「no」と一致するもの

経産省化学課は5月14日、「世界の石油化学製品の需給動向」2010年版を発表した。

世界の石油化学製品の今後の需給動向
 
国別データシート
 
2014年までの新増設計画
 
商品別集計データ表

製品別・国別の能力/生産/需要データ (METIデータ組替)

概要は以下の通り。

世界のエチレン系誘導品の需要は2008年に原油や石油製品価格の乱高下の影響を受け、減少に転じた(前年比 -4.2%)。

2009年以降は、世界的な金融危機等の影響が未だ残るものの、世界全体で経済の回復が達成されることを前提に、各国・地域ごとの需要見通しを積み上げると、2008~14年の世界全体の需要の伸びは年平均+3.9%、2014年の需要量は134.2百万トン(2008年比で+27.6%)となる見通し。

中国については、輸出環境は依然厳しいものの、国内需要の回復に伴い、石化需要も2008年夏場(原油下落開始時期)以降、急激に落ち込んだ需要は、09年末には在庫調整も終わり、原油の下げ止感がでたことから、在庫の上乗せ需要も加わり、大きく需要が回復した。

中国の2008~14年の需要の伸びはエチレン換算で年平均 8.0%とみている。
 LDPE 8.1%、HDPE 9.6%、PS 6.1%、PVC 8.5%、
 PP 9.1%、PTA 9.1%

中国は現在のところ、エチレン換算の約5割を輸入に依存しているが、2009年から新設プラントが本格的に稼働を始めており、その自給率が上がり、2014年の輸入比率は約3割まで低下すると見込まれている。輸入比率が低下し、輸入量は緩やかに減少すると見込まれている。



ーーー

今後、中東や中国で大規模コンプレックスが続々完成する。

しかし、ほとんどの製品で現在の能力が既に2014年の需要を上回っている。
中国での新設は当然、輸入品に置き換わるし、中東などの新規設備は既存の老朽設備を淘汰することとなる。
日本への影響は大きい。

上記のとおり、この報告では中国の需要の伸びを年率8%でみている。
各製品で中国の需要の比率がどんどん上がっている。

エチレン換算でみると、需要の増加は驚異的である。
       
  2008年 2014年予想 増加量
中国 19.8百万トン 31.5百万トン 11.7百万トン
米国 20.0百万トン 22.9百万トン  2.9百万トン
西欧計 22.8百万トン 24.3百万トン  1.5百万トン

中国の需要が今後もどんどん伸びるかどうか疑問がある。

製品輸出が今後も伸びるか?
  人民元の引き上げ、労務費アップ、貿易戦争

個人消費が増えるか?
  
「家電下郷」、 「汽車下郷」などの補助金は続かない。
  都市部と農村部の所得格差の拡大(農村部の消費は余り拡大しない)
  消費より貯蓄の傾向(将来への不安)

バブル崩壊の恐れ(住宅価格、株価の異常なアップ)

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2006/2/21 「中国バブル説」でこう書いた。   

(中国の需要予想の)根拠の一つには13億人という膨大な潜在需要の存在と思われる。
しかし実際には三大成長エリア、広東、長江デルタ(上海)、渤海湾(北京、天津、大連)の3億人を現在のマーケットと考えるべきである。これと残りの10億人の所得格差は著しく大きい。
将来は別としてこの数年をとってみると、これら10億人の需要を当てにすることはできない。
仮に三大エリアの3億人が石化製品を日本並み
44kg/人・年)、残り10億人がフィリッピン並み6.5kg/人・年)に消費するとすれば、中国の需要は2000万トンにしかならない。

現在では中国の市場はもう少し拡大はしているが、農村部の状況は余り好転していない。2014年に需要が5割以上も増えるであろうか。

仮に中国の需要が伸び悩めば、大変なことになる。


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各社の営業損益は以下の通り。

前年度については下記参照 
  2009/5/15  
注目会社 2009年3月決算-7 

 

武田薬品工業

減収だが、販売費及び一般管理費が研究開発費を中心に1,816億円の大幅な減少となったことで増益。
 研究開発費減少は、下記の米国事業再編の影響参照。
 その他の販売費及び一般管理費は、円高の影響などで250億円減少

次期は、米国でのプレバシドの特許満了や円高などでの減収と、新研究所の稼動に伴う研究開発費の増加などで減益の予想。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2009/3 15,383 3,065 3,272 2,344 88 92
2010/3 14,660 4,202 4,158 2,977 90 90
前年比 -724 1,137 886 634 2 -2
2011/3 14,000 3,300 3,400 2,200 90 90

米国事業再編によるTAP社の分割・子会社化およびミレニアム社買収の影響

  営業損益 特別利益
2009/3  -2,423億円  713億円
2010/3 -792億円  
増減 1,631億円 -713億円

ーーー

アステラス製薬

円高で172億円の減益、研究開発費が1,590億円から1,955億円に365億円増加。

次期は特許満了などによる減収、製品構成変化による原価率アップで減益予想。
研究開発費は減。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2009/3 9,657 2,504 2,715 1,710 60 60
2010/3 9,749 1,864 1,910 1,223 60 65
前年比 92 -640 -805 -487 0 5
2011/3 9,400 1,520 1,550 1,070 60 65

ーーー

エーザイ

当期は、AkaRx, Inc.買収に伴うインプロセス研究開発費239億円の計上により、営業利益、経常利益および当期純利益は減益。
(税務上の損金とならない)

次期は、これがないため、増益。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2009/3  7,817 918 826 477 70 70
2010/3 8,032 864 797 403 70 80
前年比 214 -54 -29 -73 0 10
2011/3 8,100 1,050 985 650 70 80

2007年12月、がん・救急治療に強みを持つ米国バイオファーマ企業であるMGI PHARMAを総額約39 億米ドルの現金にて買収する最終契約を締結した。
2008/3はMGI Pharma買収に伴うインプロセス研究開発費874億円を計上

ーーー

第一三共

売上高は、2008年11月に子会社化したRanbaxy Laboratoriesの売上高1,466億円の寄与により増収となった。
利益面では、研究開発費は123億円増加したが、増収により増益となった。
営業外損益に、
Ranbaxyでのインドルピーの対米ドルレート変動リスクヘッジによるデリバティブ評価損益がある。
前年度は205億円の損であったが、当年度は172億円の益となり、差引377億円の増益となった。(次期は見込まず)

前年度は特別損失にRanbaxy Laboratories 「のれん償却」 3,544億円を計上している。

次期については、薬価改定の影響、研究開発費増加や新製品発売に伴う販売促進費の増加で減益を予想。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2009/3 8,421 883 546 -3,358 40 40
2010/3 9,521 955 1,031 419 30 30
前年比 1,100 72 485 3,777 -10 -10
2011/3 9,800 900 850 450 30 30

ーーー

田辺三菱製薬  既報 

研究開発費の一時金支払いなどでの増、退職給付費用の増などで販売費及び一般管理費が105億円増加

 

ーーー

中外製薬(12月決算)

タミフル売上高が762億円で前年比678億円増、その他製品でも増収となり、この結果増益となった。

次期については、マイルストーン収入の減少や薬価改定などの要因、営業費・研究開発費の増加で減益を予想。

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2008/12 3,269 516 573 393 15 19
2009/12 4,289 826 904 566 17 23
前年比 1,020 310 331 174 2 4
2000/12 4,185 700 705 440 17 17

ーーー

大正製薬

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2009/3  2,562 379 399 88 12 15
2010/3 2,584 347 367 195 12 15
前年比 22 -32 -32 107 0 0
2011/3 2,620 360 405 245 12 15

2007/3は、主力のドリンク剤の異常気象などにともなう市場の落ち込みが響き、大幅減益となった。

ーーー

塩野義製薬

増収、増益。
(塩野義製薬は2008年10月、米国の中堅製薬会社Sciele Pharmaを総額14億2400万ドルで買収したが、前年度にはこれに伴う仕掛研究開発費 97億円等を含む)

単位:億円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
2009/3      2,275 320 320 157 14 14
2010/3 2,785 524 505 386 18 18
前年比 510 204 185 230 4 4
2011/3 2,950 610 590 390 20 20

ーーー

大日本住友製薬   既報

 


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5月6日の記事の中の「日本産業の化学化」で、二酸化炭素放出削減のための化学反応使用に触れた。

三井化学は「温室効果ガス大幅削減に資する革新的プロセスの開発」を基本戦略のひとつとしている。

その具体的な取組みとして、工場等から排出されるCO2と水の光分解などから得られる水素からメタノールを合成し、その得られたメタノールから石化製品(オレフィン類、アロマ類等)を製造するという「CO2化学的固定化技術」の開発を進めている。

メタノールは通常、天然ガスのメタン成分から得られる一酸化炭素(CO)と水素から合成される。

中国では天然ガスからのメタノール生産が禁止され、石炭を原料とするメタノール生産が相次いでいる。
ダウも神華集団とのJVで、Coal to Methanol
332万トン、Methanol to Olefins 122万トン、及び誘導品生産の起工式を行っている。
  2009/11/10 
ダウと神華集団、陜西省で大規模石炭化学JVの起工式

三井化学が実証に取り組んでいるプロセスはCOに替えて CO2を原料に用いるもので、化学、発電、鉄鋼プラントなどから大量に排出されるCO2を原料に用いることができる。

同社は、地球環境産業技術研究機構RITE)が1990年から1999年まで行った「化学的CO2固定化プロジェクト」に参加し、CO2と水素からメタノールを合成する高活性触媒の開発を続けてきた。

2008年、この工業化実現への第一歩として、CO2分離・濃縮及びメタノール合成工程を実用化技術として確立すべく、実証パイロット設備を建設することとした。

・ 設置場所 三井化学大阪工場
・ 設備能力 約100トン/年(メタノール換算)
・ 投資額 約15億円
・ 建設スケジュール 着工:2008年10月

実証試験プラントでは実際に工場から排出されるガスを原料とし、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)など、触媒には大敵のガスが含まれている。

CO2分離・濃縮は実用化技術を導入、水素については当面は購入または余剰水素の活用するが、大学との共同研究で革新的な水素製造技術開発にも着手した。

水の光分解のよる水素製造は、1967年に当時東京大学工学部助教授だった本多健一氏と大学院生の藤嶋昭氏による実験で成功し、「本多・藤嶋効果」として世界から注目された。
しかし現在のところ、分解効率は非常に低い。

三菱化学と東京大学も、水中に入れ日光に当てると水を分解し、水素を作る可視光型光触媒を開発した。

2009年5月三井化学大阪工場の実証試験プラントで、世界初となる工場の排気ガスに含まれるCO2を原料としたメタノールが合成された。

試験では140トンのC02から100トンのメタノールを作れるのを確認。生産に必要なエネルギーを差し引くと、約70トンのCO2排出を減らせる計算。

課題は生産コストの高さで、商用規模でも天然ガスから作るのに比べ約3倍かかるとされる。(2010/2/27 日経)
いくら環境重視といっても、これでは無理で、実用化にはまだ時間がかかりそうだ。

しかし、水の光分解のよる水素製造も含め、この技術が完成すれば、CO2を原料としたリサイクルシステムが完成し、石油ピーク問題温室効果ガス問題の同時解決となる。

 

付記

本記事に関してコメントをいただいた。

この話は経済性の問題以前にエネルギー関連の基礎理論(熱力学の入門レベル)の面からもナンセンスです。
利用した炭酸ガス以上に炭酸ガスを発生させるからです。

仮に太陽光発電を使うとしても、火力発電が残っている限り、増分的には火力発電による水の電気分解で水素を得て、これを使ってメタノールを作ることとなる。
この場合、使用する炭酸ガスよりも火力発電から発生する炭酸ガスが多いため、ナンセンスというもの。


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米南部ルイジアナ州沖のメキシコ湾で起きた原油の流出は事故から13日が過ぎた5月3日も止まらず、一部沿岸には油膜が漂着した。環境破壊や漁業、観光業などへの影響が心配される。

4月20日夜10時頃、ルイジアナ州ベニス南東約84キロで掘削中の海洋掘削プラットフォームDeepwater Horizon rig で爆発事故があり、作業員11人が行方不明(死亡とみられる)、負傷者は17人おり、うち3人が重傷。爆発当時、施設には126人がいた。

Deepwater Horizon rig は半潜水型の移動式海洋掘削プラットフォームで、掘削量は1日当たり最大8000バレル。
R&B Falconが設計、 Hyundai Heavy Industriesが建設した。R&B Falconを買収したTransocean (140の掘削リグを所有する世界最大の沖合掘削請負会社)が所有し、20139月までBPにリースしている。本年1月から現在の場所で掘削が行われていた。

メキシコ湾の米海域では4月16日現在、55の掘削リグが稼働しているという。

リグは2日後に沈没、水深約1.5kmの海底までパイプでつながれていたが、パイプは破損し、パイプ3箇所から原油が噴出したままとなっている。
パイプの元には自動的に原油流出を止める噴出防止バルブ(blow-out preventer)が備えられていたが、装置が稼動しなかった。

掘削中の油田はBPが65%、Anadarko Petroleum25%を所有している。
残り10%は三井石油開発の子会社MOEX Offshore 2007 LLC。

BPは対策として以下の案を考えているが、時間がかかりそうだ。

1)Robotic surgery
  無人潜水艦(ROV)で噴出防止バルブを稼動させる。

2)Put a lid on it
  パイプの流出箇所にContainment Chamber を下ろし、漏れた原油を吸い上げる。

<p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>

3)Plug it up (抜本策)
  
横から別の井戸を最初の井戸に向かって掘り、泥やコンクリートを流し込み、流出を止める。   

付記  
BP発表(2010/5/5)
    ・折れたパイプの先端にロボットでバルブをつけるのに成功、ここからの漏れは止まった。
     (残り2箇所からの漏れは続く)
    ・
Containment Chamber 1個を現場に輸送、5日に下ろす。
       これまで経験のない深度であり、作業は難航している。
    ・別の井戸の掘削を2日に始めた。完成まで3ヶ月かかる。
   

付記
<p><p>HTML clipboard</p></p>BP発表(2010/5/16)
水深5000フィート(約1500メートル)の損傷した油井から水上の船まで流出原油を吸い上げるRiser Insertion Tube
挿入に成功した。
吸い上げるのは流出原油の一部。「すべての流出原油を回収することはできないが、メキシコ湾に流出している原油の量を減らすための重要な一歩だ」。流出を完全に食い止める方法が見つかるまでの一時的な措置で2回目の試みで成功した。    
   
来週にはゴムタイヤ片とゴルフボールの混合物を油井に吹き込み、泥とセメントで封をする「ジャンク・ショット」という呼ぶ方法を試す計画。

ーーー

原油の流出は事故から13日が過ぎた4月3日も止まらず、ルイジアナ州の一部にはすでに油膜が漂着、湿地の環境破壊や漁業などへの影響が心配される。
また今後、油膜が海流に乗ってメキシコ湾に面する各州に拡大する可能性があり、海岸が大きな観光資源でもあるフロリダ半島の東側でも不安が広がっている。

海洋大気局(NOAA)の推計によると、1日当たり80万リットルの原油が流出。この状態が50日間強続けば、1989年の米史上最悪のアラスカ沖原油流出事故(約4200万リットル)に匹敵することになる。

1989年3月24日、アラスカ州のValdez Oil Terminal からカリフォルニア州に向かっていたExxon Valdez 号が暗礁に乗り上げ、積載量53百万ガロンの20%にあたる1080万ガロンの原油がプリンスウィリアム湾に流出した。

4月30日までにルイジアナ、ミシシッピ、アラバマ、フロリダの各州は非常事態を宣言した。
海洋大気局は、事故現場に近いルイジアナ州などでの漁業を、少なくとも10日以上、禁止することを決めた。

クリーンアップや関連コストは少なくとも125億ドルとみられており、これはExxon Valdezの事故の際より80%多い。
BPは4月3日、クリーンアップのコストを負担すると発表した。

ーーー

オバマ大統領は3月31日、大西洋岸とメキシコ湾東部海岸、アラスカ北部海岸沖での石油・天然ガス探査を拡大する沖合い掘削に関する新方針を発表した。広範なエネルギー戦略の一環だとし、米議員らに対して温暖化ガスの抑制を目指す包括エネルギー・気候変動法案の可決を呼びかけた。

大統領は、米国の競争力維持には輸入原油に依存した現状からの脱却が必要であり、そのためには原子力発電拡充などの一方で自国産原油の活用が不可欠だと強調。油田開発では、新技術を用いることで環境への影響を最小限にとどめると主張した。

しかし、今回の事故を受け、ホワイトハウスは4月30日、メキシコ湾の石油掘削施設で起きた原油流出事故の調査が実施されるまで、新たな地域での石油掘削は認めない方針を明らかにした。「何が起こったのか、回避可能な特殊要因があったのかが判明するまで今後も承認しない」としている。

オバマ米大統領は2日午後、現地を視察した。

大統領は、対策を統括している沿岸警備隊の施設で被害状況や対策の方針について説明を受けたあと、「流出は止まっておらず、問題解決まで時間がかかる可能性はあるが、原油の流出を止めて事態が収拾されるまで、政府として全力を尽くす」と述べた。


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フマキラーとアース製薬は4月28日、フマキラーがアース製薬を対象に行っていた、製造、販売等の差止め請求の仮処分命令申立事件で和解した。東京地方裁判所による和解勧告を受け入れた。

問題製品はフマキラーの携帯型電池式蚊取り器「どこでもベープNo.1 NEO」と、アース製薬の「おそとでノーマットV130」。

両社の争いは、2008年7月にアース製薬が、同社の携帯用虫よけ器の特許権が侵害されたとしてフマキラーに対する特許侵害訴訟を東京地裁に提起したことで始まった。

アースの特許「携帯用害虫防除装置」は、電池式ファンの気流で薬剤を気化させる携帯用害虫防除装置で、使用者が装置を身につけ起立した状態で、上下の排気口から体に沿って薬剤を含んだ気流が放出されることを特徴としている。

アースは2000年から同特許の技術を用いた「蚊に効くおそとでノーマット」を販売しているが、フマキラーが2004年に販売開始した「どこでもベープ No.1」がこの特許を侵害しているというもの。

アース製薬はフマキラー対して、製造販売の中止を求める警告書を送付したが、フマキラーから「特許権の侵害はない」と返答されたことから、提訴に踏み切った。

2009年7月に、今度はフマキラーがアース製薬に対して、不正競争防止法に基づき、アース製薬が製造・販売する携帯型電池式虫よけ器「おそとでノーマットV130」の製造、販売等の差止めを求めて、東京地方裁判所に仮処分命令の申立を行った。

フマキラーの「どこでもベープNo.1 NEO」は、どこでも誰でも手軽に、安全に使用することができる製品として、「使いやすさ」プラス「おしゃれ心」を追求した商品開発に取り組んだ結果、累計250万台を超える販売実績をもつが、アース製薬の「おそとでノーマットV130」は、商品の形態など、極めて類似した商品としている。

需要家が両製品を誤認混同して購入することを懸念した。

これに対し、アース製薬は、フマキラーの商品を模倣した事実は一切ないとして、裁判で争う姿勢を示した。
アースの大塚達也社長は、「何をもって不正競争防止法に抵触するというのか理解に苦しむ。最終的には当社の言い分が通るだろう」
訴訟に不快感をあらわにした。

2009年8月、アース製薬が特許権を侵害されたとしてフマキラーを相手に製品の製造・販売差し止めを求めた訴訟で、東京地裁は請求を棄却した。アース製薬の特許は公知例から容易に類推できると判断し、特許は無効とした。

今回の和解は、2009年7月にフマキラーがアース製薬に対して、不正競争防止法に基づき、「おそとでノーマットV130」の製造、販売等の差止めを求めて、東京地方裁判所に仮処分命令の申立を行った事件に関するもので、和解内容は、アース製薬とフマキラーがそれぞれの製品のパッケージを変更することを主な内容としている。

フマキラーでは、本和解により、需要家が両社の製品とを誤認混同することが回避できるとして、和解に満足しているとしている。

ーーー

なお、アース製薬はフマキラー株を買い増しており、20094での持株比率は11.1%で、筆頭株主となっている。

2008/1/23  アース製薬によるフマキラー株式購入

 


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ConocoPhillips421日、Saudi Aramcoに対し Yanbu での新製油所計画への参加を取り止めると伝えたと発表した。

Saudi Aramco ConocoPhillips 2008516日、これまで検討してきた新製油所計画の実施を決めたと発表した。
50/50JVYanbu Industrial City に日産40万バレルの重質油完全改質製油所を新設するもので、2013年のスタート予定であった。

2008年秋からの世界不況で、Saudi Aramcoは石油開発計画を次々に延期、本計画についても同年12月に予定していた製油所建設の入札を延期した。
Saudi Aramco
ConocoPhillips も、この計画をやることには変わりはないとし、準備作業を進めた。

2008/12/10 サウジアラムコ、石油開発計画を延期

ConocoPhillipsは昨年、2年計画で100億ドルの資産を処分することを決めており、Saudi Aramcoとの関係や、再入札で投資額が大幅に下がったことなどから難しい決断だが、この計画がダウンストリーム部門を減らすという戦略に合致しないことから決めたとしている。

ーーー

これに対してSaudi Aramco ConocoPhillipsの代わりのパートナー候補にアプローチを始めた。
少なくとも
1社の中国企業が候補に含まれている。

どこも参加しない場合は
Saudi Aramco が単独でも実施するとみられている。

ーーー

ConocoPhillips200910月に2010年の投資計画を発表したが、その中で、資金問題の解決とバランスシート強化のため、2年間で100億ドルの資産を売却することを明らかにした。

売却はExploration & Production Refining & Marketingの全体にわたって行い、売却収入は借入金返済に充て、借入金比率を引き下げる。
Exploration & Production
が売却金額の6080%の計画で、売却により、2011年末には生産量で80120MBOED(原油換算日量百万バレル)、埋蔵量で400~600MBOEDの減少となる。

この一環として、同社はロシアのLUKOILの持株20%のうちの半分の売却を検討していることを明らかにした。
同社は2004年9月にLUKOIL
7.6%を購入、その後20%まで増やした。

ConocoPhillipsは 4月12日、カナダのオイルサンド事業会社 Syncrude Canada Ltd の持株 9.03%Sinopecに売却すると発表した。

2010/4/16 Sinopec、 カナダのオイルサンドに投資

このほか、コロラドからオハイオまで1679マイルの天然ガスパイプラインRockies Express Pipelineや米国(アラスカを除く)と西カナダの石油・ガス資産の10%、米国の石油販売用資産が売却対象になっている。

付記

ConocoPhillipsはUAEで40%出資で Abu Dhabi National Oil Company (ADNOC)と共同でShah Gas Field の開発を決めていたが、4月28日、これからの撤退を決めたと発表した。


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BASFがドイツのSpecialty chemical のメーカーのCognisTOBをかけるとの噂が流れている。対価は30億ユーロにもなるとされている。

Cognisについては、BASFのほか、潤滑油メーカーのLubrizolも買収に意欲を持ち、交渉を始めた。

特に CognisCare Chemicals (ヘア・ボディ・オーラルケア剤、スキンケア剤、ホームケア洗剤など)は石油・ガスを直接原料とする製品に比べ景気変動に余り左右されないため、各社の関心の的となっている。

BASFによれば、高級化粧品の需要が回復に向かっており、パーソナルケア化学品市場の回復に力を与えている。
BASFはヘアケア、日除け製品、増粘剤などを開発しており、ケア関連の化学品で34億ユーロの売り上げがある。

Lubrizol Additives部門とAdvanced Materials部門を持つが、後者ではEngineered polymersに加え、Consumer Specialtiesを扱っており、ローションやシャンプーなどのパーソナルケア製品の増粘剤の最大のメーカーでもある。
同社はパーソナルケア分野での拡大を目指している。
Lubrizolの市場価値は65億ドルで、アナリストによれば、30億ドル程度の買収をしても、投資適格格付けを維持できる。

Cognisのオーナーは売り急いではいない。上場も検討している。
BASFLubrizolのほか、DuPontCroda InternationalSolvayDSM なども関心を示しているといわれている。

ーーー

Cognis はドイツのHenkel KGaA の化学部門であったが、1999年にHenkel は強力ブランドと先進技術に全面的に集中するため、化学部門の放出を決定、100%子会社のCognis を設立した。
200111月、投資会社3Permira FundsGS Capital PartnersSV Life Sciences Fundsが買収し、現在に到っている。

現在のHenkel の事業は次の3つ。
 
Laundry & Home CareCosmetics/ToiletriesAdhesive Technologies

Cognis2006年にグローバルの油脂化学事業(脂肪酸、グリセリン、油田用化学品、プラスチック添加剤)をマレーシアのGolden Hope Plantations との50/50JVCognis Oleochemicals (M) に移管した。

Golden Hope Plantations 2007年にKumpulan Guthrie及びSime Darby と合併し、Sime Darbyとなった。
ゴムのプランテーション、不動産、自動車、エネルギーなど多岐にわたる事業を行っている。

2008年11月に、CognisはCognis Oleochemicalsの持分をタイのPTT Chemical に売却、現在はCognis OleochemicalsPTTSime Darby 50/50JVEmery Oleochemicalsとなっている。

Cognisは3つの戦略的事業単位(SBU)を持つ。

(1)Care Chemicals

Hair/Body/Oral Care 
  ヘア・ボディ・オーラルケア剤、 シャンプーコンディショニング剤原料、ヘアカ ラー剤原料、口腔洗浄剤原料
Skin Care
  化粧水・乳液原料、メイク落とし原料、
UV ケア化粧品原料、リキッドファンデーション原料
Home Care
  台所用洗浄剤原料、柔軟材原料、柔軟仕上剤原料
Industrial & Institutional Cleaning
Silicates

(2)Nutrition & Health

Food & Beverages
  栄養補助食品素材
Dietary Supplements
  機能性食品素材 (機能性食品原料、栄養補助食品原料)
Pharmaceuticals & Healthcare
  医薬品原料 (一般用医薬品原料、医薬品添加物)
Food additives
  食品添加物 (色素原料・乳化剤等の食品添加物、品質改良剤)

(3)Functional Products

Coatings
Lubricants
AgroSolutions
Mining & Ion-Transfer Technology

最近の業績は以下の通り。(百万ユーロ)

売上高 Adjusted EBITDA
2009 2008 増減 2009 2008 増減
Care Chemicals 1,457 1,684 -227 212 204 8
Nutrition & Health 325 346 -21 54 65 -11
Functional Products 786 948 -162 100 88 12
Others 16 23 -7 -2 -6 4
Total 2,584 3,001 -417 364 351 13
EBIT 195 192 3
金利(net -130 -212 82
Tax -40 -29 -11
中止事業損益 - -14 14
Net Profit 25 -63 88

ーーー

Lubrizol Corporation1928年に米国オハイオ州クリーブランド市の郊外に設立された。

最初の製品Lubri-Graphは、自動車の重ね板バネのキシミ音を低減するために開発したもので大ヒット商品となった。
そのすぐ後に自動車のエンジン油も商品化し、これらの技術から添加剤の分野に特化した。
1998年はBP ケミカルからAdibis 潤滑油・燃料添加剤事業を買収している。

その後、パーソナルケア部門に進出した。
 
2003年にDow Chemical から、その子会社 Amerchol のパーソナルケア事業の一部を買収。

2004年に英Avecia から添加剤事業を買収。

  同年に米BFGoodrich Performance Materials部門が独立したNoveon 18.4億ドルで買収した。

BFGoodrich 1896年に世界初の空気入り自動車用タイヤを開発した。
1940年には合成ゴムを使用したタイヤを米国市場に初めて投入、1947年には初のチューブレスタイヤを発売している。

同社は1986年に自動車タイヤ事業をフランスの Michelinに売却した。 Michelinは現在もBFGoodrich ラベルでタイヤを販売している。

BFGoodrich 200011月、Performance Materials事業を投資家グループに14億ドルで売却すると発表した。
同事業は20012月にPMD Groupとして独立し、同年7月に Noveon Incと改称した。

BFGoodrichはこれにより航空・防衛産業企業への変身を完了した。

現在、Lubrizolは潤滑油・添加剤の Lubrizol Additives 部門と、Lubrizol Advanced Materials部門を持っている。

Lubrizol Advanced Materials部門は次の製品を扱う。

(1) Noveon Consumer Specialties
     personal carehome carepharmaceuticalpet food formulations

(2) TempRite Engineered Polymers
     Chlorinated polyvinyl chloride (CPVC) resins and compounds

(3) Estane Engineered Polymers
   熱可塑性ウレタン樹脂


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Avecia の変遷 - 化学業界の話題

Merck & Co.は2009年12月、Avecia Groupから英国 Milford に本拠を置く Avecia Biologics を買収する契約を締結したと発表、本年2月1日に買収が完了した。
Avecia Biologics は微生物由来蛋白の生物製剤を専門に受託製造を行っている。現在手掛けている製品には、がん疾患や心臓疾患、脳卒中などを対象にした治療薬も含まれている。

Avecia GroupICISpecialty Chemicals 部門を起源とするが、元の親会社のICIと同様、事業を順次売却しており、今回の売却で残るのは、米マサチューセッツ州Milfordに本拠を置き、短鎖DNARNAを成分とする医薬品製造のため、逐次固相合成法によるオリゴヌクレオチド製剤のプロセス開発及び製造を行っているAvecia Oligo Medicinesのみとなった。 

ーーー

Avecia の起源はICISpecialty chemicals部門で、
 Life Science Molecules (LSM)
 Specialist Colors and Display
 Biocides
 Color additives
 Stahl leather chemicals groups
などから成っていた。

ICI1993年に Biochemicals 部門をスピンオフし、Zenecaを設立したが、Specialty chemicals部門についてもZeneca SpecialtiesとしてZeneca子会社とした。

Zeneca1999年にスウェーデンのAstra と合併し、AstraZencaとなった。

Zeneca Specialtiesのマネージメントは投資会社2社(CinvenInvestcorp)から資金援助を受け、13億ポンドで買収(MBO)を行い、同社はAveciaと改称した。

AstraZenecaは農薬部門も放出、これはNovartisの種子部門と統合してSyngentaとなった。

この後、Avecia は買収と売却を繰り返した。(途中で変遷はあったが、最終的にはLife Science Moleculesに絞った)

  買収 売却
1999 発光ポリマー(LEP)メーカーCovion Organic Semiconductorsを買収
Hoechst AGからスピンオフ)
 
DNAmolecules開発のBoston BioSystemsを買収
2000 医薬品試作、検査、研究を行うカナダのTorcan Chemicalを買収  
ICIからICI/三井化学のトナー樹脂製造JVImage Polymers (米、英)のICI 持分を買収
2001   Novacote (laminating adhesives and coatings)をイタリアの COIM Groupに売却
2002   Stahl leather chemicals (NeoResins を除く)をInvestcorp に売却
2003 Synthon Chiragenicsからchiral technologiesを取得 Mining chemicals部門をCytec Industries に売却
2004   Biocides部門をArchに売却
Color additives部門をLubrizolに売却
2005   Avecia Fine Chemicals KemFine (KemiraからMBOで独立) に売却
Avecia Pharmaceuticals (custom manufacturing)Nicholas Piramal India に売却、NPIL Pharmaceuticalsに改称
OLEDLEP事業をMerck KGaA に売却
NeoResins(coating resins) 事業をDSM に売却
*米国
Stahl Finish Co.が初めた事業で、その後合併で生まれたBeatrice 1985年にICIが買収したもの
2006   Image Polymers(米、英)持分を三井化学に売却
Avecia Inkjet を富士フィルムに売却
2010   Avecia Biologics Merck & Co.に売却

Image Polymers

三井化学(当時は三井東圧化学)は1988年に米国にICIとの50/50JVのトナー樹脂製造販売会社:Image Polymers を設立、その後、スコットランドに同じく50/50JVImage Polymers Europeを設立した。

その後2000年にAveciaICI 持株を譲り受けたが、三井化学は2006年にAveciaの持株を買収し、100%子会社とした。

三井化学は世界のコピー及びプリンタートナー用樹脂の中で最も多く使用されているスチレンアクリル系樹脂のリーディングカンパニー(世界シェア25%)で、100%子会社化により日米欧、三極でのグローバルな事業運営を行い、競争力強化及び新製品開発強化を進め、世界シェア30%超を目指すとした。

三井化学は2007年には積水化学のトナー用樹脂事業(樹脂に関する営業権および知的財産)を譲受けた。

Avecia Inkjet

富士フイルムは、インクジェットプリンタ向けインク染料の世界最大手であるAvecia Inkjetを1億5,000万ポンドで買収し、100%子会社 FUJIFILM Imaging Colorants とした。

買収により、Avecia の製品群、生産設備、販売ルートを有効活用し、また、Avecia の生産技術と合成化学技術、分散技術、素材技術を融合させ、「他の追従を許さない高い画像保存性など、優れた特徴を備えたインク染料の製品化を進める」とした。

同社は前年の2005年には産業用インクジェットプリンター用UVインクでトップシェアをもつ英国Sericol Groupを買収しているが、Avecia Inkjet 買収後に、産業用インクジェットプリンター用ヘッドのトップメーカーの米国 Dimatix, Inc.を買収している。Dimatixの持つ最先端のヘッド技術と、富士フイルムグループが有する高度なインク技術を融合させ、他の追随を許さない高品質画像出力や、様々な新素材への画像出力を実現し、産業用インクジェットビジネスの事業拡大を図る。


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SABICは4月1日、第四世代PP触媒を開発したと発表した。

中東での最初の開発で、サウジと欧州のSABICプラントでのテストで、現在同地で使用されている他の触媒よりも優れた素晴らしい結果を示した。生産性向上、品質向上、新製品開発に貢献するとしている。

この触媒はAl Jubail SABIC子会社 IBN ZAHR(Saudi European Petrochemical )で商業的に使用され、これまでの触媒(Unipol)よりも優れた成績をあげた。3月末時点で30千トンの生産を行い、国際市場で販売された。

IBN ZAHR 1984年にSABIC(70%)Neste Oy(10%)Eni 子会社のEcofuel (10%)Arab Petroleum Investment APICORP (10%) JVとして設立された。
2006
7月にSABICNeste Oy の持株を買収し、現在は80%の株主となっている。

第1系列 320千 トン(当初 260千 トン)と第2系列 320千トンに加え、2008年秋に1系列としては世界最大500千 トンを稼動、合計能力は1,140千 トンとなっている。いずれもDow のUNIPOL 法を採用している。
IBN ZAHR
ではPPのほか、MTBEを生産販売している。

2008/11/11 SABIC1系列で世界最大のPPプラント 生産開始

SABICは1994年にRiyadh に中東最大のSABIC Research and Technology Center を立ち上げ、大学や研究組織、公私のパートナーと連携している。 技術開発、需要家へのテクニカルサポート、製造技術改善を目的とする。
パイロットプラントや2系列の触媒生産設備を持つとされている。

SABIC2002年に22.5億ユーロでDSMの石化部門を買収しSABIC Europe とした。

2006/8/22 SABIC Europe とその前身

オランダのGeleen工場にエチレン、HDPELDPELLDPEPPプラントとSABIC Technical Center を持つ。
同センターにはThe chemistry & catalysis department
があり、新触媒の開発と、SABICの各プラントでの触媒の選択の支援を行っている。

SABICは2006Huntsmanの英国の石化子会社の株式100%を7億ドルで買収した。
英国のWiltonに865千トンのエチレンと400千トンのプロピレンのクラッカー、130万トンの芳香族のプラントを有している。
その後、400千トンのLDPEプラントを完成させた。

2006/10/3 SABIC、Huntsmanから英国の石化子会社を買収 

今回の第四世代PP触媒はオランダとサウジの両センターの協力によるものと思われる。

ーーー

SABIC200910月に米国のAlbemarle Corporation と、SABIC子会社でプラスチック製品を製造するIbn Hayyan Plastic Products Company (TAYF)との間で、ポリオレフィン等の触媒トリエチルアルミの製造の50/50JV Saudi Organometallic Chemicals Company (SOCC)を設立すると発表している。

2009/10/30  SABIC、トリエチルアルミ製造JVを設立

ーーー

SABIC420日、King Abdullah University of Science and Technology (KAUST)との間で長期の研究・イノベーション契約を締結した。

大学構内に
SABIC Research and  Innovation Center を設置し、2012年に稼動させる。
ここでは100150人の科学者を雇用し、特に触媒、コンポジット、膜の分野を中心に研究する。

完成すればSABICの上海やインドの研究所とも提携する。 

SABIC Innovative Plastics Global Application Technology Center
       
Application Development Center   Southfield, Mich, USA
Polymer Processing Development Center   Pittsfield, Mass, USA
European Processing Center   Bergen op Zoom, the Netherlands
Europe Technology Center   Munich, Germany
China Technology Center   Shanghai, China
Welch Technology Center   Bangalore, India
真岡 Technology Center   真岡, Japan

  


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広島大学大学院総合科学研究科の彦坂正道特任教授と岡田聖香博士研究員らは、科学技術振興機構の産学連携事業の一環として、鉄鋼を超える比強度を持ち、安価で水に浮く軽さで、リサイクルが可能なシート状の超高性能汎用プラスチックの創製に成功した。
科学技術振興機構と広島大学が4月19日に発表した。

融点以下に冷やした高分子の融液を引っ張って結晶化させるという極めてユニークな製法により、代表的汎用プラスチックのポリプロピレンの結晶化度をほぼ100%に高めることに成功し、引張強度をこれまでの7倍以上の230MPa(メガパスカル)に高め、比強度を鉄鋼の2~5倍にした。
しかも通常の汎用プラスチック並みに安価で成形しやすく、リサイクルが可能という大きな利点を持っている。

ーーー

高分子材料は軽量・安価・高成形性の利点を持つが、強度や耐熱性などの材料特性が金属などより著しく劣るために高度な性能要求に応えることができない。

その原因は、結晶にならない部分の比率(非晶率)の高さにある。

結晶性高分子は長いひも状分子だが、融液中で毛玉のように互いに絡み合う部分が多いために、これらが薄い板状結晶にしかなれず、結晶と非晶が層構造を成し「球晶」というゴルフボールのような結晶体になる。
球晶内には結晶にならず、固化しただけの非晶が半分以上残ってしまう。

彦坂特任教授と岡田博士研究員らは、高結晶化度と超高性能実現の方策として、「ナノ配向結晶体(NOC)」に狙いを定めた。
ひも状の高分子鎖が融液段階で毛玉状に絡まっているために非晶が発生するため、これを一定方向にきれいに並べた上で結晶化すれば、結晶化度の高いナノ配向結晶体が実現すると考えた。

発案したのは、融点以下に冷やした高分子の融液を潰す(compress)ことによって伸長するというアイデア。

融点以下に冷やした高分子の融液を潰す圧力と速度を変えながら伸長と配向の様子を観察したところ、1秒間に数百倍も伸長するような、大きな伸長歪み速度によって、同じ結晶化温度でも結晶化が一気に100万倍も速くなる「臨界伸長歪み速度」が確認された。過冷却融液中の高分子鎖が平行に並んだ完璧に近い配向融液になり、無数の核がミリ秒オーダーで生成し、融液全体の92%が結晶化することが確認された。
「ナノ配向結晶体(NOC)」の実現が確認された。

ポリプロピレンのナノ配向結晶体は以下の特徴を有している。

・引っ 張り破壊強度はこれまでの7倍以上の230MPa

・成形性がよく錆ないプラスチック本来の特性を持ちながら、
 引っ 張り破壊強度が
同重量の鉄鋼の2~5倍、アルミの6倍 

  引張破壊
強度(MPa)
比重  比強度 
(MPa)
アルミニウム 100 2.7 37
ステンレス 500 7.8 64
鉄鋼(車両用) 400-800 7.8 51-102
本研究 iPP 230 0.94 244
 比強度=引っ 張り破壊強度/比重

耐熱性は通常のポリプロピレンより50℃以上高い176℃

・光の波長より小さいナノ結晶であるがゆえに高い透明性(透過率 99%)

・折りたたんでも、力を外すと、再び元の形状に戻る

高分子融液を潰すという単純な工程が加わるだけで、通常の汎用プラスチック並みに安価

・従来の成形法を少し改良した成形法で成形できる

・何も混ぜ物を加えないので、高い収率でリサイクルができる

こうした数々の特性によって、既存のエンプラにとって代わることは十分に期待され、比強度の大きさから、鉄鋼やアルミニウムなどの金属材料に代替することで、製品の軽量化を図ることが期待される。
また、高剛性と高靱性を備え、錆ないことから、高層ビルや家屋などの建築材料にも適しており、耐水性も加味されるので、橋梁やダムなどの構造材としての利用も期待される。
しかも透過率 99%という高い透明性は、ガラスの代替材としても期待できる。

広島大学では今後、サンアロマー(高分子最適化)及びエフピコ(食品容器製品化)と共同研究を行い、実機プロトタイプの超臨界伸長成形機を開発し、実用サイズの超高性能高分子材料の成形、量産技術を確立し、製品化を図る。

 


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