2015年7月アーカイブ

貿易統計(7月30日発表)によれば、2015年6月のLNGの輸入価格は55,251円/トンとなった。

2010年1月の輸入価格は48,834円/トンであったが、2011年3月の東京電力福島第一原発事故とその後の日本の全原発の停止により、電力各社はLNGのスポット買いに走り、その結果、LNG価格 (ドル建て)は上昇した。
2012年末からは急激な円安となり、輸入価格(円建)は急騰した。

税関長レートは貿易統計で示されている。

ドル建て価格で見ると、原発事故前には10ドル/百万BTU程度であったのが、事故後は16ドル前後で推移した(一時は18ドルを超えた)。

しかし、2014年夏以降の原油価格の下落により、長期契約では原油価格スライドが主の天然ガスの平均通関価格も本年初めから急激に下落し、2015年5月には 9ドルを割り、6月には 8.47 ドルまで下がった。 (原油の指標価格の下落と、それを基にしたLNG契約による輸入LNGの通関時期には数ヶ月のズレがある)

輸入LNG 1トン=53百万BTUで計算し、税関長レートでドルに換算した。

円建ての輸入価格も、最高価格は2014年12月の96,535円/トンで、 その後、円安は続くものの下落し、2015年6月の輸入価格は55,251円/トンとなった。

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経済産業省では2014年からLNGのスポット取引の動態を明らかにし、LNG先物市場の検討など行政施策の基礎材料とするとともに、LNGの輸入や消費などをする事業者の事業に資することを目的とし、スポットLNG価格調査を行い、発表している。

2015年6月の契約ベース、入着ベースはともに7.6ドル/百万BTUとなっている。(5月については、報告者がゼロまたは1社のため非公表)

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数年後に米国産LNGの日本への輸出が始まる。

現在の通関価格は現時点の米国産LNGの想定輸入価格を下回る水準になっている。

2015年6月時点の計算は下記の通り。(百万BTU当たり)

天然ガス スポット価格   2.78ドル  
LNGのFOB価格   6.20ドル (2.78x1.15+3)
同 CIF価格   9.20ドル  
       
LNG通関価格   8.47ドル  


天然ガス スポット価格は米国EIA(Energy Information Administration) の発表による。

米国産のLNGの輸出が開始されると天然ガス価格は6ドル/MBTU程度まで上昇するとの説があるが、現在のところは3ドルを下回る水準である。

米国のLNGのFOB価格はCheniere Energy の契約価格フォーミュラによる。
  
原料ガスコスト(Henry Hub 渡し市況 x 115%)+固定費
  固定費分は韓国向け、インド向けなどの 3ドル/MBTUとした。

運賃はGulf Coast からの3ドル/MBTUとした。(カナダ西海岸からの場合は1.24ドルとされる)

2012/2/24 米国からのLNG輸入問題 


 

6月の通関平均価格が8.47ドル、入着ベーススポット価格が7.6ドルであることから、スポットの方が安い。

現時点では価格面では原発停止の影響はないといえる。

2015/7/22 原発停止の燃料コスト
 

 

 


iPS細胞やES細胞を目的の細胞に変化させて人に移植するとき、目的細胞に変化できずに残った細胞があると 、それが腫瘍になるおそれがある。

鹿児島大の小戝健一郎教授(遺伝子治療・再生医学)のチームは、がんになる可能性がある細胞だけを特殊なウイルスで取り除く方法を開発した。

研究チームは、がん細胞で働いているサバイビン(survivin) という遺伝子に注目した。

細胞は、DNAを損傷するストレス刺激や、細胞へのウイルス感染やがん化させる刺激など、さまざまな刺激に対する生体防御機構の一つとして、自らアポトーシス(細胞死)を起こして自殺する機構を持っているが、複数のカスパーゼ (タンパク質分解酵素)が順に活性化される一連のシグナル伝達経路でこれを誘導している。

サバイビンタンパクは、カスパーゼの活性化を阻害し 、アポトーシスを抑制するため、ガン細胞が増殖する。

逆に、ガン細胞でサバイビンの機能を破壊すると増殖が止まり、アポトーシスが誘導され、ガン細胞が消滅する。

サバイビンはほとんどの種類のガン細胞で高度に発現しているのに対し、完全に分化した細胞ではほとんど産出されない。また、がん患者でのサバイビンの量は、がんの悪性度や患者の予後とよく相関することも分かっている。

研究チームは、ヒトの風邪の原因となるアデノウイルスを使い、サバイビンを持つ細胞だけで増殖して、その細胞を殺すように遺伝子を組み換え たサバイビン反応性 m-CRAをつくった。

れまでに、遺伝子治療の技術を発展させてガンのみで特異的に増殖する制限増殖型アデノウイルス(CRA=Conditionally replicating adenovirus)によるウイルス療法が報告されているが、CRAの ガン特異性(ガン細胞だけを攻撃して、正常細胞は攻撃しない ⇒ 安全性と治療効果)は完全ではなく、また効率的な標準化作製技術も未確立である。

チームは、このCRAの問題点を克服するためにガン特異性の向上と標準的な作製技術の確立を目指し、多因子による精密な ガン特異化や、自由な治療遺伝子導入もできる次世代のCRAであるm-CRA(CRA regulated with multiple tumor-specific factors)を標準的に作製できるシステムを開発した。

単一の因子でガンの特異化を試みる従来の単純なCARではなく、ウイルスの増殖制御部を最大4つの異なるガン特異化の因子で精密に制御することで、ガンの特異標的化を精密に行うことが可能となり、安全性が格段に向上される。
さらに治療遺伝子も搭載可能であるため、ガン治療効果の増強も可能である。
ウイルス遺伝子の改変を行い、その性格を変えることも可能である。
 

iPS細胞やES細胞から作った未分化細胞と正常に分化した細胞を混ぜて培養し、改変したウイルスを投与すると、未分化細胞だけが1週間ですべて破壊された。正常な細胞は死滅しなかった。

小戝教授は「ガン化するかもしれない細胞を積極的に取り除こうとする全く新しい方法で、再生医療の臨床現場で使える可能性がある」と話している。




 

後発医薬品世界最大手のイスラエルのTeva Pharmaceutical Industriesは7月27日、米医薬大手Allergan plc から後発薬事業を買収することで最終合意したと発表した。

買収額は405億ドルで、現金で337.5億ドル、Teva株式で67.5億ドルで支払われる。
Allerganはこれに加え、免疫調節薬 lenalidomide (Revlimid®) のジェネリック医薬品の今後の利益の50%分を受け取る。

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Allergan plc は下記の歴史を持つ。

2012年4月25日、米ジェネリックメーカーのWatson Pharmaceuticalsは同じくジェネリックメーカーのActavis Groupを42.5億ドルで買収することで合意した。

Watsonは2012年10月31日、統合会社の社名を2013年からActavisにすると発表した。

Actavisは2014年11月17日、しわ取りの医薬品BOTOX®が有名なAllergan plc を660億ドルで買収することで合意した。

 Actavis はAllergan の買収完了の3ヵ月後の本年6月15日に、買収した会社の社名のAllerganに改称した。

2回の買収で、ともに被買収会社の社名に改称したこととなる。

   Watson Pharmaceuticals → Actavis → Allergan 

Aktavisは日本ではあすか製薬とのJVの「あすかAktavis製薬」を持っている。

Allerganは1948年に抗アレルギー点鼻薬の製造販売のため設立された。抗ヒスタミン点眼薬、ALLERGAN®を発売した。

現在は、複数の専門領域に特化し、アイケア、神経科、皮膚科、美容医療、泌尿器科の有力な製品を抱え、売上高 54億ドルのグローバルヘルスケア・カンパニーに成長している。
しわ取りの医薬品BOTOX®が有名。

Allerganを巡っては買収合戦が繰り広げられた。

Allerganは2014年11月17日、Actavisによる660億ドルの買収案に合意した。

2014/10/22 米製薬会社 Allergan を巡る買収合戦 

関係する企業のその他の買収合戦は下記参照

2015/5/20 アイルランドの製薬大手 Endo、米の Par Pharmaceutical を買収

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今回、Allergan の旧本体であるActavis のグローバルなジェネリック事業(米国及び海外のジェネリック販売、販売代理店Medis、グローバルなジェネリック生産活動、グローバルなジェネリックのR&D、眼科を除くOTC事業)をTevaに売却する。

Allergenには、ブランド医薬品、メディカルエステティック事業、バイオシミラー開発、流通(ANDA)が残る。

  事業 2015年売上高
Allergan Allergan、brand医薬品、流通(ANDA)、Biosimilars 155億ドル
売却 Actavis、MEDIS、Generic R&D、OTC 65億ドル

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Teva Pharmaceuticalsは同じ2015年4月21日、後発薬大手のMylanに対し買収提案を行った。

Mylan N.V. は2015年4月8日、アイルランド製薬大手のPerrigo Company plc に買収を提案したと発表した。

2015/4/16  ジェネリック医薬品大手のMylan、アイルランド製薬大手に買収提案

しかし、4月21日に同社の取締役会が満場一致でMylanの買収提案を拒否したと発表した。

Teva PharmaceuticalsはPerrigoによる拒否発表の同日、そのMylanに対し現金と株式による400億ドルでの買収提案を行ったことを明らかにした。

Mylanの全株式を1株当たり82ドルで、半分を現金、半分をTeva の株式で買収するもの。

Mylanは4月27日、Tevaの買収案を拒否した。Mylanの企業価値を「大幅に過小評価している」としている。

2015/4/24 イスラエルのTeva Pharmaceuticals、同業のMylanに買収提案     


Tevaは今回のAllergan の後発薬事業買収で、Mylanに仕掛けていた買収提案は撤回する。

Tevaは2016年前半にも買収を完了する予定。

合併により、売り上げ規模は2014年の203億ドルから2016年に約260億ドルに上る見通しで、後発薬市場で他社を引き離し、首位を固める。

製造及びR&D拠点も世界中に広がる。

 

 


ロッテホールディングスはホームページに、2013年度日韓ロッテグループ業績報告を掲載している。

単位:億円、韓国分は年平均レート(1ウォン=0.0893円)で換算

  日本 韓国 合計
(売上高)
 菓子 1,605 921 2,526
 冷菓 689 444 1,133
 飲料 0 1,698 1,698
 飲食等 605 1,768 2,372
(食品合計) 2,899 4,831 7,730
 流通 0 22,611 22,611
 観光・サービス 1,145 4,296 5,441
 化学・建設 0 14,404 14,404
 金融・投資 34 3,347 3,381
売上高合計 4,078 49,489 53,567
 
営業利益 227 2,673 2,900
経常利益 228 2,387 2,615
当期純利益 160 1,803 1,963
     

 
   
 
 


 
 

 

Lotte Chemical は韓国(2箇所)とマレーシアに合計280万トンのエチレン能力を持つが、ルイジアナ州にシェールガスに付随するエタンを分解し、エチレンを生産するJVと、エチレングリコールのJVの設立を決めた。

2015/6/22  韓国 Lotte Chemical、米国で石油化学


なお、ロッテホールディングスの最近の発表では、2014年時点の連結の資産は8兆9000億円、負債は5兆7000億円で、売上高は6兆5000億円、営業利益は2300億円だった。

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ロッテホールディングスは7月17日、韓国ロッテの会長でロッテホールディングスの取締役副会長の重光昭夫(辛東彬)氏が、ロッテホールディングスの代表取締役副会長に就任した。
重光昭夫(辛東彬)氏は重光武雄(辛格浩)会長の次男。

重光武雄(辛格浩)会長、重光昭夫副会長、佃孝之社長の代表取締役3人体制となった。

付記
ロッテホールディングスは7月28日、取締役会を開き、創業者の重光武雄会長(92)が代表権を外れ、名誉会長に就く人事を決めた。
一族の内紛の結果とされ、今後の株主総会が注目される。

本年1月、ロッテホールディングスは、副会長の重光宏之(辛東主)氏(重光武雄会長の長男)を解任した。重光武雄(辛格浩)会長の決定とされる。
日本担当の長男が韓国のロッテ製菓株を買い進め、創業者がこれに怒った、との説もある。

これまでは、兄が日本、弟が韓国と、兄弟で分業体制を敷いてきたが、今後は昭夫氏が韓国の会長、日本の副会長として、日韓両方を見ることとなる。

韓国ロッテ幹部は「日本ロッテは佃氏を中心に引き続き経営を担い、昭夫氏が韓国事業の経験を生かして経営戦略をサポートする」と指摘し、日韓のロッテ間では事業交流がほぼ皆無だが「今後はより親密になるだろう」と話した。

今後はアジア地域の免税店、製菓事業などで協力・提携を具体化するなど一体経営をスタートさせる。

 

 

富士フイルムと協和発酵キリンは7月24日、両社の共同出資会社協和発酵キリン富士フィルムバイオロジクス(FKB)が開発中のバイオ後続品(バイオシミラー)で、英 AstraZeneca と提携すると発表した。

対象となるバイオシミラーは、FKB が2014年11月から欧州で第Ⅰ相臨床試験を開始している「FKB238」で、大腸癌や非小細胞肺癌などに高い治療効果を持つ抗VEGF ヒト化モノクローナル抗体製剤アバスチン(一般名 bevacizumab)のバイオシミラー。

VEGF血管内皮細胞増殖因子)の働きを阻害することにより、血管新生を抑えたり腫瘍の増殖や転移を抑えたりする作用を持つ。
Genentech (Rocheの100%子会社)が2004年に開発した。

米調査会社IMS Healthによると、アバスチンの世界売上高2014年に6,070百万ドル、製品別の売上高が11位だった。

日本ではRoche子会社の中外製薬が販売している。

JV(社名未定)は英国に設立する。AstraZenecaとFKBは4500万ドルずつを出資、FKBは「FKB238」に関する権利をJVに移行させ、対価として一時金4500万ドルを受け取る。(AstraZenecaは現金4500万ドルを、FKBは4500万ドルと評価した権利を出資するもの)

FKBの非臨床および臨床などの開発データをもとに、AstraZeneca が持つ癌領域での開発を販売に関するノウハウを活かし、世界的な開発と販売に向けた取り組みを加速する。アバスチンの特許切れ2018~19年の発売を目指す。

IMS Healthによると、AstraZenecaの2014年の売上高は33,313百万ドルで、世界第7位。
① Novartis、
② Pfizer、③ Sanofi、④ Roche、⑤ Merck & Co.、⑥ Johnson & Johnson、⑦ AstraZeneca、⑧ GlaxoSmithKline

 

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協和発酵キリン富士フィルムバイオロジクス(FKB)はバイオシミラー医薬品の開発・製造を目的に、2012年3月27日、富士フイルム 50%、協和発酵キリン 50%で設立された。

医薬品市場において、化学合成では達成できない薬理作用がある複雑な構造を持ったタンパク質などの生体分子を活用した、副作用が少なく高い効能が期待できるバイオ医薬品の比率が高まっており、バイオ医薬品と同等・同質の効果を持つバイオシミラー医薬品市場は、医療費の高騰問題や、2020年にかけて先行バイオ医薬品が特許満了を迎えることを背景に、世界的に拡大していくと予想されている。

富士フイルムは、医薬品事業を重点・成長分野として位置付け、事業展開を行っており、なかでもバイオ医薬品分野においては、「ペルセウスプロテオミクス」によるバイオ新薬の開発や英・米の子会社「 FUJIFILM Diosynth Biotechnologies」によるバイオ医薬品受託製造を通じて、取り組みを加速させている。

ペルセウスは、東京大学先端科学技術研究センターのシステム生物医学ラボラトリーからタンパク質発現等に関する研究成果の技術移転を受け、同ラボラトリーが誇る世界最先端の分子生物医学分野のサイエンティストと臨床医とともに、がんや生活習慣病に対する抗体医薬品を始めとするバイオ医薬品やバイオ マーカーを開発。

富士フィルムは2006年に第三者割当増資を引き受け、22%の筆頭株主になったが、2009年2月に第三者割り当てにより株式の77%を取得、子会社とした。

協和発酵キリンは、バイオテクノロジーを主要技術とした新薬の創出を行っている。

新会社では、富士フイルムが長年写真フィルムなどの事業で培った高度な生産技術や品質管理技術、解析技術と、協和発酵キリンがバイオ医薬品の研究・開発・製造で蓄積してきた独自技術・ノウハウを融合させて、バイオシミラー医薬品の画期的な生産プロセスの創出やコスト低減を行っていく。


協和発酵キリン富士フィルムバイオロジクス(FKB)は、設立後、第一弾として、関節リウマチなどに高い治療効果を持つヒト型抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体製剤 Humira一般名 adalimumab のバイオシミラー医薬品(FKB327) の開発を始めた。現在、米国などで臨床第Ⅲ相試験を実施している。

Humila(adalimumab) は抗体成分である蛋白配列が完全ヒト由来であるため、先行のキメラ抗体製剤よりも理論的に生体適合性が高い(より過敏症を起こしにくい)とされる。

BASF傘下の製薬
会社であったKnoll AG(後に米
Abbott Laboratories が買収)が創製した。
米調査会社IMS Healthによると、2014年の売上高は11,844百万ドルで第一位となっている。
日本で
は、アボットジャパンが輸入し、エーザイが販売している。

2012年10月に、第二弾として、bevacizumabのバイオシミラー(FKB238)の開発を決めた。
協和発酵キリンがすでに確立している生産細胞(バイオ医薬生産用の細胞にbevacizumabの遺伝子を導入したもの)を導入する。


 

 


イラン核問題をめぐってウィーンで協議を続けていた
米英独仏中露の6カ国とイランは7月14日、問題解決のための「包括的共同行動計画」で最終合意に達した。
イランは今後10年以上にわたり核開発を大幅に制限し、軍事施設に対する査察も条件付きで受け入れる。

6カ国は、イランが核開発を縮小する見返りに、原油禁輸や、金融取引を制限してきた対イラン制裁を解除していく方針で、AP通信は、今回の合意で数百億ドル分の制裁が緩和されると伝えた。

ただし、米議会は本年5月に最終合意の内容を検証し、承認するかどうかを判断する決議を可決している。
米議会は今後60日間にわたり、最終合意の内容を検証するが、この間は大統領は対イラン制裁を解除できない。
議会が合意を承認しない場合、大統領は「合意の履行を妨げるいかなる立法にも、拒否権を発動する」としている。

イランは国際的な経済制裁の解除をにらみ、原油の供給拡大の準備に入った。

イランの足元の輸出量は日量 約120万バレルで、制裁前の半分以下に落ち込んでいるが、石油相は、輸出は制裁解除直後に日量50万バレル、6カ月後には100万バレル増えるだろうと指摘し、近い将来に輸出量は日量250万バレルまで回復するとの見通しも語った。

イランのタンカー船団は約4千万バレルの原油を蓄えており、制裁解除に伴う在庫放出で1700万バレル以上を直ちに出荷できる模様。

イランは、制裁が解除された場合に、潜在的な出荷分を吸収してもらうほか、新たな油田に投資してもらうため、以前同国から原油を購入していたEUの企業、例えば世界最大の独立系石油取引会社のスイスのVitol Groupや、Shell、TOTAL、ENIといった石油生産大手、アジアの既存の輸入者とも連絡を取っているとされる。

原油相場で一段の価格下落圧力になる。

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イランはOPEC第2位の生産国としてのかつての地位を取り戻すことに意欲を示しており、OPEC内の競争が激化する可能性があ る。

OPECの国別生産枠は2008年11月が最終で、イラクを除く全体 日量 27,300千バレルのうち、サウジの8,477千バレルに次ぐ第二位の3,618千バレルであった。

OPECは2012年1月にイラクを含めた全体枠を30,000千バレルと決め(国別枠なし)、その後変更していない。

生産枠   日量千バレル
  2008/11
(除イラク)
2009/1
(除イラク)  
2012/1~
(含イラク)  
Algeria    1,286   






国別なし 






国別なし
 

Iran    3,618   
Kuwait    2,399   
Libya    1,623   
Nigeria    2,050   
Qatar 785     
Saudi    8,477   
UAE    2,433   
Venezuela    2,341   
Angola    1,801   
Equador 493   
Iraq (ー)     (-)
合計 27,300      24,845 30,000


サウジの現在の生産量は約1千万バレルとなっているが、イランは2012年7月の制裁開始で生産量は大きく減少しており、
6月の生産量は日量2,800千バレルとされる

イランの場合、老朽施設の更新が急務で、2022年までにエネルギー産業に1800億ドル(約22兆円)を投資する計画を表明している。

外国の石油大手の誘致のため、資源開発の契約方式の見直しも進めている。現行の「バイバック契約」に代え、外国企業が出資比率に応じ収益を得られるようにする見通し。

但し、国際石油資本がイランに再参入し、増産が軌道に乗るには1~2年かかるとの見方がある。
OPECも、年内は生産枠を据え置く見通し。

来年は世界の原油需要が日量134万バレル拡大すると予想 しており、「非OPEC国の生産が想定通りに鈍化し、同時に需要の伸びが来年も続くなどの条件が満たされれば、市場はイラン産原油を吸収することができる」としている。

 

 


台湾の感染症対策を行う衛生福利部疾病管制署(台湾CDC)はこのたび、抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®錠200mg」(
Favipiravir) を備蓄することを決定した。
これを受け、富士フィルムは7 月13 日に同署へ「アビガン錠」を供給した。

今回の備蓄は、台湾でヒトへの感染の危険性が高まっている鳥・豚インフルエンザおよび新型インフルエンザの治療薬として台湾国民のリスクに備えるもので、「アビガン錠」は現時点では台湾CDCから製造販売承認されてはいないが、台湾CDC は「アビガン錠」の持つ新しい作用メカニズムなどを評価し、「アビガン錠」の特例輸入を決定した。

「アビガン錠」はヒトが鳥・豚インフルエンザや新型インフルエンザに感染した時に使用され、また実際投与された場合には、その情報が富士フイルムに提供される。

今回の供給は、台湾CDC から「アビガン錠」の輸入委託を受けた、現地製薬大手の生達化学製薬を通じて行った。今後、富士フイルムは、同社と提携し、台湾での製造販売承認の早期取得を目指す。

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ファビピラビルは富士フイルム傘下の富山化学工業 (富士フイルム 66%、大正製薬 34% 出資)によって1998年に発見された。

インフルエンザウイルスは、感染した細胞内で遺伝子を複製し、増殖・放出することで他の細胞に感染を拡大する。

現在、治療に用いられている抗ウイルス剤はノイラミニダーゼ阻害剤(Neuraminidase inhibitors)で、増殖されたウイルスの放出を阻害して感染の拡大を防ぐものだが、アビガンは、ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐRNAポリメラーゼ阻害剤である。

鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)及び A(H7N9)等に対する抗ウイルス作用が期待されており、実験動物レベルでは既に効果が確認されている。

富山化学工業は2014年3月24日、日本で錠剤タイプの新しい抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®錠200mg」の製造販売承認を取得した。

アビガンは、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、既存の抗インフルエンザ薬が無効又は効果不十分である場合に備え、新しいメカニズムのアビガンを使用可能な状況にしておくことは意義があると判断され、世界に先駆けて国内で承認となった。

直ちに医家向けに販売するのではなく、厚生労働大臣から要請を受けて製造・供給等を行うもので、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、本剤を当該インフルエンザウイルスへの対策に使用すると国が判断した場合に、患者への投与が検討される。

承認には次のような厳しい条件がついている。

動物実験で初期胚の致死及び催奇形性が確認されていることから、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。

日本人を対象にした薬物動態試験と追加臨床試験結果を医薬品医療機器総合機構に提出し、成績が確認されるまでは「原則製造禁止」 。
 (申請に用いたのが米国の試験結果で、日本人を対象にしたものがなかった。)
 但し、パンデミック時など厚労相が「要請」した際は製造できる。

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WHOは2014年8月、エボラ出血熱の患者が過去最大の規模で増え続けている事態を受け、安全性などが最終的に確認されていない未承認の薬の使用を一定の条件の下で認める方針を明らかにした。

ファビピラビルは既にインフルエンザ感染者の抗ウイルス剤として治験が重ねられており、エボラ出血熱の治療に適用する上で優位性がある。

富士フイルムは2014年9月26日、「アビガン® 錠200mg」が、エボラ出血熱に罹患した患者の治療のため、フランスの病院で投与されたと発表した。
「アビガン錠」を含む3剤を服用していたエボラ出血熱によるフランス人女性患者は10月4日に無事退院した。

韓国保健福祉部は2014年10月30日、「富士フイルムとの間でエボラ治療剤アビガンの供給について合意した」と明らかにした。

ギニア南東部の治療センターでアビガンの臨床試験を行っている国際医療活動連盟(ALIMA)は、血中のウイルス量が低・中レベルの患者では、死亡率が30%から15%に低下したと発表した。ただ、ウイルス量が多ければ効果はみられないという。

富士フイルムHDの古森重隆・会長兼CEOは2015年2月27日、アビガンにはこれまでに約20カ国が関心を示し、大量の注文に応じる用意ができていると述べた。

 

 


タイ石油公社 PTTはタイの6つの製油所のうち、5つを所有し、独占との批判を受けていた。

同社は本年に入り、そのうちの1社の持株全てを売却、他の1社についても年内に手放す。

  精製能力
(千bpd)
PTT 他株主
Thai Oil 275 49.10%  
IRPC
(旧称 TPI)
215 38.51%  
PTT Global Chemical
(旧称 PTT Aromatics & Refining)
(元はRayong Refinery)
145 48.89%  
Star Petroleum Refining
 
155
 
36%→0%(IPO)
 
Chevron 64%→55%(IPO後)
Bangchak Petroleum 120 27.22%→0% 買い手
Vayupak Fund →15.60%
Social Security Office →14.43%
Esso Thailand 177   ExxonMobil


2015年2月、PTTはBangchak Petroleumの持株 27.22%のうち、15%を政府のVayupak Fundに売却、続いて2015年4月に残りの12%を政府のSocial Security Fundに売却した。

売却後のBangchakの株主構成は、Vayupak Fund 15.60%、Social Security Fund 14.43%、財務省 9.98%、一般株主 59.98%となっている。

PTTの関係者はこのたび、Star Petroleum Refining がPTTの持株(36%分) をもとに株式公開(IPO)を行うことを明らかにした。
これにより200~250億バーツ(588~735百万ドル)を集める計画で、PTTはStar Petroleum を手放すこととなる。

PTTは独占の批判を避けるため、以前からIPOを通じての売却を検討してきたが、規制面での諸問題とJV相手のChevronとの意見の相違からIPO 実施が何年も遅れていた。
当初、政府はIPO実施後もPTTが少なくとも25%を保有することを求めていたが、本年3月にこの条件を外した。
JV相手のChevronはIPO後にも55%の出資を行う。

この結果、PTTの石油精製事業は、Thai Oil、IRPC (旧称 TPI)、PTT Global Chemical(元はRayong Refinery)の3つとなる。

PTTの精製事業そのものは、比較的好調で、2015年第1四半期の稼働率は 97%、精製マージンは前年同期比で13%増、純利益は3億5,500 万ドルで前年同期から274%増加している。

同社では、「ガス時代の到来に向けた準備を整える」としており、上流ではパイプラインやLNGターミナルの新増設、下流では石油化学事業の収益力強化に向け投資を積極化していく方針としている。

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各社の概要は下記の通り。

Thai Oil

半世紀前に35千bpdでスタートし、現在は275千bpdでタイ最大の製油所。

下記の子会社を持つ。

Thai Paraxylene
Paraxylene 527千トン
Mixed Xylen 52千トン
Benzene 259千トン

Thai Lube Base

 

Solvent and Chemical Products

 

IRPC(旧称 Thai Petrochemical Industry:TPI)

Thai Petrochemical Industry (TPI) Prachai Leopairatana の経営であったが、1997年に石油化学事業への巨額投資や事業多角化のための借入金が経営を圧迫し、運転資金もショートしてが経営危機に陥った。
その後、いろいろの再建計画が立てられたが、Prachai が居座りを続け、迷走した。
2005
年にはタイ証券取引所が、政府主導の再建案に抵抗を続ける同社創業者のPrachai を告発し、管財人に対しPrachai 解任を指示した。
2006年5月になり、同社取締役会はようやく
Prachai を解任した。

IRPCと改称した現在の同社の現在の株主はPTT が38.51%、Government Savings Bank 9.54%など。

石油化学の状況は 2006/6/8 タイの石油化学の現状

PTT Global Chemical

1991年にShellとPTTがRayong Refineryを設立し、145千bpdの製油所を建設した。

1999年のアジア経済危機に直面し、Rayong Refinery(Shell/PTT) はStar Petroleum Refining(Chevron/PTT) とのJVのAlliance Refining Companyを設立し、営業提携した。
(2009年に提携を解消)

2004年にShellは持株をPTTに譲渡し、撤退した。

2007年にRayong Refinery とPTT傘下のAromatics (Thailand)が合併し、PTT Aromatics and Refining とし、2011年にPTT Chemical と合併してPTT Global Chemical となった。

Star Petroleum Refining

1992年にChevron South Asia 64%、PTT 36%の出資で設立。
1996年に130千bpdでスタート。
1998年に能力を155千bpdにアップ。

1999年にRayong Refineryと提携したが、2009年に解消。

Bangchak Petroleum

1984年設立。

120千bpdの製油所を運営、1000箇所以上のサービスステーションを持つ。
太陽光発電も行っている。

2014年10月に、フィリッピンで主に活動する豪州の石油・ガス会社 Nido Petroleumの株の81.41%を買収した。




 

河野太郎代議士の「ごまめの歯ぎしり」(2015/7/15)は「原発停止の燃料コスト」を取り上げた。

これまで経産省は、原発が停止したことによる燃料費の増加がいくらだという数字を何回か出している。
2012年度に3.1兆円増えたと経産省は主張している。

しかし、これは嘘だったとし、経産省に2010年度から2014年度までの各年度に電力10社が使用した実際の化石燃料の使用量、その年度の平均燃料価格を出させた。

LNG、石油、石炭、ウランの合計輸入金額は急増している。

しかし、化石燃料の価格は2010年以降、ドル建ての単価の上昇に加えて、アベノミクスによる円安も相まって、円建ての価格は大きく値上がりしている。

そこで、2010年度と比べて増加した化石燃料の使用量に2010年度の価格をかけて、輸入金額がいくら増加したかを計算し、そこからウラン燃料の輸入が減った分を差し引いた。


「これは資源エネルギー庁の電力基盤整備課と原子力政策課が調べて出してきた数字だ。

もちろん焚き増しで燃料費が増えたことは間違いがない。だがしかし、その規模を正確に国民に伝えるのは行政の役割のはずだ。

行政が、いいかげんな「前提条件」をでっち上げて、現実とは全く違う数字をあたかも現実のように伝えようとするならば、政治がそれをやめさせなければならない。」

ーーー

実はこの分析は正しくない。

ここでは、化石燃料の価格の上昇を原発停止には関係のないものとして、無視している。
アベノミクスでの円安による円建価格上昇はその通りだが、少なくとも量が急増しているLNGのドル建て価格については、無関係とはいえない。

最近こそ、新価格方式が出てきたが、これまでは、日本のLNGの購入契約はほとんどが原油価格スライドであった。

2010年度と2013年度を比べると、WTI原油価格は年平均で79.59ドル/バレルから98.05ドル/バレルに123%アップしている。

しかし、この間のLNGドル建て輸入価格は、55.91セント/kgから83.22セント/kgと、149% 高騰している。

これは原発停止により、不足燃料を補うために各電力会社がLNGのスポット買いに走ったため、足元を見られたものが主と思われる。

当ブログでは、2013年度について、2010年度と比較して、原油価格アップを上回る分を1兆2252億円と計算した。

この分は原発停止の影響として加える必要があろう。

2014/3/9  LNG輸入金額分析--- 原発停止の影響 

 

なお、本年に入り、円安にもかかわらず、LNGの通関価格は急落している。


現時点では、LNGの価格の面では、原発停止の影響はなくなったといえる。

 


政府は2030年時点のエネルギーミックスで、原発を20〜22%と決め、それに基づき、温室効果ガスの排出量を「2030年までに2013年比26%削減」とする目標を正式決定した。

2015/6/4   エネルギーミックス最終案   

しかし、現存する全ての原子炉が40年で運転終了するとすれば、2030年頃に設備容量が現在の約半分となる。

2030年に原子力を20~22%にするためには、建設中の島根・大間を稼動させた上で、40年経過の原発の半分を延長する必要がある。


既存の原発の再稼働のための安全審査の状況は下記の通り。

安全審査に合格したのは、川内1・2号機、高浜3・4号機、伊方3号機の5基だが、高浜3・4号機については福井地裁の仮処分が出ている。

      2015/4/15 高浜原発、再稼働認めず 福井地裁が仮処分決定 

福島第一の1~6号機に続き、40年超運転の5基(日本原子力発電・敦賀1号、関電・美浜1・2号、中国電力・島根1号、九電・玄海1号)が廃炉を決めた。
日本の原発は48基が43基になる。(他に、建設中がJパワー・大間、東電・東通、中国電力・島根があり、Jパワー大間は安全審査を申請している。)
 

日本原子力発電の敦賀2号機の直下の断層が活断層と断定された。廃炉は必至である。
北陸電力・志賀1号については、有識者調査団が炉建屋直下のS-1断層が活断層の可能性高いと判断した。廃炉の可能性が強い。
また、同1・2号機タービン建屋直下のS-2、S-6断層も地層に変形を生じた可能性を否定できないとしている。

地震・津波対策が課題の原発も多い。

40年超の運転を目指し、関電が本年3月に、美浜3号、高浜1・2号の申請を行った。原子力規制委員会がどう判断するか、注目される。


 

 
  廃炉決定
 
  安全審査合格
 
運転開始 型式 能力
万KW

申請

状況 (2015/7)
北海道電力
 泊
① 1989/6/22  PWR 57.9

2013/7/8

積丹半島西岸の隆起は「過去の地震が
原因ではない」こと 了承
② 1991/4/12  PWR 57.9
③ 2009/12/22 PWR 91.2
電源開発
  大間

 ー

ABWR 138.3

2014/12/16

2014/4 対岸の函館市が建設、運転停止求め、訴訟
東北電力
 東通
① 2005/12/8  BWR
(Mark-I 改)
110.0

2014/6/10

専門家調査団判断
「将来活動する可能性のある(活断層)」
東北電力
 女川
① 1984/6/1   BWR
(Mark
-I)
52.4    
② 1995/7/28 BWR
(Mark-I 改)
82.5 2013/12/27 規制委、火山灰の降下量の再検討指示
③ 2002/1/30 BWR
(Mark-I 改)
82.5    
東京電力
 福島第一
① 1971/3/26  BWR
(Mark
-I)
46.0   2012/4/19 廃炉
② 1974/7/18  78.4
③ 1976/3/27  78.4
④ 1978/10/12 78.4
⑤ 1978/4/18 BWR
(Mark
-I)
78.4  

 

2014/1/31 廃炉
⑥ 1979/10/24 BWR
(Mark-Ⅱ)
110.0
東京電力
 福島第二
① 1982/4/20 BWR
(Mark-Ⅱ)
110.0   地元が廃炉要求
② 1984/2/3 BWR
(Mark-Ⅱ改)
110.0  
③ 1985/6/21 BWR
(Mark-Ⅱ改)
110.0  
④ 1987/8/25 BWR
(Mark-Ⅱ改)
110.0  
日本原子力
 東海
1978/11/28 BWR 110.0 2014/5/20 PWR優先で審査停滞
東京電力
 柏崎刈羽
① 1985/9/18 BWR
(Mark-Ⅱ)
110.0    
② 1990/9/28 BWR
(Mark-Ⅱ改)
110.0  
③ 1993/8/11 BWR
(Mark-Ⅱ改)
110.0    
④ 1994/8/11 BWR
(Mark-Ⅱ改)
110.0    
⑤ 1990/4/10 BWR
(Mark-Ⅱ改)
110.0    
⑥ 1996/11/7 ABWR 135.6

2013/9/27

海底断層がつながっている可能性
⑦ 1997/7/2 ABWR 135.6
中部電力
 浜岡
③ 1987/8/28 BWR
(Mark-I 改)
110.0

2015/6/16

4号機審査優先
④ 1993/9/3 BWR
(Mark-I 改)
113.7

2014/2/14

地震・津波対策が焦点 
⑤ 2005/1/18 ABWR 138.0    
北陸電力
 志賀
① 1993/7/30 BWR
(Mark-I改)
54.0   2015/7/17 1号直下のS-1断層が活断層の
可能性高いと判断。
1・2号機タービン建屋直下の断層も問題
② 2006/3/15 ABWR 135.8  2014/8/12
日本原子力
 敦賀
① 1970/3/14 BWR
(Mark
-I)
35.7   2015/3/17 日本原子力発電が廃炉決定
② 1987/7/25 PWR 116.0   2013/5/27  
敦賀2号機直下の断層を活断層と断定
関西電力
 美浜
① 1970/11/28 PWR 34.0   2015/3/17 関電が廃炉決定
② 1972/7/25 PWR 50.0  
1976/3/15 PWR 82.6

2015/3/17
(
40年超
) 

震源断層の深さで規制委と対立
規制委、8
月末までに基準地震動が確定しなければ、審査打ち切りを示唆
関西電力
 大飯
1979/3/27 PWR 117.5    
1979/12/5 PWR 117.5  
③ 1991/12/18 PWR 118.0

2013/7/8

2014/5 再稼働を認めない判決
   2014/5/30 大飯原発差し止め訴訟判決 

控訴審で係争中、差し止めの効力は
発生していない。

④ 1993/2/2 PWR 118.0
関西電力
 高浜
1974/11/14 PWR 82.6

2015/3/17
(
40年超) 

2015/4/30 運転期間延長申請
1975/11/14 PWR 82.6
③ 1985/1/17 PWR 87.0

 2013/7/8 

2015/2/12
安全審査合格
2015/4/14 福井地裁 仮処分
④ 1985/6/5 PWR 87.0
中国電力
 島根
① 1974/3/29 BWR
(Mark-I)
46.0   2015/3/18 中国電力が廃炉決定
② 1989/2/10 BWR
(Mark-I改)
82.0 2013/12/25  
四国電力
 伊方
1977/9/30 PWR 56.6    
② 1982/3/19 PWR 56.6    
③ 1994/12/15 PWR 89.0 2013/7/8 2015/7/15 安全審査合格
九州電力
 玄海
① 1975/10/15 PWR 55.9   2015/3/18 九電が廃炉決定
② 1981/3/30 PWR 55.9    
③ 1994/3/18 PWR 118.0 2013/7/12  2015/3/20地裁判決
プルサーマル差し止め認めず
④ 1997/7/25 PWR 118.0  
九州電力
 川内
① 1984/7/4 PWR 89.0 2013/7/8 2014/9/10 
安全審査合格
2015/7/10 
核燃料装填作業完了
② 1985/11/28 PWR 89.0  


PWR:加圧水型、
APWR(Advanced PWR) :改良型加圧水型 ---フィルタ付ベント設置猶予 
BWR:
沸騰水型、
ABWR(Advanced BWR):改良型沸騰水型 ---フィルタ付ベント即時設置要

 

 


日銀は金融経済月報の7月号に消費者物価指数の新指標を掲載した。

天候に左右され、変動が大きい生鮮食料と、昨年以来の原油安の影響が大きいエネルギーを除いたもの。


総合

コア

 

コアコア

 

その他全て
(酒類を含む)

日銀 新指標

総合(除く生鮮食品・エネルギー)

  その他食品(酒類を除く)

食品(酒類を除く)
  ガソリン                    エネルギー エネルギー
  電気・都市ガス・プロパンガス・灯油 
生鮮食品(天候に左右され、変動が大きい) 生鮮食品 生鮮食品


 

「除く生鮮食品・エネルギーの前年比をみるとこれによると、昨年2月をピークに緩やかなプラス幅の縮小を続けたあと、1~2月をボトムに再び伸びが高まってきている。」 (同月報)

コアコアCPIとの違いは、生鮮食料以外の食料を含んでいることだが、最近は円安によりこの分野での値上がりが大きい。

「食料工業製品は、昨年7月をピークにプラス幅が緩やかな縮小傾向にあったが、4月以降は、個人消費が持ち直すなかで、為替相場の動きによるコスト高の転嫁を背景とした価格改定が幅広い品目(牛乳、ヨーグルト、インスタントコーヒー等)でみられたことから、プラス幅が再び拡大している。」(同月報)

輸入価格アップのコスト高を転嫁する物価上昇は、メーカーの利益にも、消費者の利益にもならず、好ましいものではない。





政府は7月17日、地球温暖化対策推進本部を開き、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量を「2030年までに2013年比26%削減」とする目標を正式決定した。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ondanka/kaisai/dai30/yakusoku_souan.pdf

この目標を同日、国連に提出する。日本は目標策定が遅れ、G7の中で最も遅い提出となった。

政府は目標の検討にあたり、2030年時点の再生可能エネルギー比率を22〜24%、原発を20〜22%と決め、2013年比で排出量を21.9%削減できるとした。

  2010年度 2030年度
再生エネルギー(含水力) 9.6% 22~24%
原子力 28.6% 20~22%
LNG 29.3% 27%
石炭 25.0% 26%
石油 7.5% 3%
 
 
 
 
 
再生エネルギー内訳
安定 水力 8.8~9.2%
バイオマス 3.7~4.0%
地熱 1.0~1.1%
不安定 太陽光 7.0%
風力 1.7%

    2015/6/4   エネルギーミックス最終案   


さらに代替フロン類削減などで1.5%減、森林整備などによるCO2吸収分2.6%を上乗せし、計26%削減を目指す。

内訳(百万トン- CO2)    比率は2013年合計量 (1,408)に対する削減率

  2005 2013 2030

2030/2013

エネルギー起源CO2 1,219 1,235 927 -308 -21.9%
非エネルギー起源CO2 85.4 75.9 70.8 -5.1 -0.4%
メタン 39.0 36.0 31.6 -4.4 -0.3%
一酸化二窒素 25.5 22.5 21.1 -1.4 -0.1%
HFC等4ガス 27.7 38.6 28.9 -9.7 -0.7%
小計 1,396.6 1,408.0 1,079.4 -328.6 -23.3%
温室効果ガス吸収量 - - -37.0 -37.0 -2.6%
再計 1,396.6 1.408.0 1,042.4 -365.6 -26.0%

温室効果ガス吸収源

 森林吸収源対策  2,780万t
 農地土壌炭素吸収源対策、都市緑化等の推進 910万トン
 合計 3,700万トン


政府は目標達成のための対策計画の策定に着手するが、家庭では201百万トンから122百万トンへ、業務・オフィスでは279百万トンから168百万トンへと、それぞれ40%の排出削減が必要で、ハードルは高い。


電気事業連合会と新電力などの電力業界は7月177日、2030年度の電力販売量1キロワット時当たりの温室効果ガスの排出量を、2013年度に比べ約35%削減する自主目標を正式に発表した。但し、各社の負担割合などは未定。

ーーー

毎日新聞によると、各国の目標は下記の通り。

  2030年 2025年
日本 2013年比 26%減  
中国 2005年比 GDP当たり60~65%減  
米国   2005年比 26~28%減
EU 1990年比 40%以上減  
ロシア 1990年比 25~30%減  
韓国 対策とらない場合比 37%減  
カナダ 2005年比 30%減  
メキシコ 対策とらない場合比 25%減  









JG Summit Olefinsのフィリッピン初のナフサクラッカーは、昨年6月に試運転を開始したが、技術問題により商業運転は年末にずれ込み、最近、ようやく稼働率を85%程度まで上げてきた。

JG Summit Holdingsの100%子会社JG Summit Petrochemical が1990年代初めに構想し、検討してきたもので、2005年末にようやく構想が前進した。
しかし、JG Summit Olefinsは最初 2005年に登記されたものの、資金問題で計画が遅延し、2010年に再登記された。

マニラ南方のBatangas のJG Summit Petrochemical のPE、PPに隣接して建設したもので、
能力はエチレンが320,000トン、プロピレンが190,000トン、分解ガソリン 216,124トンとなっている。

ーーー

JG Summit Holdingsはフィリッピンのコングロマリットで、下記の7つのコア事業を行う。

消費財、食品:Universal Robina Corporation
不動産、ホテル:Robinsons Land Corporation、United Industrial Corporation (Singapore)
航空:Cebu Pacific Air
石油化学:
JG Summit Petrochemicals、JG Summit Olefins
金融:Robinsons Savings Bank
テレコム:
Philippine Long Distance Telephone Company
電力:Manila Electric Company

JG Summit Petrochemicalは1998年4月に JG Summit Holdings 80%/丸紅20%のJVとして設立された。
BatangasにPE(HDPE/LLDPE) 175千トン(現在 200千トン)、PP 180千トンプラントを建設した。

丸紅はその後、出資比率を17.72%としたが、2007年に撤退し、JG Summit Holdingsの100%子会社となった。

JG Summit Olefinsは、同国最初のナフサクラッカーとして、6年間(2014年1月から)の免税など、税務上その他の恩典を受ける。

ーーー

現在のフィリッピンの石油化学のメーカーは下記の通り。

メーカー 立地 製品 Capacity 増強案
JG Summit Olefins Batangas エチレン 320,000t  
プロピレン 190,000t  
JG Summit Petrochemical PE (HD/LL)        200,000t    310,000t
PP 180,000t  
Philippine Polypropylene Inc.
(旧称 Petrocorp)
Bataan PP 160,000t 225,000t

 

NPC-Alliance
(旧称 Bataan Polyethylene)
Bataan PE (HD/LL) 250,000t  
Philippine Resins Industries Bataan PVC 100,000t 140,000t
180,000t
Chemrez Technologies   PS 30,000t  

各社の概要は下記の通り。

Philippine Polypropylene Inc.(旧称 Petrocorp:Petrochemical Corporation of Asia-Pacific)

PetrocorpChemical Industries of the Philippines, Inc. (CIP) Dr. Eusebio S. Garcia などにより設立された。

Petrocorpは採算悪化や原料プロピレン不足などで何度も操業を停止した。(原料のプロピレンは韓国、台湾、日本などから輸入しており、採算はよくなかった)

2004年頃から外資への売却を検討、200811月には株主のCIP や関連会社は所有するPetrocorp の株式を全額評価減している。
その後、同社は
Vantage Stride (Mauritius) Ltd. に売却された。

フィリピン最大の石油会社Petron Corp.は2010年3月、石油化学事業の強化のため、 Vantage Stride (Mauritius)  からPetrocorpの株式の40%を買収したと発表した。

2010/3/19 フィリッピン最大の石油会社PetronPPメーカーPetrocorpに出資 

その後、PetrocorpPhilippine Polypropylene Inc.に改称した。

Philippine PolypropyleneはBataanに年産 160 千トンのPP工場を持っている。

Petronは同じ Bataan に日産18万バレルの製油所を有し、国内に1300のガソリンスタンドを持つ。
2008
年にBataanの製油所にFCCとプロピレン回収設備を設置、2009年にはBTX設備を稼動させている。

Petron は、川下の石油化学に進出し、プロピレンやBTXを加工し、場合により最終製品まで作りたいとしていたが、買収により、自社のプロピレンをPP原料として供給し、付加価値を高める。

ーーー

NPC-Alliance (旧称 Bataan Polyethylene)

Bataan Polyethylene は当初、BP39%、マレーシアのPetronas39%、住友商事が6%、現地株主のコンソーシアムのProfinda Holdings16%を出資して設立された。

その後、採算悪化からBPと住友商事が離脱を決め、その分をPetronasが購入する予定であったが、結局まとまらず、2003年に一旦清算された。

2004年に「プラスチック王」の異名を持つWilliam Gatchalian Metro Alliance Holdings and Equities (Manila)を通じてBataan Polyethylene の債権を世界銀行のIFCから買い取り掌握した。

GatchalianはイランのNational Petroleum Companyとの間でエチレンの長期供給契約を締結した。

2005年にイランのNational Petroleum Company Metro AllianceからBataan Polyethylene 60%を買収、同社をNPC-Allianceと改称した。

現在の出資比率は:
  
イランのNational Petrochemical Company 40%
  イランのInternational Petrochemical Company 20%
  Philippines Polimax Metro Allianceグループ) 40%

BataanにHDPE/LLDPE 250千トンを持つ。

ーーー

Philippine Resins Industries, Inc.

1994年7月に設立された。出資比率は二度変更されている。

  設立時 2001/3 2004/3
東ソー 20% 50% 80%
三菱商事 20% 50% 20%
Bank of Philippine Island 11%
Mabuhai Vinyl 49%


BataanにPVCの工場を持つ。
能力は当初の70千トンから90千トンに、2004年5月に100千トンに拡大された。
設計能力としては140千トンから最終180千トンまで可能となっている。

原料のVCMは東ソーが日本から供給している。

なお、当初の株主のMabuhai Vinyl はフィリッピンの現地資本のPVCメーカーで、隔膜法電解 16千トンを持ち、PVC 28千トンを生産していた。

その後、三菱商事が10%強出資、2000年に東ソーが22.68%出資した。
2009年末にTOBを行い、東ソー 94.24%、三菱商事 5.76%出資とし、現在に至っている。

その後、PVCから撤退し、隔膜法(16千トン)に加え、東ソー技術でIM法電解(8千トン)を加え、電解事業に特化している。

ーーー

Chemrez TechnologiesはD&L Industriesが事業を多角化したもの。


 


 

ギリシャ議会は7月16日未明(日本時間16日午前)にも、金融支援協議の前提としてEUなどの債権団から要求された財政改革の関連法案を採決する。

  ― 付加価値税率の簡素化
  ― 広範な課税
  ― 年金削減
  ― 国家統計局の独立

付記 ギリシャ議会は、賛成は229票、反対は64票、白票は6票 (欠席1人)で可決した。

しかし、これを可決しても、終わりではない。EUはギリシャ議会での法制化を待って、7月15日にユーロ圏財務相会合を開催して改革の実行を確認し、各国議会での承認を経てようやく、正式に支援策の交渉を開始するが、以下の措置へのコミットメントが、協議開始への最低条件である。

◎ギリシャは7月22日までに民事司法改革やEUの銀行破綻ルール実施を可決。

 付記

ギリシャ議会は7月23日未明、財政改革法案第二弾を可決した。
ギリシャの金融システムや訴訟制度の安定性を高めるための法案で、銀行が破綻した場合に保護する預金額を一定基準に抑える制度を導入する。民事訴訟の手続きを簡略化し、費用を減らす司法制度改革も進める。


◎以下の改革について明確な日程を設定。
   
     ― 大胆な年金改革
     ― 製品市場の改革
     ― 送電網の民営化
     ― 団体交渉、ストライキ、集団解雇などの見直し
     ― 不良資産への対応や政治的介入の阻止など金融セクターの強化

◎以下の措置を講じる。

    ― 民営化や資産移管による独立基金で500億ユーロを設定。
          このうち3分の2は、銀行の資本増強や債務削減に充当。
    ― 行政コスト削減と政治的な影響力を抑制。7月20日までに最初の提案。
    ― 主要法案を議会などに提示する前に債権団の承認を得る


ギリシャの円建て国債「サムライ債」のうち7月14日に償還期限が来た約117億円は全額返済されたが、7月13日が期限のIMFからの借入金 4.5億ユーロは返済されなかった。

7月17日は、2014年7月発行の3年もの国債の利払い(7100万ユーロ)があり、7月20日にはECBへの 35億ユーロが待っている。

正式な支援策が決まるまでに、つなぎ融資がどうしても必要だが、これについて、EU内部での抗争がある。


EUの執行機関である欧州委員会は、7月のギリシャの資金不足を手当てするために欧州金融安定メカニズム(EFSM:European Financial Stability Mechanism)を活用して70億ユーロのつなぎ融資を実施することを提案している。

これに対し英国のGeorge Osborne財務相は、14日の協議を前に各国の財務相と電話で会談し、以下の通り述べ、EFSMを活用することに反対すると強調した 。

EFSMを使って、ギリシャ向け繋ぎ融資を実行すると聞いている。そのためには、EU加盟28ヶ国全体で、100~120億ユーロを払い込まなければならない。そうなると、英国の支払い額は、10億ユーロ規模となる。

英国は、前回ギリシャ債務危機が発覚した2010年に欧州連合との間で、
ユーロ圏で起きた危機に関してはEFSMは使わない、ユーロ圏の国だけで対応するという合意を取り付けており、今回どうしてギリシャ危機に対する融資にEFSMが使われようとしているのか、理解出来ない。

英国とともに、非ユーロ圏のチェコも強く反対しているとされる。


2009年10月のギリシャの政権交代後、前政権による財政赤字と債務の"粉飾"が明るみに出たことから、ギリシャの財政危機が発生、財政懸念がポルトガルやスペインその他に拡大した。

このため、2010年5月のEUの臨時閣僚会議で、2つの組織の設置を決め、それらとIMFを加えた3つの柱からなる包括的支援策がつくられた。

EFSM (欧州金融安定メカニズム:European Financial Stability Mechanism)EU27カ国の組織

EFSF(欧州金融安定ファシリティ:European Financial Stability Facility)ユーロ圏17カ国の組織(時限組織)


EFSM はEFSFとIMFとともに、
アイルランドとポルトガル向けの支援を行った。

EFSFは ギリシャ、アイルランド、ポルトガル向けに1920億ユーロを、スペインの銀行資本増強に1000億ドルの支援を行った。

ユーロ圏のEFSFは2010年6月から2013年6月までの時限機関として設立されたため、その後継としてESM(欧州安定メカニズム:European Stability Mechanism)が設立された。

EFSFの債権のうち、スペインの銀行資本増強分1000億ユーロはESMに肩代わりされた。
EFSFはその後は融資はしないが、1920億ユーロの債権回収完了までは存続する(現在も存続)。

ESMの融資能力は5000億ユーロだが、既存の(EFSFの)1920億ユーロを含めると、最高貸付金額は約7000億ユーロとなる。

現時点での体制は下記の通り。

EFSM(EU27カ国)
ESM+EFSF(残務整理)(ユーロ17カ国)

英国によると、ユーロ圏で起きた危機に関しては今後はEFSMは使わず、ユーロ圏の国だけで対応するという合意があったという。
その場合、当然ESMを使うこととなる。

しかし、欧州委員会は、7月のギリシャの資金不足を手当てするためにEFSMを活用して70億ユーロのつなぎ融資を実施することを提案している。

この理由としては、下記の事情があるのではと噂されている。

ESMを使う場合、緊急動議という議決方法が必要だが、それには議決権の85% 以上の賛成が必要となる。
この場合、ドイツの議決権は26%を超えているため、ドイツが賛成しなければ繋ぎ融資が出来ない。

ギリシャが全ての要件を満足させるまでの間は、ドイツの賛成は無理と思われ、当面の資金手当てはEFSMに頼らざるを得ない。

かし、ユーロ圏の内部事情(ドイツの反対)で、合意に反してEFSMを使うというのは筋が通らず、非ユーロ国の賛成を得られないだろう。


付記

欧州中央銀行(ECB)は7月16日、ギリシャの銀行向け緊急流動性支援(ELA)の上限を引き上げた。
引き上げ幅は1週間で9億ユーロとした。

これを受け、ギリシャの国内銀行は週明け7月20日から営業を再開する。1日60ユーロの引き出し制限は続けるが、引き出さなかった分を翌日に持ち越すことが出来るようにする。 1週間あたり420ユーロに変更


ギリシャの
財政改革の関連法案可決を受け、ギリシャ支援に議会承認が必要なドイツ、フィンランドなど6カ国の議会が承認した。
電話によるユーロ圏財務相会合が開かれ、3年間で820億ユーロを超える新たな支援に向けた手続き開始を決めたが、支援の正式決定は8月になる見通し。

EUは7月17日、EFSMを活用してギリシャに71.6億ユーロの短期のつなぎ融資を行うことを決めた。期間は最大3ヶ月で、2回分割で返済する。
短期のつなぎ融資ということで、英国も同意したとみられる。

これで当面の債務返済の目途がたった。

7月20日、71.6億ユーロのつなぎ融資を実施。
ギリシャは同日、欧州中央銀行(ECB)が保有する同国国債の元本と利息を合わせて42億ユーロを支払った。IMFにも延滞していた20億ユーロを返済し、IMFは声明でギリシャが「延滞国」でなくなり、同国の金融安定と成長を支えると表明した。

ーーー

IMFは7月14日、ギリシャの財政に関する報告書を発表した。
  http://www.imf.org/external/pubs/ft/scr/2015/cr15186.pdf

IMFは6月26日付けで、報告書を発表したが、その後の変動を織り込み、見直した。

内容は以下の通り。

2週間前の報告時以降、銀行休業、資本規制導入により銀行システムと経済は痛んだ。

ギリシャの2018年末までの金融支援の必要額は850億ユーロに及ぶ。
早期の対策の合意がなければ、債務は2年間でGDPの200%に達する。

ギリシャは欧州が考えているものを超えた救済策がなければ持続不能となる。

選択肢として、融資の金利を極めて低い最優遇金利にした上で30年以上の返済猶予を行うか、債権の一部放棄を行うことだ。





中国とロシアは今回のギリシャ支援の合意を歓迎しているが、いずれもギリシャに接近している。

 

ギリシャのチプラス首相は4月と6月に訪露してプーチン露大統領と会談し、ウクライナ危機での米欧の制裁を「経済戦争」と呼んでロシア寄りの姿勢を見せた。

プーチン大統領は6月19日、ギリシャとの間で、ロシアからの天然ガスパイプラインTurkish Stream をトルコを経由してギリシャにつなげる計画に基本合意した。
ギリシャの農産品の輸入についても話し合われた。ロシアはEUの制裁に対抗し、EUからの農産品の輸入を禁止しているが、ギリシャの例外扱いを検討している。

ロシアのエネルギー相は7月12日、ギリシャ経済てこ入れのため、ロシアはギリシャに燃料を直接供給することを検討中だと語った。
「ロシアはエネルギー部門での協力拡大を通じてギリシャ経済の再生を支援するつもりだ。このため、われわれはギリシャへのエネルギー資源の直接供給の可能性を検討している。直接供給は近く始まる」と述べた。

 

Turkish Stream の概要は下記の通り。

ロシアは2014年12月1日、ウクライナを迂回してロシアから欧州南部に天然ガスを輸送するパイプライン South Stream の敷設計画を撤回した。

EUの反対でブルガリアの許可が得られないためとし、「EUの立場は非建設的であり、そのためロシアは他の地域にエネルギー輸送先を切り替え、またはLNGに軸足を置き替える」と語った。

2014/12/4   ロシア、South Stream 計画を取り止め

ロシアはその後、新ガスパイプライン Turkish Stream 構想を打ち出し、本年初めにルートが確定した。

South Stream と同様に4本のラインが敷設される予定で、海底部分のうち660kmはSouth Stream用に予定されていたルート、その他に 250kmがトルコ向けの新ルートとなる。
黒海南西部沿岸の都市キイキョイから陸上に入り、ギリシア国境のイプサラまでの180kmが敷設される。

年間輸送能力は630億m3で、うちトルコが140億m3 を引き取る。
第1ラインの完工は2016年12月を予定しており、全てトルコに供給される。トルコ向け天然ガス価格は 6%値引きする。

South Streamとの大きな違いは、パイプラインのEU内の部分でGazpromがその建設や操業に関与しないことである。EUの干渉に嫌気がさしたと思われる。

今後の計画も含め、欧州の天然ガス輸入の南部ラインはすべてトルコを経由することとなる。

ーーー

ギリシャの生産再建・環境・エネルギー相は5月29日、ギリシャがBRICS開発銀行への参加を検討していると発言した。
ロシアもギリシャの意向を関知しているとしている。

5カ国は7月7日、モスクワで BRICS開発銀行の第1回総会を開いたが、ギリシャ問題は取り扱われていない。

初代総裁にはインドの民間銀行元会長 K.V. Kamath が就任した。
当初の資本金は500億ドルで5カ国が均等出資する。将来は1千億ドル規模へ拡大する。
年内にも業務を開始する。

ーーー

中国の李克強首相は6月29日、ブリュッセルでEU首脳との会談後の記者会見で質問に対し、「中国はこれまでも、ギリシャが危機を抜け出すための要求に応えてきた。問題解決に建設的な役割を果たしたい」と述べた。

「シルクロード経済ベルト」と「21世紀の海のシルクロード」計画 (一帯一路構想)を進める中国にとっては、ギリシャは欧州への入り口として重要である。

今回のギリシャの財政改革案に含まれる民営化のうち、アテネ郊外のPireaus港については中国遠洋運輸公司(COSCO) への売却が有力である。

ギリシャ政府は2008年にCOSCO との間で、ピレウス港の2号・3号コンテナ埠頭の35年間リース契約を締結し、2010年にCOSCOは正式運営を始めた。
COSCOは本年に入り、3号埠頭の拡張工事に着手している。

中国製の製品などをピレウス港に運び、そこから鉄道で中欧や東欧各国に輸送する。

2012年11月には、COSCOとHewlett-Packard とギリシャ国営鉄道会社Torainose が製品輸送契約を締結した。

アジア諸国の工場で生産されたHewlett-Packard の製品をPireas港で陸揚げし、新設の17kmの貨物線で貨物ターミナル駅まで運び、そこからマケドニア、セルビア、ハンガリー、オーストリア、チェコなど東欧や中欧の各地に輸送する。

本年2月には中国の軍艦が寄港した。

ギリシャ政府はピレウス港の権益67%を売却する計画で、COSCO等が名乗りを挙げている。 売却額は5億ユーロ規模とされる。
(当初、本年初めの入札を予定したが、就任したチプラス首相が選挙の公約通り、国有資産売却を見送った。今回、売却を決めた。)

 

 


ユーロ圏首脳会議は7月13日午前、約17時間にわたる協議を終え、ギリシャへの金融支援を行うことで大筋合意した。

ギリシャは当初、譲歩を渋ったものの、最も強硬なドイツの主張をほぼ全面的に受け入れ、ギリシャのユーロ圏からの離脱は、ひとまず回避された。

ドイツは、信頼性のある改革案がなければ、ギリシャはEUには残留した上で、少なくとも5年間ユーロ圏から離脱し、人道援助などを受けながら債務を整理すべきだとの案を出していた。 ドイツはこれを合意文書に入れようとしたが、さすがに各国が反対した。

EUはギリシャ議会での法制化を待って、7月15日にユーロ圏財務相会合を開催して改革の実行を確認し、各国議会での承認を経て、正式に支援策の交渉を開始する。
債務削減に反対するドイツの主張により、 債務元本は削減せずとしており、債務返済期間の延長などを検討する。


最初の関門となるのがギリシャ議会で、今回の改革案は、Pual Krugmanが「気違いじみている。国の主権を完全に破壊するもの」とするほど厳しいもので、しかも実質2日間で可決せよというもの。否決されれば、EUとの合意は白紙に戻る。 

 

第3次ギリシャ支援に向けた合意事項の要旨は以下の通り。

◎ギリシャは2016年3月以降もIMF支援を要請。

◎ギリシャは7月15日までに以下の施策を議会で可決する。

 ― 付加価値税率の簡素化
 ― 広範な課税
 ― 年金削減
 ― 国家統計局の独立

◎ギリシャは7月22日までに民事司法改革やEUの銀行破綻ルール実施を可決。

◎以下の改革について明確な日程を設定。
   
     ― 大胆な年金改革
     ― 製品市場の改革
     ― 送電網の民営化
     ― 団体交渉、ストライキ、集団解雇などの見直し
     ― 不良資産への対応や政治的介入の阻止など金融セクターの強化

◎以下の措置を講じる。

    ― 民営化や資産移管による独立基金で500億ユーロを設定。このうち3分の2は、銀行の資本増強や債務削減に充当。
    ― 行政コスト削減と政治的な影響力を抑制。7月20日までに最初の提案。
    ― 主要法案を議会などに提示する前に債権団の承認を得る

これらの措置へのコミットメントは、協議開始への最低条件であるとしている。

◎必要資金は820億―860億ユーロ。
      7月20日までに70億ユーロ、
      8月半ばまでにさらに50億ユーロが必要で、早急な決定が必要。

◎欧州安定メカニズム(ESM)の新プログラムには100億―250億ユーロの銀行対策を含む。

◎債務の再構築(reprofiling)は可能だが元本は削減せず。

ーーー

会見したドイツのメルケル首相は、今後3年間の金融支援の規模が約820億ユーロから860億ユーロになると説明。資本規制の導入などで経営が悪化しているギリシャ銀行への資本注入も進める。空港など約500億ユーロ相当の国有資産を外部ファンドを通じて売却・民営化し、債務返済に充てる。ファンドはギリシャに拠点を置く。

メルケル首相は「ギリシャは信頼を回復しなければならない」と発言。ギリシャ議会が年金や増税などの一連の財政改革を15日までに法制化できるかを見極めて、支援再開する姿勢を強調した。

ドイツは、ドイツ案が途上国の債務再編を行うパリクラブ(主要債権国会議)とギリシャの交渉が巨額債務を再編する「唯一の道」と強調、ギリシャを途上国扱いした。

ドイツの厳しい要求がツイッター上で話題となり、ドイツを非難する投稿が相次いでいる。

7月12日夜に、バルセロナの物理学教師を名乗るSandro Maccarrone という男性がツイッターで
「ユーログループの提案はギリシャ国民に対する隠れたクーデターだ。#ThisIsACoup」
とつぶやいたのが始まりで、それから数時間で、#ThisIsACoupのハッシュタグが付いた投稿は約20万回にのぼった。

特に非難の対象となったのが、500億ユーロの国の資産をギリシャの政治家の手の及ばない独立した信託会社に移し、その売却資金を直接、借入金返済に充てるという条件 である。

ドイツは1990年の東西統一後にこの手法を使い、旧東独の国営企業資産を売却した。

ノーベル経済学賞受賞者のPual KrugmanもNew York Timesのブログで、 次の通り述べた。

ユーログループの要求は気違いじみている。話題のツイッター #ThisIsACoup は全く正しい。厳しいを通り越し、執念深く、国の主権を完全に破壊するもので、救いがない。ギリシャが受け入れられないもので、欧州がよって立つ全てをグロテスクに裏切るものだ。

イタリアやフランスがなんとかしようとしているが、既にダメージが出ている。今後、誰がドイツの善意を信用するだろうか?

この数週間で分かったことは、ユーロ圏のメンバーであることは、一歩踏み外せば債権者が国の経済を破壊するということだ。

私が賞賛し支持してきた欧州のプロジェクトは、恐ろしく、多分 致命的な打撃を受けた。ギリシャについてどう考えているかに係わらず、やったのはギリシャではない。

Thomas Piketty や Jeffrey SachsなどギリシャへのEUの財政緊縮政策に批判的な経済学者ら5人も、メルケル首相にギリシャの債務減免を求める公開書簡を出している。

2015/7/9   メルケル首相への公開書簡


イタリアのレンツィ首相は、ギリシャ金融支援協議で強硬姿勢を崩さないドイツに関し「イタリアはギリシャのユーロ圏離脱を望まない。ドイツにはこう言いたい。もうたくさんだ」と述べたと報じられている。


フランス人 Emmanuel Toddのインタビュー集「ドイツ帝国が世界を破滅させる」がベストセラーとなっている。(右枠上)

冷戦終結と欧州統合が生み出した「ドイツ帝国」。EUとユーロは欧州諸国民を閉じ込め、ドイツが一人勝ちするシステムと化している。ウクライナ問題で緊張を高めているのもロシアではなくドイツだ。かつての悪夢が再び甦るのか?

共通通貨ユーロの導入で実質的に通貨安の恩恵を受けて輸出増で一人勝ちし、低コストの東欧を下請けにすることで支配した。逆にユーロ導入で通貨の切り下げが出来ず、経済が立ち行かなくなったギリシャや南欧諸国(ユーロの制度の欠陥の犠牲者である)を政治的に支配しようとしている。「ドイツ帝国」の復活である。

安井至先生の「市民のための環境学ガイド」 (2015/7/15) も「ギリシャの今後を考えるために」として、この本を取り上げ、「ドイツ帝国」は力で支配する権威主義的な文化を強めるだろうと思うね、としている。

http://www.yasuienv.net/GreeceEU.htm

 

付記

ギリシャの円建て国債「サムライ債」のうち7月14日に償還期限が来た約117億円は全額返済された。

しかし、7月13日が期限のIMFからの借入金 4.5億ユーロは返済されなかった。

 





ギリシャへの新たな金融支援の協議を始めるかどうかを決めるユーロ圏財務相会議は7月11日に8時間半にわたり改革案の実効性や信頼性について議論したが、結論が出ず、一旦終了した。

財政改革案をおおむね支持するフランスやイタリアと、不十分だとするドイツやフィンランドの意見が対立した。

デイセルブルム議長は、「信頼性が大きな問題になっている。ギリシャ政府が今後数年にわたり約束を実行すると信じていいのかという問題」としている。

ドイツはギリシャ側の提案は「重要な改革が欠けており」、新たな3年間の支援計画の基礎にはなり得ないと し、ギリシャのユーロ圏からの一時離脱さえ提案した。

ドイツは、ギリシャが議会の支持を得て「迅速かつ大幅に」改革案を改善させることとし、具体的には、
 1)  独立した信託会社に国有企業や資産 500億ユーロ分を移管しその売却益を債務返済に充てること、
 2)  欧州委員会の監督の下で行政改革を進めること、
 3)  財政赤字削減が目標に届かなかった場合に自動的な歳出削減を発動するため法を整備すること
を提案している。

その上で、信頼性のある改革案がなければ、ギリシャはEUには残留した上で、少なくとも5年間ユーロ圏から離脱し、人道援助などを受けながら債務を整理すべきだとの案を出した。

債務の元本削減はユーロ圏内では違法になるとしている。

さすがに、このアイディアは、違法かつナンセンスとしてEU側に無視され、財務相会議では議論されなかった。

フィンランドでは連立与党の一つが連立離脱をちらつかせ、ギリシャ支援反対を求めたため、合意文書に署名できなかったとされる。

財務相会議は7月12日に再開されたが、結論には至らず、ユーロ圏首脳会議での政治判断に委ねた。

声明案では、ギリシャは7月20日(ECB保有債券の償還期限)までに70億ユーロが必要で、8月半ばに満期となる分も合わせると120億ユーロが必要になるが、第3次支援交渉を開始するためには、ギリシャが、付加価値税引き上げ、年金制度改革、企業破綻制度の見直し、統計局の独立性強化を7月15日夜までに法制化する必要があるとしている。

また今回は、支援の条件を満たせなかった場合に一時的にユーロ圏から事実上離脱させるというドイツ案も盛り込んだ。
(ただし、この文言はカッコでくくられており、同意していない財務相がいるとみられる。
EUの高官は、ユーロ圏からの一時的な離脱は違法との見方を示した。)

これを受け、ユーロ圏首脳会議が開催されたが、各国の意見が割れた。

ギリシャのチプラス首相は、欧州の結束維持に向け「さらなる誠実な妥協」を望むとしたが、ドイツのメルケル首相は、支援協議を開始する状況にはないとの認識を示し「最も重要である信頼が失われてしまった。それは、厳しい協議になることを意味する」と語った。

フランスのオランド大統領は、フランスはギリシャをユーロ圏に留めるため「あらゆる方策」を尽くすと述べ、「ギリシャの一時的なユーロ離脱」を否定した。

イタリアのレンツィ首相は、ギリシャの財政再建策は「EU側が求めた内容に沿っている」と指摘し「われわれは絶対に合意しなければならない。ほぼ全て譲歩したパートナーに恥をかかせるのは考えられない」と語った。

こうしたなか、ギリシャ政府が15日までに財政再建策の一部を法制化し、その出方を見た上でEU側が15日以降に金融支援の開始を決めるという段取りで、ギリギリの調整が続いた。ギリシャ側は難色を示している模様。
(記事作成時点では終了していない。発表あれば追記します。)

7月12日に予定していたEU全体の首脳会議は取りやめとなった。
ここでは、
ギリシャのユーロ圏離脱をどう扱うか協議することが目的だったとされる。
ギリシャに3日間の猶予が与えられたとの報道がある。

 

「サムライ債」約117億円の償還期限が7月14日に迫っている。

ーーー

ギリシャのAlexis Tsipras 首相は6月27日の午前1時、突然テレビ演説し、EUなどから金融支援の条件として提案されている改革案の受け入れの是非を問う国民投票を7月5日に行うと表明した。

2015/6/8   ギリシャ、IMFへの6月分債務返済の一本化、月末先送りを要請
2015/6/20   ギリシャ支援合意できず
2015/6/27   ギリシャ、EU支援条件巡り7月5日に国民投票
2015/7/1   ギリシャ支援が失効 

7月5日の国民投票では、反対が61.31%、賛成が38.69%で、チプラス首相は 「ギリシャは歴史的なページを開いた」と述べ、反対派の勝利を宣言した。 

2015/7/6   ギリシャ国民投票、EUの財政緊縮策に反対 

しかし、ギリシャは7月9日夜、新たな金融支援の条件としてEUから求められた財政改革案を提出した。
ギリシャ議会は7月11日未明、チプラス政権がEUなど債権者側に示した120億ユーロ規模の財政改革案を 、賛成 251、反対 32、棄権 8、欠席 9 で承認した。

ギリシャの譲歩案は国民投票で拒否したEU側の要求にほぼ沿ったものだが、その見返りに、総額535億ユーロ(約7兆2000億円)の3年間の金融支援を「欧州安定メカニズム(ESM)」に求めている。
(債権団の実務者チームは金融支援に必要な額は740億ユーロに達するとの審査結果をまとめている。)

また、3000億ユーロに膨らんだ公的債務の返済負担軽減のための債務再編も要請している。

ーーー

改革案の中身を検討していたEU欧州委員会とIMF、欧州中央銀行(ECB)は7月10日夜、財務相会合に対し、ギリシャの提案は「交渉再開の土台になる」と内容に前向きの評価を報告した。

IMFのラガルド専務理事は7月8日、ワシントン市内で講演し、財政危機で金融支援を受けたポルトガルやアイルランドなどが改革に取り組んだことを踏まえ、ギリシャについても「財政健全化と重要な改革が必要だ」と強調する一方、EUに対しては「ギリシャのケースでは、財政持続のために債務の再編が必要だ」と述べ、借金の減免や返済期限の延期を促した。

ダウ・ジョーンズ通信は7月11日、IMFが、ギリシャの債務返済期限を現在の平均約30年から60年に延長することを提案していると報じた。

米国のルー財務長官は7月10日の講演で、ギリシャ政府の債務はGDPの約1.8倍もあり、「財政は持ちこたえられない」と指摘し、ギリシャ政府に対し厳しい改革を求める一方、「ギリシャ政府が抱える債務を整理する必要がある」と述べ、EUに対して返済条件の見直しを改めて求めた。

中国やロシアがギリシャに接近している。地中海の要衝でNATO加盟国のギリシャの混乱は安全保障問題に直結しており、米国は懸念している。

クリミアの二の舞を踏むことのないように、場合によってはギリシャでクーデターを起こすとの噂も飛び交った。
仮にギリシャがNATOから離れれば、その次はトルコだという不安がある。

ドイツの態度を批判する声も出ている。
2015/7/9   メルケル首相への公開書簡

ーーー

各紙の報道によると、ギリシャ側の財政改革案は下記のとおり。

  EC側要求 ギリシャ譲歩案
予算目標 基礎的財政収支の黒字を
 
2015年はGDPの1%
    2016年は2%
    2017年は3%
    2018年は3.5%
受入
Sales tax

 現状 一般税率23%
        軽減税率13%,  6.5%
           (電気料金は13%)

  ギリシャ危機前の税率
            一般税率19%
       軽減税率 9%,  4.5%
GDPの1%分増税


ホテル、レストラン等の税率引き上げ

電気料金の23%への引き上げも

(本年10月実施)
ホテル 6.5%→13%
レストラン等 13%→23%


軽減税率13%:食料品、エネルギー、水(電気料金は据置き)
軽減税率 6.5%:医薬品、書籍、劇場

離島向け軽減税率廃止
(現在は通常税率から30%軽減)
遠隔地以外は廃止


先ず最も人気のある島(Mykonos、Santorini、Rhodes、Kos)から実施
他は2016年末までに実施

防衛費 4億ユーロ削減 2015年に1億ユーロ削減、
2016年に2億ユーロ削減
法人税率 ギリシャ政府の当初案は厳しすぎる。
企業へのしわ寄せは望ましくない。
 
当初案   26%→29%
      +大企業に一度だけの12%課税


修正 26%→28%

農家の優遇税制と燃料補助を廃止
造船業は従量税率引き上げ、優遇税制の順次撤廃
長さ5メートル以上のレジャー船に贅沢税を賦課
贅沢税率 10%→13%
年金 GDPの1%(約18億ユーロ)削減 2015年にGDPの0.25~0.5%の節減
2016年以降は1%節減
支給開始年齢引き上げ前倒し 早期支給を廃止する方向

2022年までに支給年齢67歳を基準に
(困難な仕事、障碍児を育てる母親は除く )
民間セクター改革   2019年までに賃金の下方修正、技能・業績・責任を重視
有給休暇や旅費補助などはEU基準にあわせ簡素化
公共セクターの従業員を必要な場所に移せるように調整
月末までに不正防止策
政党の資金の透明化
経済犯罪調査への政治介入を防止
徴税 徴税制度の改革
 
独立したtax revenue agencyの設置
徴税、脱税摘発、燃料密輸の体制整備
金融   破産法改正でローンを返済させる
不良債権処理のためにコンサルタント起用
外人投資家にギリシャの銀行に投資させる手段をとる。
市場   規制緩和で事業開始を容易にする。
天然ガス市場の改革
民営化 民営化推進 電線網、地方空港、港湾の民営化
Pireaus港、Thessaloniki 港の売却を含む

 

 

ーーー

ギリシャ人たちが危機に陥っているのは、彼らが怠け者で借金を踏み倒す連中だからだ、というのは正しいか?

Wall Street Journal のオピニオン欄 「ギリシャ危機、金融メディアが語らない10のこと」は、全く正しくないとしている。
  
http://jp.wsj.com/articles/SB10468926462754674708104581085121389238598

1. ギリシャ人は既に要請されている以上に緊縮している。

2. 本当の問題はトロイカの薬が効かなかったということだ。

3. 引用される「専門家」の発言は、皆バイアスがかかっている。

4. (返済を停止したり、ユーロから離脱したりすれば、経済的な災厄に直面するとの主張があるが)
  ギリシャは既に破局している。

5. 国というものは、財政緊縮でマネーを「創出」できない。

6. 本当は、ギリシャのドラクマ再導入は極めて容易だ。

7. 本当は、ユーロ無しでもギリシャはやっていける。

8. ギリシャだけがこの危機の原因だったのではない。非は「ユーロ」構想

9. パニックになるな。今回のギリシャ危機は他の世界にとって大きな問題にならないはずだ。

10. トロイカの提案する「治療薬」は無意味だ。


作家 三橋貴明のブログでも下記のように述べている。

ギリシャ人の労働時間は、OECD諸国の中では最長です。ドイツ人はもちろんのこと、日本人よりも多いのです。

そして、2014年のギリシャ政府はプライマリーバランス(基礎的財政収支)が黒字化していました。

さらに、パパンドレウ政権までのギリシャの公務員数が妙に多かったのは確かですが、今は激減し、主要先進国の中では「日本に次いで」少なくなっています。



 

 

経済産業省は7月8日、2014年度のエチレンセンター10社の収益状況を発表した。

エチレンセンター10社の石油化学部門の売上高は、改善傾向にあったものの、昨年後半の原料価格の下落に伴う販売価格の低下や買い控えの動き等により、前年同期に比べ 7.4%の減少となった。

経常利益については、急激な原油安による在庫評価損等により、前年同期に比べ、84.7%の大幅減少となった。

石油化学部門の損益の推移は以下の通り。(億円)

年度 経常損益 営業損益
単独 単独 連結
2000 913 - 1,338
01 75 211 643
02 431 613 1,236
03 654 709 1,380
04 2,132 2,156 3,338
05 1,753 1,770 2,946
06 2,725 2,455 3,856
07 2,108 1,900 2,973
08 -1,825 -2,016 -2,034
09 -94 3 338
10 749 689 1,768
11 1,002 705 1,994
12 679 460 839
13 1,548 1,443 2,112
14 213 221 1,716



集計対象は下記の通り。大阪石油化学は三井化学子会社のため、実質10社である。

単独ベース  連結ベース 対象部門(いずれも)
旭化成ケミカルズ 旭化成 ケミカル・繊維部門
出光興産 出光興産 石油化学製品部門
昭和電工 昭和電工 石油化学部門
JX日鉱日石エネルギー JX日鉱日石エネルギー 石油化学部門
住友化学 住友化学 基礎化学部門、石油化学部門
東ソー 東ソー  石油化学部門
東燃化学 東燃ゼネラル石油 石油化学事業部門
丸善石油化学 丸善石油化学 (全社)
三井化学 三井化学 石化部門、基礎化学品部門、
機能樹脂部門
大阪石油化学
三菱化学 三菱ケミカルHD ケミカル部門、ポリマーズ部門


連結ベースは、国内及び海外の連結対象会社の変更等があるので、前年度と単純な比較は出来ない。

 



東洋エンジニアリングは7月6日、PT. Synthetic Rubber Indonesia からインドネシア・ジャワ島西部チレゴンでの合成ゴムプラント建設プロジェクトを受注したと発表した。

PT. Synthetic Rubber Indonesia はMichelin とChandra Asri Petrochemical の子会社のStyrindo Mono Indonesia のJVで、Michelin の技術でSSBR(溶液重合スチレンブタジエンゴム)とPBR(ポリブタジエンラバー)年産12万トンを製造する。

Michelin とインドネシアのChandra Asri は2013年6月17日、インドネシアに合成ゴム製造JVを設立する契約に調印した。

Michelin が55%、Chandra Asriの100%子会社のPT Petrokimia Butadiene Indonesia (PBI)が45%出資するとしていた。
投資額は435百万ドルで、工場建設は2015年初めに開始、2017年初めのスタートアップを目指す。

Michelin は、新興国での自動車産業の高成長とグローバルな高機能タイヤ(安全で長持ちし、燃料効率がよい)への傾向で、より技術的な合成ゴムの需要が増えているとしており、溶液重合SBRなどではないかと思われる。

2013/6/26   Michelin とChandra Asri 、インドネシアに合成ゴム製造JV設立

今回、東洋エンジニアリングと、同社が2012年に47%出資し、筆頭株主となっているインドネシアの大手エンジニアリング PT. Inti Karya Persada Tehnik (IKPT)が、詳細設計、機器資材の調達および工事までを一括請負受注した。東洋エンジがインドネシア国外での調達業務を、IKPTが設計・調達・建設業務を担当する。

東洋エンジニアリングはChandra Asri向けに、2011年にブタジエンプラント、2013年にエチレンプラント能力増を受注している。

合成ゴム計画の概要は下記の通り。

 JV:PT. Synthetic Rubber Indonesia
   
Michelin 55%、PT Styrindo Mono Indonesia 45% (当初のPT Petrokimia Butadiene Indonesiaから変更)

 建設地:インドネシア ジャワ島西部の Cilegon
   製品:合成ゴムプラント:年産12万トン
     溶液重合スチレンブタジエンゴム(SSBR)とポリブタジエンラバー
 完成予定:2018年初め
 原料:スチレンモノマー: PT Styrindo Mono Indonesia
      ブタジエン:
PT Petrokimia Butadiene Indonesia

ーーー

Chandra Asri は当初、Barito group75%日本インドネシア石油化学投資(丸85%、昭和電工 10%TEC 5%)が25%出資して設立され、1995年に生産を開始したが、2005年に日本側は撤退した。

2006/4/26  インドネシアのエチレン計画への日本企業の参加-1

その後、株主が次々に代わった。

PT Chandra Asri2007年に豊田通商からスチレンモノマー製造・販売の PT.Styrindo Mono Indonesia を買収し、2011年11日付でPPメーカーの PT Tri Polyta Indonesiaを統合し、新社名PT. Chandra Asri Petrochemical Tbk.として上場した。

タイのSiam Cement Group は2011年9月、Chandra Asriの株式30%を取得、経営に参画した。
シンガポールのTemasekから23%、Baritoから残り7%を買収した。

Barito Pacific    59.35%    当初の株主
Temasek Holdings      シンガポールの政府系投資機関
Siam Cement Group   30.06%    
Marigold Resources   5.52%    
一般株主   5.07%    (上場)

Chandra Asri はジャワ島西部の Cilegon にナフサクラッカーを持ち、各社に製品を供給している。

Chandra Asri は増設計画(エチレン +400、LLDPE +200、BTX、ブタジエン、ブテン-1 新設)を持っていたが、ブタジエンを除き、棚上げにしている。

2011/6/8  Chandra Asri の増設計画








トマ・ピケティなどギリシャへのEUの財政緊縮政策に批判的な経済学者ら5人が、ドイツのメルケル首相にギリシャの債務減免を求める公開書簡を出した。
書簡はブリュッセルでギリシャへの金融支援を協議するユーロ圏首脳会議が開かれた7月7日、ドイツ国内のメディアに公開された。

書簡に署名したのは次の5名:

Thomas Piketty:Professor of Economics at the Paris School of Economics
Jeffrey Sachs:Professor and Director of the Earth Institute at Columbia University
Heiner Flassbeck:former State Secretary in the German Federal Ministry of Finance
Dani Rodrik:Ford Foundation Professor of International Political Economy, Harvard Kennedy School
Simon Wren-Lewis:Professor of Economic Policy, Blavatnik School of Government, University of Oxford Piketty
 

書簡は次の通り。

欧州がギリシャに課している緊縮策は機能しない。ギリシャはもう沢山だと声高に叫んだ。

世界の多くが予想した通り、欧州の要求はギリシャ経済を押しつぶし、大量失業、銀行制度の破綻につながり、債務危機を悪化させ、債務はGDPの175%にもなった。税収は激減、生産と雇用は抑えられ、企業は資金不足となり、経済は破綻している。

人道的影響も巨大である。子供の40%は貧困生活を送り、幼児の死亡率は急増、若者の失業率は50%近くになった。

不正や脱税や以前のギリシャ政府による粉飾会計が債務問題を生んだ。ギリシャ人はAngela Merkelの、賃下げ、政府支出のカット、年金引き下げ、民営化、規制緩和、増税などの緊縮策に応じてきた。

しかし、ギリシャなどに課せられた調整計画は欧州では1929-33年以来起こっていない大不況を生んだだけである。ドイツ財務省やEUの処方箋は病気を治さず、患者を出血させている。

我々は共に、更なる被害を避け、ギリシャがユーロゾーンに留まれるよう、Merkel首相とトロイカに方針変更を求める。
現在、ギリシャ政府は銃を頭に向け、引き金を引くことを求められている。銃弾は欧州におけるギリシャの将来を潰すだけではない。これに付随して、希望と民主主義と繁栄のビーコンとしてのユーロゾーンも殺すこととなる。

1950年代に欧州は過去の負債、特にドイツの負債を免除して基礎をつくった。これが戦後の経済成長と平和に大きく貢献した。
今日、我々はギリシャの負債を再編、縮減し、経済回復の余地を与え、ギリシャが軽減された負債を長期にわたって返済できるようにする必要がある。
今こそ、この数年の懲罰的で失敗した緊縮策を人道的に再考し、もっと必要なギリシャの改革との関連でギリシャ債務の大幅削減に応じる時だ。

Merkel首相への我々のメッセージは明白だ。ギリシャとドイツのため、更に世界のため、行動のリーダーシップをとることだ。今週の首相の行動を歴史は記憶するだろう。ギリシャに対し、大胆で思いやりある行動をとって欲しい。それが将来の欧州に寄与することとなる。

ーーー

Thomas Pikettyは 独週刊紙 Die Zeit とのインタビューで、ドイツは第1次世界大戦後の対外債務も、第2次世界大戦後の債務も返済しなかったと指摘、「他の国に説教できるような立場にはない」と述べた。

「ドイツは歴史を通じて対外債務を返済していない唯一の例だ。第一次大戦でも、第二次大戦でも。
そのくせ、他の国にはしばしば支払をさせている。1870年のFranco-Prussian Warではフランスに多額の支払を要求、実際に支払を受けている。フランスはこれで何十年も苦しんだ。公共負債の歴史は皮肉に満ちている。規律と正義という考えには合わない」

また、戦後のドイツ経済の奇跡的復活は少なくとも過去に債務免除を受けたことが一助になったとの見方を示し、ギリシャに対しても同様の措置が取られるべきだと主張した。

「1945年の終戦時にドイツの負債はGDPの200%を超えた。10年後、ほとんど残っていない。公共負債はGDPの20%に過ぎない。ーーー
1953年のLondon Debt Agreementでドイツの対外債務の60%は免除された。
未来のことを考えてのことだ。これを忘れてはならない

ドイツはギリシャに寛大だとは思いませんかとの質問に対し、

「何の話? 寛大? 現在ドイツは高い利率でギリシャに融資し、利益を得ているではないか」

ーーー

Thomas Pikettyがフランスの新聞に連載したコラムをまとめた『トマ・ピケティの新・資本論』では、ギリシャ問題も取り上げている。

2010年3月時点で、ギリシャ人が生産する以上に消費する怠け者であったために財政危機が生まれたという論調に対して批判しており、ギリシャを倫理的に非難し国民に耐乏生活を強いるよりは、ユーロ共同債を実現し、ギリシャもドイツも含む欧州の納税者が負担を分かち合うべきであると主張した。

2011年11月の時点で、フランスとドイツを初めとする欧州の主要国が、公的債務の共同管理を行うための協定を結び、財政上の決定を単一の政治主体に委ねることを提言している。
欧州の各国首脳が互いに自国の利害を主張し、小幅の譲歩や妥協を重ねるやり方は打ち止めにすべきと主張した。

林秀毅の欧州経済・金融リポート2.0  ピケティがみたユーロ危機 ―始まり・深刻化と処方箋―


付記

IMF のラガルド専務理事は7月8日、ワシントン市内で講演し、財政危機で金融支援を受けたポルトガルやアイルランドなどが改革に取り組んだことを踏まえ、ギリシャについても「財政健全化と重要な改革が必要だ」と強調する一方、EUに対しては「ギリシャのケースでは、財政持続のために債務の再編が必要だ」と述べ、借金の減免や返済期限の延期を促した。

IMFについては、「ルールを曲げるわけにはいかない」と述べ、返済されるまでは新たな金融支援を行わない考えを改めて示した。

 




 

SABICとSK総合化学(SK Global Chemical)は2014年5月26日、SKの最新ポリエチレン技術(Nexlene™ )を使って高機能ポリエチレン製品を製造するための50/50JVを設立する合弁契約に調印した。

2014/5/31 SABIC、韓国のSK総合化学と高機能ポリエチレンのJVを設立

Nexlene™ はSKが2010年に触媒からプロセス、製品設計まで全体を自社技術で開発した高機能ポリエチレンで、メタロセンLLDPE とポリオレフィン・プラストマー(octene-1 コポリマー)、ポリオレフィン・エラストマーを製造する。
既存のポリエチレンと比較し、インパクトに強く、透明性に優れ、加工性もよい。

SKは年産23万トン第一工場を蔚山に建設し、2014年に5月に生産を開始した。


両社はその後、詳細を詰めていたが、
今回7月5日に合弁契約書を締結した。

合弁会社の詳細は下記の通り。

   社名: Sabic SK Nexlene Company (SSNC)
   資金: 7100億ウォン (632百万米ドル)
   出資比率:SK Global Chemical 50%、SABIC 50%
   本社:シンガポール

JVは韓国に100%子会社Korea Nexlene Company (KNC) を設立し、SKの蔚山の上記の年産23万トンのプラントを買収して運営する。

SK Global Chemicalと親会社のSK Innovation(旧称SK Energy)は技術供与と工場の拠出で5400億ウォン(480百万ドル)を現金で受け取る。

2~3年先にサウジに第二工場を建設し、その後、生産基地を世界中に広げたいとしている。

SKは、「SKの技術とSABICの競争力ある原料とマーケティング能力で、手を携えて世界市場に進出する。Nexleneに続き、高価値の化学製品で事業を拡大する」としている。

SABICにとっては、2009年のSinopecとのJV SINOPEC SABIC Tianjin Petrochemical に続く第二のアジア拠点となる。

2009/7/13 中国、シノペック天津石化計画へのSABICの参加を承認


この提携は、SKグループのChey Tae-won会長が2011年3月のサウジ訪問の際に、SABICのAl-Mady副会長に提案し、その後、協議を続けてきた。
 



 

東レは、燃料電池および水電解装置の部材開発・製造・販売会社で、Umicore とSolvay の50/50JVのドイツの SolviCore の株式を取得し、7月1日付けで100%子会社化し、Greenerity と改称した。

新社名「Greenerity」は、「Greener(より環境に優しく)」+「-ity(状態を表す抽象名詞語尾)」として、より環境に優しい社会の創造を目指していくことを意図したもの。

SolviCoreは2006年7月にUmicoreとSolvayが折半出資して設立、燃料電池や水電解装置の部材となる触媒層付き膜「Catalyst Coated Membrane(CCM) 」、膜・電極接合体「Membrane Electrode Assembly(MEA)」の開発・製造・販売を行っている。

燃料電池は、水素と酸素を反応させて電気を発生させる発電装置で、水しか排出しない次世代のエネルギー源として期待されている。

触媒層付き膜「Catalyst Coated Membrane(CCM)」 は、触媒層と電解質膜からなる燃料電池用電極膜。 
膜・電極接合体「Membrane Electrode Assembly(MEA)」は、触媒層と電解質膜とガス拡散層からなる燃料電池用膜電極接合体 。

東レは、中期経営課題 "プロジェクト AP-G 2016"で進める全社プロジェクトの一つとして「グリーンイノベーション事業拡大プロジェクト」を掲げ、地球環境問題や資源・エネルギー問題の解決を通じて社会に貢献することで、東レグループの持続的成長を支えることを目指している。

今回の買収は、このプロジェクトの一環であり、今後もGreenerity社の事業推進を通じて、水素製造(水電解)、水素インフラ(圧縮・貯蔵)、水素利用(燃料電池)技術の発展に貢献し、持続可能な低炭素・循環型社会の実現を目指していく としている。

 

SolviCoreは2006年7月にUmicoreとSolvayが折半出資して設立した。

Solvay はポリマー膜の技術を、Umicore は貴金属をベースとする触媒の技術を持ち寄ることで、燃料電池という新技術分野で重要な役割を演ずることを目指した。
工場はUmicoreのR&DセンターのあるドイツのHanau にある。

Solvayのポリマー膜は、Solvayが2011年に友好的買収を行ったRhodia の技術。

Umicoreは1805年設立のベルギーの会社で、貴金属リサイクル、自動車用触媒、バッテリー材料などの研究・開発・生産、MEA の開発・製造のため、電気触媒とポリマー膜の組み立てを行う。

同社の燃料電池関係事業は元はDegussa-Huls (現在のEvonik)の事業で、1999年にSpecialty Chemical に集中することを決め、燃料電池事業を分割し、Degussa Metals Catalysts Cerdec を設立した。
2001年にOM Group が
Degussa Metals Catalysts Cerdec
を買収、2002年にUmicoreがOM Group を買収した。


Solvay とUmicore はいずれも、今後も燃料電池部門で活動を続ける。
Solvayは先進的新素材の分野で、Umicore は触媒分野で活動する。



 

国際石油開発帝石(INPEX)とフランスのTotal が50%ずつ権益を保有し、Total がオペレートしているインドネシアの東カリマンタン州のマハカム(Mahakam)沖鉱区は2017年末に鉱区の期限を迎える。

両社は2018年以降の契約期間の延長を目指し、インドネシア当局と協議を進めてきた。
2015年3月に来日したジョコウィドド大統領へ安倍首相から同鉱区の契約延長に関しての要請を行った。


しかし、インドネシアのエネルギー・鉱物資源省は6月19日、
国営石油会社プルタミナ(Pertamina)に権益の70%を与えると発表した。
このうち、10%分は東カリマンタンの地方企業に配分することとなっている。

残りの30%は、ほとんど50年にわたり鉱区を運営してきたことに対する感謝として、INPEXとTotalに与えるとしている。

2018年1月以降はPertaminaがTotalに代わり、鉱区のオペレーターとなる。

ーーー

国際石油開発帝石(INPEX)は1966年10月にインドネシア政府と生産分与契約を締結し、マハカム沖鉱区の100%権益を取得した。

しかし、1969年に同鉱区で第一坑井を試掘したが出油せず、1970年7月に権益の50%をCFP社(現TOTAL)に譲渡した。
その後、ブカパイ油田、ハンディル油田、タンボラ油ガス田、トゥヌガス田、ペチコガス田、シシ・ヌビガス田などが順次発見され、以降、生産を続けている。

両社は2007年3月、マハカム沖鉱区に隣接する南東マハカム鉱区の権益を取得した。
2012年10月末に生産開始した。

生産された原油とコンデンセートは、積み出し基地であるサンタンターミナル、およびスニパターミナルから日本の石油精製会社、電力会社などへ出荷し、天然ガスは主にボンタンLNGプラントでLNGにして日本をはじめとする需要家向けに出荷している。

なお、アタカユニットは、1970年4 月にINPEXとUnocal(現Chevron)が50%ずつの権益比率で双方の隣接鉱区の一部を統合して設定され、1972年から原油・天然ガスの生産を続けている。

現在の生産量は、
 原油・コンデンセート:日量 約7.1万バレル
 LPG:日量 約6千バレル
 天然ガス:日量 約14.9億立方フィート
となっている。

ーーー

インドネシアのKompas紙によると、Pertaminaの労働組合幹部はマハカム鉱区に関し、エネルギー開発の独立性を維持するため外資の参画を認めず、100%をプルタミナが握るべきだとジョコ大統領に伝えた。

鉱区のような大型の石油・ガス田を運営には、巨額のの資金と高度な技術が必要で、大きなリスクも伴うが、「今こそ政府はプルタミナの能力を信用すべきだ」と訴えている。

東カリマンタンの鉱業保護の活動家は「ジャワ島東部 BojonegoroのCepu鉱区の例をあげ、民間の参画を警戒すべきだとしている。

しかし、インドネシアの一小企業の行動と、
ほとんど50年にわたり鉱区を運営してきた両社を一緒にするのはおかしく、Pertaminaが運営を担当することからも、この決定は変わらないと思われる。

Cepu鉱区のバンユー・ウリップ油田は2014年に生産開始した。

同鉱区の権益所有は下記の通りとなっている。

エクソンモービル(オペレーター) 45%
プルタミナ   45%
地方企業 10%
 Surya Energy Raya               3.375%
 Asri Dharma Sejahtera            1.125%
    Sarana Patra Hulu Cepu                1.100%
    Blora Patragas Hulu                       2.200%
    Petrogas Jatim Utama Cendana    2.200%

このうち、Surya Energy Rayaが自社の負債の解消のため、アフリカその他での石油開発に注力している中国人の徐京華 (Sam Pa) の企業 China Sonangol International (安中國際石油) から2億ドルを借り、見返りに権益を同社に貸与したとされる。

  * Sonangol はアンゴラの国営石油会社の社名。Sam Pa はアンゴラにも進出している。


ーーー

国際石油開発帝石のインドネシアでの活動は下記の通り。

各プロジェクトの詳細は下記参照

http://www.inpex.co.jp/business/indonesia.html

 



ギリシャの国民投票が7月5日午前7時(日本時間午後1時)に始まり、午後7時(同6日午前1時)に終わった。
投票権者は18歳以上の約985万人で、投票率が40%を超えなければ、結果は無効になる。

日本時間午前6時現在、開票率90%で緊縮策に反対が61.45%で、賛成 38.55%を大きく上回り、チプラス首相は 「ギリシャは歴史的なページを開いた」と述べ、反対派の勝利を宣言した。 
   
付記 最終的に、投票率 62.5%で、反対が61.31%、賛成が38.69%だった。

ギリシャ側は民意を背景に緊縮策の修正をEU側に迫りながら金融支援の実行を求めるものと見られるが、EU側がこれに応じ追加支援を行う可能性は低いとみられる。


EUは7月6日朝にトゥスク大統領、ユンケル委員長、ヨーロッパ中央銀行のドラギ総裁、ユーロ圏財務相会議のダイセルブルーム議長が電話による会議を開き、対応を協議する。


IMF債務は既に「延滞」(実質デフォルト)しており、最大の債権者の欧州金融安定ファシリティー(EFSF)は 、下記のとおり、ギリシャがデフォルト状態にあると認定し、即時支払要求の権利を留保した。

S&Pは公的機関であるIMFへの返済が滞ってもデフォルトにはあたらないとの見方を示しているが、7月14日にはギリシャ政府が抱える債務返済案件のうち、1995年に発行した20年物のサムライ債の約117億円(約8300万ユーロ)償還がある。
また7月17日は、2014年7月発行の3年もの国債の利払い(7100万ユーロ)がある。

これらの支払が滞った場合、格付会社はギリシャ国債をデフォルトと判断するとみられる。

IMFの報告書では、2018年末までにギリシャは500億ユーロが必要であるとしている。

ヨーロッパ中央銀行も、ギリシャの中央銀行を通じて行ってきた ギリシャの銀行への緊急流動性支援(ELA)を打ち切る可能性が高く、ギリシャの銀行は破綻が相次ぐ恐れがある。

付記

ヨーロッパ中央銀行は7月6日、ギリシャ銀行向け緊急流動性支援(ELA)を現行水準に据え置くと同時に、銀行が差し出す担保のヘアカット(割引率)を調整したと明らかにした。

これにより、資金繰りに余裕のないギリシャ国内行は休業を続ける。

そうなれば、ユーロ圏離脱がいよいよ現実味を帯びてくる 。

ギリシャにはロシアや中国が接近している。地中海の要衝でNATO加盟国のギリシャの混乱は安全保障問題に直結しており、米国は懸念している。

ーーー

ギリシャの債務状況は非常に厳しい。

1)ギリシャの対EFSF債務をデフォルトと認定

ギリシャが6月末にIMF債務を返済しなかったことを受け、ギリシャの最大の債権者である欧州金融安定ファシリティー(EFSF)は7月3日、ギリシャの対EFSF債務がデフォルト(債務不履行)状態にあると認定した。

ギリシャとEFSFとの取り決めで、IMFへの返済の延滞により、「ギリシャのデフォルト事由発生に至った」との認識を示した。

IMFはデフォルトという言葉を使わずに「延滞」と表現した。

デフォルトの場合の処理としては、
 
① 債権の即時支払い要求
 ② 債権放棄
  ③ 即時支払い要求の権利留保

があるが、EFSAは今回は権利留保を選択した。

EFSFによると、現在の対象債権は合計 1446億ユーロとなる。 (これまで1310億ユーロ程度とされていた)

Master Financial Assistance Facility Agreement  1091億ユーロ
Bond Interest Facility Agreement                                  55億ユーロ
Private Sector Involvement Facility Agreement          300億ユーロ

EFSFは「全ての債権者に対する財政上の義務を履行するというギリシャの約束を破るもので、ギリシャ経済や国民に深刻な影響が及ぶ可能性が生じている」としている。


2009年10月にギリシャの財政赤字粉飾が表面化し、支援が必要になったため、ユーロ圏16カ国は2010年5月、緊急支援の基金で3年間の時限措置の欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の設立と、これを引き継ぐ恒久的支援組織の欧州金融安定化メカニズム (ESM)の2013年7月設立を決めた。

EFSFは各国政府による保証を基に市場から資金を調達し、支援を必要とする国に融資を行うもので、当初の保証負担額は合計4400億ユーロであった。
2011年6月にEFSFの拡充を決定、現在は7798億ユーロとなっている。

各国が負担する保証負担額は以下のとおり。(百万ユーロ)

  保証負担額 拡大後
オーストリア 12,241    21,639
フィンランド 7,905 13,974
フランス 89,657 158,488
ドイツ 119,390 211,046
ルクセンブルグ 1,101 1,947
オランダ 25,144 44,446
AAA格付 6か国合計 255,439 451,540
その他 184,561 328,243
合計 440,000 779,783

EFSFは、今回のギリシャのデフォルトについて、「強固な保証の枠組みに支えられており、EFSF債の保有者への返済能力に影響しない」と説明した。


2)IMFによるギリシャ分析

IMFは6月26日付けで、IMF Country Report "Greece : Preliminary draft  Debt Sustainability Analysis" を発表した。 (国民投票が決まる前のものである)

それによると、前回の2014年5月の分析時には、計画通りにいけば、更なる救済は不要と思われたが、本年初め以降 、緊縮策や構造改革の取り組みが遅れて状況が変わった。 

2018年末までの間で、総額500億ユーロの資金が必要となる。

  億ユーロ
借入金返済 298
金利支払 172
支払遅延分 70
民営化 -20
基礎財政収支 -94
その他 93
差引 519


うち、借入金返済は下記の通り、EFSFが143億ユーロ、IMFが99億ユーロとなっている。

ギリシャが市場からこのような多額の資金を調達することは不可能である。

このため、ユーロ圏諸国が少なくとも360億ユーロを追加で、しかも超有利な条件(AAA向けの利率、長期融資、利子猶予期間つき)で融資する必要がある。

しかし、このような融資が2018年まで維持され、最も楽観的なIMFの現在の見通しに基づいたとしても、ギリシャの債務のGDP比率は2020年は150%、2022年でも140%になると予想される。

 

 

付記

この報告書をめぐり、ユーロ圏諸国が公表をやめるよう働き掛けていたことが、関係筋の話で分かった。IMFで大きな影響を持つ米国は公表を支持していたという。

ある外交筋はIMFの報告書公表について、欧州諸国が債務軽減を盛り込まない限り、今後のギリシャ追加支援にIMFは関わらないという意思表示だと語った。

チプラス首相は7月3日に行った国民向けのテレビ演説で、債権団の支援条件受け入れ拒否を国民に勧めている自身の判断の正当性が、IMFの報告書により裏付けられたと主張した。


IMFのラガルド専務理事は7月8日、ワシントン市内で講演し、財政危機で金融支援を受けたポルトガルやアイルランドなどが改革に取り組んだことを踏まえ、ギリシャについても「財政健全化と重要な改革が必要だ」と強調する一方、EUに対しては「ギリシャのケースでは、財政持続のために債務の再編が必要だ」と述べ、借金の減免や返済期限の延期を促した。

IMFについては、「ルールを曲げるわけにはいかない」と述べ、返済されるまでは新たな金融支援を行わない考えを改めて示した。

  


 

 


BPは7月2日、2010年4月にメキシコ湾で起こした原油流出事故を巡り、米連邦政府やメキシコ湾岸の5州(Alabama、Florida、Louisiana、Mississippi、Texas)と総額で最大187億ドルを18年間にわたって支払うことで和解した。


今後、本件を裁いていた
New Orleans
District Court のCarl Barbier 判事の承認を得る必要がある。

概要は次の通り。

支払先 内容 金額 支払期間
米政府 Clean Water Act (CWA)による罰金 55億ドル 15年
米政府、5州 天然資源被害
(NRD)
既決の10億ドルに加算 71億ドル 15年
未知の被害 2.32億ドル 終了時
5州 経済的被害、その他被害 49億ドル 18年
400以上の地方公共団体 最高10億ドル  

CWAとNRDの分割払いの未払い分の金利は5月末の米財務省債の利率(2年物、3年物平均)による複利で支払完了時に支払う。

Clean Water Actの罰金はこれまでは政府収入であったが、2012年のRestore Actで罰金の80%は影響を受けた州に入る。

今回の和解総額は187億ドルだが、一部を引当しているため、事故による費用総額(税引前)は2015年3月末時点の438億ドルから100億ドル程度増加する。

 


ーーー

BPは2012年11月15日、司法省によるすべての刑事訴訟で和解したと発表した。合わせて米証券取引委員会(SEC)とも和解した。

刑事訴訟については、11名死亡に関する11の違法行為とClean Water Act、渡り鳥条約、議会妨害に関する違法行為の合計14について有罪を認めた。

BPは約40億ドルを5年分割で支払う。このうち、罰金は1,256百万ドルで、これとは別に、National Fish & Wildlife Foundation に2,394百万ドル、National Academy of Sciences に350百万ドルを支払う。

SECに関しては、事故当初の漏出量予想の報告が問題とされた。これに関し、BPは罰金525百万ドルを3年分割で支払う。

2012/11/17  BP、Deepwater Horizon事故に関する米政府の全ての刑事訴訟で和解 


しかし、これには水質浄化法に基づく(政府による)民事訴訟や天然資源の損害賠償、過去の和解に含まれない個人による請求は含まれない。

水質浄化法Clean Water Act)では原油の流出量 1バレルに対して、1,100ドルの罰金が決められている。
但し、重大な過失による場合は、罰金は4,300ドルとなる。

2014年9月4日、米政府による水質浄化法に基く民事訴訟の裁判で、New Orleansの District Court のCarl Barbier 裁判官は、BPに「重大な過失」(gross negligence )と「故意の不法行為」(willful misconduct)があり、これが大量流出の原因となったとし、BPは水質浄化法によるバレル当たり4,300ドルの罰金に値するとの判決を言い渡した。

責任割合について、判事は、BPが67%、Transoceanが30%、Halliburton が3%と認定した。

2014/9/8    2010年の原油流出事故、「BPに重大な過失」と認定

Carl Barbier 判事は2015年1月15日、責任流出量を319万バレルと認定する判断を下した。

実際の流出量は400万バレル以上であるが、回収努力を考慮し、責任流出量を319万バレルとした。

政府は流出量を490万バレルとし、そのうち420万バレルはBPの責任だとしていた。
他方、
BPでは流出量を320万バレルとし、バレル1100ドルを適用し、35億ドルを引き当て ている。

これによると、罰金額は137億ドルとなる。(BPの責任割合は67%のため、91.8億ドルとなる)

2015/1/19 メキシコ湾原油流出事故の責任流出量 認定 

BPは罰金を1990年時代の最高額であるバレル当たり 3,000ドルに引き下げるよう要請したが(罰金は95.7億ドルに減る)、判事は却下した。
(EPAはその後、インフレ対応で罰金を引き上げたが、判事はこの引き上げを妥当とみなした。)

罰金額は計算上は上記の通り 91.8億ドルとなるが、判事による最終判決はまだで、間もなく行われるとされていた。

罰金額の決定に当たっては、下記の点が考慮される。

・被告側の流出量を抑える努力
・法律違反の重大性
・被告側の流出量を抑える努力の内容、程度、効果
・罰金が被告に与える経済的影響
・違反により被告が得る利益(もし在れば)
・有責性の程度
・同様事故での罰金
・以前の違反の事例

また、他の関係者の問題もある。

Operator 責任比率 Owner 出資比率 水質浄化法責任
BP 67% BP 65%  
Anadarko 25% ①判事「Ownerとしての責任のみ」
②政府は10億ドルを求める。
(2014/12)
Mitsui 10% 2012/2/20  メキシコ湾原油流出事故で三井石油開発が米政府と和解
  罰金 70百万ドル+環境保全 20百万ドル
Transocean 30%   2013/1/8 Transocean Deepwater Horizon 事故で罰金14億ドル支払い
Halliburton 3%    

今回、米国政府はBPとの間で55億ドルの罰金で和解した。

詳細は不明だが、司法長官は、「数週間にわたる最近の交渉で、政府や州の主張に合った、湾岸地域に今後にわたり利便をもたらすような合意に達した」としている。

各州にとっては、Restore Actによる水質浄化法の罰金の80%を含めると、裁判ではとても得られない多額の収入となる。

BPにとっては、これでほぼ全ての問題が解決する。

ーーー

罰金は下記の通り分割払いされる。(億ドル)

CWA NRD NRD 追加 5州
0           10.00
1 3.79 4.89    
2 1.89 2.45    
3 3.79 4.89   2.60
4 3.79 4.89   2.60
5 3.79 4.89   2.60
6 3.79 4.89   2.60
7 3.79 4.89   2.60
8 3.79 4.89   2.60
9 3.79 4.89   2.60
10 3.79 4.89   2.60
11 3.79 4.89   2.60
12 3.79 4.89   2.60
13 3.79 4.89   2.60
14 3.79 4.89   2.60
15 3.79 4.89   2.60
16     2.32 2.60
17       2.60
Totals 55.00 71.00 2.32 49.00



三井化学と韓国 SKC のポリウレタン材料事業における合弁会社である三井化学SKCポリウレタン(略号 MCNS) が 7月1日に営業を開始した。

ーーー

三井化学は2014年12月22日、韓国SKCと両社のポリウレタン材料事業を統合する合弁契約を締結したと発表した。

ポリウレタン材料の総合メーカーとして、極東アジアから中国、ASEAN、欧州、米州まで、両社のネットワークを利用してグローバルに顧客に価値を提供する。

三井化学は2015年3月23日、ポリウレタン材料事業の統合について、合弁会社の骨子を発表した。

 (1)韓国法人 Mitsui Chemicals & SKC Polyurethanes Inc.  三井化学 50%、SKC 50%
 (2)日本法人 
三井化学SKCポリウレタン            韓国法人の100%子会社 

2014/12/23     三井化学、韓国SKCとポリウレタン事業統合


狙いは下記の通り。

 1) TDI、MDI、ポリオール、システム製品全てを保有するアジア最大の総合ポリウレタン材料メーカー創設

 2)    両社の優位性を更に強化し、自動車・家電分野でのグローバル展開を強化

   3)   原料POからの一貫体制構築による競争力の強化

   

SKCは蔚山にPO/SM併産設備(180/400千トン)とEvonik/Uhde法の100千トンのHPPO processの2系列のPOプラントを持つ。



ーーー

MCNSの体制は下記の通り。

三井化学の大牟田工場、鹿島工場は新会社には移さず、三井化学が新会社からTDI、MDIの製造を受託する。

 


 

TDI 三井 大牟田 120              製造受託
鹿島 (117) 2016年停止   製造受託
 
MDI 三井 韓国・麗水 200 錦湖三井化学 (KMCI)
(錦湖化学50%)
大牟田 (60) 2016年停止   製造受託
 
ポリオール 三井 名古屋 50  
徳山 40  
インド 8 Vithal Castor Polyols (VCP)
SKC 蔚山 180
 
システム製品

 (
ポリオール、その他原料、および添加剤の混合物)

三井

天津天寰ポリウレタン(TCPC)

佛山 佛山三井化学ポリウレタン
佛山三井化学SKCポリウレタン (MCNS-F)
タイ Thai Mitsui Specialty Chemicals   (TMSC)
マレーシア Cosmo Scientex (M) SDN. BHD.
MCNSポリウレタンマレーシア(MCNS-M)
インドネシア P.T. Cosmo Polyurethane Indonesia
MCNSポリウレタンインドネシア (MCNS-I)
SKC 中国 北京 SKC (Beijing) Polyurethane
北京三井化学SKCポリウレタン (MCNS-B)
米国 SKC Inc.
MCNSポリウレタンUSA   (MCNS-U)
ポーランド SKC Europe PU
MCNSポリウレタンヨーロッパ   (MCNS-E)

 





 

アジアインフラ投資銀行(AIIB)は6月29日、北京の人民大会堂で設立協定の調印式を行った。

フィリッピン、デンマーク、クウェート、マレーシア、ポーランド、南アフリカ、タイの7カ国は調印していない。

2015/6/30   アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立協定調印式


AIIBのArticles of Agreement などによると、AIIBの概要は下記の通り。
    

1.資本金

資本金は1000億ドル。うち、当面の払込資本金 (paid-in shares) は200億ドルで、残り 800億ドルは Callable shares。

資本金1000億ドルのうち、域内を750億ドル、域外を250億ドルとする。

1000億ドルのうち、981億5140万ドルを設立加盟国に割り当て、残り18億4860万ドルは今後の加盟国のために空けておく。

出資比率は各国のGDPと購買力平価を基に決定した。

中国の場合、297億8040万ドルの割り当てで、出資比率は30.34%となる。


2.議決権

85%は出資比率で、15%は一律とする。
中国の場合、(30.34% x 0.85) + (0.15 / 57) で議決権は26.06%となる。

重要事項の決定には75%以上の議決権が必要としており、中国は1カ国で議題を否決できる事実上の「拒否権」も持つ。

IMFも重要事項の議決には投票権で85%以上の賛成が必要で、唯一15%超の比率を持つ米国が事実上の拒否権 を行使しており、
2010年に合意した「新興国の出資比率を引き上げ、理事会への登用を増やすIMF改革」が棚上げとなっている。)


3.国別の資本金、出資比率、議決権は下記の通り。

  調印していない7カ国(青色枠)についても、本年末までに調印すればよいため、含まれている。

   

出資(億ドル)

出資比率
(%)
議決権
(%)
域内 域外
1 中国 297.804   30.34 26.06
2 インド 83.673   8.52 7.50
3 ロシア 65.362   6.66 5.93
4 ドイツ   44.842 4.57 4.15
5 韓国 37.388   3.81 3.50
6 オーストラリア 36.912   3.76 3.46
7 フランス   33.756 3.44 3.19
8 インドネシア 33.607   3.42 3.17
9 ブラジル   31.810 3.24 3.02
10 英国   30.547 3.11 2.91
11 トルコ 26.099   2.66 2.52
12 イタリー   25.718 2.62 2.49
13 サウジアラビア 25.446   2.59 2.47
14 スペイン   17.615 1.79 1.79
15 イラン 15.808   1.61 1.63
16 タイ 14.275   1.45 1.50
17 UAE 11.857   1.21 1.29
18 パキスタン 10.341   1.05 1.16
19 オランダ   10.313 1.05 1.16
20 フィリッピン 9.791   1.00 1.11
21 ポーランド   8.318 0.85 0.98
22 イスラエル 7.499   0.76 0.91
23 カザフスタン 7.293   0.74 0.89
24 スイス   7.064 0.72 0.87
25 ベトナム 6.633   0.68 0.84
26 バングラデシュ 6.605   0.67 0.83
27 エジプト   6.505 0.66 0.83
28 スウェーデン   6.300 0.64 0.81
29 カタール 6.044   0.62 0.79
30 南アフリカ   5.905 0.60 0.77
31 ノルウェー   5.506 0.56 0.74
32 クウェート 5.360   0.55 0.73
33 オーストリア   5.008 0.51 0.70
34 ニュージーランド 4.615   0.47 0.66
35 デンマーク   3.695 0.38 0.58
36 フィンランド   3.103 0.32 0.53
37 スリランカ 2.690   0.27 0.50
38 ミャンマー 2.645   0.27 0.49
39 オマーン 2.592   0.26 0.49
40 アゼルバイジャン 2.541   0.26 0.48
41 シンガポール 2.500   0.25 0.48
42 ウズベキスタン 2.198   0.22 0.45
43 ヨルダン 1.192   0.12 0.37
44 マレーシア 1.095   0.11 0.36
45 ネパール 0.809   0.08 0.33
46 ルクセンブルグ   0.697 0.07 0.32
47 ポルトガル   0.650 0.07 0.32
48 カンボジャ 0.623   0.06 0.32
49 ジョージア 0.539   0.05 0.31
50 ブルネイ 0.524   0.05 0.31
51 ラオス 0.430   0.04 0.30
52 モンゴリア 0.411   0.04 0.30
53 タジキスタン 0.309   0.03 0.29
54 キルギス 0.268   0.03 0.29
55 アイスランド   0.176 0.02 0.28
56 マルタ   0.136 0.01 0.27
57 モルディバ 0.072   0.01 0.27
小計 733.850 247.664 100.00 100.00

981.514

未割当 16.150 2.336  

18.486

合計 750.000 250.000

1,000.000


4.組織

本部は北京に置く。

理事会 域内9人、域外3人の計12人で構成する。理事は北京に常駐しない。

任期5年の総裁は初代ポストを中国が握り、金立群・元財政次官が就く見通し。

 




EU やIMFによるギリシャへの支援が6月30日に失効した。凍結されたままとなっていた 72億ユーロの融資枠が消滅した。

ギリシャは支援が切れる直前に、「欧州安定メカニズム(ES
M)」に対して2年間の資金繰り支援や債務再編、つなぎ資金を確保する現行支援の延長を求めた。(今回はIMFへの要請はせず)
新提案が受け入れられれば、国民投票を中止する用意があるとの考えを示した。
但し、財政緊縮策の受入では譲歩姿勢を示してい
ない。

ギリシャ政府はまた、欧州中央銀行(ECB)に対し、緊急流動性支援(ELA)枠の拡大を検討するよう要請した。

欧州中央銀行(ECB)は6月28日、緊急理事会を開催し、緊急流動性支援(ELA)での資金供給を増額しないことを決めた。
緊急支援枠は6月23日の引き上げで890億ユーロ前後とされる。

ギリシャの銀行が担保として差し入れているギリシャ国債は2月11日をもって適格担保要件を失ったため、ギリシャの銀行にとってはELAでの資金供給が唯一の道である。

2015/2/9 ギリシャ問題 

この増額が拒否された結果、銀行の資金繰りがつかないため、チプラス首相は6月29日から銀行を休業させ、資本規制を導入した。
銀行は6月29日から7月6日まで6営業日を休業する。6月29日はATMを含め、金融サービスが全面的に止まり、6月30日以
降は1日の預金引き出し額が60ユーロに制限された。 

付記 高齢者の多くがキャッシュカードを持たないため、銀行は7月1日から120ユーロまでの年金引き出しに限り
     窓口業務を再開した。

   ECBは7月1日の理事会で上限を890億ユーロで据置くことを決めた。毎週見直す。

IMFは、ギリシャが6月30日の期限までに15.5億ユーロの債務を返済しなかったことを確認し、ギリシャを先進国として初めての「延滞国」に認定した。

過去の延滞は、ソマリア、スーダン、ジンバブエのみ。

ギリシャは、6月5日のIMFへの債務返済を月末に先送りした。
6月中に期限を迎える4回分の返済計1
5.5億ユーロは、6月30日にまとめて支払うこととしていた。

6/5 3.0

億ユーロ

6/12 3.4  
6/16  5.7  
6/19  3.4  
15.5  

ギリシャ財務相は6月30日、IMFへの債務を返済しないと述べた。
政府は6月30日支払予定の年金
についても一部で遅れが生じると発表したが、こちらはなんとか支払が出来た。

IMFの報道官はギリシャが同日、返済期限の延期を要請したことを明らかにし、IMFは理事会で検討すると述べた。
一方、追加融資については、債務を返済しなければ受けられないと述べた。

ユーログループは7月1日に電話会議を開き、ギリシャ問題について討議する。

付記 ユーロ圏財務相会合で、7月5日の国民投票の結果が出るまでギリシャ側と交渉はできないとの見解で一致した。

ーーー

ギリシャの債務の8割は公的部門向けとなっており、民間保有の国債は390億ユーロ(12%)に止まる。
このためギリシャがデフォルトになっても、影響は大きくないと見られている。

  EU(欧州金融安定基金:EFSF) 1310億ユーロ(42%)
欧州中央銀行(ECB)  国債 270億ユーロ(9%)
IMF 7%

 

2015/7/1 日本経済新聞  2015年3月末時点

 

ギリシャは6月30日にIMFへの返済ができなかった。7月13日にはIMFへの4億5千万ユーロの返済を控える。
S&Pは公的機関であるIMFへの返済が滞ってもデフォルトにはあたらないとの見方を示している。

しかし、7月14日 にはギリシャ政府が抱える債務返済案件のうち、1995年に発行した20年物のサムライ債の約117億円(約8300万ユーロ)償還がある。
また7月17日は、2014年7月発行の3年もの国債の利払い(7100万ユーロ)がある。

これらの支払が滞った場合、格付会社はギリシャ国債をデフォルトと判断するとみられる。

更に、7月20日 にはECBへの 35億ユーロ、8月20日には同じくECBへの32億ユーロの返済を控えている。

S&Pは6月29日、状況が好転しなければ6ヶ月以内のデフォルトは避けられないとし、ギリシャ国債の格付けをCCCからCCC-に一段階下げた。
ギリシャがユーロ圏から離脱する可能性は50%程度あるとしている。

ギリシャ国債の格付け推移

S&P Moody's
B (ギリシャ ↓  2015/2/6) B2
B- (ギリシャ ↓  2015/4/15) B3
CCC+ (ギリシャ ↓  2015/6/10) Caa1 (ギリシャ ↓  2015/4/29) 
CCC (ギリシャ ↓  2015/6/29) Caa2 ギリシャ
CCC- ギリシャ Caa3
付記 Mpody'sは7月1日、ギリシャをCaa3 に引き下げた。


ーーー

米自治領プエルトリコは6月29日、「720億ドルに上る負債を返済できない」として、事実上のデフォルト宣言をした。

2008年のリーマン・ショック前後から、石油高などで苦しみ、経済立て直しが進まない中で歳入の見通しが甘く、想定以上に財政赤字が増えたという。

今後は債権者との協議で数年間の支払い猶予を求める方針。

ギリシャに加え、プエルトリコの債務問題も新たな懸念材料となる。





2012年4月に2本目の敷設工事が完了、現在の能力は年間550億m3
となっている。


 ロシアのGazpromは、シベリアの天然ガスをサンクトペテルブルク北方のビポルクからバルト海海底約1200キロを通ってドイツ北東部グライフスバルトまで供給するNord Stream Pipelineの倍増計画に着手した。

Gazpromは6月18日、同計画での協力についての覚書を、Royal Dutch Shell、ドイツのE.ON、オーストリアのOMV との間で締結した。
GazpromではBASFとBASF子会社
Wintershall とも協議をしており、9月までに参加することを期待していると述べた。

付記 BASFは2015年7月31日、Wintershall の参加を発表した。

付記 2015/9/4 Shareholders' Agreementが調印された。新会社 New European Pipeline AGを設立する。

既存のNord Stream Pipelineは、Gazprom 51%、E.ON 15.5%、Wintershall 15.5%、Nederlandse Gasunie 9%、 GDF SUEZ 9% の出資となっている。
Gazprom は今回も51%を出資する予定。

付記 2015/9/4 出資比率決定

  Nord Stream -1 Nord Stream -2
Gazprom 51.0% 51.0%
E.ON 15.5% 10.0%
Wintershall 15.5%  10.0%
Nederlandse Gasunie 9.0%
GDF SUEZ 9.0%
Shell 10.0%
OMV 10.0%
ENGIE 
 仏
電気・ガス事業者
  9.0%

既存のNord Stream Pipelineは2011年11月に供給を開始した。

Nord Stream がドイツのLubminで地上に出たところからドイツとチェコの国境のOlbernhau までの全長470kmのOPAL natural gas pipelineと接続している。

 

2011/8/27 Nord Stream Pipeline、欧州ネットワークに接続 


今回は新しく2本のパイプラインを建設する。能力は
年間550億m3で、倍増となる。

ーーー

ロシアの天然ガスの欧州での販売については、EUが問題視し、クレームをつけている。

EUの欧州委員会は2015年4月22日、ロシアの天然ガス会社 Gazprom にEU競争法違反の疑いがあるとし、異議告知書を送付した。

欧州委員会はロシア産ガスに大きく依存する中東欧諸国のガス市場で、独占的な地位を乱用して競争を妨げたとの暫定的な判断を示した。
ブルガリア、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ポーランド、スロバキアの計8カ国のガス市場で独禁法に違反したとみている。

2015/4/27 EU、ロシアのGazpromにEU競争法違反の警告    

ロシアは2014年12月1日、ウクライナを迂回してロシアから欧州南部に天然ガスを輸送するパイプライン South Stream の敷設計画を撤回した。
実際には、パイプラインの海底部分建設のための140億ユーロの調達がEUの制裁で困難になっていることがあるが、EUによる反対が口実となった。

EUは2013年12月4日、各国が締結したSouth Stream pipeline 建設契約はEUの法に違反しており、ゼロから再交渉する必要があるとした。

2007年9月に採択された第三次電力・ガス自由化パッケージではエネルギーの生産と輸送ネットワークの所有を分離することとしており、South Stream pipeline 建設契約がこれに反しているとした。

EU規則は2007年9月のものだが、2013年12月までは EUはSouth Stream 計画について何も問題視していない。

2014/12/4   ロシア、South Stream 計画を取り止め


ウクライナ問題で対ロ制裁が続く中、EUの対応が注目される。



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