「no」と一致するもの

   

イグ・ノーベル賞の2014年の授賞式が9月18日、米マサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード大で行われ、「バナナの皮を踏むとなぜ滑りやすいのか」を実験で解明した北里大医療衛生学部の馬渕清資教授と、健誠島大地、利奈の各氏のチームが物理学賞を受賞した。

日本人のイグ・ノーベル賞受賞は8年連続。

「バナナの皮を踏むと滑る」のはよく知られているが、「摩擦係数」を、実際に調べた研究はこれまでなかった。数十本のバナナを買い込み、むいた皮を測定器の上で踏みつけて、摩擦係数を測定した。その結果、皮の内側を下にして踏みつけると、皮がないときの約6倍も滑りやすくなることが判明した。

馬渕教授らは、バナナの皮の内側にたくさんあるゲル状物質(小胞ゲル)を含んだカプセルのような極小組織が、靴で踏まれた圧力でつぶれ、にじみ出た液体が潤滑効果を高めることを突き止めた。

バナナの皮の滑りやすさは、リンゴやオレンジの皮より数倍高く、雪の上に乗せたスキー板の滑りやすさに迫るほどだった。バナナは、甘みを増すために品種改良を重ねたことで、粘液成分が多く含まれるという。

馬渕教授は、人の関節が滑らかに動く仕組みなどを研究する「バイオトライボロジー」(生体摩擦学)が専門で、研究成果は人工関節への応用に役立てている。

授賞式で馬渕教授は、関節の摩擦を減らす原理はバナナの皮の粘液による滑りやすさと共通していることを、歌やパネルで示して会場を沸かせた。

過去のイグ・ノーベル賞については、下記を参照。

2006/10/13 ノーベル賞とイグ・ノーベル賞
2007/10/8  2007年イグ・ノーベル賞
2008/10/4  2008年イグ・ノーベル賞
2009/10/3 
2009年イグ・ノーベル賞
2010/10/7  2010年ノーベル化学賞とイグ・ノーベル賞
2011/10/1  2011年度イグノーベル賞 
2012
/9/25   2012年 Ig Nobel 賞に日本人の「スピーチジャマー」

2013/9/16   2013年 Ig Nobel 賞、日本の2チームが受賞

このうち、中垣俊之教授らのチームは、2008年に真正粘菌変形体という巨大なアメーバ様生物が迷路の最短経路を探し当てることができることを発見し認知科学賞を受けたが、2010年にはその延長で、粘菌が交通網を整備することを発見し、交通計画賞を受賞した。

ーーー

授賞式では、2005年に「栄養学賞」を受賞した発明家のドクター・中松(中松義郎氏 86歳)が、闘病中のがんの新たな治療法の「発明」について基調講演した。

2005年「栄養学賞」
     36年間にわたり自分が食べたすべての食事を撮影し、食べ物が頭の働きや体調に与える影響を分析

中松氏は本年6月に「前立腺導管がん」の末期状態であることを明らかにしているが、式後、「世界に向かってがんを克服する決意を述べました」と話した。

同氏は5歳の時に発明を始めて以来、14歳で灯油の給油ポンプをつくり、大学2年生でフロッピーディスクの基本原理を考案した。 「治療法がないんだから、自分で発明するしかない」とし、自らの体を使って、がんの治療法を研究している。

今回の基調講演で発表した「発明」もその一つで、がん細胞が好むたんぱく質などの栄養素を排除したという食品。


また、2013年にSoylentをつくった米国のRob Rhinehartも スピーチした。

Soylentは生存に必要な栄養素が粉末になっており、これを水に溶かして飲む。

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今回の受賞一覧は下記の通り。

  受賞者 受賞理由
物理学賞 日本  床の上のバナナを踏んだ時の、靴とバナナの皮、バナナの皮と床の間の摩擦係数の測定
参考文献:Frictional Coefficient under Banana Skin
神経科学賞 中国・カナダのチーム トーストの焦げ目がキリストの顔に見える脳の仕組み解明
Seeing Jesus in Toast: Neural and Behavioral Correlates of Face Pareidolia
心理学賞 豪・英・米のチーム 習慣的に遅くまで起きている人は、習慣的に朝早く起きる人と比べて、平均して、より自画自賛的で、より巧みに人を操作し、より精神病質であることの証拠を集めた。
Creatures of the Night: Chronotypes and the Dark Triad Traits
公衆衛生賞 チェコ、米、インドのチーム 人が猫を飼うことは精神的に有害であるかどうかの調査
Changes in personality profile of young women with latent toxoplasmosis ほか
生物学賞 チェコ、独、ザンビアのチーム  犬が排泄するときに、地球の南北の磁力線に体を向けることを発見
Dogs are sensitive to small variations of the Earth's magnetic field,
芸術賞 イタリア 強力なレーザービームを手にあてられながら、醜い絵画を見るときと、美しい絵画を見るときとの人間の苦痛度の測定
(美しい絵画の方が苦痛が少ない)
Aesthetic value of paintings affects pain thresholds
経済学賞 イタリア政府統計局 EUの基準の達成のため、売春、麻薬取引、密輸や、その他の違法な資金取引を入れてGDPを引き上げた。
European System of National and Regional Accounts (ESA 2010)
医薬賞 米・インドのチーム 塩漬け豚で鼻をパックして、ひどい鼻血を治療
Nasal Packing With Strips of Cured Pork as Treatment for Uncontrollable Epistaxis in a Patient with Glanzmann Thrombasthenia,
北極科学賞 ノルウェー・独のチーム 北極熊の扮装をした人間を見たトナカイの反応の調査
(ハイキング姿の時よりも2倍の距離を逃げた)
Response Behaviors of Svalbard Reindeer towards Humans and Humans Disguised as Polar Bears on Edgeøya
栄養学賞 スペイン 発酵ソーセージ用のバクテリアの種培養としての、幼児の排泄物から分離した乳酸菌の評価
(幼児の排泄物からは109種の乳酸菌が見つかったが、どれが最適かを調査)
Characterization of Lactic Acid Bacteria Isolated from Infant Faeces as Potential Probiotic Starter Cultures for Fermented Sausages

 

 




サウジのSaudi Aramco がタイ国営PTTのベトナムの石油精製・石油化学計画に参加する。
PTTのトップが明らかにした。

ベトナム政府に事業計画書を提出しており、今後、ベトナムの通産大臣がこの提案を検討、近く訪問するタイの首相とも協議する予定。

タイのPTTは2012年末に、ベトナム南中部のBinh Dinh省のNhon Hoi 経済特区に、日量66万バレルという世界最大級の製油所を建設することを計画していると報じられた。
石油化学コンプレックスの建設も計画に含まれている。

その後、他の製油所計画が進捗しているため、同社は精製能力を40万バレルに落とし、詳細を詰めていた。

PTTとSaudi Aramcoがベトナム政府に提出した計画は以下の通りとされる。

計画 Nhon Hoi economic zoneの石油精製・石油化学計画
 石油精製 日量 40万バレル(当初計画は66万バレル)
 オレフィン系 合計年産300万トン
 芳香族系  合計年産200万トン
投資額 220億ドル(PTTの当初見積もりは287億ドル)
出資者
PTT  40%  PTT子会社 Thai Oil と IRPC も参加  
Saudi Aramco  40%    
ベトナム政府  20%    
完成予定 2021年
原油 主にSaudi Aramcoが供給

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ベトナム政府は2007年9月に製油所の建設計画を明らかにした。9つの製油所を建設し、2025 年までに国内需要の90%を自国内の製油所でカバーするとし、原油処理能力の目標値を日量 111~121万バレルとした。(能力は当初の計画で、具体化時点で変更される)

今回の計画は地図の④ 




現在、具体的に進行しているのは下記の計画。

1)現在稼働しているのはPetroVietnam のズンクワット(Dung Quat)製油所(地図の)で、2009年に稼働した。
  能力は日量14.8万バレルで、同社は増設を検討中。

2) 出光興産と三井化学は6月6日、両社とクウェート国際石油、ペトロベトナムとの合弁事業である総投資額約90億米ドルのNghi Son 製油所・石油化学コンプレックス建設プロジェクト(地図の)の最終投資決定を行ったと発表した。

石化計画:
 パラキシレン 70万トン
/
 ポリプロピレン 37万トン
/

2013/6/11 出光興産と三井化学、ベトナムのNghi Son 製油所・石油化学コンプレックスへの最終投資決定

3) Lon Son製油所(地図の)はPetroVietnam の事業。

この製油所に隣接し、タイのSiam Cementグループとベトナム側のJVのLong Son Petrochemical が石化コンプレックスを建設する。
2012年1月、Qatar Petroleum がこれに参加することが明らかになった。
報道によると、コンプレックスはオレフィン 165万トン、ポリオレフィン(HDPE、LDPE、PP) 145万トン、苛性ソーダ 28万トン、EDC 33万トン、VCM 40万トンなどからなる。

2008/8/25 ベトナム最大の石化コンプレックス、9月に建設着工


4)
Phu Yen省のHoa Tam Industrial Zone(地図の

Vung Ro Petroleum は英国の投資会社Technostar Management とロシアのTelloil GroupとのJVで、Hoa Tam Industrial Zoneに製油所(LPG, Gasoline, Jet Fuel, Diesel, Fuel Oil) と石化プラント(BTXと年産90万トンのPP)の建設を開始した。投資額は31億8千万ドルとされる。

Hoa Tam Industrial Zoneに538ヘクタールの土地を確保、2007年11月に製油能力 400万トンで投資ライセンスを取得したが、2013年12月初めに、能力を800万トンにアップした。

2013年11月にLummus Technologyとの間で、エチレン回収とOCT(エチレンとブチレンからプロピレンを製造)に関するライセンス・エンジニアリング・技術サービス契約を締結し、2014年1月にはINEOSからInnovene PP 技術(年産90万トン)を導入した。

2014年9月9日、現地で鍬入れ式を行った。

2014/1/24 ベトナムの新しいポリプロ計画 



 

塩野義製薬は9月12日、大阪国税局よりHIV治療薬JVの枠組み変更取引にからみ、「法人税等更正通知書及び加算賦課決定」を受領したと発表した。
更正された所得金額は約405 億円だが、対象年度に欠損金があっため、追徴税額は地方税等を含め約 13億円となる。

同社では、この取引は事前に当局に照会し、確認を得たうえでのものであり、承服できるものではないとし、不服申し立て等あらゆる必要な措置を講じていくとしている。

今回の更正処分による追徴税額等約13億円は、今期に過年度法人税等として計上する。
また、今回の更正処分(税務所得405億円の追加)により前期繰越欠損金が消滅したため、当年度の税金費用として約134億円を計上する。
(不服申し立てをする場合でも、企業会計上は税金を計上することとなっている。)

ーーー

塩野義製薬はViiV Healthcare (GSKとPfizerのJV)との 50/50JVのShionogi-ViiV Healthcare でHIVインテグレース阻害薬ドルテグラビルの開発を行ってきたが、2012年10月29日に、HIV治療薬JVの枠組み変更を発表した。

Shionogi-ViiV Healthcare の50%持分をViiV Healthcareに譲渡し、見返りにViiV Healthcareの10%の権利を取得する。

2012/11/2  塩野義製薬、HIV治療薬JVの枠組み変更


今回の発表などを基にすると、事態は以下の通りと推定される。

1)塩野義はShionogi-ViiV Healthcare の50%持分を、先ず英国子会社のShionogi Limitedへ簿価(約130億円)で現物出資した。

2)Shionogi LimitedはこれをViiV Healthcare に譲渡し、対価としてViiV Healthcare株10%(時価約530億円)を取得した。

3)  英国ではこの取引は無税で行われたとみられる。

4) 塩野義は2013年3月連結決算で、Shionogi-ViiV Healthcareの簿価とViiV株式10%の時価との差 40,433百万円を特別利益に計上した。

5)  日本の税務申告では、組織再編税制の規定に基づき、当局の確認を得たうえで、(簿価での)現物出資として税務上の所得はゼロとして申告した。
 (英国子会社では404億円の特別利益が出たが、日本では簿価130億円の持株を同額で英国子会社に現物出資するため、所得はゼロとなる。)

6) これに対し、大阪国税局はこの特別利益を塩野義の税務上の所得と認定し、課税した。

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塩野義の当局への説明内容(取引のどこまでを説明したのか)、当局側の確認の方法(口頭か文書か)、今回の当局の処分の理由など、詳細が分からないため判断できないが、常識的に考えると、塩野義の主張には無理があると思われる。

資産を他に移転する場合には、移転資産の時価による取引として譲渡損益を計上するのが法人税法の基本的な考え方である。

但し、組織再編成により資産を移転する場合、移転の前後で経済実態に実質的な変更が無いと考えられる場合には、その時点で時価との差額を課税するのではなく、簿価での移転を認め、実質的に処分するまで、移転資産の譲渡損益の計上を繰り延べる。

今回の場合、Shionogi Limitedは現物出資を受けたJVの持株を直ちに譲渡し、対価としてViiV Healthcare株10%を受け取り、利益を得ている。
「移転の前後で経済実態に実質的な変更が無い」とは言えず、また塩野義からShionogi Limitedに持分を移す必要性も考え難い。

実質的には、塩野義がJV持株を譲渡し、対価としてViiV Healthcare株10%を受け取り、利益を得たと見るほうが素直である。

 (これが認められるなら、海外資産を売却する際に現地に子会社をつくり、そこに資産を移した上で売却すれば、日本での課税を免れることとなる。)





日本カーボンは9月4日、 米GE、仏Safran S.A との3社のJVのNGS アドバンストファイバー」が、炭化ケイ素連続繊維「ニカロン®」(Nicalon) の生産能力増強のため、新工場の建設を決定したと発表した。航空機エンジン部材向けの需要拡大に対応する。

既設の富山の工場隣接地に新たに第二工場を建設するもので、最新の製造技術の導入により、原材料から紡糸、不融化(電子線照射)、焼成に至る一連の製造ラインを増設する。
能力は年産10トンで、特に高機能グレード製品の「ハイニカロン®」「ハイニカロン®タイプS」の生産能力を現状の10倍に拡大する。
2017年に操業開始の予定。

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この炭化ケイ素連続繊維は、千数百度の高温大気中においても耐熱性、耐酸化性に優れた繊維である。

炭素繊維は、軽量で高強度という特長があり、航空機の機体などに広く利用されているが、炭素は高温大気中では燃えてなくなるため、この環境下では使用できない。

一方、炭化ケイ素は軽量で高強度に加え、高温大気中でも高い耐熱性を有している。
炭化ケイ素繊維強化セラミックス材料は、ジェットエンジンや火力発電機のタービンなど高温部品への適用が考えられ、燃費の改善やエネルギー効率の向上が期待されている。


炭化ケイ素繊維(SiC 繊維)は1975年に
東北大学の矢島聖使教授などにより開発された。

ケイ素を含むポリカルボシランを高温で蒸し焼き(熱酸化)することにより不融化処理し、その後、1200~1500℃で焼成する。

普通に熱酸化するだけでは強度が高温で低下するが、その原因が、不純物として混入する酸素により繊維が部分的に熱分解することであることが分かった。

東北大学と日本原子力研究所では、不融化処理に当たり、電子線などの放射線を使い、繊維内への酸素の混入を減少させた。

日本カーボンでは、新技術開発事業団の助成を受け、原研との共同研究の後、1983年に「ニカロン」、1995年に「ハイニカロン」の生産に成功した。

  Nicalon Hi-Nicalon Hi-Nicalon Type S
酸素含有率(Wt%) 12.0 1.0 0.8


別途、宇部興産では、ケイ素にチタン(又はジルコニウム)を加えたセラミック連続繊維、チラノ(Tyranno)繊維を開発した。

開発当時の炭化ケイ素系繊維は、非晶質構造から成る繊維であったが、繊維の結晶化を抑制するため、東北大と宇部興産の共同研究で、チタン等の第二金属を添加した。

半導体グレードと耐熱グレードを扱っており、耐熱グレードでは二次加工品(各種織物の他、チョップ状繊維、フェルト、セラミックペーパー等)も提供する。

ーーー

GEとフランスのSafran は、1974年に50/50 JV のCFM International を設立、小型機向けとしてはこれまでにない革新的なテクノロジーが採用された航空機エンジン「LEAP」の共同開発を進めてきた。

「LEAP」は  小型機向けとしては、 下記のテクノロジーを採用している。
    ・ 軽量で耐久性の高い素材
    ・ 最先端の航空力学に基づく設計技術
    ・ 業界最高水準の環境技術など

日本カーボンは「ニカロン」の供給に向け、高圧タービン用のセラミック・マトリックス複合材(CMC )のテストに協力し、採用された
LEAP エンジンは、高熱部にCMC 部品を使用する世界で初めての民間航空機エンジンとなる。

LEAPエンジンは 2016~2017年に運行開始予定の下記に搭載される。
    LEAP-1A:エアバスA320 neo向け
    LEAP-1B:ボーイング737 MAX (独占提供)
        LEAP-1C:COMACの新型C919(独占提供)

ニカロンの需要は今後10年間で約10倍以上の急拡大が見込まれている。

日本カーボンとGE/Safran は、今後見込まれる需要増加に対応する形でニカロンの安定供給を確保し更に事業を拡大するためには、JVを設立して3社共同で事業を行なうことが最善であるとの結論に達し 、2012年4月に NGS アドバンストファイバーを設立した。

社名 NGSアドバンストファイバー株式会社
資本構成
日本カーボン  50%
GE  25%
Safran  25%
設立 2012年4月
工場 富山市
日本カーボンから新会社にニカロン事業を事業譲渡


今回、生産能力増強のため、第二工場の建設を決定したもの。


 


DSMは9月3日、世界最大手のエタノール生産会社 POETとの合弁会社「POET-DSM Advanced Biofuels, LLC」が農業廃棄物を原料とする先進型バイオ燃料(セルロース系エタノール)の商業生産を開始したと発表した。

オランダ国王や米農務長官、エネルギー省副次官、アイオワ州知事などの列席のもと、アイオワ州 Emmetsburg の米国初の商業規模の生産工場「Project LIBERTY」の開所式が開催された。

Project LIBERTYの概要は以下の通り。

セルロース系エタノールの年間生産量 2,000万ガロン(将来的には2500万ガロン)
LIBERTY生産のセルロース系エタノールの特徴 ガソリンと比較し、85-95%の温室ガス削減
農業廃棄物の年間購入量 2,000万ドル分 ⇒農業者への追加収入となる。
農作地における農業廃棄物の排除量 1エーカーに対し約1トン (25%相当)
農業廃棄物年間消費量 285千トン(半径45マイルの地域から回収)
アイオワ州への貢献 20年間で244億ドルと推計

* 1ガロンは3.785リットル

セルロース系エタノールは、一般的なバイオエタノールと違いトウモロコシの廃棄されていた非可食部(穂軸、葉、殻や茎など)を原料とするため、農業廃棄物問題の軽減だけでなく、食料供給問題との競合の心配もない。

トウモロコシの農業廃棄物を集め、セルロースを30種の酵素と酵母で糖分に分解し、その糖分を微生物によりバイオエタノールへと変換する。

ーーー

POET-DSM Advanced Biofuels, LLC はDSMとPOETの両社の50/50JV。

POETは世界最大手のエタノール生産会社の一つで、設立から25年の歴史をもち、27の生産拠点で年間で16億ガロンを超えるエタノールと、高タンパク質動物用飼料を生産している。

1987 年にトウモロコシ農家のBroin家によって設立され、当初は Broin Companies と称した。

DSMとPOETは別々にセルロース系エタノールの技術開発に取り組んできた。

POETは2008年11月に、サウスダコタ州 Scotlandにある同社研究センター内にパイロット・プラントを稼働させた。
農業事業者と協力して、トウモロコシの非可食部を圧縮梱包、運搬、貯蔵している。

DSM は、この生産技術を商業的に利用可能にするために必要な、エタノール変換効率を高める酵母剤と酵素剤の両方を提供できる唯一の企業であり、それによってセルロースエタノール開発で独自の地位を占めていた。

2012年1月23日、両社の技術を出し合い、セルロース系バイオエタノールを商業的に実証生産し、その技術を第三者にライセンスする50/50出資のJV、POET-DSM Advanced Biofuels, LLC を設立することが発表された。

アイオワ州 Emmetsburg の既存のコーンエタノール工場の隣接地にPOETが建設中のProject LIBERTYをJVに移して開発を進め、完成させた。
総工費は2億5千万ドルとされる。

エネルギー省は工場の設計、建設、バイオマスの回収、インフラなどのコストなどで1億ドルの支援を行い、アイオワ州も20百万ドルの支援を行った。

このバイオ燃料生産技術は、ライセンス化し、世界的に広めていく予定で、POET-DSM Advanced Biofuels では、バイオエタノール販売とライセンス収入により、2020年までに累計2億千万ドルの純売上高を見込んでいる。

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米国のこれ以外の主なセルロースエタノールの開発計画は以下の通り。(単位は百万ガロン/年)

  立地 原料 能力
 
Abengoa Bioenergy US Holdings
(スペインの多国籍企業)
Hugoton, KS 麦わら 25
 

BlueFire Renewables
(旧称 BrueFire Ethanol)

Fulton, MS 間伐材、都市ゴミなど 19
DuPont Biofuel Solutions Nevada, IA Corn stover 30
Fulcrum BioEnergy Reno, NV Municipal solid waste 10
Mascoma / Valero Kinross, MI Wood waste 20

 





中国の独占禁止法当局は9月11日、VolkswagenとChryslerの販売会社が独禁法に違反したと認定し、罰金を科すと発表した。

Folkwagenと第一汽車(FAW)のJVのFAW-Volkswagen Sales Co は湖北省価格管理局により、2013年売上高の6%相当の 248.58 百万元(約42億3千万円) の罰金を課せられた。高級車Audi を販売するディーラー7社も、売上高の1~2%に相当する合計 29.96百万元の罰金を課せられた。

一方、Chrysler Group China Sales Ltd は上海市発展改革委員会により、売上高の3%相当の31.68百万元(約5億4千万円)の罰金を課せられた。同社のディーラー3社は合計で2.14百万元の罰金となった。

VWの販売会社は高級車Audi について、2012年から湖北省の販売店10社に対し新車価格や補修部品の価格を引き下げないよう指示した。
Chrysler も2012〜14年にわたり、上海市内の販売店に同様の指示をした。

会見の席上、新車などの価格を巡り広東省で日系自動車メーカー1社を調査していることを明らかにした。
Daimlerに対しても近く調査と処罰内容を公表するとした。

中国当局は自動車業界の独禁法調査を進めており、国家発展改革委員会は8月20日、価格カルテルを結んだとして日本の自動車部品メーカー10社に中国の独禁法違反事件で過去最高額の総額12億3540万元(約200億円)の罰金処分を科した。

2014/8/20    中国が日本の自動車部品メーカー12社にカルテルで制裁金


中国進出企業の間では、中国当局が独禁法を国内産業保護のための「外資たたき」に利用しているとの懸念が強まっている。

これに対し、李克強首相は天津の"Summer Davos"の席上、これを否定した。
国家発展改革委員会が調べた独禁法違反事件で外国企業は10%に過ぎず、「中国のドアは開いており、閉じられることはない。中国の開放政策について心配することはない。独禁法調査の増加は政府による管理の透明性が改善された結果であり、これらは法に従った透明で公正なもので、長期的に見て開放に役立ち、外国からの投資を更に呼び込むこととなる」と述べた。

国家発展改革委員会では、これまで335件の独禁法違反案件を調べたが、そのうち外国企業は10%の33件に過ぎず、残りは全て国内の企業や団体が関係するものであったとしている。

ーーー

これまでの主な案件は下記の通り。

2011/11

中国の製薬会社2社に合計で約110万ドルの罰金を科した。

2011/11/18 中国が価格カルテルを摘発

2013/1

LG電子、サムスン電子など韓国、台湾の液晶メーカー6社がカルテルを結んで液晶パネルの販売価格を不当につり上げていたとして、総額353百万元(約49億円)の制裁金を科した。

2013/1/9  中国政府、価格カルテルで外資に制裁金

2013/2

中国酒のトップメーカーの四川省のWuliangye (五粮液) と貴州省のKweichew Moutai (州茅台)に対し、価格カルテルで総額449百万元の罰金を課した。

2013/3/2  中国、中国酒メーカーに価格カルテルで罰金

2013/8

粉ミルクを巡る競争阻害や卸売業者に対する最低販売価格の制限などで、Mead Johnson など6社に合計 670百万元の罰金を課した。
明治など3社は「
自発的に報告し、重要な証拠を提供し、かつ自発的に改善を行った」ため、
処罰の対象外とされた。

別件で、上海市高級人民法院はJohnson & Johnsonに対し、規定価格以下で販売したことを理由に代理店契約を取り消したのは独禁法違反として、旧代理店の北京鋭邦涌和科貿に賠償金530千元を支払うよう命じた。

2013/8/9   中国で販売価格を巡る2つの独禁法違反事件

国家発展改革委員会は金宝飾品のカルテルで、業界団体の上海黄金飾品行業協会に50万人民元、老鳳祥など上海の5店舗に合計1009万民元の罰金を科すと発表した。罰金額は2012年売上高の1%に相当する。

2014/8

2014/8/20    中国が日本の自動車部品メーカー12社にカルテルで制裁金

2014/9

中国国家発展改革委員会はセメントの価格カルテルをめぐり、吉林亜泰集団水泥銷售有限公司、北方水泥有限公司、冀東水泥吉林有限責任公司に合計1億1439万元の罰金を課するよう、吉林物価局に指示した。

2013年3月以来、地方のセメント業界に対する独禁法違反の調査を進めており、新たに罰金を科されるセメント企業が出てくる可能性もある。

 

 

 

米エネルギー省は9月10日、三井物産と三菱商事が輸入契約を締結しているLNG輸出プロジェクト Cameron LNGに対し、FTA非締結国向けのLNGの輸出の最終承認を与えた。

輸出承認は日量1.7Bcf の天然ガスを20年間となっている。年間ベースでは1200万トンの輸出枠となる。

LNGの輸出手続きには次の2つが必要である。

1)連邦エネルギー規制委員会(FERC: Federal Energy Regulatory Commission)が行うLNG 輸出施設の建設・操業承認
    環境法や諸規則で求められるレビュー(National Environmental Policy Act review:NEPA review)

             約20もの連邦及び州の組織が関係しており、時間がかかる。

2)エネルギー省が行うNatural Gas Act of 1938 に基づく許可
    FTA締結国向け、非締結国向けに別個に承認

エネルギー省はこれまで、1)の承認を待たずに、2)の仮承認を行ってきた。
Cameron LNG についても、2014年2月11日に仮承認をしている。

2014/2/13    米、日本向けLNG輸出 3件目を承認 

今般、1)の承認を得て、最終輸出承認を与えたもので、2件目となる。

FTA 締結国向けのLNG の輸出プロジェクトとしては最初となるSabine Pass プロジェクトの事例でも、FERC の承認取得後、再度DOE が最終承認を付与している。

ーーー

これまでの Natural Gas Act of 1938 に基づく非FTA締結国向けの輸出承認は 6ヶ所7件(Freeport 追加を含む)となっている。

2014/3/27 米エネルギー省、西海岸からの非FTA締結国向けLNG輸出を承認

エネルギー省は2014年5月29日、FTA非締結国に対するLNG輸出承認手続きを変更する案を発表した。
今後は、NEPA reviewが完了して後に初めて、申請を審査し、最終的に決定する案を提案した。

2014/6/6  米国エネルギー省、LNG輸出認可手続きを変更、今後の承認は遅れる見込み 
 

ーーー

三井物産と三菱商事は2013年5月17日、Sempra Energyとの間で、Cameron LNGに関する天然ガス液化加工契約及び合弁会社設立契約(液化事業への参加)を締結したと発表した。 

三菱商事は日本郵船とのJVで参加、他にGDF Suezも参加する。
年間400万トンx 3基の設備の1基ずつを三井、三菱、GDFSが委託することとなる。


 2012/4/20 三菱商事と三井物産、米国産LNGを輸入へ

Cameron LNGはFTA締結国向けのLNG輸出許可を2012年1月に受けており、非締結国向けの条件付輸出許可を2014年2月に取得、最終許可が10月までに下りる見通しがついたため、各社は2014年8月6日に最終投資判断を行った。


Cameron LNGは同日、
国際協力銀行並びに、日本貿易保険による保険を融資の一部に付保する市中銀行団と、本事業向けに総額74億米ドルのプロジェクトファイナンスによる融資契約を調印した。

同社はルイジアナ州ハックベリーのLNG輸入基地を輸出基地へと転用する為、新たに年間1,200万トン(400万トン×3系列)の天然ガス液化関連設備を建設、 2018年からの商業生産開始を予定している。

東北電力は三菱商事から30万トン、GDF Suez から27万トン、合計 57万トンを購入する。
東京ガスは2014年7月、三井物産から年間52万トンを購入する契約を締結した。

ーーー

米エネルギー省は9月10日、Cameron LNGに加え、Crowley Maritime Corp. の子会社のCarib Energy LCにも FTA非締結国に対するLNG輸出の最終承認を与えた。


フロリダ州Martin Countyの液化設備で 日量 0.04 Bcf 相当の天然ガスを液化し、承認を受けたISO LNG container を使って20年間輸出する。

同社は既にFTA締結国に対する25年間の小規模LNG輸出ライセンスを受けており、日量 0.03Bcf 相当のLNGをカリブ海や南米諸国に輸出している。
(米国はチリ、コロンビア、パナマ、ペルー、コスタリカ、エルサルバドール、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、ドミニカの各国とFTAを締結している。)

 


 

訪ロ中の中国の張高麗副首相は9月1日、Putin大統領とともにヤクーツク近郊で中露天然ガスパイプライン "Sila Sibiri"(Power of Siberiaのロシア側の起工式に出席したが、起工式に先立ち、ヤクーツクでPutin大統領と会談した。

会談でPutin大統領はRosneftが開発しているロシア第二位のVankor油田(日量44万バレル)の権益を"Chinese friends"に売却することを提案した。「Vankor 油田は最大の油田で将来性もある。外国のパートナーを入れるのには慎重だが、Chinese friendsに対してはなんら制限を加えていない」と述べた。

アナリストは、CNPC やSinopecが売却先で、Rosneft は最大49%の権益を40~50億ドルで売却するのではないかと見ている。

GazpromとCNPCは本年5月21日、上記のパイプラインで送る天然ガスの供給契約(2018年から30年間にわたり毎年380億m3)を締結している。

 ウクライナ問題で欧米がロシアに制裁を加えており、米国は7月16日にRosneftも制裁対象に加えた。
そのなかで、ロシアは中国との関係強化を図っている。

ーーー

ロシアと中国は2009年2月、政府間協定を締結し、中国開発銀行がロシア国営石油会社 Rosneft に150億ドル、東シベリア太平洋パイプラインを運営するTransneftに100億ドルを低利で融資する見返りに、Rosneft は2011年から20年間、毎年15百万トンの原油の供給を行うこととなった。

極東アムール州のSkovorodinoから中国の大慶を結ぶパイプラインを完成させ、Taishet からの太平洋パイプラインと中国国内のパイプラインを結んだ。

2009/7/22  CNPC、ロシアからの原油用に遼陽市の製油所を拡大

西シベリア北東部のVankor 油田は「北極パイプライン」で太平洋パイプラインに直結し、中国への供給油田の一つとなっている。

中国がVankor 油田の権益を持てば、供給の安定性を強化することとなる、

「北極パイプライン」はVankor油田とPurpe を結ぶVankor-Purpe パイプラインと、建設中のZapolyarnoye油田とPurpe を結ぶpolyarnoye-Purpe パイプラインの総称で、Purpe 以南の既往のパイプラインのショートカットとして建設中のPurpe-Samotlor パイプラインもこの一部をなす。




ソース http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/3/3711/1012_out_j_m_ru_arcticpipeline.pdf

 

 

 

 

経済産業省は9月8日、米アラスカ州天然資源省との間で、同州産のLNG調達に向けた覚書を交わした。

アラスカでは北部の天然ガス田で産出されるガスを南部で液化する計画が2023年にも始まるが、日本側は日本の需要見通しや アラスカ計画への日本企業の投資に対する政府の支援の構想などを情報提供し、アラスカ側はLNG計画の進捗状況などの情報を提供する。

経産省は日本の総合商社やプラントメーカーがLNG基地建設に出資や参加をする際には金融面で支援する。ガスを調達する事業費に最大75%の債務保証をつけられる制度や、権益への出資額の半分を肩代わりする制度の活用も検討する。

ーーー

米国ではNatural Gas Act of 1938 により、天然ガス輸出入にはエネルギー省の許可が必要とされており、輸出許可の判断基準には公共の利益に反するか否か、輸出先国で内国民待遇が与えられるかどうかがある。

米国は輸出承認で米国とFTAを締結している国とそれ以外で差をつけている。

FTA非提携国向け輸出については、2011年5月にCheniere Energyが承認を得るまでは、唯一の例外は本土48州に輸送不可能だったアラスカのKenai LNGの輸出だった 。

Kenai LNGはアラスカ州南部のCook入り江のKenai半島の天然ガスをAnchorageの近くのNikiski で液化しLNGにするもので、連邦政府が1967年4月に日本向け輸出を認可、1969年に輸出を開始し、以降、年間約100万トンのLNGが中断されることなく輸出された。
売り手は、Phillips/Marathon、買い手は東京電力と東京ガスである。

しかし、輸入開始から40年以上が経過し、Cook入り江のガス田の埋蔵量・生産量が大きく減退し、また液化基地自体も老朽化した。

2014年4月の認可期限切れー再認可で、Conoco Phillipsが少量の生産、輸出に当たっているが、KenaiのLNGは寿命を迎えている。

今回輸入が計画されているのは、アラスカ北部のNorth SlopeのPrudhoe 湾等の天然ガスである。

North Slopeには35兆立方フィートのガスの確認埋蔵量を含む200兆立方フィート以上のガスの資源があると言われている。
 
ノースロープ地域のガス・石油確認埋蔵量
  石油埋蔵量 ガス埋蔵量
Prudhoe Bay 30.0億バレル  24.5TCF
Kuparuk River 12.5億バレル   1.2TCF
Point Thomson 0.3億バレル   8.0TCF
NPRA
(National Petroleum
Reserves - Alaska)
0.2億バレル    -
その他 19.5億バレル   1.7TCF
合計 61.5億バレル  35.4TCF


North Slopeの原油は1975年-77年に建設されたアラスカ縦断原油パイプライン(Trans Alaska Pipeline)でValdez まで運ばれ、ワシントン州やカルフォルニア州内の石油精製所で精製されている。アラスカ州内にもいくつかの小規模の精製所がある。

しかし、原油パイプラインを天然ガスパイプラインへ転用することは出来ない。

原油は+60に加熱され、永久凍土地域では融解を防止するために地上敷設されている。
天然ガスは冷却されるため、地下埋設が原則となる。

このため天然ガスは用途がなく、原油採掘で随伴するほぼ全量(ピーク時にはLNG換算で年間6000万トン分)が油層圧力維持のため に油層内に再圧入された。 

North Slopeの大油田地帯は、最盛期の1980年代末には日量200万バレルもの大生産量を誇ってきたが、生産開始から約40年となり、現在では約4分の1の日量50万バレル程度まで大きく減退してきている。

このため、随伴天然ガス全量を再圧入する必要がなくなり、これを販売して収益を得ようという機運が高まった。
ガス埋蔵量の約35兆立方フィートは、年間3500万トンのLNGを20年以上にわたって供給できる量である。

2008年の米大統領選挙で共和党の副大統領候補となったアラスカ州の女性知事Sarah Palin はNorth Slopeの天然ガスを米国本土のマーケットに輸送する Alaska Gas Pipeline の建設に力を入れた。

天然ガスをAlaska Highway 沿いにカナダのAlberta まで送り(全長2,000 km)、そこから既存のTransCanada のパイプラインで米国各地に送るという壮大な計画である。

Palin知事は、知事就任直後のアラスカ州議会 (2007年1月から開催) にガスパイプライン建設業者にインセンティブを与え、建設を促すためのAlaska Gasline Inducement Act を提出し、法案は可決された。

ガスパイプライン建設業者を募る一般公募が行われ、応募した5社のなかからTransCanadaが選ばれた。

2008/9/8 Governor Sarah Palin とAlaska Gas Pipeline

しかし、その後のシェールガス革命の影響を受けて、北米の天然ガス価格が大幅低下し、米本土までのパイプライン計画は頓挫した。

ーーー

行き場をなくした天然ガスを液化して輸出しようというのが現在のAlaska LNG projectである。

計画しているのはNorth Slopeの主要生産者であるExxonMobil、BP、ConocoPhillipsの3社とカナダのパイプライン業者のTrans Canadaである。

North SlopeからNikiski 港まで直径42 inch のガスパイプライン(800マイル)を建設 し、天然ガスをNikiski液化してLNGとし、輸出する。
LNG
は年1,500万トンから1,800万トン 生産する計画で、今のところ、2023年の生産開始を予定している。

当初はTrans Alaska 原油Pipelineに沿ってValdezまでのパイプラインを計画したが、2013年10月に既存のLNG基地があるKenai半島のNikiskiに変更された。

ConocoPhillipsが保有している液化基地の老朽化による取り壊しで、その敷地が空くこと、枯渇ガス田に余分なCO2を処分できることなどが理由である。

ただし、新プロジェクトは液化規模が、十数倍大きくなるので、大幅な敷地・航路・港の拡張が必要になる。

総事業費は450~650億ドルとみられている。

ラスカ州内のパイプライン建設に伴う先住民の土地問題は、アラスカ州の場合すでに解決済みで 、既存の石油パイプライン・ルートに基本的に同じなので、環境などに大きな問題は予想されない。

4社は2014年1月にアラスカ州政府との間で覚書を締結、州政府も出資すること、設計や認可手続きを2年間で実施することなどを決めた。


7月にはAlaska LNGは米国エネルギー省に年間20百万トンのLNG(天然ガスで日量25億立法フィート)を20年間輸出する計画の認可申請を行った。

9月5日には米国連邦エネルギー規制委員会に、計画の認可を得るための環境・安全レビューの開始の申請を行った。

ーーー

このLNGは以下の利点を持つ。

・本土のガス需給に関係しないため、輸出許可の取得が容易と考えられる。

・大半が既に再圧入されている随伴ガスなので、生産コストが非常に安い。

LNG の日本までの輸送距離はロシアを除いてアラスカが最も近距離(日本・オーストラリア間の約半分の距離)であり、輸送コストが低廉である。

日本向けLNG運賃 ($/百万BTU)  資料:Platts LNG Forum, Tokyo 2012/9/25  

  Kirimat(カナダ西海岸)   1.24  アラスカの場合、これよりも遥かに近い。 
  US Gulf Coast        2.96  
  Cove Point(東海岸)   3.07  
  Gordon(豪)   1.17  
  Gladstone(豪)   1.21  
  Ichthys(豪)   1.23  

・近距離により LNG 輸送船の稼働率が上がるため、船舶数も少なくて済む。

・日本までの途中にホルムス海峡や、パナマ運河、あるいは東アフリカ沖、南シナ海のような閉塞海域や危険海域がない。

 

 

 

2010年4月20日にルイジアナ州ベニス南東約84キロで掘削中の海洋掘削プラットフォームDeepwater Horizon rig が爆発し、大量の重油が流出した。

米政府による水質浄化法(Clean Water Act)に基く民事訴訟の裁判で、New Orleansの District Court のCarl Barbier 裁判官は9月4日、BPに 「重大な過失」(gross negligence )と「故意の不法行為」(willful misconduct)があり、これが大量流出の原因となったとし、BPは水質浄化法によるバレル当たり4,300ドルの罰金に値するとの判決を言い渡した。

合わせて、リグのオーナーで掘削作業を行ったTransoceanとセメント作業を行ったHalliburtonに対しても 「過失」(「重大な過失」ではない)があったとみなした。

責任割合について、判事は、BPが67%、Transoceanが30%、Halliburton が3%と認定した。

水質浄化法では原油の流出量 1バレルに対して、1,100ドルの罰金が決められている。
但し、重大な過失による場合は、罰金は4,300ドルとなる。

今回の判決が確定すると、BPは流出量の67%に対し、バレル当たり4,300ドル、他2社は その30%と3%に対しバレル当たり1,100ドルの罰金となる。

BPでは流出量320万バレルとし、重大な過失なしとしてバレル1,100ドルを適用し、35億ドルを引き当てている。
他方、政府は流出量を490万バレルとし、
そのうち420万バレルはBPの責任だとしており、流出量そのものに大きな差がある。

なお、規則では回収努力などを考慮して減額されることとなっている。

仮に流出量を政府主張の490万バレルとすると、罰金は以下の通り。

 Transocean  30% @1100ドル→16億ドル 和解済み(後述)
 Halliburton  3% @1100ドル→1.6億ドル
 BP 67% @4300ドル→141億ドル 

 但し、BPの実際の負担は当時の権益率の65%相当の92億ドルとなる筈。
 
25%分の35億ドルはAnadarkoに請求できる。
 三井石油開発の負担分の10%の14億ドルは、三井が罰金を払って政府と和解しているため(後述)除外される筈。

具体的な罰金額については、2015年1月以降に審理する見通し。

これに対し、BPは9月4日に下記の声明を発表した。

BPはこの決定に強く反対し、控訴する。

裁判で示された証拠からは「重大な過失」「故意の不法行為 」との結論は出てこない。法律では「重大な過失」の証明には高いハードルがあり、このケースでは当てはまらない。公平に証拠を見ると、今回の誤った結論は出ない。

来年1月からの罰金を決める審理を通じて、バレル1,100ドルの適用が正しいことを示す予定である。

ーーー

この事故の当事者は下記の通り。このうち、青色の各社が水質浄化法の責任を問われた。

鉱区Mississippi Canyon 252の権益保有者

 ・BP    65% (Operator)
 ・(Anadarko)    25%
 ・MOEX(三井石油開発)    10%


Deepwater Horizon rig 関連
 ・設計:R&B Falcon
 ・建設:韓国の現代重工業
 ・所有:
Transocean
  ・リース:
BP

  ・コントラクター 
   
Transocean:掘削作業
   
Halliburton:セメント作業(井戸内、または井戸と鉄管との間のセメント作業)
   
M-I SWACOSchlumbergerSmith InternationalJV):Drilling Fluid (mud)サービス

 ・Blow Out Preventor(BOP)の製造:Cameron International Corporation

ーーー

各社のこれまでの対応は以下の通り。

1)三井石油開発

2011年5月、BPとの間で和解した。
三井はBPに
10億6500万ドルを支払い、水質浄化法を除く全ての負担をBPが肩代わりする。

2011/5/20 BPと三井石油開発、メキシコ湾原油流出事故損失負担で和解 

三井は2012年2月、米司法省、Coast Guard、EPAと和解した。
水質浄化法に基づき70百万ドルの罰金を支払うとともに、環境保全のための土地買収の為、少なくとも20百万ドルを支払う。

2012/2/20  メキシコ湾原油流出事故で三井石油開発が米政府と和解

BPは水質浄化法に基づく罰金のうち、10%(当時の三井の権益保有率)を、和解済みとして免除を要求すると思われる。

2)Anadarko

2011年10月、BPとの間で和解した。
BPに対し現金で40億ドルを支払い、水質浄化法を除く全ての負担をBPが肩代わりする。

2011/10/19   BP、メキシコ湾原油流出事故でAnadarko Petroleum と和解 

BPは水質浄化法に基づく罰金のうち、25%(当時の権益保有率)をAnadarkoに請求すると思われる。

3)Transocean

2013年1月、司法省と和解した。
 刑事上の罰金4億ドル
 
水質浄化法での民事上の司法取引で 10億ドル

2013/1/8 Transocean Deepwater Horizon 事故で罰金14億ドル支払い

4)Halliburton

2014年9月2日、同社に対する損害賠償訴訟を行った原告の大半と和解した。
2年間に3分割で合計11億ドルを支払うもの。

今回、「重大な過失」とされなかったことで、残りの原告とも和解できると見ている。

同社は事故対応で13億ドルを引き当てている。

5) BP

BPは2012年3月、個人や企業を原告とする訴訟の併合審理手続きで、原告側の運営委員会との間で和解に達した。
和解で払われる総額は約78億ドルで、全額が被害補償のための200億ドルの基金から払われる。

2012/3/5 BP、メキシコ湾岸原油流出事故で漁業関係者などと和解 

BPは2012年11月、司法省によるすべての刑事訴訟で和解 、米証券取引委員会(SEC)とも和解した。
和解に伴う支払額の合計は4,525百万ドルで、米国史上最大額。

水質汚染防止法に基づく民事訴訟や天然資源の搊害賠償、過去の和解に含まれない個人による請求はこれに含まれない。

なお、BPはMacondo wellの共同所有者及びコントラクターと和解し、下記の金額を受け入れている。  

  三井石油開発    10.65億ドル
  Anadarko   40億ドル
  Cameron   2.5億ドル
  Weatherford   0.75億ドル

2012/11/17  BP、Deepwater Horizon事故に関する米政府の全ての刑事訴訟で和解 


BPでは2014年6月末時点での事故関連損失を下記の通りとしている。
水質浄化法の罰金により、これが更に膨らむ可能性が出てきた。

訴訟、和解のコスト 258.7億ドル
流出対応コスト 143.0億ドル
水質浄化法罰金引き当て 35.1億ドル
環境関連コスト 30.3億ドル
その他コスト 19.4億ドル
(小計) 486.5億ドル
戻入 -56.8億ドル
差引合計 429.7億ドル

 


  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

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