「no」と一致するもの

米ITCは8月9日、Samsung ElectronicsがApple特許を侵害したとして、Samsung一部製品の米国内への輸入・販売を差し止める命令を出した。
オバマ大統領が60日以内に審査し、拒否権を発動しなければ有効となる。

8月3日には米通商代表部(USTR)が、Appleの一部製品を対象としたITCの輸入・販売差し止め命令を拒否したばかりで、米政府の対応が焦点となる。

2013/8/7 米通商代表、ITCによるApple製品販売禁止命令を拒否


今回対象となったのは、スマートフォンやタブレットを巡る特許侵害の有無で、Appleが2011年夏にITCに訴えたもの。

ITCは今回、画面のタッチ操作とヘッドホン差し込み口に関連した2件の技術特許で侵害を認定した。

U.S. Patent No. 7,479,949 (949特許:touchscreen) のクレーム 1, 4-6,10 と17-20
U.S. Patent No. 7,912,501 (501特許:headset plug detection) のクレーム 1-4 と8

Appleが侵害としていた他の4つの特許については侵害を認めなかった。

 U.S.Patent Nos. D618,678 (D'678特許)、D558,757 (D'757特許)、RE 41,922(922特許)、7,789,697 ( '697特許)
(*Dはデザイン特許)

ーーー

「949特許」はAppleの創業者の故Steve Jobs が開発者として参加・登録したいわゆる「Jobs 特許」で、Appleの代表的な特許技術である。

2012年12月3日、米国特許庁は同特許の再審査の結果、20のクレームすべてについて無効との予備判定を下した。
この判定は最終的なものではないが、最終的に無効と判断されると今回のITCの決定にも影響する。



米エネルギー省は8月7日、Lake Charles Exports, LLCに対し、Louisiana州のLake Charles Terminal からの非FTA国向けのLNGの輸出を承認した。

20年間にわたり1日当たり最大20億立方フィート(2.0Bcf/d) 、年間1500万トンの輸出を認めた。
FTA締結国向けの輸出については2011年7月22日に既に承認を受けている。

Lake Charles Exports, LLCはSouthern Union Company と英国のBG Group が共同所有している。

Southern Union CompanyはEnergy Transfer Partners, L.P の100%子会社。
Energy Transfer Partners, L.PはSunocoの親会社でもある。

BG Groupは当初の名称はBritsh Gas。

Lake Charles Terminal はTrunkline LNG Companyの所有で、天然ガス液化設備と輸出設備はBG LNG ServicesとTrunkline LNGが共同で建設する。液化設備は3系列(合計年間1500万トン)で、2018年に第1系列の完成を予定している。
輸入LNGのガス化設備も設置する。
天然ガスはBG LNG Servicesが供給する。

輸出契約については現時点では締結していない模様。

ーーー

米国はLNGを戦略物質とみなし、輸出を個別の許可制にしている。

唯一の例外は本土48州に輸送不可能だったアラスカのKenai LNGの輸出だった。

米国は輸出承認で米国とFTAを締結している国とそれ以外で差をつけており、FTAを結んでいない日本はガス輸入のハードルが高い。

2012/2/24 米国からのLNG輸入問題 

米エネルギー省は2012年12月、LNGに関する報告書を発表し、全てのシナリオで、LNG輸出は輸出をしない場合と比べ、ネットで経済的メリットがあるとした。
しかし、米国の天然ガス輸出を巡っては、Dow Chemical と ExxonMobileが米国の産業界を2分して争っている。

2013/1/30 米国の天然ガス輸出論争、激化

ーーー

エネルギー省はこれまで、非FTA国向けの輸出を2件承認している。

1)2011年5月のCheniere EnergyのSabine Pass LNG Terminal

2012/2/24 米国からのLNG輸入問題

2)2013年5月17日のFreeport LNG
  同社の計画には中部電力と大阪ガスが加わっており、2017年にも日本への輸出が始まる見通し。

2013/5/20 米エネルギー省、日本へのLNG輸出を許可


承認を受けた3つの計画の概要は以下の通り。

会社名 立地 概要
Cheniere Energy

本事業のため
Blackstoneが出資


Sabine Pass LNG Terminal
(Cameron Parish, LA)
承認:2011/5(FTA締結国向けは 2010/9)
数量:2.2 Bcf/d(年間1600万トン)
期間:20年間
輸出契約:
   BG Group   550万トン
   Gas Natural (スペイン)   350万トン
   Gail(インド)   350万トン
   Kogas(韓国)   350万トン
   合計    1600万トン

  注. 承認時は韓国はFTA未発効

Freeport LNG

株主:
Michael Smith
Zachry
Dow(輸出には不参加)
大阪ガス

Freeport LNG Terminal
(Quintana Island, TX)
承認:2013/5(FTA締結国向けは 2011/2)
数量:1.4 Bcf/d(年間900万トン)
期間:20年間
輸出契約:
   大阪ガス   220万トン
   中部電力   220万トン
   BP Energy   440万トン
   合計     880万トン
Lake Charles Exports

 株主:
 Southern Union Company
 BG Group

Lake Charles Terminal
(Lake Charles, LA)
承認:2013/8(FTA締結国向けは 2011/7)
数量:2.0 Bcf/d(年間1500万トン)
期間:20年間
輸出契約:未定
    BG Groupがパートナーのため、当然BGは対象



認可待ちの計画は以下の通り。

会社名 立地 概要
Dominion Energy Dominion Cove Point
  LNG Terminal
(Chesapeake Bay
 in Lusby, Md.)
承認:未(FTA締結国向けは 2011/10)
数量: 年間525万トン
期間:
輸出契約:
    住友商事  

230万トン

 
     (東京ガス)  

(140万トン)

 
          (関西電力)   ( 80万トン)  
   Gail(インド)   230万トン  
   合計    460万トン  
  https://www.knak.jp/blog/2012-4-2.htm#sumisho
Cameron LNG

株主:
Sempra Energy 50.2%
三井物産 16.6%
Japan LNG 16.6%
(三菱商事
/日本郵船)
GDF Suez  16.6%

Hackberry, LA 承認:未(FTA締結国向けは2012/1)
数量:1.7 Bcf/d(年間1200万トン)
期間:
輸出契約:
   三井物産  

400万トン

 
   三菱商事  

 400万トン

 
   GDF Suez   400万トン  
   合計    1200万トン  
  https://www.knak.jp/blog/2012-4-2.htm#LNG
Jordan Cove LNG

株主:
Veresen Inc

Port of Coos Bay, Oregon 承認:未
数量:1.0 Bcf/d(年間 600万トン)
期間:
輸出契約:未定


8月10日にワシントンで始まった米中両国政府による「戦略・経済対話」で、中国側が、米国のシェールガスをLNGとして輸入することに興味を示したことが分かった。米国は「潜在的な輸出相手」と表現し、可能性を排除はしていない。



中国で販売価格を巡る2つの独禁法違反事件が明らかになった。

国家発展改革委員会(NDRC)は8月7日、粉ミルクを巡る競争阻害や卸売業者に対する最低販売価格の制限などで、6社に合計 670百万人民元(約109百万ドル)の罰金を課した。

上海市高級人民法院は8月1日、Johnson & Johnson(J&J)に対し、独禁法違反で旧代理店の北京鋭邦涌和科貿に賠償金530千人民元(約87千ドル)を支払うよう命じた。

規定価格以下で販売したことを理由に代理店契約を取り消されたとして鋭邦涌和科貿がJ&Jを訴えていた控訴審で、原判決を覆し た。


中国の独占禁止法は、以下の行為を禁止している。

水平的協定 価格協定
・供給制限
・市場分割
・新技術又は新設備の購入の制限、新技術又は新製品の開発の制限
・共同ボイコット
垂直的協定 再販価格維持行為
最低再販価格の制限
キャッチオール条項 独禁当局が別途定めるその他の独占的協定を包括的に禁止
業界団体のカルテル 業界団体が事業者に対し、上記の各行為を行わせる行為を禁止

担当は以下の通り。

国家発展改革委員会(NDRC) 価格独占行為の調査・処分
商務部 事業者集中行為
工商総局 独占協定、市場支配的地位の濫用、
行政権力を濫用した競争の排除、制限

販売価格を巡っては、既に下記の独禁法違反行為が摘発されている。

1)NDRC2011年11月独禁法違反で製薬会社2社に合計で約110万ドルの罰金を科した。

2011/11/18 中国が価格カルテルを摘発

2)NDRCは2013年1月4日、LG電子、サムスン電子など韓国、台湾の液晶メーカー6社がカルテルを結んで液晶パネルの販売価格を不当につり上げていたとして、総額353百万人民元(約49億円)の制裁金を科したと発表した。
中国当局が外国企業に価格カルテルで制裁金を科すのは初めて。

2013/1/9  中国政府、価格カルテルで外資に制裁金

3)NDRCは2013年2月22日、中国酒のトップメーカーの四川省のWuliangye (五粮液) と貴州省のKweichew Moutai (州茅台)に対し、価格カルテルで総額449百万元(71.4百万ドル)の罰金を課した。五粮液は202百万元、貴州茅台は247百万元。
発表では、両社は独占契約を結んでいる卸業者に対し、酒類の販売最低価格を決めていたという。

2013/3/2  中国、中国酒メーカーに価格カルテルで罰金

ーーー

粉ミルク事件

国家発展改革委員会(NDRC)は8月7日、乳児向け粉ミルクの価格操作と独占禁止法違反をめぐる調査の結果、米Mead Johnson Nutritionほかの計6社に合計109百万ドルの罰金支払いを命じた。中国の独禁法違反の罰金額としては過去最高額。

各社は卸売業者に対する契約で最低販売価格を制限し、違反者に罰金を課したり、リベートをカットしたり、商品供給を制限するなど行ったと発表している。

  罰金
(千人民元)
売上高比
(2012年)
Mead Johnson Nutrition(米) 203,800  4%
Dumex Baby Food(仏)Danone 子会社 172,000 3%
Biostime International (香港)
合生元国際
162,900 6%
Royal FrieslandCampina(蘭) 48,000 3%
Fonterra Co-operative Group (NZ) 4,000 3%
Abbott Laboratories (米) 77,000 3%
Wyeth Nutrition(スイス)Nestlé 子会社 免除
Zhejiang Beingmate Technology Industry and Trade
貝因美科工貿(中国)
免除
明治ホールディングス 免除
合計 667,700
109百万ドル
 
直近レートは1人民元=0.16342 米ドル
Biostimeは違反行為がひどく、是正措置を取らなかったとして最高の6%の罰金となった。Mead Johnsonは積極的に協力せず、4%となった。
Wyeth (Nestle)、貝因美、明治の3社は 「独占禁止法執行機関に対して、独占に関する取り決めの関連情報を自発的に報告し、重要な証拠を提供し、かつ自発的に改善を行った」ため、処罰の対象外とされた。


関連企業が提出した改善措置には、「違法行為の即時停止」、「実質的な行動による過去の違法行為の処理、消費者への実益の提供」が含まれた。

本年7月に価格独占行為の調査・処分を担当するNDRCの価格監督検査・反独占局が 国内メーカー数社を含む粉ミルクメーカー10数社に対し、独占価格の疑いがあるとして調査を行っていることが報じられた。

中国では2008年に石家荘三鹿集団のメラミン混入粉ミルクを飲んだ乳幼児が腎臓結石となるケースが相次ぎ、5人が死亡、多数が入院した。
調査の結果、他の22社の69品目からメラミンが検出された。

2008/9/29 中国粉ミルク汚染事件のその後

この結果、海外ブランドは価格が国内産の2倍もするが、国産品よりも安全として需要が増大していた。

2008年以降、海外ブランドは価格を30%引き上げたが、海外ブランドのシェアは2008年以前の30%から60%にまで上がっている。

大手チェーンでは1人当たり購入を2~4缶に制限しており、香港では本年3月、2缶以上を本土へ持ち帰るのを犯罪とした。

中国の粉ミルク市場は2012年が127億ドルで、2014年には184億ドル、2017年までに250億ドル規模にまで拡大すると見られている。

調査を受け、Mead Johnson、Dumex、Nestlé などは相次いで20%程度の値下げを行っ ている。

なお、NZのFonterraは、これ以外に、大きな問題を起こした。

ニュージーランド一次産業省は8月3日、同国の乳業最大手のFonterraの一部商品にボツリヌス菌が含まれる可能性があると発表した。

中国はFonterraが調整粉乳に利用している乳製品原料粉末と乳清タンパク(ホエイプロテイン)の輸入を停止した。

乳製品はニュージーランドの輸出全体の約4分の1を占め、Fonterraはニュージーランドで生産されるミルクの89%を扱っている。
今回の輸入制限は中国への輸出に頼るニュージーランド経済にとって打撃である。

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Johnson & Johnson事件

上海市高級人民法院は8月1日、規定価格以下で販売したことを理由に代理店契約を取り消されたとして北京鋭邦涌和科貿がJohnson & Johnson(J&J)を訴えていた控訴審で、原判決を覆してこの行為を独禁法違反とみなし、J&Jに対し、鋭邦に賠償金53万元(87千ドル)を支払うよう命じた。

J&J は鋭邦との間で15年間にわたり、J&Jの子会社のEthicon Endo-Surgeryの医療用縫糸や吻合器などの代理店契約を結んでおり、契約は毎年更新されていた。
その契約では、「鋭邦はJ&Jが指定する地域で Ethicon Endo-Surgeryの商品を販売する。鋭邦はJ&Jの規定を下回る価格で商品を販売してはならない」と取り決めていた。

Ethicon Endo-Surgeryは、体内で吸収される抗菌性縫合糸や心臓血管外科手術などで用いられる縫合糸、合成皮膚用接着剤等々を扱う。
J&Jは創業1年後の1887年に消毒済み縫合糸を発売した。

鋭邦公司は2008年3月に北京大学人民病院で実施された入札で最低落札価格で落札、J&Jは低価格の入札行為に対して警告を発した。
その後、J&Jは縫糸および吻合器の供給を停止し、翌年、鋭邦との代理販売契約を更新しなかった。

これに対し鋭邦は2010年8月、J&Jを相手取った訴訟を起こした。
これは中国の独占禁止法の施行以来、法廷が審理した初の垂直的独占の民事訴訟となり、「中国初の垂直的独占」と呼ばれた。
(本件では独禁当局=NDRCは関与していない。)

鋭邦の主張:
J&Jは競争の直接的な制限を目的とし、代理販売契約の中の契約条項により、鋭邦が第3者に最低価格で転売することを制限し、鋭邦に警告を発し、契約を中止・終了するなどの手段をとり、鋭邦が最低転売価格を維持することを脅かした。

J&Jの行為は、独禁法が禁止する最低転売価格を制限する行為に当たり、鋭邦に損害をもたらしたため、法に基づきJ&Jに1400万元余りの賠償命令を出すよう求める。

上海市第一中級人民法院は2012年5月に下した一審判決で、鋭邦側の証拠が不十分だとして訴訟請求を退けた。

これに対し上海市高級人民法院は 今回、本件には独占禁止法が適用され、J&Jが代理商に自社の規定を下回らない価格での商品販売を求める行為は、独占行為に当たると判断した。
賠償金については、鋭邦の2008年に販売できなかったことによる利益だけとし、それ以降に契約を更新できなかったことによる損害については認めなかった。

1年ごとの契約であるという形式を重視したと見られるが、過去15年継続してきたことから考えるとおかしい。



米通商代表部(USTR)のMichael Froman 通商代表は8月3日、韓国サムスン電子の特許侵害を理由に Appleの一部製品(中国製)の米国への輸入と販売を禁止した米国際貿易委員会(ITC)の命令を拒否すると発表した。

ITCへのレター http://www.ustr.gov/sites/default/files/08032013 Letter_1.PDF

ーーー

本件は、Samsung と Apple が全世界で繰り広げている特許戦争の一部である。

ITCは6月4日、Appleがスマートフォン(高機能携帯電話)などで用いる技術をめぐり、Samsung Electronics の3G/UMTS 無線通信技術関連の特許1件を侵害したと認定する決定を下し、AT&T向けの4機種、iPhone 4、iPhone 3GS、iPad 3G、iPad 2 3G(中国で製造)米国への輸入を禁じた。

米国の関税法337条は、米国への輸入における不公正な行為により米国産業に被害が生じる恐れがあるときに、輸入品の排除、不公正行為の差し止めをITCが判断し、命令を発する権限を規定している。特許侵害は典型的な不公正行為にあたる。

Samsungでは該当端末1台あたり市販価格の2.4%にあたるライセンス料の支払いをAppleに求めていた。

それに対し、Appleはこの特許がいわゆる「必須標準特許」(FRAND特許)にあたると反論したが、ITCは「FRAND宣言をしていることは、限定的な差止め命令を妨げるものではない」とした。
(Samsungでは、
Appleはライセンスを受けようとしなかったとしている。)

FRAND(Fair, Reasonable And Non-Discriminatory):
ある企業の特許が技術標準として採択される場合、他企業がその特許を使用する時、特許権利者は「公平で、合理的、かつ非差別的」に協議しなければならないという義務。
特許権利を使用する企業はまず特許なしに製品を製造し、後に特許権利者にライセンスを購入し使用権を保有する。

Samsungは欧州でもAppleとの一連の特許訴訟のなかで、3G/UMTS 関連技術の必須標準特許の侵害を根拠に、iPhoneなどを対象とした販売差し止めを求めている。

欧州委員会はこれをFRAND特許濫用として問題視し、独禁法違反の疑いがあるとして調査を実施した。
Samsungは1998年に欧州電気通信標準化機構に対し、同社が保有する3G/UMTS関連技術の特許を、FRANDの原則に沿ってライセンス提供すると約束していた。

報道によると、Samsungは「必須標準特許」濫用問題の和解に向け、EU当局と協議中とされている。

欧州ではGoogle傘下のMotorola Mobilityも特許侵害を巡ってドイツでAppleに対する差し止めを求めているが、EUの欧州委員会は5月6日、Motorola Mobilityが欧州競争法に違反している可能性があるとの初期判断を明らかにした。

特許はモバイル・無線通信にとって重要な必須標準特許で、Motorola MobilityはFRAND(公正で合理的かつ差別のない)条件のもとで提供すると公約していたが、AppleがFRAND条件にもとづいたライセンス契約に前向きであったにもかかわらず、公正な交渉を行わなわず、差止めを求めたとしている。

欧州委員会はMotorolaに対し、「差し止め要請は特許侵害の対策の1つではあるが、問題とされているのが必須標準特許であり、ライセンシーが FRAND条件にもとづくライセンス契約を望んでいる場合は、優位性の乱用となる可能性がある」との見解を示した。

ーーー

ITCが6月4日に下した輸入禁止命令はオバマ政権へと送られ、60日以内に決定を審査し、判断を下すことになっていた。

通商代表は、命令を覆す理由について「米国における販売競争や米消費者への影響を考慮した」と指摘した。

米司法省は必須標準特許は法廷でロイヤルティーを争うべきもので、輸入を禁止すべき案件ではないという考えで、輸入禁止を特許権の乱用とする見方を強めており 、通商代表のITCへのレターでもこれに触れている。
今回の命令拒否はこうした方針に沿っている。

なお、Samsungに対しては、引き続き裁判を通じて特許侵害の有無を争うことができるとしている。

ITCによる輸入・販売禁止命令が拒否されるのは1987年以来、26年ぶり。

1987年にReagan政府はアルカリ乾電池の輸入禁止命令(Duracellが並行輸入品の禁止を要請)を拒否した。
それ以前にも、成形サンドイッチパネルと製紙に関して拒否している。

Carter政権も溶接ステンレススチールパイプで拒否した。

今回の決定を受けSamsung は、ITCの決定が拒否されたのは残念であるとし、ITCの決定は、Samsungが誠意をもって交渉してきたのに、Appleがライセンスを受けようとしなかったという事実を正しく認識したものであると述べた。

 

韓国紙は「知的財産権保護の伝統が退歩」、「オバマ政権、拒否権発動でサムスンをけん制」などと報じている。

ーーー

ITCは8月1日、サムスン電子製の携帯電話やタブレット型端末の一部がAppleの特許を侵害しているかが争われている特許紛争で、判断を9日まで延期すると明らかにした。理由は明らかにしていない。


ーーー

オバマ政権が輸入禁止の決定に拒否権を発動したことについて、韓国政府は公に懸念を表明した。
韓国産業通商資源部は8月5日、今回の拒否権発動について、「サムスン電子が保有する特許権の保護に与えるマイナスの影響に懸念を表明する」とした。

また、9日に予定されるAppleとSamsung電子の特許紛争をめぐるITCの決定と、それを受けた米政府の決定を鋭意注視するとし、「決定が公正かつ合理的に下されることを期待する」と注文を付けた。

Samsung電子は8月5日、オバマ政権の拒否権発動とは関係なく、既に米ITCの決定について、米連邦控訴裁に抗告を行ったことを明らかにした。
ITCは4件のうち1 件について、Appleが特許を侵害したと認め、輸入禁止措置を下したが、Samsungは残る3件についても特許を侵害しているとして、抗告を行った。


主要各社の第1四半期の営業損益対比は以下の通り。(単位:億円)

全般に前期比では増益だが、前々期比ではマイナスとなっている。
信越化学はShintechの業績が好調なため前々期比でも増益となった。

旭化成も医薬・医療が大増益で、前々期に迫っている。

ケミカルでは 各社とも前期比では交易条件でプラスとなっている。
石化製品で原燃料価格上昇に伴う販売価格値上げを行っているが、コストアップ以上の値上げということではなく、値上げ時期のずれで当期は増益となったものと見られる。
当期は更に円安効果が大きい。

1)三菱ケミカルホールディングス 

  2011/1Q 2012/1Q 2013/1Q 前年比
 増減
 

増減内訳

売買差 数量差 コスト
 削減
受払差他
エレクトロニクス 1 -4 -12 -9 -7 -10 11 -2
デザインド 105 38 111 73 12 36 12 13
ヘルスケア 247 209 186 -23 -2 -8 2 -15
ケミカルズ 160 -77 -14 63 42 25 19 -23
ポリマーズ 109 6 -14 -21 -14 -1 10 -15
その -2 3 -5 -8   -6 2 -4
調整 -22 -19 -17 2        
合計 598 156 235 79 31 36 56 -44


2)住友化学

  2011/1Q 2012/1Q 2013/1Q 前年比
 増減
 

増減内訳

売買差 数量差他 コスト差
基礎化学 70 -25 -21 5 5 0 0
石油化学 58 1 21 20 45 -35 10
情報電子化学 41 12 100 89 -40 69 60
健康・納涼 81 65 81 16 -10 36 -10
医薬品 135 126 107 -19   -44 25
その他 12 12 9 -3   -3  
調整 -49 -60 -52 7   7  
合計 348 130 246 116 0 31 85

情報電子化学は、偏光フィルム需要増による販売増で増益となった。(売価はダウン)

 

3)三井化学

  2011/1Q 2012/1Q 2013/1Q 前年比 増減  

増減内訳

交易条件 数量差 コスト差
石化 60 35 71 36 54 -3 -15
基礎化学品 128 -8 -27 -19 -3 -9 -7
ウレタン -26 -2 -17 -14 -3 -3 -10
機能樹脂 20 27 37 11 6 14 -9
機能化学品 27 38 39 2 4 3 -6
フィルム・シート 17 -3 7 10 -1 2 9
その -7 -18 -18 -1      
合計 220 69 93 24 57 4 -38

石化の貢献が大きく、交易条件が54億円のプラスとなっているが、ポリエチレンで原燃料価格上昇に伴う販売価格上昇をあげている。

なお、昨年4月22日、岩国大竹工場のレゾルシンプラントで爆発事故が発生した。
   2012/4/24 三井化学大竹工場で爆発事故

昨年上期6か月の営業損益への影響は基礎化学品 -14億円、機能化学品 -4億円ほかとしている。


4)東ソー

  2011/1Q 2012/1Q 2013/1Q 前年比
 増減
 

増減内訳

交易条件 数量差 コスト差
石油化学 39 7 25 18 1 5 13
クロルアルカリ 15 -50 5 56 31 20 5
機能商品 45 24 36 12 14 1 -3
エンジニアリング -2 -1 -8 -7   -7  
その他 7 3 8 5   5  
合計 104 -18 66 84 46 24 15

クロルアルカリは生産再開で販売数量が増加した。
 2011年11月14日に南陽のVCM工場事故
 2012年5月に第一プラント、7月に第三プラントが再稼働


5)旭化成

  2011/1Q 2012/1Q 2013/1Q 前年比
 増減
 

増減内訳

売価差 数量差 コスト差
ケミカル 194 43 102 59 67 -1 -7
住宅 36 36 66 30 4 39 -13
医療・医薬 26 47 90 43 15 42 -14
繊維 14 6 22 16 18 2 -4
クリティカルケア   -5 -15 -10 2 9 -21
エレクトロニクス 48 -4 38 42 24 6 11
建材 2 5 13 8 1 2 5
その他 4 8 4 -4     -2
全社 -22 -29 -37 -8     -8
合計 302 107 283 176 130 97 -52

ケミカルは円安の効果とスチレンモノマーの市況改善で増益となった。


6)信越化学

  2011/1Q 2012/1Q 2013/1Q 前年比
 増減
塩ビ・化成品 61 99 169 70
シリコーン 92 75 70 -4
機能性化学品 35 39 31 -9
半導体シリコン 104 66 67 1
電子・機能材料 92 104 107 2
その他 17 18 11 -6
調整 -1 3 0 -3
合計 400 403 455 52

Shintech の塩ビが好調で、業績を大きく伸張させた。




Rio Tintoは7月29日、豪州のNorthparkes鉱山の権益 80% を中国のChina Molybdenum(洛陽欒川鉬業集団)に820百万米ドルで売却する契約を結んだと発表した。

同社では、同鉱山は成功しているが、充分な規模ではなく、同社戦略に合わないとしている。

Northparkes鉱山の残りの権益は、住友金属鉱山(13.3%)と住友商事(6.7%)が保有して いる。
両社が
JV契約で先買権を持っており、これを放棄するかどうかによる。
関係筋によると、2社が残りの80%全部を取得する見込みは薄いという。

China Molybdenumはモリブデンやタングステン鉱を生産しており、2012年10月に上海で新規上場した。銅の生産に参入するのはこれが初めて。

ーーー

Rio Tintoは戦略に合わない事業の売却を進めている。

2012年12月に同社は南アで銅山を運営しているPalabora Mining Company の持株(57.7%)を373百万米ドルで売却する契約を締結した。
売却先は南アのIndustrial Development Corporationと中国の河北鋼鉄集団が率いるコンソーシアム。

Palabora Mining の他の株主のAnglo American も持株16.8%を同じ相手に売却する。残りは一般株主が所有。

全ての手続きが完了しており、7月31日に成立する。

ーーー

Rio Tinto は6月12日、ミシガン州のUpper PeninsulaにあるEagle ニッケル鉱山を、カナダに本社を持ち、ポルトガル、スウェーデン、スペインで銅、亜鉛、鉛、ニッケルなどを採掘するLundin Miningに325百万ドルで売却する契約を締結した。

 

Rio Tintoは2007年にBHP Billitonから買収提案を受けたが、2007年11月の企業戦略を説明する投資家向けセミナーで、Northparkes銅・金鉱山を含む資産売却リストを公表した。

2007/11/15 BHP Billiton Rio Tinto に買収提案

2008/11/27 BHP BillitonRio Tinto 買収を断念

本年6月初めには、Rio TintoはNorthparkes鉱山の売却に向け、月内の最終入札を計画しており、豪州のOZ Mineralsと中国の五砿資源が応札するのではと報道された。
China Molybdenumの名はこれまでに出ておらず、意外な結果と見られている。

ーーー

Northparks鉱山は豪州のSydneyの西方約300kmにある銅鉱山で金を随伴する。
Rio Tintoの100%子会社のNorthminingが鉱区を所有している。

当初、1993年7月に住友金属鉱山と住友商事がNorth Broken Hill PecoとJV契約を締結し、1994年に操業を開始した。
North Broken Hill Peco(1995年にNorth Ltd. に改称)は2008年8月にRio Tintoに吸収合併された。

2006年12月に212百万豪ドルを投じて新たな鉱床開発を決めた。
これにより、鉱山寿命を2009年から2016年まで7年間延長されるとしていた。

2016年以降については、増強計画を検討中で、本年にプレFSを作成し、2016年にフル生産を目指すとしている。
(一時は2008年6月以降の銅価格下落や世界的経済不況により、山命延長を断念している。)

既存の3鉱体の地下と新規の1鉱体の開発により生産規模を拡大する。

  現状 2016年
選鉱能力 580万トン 3000万トン
生産銅量 38千トン 150千トン

ーーー

住友金属鉱山は2013年2月、2012年中期経営計画「世界の非鉄リーダー&日本のエクセレントカンパニーをめざして」を発表した。

ターゲットとして、銅権益 30万トン、ニッケル 15万トン、金 30トンとしている。


海外資源獲得のうち、①自社探鉱は相当な時間を要するとし、②開発案件への参加は他社との競合が問題としている。
残る③既存鉱山については、権益比率拡大は困難で、増産しかないが、増産案件は少ないとしている。

本件は、権益比率を大幅に拡大し、かつ増産計画があるものだが、住友金属鉱山はこれまで取得の意向を示していない。


参考  2011/5/21 住友金属鉱山、チリの銅鉱山開発に参加






INEOSは7月19日、東華能源(Oriental Energy Company)にInnovene PP 技術を供与すると発表した。

寧波大榭開発区に年産40万トンのPPを建設するもので、原料プロピレンは同地に建設するプロパン脱水素(能力1,320千トンの第一期660千トン)プラントから供給を受ける。

東華能源は1996年に設立された。(当初名は張家港東華優尼科能源)
株主は
張家港保税区経済開発公社と中国中信集団公司(香港)、Allied Oil International の3社で、LPGの輸入販売を主業務としている。

東華能源の計画は以下の通り。

立地:寧波大榭開発区
計画:

  事業者 第一期 第二期 合計
プロパン脱水素 寧波福基石化 660千トン 660千トン 1,320千トン
PP 張家港揚子江石化 400千トン

 -

400千トン

寧波福基石化(Ningbo Fuji Petrochemical):東華能源100%子会社
張家港揚子江石化:2011/9設立のJVで、株主は下記。
 
東華能源  56%、江蘇華昌化工 22%、 江蘇飛翔化工 22%

第一期は2014年初めに完工、3~6カ月で生産開始としている。

これとは別に、東華能源は2011年に本拠地の張家港市に張家港揚子江石化を設立した。
株主は
張家港揚子江石化と同じ3社。

プロパン脱水素132万トンの計画で、第一期66万トンについては2012年4月に
UOP LLCが技術供与した。2014年にスタートする計画。

下記のCNCICの資料では、PP 40万トン計画が記載されている。

ーーー

なお、INEOSは7月11日にはCNOOC にHDPE技術(Innovene S)を技術供与すると発表している。

立地は広東省恵州市で、能力は年産400千トン。

広東省恵州市にはCNOOCとShellとのJVの中海シェル石油化学(CNOOC and Shell Petrochemicals) があり、エチレン800千トンのコンプレックスを持ち、Basell 法によるHDPE 200千トンプラントも持っているが、今回はCNOOCの単独事業と思われる。

ーーー

CNCIC(中国化工信息中心:旧化学工業省の科学技術情報研究所を母体とする機関)は2013年4月にSingaporeでシンポジウム CPIC 2013を開催したが、その中に「中国のポリオレフィン事業の発展と予測」というレポートがある。
   http://cpic.cncic.gov.cn/bookpic/201342312375951506.pdf

現在建設中 or 検討中のポリオレフィン計画では、MTO/MTP(石炭→メタノール→オレフィン→ポリオレフィン)が非常に多いが、PPについてはPDH(プロパン脱水素)によるものも ある。(上記の東華能源の2つの計画も記載されている

  ナフサ MTP PDH  合計
LDPE - 1,290 - 1,290
LLDPE 1,050 3,230 - 4,280
HDPE 900 2,150 - 3,050
PP 4,770   8,410   1,860   15,040

このうちの主な計画は以下の通り。(図の上段の4つは既設)

当然ながら、MTPは内陸部の石炭産地にあり、PDHは輸入プロパンを原料とするため沿海部にある。

既存のMTP計画の概要は以下の通り。

シノペック中原石化(Sinopec Zhlongyuan)は2011年10月、河南省濮陽市で最初のS-MTO計画をスタートさせ、エチレンとプロピレンがオンスペックとなった。

メタノール 60万トンからオレフィン 20万トンを生産、これから、PP 10万トン、PE 6万トンを生産する。

包頭神華石炭化学(Baotou Shenhua Coal Chemical) は神華集団 76%、上海華誼集団公司 24%のJV。
メタノール 180万トン、MTO 60万トン、PE 30万トン、PP 30万トン
         2006/12/23   中国のMTO計画

唐多倫煤化工(Datang Duolun)大唐国際発電が60%、中国大唐集団公司が40%のJVで、内蒙古自治区Duolun県でUnipolで46万トンのPPを生産している。

神華寧夏石炭グループ(Shenhua Ning Coal)は公称 52万トン。

2011/10/26  中国の"Coal to Olefins"の現状

 



DuPont は7月23日、統合応用科学戦略を全事業で展開するための人事を発表したが、Performance Chemicals 事業をどうするかを戦略的に検討することを明らかにした。

スピンオフ、売却、その他の取引により同事業の全体又は一部分を分離することを検討する。

Performance Chemicals 事業は、酸化チタンを中心に、フッ素化学品、フッ素樹脂などを扱っている。

業績は以下の通りで、売上高は全社の約20%、営業損益では28%を占める。

2012年の第4四半期の実績を見ると、売上高は前年同期比で15%減となっている。数量で8%減、価格で7%減となったが、欧米でのフッ素樹脂の需要減が数量減の主な理由で、値下がりは酸化チタンが主となっている。

営業損益は値下がりと両分野での販売数量減と減産により、前年同期の433百万ドルが54%減の200百万ドルに止まった。

酸化チタンは自動車用ペイントなどに使われ、世界経済の影響を受けやすい。
不況の間、メーカー各社はプラント休止で対応していたが、昨年になり DuPont、Cristal Global、Tronox、Huntsmanなどの大メーカーが休止していたプラントを一斉に再稼働させた結果、価格が急降下した。


DuPontでは、統合科学会社として株主価値を最大にするために既存事業の見直しを行っている。

2011年5月にはデンマークの食品用酵素や素材のメーカーのDaniscoを買収した。
  
2011/5/27  DuPontDaniscoの買収成功 

同社は2012年8月、Carlyle Group にPerformance Coatings事業を現金49億ドルで売却する契約を締結したと発表した。
  2012/9/5   DuPont、Performance Coatings事業をCarlyle Group に売却

Kullman会長・CEOはPerformance Chemicals 事業について、「景気変動による事業の不安定については科学ではどうしようもない」と述べ、DuPontは農薬、栄養、バイオサイエンスのような科学主導("science-driven")事業に集中するとしている。

ーーー

DuPontは世界最大の酸化チタンメーカー。

2007年時点で全世界需要490万トンの21%(約100万トン)をDuPontが供給していたが、同社は2011年に需要増大に対応し、年産35万トンの増設計画を発表した。
   2011/5/18
 DuPont、酸化チタンの大増設計画発表

1)メキシコのAltamira工場に5億ドルを投じて、年産20万トンのプラントを新設、2014年末の完成を目指す。

2)既存の下記 5工場の手直しで、3年間で年産15万トンの能力増を達成する。
    
ミシシッピー州DeLisle、テネシー州 New Johnsonville、デラウェア州 Edge Moor
    メキシコ Altamira、台湾 観音(Kuan Yin
    (これらは全て、塩素法を採用。同社はまた、フロリダ州
Starkeで鉱山を運営している。)

DuPont 200511月に山東省東営市の経済開発地区で当初能力年産20万トンの酸化チタンを生産することで地方政府と合意書を締結した。この計画は環境問題で難航しているが、引き続き、推進する。
   
2010/7/9  ChemChina、山東省で酸化チタン生産開始 に状況記載

DuPontは他社が硫酸法を採用するのに対し、塩素法を採用している。

硫酸法はイルミナイト鉱石と硫酸を反応させ酸化チタンの硫酸塩から二酸化チタンを製造する。工程は塩素法に比べて長く、より多くのエネルギーを消費する。また、硫酸鉄等の固形産業廃棄物は塩素法の7倍であり、廃硫酸は80%以上は回収不能な廃溶液となり、そのため必要な公害対策設備費も増大する。

一方、塩素法はルチル鉱と塩酸を反応させ四塩化チタンから二酸化チタンを製造する。気相反応で工程が非常に短く設備もコンパクトですむ。また、使用後の塩素の回収率は90%と非常に高く廃棄物は硫酸法に比べ七分の一。


大手他社の状況については、2011/5/18  DuPont、酸化チタンの大増設計画発表 参照。



昨年末からインドネシアの Pertamina (国有石油会社)とChandra Asri が石油化学計画で混戦を繰り広げている。


  Pertamina Chandra Asri 概要
2012/12

石化JV設立のMoU締結

PP 250千トン(投資額 2億ドル)
2013/3   (独Ferrostaal と)
西パプア石化計画のLoI締結
 
2013/4 (タイPTT Global Chemicalと)
石化JV設立のHoA締結
  エチレン、PP、PE、PVC
投資額40~50億ドル、2018年生産開始予定
2013/6   (仏Michelinと)
合成ゴムJVの契約締結
Michelin 55%、Chandra Asri 45%
投資額 435百万ドル
2013/6

石化JV設立を取り止め

 
2013/7   (独Ferrostaal と)
西パプア石化計画のFS実施
MTOでPP 400千トン、エチレン 175千トン
投資額 18.9億ドル


インドネシア最大の石油化学会社Chandra Asri Petrochemical は、クラッカーやPE増設などの石油化学の大増設計画を打ち出し、第一弾として2011年6月に年産10万トンのブタジエン製造設備を発注した。

2011/6/8  Chandra Asri の増設計画

しかし、同社は2011年12月、世界経済の状況が不安定なためとして大増設計画を棚上げすると発表した。
ブタジエン計画は続行し、2013年に完成させる。


2012年12月に Pertamina とChandra Asri は石化JV設立のMoUを締結した。
これはPertaminaとして川下の石油化学を拡充するもので、2億ドルを投じてPP 250千トンプラントを共同で建設し、インドネシアの拡大する需要に対応しようというものであった。

しかし、本年に入り、Chandraはドイツの建設・エンジニアリング会社のFerrostaalとの間で、PP 400千トンを含む西パプア石化計画のLoIを締結、別途Michelinとの間に合成ゴムJV契約を締結した。

2013/6/26   Michelin とChandra Asri 、インドネシアに合成ゴム製造JV設立

他方、Pertaminaは4月にタイPTT Global Chemicalとの間で、投資額40~50億ドルにも及ぶ石化JV設立のHoAを締結した。
6月にはその第一歩として
PTT Polymer Marketing との間でPTTのPE、PPの購入契約を結んでいる。

そして、Pertaminaは6月28日、Chandra Asri と共同で石化JVを設立する計画を白紙に戻すと発表した。

共同研究の結果、両社はJVの条件で合意に達せず、MoUを終了することで合意したとしている。

その後、7月に入り、ChandraはFerrostaal との間で、西パプア石化計画のFS実施を決めた。

ーーー

PertaminaとタイPTT Global Chemical のJVの構想は以下の通り。

インドネシアにワールドクラスの石化コンプレックスを建設する。
2013年末までにJVを設立し、設計・建設を開始し、2018年に商業生産を開始する。
投資額は40~50億ドル。

報道では、エチレン、PP、PE、PVCを生産するとしている。

Pertaminaでは、インドネシアの石化製品の需要増大と、Pertaminaの石油事業と石化事業の統合による巨大なポテンシャルを考え、石化事業をPertaminaの成長の柱の一つと考えており、PTTGCの石化における実績と経験からパートナーに選んだとしている。

2005年12月にタイのNational Petrochemical  (NPC) とThai Olefins (TOC)が合併し、PTT Chemicalが誕生したが、2011年10月にPTT Chemical とPTT Aromatics & Refining が統合し、PTT Global Chemical となった。

Pertaminaはインドネシア国内に6つの製油所を持ち、合計精製能力は原油ベースで日量100万バレルとなっており、アジアで5番目。

ーーー

Chandra AsriとFerrostaal の構想は以下の通り。

立地:インドネシアのWest Papua のTeluk Bintuni
製品:天然ガスを原料にメタノールを生産
    メタノールから、PP 400千トン、エチレン 175千トンを生産
投資額:18.9億ドル
完成時期:2019年
原料天然ガス:西パプアTangguh LNGから受ける予定

 

Tangguh LNGは6つのガス田(Vorwata, Wiriagar Deep, Ofaweri, Roabiba, Ubadari, Wos)のガスをLNGにするもので、BPが最大の権益保有者でオペレーターを務めており、日本企業が多く参加している。

LNG年産760万トンで、2009年7月に第一船が出荷した。

権益保有者 権益率
(%)
BP 37.16
MI Berau(三菱商事 56%、国際石油開発帝石44%) 16.30
CNOOC(中国) 13.90
日石ベラウ石油開発(JX 51%、JOGMEC 49%) 12.23
ケージーベラウ石油開発
(海外石油開発=三井物産、MI Berau、JX日鉱日石開発、
JOGMEC )
8.56
LNG Japan (住友商事 50%、双日 50%) 7.35
Talisman Energy(カナダ) 3.06
KG Wiriagar石油開発(海外石油開発、JOGMEC) 1.44

 


名古屋大学は7月12日、大学院理学研究科の研究グループが、ベンゼンを簡単にフェノールに変換することができるバイオ触媒を開発したと発表した。

現在使われているクメン法は、ベンゼンとプロピレンを 200-250℃ で反応させてクメンを得 、これを酸素酸化してクメンハイドロパーオキサイドとし、パーオキサイドを硫酸で分解し、フェノールとアセトンとしている。

C6H6 + CH2=CHCH3 → C6H5CH(CH3)2 (クメン ) 

C6H5CH(CH3)2 + O2 → C6H5C(OOH)(CH3)2  (クメンハイドロパーオキサイド)
 
C6H5C(OOH)(CH3)2 → C6H5OH  (フェノール) + (CH3)2C=O (アセトン)

この手法は危険な反応条件で行う必要がある上、多量の副産物を生成してしまうという問題を抱えている。

一段目では、原料ベンゼンを過剰に用いるため、その回収再利用が必須。
二段目の生成物は爆発性のパーオキサイドのため、生成物の濃度を低く抑える必要があり、未反応のクメンの回収再利用が必要。
三段目ではアセトンのほか、多種多様の副生成物が少量ずつ生成。廃酸の処理問題もある。 


研究グループは、特定の化合物が入ってきた時にだけ働く酵素に着目し、特定の化合物に構造のよく似たダミーの化合物(デコイ分子)を酵素に取り込ませた。

食用油に含まれる飽和脂肪酸を選択的に水酸化するシトクロムP450BM3と呼ばれる細菌の持つ酸化酵素を取り上げた。

ダミー化合物としてパルミチン酸に似たパーフルオロノナン酸を使い、酵素に結合させると、酵素が誤作動し、通常酵素とは反応しないベンゼンを常温・常圧下で直接フェノールに変換することに成功した。

ポイントは下記の通り。

1)常温常圧の条件でベンゼンを直接的にフェノールの変換
   副産物は生成されない。

2)生成物のフェノールが更に酸化される過剰酸化反応を抑制

3)デコイ分子使用で、天然に存在する酵素をそのまま利用
   遺伝子操作による酵素変換にかかる時間とコストを大幅に削減

ーーー

産業技術総合研究所は2002年1月、丸善石油化学(当時)、NOKと共同でフェノールの一段階反応法の開発に成功したと発表している。

反応器にパラジウム薄膜で被覆した多孔質アルミナ細管を用い、150-250℃で、管の外側と内側の一方に水素を流し、他方にベンゼンと酸素を流すことによって、フェノールを得るもの。

酸素のベンゼン環への導入は、パラジウム膜上に吸着した水素が解離活性化し、このままの状態で反対側へ透過し、酸素分子を捕まえ、活性化した酸素を放出し、これがベンゼン環の二重結合に付加することによって起こる。


ーーー

これらの技術については、大量生産ができるのか、既存法と比べて競争力のあるコストで生産できるのかが問題である。





  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

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