「no」と一致するもの

Saudi Aramcoがタイ国営のPTTとのベトナムでの石油精製・石油化学計画(Victory Project)から撤退することが分かった。

PTTによると、Saudi Aramco は7月1日付けで撤退を決めたという。「PTTとSaudi Aramco は本計画のパートナーとなる然るべきベトナム企業を探してきたが、今のところ見つかっていない」というのが撤退の理由とされる。

Saudi Aramcoはコメントしていない。

一方、PTT はベトナムは依然として投資すべき戦略的立地とみており、この計画を38.5%出資する子会社のIRPC(旧称TPI)に移管して継続する。
PTTでは、株主として本計画に関するIRPCの決定(計画のサイズ、投資範囲、パートナーなど)をサポートするとしている。

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ベトナム政府は2007年9月に製油所の建設計画を明らかにした。9つの製油所を建設し、2025 年までに国内需要の90%を自国内の製油所でカバーするとし、原油処理能力の目標値を日量 111~121万バレルとした。(能力は当初の計画で、具体化時点で変更される)

今回の計画は地図の④ 

タイのPTTは2012年末に、ベトナム南中部のBinh Dinh省のNhon Hoi 経済特区に、日量66万バレルという世界最大級の製油所を建設することを計画していると報じられた。
石油化学コンプレックスの建設も計画に含まれている。

その後、他の製油所計画が進捗しているため、同社は精製能力を40万バレルに落とし、詳細を詰めていた。

2014年にサウジのSaudi Aramco が参加を決め、両社で詳細FSを提出した。

計画 石油精製・石油化学計画 (その後、Victory Project と名付ける)
・石油精製 日量 40万バレル(当初計画は66万バレル)
・石油精製製品 日量26万バレル(年産1200万トン)
・オレフィン系 合計年産300万トン
・芳香族系  合計年産200万トン
立地 Binh Dinh省 Nhon Hoi Economic Zone
投資額 220億ドル(PTTの当初見積287億ドル)
出資者
PTT 40%  PTT子会社 Thai Oil と IRPC も参加
Saudi Aramco 40%
ベトナム政府 20%
完成予定 2021年
原油 主にSaudi Aramcoが供給


2014/9/19 タイPTTのベトナム石油精製・石油化学計画にSaudi Aramco が参加 

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IRPC は旧称TPI(Thai Petrochemical Industry)で、PTT が38.51%出資、他にGovernment Savings Bank が9.54% など。

TPI は 元々 Prachai Leopairatana の経営であったが、1997年に石油化学事業への巨額投資や事業多角化のための借入金が経営を圧迫し、運転資金もショートしてが経営危機に陥った。
その後、いろいろの再建計画が立てられたが、Prachai が居座りを続け、迷走した。
2005
年にはタイ証券取引所が、政府主導の再建案に抵抗を続ける同社創業者のPrachai を告発し、管財人に対しPrachai 解任を指示した。
2006年5月になり、同社取締役会はようやく
Prachai を解任した。

石油精製能力は215千バレルでタイで第三位(1~3位は全てPTTグループ)

精製能力
(千bpd)
PTT出資
PTT Aromatics Refinery

280

48.89% Aromatics Thailand (ATC) と Rayon Refinery(RRC)が統合
Thai Oil 275 49.10%
IRPC 215 38.51% 旧称 TPI
ESSO Thailand 177
Star Refinery 150 36%→0 Chevron 64%→55%
Bangchak Petroleum 120 27.22%→0


2015/7/23 タイ石油公社PTT、石油精製事業を再編


石油化学は下記の通り。

千トン
エチレン 360
プロピレン 720
HDPE 140
PP 475
SM 260
ブタジエン 50


タイの石油化学の状況は 
2006/6/8 タイの石油化学の現状  2016/5現在の能力を付記


BPがオペレーターで三菱商事などが参加する企業連合は7月1日、インドネシア西パプア州のTangguh LNG拡張プロジェクトに対する最終投資決定を行ったと発表した。

Tangguh LNGは
、インドネシアの西パプア州のベラウ鉱区、
ウィリアガール鉱区ムツリ鉱区のガス田(3鉱区全体の確認埋蔵量は14.4兆立方フィート)から供給される天然ガスを液化するプロジェクトで、現在、液化設備2系列で年間760万トンを生産している。


天然ガスは沖合に設置される2基の無人洋上プラットフォームで生産され、パイプラインを通じて陸上LNG液化プラントに供給される。

第一期(2系列計760万トン)は2005年3月に最終投資決定を行い、2009年7月に第一船を出荷した。

タングーLNGプロジェクトは、次の4社との間でLNG売買契約を締結している。

中国海洋石油総公司の福建省LNG受入基地  年間260万トン
韓国Kパワー  年間最大80万トン
韓国ポスコ  年間55万トン
米国Sempra EnergyのメキシコLNG受入基地  年間最大370万トン

今回、年間380万トンの生産能力を有する第三液化系列を増設するもので、液化設備に加え、2つの海上プラットフォーム、LNG運搬船用の桟橋の新設及び合計13坑の生産井の掘削等を予定、2020年中の生産開始を目指す。既存の系列を加えると、能力は1,140万トンとなる。

第二期のLNGの出荷先は次のとおりで、インドネシアと日本のエネルギー需要を支える。
75%相当分 インドネシア国営電力会社 PT. PLN
25%相当分 関西電力


第二期の総事業費は8千億~1兆円になるみられている。

当初の計画段階では総事業費は1兆2千億円とされていたが、2016年に入って原油価格が急落し、これにつられる格好で資機材などのコストが大幅に下がったため、採算が取れると判断した。

既報のとおり、原油価格の下落を受け、東京ガスがシェールガスの権益を取得、三井物産も豪州油田開発事業の最終投資を決断している。



各鉱区の権益は次のとおり。

Berau 鉱区 BP Berau 48%
MIベラウ 22.856%
日石ベラウ石油開発 17.144%
KGベラウ石油開発 12%
合計 100%
Wiriagar 鉱区 BP Wiriagar 37.59839%
CNOOC Wiriagar 42.40161%
KG ウィリアガール石油開発 20%
合計 100%
Muturi鉱区 BP Muturi 1%
CNOOC Muturi 64.76677%
LNGジャパン子会社 34.23323%
合計 100%


Tangguh LNG 企業連合のメンバーは次のとおり。

BP Berau (Operator) 37.16%
MI Berau B.V. 16.30% 三菱商事(56%)、国際石油開発帝石(44%)
CNOOC Muturi 13.90% 中国海洋石油総公司
日石ベラウ石油開発 12.23% JX石油開発(51%)、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(49%)
KGベラウ石油開発 8.56% 海外石油開発(三井物産)、MIベラウジャパン(三菱商事、国際石油開発帝石)、JX石油開発、石油天然ガス・金属鉱物資源機構
LNG Japan 7.35% 住友商事(50%)、双日(50%)
Talisman Wiriagar Overseas 3.06%
KGウィリアガール石油開発 1.44% 海外石油開発(三井物産)、石油天然ガス・金属鉱物資源機構

ベトナム政府は6月30日、中部ハティン省などの海で4月に相次いで起きた魚の大量死について、台湾塑膠工業(台湾プラスチック)が建設する製鉄所からの排水に含まれる有害化学物質が原因とし、罰金5億ドルを命じた。

同製鉄所には、JFEスチールが5%資本参加し、技術支援・供与を行っている。

魚の大量死は製鉄所を建設中の中部ハティン省とその周辺の2省で4月上旬から確認された。その中には沖合や深海にしか生息しない希少種も含まれていた。
地元の漁師らの話によると、製鉄所ができる前は魚やエビが豊富に獲れたが、操業が始まってから漁獲量が急減したという。

ベトナム地元紙は地中に埋設した1.5 km のパイプを通じ、海に汚染物質が流れ出した疑いがあると指摘した。魚の大量死が見つかる数日前、同社はパイプの洗浄をしており、300トンの有毒な化学物質が使われたとしている。

ベトナム政府は当初、魚の大量死に製鉄所が関係する確証はないとの見解を示していた。

4月末に同社のハノイ事務所代表が「魚やエビか、近代的な製鉄所か、ベトナムはどちらかを選ばなければならない。両方手に入れるのは首相でも無理だ」と発言して反発を買い、翌日に本社の幹部が謝罪した。

政府は、魚の大量死の調査のため現地に専門家チームを派遣、原因究明に向けて国際的な支援の要請を検討する意向も示し、責任者を法の裁きにかける方針を明らかにした。

ベトナム天然資源環境省などが6月30日に発表した調査結果によると、4月に同製鉄所が地下に埋めたパイプを通じ排出した廃液がハティン省近海で魚の大量死を引き起こしたという。

これを受け、台湾プラスチックは汚染物質を検査しやすいように同パイプを地表に移すなどの対策をとる。

同製鉄所は当初6月下旬に稼働予定だったが、環境対策を改善し、7~9月中の操業開始をめざす。

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台湾プラスチックが建設中の一貫製鉄所:Formosa Ha Tinh Steel はベトナム初の大型高炉で、ハティン省ケアン市ブンアン経済区で建設を進めている。
鉄鋼を中国からの輸入に頼っているベトナムにとって国家的な最重要プロジェクトのひとつ。

第1期の総投資額は105億USドル、敷地面積は2,000ha強、粗鋼生産量は年約700万トンを計画しており、将来的に世界最大級の年2200万トン以上を生産する計画。

JFEスチールが5%資本参加すること、ならびに技術支援・供与を行うことを決定した。

同社は、新興国における幅広い需要増加に応えるため、かねてより東南アジア、インド等で一貫製鉄所事業の可能性を検討してきた。
ベトナムは、順調な経済成長を背景に鋼材需要が安定的に拡大しており、また今後鋼材需要の着実な伸びが見込まれる東南アジアに立地していることから、ベトナムの内需、および東南アジア向けを中心とした外需に対応した鋼材供給拠点として期待できる。

JFEは、第5次中期経営計画で、JFEブランド販売量 4,000万トンへの拡大を目指しており、今回の参画はその一歩となる。
今後、FHS社の早期の安定稼動に向け協力すると共に、FHS社において製造された製品を同社を通じて出資先や顧客に販売することによって、今後の成長に結びつけていく。

製鉄所の概要は下記の通り。

合弁会社 Formosa Ha Tinh Steel
所在地 ハティン省ケアン市ブンアン経済区
事業内容 高炉一貫製鉄業
資本金 45億USドル
株主構成 台湾プラスチックグループ70%、中国鋼鉄25%、JFEスチール5%
* 中国鋼鉄は台湾最大の製鉄会社で、粗鋼生産能力は年間約1300万トン規模
投資額 105億USドル(第1期予定)
設備 コークス炉、焼結設備、第1高炉、第2高炉、製鋼設備、熱間圧延設備、棒鋼・線材圧延設備、発電所


フランスのSanofi とドイツのBoehringer Ingelheim は6月27日、昨年12月に交渉を開始したSanofi の動物医薬品事業とBoehringer Ingelheim のConsumer healthcare 事業の交換について、契約を調印したと発表した。

独禁当局等の承認を得て、2016年末までに実施する。

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Sanofi とBoehringer Ingelheim は2015年12月15日、両社が事業交換に関して独占的な交渉に入っていると発表した。
実現すれば、Sanofi はConsumer Healthcareでグローバルリーダーとなり、 Boehringer Ingelheimは動物医薬品で世界二位となる。

Sanofi の評価額114億ユーロの動物医薬品事業(子会社"Merial") と Boehringer Ingelheim の評価額 67億ドルの Consumer healthcare 事業を交換するもの。
Boehringer Ingelheim の中国のconsumer healthcare 事業は交換の対象外となっている。 

Sanofi は評価額の差額の47億ユーロを現金で Boehringer Ingelheimから受け取る。

Sanofi

Boehringer Ingelheim

動物医薬品事業(子会社"Merial")
  評価額 114億ユーロ
Consumer healthcare 事業   (中国事業を除く)
   評価額 67億ユーロ
現金     47億ユーロ

2015/12/19 仏Sanofi と独 Boehringer Ingelheim、事業交換の交渉 


Sanofi のConsumer healthcare 事業の売上高は約49億ユーロとなり、世界シェアは4.3%となる。各分野でのシェアもアップする。

Boehringer Ingelheim のAnimal Health businessの売上高は約38億ユーロとなり、現状の2倍以上となる。


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Boehringer Ingelheim の子会社の日本ベーリンガーインゲルハイム は、エスエス製薬の株の約60.2%を所有していたが、2010年にTOBを行い、出資比率を93.83%とし、その後100%子会社とした。

2010/2/16 Boehringer Ingelheim、エスエス製薬にTOB


今回の取引で、エスエス製薬はSanofi の子会社となる。



三井物産は6月27日、40%権益を保有する西豪州沖合の未開発油田群の商業開発につき、60%権益を保有するオペレーター のWoodside Energy と共に、最終投資の決断をしたと発表した。

今後約19億米ドル(物産の持分約 8億米ドル)を投資し、生産井の掘削、海底設備工事等を行い、2019年央の原油生産開始を目指す。


三井物産は2004年3月、豪州最大手石油・ガス開発会社であるWoodside Energyが100%権益保有する豪州北西海上 のWA- 28-L鉱区とWA-59-L鉱区の各40%権益を取得した。
権益取得対価は約464.5百万米ドル。


両鉱区は、豪州における主要油田・ガス田が存在する西豪州北西沖合い約60km のCarnavon堆積盆地にある合計面積3,261 km2の海上鉱区で、既発見未開発油田としては豪州最大級の埋蔵量規模を誇る油田群(Enfield油田、Vincent 油田及びLaverda油田が賦存しており、3億バレル程度の埋蔵量が期待でき るとした。

2006年7月24日、Enfield油田において原油生産を開始した。同油田の生産設備は10万バレル/日の生産能力を持 つ。

2008年8月27日、Vincent油田において原油生産を開始した。生産量は約5万バレル/日 。

2012年8月上旬に生産開始以降の両油田の累計生産量が1億バレルに到達した。


今回、Enfield 油田、Vincent油田と同じエリア内に存在する既発見油田群(2000年発見のLaverda油田とその上部にあるNorton油田、2010年発見のCimatti油田)を開発 する。
期待可採埋蔵量は原油約69百万バレル(100%ベース)。

Vincent油田で使用されている浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO) Ngujima-Yinに海底パイプラインで接続し、処理する。


原油価格下落の効果で採掘コストや資機材のコストは下がっているうえ、単独開発と比較して大幅に初期投資・操業費を抑えた開発と一体操業を行 うことで、仮に現在の低市況が継続した場合でも経済性を確保できる見込みであることから、商業化推進の判断に至った。

現在Enfield 原油、Vincent 原油は物産の100%子会社Mitsui & Co. Energy Trading Singaporeと Woodsideを通じて共同販売しており、本プロジェクトから生産する原油も同様に販売を行う予定。

また開発対象鉱区内外にはこの他に複数の既発見未開発埋蔵量があり、引き続き探査・評価作業を通じて商業化可能性を検討 する。

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三井物産は2016年3月期に多額の減損損失を計上し、赤字決算となった。

事業分野 内容 主な理由 当期損益
税引き後 
  億円
金属 チリ銅事業 Anglo American Sur 銅価格見直し等 -900
カセロネス銅事業 -250
ブラジル資源事業 Vale 減損 -350
豪州石炭事業 長期石炭価格 -250
エネルギー 豪州Browse LNG事業の減損 開発計画遅延 -400
その他原油・ガス資産の減損 長期原油・ガス価格 -150
機械・インフラ 海外発電事業の減損 長期電力価格 -300
合計 -2,600

今回の決定は、赤字計上後では初となる資源・エネルギー分野への大型投資である。原油市況が底値に近いと見て投資を決めた。

米大統領選で共和党の候補者指名を確実にしている実業家 Donald Trump が6月28日、ペンシルバニア州Alumisource で演説し、大統領に就いたら「米国をTPPから離脱させる」と述べた。NAFTA についても再交渉を求め、拒否されれば離脱するとしている。

アドリブの演説ではなく、あらかじめ用意した文書を読み上げた。

ポイントは次のとおり。演説では、各所でClinton夫婦の過去の行動を挙げ、その結果の悲惨さを述べ、批判している。

英国の友人たちは、国民投票で経済、政治、国境を取り戻した。

次は米国民が自らの将来を取り戻す時だ。

米国の最初の憲法には所得税さえ無かった。しかし関税はあった。国内の生産への課税ではなく、海外の生産への課税である。
今や、米国企業に課税し、規制し、制限して潰しながら、外国が無関税で製品を米国に輸出する欺瞞を許している。

もう一度、経済的独立を宣言する時だ。

大統領になれば、以下の7 つを実施し、職を取り戻す。

1)米国はTPPから離脱する。

2)米国の労働者を守るため、タフで有能な貿易交渉者を指名する。

3)商務長官に命じて、外国が米国労働者を傷つけている貿易協定違反を全て明らかにし、関係官庁にあらゆる手段でそれを止めさせる。

4)北米自由貿易協定(NAFTA)のパートナー(カナダとメキシコ)に直ちに再交渉する意図を伝える。米国労働者に少し良くするのではなく、もっともっと良くするのだ。
再交渉に応じない場合、撤退の通知をする。

5)財務長官に指示し、中国を為替操作国に指定させる。通貨切り下げで米国を害する全ての国に厳しく対処する。

6)通商代表部に指示し、米国及びWTOで中国の貿易問題に対処する。不当な政府補助金は中国のWTO入りの際に禁止されており、このルールを実行する。

7)中国が、米国の企業秘密盗みを含め、違法行為をやめない場合、これを是正するため、大統領としてのすべての権限を使う。


経済的敗北の時はようやく終わる。新しい繁栄の時代が始まる。

米国は再度、独立する。

米国の労働者はようやく、彼らを守り、彼らのために戦う大統領を持つことになる。

米国を、事業を始め、労働者を雇い、工場をオープンする世界で最良の場所にする。

税制改革で、労働者や事業への重荷を取り去る。無駄なルールや規則を取り除く。

未来を信じる時だ。互いを信じる時だ。米国を信じる時だ。

米国を再び、全ての人にとって偉大な国にする。今までよりももっと偉大な国に。


富士フイルムは6月23日、子会社でiPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーのCellular Dynamics International, Inc.が、米国国立眼科研究所との間で、他家 iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞を用いた加齢黄斑変性の治療に関する共同研究開発契約を締結したと発表した。

Cellular Dynamics は、免疫拒絶を起こしにくいHLAタイプの他家iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞と、細胞の培養・冷凍保存用培地の開発・提供を行う。

  • Cellular Dynamics は、GMPに準拠して製造された、免疫拒絶を起こしにくいHLAタイプ(最大5種類)の他家 iPS細胞由来網膜色素上皮細胞と、細胞の培養・冷凍保存用培地の開発・提供を行う。
  • Cellular Dynamics は、他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞を提供する。
    また、富士フイルムが開発した、生体適合性に優れさまざまな形状に加工できる細胞外マトリックス「リコンビナントペプチド(RCP)」も提供する。
  • 国立眼科研究所は、Cellular Dynamicsから提供を受けた、細胞、培地と細胞外マトリックスを用いて、移植用の組織培養を行うとともに、培養組織の冷凍保存試験と動物モデルでの有効性試験を行う。
  • Cellular Dynamics と国立眼科研究所は、細胞移植の効率向上に寄与する「RCP」を他家iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞とともに移植し、移植した細胞への血管新生による有効性と安全性も確認していく。

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加齢黄斑変性は、加齢に伴って、目の網膜の中心部分の黄斑部にある網膜色素上皮細胞が死亡・減少する疾患で、視力が低下し、進行すると失明に至る。患者は世界で約3千万人と推定され、完治する治療法が確立されておらずアンメットメディカルニーズが高い疾患。

日本では2014年9月、理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーが世界で始めて iPS細胞から作った網膜の細胞を、加齢黄斑変性の患者に移植する臨床研究の手術を行った。
2015年10月、
手術から1年が経過したことを受け、「がんなどの異常は見られず、安全性の確認を主目的とした1例目の結果としては、良好と評価できる」と発表した。

この場合は患者本人から作成したiPS 細胞(自家iPS細胞)を使用した。ヘリオスがシートの作成を担当した。

2013/12/4 大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス、iPS細胞由来医薬品を共同開発

京都大学iPS細胞研究所、理化学研究所、大阪大学、多細胞システム形成研究センターの4機関は2016年5月30日、「滲出型加齢黄斑変性に対するiPS細胞由来網膜色素上皮細胞移植に関する臨床研究」を実施することを目的とした協定を締結した。

新たな臨床研究では、自家細胞・シート移植の手法に限定することなく、他家細胞の使用や細胞懸濁液の移植についても検討することを計画している。

iPS作成には1人当たり1千万円程度がかかり、作製に半年が必要で急場の間に合わない。このため、山中教授は「iPS細胞ストック」構想を進めている。

他家iPS細胞利用のためには、拒絶反応対策が必要で、白血球の血液型といえるHLA(ヒト白血球型抗原:Human Leukocyte Antigen)の合致が求められる。

HLA型は父母ごとに何百種で、合わせて何万もあり、全てのストックは無理だが、HLAホモドナー(父母が同型)のものは、片方が合えば使用できる。民族によりHLA型の分布が異なるが、日本人の場合は、ある1名のホモドナーで全体の20%75名のホモドナーで80%をカバーできる。

2012/7/26 「iPS細胞ストック構築」で赤十字と提携 

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富士フィルムは2015年3月30日、株式公開買付けにより米ベンチャーCellular Dynamics International, Inc. を買収することで同社と合意した。

ウィスコンシン大学のJames Thomson 教授は、山中教授と同じ2007年11月に、人間の受精卵を使わずに皮膚細胞からiPS細胞ができると発表しているが、Cellular Dynamicsは、そのJames Thomson 教授が創始者の一人である。

Cellular Dynamicsが持つ特許の範囲は、体の様々な細胞からiPS細胞を作製する技術、iPS細胞から心筋や糖尿病治療への応用が期待される膵臓のベータ細胞を作る技術など幅広い。中でも2013年に成立した、プラスミドと呼ばれる環状DNAを使ってiPS細胞を作る技術は、がんになりにくい安全なiPS細胞を得るのに不可欠とされる。

また同社は、California Institute for Regenerative Medicine とのiPS 疾患細胞バンクの樹立、National Eye Institute へのドライ型加齢黄斑変性症の臨床試験開始届を行うための前臨床試験用 iPS 細胞受託を進めるなど、米国でのiPS 細胞供給ビジネスを積極的に展開している。

Cellular Dynamicsは2015年2月、2人のHLA "Super-donor" からGMP基準のiPS細胞を樹立したと発表した。

京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授は2015年4月8日、このCellular Dynamics と iPS細胞関連の有力特許の相互利用などを推進する考えを明らかにした。

Cellular Dynamicsは山中教授の特許の実施権をすでに得ているが、癌になりにくい安全なiPS細胞を作ったり、iPS細胞から心臓の細胞を育てたりするための特許を幅広く保有し、高品質なiPS細胞製品を世界中の研究機関に供給している。

山中教授は、それぞれの特許を相互に利用できるようにするクロスライセンス契約の締結など「これまで以上に深い協力ができると期待している」と話した。


カリフォルニア州の電力会社 Pacific Gas and Electric (PG&E) は6月21日、労働組合や自然保護団体などとのJoint Proposal を発表、エネルギー効率アップ、再生エネルギー、エネルギー貯蔵に対する投資を現在の規定以上に増やし、2025年までにカリフォルニア州での原発を停止する。

Joint Proposal のメンバーは下記の通り。
 PG&E
 International Brotherhood of Electrical Workers Local 1245、Coalition of California Utility Employees
 Friends of the Earth、Natural Resources Defense Council、Environment California、Alliance for Nuclear Responsibility

停止するのは、Diablo CanyonのWestinghouseのPWR原発2基(各1,100MW)。

No.1 は2024年11月2日、No.2 は2025年8月26日に認可期限が来るが、PG&Eでは原発ライセンスの更新手続きを中止する。

カリフォルニア州の新しいエネルギー政策はDiablo Canyon原発の電力のニーズを著しく減らす。

気候変動に関する法案(SB-350:別名50/50/50法案)は下記を義務付ける。
 (1)2030年までに建物の電力効率を50%改善する
 (2)2030年までに電力会社は電源の50%を再生可能エネルギーで賄う
 (3)2030年までに自動車とトラックの石油使用量を50%削減する

停止までの 8 - 9年間で原発の電力を温室効果ガスのないソースに置き換える。原発2基の電力を、コスト競争力のある温室効果ガス無しのエネルギー効率アップ、再生エネルギー、エネルギー貯蔵の組み合わせで置き換える。

PG&Eでは2031年までに再生エネルギーの比率を55%にまで高める。これは米国のエネルギー会社で例のない自主的なコミットメントである。

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カリフォルニア州では2013年にSan Onofre原発の廃炉が決まっており、これで同州から原発がなくなる。

Southern California Edison 2013年6月7日、三菱重工業製の蒸気発生器の配管破損で前年から停止中の米カリフォルニア州南部のSan Onofre原発 全2基を廃炉にすると発表した。

2号機は1983年、3号機は1984年にスタートした。
三菱重工業は2号機、3号機の取替用の蒸気発生器を各2基 納入した。

San Onofre原発は2012年1月31日、3号機の蒸気発生器の配管から水が漏れて緊急停止、微量の放射性物質が漏れた可能性もある。定期点検中の2号機でも配管摩耗が見つかり、NRCはすべての稼働を禁じた。

Edisonは2012年10月、2基のうち1基を7割の出力で稼働する計画をNRCに出したが、市民団体や一部議員が反対、NRCも公聴会を重ねるなどして判断に時間がかかり、「再稼働できるかどうか、できたとしてもいつになるか不安定な状態がこれ以上続くのは、利用者や投資家にとってよくないとの結論に至った」とコメントを出した。
2013年6月7日、全2基を廃炉にすると発表した。

Southern California Edisonは2013年10月16日、米国で仲裁を申し立てた。本件契約の保証義務違反等に基づき、三菱重工に対し40億米ドル以上の損害賠償を求めている。

付記

2015年10月、請求額が75.7億米ドルで確定

2016年7月14日、請求額を66.67億米ドルに変更したことが判明

これに対し、三菱重工では、契約上の同社の責任上限は約1億3,700万米ドルであり、代替燃料コストを含め間接損害は排除されているとしている。

2013/10/22 米国原発会社、三菱重工業の蒸気発生器の欠陥で仲裁申立て 

英国、EU離脱 - 化学業界の話題

6月23日英国で実施されたEU離脱の是非を問う国民投票は、大方の予想を裏切る「離脱」という結果となった。


結果は次のとおり。

スコットランドは、全選挙区で「残留」支持となった。

Nicola Sturgeon 自治政府首相は、「スコットランドの人々は自分たちの未来がEUとともにあると考えていることが明確になった」と発言し、EUに留まるため、独立を目指す可能性を示唆した。

2014年9月18日の住民投票では英国からの独立を否決している。

独立賛成 1,617,989 44.7%
独立反対 2,001,926 55.3%


北アイルランドも残留派が多数を占めた。

カトリック系民族主義政党シン・フェイン党は、アイルランドとの統一の是非を問う住民投票を行うべきだと表明。「北アイルランドは、イングランドの投票結果に引きずられている。今こそ長年の要求である南北統一をかけた国民投票の実施を強く求める」としている。

北アイルランドには、カトリック系住民が多数をしめるアイルランド人住民と、17世紀に移住してきたイングランド系・スコットランド系入植者の子孫であるプロテスタント系住民がおり、アイルランドが1937年に独立した際に英国に残留した。

両者の対立は続き、いわゆる「北アイルランド紛争」が起こった。

カトリック系住民は、英国がEUから離脱すると、EUメンバーであるアイルランドとの関係が疎遠になるのを恐れる。


人口からみるとEnglandが圧倒的で、シン・フェイン党の主張の通り、「イングランドの投票結果に引きずられている」のは確かである。

EU離脱を機に、連合王国が崩壊する可能性もある。

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年齢層別では、若いほど残留支持、年寄りほど離脱支持となっている。

以下、毎日新聞記事

「離脱に投票した人は高齢者が多いと聞くが、若者の将来を考えたことがあるのか」。大学生は憤る。

離脱で移民の入国は制限されるが、英国民もEU内を自由に移動する権利が制限される可能性がある。

「この小さな島国では若者の活動や将来を保証してこそ、活力が上がる」

Repsol は6月17日、Sinopecが両社のJVに関し、55億ドルの補償を求めた調停手続き開始の通知を行ってきたと発表した。

問題のJVは北海に10の石油プラットフォームを持つ単独では最大のオペレーターのTalisman-Sinopec Energy UK Ltd で、間もなく Repsol Sinopec Resources UK と改称する予定のもの。下記の歴史を持つ。

Sinopecの親会社である中国石油化工集団は2009年818日、スイスに本拠を置く石油開発大手のAddax Petroleum の買収を完了した。
  金額は約75.6億米ドルで、中国企業による外国企業買収としては2009年で最大規模になった。

2009/9/2  シノペックのAddax買収の余波

Sinopecは2012年7月24日、カナダのTalisman Energy の英国子会社Talisman Energy (UK) の49%を15億ドルで取得することで合意した。
  Talisman Energy (UK)をTalisman-Sinopec Energy UK Ltd とし、Sinopecの子会社Addax とTalisman Energy のJVとする。

2012/7/31 中国石油大手による買収 続く

スペインの石油大手 Repsol S.A. は2015年5月8日、カナダの同業 Talisman Energy Inc. を買収した。

    2014/12/24 スペインの石油大手Repsol、カナダのTalismanの買収で合意 

Talisman-Sinopec Energyは英国の北海に49の油田を持ち、そのうち38油田を運営している。Flotta島にオイルターミナルを持ち、海上に12施設を持つ。


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Repsolによると、Sinopecは今回、JVへの当初の15億ドルの出資額と、その後の投資と機会コストの40億ドル、合計55億ドルの返却についての調停を求めている。 同時に、AddaxはJVに留まる意向も示している。

Repsolではこれを根拠のないものとしている。

スペイン当局の要請を受け、Repsolは声明を出し、「今回のSinopec の動きは、英国への投資決定を行った者が、期待した結果が得られないため、自己防衛のために行ったと解釈される」と述べた。

調停申請はビジネスパートナーに期待される義務と矛盾するもので、出資して3年後(Repsol がTalisman を買収し、JVに参加して以降)に行われたが、その間、Addaxはマネジメントレベルで経営に参加しており、なんら心配や懸念を示すことなく JVの全ての決定に参加していると述べた。

Sinopecはこれまでコメントをしていない。

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中国では2015年に元CNPCの総経理で政治局常務委員であったエネルギーの帝王、周永康 が汚職で無期懲役刑になり失脚した。

2013/8/31 中国政府、元CNPC総経理(前政治局常務委員)の汚職をめぐる調査を開始

Sinopecの海外資産買収の多くは、周永康 が中国の石油会社に、海外進出してエネルギー資源を獲得するようプッシュした時に行われている。

同社は周永康 の失脚後、全ての海外資産購入について内部監査を行っているが、海外資産の多くがオイルブームの頂点に、他の企業の買値に多額の上乗せをして購入されたことを認識している。石油価格の暴落で利益が出ない油田が多く存在する。

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