが、分社した東芝エネルギーシステムズに原子力事業部を持ち、原子力プラントの建設・メンテナンス・再稼動対応から福島第一原発の廃炉対応、廃止措置対応、燃料サイクル、 さらには次世代炉や高速炉などの未来に向けたエネルギー開発など、幅広い事業領域に積極的に取組んでいる。

東北電力の女川・東通、東電の福島・柏崎刈羽、中部電力の浜岡原発は主に東芝が担当している。

半導体や防衛関連の技術もあり、安全保障の観点から技術流出の恐れも懸念される。

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CVC Capital Partnersはこれまでに外食チェーンの「すかいらーく」など、日本でもいろいろの投資をしてきた。

資生堂は2月3日、アジアを中心に「TSUBAKI」「SENKA」などのブランドでヘアケア商品やスキンケア商品を展開するパーソナルケア事業を CVC Capital Partnersに1,600億円で売却すると発表した。

資生堂は売却先である事業運営会社の株式を35%取得し、合弁事業として運営に引き続き関与する。


SK Innovation と LG Chemは車載電池の特許紛争で争ってきた。

LG Chemは2019年4月30日、SK InnovationがLG技術者を採用することにより、リチウムイオン電池技術を盗用したとし、LGの米国子会社と共同で米国ITCとDelawareの連邦地裁に提訴したと発表した。
SK InnovationがLGのリチウムイオン電池部門の77人の高度の技術と経験を持つ従業員を雇用し、LGの企業秘密を取得したと主張した。

ITCは2月10日、SK InnovationがLG Chemの営業秘密を侵害したと判断し、関税法第337条の違反を適用し、営業秘密を侵害したバッテリーと部品に対する「アメリカ国内への輸入禁止10年」を命じた。

2021/2/12 米ITC、SK Innovationに輸入禁止命令 

上記は企業秘密侵害であるが、特許権侵害については、LG Chemは2019年9月にSK Innovation をITCに提訴したが、ITCは3月31日、SK側の主張を認める仮決定を下した。

また、SKがLGをITCに提訴した特許権侵害訴訟に関しては、LGがこの訴訟を却下することを求めていたが、ITCは4月2日、LG側の要請を棄却した。この訴訟は継続する。


ITCは上記の営業秘密侵害については
、事実上の猶予期間を設定し、LG Chemとの和解を促した。

しかし、SKは1兆ウォン(約980億円)前後の和解金をLG側に提示しているのに対し、LGは少なくとも3兆ウォンを求めているとされ、SK側は「LGの要求はバッテリー事業をやめろというに等しい」と主張している。

ITCの2月10日の「輸入禁止」の決定は、大統領の60日間のレビュー期間がある。

SKは3月30日、Biden大統領が60日間のレビュー期間内 (4月11日まで)にITCの判断を覆さない場合、米国から撤退し、欧州か中国に移転すると発表した。

SKは最悪のシナリオを想定し、建設中のバッテリー工場を(他社への売却でなく)欧州に移転する作業に着手した。これまでに投入された約1兆5000億ウォンのうち生産設備など1兆ウォン程度は回収が可能だと判断している。

2021/4/5 SK Innovation と LG Chem の特許侵害紛争、更に複雑に



今回両社は、Biden大統領が最終判断を下す期限の数時間前に和解した。

和解条件は次の通り。

SKはLGに対し、18億ドル(両社の主張額のほぼ中間)を支払う。うち9億ドルは現金、残り9億ドルは売上高の数%相当のロイヤリティで支払う。

SKとLGはともに、国内外の全ての訴訟を取り下げ、今後10年間互いを訴訟しない。

この結果、SKはジョージア州Commerceで建設中の自動車用リチウムイオン電池工場を完成し、契約済みのFord とVolkswagenに電池を供給することが可能となった。

バイデン大統領は3月31日、国内のインフラの整備等に8年間で2兆2500億ドルを投入する新たな計画American Jobs Plan を発表したが、そのなかには電気自動車関連として1740億ドルが含まれている。

SKの工場の欧州への移転、それによる雇用の減は大統領にとって避けたいものであるが、営業秘密の侵害を認定したITCの決定を (SKの米国からの移転の脅迫を受け)覆すのも好ましいものではない。

これが避けられたことで、バイデン大統領は和解について、「米国の労働者と米国の自動車産業にとっての勝利である」と呼んだ。
「米国には、強く、多様化した、弾力性のある米国ベースの電気自動車用電池のサプライチェーンが必要である。それにより、需要がグローバルに拡大する電気自動車と電池を供給し、雇用を増やし、将来の雇用への基礎をつくることが出来る」と述べた。

SKとLGに対し、米国政府と韓国政府から和解に向けての強い圧力があったと見られる。

中国の独禁法を管轄する国家市場監督管理総局は4月10日、電子商取引大手のアリババ集団(Alibaba Group)に対して182億2800万元(約3000億円)の罰金処分を科す決定を出した。

これまで中国の独禁法は当初、下記の体制で実施されてきた。

反壟断委員会(国務院直属) 独占禁止政策の調査、市場動向のモニター、執行機関間の政策の調整
実務
機関
発展改革委員会価格調査局 価格独占行為の調査・処分
商務部反独占局 事業者結合行為
国家工商行政管理総局
(工商総局)
独占協定、市場支配的地位の濫用、行政権力を濫用した競争の排除・制限(価格独占を除く)

2018年3月、中国の「構造改革」の一環として、独禁法関連の 各機能と、品質検験権益総局(輸出入品質検査検疫を除く)、食品薬品監督管理総局の機能が新設の国務院直属機構の国家市場監督管理総局に移管された。

今回の罰金182億2800万元同法違反としては過去最大となる。罰金額はアリババの2019年の中国国内の売上高(4557億1200万元)の4%が対象となった。

同法違反による制裁金は、2015年に半導体大手の米クアルコムが支払いを命じられた60億8800万元(約1000億円)がこれまでの最高だった。

2015/2/14 中国、独禁法違反でQualcomm975 百万ドルの罰金 

当局の発表によると、アリババは2015年から市場での支配的な地位を乱用し、同社のライバルのEC企業と取引しないよう出店企業などに求めてきた。
「二者択一」と呼ばれる行為で、商品やサービスの自由な流通を妨げ、消費者や競合企業の利益を侵害してきたとしている。

下記の通り、中国の規制当局は2020年12月24日に、アリババ(阿里巴巴)集団の「二者択一」などが独禁法に違反した疑いがあるとして調査を始めたと発表した。

当局はアリババに対して法令順守の水準を高めるように内部管理の強化などを求める。また、今後3年間は法令順守に関する報告書の当局への提出も義務付ける。

欧米メディアは中国政府がアリババに対し、傘下のメディア関連の一部の資産を処分するように要求したとも報じている。香港英字紙South China Morning Postなどが売却対象となる可能性があるという。

アリババは同日、「今回の決定を誠実に受け入れ、罰則に従う。法令順守体制の構築を一層強化し、社会的責任を果たしていく」との声明を公表した。

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昨年来、下記の経緯があった。

アリババ集団の実質的オーナーである馬雲(Jack Ma)は2020年10月下旬、講演で金融当局の監督姿勢に不満を述べたが、習近平国家主席はJack Maによる政府批判に激怒、自身による支配や安定性への挑戦と受け止めたという。

アリババ集団傘下の金融会社でスマートフォンの決済サービス「アリペイ」などを運営するAnt Group螞蟻集團は2020年11月に上海と香港に上場し、4兆円規模の資金を調達する予定だった。
だが、直前にアリババ創業者の馬雲(Jack Ma)氏とアントの幹部が金融当局の聴取を受け、11月3日に急遽 上場延期が決まった。アント・グループによる新規株式公開(IPO)の延期について、決定したのは習主席だったと報じられた。

中国の市場監督管理総局は12月14日、過去の買収案件で当局に申請して承認を得なかったとしてAlibaba(阿里巴巴)と阅文集团(China Literature)に罰金を科すと発表した。Alibaba、China Literatureともに50万元(約800万円)の罰金が科される。

Alibabaは2017年1月、中国大手モール運営会社Intown の買収を明らかにした。Intownは中国に29の百貨店と17のショッピングモールを運営している。3年前に一部出資したが、100%買収し、上場廃止とするもの。AlibabaとChina Literatureは当局に買収を申請しなかった。しかし買収はいずれも「マーケットの競争を阻害するもの」とみなされず、中国の独禁法に則って買収を破棄するのではなく罰金を科した。

AlibabaやTencentをはじめ、中国のインターネット企業の多くは、中国人によって創業され、経営陣も中国人が中心となっているが、海外で上場しており、その株の過半数が外国投資家によって保有されるという意味において、中国にとって「外資企業」である。

中国政府は、インターネット産業に対して、外資の参入を制限しているが、多くのインターネット企業は、VIEスキームを採用することを通じて、これらの規制を回避している。

中国の規制当局は12月24日、中国ネット大手のアリババ(阿里巴巴)集団を独禁法違反の疑いで調査を始めたと発表した。アリババ集団傘下の金融会社Ant Group螞蟻集團に対しても近く指導する。

中国で独占禁止法を管轄する国家市場監督管理総局は、取引先の企業にライバル企業と取引しないよう求める「二者択一」などが独禁法に違反した疑いがあるとして立件に向けて調査を始めたと発表した。家電大手との取引が問題となっていた経緯がある。

中国当局は12月30日、アリババグループの傘下企業などに対し、価格法に違反したとして罰金50万元(約800万円)を科す決定を出した。

アリババは傘下のネット通販「天猫(Tmall)」は11月11日の「独身の日」に、セール価格として27.9元でコメを販売していたが、実際には前日に24.9元で販売していた商品を値上げしていた。

2020/12/31 中国もインターネット企業を規制 

アント・グループは2021年3月12日、最高経営責任者(CEO)兼業務取締役の胡暁明(Simon Hu)が「個人的理由で」同日付で辞任したことを明らかにした。後任のCEOには、2016年から2019年までCEOを務めた井賢棟(Eric Jing)会長が就任する。





米国の大学が開発した新しいタイプの新型コロナウイルスワクチンがこのほど、ベトナムなど数カ国で臨床試験(治験)に入った。

既存のインフルエンザワクチンと似た製造手法で安価に大量生産でき、一般の冷蔵設備 (2~8℃)で数週間にわたり保管が可能という。

新ワクチン「NDV-HXP-S」は、University of Texas at Austin と、Icahn School of Medicine at Mount Sinai 及び National Institute of Allergy and Infectious Diseases Vaccine Research Center の研究グループが共同で開発した。

University of Texas at Austinの研究チームは、コロナウイルスを長年研究してきた実績を持つが、 新型コロナウイルスの発生で「スパイクタンパク質」に着目した。

中国の研究者によるゲノム配列の発表後、「極低温電子顕微鏡法」と呼ばれる最新鋭の技術を用いて新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の分子構造をマップ化し 、2020年2月19日にScience誌に発表した。

スパイクタンパク質は容易に形を変えるため、 これをもとにワクチンをつくっても、そのままでは人体は認識できない。このためチームは、ワクチンが体内に入っても形を維持するよう、スパイクタンパク質のS2 subunit 2か所を変えている。チームはこれ以前に中東呼吸器症候群(MERS)のウイルスのスパイクに変更を加え成功した実績があり、そのまま使った。

Pfizer、Moderna、J&Jなどのワクチンはすべてこの改良スパイクタンパク質を利用している。


チームはその後も研究を進め、コロナ由来のスパイクタンパク質をさらに加工し、安定性を高めることに成功した。これまでのワクチンはスパイクタンパク質の S2 subunit の2カ所を変えているが、この「NDV-HXP-S」は S1 subunitの4か所を加え、6か所を改良したもので"HexaPro" と呼ばれる。4 beneficial proline substitutions : F817P, A892P, A899P, A942P and 2 proline substitutions in the S2 subunit)

下図は改良スパイクタンパク質の模型で、赤は4つの追加のproline と呼ばれる改良点

ワクチンのベクターとして、無害化した組換えニューカッスル病ウイルス(Newcastle disease virus)を使用する。

NDV-HXP-Sの名前はNewcastle Disease Virus ー HexaPro spike から採ったものである。

新しい改良により熱や化学品に対する耐性が強まり、一般の冷蔵設備(2~8℃)で数週間にわたり保管が可能という。

ModernaやPfizer/BioNTech のワクチンは特別な施設で高価な材料を使って作成されるが、「NDV-HXP-S」はインフルエンザワクチンと同様、鶏卵を使って作成するため非常に安価である。

この点は中低所得国にとって特に重要である。

テキサス大とマウントサイナイ大は、このワクチンの製造ライセンス管理で米非営利団体でGlobal Health Organization のPATHと提携した。
PATHを通し新興国などに幅広く無料でのライセンス供与を進め、ワクチンへのアクセス拡大を支援する 。

これまでにベトナムやタイ、ブラジル、メキシコなど多くの国がこのワクチンの国内生産・治験に向けたライセンスを取得した。

ベトナムは同国保健省傘下のワクチン・医学生物学研究所(IVAC)、タイは保健省管轄下で医薬品を製造供給するタイ国営製薬公社(GPO)の主導で治験を進める。
ブラジルでは、サンパウロ州立のButantan Institute "ButanVac"という名前を付け、当局に治験認可を申請した。




米FTCは2021年3月30日、IlluminaによるGRAILの買収を差し止めを求める訴訟を首都ワシントンの連邦地裁に起こした。

米国の遺伝子解析ツール開発会社Illumina, Inc.は2020年9月21日、がん検査技術の開発を手掛ける米新興企業GRAILを80億ドルで買収することで合意した。
Grailの株主は35億ドルの現金とIlluminaの普通株45億ドル相当を受け取る。両社の取締役会はすでに買収を承認している。

Illuminaは現在、GRAIL株式の14.5%を保有している。 実際にはGRAILの他の株主に現金で31億ドル、株式で40億ドル相当、合計で71億ドルを渡すとされる。(計算不明)
GRAIL
株主は、12年間にわたり、一定のGRAIL関連収益に応じて支払いを毎年受ける。

取引完了後、Illumina株主は統合会社の93%を所有することとなり、GRAIL株主は7%を所有する。


GRAILは元々、Illuminaが設立した。

世界最大のDNAシーケンサー(塩基配列読み取り装置)メーカーであるIlluminaは2016年1月10日、簡単な血液検査からがんスクリーニングを可能にするため、新会社GRAILとの設立を発表した。
Illumina のsequencing technologyを使用し、血中の循環核酸を直接測定する全がんのスクリーニング検査を開発する。

「シンプルな血液スクリーニングにより無症状の個人でがんの早期検出を可能にすることで、治療可能なステージで疾患を検出し、がん死亡数を大きく減らすことを目標としている」としている。

GRAILはIlluminaが過半数を所有する別会社として設立、シカゴ大学での革新的な技術事業化イニシアティブをスピンオフして1986年に設立されたベンチャーキャピタルのARCH Venture Partners、アマゾン創業者のBezos Expeditions、Microsoft創業者のBill Gates、ベンチャーキャピタルのSutter Hill Venturesの参加型投資を得ている。

今回の合併について、IlluminaとGRAILが協力すれば、GRAILの革新的な複数がん早期発見用の血液検査をより幅広くより早く普及させることができるとしている。

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血中には血中系細胞の死滅時に細胞外に放出される細胞由来のDNA断片(circulating tumor DNA: ctDNA)が循環しているが、がん細胞が原因で放出されたctDNAには、DNA中のメチル基のヒドロキシル化が生ずる「DNAメチル化」に異常が起きている。

GRAILは、がん化によって組織ごとに特有に生じるctDNAのメチル化パターンの異常を同定した。

患者の血中のctDNAを検査することで、がんの有無とその原発部位を特定する。
同社の技術ですべてのステージを対象にし、5大がんを含む20種類以上のがんをカバーした試験において、特異度が99%であった。

血液中のアミノ酸濃度測定によるスクリーニングテストは5つの癌(乳がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん、子宮頸がん )に限られ、1つのテストで1つの癌しか判定できない。

GRAILの手法では50以上の癌が1回の血液検査で分かる。



この技術はGalleriTM multi-cancer screening testと名付けられた。

ctDNAはごく微量なため、ctDNAを解析するためには検出感度の高い検査が必要で 、IlluminaのNext-Generation Sequencing(NGS)が使用される。

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米FTCは2021年3月30日、買収を差し止めを求める訴訟を首都ワシントンの連邦地裁に起こした。 委員会は民主党系2名、共和党系2名の委員で構成されるが、4-0の賛成での決定である。

買収によって競争が阻害され、技術革新が停滞すると主張した。競合しない企業同士の統合について、米当局が「もの言い」をつけるのは珍しい。

FTCは、早期の癌検出技術は非常に有用であるが、遺伝子解析装置の購入先としては Illumina以外の選択肢が乏しいとする。
IlluminaがGRAILを買収すれば、GRAIL以外の会社に装置を高く売りつけ、技術革新を阻害する可能性があると指摘した。

民主党系の委員はツイッターに「ヘルスケア業界の垂直統合は競争を阻害し、新たな発見の芽を潰す。患者の費用負担増にもつながる」と書き込んだ。

バイデン政権と民主党は競争政策の見直しを進めている。競争を阻害しかねない合併に対し、より高いハードルを設けるほか、政府の反トラスト法執行要員を増やす ことを検討している。

これに対しIlluminaはFTCによる発表の直後に声明を出し、FTCによる買収差し止めの動きは、長年の反トラスト法執行実務からかけ離れて おり、買収計画の遂行に向けて裁判で争う姿勢を示した。

IlluminaとGRAILは競合せず、需要家には契約で遺伝子解析装置の"equal and fair access" を保証しており、さらに2025年までに40%以上の値引きを約束していると主張している。


FTCは2019年にもIlluminaによる買収阻止に動いている。

Illuminaは2018年11月1日、米国のPacific Biosciencesを12億ドルで買収すると発表した。

Illuminaのshort-read sequencing platforms は正確で手頃であることから、多くのアプリケーションに活用されているが、ゲノムのde novoシーケンシングや相同性の高いゲノム領域の解析といった一部のアプリケーションに対しては正確なlong-read sequencing platforsのほうが適している。Pacific Biosciencesのlong-read sequencing platforsが加わることで、統合したワークフローと新たな技術革新を提供する立場となる。

FTCは2019年12月17日、買収について異議を表明し、買収を阻止するための行動を起こした。
Illuminaが買収により新たな競争上の脅威となり得るPacific Biosciencesを排除することで次世代遺伝子解析システムの米市場における独占を不法に維持しようとしていると指摘した。

これについては英国のCMA(競争・市場庁)も2019年11月に、買収案は差し止めるべきとの判断を発表した。その理由として、器具の抱き合わせ販売の制限といった行動的問題解消措置や、知的財産権の分割といった構造的問題解消措置がとられていない点を挙げた。

IlluminaとPacific Biosciences は2020年1月2日、買収契約を解除したと発表した。Illuminaが契約解除手数料9800万ドルを支払い、合併提案は撤回された。

国務院国有資産監督管理委員会( The State-owned Assets Supervision and Administration Commission of the State Council :SASAC)は3月31日、 傘下の国有化学会社の中国中化集団 (Sinochem)と中国化工集団(China National Chemical Corporation:ChemChina)の 統合を承認した。

国有企業を重視する習近平指導部の下、鉄鋼や造船などの業界で国有大手同士の合併が続いている。

統合会社はグローバルな化学会社となり、「資源配分の最適化をさらに進め、イノベーションを強化し事業の成長を促 し、中国の化学産業の発展にも寄与する」としている。

Sinochemはエネルギー、農業資材、化学品、ファイナンス、不動産をコア事業として展開する国営企業。
ChemChinaは2004年5月に国営のChina National Blue Star Group(藍星グループ)と China Haohua Chemical Industrial (Group) (昊華化工)を統合して設立された。

両社はSASACが運営する新たな持ち株会社の完全子会社になる。

両社を統合し、異なる基幹産業を連携した、国際競争力を持つ巨大企業を創出する取り組みは以前から行われていた。

両社の会長を兼任するNing Gao Ning(宁高宁は2019年当時から両社を統合すれば原料の石油から化学製品製造までの一貫した事業を担う1000億ドル規模の企業が誕生すると語り、意欲を示していた。

2020年には両社の農薬事業を統合している。

ChemChinaは2016年2月にはスイスの農薬・種子メーカー、Syngentaを430億ドル余りで買収することで合意した。

2016/2/5 中国化工集団(ChemChina)、スイス農薬のSyngentaを買収 

買収に際し米国当局は、ChemChinaが株式の60%を取得したイスラエルのADAMA Agricultural Solutions とSyngentaの両社が米国でともに扱う除草剤、殺虫剤、殺菌剤の3剤を売却するなどの条件付きで承認を与えた。

2020年6月、ChemChinaは、グループ子会社のスイス農薬・種子大手Syngenta、グループ子会社のイスラエル農薬大手ADAMA Agricultural Solutions、Sinochemの農業関連事業部門の3者を統合し、Syngenta Groupを設立すると発表した。

Syngenta Groupの下に、Syngenta Crop Protection、Syngenta Seeds、Syngenta Group China、ADAMA Agricultural Solutionsの4中核会社体制となる。

ADAMA Agricultural Solutionsは旧称Makhteshim Aganで、イスラエルに本拠を置くジェネリック農薬の最大手。2011年に ChemChinaが株式の60%を取得し、上場を廃止した。

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ChemChinaは2004年5月に国営のChina National Blue Star Group(藍星グループ)と China Haohua Chemical Industrial (Group) (昊華化工)を統合して設立された。

同社はこれまでに多数の買収を行ってきた。

2005年10月に豪州の石化会社Qenosを買収した。

2006年1月にはCVC Capital Partners から子会社で動物用栄養製品メーカーの Adisseoを買収している。

2006年10月26日にフランスのローディアとの間でローディアのシリコーン事業を買収する契約を締結した。

2006/10/30 中国化工集団公司(ChemChina)の海外進出

2015年3月23日、イタリアのタイヤ大手Pirelli を買収すると発表した。

2015/3/27 ChemChina、伊タイヤ大手ピレリを買収

2016年1月11日、ドイツの射出成型機械メーカーのKraussMaffei をカナダのOnex Corp.から925百万ユーロで買収すると発表した。

2016年2月にはスイスの農薬・種子メーカー、Syngentaを430億ドル余りで買収することで合意した。

2016/2/5 中国化工集団(ChemChina)、スイス農薬のSyngentaを買収 

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トランプ米大統領は2020年11月12日、中国軍によって所有または支配されていると米政権がみなす中国企業 ("Communist Chinese military company" )について、米国人による投資を禁止する大統領令に署名した。

"Communist Chinese military company" は国防長官が指定する。当初20社が指定されていたが、2020年8月28日に11社を追加、現在31社となっている。

追加分には中国中化集団 (Sinochem)と中国化工集団(China National Chemical Corporation:ChemChina両社が含まれている。

2020/11/13 米国、中国軍支援企業への投資を禁止 

韓国LG Electronicsは4月5日、スマートフォン事業から撤退すると発表した。

中価格帯のスマホ市場で劣勢だった同社は2022年1月の米家電見本市「Consumer Electronics Show」でディスプレー画面を巻物のように伸縮可能な新型スマホン「LG Rollableを発表し、高価格帯にシフトする姿勢を示したばかりだった。

LG Rollable」はその後、開発を中止した。
同社は昨年9月にT字型ディスプレイ搭載スマホ「WING」を発売し注目をあびたが、ほとんど売れていない。

LG Electronicsは北米や中南米、韓国中心に世界でスマホを販売しているが、2020年12月期の販売台数は約2500万台で、売上高は5兆2171億ウォン(約5100億円)、営業損益は8412億ウォンの赤字だった。
赤字は2015年から6期連続で、この期間の累積赤字は4兆7100万ウォン(約4600億円)規模に膨らんでいた。

単位:兆ウオン( 1ウォン=0.098円)
売上高 営業損益
2015 14.34 -0.12
2016 12.24 -1.22
2017 11.16 -0.74
2018 7.88 -0.78
2019 5.97 -1.01
2020 5.22 -0.84
累積 -4.71

2020年の韓国市場では、Samsungが65%を占め、次がAppleの20%、LGは13%(前年は16%)に留まっていた。中国勢に押され、グローバル市場でのシェアは1%程度とされる。

これまで国内生産の撤退や外部委託の活用などでコスト削減を進めたが、黒字化の道筋が見えなかった。

同社は2019年に、国内最大のスマートフォンの生産拠点だった平沢工場をベトナムに移転した。
これによってスマートフォンの工場はすべてベトナム・中国・ブラジル・インドなどの海外に所在している。

このため、同事業の売却を図り、交渉を行ったが、うまくいかず、最終的に外部への技術流出を懸念して売却を断念し、事業撤退を決めた。

当初、有力な売却先としてベトナムのVingroupやドイツのVolkswagenと交渉したが成立しなかった。


Vingroupはベトナムのコングロマリットで、
事業は不動産、ホテル・リゾート開発、遊園地事業、小売業、病院事業、教育事業など多岐に渡る。
Vingroupがスマホ事業に乗り出したのは2018年で、それ以来LGと提携しODM生産を行っているため、スマホ事業売却先としてVingroupの名前が浮上した 。

しかし、Vingroupが提示した金額がLG側の希望額に及ばなかったため、破談になったとされる。

グローバル市場でのシェアが低く、高い価格で購入する買い手を探せなかった。

7月末をメドに自社スマホの販売を終了する。「スマホの競争激化で事業不振が続いており、主力事業に集中する」と撤退の理由を説明した。

約3700人いるスマホ部門の人材は業績好調の家電やテレビ部門に転籍し技術を生かす。車載電池を手掛けるLG化学でも受け入れる。



これについて、SKは「長年独自に蓄積してきたバッテリー技術力を認められたものだ。数年の歳月をかけてリチウムイオン電池の技術を開発した」とコメントした。「今回訴訟の対象となった特許4件のうち3件は10年前に韓国国内でも訴訟になり、SKが勝訴している」としている。

そして、「今回の決定でSKが特許権などの知的財産権を侵害していないと認定されたことで、米大統領がさきのITC決定に拒否権を行使できる名分が生じた」と述べた。またLGとの賠償金額交渉でも優位になるとしている。

LGは「今回のITCによる決定は残念だが尊重する。仮決定で分離膜のコーティングに関する重要特許は有効性が認められており、最終決定でSKによる侵害を立証したい。残りの3件でも、特許の有効性を認められるよう準備する」とコメントした。

今回の決定は、1) には直接影響を与えないが、SKによる独自の技術力がある程度認められたことになり、両社による和解金交渉や「世論戦」でSKに有利な要因になり得ると見られる。

3)のSKがLGを提訴した特許権侵害訴訟に関し、LGは2020年8月にITCに対しこの訴訟を却下することを求めていた。SKが営業秘密侵害に関連した「文書削除」をしたことを理由にしている。

しかし、ITCは4月2日、LG側の要請を棄却した。LGの要請事項は一方的な主張にすぎず、特許の件に関してはSK側の文書がよく保全されているなどの理由を挙げた。
このため、SK側が提起した特許訴訟も予定通りITCの調査を受けることになった。

ITCはSKが提起した特許訴訟の予備判決を7月30日に出す予定で、LGの特許侵害が認められる場合、LGバッテリー製品に対して米国内輸入禁止措置が取られる可能性がある。

バイデン大統領は3月31日、国内のインフラの整備等に8年間で2兆2500億ドル、日本円で220兆円を投入する新たな計画を発表した。

3月11日に1.9兆ドル(約200兆円)規模の新型コロナウイルス対策法案(American Rescue Plan ) が成立したが、今回は大規模な財政出動で雇用を作り出すとしている。

米国は金持ちだけではなく、全員が豊かになることが必要であるとし、フェアで、世界で最強で、最も回復力があり、イノベーティブな経済をつくるとしている。

「(過去の経済成長では米国社会の多くの層が取り残されていたが、)われわれは誰も置き去りにすることはない。誰もが成功すれば、皆がもっとうまくいく」と述べた。

大統領スピーチ全文

全体の計画は、American Jobs Plan とAmerican Families Planの2部に分かれ、今回はAmerican Jobs Plan を発表した。数週間後に医療など社会福祉の拡充策のAmerican Families Planを発表する。

「American Jobs Plan」と題した同プログラムの期間は8年。老朽化した道路や橋の補修電気自動車の充電ステーション設置など交通インフラに6,210億ドルを投じるほか、飲料水・電力網・ブロードバンドに3,110億ドル、福祉施設に4,000億ドル、半導体などの製造業のサプライチェーンの強化や人工知能の開発などに5,800億ドルを投じる。

「第2次世界大戦以降、最大の雇用に対する投資だ。何百万もの賃金の高い雇用を生み出し経済を成長させ、中国との競争に勝てるようにする」と強調した。

計画内容は下記参照。詳細はFACT SHEET: The American Jobs Plan

財源として、増税を発表した。15年かけて今回のコストをすべて賄えるとしている。

現行で21%の法人所得税率を28%に引き上げる。各国が行っている税率引き下げ競争を米国は止める。

Tax Haven 国への本社移転で税回避するのを防ぐため、種々の対策を折り込む。世界的に事業展開する企業の利益に税率21%のミニマム税を適用するが、国別に計算することで、Tax Haven国での利益にも課税する。

今後、ホワイトハウスは法制化に向け、与野党の議会指導部と交渉に入るが、コロナ対策とは異なり、簡単ではない。


投資計画の内容は下記の通り。(億ドル)

交通インフラ 5,210
+1,000
*
道路、橋梁の修理 1,150
公共交通の近代化 850
鉄道サービス 800
電気自動車 1,740
港湾、水路、空港の改良 250
未来の交通インフラ 200
その他 220
インフラ改善 500 洪水、山火事、ハリケーン、その他リスク対応 500
飲料水、電気、ブロードバンド 3,110 クリーンな飲料水 1,110
電力網 1,000
high-speed broadband 1,000
住宅、公共施設 2,130 2,130
教育施設 1,370 学校建設、改善 1,000
地域短大 120
保育施設 250
退役軍人病院ほか 280 退役軍人病院 180
連邦ビルの近代化 100
福祉施設 4,000 老人、障碍者のケア 4,000
R&D、製造近代化、中小企業 5,800 R&D、未来の技術への投資 1,800
製造業、中小企業活性化 3,000
Workforce Development 1,000
その他 100 100
合計 22,500 22,500

* 他の項目に含まれる。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

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