「no」と一致するもの

信越化学は4月23日、米国子会社Shintech がPVCの主原料の一つであるエチレンを生産する工場の建設を決定した と発表した。

日本の化学会社が米国でエチレン工場を建設するのはこの投資が初めてとなる。


建設する工場のエチレンの生産能力は、年産50万トン。工場の立地はShintechが既に所有しているルイジアナ州Plaquemineの工業用地で、2018年前半の完成を目指す。
投資額は約14億ドルを見込み、Shintechの自己資金で賄う。

建設工事は主に東洋エンジニアリングが請負い、米国ルーマス社の技術を用いる。

ーーー

信越化学は2014年4月15日、米国子会社のShintech がPVCの主原料の一つであるエチレンを生産する工場の建設許可(Air Permit application)をルイジアナ州の環境庁(Louisiana Department of Environmental Quality)に申請したと発表した。

投資の最終決定は数ヶ月先とし、所有している4箇所を立地として評価していると述べていた。

 ・ルイジアナ州 AddisのPVC 58万トンプラント
 ・ルイジアナ州 Plaquemine の電解・VCM・PVCのコンプレックス ⇒ 今回、ここに決定した。
 ・上記の近く
 ・テキサス州 Alvin (ShintechのFreeportのPVCプラントから数マイル北)
   申請は出されていない。

 

  2014/4/17  Shintech、米国でエチレン工場の建設許可を申請


エチレンが完成すると、原料からPVCまでの一貫体制が完成、一層のコストダウンが期待出来る。

Shintechは当初、原料VCMをDow Chemicalから供給を受けていた。

1996年に Louisiana州 ConventにShintechの第二工場建設を決めたが、電解~VCM~PVCの一貫体制を考えた。
しかし、この計画は環境保護団体グリーンピースが「ダイオキシンが発生する塩ビ工場を黒人住民の多い地域に建設するのは人種差別」と攻撃して難航し、結局、1998年になり信越は立地をAddisに変更し、一貫生産を棚上げしてPVC 59万トンのみの生産とした。

2004年12月、Louisiana 州
Plaquemine に総額10億ドルをかけて塩素 45万トン、VCM 75万トン、PVC 60万トンの一貫生産を行う計画を発表した。

そして今回、エチレンに進出する。

米国でのエチレンはシェールガスからのエタンを利用することで低コストが期待できる。
工業塩は工場近辺の土地の地下の岩塩層から採取でき、電解の電力料も安い。

信越化学は2013年6月、Shintech がルイジアナ州(Addis or Plaquemine) での電解、塩ビモノマーおよび塩ビ樹脂の生産能力の増強を決定したと発表した。
増強する生産能力はVCM 約30万トン/年、カ性ソーダ 約20万トン/年、PVC 約30万トン/年で、完成は2015年頃を目指す。投資額は5億ドル。

増設後のシンテックの塩ビ樹脂の生産能力は、ルイジアナ州の工場の既存分とテキサス州の工場を併せて295万トン/年となる。

                                単位:万トン
立地 PVC VCM カ性ソーダ
Texas州 Freeport  145   -   -
Louisiana州 Addis   58   -   -
Plaquemine   60   160  106
今回増設 32 30 20
合計  295  190   126


2013/6/21 Shintech、生産能力拡大を決定 

 




EUの欧州委員会は4月22日、ロシアの天然ガス会社 Gazprom にEU競争法違反の疑いがあるとし、異議告知書を送付した。
Gazpromは12週以内に反論できるが、欧州委が最終的に違反だと判定すれば、利益の最大10%の罰金を科され、数千億円規模に上る可能性がある。


欧州委員会はロシア産ガスに大きく依存する中東欧諸国のガス市場で、独占的な地位を乱用して競争を妨げたとの暫定的な判断を示した。

ブルガリア、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ポーランド、スロバキアの計8カ国のガス市場で独禁法に違反したとみている。

問題としているのは下記の点で、これらにより、欧州域内の自由なガスの取引を損ねているとみている。
 

国境を越えてのガス販売禁止 輸出禁止条項
販売先条項(国内のみ)
その他(輸出承認要、販売先変更拒否など)
Bulgaria, Czech, Estonia,  Hungary, Latvia, Lithuania, Poland、Slovakia
Unfair pricing policy 価格設定が不公平
最大40%の価格差
Bulgaria, Estonia, Latvia, Lithuania、Poland.
パイプライン建設とガス購入を結びつけ South Stream pipeline projectへの参加強制 Bulgaria
Yamal pipelineへの 投資決定への関与 Poland



EUの問題意識は下記の通り。

1) 国境を越えてのガス販売禁止

Gazprom はこれにより、各国間にガスを自由に送るのを禁止し、結果として各国は安い価格のガスの入手が出来ない。

これにより市場分割が行われ、最も必要な国にガスが流れない。

国によりガス価格が大きく異なる。低価格の国は余ったガスを価格が高い国に送るのがよいが、それが出来ない。

欧州委は既に2004年のGDFとENI・ENELとの取引、2009年のEDFとE.Onとの取引で、これが違法であるとの決定を下している。

ーーー

しかし、LNGでは買主が第三者に転売することを禁止する仕向地制限などが一般的である。


2) 不公平な価格

一般的にGazpromはガス価格を一連の石油製品価格に連動させている。

これ自体は違法ではなく、ガス価格が国により異なることも、各国のエネルギーミックスでのガスの重要性が異なるため、問題視していない。

しかし、Gazpromのコスト、地域別の価格など多くの点から考慮し、Gazpromの採用する石油製品との連動フォーミュラは需要家よりもGazpromに有利であると判断した。


3) パイプライン建設との結びつけ

ブルガリアとポーランドでガス供給を特定のパイプラインについての約束を条件とし、市場を支配したと懸念する。

ブルガリアでは、コストが高く、経済見通しが不確実なSouth Stream Pipeline 計画への参加を条件とした。

ポーランドでは、Gazprom以外のガスがポーランドを通過するYamal パイプラインに関して、投資決定にGazpromが関与することを条件とした。

Yamal Pipelineは、ロシアのヤマル半島からベラルーシ及びポーランドを経由してドイツに至るパイプランで、ロシアの独立系天然ガス生産・販売会社Novatek が運営する。


競争政策を担うVestager(ベステアー)欧州委員は22日、記者会見で「欧州市場で活動する企業は欧州企業であるかどうかにかかわらず、EUのルールに基づいて行動しなければならない」と強調した。

Gazpromへの警告について「政治的ではない」と指摘、調査がウクライナ問題の前から始まっていた点などを強調した。

しかし毎日新聞によると、昨年末の会見でVestager 欧州委員はGazpromの調査を「優先」する姿勢を強調し、「競争ある市場」が「EUが目指すエネルギー同盟を達成する一助になる」と述べており、対露エネルギー依存を下げるエネルギー同盟達成のために調査を急いだと見られる。

EUの具体的な動きはウクライナ問題が始まってからであり、ウクライナ問題などを巡ってEUと対立するロシアの反発は必至だ。

Gazpromは「各国法規と国際法を厳格に順守しており、事実無根だ」と反論する声明文を発表した。同社はさらに「(今回の判断は)調査の一段階に過ぎず、違法と認定するものではない。今後も法の枠内で行動していく」とした。ラブロフ露外相は「EUの主張はロシアとの合意に反する」と批判した。

ーーー

ロシアは2014年12月1日、ウクライナを迂回してロシアから欧州南部に天然ガスを輸送するパイプライン South Stream の敷設計画を撤回した。

実際には、パイプラインの海底部分建設のための140億ユーロの調達がEUの制裁で困難になっていることがあるが、EUによる反対が口実となった。

EUは2013年12月4日、各国が締結したSouth Stream pipeline 建設契約はEUの法に違反しており、ゼロから再交渉する必要があるとした。

South Stream pipeline 建設契約が反しているとされるEUの規則は、2007年9月に採択された第三次電力・ガス自由化パッケージである。

これはエネルギーに関する消費者の選択、フェアな価格、クリーンエネルギー、供給の保証を目的とするもの。
再生可能エネルギーに投資するなどの小企業でもエネルギー市場に参入できるようにするもので、具体的には、エネルギーの生産と輸送ネットワークの所有を分離する。これにより電線やパイプラインの所有者が、利用を拒否したり、高い価格を要求したりして参入を妨害するのを防ぐことを狙うものである。

South Stream pipelineについては、天然ガスの生産者であるGazpromがパイプラインを所有することになるため、これに違反するという主張である。
Gazpromの天然ガスだけを送るパイプラインは認められないとした。

ウクライナは2013年に欧州連合との政治・貿易協定の仮調印を済ませたが、ロシア寄りの姿勢を見せるヤヌコビッチ前大統領が2013年11月、EUとの関係を強化する「連合協定」の締結を見送り、ロシアとの協力関係を密にする方針に転換した。 (これが現在のウクライナ問題につながる)

EU規則は2007年9月のものだが、2013年12月までは EUはSouth Stream 計画について何も問題視していない。

2014/12/4   ロシア、South Stream 計画を取り止め


Gazpromはガス販売とパイプライン建設の両方を独占することで強い影響力を保ってきたが、EUはガスとインフラの独占は許さない姿勢を示した。
 


EUの漁業・海事総局は4月21日、韓国に対する「違法、無報告、無規制(IUU)漁業国」の予備指定を解除すると発表した。


EUは2013年11月、韓国の遠洋漁船が西アフリカ海域で違法操業を繰り返したことから、韓国政府には違法操業を罰する体系が整っていないとして、韓国をIUU漁業国に予備指定した。

EUは2008年9月に違法漁業(IUUIllegal, Unreported and Unregulated漁業)を防止、抑止及び廃絶するための「IUU漁業規則」を採択し、2010年1月1日からIUU Regulation を全面的に施行した。

IUU漁業規則は商業漁業に従事する全ての漁船を対象とし、EUへ輸出する全ての水産製品(養殖魚、淡水魚等を除く)について、正当に漁獲されたものであることを漁船の旗国が証明する漁獲証明書の添付が義務付けられ、IUU規則に違反する水産物がEU域内に入域することを防止、抑止及び廃絶することを目的にしている。

2013年11月にEU の海事・漁業担当委員はIUUに違反する国との取引を禁止する計画を発表した。

構造的問題を解決して違法な漁業問題に取り組むとの熱意を示せなかったとして、ギニア、カンボジア、ベリーゼの3国を非協力国に指定した。
これらの3国の漁船が獲った全ての漁業製品をEUが輸入することを禁止し、更にEUの漁船がこれらの国の水域で漁業を行うことを禁止した。


更に、韓国、キュラソー、ガーナの3国に対し、違法な漁業を禁止する国際的な義務を果たしていないとして、イエローカードを渡し、改善の努力がなければ同様のレッドカードが与えられると警告した。

2014年6月にはフィリッピンにもイエローカードを渡した。

EUは2014年6月末にも違法操業国家に指定するかどうかを決定するとしていたが、違法操業を防止する監視システムなどが確実に稼動し、国際規範に見合う操業体制を構築するためにさらに時間が必要だと判断し、最終決定を延期していた。

EUは4月21日の発表で、韓国とフィリッピンについて、法体制を改善し、IUUを防ぐ体制が出来たとみなし、IUUの予備指定を解除した。

一方、タイについては、監視、管理、規制システムに欠陥があるとし、イエローカードを渡した。近いうちに改善の努力がなければレッドカードが与えられる。

ーーー

NGOによる調査で、西アフリカ、特にSierra Leone沖で韓国船による違法漁業が行われていたことが分かっている。

韓国最大の水産企業・東遠產業が所有するマグロ・カツオ類のまき網漁船F/V Premier が、2011 年末から2012 年中頃にかけてリベリア共和国の海域において、管轄当局に正当な許可申請を行わないまま、IUU(違法・無報告・無規制)漁業を行っていたことが明らかになった。

IUU漁業国に正式に指定されると、国のイメージに傷がつくだけでなく、韓国で生産、加工した水産物のEUへの輸出が全面禁止されるほか、韓国漁船のEU内への入港もできなくなる。韓国海洋水産部は、IUU漁業国に指定された場合に発生する経済的損失を年間約1億ドルと推計していた。

韓国政府は予備指定国解除に向けて遠洋産業発展法を2度にわたり改正したほか、全ての遠洋漁船に衛星通信漁船管理システム(VMS)を設置し、リアルタイムで監視するなどの取り組みを実施した。

         付記

EUは仮指定に際し、韓国の遠洋漁船の管理システムを問題視した。

韓国政府は2014年4月、衛星を利用した位置追跡技術を持つKTサットにシステム開発を依頼した。 「最短でも開発に半年かかるところだったが、開発担当者10人余りが40日余り徹夜態勢で作業した結果、なんとか納期に間に合った」。

KTサットの衛星位置追跡システムは、釜山市の操業監視センターが全世界で操業する韓国の遠洋漁船約340隻の位置、進行方向、速度などをリアルタイムで把握できるように設計された。遠洋漁船に搭載されたアンテナを通じ、位置データが常時無線通信で衛星に自動的に伝送される仕組み。システムは遠洋漁船とインターネットで24時間結ばれていることになる。

改正遠洋漁業法(Distant Water Fisheries Development  Act)は2015年7月7日施行となるが、全ての違法漁船に対し、違法な魚の没収、漁業権の制限、違法漁業への対応、監視強化、違法行為への厳罰など、厳しい管理を行う。

例えば、重大な違法行為は刑事犯罪とみなし、5年以内の禁固刑か少なくとも5億ウオン(464千ドル)の罰金が課せられる。

改正法では韓国政府は違法漁業が行われている西アフリカで操業する韓国の船団のかなりの部分を買い上げ、スクラップする。

韓国海水部は、インド洋マグロの保存のための国際機構「インド洋まぐろ類委員会(IOTC)」で韓国が保存管理措置関連規定を96%遵守し、加盟国35カ国中1位を記録したと明らかにした。


今回、これらの対策が評価された。

EUはこれより前の2014年10月に Fiji、Panama、Togo、Vanuatu にグリーンカードを渡している。

なお、イエローカードをもらい、EUと交渉しているのは下記各国。
 2013/11  Ghana、Curaçao
 2014/6       Papua New Guinea
    2014/12     Solomon Islands、Tuvalu、Saint Kitts and Nevis、Saint Vincent and the Grenadines 
 2015/4       Thailand

ーーー

米国も2013年1月に、韓国漁船が南極水域で実施した違法操業に対する韓国政府の制裁の水準を問題視して「IUU漁業国」に予備指定した。

IUU漁業国に最終指定されれば毎年2億ドル相当の韓国水産物の米国向け輸出が禁止されるほか、韓国漁船の米港湾の利用も禁じられる。

このため、韓国は指定解除に向け、関連法の改正のほか、漁船位置追跡システム(VMS)設置、操業監視センターの運営などを進め、米国と交渉を続けてきた。

この結果、韓国海洋水産部は2015年2月、米海洋大気庁が韓国の違法漁業根絶に向けた改善措置を認め、韓国に対する「IUU漁業国」の予備指定を解除したと発表した。

 

 



中部電力は4月8日、米国オハイオ州における天然ガス火力発電事業に参画すると発表した。
本事業の事業会社であるCarroll County Energyの出資権益の20%を、開発事業者であるAdvanced Powerから取得した。


Carroll County Energyは、2017年度にCarroll County天然ガス火力発電所の完工・商業運転開始を予定している。
Advanced Power の発表では、5社からの出資で411百万ドル、10社の金融機関からの融資で488百万ドル、合計 899百万ドルが確保できた。

中部電力以外の出資者は以下の通り。

Advanced Power:スイスが本拠で、米国と欧州で発電プロジェクトの開発・建設・運営管理を行うデベロッパー
TIAA-CREF:米国最大級の資産運用高を誇る総合金融サービス会社
Ullico:労働者組織および組合従業員向けの保険及び投資会社
Prudential:世界最大級の生命保険会社

本計画の概要は以下の通り。

発電容量 700-megawatt electric generating facility
発電方式 Combined-cycle natural gas (ガスタービン:GE製 F.05)
設備 GE 7F.05 gas turbine 2基、D602 steam turbine 1基
建設業者 Bechtel
電力供給 IPP(独立系発電事業者)として北東部13州の全部または一部およびワシントンD.C.を管轄するPJMを通じて供給

本計画は、Utica とMarcellus シェールガス産地、American Electric Powerの345 kV 送電線、Kinder MorganのTennessee Gas Pipeline systemに近く、非常に競争力がある。

近年、米国では老朽化した石炭火力発電所の廃止による電力供給源の減少に対応するものとして天然ガス火力発電が期待されており、中部電力では、本発電所は高効率の新規電源として米国北東部への電力供給を行うことができ、長期にわたり安定した収益が期待できるとしている。

中部電力は伊藤忠と共に2010年に米国の天然ガス火力IPP事業に参画している。

2010年10月、伊藤忠商事と中部電力は、米国IPP事業者であるTenaska, Inc.(ネブラスカ州オマハ)他が保有する米国の5つの天然ガス火力発電所(合計契約出力:4,780MW)の一部事業権益(持分出力:約1,565MW)をTenaskから取得することで合意した。

伊藤忠商事の米国子会社Tyr Energy Inc.と中部電力が50%ずつ出資する共同投資会社を通じて保有する。

中部電力では、今後も市場動向や収益性、リスクなどに留意しながら、着実に海外事業を推進していくとともに、海外で獲得した知見を国内事業に反映することにより、エネルギーサービスの更なる充実につなげる。

 



 
Celaneseは4月16日、三井物産との間でテキサス州 Bishop のCelaneseの工場でメタノールを生産するJVを設立する契約を締結したと発表した。

能力は130万トンで、両社の50/50JVがテキサス州Clear Lakeで建設中で2015年10月スタート予定の能力130万トンのメタノール工場の設計をそのまま利用する。
これにより、合計能力は260万トンとなる。

CelaneseはTexas Commission on Environmental Qualityに建設申請を提出済みで、メタノール市場の状況や建設コストなどを勘案して最終決定を行う。

なお、両社はClear Lake工場の完成後、三井物産の持分をCelaneseが5年間購入する契約を締結した。

ーーー

Celaneseは酢酸、ポリアセタールなどのメタノール誘導品の製造に強みを持ち、世界最大のメタノール需要家の1社。

一方、三井物産は既に2004年に稼働したサウジアラビアのInternational Methanol Companyに次ぐ第2の製造拠点を検討していた。
また、米国シェールガス・オイル革命により安定供給と価格競争力が期待できる原料ガスの優位性に着目し、世界第2位のメタノール市場である米国で事業参画の機会をうかがってきた。

両社は2013年5月15日、折半出資の事業会社を設立しテキサス州Clear LakeのCelanese工場内でメタノール製造を行うことで合意し、合弁契約書を締結したと発表した。

合弁契約書の概要

事業内容 メタノール製造事業
出資構成 三井物産:50%
Celanese:50%
所在地 米国テキサス州 Clear Lake
総プロジェクトコスト 約8億米ドル
年間生産量 約130万トン
稼働開始時期 2015年央 →2015年10月
出資形態 LLC
 

発表では、メタノールは両社が引取り、三井物産は主に米国内で販売し、Celaneseは自社の川下製品の原料として使用するとしていた。
今回の発表で、5年間は三井物産持分をCelaneseが購入する模様。

ーーー

米国発の「シェール革命」によってエネルギー地図は大きく塗り替えられようとしているが、三井物産は、2014年3月期中期経営計画において「ガスバリューチェーン強化」を重点施策の一つに挙げ、上流権益の取得によるエネルギーの安定供給を目指すとともに、三井物産の総合力を発揮し、増加する天然ガスの物流ニーズに応える液化事業、タンクターミナル事業、天然ガスを利用した化学品製造事業などバリューチェーン全体でさまざまなビジネスを展開している。

今回の決定はその一環。

三井物産の米国シェールガス戦略「ガスバリューチェーン」
 
シェールオイル/ガス開発生産プロジェクト

三井物産は2010年に、米国ペンシルベニア州のMarcellus Shaleエリアで、米国の大手石油・ガス開発会社Anadarko Petroleum Corporationが開発・生産中のシェールガス事業に32.5%出資参画した。

2010/2/18  三井物産、米国でシェールガス開発生産プロジェクトに参画

さらに、2011年には米国テキサス州のEagle Ford shale エリアでAnadarkoが開発・生産中のシェールオイル/ガス開発生産プロジェクトに出資参画した。(SM Energyから12.5%の権益を取得)

2011/7/4  三井物産、テキサス州のシェール開発に参加

なお、三井物産は2008年2月、Anadarko Petroleumがモザンビークに保有する石油・天然ガス探鉱鉱区(Area 1)の権益の一部を取得することで同社と合意している。

2013/1/10 モザンビークの天然ガス開発 


米国産LNG輸出プロジェクト

三井物産は2012年、米国ルイジアナ州のCameron LNG受け入れ基地で、LNG輸出プロジェクトを計画している米国のSempra Energyと共同で、日本向けを含めた米国産LNG輸出実現に向けた検討を開始、2013年5月に、天然ガス液化加工契約および合弁会社設立契約を締結した。

Sempra EnergyはCameron LNG受け入れ基地に新たに年間1,200万トンの液化能力を確保する計画で、三井物産はこのうち、年間400万トンを引き取る。

2012/4/20  三菱商事と三井物産、米国産LNGを輸入へ

2014/9/12 米エネルギー省、Cameron LNG にFTA非締結国向け輸出の最終承認


ダウ社との合弁による電解事業

化学品の製造事業においても化学品製造に必要な電力や、天然ガス由来の原料調達コスト低減など、シェール革命の影響が広がっているが、三井物産は2010年7月、Dow Chemicalとの間で、米国テキサス州 Freeportで新規電解事業を行う合弁事業会社 Dow-Mitsui Chlor-Alkali LLC を設立し、2014年には、電解プラントが本格的な商業生産及び出荷を開始した。

本電解プラントは、最新の技術を導入し、世界最大級の生産能力を擁し、年間生産量は苛性ソーダが約88万トン、塩素が約80万トンとなり、両社が生産量の50%を引き取って利用または販売を行う。

三井物産は苛性ソーダ約44万トンをダウ社に販売委託し、 40万トンの塩素からは55万トンのEDCを生産し、三井物産のネットワークを通じて世界のマーケットに販売する。

2010/7/2 三井物産とダウ、合弁でテキサスで電解事業 

なお、Dow はこのたび、クロルアルカリ事業をOlin Corp.に売却することとしたが、Dow-Mitsui Chlor-Alkali もこの対象となっている。

2015/3/30  Dow Chmeical、クロルアルカリ事業をOlin Corp.と統合

 

天然ガス輸送

2013年7月には、米国アリゾナ州Tucsonの既存の基幹パイプラインからメキシコ国境のSasabeまで約 100キロメートルの天然ガスパイプラインを敷設・運営する事業に、新規に出資参画することで、米国パイプライン運営最大手のKinder Morganおよびメキシコ国営石油会社Petróleos Mexicanos(PEMEX)と合意した。

Sierrita Gas Pipeline LLCに三井物産が30%、PEMEXが35% 出資する。

輸送能力は日量約2億立方フィートで、総事業費は約2億米ドルを見込む。



三菱ガス化学、三菱商事および三菱重工業は4月13日、トリニダード・トバゴのNational Gas Company of Trinidad and Tobago Limited (NGC)および Massy Holdings Ltd.との間で、メタノール/ジメチルエーテル製造販売事業を進めることで合意し、プロジェクト契約、製造プラントのEPC(設計・調達・建設)契約、ガス供給契約等、主要な契約に調印したと発表した。

三菱ガス化学と三菱商事は2013年4月、トリニダード・トバゴ政府及び同国のNeal & Massy Holdingsとともに、この事業を検討することに合意し、NGC とNational Energy Corporation of Trinidad and Tobago (NEC)も加わり、Project Development Agreement を締結、第一段階実施のため、Caribbean Gas Chemical を設立した。

2013/4/12  三菱ガス化学と三菱商事、トリニダード・トバゴでメタノール/DMEの製造事業F/S に合意

このたび、最終的に事業を進めることで合意し、建設を担当する三菱重工も出資者に加え、必要諸契約を締結した。

計画概要は下記の通り。

JV名 Caribbean Gas Chemical Limited(2013 年3 月設立)
所在地 La Brea, Union Estate Industrial Estate
生産量 メタノール=100 万トン/年
ジメチルエーテル=2 万トン/年
出資比率
三菱ガス化学 26.25% メタノールを世界中で販売  
三菱商事 26.25% メタノールを世界中で販売  
三菱重工 17.5% プラントの設計から建設までを担当  
National Gas Company 20.0%    
Massy 10.0% メタノールを世界中で販売  
総投資額 約1,000 百万US$
完工時期 2018 年6 月予定

三菱ガス化学、三菱商事、Massy の3 社は、生産されるメタノールを世界中で販売すると同時に、トリニダード・トバゴ共和国政府と協力し、同国並びに周辺カリブ諸国において、ジメチルエーテルのディーゼル燃料代替促進に向けたプロモーションを行う。

ーーー

Trinidad Tobagoには豊かな石油と天然ガスの資源があり、石油と天然ガスがGDPの40%、輸出の80%を占める。

同国の天然ガスを利用する合計7つのメタノールプラントがPoint Lisasにあり、能力合計は660万トンに達する。

(1)   国営 Trinidad and Tobago Methanol Company

1999年に子会社を統合した。
下記のメタノール5工場のほか、アンモニア/尿素プラントを持つ。

子会社
統合
Trinidad and Tobago Methanol Company (TTMC) 1984年 TTMC I 46万トン
1996   TTMC II 55万トン
Caribbean Methanol Company Limited (CMC) 1993 50万トン
Methanol IV Company Limited (MIV) 1998 55万トン
M5000
(5000T/D+既存プラント排ガスで400T/D)
2005 184万トン
合計   400万トン

(2)   Methanex 及び Atlas Methanol

工場 能力  備考
Methanex   85万トン  
Atlas Methanol  170万トン  BP 36.9%/Methanex 63.1%


政府は、メタノールをそのまま海外に輸出するのではなく、これを原料にMethanol-to-olefins (MTO) 、Methanol-to-petrochemicals (MTP) により
付加価値の高いプラスチック産業の基礎をつくるという悲願を持っており、同国側は本計画の第二期でこれらを実施することを望んでいるとされる。





日本経済新聞によると、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授は4月8日、富士フイルムホールディングスが買収する米ベンチャーCellular Dynamics International, Inc.と iPS細胞関連の有力特許の相互利用などを推進する考えを明らかにした。

Cellular Dynamicsは山中教授の特許の実施権をすでに得ているが、癌になりにくい安全なiPS細胞を作ったり、iPS細胞から心臓の細胞を育てたりするための特許を幅広く保有し、高品質なiPS細胞製品を世界中の研究機関に供給している。

山中教授は、それぞれの特許を相互に利用できるようにするクロスライセンス契約の締結など「これまで以上に深い協力ができると期待している」と話した。

ーーー

山中教授と、オタマジャクシを使って最初のクローンを作りだした Sir John Bertrand Gurdon がノーベル医学生理学賞を受けたが、ウィスコンシン大学のJames  Thomson 教授も山中教授と同じ2007年11月に人間の受精卵を使わずに皮膚細胞からiPS細胞ができると発表している。

Cellular Dynamicsは、そのJames Thomson 教授が創始者の一人である。

Cellular Dynamicsが持つ特許の範囲は、体の様々な細胞からiPS細胞を作製する技術、iPS細胞から心筋や糖尿病治療への応用が期待される膵臓のベータ細胞を作る技術など幅広い。中でも2013年に成立した、プラスミドと呼ばれる環状DNAを使ってiPS細胞を作る技術は、がんになりにくい安全なiPS細胞を得るのに不可欠とされる。

Cellular Dynamicsが米国で取得している特許

 ・多能性幹細胞からの膵臓のベータ細胞などへの分化誘導

 ・ヒトES細胞などを自動培養する方法と機器

 ・血液の細胞の初期化によるiPS細胞の作製

 ・少量の末梢血からのiPS細胞の高効率作製

 ・ウイルスを使わないiPS細胞の作製法

 ・多能性幹細胞からの心筋細胞の作製

 ・ヒトES細胞やiPS細胞の血液の前駆細胞への分化誘導

ーーー

参考

iPS細胞での癌の発生の一つの理由は、レトロウイルスベクターと呼ばれるウイルスを通じて導入される4つの遺伝子のうちに、がん化のおそれのあるc-Myc があることだが、これを除いた3つの遺伝子のみの導入での iPS細胞の作成に成功している。
他方、プラスミドの細胞内への導入では、細胞のゲノムの改変を起こしにくく、がん化などの異常を起こす心配がないとされる。
 

もう一つは、目的の細胞に育たずiPS細胞のまま残ったものが無秩序に増殖し、癌化するもの。

産業技術総合研究所と和光純薬はこのたび、残った未分化の iPS細胞を取り除く試薬を開発した。

レクチン(糖結合タンパク質)の一種がヒトiPS/ES細胞に特異的に結合することが分かったため、細胞内に取り込まれるとタンパク質合成を阻害し細胞死を引き起こす緑膿菌由来外毒素を末端部分に融合させた組換えタンパク質(薬剤融合型レクチン)を考案した。

薬剤融合型レクチンを培養液に添加すると、未分化のiPS細胞のみがほぼ死滅するが、分化した細胞には影響を与えない。

    https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2015/pr20150410/pr20150410.html
ーーー

Cellular Dynamicsは、良質なiPS 細胞を大量に安定生産する技術に強みを持っており、大手製薬企業や先端研究機関など多くのユーザーとの供給契約、開発受託契約を締結している。
現在、創薬支援や細胞治療、幹細胞バンク向けのiPS 細胞の開発・製造を行っており、既に創薬支援向けでは、心筋や神経、肝臓など12 種類の高品質なiPS 細胞を安定的に提供している。

また同社は、
California Institute for Regenerative Medicine とのiPS 疾患細胞バンクの樹立、
National Eye Institute へのドライ型加齢黄斑変性症の臨床試験開始届を行うための前臨床試験用 iPS 細胞受託を進めるなど、
米国でのiPS 細胞供給ビジネスを積極的に展開している。

Cellular Dynamicsは本年2月、2人のHLA "Super-donor" からGMP基準のiPS細胞を樹立したと発表した。
HLA "Super-donor"
は父母から引き継いだHLA(白血球抗原) の型が同じ人(例 A-B-C / A-B-C)で、HLA型のどちらかが同じ人(A-B-C / X-Y-Z)になら免疫拒絶なしに移植できる。
この2つのiPS細胞で、米国人の計19%がカバーできる。

これは山中教授が進めているiPS細胞バンクと同じ構想である。

日本人の場合、75名の"Super-donor"(ホモドナー)で80%をカバーできる。

ーーー

富士フイルムHDは、3月30日、株式公開買付けによりCellular Dynamics を買収することで同社と合意した。
発行済普通株式の総数を約307 百万米ドルで取得する。


富士フイルムは、写真フィルムの研究開発・製造などで培ってきた技術やノウハウを活用して、再生医療に必要なリコンビナントペプチド(RCP)を開発している。

2010年には国内で再生医療製品事業を展開するジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)と資本提携を行い、41.29%の株式を取得したが、2014年12 月には持株比率を50.33%とし、連結子会社とした。J-TECは再生医療で皮膚や軟骨を手がけている。

2010/9/3  富士フイルム、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングと資本提携

今回、Cellular Dynamics 買収を通じ、iPS 細胞を使った創薬支援分野に参入する。

さらに、Cellular Dynamics のiPS 細胞関連技術・ノウハウと富士フイルムの高機能素材技術・エンジニアリング技術やJ-TEC の品質マネージメントシステムとのシナジーを発揮させ、再生医療製品の開発加速、再生医療の事業領域の拡大を図るとともに、再生医療の産業化に貢献していくことを目指す。

富士フィルム会長は、「iPS細胞を使った治療はこれからだが、細胞治療にも取り組みたい。例えばパーキンソン病や加齢黄斑変性の分野では臨床研究への応用も十分ありえるだろう」と述べた。

 

 

 

 

 


Shell は4月8日、英の天然ガス生産大手のBG Groupを470億ポンド(702億ドル)で買収することで合意したと発表した。石油業界では過去10年強で最大の買収となる。

現金と株式交換による買収で、1株当たり現金で383ペンスとShellの株式 0.4454株が与えられる。
換算した買収価格は1株約1350ペンスとなり、取引日90日平均に約52%上乗せした水準となる。

BGの株主は統合後のShellの株の19%を所有することとなる。

オーストラリア、ブラジル、中国、EU などで独占禁止当局との交渉が必要になる可能性がある。

Shellでは本買収に伴い、2016-18年の資産売却額を300億ドルに増やす方針を示した。

---

BG Group は1986 年に民営化された英国ガス公社 British Gasを前身とする天然ガス事業を主体とするエネルギー企業。
1999 年に主に英国以外の事業、資産を引き継ぎ、英国以外のガス田の開発、生産、LNG 事業、パイプライン事業、発電事業を行う
会社として設立された。

2004 年末の時点において、東南アジア、カザフスタンを含む世界20 カ国で事業活動を行なっているが、その中心エリアは、大西洋に面した欧州、北米、南米である。

LNG 事業の推進に積極的で、トリニダードトバコ、エジプト等で LNG事業を展開しており、米国への最大の LNG 供給業者となっている。

世界的な原油価格の下落を受け、石油業界では買収観測が高まっており、BG Groupはたびたびターゲット企業として指摘されていた。

2014年の損益は、石油価格の下落と生産量の減少が響いたほか、オーストラリア資産などで89億ドルの評価損(税引き前)を計上し、赤字となった。

  (百万ドル) 2013 2014 増減
営業損益 Upstream 4,967 3,947 -1,020
LNG Shipping & Marketing 2,643 2,544 -99
Others 6 46 40
合計 7,616 6,537 -1,079
減損損失等 -3,453 -7,954 -4,501
減損損失等 込み 4,163 -1,417 -5,580
継続事業純損益 2,205 -1,051 -3,256

ーーー

深海油田開発およびガス分野で強力なポートフォリオを持つ2つの企業の世界的な統合が実現する。

Shellが世界で持つ権益と、BG Groupの権益は、相互補完的であり、 統合で極めてバランスの取れたグローバル・ポートフォリオが完成する。

Shell カタール、オーストラリア北西部、ブルネイ、マレーシア、サハリンなどにプレゼンスがあり、BG Groupは北米の Sabine Pass、オーストラリア東部のQCLNG (Queensland Curtis LNG)、タンザニア、ブラジルなどにプレゼンスがある。

また両社の油田が隣接している場所も幾つかあり、それらに関してはオペレーションを統合することでコスト削減が出来る見通し。
(Shell では全体で2018年に25億ドルのシナジー効果を見ている。)

天然ガスは生産した天然ガスを液化し、LNG船で運び、消費地で再度ガスにして(regas) 消費者に届ける必要があるが、ShellとBG
Group の合併 で No.1の、グローバル展開できるLNG会社が誕生する。

上流
 
LNG
 
生産量のアップ

ーーー

世界のエネルギー会社での統合会社の地位は下記の通りとなる。 (単位:億ドル、バレル/日)

  企業価値 時価総額 売上高 石油換算
生産量
ExxonMobil 4,196 3,554 3,648 5,300
PetroChina 3,014 3,518 3,336 4,400
Shell 2,408 1,887 4,211 3,900
BG 611 591 193 606
Shell + BG 3,019 2,478 4,404 4,506
Chevron 2,263 2,014 1,923 3,500
Sinopec 1,559 1,249 4,514 1,600
Total 1,502 1,210 2,120 2,700
BP 1,404 1,248 3,536 4,100
ConocoPhillips 1,029 803 520 2,000

企業価値=株式時価総額+有利子負債ー現預金
企業価値と売上高は2014年、時価総額は2015/4/8
Source : Bloomberg News

 
 天然ガス生産量 (日量 10億立方フィート)
 
 Exxon 11.1
 Shell 9.3
 BG 2.1
 Shell + BG 11.4
 BP 7.1
 Chevron 5.2

 


4月10日付けのFinancial Times は、本買収について、原油価格回復が成否を握るとして、下記の問題点を挙げている。

Shellが取引の際に使う原油価格の長期予想は「北海ブレントで1バレル 70~110ドル」

実際に原油価格が90ドルまで上がれば、買収は財務的に素晴らしい。
原油価格が回復しない場合、買収が寄与するかどうか、疑問。

買収価額が高すぎるのが問題。

年間25億ドルのコスト削減が実現できるか。

買収でブラジルでの最大の外国石油会社となるが、プロジェクトが遅れるリスクがある。

ブラジルでは、Petrobras の幹部が契約の見返りとして複数の大手建設会社から賄賂を受け、賄賂の大部分が主に連立与党の政治家に流されたという疑惑で揺れている。



トヨタ自動車が2018~19年に総額1500億円を投じ、中国、メキシコに新工場を建設すると報じられた。

中国では広州汽車集団との合弁会社がある広州市内に小型車「Yaris(日本名ヴィッツ)」を最大で年間10万台つくれる規模の新工場を設け る。

付記

4月11日の報道によると、トヨタ自動車は別途、第一汽車集団との合弁会社である天津一汽トヨタで数百億円を投じて年産10万台規模の工場を新設し、2018年にも稼働させる方向だという。

メキシコでは中部のグアナファト州に最大で年間20万台生産可能な工場を建設する。
トヨタにとっては本格的なメキシコ進出で、北米向けに「カローラ」の新型車を輸出する。

現在、カローラをつくるカナダと米ミシシッピ州の工場のうち、カナダは大型車をつくる拠点に衣替えする。

トヨタは2008年ごろまで生産能力を年20万~30万台規模で増やし、グローバル展開を進めたが、リーマン・ショック後の需要急減で固定費がかさみ連結営業赤字となり、収益体質改善のために2013年から工場新設を凍結してきた。

2013年稼働のタイ工場以来、5年ぶりの大型投資に踏み切る。

 

日本の自動車業界の海外進出による輸出減少は円高のせいと言われた。

しかし円安になっても輸出は増えず、逆に減少している。

2014/8/7    円安と自動車輸出  

最新の統計では下記の通りで、2014年は、国内生産はほぼ前年並みに対し、海外生産は増加しており、輸出は大きく減少している。

 
 
輸出実績(千台)
  2011 2012 2013 2014 前年比 2011年比
ト ヨ タ 1,395 1,750 1,701 1,582 -120 187
日   産 663 633 501 425 -76 -238
マ ツ ダ 651 672 788 761 -26 111
三   菱 432 361 335 369 34 -63
ダ イ ハ ツ 22 10 8 8 0 -14
ホ ン ダ 235 215 125 31 -94 -204
富士重工 298 379 471 542 71 243
ス ズ キ 234 176 136 118 -18 -116
3,930 4,196 4,066 3,836 -230 -94

   

本年に入り、日産が米国への輸出向けに国内生産を増やすとか、ホンダが輸出採算の改善を受け、輸出を増やすとの記事が出た。

しかし、日産は海外需要が好調で、海外工場がフルになったため、余剰能力のある日本の稼動を上げるというものである。

ホンダは英国工場が販売不振で1ラインを停止することから、今夏のモデルチェンジを機に小型車「ジャズ」の生産を寄居工場に切り替えるものである。
 両社とも、2011年比では200千台以上の輸出減となっており、日本の余剰能力の活用であって、工場を新設する訳ではない。

トヨタが円安のなかで日本での増設ではなく、海外での増設を決めたのは、グローバルな競争に勝ち抜くためには、現地生産は欠かせない戦略であるということである。

円高だけがこれまでの自動車の輸出減の原因ではなく、円安になっても輸出増にはすぐにはつながらない。

 

円安だけでは日本経済の再建はできず、第三の矢の成長戦略(=規制緩和)が絶対的に必要である。



DuPontは4月6日、来る5月13日の株主総会に向け、株主に対して同社の過去の実績、今後の方針などを説明する詳細資料を発表した。

昨年来、物言う株主(Activist)のNelson Peltz が率いる米Trian Fund Management が会社の分割を要求しているが、DuPont が反対姿勢を崩さないので、要求の実現を目指すため、Peltz氏を含めて4人の取締役を選任するよう求めている。

資料では、DuPontのこれまでの方針、今後の方針が正しいこと、Trianの要求する会社分割がいかに問題であるかを説明、Trianが退任を求めている4人の現取締役が適任であるとし、逆にTrian が推薦している4人の取締役候補が経験などの点からDuPontの取締役には適していないとしている。

1. Proven Track Record of Success
2. DuPont's Strategy for Higher Growth and High Value
3. Highly Qualified Board and Best-in-class Corporate Governance
自社のPR
4. Trian's High Risk Breakup Proposal
5. Trian's Proxy Fight
Trian の問題点
6. Concluding Remarks  


http://dupontdelivers.com/media/2015/03/Investor-Presentation-4-6-2015.pdf

ーー 

Trian Fund Management はDuPont の業績が期待値よりはるかに悪いとし、次のように主張する。

DuPontの企業構造を評価し、現経営陣が現状のままで最高水準の業績を達成できるか、又は事業を分割する必要があるか、検討すべきだ。
過剰な本社費をカットし、生産性を上げろ。
資本のアロケーション(研究・設備投資、M&A、バランスシート改善、増配等)を再検討せよ。
企業ガバナンスの改善


Trianの主張 http://trianwhitepapers.com/wp-content/uploads/2015/02/DuPont-White-Paper.pdf
同詳細とDuPontの実績の分析  
http://trianwhitepapers.com/wp-content/uploads/2015/02/DuPont-White-Paper.pdf


Trianの具体的提案は下記の通り。

1. 既に発表されているPerformance Chemicals部門に加え、DuPontを2社に分割する。
     GrowthCo      (Agriculture, Nutrition and Health, Industrial Biosciences)
    
   CyclicalCo/CashCo    (Performance Materials, Safety and Protection, Electronics and Communications)
   景気変動に左右される。現金回収〔償却費+利益〕は大きい。
   
 
   金額は2013年の売上高
   
2. 無駄な本部費をカットし、ゼロベース予算をたて、各セグメントで業界一の増収・増益を達成するタイムフレームをつくる。
  各部門に配賦しない10億ドルの本部費を含む過剰な本社費 20~40億ドルがある。官僚的かつ無責任。
 
2014年9月のDuPont宛の書簡では、DuPontが持株会社として、ゴルフ場や1252席の大劇場、さらには217室のホテルなど、無駄な経費を支出しているとしている。
   
3. CyclicalCo/CashCo とGrowthCo の間で、株主に貢献するような資本のアロケーション
   
4. コーポレートガバナンス


なお、DuPontは機能化学品部門を2015年央にスピンオフし、
The Chemours Company の社名で別途上場することを決めている。
また、Performance Coatings 部門は2012年に売却済み。

2012/9/5   DuPont、Performance Coatings事業をCarlyle Group に売却

2013/7/29 DuPont、Performance Chemicals 事業の売却を検討 付記


Trian は分社化で年間20億~40億ドルのコスト節減となると主張している。
 

これに対するDuPontの反論は下記の通り。  

分社化により年間20億~40億ドルのコスト節減となる根拠は無い。

新たな2社の形成、債務の移行や税法上の変更に関連する費用を含めると、分社化には40億ドルがかかる

・更に、分割により管理費の重複や税効果の減などで、毎年10億ドルのコストが余分にかかる。

・現在は、下記のように異なる部門にまたがる研究開発で新製品が生まれているが、分割によりシナジー効果がなくなる。 


DuPont 5月13日の株主総会に備え、議決権行使助言サービス大手との会合を予定している。

なお、DuPont はTrianの要求している人の取締役候補のうち、Nelson Peltz ほか2人は拒否、1人だけは受け入れてもよいとしているとされる。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

最近のコメント

月別 アーカイブ