「no」と一致するもの


イタリア議会代議院(下院)は12月23日、2020年の予算案を賛成334、反対232で可決した。

このなかで、フランスに追随してデジタル課税の2020年1月1日導入を決めた。


世界での売上高が7億5000万ユーロ以上、イタリア国内で550万ユーロ以上の売り上げがある企業を対象に、デジタル収入に3%の税金を課す。

ネット広告や音楽のデジタル配信、クラウドコンピューティングなどを手がける企業が対象となる。

政府はデジタル課税で年間7億ユーロ程度の税収を見込んでいる。

グーグルやフェイスブックなど米IT大手は物理的な施設を持たずに、データのやりとりなどで稼ぐ。現在、オフィスや工場などの「恒久的施設」(Permanent Establishment ) がないと外国法人には法人税を原則課すことができない 。

このため、欧州や日本ではこれら各社の税負担が極端に低い。

欧州委員会は昨年3月21日、デジタル分野における課税に関する指令案を発表した。

その後、EUでは暫定的な税の適用について、議論を進めてきたが、税制の変更には全会一致の承認が必要となる。

EUのデジタル課税案には、低税率で米IT大手などを誘致してきたアイルランドなどが導入に猛反発し、また米国からの「報復」を警戒するドイツなども、国際的な課税ルール見直しの議論を見極めるべきだと早期導入に慎重な姿勢を崩さず、調整が難航した。

2019/3/12  EU、デジタル課税合意見送り、仏英など独自課税へ

フランス上院は7月11日、Digital Services Tax法案を可決し、Macron 大統領は7月24日にこれに署名、これが法律となった。

課税事業 (i) ユーザーが他のユーザーとコンタクトしたり、商品やサービスを購入するデジタルインターフェースの供与
(ii) フランスのユーザーに広告する業者にデジタルインターフェースでサービスを供与
課税対象企業 課税事業の全世界売上が750百万ユーロ以上で、
フランスのユーザーからのそれが25百万ユーロ以上
税率 対象売上高の3%
課税開始 2019/1/1に遡及
米通商代表部(USTR)は12月2日、フランスが導入したデジタルサービス税が米国のIT企業を不当に差別していると断定し、24億ドル分に相当するフランスの63品目に最大100%の制裁関税を検討する。

2019/12/5 米、仏デジタル税に制裁関税検討 

米国はイタリアに対しても報復措置をちらつかせている。

経済協力開発機構(OECD)もデジタル課税についての国際的なルール作りを進めており、2020年1月までの大枠合意を目指している が、ムニューシン米財務長官は12月上旬、OECDのグリア事務総長に「米国は独自のデジタル課税に強く反対する。米企業活動に差別的な影響を及ぼす」との書簡を送付した。米国の反対で協議は難航する可能性が高い。

ーーー

この動きに対し、アマゾンやグーグルは日本で法人税を支払うように変更した。

アマゾンは日本法人が2017年12月期と2018年12月期に、それぞれ約150億円の法人税を納付したとされる。

従来は、米国本社が日本の業者から購入、日本の需要家に販売する形をとっていた。売買差益は日本で非課税となる。

製品の倉庫への受け入れ、需要家への配送は日本子会社が受託し、受託料だけを収入として、少額の税金を納入していた。

現在は、日本法人が購入、販売する形に変更、売買差益は課税対象となった。


グーグルも、以前は日本の事業の大半はシンガポール法人が契約し、日本以外で売り上げを計上していた。
2019年4月からは、主力の広告事業で日本法人が日本国内の契約を結ぶことにした。

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今回、イタリアで2020年の予算案が議会で可決されたのは、大きな進展である。下院では予算案と政府の信任案との一体案として提出され、可決された。

昨年6月に発足したイタリアの「五つ星運動」と「同盟」の連立政権は、与党の「同盟」が内閣不信任案を提出し、崩壊の危機に瀕した。

2019/8/13 イタリア連立政権、崩壊の危機 

中道左派「民主党(PD)」とポピュリスト(大衆迎合主義者)政党「五つ星運動」は8月28日、新たな連立政権を樹立することで合意した。

コンテ首相は9月4日、「五つ星運動」と「民主党」の2党連立による組閣名簿をマッタレッラ大統領に提出、9月5日に新閣僚の就任宣誓式を行った。

両党は政策合意で、EUとの連携を打ち出した。連立政権は、次期総選挙が開かれる2023年まで続くこととなる。

今回の予算案の可決は両党の連立の結果である。上院では既に12月16日に承認されており、法として成立した。

主なポイント:

財政赤字目標 GDPの2.2% 

財政赤字問題については 2019/5/10 イタリアの2019年度見通し、債務削減の対EU公約未達へ

EUの財政規律の基本は、財政赤字の対GDP比 3%未満、公的債務残高の対GDP比率 60%未満である。 (公的債務残高は多くの国が基準を超えている。)

イタリアの公的債務残高は2018年の134.8%から、2019年には135.7%にアップする見込みで、2019年3QのイタリアのGDPは+0.1%に過ぎない。

付加価値税(VAT) 引き上げ凍結。 230億ユーロの歳入減、2021年に大幅引き上げが必要となる。

欧州委員会は付加価値税を2020年に予定通りひきあげ、財政規律を維持するよう促すが政権は慎重で、「別の税収確保の方法を考えたい」としている。

2018年予算安定化法案で2019年1月からの増税が定められていたが、2019年予算法において増税時期は先送りされ、2020年から実施すると定めている。

当初の税率の変更案  赤字は凍結

  現状 2019/1/1 2020/1/1 2021/1/1
標準税率 22% 24.2% 24.9% 25%
軽減税率 10% 11.5% 13%  

プラスチック税

2020年予算案には、プラスチック製品(ボトル、ポリ袋、トレイ、洗剤容器等々)に1kg当たり1ユーロの税を課す案が含まれた。

最終的に1kg当たり45セントに修正された。


ロシアとウクライナは12月19日、2020年1月以降もウクライナのパイプラインを経由してロシア産の天然ガスを欧州に供給することで基本合意した。

現在の輸送契約は2019年末に失効するが、新しい契約を結ぶ交渉が難航していた。

ロシアとウクライナは天然ガスを巡り、何度も争っており、ウクライナを経由するパイプラインでロシアから天然ガスを受けている欧州も巻き込まれてきた。

2009/1/2 ロシア、ウクライナ向け天然ガス供給停止
2013/2/19 ロシアとウクライナ、天然ガスで再び抗争
2014/4/7 ウクライナ問題の背景
2014/4/1 米国からの欧州向けLNG輸出
2014/4/4 ロシアGazprom、ウクライナ向けガス価格を大幅に引き上げ
2014/5/3   ウクライナ問題でのロシア制裁の影響
2014/6/14 ウクライナとロシアの天然ガス供給での対立続く
2014/7/11 天然ガスを巡るEUとロシアの攻防
2014/11/4 ロシアとウクライナ、天然ガス交渉で合意

ロシアの国営ガス会社ガスプロムはドイツに向かう「ノルドストリーム2」とトルコに至る「トルコストリーム」の2本の大型ガスパイプラインを2020年に稼働させる予定で ある。

Nord Stream -2 は全長約1200キロメートルで、バルト海を通ってロシアと独北部を結ぶ。輸送能力は年550億立方メートルで、ロシアの欧州へのガス輸出量の約4分の1に当たる。年内に完工するとの観測が出ている。

ウクライナを迂回したロシア産ガスの輸出ルートでは、黒海からトルコに輸出し、さらにブルガリアやハンガリーなどに輸出するTurkish Stream も建設されている。 2020年に運用開始の予定。

2019/11/9 Nord Stream -2、年内完工へ

ロシア側は「ノルドストリーム2」と「トルコストリーム」の開通で、ウクライナ東部で争っており、過去にガスパイプラインを巡って何度もトラブルを起こしていたウクライナ経由の輸送量を減らしたい思惑がある。

一方、経済の悪化に苦しむウクライナは多くの輸送量を確保した長期契約で、多額の通過料を得ることを目指した。 更に、過去の契約が不当だったとしてガスプロムを相手取り、複数の訴訟や罰金の請求を試みていた。

ーーー

今回の合意は、契約期間は5年で、ウクライナのパイプラインを経由する欧州への供給量を20年が650億立方メートル、2021年から400億立方メートルと段階的に減らす。

さらにロシアは国際裁判所の決定に従い、ウクライナに約30億ドルの賠償金を支払う。ロシア側が30億ドルの支払いに同意したことで 、他の訴訟問題などはひとまず取り下げた模様。

これにより、来年以降のロシアの欧州向けガス輸出は下記の通りとなる模様。

現状 今後
ノルドストリーム 1

590億m3

 →

ノルドストリーム 2 ーーー 550億m3
ベラルーシ経由

420億m3

 →

ウクライナ経由 800億m3 650→400億m3
トルコストリーム ーーー 315億m3
ブルーストリーム 130億m3

 →

なお、米国では12月20日、トランプ大統領の署名で「国防権限法」が成立した。

米国は、欧州のロシアへのエネルギー依存が深まることで「欧州の安全保障上の脅威」になると懸念しており、国防権限法で「ノルト・ストリーム2」への制裁を決めた。今後、明らかになるが、敷設事業に関係する企業が制裁対象になる見込み。

米国の決定を受け、敷設事業に参加するスイス拠点のAllseasは12月21日、作業の停止を発表した。

パイプラインの総延長約1200kmのうち、残りは約130kmとなっている。Allseas社の離脱で、事業を主導するガスプロムは関係企業に代行させる検討を始めた。

米国の制裁で、完成が来年後半にずれ込む可能性も取りざたされている。ラブロフ露外相は「対抗措置」も警告、ドイツのショルツ副首相兼財務相は「ドイツと欧州の主権への深刻な攻撃だ」と批判した。

2018年6月7日にBayerによるMonsanto買収が完了、MonsantoはBayerの100%子会社になった。買収額は総額625億ドル。

2018/3/23 EU、バイエルのモンサント買収を承認

原告   陪審員 裁判官判断
1 校庭の管理人   カリフォルニア 2018/8/10 Superior Court 2018/10/23
損害賠償 39百万ドル 39百万ドル
懲罰的損害賠償 250百万ドル 39百万ドル
2 Edwin Hardeman   カリフォルニア 2019/3/27 地裁 2019/7/16
損害賠償 527万ドル 527万ドル
懲罰的損害賠償 75百万ドル 20百万ドル
被害に対して15倍もというのは違憲
3 Pilliod 夫妻   カリフォルニア 2019/5/13 Superior Court 2019/7/25
損害賠償 55百万ドル 17 百万ドル
懲罰的賠償 20億ドル 69百万ドル 
陪審の懲罰的賠償は過大で憲法違反

現在、上の2番目の裁判の控訴審がサンフランシスコで行われている。

元の裁判では、裁判官は懲罰的賠償は高すぎるとして大幅に減額したが、「除草剤Roundupのラベルには発癌の危険が示されておらず欠陥である」との陪審員の判断については否定せず、有罪にした。

控訴裁でBayerは、Roundupが癌の原因ではないとし、無罪を主張した。

米EPAと司法省は12月20日、friend of the court brief (=amicus curiae:個別事件の法律問題で第三者が裁判所に提出する情報または意見)を提出した。

このなかでEPAは、EPAはRoundupのラベルを調べ、承認したこと、Roundupには発癌性はなく、このため、発癌性の危険を表示する必要性はないとした。判決は覆すべきであるとしている。

EPAは発癌性を認めず、製品ラベルには当然、発癌性の危険は表示されていない。しかし、カリフォルニア州は発癌性製品のリストに含めており、発癌性の危険が表示されていないのは違法となる。
原告側弁護士は、連邦法ではなく、州法を基に訴訟を起こし、一審の裁判官もこれを認めたもの。

州法に基づき、連邦法でのラベルを否定した形となっている。

EPAと司法省は、ラベルは法律で認めたもので、それと異なるやり方での使用は法律違反であるとし、州は農薬の販売や使用を制限することは出来るが、国が承認したラベルと異なるもの、追加したものを求めることは出来ないとしている。

ーーー

背景は以下の通り。

20153WHOの下部組織である国際がん研究機関(IARC)がRoundupの有効成分であるglyphosate グループ2Aヒトに対しておそらく発がん性がある)に分類した。グループ2Aは、「ヒトへの発がん性については限られた証拠しかないが、実験動物の発がんについては十分な証拠がある場合」である。

しかし、この判断は米国EPAやEU、豪州、ニュージーランド、ドイツ、日本、カナダなど各国の関係省庁の判断と異なる。

EPAは2017年12月、glyphosateは"not likely to be carcinogenic to humans"との判断を再確認した。

しかしながら、カリフォルニア州では上記IARCの判断に基づきglyphosateをカリフォルニアで発癌性があると知られる」"Prop 65" chemicals のリストに含めた。そして、 glyphosateを含む製品には警告ラベルを記載することを求めた。

プロポジション65(Prop 65)は、正式名称を「1986年安全飲料水および有害物質施行法」といい、1986年11月の環境投票活動として有権者によって制定された。
カリフォルニア州の市民および飲料水資源を、癌、先天異常または他の生殖害を引き起こすことが知られている化学物質から保護することを目的としている。

この結果、裁判では発癌性の警告がラベルになかったとして有罪判決につながった。

しかし、EPAは本判決後の本年8月、glyphosateを含む製品を登録している全社に手紙を送り、glyphosateはヒトへの発癌性はないとの判断に基づき、glyphosate製品ラベルにProp 65 の発癌性警告を載せることは「誤りで、ミスリーディングである」とした。

・法律では、農薬の "misbranding"は禁止されており、農薬のラベルはEPAの承認が必要である。
・EPAとしては、「誤りで、ミスリーディングである」発癌性警告を含んだglyphosate製品のラベルは承認しない。そのような警告はラベルから外す必要がある。
・連邦裁判所は既にカリフォルニア州がProp 65 labeling requirementを求めることを禁止している。(Nat'l Ass'n of Wheat Growers v. Zeise)


12月20日付の日本経済新聞は、サハリン1のLNG計画について、日本の官民が米エクソンモービルなどと共同で事業を推進する方針を固めたと報じた。

エクソンとロシア国営石油会社ロスネフチのほか、経産省と伊藤忠、石油資源開発、丸紅などが出資する「サハリン石油ガス開発」 などの企業連合が事業を推進する方針という。

デカストリ港で年産620万トンの生産能力を持つLNGプラントの建設を目指している。2027年にも生産を始め、事業費は1兆円規模になる見通し。ロシアは天然ガスの供給先を欧州からアジアにも広げたい意向で、日本もロシアとの関係を強化し調達を多様化する。

サハリン1プロジェクトの概要は下記のとおり。

事業主体 Exxon Neftegas 30%
 (米、エクソン・モービル子会社、オペレーター)
・サハリン石油ガス開発(株)(通称:SODECO)30%
ONGC Videsh(インド、20%)
Sakhalinmorneftegas-Shelf(ロシア、11.5%)
Rosneft
-Astra (ロシア 8.5%)
投 資 額 約120億ドル以上
開発鉱区 オドプト、チャイヴォ、アルクトン・ダギ
推定可採
埋 蔵 量
①石油   約23億バレル
②天然ガス 約4,850億立方メートル

サハリン石油ガス開発には、経済産業大臣 50.00%、伊藤忠グループ 16.29%石油資源開発 15.3%、丸紅 11.68%、国際石油開発帝石 5.74% が出資(端数異動あり)

チャイウォ油ガス田からは、2005年10月より、海上のプラットフォームや陸上の坑井基地・処理施設などの生産施設を用いて原油・天然ガスが生産されている。2015年4月には大偏距掘削で13,500mという世界最長記録を達成した。オドプト油ガス田では2010年9月から、アルクトン・ダギ油ガス田では2015年1月より各々原油生産を開始している。

原油とガスの輸送については下記の通り。

 <石油>サハリン島を東西に横断し大陸側に至るパイプラインで運搬、そこからタンカーで日本等へ輸出
 

 <ガス>

当初案は、北海道の内陸の一部(石狩平野)を経由する海底パイプラインにより運搬する予定であったが、 パイプライン敷設の漁業補償問題や、最大需要家になるとみられた東京電力も購入に難色を示したため、この計画は白紙となった。

その後ガスプロムと英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが主導する「サハリン2」(南端のプリゴロドノエまでパイプラインで運搬し、液化)にガスを販売する計画だったが、価格交渉が決裂し、自前でLNGを輸出する方針に転換した。

ガスの液化については、当初はロスネフチとエクソン両社で建設する方針だった。

両社は2013年にLNGプラントの建設計画をプーチン大統領に提示した。しかし、ウクライナ紛争を巡る対ロシア制裁など多数の要因が重なり、現在まで実現していない。

2018年10月報道では、両社にサハリン石油ガス開発とインドのONGCを加えた4社での建設に変更された。

LNGの生産自体は経済制裁の対象ではないが、ロシア企業は制裁により金融市場へのアクセスが制限されている。 サハリン石油ガス開発とONGC両社と組むことで、コストを分担できるほか、制裁に伴うリスクを和らげる狙いもあるとみられる。



サハリン計画については https://www.knak.jp/blog/2006-6-1.htm#sakhalin

サハリン1計画については 2018/7/25 ロシア国営石油大手 Rosneft、サハリン1の参加者を提訴

サハリン2計画については 2007/1/9 サハリン2計画 再スタートとその背景 

METIは10月17日、2023年までの世界のエチレン系・プロピレン系誘導品及び芳香族製品の需給(需要、生産能力、生産量)の動向をとりまとめ、発表した。

発表内容は次の通り。

これをもとに、商品別の需要・能力・生産に組み替えた。 商品別国別集計(国別の需要・能力・生産)

商品別国別の需要・能力・生産をグラフ化した。https://www.knak.jp/METI-world/meti-2019/index.html

 

特記事項:

1.中国の動向等

中国において新増設計画は引き続き計画・検討されている。135ヵ年計画(13-5計画)では、次期統合型エチレンコンビナートとして2020年以降を目途に7つの地域に集約、原料の多様化、環境問題、エネルギー循環型も含めた、新規エチレンプラントの構想が打ち出されている

2.米国のシェール革命の影響

米国においてシェール由来のエタンコンプレックスの更なる新増設計画が予定されており、2030年を目途に米国のエチレン製造能力が5千万㌧規模に拡大する見通しとなっている。

昨年度1Q以降の DowDupont /Chevron Phillips/ExxonMobil150万トンのメガコンプレックスの稼働開始以降、予想通り、米国がエチレン系石化品の一大輸出基地化し、懸念通りグローバルな石化需給、市況に影響を与え始めている。

同時にスタートした米中経済摩擦も大きく影響し、グローバルなトレードに大きな変化をもたらした。

米国では堅調な経済成長を基に内需の伸びも期待されるが、現状で既にエチレン換算で約800万トン、プロピレン換算で約100万トンの輸出超過となっており、今後稼働する新増設計画の大部分が輸出に向けられと予想され、特に誘導品としてのPEEGを中心とした輸出増が201920年以降のグローバルなマーケットに与える影響が懸念される。

また、エチレンでの輸出も増加傾向にあり、今後の輸出用ターミナルの増強次第で、更に増加するものと予想される。


概要は以下の通り。

1.世界のエチレン系誘導品

1)生産能力
2)需要

  3)世界のエチレン系誘導品の需給バランス(エチレン換算 百万トン)

    世界計 アジア計 うち中国 北米計 中東計
2017 能力 178.2 70.7 29.0 35.2 31.1
生産 154.0 59.0 25.0 33.9 28.1
需要 149.7 74.1 44.1 25.7 9.6
バランス 4.3 -15.1 -19.1 8.2 18.5
2023 能力 222.8 97.9 48.4 45.1 33.8
生産 193.4 81.3 39.1 42.4 32.3
需要 182.5 94.8 59.1 28.9 12.4
バランス 10.9 -13.5 -20.0 13.5 19.9

 

2.世界のプロピレン系誘導品

1)生産能力
2)需要

3)世界のプロピレン系誘導品の需給バランス(プロピレン換算 百万トン

    世界計 アジア計 うち中国 北米計 中東計
2017 能力 117.0 52.9 34.2 17.4 10.3
生産 104.4 55.5 29.5 14.7 9.5
需要 98.7 56.4 34.3 14.0 3.6
バランス 5.7 -0.9 -4.8 0.7 5.9
2023 能力 147.6 86.7 50.8 19.8 12.0
生産 130.4 76.5 43.1 15.9 11.1
需要 120.0 71.8 45.5 15.2 5.0
バランス 10.4 4.7 -2.4 0.7 6.1


3.主要製品の需給 (総能力、総生産と地域別需要)

   PSは生産が需要を常時大きく下回っており、元資料に誤りがあると思われる。
   
   

他の商品のグラフ 及び商品別の国別の需要・能力・生産のグラフは下記にあります。

https://www.knak.jp/METI-world/meti-2019/index.html

キリスト教福音派は米人口の4分の1を占めるとされる最大の宗教勢力で、トランプ米大統領の支持基盤となっている。

福音派の指導的牧師として保守派に強い影響力を持ち、トランプ氏を支持したBilly Graham(2018年2月に死去)が創刊した雑誌Christianity Today は12月19日、「トランプは罷免されるべきだ」(Trump Should Be Removed from Office)と題する論評を掲載した。
 
 https://www.christianitytoday.com/ct/2019/december-web-only/trump-should-be-removed-from-office.html

内容は次の通り。

本誌の創設者の Billy Graham は、Christianity Today は福音派のクリスチャンが信仰の面からニュースを理解するのを助けるとした。
トランプ大統領の弾劾は重要な事件だ。

大統領は政敵の評判を落とすため、自分の権力を使って外国首脳に働き掛けた。そうした行為は憲法違反というだけでなく、極めて不道徳的だ。

大統領は政権で道徳概念を捨て去った。

福音派支持者は、彼の最高裁任命、宗教の自由の保護、経済運営などを支持する。

しかし、弾劾のヒアリングで、個人の利益のため権力を乱用し、憲法上の誓約を裏切った。大統領の道徳欠如が明らかになった。大統領制を傷つけ、米国の威信を傷つけ、米国民の精神と未来を傷つけた。業績よりも道徳的、政治的危険の方が大きい。

トランプ氏を上院で罷免すべきか、次の選挙で落選させるべきかは、慎重な判断を要する問題だ。トランプ氏の罷免は党派ではなく十戒の創造主への忠誠心が試される問題となっている。
That he should be removed, we believe, is not a matter of partisan loyalties but loyalty to the Creator of the Ten Commandments.

これに対し、大統領は12月20日、「極左雑誌だ」「もう読まない」などとツイッターで反撃した。「私ほど福音派のために尽力した大統領はいない」とも述べた。

A far left magazine, or very "progressive," as some would call it, which has been doing poorly and hasn't been involved with the Billy Graham family for many years, Christianity Today, knows nothing about reading a perfect transcript of a routine phone call and would rather have a Radical Left nonbeliever, who wants to take your religion & your guns, than Donald Trump as your President.

No President has done more for the Evangelical community, and it's not even close. You'll not get anything from those Dems on stage. I won't be reading ET again!

I guess the magazine, "Christianity Today," is looking for Elizabeth Warren, Bernie Sanders, or those of the socialist/communist bent, to guard their religion. How about Sleepy Joe?
The fact is, no President has ever done what I have done for Evangelicals, or religion itself!

Billy Grahamの息子のFranklin Grahamは、この雑誌を創刊した父はこの論評に同意しなかっただろう、失望しているだろうと述べた。父は真のトランプを知っており、彼を信じ、彼に投票した。トランプが国民に必要な人間だと信じていたとも述べた。

CT Magazine released an editorial saying Trump should be removed from office & they invoked my father's name, so I felt I should respond.
Yes, Billy Graham founded Christianity Today; but no, he would not agree with their piece. He'd be disappointed.

I hadn't shared who my father Billy Graham voted for in 2016, but because of CT Magazine's article, I felt it necessary to share now.
My father knew real Donald Trump, believed in him & voted for him. He believed Donald J. Trump was the man for this hour in history for our nation.

Franklin Grahamは「トランプ氏こそ神から遣わされた大統領だ」と述べていた。

ーーー

福音派は聖書の信仰に目覚めた保守的なプロテスタントの総称。

Billy Grahamは福音派を代表する指導者で、全米各地にとどまらず、世界185の国と地域で伝道し、2億を超える人々に教えを説いたとされている。トルーマン以降、歴代すべての大統領と親しい関係を結んだことでも知られている。

大統領選挙では、トランプ候補が福音派から圧倒的多数の支持を集めたことが勝利を決定づける要因のひとつになった。福音派からの支持率は81%に上った。

トランプ候補は、最高裁をはじめ連邦判事に保守派を選ぶと公約し、妊娠中絶などに強く反対した。イスラエルのアメリカ大使館をエルサレムに移転すると公約し、その通りしている。

アメリカの税法には教会など免税措置を受ける非営利団体が、選挙で特定候補を応援したり反対表明したりすることを禁じる規制(ジョンソン修正条項)があるが、トランプ大統領は今この条項を撤廃して、宗教団体による政治参加を広げるよう目指している。


ジョンソン首相は12月20日、EUと合意した離脱協定案を国内法に反映する関連法案を提出した。 前回の法案に、EUとのFTAの締結が間に合わない場合でも、来年12月末までの移行期間を延長したり、EU法の英国への適用停止日を延期したりできなくする条項を付け加えた。

下院は12月20日、離脱関連法案の第二読会を行い、法案の基本方針を 359 対 234 で可決した。その後、日程を決める議事進行動議を 353 対 243で可決した。

この後、来年1月6日と7日に委員会審議が行われ、1月8日に第三読会で最終審議を行う。

与党保守党は今回の総選挙で過半数を得ており、来年1月31日の離脱は確実になったとみられる。

議会の法律審議は次の通り行われる。

一読会(First Reading 本会議で法律案の題名朗読
読会(Second Reading 本会議で法律案の基本方針審議(その後は、基本方針から外れる修正案は許されない)
議事進行動議Programme Motion その後の法律案審議の日程表決
委員会段階(Committee Stage 逐条審査
第三読会(Third Reading 本会議での法律案最終審議


10月の離脱関連法案の審議では、10月22日の
「第二読会」議案を329対299で可決した。 
しかし、
離脱関連法案を早期に成立させるために政府が提出した「議事進行動議」が308対322の僅差で否決された。
否決後、ジョンソン首相は立法手続きを中断した。

2019/10/23 Brexit の延期 濃厚に

その後、総選挙となり、今回の圧勝となった。

議席の推移と今回投票結果:

解散

2017/6/8
選挙
今回
解散前
今回
選挙
12/20
賛成 反対 棄権
保守党 330 317 298 365 353 10 2
民主統一党(NI) 8 10 10 8 7 1
(与党)

(327) (308)
労働党 232 262 243 202 6 162 32 2
スコットランド国民党(Scot) 56 35 35 47 45 2
自由民主党 8 12 20 11 11
独立党 1 0 0 1 1
独立グループ 0 24
Change UK 5 0
シンフェイン党(NI) 4 7 7 7 7
ブライドカムリ(Wales) 3 4 4 4 4
緑の党 1 1 1 1 1
社会民主労働党(NI) 3 0 0 2 2
北アイルランド同盟党(NI) 0 0 0 1 1
アルスター統一党(NI) 2 0 0 0
無所属 1 1 0 0
議長 1 1 1 1 1
空席 0 0 2 0
合計 650 650 650 650 359 234 52 5
議長と副議長(3人:未選任)、シンフェイン党(7人)は投票せず。
付記 2020/1/8 副議長が選任された。保守党から2人、労働党から1人となった。

ーーー

英議会下院は12月17日に再開し、初日慣例の議長選任(Sir Lindsay Hoyle が再任)と議員による宣誓が行われた。

総選挙前の10月31日にJohn Bercow下院議長が議員を引退した。後任の議長の選任は11月4日に行われ、労働党のSir Lindsay Hoyleが議長に選任された。

北アイルランド選出のシンフェイン党はこの国家元首(エリザベス2世)への宣誓を拒否し、登院をせず、議員歳費も受け取っていない。

Sir Lindsay Hoyle議長選任で、労働党は202議員となった。


エリザベス女王は12月19日にジョンソン政権の施政方針を読み上げた。

来年1月末のEU離脱が最優先課題とあらためて表明し、離脱の移行期間を延期しないことを明言した。

「EU離脱を達成することが優先課題であり、英国は1月末に離脱する」
「英国を優柔不断の締め付けから解放し、人々や企業の信認を取り戻す。離脱後の移行期間を2020年以降に延期する可能性を排除し、これ以上の躊躇や遅れを回避する」

また、離脱後はFTAに基づくEUとの将来関係を模索するとともに、EU以外の主要経済国とも通商交渉を開始するとした。
海外からの移民についてはポイント制を導入し、英国に寄与する熟練労働者を優遇するとしている。


移行期間の11カ月内にEUとのFTAを締結し、発効させなければ、2021年1月にEUとの間で関税が発生することとなり、合意なき離脱に似た事態が発生する。

移行期間は2020年12月末までとなっており、双方が合意すれば移行期間の延長を2年までも認められる。
但し、移行期間中は英国はEU法に従うと共に、EU予算への拠出も継続する。一方、加盟国としての権利は失う。

EUとしては、英国が簡単に、有利に離脱出来た場合、今後、離脱を希望する加盟国が出る可能性があるため、英国に厳しい姿勢を示している。

しかし、FTAが期間内に発効せず、合意なき離脱 に似た状況になることはEUにとっても好ましくない。
ジョンソン首相は、これを盾に、2020年中のFTA締結・発効をEUに求めるもの。

トランプ大統領の弾劾で大騒ぎの米国議会は暫定予算の期限切れ直前の12月19日に予算案(2019/10~2020/9)を可決し、大統領に送った。トランプ大統領は署名するとみられ、政府機関の一部閉鎖は回避される。

付記 大統領は12月20日に署名し、予算は成立した。

予算を巡っては、7月22日に、今後2年間の連邦政府の歳出と債務の上限について与野党で合意した。2020会計年度(2019年10月~20年9月)と21会計年度の歳出上限を計3200億ドル引き上げるほか、債務上限については、2021年7月末まで2年間棚上げする。

2019/7/25 米 歳出上限と債務上限を引き上げ 

しかし、具体的な予算についてはトランプ大統領が選挙公約に掲げる「国境の壁」の建設費などで妥協点を見いだせておらず、進展がなく、9月27日に米連邦政府の支出を2019年のレベルで11月21日まで手当てするつなぎ予算が通った。

2019/9/30 米つなぎ予算が成立、11月21日まで協議継続  

トランプ大統領は11月21日、12月20日までの暫定予算案に署名、暫定予算成立により政府機関閉鎖は寸前で回避された。

2019/11/25 トランプ大統領、暫定予算案に署名 、政府閉鎖を回避

その期限が近づくなか、大統領弾劾の議論の最中、議会は数週間にわたり超党派協議を行ない、政権と暫定合意した。

法案の規模は1兆4000億ドルで、社会保障費など「義務的」経費は今回の法案には含まれない。歳出増は財政赤字の拡大を招き、2019会計年度の財政赤字は9840億ドルとなる。議会予算局(CBO)は、今後10年の財政赤字の年間平均を1兆2000億ドルと予想している。

国防総省の予算は、前年度から220億ドル増額の7,380億ドルとなった。トランプ大統領が目玉政策として掲げる宇宙軍創設に関する予算も盛り込まれた。

トランプ大統領はメキシコ国境の壁建設費として50億ドルを要求していたが、予算案に盛り込まれたのは前年度並みの13億7000万ドルにとどまった。但し、民主党が反対していた軍事予算の壁建設への転用が可能とすることで折り合った。

下記が盛り込まれた。

非軍人の給与を平均で3.1%引き上げ。

若者の喫煙対策として、たばこの最低購入年齢を現行の18歳から21歳に引き上げる措置。
米食品医薬品局(FDA)が半年以内に規制案を策定し、3年をかけて州当局と連携して新たなルールを導入する。

オバマケア(医療保険制度改革法)の財源を支える目的で創設されたものの、導入見送りとなった税などの廃止。

地方自治体が来年11月の大統領選および議会選挙の準備に充てる費用.。サイバー攻撃に対するインフラ強化などに充てる。

数十年間凍結されてきた銃犯罪に関する研究予算。

民主党は裁量的経費が現行水準より440億ドル増えることになったと成果を強調した。ペロシ下院議長は、「全ての民主党員は、米国民の健康や金融面の安定、福利にとって大きな勝利となったこの力強い歳出パッケージを大いに誇りに思ってよい」と話した。


下院は12月17日、各省庁の予算のうち、国防総省関連歳出法案と非国防省庁などの歳出法案に分けて投票し、それぞれ可決した。

第一の法案は、国防総省、国土安全保障省、商務省、司法省、財務省その他の歳出

共和党 民主党 無所属 合計
賛成 130 150 280
反対 62 75 1 138
棄権 5 7 12
合計 197 232 1 430

下院総数 435、現在 欠員 4、民主党1名欠席

第二の法案は、農務省、労働省、内務省、運輸省、国務省その他の歳出
共和党の反対が多い。

共和党 民主党 無所属 合計
賛成 79 218 297
反対 112 7 1 120
棄権 6 7 13
合計 197 232 1 430


2法案は上院に送られ、12月19日に可決された。

第一の法案

共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 46 34 1 81
反対 4 7 11
棄権 3 4 1 8
合計 53 45 2 100

第二の法案
こちらも共和党の反対が多い。

共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 31 39 1 71
反対 21 2 23
棄権 1 4 1 6
合計 53 45 2 100

米下院は12月18日の本会議でトランプ大統領のウクライナ疑惑を巡る弾劾訴追決議案を賛成多数で可決した。

「権力乱用」の弾劾条項は賛成230、反対197で可決した。

  共和党 民主党 無所属 合計 民主党
賛成 0 229 1 230
反対 195 2 197 Peterson
、Van Drew
present 1 1 Gabbard
棄権 2 1 3
合計 197 233 1 431

議会調査への協力要請を拒否するよう政権幹部らに指示した「議会妨害」の条項は賛成229、反対198で可決された。

  共和党 民主党 無所属 合計 民主党
賛成 0 228 1 229
反対 195 3 198 Peterson、Van Drew、Golden
present 1 1 Gabbard
棄権 2 1 3
合計 197 233 1 431

注:下院総数 435、現在 欠員 4

共和党は棄権の2名を除き、全員が反対した。

民主党からは下記議員が賛成せず。

Collin PetersonとJeff Van Drewの2人は、10月31日に下院本会議でトランプ大統領に対する弾劾調査の手続きを定めた決議案 に民主党から反対した2名である。
Jeff Van Drewはその採決の後、「党派を超えた支持がなければ、弾劾調査は国家をさらに分断し、最終的には上院で却下されるだけだ」と主張した。
今回、
数日内に民主党を離脱するかどうかを発表すると述べた。12月13日にホワイトハウスでトランプ大統領と面会している。

Collin Petersonは大統領は罪を犯していないと述べた。

Jared Golden 議員は「権力乱用」では賛成、「議会妨害」では反対した。

Tulsi Gabbard議員は両議案でいずれも、「出席」と返事し、棄権した。

大統領が弾劾訴追されたのは米史上3人目で、社会の分断が深まる同国で、二大政党間の対立が一段と激化する見通し。

2020年1月上旬には、上院での弾劾裁判に移るが、上院は、与党・共和党が優勢のため、罷免に至る可能性は低いとみられている。

付記

上院共和党は短期に否決する構えだが、下院のペロシ議長は政権高官を証人として招致することなどを求め、対立している。
民主党は裁判の公平性確保を求めており、上院が裁判の手続きを決めるまで、弾劾決議を上院に送付しない。また、弾劾裁判で検事役を務める下院議員の指名もしていない。

米Merckと仏Sanofiは12月9日、別々に、がん治療薬を手掛ける同業の買収を発表した。

米Merck (ドイツのMerckと区分するため、米加以外での社名は MSD )は中堅の米国のArQule を27億ドルで、Sanofiは米の新興メーカー Synthorxを25億ドルで買収する。

前者は時価総額の1.32倍、後者は2.82倍と、大幅なプレミアムをつけた買収である。売り手市場となっている。

1) Merck / ArQule

ArQule は多種の癌と非腫瘍学的兆候に関与する生物学的経路に焦点を当て、治療法の研究・開発を行うバイオ医薬品会社である。

臨床段階のパイプラインは、標的とされる患者集団に属する約4つの候補薬から成り立つ。

「ARQ 531」は野生型およびC481S変異型のブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の強力且つ可逆的な二重阻害剤である。
「ARQ 092」はプロテインキナーゼB(AKT)、セリン/スレオニンキナーゼの強力で選択的な阻害剤である。
「ARQ 751」は、AKTの強力且つ選択的な阻害剤で、AKTを保有する固形腫瘍、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)の臨床開発段階にある。
「ARQ 087」は、線維芽細胞を優先的に阻害するよ
うに設計されるマルチキナーゼ阻害剤である。

Merckは特に「ARQ 531」を重視している。


なお、第一三共は2008年11月にArQule との間で抗がん剤の研究開発で提携することに合意した。
契約一時金は計7500万ドルで、第一三共が重点領域とするがん治療領域の研究開発パイプラインの強化が狙いである。

ArQuleが米国で開発中の固形がんを対象とするARQ197のアジアの一部(日本・中国・韓国・台湾)を除く全世界での開発および販売権を取得するライセンス契約と、ArQuleが所有する新規キナーゼ阻害薬を探索する技術(AKIP)を用いた共同研究契約からなる。

ARQ197は、肝細胞増殖因子HGFの受容体であるc-Metを選択的に阻害する新規機序の低分子化合物。

第一三共は2015年12月の報告で、ArQuleとの提携による肝細胞癌治療薬チバンチニブ(ARQ197)に期待を示しているが、2017年2月に、第3相臨床試験において、全生存期間の延長を達成することができなかったと発表した。

2) Sanofi / Synthorx

自然界のすべての生物の遺伝子情報は、A、G、C、Tの4種類の文字で表わされるが、Floyd Romesberg博士が率いるサンディエゴにあるScripps Research Instituteと博士が設立したSynthorxの研究チームが、自然界には無い2種類の遺伝子文字を追加した細菌を作成し、異質なたんぱく質を作り出すことに成功した。

博士は、「地球上の多様な生命はたった2つの塩基対、A-TとC-GからなるDNAでコードされている。われわれが作成したのは、この2対に加えて第3の人工の塩基対が安定して組み込まれた生物だ」と述べた。

Synthorxのプロジェクトの1つでは、抗がん剤「インターロイキン-2」の新しいバージョン(THOR-707)を作ることを目指している。インターロイキン-2は複数の厄介な副作用を伴うが、半合成のバクテリアが鍵となるポイントにおいて普通で無い成分に入れ換えることで、問題を解決できるかもしれないとされる。

Sanofiはこれを大きく評価しており、これと同社の製品とのコンビネーションを期待している。

ーーー

Sanofiは買収資金を確保するため、提携相手の米Regeneron Pharmaceuticalsの株式を売却する可能性があることを明らかにした。

Sanofiはまた、血友病や乳がん、多発性硬化症、希少疾患など6つの有望な治療分野に照準を定め、糖尿病と心臓疾患の研究をやめ、生産性を高めることで2022年までに20億ユーロの節減を見込むことを明らかにした。

「画期的なイノベーションがより難しくなりつつあり、効率を高めてチャンスのある分野に経営資源を投入する必要があることを認識している」としている。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

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