「no」と一致するもの

サウジ初の民間企業が建設する製油所として、多くの内外企業が関心を示していたJizan (Jazanの表記もある)製油所は、結局Saudi Aramcoが建設することとなった。

石油鉱物資源省は1月19日、サウジ国王の承認に基づき、Saudi Aramcoが出来るだけ早く ジザン製油所を建設するよう指示されたと発表した。

当初、製油所建設は100%民間資本で行うこととなっており、同省では入札を発表、サウジの8社と海外の45社が候補となった。

候補には以下のコンソーシアムがある。
TasneeSaudi Nama Chemicals GroupSaudi Advanced Refineries and Petrochemicals のチーム
Corral PetroleumArabian Peninsula のチーム(いずれもサウジのMohammed al-Amoudiが所有)

同省では各社の努力に感謝するが、事業規模や現在の状況により、この重要な計画をSaudi Aramcoにやらせることとしたとしている。

ーーー

アブドゥラ国王は2006年11月、総額300億ドルのジザン経済都市構想を発表した。
非石油産業の育成、十分な雇用機会、教育施設及び住宅の提供を目指した戦略の一環である。

経済都市構想の第一号事業は2005年12月に発表されたラービグ経済都市で、Petro-Rabighが建設された。

第二号事業は2006年6月にPrince Abdul Aziz bin Mousaed 経済都市(別名Hail 経済都市)で、運輸・兵站・食品関連作業に対象を絞っている。

第三号事業はMadinah経済都市(ITや医療企業を含む調査・研究を重視した知識基盤産業の誘致を目指す)。
第四号事業は
Um Al-Qura 経済都市(Makkah economic city)。

ジザンはサウジの南西端のYemenとの国境近くにある。


ジザン経済都市では、マレーシアのエネルギー・運輸コングロマリットのMMCとサウジのビン・ラディン・グループが主たる開発者となることが決定している。

新港、鉄道、高速道路、居住地区、不動産事業向けの巨額のインフラ投資が予定されており、新工業地帯に全敷地面積の2/3が割り当てられる。同工業団地には、港湾、アルミ精錬所、製鉄所、製油所、銅精錬所や漁業施設、その他アグロ産業が配置される。

近くには油田はなく、SABICが30年契約で原油を供給することとなっていた。

製油所の規模は日量25万~40万バレルで、一次FSの結果では採算面から石油化学(ナフサ原料)を含める方がよいとされている。

製油所の建設費は少なくとも100億ドルはかかると推定されている。

ーーー

サウジの製油所は以下の通り。(千バレル/日) 
      
は計画
立地 事業者 能力 完成 備考
Khafji Aramco  30
Jeddah Aramco  80
Ras Tanura Aramco 550
400 2013 Dow/Aramco 石化JV計画
Riyadh Aramco 130
Yanbu Aramco 230 2010年に330千バレル/日へ
Aramco/Mobil 400
Aramco/Conoco 400 2013
Rabigh Aramco   80 2008年にPetroRabighに移管
Al Jubail Aramco/Shell 305
Aramco/Total 400 2012
Jazan Aramco 右記  ? 能力 250400

(ソース http://www.pecj.or.jp/japanese/jpecnews/pdf/jpecnews200903.pdf )


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中国国家発展改革委員会(NDRC)は昨年12月、浙江桐昆集団(Tongkun Group) 子会社の嘉興石油化学の年産80万トンのPTA計画を承認した。

30.4億人民元を投じて浙江省嘉興市の乍浦経済開発地区に建設するもので、2012年上期のスタートを目指す。

桐昆集団は浙江省嘉興市に本拠を置く私企業で、PETチップとPET繊維を主事業としている。
同社は2009年にPETチップ 286千トン、PETフィラメント 124万トンを生産した。
このほか、不動産、金融、教育、貿易なども行っている。

ーーー

この計画には当初、韓国ロッテグループのKP Chemical が参加することで検討してきた。
しかし、
KP Chemical は同社の投資方針の変更で昨年この計画から撤退した。

KP Chemical は2001年に経営不振に陥った大手繊維と化学メーカーの高合(Kohap Corp) からスピンオフして設立され、2004年にロッテグループのホナム石化が買収した。

蔚山でパラキシレン(750千トン)、PTA(950千トン)、PET(450千トン)、PIA(高純度イソフタル酸 200千トン)を有している。

同社は石油会社から混合キシレンを購入し、パラキシレンとメタキシレンを生産、パラキシレンからPTAPET、メタキシレンからPIAを生産している。

製品の90%以上を輸出している。

同社は2009年6月、ICI Omicron からパキスタン唯一のPTAメーカーPakistan PTAの株式75%を買収した。
Pakistan PTAは能力400千トンで、2002年から生産している。

ICI OmicronICIの子会社であったが、Akzo Novel ICIを買収した際に、これも買収した。

Akzo Novel は今回の売却について、この事業はAkzoの他の事業と合わないとしている。(AkzoICI本社の買収に際し、塗料事業以外は全て売却している)

    2007/8/13  
Akzo が ICI を買収

KP Chemical は海外進出戦略として桐昆集団との合弁での中国進出を図ったが、Pakistan PTAの買収でパキスタンに方向を変更したものと思われる。

なお、韓国のPTAメーカーは以下の通り。(能力は2009/5現在、千トン)

会社名 立地 能力
KP Chemical Ulsan   950
Sam Nam Petrochemical Yeochun 1,700
Samsung Atofina Ulsan 1,100
Daesan   700
SK Chemicals Ulsan   520
Taekwang Industrial Ulsan 1,000
Hyosung Corporation Ulsan   410
Total 6,380

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2009暦年の実績が発表された。エチレン生産量は前年を若干上回る6,913千トンとなった。

年の初めは操業度が75%程度であったが、5月には90%を超え、6月以降は95%程度の操業度を維持している。

エチレン生産    
   

 

合成樹脂の販売は、国内については全製品で前年を下回った。

国内販売が高水準であった2004年と比べると、LDPEでは17%ダウン、HDPEで19%ダウン、PPで15%ダウン、PSで25%ダウン、ABSで34%ダウン、PVCで35%ダウンと、各製品とも大きく減少している。

これに対して、輸出は、PSとABSを除き、前年を大きく上回っており、これがエチレンの高操業度の理由となっている。

問題は2008年秋までとは異なり、輸出市場の競争の激化で輸出価格が低いことと円高のため、輸出採算がよくないことである。

但し、内輸合計で見ると、LDPEとHDPEを除き、2007年から08年、09年と、出荷は大きく減少している。

特に、ABSとPVCの減少が大きい。ABSは内輸ともに大きく減少した。

PVCの場合、2009年の国内出荷960千トンは、1977年の974千トン以来の低水準である。内輸合計で見ても、輸出がほとんどなかった1987年以来の低水準である。

LDPE    
 
  内需 輸出 合計
2004 1,606 209 1,814
05 1,575 198 1,773
06 1,572 228 1,800
07 1,580 236 1,816
08 1,460 204 1,664
09 1,325 331 1,656
     
HDPE    
 
  内需 輸出 合計
2004 1,005 159 1,163
05 974 112 1,086
06 971 116 1,087
07 966 122 1,088
08 884 94 979
09 819 214 1,032
PP    
 
  内需 輸出 合計
2004 2,669 298 2,967
05 2,725 323 3,047
06 2,756 321 3,077
07 2,827 367 3,194
08 2,565 217 2,782
09 2,278 303 2,580
     
PS    
 
  内需 輸出 合計
2004 918 41 959
05 865 30 894
06 876 22 897
07 863 44 906
08 768 37 806
09 687 32 719
     
ABS    
 
  内需 輸出 合計
2004 341 215 556
05 322 197 519
06 334 180 515
07 334 197 530
08 298 185 484
09 224 131 354
     
PVC    
 
  内需 輸出 合計
2004 1,469 664 2,132
05 1,404 714 2,118
06 1,364 744 2,109
07 1,279 839 2,118
08 1,174 551 1,725
09 960 705 1,665
     

なお、原料のスチレンモノマーとVCMの出荷実績とその内訳は以下の通り。

SM    
 
  国内 輸出 合計
2004 2,069 1,395 3,464
05 1,944 1,577 3,521
06 1,949 1,405 3,354
07 1,952 1,621 3,573
08 1,737 1,203 2,941
09 1,379 1,650 3,030
国内向けは2年前の70%と大きく減少したが、輸出が堅調で、合計では前年出荷を上回った。
出荷合計のうち、国内向けは46%に止まる。
     
VCM    
   
  国内  
PVC用
国内  
その他用
輸出 
PVC用
輸出 合計 能力
2004 1,479 42 664 602 2,788 3,043
05 1,427 52 714 652 2,844 3,484
06 1,373 42 744 888 3,048 3,541
07 1,314 49 839 767 2,968 3,541
08 1,216 39 551 754 2,560 3,541
09 942 37 705 1,027 2,711 3,541

* 国内PVC向け出荷のうち、実際のPVC輸出数量を輸出PVC用として先取りした。

VCMの出荷は2,711千トンと、昨年を上回った。これはPVCの輸出及びVCMの輸出が伸びたため。
PVC国内出荷が激減したため、2004年には国内PVC用はVCM能力の約半分を占めたが、2009年は27%に過ぎない。

今後PVCの輸出が減少すれば、能力の大幅削減が必要となる。


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Petrobras(ブラジル国営石油会社)とOdebrechtBraskemの主株主)124日、Petrobras 40%/UNIPAR 60%出資のQuattor Petrochemical UNIPAR持株を買収し、同社をBraskemに統合すると発表した。買収額は478百万ドル。

また、PetrobrasBraskemへの出資を増加する。
現在の
Braskemの主株主のOdebrechtは議決権の50.1%を保持するが、 Petrobras OdebrechtBraskemでの意思決定を共同で行う。
このため、両社は持株会社
BRK Investimentos Petroquimicosを設立する。

これにより、Petrobrasの石化事業とBraskemを統合して新Braskemが誕生することとなるが、同社は熱可塑性樹脂業界でアメリカ大陸最大のメーカーとなる。

ブラジルの5つの州 (Sao Paulo, Rio de Janeiro, Rio Grande do Sul, Bahia and Alagoas)26の工場を持ち、年間売上高260億ドルとなる。

なお、両社のJVとして、IpirangaCopesulPetroflexがあるが、これが新Braskemに統合されるのかどうか、現在のところ不明。

<p><p>HTML clipboard</p></p>

Braskemによると、新会社の能力は以下の通りとなる。

PE  304万トン
PP  197万トン
PVC  51万トン
   

合計は551万トンで、ExxonMobil 531万トン、Dow483万トンを上回る。

ーーー

2007811日、Petrobras União de Industrias Petroquimicas (Unipar) 両社のブラジルの化学品、合成樹脂事業を統合する協議を行っていると発表した。新会社の名称は Companhia Petroquimica do Sudeste (CPS) で、Uniparが主導権を持つとされた。

2007/12/6 Petrobras、石化事業を再編

2008年6月12日に新会社が設立された。社名は変更され、Quattor Petrochemical となった。

新会社にはPetrobras40%出資、UNIPAR60%出資した。

PetrobrasRioPolSuzanoを、UNIPARPQU, Polietilenos と同社の化学部門を拠出した。
統合対象各社は新会社の子会社となった。(社名変更)

  拠出会社 新社名(子会社)
持株会社   Quattor Participacoes SA
Petrobras
40%
Rio Polímeros(RioPol) Rio Polímeros SA
Nova Petroquímica
(Suzano Petroqu
ímica)
SA Quattor Petroquímica
UNIPAR
60%
Petroquímica União (PQU) Quattor Basic Chemicals SA
Polietilenos União Polietilenos Union SA
UNIPAR's Chemicals Unit  

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Pfizer 114日、製薬会社と後発薬メーカーとの間の後発薬特許契約に関する独禁法調査で欧州委員会から質問を受けていることを明らかにし、調査に協力すると述べた。

問題となっているのは後発薬の参入を遅らせるためにリベートを支払うという 'pay-for-delay' という取引。

何年もの調査に基づき、欧州委員会は多くの製薬会社に、20087月から200912月までの間の欧州における後発薬特許契約(generics settlement agreements)に関する情報提供を求めた。

Settlement agreements は、後発薬の参入の前に、複雑な特許係争によるリスクとコストを最小にするため、製薬会社と後発薬メーカーとの間で長年結ばれていた。

しかし、この結果として、後発薬参入を遅らせるために、製薬会社が後発薬メーカーにリベートを支払うことになれば独禁法問題が生じる。これが'pay-for-delay' と呼ばれ、患者は高価なブランド薬品を必要よりも長期間、使用せざるを得なくなる。

情報提供を求められているのは、ほかに、AstraZenecaBoehringer IngelheimGlaxoSmithKlineNovartisRocheSanofi-Aventisと後発薬メーカーのイスラエルのTevaと英・アイルランドのNiche Generics

これとは別に、欧州委員会は17日、デンマークの製薬会社 H Lundbeck A/S が抗うつ剤のCitalopram の後発薬参入を遅らせた疑いで初期調査に入った。

欧州委員会は、欧州経済領域(EEA)において、後発Citalopramの参入を防止又は遅らせるための慣行を調査するとしている。

欧州委員会では今後、これらのデータを毎年集める予定。

まず資料集めだが、独禁法上で懸念のある契約については調査する。

欧州委員会では後発薬の参入遅延で2000年から2007年の間で少なくとも30億ユーロの損失となっているとみている。

欧州委員会の競争政策担当委員のNeelie Kroes女史は今月までが任期で、2月から現経済・通貨担当のスペインの政治家 Joaquín Almunia Amann 氏が横滑りする。

ーーー

米国ではFTCが米国の製薬会社のsettlement agreementsのタイプや頻度に関する年報を作成している。
FTCpay-for-delay 契約をやめるよう、しばしば求めている。

下院を通過した医療保険改革法案では、pay-for-delay 契約を禁止する条項を含んでいる。
上院の案には含まれていないが、多くの市民運動グループがこれを含めるよう上院に請願している。

113日にはFTC委員長と議会の主要メンバーがpay-for-delay 契約禁止を求める共同声明を発表した。
 http://www.ftc.gov/opa/2010/01/payfordelay.shtm

ーーー

欧州委員会は20097月に医薬業界の問題点(Antitrust: shortcomings in pharmaceutical sector require further action)という報告を発表した。

調査は20081月に開始された。新規医薬品の上市が少ないこと、後発医薬品の参入が遅れることを問題視した。

報告によると、
2000年から2007年の間で特許が切れた医薬品で、後発医薬品発売は7ヶ月以上遅れ、20%の追加支出となった。
・後発医薬品は平均
40%安い。
 製薬会社は出来るだけ長く、後発医薬品なしで販売するよう、多くの手をうっている。
・新規医薬品の発売が減っている。製薬会社の慣行も原因となっている。

・欧州共同特許と統一特許訴訟制度の設立が必要。
 (特許訴訟の
30%がいくつかの国で平行して行われている。11%が国によって判決が異なる)

欧州委員会はメンバー各国に次の要請をしている。
・後発医薬品の承認を遅らせないこと
・後発医薬品の承認手続きを早める。
・後発医薬品の品質が問題とするような誤ったキャンペーンに対応策をとる。
・新規医薬品の評価を早くする


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米司法省は115日、農薬メーカー Monsantoを独禁法違反で正式に調査を開始した。
同社のドル箱の
Roundup Ready大豆を巡るビジネス慣行について情報を求めた。

Monsanto では、主として、第一世代のRoundup Ready大豆の特許が2014年に切れた後も、農家や種子会社はこれを使用できるとした同社の発表の確認を求められていると述べた。 

同社では、これまでと同様に調査に積極的に協力するとしている。

Roundup ReadyMonsantoが開発したRoundup除草剤耐性の農作物の総称。
開発された農作物にはダイズ、トウモロコシ、ナタネ、ワタ、テンサイなどがある。

Roundup除草剤は1970年にMonsantoが開発した除草剤グリホサート(glyphosate) の商品名で、世界中で使用されている。

Roundup ReadyRoundup除草剤を散布しても枯れず、雑草だけが除かれる。
米国の大豆の90%がこれを使っている。

このRoundup Ready大豆の特許が2014年に切れる。Monsantoでは特許が有効な第二世代のRoundup Ready種子に切り替えさせようとしている。

これに対して需要家の間で不満が広がったため、200912月、Monsantoは特許切れ後も農家が種子を使用するのを妨げないと発表した。2015年からは農家は前年収穫したものを種子として使えるし、種子会社はロイヤリティ無しで生産できるとしている。

大豆種子の価格は1996年以来、4倍に上がっており、農家やライセンスを受けた種子会社の間で不満が出ている。

ーーー

農務省と司法省は20098月、種子を含む農業事業における事業慣行を調査すると発表した。司法省はMonsantoに加え、DuPont とスイスのSyngenta にもコンタクトしている。

Monsantoではホームページで同社の立場を説明している。Innovation and the Competitive Seed Market

ーーー

Monsantoの業界での力が強いため、これまでも独禁法上で問題となっている。

同社は1998年にDelta And Pine Land Company18億ドルで買収することで合意した。

Delta And Pine Land は米国第1位の棉種子会社であり、司法省による独禁法の審査が大幅に遅れ、199912月に買収を断念した。

Monsanto20068月、Delta And Pine Land を現金15億ドルで買収することで再度合意した。

20075月、同社は司法省との間で、Delta And Pine Land買収について合意、米国の棉種子事業を含む設備の売却を条件に買収が認められた。
同社は
Stoneville® 種子事業と設備をBayer CropScience に、NexGen™ 種子事業と設備をAmericot に売却した。

なお、Delta And Pine Land はターミネーター技術(種子を死滅させる毒性タンパクを作る遺伝子を組み込み、2回目の発芽の際には種子が死滅する技術)を保有している。

最初の買収の際、ターミネータ技術に関する大きな反対が起こったため、当時のCEO Robert B. Shapiroは、同社は不妊種子技術の商業化は行わないと公に約束した。

Open Letter From Monsanto CEO Robert B. Shapiro dated October 4, 1999

I am writing to let you know that we are making a public commitment not to commercialize sterile seed technologies, such as the one dubbed "Terminator."

--- we think it is important to respond to those concerns at this time by making clear our commitment not to commercialize gene protection systems that render seed sterile.

しかし二度目の買収に際して、Monsantoの報道官は「種子を不妊とする技術を使用するつもりはなく、”食料作物に対しては不妊種子技術を商業化しない”という2005年の公約に立っている」と公約を修正、非食料作物には使用することを示唆した。

ーーー

Monsanto20095月、DuPont子会社のPioneer Hi-Bred International 2002年のライセンス契約に違反して、Roundup Ready 大豆とDuPont GAT農薬耐性大豆をセットにしているとして訴えた。 

PioneerRoundup Ready販売の権利を持つが、DuPont GATに置き換えるとしていた。
しかし、
GATだけでは問題があることを認めており、Roundup Readyとセットにして販売した。

これに対してDuPont は翌6月、両種子技術をセットにする(stacking)はライセンス契約の範囲内であると主張、更に、Monsanto特許は無効であり、Monsantoは特許を不当に使って、コーンと大豆の市場を支配しているとして訴訟を起こした。

「Monsantoの訴訟は競合製品の使用を制限する戦術の一つである。農家は多くの技術の中から最適のものを使うことを望んでおり、その権利がある。
両種子のセットは生産性や多種の雑草防止などの点で市場の他の製品よりも優れている。
Monsantoが課している非競合制限なしで、最もよい組み合わせを行うのが生産者にも消費者にも役に立つ。」

Monsanto 200910月、ライバルのDuPont が行った独禁法上の問題指摘に基づき司法省から質問を受けていることを明らかにした。

米地裁は1月16日、Monsantoによる訴えに対し判事は、両社の契約には両種子をstackingするのを禁止するという書かれていない(黙示の)条項があると認めた。この決定は紙一重のもの("narrow")であるとし、DuPont による反訴の独禁法問題や特許無効問題には影響がなく、これらは引き続き審理を行うとした。

DuPontでは、裁判は始まったばかりで、更に証拠を集め、農家に対して最も生産性の高い、最新の種子を供給する権利があることを示していくとしている。

ーーー

独禁法とは関係ないが、Roundup Readyのアルファルファ種子について、米最高裁は115日、下級審の販売禁止命令を再検討することを明らかにした。

2007年5月、サンフランシスコ連邦地裁が米国全土でRoundup Readyアルファルファの栽培を禁止した。

米国農務省(USDA)が
これが有機アルファルファや通常のアルファルファを汚染する可能性に関する適切な研究をしなかったと指摘し、商業栽培許可前には、他花受粉の可能性などを含む完全な環境影響研究を行うことを命じた。

20089月、米国第9巡回区控訴裁判所は完全な環境影響評価書が出るまでの禁止を確認した。GMアルファルファの栽培が、有機及び通常品種に対する取り返すことができないかもしれない損害、環境に対する損害、そして農業者に対する経済的損害をもたらす可能性があると裁定した。

最高裁はMonsantoの上告を受けて審議を決めた。

 


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欧州47カ国が加盟する欧州評議会(The Council of Europe)は1月12日、世界保健機関(WHO)と新型インフルエンザのワクチンを製造する製薬会社との癒着が世界的大流行(H1N1 pandemic )を宣言したWHOの判断に影響を与えたとの疑惑について調査を開始すると発表した。

緊急調査開始の決議は欧州評議会議員会議(PACE)で承認された。 

それによると、「インフルエンザの特許医薬品とワクチンを売るため、製薬会社はWHOなどの科学者や役人に影響を与え、世界中の政府に警告させて、限られた資金を有効性に欠けるワクチンに浪費させ、必要もないのに何百人もの健康な人を十分にテストしていないワクチンの副作用の危険に曝した」としている。

PACEの保健衛生委員会の委員長でドイツの疫学者で肺の病気の専門家のDr. Wolfgang Wodarg false pandemic”であるとして動議を提起した。製薬会社は全プロセスで影響力を発揮しており、責任を取らせることが必要とする。利益の追求のため、身体に害を与えたと批判している。

Dr Wodarg によると、 false pandemic”は昨年5月にメキシコで始まった。100件ほどの通常のインフルエンザを科学的証拠がないのに新しいpandemicの始まりと主張した。WHOは製薬会社と協調して“pandemic”の定義を変更し、これまでの「非常の多くの人が感染又は死亡」から、単に「人が免疫を持たないウイルスが国境を越えて広がる」とした。

ほとんどの国の政治家は直ちに反応し、ワクチンを発注した。その結果、製薬会社はリスクなしで膨大な利益を上げたと批判する。

<p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p>

WHOの推定では2009年末までに新型インフルエンザでの死亡者は約1万3千人で、これに対し、季節性インフルエンザの死者は毎年平均して25万人~50万人に及んでいる。

2005年の鳥インフルエンザでも、150百万人が死ぬとの予想が出されたが、実際の死者は250人程度であった。この件も緊急調査の対象となる。

欧州各国では、ワクチンが大量に余り、売却や製薬会社との売買契約解除の動きが加速している。
フランスでは12.5億ドルで94百万doseのワクチンを購入したが、5百万doseしか使用されていない。

GlaxoSmithKline
1月12日、ドイツ政府が注文したワクチンのうち3割が解約になったと発表した。<p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p>

ーーー

<p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>日本では新型インフルエンザのワクチン接種が、65歳以上についても1月13日から前倒しで始まった。
新型インフル感染による死者数は1月6日までで計
146人持病がある人や高齢者の死亡率が高い。

厚生労働省によると、昨年12月25日現在、医療機関から新型インフルエンザワクチンで1899件の副作用報告があり、入院相当以上の重篤が294件、死亡が
103件含まれていた。この間の推計接種者は1492万人。


<p><p>HTML clipboard</p></p>

付記

厚生労働省の薬事・食品衛生審議会薬事分科会は1月15日、国が輸入を予定しているGlaxoSmithKlineNovartisの新型インフルエンザワクチンについて、一定の条件付きで国内での販売を認めることを了承した。

<p>HTML clipboard</p>これを受け、長妻厚相は同日、海外で安全性が証明されていれば日本の治験を省略する「特例承認」を行なった。来月中旬から健康な成人を中心に接種が始まる。

輸入するのはGlaxoSmithKline製の74百万doseとNovartis製の25百万dose。いずれも国産ワクチンで使っていない免疫補助剤が入っている。


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中国自動車工業協会の1月11日の発表では、中国の2009年の自動車販売台数は前年比46.15%増の1364万台となり、初めて世界一となった。うち、乗用車が1033万台(52.93%増)、商用車が331万台(28.39%増)であった。

生産は1379万台(前年比 48.30%増)で、乗用車は1038万台(54.11%増)、商用車が341万台(33.02%増)。

米国の調査会社の調べでは、米国の新車販売は1043万台で、前年比21.2%減となっている。
月次では2009年1月に初めて米国を追い抜いている。

協会の事務局長は次のように述べた。   

ここ数年来、中国のマクロ経済は持続的な急成長を遂げ、国民の生活レベルが徐々に向上している。
人口が多いため、人口あたりの自動車保有台数は少ないが、巨大な潜在的購買力が中国自動車工業の急成長を牽引するエンジンとなり、自動車工業は国民経済の重要な基幹産業となった。
今後10年間は 急成長の発展傾向を維持することが予想される。

中国の自動車販売の伸びは政府の消費刺激策によるところが大きい。

中国政府は2009年に入り、「汽車下郷」(農村部に自動車を)制度をスタートさせた。三輪自動車などを廃車とし、5万元以上の軽トラックや軽自動車に買い換える場合は5,000元を上限に、購入金額の10%を補助金として支給するという制度である。

5月には「汽車下郷」に自動車買い替えが追加され、自動車買い換えの財政補助をこれまでの10億元から50億元まで枠を拡大した。

中国政府は2009年12月9日の国務院常務会議で、消費刺激策の1年延長を決めた。

低排気量車の購入税減税や、農村部での自動車普及策の延長を決定。また「家電下郷」政策についても、対象製品の限度額を大きく引き上げることなどを打ち出した。

自動二輪車への補助金支給は、2013年1月31日までとする。
排気量1600cc以下の乗用車について、購入税の減税措置を2010年末まで延長。
(但し、低排気量車の購入税率を現在の5%から7.5%に引上げる。)
自動車の買い替え支援策に対する補助金の支給額を
、現在の3,000~6,000元から、5,000~18,000元まで引き上げる。

中国の調査会社は2010年の自動車販売台数を1513万台と予想している。

ーーー

1月10日のテレビ東京の「日高義樹のワシントン・リポート」は「2010年日本と世界に大変動か~キッシンジャー博士に聞く」であった。

米国も欧州も日本も不景気が続くのに、どうして中国だけが成功したのか、との質問に対する博士の答えは、リーダーシップであった。

米国の場合、短期的視点で延々と議論するのに対し、中国では公的資金を長期的視点で迅速に有効に配分したのがうまくいったとする。

確かに、膨大な額の景気刺激策を早期に決めたことが大きい。
潜在需要の大きい農村部に限って、家電や自動車に補助金を出すというのは、米国でも日本でも反対が出て、決められないであろう。

ただし博士は、中国のやり方では今後、問題が起こることもあろうともしている。

<p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p>同様のことを、Thomas L. Friedman "The World is Flat" に続く "Hot, Flat, and Crowded" で述べている。

温暖化対策事業で米国が先頭を切らないといけないのに、石油業界など既存勢力の反対で遅々として進まず、このままでは新成長分野を他国(中国も含め)に支配されると嘆き、"China for Day (but Not for Two)"という1章を書いている。

「2日はいやだが、1日だけなら中国になりたい」というもので、米国では何年もかかる案件、レジ袋の有料化、ガソリン無鉛化、自動車燃費規制、等々をトップダウンの命令で直ちに実施したことを取り上げ、中国のやり方を(その部分だけは)羨ましく思っている。

ーーー

2009年の乗用車生産のTOP 10は以下の通り。

上汽通用五菱汽車(SAIC-GM-Wuling )  976,808 上海Automotive Industry/GM
Shanghai Volkswagen  729,007
Shanghai GM  727,616
FAW Volkswagen  682,374 第一汽車集団/Volkswagen/Audi
Chag'an Motors  654,467 Chang'an SuzukiChang'an Ford
Beijing Hyundai  570,880
東風日産(Dongfeng Nissan  578,327 東風汽車集団/日産自動車
比亜迪 (BYD)  435,633 Warren Buffett 10%出資
FAW Toyota  435,512 中国第一汽車集団/トヨタ
奇瑞汽車(Cherry  432,962

このうち、比亜迪(BYD)は王伝福が1995年にリチウムイオン電池製造販売のために設立した会社である。
社名は
Build Your Dream から付けた。
現在、リチウムイオン電池の製造で世界第3位で、携帯電話用では世界第1位のメーカーである。

同社は2003年、倒産した中小自動車メーカーの西安秦川汽車有限責任公司を2.7億元(約40億円)で買収し、自動車産業に参入した。

BYD自動車部門は小型車を中心に順調に業績を伸ばし、強みである電池との究極のシナジーをめざして電気自動車の開発に乗り出した。2008年12月、世界初のプラグインハイブリッドカー比亞迪F3DM を発売した。

2008年9月、米国の著名投資家であるWarren Buffettが2億3000万ドルを投じてBYDの約10%の株式を取得した。

Buffett氏は、「新エネルギーは大変重要な分野だ。すでに風力発電には参入しているが、今後はBYDとともにエコカー分野に積極的に打って出たい」としている。

フォルクスワーゲンは2009年5月、BYDとリチウムイオンバッテリーを使用したEVやハイブリッド車の開発で提携すると発表した。<p><p>HTML clipboard</p></p>

付記

比亜迪(BYD)は1月12日、電気自動車「e6」を年内に米国市場に投入すると発表した。5人乗り、最高時速140kmで、1回の充電で最大330km走れるという。


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映画 The Informant - 化学業界の話題

映画 The Informant を見た。

New York TimesKurt Eichenwald が関係者から取材して書いたノンフィクション The Informant の映画化。

1992年、アメリカの穀物メジャーのArcher Daniels MidlandADM)のBioProducts Division事業部長のMark Whitacre(演じるのはMatt Damon)は飼料添加物リジンの生産がうまくいかず、上司に責められる。
競争相手のAjinomotoの社員から同社がスパイを送り込み、ウイルスを入れたとの電話があり、情報代を要求される。会社はFBIに依頼し、FBIは彼の自宅の電話に盗聴器をつける。

Mark は妻(演じるのはMelanie Lynskey)から本当のことをFBI捜査官(同 Scott Bakula)に言えと脅され、Andreas副会長主導の日米韓メーカーによるカルテルの存在を伝える。

FBIは米国での会合を秘密に撮影、Markにテープレコーダーで世界各地での会合での会話を録音させた。
Markの2年半に及ぶ 「“007”の2倍賢い諜報員 “0014”」と自賛する大活躍で、証拠が揃い、1995年に強制捜査が入る。

Mark は悪をあばいた英雄として社長になれると思ったが・・・

次々と明らかになるMarkの嘘に、FBIは右往左往。

全くの作り話のように思えるためか、Kurt Eichenwald の原作のサブタイトルはA True Story となっている。

映画でも、Archer Daniels Midland(ADM)Ajinomoto、韓国のSewon Cheil などの社名や、ADMMark Whitacre、Dwayne Andreas会長、その息子のMichael Andreas副会長、AjinomotoMr.Mimoto(有罪となっている)など、全て実名で出てくる。

ーーー

リジンカルテル事件は独禁法の歴史に残る事件である。

リジンはアミノ酸で重要な飼料添加物である。バイオテクノロジーで生産される。

1980年代後半には味の素、協和発酵、韓国のSewon3社が世界の生産の95%を占めていた。(味の素が60%
ADMは原料のdextroseの大メーカーで、1991年にリジン生産に進出し、急激にシェアを伸ばした。
同年、韓国の
Cheil Jedang(第一精糖)も生産を開始した。
Sewon はその後、Miwon Foodsと合併し、Desang Corporationとなった)

その結果、価格は大幅に下落し、コスト割れとなった。

19924月にADMは味の素、協和発酵と会い、"amino acids trade association"をつくり、その後、韓国のSewonCheil Jedang(現在のCJ)が参加、価格や生産量、販売シェアを話し合った。

ADMは映画の中でも同社のモットーを明らかにしている。
  
"The competitors are our friends, and the customers are our enemies"

ーーー

実際には、その前の1990年に日本と韓国メーカーの間でカルテルは始まっている。

カルテルの詳細な経緯は競争政策研究センター(CPRC)の報告
リーニエンシー制度の経済分析」のP.52「ケーススタディ:欧州リジン事件」に記載されている。

ーーー 

1992年11月にADMのMark Whitacre FBIInformantとなった。
19956月、ADMに強制捜査が入った。

ーーー

2000年4月、米ワシントンのホテルで、リジンカルテルの現場をFBIが隠し撮りし米司法省が編集した衝撃のビデオが公開された。

米法曹協会の定期会合の場で「カルテル行為の内情」と題した講義が追加され、ビデオが流された。字幕が付いており、どの社の誰が何を喋ったのか、すべて分かる。

ビデオを解説したテキストは、以下の言葉で締めくくられている。
「(法律家である)あなた方にこのビデオとテキストを役立ててほしい。まず顧客企業がカルテルに関わるのを思いとどまらせるために、そして、防止できなかった場合は違法行為を発見するために」。

日経BP (2000/6/21) 「FBIが隠し撮り--暴かれた味の素/協和発酵らの謀議

ーーー

1996年に、各社は罪を認めた。

ADMは司法取引で、70百万ドルの罰金を支払った。(同時に判明したクエン酸事件の30百万ドルを加え、合計100百万ドル)
Michael Andreas
副会長とMark の直接の上司のTerrance Wilson は罰金と3年の懲役となった。
また、これが契機となって、ADM
異性化糖に関する集団訴訟で400百万ドルを支払っている。

ADMの合計100百万ドルの罰金は、過去最高の7倍にもなる。

味の素と協和発酵、及びSewonは司法取引に応じて情報を提供し、各社と各社の役員各1名が罰金を払った。

ADMと味の素、協和発酵の3社は需要家からの民事訴訟で、それぞれ、25百万ドル、10百万ドル、10百万ドルの支払いに応じている。
(これについては賠償額が少なすぎるとして、その後議論となっている)

この調査で、司法当局はカルテルが考えていたよりも広く行われていることを知り、その結果、ビタミンカルテル、ファックス用紙カルテル、黒鉛電極カルテルなどの摘発につながった。<p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p>(クエン酸カルテルに関するHoffman-LaRocheなどの調査でビタミンカルテルの存在が分かった。)

日本企業はビタミンカルテルでは武田薬品、エーザイ、第一工業製薬が摘発されている。

黒鉛電極では昭和電工、東海カーボン、日本カーボン、SECカーボンに加え、UCAR International 50%出資していた三菱商事も摘発された。

主人公のWhitacre はADMの調査で900万ドルの横領がばれ、情報提供による訴追免除を失い、8半服役した。
ADMはこれを理由にカルテル事件の揉み消しを図った。原作の大きな部分がこの問題に割かれている。)

彼は現在はバイオテクノロジー企業のCypress SystemsCEOとなっている。<p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p>

付記    

Whitacreは刑期途中で特赦を申請し、FBI捜査官たちも司法省に要請した。

20011月、Clinton大統領は退任に当たり、176人に恩赦を実施した(特赦140人、減刑36人)。

この中に脱税などの容疑がかけられ逮捕直前に国外逃亡していた実業家 Marc Rich (スイスのGlencoreの設立者が含まれている(彼の元の妻が民主党に総額100万ドル以上の献金を行っている)。

しかし、Whitacreはこの特赦の対象から除外された。

Clinton大統領は退任直前に、Dwayne Andreas AMD会長を褒め称え、彼の「多くの親切」に対して感謝した。

ーーー

リジンカルテルはカナダとEUでも摘発された。

カナダではAMDが罰金1600万加ドル(リジン価格カルテル 900万、同市場分割 500万、クエン酸 200万加ドル)、味の素が罰金350万加ドル、Sewonが7万加ドルとなり、協和発酵は捜査協力で訴追免除、Cheilは販売がなく、不起訴となった。

EUでは1996年にLeniency Programが導入されたが、本事件はその適用の第1号となった。

1995年6月に米国で強制捜査が開始されたが、翌1996年7月、EU でLeniency Program が導入された直後に味の素が情報を提供し、適用を申請した。

欧州委員会は、一連の価格協定等の行為を同一の反競争的な目的を目指して共通の全体計画の文脈で行われた単一の継続的な違反とし、EC 設立条約第81条違反と認定した。

制裁金は以下の通りとなった。(千ユーロ)

味の素 ADM 協和発酵 Sewon Cheil
算定開始額*1 30,000 30,000 15,000 15,000 15,000
重大性(行為年数35 年)
10%
+40% +12,000 +30% +9,000 +40% + 6,000  +40% + 6,000  +30% + 4,500
違反主導的役割 50% +50% +21,000 +50%  +19,500
専ら受身な役割行為
    年数加算を20%
6000x
(-20%)
- 1,200
当局介入直後に違反を終了 -10% - 6,300 -10% - 5,850 -10% - 2,100 -10% - 1,980 -10% - 9,150
Leniency Program*2 -50% -28,400 -10% -5,350 -30% -5,700 -50% -8,920 -30% -5,350
合計 28,300 47,300 13,200 8,900 12,200
旧制度での想定制裁金*3 (13,500) (7,380) (2,880) (2,700) (3,060)

*1 企業規模により、味の素・ADM とそれ以外の2グループに分けた。

*2 Leniency Program 適用は以下による。

味の素(-50%):決定情報を提供したが、以下の理由で100%減額は適用されなかった。
         ・
ADM参入前のカルテルについて情報提供なし
         ・米国での捜索時に欧州や日本の書類破棄を指示
         ・カルテルで主導的役割

ADM(-10%):調査に協力せず。但し事実関係について争わないとした。

協和発酵(-30%):提出証拠は決定的なものでなく、非自発的

Sewon(-50%):十分な証拠を出したが、調査開始後で、委員会の要求に応じた協力(非自発的)

Cheil(-30%):提出証拠は決定的なものでなく、非自発的

*3 旧制度での想定制裁金は リジン年間売上高 x 3年 x 6% 


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Ineosは2010年1月1日、シノペック揚子石油化学との間で、南京ケミカルパークでのフェノール/アセトン製造のJV設立の検討を行う覚書を締結したと発表した。

新設するのはフェノール40万トン、アセトン25万トンの中国では最大のプラントで、原料のキュメン 55万トンのプラントを含む。
2013年完成を目標とする。

INEOS Phenol はドイツ、ベルギー、米国(アラバマ州)にプラントを有し、現在の合計能力はフェノールが187万トン、アセトンが
115万トンとなっている。同社はこれで、欧州、米国、アジアにプラントを持つ唯一のグローバルカンパニーとなる。

シノペックは北京の燕山石化で8万トンと10万トンの2系列、上海中石化高橋分公司で12.5万トンのプラント(下記参照)を持ち、天津のSINOPEC SABIC Tianjin Petrochemical で35万トンプラントを建設している。

ーーー

三井化学は2009年11月、シノペックとの間でフェノールの合弁事業に向け基本合意、12月に以下の「フェノール及びアセトンの新設プロジェクトに関する覚書」を締結した。

1. 所在地   上海市・上海化学工業区
2. 出資比率50:50
3. 生産能力
   フェノール  アセトン  BPA
今回新設  25万トン  15万トン  
既設(上海中石化三井化工)      12万トン
既設(上海中石化高橋分公司)  12.5万トン   7.5万トン  
合計  37.5万トン  22.5万トン  12万トン
4. 新プラントプロセス三井化学技術
5. 営業運転開始時期2013年第2四半期

2009/11/4  三井化学、シノペックとの合弁事業の基本合意

三井化学はこれにより、誘導品事業(ビスフェノールA、MIBK)を含めたフェノール事業で世界トップを目指すとした。

1位:Ineos Phenol (誘導品なし):187万トン
2位:三井化学:フェノール92万トン、誘導品54万トン、合計146万トン
→184万トン
3位:Solutia:フェノール86万トン、ビスフェノールA 11万トン、合計97万トン

しかし、Ineos Phenol は今回の計画が加わると、フェノール227万トンでトップを維持する。


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