「no」と一致するもの

中国の独占禁止法(反壟断法)は2008年81日に施行された。

2008/8/4 中国、独占禁止法施行

施行後3年強が経過した。その間、企業統合について500件程度の申請があったという。

その内、拒否は1件のみ、条件付き承認は7件で、うち日本企業は三菱レイヨンのLucite買収とパナソニックのサンヨー買収の2件である。
 (2011年10月12日、公取委競争政策研究センターセミナー 時建中 中国政法大学教授の講演)

しかし、実際にはこの他に、承認を得られる可能性が少なく、統合を断念し、申請を取り下げたケースがある。
このほか、中国企業の反対を受け、不許可の仮決定を下したケース(後に承認)もある。

 

〔拒否ケース]Coca-Colaによる中国匯源果汁集団の買収

Coca-Colaによる中国最大の果汁メーカー、中国匯源果汁集団の買収に関しては、中国商務部は2009年3月にこれを不承認とした。

Coca-Colaが匯源社の「美汁源果粒橙」と「匯源果汁」という有名ブランドを押さえ、炭酸飲料での支配力と合わせ、潜在的競争者の参入を妨げるなどの理由をあげ、本取引が市場での競争を阻害するとした。

時教授によると、Coca-Colaは商務部の問題点指摘に対し、対応策などでの交渉を全く行わず、商務部としては不承認とするしかなかったという。

2009/3/24  中国、コカ・コーラの果汁大手買収を承認せず

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〔条件付き承認ケース]

InBev のAnheuser Busch 買収

2008年11月にベルギーのビール会社 InBev が BudweiserのAnheuser Busch を買収したが、中国商務部は以下の条件を付けて承認した。

 (1)青島ビールに対するAnheuserの株式保有率27%を増加してはならない。
 (2)
InBev の主要株主もしくは主要株主の株主に変化が発生した場合には、ただちに商務部に通告すること。
 (3)珠江ビールに対する
InBevの株式保有率28.56%を増加してはならない。
 (4)華潤雪花ビールと北京燕京ビールの株式保有を求めてはならない。
     華潤雪花は華潤創業と米Miller の合弁会社で中国販売量ナンバーワンビール(シェア15%)

2008/12/1 中国の独禁法、初の海外での合併ケース

② 三菱レイヨンのLucite International 買収

中国商務部は2009年4月、以下の条件付でこれを承認した。

  1.能力除去

中国Luciteは5年間、生産能力の50%を第三者に原価(製造コスト+管理費、利益なし)で供給する。原価は独立した監査人の監査を受ける。(買収後6ヶ月以内に行う。正当な事情があれば、更に6ヶ月延長。)

Lucite中国は2009年11月に50%分の売却先を中国商務部に提案、2010年1月4日、商務部の承認を得た。

ルーサイト中国(上海市、MMAモノマー年産能力101千トン)の50%相当を中国国内外の企業4社に販売する。
売却価格は「製造コスト+管理コスト」で、売却契約締結日より5年間。

  2.5年間の扱い

中国Luciteは三菱レイヨンからは独立した管理体制で運営する。
その間、両社は価格や顧客について情報交換しない。
この約束に反した場合、25万~50万元の罰金を課す。

  3.5年間の新事業禁止

商務部の許可なしで次の行為を行わない。 
1)中国でMMAモノマー、PMMAレジン・板のメーカーの買収
2)中国で新しくMMAモノマー、PMMAレジン・板の製造

2009/4/25 中国商務部、条件付で三菱レイヨンのLucite International 買収を承認

③ Pfizer のWyeth買収

2009年1月にPfizer がWyeth を680億ドルで買収すると発表した。
   2009/1/27 
Pfizer、Wyeth を買収

中国商務部はこの買収の審査を行っていたが、2009年9月、Pfizerの豚マイコプラズマ性肺炎ワクチン(RespisureとRespisure One)の中国本土の事業の売却を条件に買収を承認した。

この分野でのシェアが49.4% (Pfizer 38%, Wyeth 11.4%)となり、2位のIntervet の18.35%をはるかに上回る。
その他は10%未満。また、新規参入も難しいとした。
 

④ GMによる自動車部品メーカーDelphiの買収(垂直型企業結合)

米国の自動車部品メーカーDelphi(1999年にGM社から分離・独立)は2005年10月にChapter 11を申請した。

再生計画の一部として、GMが米国の4工場と世界中のステアリング事業とを買収した。
(GMは10億ドル以上の債務を引き受けるとともに、20億ドルの債権を放棄し、17.5億ドルを投資)

中国商務部は、GMによるDelphiの中国のステアリング事業買収に関して審査をしていたが、2009年9月、以下の条件付でこれを承認した。

・GMとDelphiが、Delphiの他の中国の需要家に関する情報を交換しないこと。
 (GMによる秘密情報取得の防止)

・Delphiが他の中国の自動車メーカーに、差別なしに、部品を市価でタイムリーに供給を続けること。

商務部は競争上の懸念を2社と議論し、2社から解決案が出てきたとしている。

2009/10/15 中国独禁法による合併審査

⑤パナソニックの三洋電機買収

本件は1カ月の初期審査の結果、実質審査に入り、8月14日、商務部が競争上の問題がある旨指摘、双方は協議を持ったが合意に至らず、審査の60日の延長した。
(日本、米国、EUからも同様の問題点指摘を受けた。)

その後、三度の双方協議を経て、ようやく問題解消措置について合意、2009年11月5日、以下の条件付で承認を得た。

  問題は下記の3つの電池市場で、いずれについても関連地理的市場は世界市場とされた。
  中国域外の工場の売却を条件としたのは本件が初めて。

 1) 自動車用ニッケル水素電池 (合併で中国市場で77%のシェア)

パナソニックの茅ケ崎市の湘南工場の第三者への売却

パナソニックは2011年2月1日、同工場のニッケル水素電池事業を中国の電池メーカー湖南科力遠新能源に売却すると発表した。特許を含む知的財産権を使用出来る契約。
受け皿会社に移管し、全株式を4千万元(約5億円)で売却する。

トヨタとの合弁のパナソニックEVエナジーへの出資比率を40%から19.5%に引き下げ、取締役指名権ほかの放棄、JVの社名からの「パナソニック」の除外

2010年6月にプライムアースEVエナジーと改称

 2) コイン型リチウム二次電池(同上 62%のシェア)

三洋電機の鳥取県岩美町の鳥取工場の第三者への売却(FDKに譲渡)

 3) ニッケル水素電池(同上 46%のシェア)

三洋電機の群馬県高崎市の高崎工場の第三者への売却(FDKに譲渡)

又は、三洋電機の蘇州市の工場か、パナソニックの無錫市の工場の売却

⑥ NovartisによるAlcon買収

Alconは1945年に米テキサス州で薬局として創業し、点眼薬やコンタクトレンズケア商品など眼科分野の最大手メーカー。
1978年にNestleが買収し、77%の株式を保有していた。

Novartisは2008年にNestleから25%を、2010年に残り52%を買収して77%の株主となった。
2011年4月、NovartisはAlconを統合した。(株式交換手続きのため新株発行)

商務部は2011年8月、条件付きでこれを承認した。
商務部の懸念する問題点と条件は以下の通り。 

 ・眼科用抗感染、抗炎症化合物

中国での合計シェア60%超
Novartisシェアは1%未満で、中国及び全世界関連市場から戦略的撤退を商務部に言明 

条件:Novartisは中国で販売しない

 ・コンタクトレンズ・ケア製品

合計シェアが世界で50%となり、中国では約20%で英国Hydronの30%に次ぐ。
HydronがNovartis製品の独占的販売業者となっており、今後協調での競争排除、制限の可能性がある。

条件:NovartisはHydronとの契約を打ち切る。

⑦ ロシアの肥料メーカーのOAO Silvinit OAO Uralkali の合併

    2010/12/25 ロシアの2大肥料会社が合併へ
  
商務部は2011年6月、価格および供給に関する条件付きで承認した。
中国国内への供給に影響を与える可能性から、中国当局が外国企業の合併承認に際して価格および供給に関する条件を設定した初めてのケース。

条件:
・塩化カリの中国需要家への供給で、直接販売や貨車・船での供給など、従来のやり方を踏襲する。
・塩化カリの中国需要家の要請(数量、グレードなど)に応じる。
・価格交渉では従来の慣行を踏襲し、過去の経緯や中国市場の特殊性を勘案する。

ーーー

〔不許可の仮決定→承認ケース]

Nokia Siemens NetworksによるMotorola通信機器部門の買収

フィンランドのNokiaとドイツのSiemensの合弁会社Nokia Siemensは2010年7月、米通信機器大手Motorolaの無線インフラ事業の大部分を12億ドルで買収することを発表した。

これに対し、中国の大手通信機器ベンダー、華為(Huawei Technologies)は自社の知的財産が不正にNokia Siemensに渡るとして、この買収の差し止めを求める訴えをシカゴの連邦裁判所に起こした。

華為とNokia Siemensは、世界の通信機器関連市場でスウェーデンのEricssonにつづく第2位の座を争っていた。
華為もMotorolaの通信機器部門買収に動いたが、米政府が安全保障上の懸念を示したことなどからNokia Siemensが買収することになったという経緯がある。

Motorolaは過去10年にわたり、華為との製造する通信機器を自社ブランドで再販するなど、協力関係をつづけており、これらの機器に含まれる華為の知財や業務上の秘密などが、同社の了承なく第三者の手に渡ることが問題とした。「われわれの保有する知的財産をMotorolaが第三者に渡すことを認めるという合意はしていない」とした。

中国商務部は2011年3月に不許可の仮決定を下した。

しかし、4月に華為とNokia Siemensとの間で、係争中のすべての訴訟を解決するとの和解が成立し、商務部は同月、これを承認した。

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〔断念ケース]

Arcelor Mittalによる中堅鉄鋼メーカーの莱蕪鋼鉄(山東省)買収 (独禁法施行以前)

合併前のArcelorは2006年2月に莱鋼の親会社との間で莱鋼株の38.41%取得に合意した。
その後、MittalがArcelorを買収してArcelor Mittalとなったが、Mittalは既に湖南省の湖南華菱鋼鉄集団の傘下企業に出資していた。

鉄鋼産業を基幹産業と位置づける中国政府はミタルの動きに警戒感を強め、買収価格の引き上げや、一層の技術移転を要求した。

Arcelor Mittalは認可取得の見込み薄と判断し、2007年12月に断念した。

②The Carlyle Groupによる建設機械メーカーの徐工集団工程機械の買収

Carlyleは2005年10月に徐工の株式の85%取得に合意した。

しかし、「国有資産の流出」などの批判が強まり、出資予定比率を2度引き下げたが、当局の審査が長期化し、結局は合意から2年9カ月で、出資断念となった。

③ Rio Tinto と BHP Billiton の鉄鉱石統合

Rio Tinto と BHP Billiton は2010年10月、 鉄鉱石統合の断念を発表した。

契約調印後、各国の独禁法当局に認可の申請をしていたが、認可を得るのが難しい状況となったため、断念した。
公正取引委員会も両社に対し「独占禁止法に違反する恐れがある」と指摘している。)

2010/10/18 Rio Tinto と BHP Billiton、鉄鉱石の製造JVを断念

インドシナ半島で7月下旬から続く記録的な大雨により、タイの各地で大規模な洪水が発生している。

タイでは7月中旬から北部(チェンライ県、ナーン県など)、東北部(ノンカイ県、サコンナコン県など)で豪雨による洪水被害が報告された。
その後、度重なる台風などの降雨で川が増水し、堤防の決壊などにより洪水被害が広がった。

10月初めに11のダムが基準貯水量を超え、10月4日には北部のプミポンダムで放水量を増やしたことが下流地域の増水に拍車を掛けた。

10月18日現在で全国で317人の死亡が確認されている。

特にタイ国土を南北に流れるチャオプラヤ川流域の被害が大きい。

首都バンコクに近いアユタヤ県では、世界遺産の寺院や仏像に水が押し寄せ、県内5カ所の工業団地もすべてが浸水した。

タイ政府はバンコク中心部の浸水阻止に懸命だが、潮位が上がる時期とも重なっており、予断を許さない状態が続く。

タイには多くの工業団地があり、多数の日本企業が進出している。

洪水は10月にアユタヤ県を襲った。

10月4日にサハラタナナコン(Saha Rattana Nokhon)工業団地(42社、うち日系35社)、
         9日はホンダ、ニコンなどのロジャナ(Rojana)工業団地(218社、うち日系147社)、
       13日にはキヤノン、ソニーなどのHi-Tech工業団地(143社、うち日系100社)、
       14日夜にはバンパイン(Bangpa-In)工業団地(84社、うち日系30社)、
       16日はFatory Land 工業団地に浸水した。

アユタヤの工業団地の浸水で被災した日系企業は合計で約310社に達した。

17日には、首都バンコク北側のパトゥムタニ県にあるナワナコン工業団地(Navanakorn)の一部で浸水が起きた。
18日には敷地の9割が冠水し、2日以内に全体が水没する危険が高まったため、タイ政府は操業停止と従業員の避難を命じた。
タイでは二番目に大きい団地で、入居190社のうち、日系は104社と半分以上を占める。

水がバンコクに近づいたため、タイ政府の洪水対策本部は18日夜、北東部につながる運河の水門を相次いで開いた。
上図のバンコク市防衛計画の通り、バンコク都心部が浸水するのを避けるため、チャオプラヤ川の水を都心部の東と西の運河に流すもの。

これに伴い、知事は北東部の7つの区(住民100万人)に避難準備を求めた。
ホンダの二輪車組み立て工場のあるラカバン(
Ladkrabang)工業団地(283社、うち日系49社)も含まれる。工業団地側は浸水の恐れがあるとして各企業に操業停止を要請した。
 

日系自動車の拠点は次の通りで、現在、浸水したのはアユタヤのRojana団地のホンダだけだが、部品を供給する企業の多くが浸水で操業を停止したため、10月20日以降、日系完成車メーカー8社の全てが操業を停止する。

 
トヨタ
 チャチェンサオ県 Gateway City工業団地
   同      Bangplee 工業団地
 サムットプラカーン県 Samrong
          (Bangplee の西隣)

日産自動車
 サムットプラカーン県 
Bangsaothong
           (
Bangpooの北隣)

 

ホンダ
 バンコック Ladkrabang工業団地   

 

   

 

タイのティラチャイ財務相は10月17日、3.5~4%程度と予測された国内総生産(GDP)成長率が1~1.7%押し下げられるとの見通しを表明した。

 

 

Bloomberg は10月13日、DuPontがDuPont Teijin Filmsとパウダーペイント事業の買い手を探していると報じた。
前者についてはGoldman Sachs Group が、後者についてはGreenhill & Co. が売却を手伝っている。
売却額はそれぞれ、10億ドル未満と見られている。

Ellen Kullman女史が2009年1月にCEOに就任して以来、71億ドルでのDanisco買収などで高成長分野に舵を切っている。
これまで大きな売却はしていないが、いよいよ時期が来たとしている。

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帝人はポリエステルフィルム分野では、世界6カ国で米国デュポンと合弁事業を行っている。

帝人は1957年に英国ICIのPETフィルム製造技術を導入。
DuPontは1998年にICIからポリエステル事業を買収。

両社は2000年1月、折半出資により世界最大のポリエステルフィルムのグローバル合弁会社(Teijin DuPont Films)を設立した。

日本をはじめ、米国、欧州(ルクセンブルグ、英国)、アジア(インドネシア、中国)の6カ国に地域合弁会社が設立されており、工業用、包装用、磁気用の幅広い用途向けに、それぞれの地域のニーズに対応した高機能ポリエステルフィルム製品群を、地域の販売網を通じて販売している。

インドネシアは帝人子会社、中国は
DuPont JVで、それぞれを両社のJVに移した。

 国  社名   出資比率 %  備考
帝人 DuPont その他
日本 帝人デュポンフィルム 50.1 49.9    
米国 DuPont Teijin Films U.S. 49.9 49.9 (*1) 0.2 *1 帝人デュポンフィルム
英国 DuPont Teijin Films U.K.  50.0 50.0    
ルクセンブルグ DuPont Teijin Films Luxembourg 50.0 50.0    
インドネシア P.T. Indonesia Teijin DuPont Films 50.1 49.9   元は帝人100%P.T.Indonesia Teijin Films
中国 DuPont Hongji Films Foshan
(佛山杜邦鴻基薄膜)
中国JV  51 (*2) 49 *2 佛山塑料集団(Foshan Plastics Group)
DuPont
持株をDuPont Teijin Films China に移管
(49.0) (51.0)

 

帝人は2008年3月決算で米国及びルクセンブルグでのJVの固定資産の減損処理を実施し、大幅減益となった。
需要低迷や原燃料価格の高騰により、特に米国のフィルム事業を取り巻く経営環境は厳しく、急速な業績回復は難しい状態となったのが理由。

DuPont Teijin は、2009年2月の米国Circleville, OH 工場の閉鎖、同6月のLuxembourg工場の1生産ラインの休止に加え、米国Florence, SC工場を段階的に縮小し、2010年末に閉鎖した。
これにより、米国におけるポリエステルフィルム製造拠点を、Hopewell, VA
工場に集約した。

付記

帝人は10月28日、中国のJVのDuPont Hongji Films Foshanの能力増強を発表した。
厚物差別化品市場に向け、本年2月に閉鎖した米国Florence工場の遊休設備1ラインを移設し、薄物差別化品市場に向け1ラインを新設、現行の年産50千トンを77千トンとする。

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大豆タンパクと大豆食物繊維製品のJVのSolae LLCの売却先を探していると報じた。
14億ドル~17.5億ドルでの売却を目指し、ファンドや欧州企業と交渉しているという。

Salaeは1958年に Protein Technologies International として設立され、当初は産業用大豆タンパクのみであったが、その後食品などに展開した。

1997年にDuPont がRalston Purinaから買収、2003年4月にBunge Ltd.が28%を出資してSolae LLC を設立した。

まず、DuPontのProtein Technology事業とBungeの北米と欧州の素材事業を新会社に移行し、第二段階でBungeのブラジルの素材事業を移行した。

DuPontは現在、 売却方針を変換し、SolaeのBunge持株の28%を購入し、100%子会社にすることを検討しているという。
Daniscoの事業とSalaeの事業は相互補完的で、収益向上、高成長が期待できるとみている。

Solaeの需要家には、大豆ミルクのメーカーの 8th Continentがある。

2000年にDuPontとGeneral MillsのJVとして設立され、2008年にStremicks Heritage Foods に売却された。

ーーー

DuPontはまた、ケチャップやマスタードなどのプラスチック容器を生産する Liqui-Boxの買い手を探している。

DuPontは同事業を2002年に333百万ドルで買収した。 

付記

DuPont は2011年12月30日、Liqui-Box をSterling Group LP (private equity firm) に売却した。

最高裁は9月30日、カネカ及び三菱レイヨンが上告していたMBSカルテルに関する公取委の審決取り消し請求について上告を棄却した。東京高裁の判決が確定した。

ーーー

2003年2月、欧州委員会の要請に基づき、米国司法省、カナダ競争局、日本の公正取引委員会はモディファイヤー(塩ビ樹脂強化剤=MBS)の販売を巡る国際カルテルに関する同時調査に着手した。

9カ国の14社以上のメーカーに調査が入った。Akzo NobelRohm & Haas などのほか、日本では三菱レイヨン、呉羽化学(現クレハ)、鐘淵化学(現 カネカ)に調査が入った。

クレハは同事業からの撤退を決定し、2003年1月1日にこの事業を提携先のRohm & Haas に譲渡している。

米国においては、20064に容疑なしとして不起訴となり終了した。
欧州委員会による調査も2007年1月に終了した。

しかし、米国のMBSの購入者から、価格維持等の米国独占禁止法に違反する行為により損害を被ったとの主張で、3社の子会社に対してそれぞれ損害賠償請求訴訟(民事集団訴訟)が提起された。

・クレハは2005年11月、原告団に対して500万ドルの和解金を支払うとの内容で、原告団と和解した。
・カネカは2007年4月、原告に対して590万ドルの和解金を支払うとの内容で、原告と和解合意した。
・三菱レイヨンは2008年1月に
原告に対して500万ドルの和解金を支払い、和解することで合意した。

2008/1/29 MBS価格カルテル問題

ーーー

日本では公取委は2003年12月11日、三菱レイヨンと鐘淵化学に対し、排除勧告を行なった。
呉羽化学に対しては、公取委は2005年7月、
2億6,849万円の課徴金納付命令を出した。(呉羽化学は既に事業を譲渡しているため排除勧告は不要)

これらは審判に付されたが、公取委は2009年11月9日、両案件について審判審決を行い、三菱レイヨンとカネカに対しては排除命令、クレハに対しては2億6,849万円の課徴金納付命令を認めた。

クレハはこれを受諾した。

三菱レイヨンとカネカは、「審決内容には実質的な証拠に基づかない部分が多々ある」と判断し、東京高裁に審決取消訴訟を提起した。

東京高裁は2010年12月10日、この請求を棄却した。

1999年と2000年の合意が成立したことが認められ、クレハを含む3社の共同行為で、競争の実質的制限がもたらされていたことは明らかで、クレハ離脱後も、同様の行為が再び行われるおそれがあると認めざるを得ないから、排除措置を命じる必要があるとした。

これに対し両社は最高裁に上告したが、最高裁は今般、上告事由に該当しないとしてこれを棄却し、東京高裁の判決が確定した。

なお、公取委は2010年6月に三菱レイヨンとカネカに課徴金納付命令書の送達をした。

  カネカ     6億 458万円
  三菱レイヨン 5億4361万円
  合 計     11億4819万円

これに対し両社は審判を請求し、公取委は2010年8月27日、審判開始決定を行った。

この審判は現在もまだ続いているが(次回は11月17日)、最高裁の上告棄却を受け、両社が審判請求を取り消す可能性はある。
(カネカは最高裁の上告棄却について、「当社の主張が認められず残念ですが、司法判断によるものであり、今後は審決の内容に従って対応します」としている。)

付記

2012年5月30日、上記課徴金に関する審決が出た。

  カネカ     6億 458万円
  三菱レイヨン  5億4361万円 

ポリプロピレンのカルテルが、2000年5月の立ち入り検査の後、2010年12月にようやく決着したが、本件も長期にわたっている。

Solvayは10月5日、DowとのJVのMTP HPJV (Thailand) がタイのMap Ta Phutで世界最大の過酸化水素工場をスタートさせたと発表した。

2007/8/3 Dow と Solvay、タイにHPPO用の過酸化水素製造のJV設立

Solvayの独自技術によるもので、ユニークな大規模プラントにより建設費と製造コストが節減できる。省エネ、節水の面で環境面でもメリットがある。

能力は33万トン(100%ベース)で、DowとSiam Cement のJVのMTP HPPO Manufacturing のPO(HPPO)の製造用に供給される。

2008/6/16 Dow、タイで過酸化水素法PO工場建設

原料プロピレンは、Dow と Siam Cement Group のRayong の新しいナフサクラッカーから供給する。
能力はエチレン90万トン、プロピレン80万トン。OCT(Olefins Conversion Technology) で大量のプロピレンを製造する。Siam が67%、Dow が33%出資。

2006/10/24 ダウ、アジア進出を促進 

今回のタイのプラントはPO製造用のワールドクラスの過酸化水素工場としては2番目のもの。

最初のものは2009年末に稼働したアントワープの23万トンプラントで、SolvayとBASFのJVにDowが参加してパートナーシップを設立した。DowとBASFのJVの30万トンHPPO用に供給している。

2009/3/12 ダウとBASFのHPPO法PO生産開始

タイの過酸化水素はHPPO向けが主であるが、生産量の1/4は Solvay Peroxythai Limited が外販する。
Solvay Peroxythai は東南アジアの過酸化水素の主メーカーで、Map Ta Phutに35千トンのプラントを持ち、過去20年以上にわたり、高純度品を食品やエレクトロニック業界に供給している。新プラントからの製品で、供給能力は従来の2倍以上となる。

参考

Evonik(旧Degussa)は2011年1月、インドでのHPPOプロジェクトに関し、インドのソーダ会社 Gujarat Alkalies and Chemicals Limited (GACL)と覚書を締結した。

EvonikとUhdeが共同開発した過酸化水素法プロピレンオキサイド(HPPO)をGACLが建設し、過酸化水素工場をEvonikが建設するもの。GACLの拠点のインドGujurat 州Dahej に建設する。

EvonikとUhdeはこの技術を韓国のSKCに供与し、SKCは蔚山に100千トンのHPPOプラントを建設、2008年にスタートした。

Evonikは子会社Evonik Degussa Peroxide Koreaで過酸化水素を製造しているが、2010年11月、SKCはこの子会社に45%出資し、協力関係を強化した。

2011/1/20 Evonik、インドでのHPPOプロジェクトでインドのGACLと覚書締結

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POの製法については下記参照。

  2006/3/24 ダウとBASF、POを新製法で生産

BASFは10月10日、SinopecとのJVの南京のBASF-YPC の第一次増強計画のうち、最初の2工場が生産を開始したと発表した。

エチレンの増強(600千トンから740千トンへ)に続き、今般、ブタジエン抽出(120千トン)と非イオン界面活性剤(60千トン)が生産を開始した。

残りの各プラント(下表 参照)も年末までに稼働する。

第一次増強は14億ドルをかけるもので、2009年9月に建設を開始した。

2008/3/22 BASF-YPC、増設計画の承認を申請

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BASFとシノペックは2010年12月に、第二次増設計画についての覚書を締結している。

投資額は約10億ドルで、C3、C4誘導品を拡張する。16万トンのアクリル酸の増設や新しくブチルアクリレートの新設などを含む。
また、ワールドクラスの過酸化水素法POも新設、BASF-YPCに統合した旧Yangzi-BASF StyrenicsのSMも増設する。

HPPOはダウとBASFが共同開発したもので、アントワープの両社のJVが第1号。
ダウは
Siam Cement Group とのJVタイにプラントを建設している。

2010/12/24  BASFSINOPECBASF-YPCの第二次増強を検討 

第一次、第二次増強計画の内容は以下の通り。(単位:千トン)

  当初      第一次増強 第二次増強
エチレン   600   →740  
C4 Comlex Butadiene ー   ◎(100120  
2-propylheptanol  ◎  増設
Isobutene  ◎ 80  
Polyisobutene  ◎ 50  
EO EO 250  +80 & EO purification  
EG 300     
EO Derivatives Butyl glycol ether ー   ◎  
Non-ionic surfactants  ◎ 60  増設
Amines complex Ethanolamines
Ethyleneamines
Dimethylethanolamine
ー   ◎  
DMA3 (dimethylaminoethylacrylate) ー   ◎  
LDPE 400     
Acrylics value chain アクリル酸  160     +160
アクリル酸エステル 215     
Super-absorbent polymer (SAP) ー   ◎ 60  
butyl acrylate ー   ー  ◎
C4オキソアルコール  250   増設  
蟻酸 50     
プロピオン酸 30   増設  
メチルアミン 30     
ジメチルホルムアミド(DMF 40     
PO(HPPO) ー   ー  ◎
Yangzi-BASF Styrenics Ethylbenzene 130   BASF-YPC統合  増設
Styrene monomer  120   増設
Polystyrene  200   
EPS  52   

 

メキシコのコングロマリットのGrupo KUOは9月22日、江蘇省南京市の江蘇金浦集團(Jiangsu GPRO Group)との間で50/50JVを設立することで合意したと発表した。

両社はINSA GPRO (Nanjing) Synthetic Rubber Co.を設立、60百万ドルを投じて、南京市に第一期年産能力30千トンのニトリルゴム(NBR)プラントを建設する。

Grupo KUOの100%子会社で、合成ゴム、エマルジョンを製造するINSA (Industrias Negromex, S.A. de C.V.)が技術を担当する。

中国当局の承認を得次第、着工し、2014年初めに生産開始する計画。

NBRは産業用に広く使用されており、Grupo KUOでは子会社 INSAがすでに中国に輸出している。

江蘇金浦集團は2005年に南京市に、同社が40%、Sinopec揚子石化が60%出資のJV、揚子石化金浦橡膠(YPC-GPRO Rubber)を設立し、南京ケミカルパークに第1期 100千トンのSBR プラントを建設している。(第2期計画 100千トン)

ーーー

江蘇金浦集團は江蘇省南京市に本拠を置く化学会社で、従業員3,000人。プロピレンオキサイド、ポリエーテル、PP、ガソリン添加剤、潤滑油、酸化チタン等々を生産している。

江蘇金浦集団はまた、韓国の錦湖石化との50/50合弁会社、南京GPRO錦湖石化を設立し、南京の南京ケミカルパークで電解、PO、PPGの生産をしている。2008年に生産を開始した。

能力はPOが80千トン(当初の発表では100千トンであった)、PPGが50千トン、カセイソーダが100千トンとなっている。

2006/11/28 韓国の錦湖石油化学、南京でPO生産

BASFとIneosのスチレン系事業を統合した50/50JVのStyrolutionが、各国の独禁法当局の承認を得て、10月1日に発足した。
社名は、"Styrenics" と"Solution"を合成したもの。

BASFとIneosは2010年11月30日、両社のスチレン、PS、ABS、SBC、その他スチレン系コポリマーとそのブレンドの事業を新しい50/50JVのStyrolutionに統合すると発表した。

統合に先立ち、BASFは2011年1月1日にスチレン系ポリマー事業を分社し、Styrolutionを設立した。
両社は2011年5月27日にJV契約を締結した。

2010/12/2 BASFとIneos、スチレン事業を統合 

新会社の製品は、SM、PS、ABS、スチレンブタジエンブロックコポリマー(SBC)、スチレン系コポリマー(SAN、AMSAN、ASA、MABS)と、それらのブレンド(ABS/PA、ASA/PA、ASA/PC)で、発泡ポリスチレン(EPS)は対象外で両社に残る。

なお、当初新会社に含まれるとしていたIneosのスペインTarragonaのABS(18万トン)はEUの独禁法上の指示でIneosに残る。社名をElixとし、今後売却される。

付記

2011年12月31日、Sun European Partners (Sun Capital Partners の子会社)がStyrolutionとの間でElix Polymers 買収で合意した。

発表では、SM、PS、コポリマーでは世界第一、ABSでは世界第二となる。

2010年ベースの売上高は6,441百万ユーロ。

BASFの拠出する事業

ドイツ Ludwigshafen, Schwarzheide PS能力 540千トン
 (2009年80千トン減)
ベルギー Antwerp
韓国 Ulsan PS 250千トン、EPS 80千トン、ABS 250千トン
(SM 320千トンは2009年にSK Energy に売却)
インド Dahej  
メキシコ Altamira  

   対象製品

Commodities SM
PS
ABS
SBS
(スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体)
コポリマー Luran® (SAN) :スチレン/アクリロニトリル コポリマー
Luran® HH (AMSAN):α-Methylstyrene-acrylonitrile copolymers
Luran
® S (ASA)styrene acrylonitrile copolymers that have been impact-modified with acrylic ester rubber
Terblend
® N (ABS/PA)ABS/Polyamide 6
Terluran
® HH (ABS-High Heat)modified ABS that meets the requirements for thermally stressed components
Terlux® (MABS)Methyl methacrylate-acrylonitrile- butadiene-styrene-polymer
Styroflex
® (SBS)Styrene/butadiene block copolymer

   対象外製品

発泡ポリスチレン  
発泡ポリスチレン用のLudwigshafen SM/PS事業  
南京のBASF-YPCSM/PS事業
(旧
Yangzi-BASF Styrenics
SM 120千トン
PS  200
EPS
 52

Ineosの拠出する事業 

Ineos ABS
ドイツ  Cologne  
スペイン  Tarragona 180千トン
 (付記 独禁法当局指示で除外、売却)
 
インド  Vadodara  
タイ  Map Ta Phut      
  Lanxessから買収 能力:730千トン→550千トン
Ineos Nova SM/PS
  SM
 千トン
PS
 千トン
EPS
(対象外)
Sarnia, Ontario 430        
Indian Orchard, MA   165  
Channahon, Illinois   410  
Decatur, AL   193  
Bayport, TX 770    
Texas City, TX 455    
(北米合計)  (1,655)  (768)  
Trelleborg, Sweden   85  
Breda, The Netherlands   90 90
Marl, Germany   180 85
Wingles, France   200 100
Ribecourt, France     90
(欧州合計)   (555)  (365)
       
総合計 1,655 1,323 365
Ineos SM ドイツ Marl
 エチルベンゼン 550千トン、SM 380千トン

ーーー

なお、BASFと並ぶスチレン系の大手であったDowも、スチレン系事業のStyronを投資会社Bain Capital Partnersに売却している。 (DowはStyronに7.5%を出資)

2010/6/18 ダウ、スチレン系事業売却完了

Styronは2011年末に社名を Trinseo に変更する。

Styronの社名はスチレン系からきているが、同社はSMやPSを今後も中心とはするが、それ以外にも展開する計画であり、社名を変更する。

TrinseoはIntrinsic(「固有の」、「本質的な」、「内在する」)から取った。
同社の製品や技術が、需要家の製品にintrinsic な役割を果たし、需要家の成功に不可欠なものになるという意味。

なお、PSの商標は従来通り Styron を使用する。

昭和シェル石油は10月1日、サウジの電力公社 (SEC) 及びSaudi Aramcoと共同で同国初となる太陽光発電事業をスタートした。

サウジ南西部沖のFarasan島に立地した出力500kwの発電所の運転を開始した。約28,000バレルの軽油に相当する発電量が見込まれる。
2万人の住民向けに電力供給を実証することで、今後の同国内での再生可能エネルギー本格普及への基盤づくりをする。

 

この太陽光発電所は昭和シェルの100%子会社のソーラーフロンティアが建設を進めてきたもので、経済産業省と昭和シェル石油が協力し、中東における日本の最先端技術の普及を目指した政策の一環として、政府による資金援助を得ている。

ソーラーフロンティアの独自技術で生産するCIS薄膜太陽電池は、銅、インジウム、セレンを使用し、結晶シリコン系よりも高温時の温度係数が優れているため、気温上昇時の変換効率が低下しにくいなど砂漠環境に適した特性を有している。
また砂の付着や埃の蓄積を防ぐよう傾斜を付けたフレーム構造や、日本が誇る生産技術に支えられた高い耐久性も特長となっている。

ソーラーフロンティアの世界最大規模の宮崎県の第3工場(年産900MW)は 2011年2月より商業生産を開始している。宮崎第1、第2工場と合わせて、約1GW(1,000MW)のCIS薄膜太陽電池の年産能力の確立を目指している。

2009/5/29 昭和シェル石油、太陽電池事業 1600億円投資

昭和シェルとSECは本年6月1日、本発電所の完成を間近に控え、運営に関する覚書を締結した。

昭和シェルは15年間、本設備を所有し、その後は資産はSECに移管される。

稼働開始後は、SECが操業とメンテナンスを担当し、ソーラーフロンティアは新設のサウジのAl Khobarの事務所を拠点に技術サポートを継続的に提供する。

サウジ政府は、今後の人口増加と石油資源の枯渇をにらみ、2007年にエネルギー戦略を大転換した。
2010年5月にKing Abdullah City for Atomic and Renewable Energy (KA CARE)の設立を決め、原子力と太陽光発電を今後の中心にすることを決めた。

サウジでは電力需要が今後5年は年平均7~8%前後で伸びる予想で、これへの対応は国家的な命題(Aramco CEO)。
サウジの人口は2500万人(外国人700万人を含む)だが、若年層が急増し、2050年には7000万人になるとみられている。

昭和シェル石油は2009年6月、15%の大株主であるSaudi Aramcoと、サウジ国内において太陽光を活用した小規模分散型発電事業の可能性の調査を開始することに合意した。

太陽光発電のパイロットプラントを建設し小規模独立型電力系統(マイクログリッド)への繋ぎ込みなどの技術検討を行い、この結果を受けて同国内での本格的な事業化へ移行する計画。
 
 なお、AramcoのCEOは、宮崎工場の技術を移転し、2~3年以内に昭和シェルと合弁でサウジで電池の製造事業を実現したいとしている。(2011/10/4 日本経済新聞)


サウジにおけるソーラーフロンティアのCIS薄膜太陽電池の設置事例には次のものがある。
 1)アブドラ国王科学技術大学(KAUST)の10キロワット規模の発電設備(2009年運転開始)

 2)10メガワット規模のNorth Park Project(2011年末 稼働予定)

ソーラーフロンティアは2010年10月、Saudi Aramcoに対し10メガワットのCIS薄膜太陽電池モジュールを供給することに合意した。

Dhahran市にあるAramcoのオフィス複合施設 North Park Complexへ電力を供給するため、敷地内の駐車場の屋根上にCIS薄膜太陽電池モジュールを設置するもの。

車両4,450台収容の駐車場(16~18ヘクタール)の屋根上に設置され、発電電力は敷地内のオフィスビルで日中に使用される全ての電力量(一般家庭6,000戸分の電力に相当)を賄うことができる。


 

三菱樹脂は9月28日、長浜工場で半世紀以上にわたり活躍してきた硬質塩ビ板製造用プレス機「3×6-1プレス機」が、日本の科学技術の発展を示す貴重な技術史資料として国立科学博物館の「未来技術遺産」に登録されたと発表した。

今回登録された「3×6-1プレス機」は、3尺×6尺(900ミリ×1800ミリ)サイズの硬質塩ビ板が製造できる国内初の大型機械で、1954年に導入した。製造元は小松製作所。

それまでの硬質塩化ビニル板は、大サイズの需要もなく、製造技術もなかった。
同社では用途の拡大に対応して、本プレス機を導入、様々な板の標準サイズに対応できる本格的な工業用途向けの硬質塩化ビニル板生産技術を確立した。

 

「未来技術遺産」は、国立科学博物館が2008年、わが国科学技術の発展を示す貴重な資料の保存と活用を図り、科学技術の急速な発展の中で、技術を培ってきた先人たちの経験を次世代に継承していこうということで制定した登録制度。

これまでに登録された「未来技術遺産」は下記参照。
   http://www.kahaku.go.jp/institution/sts/material/index.html

 

化学関連のものは以下の通り。

年度 登録番号 名称                                   所在地 製作年 詳細
2008 00009号 国産初期の硬質塩化ビニル管サンプル アロン化成
名古屋工場
1951 PDF
2009 00026号 池田菊苗博士抽出の第一号具留多味酸
― 日本最古のグルタミン酸 ―
東大大学院 1908 PDF
00029号 【 アンモニア合成装置 】 輸入機器
(1) アンモニア合成塔
(2) 混合ガス圧縮機
(3) 清浄塔
― わが国初の本格的なアンモニア合成プラント ―
旭化成
(延岡市)
1923 PDF
00039号 界面活性剤製造設備(TO リアクター)
― 世界で初めてα オレフィン・スルフォン酸塩の工業化に成功 ―
ライオン
大阪工場
1976 PDF
2010 00051号 合成ガス循環機
― 日本初の国産アンモニア合成装置 ―
昭和電工
川崎事業所
1930 PDF
00056号 ビニロン(ポリビニルアルコール繊維)
― 国産初の合成繊維 ―
クラレ
岡山事業所
1950 PDF
00057号 塩化ビニル被覆電線・ケーブル見本
― 現存最古級の塩化ビニル被覆電線 ―
古河電工
(市原市)
1950~
1955頃
PDF
00072号 上中啓三 アドレナリン実験ノート
― 高峰譲吉によるアドレナリン発見を決定づけた実験ノート ―
教行寺
(西宮市)
1900 PDF
2011 00080号 硬質塩化ビニル板製造用プレス機
― 日本最古の硬質塩ビ板成形プレス ―
三菱樹脂
長浜工場
1954 PDF
00082号 "テトロン"糸生産第一号機
― 日本初のポリエステル繊維製造装置 ―
東レ
(三島市)
1958 PDF

 

別途、日本化学会は、化学と化学技術に関する貴重な歴史資料の保存と利用を推進するため、化学遺産委員会を設置し、さまざまな活動を行っているが、2010年から「化学遺産認定」を行っている。

2010/3/18 化学遺産認定  
2011/3/17
化学遺産、第二回認定

下記の3つが両方に認定されている。

 化学遺産 第2号 上中啓三 アドレナリン実験ノート(未来技術遺産 00072号) 
                第3号 具留多味酸(グルタミン酸)試料 (
未来技術遺産 00026号)
                第6号 カザレー式アンモニア合成装置および関連資料 (
未来技術遺産 00029号

 

なお、日本化学会では、震災で延期となっていた 2011世界化学年記念として第5回「化学遺産市民公開講座」を下記により開催する。

 日時:
10月27日㈭ 10:30~16:45 
 場所:
学術総合センター2階会議室
 
http://www.chemistry.or.jp/archives/kouza2011.pdf

 

 

 

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358  

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