「no」と一致するもの

富士フィルムは10月27日、米国の子会社 FUJIFILM Diosynth Biotechnologies USA.バイオ医薬品受託製造会社(CMO:Contract Manufacturing Organization)でワクチン製造に強みを持つKalon Biotherapeutics, LLCを買収すると発表した。ワクチンCMO市場に参入し、バイオ医薬品事業をさらに拡大する。

Kalon社の持分所有者であるテキサス州およびテキサス A&M大学から全持分の49%を取得する。今後、数か月以内に決済手続きを行う。買収金額は公表していない。
また、同社の取締役の過半数を富士フイルムグループから任命する。

今後、売買契約に規定されたマイルストーンに沿って持分比率を100%まで引き上げる。

富士フイルムは、Kalon社がエボラウイルスや炭疽菌などの感染症向けワクチンを安全、安定的に製造できる点を評価し、買収により世界的な事業拡大が見込めると判断した。

Kalon社は2011年9月にTexas A&M University System によって設立された高度な技術と最先端の設備を持つバイオ医薬品CMO会社。

米国保健福祉省傘下の米国生物医学先端研究開発局から、バイオテロや新型インフルエンザのパンデミックなどの非常時に公共の健康を守るための医療手段を開発・ 製造する重要拠点 "Center For Innovation In Advanced Development and Manufacturing" の1つとして指定されている。

テキサス州はテキサス新興技術基金を通して、本拠点の建設・運営を援助している。

ワクチンを(鶏卵ではなく)動物細胞培養法で製造することに強みを持 つ。

ワクチン製造に必要なウイルスを製造工程内にとどめる世界トップレベルの高度な封じ込め技術を保有。
新型インフルエンザウイルスやエボラウイルス、炭疽菌などに対するワクチンを安全かつ安定的に製造することができる。

ウイルスの高度な封じ込めが可能な、小型で可動式のモバイルクリーンルームを完備してい る。
同社のワクチン製造施設、National Center for Therapeutics Manufacturing ビルに、最大20基まで設置することが可能で、多品種のワクチンを同時並行で製造することができる。

本クリーンルームは、動物細胞培養法によるワクチンはもちろんのこと、抗体医薬品を含むあらゆる種類のバイオ医薬品の製造も可能 。

 

バイオ医薬品CMO市場は年率約7%の成長が見込まれており、なかでもワクチンの用途が、従来の感染症予防に加え、がんの予防・治療にも広がっていることなどから、ワクチンのCMO市場は、年率10%以上と高い成長が予想されてい る。

富士フイルムは2011年2月に米国Merck & Co., Inc. から米、英のバイオ医薬品の受託製造会社2社を買収し、バイオ医薬品CMO事業に参入し、その後、バイオ医薬品を含む医薬品ビジネスで長年の経験を持つ三菱商事と業務提携し、 両社の事業体制を強化してきた。

社名 FUJIFILM Diosynth Biotechnologies UK Limited
    

旧称 MSD Biologics (UK)

FUJIFILM Diosynth Biotechnologies USA., Inc
   

旧称 Diosynth RTP Inc.

場所 英国 Billingham 米国ノースカロライナ州Morrisville
株主 富士フィルム 100%80%
三菱商事        0%
20%
  
当初 ICI
ZenecaAvecia
BiologicsMerck 
富士フィルム 100%80%
三菱商事 
        0%20%

当初
Corning
CovanceAkzoSchering-Plough
 
Merck 
                                                               2011年2月 富士フィルムがMerckから買収
                                                                      2011年6月 三菱商事が両社に各20%出資 
備考 微生物を用いたバイオ医薬品の開発・製造受託事業者。
バイオベンチャーや製薬企業からの業務を請け負う。
1996年、Zeneca社としてCMO事業を開始。微生物培養の研究開発・製造に優れ、独自の開発技術とバイオ医薬品の治験から商用生産まで一貫して対応が可能なGMP製造設備を有する。
FDAによる商用生産の許認可実績を持つ。
細胞や微生物を用いたバイオ医薬品の開発・
製造受託事業者。
バイオベンチャーや製薬企業からの業務を請け負う。

バイオ医薬品の開発からラージスケールの量産製造まで
豊富な経験とバイオ医薬品の治験から商用生産まで
一貫して対応が可能なGMP承認を得た製造設備を有する。
FDAによる商用生産の許認可実績を持つ。
     2011/2/28  富士フイルム、米メルクからバイオ医薬事業買収


富士フイルムは、長年の写真フィルムで培った生産技術や品質管理技術などを両社に投入し、高品質なバイオ医薬品の効率的な生産を図ってい る。

今後、両社が持つ高度な動物細胞・微生物培養技術(Apollo ™、pAVEway ™)、および昆虫細胞培養技術に、Kalon社の強みを組み合わせて、さまざまなワクチン製造ニーズにワンストップで応えられるサービス体制を構築し、バイオ医薬品事業のさらなる拡大を図る。

富士フイルムホールディングスの医療機器を含めたヘルスケア事業の2013年度の売上高は3800億円。
グループの富山化学が開発した抗インフルエンザウイルス薬「アビガン® 錠200mg」(一般名 favipiravir) が、エボラ出血熱の治療に使われている。

同社ではバイオ医薬品の受託製造事業の売上高を2018年度までに300億円規模に拡大したい考え。


ーーー

富士フィルムは10月30日、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)新株予約権の全てを年内に行使することを決定したと発表した。
これにより持株比率は50.33%になり、連結子会社となる。

2010年に国内で再生医療製品事業を展開するJ-TEC と資本提携を行い、41.29%の株式を取得した。
富士フイルムが開発した生体適合性に優れるリコンビナントペプチド(RCP)を活用した再生医療製品の開発をJ-TEC に委託し製品化を進めている。

2010/9/3 富士フイルム、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングと資本提携





 

 

Johnson & Johnson (J&J) は10月22日、エボラ出血熱のワクチンの効果や安全性を確認するための 臨床試験を2015年1月から始めると発表した。

人体への安全性と効果を確認できれば、欧州拠点で量産を始める。

J&Jはワクチンの開発と量産体制を確立するために最大で2億ドルを投じる。

National Institutes of Health (NIH) と協力して行うワクチン投与計画では、子会社のJanssen Pharmaceutical Companiesの部門である Crucell Holland B.V.のワクチンAdVac®と、デンマークに拠点を置くバイオ企業のBavarian NordicのワクチンMVA-BN®を組み合わせる。

この組み合わせはサルヘの実験では、2回の接種で現在流行している種類のエボラ出血熱ウイルスヘの感染を予防する効果が確認されており、来年1月から欧州、米国、アフリカの健康なボランティアを使って安全性と免疫原性のテストを行う。

Janssenでは2015年中に100万回分の生産を行う計画で、このうち5月までに臨床テスト用に25万回分を生産する。

Johnson & Johnson では、ワクチンの臨床テスト、開発、生産、配分について、WHO、アメリカ国立衛生研究所(NIAID)、各国の政府や保健機構と密接な連絡をとっている。

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GlaxoSmithKlineは10月18日、同社のエボラワクチンの状況を発表した。

ワクチン候補の開発はかってない早さで進んでおり、フェース1の安全性チェックは米国、英国、マリで進行中で年末には結果が出る。うまくいけば、更なるテストが2015年早々に始まり、シエラレオネ、ギニア、リベリアの3国で数千人の医療関係者に接種を行う。

GlaxoSmithKlineのワクチン候補は、2013年5月に買収したスイスのバイオ企業のOkairosが開発したもので、買収後、アメリカ国立衛生研究所と協力して開発を進めている。

GlaxoSmithKlineは2013年5月に、予防接種事業の拡大のため250百万ユーロでスイスのバイオ企業Okairos AGを買収した。
元の持ち主は、BioMedInvest、Boehringer Ingelheim Venture Fund、LSP、Novartis Venture Funds、Versant Ventures など。

買収分には、呼吸器合胞体ウイルス(RSウイルス)、C型肝炎ウイルス、マラリア、結核、エボラ、HIVの初期段階の製品を含んでいる。

Okairosは遺伝子を組み込んだ不活性化アデノウイルスベクターを用いてT細胞による免疫活性化を図る予防・治療ワクチンを開発している。

GlaxoSmithKlineはインフルエンザ、肝炎、ロタウイルスなどを既に販売しており、マラリアの予防接種を開発中で、2013年のワクチン事業の売上は33億英ポンドとなっている。

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NewLink Genetics Corporationは9月4日、FDAが同社のエボラワクチン候補のフェース1の臨床テストを承認したと発表した。

このワクチンはPublic Health Agency of Canadaが最初に開発したもので、NewLink Geneticsの100%子会社のBioProtection Systemsが独占実施権を得ている。

エボラウイルスに感染した動物のテストでは好結果を得ており、FDAは人間での臨床テストを承認した。

フェース1の安全試験実施に当たり、国防総省の国防脅威削減局(DTRA) と Walter Reed 陸軍研究所 (WRAIR)と協力している。

BioProtection Systemsは8月にDTRAから臨床試験に先立つ追加の毒性試験目的で100万ドルの資金提供を受けている。

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Tekmira Pharmaceuticals Corporationは10月21日、エボラ対策の状況を発表した。

同社はRNA干渉治療の主導的開発者だが、現在問題となっているエボラのギニア変種を対象とするワクチンのGMP製造を限定的に開始した。12月にも供給が開始される。

RNA干渉(RNAi:RNA interference)は、二本鎖RNAと相補的な塩基配列を持つmRNAが分解される現象で、この現象を利用して人工的に二本鎖RNAを導入することにより、任意の遺伝子の発現を抑制する手法。病気を起こす遺伝子を眠らせるもの。

西アフリカで流行するエボラウイルスの遺伝子配列が確定され、 'Ebola-Guinea' と呼ばれる変種のウイルスのRNA干渉治療が完成した。

同社は、WHO、疾病管理センター、国境なき医師団、国際重症急性呼吸器感染コンソーシアム (ISARIC) などとのコンソーシアムと協力している。






イタリアのタイヤメーカー Pirelli とロシアのRosneftは10月17日、ロシアのナホトカでSBRを含む合成ゴムの生産を行うことについて新しい覚書を締結し、3ヶ月以内に技術パートナーを選ぶことを決めた。

Rosneftと新パートナーはナホトカでの合成ゴム製造のやり方を検討し、Pirelli はこれに協力する。

両社は本年5月に本件でのMOUを締結している。

実現すれば、Pirelliは生産されるSBRを含む合成ゴムを購入する長期契約を締結する。

生産するSBRは溶液重合法SBRで、省燃費型高性能タイヤ(いわゆる Green Tire)用に使われており、各地で増設されている。            

2013年12月にRosneftとPirelliはアルメニアのOil Technoとの間で、アルメニアでの合成ゴム、特にSBRの生産をすることに関し、共同でR&Dを実施する覚書を締結している。

主体はRosneftで、PirelliはRosneftに協力し、実現した場合には長期的に購入する意向を示した。


Rosneft は2014年3月17日、間接的にイタリアのタイヤメーカーPirelli の筆頭株主になる契約を締結した。

最終的にRosneft のPirelliへの出資比率は13.1%となり、Marco Tronchetti Provera会長の10.5%を上回り、最大株主となる。

RosneftとPirelliは2012年12月に契約を結び、RosneftのガソリンスタンドでPirelliのタイヤを販売しており、原料の供給も行っているが、関係を更に強化する。

2014/3/25 ロシアのRosneft、イタリアのタイヤメーカー Pirelli の筆頭株主に

 

ナホトカの石油化学計画については次回。

 

 



米連邦準備理事会のJanet Yellen 議長は10月17日、ボストン連邦準備銀行が開催したカンファレンスで講演し、「所得や富の不平等は100年ぶりに最高レベルに近づいている」とし、「米国で不平等が深刻化していることは、大変懸念すべきことだ」と 述べた。

スピーチ:Perspectives on Inequality and Opportunity from the Survey of Consumer Finances


講演の内容は以下の通り。


米国における不平等の拡大が心配である。

過去数十年間の格差拡大を要約すれば、富裕層の所得や富が著しく増大する一方、大半の所得層では生活水準が低迷している状態と言える。

こうした傾向が、わが国の歴史に根ざした価値観、中でも米国民が伝統的に重きを置いてきた機会の平等に照らしてどうなのかと問うことが適切だ。


 

機会そのものが資産の多少の影響を受けるため、所得の不平等は機会の不平等を生み、それがまた所得の不平等を生むこととなる。

Council of Economic Advisers の議長のAlan Kruegerが2012年に提案した"Great Gatsby Curve"に見られるように、米国では1985年から2010年に不平等が拡大するとともに、親の所得がより影響を与えるようになった。

スコット・フィッツジェラルドの小説 『グレート・ギャツビー』からとった。)

Great Gatsby Curveは所得の不平等と世代間の所得の弾力性を示す。

下図で横軸はGini係数で、右へいくほど不平等が大きい。
縦軸は父親の収入が1%上昇するとその子供の予想される収入にどの程度影響するかを示す指標で、上にいくほど親の所得が子供の将来の所得に大きく影響する。
即ち、この数値が高いほど格差が次世代にわたり、固定化しており、社会的流動性が低くなっていることを示す。

米国では1985年から2010年に、右へ、上へ、移動している。

Bloomberg


このような状況で、機会の平等をどうしたら推進していけるのだろうか。

本日の目的は、問題の回答を示すことではなく、今後の議論のための基礎事実を述べることである。
今後議論を進め、解決策を出して欲しい。


Federal ReserveのSurvey of Consumer Finances によると、
米国では上位5%の所得が全体の37%を占める。(1989年の31%から増加)
これに対し、下位の50%、中間の45%のシェアは減少している。

平均所得を見ても、上位5%のみが大きく増加している。

所得ではなく、財産でみると、もっと明らかである。

上位5%の財産は1989年の54%から63%に増え、下位50%は3%から1%に減少、中間の45%も43%から36%に減少している。

上位5%の平均財産は1989年の360万ドルから2013年には680万ドルにほぼ倍増しているが、下位50%の財産は1989年の半分の11千ドルに過ぎず、その1/4は財産ゼロかマイナス(住宅ローンなど)である。 (住宅バブルで増加しつつあったが、バブル崩壊で急減した。)

機会の平等に影響する要素が4つある。

1)子供の発育期に使う金

下位層には社会的セーフティネットが重要だが、予算カットの影響を受ける。
初等教育は米国では市町村ごとのセールスタックスによるため、富裕地区と貧民地区では大きな差が出る。
優秀な教員も富裕地区に行きたがる。

2)高等教育の費用

大学の授業料の高騰で奨学資金ローン残は2004年の2600億ドルから本年は1兆1000億ドルにまで増大。
支払い負担により若い人が高等教育を受ける機会がどんどん減っている。

参考 http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2012/2012aut07web.pdf

3)ファミリービジネス

新しく事業を始めるのは難しくなりつつある。
下位50%層のうち、たった3%だけが事業を行っている。

4)財産相続

上位5%層の財産相続額は平均110万ドル、次の45%の層は183千ドル、残り50%の層の平均は68千ドル。


これらの問題について検討して欲しい。

 

ーーー

参考    2013/10/23 米国の政治・経済の問題点 

 


 

米製薬会社 Allergan を巡る買収合戦が輻輳している。

カナダの製薬会社 Valeant とAllerganの大株主である物言う株主William Ackmanが組んでAllergan買収を目指し、Allerganがこれを拒否し続けている。

他方、Actavis がAllergan買収提案をし、拒否されたが、再度買収を図っている。

AllerganはValeantの買収を防ぐため、Salix Pharmaceuticals の買収を図っている。

 

付記

Allerganは2014年11月17日、Actavisによる660億ドルの買収案に合意した。
買収案に合意した。

この額は、Valeantが最後に提示した額を60億ドル超上回っており、Valeantは、これだけ高額な買収額をAllerganに支払うことは正当化できないとし、買収を断念する考えを示唆した。

ーーー

カナダの医薬企業のValeantが2014年4月、Allerganに約450億ドルで買収提案をした 。

Activist Investor(物言う株主)として知られるWilliam Ackmanが率いる投資会社 Pershing Square Capital Management LP は既にAllergan株を10%弱保有しており、Valeantの買収案を支持している。

一方、AllerganはValeantの買収提案を「求められていない提案」と評し、Valeantの提案に抗戦する構えを示した。

Valeantは買取条件を二度にわたり引き上げ総額約530億ドルとしたが、Allerganは6月に、提案金額が同社の価値を著しく過小評価していることに加え、Valeantとの事業方針の違いなどを理由に、取締役会が全会一致で拒否を決めた。

Valeantは、Allerganの高コスト体質が、同社の株主価値を低めていると批判し、Allergan株主に対し、買収実現後は大幅なコスト削減を進めるとアピールしてきた。

 しかしAllerganはValeant に対し、「買収とコスト削減に頼るValeantの成長は持続可能ではない」と批判、Valeantが買収の利点として主張する節約効果を実現するため Allerganの研究開発費削減を進めれば「Allerganの長期的な価値が破壊されることを確信している」と主張した。


そう言いながらも、
Allerganは7月には全従業員の13%に当たる約1500人を削減すると発表した。
組織の簡略化や拠点統廃合などの合理化も進め、2015年中に4億7500万ドルのコスト削減を目指し、株主価値を高めてValeantによる敵対的買収に対抗するもの

Allergan は一方でValeant の敵対買収を防ぐため、8月に下痢や潰瘍性大腸炎の薬を扱うSalix Pharmaceuticals Ltd. に対し買収の申し入れを行った。
第三者と組んで買収を行うと報じられた。

Salixの市場価値は100億ドル以上のため、買収が成功すればAllerganの価値が高まるため、Valeant とAckman氏によるAllergan買収は難しくなる。

SalixはイタリアのCosmo Pharmaceuticalsの100%子会社Cosmo Technologies Limitedの買収を決め、本社をアイルランドに移すとしていた。
法人税率が安い国への本社移転を狙う"inversion" 取引であり、仮にAllerganがSalixを買収した場合、これを利用して本社を海外に移す可能性も考えられた。

しかし、既報の通り、9月に米国が節税のための本社移転の抑制を狙った新規則を発表した。
このため、Salixはメリットが不透明になったとして、25百万ドルの違約金を払って契約を解除した。

Valeant とAckman氏はAllergan の株主の25%の支持を得ているとされ、AllerganのSalix買収の動きに対し、Achman氏はAllerganの取締役会に対し、Salix買収の賛否を問う株主投票を実施せず買収に踏み切る場合には訴訟を検討するとの書簡を送った 。

これを受け、Allerganは12月18日に臨時株主総会を開くこととした。


ーーー

Valeantとは別に、2014年8月に米国の医薬品メーカー Actavis plc がAllerganに対し、買収の提案を行った。

Aktavisは日本ではあすか製薬とのJVの「あすかAktavis製薬」を持っている。

これに対し、AllerganはSalixの買収を検討中として提案を拒否した。

しかし、Aktavisは諦めておらず、更にAktavisの筆頭株主の投資信託Fidelity InvestmentsもAllerganの株式を買い増し、買収を後押ししている。

ーーー

今後、最終的にどこがどこを買収するのか、注目される。

 


       

製薬・医療機器を中心に、本社を税金の安い国に置き、税負担を軽くする動きが広まっている。


・MylanによるAbbottのジェネリック事業の一部の買収
・米
Medtronic によるアイルランドの手術関連製品メーカーのCovidienの買収
PfizerによるAstraZenecaの買収提案(
買収断念)
AbbVie Inc.によるShire Pharmaceuticals の買収

2014/7/21  MylanがAbbottのジェネリック事業の一部を買収、本社移転も目的の一つ

米国の製薬会社で、2013年初めに米Abbott Laboratoriesからスピンオフして誕生したAbbVie Inc.は7月18日、Shire Pharmaceuticals 買収で合意した。
当初の提案が拒絶されたことから、買収金額は従来の総額約270億ポンドから約310億ポンドに引き上げられた。

AbbVie は売上高の柱となる大型薬の特許失効を控え、希少疾患に強いShire の持つ医薬品を取り込んで収益強化を図るが、買収後は、法人税率が低い英国に持ち株会社を設立し米国で上場する予定であった。
AbbVie の2013年度の表面税率は22%だったが、統合後は本社を置く英国の優遇策を含め13%まで下げる効果を見込んでいた。


しかし、AbbVie は10月15日、Shire Pharmaceuticals 買収を撤回 すると発表した。
米政府が9月22日に節税目的の本社移転の
抑制を狙った新規則を発表したため、国外に会社を設立することを含む買収効果が不透明になったと判断した。

CEOは同日の声明で「2社が統合する戦略的な合理性はあるが、譲税ルールの変更によりShire の評価額の裏付けがなくなった」と説明した。 米政府の課税強化が撤回の理由と明言した。

AbbVie は違約金として約16億3500万ドルをShire に支払う。


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Tax Haven や低税率の国を利用して法人税を回避する動きについては、各国で問題になっていた。

2012/12/14 スターバックスの移転価格税制問題

2014/6/13   欧州委員会、Apple等の法人税を調査   米国の動きも言及

2013年6月に北アイルランドで開かれたG8サミットは、首脳宣言に多国籍企業の税逃れを防ぐための国際協調などを盛り込んだ。
経済協力開発機構(OECD)と連携し、「多国籍企業がどこで利益を生み、税を払っているか」を把握する仕組み作りを進めることで合意した。


今回の米政府の規制強化に加え、EUがアイルランド、オランダ、ルクセンブルクの税優遇制度を問題にし、追加納税を求められる可能性があること、それを受けてアイルランド政府が"Double Irish" 制度を取り消したことなどにより、各社は税務戦略やM&A戦略を見直す必要が出てきた。

ーーー

米財務省は9月22日、節税のための本社移転の抑制を狙った新規則を発表した。

税率の低い国へ本社を移転する "inversions" と呼ばれる行為について税制上の恩恵を減らすとともに、新たな本社移転をこれまでよりも困難にするもの。
新規則は即日適用された。


オバマ大統領は声明で、「複数の大企業は近年、こういった抜け穴を巧みに利用し、責任ある行動を取っている企業よりも製品を安く売り、中産階級に税金の支払いを強いている」と指摘 し、この措置を歓迎した。

新規制の概要は以下の通り。

1)"hopscotch" loans (石蹴りローン)の禁止

米税法では、米国の多国籍企業は全世界の支配下企業の利益に対して納税義務があるが、米国に送金されるまでは繰延収益とされ、課税が繰延べられる。

但し現行法では、海外子会社が米国の親会社に融資や株式購入などの形で送金した場合には、配当と同様に扱われ、課税される。

これに対し、本社を海外に移した企業が、子会社から米国親会社ではなく、この海外親会社に融資した場合、これまでは米国での配当としての課税は行われない。海外親会社に利益を飛ばすため、石蹴り("hopscotch" loans)と呼ばれる。

今回の改正で、意図的に「融資」の形で海外の買収先へ流した利益についても事実上の「米国の資産」とみなし、米当局が課税する。

2) "De-controlling" 戦略の禁止

本社を海外に移した企業が、米国の親会社から海外子会社の株式を買い取り、米政府による海外子会社の繰越収益課税を永久に防ぐことが行われている。米親会社のcontorol を外す意味で"de-controlling" と呼ばれる。

今回の新ルールでは、仮にこうした会計操作をしても海外子会社に米の徴税権が及ぶようにする。

3)抜け道の禁止

本社を海外に移した企業が、繰越収益を持つ海外の子会社に米国の親会社の株を売却し、実質的に無税で現金や資産を回収することを禁止する。

4)規定の厳格化による"inversions"の禁止

2004年の改正税法では、海外企業との合併による海外への本社移転を認めているが、その条件として、元の米国企業の株主が新しい海外親会社の80%未満を所有するということになっている。(80%以上の場合は米国の税法を適用する。)

実際には、海外の規模の小さい企業と合併しながら(米国企業の株主が80%以上を持ちながら)、いろいろな手法でこれを免れている。

・Cash box 海外合併会社が事業に関係のない現金や資産を持ち、規模を膨らませる。
・"skinny-down" dividends 合併前に特別配当で米国企業の規模を縮小する。
・"spinversion"  一部事業を新設の海外企業に移し、スピンオフさせる。

今回の新ルールではこれらに制限を加えている。

ーーー

EUは9月30日、2014年6月11日付けのアイルランド向けのレターを公表した。Appleに対する課税の疑惑を詳細に述べ、今後調査を続けることを伝え、資料の提出を要求している。
オランダのStarbucksに対する課税も問題にしている。

EUは10月7日、ルクセンブルグのAmazon への優遇策についても正式に調査を始めたと発表した。

2014/6/13 欧州委員会、Apple等の法人税を調査
 

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アイルランド財務省は10月14日に発表した予算案の中で、多国籍企業が法人税支払いの軽減に利用している税の抜け道 "Double Irish" を廃止すると明らかにした。

財務相は「アイルランドに拠点のある企業は国内で課税対象になる」と述べ、一部で認めてきた非課税措置を取りやめる方針を示した。
2015年以降に新規設立する企業は優遇措置を利用できず、優遇策を受けている企業も2020年末で猶予期間が終わる。

New York Times (2012/4/28) はAppleなどの節税手口を "Double Irish With a Dutch Sandwich" (アイルランド2社とオランダ社のサンドイッチ)と呼び、下図により説明している。

技術の権利

米本社とTax Havenの子会社との間で Cost-sharing agreementを結び、安い価格で権利をTax Haven子会社に移す。

米国需要家向け販売

米国での販売利益は通常35%の法人税が課されるが、多額のロイヤリティをアイルランド会社に払い、米国の税金を減らす。
アイルランド会社はロイヤリティ収益をバージン諸島の親会社に送ることでアイルランドでは免税となる。
バージン諸島はTax Havenのため、課税はない。

外需要家向け販売

販売利益は第二のアイルランド会社で課税される筈だが、アイルランドとオランダの課税協定で、オランダ会社を通すことでアイルランドでは課税されない。

オランダ会社は販売利益を第一のアイルランド会社に送り、第一のアイルランド会社はこれをバージン諸島の親会社に送ることでアイルランドでは免税となる。
バージン諸島はTax Havenのため、課税はない。

今回、「アイルランドに拠点のある企業は国内で課税対象になる」ため、Tax Havenを使った税回避は出来なくなる。

欧州委員会はEUの競争法に違反するとの暫定判断を示しているが、アイルランドはEUの最終判断に先立ち、制度を見直した。

 

 

Badlands NGL's LLC は10月13日、パートナー2社と組んで、North Dakota州で40億ドルを投じてシェールガスの副産品のエタンからポリエチレンを生産する計画を明らかにした。
(シェールガス生産時にNGLが副生するが、これからエタンとプロパンを分離する。)

州知事はこれを州の歴史で最大の私企業による投資としている。
随伴 ガスの焼却処分を減らし、エネルギー資源に付加価値を付け、多様な雇用を創出するという州の目標に合致したものと評価している。

パートナーの1社はスペインの石化コントラクターのTecnicas Reunidasで、現在、予備的なエンジニアリング分析を行っている。
もう1社はヒューストンの
Vinmar Projects で、本計画で生産されるポリエチレン全量を販売する15年の契約に調印している。

計画では、500人を雇用し、2017年末までに年産150万トンのポリエチレンを生産する。建設費は40~42億ドルと予想している。


North Dakota を選んだ理由は、豊富なエタンがあることと、North Dakotaからの方が米国のポリエチレン需要家にメキシコ湾岸からよりも早く、安く輸送できることであるとしている。

North Dakota では日量20万バレルのエタンを生産しているが、Hess Corp.の生産するエタンがパイプラインでカナダのAlberta のNova Chemicalsのポリエチレン工場に送られているのを除き、大部分は燃料用に売却されている。

現在、2箇所以上の立地を検討している。同州には多くのエタン製造業者がいるが、全ての業者から購入できることが選択の基準で、鉄道アクセスやインフラも選ぶ基準となる。 Williston Basinの南か東になるだろうとしている。


http://www.eia.gov/oil_gas/rpd/shale_gas.pdf



North Dakotaでは他にも豊富な天然ガス資源を利用する計画が進んでいる。

Minnesota のCHSは2014年9月、同州Spiritwood で天然ガスから窒素肥料を製造する工場を30億ドルで建設する計画を進めていることを発表した。

Northern Plains Nitrogen も同州Grand Forks の北端で肥料工場を18.5億ドルで建設する案を発表している。


 


カナダではアジアへの輸出を目指して、太平洋岸で多くのLNG計画が進められている。

1)Kitimat LNG輸出ターミナル計画とPacific Trail Pipelines計画

ChevronがApache Corp. との50/50JVで、Kitimat 郊外のBish CoveでのLNG輸出ターミナル建設計画を進めている。
しかし、Apcheは本年7月に撤退を発表。

2)Shell、三菱商事等の「LNG Canada」計画    

3)BC LNG Export Co-Operative  

4)出光興産とAltaGasの計画   

 以上の4件の詳細は 
     
2013/2/1    出光興産とAltaGas、カナダ産LNG、LPGのアジア向け輸出共同事業でパートナーシップを締結

5)Petronas、石油資源開発等のLNG計画  
  2014/3/15 
Petronas と石油資源開発のカナダのシェールガス開発・LNG輸出計画にインドとブルネイが参加  


大西洋岸でも欧州への輸出を目指してLNG計画が進んでいる。

LNGインフラを事業目的として2011年に設立されたPieridae Energy (Canada) のGoldboro LNG projectで、Nova Scotia州のGoldboro Industrial Parkで下記の計画を進めている。

 LNG能力 年産10百万トン
 LNGタンク  23万m3 x 3基
    生産開始 2019年初め

Nova Scotia州の沖合いのSable Island 周辺ではコンソーシアム(The Sable Offshore Energy Project)が天然ガスを開発している。
生産量は天然ガスが日量4億~5億立法フィート、NGLが日量2万バレルとなっている。
1999年にSable島とGoldboroの間をつなぐ海底パイプラインが完成した。

Goldboroは天然ガスの消費地の米国東部へカナダの陸上、洋上の天然ガスを送るMaritimes & Northeast Pipelineの基点でもある。
Spectra Energy(77.53%)、Emera, Inc (12.92%)、ExxonMobil (9.55%)の所有で、マサチュセッツ州
Dracutで North American natural gas gridと接続し、メキシコ湾岸まで繋がっている。

Sable Islandの天然ガスのほか、カナダの他の陸上、洋上の天然ガスもこのパイプラインでGoldboroに送られる。

 

Pieridae Energy は2013年6月3日、ドイツの E.ONとの間でGoldboroのLNGの輸出契約を締結した。

E.On は2020年から年間 500万トンのLNGを購入し、欧州に輸送する。価格などは明らかにされていないが、E.On では年間数十億ユーロの取引としている。

ドイツ政府はこの計画を後押しするため、昨年、E.Onに対し20億ユーロの融資保証を認めた。
エネルギーを含む原料の供給確保に向け、年間500万トンの輸入のうち 150万トンをドイツ国内に振り向けることが条件となっている。

ーーー

Pieridae Energy は本年6月、Goldboro LNGのFront-End Engineering and Design (FEED:基本設計) 業者として CB&I を選んだ。


 


英国政府は昨年、約20年ぶりとなる原発の新設計画(Hinkley Pointの欧州加圧水型原子炉 2基)自然エネルギーの普及に使われている「固定価格買取制度」を導入した。

EUはこれがEU法が禁止する「国家補助」にあたるのではないかと調査を続けてきたが、10月8日にこれが合法であるとの結論に達したと発表した。

ーーー

フランスのEDF と英国政府は2013年10月、2基の原発リアクターの建設で合意した。
英国での原発新設は1995年完成したSizewell B 原発以来となる。2023年の運転開始を目指す。


Hinkley Pointに欧州加圧水型原子炉(EPR) 2基(総出力320万kW)を建設する。
これに続いて、Sizewell に2基のEPRの建設を進める。
同型のものを建設することで、設計、購入、建設における経費節減を図る。

EDFでは、機器メーカーのAREVA、提携している中国の中国広核集団(CGN:旧称中国広東核電集団)と核工業集団公司 (CNNC) に加え、他社の参加を交渉している。

EDF Group 45-50%
AREVA 10%
CGN & CNNC 30-40%
その他(15%までの参加を認める)


英国のCentricaが2008年に20%の出資を決めたが、その後、福島事故による新しい安全対策などのさまざまな理由でコストが跳ね上がり、撤退を決めた。
広核集団はこれを海外原発事業への進出の足掛かりにしようとしている。

この計画は、安全対策費などが膨らんで建設費は2基で 総額160億英ポンド(うち建設費は140億英ポンド)と巨額になり、電気料金が下がると、建設費を回収できなくなる。

このため、
英国政府とEDFは、原子力発電での電力の固定価格買取価格(35年間)について、下記の通り合意した。

Sizewell での建設を決める場合 £89.50/MWh(約14.1円/kWh)
Hinkley Point単独の場合        £92.50/MWh(約14.6円/kWh)

 これは現在の卸価格の約2倍になる。

2013/12/27  英国が原発建設再開、固定価格買取制度導入


これに対し、EUは2013年12月18日、英国政府が新しい原発の建設・操業に与える補助金が、EUが禁止する「国家補助」に当たるのではないか、慎重に検討すると発表した。

計画では、電力価格の変動に関係なく、原発の操業者は35年間安定した収入を得ることが出来る。
電力料が固定買取価格より低い場合、政府は差額を支払う。逆に高い場合には操業者は差額を政府に支払う。
いずれにせよ、操業者は35年間は市場変動のリスクから免れることとなる。

加えて、建設資金の借り入れに当たり、安い保証料で政府保証を得る。

EUの規則(欧州連合の機能に関する条約:TFEU)では、市場経済投資家原則(Market Economy Investor Principle:MEIP) により違法な「国家補助」に当たるかどうかを判断することとなっている。競争相手が受けられないようなメリットを与えるなら違法ということになる。


今回EUは、英国政府の提案した改正案はEUのルールに沿ったものであるとの結論に達した。
調査の過程で、英国政府は条件を大幅に修正したため、競争を阻害しないと判断した。

・英国政府は、EUの懸念と異なり、支援が市場ではどうしようもない事態に対応するものであることを示した。
  特に、現状では必要な資金を得ることが出来ない状況にある。

  EDFでは総額160億英ポンド(うち建設費は140億英ポンド)としているが、欧州委員会では2023年の建設完了時点で建設費だけで240億英ポンド以上になるのではと見ている。
  (毎日新聞報道では建設費は 2基で約245億英ポンド≒約4兆2630億円としている。)

・政府保証については、当初の保証料は余りにも安かったが、大幅に引き上げられた。
  これにより、補助金は10億英ポンド以上減ることとなる。

・事業利益を英国の消費者とシェアすることとなった。

   事業利益が計画を上回った場合、政府とシェアする。
   更に、事業利益が一定レベルを上回った場合には、政府はその半分以上を受け取る。
   利益率が1%ポイント増えただけで、12億英ポンド以上となる。

   政府が受け取った利益は、電力料引き下げで消費者に還元する。

 この仕組みは、EUの要請により、35年ではなく、事業の全期間(即ち60年間)適用される。
 
 更に、建設費が計画より減った場合も、利益はシェアすることとなる。

ーーー

日立製作所は2012年10月30日、英国で原子力発電所の建設を計画している原発事業会社Horizon Nuclear Power の全株式を、同社株主のドイツのエネルギー会社 No.1のE.ON及びNo.2のRWEから6億7000万ポンド(約850億円)で買収する契約を締結した。

Horizon
が保有する北ウエールズのAnglesey島のWylfaとSouth GloucestershireのOldburyの2カ所で、1,300メガワット級の原子力発電設備をそれぞれ2~3基建設する予定で、日立が世界で唯一運転実績を持つ第三世代原子炉である改良型沸騰水型原子炉(ABWR)技術を用いる。

2012/11/1  日立製作所、英の原発会社買収

東芝は2014年1月15日、スペイン大手電力会社Iberdrola S.A.から、英原子力発電事業会社NewGeneration(NuGen)の株式50%を、またGDF Suez から同社保有のNuGen社株式10%を、それぞれ譲り受けると発表した。取得額は総額で約1億ポンド。

NuGen は仏エネルギー大手GDF Suez とIberdrola の50/50JVで、英中部Sellafieldで合計出力360万キロワットの原発建設を予定している。
Iberdrola はスコットランドのScottish Powerを所有する。

しかし、Iberdrola が2012年に、事業再編と債務削減を進めるためにNuGenの保有株を売却する意向を明らかにしたことで、プロジェクトは頓挫していた。

東芝は子会社Westinghouse Electric の原発設備をNuGen に納入することを狙い、同社への出資を検討していた。

2013/12/27  英国が原発建設再開、固定価格買取制度導入、東芝と中国企業が計画に参加


今回のルールが適用されれば、両社の計画にも好影響を与える。

ただ、オーストリアは
英国の公的支援に反対し、計画が承認されれば法的措置を取ると表明しており、欧州司法裁判所に提訴する可能性がある。

 

ーーー

Hinkley Pointが採用する欧州加圧水型原子炉(EPR) は稼働中のものはなく、4基が建設中である。

フランス西部のFlamanville とフィンランドの Olkiluotoで1基ずつ、中国の広東省台山市で、中国広核集団が70%、フランス電力が30%出資する台山原子力発電所が2基を建設している。

 


大阪府の泉南地域のアスベスト紡織工場の元従業員とその遺族89人が、規制の遅れで肺がんになったなどとして国に賠償を求めた2件の集団訴訟(大阪アスベスト訴訟第1陣、第2陣)で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は10月9日、規制権限を行使しなかった国の対応を違法とする判決を言い渡した。

元従業員は1、2陣に分かれて集団提訴し、1審はいずれも勝訴したが、2審・大阪高裁で国の責任の有無について判断が分かれ、双方が上告していた。(詳細下記)

小法廷はまず「労働環境を整備し、生命、身体に対する危害を防止するため、国は技術の進歩や医学知識に合うよう適時・適切に規制権限を行使すべきだ」との枠組みを示し、具体的に3つの点について、規制時期が適切であったかどうかを検討した。

  判決
(1)1971年の粉じん排気装置の設置義務化 原告主張 認める 「1958年には実用的な技術も普及しており、義務化が可能だった」
(2)1988年の粉じんの濃度規制強化       退ける 「1988年以前から専門的知識に基づき一定の規制がされていた」
(3)1995年の防じんマスク着用義務化       退ける 「石綿工場の粉じん対策としては補助的手段に過ぎない」


結論として、裁判官5人全員一致の意見で、「健康被害の医学的知見が確立した1958年時点で規制すべきだった」とし、国の責任を認めた。

粉じん装置設置義務化の1971年以降に作業に従事した7人(1陣6人、2陣1人)については、国の責任はないとして敗訴が確定した。
このうち、「濃度規制強化」と「マスク着用義務化」の遅れを理由に2審で賠償が認められた1名は逆転敗訴となった。

賠償金については下記の通り。

  地裁 高裁

最高裁

1971年以前から作業に従事 1971年以降従事
第1陣  4億3500万円 敗訴 28名
賠償額確定のため、審理差し戻し
6名 敗訴
第2陣 55名計
 1億8000万円
55名計
3億4500万円
54名計
  3億3200万円
1名 敗訴


菅官房長官は10月9日の記者会見で、最高裁が判決で国の賠償責任を認めたことについて「国の責任が認められたことは重く受け止めている。厚生労働省で判決に従って適切に対応する」と述べた。

塩崎厚生労働大臣は記者団に対し、「判決が国の責任を認めたことを重く受け止めており、原告には誠に申し訳なく思う。判決に従って対応したい。今後、アスベストの健康被害を防止するための対策を徹底していく」と述べた。

 

全国のアスベスト訴訟で、国の賠償責任を認める最高裁判決は初めてで、各地の同種訴訟に影響を与えそうだ。

厚生労働省によると、アスベストの健康被害では、今回のものも含め、全国で830人余りが14の裁判を起こし、国や企業に対し総額で265億円余りの賠償を求めている。

但し、原告によっては、今回の判決は直ちには影響しない。

アスベスト工場従業員 影響を与える可能性あり
周辺住民 影響を与える可能性あり
但し1975年以前に周辺住民の発症リスクが高いとの医学的知見がなかったことをどう判断するか。
建設現場でのアスベスト製品の使用(屋外、屋内) アスベスト製品の使用であるため、「排気装置義務付け」とは関係なし。

「防じんマスクの着用義務づけ」「石綿工場の粉じん対策としては補助的手段に過ぎない」が、建設現場では主な手段であるため、裁判での争点となる。

 


本件の一審、二審の結果は下記の通り。
大阪アスベスト訴訟(第1陣)

泉南地域の工場の元労働者、近隣住民及びその遺族が9億4600万円の損害賠償を求める。

  大阪地裁(2010/5)  大阪高裁(2011/8)
結論 原告勝訴
「石綿対策を省令で義務づけなかったのは違法」
一審判決取消
賠償金 34人
1人あたり 687万円~4,070万円
総額は
約4億3500万円
 
対象外 工場近くで石綿粉じんにさらされたとして「近隣暴露」を訴えた元周辺住民  
理由 国が石綿被害の実態と対策の必要性を認識した時期

石綿に関係する医学的な知見は1959年に石綿肺について、72年には肺がんと中皮腫についておおむね集積された。国はそれぞれの時期に、防止策をとる必要性を認識していたと言うべきだ。

1960年時点で国が石綿肺防止のための省令を制定しなかったこと

石綿肺の医学的知見が59年におおむね集積され、重大な被害が発生していることを認識しているのだから、被害の防止策を総合的にとる必要性も認識していたということができる。

省令を制定・改正し、排気装置の設置を義務づける規定を設けなかったのは、著しく合理性を欠き、違法だというべきだ。

1972年時点で国が石綿肺防止の省令を制定しなかったこと

測定結果の報告などを義務づける必要があったが、国はこれを怠った。これは著しく合理性を欠き、違法だったというべきだ。

省令制定権限不行使の違法と石綿粉じん暴露による損害との因果関係

国の省令制定権限不行使の違法と、60年以降に石綿粉じんに暴露し石綿関連疾患になった労働者の原告、またはその相続人らの損害には、相当因果関係がある。

「国が1947年以降、健康被害の危険性を踏まえて行った法整備や行政指導は著しく合理性を欠いたとは認められない」

但し、「過去に吸い込んだアスベストによって深刻な被害が現実化していることを考えると、長期的な危機管理として必ずしも十分でない部分があったことは否定できない」

  

 

詳細 2010/5/22 アスベスト被害で国の責任認定 2011/8/30 アスベスト被害訴訟、高裁で逆転判決 
 
大阪アスベスト訴訟(第2陣)

泉南地域の工場の元労働者ら55人が約11億3千万円の損害賠償を求める。

  大阪地裁(2012/3/28) 大阪高裁 (2013/12/25)
結論 原告勝訴 原告勝訴
賠償金 総額約1億8千万円賠償命令
原料搬入の運送業者の元従業員1人の遺族の請求も認定
総額3億4500万円賠償命令

損害賠償額を増額
喫煙による減額を否定

対象外 1960~71年の期間外に勤務していた従業員や、勤務先から十分な賠償を受けたと認められる原告の請求は棄却  
国の責任負担割合 従業員の健康被害について最終的責任を負うのは使用者で、被害額に対する国の責任の割合は 1/3 被害額に対する国の責任の割合は1/2
理由 1959年までには石綿肺の医学的知見が集積され、国は粉じんによる被害が深刻だと認識していた。

旧じん肺法が制定された60年までに対策を取るべきだった。
1971年までに石綿粉じんを除去する排気装置の設置を罰則付きで義務づけなかったのは著しく合理性を欠き、違法

工場内の石綿粉じんの濃度規制については、1988年まで学会の勧告値に従わなかった点は「遅きに失した」


以下はその他の国を対象とした訴訟の判決

神戸アスベスト訴訟(第1陣)

尼崎地域のクボタの工場付近居住者2名の遺族らがクボタと国を相手取り、計7900万円の損害賠償を求める。
クボタは被害発覚後、周辺住民らに最高4600万円の救済金を支払ってきたが、遺族らは受け取らず、「責任を認めて謝罪してほしい」として提訴した。

男性は1939~75年に、同工場の約200メートル先の工場に勤務、自宅は約600メートル離れていた。
女性は1960年から1995年まで、1.1〜1.5キロ離れた家に住んでいた。

  神戸地裁 2012/8/7 大阪高裁 2014/3/6
国の責任 1975年以前に周辺住民の発症リスクが高いとの医学的知見はなく、健康被害を防止する立法をしなかったことが違法とはいえない 1975年以前に周辺住民の発症リスクが高いとの医学的知見はなく、国が被害防止の立法や規制をしなかったことに違法性はない
クボタの責任 男性:賠償金 約3190万円

女性:認容せず

男性:賠償金 約3190万円

女性:認容せず

詳細

2014/3/13 近隣住民によるアスベスト訴訟、高裁も企業に賠償命令、国の責任は否定 

 
屋外型の横浜建設アスベスト訴訟

建設現場でアスベストを吸い込み、肺がんなどを発症した建設労働者や遺族計87人が、国と建材メーカー44社に総額約29億円の損害賠償を求める。

  横浜地裁 (2012/5/25)  
結論 原告の請求を全て棄却  
理由 「1972年時点で、石綿粉じん曝露により肺がん及び中皮腫を発症するとの医学的知見が確立した」

2006年に至るまでアスベスト建材の使用を全面禁止しなかったこと等について、「著しく合理性を欠く」と言うことまではできない。

 
 
屋外型の東京建設アスベスト訴訟
  東京地裁 (2012/12/5)  
結論 国に対する請求を一部認容  
賠償金 170人に総額10億6394万円の賠償命令  
理由
1) 国は石綿の吹き付け作業では1974年、切断などでは1981年に規制の義務を負っていたが怠り、違法だ。

遅くとも1981年以降は
・事業者に防じんマスクの着用を罰則つきで義務づける
・建材に「肺がんなどを生じさせる」と警告表示する――
などの対策をとれば、多くの被害を防止できたと結論づけた。

 

2) この時期以降に屋内で建築作業に従事した労働者に限り、国の賠償責任がある。
 
3) 屋外作業では危険性を容易に認識できたと言えず、零細事業主や個人事業主についても国は責任を負わない。
 
4) 石綿を含有した建材の製造販売企業に共同不法行為は成立しない。
 
詳細 2012/12/10 建設労働者アスベスト訴訟、国に初の賠償命令  

 

 

 

付記  2014/11/7  下記の判決があった。
建設アスベスト訴訟で国の責任を認めるのは、東京地裁判決(控訴中)に次いで2例目

屋外型の九州建設アスベスト訴訟
  福岡地裁 (2014/11/7)  
結論 国に対する請求を一部認容
建材メーカーへの訴えは却下

「一人親方」などの原告15人については認めず。
 
賠償金 36人に総額1億3700万円の賠償命令  
理由 建設現場での防じんマスク着用は「被害防止対策としては唯一有効な手段」

国は遅くとも1975年までには石綿被害の危険性を認識できた。
同年から罰則付きでマスク着用を義務づけるべきだった。
危険性を知らせる警告表示について、建材や建設現場などで義務づけるべきだった。

1995年まで国がこうした規制を怠ったのは「違法」

一人親方は個人事業主で労働基準法が適用される労働者に当たらない。

 
建材メーカーについては
加害企業の特定が出来ないとした。
「建材メーカーは製造販売の時期や製品がそれぞれ異なり、加害行為の一体性を一律に認めることはできない」
「42社以外に損害を与える企業がなかったと証明されていない」

 

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

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