「no」と一致するもの

宇部興産は11月24日、中国の蘇州工業園区の工商行政管理局がNovolyte Technologies (Suzhou) に対し、宇部興産の 商標権の侵害行為の停止を命じ、罰金を科すという内容の行政処罰決定を行ったと発表した。

宇部興産はリチウムイオン電池用電解液で世界トップレベルのシェアを持ち、中国内でも広く「PURELYTE」の商標で拡販中だが、Novolyte は自社の電解液に「PUROLYTE」の商標を使用している。

宇部興産によると、本年夏に工商行政管理局から、Novolyteが「PUROLYTE」の商標を使用しているが、宇部興産の知的財産権の侵害にならないかとの問い合わせがあった。
宇部興産ではこの事態を知らなかったが、「E」が「O」となっているだけで、わずか1字しか違わず、明らかに商標権侵害と断定できたため、直ちに当局に対し侵害行為の停止を求める手続きを行なった。

当局側はこれに基づき、侵害行為の停止を命じ、罰金を科すとの行政処罰を決定した。

罰金額は
不明だが、宇部に対する損害賠償ではなく、当局に入るという。侵害に対する損害賠償には司法処理が必要。

中国では商標権侵害が広く行われているが、被害者からの要請に基づくのではなく、当局側が調べて当事者に連絡し、摘発するというのは日本でも考え難く、珍しい。罰金稼ぎかとも邪推される。

Novolyte Technologies (Suzhou) は、米国のArsenal Capital Management LPの子会社でリチウムイオン電池用電解液と高機能溶剤のメーカーのNovolyte Technologiesの中国子会社。

Novolyteは2008年10月に、コンパウンドメーカーのFerro Corporation からファインケミカル事業(電解液、溶剤、ホスフィンなど)を買収した。Baton Rougeに電解液の工場を持つ。
蘇州の中国子会社もFerroが設立したもので、「PUROLYTE」の商標は米国、中国ともにFerroが取得している。

このため、本件は模倣ではなく、たまたま両社が似た商標を取っていたもの。

なお、中国での商標登録申請は宇部の方が早く、宇部にとって有利だが、米国での申請はFerroの方が早い。

    中国での申請   米国での申請
宇部興産のPurelyte   2000-9-26     2006年
FerroのPurolyte   2004-2-1    2002年

このため、宇部が米国に輸出する場合には逆にやられる可能性もある。       

 

 

 

Kohlberg Kravis Roberts(KKR)は11月23日、伊藤忠商事などとともに、米エネルギーグループのSamson Investment Co.を72億ドルで買収すると発表した。

KKR、伊藤忠と米国の投資ファンドのNatural Gas PartnersとCrestview Partnersの4社のグループが同日、私企業としては米国最大の石油開発・生産会社の一つであるSamson Investment を買収する契約を締結した。

KKRが60%、伊藤忠が25%、NGP Energy Capital ManagementCrestview Partnersが残り15%を出資する。
買収完了後はSamson Resourcesに改称する。

Samsonは1971年設立で、米国で1万以上の油田の権益を所有し、そのうち、4000以上を運営している。

近年は非在来型資源権益を競争力のある価格で取得し、石油と天然ガスのバランスのとれた資産を保有しており、今後はこれらの開発を促進して2021年には日産16億立方フィート(天然ガス換算)への生産拡大を計画している。

主なものは以下のガスシェールと油田。

シェール:Bakken(下図)、Powder River(ワイオミング州北東、モンタナ州南東)、Green River(下図)、
      Cana Woodford(下図)、Haynesville/Bossier(下図)
油田:Granite Wash(北テキサス)、Cotton Valley(東テキサス)

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伊藤忠も11月24日発表した。

同社ではSamsonの25%株式を10.4億米ドルで買収するとしている。

KKR発表の72億ドルの25%は18億ドルで、差はSamsonの借入金の肩代わりか?

伊藤忠は長期保有を目的とした戦略的投資としており、同時に Samsonが生産する天然ガスの出資比率に応じた引き取り権(LNG換算年間100万トン:ピーク時)を確保し、米国に持つガストレード会社の販売拡大に加え、米国シェールガスの国際競争力に注目し、将来のアジア向けLNG輸出ビジネスも視野に入れた取り組みを行うとしている。

伊藤忠商事は、持分権益数量を現在の3万4千バレル/日から2015年迄に7万バレル/日以上に積上がる計画で、今回の買収を通じてこの目標達成を図る。

同時に、非在来型資源開発事業への参画を強化し、オペレーター機能も備えた本案件を北米における天然ガス事業の中核と位置付け、天然ガス・LNGトレード機能の拡充を目指す。

ーーー

伊藤忠は2010年10月、米国のエネルギー・電力・建設関連複合企業 MDU Resources Group Inc.の子会社で石油天然ガス開発会社のFidelity Exploration & Production Company との間で、米国ワイオミング州Niobraraエリア約88,000エーカーの石油ガス鉱区権益の25%を取得し、シェールオイル開発事業に参画する契約を締結している。

2010/10/19 伊藤忠、米国のシェールオイル開発に参加、商社の非従来型石油/ガス開発出揃う

北米のシェールガス開発では、日本の各社が開発に参加している。各社のシェール開発状況

 

付記 

国際石油開発帝石(INPEX)は11月29日、日揮と共同でカナダの石油・天然ガス開発会社NexenがカナダのBritish Columbia州北東部のHorn River、CordovaおよびLiardの各地域に保有するシェールガス鉱区に40%の権益を取得することで合意したと発表した。
(40%を取得するINPEX Gas British Columbia にはINPEXが82%、日揮のカナダ子会社が18%を出資する)

このうち、Horn River地域の鉱区では、既に原油換算で日量約 8千バレルの生産を開始している。

今後、Horn River、Cordova両地域の鉱区で本格的な開発作業を進め、両鉱区合計で原油換算で日量約 200千バレル)規模の生産を目指し、Liard地域の鉱区についても、シェールガス開発生産に向けて作業を進める。

Nexenは元Canadian Oxydentalで、石油・天然ガス(北海、西アフリカ、メキシコ湾など)、オイルサンド(カナダのアルバータ州のAthabasca oil sands開発及びThe Syncrude Project への参加)とこのシェールガスを主たる事業としている。


   


 

「オマハの賢人」と称される米国の投資家Warren Buffetが11月21日、福島県いわき市の超硬工具大手のタンガロイのインサート(刃先交換チップ)の新工場の竣工に出席した。
3月に予定されたが、震災と原発事故で延期となっていた。

タンガロイは1929年に芝浦製作所と東京電気が日本初の超硬合金を開発し、「タンガロイ」と称して市販したのが始まりで、1934年に共同出資で「特殊合金工具」を設立した。
その後、「東芝タンガロイ」と称していたが、2004年にMBOにより独立し「タンガロイ」に改称した。

タンガロイは現在は、イスラエルに本社を置く超硬切削工具メーカーのイスカル(ISCAR)を中核とする切削工具メーカーグループIMCグループ(International Metalworking Companies B.V.)に帰属する。

グループにはISCAR、タンガロイのほか、米・独のIngersoll Cutting Tools Ltd.、韓国のテグテック(Taegutec Ltd.)など10社以上によって構成されており、超硬切削工具業界では世界第2位の売上高を誇る。

IMCは事業拡大のためにM&Aを必要としたが、資金がないため、Buffettの投資を求めた。
BuffettはIMCの会長の「小さな家族主義」経営に惚れ込み、2006年5月に50億ドルでIMCの80%を取得した。

その後もBuffettはIMCの経営は経営陣に任せた。

IMCはリーマン・ショック直後の2008年11月、主力顧客の自動車業界が設備投資を一斉に凍結したため大赤字に転落したタンガロイを買収した。
そのような状況下で2009年春、IMCはタンガロイ社長が温めていた100億円強の新工場の建設計画の実行を指示した。

今回の竣工式は、「タンガロイ復活の象徴」のイベントである。

ーーー

来日に際してのWarren Buffettの記者会見での発言は以下の通り。

・日本は何があっても前進をやめない国だと改めて確信した。

・持続的に成長できて、競争力があり、欠かせない事業を持つ企業に投資する。

BuffettのBerkshire Hathawayの主な投資先は以下の通り。  

  Coca Cola   132 億ドル
  Wells Fargo  111  
  IBM 107  
  American Express 65  
  Procter & Gamble  47  
  Kraft Foods  31  
  Johnson & Johnson 28  

 

Buffettは11月14日、IBMの株式約5.5%を取得したと発表した。
これまで「ハイテク株はわからない」として、IT株への投資を控えていた。
IBMの成長性や事業戦略に注目しているとした。

・オリンパス問題は大きな驚きだったが、こういうことは米国(エンロン事件など)でも欧州でもどこでも起こる。

・欧州政府への信認が低下している。

「各国が個別通貨を持っていないことが解決の妨げ」
「リーマン・ショックより危機が深刻」

・米国でもかなりの割合の人びとが、所得・資産の格差拡大に不満を持っている。

Buffettは本年8月、米紙の意見欄への寄稿で、富裕層の課税率は中間所得層よりも低く米国の税制は不公平となっているとの見解を表明した。

昨年の課税所得はほぼ4000万ドルだったと公表、納税が690万ドル、所得税率は17.4%で、「秘書の税率よりも低い」とした。
株式の配当やキャピタルゲインは15%の上限税率が適用される)

これを受け、オバマ大統領は、高所得層向け増税提案を「バフェット・ルール」と呼んだ。

 

 

Sinopecは11月11日、ポルトガルの石油大手Galp Energia のブラジル子会社Petrogal Brasil の30%を48億ドルで取得したと発表した。加えて、Petrogal BrasilのGalp Energia からの借入金の13億ドルの30%分を肩代わりする。

Sinopecでは、今後の開発投資の30%も含めると、最終的な投資は51.8億ドルになるとみている。

Petrogal Brasil はブラジルでPetrobras と組んで、21のプロジェクトに参加している。その中でSantos Basinのpre-salt層(深海の海底の岩塩層の更に下の層)にあるLula油田が最も重要である。

1974年の革命で国有化されたポルトガルの4社、SACOR、CIDLA、SONAP、PETROSULが1976年に合併してGALPが設立された。
1999年にポルトガル唯一のリファイナリーを持つGALPと、天然ガスの輸入・販売会社の
Gás de Portugalが合併し、Galp Energiaとなった。2006年に上場。

ーーー

CNOOCが50%出資するBridas CorporationがBPからアルゼンチンのPan American Energyの60%持分を買収して100%子会社にする計画は取りやめになったが、これは買い手側になんらかの思惑があってのことと思われる。

2011/11/14 BP、Pan American Energy の持株のBridas Corporationへの売却を取り消し

これは別として、中国勢の南米の資源を求めての動きは続いている。

  Sinopec によるOccidental Petroleum からのアルゼンチンの石油権益買収

2010/12/17 Sinopec、Occidental からアルゼンチンの石油権益を買収

  SinochemによるStatoilからのブラジル油田権益買収

2010/5/28 中国中化集団、ブラジル油田に30億ドル出資

  CNPC によるベネズエラのOrinoco地区の油田権益40%取得(9億ドル)

2010/2/15 国際石油開発帝石と三菱商事、ベネズエラで石油開発に記載

 

 

米国務省は11月10日、カナダ・アルバータ州の原油を米南部テキサス州などの製油所に運ぶパイプライン計画 Keystone XL を2012年の大統領選挙後まで凍結すると発表した。 

付記

オバマ大統領は2012年1月18日、これを認可しないと発表した。
安全性や環境保全などが完全には保証できないとの見解を示した。


オバマ大統領は3月22日、CushingからGulf Coastまでのパイプラインの建設の推進を決め、関係する役所にすみやかに認可するよう指示した。
 共和党の
ベイナー下院議長は「大統領の認可さえ必要としないパイプラインの部分で功績を上げようとしている」と批判した。

中西部ネブラスカ州の水源地帯を経由することなどから環境団体が計画中止を要求しており、オバマ政権はSand Hills地域を避ける新ルート検討も進める。

今後の計画は2013年以降に決定される。大統領は「米国民の健康や安全、環境への影響に懸念があり、疑問に答える時間が必要だ」とした声明を発表した。

大統領はこのパイプライン計画で、石油の安定的なソースと数千人の雇用を求める声と、大統領がこれを認めた場合には来年の大統領選では支持しないとする環境保護団体のおどしの挟み撃ちとなった。

オバマ大統領は大統領選の争点となりそうな問題を多数、凍結している。

・スモッグの基準のレビューを2013年まで
・北極海の深海油田のリースを少なくとも2015年まで
・発電所の石炭灰の新基準を取りやめ

TransCanada 社が建設計画中のKeystone XL パイプラインは、カナダのオイルサンドを採掘・処理した合成原油の輸入拡大を目指す取組みで、既に操業中のKeystone パイプライン(Phase 1-2)が、カナダ産合成原油を米国中西部製油所に輸送するのに対し、現在検討中のKeystone XL パイプライン(Phase 3-4)はメキシコ湾岸製油所まで輸送する。

このうち、Phase 4が問題となっている。

ネブラスカ州の1/4を占めるSand Hills 地域は湿原地帯で、Ogallala Aquifer (帯水層)の上にある。

ネブラスカ州の責任者や住民はSand Hills 地域への懸念に加え、Great Plains 諸州の飲用水のソースであるOgallala 帯水層を横切ることに懸念を表していた。

 

オイルサンドについては 2011/4/14 「岐路に立つタールサンド開発」

TransCanada は国務省と共同で新ルートを探すが、遅延の結果、計画が中止となり、数万人の建設従業員その他の仕事がなくなり、数十億ドルの税収入がなくなるかもしれないとし、その場合、大量の石油を輸入せざるを得なくなると述べた。

 

なお、TransCanadaは、Cushingから メキシコ湾岸に延長するKeystone XL Phase Ⅲについて、政府の認可次第で来年初めには建設できるとの見通しを示している。

ーーー

カナダのEnbridge Energy Partners もカナダの石油をシカゴ経由でCushingまでパイプラインで運んでいる。


同社はConocoPhillipsから米テキサス州とオクラホマ州を結ぶ Seaway Oil Pipelineの権益の50%を1,150百万ドル取得した。

残り50%の権益を持つ同業の米Enterprise Products Partners LP と共同で同パイプラインの運営にあたることになるが、輸入原油をFreeport, TXからCushing に輸送していたSeaway Pipelineを2012年第2四半期までに逆向けにし、WTI原油を受け渡し場所のCushingから製油所の集まるメキシコ湾岸に輸送する。

2011/11/17 WTI原油価格急騰

 

 

 

 

 

 

WTI原油価格急騰 - 化学業界の話題

WTI原油価格が高騰している。

10月4日に本年最安値の75.67$/bbl をつけた後、上昇に転じ、10月14日には90$を超えた。
11月7日には95.52$、15日には99.37$となり、16日に100$を超え、一時102.89$を付け、終値は102.59$となった。
 (その後の時間外取引で103.37$となった。) 

付記 その後、17日は98.82$、18日は97.41$と下落。
   Cushing の余剰在庫解消(下記)が期待したほどは見込めないのではないかとの懸念。

他方、北海ブレントは北海油田のトラブル、リビア紛争による軽質・低硫黄の高品質原油の途絶で急騰し、WTIとの格差は6月央には22$、10月央には一時28$近くにまでなった。

しかし11月16日は、欧州債務問題への懸念やリビアの石油生産増の期待で、終値は111.88$に下がり、WTIとの格差は9.29$にまで縮まった。

最近までの北海ブレントとWTIの価格差にはいろいろの理由がある。
基本的には米国経済の低迷があるが、WTI原油の受渡し制度の問題や、欧州と異なり、リビア原油の影響がほとんどないことなどである。

WTI(West Texas Intermediate)は、米国テキサス州で産出される原油。
生産量は多くないが、米国の石油先物市場であるNYMEXが一日数億バレル の取引を行っているため、世界の指標となっている。

WTI原油の市場取引の大部分は売買差額のみの決済で、現物の受け渡しはほとんど発生しないが、現物はオクラホマ州Cushingにある貯蔵庫のみで受渡がされることとなっている。

付記

20世紀の初め、Cushingは近辺の油田の開発・製造の中心で、2つの製油所が稼働していた。

その後、油田が枯渇し、重要性は低くなったが、無数のパイプラインや石油タンク群が残っており(市のニックネームは "Pipeline Crossroads of the World")、このためNYMEXが1983年にWTI原油の公式受け渡し場所とした。

CushingにはWTI原油のほか、ノースダコタ州のオイルシェールなどが集まり、更に、カナダ・アルバータ州の原油やオイルサンドを処理した合成原油が下記の Keystone XL PipelineやEnbridge Energyのシカゴ経由のパイプラインで運ばれている。
 (なお、Keystone Pipeline はCushingの北のネブラスカ州Steel Cityから分岐して東のイリノイ州Patokaにも伸びている。)

他方、Cushing から大需要地かつ輸出基地のあるメキシコ湾岸地域に送り出すパイプラインは存在しないため、割高なタンクローリーや列車、バージを利用するしかない。

昨年末からCushing
の在庫が積みあがっており、投機家の思惑も重なって売り浴びせられていた。

なお、米国の石油在庫は現在減少基調にあり、Cushingの在庫は、4月に付けた史上最高水準から25%も減っている。 これが最近の価格上昇の一つの理由である。

11月16日のWTI原油価格の急騰の理由に、Cushingの在庫に影響を与える発表があった。

カナダのパイプライン運営会社 Enbridge Energy Partnersは11月16日、米石油大手ConocoPhillipsから米テキサス州とオクラホマ州を結ぶ Seaway Oil Pipelineの権益の50%を1,150百万ドル取得することで合意したと発表した。
残り50%の権益を持つ同業の米Enterprise Products Partners LP と共同で同パイプラインの運営にあたる。

Seaway Pipeline はこれまで、輸入原油をFreeport, TXからCushing に輸送していた。

EnbridgeとEnterprise Productsは同日、このパイプラインを2012年第2四半期までに逆向けにし、WTI原油を受け渡し場所のCushingから製油所の集まるメキシコ湾岸に輸送すると発表した。

Seaway Pipelineの輸送能力は当初は15万bbl/dだが、2013年には40万bbl/dに拡大する。

更に、カナダからのKeystone Pipelineを運営するTransCanadaも、Cushingからメキシコ湾岸に延長する Keystone Pipeline (Phase 3)について、政府の認可次第で来年初めには建設できるとの見通しを示した。

これらの措置が実現すれば、WTIの価格圧迫要因となっているCushingの余剰解消につながるとしてWTI価格が急騰した。

付記

11月25日の日本経済新聞はConocoPhillipsがSeaway Oil Pipelineの権益を売却した背景について述べている。

Seaway Oil Pipelineの逆送を期待する声は以前から多かったが、ConocoはWTI価格が安い方が精製マージンが大きいため、これに難色を示していた。
しかし、
TransCanadaのKeystone PipelineのPhaseⅢ(Cushing→Gulf Coast)が完成するとSeaway Oil Pipelineの資産価値が低下する恐れ(6.7億ドルとの試算)があるため、高値で売り抜けた。

 

 

11月13日午後3時24分ごろ、東ソー・南陽事業所(山口県周南市)構内にある第二VCMプラント(年産能力55万トン)で爆発・火災が発生、社員1人が死亡した。
14日午後3時30分に消防が鎮火宣言した。

同工場では13日6時頃、EDCプラント不具合が生じ稼働を停止、点検中だった。
10人が午前6時ごろから、不具合箇所から約100メートルの場所で、塩ビモノマーなどを貯蔵タンクに一時抜き出す移液作業をしていたという。
塩ビモノマーを精製する工程に直径10メートルの空洞ができており、ここで爆発が起きたとみている。

2次災害を防ぐためなどとして、同事業所全体の約8割のプラント稼働を緊急停止した。

 付記

東ソーは11月18日、南陽事業所の排水口からの排水に含まれるEDCが排水基準値を超過していることが判明したと発表した。
漏えいしたEDCが冷却用散水とともに流出したと推測される。
同社では冷却用散水を停止し、土嚢を構築してプラント外への流出を防止する。

同社はわが国最大のVCMメーカー。
PVCでは大洋塩ビに属し(ペーストは東ソーとして製造販売)、各工場にVCMを供給するとともに、隣接する徳山積水にも供給するほか、中国や東南アジア子会社向けを含め、大量の輸出を行っている。

能力は以下の通り。(単位:千トン)

VCM     PVC
南陽 No.1 250
No.2 550
No.3 400
小計  1,200
四日市 254
合計 1,454

 

 
大洋塩ビ
  東ソー     68%
  三井化学 16%
  電気化学 16%
電気化学・千葉          90 VCM
京葉モノマーとスワップ
(パイプ)
東ソー・四日市 310 東ソー四日市からパイプ
三井化学・大阪 158 南陽からタンカー輸送
小計 558  
東ソー
(ペースト塩ビ)
南陽 28 パイプ
徳山積水工業
  積水化学 70%
  東ソー    30%
南陽 114 東ソー南陽からパイプ
合計 700  

事故を起こした第二VCMは、山口県などから停止命令を受けた。

残る2基も法定の定期修理などで現在は停止しており、国内PVCの減産は必至で、海外のPVC子会社も原料調達で対応を迫られる。

 

 


 

宇田川社長は記者会見で、「損失額はまだ計算できないが、業績の下方修正を行う可能性がある」とした上で、100億円単位の復旧費用がかかる見通しを示した。

東ソーは11月15日に取締役会を開催し、今回の事故による当期の業績が不透明であることから、第2四半期決算発表で3円とした中間配当を無配とし、同じく3円としていた期末配当は未定に修正した。

 

ーーー

付記 11月18日夜 発表

同事業所内の塩ビモノマー設備は現在、1-3号機すべてがなお停止している。
第一塩ビモノマー設備(年産25万トン)は定修のため停止中。
第三塩ビモノマー設備(40万ン)は、火災事故の原因特定が必要なことから自主的に停止している。

同事業所のその他のプラントでは、東ソー・エスジーエムの石英ガラス工場に建屋・設備損傷の被害が生じ、現在運転停止中。

また、二次災害防止のため、以下の製造設備、連結子会社工場が現在自主的に停止している。今後、安全を確認し次第、順次再開する。

【停止中】
・ ポリエチレン(LDPE)
・ クロロプレンゴム(CR)
・ クロロスルフォン化ポリエチレン(GSM)
・ ペースト塩ビ
・ ジルコニア
・ 一酸化炭素
・ アニリン
・ 日本ポリウレタン工業

【稼動中】
・ 電解(最低ロードで稼働中)
・ 動力
・ セメント
・ 重曹
・ 臭素
・ エチルアミン
・ ハイシリカゼオライト
・ 東ソー ・ ファインケム
・ 東ソー ・ エフテック
・ 東ソー有機化学
・ 東ソー ・ シリカ
 

付記 ペースト塩ビは12月後半に生産開始した。 

なお、同社が2012年2月3日に発表した損益予想では、
 第二・第三VCMは3月末まで停止
 プロセスの異なる第一VCMは3月1日の運転再開
を想定している。
 


 


 

電気化学は11月8日、Sinochemに対し乾式アセチレン発生技術を供与したと発表した。
Sinochemは、この契約に基づき、平煤神馬集団に同技術のサブライセンスを行った。
他に中国の数社より当技術の引合いがあり、順次対応する予定。

Sinochem はエネルギー、農業資材、化学品、ファイナンス、不動産をコア事業として展開する国営企業。

平煤神馬集団は、河南省、湖北省、江蘇省、上海、陜西省をはじめ、中国全土で事業展開している大型国有企業グループで、主要事業は石炭、ナイロン66、塩ビ、苛性ソーダなど。

中国石炭工業協会が2010年11月に発表した「中国石炭企業ベスト100」ランキングでは、
 第1位は神華集団
 第2位は河南煤業化工集団
 第3位は平煤神馬エネルギー源化工集団となっている。

乾式アセチレン発生設備は、粉砕したカーバイドと必要最小量の水を反応させてアセチレンガス発生させ、副生する消石灰を数%の水分を含む乾燥状態で排出することを特色とした設備。

  カーバイド法アセチレン

石灰石を焼いて生石灰に還元。CaCO3→CaO+CO2
生石灰とコークスの混合物をカーバイド炉に投入し、電極放電で得られる2,000度C以上の高温下でカーバイドを製造。 CaO+3C→CaC2+CO
カーバイドからアセチレンと水酸化カルシウム(消石灰)を製造。 CaC2+2HO→C2H+Ca(OH)2

中国ではアセチレン法塩ビ生産の拡大で、カーバイドの生産量も増加している。

しかし、中国のカーバイドメーカーは年産5万トンに満たない企業が殆どで、その多くが非効率な小規模設備で生産しており、環境問題や電力不足の要因となっている。

中国政府は2004年以降、過剰能力、廃棄物対策、公害防止などの理由で、小規模設備の規制を続けてきた。

2006年5月、カルシウム・カーバイド工場について、年1万トン以下の炉、開放型の炉、環境基準に満たない炉は停止。
2010年8月、4万トン以下の多数の老朽カーバイド工場に停止命令が出された。

アセチレン法PVCについては、2004年5月に年産8万トン以下の新設を禁止、2005年12月にはこれを12万トン以下に変更した。

2008年11月に行われた第3回日中省エネルギー・環境総合フォーラムで、中国カーバイド工業協会から日本カーバイド協会に対して、環境・省エネ対策について打合せしたいとの申し入れがあったことがきっかけとなり、その後の工業会等での協議を経て、電気化学の乾式アセチレン発生設備の実績が認められた。

電気化学では、今般の技術供与が、同社が日本のカーバイド化学のパイオニアとして果たすべき社会的責任であると認識しているとしている。

中国ではカーバイド法PVCは70%以上を占めている。

なお、中では、2000-05年の5カ年計画で水銀法電解は廃止され、現在は使われていない。
 

 

 

BPは11月7日、Bridas CorporationからPan American Energy の持株60%の購入契約を終了するとの通知を受け取ったと発表した。

BPは2010年11月28日、アルゼンチン最大の原油輸出企業のPan American Energyの持株(60%)を、残り40%を保有するBridas Corporationに売却する契約を締結したと発表した。

Bridasは対価として70.6億ドルを現金で支払う。うち35.3億ドルを前払いとして12月に2回に分けて支払い、残りを2011年前半に予定される取引完了時に支払う予定であった。

Bridas CorporationはアルゼンチンのCarlos Bulgheroni氏傘下のBridas Energy Holdings が50%、中国のCNOOCが50%を保有している。

  2010/12/1 BP、アルゼンチンのPan American Energy の持株をBridas Corporationに売却

現時点でアルゼンチンと中国の独禁法当局の承認が得られていない。
契約では全ての条件が満たされない場合は、2011年11月1日以降、双方はいつでも契約を終了できることとなっている。

BPは、前受金として受け取り、 (売却益ではなく)短期債務として処理している35.3億ドルを11月14日に返金する。

BPは長期に保有してきた貴重な資産を取り戻してhappyとしており、当面は資金確保の必要がないため、非戦略的資産の売却のみとし、この売却の代わりに追加で資産を売却する計画はないとしている。

当初予定していた450億ドルの資産売却を2013年末までに延長する。

BPはまた、契約上、当局から独禁法上の認可などを得る責任はBridas Corporationのみにあるとし、Bridas を非難した。

CNOOCでは、Bridas Corporationは今後、これまで通り、40%株主としてPan American Energy に参加を続けるとし、CNOOCはBridas Energy Holdingsとのパートナーシップを強化し、アルゼンチンでの活動を更に拡大すると述べた。 

ーーー

本件は非常に不思議な話である。

当初は2011年前半に取引完了が予定されていたが、今まで延び延びとなった。
しかもその理由が、アルゼンチンと中国の承認が得られていないことという。

両国が何かを問題として認めなかったという事情はなさそうである。

通常は
なにかが問題の場合は、企業と当局が交渉して問題の解決を図るが、その動きもない。

この程度の買収が競争制限を起こすとみなされるとは考えにくい。
CNOOCのアルゼンチンでの活動の拡大を中国が承認をしないというのは理解できない。

買い手側が契約後に何らかの理由で解約を図り、解約料の支払いを避けるために、契約の期限が来るまで引き延ばした可能性がある。


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これは中国の石油会社が本年に買収に失敗した二番目のケース。

本年2月にPetroChinaがカナダの天然ガス最大手のEncana Corporation から天然ガスの権益の50%を54カナダドルで買収することで合意したと発表したが、6月に条件が折り合わず、交渉を中止している。

2011/2/16  PetroChina、カナダの天然ガス権益取得

 


 


 

 

 

三菱商事は11月10日、英国のAnglo American plc から同社が100%保有するチリの銅資産権益を保有するAnglo American Sur S.Aの株式24.5%を53.9億米ドルで買収すると発表した。 

Anglo American から打診を受けたものとされるが、Anglo American は別途、チリの国営資源大手チリ銅公団(CODELCO:Corporacion Nacional del Cobre de Chile)に株式の49%購入のオプションを与えており、三井物産がこの資金を供給する契約を締結している。今後、紛争を引き起こす可能性がある。(後述)

Anglo American Surは、チリ国内にLos Bronces銅鉱山、El Soldado銅鉱山、Chagres銅製錬所、並びに大型の未開発鉱区などの優良資産を保有する。
現在の銅の生産量は年間約26万トンで、Los Bronces銅鉱山の拡張後(2012年フル操業)は合計生産量は年間約44万トンとなる。

Los Bronces銅鉱山:現在生産量 22万トン2012年 40万トン
   近隣にLos Sulfatos鉱区及びSan Enrique Monolitoト鉱区の有望未開発鉱区が存在

El Soldado銅鉱山:生産量 4万トン

Chagres銅製錬所:年間約14万トンの銅アノードを生産

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チリ銅公団(CODELCO)によると、同公団はAnglo American Surの株式の49%を取得する権利を有しており、そのために三井物産との間で短期つなぎ融資の契約を締結した。

三井物産の発表(10月12日)によると、三井物産はCODELCOとの間で、CODELCOによるAnglo American Surの最大49%の株式取得資金に関し、67.5億米ドルを上限とする短期つなぎ融資契約を締結した。

また、CODELCOが取得したAnglo American Sur 株式の半分を譲渡することによって返済する権利を借主に与える契約も締結した。

さらに、両社の多面的な関係を構築する一環として、両社は下記の銅売買契約を締結した。

銅売買契約
(1)期間   10年間 (2012年~2021年)
(2)年間平均買取数量   銅精鉱 65,000 DMT
銅地金 12,000 MT
合計  30,000 MT(銅地金換算)
(3)買取価格   市場価格及び市場取引条件により決定


Anglo Americanは
今回の売却に当たり、CODELCOへの売却はAnglo Americanの持分の49%であり、三菱商事への売却部分は除かれるとしている。

これに対しCODELCOは株式取得の権利を確保するための法的措置を模索しているとし、「われわれの権利は明確だ。49%の株式を取得する」と主張した。
そのうえで、
CODELCOの株式取得権利を侵害しない限り、Anglo Americanが残りの株式を売却するのは自由だ、と語った。 

付記

サンティアゴの裁判所は11月15日、CODELCOの求めに応じ、Anglo American に対し、Anglo American Surの株式の追加売却を禁じる命令を下した。三菱商事が取得した株式には影響しない。 

2012年1月2日、CODELCOはAnglo American Surに対し、49%の株式を取得する権利を行使すると発表した。株式取得のため「あらゆる手段を講じる」としている。
Anglo Americanは月末までに回答する方針。

 

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三菱商事は他に、チリ国で以下の権益を保有している。

1)Escondida 銅鉱山プロジェクト(8.25%)   

チリ北部にある世界最大の銅鉱山で、2009年の年間銅生産量は約110万トン。
日本側3社は二回にわたりIFCから権利を取得した。

各社の権益比率は以下の通り。(%)

  当初 1988 2010/6
BHP Billiton 57.50 57.50 57.50
Rio Tinto 30.00 30.00 30.00
International Finance
 Corporation (IFC)
12.50 2.50 -
三菱商事 -  7.00 8.25
三菱マテリアル -  1.00 1.25
日鉱金属 -  2.00 3.00
合計 100.00 100.00 100.00

2)Los Pelambres銅鉱山プロジェクト(5%)

露天堀の銅鉱山としてはチリ国内最大級の生産規模を持つ銅鉱山。チリの首都Santiagの北約200kmの位置にある。銅の副産物としてモリブデンも採掘される。

英国Antofagasta PLC(事業はチリ主体)が所有しており、日本側は1997年5月に同社から取得した。
このプロジェクトには日本輸出入銀行が多額の融資を行っている。

2009年の生産量は銅量で323千トン。

各社の権益比率は以下の通り。(%)

Antofagasta PLC   60.00
Nippom LP
 Resources
日鉱金属 15.00
三井物産 1.25
丸紅 8.75
MMLP
 Holding
三菱マテリアル 10.00
三菱商事 5.00
合計 100.00

3)鉄鉱石生産販売会社 Compañía Minera del Pacifico(CMP)(25%)

チリに本社を置く同国内最大の鉄鉱石生産企業で、チリの年間鉄鉱石生産量のほとんどを占める。
チリの資源大手
CAP(旧Compañía de Acero del Pacífico S.A. de Inversiones)が所有していたが、2010年に三菱商事が株式の25%を取得した。

取引は2つに分かれる。
・三菱商事とチリの鉄鉱石生産会社
Compania Minera del PacificoのJVのCompañia Minera HuascoがLos Colorados鉄鉱山を運営していたが、JVの50%持分と交換にCMPの15.9%を取得
・三菱商事は401百万ドルの増資に応じ、合計25%とする。
・三菱商事の取得価額は合わせて924百万ドルとなる。

 

参考 最近、商社が相次いで資源への投資を行っている。 

2011/5/21 住友金属鉱山、チリの銅鉱山開発に参加 (住友金属鉱山と住友商事)

2011/11/3  丸紅と三菱商事、石炭事業を拡大  丸紅(カナダ)、三菱商事(豪州クイーンズランド州)

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2011/6 伊藤忠、コロンビアの炭鉱に出資

伊藤忠は米国Drummond Company との間で、同社グループが100%保有しているコロンビアで操業中の炭鉱及び輸送インフラ資産に20%出資する契約を締結したと発表した。

約15.235億米ドル(約1,265億円)で取得すると共に、同炭鉱から産出される一般炭の日本向け独占販売権を獲得する

炭鉱は露天掘りで埋蔵量は19億トン、生産数量は25百万トン/年。
インフラは40.96%出資の鉄道会社と100%保有の貨車及び専用積出港。

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