「no」と一致するもの

韓国の産業通商資源部は2013年12月5日、インドネシアのバリ島で開催された韓国と豪州との自由貿易協定(FTA)交渉が実質的に合意したと公表した。

2014年の上半期までに批准したいとしており、発効すれば豪州は韓国と11番目のFTA協定国になる。

韓国は8年以内に全タリフラインの90.8%の品目を関税撤廃し、豪州は8年以内に全タリフラインを撤廃する。

韓国の残りの品目(9.2%)については、コメ、粉乳、果実(リンゴ、梨、柿など)、大豆、ばれいしょ、水産物(カキ、明太子など)など171品目 (1.4%分)は除外、牛肉などの492品目は10年以上かけて撤廃するとした。
また、貿易救済として、韓国の牛肉、精製糖、麦、トウモロコシなどの品目にはセーフガード措置を導入する。

一方、韓国の豪州向け主要輸出品である自動車関連品目については、豪州側が中型車(1500~3000cc)と小型車(1000~1500cc)の即時撤廃、自動車部品は3年以内に撤廃する 。
 
韓国の対豪州の貿易額は、2012年の輸出額は9,269百万ドルで第12位、輸入額は22,978百万ドルで第6位となっている。
 

ーーー

韓国は米国、EU、欧州自由貿易連合(EFTA=スイス、ノルウェー、リヒテンシュタイン、アイスランド)、ASEAN10ヵ国、インド、チリ、ペルー、コロンビアなどの国・地域との間でFTAを締結しており、欧州―東アジア―米国をつなぐ「東アジアのFTAハブ」と自称している。

韓国政府は11月29日、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への「関心」を公式に表明し、事実上、交渉への参加の意思を明らかにした。

今回の豪州を含めると、TPP交渉参加の12か国のうち、8カ国とはFTAを結んでいることとなる。
(非締結は、日本、ニュージーランド、カナダ、メキシコ)
 


日本はFTA締結国の数では韓国より多いが、米国、EU、豪州と締結できていない。

  韓国 (11) 日本 (13) TPP参加国
(日本含め12)
ASEAN 物品貿易 2007年6月1日発効
サービス貿易 2009年5月1日発効
投資分野2009年9月1日発効
2008年12月から順次発効  
  シンガポール 2006年3月2日発効 2002年11月発効
マレーシア 個別には発効していないが、ASEANとして既に発効済み 2006年7月発効
タイ 2007年11月発効  
インドネシア 2008年7月発効  
ブルネイ 2008年7月発効
フィリッピン 2008年12月発効  
ベトナム 2009年10月発効
インド  2010年1月1日発効 2011年8月発効  
オーストラリア 2013/12 実質合意  ---
ニュージーランド  ---  ---
トルコ 2013年5月1日発効  ---  
米国 2012年3月15日発効  ---
カナダ  ---  ---
メキシコ  --- 2005年4月発効
チリ 2004年4月1日発効 2007年9月発効
ペルー 2011年8月1日発効 2012年3月発効
コロンビア 2013年2月21日 正式署名  ---  
EFTA 2006年9月1日発効  ---  
  スイス (EFTAとして締結) 2009年9月発効  
EU 2011年7月1日暫定発効  ---  
 

参考

米通商代表部(USTR) のCutler次席代表代行は12月12日、ワシントンの戦略国際問題研究所で開かれた「韓国のTPP参加」というセミナーで、「韓国はTPP参加に先立ち、韓米自由貿易協定(FTA)履行に関する懸念事項から解決する必要がある」とし「議会と利害当事者が心配している韓米間の懸案」として、▼原産地表示をめぐる論争▼金融サービス分野の資料共有▼自動車分野の非関税障壁▼有機農製品に対する認証--の4つを列挙した。

「韓国の行き過ぎた原産地認証要求でFTAを締結しても関税による恩恵が減っている。韓国政府が問題を解決することを望む」とし「韓米FTA 2周年の来年3月15日に金融サービス分野に関する合意が発効するだけに、きちんと履行するよう保障しなければならない」と主張した。

また自動車分野に関し、「米国自動車業界は韓国が近く施行するbonus-malus(自動車の二酸化炭素排出量に基づく補助金または過怠金)制度による不利益を懸念している」と指摘した。



旭化成は世界で初めてのCO2からの非ホスゲン法ポリカーボネート(PC) 樹脂製造技術を開発、2002年6月から台湾のJVで商業生産を開始しているが、このたび、この技術を改良に成功した。

新技術では原料の一部を変えることで、これまで4段階あった工程を3段階に減らした。1工程分の設備や電気代を減らせるため、生産コストは既存技術より1割以上減らせるという。(2013/12/6 日本経済新聞)

世界のPC樹脂は全て一酸化炭素(CO)を原料とするものであり、大部分は一酸化炭素と塩素から製造されるホスゲンを原料としている。ホスゲン法はホスゲンの毒性問題や環境面での問題をもっている。

旭化成が非ホスゲン法の開発に着手したのは1977年で、1988年に実証プラントを稼働した。
エチレンオキサイドと副生CO及びビスフェノールAを原料とし、高性能のPC樹脂と高純度EGの2つの製品を高収率で製造するもの。

 

 















旭化成は、25年の歳月をかけて実用化に成功したこの独自技術を、国内でも海外でも自らは使用していない。
製造技術をPC樹脂メーカーに供与し、対価を受け取るライセンス契約を締結し、この技術を世界に展開
するというユニークな戦略を取っている。

後発の立場で参入するよりも、ライセンス契約で事業を展開した方が収益性が高いと判断したためで、「環境対応に優れた製造法として世界のPC樹脂メーカーに向けて技術を広めたい」としている。

同社のライセンス先は以下の通りで、合計能力は665千トンに達する。
同社では、
「ライセンス契約の拡大を通じ、15~20年をめどにノンホスゲン法による生産能力を100万トン以上に高め、約25%のシェアを確保したい」としている。

台湾 旭美化成
奇美実業90%、旭化成ケミカルズ10%
100千トン
第1期    50千トン  2002/6
第2期 50千トン  2006
ロシア Kazanorgsintez
タタルスタン共和国カザン市
65千トン 2007
韓国 Lotte Chemical 80千トン  
Samsung Cheil Industries 160千トン 第1期   80千トン  2008
第2期   80千トン  2012
Saudi Arabia Saudi Kayan Petrochemical
(Sabic 35%、Kayan Petrochemical 20%)
260千トン 世界最大規模
国 Daelim Industrial が建設
合計 665千トン  


旭美化成

ABS樹脂で世界No.1メーカーの奇美実業は、ABS樹脂に続く上級樹脂の事業化を希望し、旭化成はポリカーボネート樹脂(PC)の次世代製造技術の開発に成功し、その事業化の可能性を探っていた。
両社のニーズが合致し、1999年11月にJV設立で合意し、旭美化成を設立した。(奇美実業51%、旭化成49%)

2002年に第1期 50千トンが完成、2006年に第2期 50千トンが稼動、合計能力が100千トンとなった。

2004年に製品技術および工場運転技術の実証を完了し、所期の目的を達成、今後より迅速でフレキシビリティのある経営をするための最適体制を両社で検討した結果、出資比率を、奇美実業90%、旭化成ケミカルズ10%とした。

その後、旭化成はこの技術のライセンス活動への精力的な取り組みを開始した。

ロシア連邦タタルスタン共和国カザン市のカザンオルグシンテツ社(Kazanorgsintez)

2004年8月、旭化成はこの技術を高く評価した同社との間でライセンス契約の締結に至った。

カザン市に、ロシアで第1号となる年産65,000トンのPCプラントを建設し、2007年より生産を開始した。

韓国 Lotte Chemical

Lotte Chemical(旧 湖南石油化学)は旭化成から技術を導入、麗川に65千トンのプラントを建設した。
2010年に15千トンの増設を行い、能力を80千トンとした。

韓国 Samsung Cheil Industries

Samsung Cheil Industries は2006年に旭化成から技術導入を行い、2008年に麗川に第1期 80千トンを稼動させ、2012年に第2期 80千トンが完成、合計能力を160千トンとした。

サウジ Saudi Kayan Petrochemical

Saudi Kayan Petrochemical は2005年10月にSABIC 35%、Al-Kayan 20%出資で設立された。残り45%は公募した。

アルジュベイルに100億ドルを投じて、エチレン 1,350千トン、LDPE 300千トン、PP 350千トン、Bis-Phenol A  240千トン、PC 260千トン等の石化コンプレックスを建設するもので、2009年稼動を目指した。

2006/7/5  新しいサウジ石化計画スタートへ

PC能力は260千トンで、旭化成が技術を供与した。

工場建設は、スペインのTecnicas Reunidas が
Bis-Phenol A ( 240千トン)を担当、PCは韓国のDaelim Industrial が担当した。

 


Qatar Petroleumは12月8日、日本ゼオンと三井物産との間で、カタールのRas Laffan Industrial Cityでブタジエンとエラストマーのコンプレックスを建設する覚書を締結したと発表した。

3社はワールドスケールのブタジエンと合成ゴム・エラストマー計画の技術面、販売面、経済性を評価する詳細FSを実施する。

開発中のAl-Sejeel Petrochemicals Complex、Al-Karaana Petrochemicals Complexと既存のRas Laffan Olefins Company (RLOC)から原料の供給を受け、ブタジエン抽出を行い、ゼオンの最新技術を使ってSBRやポリブタジェンゴムなどのエラストマーを生産する。

調印式に出席したカタールのエネルギー・産業大臣は、カタールの天然資源に付加価値を付ける重要な一歩で、今後のバリューチェーン建設の基になると喜びを示した。

 

カタールの石油化学の概要は以下の通り。

これまではMesaieedに石油化学拠点があったが、Ras Laffan Olefins が2007年からRas Laffanでエチレンプラントの生産を始めた。
(エチレンはパイプラインでMesaieedに運ばれている。)

現在、これに加え、Ras LaffanでAl-Sejeel PetrochemicalsとAl-Karaana Petrochemicalsの2つのJVが建設中である。

既報のとおり、Ras LaffanにはShell とQatar PetroleumとのJVのPearl GTLと南アのSasolとQatar PetroleumのJVのOryx GTLがあり、ナフサも生産している。

 

 



Shellは12月5日、米国ルイジアナ州で検討していた日量14万バレルの「Gas-To-Liquid (GTL)」計画を撤回すると発表した。

シェールガスからの天然ガスを利用することを考えていたが、天然ガスは豊富にあるものの、建設コスト上昇や、長期的な原油価格と天然ガス価格及び両者の価格差(
spread)が不確かなことから中止を決めた。
建設コストは当初、125億ドル程度と見積もっていたが、200億ドル以上に膨れあがっている。

GTLは天然ガスを水素と一酸化炭素に分解後、分子構造を組み替え、ナフサ、ケロシン(ジェット燃料、家庭暖房用)、ノーマルパラフィン、ガスオイル(ディーゼルオイル)、潤滑油などを生産するもの。

安い天然ガスを原料に付加価値の高い製品がつくれること、天然ガスを産地でそのまま利用できることがメリットである。

Shell は最初の商業規模のGTL設備を1993年にマレーシアのBintuluに建設した。(日量14,700バレル)

2011年に Qatar PetroleumとのJVのPearl GTLがカタールのRas Laffanで生産を開始した。


Pearl GTLは建設費が当初計画の50億ドルから最終的には180-190億ドルまで膨れ上がったとされる。
製造能力は2系列合計で、GTLオイルが日量14万バレル、コンデンセートおよびLPGが石油換算で12万バレル、合計26万バレルとなっている。

カタールでは他に、南アのSasolとQatar PetroleumのJVのOryx GTLも日量32,400バレルのGTLを生産している。

このほか、南アのMossel Bayで国営石油会社PetroSAがSasol技術で日量36,000バレルのGTLを生産している。

ーーー

カタールでGTLを生産するShell と Sasol の両社がそれぞれ、米国のシェールオイルを利用するGTL計画を打ち出した。

ShellはVoser CEOが昨年、シェールガスで供給される安い天然ガスを利用する計画を正式に明らかにした。

Shellは本年9月に、投資額125億ドルのGTL計画の立地を同州の Ascension Parish に決めたことをルイジアナ州政府と共同で発表した。
計画を実施するかどうかは、用地評価や予備的エンジニアリング検討などにより決めるが、数年はかかるとしていた。


既報のとおり、米国の天然ガス価格は100万BTU当たり4ドル弱であるが、一般的に天然ガス価格は7ドル程度まで上昇すると予想されている。

現在は原油価格がバレル100ドル前後であるため、GTLは十分に採算に乗ると思われるが、今後、天然ガス価格が上昇(加えて、原油価格が下落)するようなことになれば採算が悪化することとなる。
GTLは輸出LNGとも競合する。

Shellはおそらく、天然ガス価格の上昇を予想、計画中止を決めたと思われる。

なお、Shellはこのほかに米国で、LNG輸出用の天然ガス液化計画と、Marcellus Shaleガスからのエタンを原料とし、Appalachia地方でエチレンクラッカーと誘導品プラントを建設することを検討している。

2013/1/30 Shell、LNG輸出用の天然ガス液化プラント建設 

2011/6/14 Shell、アパラチア地方でエチレンクラッカー建設へ

ーーー

これに対し、Sasolは今のところ、何も発表していないが、もしかすれば、同社もやめるかも分からない。

Sasolは2011年11月に、シェールガスを利用し、Lake CharlesにGas-to-liquids (GTL)プラントとワールドクラスのエチレンクラッカーと誘導品を建設するFSを開始すると発表した。

同社は2012年12月に計画がFront-end engineering and design (FEED) 段階に入ったと発表した。

・Gas-to-liquids (GTL)
  2段階で日量48千バレルの設備を2基建設する。1基は2018年、1基は2019年稼働を予定。

・エチレン年産150万トンのクラッカーと誘導品
  2017年稼働予定
  その後、立地をルイジアナ州 Westlake に決めた。

同社は本年3月に、ルイジアナ州 Lake Charlesに新しいLDPEプラントを建設することを明らかにした。
東洋エンジニアリングはSasol NorthAmericaから年産45万トンのLLDPEの基本設計を受注したと発表した。

 

 


欧州委員会は12月4日、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR:London Inter-Bank Offered Rate)など国際的な指標金利の不正操作に関し、複数の欧米金融機関がカルテル行為を実施したとして合計で約17億1千万ユーロの制裁金を科した。調査は続いており、対象はさらに拡大する見通し 。

ーーー

2012年夏に発覚したLIBOR不正操作事件は、欧米の金融業界を震撼させた大スキャンダルに発展した。

LIBORは世界の金融取引に使われる短期金利の基準値であるが、英米当局は1年以上にわたる捜査で、英国のBarclaysが2005~09年に虚偽申告を繰り返し、経済の実態とかけ離れてLIBORを上げ下げしたと結論づけた。「(LIBORを)下げろ! 3%を目指せ」と指示しているメールも見つかった。

欧州銀行間取引金利(EURIBOR)や円建ての指標金利も操作された。LIBOR不正操作の7~8割が日本円を舞台に起こっているとされる。

米欧当局は世界40前後の金融機関を調査した。

2012年6月にBarclaysは英米の当局から総額2億9000万ポンドの罰金を科せられた。

2012年12月には米英スイスの金融監督当局がスイスの大手銀行UBSに総額14億スイスフランの課徴金を求める行政処分を発表した。
UBSは2005~10年に日本を含む複数の国で組織的に不正を働いた。
金融当局はUBSの事案をBarclaysよりも悪質と判断し、罰金は3倍以上となった。

日本の金融庁は、LIBORや日本独自の東京銀行間取引金利(TIBOR)を不正に操作しようとしたとして、UBS証券に一部業務の停止命令を出した。

2013年2月、Royal Bank of Scotlandは英国金融サービス機構(FSA)に8,750万ポンド、米国商品先物取引委員会(CFTC)に3億2500万ドル、米国司法省 に1億5000万ドルのペナルティを支払うことに合意した。

2013年9月には米英当局は英国の金融取引仲介業者のICAPに8,700万ドルの罰金を科した。

10月にはオランダのRabobank が米英蘭の金融当局に合計774百万ドルの罰金を支払った。

ーーー

今回、欧州委員会はユーロ建ての指標金利の欧州銀行間取引金利(EURIBOR)と円建ての指標金利(円建てLIBORとTIBOR)についてカルテルを摘発した。

EUROについては、Barclays、Deutsche Bank、Société Générale、Royal Bank of Scotland が摘発された。

このうち、 Barclays はカルテルの存在を伝えたため、100%減免となった。(減免額は約 690百万ユーロ)
他の3行は協力の度合いにより、それぞれ減免を受けた。更に各行は決定を受け入れる(裁判に訴えない)ことで、それぞれ10%の減免を受けた。

なお、Crédit Agricole、HSBC、JPMorgan に対する調査を続けている。


円建てについては、 2007~2010年の間に1~10ヶ月間にわたる別々の7つの違法行為があったとされ、Deutsche Bank、Royal Bank of Scotland、UBS、JPMorgan、Citigroup、RP Martin (broker)が摘発された。

このうち、UBS はカルテルの存在を伝えたため、100%減免となった。(減免額は約 25億ユーロ)
Citigroup は1件のカルテルの存在を伝えたため、その分については100%減免となった。(その分の減免額は約 55百万ユーロ)

Citigroup(残りの分)と他行(JPMorganを除く)は協力の度合いにより、それぞれ減免を受けた。更に各行は決定を受け入れることで、それぞれ10%の減免を受けた。

なお、cash brokerのICAPに対する調査を続けている。

これまでの処分の概要は以下の通り。 

 

 今回の独禁法違反    行政処分
Euro 日本円 罰金合計
 千ユーロ

Reduction

罰金
 千ユーロ

Reduction 罰金
 千ユーロ

Barclays

100% 

0

  --- 0 2,900万ポンド

Deutsche Bank

30%

465,861

35%, 30% 259,499 725,360  

Société Générale

5%

445,884

  --- 445,884  

Royal Bank of Scotland

50%

131,004

25% 260,056 391,060 8,750万ポンド
325百万ドル
150百万ドル
UBS   --- 100% 0 0 14億スイスフラン
JPMorgan   ---   79,897 79,897  
Citigroup   --- 35%, 40%, 100% 70,020 70,020  
RP Martin (broker)   --- 25% 247 247  
ICAP(cash broker)   ---   --- --- 87百万ドル
Rabobank   ---   --- --- 774 百万ユーロ
合計   1,042,749   669,719 1,712,468  



 
米国エネルギー省は11月15日、Freeport LNGに対しFTA非締結国向けの輸出量の増量を認めた。


2013年5月に1.4 Bcf/d(年間900万トン)までの輸出を認めたが、今回、1.8 Bcf/d 
(年間1200万トン)への増量を認めた。

これを受け、Dow Chemicalは11月15日に以下の声明を発表した。

Dowは今回のエネルギー省の決定をチェックしている。
Dowは
FTA非締結国向けのLNG輸出承認について、慎重な、計画的な、バランスの取れたやり方を提唱する。
今回の承認で、合計承認量は約
6.7 bcf / dayにもなった。
これは現在の米国の消費量の10%にもなり、多くの米国の製造業者が適正輸出量の上限と考える。

Dowの Andrew Liveris会長兼CEOによれば、「世界中の企業が安い天然ガスを利用するため米国に投資しており、米国経済の成長と雇用創出に役立っている。米国はこの戦略資源について、今後もこれまで同様に非常に注意深く扱う必要がある。最近のデータが示すように、米国の天然ガスを大量に海外に輸出すると、消費者のエネルギー価格が上昇し、製造への投資が抑えられ、経済成長と雇用創出を妨げる」。

JP Morgan は最近、天然ガス価格は2016年までに3倍になると予想、ConocoPhillips は天然ガス価格は次の4年で30%上昇するというエネルギー省の予測をはるかに上回るだろうと予測している。
適正輸出量の上限 7.0 bcf / day に近づいた今、米国経済の利益を最大にし、悪影響を最小にするべく、エネルギー省のデータを再検討することが必要である。

FTA非締結国向けのLNG輸出について、これまでエネルギー省が承認したものと承認待ちのものは以下の通り。 
天然ガス液化設備の建設が必要なため、実際の輸出開始は2016年以降となる。

会社名 立地 概要 輸出契約
Cheniere Energy

 

Sabine Pass
(Cameron Parish, LA)
承認:2011/5
数量:2.2 Bcf/d(年間1600万トン)
期間:20年間
BG Group、Gas Natural (スペイン)、Gail(インド)、
Kogas(韓国)
承認時は韓国はFTA未発効
 
2012/2/24 米国からのLNG輸入問題 
Freeport LNG

 

Freeport
(Quintana Island, TX)
承認:2013/5
数量:1.4 Bcf/d(年間900万トン)
  
→1.8 Bcf/d (年間1200万トン)
              (2013/11承認)
期間:20年間
大阪ガス、中部電力、 BP Energy
2013/5/20 米エネルギー省、日本へのLNG輸出を許可
Lake Charles Exports Lake Charles
(Lake Charles, LA)
承認:2013/8
数量:2.0 Bcf/d(年間1500万トン)
期間:20年間
BG Group
2013/8/12 米エネルギー省、非FTA締結国向けLNG輸出で3件目の承認
Dominion Energy Dominion Cove Point
(Chesapeake Bay
 in Lusby, Md.)
承認:2013/9
数量:
0.77Bcf/d 年間525万トン
期間:20年間
住友商事(東京ガス・関西電力)、
Gail(インド)
2013/9/13 米、日本向けLNG輸出 2件目を承認
(以下 認可待ち)
Cameron LNG Hackberry, LA 数量:1.7 Bcf/d(年間1200万トン) 三井物産、三菱商事、GDF Suez
Jordan Cove LNG Port of Coos Bay, Oregon 数量:1.0 Bcf/d(年間 600万トン) 未定


米国ではNatural Gas Act of 1938 により、天然ガス輸出入にはエネルギー省の許可 が必要とされており、輸出許可の判断基準には公共の利益に反するか否か、輸出先国で内国民待遇が与えられるかどうかがある。
米国は輸出承認で米国とFTAを締結している国とそれ以外で差をつけており、FTAを結んでいない日本はガス輸入のハードルが高い。

米エネルギー省は2012年12月5日、LNGに関する報告書を発表、LNG輸出の米国経済への影響を、輸出の量、グローバルな市場状況、天然ガスコスト等々、いろいろな前提で検討したが、全てのシナリオで、LNG輸出は輸出をしない場合と比べ、ネットで経済的メリットがあるとしている。

Dow Chmicalはこれに強く反発、逆にExxonMobil等は賛成に回り、論戦が行われている。

2012/12/7 米エネルギー省、LNG輸出に向けての報告書を発表
2012/12/12 Dow、エネルギー省のLNG輸出に関する報告に反論
2013/1/30 米国の天然ガス輸出論争、激化
2013/2/5 米国のLNG輸出規制はGATT違反?

Dow Chemical は、本年に入り3件が承認され、そのうちの1件については増量が認められたため、
今後更に承認が続くことを懸念し、牽制したとみられる。

ーーー

米国の天然ガスの価格推移は以下の通り。

 ソース:http://ecodb.net/pcp/imf_usd_pngasus.html

現在、100万BTU当たり4ドル弱である。
これをLNGにして日本に送る場合、液化費用が約3ドル、輸送費が約3ドルかかり、10ドル程度になる。
(輸送費は豪州やカナダの西海岸の場合は、1.2ドル前後となる)

現在の低価格の理由は以下の通り。

1) 天然ガスは都市ガス、発電その他に使われるが、発電所建設(石炭火力からの代替)には時間がかかる。
     輸出についても、液化設備の建設が必要で、すぐには輸出できない。

2) シェールガス採掘に当たり井戸を掘る権利を土地所有者から得ているが、この権利が高騰している。
   天然ガス価格が安いからといって掘るのをやめる訳にいかない。掘るのをやめれば権利を失うことにもなる。

この結果、一時的に需要と供給がアンバランスとなり、価格が低下している。
上記の価格は十数本のパイプラインが集積するルイジアナ州のHenry Hubの価格だが、消費が少ない北部では価格ははるかに安い。

現在の価格では、ほとんどの業者は赤字とされており、GMX ResourcesはChapter 11の申請を行った。

2013/4/5  米国のシェールガス開発会社が破産法申請 

採掘により、シェールガスとシェールオイル及び天然ガス液(NGL)が出るが、土地によりガスとオイルの比率が大きく異なる。
シェールオイルが多く出るところはシェールオイル(原油価格スライド)の利益でシェールガスの赤字をカバーできるが、GMXの場合はシェールオイルが少なく、破綻した。

一般的に天然ガス価格は7ドル程度まで上昇すると予想されている。Dowは輸出を制限することで、これを抑えようとしているもの。
(この場合、日本向けのLNG価格は13ドル程度となる。現状は16ドル弱)

ーーー

現在、シェールブームで米国で石油化学計画が林立しているが、これはシェールオイル・ガスに副生する天然ガス液(NGL)から得られるエタン(及びプロパン)を利用するものである。

NGLは採掘現場のガス処理設備で天然ガスと分離され、全国で10箇所ほどあるNGL Fractionation (分別)設備に送られ、エタン、プロパン等に分離される。

エタン価格は天然ガス価格とは別に需給で決定されており、天然ガス価格の変動には関係ない。
(エタン価格も現在非常に低い水準にある。)

DowがLNG輸出に反対するのは燃料価格の高騰を恐れているものと思われる。

 

なお、Dowは以下の理由で天然ガス輸出に反対している。

製造業は米国で最大の天然ガスのユーザーであり、天然ガスを使って、他のどのセクターよりも多くの雇用を生み、より多くの価値を生み出している。
製造業で使われたエネルギーの価値は、バリューチェーンを通じて多くの高付加価値の製品をつくることにより、20倍にも拡大される。

これに対して、LNGとしてエネルギーを輸出すれば、その価値分しか得られない。

米国の新聞にこれを皮肉る意見が投稿されていた。

Dowが天然ガスの輸出に反対するのなら、米国で製造した製品は中国などに輸出せず、米国で販売して最終製品にまで加工すべきだ。
同社はレジンなどを安く中国に輸出し、中国はそれを使った安い製品を米国に輸出して米国メーカーを淘汰しているではないか。

最終製品まで米国で製造してこそ、「製造業で使われたエネルギーの価値は、バリューチェーンを通じて多くの高付加価値の製品をつくることにより、20倍にも拡大される」。

 

 

ロシア下院は11月22日、これまでGazpromにだけ認めていた天然ガス輸出を 他の企業にも認める法案を可決した。法案は上院の承認とPutin大統領の署名を経た上で12月1日に発効した。

現在のロシアの法律では、Gazpromのみが天然ガス、LNGを輸出する権利を持っているが、国内のLNG生産拠点 はサハリン南部の1つしかない。
他社がLNGプラントを建設しても、Gazpromを通してしかLNGを輸出できない。

天然ガス輸出はパイプラインを利用した欧州向けに依存しているが、2012年には欧州の景気低迷のあおりでロシアの天然ガス輸出は前年比で約9%減少した。

プーチン大統領は「ロシアが世界のLNG供給で3.6%しか占めていない」とGazpromに対する不満を示しており、2013年2月13日にLNG輸出の段階的な自由化を検討するよう政府に指示した。
プーチン大統領は2020年までに年間輸出量を現在の約1千万トンの4倍に引き上げる目標を掲げた。

自由化により天然ガス開発を促進し、日本や中国をはじめとするアジア諸国への輸出拡大を目指す。供給先の多角化に加え「シェールガス革命」で加速する米国などのLNG輸出攻勢に対抗する思惑もある。

今回の法案が通ると、ロシア第2位のガス企業 Novatek や国営の石油大手 Rosneft などは、LNGでの輸出が可能になる。
パイプラインによるガス輸出は、今後もGazpromが独占的に行う。


ーーー

プーチン大統領の輸出自由化検討指示を受け、 Novatek や Rosneft は準備を進めており、対抗してGazpromも計画をたてている。

1)Novatek
  Novatekは、ロシアの独立系天然ガス生産・販売会社で、天然ガス生産量はGazpromに次いでロシア国内2位である。

Novatekの主要株主は、プーチン大統領の旧友でもある石油トレーダーのゲンナジー・チムチェンコのルクセンブルクのファンドVolga-Resourcesが20.77% 、Gazpromが10%などとなっている。

   
  日揮は2013年4月、フランスのTechnipと共同で、Yamal LNGがロシアのYamal-Nenets自治区Sabettaで進めるLNGプラント新設プロジェクトの有償見積りおよび詳細設計役務等に係る発注内示を受けたと発表した。

Yamal LNGはロシアの天然ガス第2位のNovatekが80%、Totalが20%出資する。

Yamal LNGはYamal半島のSouth Tambeyガス田に年産1,650万トンのLNGプラントを新設する計画で、第1期550万トンを2016年末に操業、同能力の第2期、第3期をそれぞれ2017年末、2018年末に稼働させる。

同ガス田の天然ガス埋蔵量は昨年末時点で9,070億立法メートルとなっている。

2013/4/8  日揮、ロシアのヤマルLNGプラントの詳細設計役務等を受注 

   
2) Rosneft
  Rosneftは丸紅などとサハリンの天然ガスを供給源とする年産1千万トンのLNG工場の建設を計画 している。

Rosneft とExxonMobilは2013年6月 に、2011年に締結した戦略的協力協定の進展状況を発表した。

2013/6/24 Rosneft とExxonMobil、戦略的協力関係を促進 

このなかに、ロシア極東でのLNGプラント建設がある。
2013年末までにLNGプラントの立地、天然ガス液化技術、運営形態を決定するとしているが、現在のところ、プラントはサハリン1に建設する見込み。

Rosneft のSechin社長は、サハリン1計画に30%出資するサハリン石油ガス開発(SODECO;石油公団・伊藤忠・丸紅等のJV)や同じく20%出資するインドのONGC Videshを参加させる可能性があると述べた。
また、
生産能力は年500万トンを想定しており、既にこれを上回る購入希望があるという。

Rosneft は6月21日に丸紅及びサハリン石油ガス開発(SODECO)との間でLNG供給の覚書(Heads on Agreement)に調印した。
丸紅に年間125万トン、SODECOに100万トンを供給する。


サハリン1プロジェクト

事業主体 ・エクソンネフテガス社
 (米、エクソン・モービル子会社、オペレーター、30%)
・サハリン石油ガス開発(株)(通称:SODECO)
 (日、石油公団・伊藤忠・丸紅等 出資30%)
・ONGCヴィデッシュ社(インド、20%)
・サハリンモルネフテガス・シェルフ社(ロシア、11.5%)
・ロスネフチ・アストラ社(ロシア 8.5%)
投 資 額 約120億ドル以上
開発鉱区 オドプト、チャイヴォ、アルクトン・ダギ
推定可採
埋 蔵 量
①石油    約23億バレル
②天然ガス 約4,850億立方メートル

   
3)Gazprom
  資源エネルギー庁とロシア国営ガス会社Gazpromは2011年1月、ロシア東部での協力推進に関する合意文書に調印したと発表した。
   
  内容は、
・ウラジオストク周辺におけるLNG製造プラント建設に関するPre-FEED(初期設計前段階)、
・CNG(圧縮天然ガス)生産・海上輸送、
・ガス化学製品の生産
に関する共同FSを2011年末までに完了するというもの。


事業遂行のため、2010年12月6日に新会社「極東ロシアガス事業調査」が設立された。
  伊藤忠 32.5%、
伊藤忠石油開発 5%、石油資源開発 32.5%、丸紅 20%、国際石油開発帝石 10%

2011/1/21 日ロ、LNG事業協力で正式調印

   
  伊藤忠商事、石油資源開発(JAPEX)、丸紅、国際石油開発帝石(INPEX)及び伊藤忠石油開発が出資する極東ロシアガス事業調査㈱ とロシア国営ガス会社の Gazpromは2013年6月22日、ウラジオストクにおけるLNGプロジェクトに関するMOUに調印した。
   
  Gazpromは現在、サハリン2の天然ガスをサハリン南端のPrigorodnoyeにあるロシア唯一のLNG施設(サハリンエナジー所有)で液化し、日本に供給している。 

サハリン2プロジェクト

事業主体 Shell 55%→27.5%-1株
Gazprom 0%→50%+1株
・三井物産 25%
12.5%
・三菱商事 20%
10%
投 資 額 200億ドル
開発鉱区 ピルトン・アストフスコエ、ルンスコエ
推定可採
埋蔵量
①原油 10億バレル
②天然ガス 4,080億立方メートル

<石油>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬後、新設港湾よりタンカーで日本等へ輸出
<ガス>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬、液化後、LNGをタンカーで輸出

Gazpromは、LNG輸出事業の一環として、サハリンからハバロフスクを経由しウラジオストクに延びるガス輸送用パイプラインの敷設を進めている。プリゴロドノエに次ぐ国内2番目のLNGプラントをウラジオストクに建設し、LNGを輸出する計画である。

2013/6/25 伊藤忠等の日本連合、GazpromとウラジオストックでのLNGプロジェクトの覚書 

 



Dow Chemicalは12月2日、塩素事業からの撤退を発表した。

今後売却する事業は、計11地区の約40プラントで、従業員は2000名、製品の売上高は50億ドルに達する。
今後、2年以内に売却を完了させる。

具体的には下記が処分対象となる。

米国Gulf Coastのクロル・アルカリとクロル・ビニル製造設備 Plaquemine, LA & Freeport, TX
Dow Mitsui Chlor-Alkali JV (Freeport, TX)
持分
上記の付随設備 塩水その他(Freeport, TX &Plaquemine, LA)
エネルギー関連(Plaquemine, LA.)
グローバルな有機塩素(GCO) 製造設備

Carbon Tetrachloride, Chloroacetyl Chloride,
Chloroform, Methyl Chloride, Methylene Chloride,
Monochloroacetic Acid, Perchloroethylene,
Trichloroethylene, Vinylidene Chloride

Freeport, TX & Plaquemine, LA
Stade, Germany
グローバルなエポキシ事業と製造設備 Freeport, TX & Roberta, GA
Rheinmuenster, Germany
Pisticci, Italy
Baltringen & Stade, Germany
亀尾市(Gumi), 韓国
張家港市, 中国
Guaruja, Brazil

(
愛知県衣浦のエポキシ工場は停止済み)

以上の事業と設備の売却に加え、DowはFreeport, Texas の約 80万トンのクロルアルカリ設備を閉鎖する。
その分は2014年初めに稼動するダウ・三井物産JVの新設備(生産能力は苛性ソーダ約88万トン、塩素約80万トン)から供給する。

注)Dow Mitsui Chlor-Alkali JV:

三井物産とDowは2010年7月、両社が折半出資でテキサス州フリーポートで電解事業を行う合弁事業の設立に関する合弁契約書を締結、12月にJVを設立した。三井物産は約1.4億ドルを出資。

社名:Dow-Mitsui Chlor-Alkali LLC
能力:苛性ソーダ約88万トン、塩素約80万トン
操業:Dow
操業開始:2014年初め
製品:折半引取り
    三井物産は塩素はDowに委託してEDCにし、アジアで販売、
    苛性ソーダはDowを通じて米国で販売

  2010/7/2 三井物産とダウ、合弁でテキサスで電解事業 


同社は現在、「上流」の基礎素材から、景気変動に左右されず、利益率の高い「下流」の製品と技術に軸足を移している。

これまでに100億ドルもの事業を処理してきた。
主なものは下記の通りで、2009年頃の売却は、Rohm & Haas買収資金を確保する目的。

 2009年 Morton Salt
 2009年 
Total Group との合弁のオランダの石油精製 Total Raffinaderij Nederland NV のダウ持分(45%)
 2010年 Styron

 2011年 PP事業
 2013年 PPライセンス・触媒事業

   他方で戦略的成長分野に大規模投資を行った。
    
     2009年 Rohm & Haas 買収


     
シェール革命に対応したGulf Coastでの投資サウジでのSadara Chemical、その他


今回の対象となる塩素関連事業は過去数十年にわたり貢献してきたが、ダウが撤退しようとしている市場である。

同社の塩素チェーンは今後、以下の通りとなる。


Liveris CEOは、「下流のポリウレタンや農薬の原料用の塩素は保持する。コモディティ部分を売却する」としている。


これまでに下記の経緯があった。

2004年  テキサス工場のEDCプラント1系列を2005年末までに停止し、VCMの生産も縮小すると発表した。

それまで Dow はShintechが使用するVCM全量を特別な価格フォーミュラで供給しており、共存共栄の関係にあった。

2004年12月、信越化学はLouisiana 州 Plaquemine に塩素 45万トン、VCM 75万トン、PVC 60万トンの一貫生産を行う計画を発表した。
更に2007年5月には、テキサス州で電解工場(塩素50万トン)とVCM工場(825千トン)を建設する許可申請を同州環境庁に提出した。

これにより、DowとShintechの関係が薄らいだとの見方が出た。

しかし、Dowは2008年1月にテキサス州フリーポートでクロルアルカリ設備("Chlorine 7 ")の建設を開始すると発表、同時にShintechとのVCMの長期供給契約の更新を発表した。

Liveris 会長兼CEOは、「塩素はダウの機能製品事業の重要な原料で、ポリウレタン、エポキシ、特殊化学品、特殊プラスチック、農業化学品の将来の成長の鍵を担っている」と述べ、「この供給契約は新投資の操業を保証するもので、JVの形はとっていないものの、Shintechはクロルアルカリ事業での戦略的パートナーである」とした。
Shintechはテキサスの電解・VCM計画を無期延期とした。

2008/1/31  ダウ、テキサスでのクロルアルカリ設備新設、シンテックとのVCM供給契約更新を発表


2010年に入り、Dowと信越の姿勢に再び変化が見られた。

Dowは2009年2月に、2011年のスタートを目指すとしていた"Chlorine 7 "を経済情勢の悪化で延期すると発表した。
DowのLiveris CEOは2010年2 月
に、「信越とのパートナーシップは2011年には明らかに終了する」とし、「クロルアルカリは資本集約的事業で、ダウの大規模設備は有利であり、PVC業界とのパートナーシップも探求する。塩素でもAsset Light戦略を行う積もりだ」と述べた。

信越化学は2010年4月、Shintechがルイジアナ州PlaquemineでVCMの第2工場の建設工事を開始したと発表した。

2010/4/6  信越化学、米国でVCM増強 

三井物産とDowは2010年7月1日、両社が折半出資でテキサス州フリーポートで電解事業を行う合弁事業の設立に関する合弁契約書を締結した。

  2010/7/2 三井物産とダウ、合弁でテキサスで電解事業 


なお、
Dowは2006年にFort Saskatchewan (カナダ Alberta 州)の chlor-alkali と EDC プラントを停止している。


 

12月2日付けのWall Street Journal は、Dow Chemical が社名から Chemical を外す検討を行っていると報じた。
Liveris CEO はインタビューで、同社の事業はいまや"Chemicals"(化学品) にではなく、"Chemistry"(化学反応)にリンクしていると述べた。




小泉元首相の原発に関する発言が、11月12日の日本記者クラブでの講演の以後、盛んに取り上げられている。

原発即時停止の理由は、「放射性廃棄物、核のゴミをきちんと危険のないよう保管する場所が、日本にはどこにもない」というもの。

2013/11/1   小泉元首相の「脱原発」論 


これに対する批判も多い。

安井至氏も「市民のための環境学ガイド」で述べている。

B君:しかし、小泉さんの言う「使用済み核燃料の問題」は、なかなかの難問だ。
A君:その通りですが、すでに相当大量の使用済み核燃料を抱えているので、これから多少増えたところで、本質的な差がでるとは思えないですね 。

ーーー

いろいろの資料から推定した使用済核燃料の状況は以下の通り。(残り年数以外は単位:トン) 

    貯蔵容量 貯蔵量  1回当たり取替量 同年間換算 残り年数
北海道電力  1,000 400 50

37.5

16.0

東北電力 東通 440 100 30 22.5 15.1
女川 790 420 60 45 8.2
東京電力 福島第一 2,100 1,960 140 105 1.3
福島第二 1,360 1,120 120 90 2.7
柏崎刈羽 2,910 2,380 230 172.5 3.1
日本原子力
発電
東海第二 440 370 30 22.5 3.1
敦賀 860 580 40 30 9.3
中部電力 浜岡 1,740 1,140 100 75 8.0
北陸電力 志賀 690 160 50 37.5 14.1
関西電力 美浜 680 390 50 37.5 7.7
高浜 1,730 1,160 100 75 7.6
大飯 2,020 1,430 110 82.5 7.2
中国電力 島根 600 390 40 30 7.0
四国電力 伊方 940 610 50 37.5 8.8
九州電力 玄海 1,070 870 90 67.5 3.0
川内 1,290 890 50 37.5 10.7
合計 20,660 14,370 1,340 1,005 6.3
(除く 東電・福島) (17,200) (11,290) (1,080) (810) (7.3)
日本原燃 六ヶ所村 3,000 2,945      
東電/日本原子力 むつ市中間貯蔵施設 3,000      


1) 同一原発内では貯蔵能力を融通できるとして計算。
2) 六ヶ所村の保管分の返却がない(現状通り保管)とした。

東京新聞の記事(2012年9月4日)では残り年数はもっと短くなっている。

東京電力柏崎刈羽、原電の東海第二、九州電力の玄海が特に短い。

このうち、柏崎刈羽と東海第二はむつ市の中間貯蔵施設が完成したため、これを利用できる。
但し、福島第一、第二の廃炉を進める場合、使用済み核燃料をいつまで福島のプールに置いておけるのかという問題がある。

ーーー

福島第一原発で廃炉に向け、4号機の使用済み燃料プールから核燃料の取り出しを始めた。

定期検査中だった4号機は、福島第一で最も多くプールに燃料を保管している。事故による爆発で大きな被害を受けたため、原子炉建屋の耐震性を懸念する指摘もある。

使用済燃料プール内の燃料ラックから1体ずつ取り出し、構内用輸送容器(キャスク)へ装てんして共用プール建屋のプール内へ移送し、ここで集中的に保管する。

 



住友化学は11月25日、シンガポール法人が2006~2010年にカンボジア政府の幹部2人に対し、契約受注の見返りに256,471ドルを支払う不正取引があったと発表した。

世界エイズ・結核・マラリア対策基金(
Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria)が11月14日に発表した調査報告で明らかになった。

基金の援助で行ったマラリア感染防止用の同社の防虫剤入り蚊帳 Olyset Net の契約を受注するたびに、架空のコンサルタント会社を経由して手数料名目で個人口座に見返り金を振り込んでいた。
2006~10年の間に計7回、カンボジア政府のマラリア対策組織(National Centre for Parasitology, Entomology and Malaria Control )の高官2人に対し、蚊帳の受注額の2.25~6.5%を渡した。

同社によると、不正にかかわったのは日本人ではない部長級マネジャーと部下の社員で、内部調査に対し不正な資金供与を認めたため、懲戒解雇した。

基金の発表では、住友化学シンガポールのほかに、スイスに拠点を置き、蚊帳("PermaNet")や水の濾過フィルター("LifeStraw")など緊急事態や病気に対応する製品に特化した企業のVestergaard Frandsenの不正が判明した。
同社は154,241ドルを支払っていた。

両社の支払った合計410,712ドルのうち、National CentreのDirector が350,904ドル、Deputy Directorが59,809ドルを受け取っていた。

ーーー

本件で何故、住友化学が賄賂を払ったのか、不思議である。

先ず、カンボジアは基金の支援を受けて蚊帳を購入することは決まっており、供給メーカーは多くないし、Olyset NetはWHOからも使用を推奨されていることもあり、賄賂を払わなくても採用されるのはほぼ確実であろう。

Olyset Netは多くの国で採用されていることから、基金は価格を分かっているはずで、賄賂分を価格に上乗せすることは不可能と思われ、賄賂分は持ち出しになる。

 その意味では、「不正行為」であることは間違いないとして、基金に損失を与えてはいないと思われる 。
基金も "all the mosquito nets procured by that grant were provided as intended" としている。

もしかすれば、カンボジアでは、インドネシアなどと同様に、賄賂なしでは物事が動かないということなのかもしれない。 (言い訳にはならないが)

インターネットでは、カンボジアへの入国の際に賄賂がいるとか、「(交通違反の罰金の代わりの)ワイロを受け取らない交通整理員」としてプノンペン市内の男性公務員を紹介した動画が、カンボジアのフェイスブックで人気となっているとの記事が出ている。

ーーー

Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malariaは世界で毎年合計600万人以上の命を奪っているエイズ・結核・マラリアに立ち向かうために、国や政治を越えて新しい資金調達の方法を作ろう、と、2002年に設置された世界基金(本部 :ジュネーブ)で、この3つの病気に関する治療・ケア&支援、予防の各プログラムに資金を配分している。

2000年の九州・沖縄サミットでわが国が初めて感染症対策を主要議題に取り上げ、それがきっかけで設立された。

また、アナン国連事務総長が2001年4月に "call to action"を発表し、世界に行動を起こすよう呼びかけた。

これまでに151か国の1000件を超える事業に資金供与を承認しており,2012年には約33億ドルを実際に供与した。
世界基金の支援により,設立以来約870万の命が救われている。

我が国は世界基金に対し,これまで17.4億ドルの拠出を行っており,米国,フランス,英国,ドイツに次いで第5位の拠出国である。

2009年末の基金のレポートは次の通り述べている。

2009 年12月までに、発展途上国のエイズ・結核・マラリア対策への支援として承認された金額は総額192億ドル、そのうち100 億ドルが支出ずみ。

設立以来の僅か8 年間で、世界基金はグローバル・ヘルス( 地球規模の保健医療課題)に対する重要な多国間援助機関となった。基金を通じた支援は、発展途上国の結核対策、マラリア対策に対する国際援助総額の3分の2、エイズ対策では5分の1を占める。

2009 年12 月までに490万人の命が救われたと推計されている。そして、世界で3300万人 のHIV 陽性者、何百万人ものマラリア患者や感染リスクにある人々、年間940万人の結核患者が、生きる望みを取り戻すことに役立っている。

ーーー

11月14日のレポートで基金は以下の通り述べている。

基金は不正行為を一切許さないzero toleranceである)。
積極的に調査を行って不正を暴き、不正に使われた資金を取り戻す。調査結果は透明性の観点から公表する。

今回、2006年から2011年の間に、国際企業の2社がカンボジアの役人2名に、マラリア予防のための殺虫剤練り込み蚊帳の供給契約を得る見返りに約41万ドルのコミッションを支払ったことが判明した。

このため、基金は2社(Vestergaard Frandsen とSumitomo Chemical Singapore)との契約を一時停止する。

両社は調査にフルに協力し、関係した従業員に対する処分を行い、将来のための予防措置を講じた。

基金はカンボジアでのAIDS、結核、マラリアと戦うため2003年以降331百万ドルを投じ、マラリアでの死亡を80%減らし、結核では45%、AIDSでは50%減らした。

今回のケースはカンボジアのマラリアとの闘いに直接の影響はなかったが、契約の見返りにコミッションを受け取ることは我々の 使命に反する。
調査の結果、コミッション問題はあったが、基金の資金で購入された蚊帳は所期の目的どおり納入されている。


基金の調査報告書は http://www.theglobalfund.org/documents/oig/OIG_GFOIG13050InvestigationCambodia_Report_en/



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