ニッケル世界最大手のNorilsk Nickelは8月8日の取締役会で、KGB出身のVladimir I. Strzhalkovsky 前ロシア連邦観光局長官の最高経営責任者(CEO)就任を承認した。
同社は7月7日の取締役会(下記のRusal を新たな株主として迎えた初めてのもの)で、Denis Morozov 社長が解任され、大株主のInterrosのオーナーのVladimir Olegovich Potaninを会長に、Interros副社長のSergei BatekhinをCEOに選出したばかり。
短期間のトップ交代は、同社の29.78%を保有するInterrosのVladimir Potanin と、本年4月にNorilsk Nickel の元社長Mikhail Prokhorov から〔25%+1株〕を取得したロシアのアルミ大手Rusal のオーナーOleg Deripaska との争いの結果で、Rusal は将来的にNorilsk との完全合併を含むさまざまな選択肢を検討していると表明し、「市場の環境が好ましければ、われわれは追加的な株式取得を検討する」と述べている。
Potanin はこれに危機感を持ち政府を味方につけたもの。
政府の強硬派はエネルギーに続き非鉄などの産業へ利権拡大を目指しており利害が一致した。
Rusal は、専門家が必要として、今回のStrzhalkovskyのCEO選出に反対したが、押し切られた。
Norilsk Nickel とRusal の合併は遠ざかったと見られている。
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Norilsk Nickel はシベリア北部のNorilsk を拠点に作られた国営の非鉄金属企業。
北シベリアのTaimyr半島における銅・ニッケル鉱床の探鉱は1920年代に開始され、開発はソ連の連邦保安院の保護の下、政治犯や囚人を利用して1935年に開始された。
1953年までには、ソ連邦生産の35%のニッケル、12%の銅、90%の白金族金属をNorilsk のコンビナートから生産されるようになった。
同社はソ連崩壊後の1993年に民営化された。民営化にあたっては当時「オリガルヒ」と呼ばれた新興の寡頭資本家の一つOnexim Groupが株式の過半数を握って支配権を得た。(これを同グループの二人、Vladimir Potanin とMikhail Prokhorov が分け合った)
その後のパラジウムとニッケル価格の上昇による増収により、投資が可能となった。
現在、Polar Division はTaimyr半島でニッケル・銅・パラジウム・プラチナ・金を生産、Norilsk などのプラントで溶錬や製錬を行なっている。
Kola Division はKola半島の4鉱山でニッケル・銅・パラジウム・プラチナ・金を含む鉱石を掘っている。
100%子会社のPolyusは、クラスノヤルスク地域で金を含む酸化鉱と硫化鉱を採掘している。
Norilsk Nickelは2003年にカナダの鉱山会社Stillwater Mining Companyの55.4%を買収。さらにフィンランド、オーストラリア、南アフリカ、ボツワナの非鉄金属企業を次々に買収し、多国籍企業になった。
2007年にはニッケルで世界第10位のカナダのLionOre Mining International Ltd. を48億ドルで買収した。
ニッケルと金の採掘業者で、豪州、ボツワナ、南アで活動している。
同社の売上高内訳(2006年ベース)は以下の通りとなっている。
ニッケル |
54% |
銅 |
24% |
パラジウム |
11% |
プラチナ |
10% |
金 |
1% |
Norilsk Nickel によると、2007年の同社の世界シェアは以下の通り。
(下記の表と若干異なる)
・ニッケル |
|
18.8% |
・パラジウム |
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46.3%(うちStillwater 3.1%) |
・プラチナ |
|
12.0% (うちStillwater 1.0%) |
・銅 |
|
2.7% |
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シェア(石油天然ガス・金属鉱物資源機構まとめ:日経記事より)
ニッケル鉱石 |
Norilisk Nickel (ロシア) |
20.6% |
Vale do Rio Doce (ブラジル) |
17.6 |
BHP Billliton (英豪) |
10.9 |
Xstrata (スイス) |
5.7 |
中国 (国全体の生産量) |
4.8 |
5社合計 |
59.6 |
プラチナ鉱石 |
Anglo Platinum (南アフリカ) |
40.9 |
Impala Platinum (南アフリカ) |
22.2 |
Norilisk Nickel (ロシア) |
12.7 |
Lonmin PLC (英) |
12.0 |
Vale do Rio Doce (ブラジル) |
2.2 |
5社合計 |
90.0 |
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Potanin会長は鉄鉱石、石炭、ウランなどへの多角化をしたいとしており、株式の50% がロシアの手に残ることを条件に合併もありうるとしている。
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2008年4月、ロシアのアルミ大手Rusal が、Onexim Group (Norilskの元社長のMikhail Prokhorov が所有)からNorilsk Nickel 株の25%+1株の購入取引を終了した。(現在の持ち株は25%+2株)
2007年12月に、優先権をもつPotanin所有の持株会社Interrosが、Onexim Group保有のNorilsk Nickel 株を購入しないと発表、この結果、さきに締結していたRusal との合意が有効となった。
対価は Rusal の株式14%および現金(およそ70億ドルとされている)で、この結果、Rusalの保有比率は、Oleg Deripaska が56.76%、Prokhorov が14%、Glencoreが10.32%、Sualの元株主が18.92%となった。
Rusal については 2006/9/5 ロシアのアルミ最大手RUSAL、同国2位のSUALを買収
8月5日、Onexim Group がNorilsk Nickel の株式の16.66%を取得手続中で、これをPotaninのInterros に売却する意向であると発表した。
取引は11月15日までに完了しなければならず、Potaninが100億ドルでこれを購入する準備があるとされている。
これが実現すれば、Interrosの持ち株は30%を超えることになり、法律に則って他の株主に買取りオファーを行わなければならなくなる。
また、Interrosがすでに30%以上を保有しているにも関わらず買取りオファーを行っていない可能性もある。
このためRusal はInterrosに詳細情報提供を求めるとともに、連邦金融市場庁に対して、株主構成比率に関する調査を行うよう要請した。
これに対し、連邦金融市場庁は、InterrosがNorilsk Nickel の株式の30%以上を保有しているという情報はないとしている。
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今回の取締役会の前日、Rusal は声明を発表、過去数年、 Vladimir Potanin の Interros がNorilsk Nickel を牛耳ってきたが、その間、業績は低迷したと批判、 StrzhalkovskyのCEO選任についても、頻繁にCEOを交代し、しかも鉱業の知識も経験もない人間を選ぶのはおかしいとして反対した。
これに対し Norilsk Nickel は、業績は上がっており、批判は的を得ていないと反論している。
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Rusal は法的措置も含め、今後も争うとしており、混乱が続きそうだ。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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