「no」と一致するもの

ロシアは12月1日、ウクライナを迂回してロシアから欧州南部に天然ガスを輸送するパイプライン South Stream の敷設計画を撤回した。


 

米国でのブラウン管価格カルテルにからむ民事の損害賠償裁判で、Class Actionに(自社の意思でかどうかは不明だが)原告として加わっていたシャープは和解結果に不満を持ち、集団和解から離脱して個別に訴訟をしようとしていたが、連邦地裁は8月20日に離脱を認めない判決を下した。シャープは判断の見直しを求め控訴したが、このたび控訴審はこれを棄却した。

この結果、シャープは集団和解に拘束されることとなり、損害賠償の求償益が大幅に減ることとなる。

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米国の集団訴訟の一部のClass Action は、ある商品の被害者など共通の法的利害関係を有する地位(Class)に属する者の一部が、Class の他の構成員の事前の同意を得ることなく、そのClass全体を代表して訴えを起こすことを許す訴訟形態である。

原告は、Class全員の請求権の合計額を訴求でき、判決などの効力は、訴訟行為をしなかった者も含めて同じ Classに属する者全体に及ぶ。

なお、米最高裁は2011年と2013年の判決で、集団訴訟に厳しい制限を加えている。

2014/10/4 Dow Chemical、ポリウレタン独禁法違反の集団訴訟で控訴審でも敗訴 

しかし、原告がClass Actionに参加の意思がない場合や和解の結果に不満の場合、Class Action から離脱 (Opt-out) を申し出て、別途、個別に訴訟を行うことが出来る。
その場合、離脱の申し出の期限が決められ、それ以前に申し出ることが求められる。

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1995年から2007年にかけて、日立、パナソニック、東芝、Philips、LG、三星など多数のメーカーがブラウン管の国際カルテルを実施したとして、損害を受けた購入者や企業が集まり、多くのClass action 訴訟が行われた。2008年初めに1件にまとめられた。

このうち、被告の日立とSamsungとの和解が問題となった。

日立は2013年12月に13.4百万ドル、Samsungは2014年3月に33百万ドルでの和解を決めたが、2014年4月に裁判所が仮承認を行った。

このほか、パナソニックは2012年7月に17.5百万ドル、東芝は2013年3月に13.5百万ドルで和解している。

これを受け、Class Action の管理者は原告各社に対し、離脱者は6月12日期限で離脱を申し出るよう通知した。
合わせて、Wall Street Journalにその旨の公告を出すとともに、ホームページのQ&Aなどに記載した。

しかし、シャープとDell は期限までに申し出を行わなかった。6月26日に管理者が確認して初めて、両社は申し出を行った。

6月26日に被告側に提出した資料には、両社は離脱会社として記載されたが、日立は期限までに申し出がないとして拒否した。

このため、両社は離脱の確認を求め、裁判に訴えた。

シャープによれば、日立とSamsung のカルテルによる同社の被害は約36.6百万ドルで、3倍賠償では109.8百万ドルにもなる。
(裁判の結果次第であり、これが確定ではない)
しかし、和解では同社の取り分は1.3百万ドルしかない。

シャープもDell も、先ず、既に個別の訴訟の準備を進めており、離脱が前提であることは明確であるとし、更に申し出の遅延はルール上で認められるものであると主張した。

しかし、8月20日の判決では、前者については、訴訟の準備をしているかどうかは無関係で、遅延に正当な理由があるかどうかだけであるという被告側の日立の主張を認めた。

申し出の遅延については、裁判所はシャープの主張は却下し、Dell の主張は認めた。この結果、Dellの離脱は認められた。

シャープについては、期限の通知が「うっかりして (inadvertently) 外部弁護士に送られなかった」とするだけで、期限になぜ遅れたかについて何の説明もしていないと述べ、"Inadvertence" (うっかり)と "Miscommunication"(送り誤り)は 判例では十分な理由にはならないとした。

これに対し、裁判所はDell の説明を了解した。
 ・Class Action の管理者のホームページで、期限が正しく更新されていなかった。
 ・Dell への通知に期限が記載されていなかった。
 ・期限に関する reasonable mistake で期限に遅れたというもの

また、Dell の賠償対象となる購入額は膨大で、Class Action の管理者がこれを計算に入れていなかったのが管理者の証言で明らかとなった。

今回の控訴審での棄却で、シャープの離脱は認められないこととなる。

重要書類の扱いを誤ったことで、大きな影響が出る。
また、裁判での説明の仕方で大きな差が出た。


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ブラウン管カルテルは、2007年11月に日本、米国、EUが同時期に調査を開始した。

日本では、公取委が2009年10月に外国事業者を含むテレビ用ブラウン管の製造販売業者らに排除措置命令及び課徴金納付命令を出した。

2009/10/9 公取委、外国事業者に排除措置命令と課徴金納付命令

EUは2012年12月、テレビやコンピューターモニター用のブラウン管CRT)について、1996年から2006年までの10年にわたり価格カルテルを結んだとして、パナソニックや東芝を含む6社に対し、過去最高となる総額14億7000万ユーロの制裁金を科した。

2012/12/6 EU、ブラウン管カルテルに制裁金 


米国では、Samsung SDI が2011年3月にカラーブラウン管での価格カルテルを結んだことを認め、32百万ドルの罰金支払いに同意した。
合わせて同社の6人が起訴された。




米国立衛生研究所(NIH)と英製薬大手Glax0SmithKline (GSK) は11月26日、共同開発中のエボラ出血熱のワクチンについて、第1段階の臨床試験(治験)で安全性を確認したと発表した。ウイルスの増殖を抑える抗体ができていることも確かめた。

エボラ熱ワクチンのヒトでの治験結果が出たのは初めて。

このワクチンcAd3-EBOは、NIHのアメリカ国立アレルギー・感染症研究所 (NIAID)と、2013年にGSKが250百万ユーロで買収したスイスのバイオ企業 Okairos AGが共同開発したもので、チンパンジーの風邪のウイルス(chimpanzee adenovirus type 3)を使用して、エボラタンパク質を人間の体に運び込むもの。
(ワクチンは、エボラウイルスに対する抗体を作り出すように促すもので、ワクチンの接種によって、チンパンジーの風邪もエボラ出血熱も誘発されることはない。)

治験は米東部メリーランド州のNIHで実施した。20人の健康な成人にワクチンを投与し、全員に抗体ができていることを確認。2人が発熱したが翌日までに回復し、重大な副作用はなかったという。

11月26日付けのNew England Journal of Medicineに Preliminary report が発表された。

NIHは、多くの被験者で体内でエボラウイルスが増えるのを抑える働きがあるとも指摘されている「T細胞」も増えたとしている。

来年初めにリベリアとシエラレオネ、恐らくギニアでも、医療従事者ら数千人を対象に、効果を確かめる次の段階の治験を始める。

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WHOは9月5日、2種類のエボラ出血熱のワクチンが、早ければ11月から利用可能になると発表した。

一つは上記のGSKのもの。
もう一つはカナダのPublic Health Agency が最初に開発したもので、NewLink Geneticsの100%子会社のBioProtection Systemsが独占実施権を得ている。

WHOは9月にジュネーブで開いた専門家会合で、エボラ出血熱の治療や予防の方法を検討し、この2種類が利用可能になるとの見解に至った。

 

米国のMerckは11月24日、NewLink Geneticsとの間でNewLinkのエボラワクチン rVSV-EBOV について研究、開発、製造、販売のグローバルの独占実施権を受けるライセンス契約を締結したと発表した。

2015年初めの第1段階の臨床試験で好結果が出れば、大規模な試験が行われる。

 

参考 2014/10/29  エボラ出血熱ワクチンの開発進む 

 

 

欧州委員会は2014年6月11日、Apple、Starbucks、Fiat Finance and Trade 3社の法人税に関して、それぞれアイルランド、オランダ、ルクセンブルクの各国税務当局が下した判断について、本格的な調査を開始したことを明らかにした。

欧州委員会は9月30日、2014年6月11日付けのアイルランド向けのレターを公表した。Appleに対する課税の疑惑を詳細に述べ、今後調査を続けることを伝え、資料の提出を要求している。

また、10月7日 にはルクセンブルグのAmazon への優遇策についても正式に調査を始めたと発表した。

2014/6/13 欧州委員会、Apple等の法人税を調査 


欧州委員会は11月14日、2014年6月11日付けのオランダ政府宛のレターを公表した。
  http://ec.europa.eu/competition/state_aid/cases/253201/253201_1596706_60_2.pdf

EUは今回、オランダ子会社のStarbucks Manufacturing を問題視した。
(Starbucks Coffee EMEA BV については未調査であるとしている。)

同社は、
 Starbucksのスイス子会社からコーヒー豆を仕入れ、
 英国子会社から商標と焙煎方法等のライセンスを受けて焙煎し、
 欧州各国の販売店に製品を販売している。

今回、EUはスイス子会社との間のコーヒー豆の取引価格と、英国子会社との間のロイヤリティを問題にした。


1) コーヒー豆の取引価格

関係会社間の取引価格は任意に決められるため、各国の税務当局は一般的に市価(arm's length price)に置き直して課税する。(移転価格税制)

このため、Starbucks Manufacturing は事前にオランダの税務当局との間で取引価格についての協定(Advance Pricing Arrangement :APA) を結び、同業他社の利益率を適用した取引価格で取引し、税務上、認めてもらっている。

それによると、2001年~2005年の同業20社のmark-up (コストへの上乗せ分、調整後)は、下位25%が6.6%、上位25%が20.9%で、中央値は9-12%となっており、これを適用した。

問題は、上記の同業20社のmark-up は豆代を含めたコストに対するものであるが、Starbucksは同社はコーヒー豆の焙煎を受託加工しているだけであるとして、豆代を除いたコストに対しこのmark-upを適用した。

しかし、Starbucksの取引を調べると、受託加工ではないことが分かった。

スイスの会社は単にコーヒー豆を売るだけであり、Starbucks Manufacturing はバランスシートに豆の在庫を計上しており、また在庫の値下がりに備えての引当もし、在庫のリスクを負っており、自ら販売活動を行っている。受託加工ではない。

このように、適用している mark-up は受託加工のものではないうえ、事業自体が受託加工ではないため、豆代を含めたコストに対してこのmark-up を適用すべきである。
その場合、mark-up の金額ははるかに大きくなる。

欧州委員会の試算では、2010/2011年度の税引前損益(1,431千ユーロ)は、トータルコストに対し7.8%のマージンとすると13百万ユーロと 9倍に膨らむ。

現状はStarbucks Manufacturing の利益を著しく少なくし、その分を豆代を膨らませて、税率の低いスイスの会社の利益を膨らませていることになる。

2)ロイヤリティ

Starbucks Manufacturingは英国のAlki LP にロイヤリティを支払っている。

ロイヤリティは通常は売上高などをベースに決められるが、同社の場合、異常な形になっている。

同社の損益計算書は下記の通り。(千ユーロ)

  2009/2010年度 2010/2011年度 2011/2012年度
売上高 142,627 184,159 286,217
売上原価 120,021 153,276 252,501
粗利益 22,606 30,883 33,717
販売管理費 16,835 14,303 17,470
為替差損 2,266 2,089 8,163
営業損益 3,505 14,491 8,084
その他費用 1,080 12,353 5,786
金利(ネット) 772 707 716
税引前損益 1,653 1,431 1,581
法人税 429 338 395
純損益 1,225 1,093 1,186

脚注に、「その他費用」はロイヤリティであると明記されている。

ここに見られるように、ロイヤリティの額は、2009/2010年度が1,080千ユーロだが、翌年は売上高は29%増に過ぎないのにロイヤリティは12,353千ユーロと10倍以上になっている。

欧州委員会は、このロイヤリティの計算方法は arm's length pricing に合致したものではないとし、税引き前利益が当局と合意した水準に収まるようロイヤりティをを毎年調整していた可能性を示唆している。

なお、英国法人のAlki LPは、米本社がオランダに持つ2つのパートナーシップの子会社となっているが、オランダの税務当局の説明の中で、この仕組みは米国の課税を避けるためと明言している。

 

欧州委員会はこれらにより、オランダ当局の税優遇措置が、違法な国家補助に当たる可能性があるとの見解を示した。

今後も調査は続くが、最終的に違法と判断されれば、Starbucksは多額の追加納税を求められる可能性がある。

レターでは、オランダに対して以下の規定があることに注意を喚起している。

1) 「EUの機能に関する条約」の108(3)条

欧州委員会が,当該補助について域内市場と両立しないおそれがあるとして審査を開始した場合には、当該審査の結論が欧州委員会決定によって示されるまで、加盟国は当該措置を実施してはならない。

2) Council Regulation No.659/1999  第4条 "Recovery of aid"

違法な支援であると決定された場合、各国はその支援額をその企業から取り戻す全ゆる必要な手段を取らねばならない。


Starbucks は以下の通り述べている。

欧州委員会の調査に引き続き協力する。
同社は関連する租税ルール、税法、国際的なガイドラインに従っている。
オランダでの税計算方法は、専門家が検討し、オランダの税務当局が承認したものである。
同社の全世界の実効税率は34%であり、アンフェアな優遇措置を求めたことはない。

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国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は11月5日、Pepsi、IKEA、FedEx など、国際企業340社超が、税負担を軽減する目的でルクセンブルク政府と秘密協定を結んでいたとする報告を発表した。日系企業も複数含まれている。

これらの企業はルクセンブルクに拠点を置き、他国から利益を移し、低税率の適用を受けていた可能性が高い。
ICIJによると、一部の場合では企業がルクセンブルクに集めた利益の1%未満しか税金を支払っていないという。

http://www.icij.org/project/luxembourg-leaks/leaked-documents-expose-global-companies-secret-tax-deals-luxembourg

これに対し、欧州委はルクセンブルク政府に問い合わせ中で、追加的な調査を開始する可能性があるとしている。

欧州委のJean-Claude Juncker 委員長は11月15日、G20首脳会議前に記者会見し、「我々は企業の課税逃れに対して戦う」と強調した。

しかし、ICIJの発表で、この時期にルクセンブルグの首相であったJuncker 委員長が弁明に追われる事態となっており、欧州議会の一部からは問責動議を出す動きも出ている。

 

付記 欧州議会は11月27日、Juncker委員長が率いる欧州委員会に対する不信任決議案を反対多数で否決した。



 


Bloombergは11月14日、Dow Chemical のAndrew Liveris 会長が株主への説明会の席上、Corning Inc. がDow Corningの持株の売却を希望しており、Dowが購入することになるだろうと述べたと報じた。

CorningはSamsung Electronics とのJVであったSamsung Corning Precision Materialsを100%子会社にしており、Dow Corning よりもこちらに重点を置きたい意向であるとしている。

これに対し、CorningはDow Corning の株主であることに満足していると述べ、Dowの報道担当も、Liveris会長は相手持分を買うことについて何も確定的なことは言っていないとしているが、Dowが購入するのは間違いないと見られている。

ーーー

Dow Corning は1943年にDow Chemical とCorning の50/50JVとして設立された。

当時の航空機は、エンジンの水分による電気系統からのコロナ放電のため高高度での飛行が不可能であったが、1942年にShailer Bassが開発したシリコーングリースにより解決を見た。シリコーンの可能性を追求すべく1943年にDow Corningが設立された。

シリコーン製充填材、接着剤、潤滑剤、離型剤、吸音材、半導体やソーラーパネルに使用されるシリコンウェハーなど約7000品目を製造する。

シリコーン(Silicone)は、ケイ素と酸素からなるシロキサン結合(≡Si-O-Si≡)を骨格とし、そのケイ素(Si)にメチル(-CH3)を主体とする有機基が結合したポリマーで、天然には存在しない。

無機質のシロキサン結合と有機基との結び付きにより、有機化合物やポリマーと比較し、耐熱・耐寒性、耐候性、電気絶縁性、化学的安定性、撥水性、消泡性、離型性など数多くの優れた特性をもっている。

形状はオイル、エマルジョン、レジン、ワニス、ゴムおよびパウダーなどと極めて多様で、用途も多岐にわたり、いろいろな分野で利用されている。

これに対し、シリコン(Silicon)はケイ素(Si)のことで半導体材料、太陽電池材料などに使われる。

1980年代から1990年代にかけ、豊胸手術に使用されたDow Corning製シリコーンバッグにより乳癌や関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどの健康被害が生じたとして集団訴訟が提起された。訴訟は1984年に始まり、1995年に20億ドルの損害賠償訴訟を受け同社は連邦破産法 Chapter 11を申請した。

2000年に被害者に30億ドルを払うことで和解が成立し、2004年6月に Chapter 11 から離脱した。


日本では1966年に東レとの共同出資でトーレ・シリコーン(現 東レ・ダウコーニング)を設立している。

1966/12   トーレ・シリコーン設立
1967/4   Dow Corning製品の輸入販売開始
1989/12   東レ・ダウコーニング・シリコーンに改称
2004/9   日本ユニカーのシリコーン事業(1967年に生産開始)を買収
2005/4   ダウコーニングアジアと統合、東レ・ダウコーニングに改称

ダウコーニング・ホールディング・ジャパンが 65 %、東レが 35 %出資する。 

Dow CorningはHemlock Semiconductor Corporationのマジョリティ株主である。

Hemlock は 1960年に設立され、半導体や太陽電池に使われる様々な純度の多結晶シリコンを製造している。

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Corning は特殊ガラス及びセラミックの世界的リーダーで、160年以上に亘り培われてきた材料化学やプロセス工学の知識により、コンシューマーエレクトロニクス、自動車排ガス制御製品、テレコミュニケーション及び、ライフサイエンス向けに高度な製品を開発、製造している。

同社は5つの重要な市場分野で世界をリードしている。

 Display Technologies:液晶テレビ、コンピュータモニタ、ノートパソコン、その他家電製品向けガラス基板
 Environmental Technologies:排ガス浄化システム用のセラミック担体およびディーゼル微粒子フィルタ
 Optical Communications:光ファイバ、ケーブル、ハードウェアおよび電話・インターネット通信ネットワーク向け機器
 Life Sciences:ガラス・プラスチック製実験器具、細胞培養・ゲノム研究・バイオプロセス用ラベルフリー技術、培養基および試薬
 Specialty Materials:家電用カバーガラス、先進光学、各種産業向け特殊ガラスソリューション


2014年1月15日、CorningはSamsung Display と
戦略的契約を締結し、Corningが50%、Samsung Display が42.64%出資する液晶パネル向けガラス素材の合弁会社 Samsung Corning Precision Materials のSamsung持株を買い取った。

このJVは営業利益率が50%を超え、利益のほとんどを配当に回しており、2013年10月にSamusungが売却を発表した際には産業界では驚きの声が上がった。

Samsung は売却により Corning から額面約19億ドルの新規転換権付優先株を受け取るとともに、さらに4億ドルの新規転換権付優先株を購入した。
7年間は普通株への転換はできない条件がついているが、転換すれば、SamsungはCorningへの出資が7.4%となり、筆頭株主となる。
また、今後 Corningの新たな技術や製品に早い段階からアクセスできるようになるとされる。

Corning の会長兼CEOは、「この非常に素晴らしい機会を活かして、私たちは歩みを進め、特殊ガラス分野におけるリーダーシップを拡大し、収益の伸長に弾みをつけるとともに、今後も世界有数の家電メーカーであるSamsungとの協力強化を図っていくことを強く願っている」と述べた。

付記

サムスン電子は12月2日、光ファイバーや光ケーブルなどを生産する亀尾(クミ)素材工場など韓国内の光素材事業分野と中国海南省にある生産法人(SEHF)などを米 Corningに売却すると明らかにした。

米Corningは2014年3月、スマートフォンなどで主に用いられている「Corning Gorilla Glass」の生産を、静岡工場からSamsung Corning Precision Materials の韓国の牙山工場に移管することを決定したと発表した。
牙山工場がフルに活用されていないことを受けて、より低コストな生産が可能な同工場へ移管する。


Gorilla Glassはアルカリアルミノケイ酸塩の素材を使用しており、高い透明度と強度を誇っており、特に強度はプラスチックの数十倍と言われ、衝撃や傷に耐えることが可能である。
スマートフォンやタブレットに採用されており、2010年には世界の携帯電話のうち約20%、約2億台に採用されている。

Corning にとってはDow Corning の事業は今や戦略的事業ではなくなったとみられる。




 

川崎重工は11月19日、産業用では初となる純国産独自技術の水素液化システムを開発し、水素液化試験を開始すると発表した。

水素液化システムは、播磨工場内の水素技術実証センターに設置され、1日あたり燃料電池車約1千台分にあたる約5トンの水素を液化する能力を有している。

本システムは、同社が独自技術で開発したもので、圧縮した水素ガスを冷凍サイクルで冷やされた水素と液化機内で熱交換しながら冷却することで液化水素を製造する。

開発後の試運転において液化水素の製造が確認され、本格的な性能評価試験へと移行する。

 



日本では岩谷産業が2006年に関西電力グループと共同で設立したハイドロエッジ に、また2009年に岩谷瓦斯・千葉工場内に、液化水素製造プラントを稼動させている。同社は液化窒素の冷熱を利用して、水素を液化している。


水素の供給地と需要地に一定の距離がある場合には、水素を高圧ガスの形で運搬する方法が広く活用されているが、
水素はマイナス 253で液化し(天然ガスはマイナス162℃)体積もガスに比べて約800分の1となり、利用の際は蒸発させるだけで高純度の水素ガスが得られることから、液化水素の形で輸送・貯蔵すると、通常のガスや圧縮ガスに比べて効率が高くなる。

川崎重工では、水素の大量導入を支える水素の製造、輸送・貯蔵および利用までの一貫したサプライチェーン構築に向けて、必要となるインフラ技術の開発・製品化に取り組んでい る。

具体的には、水素液化システムのほか、液化水素運搬船や液化水素貯蔵タンク、さらには水素燃料に対応したガスタービンなどの開発および製品化を推進してい る。


ーーー

2014年4月に「エネルギー基本計画」が閣議決定され、将来は電気、熱に加え、水素を二次エネルギーの中心的役割を担う存在と位置づけ、"水素社会" 実現に向けた取り組みを加速させるとしている。

2014年6月には経産省が「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を公表し、水素の製造・輸送・貯蔵や利用の各段階で、目指すべき目標とそのための産学官の取り組みを提示している。

http://www.meti.go.jp/press/2014/06/20140624004/20140624004-2.pdf

 

トヨタは11月18日、セダンタイプの新型燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」を12月15日より発売すると発表した。

水素を高圧で3分で充填でき、1回の充填で700kmの走行が可能。
大容量外部電源供給システムを備えており、停電や災害などの非常時に家庭での電源として使用できる。

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川崎重工は豪州で産出する低品位石炭「褐炭」から液化水素を作り、タンカーで日本へ運ぶプロジェクトを進めている。

豪州のLatrobe Valleyは世界最大規模の褐炭 の産地で、石炭のエネルギー量は日本の一次エネルギーの40 年分に相当する。
採掘地に隣接する石炭火力発電所で燃料として使っているが、褐炭は水分の含有量が多く、 発電効率は約28%にとどまる。(日本の石炭火力発電所の平均が40%を超える。)

また積み上げておくと自然発火するため、採掘してから18時間以内にコンベヤーで発電所に運び込んで燃やしている。CO2排出量も非常に多い。

 

CO2排出量を減らしたい豪州政府と、液化水素を志向する川崎重工と思惑が一致し、褐炭から液化水素を生成し、日本へ運ぶプロジェクトが動き出した。

Latrobe Valleyで褐炭をガス化する。

その工程で発生する水素とCO2のうち、CO2 はCCS(Carbon Capture and Storage)で海底の空洞へ押し込む。

この空洞は、かつて天然ガスを採掘し枯渇した跡地で、既に豪州政府は2012年2月に約80億円を投じて、CCSの検証も開始している。
この近海は数あるCCS候補地の中でも最も実用化しやすい適地といわれている。

日本では日揮が苫小牧に日本初のCCS トータルシステムの実証設備を建設中。
  2013/8/27   日揮、日本初の二酸化炭素の分離回収・貯留実証試験事業にBASFのガス精製技術を導入

・水素は、超低温に冷やして液化し、タンカーで日本へ運ぶ。

現地の安い電力を利用して水の電気分解を行い、その水素も利用する構想もある。


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水素輸送には液化によるほか、有機ハイドライドによる水素輸送もある。

千代田化工の「大規模水素貯蔵・輸送システム」で、 海外の油田等で出る水素をトルエンに反応させてメチルシクロヘキサンとし、常温で日本に輸送し、日本でこれから水素を取り出すもの。これまでメチルシクロヘキサンから水素を取り出すのは不可能とされていたが、同社が開発した触媒がこれを可能にした。

同社は2013年5月31日、子安オフィス・リサーチパークにて実施していた有機ケミカルハイドライド法による「大規模水素貯蔵・輸送システム」の実証試験で所期の性能を確認することができた と発表した。

トルエンに水素を固定(水素化反応)させ、メチルシクロヘキサン(常温常圧の液体)に変換して貯蔵・輸送し、同社が開発した脱水素触媒を用いて、このメチルシクロヘキサンから再び水素として取り出し(脱水素反応)、供給するシステムを対象としたもの。

 (海外油田等) 3H2+C6H5CH3→ C6H11CH3
   
↓ (常温輸送)

 
(川崎)     C6H11CH33H2+C6H5CH3  

メチルシクロヘキサンの場合、LNGや液化水素などのような極低温技術を必要とせず、通常の石油タンクやタンカーを利用できる 。

一連の工程を「大規模水素貯蔵・輸送システム」として確立することで、これまで困難とされてきた水素の大量輸送や長期貯蔵が、商業ベースで可能であることを実証できた。

同社は「SPERA水素」(ラテン語で「希望せよ」という意味)の愛称で水素供給事業実現を目指す。

2013/10/29    水素エネルギーフロンティア国家戦略特区




中国が利下げ - 化学業界の話題

 

中国人民銀行(中央銀行)は11月21日、予想外の利下げを発表した。22日から実施する。

主要政策金利の引き下げは2年4ヶ月ぶりで、借り入れコストを押し下げ、減速する経済を支援する。
人民銀行は利下げの目標を中小零細企業の資金調達難の解決としている。

1年物貸出金利は40 basis points 引き下げて 5.60%に、1年物預金金利は25 basis points 引き下げて 2.75%とする。

預金金利は上限を基準の1.1倍から1.2倍に引き上げたため、上限はこれまでの3.30%のままとなる。

貸出金利については、2013年7月に撤廃した。銀行の裁量で貸出金利を決められるようにし、自由化へ向け一歩を踏み出している
但し、住宅ローンについては下限制限があり、1軒目の場合、基準金利の0.7倍となっている。基準金利を下げれば、住宅ローン金利の低下につながる。

 

貸出金利

 

預金金利

  基準金利

下限

基準金利

上限

2012/7 6.00%

基準 x 0.7

4.20% 3.00%

基準 x 1.1

3.30%
2013/7 6.00%

撤廃

     
2014/11 5.60%   2.75% 基準 x 1.2 3.30%


 

米司法省は11月14日、ベアリングの価格調整に関与したとして連邦大陪審が日本精工とジェイテクトの幹部社員を1人ずつ起訴した、と発表した。
一連の事件で、米国で刑事責任を問われたのは日本人45人を含む46人になった。

アイシン精機は11月14日、米国での自動車用エンジン部品販売で米独占禁止法に違反したことを認め、米司法省との間で罰金3580万ドルを支払う司法取引に合意したと発表した。

ーーー

古河電工は2011年9月29日、米国司法省との間で、自動車用ワイヤーハーネス係るカルテルに関して司法取引に合意した。

起訴事実を認め罰金200 百万米ドルを支払うとともに、社員3名が有罪を認め、禁固刑に服した。

FBIは2010年にデンソー、矢崎総業、東海理化にも立ち入り検査をしており、今後、決定がなされると想定された。

実際にはこれら各社に加え、次から次に多くの企業が司法取引に合意して罰金を払うとともに、社員が起訴されたり、司法取引で禁固刑・罰金刑に服した。

2014年に入っても摘発は止まらず、下記の各社が罰金を支払った。

・ 1月16日、小糸製作所が自動車用ランプ及び自動車HID ランプ用バラストの価格カルテルで有罪を認め、罰金5660万ドルの支払いに同意。

・ 2月3日、愛三工業が電子スロットルボディーの価格カルテルで有罪を認め、罰金686万ドルの支払いに同意 。

・ 2月13日、ブリヂストンが自動車の防振ゴム部品の価格カルテルで有罪を認め、罰金425百万ドルの支払いに同意 。

同社はマリーンホース事件で有罪となったが、本件について開示しなかったため、高額の罰金となった。

・ 4月23日、ショーワが パワーステアリング部品の価格カルテルで有罪を認め、罰金19.9百万ドルの支払いに同意。

8月19日、日本特殊陶業はスパークプラグやセンサーのカルテルでの有罪を認め、52.1百万ドルの罰金に同意。

・ 9月29日、豊田合成はホース、エアバッグ、ハンドルでのカルテルを認め、26百万ドルの罰金支払いに同意 。

・ 10月31日、日立金属は自動車用ブレーキホースでのカルテルを認め、125万ドルの罰金支払いに同意。

・ 11月13日、アイシン精機は可変バルブタイミング機構でのカルテルを認め、35.8百万ドルの罰金支払いに同意。

これらにより、自動車部品のカルテルで摘発された企業は31社に及び、罰金額は2,434百万ドルに達した。
このうち、外資系は3社のみで、残りは全て日本の企業である。

また、刑事責任を問われた個人は46名(うち外人は1名のみ)で、このうち、26名(うち外人1名)が禁固刑と罰金刑(殆ど全てが1人2万ドル)を受けている。

残りの20名は起訴された状態で、司法取引の最中か、若しくは日本に居たままで米国の処罰を避けているかのどちらかかと思われる。

ーーー

自動車部品カルテルが摘発される以前は、カルテルで刑事罰を受けた日本人は2人だけであった。

社名 事件 社員 禁固刑 罰金
ダイセル ソルビン酸価格カルテル H. H. 3ヶ月 2万ドル
ブリヂストン マリンホース国際カルテル M. H. 2年 8万ドル

ダイセルの場合、チッソの提出した詳細情報のために役員とともに若い担当者が起訴されることとなった。
役員は日本から出ず、時効中断のままとなっているが、担当者の場合は今後海外に行けないのでは仕事にならないため、自ら渡米し、服役を選んだ。

米国司法省は、独禁法を有効に施行するという司法省の能力を示すものとして、「日本人で最初に服役」と誇らしげにこれを発表している。
自ら服役を選んだことを評価し、刑期や扱いについて特別の扱いをしている。

http://www.usdoj.gov/opa/pr/2004/August/04_at_543.htm

ブリヂストンのマリンホース事件の場合は、本人が談合現場で逮捕されたため、刑事罰を避けられなかった。

2008/12/12 マリンホース国際カルテル事件で日本人に有罪判決

これ以外にも、これまで多くの日本人が訴追されているが、これまでは、日本在住であれば米国から見ると国外逃亡で時効中断となり、刑事罰を避けてきた。

米国はもちろん、他の国(の多く)に入国しても、犯罪人引渡し条約で米国に引き渡される。
 
   
2014/5/8  マリーンホース国際カルテルでのイタリア人被告の米国への引渡し

但し日本の場合は1980年の条約で、両国でいずれも処罰の対象となり両国の法律で死刑、無期懲役、1年以上の拘禁刑に当たる罪の場合は引渡しが可能となっているが、独禁法違反の場合には日本政府は該当せずとし、引渡しは行われなかった。

2009年改正により、独禁法の最高が懲役5年となったため、執行猶予の対象外となり、条約上の引渡し対象となる。

条約第5条では、「被請求国は、自国民を引渡す義務を負わない。ただし、被請求国は、その裁量により自国民を引き渡すことができる」となっており、日本政府の判断で引渡しを行うかどうかを決めることとなる。

今回、自動車部品カルテルで今までに25名の日本人が禁固刑を受け、合計27名となった。上記の前例があるにも係わらず、自動車部品カルテルで急に多数の日本人が禁固刑を受けたのは驚きである。

米司法当局が強硬で、企業としての司法取引で個人の処罰を条件にしているのかも分からない。

 

自動車部品カルテルの米国での摘発状況は下記の通り。

  百万$  決定日   個人 禁固刑 決定日
古河電工 200 2011/9   I.F. 1年+1日 2011/10/24
H.N. 15か月 2011/10/13
T.U. 18か月 2011/11/10
矢崎総業 470 2012/1   T. H. 2年 2012/1/30
R. K. 2年 2012/3/26
S. O. 15か月
H. T. 15か月
T. S. 14か月 2012/8/16
K. K. 14か月 2012/9/26
デンソー 78 2012/1   N. I. 1年+1日 2012/3/26
M. H. 14か月 2012/4/26
Y. S. 16か月 2013/5/21
H. W. 15か月
S. H. 1年+1日 2014/6/30
K.F. 1年+1日 2014/2/20
ジーエスエレテック 2.75 2012/4   S.O. 13ヶ月 2014/7/31
フジクラ 20 2012/4   R.F. 起訴段階 2013/9/19
T.N.
Autoliv Inc
(Stockholm)
14.5 2012/6   T.M.
日本人
1年+1日 2013/7/16
TRW Deutschland
(米社独子会社)
5.1 2012/7        
日本精機 1 2012/8        
東海理化 17.7 2012/10   H.H. 起訴段階 2014/5/22
ダイヤモンド電機 19 2013/7   S.I. 16ヶ月 2014/1/31
T.I. 13ヶ月
パナソニック 45.8 2013/7   S.K. 起訴段階 2013/9/24
日立オートモティブシステムズ 195 2013/9/26   T.T. 起訴段階 2014/9/18
K.F.
K.T
T.I.
ジェイテクト 103.27 M.I. 起訴段階 2014/11/13
ミツバ 135      
三菱電機 190 A.U. 起訴段階 2014/9/18
M.K. 
H.S.
三菱重工 14.5      
日本精工(NSK) 68.2 H.H. 起訴段階 2014/11/13
ティラド(T.RAD) 13.75      
ヴァレオジャパン
(仏Valeoの子会社)
13.6      
山下ゴム 11 H. Y. 1年+1日 2012/11/16 
タカタ 71.3  2013/10/9   G.W.
米国人
14か月 2013/9/26
Y.U. 19 ヶ月 2013/11/21
S.I. 16ヶ月
Y.F.   14ヶ月
G.N. 起訴段階 2014/6/5
東洋ゴム 120.0  2013/11/26   T.K. 1年+1日 2013/9/26
M. H. 起訴段階 2013/1121
K. N.
スタンレー電気 1.44  2013/11/27        
小糸製作所 56.6  2014/1/16        
愛三工業 6.86  2014/2/2        
ブリヂストン 425.0  2014/2/13   Y.T. 起訴段階 2014/4/15
Y.R.
I.Y.
Y.S. 18ヶ月 2014/4/16
ショーワ 19.9  2014/4/23   A.W. 起訴段階 2014/10/15
日本特殊陶業 52.1  2014/8/19        
豊田合成 26  2014/9/29        
日立金属 1.25  2014/10/31        
アイシン精機 35.8  2014/11/13        
累計(31社)  2434.42     46名 罰金
各2万ドル
 



富士フイルムは11月4日、脳疾患や心臓疾患、腫瘍などの各種疾病の機能診断に役立つPET(陽電子放射断層撮影)検査用の放射性医薬品市場に参入すると発表した。


富士フイルムRI ファーマが約60億円を投資し、川崎と茨木に研究開発拠点を新設する。

  京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区 関西イノベーション国際戦略総合特区
研究開発拠点 神奈川県川崎市 大阪府茨木市
延床面積 約2,000m2 約2,000m2


富士フイルムRI ファーマは治療用放射性医薬品メーカーで、旧称 第一ラジオアイソトープ研究所。
1968年に第一製薬とMallinckrodt とのJVで設立、1988年に第一製薬の100%子会社となり、2006年10月に富士フィルムが買収した。

事業内容は、放射性・非放射性医薬品、および、放射性標識化合物の研究、開発、製造、販売、輸出、輸入。

PET検査は、18F(フッ素)などポジトロ ン(陽電子)を放出する核種を化合物に標識した放射性医薬品をヒトに投与して断層撮影する検査で、各種疾病の機能診断に役立つ。

アルツハイマー型認知症の診断精度向上には、放射性医薬品を用いたPET検査でアミロイドβを検出する手法が有効であると期待されている。

アルツハイマー型認知症の原因の一つとして、アミロイドβ というタンパク質の脳内への異常な蓄積が考えられており、この蓄積はアルツハイマー型認知症が発症する15~20年前から始まっていると解明されつつあ る。

これまで、富士フイルムRI ファーマでは、放射性医薬品分野ではSPECT検査領域で事業を展開してきたが、今後、アミロイドβ検出用薬剤の研究開発に取り組み、PET検査領域にも事業拡大を図 る。

SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)検査は、単一光子を放出する核種を化合物に標識した放射性医薬品をヒトに投与して断層撮影する検査で、PET検査同様、各種疾病の機能診断に役立 つ。

富士フイルムRI ファーマは10月14日、大手製薬企業のEli Lilly and Companyとの間で、同社のPET検査用放射性医薬品「florbetapir(18F)注射液)」の日本国内における共同開発契約を締結した。

「florbetapir」は脳内アミロイドβプラークを可視化できる放射性医薬品で 、すでに、米国、EU諸国およびスイスにて承認され、アルツハイマー型認知症が疑われる認知機能障害を有する患者に対して、診断的評価を補助する目的で使用されてい る。

今後、「florbetapir」の国内承認取得を目指し、また「florbetapir」を用いたPET検査による認知障害の診断精度向上に取り組んでい く。

なお、この共同開発契約とは別に、日本イーライリリーは、サイクロトロンを有する医療機関内にて「florbetapir(18F)注射液」の合成を目的に使用する放射性医薬品合成設備「NEPTIS® plug-01」の医療機器製造販売承認を2014年7月に取得している。

現在、富士フイルムグループでは、アルツハイマー型認知症の治療薬「T- 817MA」の開発を行っており、これは、アルツハイマー型認知症に対して高い治療効果が見込める革新的な薬と期待されている。

今後、治療薬「T-817MA」と診断薬「florbetapir」の開発を進め、アルツハイマー型認知症の診断、治療に貢献 するとともに、アルツハイマー型認知症の予防手法の開発にもつなげ、アルツハイマー型認知症の予防から診断・治療まで幅広くカバーすることを目指す。

ーーー

富士フイルムは、アンメットメディカルニーズが高い「がん」「アルツハイマー」および「感染症」を重点領域ととらえ、研究開発を積極的に推進して事業展開を図るとともに、革新的な医薬品の提供を通じて世界の医療の発展に貢献してい くとしている。

同社は11月11日、2014~2016年度の中期経営計画「VISION2016」を発表した。

6つの重点事業分野(ヘルスケア、高機能材料、ドキュメント、グラフィックシステム、光学デバイス、デジタルイメージング)の中でも、高い成長が期待できる、ヘルスケア、高機能材料、ドキュメントに経営資源の集中投入を行い、市場ニーズにあった良質でコストパフォーマンスの高い製品を提供し、市場を拡大していく。

ヘルスケア分野では大幅な成長を実現するとしており、2016年度売上目標を 4,400億円とした。

・メディカルシステム
  成長領域である、医療IT、内視鏡、超音波診断装置で、年率10%の成長を実現。
  X線画像診断装置やX線フィルムは、コストダウンを図るとともに、新興国での売上増を図る。
  事業全体で、営業利益率10%を達成する。

・医薬品
  バイオ医薬品受託製造事業が牽引し、売上を拡大。
  新薬開発を加速。

・ライフサイエンス
  同社の技術を生かし、差別化した機能性製品のラインアップを充実させ、売上増加。

 

参考:

  2006/11/2 富士フイルム、超音波画像診断分野に参入  
  2008/2/19 富士フイルム、富山化学を買収、総合ヘルスケア企業を目指す  
  2010/2/22 富士フイルム 医薬品開発・販売に本格参入  
  2010/9/3 富士フイルム、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングと資本提携
    2014年10月、新株予約権の全てを年内に行使することを決定、
    持株比率は50.33%になり、連結子会社となる。
 
  2011/2/28 富士フイルム、米メルクからバイオ医薬事業買収  
  2011/8/2 富士フィルム、ジェネリック医薬品のDr. Reddy's Laboratories と業務提携
  2011/12/21 富士フイルム 超音波診断装置の大手 SonoSite, Inc.の買収合意
  2014/8/11 富士フイルムのインフル エンザ治験薬、エボラ出血熱治療に有望か
  2014/8/13 WHO、エボラ出血熱治療で未承認薬の使用容認
  2014/9/27 富士フィルム、エボラ出血熱患者に「アビガン」提供
  2014/10/31 富士フィルム、ワクチン受託製造市場へ参入




Dow Chemical は11月12日、これまで進めてきた非戦略事業の売却目標を70億ドル~85億ドルに増やすと発表した。2016年央までに実施する。

Dow Chemical はこれまで、2015年までに45億ドル~60億ドルの非戦略事業、資産の売却を計画していた。

10月2日の売却計画の進行状況発表時に、3事業の売却を進めているとしていたが、今回、この一つの子会社Angus Chemical Companyを12.15億ドルでGolden Gate Capital に売却すると発表した。

ANGUS はニトロアルカン関連製品専従の世界唯一の企業で、1936年に最初の特許申請をして以来、ニトロアルカン関連製品を開発、製造している。
現在、ニトロメタン、ニトロエタン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパンの4つのニトロアルカン製品を製造している。

残り2件は、水素化ほう素ナトリウム事業と、Dow AgroSciences部門に属する子会社のAgroFresh。

2014/10/6  Dow Chemical、非戦略事業の売却を進める 

今後も、株主価値を高めるため製品群の評価を続け、合弁会社についても出資比率の検討を行うとともに、事業戦略に合わない事業を売却するとしている。


この一環として、同社はKuwaitの
Petrochemical Industries Company (PIC) とのJVを再編し、出資比率を下げると発表した。2015年央にも完了させる。

対象となるのは、エチレングリコールのワールドリーダーである
MEGlobal と、Kuwaitの石化コンビナートのGreater EQUATEである。
 出資分のどれだけをどこに売るのかは明らかにしていない。


Dowは、売却により戦略的目的に資金を使えるとし、出資は減らすがJVには残留するため、低コスト製品を狙う戦略の一部であり続けるとしている。

1.MEGlobal

Dow Chemical PICは2004年にDowのMEG、PTA、PET事業をJV化した。ダウの "asset light" 戦略の適用第1号である。

両社は2つの50/50JVを設立した。

 (1) MEGlobal 

 MEG、DEGの製造販売で、ダウのカナダの2工場 (合計能力100万トン)を移管した。

Fort Saskatchewan EO/EG plant  340千トン
PrentissEO/EG plant  2基計     660千トン

他社製品の販売も行っており、現在は年間250万トンのEGを世界中で販売している。

 (2) Equipolymers (現在はMEGlobal の100%子会社となっている)

工場 PTA PET  
Schkopau, Germany   335千トン
 
No.1:160千トン
No.2:175千トン
Ottana, Italy (190千トン) (160千トン) 売却


イタリアの工場は2010年7
月、同地で発電所と用役工場を運営しているOttana Energia とタイのIndoramaのJVに売却した。

2.Greater EQUATE

1995年にダウ(当時のUCC)が45%、PICが45%出資のJV、Equate Petrochemical Company を設立した。
その後、出資比率は若
干変更されている。(下記参照)

立地はKuwaitのShuaiba Industrial Areaで、当初の製品及び能力は下記の通り。

エチレン 65万トン   
LL/HDPE 45万トン  
EG 30万トン  
PP 10 万トン  PIC単独の事業、但しEquateが操業を受託
     

その後、両社は第2期計画Equate IIを実施した。これは3つの会社に分かれる。

社名 出資 製品
Kuwait Olefins Company Equateと同じ エチレン、PE、EG
Kuwait Aromatics Company PIC 80%
Qurain Petrochemicals 20%
ベンゼン、パラキシレン
The Kuwaiti Styrene Company Dow 42.5%
Kuwait Aromatics Company 57.5
%
EB、SM

実際にはEquate Petrochemical が全体を一体として運営している。

各社の出資関係と製品は下記の通り。

以上の通り、Dowが出資しているのは、Equate Petrochemical Company (42.5%)Kuwait Olefins (42.5%)、Kuwaiti Styrene(42.5%)である。

ーーー

DowとPetrochemical Industries Company (PIC) の間には大きな抗争があった。

Dowは2007年12月13日、Kuwait国営石化会社 PIC との間で50/50のグローバルな石化JV K-Dow Petrochemical を設立すると発表した。

DowのPE、PP、PC、エチレンアミン、エタノールアミンなどの事業を移管するもので、Dowは事業売却額マイナス出資で75億ドル、配当15億ドルで、合計90億ドル(税引後では70億ドル)を受け取ることとなっていた。

しかし、2009年1月1日のスタートを目前にして、2008年12月28日、クウェートの最高石油評議会がK-Dow Petrochemicals 設立承認を取り消し、破談となった。

この問題は最終的に仲裁裁判所はPIC側に責めがあると認定し、PICに対しDowへの21.6億ドルの損害賠償支払いを命じた。

2012/5/25     Dow、石化JV中止問題での調停で勝利、21.6億ドルを獲得

今回の判断はこれとは直接関係はないと思われる。

Dowとしては、国内のシェールを利用した石化事業を中心としつつも、中東の安価な原料による事業も捨てていない。

Dowは今後、Saudi AramcoとのJVのSadara Chemical Companyに全力投球すると思われる。

2011/7/26  DowとSaudi Aramco、石油化学JV設立を最終決定



なお、同社は11月12日、第4四半期の増配を発表した。



  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

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