2007年3月アーカイブ

1)公正取引委員会、企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針発表 

公正取引委員会は328日、企業合併の可否を審査する際に使う新しいガイドラインを発表、同日から新指針の運用を開始した。

企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針  
別添 過去の企業結合審査の実績について  

1月31日に一部改正案を自民党の委員会に示し、了承を得た。
その後、一般から意見を募集していたもの。

内容は下記参照

 2006/12/19 合併審査基準の公取委案  
 
2007/2/5  公取委、「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」の一部改正案を発表 
  

問題は具体的な事案で公取委が当該製品のアジアの能力などをどう扱うかである。

ーーー

2)インドネシアのStyrindo Mono Indonesia

豊田通商は、インドネシアのスチレンモノマー製造・販売子会社、PT.Styrindo Mono Indonesia(SMI) の全株式を、エチレン供給会社のChandra Asriに売却することを決めた。売却価格は9,500万ドル。
 
国際競争の激化に伴い、安定した原料の確保と販路の拡大が、課題となっているなか、原料のエチレンを製造しているChandra Asriに売却するのが最適と考えた。

Styrindo Mono Indonesia はトーメンが出光石油化学、サリム・グループ、ビマンタラなどとを設立したもので、現在の能力はEB 44万トン/SM 40万トン。

 2006/4/28 インドネシアの石化事業への日本企業の参加 

当初の出資比率はトーメン75%、出光5%、ビマンタラ10%、サリム10%であったが、2006年4月にトーメンが豊田通商に吸収合併された後は、一時、豊田通商84.62%PT Bimakima 7.69%、Salim Chemicals 5.13% ほかとなっていたが、その後、豊田通商100%となった。

豊田通商は、グループ事業価値最大化の観点から、事業ポートフォリオの見直しと経営資源の再配分を進めており、赤字のStyrindo Mono Indonesiaは整理の対象となっていた。

    最近の業績 : (単位:US$ 1,000)

  平成17 年12 月期
売上高      344,591
営業利益      ▲27,410
当期純利益     ▲127,721

売却先のChandra Asri については下記参照

 2006/4/26 インドネシアのエチレン計画への日本企業の参加-1 

海外の各社のAnnual Report が順次発表されている。

DuPont の部門別営業損益(PTOIpre-tax operating income)で不思議なことを見つけた。

DuPont200110月に医薬部門をBristol-Myers Squibb 78億ドルで却している。
しかし部門別PTOI (特別損益を除く)で「医薬部門」で多額の益が出ている。(単位:百万ドル)

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
 263  133   58  468  548  681  751  819

Dupontptoi

* Textiles & Interiors 部門のINVISTA 2004年にKoch Industries に売却

DuPont 1950年代終りから医薬品開発に注力したが、新規製品の登録取得・販売の能力がなかった。
1969年にEndo Laboratories を買収して血液溶剤Coumadin(R)を上市したが、業績には寄与しなかった。

1991年にMerck との50/50JVDuPont Merck Pharmaceutical を設立し、勢いがついた。パーキンソン病の薬Sinemet(R)、心臓画像診断剤Cardiolite(R)、抗高血圧薬のCozaar(R)Cozaarチアジド系利尿剤 との合剤 Hyzaar(R)などが上市された。
Cozaar Hyzaar Merckで販売された。

1998年にDuPont はDuPont MerckのMerck 持分を買収し、同社をDuPont Pharmaceuticals と改称した。その後、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)用の薬としてSustiva (R) が上市された。

しかし、DuPont の力をもっても医薬事業で生き抜くのは難しかった。
1999年から2000年に営業利益が半減しているが、これは販売減と、研究開発費・販売費の増大によるものである。

2001年、同社は世界の事業の構造改革を実施した。4月に競争力を失ってきたポリエステルおよびナイロン工場の閉鎖を発表、3カ月後にはポリエステル事業の一部を売却した。
同年6月、
DuPont PharmaceuticalsBristol-Myers Squibbに売却するという決断をした。医薬品事業に必要な巨額投資は、同社にとっても、あまりにリスキーだったからである。

売却額は78億ドルで、税引き後利益は38億6,600万ドルである。
但し、条件として、
Cozaar Hyzaar の権利は DuPont が維持し、Merckにライセンスした。
現在の「医薬部門」の利益はこの特許料である。

多額の研究開発費・販売費を投じて事業を続けるよりも、過去の成功品のライセンス料の方がはるかに利益が大きいという実態は、医薬事業の難しさを表している。

BASFは21日、農産物のバイオテクノロジー分野でモンサントとの提携に合意したと発表した。

両社は合計で15億ドルの研究開発費を投じ、収穫量が多く、干ばつなど異常気象への耐性も強い農産物を共同で研究・開発する。

対象となるのは、今後も世界的に大きな需要が見込まれるトウモロコシ、大豆、綿花、菜種(canola:セイヨウカブラナ)の
種類の農産物。遺伝子組み換えの技術などを持ち寄り、共同で商品化を早める。
201
0代の最初の5年をメドに第1弾の販売を目指す。

有望な遺伝子が見つかれば相手に通知し、共同で開発する。開発費は50/50で負担する。
商品化した場合、製品はモンサントの販売網で販売する。
販売から得られる収益は、モンサントが60%、BASFが40%の比で配分する。

ーーー

BASFの農業科学部門 BASF Plant Science は1998年に設立され、モンサント、シンジェンタと並んで遺伝子組み換え作物の開発で世界をリードしている。
2006年にはオーストラリア分子植物育種協同研究センターとの協力関係を拡充し、オーストラリアでの干ばつ耐性や真菌病抵抗性のGM小麦を共同開発している。

ーーー

モンサントは1901年に設立され、最初はサッカリンを製造した。
(創業者のJohn F. Queeny
が妻の名前Olga Monsanto Queenyの旧姓を社名にした)

1945年に除草剤2.4D、1976年に除草剤Roundupを商業生産した。

1985年に医薬会社のG.D. Searle & Co (1888年設立)を買収し、医薬部門とした。

1997年に化学品、繊維部門をスピンオフし、Solutia Inc. とした。

2000年、Pharmacia & Upjohn と合併し、Pharmacia Corporation となった。

2002年、旧モンサントの農薬部門がPharmacia からスピンオフし、新モンサントとして独立した。
Pharmacia 2003年にPfizer に吸収合併されている。)

新モンサントは2005年に野菜や果物の種子のグローバルリーダーの Seminis, Inc. や、綿花の種子メーカーStonevilleを買収している。

Hensen2_1  

 

経済産業省は23日、2006年末時点の我が国の主要石油化学製品生産能力調査の結果を発表した。

今後輸出が減少することが予想されるため、国内販売数量のみと比較すると、各製品ともかなりの過剰能力である。

1.エチレンEthylenecapa

  定修年 スキップ年
東ソー   493   527
昭和電工   615   691
東燃化学   478   515
三菱化学  1,301  1,422
山陽石化(旭化成)   443   504
丸善石油化学   480   525
京葉エチレン   690   768
住友化学   380    415 
大阪石化(三井化学)   455   500
三井化学   553   612
新日本石油化学   404   443
出光興産   997  1,101
合計  7,289  8,023
 

昭和電工・大分で改造工事で能力増(+38)
三菱化学・鹿島2号機で原料多様化工事で能力増(+25)

  * 2006年実績
   生産 7,525、エチレン換算輸出 2,295、差引国内販売対応 5,230千トン   
   他にエチレン換算輸入 489千トン、差引エチレン換算内需 5,719千トン

 2006/9/22 「エチレン業界の変遷

2.ポリエチレン

チッソ    63
日本ユニカー   300
日本ポリエチレン  1,184  
東ソー   308
三井化学     5
プライムポリマー   489
三井・デュポンポリケミカル   170
日本エボリュー   240
住友化学   305
丸善ポリマー   111
宇部丸善ポリエチレン   197
旭化成ケミカルズ   283
合計  3,656
Pecapaall
   
社名 LDPE LLDPE
日本ユニカー   180  
日本ポリエチレン   345   364
東ソー   152    31
プライムポリマー     145
三井・デュポンポリケミカル   170  
日本エボリュー     240
住友化学   172   133
宇部丸善ポリエチレン   147    50
旭化成ケミカルズ   120  
合計  1,286   963
   2,249
Pecapald
   
チッソ    63
日本ポリエチレン   475
東ソー   125
三井化学    5
プライムポリマー   246
丸善ポリマー   111
旭化成ケミカルズ   116
合計  1,142
Pecapahd
   
社名 LL/HD併産
LL HD
日本ユニカー   110    10
プライムポリマー    11    87
旭化成ケミカルズ      47
合計   121   144
   265
日本ポリエチレン、
併産設備をLL、HDに専用化
Pecapalhd
   
     *2006年出荷実績 (千トン)
  国内 輸出 合計 能力
LDPE  1,572   228  1,800  2,370
HDPE   971   116  1,087  1,286
  他に次の輸入あり 
        (千トン)
レジン(LD)   201
レジン(HD) 16
PE袋 480
PEフィルム 121

 2006/9/29 「日本のポリオレフィン業界の変遷」 


3.PPPpcapa

浮島ポリマー   127
サンアロマー   218
日本ポリプロ  1,082
住友化学   386
プライムポリマー  1,071
宇部ポリプロ    90
徳山ポリプロ   200 
合計  3,174

*2006年出荷実績 (千トン)

国内 輸出 合計
 2,756   321  3,077

 2006/9/29 「日本のポリオレフィン業界の変遷」 


4.SMSmcapa

日本スチレンモノマー
(新日鐵化学65%/東ソー35%)
  232
太陽石油化学
04/1/1 三井化学から譲受け
  335
日本オキシラン
(住友化学60%/Lyondell 40%
  412
千葉スチレンモノマー
(電気化学60%/住友化学40%)
  270
電気化学   240
新日鐵化学   190 
出光興産   550
三菱化学   371
旭化成   803
合計  3,403


*2006年出荷実績 (千トン)

国内 輸出 合計
 1,949  1,405  3.354

  2006/4/22  「スチレンモノマー業界」 

5.PSPscapa

日本ポリスチレン
(住友化学/三井化学)
  162
大日本インキ化学   131
東洋スチレン
(電化/新日化/ダイセル)
  278
PSジャパン
(旭化成/三菱化学/出光)
  445
合計  1,016

*2006年出荷実績 (千トン)

国内 輸出 合計
  876   22   897

PSは構造改革の優等生で、メーカーも4社となり、安値の輸出はほとんどやらず(中国のダンピング調査ではシロとなったが)、能力も内需に合わせ縮小した。

2006/10/7 「日本のPS業界の変遷」 

しかし、これが最後の業界再編に障害となった。
2004年6月、PSジャパンと大日本インキ化学のPS事業と統合を発表したが、公取委は競争を実質的に制限する恐れがあるとの指摘を行い、計画は白紙に戻った。

国内の製造業者は4社であり,これら国内の競争業者に供給余力がほとんどないことと,輸入品については輸出国に供給余力がない状態が当分継続するというのが理由である。

2006/02/20  競争政策研究会の「企業結合審査における改革の進展状況と今後の課題」  


6.VCMVcmcapa

テック   391
東ソー  1,480
トクヤマ   330
京葉モノマー   200
カネカ   540
鹿島塩ビモノマー   600
合計  3,541

*2006年出荷実績 (千トン)

国内PVC用  1,373
国内その他用    42
輸出PVC用   744
VCM輸出   888
合計  3,048

  2006/9/18 「日本のVCM業界の変遷


7.PVCPvccapa

徳山積水   116
テック   334
大洋塩ビ   564
東ソー    28
新第一塩ビ   292
信越化学   550
カネカ   466
合計  2,351

*2006年出荷実績 (千トン)

国内 輸出 合計
 1,364   744  2,109

VCMの場合、能力 3,541千トンに対して、国内向けPVC用その他は1,415千トンと40%に過ぎない。
PVCの場合も、能力2,351千トンに対し、国内販売はその58%である。

 2006/9/13 「日本のPVC業界の変遷と現状」 

但し、PVCの場合には、米国などと比較すると、潜在需要は大きい。これを顕在化できるかどうかが問題である。

 2006/3/3 「日本の塩ビ事業」 参照 

デュポンは20日、同社のSentryGlas(R) Plus 建築用合わせガラス中間膜がGrand Canyon の新名所「Skywalk」に採用されたと発表した。

米アリゾナ州のGrand Canyonに、絶壁から突き出したガラス製の展望台から約1,200メートル下の谷底が望める「Skywalk」が完成し、28日から一般公開される。
http://www.grandcanyonskywalk.com/Japanese/home.html

「Skywalk」はGrand Canyonの観光拠点のSouth Rim の西方にあるHualapai インデアン居住地のEagle Point に完成した。絶壁から20メートル余りせり出したU字形展望台の土台は鋼鉄製で、床と壁が厚さ約5センチの透明ガラスに囲まれている。
見学者は空中を歩くような感覚で、大峡谷の360度の展望を味わえ、1,200メートル下のコロラド川を見ることが出来る。総重量は480トンで、秒速40メートル以上の強風にも耐えるという。

金属製のローラー上で本体をゆっくり移動させ、U字型の先端が崖から約20メートル張り出した位置で、地中深く打ち込んだ4本の鉄軸に溶接した。張り出す部分とのバランスを取るため、反対側には約230トン分の鉄の重りが使われた。

Hualapai Indianの許可を得たラスベガスの開発業者が 3,000万ドルを投じて建設したもので、展望台は一度に120人までが15分間見学でき、入場料は1人25ドルとなっている。

Grandcanyon

ーーー

発表によると、幅およそ2.8メートル、長さ21メートル、厚さ5.4センチのガラス床は、多層構造のガラス建造物で4層のSaint-Gobain社のDiamant(R)熱処理ガラス(8mm x 1+10mm x 3 )の間に1枚ずつ、計3枚のSentryGlas(R) Plus 建築用合わせガラス中間膜を貼りあわせたもの。

SentryGlas(R) Plus 建築用合わせガラス中間膜はデュポンが開発したアイオノマー樹脂フィルムで、エチレン-メタクリル酸共重合体やエチレン-アクリル酸共重合体の分子間を、ナトリウムや亜鉛などの金属のイオンで分子間結合した特殊な構造を有する樹脂。

軽量なのに強靭ポリビニルブチラールPVBの約5倍で高い安全性、紫外線カットの省エネ特性、金属との接着力が高いこと、透明度が高いことなどから、フレームレスのデザイン性の高い構造用あわせガラスを製造することを可能にした。

これまで世界中の数多くの革新的で受賞歴のある建造物の材料に採用されており、ニューヨーク市のロックフェラーセンターのTOP OF THE ROCK展望デッキの極めて透明な展望パネル、フロリダ州マイアミにある連邦裁判所の耐風・防爆窓ガラス、世界に多数あるアップルストア内のガラスの階段と手すり、ユニークなデザインが特徴的な中国のShanghai Oriental Arts Center などで使われている。

 

NOVA ChemicalsとINEOS は22日、NOVAの北米のSM、PS事業を両社の欧州の50/50JVのNOVA Innovene に移管することで合意したと発表した。今後手続きを経て、第3四半期に拡大JVが発足する。

移管するのはNOVAの子会社STYRENIXで、テキサスとカナダのオンタリオにあるSM事業、米国とカナダのPS事業のほか、PS系のポリマーのNASR) Styrene Methylmethacrylate copolymer)ZYLARR)(NASの 耐衝撃性改質グレード)、DYLARKR) スチレン-無水マレイン酸共重合体)を含む。

現在の能力は以下の通り。(単位:千トン)

  SM PS
Montréal, Quebec, Canada     55
Sarnia, Ontario, Canada   432  
Bayport, Texas, USA   568  
Belpre, Ohio, USA    145*
Channelview, Texas, USA   182#  
Chesapeake, Virginia, USA (閉鎖)    136*
Decatur, Alabama, USA    193
Monaca, Pennsylvania, USA    198*
Painesville, Ohio, USA     39
Indian Orchard, Massachusetts, USA    150*
合計  1,182  916

 * は特殊品を含む。
 # は持分(今回の移管の対象外)

ーーー

NOVAのCEOは以前から、「米国のスチレン業界は設備を廃棄し、統合を検討し、赤字垂れ流しを止めるために動き出す必要がある」と述べており、2006年1月にはバージニア州のチェサピーク工場を閉鎖すると発表し、6月にStyrenix事業部を別会社にすると発表した。

NOVAは事業を「エチレン & PE」、「発泡PS & 機能製品」、及び「Styrenix」の3つに区分しているが、Styrenixはコア事業ではなく、将来、売却するか、スピンオフすると見られていた。
  2006/7/27 「
欧米でもPS事業は苦境」 

StyrenixのEBITDA(税引前利益+支払利息+減価償却費)は赤字となっている。(単位:百万ドル)

  2005 2006
SM   -61   -17
PS   -18   -39
Nova Innovene   -64   -18
Styrenix   -143   -74

米国ではダウも基礎部門の中のポリスチレン(とポリプロピレン)について分社化して他社とのJVにすることを検討していると発表している。(その後、基礎部門全体のJV化の噂も)
 2007/2/3 「ダウ、PSとPP事業のJV化を検討」  
 2007/3/19 「Dow JV 

ーーー

NOVA Innovene2005年にNOVAが欧州のPS事業を出してBPとの50/50JVとして設立したその後、BPが分離したInnoveneをIneosが買収した。

現在のNOVA Innoveneの能力は以下の通り。(千トン)

  PS EPS
Breda (オランダ)   90   90
Marl (ドイツ)  180   85
Ribecourt (フランス)  -   90
Trelleborg (スウェーデン)   85  -
Wingles (フランス)  185   85
合計  540  350

2006年にフランスBerreのEPS(65千トン)を閉鎖、また2002年10月以降停止していた英国 CarringtonのEPS(75千トン)を閉鎖
2007/2 EPS能力をデボトルで合計410千トンに増やすことを発表

 

今回の移管により新しいNOVA Innovene の北米、欧州、全世界でのシェアは以下の通りとなる。

  North America Europe Global
Styrene No.1 No.5
Solid Polystyrene No.1 No.2 No.2
Expandable Polystyrene No.1 No.4

INEOSは欧州のSM事業(工場はドイツのMarl )をJVには出さず自社で運営している。
INEOSは米国のTexas City にもSMプラントを所有している。
NOVAの発泡PS事業は「Styrenix」ではなく、「発泡PS & 機能製品」部門に属しており、JVには出さず自社で運営する。

 

三九集団の再建

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中国の国有資産監督管理委員会(State-owned Assets Supervision and Administration Commission:SASAC )は19日、華潤集団China Resources Enterprise)による三九企業集団999 Group)の買収を明らかにした。

三九集団は国有の大型医薬品企業で、上場企業の三九医薬やGMP認証を取得した医薬品製造企業を傘下に多数擁する。製品は漢
方医薬・西洋医薬を合わせて約千種類に上り、全国をカバーする販売ネットワークをもつ。

同集団はレジャーや自動車販売など非医薬品事業に多角化したが、これらが赤字で、2003年末には負債総額が約100億元に膨らみ債務超過に陥り、深刻な信用危機および債務危機に陥った。

同社は上場子会社の株式の一部を外資に売却、借入金返済に充てる計画をつくり、インドネシア系の華僑系財閥と交渉を進めていたが、同社を管理するSASACとの調整が難航、外資導入計画は白紙に戻した。

2004年7月には国務院の認可を受けて債務再編をスタートし、06年12月には投資家選びを開始した。

三九の買収には、地元企業と組んだ米ファンド大手のカーライル・グループやドイツ銀行など外資を含め、5者が名乗りを上げていたが、最終的に同じ大型国有企業で経営が安定している華潤を選んだ。

華潤は流通、電力、食品などの企業を傘下に持つ大型複合企業で、昨年10月に医薬品卸の大型国有企業、華源集団を買収するなど、近年は医薬品事業を強化している。

ーーー

同社の日本子会社、三九製薬の歴史は以下の通り。

1997年8月に日本の医薬事業リサーチを目的として株式会社範記通商を設立。その後、株式会社本草坊、更に、株式会社三九本草坊医薬に社名変更した。
2005年6月、三九本草坊医薬は株式会社
三九製薬に社名変更した。

2002年10月、ドラッグストア大手のハックキミサワと提携、日本市場向けの大衆薬(一般用医薬品)や健康食品などを両社で企画・開発し販売することとした。
2003年10月からは
イオングループと連携、イオンが主導するドラッグストア連合「ウエルシア・ストアーズ」向けに大衆薬を出荷した。

2003年10月、同社は中堅漢方薬メーカーの東亜製薬(富山県上市町)の株式94%を取得、子会社化した。
東亜製薬を傘下に収めることで30品目以上の医薬品の製造、販売が可能になった。漢方かぜ薬「葛根湯」などを提携先のハックキミサワを通じ「999」ブランドで発売した。
買収に当たっては「中国の企業に買われるとリストラが厳しいのではないか」「地元経済への配慮がなくなる」などの意見が出て、一度は株主総会で否決されたが、東亜の社長が「三九と組まなければ商品開発や販売競争に勝ち抜けない」と力説、再度開いた株主総会でようやく過半数の賛同を得た。

2003年11月、伊藤忠商事との包括業務提携を締結した。
中国で三九が所有する1万坪の農地で葛根や甘草など千種を超す生薬を栽培。日本の生産管理基準を満たした工場で加工し、抽出したエキスの全量を伊藤忠子会社の伊藤忠テクノケミカルが日本市場に供給する。

2004年9月には
伊藤忠が三九本草坊医薬の第三者割当増資を引き受け、23.1%の2位株主となった。(伊藤忠が18.1%、医薬品卸子会社の伊藤忠テクノケミカルが5%)
西村一郎会長兼CEOが43%近くの株を保有し、三九企業集団と伊藤忠は同じ23.1%のため、中国から見れば同社は「外資系」となる。

三九製薬は中国で「外資系企業」として日本の医薬品と化粧品を販売している。
2005年5月に広東省に「
日美健薬品(恵州)公司」を全額出資で設立、中国全域での卸、小売事業を手掛ける免許を中国政府から取得した。8月の増資で伊藤忠と医薬品卸第三位のアルフレッサがそれぞれ15%出資した。
急成長する中国市場に足場を築くとともに、中国経由でASEANにも輸出する。

通常、外資系の製薬企業は中国内で製造した製品でなければ自社販売できない。
日美健は、中国全土であらゆる種類の医薬品を取り扱うことができる「一級卸」であるうえに、中国外で製造した医薬品を中国に輸入する権利を持っている。
日美健は「外資系」ではあるが、三九企業集団を通じて政府の意向も反映できることから、特権的な権利を与えたと言われている。

 

ブラジル国営石油会社PetrobrasUltra GroupBraskemの3社が共同で、同国の石油精製・販売、石油化学の老舗のIpirangaを買収する。19日、Petrobrasが発表した。

70年の歴史を持つIpirangaの主要株主の5家族がブラジルの石油・石化大手に持株を売却したいとしたのに各社が対応するもの。

Ipirangaは1937年にブラジルの実業家がウルガイの投資家と組んで、Ipiranga河沿いに製油所を建設したのを始めとする。

同社の事業は以下の通り。
Companhia Brasileira de Petróleo Ipiranga (CBPI)
Distribuidora de Produtos de Petróleo Ipiranga (DPPI)
Refinaria de Petróleo Ipiranga S.A. (RPISA)
Ipiranga Petroquímica (石油化学)

1976年にHoechst、Petroquisa、Ipirangaの3社合弁のPolisul が設立され、石油化学を始めた。1992年にHoechstとIpirangaの50/50JVとなったが、1997年にHoechstが離脱し、Ipiranga100%のIpiranga Petroquimica となった。
南部の
Triunfo にCopesulに隣接して5工場を持つ。同社の能力はPP150千トン、HDPE3プラント計 400千トン、HDPE/LLDPE 150千トンとなっている。

同社はまた、エチレン専業メーカーのCopesul (エチレン 1,135千トン)に出資している。
 
Ispiranga29.46%
 
Braskem:29.46%
 Petroquisa
Petrobras子会社):15.63%

ーーー

買収総額40億ドルで、Ultra Groupは自社株発行で買収し、Petrobrasは13億ドル、Braskemは11億ドルを出す。

まず、Ultra GroupがIpiranga の大株主から株を買取り、他の株主からTOBで株を買い、100%子会社とした上で、事業を以下のように、PetrobrasBraskemに配分する。

石油精製:Rio Grande do Sul の製油所はPetrobrasUltra GroupBraskemが均等に出資し、事業を継続する。

石油販売:ブラジル南部、南東部は
Ultra Groupが引き受け、引き続きIpirangaのブランドで販売する。
      北部、北東部、中西部は
Petrobrasが引き受け、5年の間に自社ブランドに順次変更する。

石油化学:Braskemが資産の60%を引き受け、Petrobras40%を引き受ける。
       エチレンJVのCopesul
は上場廃止とし、Braskemが支配権を得る。

ーーー

Ultra GroupUltrapar にはLPGで24%のシェアを持つ Ultragaz、ブラジル最大のスペシャルティケミカルのメーカーで唯一のEOのメーカーのOxiteno、化学品や燃料の輸送関連のUltracargo などがある。

参考:ブラジルの石化会社関連図 

Brazil1kanrenzu_2  

Braskemとブラジルのエチレンメーカーについては
2006/4/21
ブラジルのブラスケム、住化などからポリテーノを買収 参照

信越化学 爆発事故

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20日午後4時25分ころ、新潟県上越市の信越化学 直江津工場で爆発があった。3人がやけどなどで重体、14人が重軽傷を負った。
出火場所の4階にはメチルセルロース製造過程でパルプと薬品を反応させる機器などがあった。

爆発事故の原因は現在不明で、警察、消防などの現場検証を受けながら究明する。

同社は安全性が確認されるまで工場全体の操業を停止する方針で、「セルロース誘導体」の生産再開のめどがたたない状況。

セルロース誘導体は、建材用途や医薬用途に添加剤として用いられる水溶性高分子で、主原料のパルプのほか、メチルクロライドやプロピレンオキサイドなどを原料としている。 

信越化学の生産拠点は国内では直江津工場しかなく、あとはドイツに拠点があるだけ。今後の供給体制について同社は「ドイツからの輸入や競合他社への肩代わり依頼を検討している」という。

同社のセルロース事業については 
  2006/10/10  「
信越化学、ヨーロッパのメチルセルロース能力増強完了」 参照

セルロース事業ではダウが信越化学と首位争いをしている。
  2006/12/26 「
ダウ、Bayerからセルロース事業を買収」 参照 

ーーー 

なお、直江津工場は敷地面積が約56万平方メートルで、従業員数は約千人。1973年にも爆発事故があり、死傷者が出ている。

以下 信越化学社史より:

1973年10月28日午後3時30分ころ、直江津工場の東側、ほぼ中央にある塩ビモノマー工場で爆発事故が発生し、火煙が十数mに達した。破壊されたタンクなどから流出したモノマーガスや溶剤に引火して爆発を繰り返した。
当日は日曜日であったが、直ちに自営および公設の消防車が出動して消火に当たった。しかし、火勢が強いため火元付近には近寄れず、事務室、分析室を焼いたあと火は計量タンクや球形モノマータンクに移り、2日後の30日午後1時になって鎮火した。
この事故により従業員1人が死亡、6人が重傷を負ったほか、近隣住民11人を含む17人の軽傷者があった。また、公共建物、民家約660戸の窓ガラスが割れ、瓦が落ちるなど被害範囲は半径2.2㎞にわたった。 

粗塩ビモノマーに含まれる不純物を除去するストレーナー(濾過器)の清掃が10日ごとに行われるが、事故はその作業中に起こった。このストレーナーは本来2系列あり、清掃ごとに交互に使用していたが、修理のため1系列で運転されていたことも不運につながった。清掃作業は予定通り行われたものの、作業員がストレーナー内に残留したモノマーガスを気化放散したところで、粗モノマータンク側のバルブからガスが漏洩していることに気がついた。このため作業員はバルブの締め方が不十分と考えて鉄製のハンドルまわしで力を加えたところ、バルブのヨーク部が切断されてバルブは全開状態となり、タンク内にあった粗モノマー約4トンが噴出してガスとなった。このガスは空気より重いため地上をはうようにして塩ビ工場一帯に拡散した。ガス噴出は3時15分ごろである。その後の15分間に危険を感じた塩ビ工場の作業員ができる限りスイッチを切って退去したあと3時半ごろに爆発が起こった。この時、現場確認のために戻った作業長が殉職した。

参考 2007/3/12 米国Formosa PlasticsのPVC工場爆発事故の調査結果」 
(30数年後に似たような事故が発生した)

1978年3月の新潟地方裁判所一審判決は、当社にとって厳しいものであった。現場作業員の器具取り扱いに対する過失とともに、保安・安全管理責任者としての課長および工場長の業務上過失責任を認めて、3人に対し禁固1年執行猶予2年の判決が示された。このなかで、管理者は現場の不完全な状態を予見し、作業員の安全数育を行う義務があり、安全装置の設置などにより予想される危険を回避すべき義務があることが指摘されている。

ーーー

付記 今回の事故の現場

Naoetsu_2

2007/3/21発表

セルロース誘導体全製品の出荷を22日から当分の間、停止

セルロース誘導体製品(メトローズ、hiメトローズ、土木関連製品、TC-5、HPMCP、信越AQOAT、L-HPC)の今後の製造・出荷に関しては、製造設備の一部が焼失しており現時点では製造再開の目処がたっていない。
また製品倉庫も隣接している為、出荷の早期な再開も難しいと判断。

2007/3/28発表

出荷再開について:
※ すでに製造済みの在庫品については、3/27(火)より一部の出荷を再開致しましたが、一部の倉庫が損傷していること、工場内の一部に立入り制限がかかっていること、また当面の間、一件一件在庫の状態と品質を確認しながらの出荷となりますことから、非常に限られた出荷となっております。
※新規のご注文は全て保留とさせて頂いております。

 

武田薬品は12日、1999年にケンブリッジ大学の研究者により設立された創薬研究のバイオベンチャーのParadigm Therapeutics を買収する契約で合意したと発表した。100%子会社とする。

Paradigm社は、遺伝子組み換え技術を基盤として、世界的レベルの創薬ターゲット同定・評価能力を有しており、疼痛、中枢神経系疾患、前立腺ガン・乳ガンなどのホルモン依存性疾患、糖尿病・高脂血症・肥満などの代謝性疾患を重点領域と位置付け、アンメット・ニーズを満たすため新規創薬ターゲットおよび化合物の創製に取り組んでいる。

武田薬品は同社と同社のシンガポール子会社をそれぞれ、「武田ケンブリッジ株式会社」、「武田シンガポール有限会社」と改称する。

ーーー

Paradigm Therapeutics のこれまでの主株主はBio*One Capital Avlar BioVenturesMerlin Biosciences の投資会社3社である。
後の2社は英国の投資会社だが、最初のBio*One Capital
はシンガポール政府の経済開発局(EDB)の投資部門である。

Bio*One Capital はシンガポールのバイオ・医薬事業を推進するため、シンガポールで研究開発や製造や事業を行ってくれそうな会社に投資をしている。
投資対象は次の分野である。
 ・
Small Molecule Drug Discovery & Development
 ・
Biologics & Cell Therapy
 ・
Medical Tools and Technologies

同社の投資先は以下のような会社である。(青字はシンガポール進出会社)
Drug Discovery/Development Companies :
 Addex Pharmaceuticals SA、Aderis Pharmaceuticals Inc、
CombinatoRx Singapore Pte Ltd
 Cyclacel Ltd、Idenix Pharmaceuticals Inc、Kadmus Pharmaceuticals Inc、Kalypsys Inc、
 
Maccine Pte Ltd、Merlion Pharmaceuticals Pte Ltd、Microbia Inc、
 Neuromolecular Pharmaceuticals、
Paradigm Therapeutics Ltd、

 Perlegen Sciences, Inc、Renovis Inc、
S*Bio Pte Ltd、U3 Pharma AG、Vanda Pharmaceuticals Inc
Biologics and Cellular Therapy :
 
A-Bio Pharma Pte Ltd、Artisan Pharma、Codexis、ES Cell International Pte Ltd
 Five Prime Therapeutics Inc、Kalobios Inc、
Lonza Biologics Tuas Pte Ltd、RenaMed Biologics、
 
Oxygenix Co. Ltd、ProTherapeutics、SingVax Pte Ltd
Medical Technology :
 
Amaranth Medical、Attogenix Biosystems Pte Ltd、Biosensors International Pte Ltd、
 Broncus Technologies Inc、Fluidigm Corp、KOOPrime Pte Ltd、Neurovision INC、
 Merlin MD Pte Ltd、
Metrika Laboratories Inc、Power Paper Ltd、Spine Vision SA
Venture Capital Funds :
 Aravis Ventures I LP、Care Capital LLC、Forward Ventures IV LP、SV Life Sciences、
 MPM Bioventures II LP

ーーー

化学経済 2007
3月号に永尾経夫氏の「日本の化学産業の発展戦略 シンガポールの一生懸命さに習う」が掲載されているが、同氏はその中で、次のように書いている。

「シンガポールの成功の要因は、常に先を読んだ判断(経営判断)と産業構造の変革・高度化をブレないで実行する一生懸命さにある。」

「今シンガポール政府が力を入れ始めているのが医薬・バイオ産業の誘致・育成である。・・・・医薬・バイオ産業こそ、これからのシンガポールの発展にふさわしい将来性のある新規産業と考えたのである。・・・
しかし、当然のことだが、同国には企業家はいない。そこで、世界中の医薬・バイオの会社に進出を呼びかけた。シンガポールの開発部局(EDB:経済開発局)が世界中の会社を熱心に進出を呼びかけた。・・・」

「今や同国には、世界のトップ・テンの医薬会社のうちの6社までが製造設備を持つに至ったのだ。」

 

シンガポールはアジアの石油化学大国だが、バイオ・医薬も同国の基幹産業の一つになっている。

欧州委員会は14日、板ガラスで価格カルテルを結び競争を制限した疑いで、板ガラスメーカーにStatement of Objection(異議告知書)を送付した。

「異議告知書」とは、EU独禁法違反の疑いに関する当局の暫定的な見解を示し、当事者の意見を求めるもの。
会社側は2ヶ月以内に反論を提出できる。
委員会は会社側の反論を聞いた上で、最終決定を行う。
価格カルテルと判定されれば、各社は最大で年間の世界売上高の10%分に相当する制裁全を科せられる可能性がある。

欧州委員会はメーカー名を明らかにしていないが、欧州板硝子協会(GEPVP)のメンバーは旭硝子のベルギー子会社Glaverbel SA、日本板硝子の英子会社Pilkington PLC と仏Saint-Gobain 及び各社の子会社である。
旭硝子と日本板硝子は同日、欧州委から文書を受け取ったと発表、
Saint-Gobain は立ち入り検査を受けたことを発表している。

欧州委は2005年2月にベルギー、フランス、ドイツ、英国、スウェーデン、イタリーの板ガラスと自動車用ガラスのメーカーに予告なしの立ち入り検査を行った。(スウェーデン企業は板ガラスのみ、イタリー企業は自動車用ガラスのみ)
欧州委は、板ガラスについては値上げと「
Energy Surchargeの導入の共謀、自動車用ガラスについては需要家配分と供給制限・価格の合意があったと信じる理由があるとしている。

同委では Leniency program (自首申告制度)による情報提供を受けているとしている。 

今回は板ガラス関係のみで、自動車用ガラスについてはなお調査中としている。今後、自動車用ガラスについても同様の処理がなされる可能性がある。

 

両社コメント
旭硝子:当社及びグラバーベル社は、本異議告知書の内容を確認した上で、適切な対応をとる所存です。

日本板硝子:ピルキントン社では、当該告知書の詳細について精査中であります。手続きに更に進展があり、委員会による正式決定まで、本件についてさらなるコメントは差し控えます。

ーーー

Glaverbel SA
 本社:ベルギー ブラッセル市
 工場:ベルギー、オランダ、チェコ、フランス、イタリア、スペイン、ロシア
 品目:フロート板ガラス、複層ガラス、自動車用ガラス、鏡等
 設立:1961年(1981年旭硝子資本参加、2002年12月100%子会社)

Pilkington PLC
 本社:英国 St Helens
 工場:世界24カ国
 品目:建材用板ガラス、自動車用強化ガラス、放射線遮へい用板ガラスほか
     (世界で最初にガラスの大量生産を始めた会社)
 設立:1826 年(2006年6月 日本板硝子子会社化)

* 欧州板硝子協会(GEPVP)のメンバーは以下の通りで、全て3社とそれらの子会社
  ベルギー:Glaverbel、Saint-Gobain Glass SaintRoch
  フランス:Glaverbel
 France、Saint-Gobain Vitrage
  ドイツ:Pilkington
 Flachglas、Vegla (Saint-Gobain)
  英国:Pilkington
  スウェーデン:Pilkington Floatglas
  イタリー:Pilkington
Glaverbel ItaliaSaint-Gobain Vetro Italia

  オーストリア:Eomag (Pilkington)フィンランド:Lahdenlasitedas (Pilkington)
  オランダ:Maasglas (Glaverbel)
ポルトガル:Covina (Saint-Gobain)、
  スペイン:Cristaleria Espana (Saint-Gobain)

Dow JV説

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2007/3/2 Dow 買収説 で投資会社がDowの買収を計画している、インドのReliance が買収への参加を考えている、との報道があることを報じた。
Dow はこれに対してコメントをしていない。

The Times of India 16日、Dow Reliance Dowの化学品とプラスチック部門を含んだ200億ドルの合弁会社を設立する契約に間もなく調印すると報じた。
合弁会社には
Reliance が約120億ドルを出して59%を保有し、残り41%Dowが保有するとされる。
Dowの基礎部門の2006年の売上高は236億ドルであることから、JVは基礎部門全体ではないのではとの見方もある。

Dowは売却代金でSpecialtyに力をいれるという説や、現在行っている自社株購入を進めて株価の上昇を狙うとの説がある。

 

この報道が真実かどうかは不明だが、これまでの経緯から見ると、決して驚くべきものではない。

Dow側の事情:

Dowの事業のうち、基礎部門の比率が高いが(プラスチックが売上の24%ケミカルズ11%で合計35%)、原料高騰、値下がりにより収益性が低下している。

これに対してDow はJV化による“asset light” strategy を進めている。基礎部門での海外での新規事業を他社とのJVで実施するだけでなく、既存事業を分離して他社とのJVにしようとするものである。

タイのサイアム・セメントとの新規JVは前者の例であり、Kuwait Petroleum Corporation と50/50JVのMEGlobalを設立してダウの設備を出したのが後者の例である。MEGlobal Kuwait での石化事業での提携の延長である。

ダウの会長兼CEOのAndrew N. Liveris は125、基礎部門の中のポリスチレンとポリプロピレンについて分社化して他社とのJVにすることを検討していると報告している。

GEやハンツマンが、原料高騰の影響を受けやすい汎用製品事業を売却するのに対し、DowはJV化により、関係を残しながら、負担減を図ろうとしている。また、JV相手の力の利用も考えている。

Liveris会長は”Asset Light”のメリットとして以下の点を挙げている。
低コスト原料へのアクセス
パートナーのローカルな力の利用
設備投資減
リスク低減

仮に投資会社がDowを買収するとしても、彼らの思惑は、基礎部門を売却し、その資金でSpecialty事業を強化し、企業価値を高めることにあると思われ、今回の案はこれに反するものではない。

 2007/2/3 「ダウ、PSとPP事業のJV化を検討 参照 

 

Reliance側の事情:

Relianceはグローバルに石油化学、合成樹脂事業を拡大する機会を狙っており、2005年8月には、失敗はしたが、BPの石化子会社 Innovene 買収(80億ドル)のためのDue diligence を実施している。

同社はインド北西部のJamanagar経済特区に新しく年産27百万トンの製油所を建設中で、川下の石化事業を計画しているが、Dowが10億ドルを投じてこれに参加する覚書を締結している。
現在交渉中だが、Dowが正式に参加する場合には、見返りにRelianceがDowの米国の石化事業に参加する可能性がある。

投資会社によるDow買収の噂に対し、同社も参加を希望しているとされている。

一方で同社はダウとの提携がうまくいかない場合の代替案として、GEプラスチック買収に手を上げている。

 2007/1/16 「インドの Reliance Industries 参照   

以上の通り、今回のJV案は両社の事情に合ったものであり、インド計画との関連で、両社の間で本件の交渉があっても決して不思議ではない。

OPECは15日、ウィーンで定例総会を開き、現在の原油生産量である日量2,580万バレルを維持することを決めた。欧米の原油先物相場は1バレル60ドル前後で安定しており、追加減産は必要ないと判断した。

イラクを除くOPEC10カ国の生産枠は2005年7月に 2,800万バレルとなったのをピークに、昨年10月20日に11月以降 2,630万バレルとし、12月14日には本年2月以降2,580万バレルに引き下げた。今回はこれを維持する。

Opecwaku_1

東京市場のドバイ原油価格は昨年8月8日に72.30ドル/bbl となったのをピークに急落し、本年1月19日には48.85ドルまで下がったが、その後持ち直し、最近は60ドル弱で推移している。欧米市場も同様である。

Naphthaoil0703

問題はナフサ価格で、原油価格と同様に昨年7月14日に691ドル/t と最高値を記録し、本年1月17日には503ドルまで急落している。
しかし、その後は上昇を続け、最近は650ドル近辺となっている。(3/16 は630ドル)

原油価格を$/トンで表示すると、原油とナフサの価格は以下の通りとなり、ナフサ価格が異常に高いことが分かる。

    原油   ナフサ  
2006/7/14    656    691    -35
             
2007/1/19    445    513    -68
             
2007/3/13    526    650   -124

これは日本だけの状況ではなく、NY原油(WTI)とシンガポールナフサ価格の対比でもナフサが異常に高くなっている。

Kaigaiprice0703_1 

ナフサ高の特別の理由はなく、投機的なものと見られ、今後ナフサ価格が急落する可能性もある。

20061230日に広西壮族(チワン族)自治区欽洲市でPetroChina広西石油化学」の10百万トンの製油所の鍬入れ式が行われた。
本事業はPetroChinaとSinopecの初の共同事業で、PetroChinaが70%、Sinopecが30%の出資比率となっている。

 2007/1/17 
PetroChina Sinopec の初の合弁製油所が着工」 
   

中国南西部の四川省, 雲南省, 貴州省, 重慶市、広西壮族自治区では市場が拡大しており、石油製品の不足が生じている。Petrochinasouthwest_2

中国ではPetroChinaとSinopecが石油・石化で覇権を争っているが、南西部はもともとSinopecの本拠で、PetroChinaにとって最初の進出となる。

ーーー

PetroChinaは7日、四川省成都市に製油所とエチレンプラントを建設する基本契約を省政府と締結した。
能力は製油所が10百万トン、エチレンが80万トンで、2010年稼動を目指す。
完成すれば中国南西部で供給不足となっているポリエチレンやエチレングリコールを供給できるとしている。

エチレンプラントについては既にNDRCの承認を得ている。
具体的には
四川省成都市の北西約40kmの彭州にエチレン80万トンと誘導品を建設するもので、PetroChina が51%、成都市が49%出資し、投資額は約25億ドルとなっている。
この時点では、原料ナフサは甘粛省、
陜西省の同社の製油所から列車で輸送するとしていた。

製油所の承認はこれからである。

ーーー

PetroChinaはまた陝西省で26億ドルを投じて、100万トンのエチレンを建設する計画を持っている。

ーーー

PetroChinaは昨年、785百万バレル(前年比4.3%増)の原油を処理し、207万トン(同9.5%増)のエチレンを生産した。
同社の親会社のCNPCでは
今後5年間で石油精製と石油化学に 230億ドルを投資するとしている。

産業再生機構 解散

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産業再生機構は3月15日で解散することが決まった。

産業再生機構は2002年11月の総合デフレ対策で打ち出された期限付きの新組織で、2003年4月10日施行の「株式会社産業再生機構法」に基づき設立され、5月に業務を開始した。
再建可能な企業向けの不良債権を主に主力銀行以外から買い取って、主力銀行と一緒になって経営再建を支援するのが仕事である。
もし、解散時に赤字であれば、国民負担となる。

3月2日のスカイネットアジア航空の支援終了で、同機構が発足以降に手がけた41件の支援はすべて終わり、法律で決められた解散期限より1年早く解散する。
機構はこれまでに約1兆円を企業支援に投じたが、再生後の株式売却益などで300-500億円の利益剰余金が出る予定で、国民負担は生じない。解散時に残った財産は、国庫と出資者である預金保険機構、農林中金に分配されることとなっているが、全額国庫納付とする案が有力になっているという。

対象41社は以下の通り。

支援決定 社名 業種 完了
2003/8/28 うすい百貨店 卸売・小売 2005/11/30
2003/8/28 ダイア建設 建設・不動産 2005/8/10
2003/8/28 九州産業交通 運輸 2005/12/20
2003/9/1 三井鉱山 鉱業 2006/3/17
2003/9/26 マツヤデンキ 卸売・小売 2004/11/10
2003/9/26 明成商会 化学品専門商社 2005/3/31
2003/10/24 津松菱 卸売・小売 2005/5/20
2003/10/31 八神商事 卸売・小売(医療用品) 2005/1/31
2003/12/19 富士油業 鉱業(石油油脂製品販売) 2005/10/3
2004/1/28 金門製作所 ガス・水道メーターほか 2006/3/31
2004/1/28 大阪マルビル 建設・不動産 2004/12/17
2004/2/16 カネボウ   2005/12/16
2004/4/27 フレック 卸売・小売(スーパー) 2004/8/31
2004/5/17 大川荘 観光 2005/4/28
2004/5/20 タイホー工業 工業薬品類 2006/1/25
2004/6/4 ホテル四季彩 観光 2006/4/28
2004/6/4 ミヤノ 工作機械及び機械器具 2006/8/22
2004/6/25 スカイネットアジア航空 運輸 2007/3/2
2004/7/13 アメックス協販等 2006/11/10
2004/7/21 栃木皮革 皮革 2006/10/16
2004/8/6 オーシーシー 通信ケーブル 2006/8/8
2004/8/30 フェニックス 卸売・小売(スポーツ用品) 2005/12/27
2004/8/31 服部玩具 卸売・小売 2004/12/22
2004/9/28 粧連 卸売・小売(化粧品) 2005/1/14
2004/9/28 大京 建設・不動産 2005/4/8
2004/11/26 関東自動車 運輸 2006/5/30
2004/11/30 三景 卸売・小売(服飾服資材卸売) 2005/12/30
2004/12/8 あさやホテル 観光 2006/4/28
2004/12/8 金精 観光 2006/4/28
2004/12/8 田中屋 観光 2006/4/28
2004/12/24 玉野総合コンサルタント 建設コンサルタント 2005/5/31
2004/12/28 ダイエー 卸売・小売 2006/11/10
2004/12/28 ミサワホームホールディングス 建設・不動産 2006/3/31
2005/1/18 オグラ 菓子卸売 2005/6/30
2005/1/18 宮崎交通 運輸 2006/10/27
2005/1/18 鬼怒川グランドホテル 観光 2006/4/28
2005/1/18 鬼怒川温泉山水閣 観光 2006/4/28
2005/1/18 アビバジャパン パソコン教室 2005/2/28
2005/2/3 釜屋旅館 観光 2006/5/29
2005/2/3 金谷ホテル観光 観光 2006/4/28
2005/2/3 奥日光小西ホテル 観光 2005/11/28

中小企業が多く、大口はダイア建設、三井鉱山、カネボウ、大京、ダイエー、ミサワホーム程度である。

このうち、ダイエーは経営陣が最後まで独自の再建案にこだわったが、監査法人の決算不承認通告でようやく再生機構に依頼した。

また、三井鉱山の場合は、機構が大口の支援実績づくりを望んだためか、十分調査せずに支援策を発表し、その後に追加の評価損が出て、新たな支援策を発表するという事態になった。

なお、初めに、国民負担は生じないとしたが、実は政府機関による多額の債権放棄があり、国民負担が生じている。
三井鉱山の100%子会社の三井石炭は1997年3月に三池鉱業所を閉山、国内炭採掘事業から撤退し事業活動を中止していたが、炭鉱閉山に伴う政策的支援として、経済産業省所管の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が642億円の融資をしていた。
NEDOは、このうち525億円を債権放棄している。NEDO自体は債権放棄に反対したが、政府系金融機関は再生機構の要請に協力しなければならないという「協力規定」により、最終的に放棄した。

各社の支援会社は以下の通り。

ダイア建設 レオパレス21
三井鉱山 大和証券プリンシバル、新日本製鐵、住友商事
大京 オリックス
ダイエー 丸紅、アドバンテッジパートナーズ
ミサワホーム トヨタ自動車、NPF-MG投資事業、あいおい損害保険

カネボウに関しては、2007/3/6 「カネボウ・トリニティ、社名をカネボウからクラシエに変更」 参照

ダイエーについては3月9日、イオンとの提携が決まった。イオンはダイエーの丸紅からダイエー株15%を、ダイエーから食品スーパーのマルエツ株20%取得し資本参加するほか、ダイエーに役員数人を派遣する。

 

インド最大の私企業で石化業界のリーダーのReliance と、石化業界第二位の Indian Petrochemicals Corporation Limited IPCL)の取締役会は10日、それぞれ、Reliance IPCLの統合を承認した。

Reliance は石油・ガス、石油製品、石油化学に多角化し、内外で事業の拡大を図っている。
2002年にインド政府の民営化方針に基づき、IPCLの政府持分26%を買収し、その後、20%を追加取得し、46%を所有している。

同社はまた、
2004年に採算悪化を理由に石油化学プラントの稼働を中止していたNOCIL(National Organic Chemical)から石油化学と樹脂事業を買収した。

海外では2005年8月には、失敗はしたが、BPの石化子会社 Innovene 買収(80億ドル)のためのDue diligence を実施している。
現在、
Jamanagar経済特区に新しく石化コンプレックスを建設することでダウと交渉をしており、ダウが参加する場合には、見返りにダウの米国の石化事業への参加を求めているといわれている。GEプラスチックやダウの買収を狙っているとの噂もある。

 2007/1/16「インドの Reliance Industries 
 2007/3/2 「Dow 買収説

RelianceはJamnagar に製油所、Haziraにナフサクラッカー、NarodaPatalganga に合成繊維等のコンプレックスを持っている。
Haziraのエチレン能力は75万トン。

IPCL Baroda にナフサクラッカー、Gandhar Nagothane にガスクラッカー(合計エチレン 875千トン)を持つ。
同社はまた、
2005年にポリエステルメーカー社を同社に統合し、ポリエステルメーカーになった。

Reliance は統合により、規模拡大を図るとともに、IPCLへの原料(天然ガス、ナフサほか)供給等も行う。

 

統合後の全社能力は下記の通り。 (千トン)

  Reliance IPCL 合計
Ethylene 750 875 1,625
Propylene 365 225 590
Paraxylene 1,856 48 1,904
PP 1,150 195 1,345
PE 450 555 1,005
PVC 325 205 530
PTA 1,350    ー   1,350
Polyester Staple Fibre 550 126 676
Polyester Filament Yarn
Partially Oriented Yarn
523 266 789

ーーー

各コンプレックスの概要 (千トン)

Reliance
  Hazira
ナフサ 
エチレン  750
PE  360
PP  360
Aromatics  350
MEG  340
PVC  160
VCM  160
PTA  700
PET   80
POY  120
PSF  160
PFF   30
 : IPCL
  Baroda 
ナフサ
Gandhar
  (ガス)
Nagothane
  (ガス)
エチレン   175   300   400
ブタジェン    54    
ベンゼン    55    
LDPE    95      80
LLDPE/HDPE       220
HDPE     160  
PP   100      60
PPCP    35    
PBR    60    
PVC    55   150  
VCM     170  
塩素     115  
EO        50
EG        5
ブテン-1        15

Relianceの他の工場の概要は以下の通り。

Jamnagar に新設する製油所の隣には年産27百万トンの製油所があり、石化原料のナフサ、芳香族とPPを生産している。
PPは当初の3系列77万トンに、2006年第4系列28万トンが加わった。
同じく27百万トンの新製油所では100万トンのPPを新設する。

PatalgangaではPTA、ポリエステル繊維、LAB等を生産。
Naroda インドで最も近代的な繊維のコンプレックス。

ーーー

IPCLは
2005年にポリエステルメーカー6社を統合した。

会社 立地 製品  能力(t)
Recron Synthetics Allahabad PFY     66.,000
India Polyfibres Barabanki PSF    40,000
Orissa Polyfibres Dhenkanal PSF    35,000
Appollo Fibres Hoshiarpur PSF    51,681
POY  14,870
PFF (Conjugate)  28,330
PFF (fibrefill)  10,630
Chips  14,600
Central India Polyesters Nagpur POY  45,000
Silvassa Industries Silvassa PFY 141,000
PTT    600


中国の収入格差問題

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中国の第10期全国人民代表大会(全人代)が3月5日午前、北京の人民大会堂で開幕した

温家宝総理は政府活動報告を行った。
「2006年は第11次五カ年計画を実施し、かつ良好なスタートを切った1年であり、国民経済と社会の発展は重大な成果を上げた」とし、マクロコントロールの強化と改善、三農(農業、農村、農民)対策の拡充、経済構造調整の加速、改革開放の積極的推進、社会事業の力強い発展、就業・雇用保障対策の着実な実施への努力、民主・法制建設の継続的強化の7方面から、過去1年間の政府の主要活動を総括した。
しかし、「わが国の経済・社会の発展には多くの矛盾と問題がなお存在し、政府活動にもいくつかの欠点と不足があることを、われわれも直視している。第
は経済構造の矛盾が際立っていること、第は経済成長方式の粗放さ、第民衆の利益に関わる際立った問題の解決不十分、第は政府自身の建設にいくつかの問題があることだ」と指摘した。

国家発展改革委員会の馬凱主任は記者会見で、経済社会の発展やマクロ調整などの問題について質問に答えたが、問題点の一つの収入格差問題について、以下のとおり述べた。

全体的にみて、国民の収入水準は向上している。

・収入格差が拡大傾向にあるのは事実だ。都市・農村間、地域間、階層間で収入格差は拡大し、一部では深刻化している。

1978年と2006年とで、都市部住民の一人当たり平均可処分所得は343元から11,759元に増加
農村部住民の一人当たり
平均収入は134元から 3,587元に増加

注 これによれば都市と農村の格差は1978年の2.55倍から2006年は3.28倍に拡大
  但し、都市部住民のは「平均可処分所得」だが、農村部住民のは「平均収入」
   農家では、現金収入の約3分の1を次年度の耕作のための種・肥料等の購入に充てざるを得ない。

「都市と農村の表面的な所得格差は、統計的に3倍程度と公表されているが、実質的な格差は、その10倍、すなわち30倍ほどあると内々報告されている。」 
2006/8/8 
杉本信行著 「大地の咆哮 元上海総領事が見た中国」

・これに対して、政府は一連の措置を取ってきた。
 都市・農村間の格差を縮小するために、「三農」(農民、農村、農業)への支援を強化
 西部地域と東部地域との格差を縮小するために、西部大開発などの戦略
 都市部の最低生活保障制度を制定し、最低賃金制度を実施
 過大な収入の調整には、個人所得税の徴収を強化

・ この問題を根本的に解決するためには、次の措置を取るべきだ。
 第一に、順調かつ急速な発展を実現し、国民経済の総量を大きくし、これをしっかりと配分する必要がある。
 第二に、収入分配制度を含むさまざまな改革を深化させ、分配制度を整えると同時に、
      平等な機会、ルール、プロセスを備えた制度・メカニズムを構築する必要がある。
 第三に、低所得層の収入を引き上げ、中間層を拡大し、高所得層を調整するとともに、
      合法的な所得を保護し、違法所得を取り締まる必要がある。

ーーー

7日の新華社は所得格差に関して面白い記事を載せている。

それによると、裕福な都市住民の間で、永年の「一人っ子政策」を無視して、罰金を払って多くの子供をもつ人が増えており、10%のひとは3人も子供を持っていることが、最近のNational Population and Family Planning Commission の調査で判明した。

1970年代に制度が決められた当初は、貧しい農民が制度を守らないのではとの懸念があったが、最近は金でなんでも出来るとする都市の’nouveau riche にわか成り金)が政府の頭痛の種となっている。

政府は違反者に罰金を課し、省によっては罰金は地域の平均年収の6にも達するが、効果は見られず、金持ちの特権として民衆の怒りをかっている。

 

 

付記(2007/3/17補足)

全人代は8日、第二回全体会議を開き、「中華人民共和国企業所得税法(草案)」が正式に審議段階に入った。
16日、閉会。
物権法と企業所得税法は圧倒的多数の賛成で可決された。
胡錦濤国家主席は第62号、第63号主席令に署名し、両法律が公布された。
物権法は2007年10月1日から、企業所得税法は2008年1月1日からそれぞれ施行される

  2006/12/28 「中国、法人所得税率を統一、一律25%へ」参照 

U.S. Chemical Safety Board (CSB) は6、2004423IllinoisIlliopolis Formosa PlasticsPVC工場で発生した爆発事故の調査結果を発表した。

工場はFormosa Plasticsが倒産したBorden Chemicals and Plasticsから2002年に買収したもので、能力は汎用PVC 80千トン、特殊PVC 80千トン、従業員は135名。

爆発で5人が死亡、3人が重傷を負った。工場は全壊し、閉鎖された。

CSBは詳細な報告書とビデオを発表した。
 報告書 http://www.csb.gov/completed_investigations/docs/FormosaPlasticsFinal.pdf
 ビデオ http://events.powerstream.net/002/00174/Player/?contid=Formosa_Illiopolis_Illinois
       (Launch Presentation をクリックすると画像が開く)

報告ではオペレーターが安全ロックを無理やり開けたため、VCMが放出され、爆発したと結論付け、Formosa Plastics と以前のオーナーのBorden Chemicals and Plasticsヒューマン・エラーへの対応が不十分であったとしている。

当日、オペレーターがリアクター上部を洗い終り、下部を洗うため階段を降りたが、VCMの入っている別のリアクターと間違い、バルブを開けようとした。リアクターに圧力がかかっているため、安全ロックが機能していてバルブが開かなかったが、リアクターの間違いに気づかないまま、何故開かないのかをチェックせずに、無理やり安全ロックを外した。
VCMが漏れ出し、ガスが充満し、非常ベルが鳴った。オペレーターは圧力を下げて放出を抑えようとしたが、爆発が起こった。

Formosa PlasticsBorden Chemicals and Plasticsも、ヒューマン・エラーの発生を減らす努力をしていなかったのが分かった。
圧力がかかっている場合には安全ロックが外れない工夫がなかった。リアクターが4つ並んでいるが、バルブのある階下には操業状況を示す表示がなく、連絡の手段もなかった。
また、オペレーターには避難する時間は十分あったが、避難せずに無駄な努力をしたが、こういう際には直ぐに避難するという指示も訓練もしていなかった。

同工場で何度も危険な事態が発生し、VCM漏れが大事に至ることが分かっていながら、対策を取っていなかったとしている。

ーーー

なお、Borden Chemicals and Plasticsの3つの工場のうち、Louisiana州Addisの工場はShintechが、ルイジアナ州Geismar の工場はWestlake GroupGeismar Vinyls)が買収した。

Addis工場は1979年に信越化学の技術を導入し建設された工場で、シンテックの工場から約2km離れた場所に位置するが、Shintechは買収後、設備に問題がありとして廃棄した。
「1回でも事故を起こせば致命的な打撃を受ける。今回の買収では、商権を手に入れただけで投資の成果は十分に上がった。」(金川社長「私の履歴書」)

ーーー

参考 2005/10/6 テキサス州ポイント・コンフォートのフォモサ・プラスチックスの爆発事故について
  2006/8/7
 米工場爆発事故の調査結果

 

フリーの国際情勢解説者、田中 宇(たなか・さかい)が、「新聞やテレビを見ても分からないニュースの背景を独自の視点で説明」するサイトがある。http://tanakanews.com/ 

元共同通信記者で、1997年にマイクロソフトに入社、「MSNジャーナル」を立ち上げ、国際ニュースに関する解説記事を書いた。
その後独立して本サイトをひらくと共に、多くの本を出している。世界の新聞雑誌記事を集め、それを基にまとめるという手法を取っている。

ここで2週にわたり、地球温暖化問題が取り上げられた。

2007年2月20日のタイトルは「地球温暖化のエセ科学
http://tanakanews.com/070220warming.htm

概要:
IPCCには130カ国の2500人の科学者が参加している。ほとんどの学者は、政治的に中立な立場で、純粋に科学的な根拠のみで温暖化を論じようとしている。問題はIPCCの事務局にある。事務局の中に、温暖化をことさら誇張し、二酸化炭素など人類の排出物が温暖化の原因であるという話を反論不能な「真実」にしてしまおうと画策する「政治活動家」がいて、彼らが(イギリスなどの)政治家と一緒に、議論の結果を歪曲して発表している。

▼三位一体で温暖化問題は完璧?
▼海面はそれほど上昇しない
▼学者の良心を悪用するIPCC事務局
▼5月発表の本文は、2月発表の概要版と正反対

▼無視されてきた太陽黒点説
   黒点活動が活発→電磁波(太陽風)を多く放出→電磁波は宇宙線を蹴散らす→
   地球にふりそそぐ宇宙線が減る
   →宇宙線が減ると雲の発生が抑えられる→地球は温暖化

2007年2月27日号はその続編で、「地球温暖化の国際政治学
http://tanakanews.com/070220warming.htm

結論は「イギリスを中心とする先進国が、発展途上国の成長率の一部をくすねるために考えついたのが、地球温暖化問題である」というもの。

ーーー

安井先生の「市民のための環境学ガイド」(2007/3/4)で「地球温暖化はエセ科学か」として、最初の論文を取り上げ、田中論文の各ポイントについて詳細に説明している。
http://www.yasuienv.net/GWPoliticsTanaka.htm

結論:
田中論文では「正しいが少ない情報と正しくない多くの情報がごちゃ混ぜ状態」になっており、「先に結論があって、それに合う論説だけを選択する、という手法を取れば、世の中、どんな結論でも主張できそうです」。

 

SaudiAramco の関係会社の韓国の石油精製会社 S-Oil は、以前に雙龍セメントが所有していた金庫株 28.4% を時価の14%増しの25億ドルで韓国航空など韓進グループに売却することを決めた。

S-Oilには SaudiAramco の子会社 Aramco Overseas Company B.V. 1991年以降35%出資しており、韓進グループは第二の株主となる。

韓進グループは本買収のため、3月2日に韓進エネルギーを設立した。グループの韓国航空が82.5%、韓進海運が14.6%、韓進空港サービスが2.9%出資した。

S-Oil はSK(蔚山)、LG-Caltex(麗水)に次ぐ韓国第三位の石油会社で、温山に製油所を持つ。

第4位は現代Oilbank(大山)で第5位は仁川製油(仁川)
仁川製油は2001年に会社更生法で再建を図り、一時は中国のSinochemによる買収の覚書を締結したが、最終的に2006年3月にSKが買収した。SKはこれにより、Sinopec中国石油天然気集団(CNPC)、新日本石油に続き、アジア地域で第4位の石油会社として急浮上した。
  

同社は中国の需要増を見込んで、忠清南道瑞山市に2010年までに37億ドルを投じて日産48万バレルの製油所建設を計画しており、株式売却資金をこれに充当する。
新製油所が完成すると、同社の能力は106万バレルとなり、第二位のGS Caltex (65万バレル)を追い越す。

S-Oil は今後、韓国航空や韓進海運など韓進グループへの製品供給を行うとともに、韓進海運を使って原油や製品の輸送を行う。

SaudiAramco は原油の安定的供給で韓国の安定的発展に寄与しており、S-Oil は韓国とサウジの経済協力のシンボルとなっている。

ーーー

なお、第4位の現代OilbankにはアブダビのInternational Petroleum Investment Company (IPIC)70%を出資している。
1999/1250%2002年に更に20%取得。
 現在の出資はIPICが20%、IPIC子会社のHanocal Holding が50%)

ーーー

SaudiAramcoは日本では昭和シェル石油に15%の出資をしている。
2004年に50%株主のシェルから10%分の譲渡を受け、2005年に更に5%分を購入した。

昭和シェル石油はこれまで原油の過半をシェルから購入していたが、SaudiAramcoからの出資受け入れで原油調達能力を高め、競争力を強化、SaudiAramcoは悲願の日本市場進出を果たした。

住友ベークライトはこのたび、スイスの熱硬化性樹脂メーカー Neopreg AG 買収した。
同社は繊維強化熱硬化性樹脂のメーカーで、繊維強化ポリイミド成形材料 Kinel、繊維強化エポキシ成形材料 Neonite を製造販売している。
住友ベークライトは同社を、2005年に
スウェーデンのPerstorp AB から買収したベルギーの熱硬化性樹脂成形材料メーカーのVyncolit N.V. に統合するが、Neopreg の名称は存続させる。

ーーー

住友ベークライトは、最初のプラスチックの「ベークライト」を日本で最初につくった会社である。
 2006/2/15 「
プラスチック100周年 参照  

住友ベークライトは米国オキシデンタルとの合弁で世界各地でフェノール樹脂事業を行っていたが、2000年9月、オキシデンタルから同事業全体を1億5千万ドルで買収した。これにより、買収後の生産能力はフェノール成形材料67千トン、フェノールレジン112千トンとなり、世界シェアはそれぞれ25%、11%となった。

会社 工場所在地 買収対象 事業内容 製品
デュレズ事業部 オハイオ
ニューヨーク
オンタリオ
100%事業・株式 生産・販売 フェノールレジン成形材料
ヨーロッパ法人 ゲンク・ベルギー 100%株式 同上 フェノールレジン他
スミデュレズ カナダ オンタリオ 50%持分 生産 高機能フェノール成形材料
スミデュレズ アメリカ 50%持分 販売
スミデュレズ シンガポール シンガポール 25%株式 生産・販売 フェノール成形材料
住友デュレズ  静岡 25%株式 生産 フェノールレジン
OXYSIM技術 導体テープ用レジン技術

* 住友デュレズは2001年4月1日付で吸収合併した。

ーーー

同社は2003年8月に、フェノール樹脂事業のうち摩擦材用レジンを主力製品とするスペインのFers Resin SA社およびその関連会社を買収した。コア事業のフェノール樹脂事業の重点用途である摩擦材用レジンのグローバル展開を促進するのが目的。

買収したのは販売会社 Fers Resin SA製造会社 Fenocast SA及び両社が保有する子会社3社。

ーーー

同社は2005年、スウェーデンのPerstorp AB から子会社のVyncolit N.V.(ベルギー)とVyncolit North America, Inc.(米国)の全株式を約 114億円で買収した。

住友ベークライトはフェノール樹脂関連事業について、日本、米国、東南アジア、中国、欧州の5大市場に拠点を有しているが、戦略用途である自動車分野で米国や欧州には、これまでフェノール樹脂(レジン)拠点を持つのみで、フェノール樹脂成形材料の拠点は持っていなかった。
Vyncolit N.V. はベルギーに拠点を持ち、欧州における自動車部品用フェノール樹脂成形材料の分野で需要家から信頼を得ている。

この買収により同社は、フェノール樹脂関連事業で 日本、米国、東南アジア、中国、欧州の5大消費マーケットに、8ヶ国16拠点を持つことになった。

今回、スイスのNeopreg AGが加わることとなる。

中国の2006年のエチレン生産量は941万トンとなり、2005年の755万トンを24.5%上回った。
一方、
200711日現在の生産能力は967万トンとなった。(200611日は778万トン)
日本の2005年末の能力は796万トンで、中国の能力は日本の能力を上回った。

3つの海外企業とのJVが生産量の拡大に寄与した。
中海シェル(シェルと中国海洋石油
ほかとのJV)は広東省恵州市大亜湾800千トンクラッカーを第1四半期にスタートし、646千トンを生産した。
2005年にスタートした上海SECCOBP/Sinopec/上海石化:900千トン)と南京のBASF-YPC(BASF/Sinopec:600千トン)は、それぞれ、336千トン、306千トンの増産となった。

生産能力は2006年中に189万トン増えた。中海シェルの800千トンのほかに、Sinopecの茂名石化が640千トン、PetroChinaの蘭州化学が450千トンの能力増強を行った。

各社の能力と生産量の推移は添付の通り。

        能力 生産
05/1/1 06/1/1 07/1/1 2004年 2005年 2006年
大慶石化 CNPC 龍江省   600   600   600    456   556   517
吉林化学 CNPC 吉林省   530   750   750    580   511   752
盤錦エチレン Liaoning Huajin Group 遼寧省   160   160   160    166   157   180
遼陽石化化繊 CNPC   遼寧省   120   120   120    142   146   150
撫順石化 CNPC 遼寧省   150   150   150    175   168   180
北京東方化工 Sinopec 北京市   150   150   150    181   178   168
燕山石化 Sinope 北京市   710   710   710    801   812   820
天津石化 Sinopec 天津市   200   200   200    228   207   232
斎魯石化 Sinopec 山東省   720   720   720    456   825   839
揚子石化 Sinopec 南京市   650   650   650    813   776   755
上海石化 Sinopec 上海市   850   850   850    956   962   960
廣州エチレン Sinopec 広東省   200   200   200    217   214   196
茂名石化 Sinopec 広東省   380   380  1,020     394   348   522
中原石化 Sinopec 河南省   180   180   180    209   192   214
蘭州化学 CNPC 甘粛省   240   240   690    239   246   240
新疆独山子 CNPC 新彊省   220   220   220    254   261   247
BASF-YPC BASF/Sinopec 江蘇省      600   600    ー    341   647
Secco BP/Sinopec/上海石化 上海市      900   900    ー    642   978
中海シェル Shell/CNOOC 広東省         800    ー       646
合計  6,060  7,780  9,670   6,266  7,555  9,412

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ホームプロダクツ、薬品、食品の3事業などを擁するカネボウ・トリニティ・ホールディングスグループは2月27日に、本年7月1日付けで商号及びコーポレート商標を「Kanebo」から「Kracie(クラシエ)」へ変更すると発表した。
「快適な楽しい“暮らしへ”」という願いを込めているという。

事業分野 新社名 現社名
管理・統括 クラシエホールディングス カネボウ・トリニティ・ホールディングス
ホームプロダクツ クラシエホームプロダクツ カネボウホームプロダクツ
クラシエホームプロダクツ販売 カネボウホームプロダクツ販売
薬品 クラシエ製薬 カネボウ 製薬
クラシエ薬品 カネボウ薬品
食品 クラシエフーズ カネボウフーズ
クラシエフーズ販売 カネボウフーズ販売
デザイン・マーケティング クラシエファッション研究所 カネボウIKSM研究所

産業再生機構の下でカネボウとカネボウ化粧品が花王と投資ファンド3社の連合に売却されたが、花王はカネボウ化粧品、ファンド3社はカネボウを引き受けることとなり、その際の取り決めで、「カネボウ」ブランドは2年経過後は化粧品のみが使うこととなっていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

カネボウ再建の歴史

カネボウは1887年、「東京綿商社」として創業、紡績所設立認可を得た。
1893年「鐘淵紡績株式会社」となった。太平洋戦争直前には国内企業売上高一位を誇り隆盛を極めた。

1949年に、非繊維事業を鐘淵化学工業(現・カネカ)として分離独立させている。
(1961年に鐘化から化粧品事業を、1971年には石鹸事業を買い戻している)

1968年、伊藤淳二氏が45歳で社長に就任、労使運命共同体論で労使協調路線を進めるとともに、「ペンタゴン経営」といわれる多角化路線を取った。
「ペンタゴン(五角形)経営」では繊維、化粧品、薬品、食品、住宅の5事業を均等に拡大し、多角化の成功例と賞賛された。

しかし二度の石油危機と円高不況で収益環境が悪化したが、ペンタゴンの生みの親の伊藤氏が不振事業の縮小を認めず、経営は悪化した。「収益力も事業特性も全く異なる事業群が混在したことで全体の競争力を失った」(再生機構)。

2004年3月期の同社の事業と売上高(億円)は以下の通り。
繊維  1,150 羊毛、合成繊維、ファッション
ホームプロダクツ   399 入浴剤、シャンプー
食品   465 冷菓、飲料、カップめん
薬品   187 漢方薬(漢方薬を除いた新薬事業すべてを1999年に日本オルガノンへ売却)
新素材等   228 電池、電子関連、人工皮革、ビデオ検査システム
化粧品  1,948  

2003年に伊藤名誉会長が退任して初めて、同社は不振のアクリル事業からの撤退を決めた。

 

更に、経営不振を補うため、「宇宙遊泳」と呼ばれる粉飾取引が行われた。

Kanebo3
カネボウは子会社のカネボウ合繊を通じて毛布原料のアクリルを興洋に売り、興洋は毛布にして商社に販売していた。
安価な中国製品に押され興洋の製品は競争力を失い、商社からの返品が増加した。カネボウは製品をいったん買い取って興洋に販売し、返品代金を興洋から手形で受け取っていたが、業績不振の興洋は現金支払いが滞り、多くが回収不能になった。
カネボウは2003年9月中間期までに流通在庫の損失も含め、計522億円の損失を蒙った。
しかし、カネボウは興洋に役員の半数近くを送り込んで実質的な子会社だったが、カネボウが14.5%出資するカネボウ物流が興洋に14%出資しているだけで、カネボウの連結対象にはなっていなかった。

ーーー

2005年7月、東京地検特捜部は、2003年3月期まで2年間の連結決算で総額約750億円の粉飾をしたとして、元社長、帆足隆容疑者ら元役員3人を証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕した。

2005年9月、東京地検特捜部は証券取引法違反有価証券報告書の虚偽記載の共犯容疑で中央青山監査法人の会計士4人を逮捕した。連結決算の新会計基準が始まる直前の99年、ダミー会社に株を移して赤字子会社を連結対象から外す粉飾方法をカネボウ側に具体的に指南していたことが分かった。

なお、一連の粉飾決算が上場廃止基準に該当するとし、カネボウ株は2005年6月13日に上場廃止となった。

ーーー

2003年、同社は事業構造改革計画を作成した。

・2004年3月末までに化粧品事業を分離し新会社を設立。
  花王が49%を出資、2007年3月末をメドに花王の同事業と統合
・2006年3月末までにグループ従業員の2割にあたる2,800人を削減し、全従業員を12,000人に
・320億円を投じ、ナイロンの生産縮小や不採算事業から撤退で合繊事業の収益力を強化
・「フィラ」「ランバン」を除くアパレルブランドの縮小
・シャンプーなど家庭用品のブランド再構築。薬品、食品事業のスリム化

カネボウと花王は200310月、両社の化粧品事業を統合すると発表した。
カネボウは多額の有利子負債を抱え経営難に陥っているうえ、2003年9月中間期も400億円の事業構造改革に伴う特別損失の計上などで約630億円の債務超過となる。花王から630億円以上の出資を受け、これ相当の売却益で債務超過を解消するという予定であった。

2004年1月、花王は方針を変更し、カネボウの化粧品事業を完全買収することとした。
交渉過程で企業文化の違いが浮上したことなどから方針を転換した。買収にかかる金額は4千億円以上になる見通し。
この時点で花王は「カネボウ」ブランドを化粧品以外には使用しないことを求め、カネボウ側は「他の事業はつぶせというのか」と不信感を持ったと伝えられた。

この花王の計画に対抗して、国内大手投資ファンドのユニゾン・キャビタルがカネボウに、化粧品事業の買収・新会社設立を提案した。
また、花王によるカネボウの化粧品事業買収に、カネボウの労働組合が反対
を表明した。

2004年2月、カネボウは花王への化粧品事業売却を白紙撤回し、産業再生機構に支援を要請することを決めた。
収益源の化粧品事業を手放した後、生活用品など残る事業だけでは再建の見通しが立たないと判断したもの。
とりあえず、化粧品事業に機構の支援を受け、追って、本体にも支援を要請する。

Kanebonew_1

2004年3月、産業再生機構は政策決定機関である再生委員会を開き、カネボウ再建の具体策を協議した。

 ・本体から分離する化粧品新会社を出資と債権買い取りで計3,800億円支援、出資比率を86%とする案。
 ・繊維事業など本体もカネボウから支援要請を受けた。

 

5月、化粧品会社の詳細が決定した。
 社名:「カネボウ化粧品」
 資本金:1千億円
 出資:再生機構86%/カネボウ14%(カネボウの連結から除外)
 再生機構拠出額:3,660億円(出資860億円+貸付金2,800億円)

  *2004年12月、貸付金のうち1,500億円を優先株(15百万株)に転換
 

6月、カネボウと再生機構はカネボウ本体の再建策を決定した。
同社は構造改善費用の拡大(3,343億円)で2004年3月期末で3,553億円の連結債務超過に陥った。

・取引金融機関に対し995億円の債権放棄を要請
 株主に対し99.7%の減資を実施
 主力行の三井住友銀行が300億円の出資(議決権なし)
 再生機構が50%超の議決権で200億円出資

・今後3年間で全社員の4割弱に当たる1,800人の人員削減

・事業整理
 主対象は繊維部門
  天然繊維は長浜、大垣両工場を売却・閉鎖し完全撤退
  合成繊維もナイロンを大幅に縮小し防府工場を売却もしくは閉鎖。
 食品はカップめん、飲料から撤退

この後、下記の事業分類基準に従って、順次事業整理が行われた。

    売却先
第一分類 事業性があり今後コアとなる可能性が高い
・ホームプロダクツ(シャンプーなど)  
・薬品  
・食品(菓子など)  
・ファッション 海外衣料ブランド:ロレアル、モルガン・スタンレー連合
繊維委託加工
あつみファッション
第ニ分類 事業性はあるがコアになるか見極めが必要
・合繊(ナイロン、ポリエステルなど) 合繊事業:KBセーレン(セーレン51%/カネボウ49%)
       →将来、セーレン100%
樹脂事業(機能性及びAペットシート):三菱化学
・紙パック飲料 チルド飲料:アサヒビール
第三分類 事業性を精査し、継続・売却・清算を判断
・食品(冷菓)
・カネボウ物流
継続する事業
(1)カネボウフーズで行なう冷菓事業
(2)カネボウ物流の事業
(3)婦人インナー部門のオリジナルブランド事業
第四分類 売却先を探し見つからない場合は清算
・食品(カップめん・飲料) カップめん:加ト吉
缶入り飲料:清算
・天然繊維 国内羊毛事業(大垣工場):三甲
・合繊(防府工場関連、海外) ラクトロン(防府工場生分解性繊維:東レ
海外:撤退
・新素材 電子関連:シキノハイテック
人工皮革「ベルエース」
倉本製作所
テキストグラス(
ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維):日東紡績
ベルパール事業(機能性高分子フェノール樹脂、ニューカーボン、PSA):エア・ウォーター
・電池 電池事業:昭栄エレクトロニクス
その他 医用材料事業:睦化学工業
カネボウ化成が行う建材事業:岩尾株式会社
カネボウ化成及び室町化学が行う化成品事業:富士ケミカル商事
室町化学が行うスリングベルト製品事業:日東物産
カネボウ合繊の新規市場開発事業:帝人ファイバー

カネボウベルタッチ(両ファスナー):伸和
半導体(先端ASIC、中級マイコン機種)の最終検査:カネボウ菊池電子のMBO

 

機構は2004年5月にカネボウとカネボウ化粧品を別途に再建することを決めたが、1年で「一体再生」へ方針転換した。

2005年6月、カネボウはカネボウ化粧品が200億円の増資を引き受け、カネボウの議決権の37.9%を持つことを決めた。
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2005年12月、再生機構は入札の結果、カネボウとカネボウ化粧品を、花王とアドバンテッジパートナーズ、MKSパートナーズ、ユニゾン・キャピタルの国内投資フアンド3社の連合に売却すると正式発表した。(文末参照)
2006年1月末に機構が保有する株式と債権を花王側に譲渡し、再生機構は投入した資金を回収し、200億円前後の利益を得た。

花王はカネボウ化粧品を取得し、完全子会社として自らの化粧品事業との相乗効果を狙う。
   ・花王がカネボウ化粧品の株式のうち再生機構が保有する86%と本体保有分の14%を2,790億円で取得
     機構   普通株式 86百万株(86%)+無議決権株式 15百万株 計 2,634億円
     カネボウ 普通株式 14百万株(14%) 156億円
   ・花王がカネボウ化粧品から
ブランドなど知的財産権1,480億円で取得
     
「カネボウ」ブランドはカネボウ化粧品だけが使えるようにするが、2年間はカネボウにも使用を認める。
    (現金・現金同等物を除き合計約
4,100億円で買収)
   ・2006/2にカネボウ化粧品は所有するカネボウ株式 62.5百万株(37.9%)をトリニティに売却

カネボウ本体は3ファンドが出資するトリニティ・インベストメントが取得し、再上場も視野に再生を進める。
  ・国内3ファンドが「トリニティ・インベストメント」を通じ、カネボウ本体株のうち再生機構が保有する32.11
%を取得
  ・カネボウ化粧品が保有する本体株37.9%も花王から譲渡を受け、持ち株比率を70.25%にする
  ・
ファンドは本体株の29.75%を保有する一般株主に対しTOB公開買い付けを実施
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結局、紆余曲折のうえ、2004年2月にカネボウが白紙撤回した花王への化粧品事業売却案の通りとなった。

但し、旧「カネボウ」に関しては、問題はまだ解決していない。

トリニティ・インベストメントは一般株主に対してTOBを行ったが、TOB価格が上場廃止時の360円から大きく乖離し162円という想定外の安値である上、算定方式や手続きに問題があった。このため、株主は反発し、適正な株式買い取り価格の決定を求める民事訴訟を東京地裁に起こしている。
トリニティ・インベストメントはTOBでカネボウの100%株主になる予定であったが、現在、議決権ベースで83%に留まっている。

2006年5月、トリニティ・ホールディングスは日用品、薬品、食品の3事業をカネボウから切り離し、「カネボウ・トリニティ・ホールディングス(新カネボウ)」の100%子会社にしたが、3事業の譲渡代金425億円はカネボウには支払われていない。

2006年末、カネボウの個人株主約500人が同社の再建手法は違法だとして、取締役5人を会社法の特別背任罪で東京地検に告発した。

参考 カネボウ個人株主の権利を守る会 公式サイト
     
http://www.geocities.jp/tob_kanebo/index.htm

ーーー

2005/12/16 産業再生機構 発表

産業再生機構は、産業再生委員会の決定を経て、下記の対象事業者にかかる株式及び債権の譲渡等を決定しました。これにより、機構が対象事業者に対して持つ債権その他は一切なくなります。

出資額等
機構は、カネボウ化粧品に対し、86,000百万円の現金出資により、議決権割合の86%に当たる普通株式を取得していたほか、額面合計150,000百万円の債権の現物出資(DES)により、カネボウ化粧品が発行するA種優先株式の全てを取得していました。
また、カネボウに対しては、10,000百万円の現金出資及び、額面合計10,000百万円の債権の現物出資(DES)により、議決権割合の32.11%に当たるC種類株式を取得していました。
今般、機構がカネボウ化粧品及びカネボウに対して保有する株式の全てを譲渡するものです。

債権額等
機構は、カネボウ化粧品に対する元本150百万円の債権をカネボウから1円で買取り、事業再生計画に沿って債権放棄(150百万円)を行いました。その後、化粧品事業の譲受に伴い280,000百万円の新規融資を実行し、前述の150,000百万円の現物出資(DES)を行った後の130,000百万円の債権に関し、事業収益等による一部弁済を受けておりましたが、今般クロージング時点で残存する全額について額面で譲渡等を行うこととしました。
また、機構は、カネボウに対する元本103,821百万円の債権を金融機関等から47,235百万円で買取り、事業再生計画に沿って66,543百万円の金融支援(債権放棄56,543百万円、DES10,000百万円)を行った後、残った37,278百万円の債権に関し、事業売却・資産処分等により一部弁済を受けておりましたが、今般クロージング時点で残存する全額について額面で譲渡等を行うこととしました。

注 売却価格は「守秘義務に当たる」として公表しなかった。

付記

産業再生機構は32日、最後の支援先として残っていたスカイネットアジア航空の支援を終了した、と発表した。

同機構が03年発足以降に手がけた41件の支援はすべて終わり、法律で決められた解散期限より1年早く、今年3月中に解散することになる。
06年3月末時点で178億円の剰余金があり、さらに06年度にもダイエー株式の売却益などが上積みされるため、国民負担は生じない。解散時に残った財産は、国庫と出資者である預金保険機構、農林中金に分配される。

Lyondell は226日、酸化チタン事業をサウジのNational Titanium Dioxide Company Ltd. 通称 Cristal に売却する契約を締結したと発表した。売却額は負債込みで12億ドル、現金での支払いは10.5億ドルとなる。

2007/2/26 「Lyondell とシノペック鎮海煉油化工、寧波で PO/SM 生産」記載の通り、2004年12月にLyondell Millennium Chemical Equistar を吸収合併し、これらを子会社とした。

合併時のMilleniumの事業と能力は以下の通り。(千トン/年)

TiO2
 Chloride
 Sulfate

  515
  155
VAM   385
Acetic Acid   545

今回、旧Millenniumのうちの酸化チタン事業子会社 Millennium Inorganic Chemicals を売却する。
Millennium Inorganic Chemicalsは能力67万トンで、世界第2位の酸化チタンメーカー。米国に2箇所(Ashtabula, OH と Baltimore, MD)、ブラジル(Camacari)、英国(Stallingborough)、フランス2箇所(LeHavre とThann)及び豪州2箇所(Australindに2つ)の工場を持つ。
なお、酸化チタン以外の旧
Millenniumの事業(酢酸関係、香料、シリカ等)は売却しない。

National Titanium Dioxide  (Cristal) はサウジの企業で、世界で9位の酸化チタンメーカー(商品名 CristalYanbu Al-Sinaiyah 工場で1991年から生産しており、2002年に3万トン増強して10万トンになった。設計能力は18万トン。中東/北アフリカでの唯一のメーカー。
本社はJeddah で、英国とシンガポールに販売拠点を持ち、世界70カ国以上に輸出している。
サウジの石化会社
TASNEE66%、湾岸6カ国が均等出資する Gulf Investment CorporationGIC33%出資している。残り1%は個人投資家。

TASNEEについては 2006/5/13 「サウジの民間ポリオレフィン計画」 参照。
GICはガルフの6国(バーレン、クウェート、オーマン、カタール、サウジ、アラブ首長国連邦)が均等出資する投資会社で、TASNEEにも出資している。

1.レジ袋税の動き

2006/6/13  「改正容器リサイクル法成立」で「アイルランドでは、2002年からプラスチック税『Plastax』が課せられており、スコットランドでも検討されている」とした。 

アイルランド
アイルランド政府は、市民団体の要求を受け入れ、本年7月1日にレジ袋税「Plastax」を現在の 0.15ユーロ(24円)から 0.22ユーロ(35円)に引き上げる。    

アイルランドでは2002年に世界で初めて、レジ袋等の減少を目指して1枚 0.15ユーロのPlastax が課せられた。
その結果、1人当たりレジ袋は年間328枚から21枚にまで激減し、12億枚のレジ袋が節約され、プラスチックのゴミが95%以上減って環境改善に役立った。
1999年には買い物客の36%しか買物袋を持参しなかったが、2003年には90%が持参している。
税収は環境計画に使われている。
 

しかし、市中のゴミ削減を目指すロビー「Irish Business Against Litter」では昨年、市民がPlastax に慣れてしまって抑止力にならないとして、Plastax を0.30ユーロに倍増することを要求した。
Plastaxが0.15ユーロのままであったため、2006年には1人当たり 30枚にまで増えている。
 

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スコットランド:

スコットランドではプラスチック税は廃案となった。

2005年秋、1袋10ペンス(約20円)課税の「プラスチック袋に対する環境税」法案が審議され、通れば2007年から施行されることとなっていた。

スコットランドの環境及び農村開発委員会は同年暮れに、情報不足を理由に法案の審議を延期した。
法案は、レジ袋を減らすことで環境問題への意識を高めること、レジ袋の再使用・リサイクルによりゴミの埋め立て量を減らすこと、市中のゴミを減らすことを目的としているが、委員会では以下の点の追加情報が必要とした。
 ・レジ袋業界と小売業界への雇用及び経済的影響
 ・課税の手間とコストが大変で、目的達成が困難ではないか
 ・レジ袋税に付加価値税(VAT)を課すのかどうか

2006年10月、提案議員からの報告を受け、議会の委員会が審議した結果、本案実施が多くの予想外の影響を生むこと、ゴミを減らすという目的を果たし得ないということで、満場一致で本提案を却下した。

提案議員は尚も抵抗を示したが、環境大臣が政府の廃棄物管理戦略のなかでレジ袋縮減問題を検討することとなったため、目的を達したとして提案を引き下げた。しかし、政府が真剣に本問題に取り組まない場合は、再度提案するとしている。

ーーー

日本

2007年1月、スーパー大手のイオンは京都市左京区にあるジャスコ東山二条店でレジ袋の有料化に踏み切った。1枚5円。名古屋市、仙台市、横浜市の店舗でも有料化の協議を進めている。 

また、東京都杉並区とスーパー「サミット」はレジ袋を有料化して、削減効果や売り上げへの影響を調べる実験を成田東店で始めた。3月末まで行われる実験は、レジ袋を1枚5円で販売し、30%にとどまっている同店来店者のマイバッグ持参率を60%まで引き上げることを目標としている。

ーーーーーーーー

2.ナイジェリア Eleme石油化学

2006/5/26 「アジア企業の海外展開」で以下の通り述べた。 

インドネシア最大のポリエステルメーカーのインドラマSPL がナイジェリアの国有石油化学会社を買収した。
ナイジェリア政府は昨年
、国営の Port Harcourt 製油所と 石油化学会社 Eleme Petrochemicals Company の民営化を決定、インドラマが競売で韓国のLGやナイジェリア企業に勝ち、Eleme石化の75%225百万ドルで取得した。

国連傘下の国際金融公社(International Finance Corporation IFC)はこのたび、ナイジェリアのEleme石油化学に155百万ドルの投融資を行うことを決めた。

国連では同社がサハラ以南アフリカの最大の民営化事業であり、NGLをプラスチックへと付加価値を高めてナイジェリアの発展に資するものであるため、新生石油化学の成長を支えたいとしている。ナイジェリアには豊富な資源があり、また大きな消費者市場もあるため、石油化学の競争力はあるとしている。

具体的には経営主体のIndorama Petro Limited 50百万ドルの融資と80百万ドルの借入保証を行い、更に、Eleme 石油化学に補修投資資金として25百万ドルの直接融資を行う。

同社の能力は、オレフィンが30万トン、PE25万トン、PPが8万トンとなっている。

 

ーーー

3. アル ゴア

Al Gore のAn Inconvenient Truthがアカデミア賞(長編ドキュメンタリー賞)を獲得した。

The Economist (2007/2/22) は今秋のノーベル平和賞候補になるのではとし、理想的な大統領候補としている。
今のところ、本人は絶対に出ないとしているが、大統領になるはずであった彼が、ブッシュに代わってブッシュの失敗を覆すほど、素晴らしいことはないとしている。

 

Dow 買収説

| コメント(1)

Dow Chemical が買収されるかもしれないとの噂で、ミシガン州が大騒ぎになっている。

ロンドンのSunday Express が伝えたもので、Kohlberg Kravis Roberts KKR)、Blackstone Capital PartnersCarlyle Group などの投資ファンドがチームを組んでDow Chemical 買収を狙っているという。ニュースソースは明らかにしていない。
同紙はグループの目標価格は
1株60ドル(2月23日終値の38%増し)程度としており、これが事実なら史上最高の540億ドルの買収となる。

これを受け、インド紙はインドのReliance Industries が60億ドルを手当して、ファンドと組んで買収に参加するのではないかと伝えている。

Relianceはグローバルに石油化学、合成樹脂事業を拡大する機会を探っており、Innovene 買収には失敗したが、GEプラスチックの買収を狙っているほか、ダウと提携してJamanagar経済特区の新製油所での石化事業計画を実施し、見返りにダウの北米の石化事業に参加する交渉を進めている。
 
2007/1/16 「インドの Reliance Industries」 

 

Dowは基礎部門(売上の24%のプラスチックと11%のケミカルズ)が原料高騰、値下がりにより収益性が低下しているのを受け、対策としてJV化による“asset lightstrategyを進めている。
 
2007/2/3 「ダウ、PSとPP事業のJV化を検討」  

ダウはミシガン州でGM、フォードに次ぐ3番目の大企業で、州内の従業員は約 6,000 人、JVのDow Corningを加えると 8,700 人となる。
もし買収が実現すれば、収益性の低い基礎部門の処分などで、人員整理、工場閉鎖が起こるのではないかとの懸念が強い。


BIG 3の不振が続く中で、1月にファイザーがミシガン州で2,400人をレイオフし、工場閉鎖を行うことを発表したばかり。

BASFは2月27日、ドイツ企業から「欧州会社(Societas Europaea, SE)」に変身し、社名をBASF AG(BASF Aktiengesellschaft )からBASF SE にすると発表した。4月26日の株主総会に議題として提出することを決めた。本社は今まで通り、ドイツのLudwigshafen に置く。

ーーー

欧州の複数の国で事業を行っている大手企業は、各国の国内法の下での会社設立に代わって、欧州法の下での「欧州会社」として設立できるようになることが、2001年10月8日の欧州閣僚理事会において決定され、2004年10月施行となった。
正式名称はラテン語で
ソシエタス・ヨーロピアSocietas Europeae)で通称は‘SE’。
この構想は、30年にわたり懸案となっていたもの。

SEは欧州全域において事業展開することができ、すべての加盟国に直接適用される欧州法に準拠する。
欧州会社法は二つの法令(legislation)から構成され、一つは会社法の諸条項を制定する規則(regulation=加盟国に直接適用される)、もう一つは労働者の経営参加に関する指令(directive=各加盟国の国内法として採択されたのち施行される)。

欧州会社は登録住所の置かれた加盟国において登録され、複数の加盟国にある既存企業を合併し、同じ規則と統合化された経営・報告システムの下に、EU全域で事業を展開することができる。(現在は他の国で子会社を設立)
   
また、法的制限を伴うことなく欧州域内のリストラクチャリング、事業再編および事業統合を柔軟に行うことが可能となる。
(子会社設立、解散、合併などの代わりに、単に事務所の設置、廃止、統合をすれば済む)
事業環境が変化した場合は、他の加盟国へ本社を容易に移転することが可能となる。
   
更に、子会社の場合は親会社又は他の子会社との取引では付加価値税(VAT)が課せられるが、欧州企業の場合は社内取引となるためVATは課せられないというメリットもある。
   
法人税課税は各国の税法に従い、他のすべての多国籍企業と同様に取り扱われる。
   
SEは上場する必要はなく、非公開企業も中規模企業もSEになることはできる。最低資本金は12万ユーロ。

 

今までに欧州会社になった企業には、ドイツの保険会社 Allianz、フィンランドの電機会社 Elcoteq、スウーデンの金融サービス会社Nordea、ノルウエーのバッテリーメーカーNarada Europe などがある。


参考 Statute for a European Company http://europa.eu/scadplus/leg/en/lvb/l26016.htm
    オランダ経済省企業誘致局 レポート 
http://www.nfia-japan.com/report/se.html

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