「no」と一致するもの

池田信夫 blog の2008/7/12記事が英国の公共放送TV Channel 4 の長編ドキュメンタリー「The Global Warming Swindle(地球温暖化詐欺) を紹介している。  http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/f660cfa25cd1fa208644f5c92c2f46ef

ある人が Channel 4 の番組(2007年3月放映)の録画を日本語字幕を入れて youtube に投稿したもので、1時間程度の番組を8つに分けている。

1.   http://jp.youtube.com/watch?v=hUKLOvtAUDk
     
2.   http://jp.youtube.com/watch?v=VYlkpClOevA&feature=related
     
3.   http://jp.youtube.com/watch?v=khYk4y2Zj0A&feature=related
     
4.   http://jp.youtube.com/watch?v=ba79ByzHAqU&feature=related
     
5.   http://jp.youtube.com/watch?v=y1Na9cYpgqg&feature=related
     
6.   http://jp.youtube.com/watch?v=hWVhnHpV9OE&feature=related
     
7.   http://jp.youtube.com/watch?v=01K2Vdud61A&feature=related
     
8.   http://jp.youtube.com/watch?v=4Ely4uyD_rk&feature=related

人間の活動で作られたCO2が温暖化の主な原因であるとは信じない専門家の見方を紹介している。

番組の中で、赤祖父俊一・アラスカ大学国際北極圏研究センター所長も「CO2排出増加の以前から気温上昇は始まっており、CO2と気温には関連性がない」(2/8)、「北極圏の氷は常に変動しており、何も異常はない」(6/8) と述べている。

主な内容:

IPCC報告は偏ったもので、多くの専門家が内容を否定している。
「温暖化はScienceではなく Propagandaだ。」「温暖化と人類が放出する温室効果ガスを関連付ける直接的な証拠はない。」
反対意見が抹消されたと告発する学者がいる。(IPCCもそれを認めた)
   
CO2と気候変動は相関関係があるように見えるが、実際は気候変動の数百年後にCO2の変動が起きている。
  CO2の最大の発生源は海で、気温が上がればCO2を放出するが、海水量は大きいので、温度アップに時間がかかるため。
   
真犯人は太陽の活動。
  宇宙線と水蒸気で雲が出来るが、太陽の活動が活発になる(太陽黒点が増える)と、太陽風で宇宙線を吹き飛ばし、雲が出来なくなって気温が上がる。
  太陽活動が弱まると、雲が増えて、気温が下がる。
   
CO2温暖化論は地球寒冷化の恐れの際に、スウェーデンの気象学者 Bert Bolin が打ち出した仮説。
CO2を増やせば、少しは温度を上げられるかもしれないというもの)
  炭鉱ストに怒ったサッチャーが原子力への移行を狙い、この仮説を利用した。
   
気候変動のモデルは変数を少し変えれば希望の結果が出せる。
   
温暖化でマラリア被害が北上するというのはウソ。ロシアでマラリアが大発生した。
   
開発途上国の活動を抑えようとする動きに対するアフリカの視点
   

ーーー

洞爺湖サミットを機会に、温暖化対策の必要性の議論が増えるとともに、懐疑論も増えている。

池田信夫 blog でも懐疑論の立場でこれまで多くの記事が掲載されているが、温暖化懐疑論のまとめ」(2008/7/5)として最近の懐疑論の文献を紹介している。

1.そもそも温暖化は起きていない(寒冷化が起こる)とするもの

  • 丸山茂徳『地球温暖化」論に騙されるな! 』
  • Lawrence Solomon, The Deniers

2.温暖化は自然現象であり、人為的な要因は重要ではないとするもの

  • 赤祖父俊一『正しく知る地球温暖化』    上記
  • 槌田敦『CO2温暖化説は間違っている』
  • Roy Spencer, Climate Confusion

3.温暖化をCO2削減で止めることは不可能だとするもの

  • デニス・エイヴァリー&フレッド・シンガー『地球温暖化は止まらない』

4.地球温暖化のリスクよりその対策(京都議定書)のコストのほうが大きいとするもの

  • 池田清彦・養老孟司『ほんとうの環境問題』
  • Nigel Lawson, An Appeal to Reason

5.排出権取引は非効率であり、課税で解決すべきだとするもの

  • William Nordhaus, A Question of Balance

同blogの温暖化問題記事

2008/7/9 地球は温暖化しているのだろうか  

2008/6/28 地球と一緒に頭も冷やせ!  

ーーー

上記の赤祖父氏は「もったいない学会」(http://www.mottainaisociety.org/)の講演(2008/2/19)で、次のように述べている。

地球の長い歴史で、今と同様に暖かい時期が何度もあった。
西暦1000年頃は温暖期で、その後小氷河期が始まり、1800年頃から温度が上がり始めて今に至っている。
化石燃料使用でのCO2排出増加は1946年以降であるが、それ以前から今の状況が始まっている。
IPCCは1975年以降を捉え大変だとするが、「気候変動」であり、なにも異常ではない。
氷河の後退も、海水の上昇も1800年代から始まっている。
白熊はもっと暖かい時期でも生きていた。
氷河崩壊は自然現象。氷河は流れており、先端が崩壊するのは当たり前。
永久凍土がとけて家が壊れたのは、パイルを打たずに安く家を建てたため、冬の暖房で凍土がとけたもの。


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米国最大の化学品のディストリビューターAshland11日、33億ドルでHercules を買収する契約を締結したと発表した。
合併は本年末に完了する予定で
、“major, global specialty chemicals company” が誕生する。

本年3月末までの年間ベースで統合会社の売上高は海外分35億ドルを含め、100億ドル以上となる。
同期間の
EBITDA(金利・償却費・減耗費・税金前損益)は特別損益を除き、Ashland 365百万ドル、Hercules 392百万ドルとなっている。

Ashland では両社の合併により、3つのコア事業が出来ると述べている。
specialty additives and ingredients
  Hercules wood rosin 製品(Aqualon) は接着剤、ペイント、食品、医薬品、化粧品等広く使用されている。
  統合により、この事業から
EBITDA1/3が産み出される。

paper and water technologies
  両社事業の統合により売上高20億ドルのグローバルなpaper and water technologies 事業が誕生

specialty resins
  Ashland の得意分野で、Ashland の商事部門と自動車用品部門(Valvoline) が補完する。

ーーー

Ashland は1924年に地方の石油精製業としてスタートした。

現在の事業と、2007年の売上高(単位:百万ドル)は以下の通り。

部門 製品 売上高
Distribution chemicalsplasticscomposite materials
environmental services
 4,031
Performance Materials metal casting consumables and design services
unsaturated polyester
vinyl ester resins
gelcoats
high-performance adhesives
specialty resins
 1,580
Valvoline motor oil automotive lubricantstransmission fluidsgear oils
hydraulic lubricantsautomotive chemicals

specialty products
greasescooling system products
 1,525
Water Technologies     818
(Inter-segment)     -169
合計    7,785

ーーー

Hercules1912年にHercules Powder CompanyとしてDuPont からスピンオフして設立され、同様のAtlas Powder Company とともに、米国の火薬市場の2/3を占めた。

1920年代にニトロセルロースなどで化学分野に進出、1950年代に石油化学に進出した。
1960年代にはDMTPP のトップメーカーとなった。

しかし1970年代に入り、汎用石化製品からスペシャルティケミカルに転換、19831月にPP事業をイタリアのMontedison とのJVHimont に移した。これが変遷のうえ、Basell となった。

   2006/4/19  ポリプロピレン技術導入競争  

現在の事業と、2007年の売上高(単位:百万ドル)は以下の通り。

部門 製品 売上高
Aqualon Group wood rosin derivatives   985.6
Paper Technologies
  and Ventures Group
Paper Technologies   903.4
Ventures
  Pulp and Biorefining
  Water Management
  Adhesives
  Lubricants
  247.2
合計    2,136.2


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Dow Chemical 10日、 188億ドルでRohm and Haas (R&H)を買収する契約を締結したと発表した。
現金153億ドルで全株式を買収し、R&Hの35億ドルの借入金を引き継ぐ。
1株 $78 は前日終値の74%増し。

Dow Andrew N. Liveris CEO は、この買収はDowを、高付加価値で多角化した化学品・先進材料会社という「明日のダウ」に変貌させる重要な一歩であるとし、機能製品と先進材料で世界の主導的地位を占める米国最大のスペシャルティケミカル会社になると述べた。

ーーー

Dowは基礎化学品と機能性化学品のバランスが取れ、多角化し、上流から下流までの統合会社で、グローバルに活動し、生産性と信頼性が高い、技術優位の企業となることを目指し、原料価格変動の影響を受けやすい基礎部門をAsset light strategy(JV化)により進めることを明らかにしている。

同社は昨年12月、クウェート国営石化会社 Petrochemical Industries Company (PIC) との間でグローバルな石化JV(50/50)を設立すると発表した。JVは米国に本拠を置き、PE、PP、PC、エチレンアミン、エタノールアミンを製造販売する。

   2007/12/14 速報 ダウとクウェートのPIC、グローバル石化JVを設立 

石化のPICとのJV化と今回のR&Hとの合併を合わせると、2007年ベースで、機能製品・先進材料の売上高比率が、従来の51%から69%に高まる。


この買収に際し、米国の億万長者のWarren Buffett の Berkshire Hathaway が30億ドル、クェート投資庁が10億ドルを優先株購入の形で出資する。

これによりBerkshire Hathaway Dow の最大株主となる。 

ーーー

Rohm & Haas について:

1907年に2人のドイツ人、ケミストのRohmと実業家のHaasがドイツでRohm & Haasを設立した。

1909年にHaasが米国に移住してフィラデルフィアに支店を設立した。
第一次大戦でドイツ企業が接収されるのを避けてHaasが本社と縁を切って米国企業のRohm & Haasとした。
(Haasは戦後 Rohmにその持分の対価を払っている)

ドイツ本社はRohmと改称、1989年にHulsに買収された。
Hulsは1899年にDegussaと合併してDegussa-Hulsとなり、2001年にSKW Trostbergと合併して現在はDegussaとなっている。

MMAの海外メーカーの推移

Rohm and Haas の事業  売上高は2007年、単位:百万ドル

Group 部門 Sales 製品
Electronic Materials Group Electronic Technologies 1,666 Semiconductor、Circuit Board、
Packaging and Finishing
Display Technologies 45 韓国SKCとのJV
Specialty Materials Group Paint and Coating Materials 2,120  
PacPrimary Materialskaging and Building Materials 1,826 Polymers、additives、
formulated value-added products
Primary Materials 975 MMA、アクリル酸とエステル、
Specialty monomer products
Performance Materials Group Performance Materials 1,205 Process Chemicals & Biocides、
Powder Coatings、others
Morton International  Salt 1,060 Morton International 買収
Total   8,897  


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双日は8日、高機能樹脂や合成ゴムの原料として需要が拡大しているDCPD(ジシクロペンタジエン)を製造するアメリカのCymetech, LLCを買収し、完全子会社化したと発表した。Cymetech Corporationに社名変更する。

Cymetechは、独自の技術でCalvert City (KY)でDCPDを製造しており、25,000トンの生産能力を持つ。

DCPDは、液晶フィルム、光学レンズの原料の環状オレフィン・コポリマーや、EPDM の原料として需要が拡大している。

EPDMの第3成分はDCPDのほかに、エチリデンノルボルネン(ENB)、1,4-ヘキサジエン(1,4-HD)などがある。

また、DCPDは、双日の子会社のMetton America が製造・販売しているメトン樹脂(DCPD-RIM成形法用配合液)の原料であり、両社のシナジーが期待できる。

双日は、米国、欧州に加えて、経済成長が著しいアジアでの化学品事業の拡大を図っていくとしている。

ーーー

RIM(Reaction-Injection-Molding) は反応射出成型方式で、DCPD-RIM成形法の特長は、極めて短時間で大型形状の成型物や複雑形状の成型物が経済的なコストで得られることにあり、主要用途は以下の通り。
 ・建機、農機、大型トラックなどのボディーパーツ
 ・合併浄化槽筐体
 ・ユニットバス周りのプラスチックパーツ
 ・量水器ボックス、パイプ継ぎ手などの土木資材

米国にはDCPD-RIM成形法用配合液のメーカーが2社あった。

1社は Hercules Metton で、現在は上記の通り、双日の子会社Metton America である。
他の
1社はBFGoodrich が開発したTelene で、Cymetech LLC が製造していたが、日本ゼオンと帝人化成のJVRIMTEC(株)が事業を買収し、全額出資のフランス子会社 Telene SAS となっている。

また、Metton America が双日の連結子会社となったのは、RIMTEC設立に際してEUから条件を付けられ、帝人が手放したためで、これらの事業の間には複雑な関係がある。

ーーー

Cymetech

20004月、BFGoodrich Performance Materials 部門と、ポリウレタンメーカーの Advanced Polymer Technologiesが合弁会社Cymetech を設立し、DCPDTelene の製造を開始した。
2001
2月、BFGoodrich Performance Materials 部門を投資家に売却、同部門はPMD Group Inc.となったが、同年7月に Noveon Inc と改称した。コーティング材料、ポリウレタン材料等を製造・販売した。

2002年、Noveon 所有のCymetech 株を投資会社Sterling JA, LLC が買収した。
但し、
Telene 事業はNoveon が引き取り、Cymetech DCPD製造会社となった。
Noveon Telene の自社製造を止め、日本ゼオンからのOEM供給品に切り替えた。)

2004年、Lubrizol が低成長の潤滑油添加物事業の多角化のため、18.4億ドルでNoveon を買収した。

ーーー

Metton America

Hercules, Inc. Metton 事業を1995 に帝人、丸善石油化学、ニチメン(現双日)の3社が買収し、Metton America を設立した。

3社で投資会社
MTN Chemicals (帝人化成 60%)を設立してMetton America 60%を出資。
日本では帝人化成が
100%子会社・帝人メトンを設立した。(帝人メトンもMetton America 25%を出資した)

ーーー

日本ゼオン:

日本ゼオンはGPI法(イソプレン抽出技術)を開発、ジシクロペンタジエンを主原料としてRIM(反応射出成形)方式によって得られる大形成形品「PENTAM(R)」を販売した。

ーーー

RIMTEC

20038月、日本ゼオンと帝人化成はDCPD-RIM配合液および各種RIM成型品の製造、販売のため、合弁会社 RIMTEC(ゼオン 60%、帝人化成 40%)を設立した。

両社はDCPDを主原料とし、RIM方式により成型される新規の熱硬化性樹脂として日本ゼオンはPENTAMを、帝人メトンはMETTONを販売していたが、両事業を統合することとした。

Metton America

EUはこの合併に関して、欧州市場でのDCPD-RIM成形法用配合液の販売で懸念を示した(帝人:Metton America とゼオン)。その結果、帝人がMetton America の直接・間接出資を処分することを提示、20038月、合併が承認された。

20039月、ニチメンは帝人化成のMetton America への直接・間接出資分を買取り、85.11%を取得して傘下に収めた。

200511月、RIMTEC Lubrizol との間で、Noveon DCPD-RIM成形法用配合液(Telene)事業の買収について基本契約を締結した。
買収にあたり、
RIMTECの全額出資の子会社Telene SASをフランスに設立し、新会社がNoveon より従業員、研究開発設備などを含む全てのTelene事業を引き継ぐ。

Noveon DCPD-RIM成形法用配合液(Telene)をRIMTEC社からのOEM供給品に切り替えており、両社は良好な協力関係を構築してきた。
RIMTEC
の販売拡大の速度を上げる為に直接EU市場を開拓したいという意向と、Noveonの親会社Lubrizol のコア事業集中方針とが合致し、Telene事業買収の合意に至った。

ーーー

当初の各社の現状は以下の通りとなる。

DCPD DCPD-RIM成形法用
配合液
現所有者
  Metton America
(帝人→双日)
双日
Cymetech
(→双日)
CymetechTelene
(→
NoveonRIMTEC
RIMTEC
(ゼオン/帝人)

当初、DCPDと配合液の一貫メーカーであったCymetech は、BFGoodrich の離脱でTelene との縁が切れたが、今回、双日の下で、別系列のMetton DCPDを供給することとなる。


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2008年5月30日、BHP Billiton European Commission に対し Rio Tinto 買収の事前届出を行なった。

BHP Billiton 2007年11月、Rio Tinto に対して、Rio Tinto の株式1株に対してBHP株3株を与えるという案で、買収提案を行った。
これに対し、
Rio Tinto は買収価額が著しく安すぎるとし、拒否した。

BHP Billiton 本年2月6日、当初の案を修正し、BHP株3.4株で再提案を行なった。

    2008/6/6  BHP BillitonEC Rio Tinto 買収の事前届出

BHPRio Tinto買収には欧州、米国、豪州、カナダ、南アの独禁法当局の承認が必要である。

BHPでは、自発的に日本、中国、その他アジア諸国にも承認を申請するとしている。

日本は鉄鋼原料等の輸入で本買収で大きな影響を受けるが、両社の資産が日本にほとんどないことから、現在の独禁法では規制が行なえない。
仮に公取委が資産の売却等を命じたとしても、これを無視されても何らペナルティを与えられない。単に面子を潰すだけとなる。

ロイターの記事で、元公取委事務総長で英国の法律事務所Freshfields Bruckhaus Deringer の東京オフィスのシニアコンサルタントの上杉秋則弁護士は、「日本の法律は外国と比べ余りにも古く、影響を受ける企業がいるのに日本の当局はコントロールする手段を持たない」と述べている。

公取委事務総長は6月4日の定例会見で、以下の通り述べた。

「引き続き、欧州委員会をはじめ、海外の競争当局と連携をとりつつ、情報収集、実態把握を行い、独占禁止法上の問題点の有無について、検討を進めていきたい。

(現行法では)株式取得については、問題がないかどうかをチェックするために、取得後30日以内の届出を義務付けているだけ。
EU等諸外国と同じように事前届出にしようという改正法案を、今、国会に提出している。」
(独禁法改正案は審議入りも出来ず国会が閉会した。事前届出でも効果は少ないと思われる)

ーーー

米国ではHart-Scott-Rodino Antitrust Improvement Act (1976) に基づく事前通知が必要で、通知の提出の後、待機期間の進行が開始し、米司法省及び連邦取引委員会(FTC)は、①調査活動を開始しない、②限定調査を開始する、ないしは③調査活動を開始する――のいずれかの対応を選択することになる。
待機期間中、当事者は、調査活動等を行っている政府機関の許可を得なければ、取引を完成させることができない。

BHP Billiton 73日、司法当局がレビューを終え(①調査活動を開始しない)、米司法省とFTC待機期間の早期終了を承認したと発表した。
「待機期間の早期終了は買収での重要な一歩だ」としている。

しかし、欧州と豪州の決定が最も重要である。

ーーー

EU74日、徹底調査を開始した。事前調査に1ヶ月かけたが、更に90日間 調査を行なう。
世界最大と世界第二位の鉱山業者の統合には多くの懸念があり、更なる調査が必要としている。

もし欧州か豪州の当局が買収の条件として Rio の事業の大きな部分の売却を求めた場合、買収は破綻する。
逆に買収を認めた場合は、
Rio の株主が提案について投票することとなる。

EU は「買収により、特に鉄鋼、石炭、ウラン、アルミ、鉱物砂の市場で、値上げや需要家側での選択余地が減るという懸念がある」としている。
鉄鋼メーカーは両社の統合が鉄鉱石の
36%のシェアを握ることに懸念している。

EUNeelie Kroes 委員競争政策担当は「最近のコモディティ価格の上昇は需要家業界と世界中の需要家に深刻な影響を与えており、更なる悪影響を与えかねない変化は有害である。EUではこの買収が欧州での競争に悪影響を与えないかどうか、十分検討する」としている。

EUの事前調査の結果は以下の通り。

両社が統合すれば鉄鉱石の供給で大きなシェアを占め、3番手と合わせると鉄鉱石の供給の大きな部分を支配する。
原料炭に関しては、BHP Billitonの支配力が強化され、競合者ははるか後方に置かれる。
   
鉄鉱石と原料炭の市場支配力の強化で、この統合が鉄鋼メーカーの価格交渉力を弱める。
更に、統合会社が投資計画を減らしたり遅らせたりして供給を減らし、価格を上げる恐れがある。
   
ウランは電力会社が原発用に購入するが、ウランの主要供給2社の統合により、供給者の選択余地を減らす懸念がある。
   
アルミと酸化チタンを含有する鉱物砂に関しても、懸念がある。

ーーー

Rio Tinto はさきに中国及び日本の鉄鋼メーカーとの間で豪州産鉄鉱石の大幅値上げで妥結したが、BHP Billiton 74日、宝鋼集団との間で豪州産鉄鉱石について Rio Tinto と同じ水準で決着した。

    2008/4/8 鉄鋼原料価格 急騰  


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三菱商事と三井物産は6月30日、西豪州LNG事業に関し移転価格税制に基づく更正通知を東京国税局より受領したと発表した。

両社は2005年に、2000年3月期から2005年3月期の6事業年度について東京国税局から移転価格税制に係る調査を受け、2006年6月に除斥期限(時効)が到来する2000年3月期の更正通知を受けた。

両社は東京国税局に対して異議申立を行なうと共に、日豪租税条約に基づき相互協議の申立を行なった。

日豪両当局は二重課税の排除を目指し、2006年9月から二国間協議を継続しているが、現時点では合意に達っしていない。
このため、両社は昨年6月に2001年3月期分、今回2002年3月期分の更正通知を受けた。残る3年度分も順次通知を受けることとなる。

通知を受けた所得増差額と追徴税額(法人税、事業税及び住民税:本税及び付帯税を含む)は以下の通り。

  三井物産 三菱商事
所得 追徴税 所得 追徴税
2008/6(2002/3月期) 100億円  47億円 116億円  48億円
2007/6(2001/3月期)  82億円  39億円  89億円  36億円
2006/6(2000/3月期)  49億円  25億円  不明  22億円

なお、三菱商事は2006年3月期決算に6事業年度分として法人税等234億円を見積もり計上している。

問題になっているのは、両社が共同出資したオーストラリアの合弁会社に対する情報提供や経営指導などに関する取引。

三菱商事と三井物産は、西豪州沖合のNorth West Shelf のLNGプロジェクトにおける6分の1の権益保有者で、1985年に各々50%の出資により豪州法人 Japan Australia LNG (MIMI) Pty. Ltd.を設立した。

MIMIはほか5社のパートナー、豪BHP Billiton Petroleum、豪BP Developments Australia、豪ChevronTexaco Australia、豪Shell Development、豪Woodside Energyと共に天然ガス・コンデンセート・原油・LPGの開発、生産、輸送、販売に参画している。

North West Shelf プロジェクトは1970年代初頭に西豪州北西部沖合い約130kmにある鉱区で発見された天然ガスの開発案件。LNGの他、原油・コンデンセート・LPG等を生産・販売する豪州最大の総合エネルギープロジェクト。
参画比率は各社1/6(16.67%)。
1984年にコンデンセート販売を開始、1989年からは日本の電力・ガス会社向けにLNG供給を開始、1989年にはWanaea油田、Cossack油田が発見され同油田からの原油及びLPG生産が1995年から開始された。

2004年8月に完工した第四液化系列と併せ、LNG生産能力は年間1,170万トンとなったが、需要旺盛なアジア市場への供給に向け、2008年央の立上げを目指し、約1,600億円を投じて年間420万トンの生産規模を有す第五系列を建設している。
第五系列により生産能力は約4割増の計年間約1,590万トンとなる。

MIMIは日本の買主10社へのLNG販売(年間約1,100万トンを柱とする一方、豪州国内向けに天然ガスを、また国際市場にコンデンセート、原油、ならびにLPGを販売している。

販売損益そのものは豪州に帰属し、日本には(配当送金があるまでは)課税権がないため、情報提供や経営指導料を査定して課税するものと思われる。

参考

    2006/6/29 武田薬品、移転価格税制に基づく更正 

     2008/2/7 信越化学の移転価格課税

     2008/5/1 ホンダの中国四輪車事業の移転価格税制問題


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本年6月初めに、PetroChina 子会社の蘭州化学が甘粛省蘭州でアクリル酸とアクリレートの商業生産を開始した。
165
百万ドルを投じたもので、能力はアクリル酸が80千トン、アクリレート(メチル、エチル、ブチル)が115千トンとなっている。
PetroChina
が開発し権利を持つ、プロピレンの2段階酸化によるアクリル酸製造技術、連続エステル化によるアクリレート製造技術を使用している。

蘭州化学は年産1,050万トンの製油所と70万トンのエチレンコンプレックスを運営している。

ーーー

中国のアクリル酸(AA)及びアクリレート(AE)のメーカーと能力は以下の通り。(単位:千トン)
メーカー 立地 AA AE
BASF-YPC Co Ltd 南京   160   215
Sinopec Beijing Eastern Petrochemical 北京    80    95
Formosa Plastics Industrial Co (Ningbo) 浙江省寧波   160   230
Jiangsu Jurong Chemical Co Ltd (SunVic) 江蘇省塩城   205   250
JiLian (JiLin) Petrochemicals Ltd (JLPL) 吉林省吉林    35    30
Shanghai Huayi Acrylic Acid Co Ltd 上海   126   150
Shenyang Paraffin Wax Chemical Co Ltd 遼寧省瀋陽    80   130
Zhenghe Chemical 山東省    40    60
PetroChina Lanzhou Petrochemical Corp 甘粛省蘭州    80   115
Shandong Kaitai Industrial Co 山東省 シ博    30   --
Total     996  1,275
   藍星グループ子会社のShenyang Paraffin Wax Chemicalは三菱化学の技術を導入したもの

最大のメーカーは SunVic Chemical Holdings Jiangsu Jurong Chemical で、AA 205千トン、AE 250千トンの能力を持つ。

2003年に創業者で会長のSun Liping農薬原料のPMIDA N-(phosphonmethy) liminodiacetic Acidとシクロヘキサンの製造のため、Xiangshui Yinyan Chemical を設立した。

2004年に持株会社SunVic Chemical Holdings をシンガポールに設立(2007年2月に上場)するとともに、Jiangsu Jurong Chemical を設立して、Xiangshui Yinyan事業を引き継いだ。

2005年にAAの第1期 40千トン、アクリレート(ブチル)60千トンが生産を開始。
2006年にAA第2期が完成し130千トン能力とし、アクリレート(メチル 40千トン、2EHA 40千トン)が生産を開始した。
2006年に第3期前半が完成し能力を150千トンとし、2007年末に後半が完成し、合計能力205千トンとした。

中国に200以上の需要家を持つとともに、アジア、欧州、北米、中南米に輸出している。

同社はこのほか、PMIDA とシクロヘキサンを生産している。

 

同社は従来、原料のプロピレンを中国や韓国のメーカーから購入していたが、原料遡及を目指し、このたび江蘇省塩城でプロピレン工場の建設を開始した。能力は年産23万トンで、2009年末の完成を目指す。
重油の流動接触分解によるもので、プロピレンのほか、ガスオイル、ガソリン、LPGを生産するが、プロピレン以外は外販する。

このほか、原料、製品の輸送のため桟橋と貯蔵設備を建設している。

同社では将来川下の誘導品に展開する計画で、高吸水性樹脂(SAP)、接着剤、紫外線カット塗料、ブタジェンスチレンラテックス、ポリアクリル酸ナトリウム塩などを検討している。

  同社のCorporate Video   http://sunvic.listedcompany.com/webcast.html

 

 


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   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

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2008/6/21 Hexion によるHuntsmanの買収、取り止めか   

Huntsman は623合併を邪魔したとしてHexionの親会社のApollo Management をテキサス州法廷に訴えた。

訴えによると、Apollo はライバルのBasell のオファーを退け、出来もしない約束をしたとし、その上で値下げ交渉をしようとしているとする。

Huntsman 30億ドルの損害賠償と、Basellに支払った違約金2億ドルのうちHexionが負担すべき1億ドルに加え、Huntsmanの事業、企業価値への損害額(金額未定)を求めるとしている。

ーーー

2008/1/7 韓国公正取引委員会、LDPEカルテルで6社に課徴金
   

韓国公正取引委員会は2007年4月、タイヤメーカー向け合成ゴムに関して2000年3月から2003年3月までの間、価格カルテルを行っていた錦湖石油化学と Seetec (旧 現代石油化学)に対し,是正命令と総額56億ウォンの課徴金を賦課する決定を行った。

錦湖石油化学の合成ゴムのシェアは68.7%、現代石油化学のシェアは22.2%であった。

更に本年6月、2000年以降、スチレンモノマー、トルエン、キシレン、エチレングリコールなど6種類の製品で価格の談合をしていたとして、石油化学企業8社に対し総額127億ウォン(約13億2300万円)の課徴金納付命令と是正命令を下した。

会社別の課徴金の額は以下の通り。
SKエナジー 48億3600万ウォン
GSカルテックス 28億7200万ウォン
サムスン・トータル 17億6800万ウォン
湖南石油化学 8億9800万ウォン
シーテック(旧現代石化) 8億4400万ウォン
大林コーポレーション 6億1900万ウォン
東部ハイテック 4億7100万ウォン
サムスン総合化学 3億9500万ウォン

2007年2月のHDPEとPPカルテル(課徴金 10社合計 1,051億ウォン134億円)、同12月LDPE6社合計 541億7,500万ウォン:約65億8,400万円)を含め、短期間に相次いで4件のカルテルが摘発された。

ーーー

2007/8/11 PPカルテル審決  

2000年5月30日に7社に公取委の立入検査が入った。うち3社は課徴金を支払ったが、4社は2007年8月の審決に対して東京高裁に控訴して未だに争っている。

公取委は2008年6月20日付けで、残り4社に対し課徴金納付命令を出した。
(通常はメーカーが審決を受諾した後で課徴金納付命令を出す。メーカーが控訴したが、とりあえず課徴金の算定結果が出たので納付命令を出したというもの。)

メーカー側は控訴中のため、8月20日の納付期限までに裁判の結果が出ない限り、当然争うものと思われる。

各社の課徴金は以下の通り。(青字が確定分)

  当初課徴金 審判課徴金 今回の命令
三井化学(グランドポリマー)  7億6008万円    
日本ポリケム  8億4517万円  2億2087万円  
チッソ  4億3513万円  1億1662万円  
出光興産      1億4215万円
住友化学      1億1716万円
サンアロマー         5097万円
トクヤマ         4781万円

日本ポリケムとチッソは当初の課徴金納付命令に対し審判を要求、その結果、課徴金計算終期の見直しで当初の命令より大幅減額を得た。(当初命令は2000年9月頃の「本件合意から離脱する旨等を他の各社に文書で通知」した時期までであったが、5月30日の立入検査までとした。)

4社についての計算も立入検査までの期間での計算と思われる。

ーーー

2008/2/6  SABICの中国進出 

SABICは本年1月31日、Sinopec との間で、50:50のJVを設立して天津にエチレン誘導品コンプレックスを建設する Heads of Agreement を締結したと発表した。

Sinopecは天津で年産100万トンのエチレンコンプレックスを建設中であるが、JVはここに、年産60万トンのPEと40万トンのエチレングリコールのコンプレックスを建設することとなっていた。

SABICとSinopecは6月21日、戦略的協力契約を締結し、両社のJVを天津に建設中の石化コンプレックス全体に拡大するとともに、SABIC Innovative Plastics の技術での原料によるポリカーボネート生産のFSを実施することとした。

調印には、主要産油国と消費国がサウジアラビアのジッダで開いた緊急閣僚会合に出席した中国の習近平副主席も立ち会った。

契約はまた、今後の中国での他の計画での協力なども行なうとしている。

SABIC Innovative Plastics の前身のGE Plasticsは、2006年にPetroChina とポリカーボネートの製造JVの設立交渉を行っていたが、2007年初めにこの計画を延期することを決めた。
その後の報道では、GE Plastics を買収したSABICは、同社がサウジでPC計画を進めているため、中国での計画をやる考えはないと言明していた。

2007/2/13 GE Plastics、中国のPC計画延期 

 


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住友化学は4月3日、東洋インク製造と合弁でサウジアラビア、タイ、中国にPPコンパウンド設備を追加すると発表した。

同社はPP事業のグローバル展開を進めている。サウジでSaudi Aramco とのJV PetroRabighで今秋完成を目指して建設を進めており、完成後はシンガポール、テキサス、千葉と合わせて世界4極、年産200万トン規模のPP供給体制が構築される。

これらを最大限に活かして、自動車用部品向けなどで需要が増加している PPコンパウンド事業について拡大を図る。

タイでは住友化学 55%、東洋インキ 45%出資のSumika Polymer Compounds Thailandを設立、年産11,000トンのPPコンパウンド設備をバンコク近郊に建設する。

中国では2006年に東洋インキとの合弁会社(住化55%)の珠海住化複合塑料有限公司が現地生産を開始しているが、11,000トンを増設し、年産22,000トンに増強する。

サウジアラビアでは住友化学 55%、東洋インキ 45%出資で Sumika Polymer Compound Saudi Arabia を設立し、PetroRabighプラントに隣接するRabigh Conversion Industrial Parkで年産10,000トンののPPコンパウンド設備を建設する。
アジア、アフリカ、欧州等の市場に向けて、原料から一貫した生産体制を構築する。

ーーー

サウジアラビアは人口増、高い失業率に悩んでおり、外資を導入して石油オンリーの経済を多角化しようとしており、新しいプラスチック加工のセンターになることを目指している。

Rabigh Conversion Industrial Park (CIP) Saudi Aramcoと住友化学がスポンサーとなって PetroRabigh に建設するプラスチック加工団地で、面積は240ヘクタール(うち70ヘクタールは用役、物流、共通施設用地)。

下記の利点を訴え、ニューヨーク、ロンドン、デュッセルドルフ、湾岸各地で誘致説明会を行なっている。

Rabigh Conversion Industrial Park の利点
  詳細
 http://www.rabighcip.com//?content=6#resinsandenergy 

1)PetroRabigh の競争力あるレジン  
   当面の生産品目:
    HDPE
LLDPEEPPEHomo PPRandom PPImpact PPMEGPO

2)政府が設定する安い電力料金 約 3.2 Cents/kWh

3)政府のインセンティブ
   外資
100%承認(JV含め国内投資と同様の扱い)
   損失の無期限繰越
   元本・利益・配当の自由送金
   法人税率20%頭打ち、等々

4)立地
   国際港湾の Jiddah
からハイウエーで180km
   大規模新都市
King Abdullah Economic City から15km
   欧州市場へのアクセス
 

5)サポートサービス
   電力、水、通信、保安、ビジネス支援等々
   


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日中両政府は18日、懸案になっていた東シナ海のガス田開発問題で合意した。

1.日中の中間線をまたぐ北部の海域(龍井ガス田の南)に「共同開発区域」を設定。
  採掘場所を共同探査で絞り込む。収益配分の方法などは今後の交渉で決める。

  東シナ海のその他の海域における共同開発をできるだけ早く実現するため、継続して協議を行う。

2.春暁ガス田については日本法人が出資、日本が一定の権益を確保する。
  (中国の海洋石油資源の対外協力開発に関する法律に従って)

付記

日中の東シナ海ガス田協議で、龍井(日本名:翌檜)を共同開発の対象としないことで合意していたことが20日、分かった。
日中ともに単独開発も行わず、翌檜は事実上放棄される。
翌檜は〈1〉中国と韓国の境界の基準となる「中間線」〈2〉日韓大陸棚共同開発区域――に近接しており、開発すれば韓国と摩擦を生じかねないと判断、韓国に配慮した。

2004年6月に中国が日中中間線近くでガス田の開発に着手したことが表面化し、日本が抗議してから4年を経て、問題は一応の決着を迎えることになった。
(平湖ガス田は上海天然気公司
1998年から生産を開始しており、上海まで389kmのパイプラインでガスを送っている。)

 

問題の発端は、東シナ海での境界が未画定であることである。

国連海洋法条約には境界について次の2つの規定がある。

  第15条では「中間線」としている。

二の国の海岸線が向かい合っているか又は隣接しているときは、いずれの国も、両国間に別段の合意がない限り、いずれの点をとっても両国の領海の幅を測定するための基線上の最も近い点から等しい距離にある中間線を越えてその領海を拡張することができない。ただし、この条の規定は、これと異なる方法で両国の領海の境界を定めることが歴史的権原その他特別の事情により必要であるときは、適用しない。

  第77条は「大陸棚に対する沿岸国の権利」を認めている。

1  沿岸国は、大陸棚を探査し及びその天然資源を開発するため、大陸棚に対して主権的権利を行使する。
2  1の権利は、治岸国が大陸棚を探査せず又はその天然資源を開発しない場合においても、当該沿岸国の明示の同意なしにそのような活動を行うことができないという意味において、排他的である。
3  大陸棚に対する治岸国の権利は、実効的な若しくは名目上の先占又は明示の宣言に依存するものではない。
4  この部に規定する天然資源は、海底及びその下の鉱物その他の非生物資源並びに定着性の種族に属する生物、すなわち、採捕に適した段階において海底若しくはその下で静止しており又は絶えず海底若しくはその下に接触していなければ動くことのできない生物から成る。

  このほか、「衡平の原則」(Equitable Principle) がある。

北海大陸棚事件(西ドイツ対デンマーク、西ドイツ対オランダ、1969年判決)で国際司法裁判所は、大陸棚を「陸地領土の延長又は連続」と定義し、これを根拠に大陸棚を沿岸国領域の一部とみなしうる、と判断した。
大陸棚の境界画定の原則については、衡平の原則に従い、かつすべての関連ある状況を考慮に入れて、各当事国の合意によって決定されるものとした。

点線が「等距離原則」によるドイツの領域、
国際司法裁判所は「衡平の原則」により赤色の線内をドイツの大陸棚と設定した。

日本は国際司法裁判所の判例などに照らして「重なる場合は中間線が境界」と主張してきた。
一方、中国は、大陸棚の資源開発などには沿岸国の主権的権利が及ぶとする
同条約の「大陸棚自然延長論」を主張、「沖縄トラフ」が境界だとしている。

国際裁判の判例は、1960年代までは大陸棚の自然延長論を採用した例もあったが、80年代からは、「等距離原則」が定着している。

日本は国際司法裁判所や国連海洋法裁判所に付託する事を中国に要請しているが中国はこれに応じていない。

中国側が開発する4つのガス田、春暁(日本語名白樺)、断橋(楠)、天外天(樫)、龍井(翌檜:アスナロ)はいずれも中間線の中国側にあるが、2005年4月に経産省が「白樺」「楠」「翌檜」の地質構造が中国側と日本側でつながっているとの調査結果を発表、日本側のガスを吸い上げているとして中止を要求した。

また、これまで日本側海域での採掘は控えていたが、2005年7月に中国側に対抗して、帝国石油に中間線の日本側海域でのガス田試掘権を付与した。(安全保障面や経済面等で政府側との調整が進んでない)

今回の合意は、境界画定を棚上げした形で決着した。

ーーー

今回の合意には多くの問題が指摘されている。

1.境界画定を棚上げ

付記

日中共同プレス発表は次の通りで、添付地図からは双方主張の境界線が消されている。

日中双方は、日中間で境界がいまだ画定されていない東シナ海を平和・協力・友好の海とするため、2007年4月に達成された日中両国首脳の共通認識及び2007年12月に達成された日中両国首脳の新たな共通認識を踏まえた真剣な協議を経て、境界画定が実現するまでの過渡的期間において双方の法的立場を損なうことなく協力することにつき一致し、そして、その第一歩を踏み出した。今後も引き続き協議を継続していく。



2.「共同開発区域」の設定と春暁ガス田への日本法人の出資が決まっただけで、詳細はすべて今後協議。
  いずれも「早期に締結すべく努力する」としている。

  「共同開発区域」はガスの存在は不明。
  中間線より日本側海域の方が中国側より面積が広い(日中関係筋)。

  春暁出資は中国の海洋石油資源の対外協力開発に関する法律に従って行なうとなっており、中国の事業への参加に過ぎない。
  (春暁などには2003年8月に
ShellUnocal 20%ずつ権益を取得した。
   
20049月に「商業上の理由」で撤退した。)

3.断橋(楠)、天外天(樫)、龍井(翌檜)には触れず。
  「東シナ海のその他の海域における共同開発をできるだけ早く実現するため、継続して協議を行う」としている。
     龍井(翌檜)については上の付記参照
  

4.採掘可能埋蔵量は少ない。

  中国側によると、東シナ海全体のガス田の埋蔵量は石油換算で1.8億バレル。
  日本が出資する白樺の埋蔵量は6,380万バレルで、日本で消費する石油・天然ガスの約10日分。

ガス田名 採掘可能埋蔵量
(石油換算)
白樺(春暁)  6,380万バレル
楠 (断橋)  1,520
樫 (天外天)  1,260
翌檜(龍井)  不明

5.ガス運搬問題

  日本までのパイプライン(600km) は事業採算は合いにくいとみられる。
  (平湖ガス田~上海のパイプラインで中国に運ぶ案が有力)

ーーー

注. 日韓大陸棚共同開発
1978年6月22日に発効した日韓大陸棚協定(2つの協定の通称)の②によるもの。
韓国が日韓中間線を超えて南側の東シナ海の大陸棚及び沖縄舟状海盆の一部に鉱区を設定したことが契機となった。

①「日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の北部の境界画定に関する協定」(略称:北部協定)
  北緯33度付近から36度付近にかけての両国の大陸棚の境界を画定したもの。
  境界線は対馬海峡西水道を通過するが、両国の領海基線に対してほぼ中間線となっている。

②「日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定」(略称:南部協定)
  境界画定を棚上げして石油・天然ガス資源の共同開発についてのみ細目にわたり協定した。
  50年の最低効力期間を設けている。


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