「no」と一致するもの

DuPontは2月18日、Celanese Corporationとの間でMobility & Materials segment の大半を売却する契約を締結したと発表した。

売却対象は、Engineering Polymers 事業と、Performance Resins and Advanced Solutions business lines のなかの特定の製品ラインで、売却額は現金で110億ドルとしている。取引は2022年末頃に完了する予定。

これらの事業の2021年の売上高は約35億ドルで、EBITDA(税引前利益+支払利息、減価償却費)は8億ドルであった。

Mobility & Materials segmentのなかの Auto Adhesives, Multibase and Tedlar® product lines は対象に含まれていない。

DuPont は別途、某社とアセタールホモポリマーのDelrin® businesss の売却を進めている。

Mobility & Materials segment の製品で売却対象と対象外は下図のとおり。

今回の発表にはないが、DuPont Teijin Films JV も売却対象に挙がっている。(後記)


DuPontは2021年11月2日に「戦略的レビュープロセス」を発表した。

1)Rogers Corporation 買収

DuPontはエンジニアリング素材メーカーの米Rogers Corporation を約52億ドルで買収することで合意した。

Rogersは電気自動車(EV)や高速通信規格「5G」関連機器向けの高周波用プリント基板材料など、高機能・高付加価値の先端電子部材に特化し、北米、欧州、アジアに計14カ所の生産拠点を持つ。2021年通期の売上高見通しは約9億5000万ドル。

DuPontはEV向け部材など高付加価値製品を成長分野と見なし、事業シフトを進めている。

2) Mobility & Materials segmentの大半の事業の売却=今回発表

今回のCelanese向けの売却のほか、Delrinの売却交渉を行っているが、11月の発表では DuPont Teijin Films joint ventureの持分の売却も挙げている。(上図にも記載)

帝人は2017年10月10日、DuPontと共同で、米国、欧州及び中国のポリエステルフイルム事業の合弁会社4社の所有持分全てをIndorama Netherlands B.V.に売却することを決定したと発表した。

DuPontは、Dowとの統合により、本事業から完全撤退、帝人は、2016年にDuPontから持分を買い取った日本とインドネシアの事業の更なる高機能化に資源を集中的に投入する予定であった。

実際には、この売却が頓挫した。この結果、Indoramaに売却する予定であった4か国のJVだけが、いまだに帝人とDuPontの事業として残った形となっている。

2020/2/1 デュポンと帝人、フィルム合弁を再び売却へ

3) これらにより、electronics, water, protection, industrial technologies and next generation automotiveに焦点を当てた高成長、高収益市場での位置を高め、収益向上を図る。

ーーー

2017年9月1日にDowとDuPontが合併し、DowDupontとなった。

2019年4月1日にMaterial Science事業をDowとして分離、6月1日に農業部門をCorteva, Inc.として分離し、残ったSpecialty Productsの会社をDuPont de Nemours, Inc. に改称した。

2019/6/12 DowDupont 分離完了 

DuPontは、Electronics & Industrial, Mobility & Materials, Water & Protection を3つの柱としていたが、今回、Mobility & Materialsの大半を売却する。

なお、Water & Protection は下記分野を扱う。

high-performance fibers and foams
aramid papers
non-woven structures
water purification technologies
protective garments

バイデン大統領は2月18日、前回のつなぎ予算の期限切れの当日、3月11日までの短期のつなぎ予算案(Continuing Resolution )にサイン、政府機関の閉鎖を避けた。


本年度(2021年10月~2022年9月)の予算案は与野党で合意できず、議会はまず2021年
12月3日までのつなぎ予算を、更に、翌日で期限切れとなる12月2日 にこれを2022年2月18日まで延長する法案を賛成多数で可決した。

2021/12/4 米議会、つなぎ予算案を可決 

その後、本予算(2021年10月~2022年9月)成立に向け、与野党で協議を続けてきたが、あと少し時間がかかるため、短期のつなぎ予算を作成した。

まず下院が3月11日に賛成多数で可決した。

  共和党 民主党 合計 欠員
賛成 51 222 272
反対 161 1 162
合計 212 222 434 1

続いて上院が3月17日深夜、共和党からの19議員の賛成を得て、必要賛成票(60)を超える賛成多数で可決した。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 19 44 2 65
反対 27 27
棄権 4 4 8
合計 50 48 2 100


本人や家族の病気などで欠席者が相次ぎ、一時は民主党内で可決できないのではとの懸念が出た。

しかし、与野党ともに秋の選挙を控え、かつ、コロナ問題やウクライナ問題でのロシアとの対立の時期に政府機関の閉鎖は政治的にダメージがあるとの判断が働いた。

与野党は今後、3月11日までに本予算を通す必要がある。

報道では、予算規模は1兆5,000億ドル程度で与野党間で合意しているとされているが、国防費と非国防費の割合や非国防費における個別分野の予算配分については各委員会などで調整する必要がある。
また、バイデン政権は新型コロナウイルス対策資金が払底してきているとして、本予算に追加で300億ドルを要求しているとされており、新たな調整事項も生じている。

Venture Global LNG社のCalcasieu Pass LNGが2月中にも稼働する。ルイジアナ州のLake Charlesの南のCalcasieu Lake南岸にあり、年産能力は公称1000万トンで、最大1100万トンとされる。
同社は、「1月29日に最初のLNGを生産した」と発表している。

正式稼働すれば、米国で7番目の大規模LNG輸出基地になる。

同社はルイジアナ州Plaquemines Parishのミシシッピー川沿岸のPlaquemines LNGで年産2000万トンのプラントを建設中。

さらにPlaquemines LNGの近辺で年産2000万トンのDelta LNG を開発しているほか、2021年12月にCalcasieu Pass LNGに隣接して年産2000万トンのCP2 LNG計画を発表した。

すべてが完成すると、能力は年産7000万トンとなる。

立地 公称能力
Calcasieu Pass LNG south of Lake Charles City 10 MTPA 2022/2稼働
CP2 LNG 上記に隣接 20 MTPA 2021/12 計画発表
Plaquemines LNG Plaquemines Parish 20 MTPA 建設中
Delta LNG 上記の近辺 20 MTPA 開発中
合計 70 MTPA

.

同社のプラントは、1体 626千トンの液化プラントモデュールを外部で組み立て、テストを行い、現場に輸送して組み立てる。

今回稼働するCalcasieu Pass, LLCは、9つの区画に18のモデュールを設置している。(計算上は11.27 MTPAとなる)


同社は Shell、BP、Edison、Galp、Repsol、PGNiG、Sinopec、CNOOCとの間で供給契約を締結している。

2016年2月にShellと年間100万トン、20年間の契約を締結

2018年5月、BPと年間200万トン、20年間の契約を締結

2018年9月、Repsolと年間100万トン、20年間の契約を締結

2021年9月にポーランド石油・ガス(PGNiG)と契約(2018年の契約を修正)
 Calcasieu Pass LNGから150万トン、Plaquemines LNGから400万トン、合計550万トン、各20年間。

2021年11月にSinopecと年間400万トン、20年間の契約を締結、別途Sinopec子会社UNIPECが短期的に350万トンを購入する。

2021年12月にCNOOCと年間200万トン、20年間の契約を締結(Plaquemines LNGから)
 他に、Calcasieu Pass LNGから短期間、150万トンのLNGを購入

  2021/11/11 Sinopec、米企業と20年間のLNG売買契約に調印 

WHOは2月11日、中外製薬の抗リウマチ薬tocilizumab(製品名「Actemra」、EU販売名「RoActemra」をCOVID-19治療薬として「事前認証」したと発表した。(中外の親会社のRocheを申請企業 originator companyとしている。)

発表の概要:

トシリズマブは世界の約120か国で主に関節炎の治療薬として認可されている。

トシリズマブはインターロイキン-6(IL-6)受容体を阻害するモノクローナル抗体で、インターロイキン-6は炎症反応を誘発し、COVID-19に重症の患者に高レベルで見られる。

静脈内投与されたトシリズマブは、重症で、急速に悪化し、酸素需要が増加し、重大な炎症反応を示すCOVID-19の特定の患者の死亡を減らすことが、臨床研究で示されている。WHOは、重症または重症のCOVID-19と診断された患者にのみトシリズマブを推奨している。

特許は切れているが、バイオシミラーは少なく、価格が高い。WHOは現在、Roche との間で低・中所得国向けに安価に供給できるよう交渉している。(Roch発表では原価で供給)

「事前認証」は、WHOが医薬品などの品質や安全性、効果を審査する制度で、認証されると、国連機関や医療支援の国際団体の調達の対象となる。多くの国が医薬品やワクチン、診断器具などの大量購入時の参考にしている。 (末尾の図を参照)

COVID-19治療薬としては副腎皮質ステロイド薬デキサメタゾンが事前認証されている。 (今回で 2薬品が事前 認証となった。)  

なお、WHOはGilead Sciencesの抗ウイルス薬「レムデシビル」を事前認証したが、2020年10月に「死亡率の低下などにつながる重要な効果はなかった」として、 「症状の軽い重いにかかわらず、入院患者への投与は勧められない」とする指針を公表し、事前認証から除外した。

2020/11/20 WHO、Remdesivirは「治療効果なく推奨せず」


アクテムラは、炎症を起こす蛋白質の働きを阻害する抗体医薬品。抗リウマチ薬としては各国で承認済み。新型コロナへの効果も期待されるとして、多くの臨床現場で使用されている。

中外製薬は2021年6月25日、「アクテムラ(tocilizumab)」が、新型コロナウイルスの治療薬として、米食品医薬品局(FDA)の緊急使用許可を取得したと発表した。

中外製薬の親会社Rocheの100%子会社のGenentechがFDAから緊急使用許可を取得した。

厚生労働省は2022年1月21日、新型コロナウイルス感染症の治療に使うことを承認した。

2021/6/28 中外製薬の抗リウマチ薬「アクテムラ」、FDAが新型コロナウイルス治療薬として緊急使用許可 


別途、WHOはCOVID-19治療薬の推奨、非推奨を行なっている。(下表)

WHOは1月14日にバリシチニブとソトロビマブを推奨したが、発表文のなかでこれらを「事前承認」に申請するよう求めているとしている。

https://www.who.int/news/item/14-01-2022-who-recommends-two-new-drugs-to-treat-covid-19

メーカー 日本
バリシチニブ(オルミエント) Eli Lilly 2022/1/14 重症患者に強く推奨 2021/4/27 承認
モノクローナル抗体ソトロビマブ GlaxoSmithKline 非重症患者に条件付き
回復期患者血漿 2021/12/7 推奨せず(強く)
カシリビマブ / イムデビマブ Regeneron、Roche / 中外製薬 2021/9/24 非重症患者に条件付き 2021/7/19 承認
アクテムラ Roche / 中外製薬 2021/7/6 重症患者に強く推奨 2022/1/21 承認
サリルマブ Sanofi
イベルメクチン Merck(MSD) 2021/3/31 研究開発のみ

ヒドロキシクロロキン

2020/12/17 推奨せず(強く)
ロピナビル・リトナビル AbbVie 推奨せず(強く)
レムデシビル Gilead Sciences 2020/11/20 条件付きで推奨せず 2020/5/7 承認

副腎皮質ステロイド薬

2020/9/2 重症患者に強く推奨

青字は事前認証   赤字は事前認証取り消し

詳細 https://apps.who.int/iris/rest/bitstreams/1405287/retrieve (2022/1/14発表分は上記発表文を参照)
ーーー


認証手続き


https://kyokuhp.ncgm.go.jp/library/tenkai/2020/tenkai200212.pdf



塩野義製薬は2月7日、COVID-19治療薬「S-217622」に関する説明会を開き、Phase 2/3試験 Phase 2a partの結果を速報した。

対象患者は、軽症中等症および無症候軽度症状のみの感染者で、11回を5日間 経口投与した。

結果は次の通り。

抗ウイルス効果:プラセボと比較して有意に優れた抗ウイルス効果を示した
 >
速やかにウイルス力価およびウイルスRNA量を減少
 >
4 日目(3回投与後)にはウイルス力価陽性患者割合をプラセボ群と比較して約6080%減少
 >
ウイルス力価が陰性になるまでの時間の中央値を、プラセボに対して2日短縮

臨床症状に及ぼす影響:COVID-19に特徴的な臨床症状の改善傾向を確認した
 >
プラセボ群における重症化症例は2例存在したが、S-217622投与群ではいずれの群においても認められなかった

安全性
 -
高度、重篤ならびに治験中止の原因となる有害事象は見られなかった
 -
ほぼ全ての有害事象は軽度であり、副作用も全て軽度であった

2月14日の週あるいはその次の週というタイミング、2月中には間違いなく結果とともに承認申請というようなプロセスを取るべく準備。

対象は12 歳以上だが、小児の開発はどうしてもしなければいけないと思っている。

3月までに100万人分の提供体制構築完了、4月以降は1,000万人分以上/年の生産予定

https://www.shionogi.com/content/dam/shionogi/jp/investors/ir-library/presentation-materials/fy2021/20220207_3.pdf


政府はこれについて、最終段階の治験完了前の実用化を可能とする「条件付き早期承認制度」の適用の検討に入った。

条件付き早期承認は、医療上の有用性は高いが、患者が少ないなどの理由から最終段階の治験の早期完了が難しい医薬品について、一定の安全性・有効性の確認と、実用化後のデータの追加提出などを条件に、治験の途中段階での申請・承認を認める既存の制度。

希少疾病やがん治療薬などを念頭に置いたものだが、厚生労働省は新型コロナの治療薬も対象となり得るとみている。

ーーー

塩野義製薬は経口投与の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬(開発番号:S-217622)の国内第2/3相臨床試験を2021年927日に開始した。

3CLプロテアーゼ阻害薬で、SARS-CoV-2の3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、SARS-CoV-2の増殖を抑制する。

2021/7/28 塩野義製薬、COVID-19治療薬の臨床試験開始





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ソフトバンクグループ(SBG)とNVIDIA Corporationは2月8日、NVIDIAがSBGからArm Limitedの株式を取得する契約を解消したと発表した。
取引完了のために誠意を持って取り組んできたが、これを阻む規制上の大きな課題があったため、契約の解消に至ったとしている。

SBGは、Armの技術やIPが今後もモバイルコンピューティングと人工知能の発展の中心であり続けると確信しており、2023年3月期中に同社の株式上場の準備に入る。「ナスダックを中心に米国での上場を考えている」としている。

当初の契約の条項に基づき、SBGはNVIDIAが前払いした12.5億米ドルを保持し、利益計上する。NVIDIAは20年間のArmライセンスを保持する。

ーーー

ソフトバンクグループは20169月に日本企業の海外買収案件としては過去最大の240億英ポンド(310億米ドル)英半導体設計会社 Arm LimitedArmを買収した
(このうち24.99%をソフトバンク・ビジョン・ファンドに移管した。)

ソフトバンクグループは2020年9月13日、傘下の Arm Limited の全株式を米国の半導体メーカーであるNVIDIA Corporation対して最大400億米ドルと評価した取引売却することについて、最終的な契約の締結に至ったと発表した。取引は、英国、中国、EU及び米国を含む必要な規制当局の承認、その他の一般的なクロージング要件の充足を条件とし、完了までに18カ月かかる見込んでいる。

Armの事業のうちIoTに関連するサービス事業のInternet-of-Things Services Group本取引の対象外で本取引の完了までにArmから分離され

2020/9/15 ソフトバンク、Arm LimitedをNVIDIA に売却

これを受け、Google、Microsoft、Qualcomm などが規制当局に苦情を申し立てたと報じられた。

EUの欧州委員会は2020年10月27日、本買収について競争法(独占禁止法)に基づく本格調査に入ったと発表した。ArmがNVIDIAの傘下に入ることで価格の上昇などを招く可能性があると懸念している。

米FTCは2020年12月2日、反トラスト法に基づき、買収差し止めを求める訴訟を起こした。「この垂直取引により、最大のチップ企業の1社が、競合企業が独自の競合チップを開発するために依存する技術と設計を制御できるようになる」としている。NVIDIAの競合企業もArmの技術に依存しており、買収を認めれば、技術支配力を利用して競合他社を弱体化させるとした。
裁判は2022年8月9日に開廷の予定であった。

英政府も安全保障の見地から調査するよう英競争・市場庁(CMA)に指示するなど規制当局からの認可取得は難航していた。 

今回、孫社長は、IT業界や「各国政府の強い動きで断念した」と説明した。背景には「シリコンバレーのほとんどが直接的、間接的にArmの製品を使っているからだ」との認識を示した。

東芝は、企業価値を高めようと打ち出した「会社を3つに分割する」という方針を一転して見直し、半導体などのデバイス事業だけを分離して2分割とする。2月7日に発表した。

背景は下記の通り。

東芝は2021年11月12日、事業をスピンオフし、3つの独立会社とする方針を決定した。

戦略委員会があらゆる選択肢を検討し、東芝と株主にとり最善となるスピンオフ計画を提案、取締役会が全会一致で承認した。

戦略委員会の委員は全員が社外取締役である。

 智 会長、社長CEO
Paul J. Brought 社外 元 KPMG 委員長
Ayako Weissman 社外 元 投資会社 委員
Jerry Black 社外 イオン顧問 委員
George Zage Ⅲ 社外 元 投資銀行 委員
畑澤 守 代)副社長
綿引 万里子 社外 元 裁判官
橋本 勝則 社外 元 デュポン

委員


2つの会社をスピンオフし、残る東芝は事業は営まず、キオクシアと東芝テックの株式を保有する。

1) インフラサービス Co.:カーボン・ニュートラルの目標の達成およびインフラレジリエンスの向上に貢献する会社

2023年度には2兆2,300億円となる見込み。営業利益率は同期間に5.1%から5.2%に伸長する見込み。

2) デバイス Co.:社会・ITインフラの進化を支える会社

2023年度には8,800億円となる見込み。
 注力領域であるパワー半導体は、2021年度950億円を2023年度には1,200億円に
 ニアラインHDDは、2021年度2,000億円を、2023年度2,800億円に大きな成長を見込む。
営業利益率は2021年度の7.1%から、2023年度には6.1%となる見込み。


2021/11/15 東芝、3つの独立会社に戦略的再編


しかし、「モノ言う株主」(海外の資産運用会社)が「結論に至るプロセスが透明性に欠ける」、
「収益向上の機会が何ら見られない」「"小さな東芝"を3つ生み出す」などと分割案に反対の声が上がっており、実現が不透明な情勢となっている。

ーーー

東芝は2017年12月に約6000億円の第三者割当による新株式の発行をおこなった。

公募増資を実施するのは事実上 困難なため、第三者増資を行った。旧村上ファンド出身者が設立したシンガポールのEffissimo Capital Management や米King Street Capital Managementなど、Goldman Sachs が集めた海外約60社の投資家に割り当てた。「物言う株主」も多い。

これにより2期連続の債務超過による上場廃止を回避することができた。

2017/11/24 東芝、増資を決定 

しかし、この後、現在に至るまで、「物言う株主」に振り回されることとなった。

現在の主な株主は次の通り。(日経報道、Quickファクトセット調べ 2022/1月末)

Effissimo Capital Management 旧村上ファンドの幹部3人がシンガポールで設立 10.41%

3D Investment Partners

シンガポール拠点 日本特化型の独立系資産運用会社 7.57%
Farallon Capital Management 米国の資産運用会社 6.75%
BlackRock Inc. 世界最大の資産運用会社 3.08%
Vanguard Group 世界最大規模の資産運用会社 2.65%


2021年3月の臨時総会で、定時総会の運営の適正性について独立した調査を求める筆頭株主 Effissimo の株主提案を可決

  調査の結果、東芝は経済産業省と一体となって筆頭株主Effissimo の株主提案権の行使を妨げようと画策したなどと指摘された。

同臨時総会で、Farallon Capital Managementは東芝の新経営方針をめぐり、定款の変更などを求めた。(賛成少数で否決)

2021年6月の株主総会で、株主の反対で、当初取締役候補とした2人を撤回したが、総会で永山治取締役会議長と監査委員会の小林伸行委員の再任案が否決された。

2022年1月、3D Investment Partnersは3社分割案に反対し、臨時株主総会を要求 。

ーーー

「モノ言う株主」から3分割案に反対意見が出るなか、東芝 は一転してこの3分割の方針を見直した。

具体的には、東芝グループから半導体などのデバイス事業だけを切り離して新たに上場させる一方、分割するとしていたインフラサービス事業は東芝本体に残す。



キオクシアに対し、できるだけ早期のIPOを正式に要請した。

当初の「インフラサービスCo.」のうち、ビルソルーション東芝エレベータ、東芝ライテック、東芝キヤリア) 、及び当初の「東芝本体」の東芝テックは、注力事業との関係性が弱く、「非注力事業」とした。

ビル3社については、成長ポテンシャルを実現できるパートナーとの再編や外部資本の導入によって価値を顕在化すべきと判断した。
うち、空調の東芝キャリアについては下記の通り、売却した。残り2社は2022年度中の売却契約締結を目指す。

東芝テックについては、同社自身の中長期の成長プランを促進すべく、実務上可能な限り短期のうち同社と協働する。

両社の事業計画(億円)

2021年度 22年度 23年度 25年度
東芝/インフラサービス 売上高 15,200 15,400 16,100 18,700
営業利益 540 650 900 1,200
デバイス Co. 売上高 8,600 8,600 9,100 10,100
営業利益 550 560 600 800

本事業計画の円滑な遂行を前提に、今後2年間で3,000億円の株主還元を想定した。


果たしてこの案で「物言う株主」を満足させられるであろうか。

会社分割は、株主総会で2/3以上の賛成が必要な「特別決議」が必要だが、東芝は産業競争力強化法の特例措置を申請する方針で、認められれば取締役会で決められる。

東芝では株主総会に諮るとしているが、「特別決議」か、「普通決議」(多数決)かを決めていない。

ーーー

なお、同社は空調子会社の東芝キヤリアについて、JV相手の米空調大手Carrier Corporation に保有する株式60%のうち55%を2月7日に譲渡した。保有比率は5%になる。

同社の空調事業の価値を顕在化するためには、その成長ポテンシャルを最大化できる強いパートナーとの再編が最善との結論に達したとしている。

売却額は約1,000億円。

東芝は1998年に世界最大の空調設備機器メーカーである米国Carrier Corporation との間で、 空調設備機器分野におけるグローバルな戦略的事業提携を行ない、1999年4月に東芝60%、米社40%出資で日本に東芝キャリアを設立した。

Carrier CorporationはUnited Technologies Corporationの空調設備事業部門会社で、 世界最大の空調設備機器メーカーとして、大型空調設備機器やコールドチェーン製品等を主製品とする。
東芝は小型エアコンや業務用マルチエアコン等を空調設備機器の主製品としていた。




付記 東芝のRestructuring 推移

米議会下院は2月4日、中国に対抗するため先端技術の競争力向上をめざす包括法案 The America COMPETES Act of 2022 を賛成多数で可決した。

下院民主党が1月25日に公表した法案で、上院は2021年6月8日に同様の法案 United States Innovation and Competition Act を異例の超党派で可決している。

2021/6/11 米上院、対中包括法案を可決

2022/2/1  米下院、半導体補助金法案を公表

いずれも、中国政府が巨額の産業補助金を投じるハイテク産業政策「中国製造2025」(末尾参照)に対抗するもの。

   

上院は超党派で可決したが、下院では民主党が賛成、共和党が反対した。(共和党1議員が賛成、民主党1議員が反対)

  共和党 民主党 合計 欠員
賛成 1 221 222
反対 209 1 210
棄権 2 2
合計 212 222 434 1

* 昨年来の欠員1名は1/11の補選で民主党が確保。別途、1/1に共和党員が辞職(6/7に補選)

国内の半導体生産支援に約520億ドルを充てる。半導体製造・組み立て・試験・先端パッケージ・研究開発のための施設・装置の建設・拡充などを財政支援する。
上院が2021年6月8日に異例の超党派で可決した United States Innovation and Competition Act と同様である。

商務省は1月24日、これら半導体産業振興策の承認を見越し、支援枠組みの設計・運用について利害関係者からのコメント募集を始めている。
米国で最先端半導体の工場を建設する台湾積体電路製造(TSMC)やIntel、韓国サムスン電子などに配る。

加えて、米国のサプライチェーン強化に重点を置き、米国の経済・安全保障にとって重要な製品の供給不足を防ぎ、それら重要製品の国内生産を促すための補助金やローンに450億ドルを拠出する。
重要製品には、公衆衛生や情報通信技術、エネルギーや交通、食糧などが挙げられている。

2021/6/12 米国の重要部材のサプライチェーンの点検結果と対策

また、エネルギーやバイオテクノロジーなど先端技術のR&Dを支援、5年間で133億ドルを投じる。

バイデン大統領は、中国や世界との競争における米国経済のエンジンを再活性化すると指摘、両院が示した国内産業支援策が米国に製造業の雇用を取り戻し、半導体などのサプライチェーンの目詰まり解消に寄与する、と評価し、早期の法案可決に期待を示した。

今後、上下両院で法案の一本化を目指すが、共和党は下院案に盛り込まれた気候変動対策などに反発しており、調整作業の難航が予想されている。

ーーー

参考 中国製造2025 Made in China 2025)

2015年5月に公表された。

ステップ1で、2025年までに、格差縮小、十点突破で製造強国の仲間入りを果たし,
ステップ2で、2035年までに工業化の実現により製造強国の中位レベルに到達する。
ステップ3で、建国100周年の2049年までにイノベーション先導で製造強国の先頭グループに入るとの目標を掲げている。


韓国で、半導体に続き「第2の産業のコメ」と呼ばれるバッテリー産業で、技術流出を巡る懸念が高まっている。


GMは1月25日、EVの生産能力の強化に向けて、米国で3つ目となる新たな電池工場の建設を発表した。

LG Energy Solution との50/50 JVのUltium Cells LLCが26億ドルを投じ、ミシガン州 Lansing に第3工場を建設する。

2022/1/28 GM、米国で3つ目の電池工場を建設、電気自動車生産投資も

これに関し、LG Energy Solutionは年明けに、GMから困難な要求を受けた。バッテリーの安全性確認を理由に、バッテリーの実験結果など、敏感な技術情報を要求されたという。


Ford Motorは2021年9月27日、114億ドルを投資し、米国に電動ピックアップトラック F-150 Lightning Electric Truck の組立工場と、3つの電池工場を新設すると発表した。

3つの電池工場については設立を交渉中のFord とSK InnovationのJVのBlueOvalSKが建設、運営する。今後詳細を詰め、所定の手続きを経て設立する。

バッテリー工場に両社がそれぞれ44億5000万ドルずつを投資し、組立工場にはFord単独で25億ドルを投資する。

2021/10/1 Ford Motor、114億ドルを投じ、電動ピックアップトラックと3つの電池工場を建設

FordもSK側にバッテリー内部の充填材の密度に関する技術情報の共有を要求した。Ford側が韓国政府に対し、該当技術が流出禁止となっている国の中核技術に当たるかどうかを確認する過程で明らかになった。


米国の新興電気自動車(EV)メーカーのRivian Automotive, Incは2021年12月16日、50億ドルを投資してジョージア州East Atlanta Megasite にEV工場を建設すると発表した。

同社は2009年設立の新興EVメーカーで、2021年9月に全米で初となるEVピックアップトラック「R1T」を出荷するなど、Teslaに次ぐ米国発のEVメーカーとして注目されている。

三星SDIは、Rivian Automotiveとバッテリー協力について議論していたところ、技術共有を無理に要求してきたため、議論が決裂したという。

米国の自動車メーカーが今後、「バッテリー内在化」を推進する過程で、こうした技術流出を巡るトラブルが続くものとみられ、韓国の業界の関係者は、「技術流出を巡る懸念はもとより、自動車メーカーのバッテリー内在化の時間を短縮させることで韓国のバッテリー競争力を弱める可能性がある」とし、「流出を予防する法制度の補完が必要だ」としている。


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DSMの変身 - 化学業界の話題

オランダのDSMは2021年9月に「Health, Nutrition & Bioscience companyになる」と宣言、エンジニアリングプラスチック等のMaterials 部門については売却を含めて、どうするか検討すると述べた。

ドイツの業界紙は最近、Lanxess(2004年7月にBayerから分離独立)が投資家のAdventと組んで買収するのではないかとの記事を出した。
競合相手として
Celanese や宇部興産、SK Capital やApollo等を挙げている。事業価値としては30億ユーロ程度としている。

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DSMは1902年にオランダ政府がオランダ国営炭鉱 (Dutch State Mines) を設立したのが起源で、1919年にコークス炉ガスを利用して化学肥料の製造を開始し、その後、カプロラクタム系製品やポリエチレン等のバルクケミカル事業へ進出する一方で、1973年に炭鉱を完全閉鎖、化学会社への転換を果たした。

DSM2007年に新しい戦略 Vision 2010 Building on Strengths strategy を発表した。下図の緑色の部門を売却し、Life Sciences Materials Sciences へのシフトを進めるとした。


2007/10/3 DSMの経営方針

具体的には、下記のとおり売却を進めた。

DSM Special Products 2010年に米国のEmerald Performance Materials, LLCに売却
Maleic anhydride事業 長期間、売却を狙ったが成立せず。

2014年にDSM Pharmaceutical Products とPatheon の統合に合わせ、JVのファイン事業子会社としてESIM Chemicals を設立しMaleic anhydride事業を移した。その後、他社に売却。

DSM Elastomers 2010年に熱可塑性エラストマー事業(商標Sarlink)を米国のコンパウンド会社のTeknor Apex に売却
同年、残るEPDM事業をLanxessに売却

2010/12/20  LANXESS、DSM Elastomersを買収

Melamine & Agro 2010年にエジプトのOrascom Construction Industries(OCI)に売却
DSM Energy 2009年に Abu Dhabi National Energy Company (Taqa) に売却

 なお、Performance Materialsに関し、2010年5月に三菱化学との間で、事業の交換(ポリカーボネート事業の売却及びナイロン事業の買収)を実施した。

2010/3/3 三菱化学、DSMとの高機能樹脂事業における事業交換契約に合意

これにより、中核事業をLife Science(Nutrition & Pharmaceutical)とMaterial Scienceとしたが、その後、このうちのPharmaceutical事業を売却した。  

 2011年に抗生物質事業を中国企業・中国中化集団(Sinochem)との合弁会社DSM Sinochem Pharmaceuticalsに移管した。

 2014年にDSM Pharmaceutical Products を米投資会社JLLのカナダの子会社 Patheon と統合し、Patheon (DSM 49%)とした。

なお、これに合わせ、JVのファイン事業子会社としてESIM Chemicals を設立し、DSMのmaleic anhydride事業を移した。

更に2015年7月には、ポリマー中間体事業(カプロラクタムおよびアクリロニトリル)およびコンポジットレジン事業を拠出し、英国の投資顧問会社であるCVC Capital Partners とともに新会社ChemicaInvest を設立(DSMが35%を出資)

ChemicaInvest は、Aliancys(コンポジットレジン)、AnQore(アクリロニトリル)、Fibrant(カプロラクタム)の3つの事業ユニットを持つ。

2016/3/16 DSMの変身


2019年のDSMの事業内容は下記の通りであった。( 百万ユーロ)

  Sales EBITDA 株主帰属
利益
Materials Engieering Plastics 1,406    
Dyneema(超高分子ポリエチレン繊維) 338    
Resins & Functional Materials  1,002    
Total 2,746 493  
Nutrition Animal Nutrition & Health 2,892    
Human Nutrition & Health 2,046    
Personal Care & Aroma Ingredients 425    
Others 665    
Total 6,028 1,224  
Innovation 194 18  
Cooperate 42 -149  
Total 9,010 1,586 764

DSMは2021年9月に「Health, Nutrition & Bioscience companyになる」と宣言したが、実はその前にこの方向で動き出していた。

2020年にResins & Functional Materials事業Covestroに売却している。

2020/10/14 CovestroRoyal DSMコーティング樹脂事業を買収

Materials部門で残るのは、ポリアミドと超高分子ポリエチレン繊維「ダイニーマ」などで、今回、これを売却する。

売却先候補に宇部興産が挙がっているのは同社が 国内外でポリアミド事業に注力しているため。

2016年時点で世界3拠点でナイロン6樹脂を生産、日本(5.3万t/年)、タイ(7.5万t/年)、スペイン(7.0万t/年)の合計19.8万t/年の生産能力を持ち、世界トップメーカーの一角を占める。

上記の通り、DSMは三菱化学(当時)のポリアミド事業を取得している。(ポリカーボネート事業と交換)
日本法人子会社のDSMジャパンエンジニアリングプラスチックスは、ナイロン樹脂の国内シェア約20%を誇る。

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