「no」と一致するもの

中部電力はこのたび、浜岡原発で想定される巨大地震による津波について、現在の「防波壁」の高さを超える最大22.5メートルに達する可能性があるとの想定をまとめた。

浜岡原発は、原子力規制委員会による再稼働の前提となる審査が進んでいる。

中部電力はこれまで、マグニチュード8や9の地震が起きた場合に想定される最大の津波を高さ20.3メートルとしてきたが、より厳しい条件で検討した結果、巨大地震による津波の高さが最大22.5メートルに達する可能性があるとして、これまでの想定を見直し、規制委員会に報告することを決めた 。

現在、浜岡原発には津波対策として高さ22メートルの防波壁が建設されてい るが、新たな想定に基づく最大の津波が押し寄せた場合、防波壁の高さを上回ることになる。

中部電力は、「現時点では追加対策などを検討する段階ではない。まずは審査に真摯に対応し、基準津波の高さをきちんと策定することに全力を尽くしたい」とコメントした。

ーーー

浜岡原発は静岡県御前崎市にある。東海地震の予想震源域の真上である。

このため、大震災以降、問題となってきた。

2011/4/19 「浜岡原発を止めよ」
2011/4/22 浜岡原発について
2011/5/3 「再び、浜岡原発を問う」

中部電力は当初、津波に関して最大の水位上昇がおこっても敷地の地盤高(海抜6m以上)を越えることはないとしていた。

その後、東海・東南海・南海地震の3連動の地震を検討し、津波の遡上高を海抜8.3mと想定した。
その場合も、敷地前面にある砂丘堤防は海抜10~15mの高さがあり、地震後においてもこの高さはほぼ維持され、敷地内への津波の浸入を防ぐことができるとしていた。


大震災のあと、菅直人首相は2011年5月6日、中部電力の浜岡原発について、「防波壁の設置など中長期の対策が完成するまでの間」すべての原子炉を停止するよう要請したと発表した。

中部電力は2011年4月20日、原子力安全・保安院へ報告書を提出した。この中には砂丘と原子炉建屋の間に15メートルの防波壁を設置することが含まれている。(当初案は12メートル) 完成は2013年度中となっている。

2011/5/7 菅首相、浜岡原発の全炉の運転停止を要請 

その後、計画を下記の通り変更した。

海抜18mの防波壁を新たに設置するとともに、両端部は盛土で約20mにかさ上げをおこなう。

 


内閣府中央防災会議の有識者会議は2013年3月31日、東海から九州沖の「南海トラフ」で起きる地震について、「最大クラス」で津波や震度を予想した。

浜岡原発のある静岡県御前崎市には21mの津波が押し寄せるという。また、従来の震度6強から震度7になった。

2012/4/4 南海トラフの巨大地震で新想定 「浜岡」再稼働は困難に


中部電力は、マグニチュード8や9の地震が起きた場合に想定される最大の津波を高さ20.3メートルとし 、津波対策として高さ22メートルの防波壁が建設されている。


中部電力が今回まとめた最大津波予想の最大22.5メートル は現在の「防波壁」の高さを超える。

三菱ケミカルホールディングスは12月1日、新経営方針「Forging the future 未来を拓く」を策定した。

経営戦略における最重要ポイントとして下記を挙げた。


  1.市場の成長性、競争力、サステナビリティにフォーカスしたポートフォリオ
  2.分離・再編し、独立化を進める事業
  3.グループ全体におけるコスト構造改革
  4.戦略遂行のためのスリムな組織
  5.戦略的なキャピタル・アロケーション

3つの評価基準(市場の魅力度、グループの強み、カーボンニュートラル)に基づき注力事業を選別した。

 1) 最重要戦略市場

①エレクトロニクス
 EV:軽量化材料、車載電池材料、Wide Band Gap半導体
 デジタル:半導体材料、高速通信関係

②ライフサイエンス
 ヘルスケア
 食品:機能性食品材料、ニュートリション、長期保存材料


 2) 強みを有する市場は下記の通り。

①強固な機能性素材事業群 
 ケミカル:MMA、機能性モノマー

 ポリマー:バイオプラスチック、EVOH、機能性樹脂

 フィルム:光学フィルム、バリアフィルム、工業フィルム

 モールディングマテリアル:炭素繊維・複合材料、スーパーエンプラ

②産業ガス

 
 3)残る石油化学事業及び炭素事業については、分離・再編し、独立化を進めることで、国内基礎化学産業の再編を主導する。

2024年3月期をめどに分離する。他社との事業統合などを検討する。両事業とも、採算が低く、温暖化ガスを大量に排出する。業界も伸びていない。


事業部門の組織は次のようになる。

現組織 新組織 最重要戦略市場 強みを有する市場 分離・再編
機能商品 Polymers & Compounds /
MMA
エレクトロニクス
 EV
 デジタル
 
ケミカル(機能性モノマー、MMA
ポリマー(バイオプラ、EVOH、機能性樹脂)
フィルム
(光学フィルム、バリアフィルム、工業フィルム)
Molding Material
(炭素繊維・複合材料、スーパーエンプラ)
Film & Molding Materials /
Advanced Solutions
ヘルスケア Pharma ライフサイエンス
 ヘルスケア
 食品
産業ガス 産業ガス 産業ガス
ケミカルズ
(MMA /
石化 / 炭素)
石化/炭素 石化/炭素

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三菱ケミカルホールディングスでは4月1日付で社長が交代し、新社長にベルギー出身の Jean-Marc Gilsonが就任した。

1963年生まれで、1989年に米Dow Corning入社(日本に5年駐在)。2014年からに食品や医療関連素材を扱うフランスの RoquetteのCEO。

同氏はインタビューで次のように述べている。

「脱炭素」などの基準で事業の選別を始める。化学業界の事業環境が大きく変わる中で、収益構造の転換を進める。

化学産業は高付加価値化が課題だが、Well-being(健康、栄養など)、Connectivity(通信、デジタルなど)、Sustainabilityをキーワードに顧客に最高の価値を提供できる企業を目指したい。

基準とするのが、①強みがあるか②業界が伸びているか③カーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)につながるか――の3点。「全てにチェックマークをつけられなければ、将来は投資引き揚げの対象とする」。

主力の石油化学事業も「ポートフォリオ改革のレビュー対象の一つ」

事業構造の見直しなどで「時価総額を数年以内に世界の競合並みにする」。

短期的には電気自動車(EV)やリチウムイオン電池、半導体製造工程向けの素材などの高付加価値品で構成する機能商品と、ヘルスケアに重点を置く。

同社は9月30日結晶質アルミナ繊維事業をApollo Global Management Inc.関連会社が投資助言するファンド保有する特別目的会社に譲渡すると発表した。

今回の結晶質アルミナ繊維事業の売却は、新社長の方針による第1号と思われる。
現時点では売れているが、ガソリン自動車が電気自動車に替わっていき、長期的にじり貧になるのを見越してであろう。

2021/10/4 三菱ケミカル、結晶質アルミナ繊維事業を譲渡 

公取委は11月26日、シリコンウェーハ大手の台湾 GlobalWafers(環球晶圓)の独子会社による独の同業のSiltronic AGの買収を承認した。

ーーー

台湾の GlobalWafers(環球晶圓)は2020年12月、業界4番手の独Siltronic AGを買収すると発表した。買収総額は37.5億ユーロで、2021年後半に取引を完了させる予定であった。
買収により、GlobalWafersは業界2位に浮上する見込み。

GlobalWafers(環球晶圓)は、1981年に台湾新竹サイエンスパークで設立されたSAS(Sino-American Silicon Products Inc)の半導体事業部であったが、独立する形で2011年に発足した。

世界各地に進出している。

中国 親会社のSASは1999年8月に中国昆山で中辰シリコンを設立した。
米国 SASは、2008年4月1日に米国 GlobiTech incorporated を買収した。
GlobalWafersは2016年には、米国のシリコンウェハ ーメーカーのSunEdison Semiconductorを買収した。
日本 SASは2012年4月に日本の大手エンジニアリング・セラミックメーカーのコバレントマテリアル(その後、世界最大のエンジニアリング・セラミックメーカーであるCoorsTek, Inc. に買収された)のシリコンウェーハ事業のコバレントシリコンを買収し、グローバルウェーハズ・ジャパンとした。
欧州 GlobalWafersは2016年7月、デンマークのTopsil Semiconductor Materials A/Sを買収した。


現在、製品ラインナップは、3インチから12インチまでのサイズ、ウェーハ種は、エピタキシャルウェーハ・アニールウェーハ・ポリッシュトウェーハ・拡散ウェーハ、最新テクノロジーを用いたSOIウェーハ、FZウェーハ等、すべてのウェーハサイズと種類を有している。

加えて、GlobalWafersは10か国(台湾・中国・アメリカ・日本・デンマーク・ポーランド・韓国・イタリア・マレーシア・シンガポール)、16拠点に工場を持つ。


Siltronic AGは1968年に独ミュンヘンに設立され、1995年からはWacker Chemie AGの子会社としてシリコンウェーハ事業を展開している。

1999年にシンガポールでの生産をスタートさせた。2015年にIPO(新規株式公開)を実施した。
生産拠点はドイツのほか、シンガポール、米オレゴン州などグローバルに広がる。

GlobalWafersはSiltronic AGの株式を1株あたり125ユーロで取得する方針で、同社株式を30.8%保有するWacker Chemie も売却に応じる。

しかし、難航した。

当初、2021年1月中にもTOBを終える予定だったが、買い付け価格に不満を持つ株主が増え、思うように株の買い付けができなかった。

このため再三にわたり、条件変更を余儀なくされた。当初、1株当たり125ユーロだった買い付け価格を、1月21日には一気に同140ユーロに引き上げた。それでも難航し、翌22日には145ユーロに引き上げた。

さらに1月25日には、最低でも65%を取得するとした当初の買い付け計画を引き下げ、同50%とした。最終的には公開買い付け期間も見直し、3月1日までTOB期間を延長した。

2021年3月4日、ようやくTOBが成立したと発表した。3月1日までにシルトロニック株の70.27%を取得した。買収金額は6千億円前後に達したもよう。

各国の独禁法当局の承認を得て、年内には買収手続きを完了する見込み。

ーーー

日本の公正取引委員会は、シンガポール競争・消費者委員会及び米国連邦取引委員会との間で情報交換を行いつつ審査を進めた。
6月15日に第二次審査を開始、10月4日に全ての報告等を受理し、11月26日に「排除措置命令を行わない」旨、通知した。

公取委は審査に当たり、対象となる市場を製品の製法・製品の口径、加工方法により区分し、重点5市場について競争上、問題がないか判断した。

製法 口径 加工方法 シェア
Global
Wafers
Siltronic 合計 他社
CZ法・MCZ法 200mm ポリッシュド 25% 5% 30% 25%、20%、--
CZ法・MCZ法 エピタキシャル 25% 15% 40% 20%、20%、--
CZ法・MCZ法 300mm ポリッシュド 15% 15% 30% 30%、20%、20%
CZ法・MCZ法 エピタキシャル 10% 15% 25% 35%、30%、--
FZ法 200mm ポリッシュド 5% 50% 55% 25%、15%、--


結論:下記により、競争を実質的に制限することとはならない。

 競争事業者からの競争圧力:有力な競争事業者の存在

 需要家からの競争圧力:需要家側に価格交渉力があり、複数購買で調達先切り替えが可能

南アフリカの専門家らは11月25日、少数ながら新型コロナウイルスの新たな変異株を検出したと発表した。

11月9日に採取された検体から最初の感染が確認された。11月24日にWHOに報告された。

この変異株は「B.1.1.529」と呼ばれ、体の免疫反応を回避したり、感染力を高めたりする可能性がある「非常に珍しい」変異を持つ。

生物情報学を研究するProf de Oliveira は25日の南アでのブリーフィングで、「B.1.1.529」には異例の多くの変異が生じており、これまでの例と「極めて明確に異なっている」と指摘した。

全体で50か所の変異があり、うち、スパイクたんぱくで32の変異がある。 ワクチンはこのタンパク質を標的にしている。

変異が多すぎ、当初の武漢株とは著しく異なっている。このため、当初のウイルスを前提にしたワクチンが効かない可能性がある。

英ロンドン大学遺伝学研究所の科学者によれば、免疫不全の人の慢性感染の過程で進化したとみられ、治療を受けていないHIV感染者だった可能性がある。南アのHIV感染者は820万人と世界最多である。

WHOは11月26日「B.1.1.529」をオミクロン(Omicron)と命名、最初からVOC(Variants of Concern:懸念される変異株)に追加した。

複数の変異について「うちいくつかは懸念すべきだ」と表明した。ほかの変異ウイルスに比べ再感染する可能性が高いとみられるという。

https://www.who.int/news/item/26-11-2021-classification-of-omicron-(b.1.1.529)-sars-cov-2-variant-of-concern

VOC(Variants of Concern):懸念される変異株

感染しやすい、重症化しやすい、ワクチンや治療薬が効きにくいことなどが既に実証されている変異株

VOI(Variants of Interest):注目すべき変異株

VOCよりは警戒度は低いが、市中において複数の感染例やクラスターが確認されている変異株

日本の国立感染症研究所は11月26日、感染・伝播性、抗原性の変化等を踏まえた評価に基づき、注目すべき変異株(VOI:Variants of Interest)として位置づけ、監視体制の強化を行うと発表した。 →11月28日にVOCに引き上げた。

ーーー

医療機関からの初期情報によると、この変異株は国内最多の人口を有する南アフリカの北部ハウテン州(Gauteng Province:州都はヨハネスブルグ)で急速に感染を拡大させている。他の8州にもすでに感染が及んでいる可能性があるという。


南アで確認された症例は約100例。ボツワナ(南アの北側、ハウテン州に近い)と香港でも確認されている。研究者によると、ハウテン州の新規感染者は90%がこの変異株への感染である可能性もある。

香港に到着した旅行者2人から「B.1.1.529」が検出された。香港政府が11月25日遅くに明らかにした。

1人は南アからの帰国者だが、もう一人はカナダからの帰国者で、向かいの部屋に隔離されていた。南アからの帰国者がマスクなしでドアを開けた際に、空気感染したと見られる。2人ともワクチンを2回接種している。2つの部屋と、同じ階の廊下と共用エリアの環境から陽性の検体が採取された。

ヨーロッパでも初めてベルギーで感染者が見つかり、既に世界に広がっている可能性も出てきた。

感染したのは若い成人女性で、ワクチンを接種しておらず、体内に抗体ができる感染歴もなかった。
11月11日にエジプトからトルコ経由で戻った。南アや近隣国との直接的なつながりはないという。
イスラエルの感染者はアフリカ南部マラウイからの渡航者だった。
イスラエルの感染者はアフリカ南部マラウイからの渡航者だった。

イスラエルでも見つかった。マラウイ(モザンビークの北)からの渡航者だった。他に感染した可能性の高い人が3人いるという。 (本稿作成は11月28日朝だが、その後、各国で多数が発見されている。)


英政府は11月25日、新たな変異株に対する懸念を理由に南アなど一部のアフリカ諸国からの航空便を一時禁止すると発表した。

日本政府は11月26日、新型コロナウイルスの新たな変異株が南アフリカで発見されたことを受け、水際対策を強化 した。

強化する対象者は南アフリカやナミビア、ジンバブエ、ボツワナ、レソト、エスワティニの6カ国からの入国者や帰国者で、指定の場所で10日間の待機を義務付ける。
27日には、モザンビーク、マラウイ、ザンビアのアフリカ3カ国を水際強化の対象に追加した。

付記  岸田首相は11月29日、全世界からの外国人の新規入国を11月30日午前0時から当面の間、原則禁止すると発表した。

付記  11月28日に第三国経由で成田空港に到着したナミビア大使館の外交官からオミクロン株が検出された(11月30日)。
    同行した家族2人は陰性だった。



EUは11月26日の緊急協議で、アフリカ南部7カ国から域内への渡航を制限する方針で一致した。上記6カ国にモザンビークを加える。

WTOは緊急の会合を開き、11月30日から12月3日までスイスのジュネーブで4年ぶりに開催することにしていた閣僚会議を無期限延期すると発表した。
林外相と萩生田経産相は現地への訪問を取りやめる。

EUは11月26日、Charles Michel大統領が訪日し11月29日に岸田首相と東京で会談すると発表したが、コロナウイルスの急拡大を受け、延期した。

ワクチンが効かない可能性があるとされるが、PfizerとBioNTechはオミクロン株へのワクチンの有効性を検証中で、今後2週間でデータが得られる見通し。ワクチンの改良が必要な場合は6週間以内にワクチンの内容などを再設計し、早期の生産を目指す。

Moderna
やJohnson & Johnsonもワクチンの有効性を調べる試験などに着手しているという。

ーーー

WHOは「B.1.1.529」をオミクロンOmicronと命名し、VOC(Variants of Concern )に追加した。

ギリシャ語アルファベットでは、ミュー(mu)の次はニュー(nu)、クサイ (xi)オミクロン (omicron)だが、何故か、ニューとクサイを飛ばした。

   ネットには、尾身会長のオミから「尾身クローン」だと話題になっている。

実際は、ニューとクサイは意図的に避けられた。ニューは「new」という言葉と混同するため、クサイは「ある地域に汚名を着せないようにする」ためにそれぞれスキップされた。

クサイについては、英語ではxiと書くが、中国の習近平国家主席の英語名(Xi Jinping)と同じであることから、WHOが中国に気を遣って使用しなかったとの臆測が広がっている。


WHOのVOCとVOIは下記の通り。(2021/6/15 時点の表に加除した。)  

随時、加除されており、当初、「注意すべき」としてVOIに入れたが、その後、問題なしとして削除したものが多い。

WHO
判断
WHO label 最初に発見 変異
VOC:
Variants
of
Concern
アルファ VOC-202012/01
B.1.1.7)
2020/9
英国
従来株よりも感染しやすく(1.32倍)、
重症化しやすい可能性あり。
23箇所の変異
H 69/V70欠失、Y144欠失、N501Y、A570D、P681H等
ベータ 501Y.V2
(B.1.351)
2020/5
南ア
従来株よりも感染しやすく(1.5倍)、
免疫やワクチンの効果を低下させる可能性あり。
N501Y (easily gain access to our cells)
E484K, K417N (affect our immune system)
242-244欠失
ガンマ 501Y.V3
2020/11
ブラジル
従来株よりも感染しやすく(1.4~2.2倍)、
免疫やワクチンの効果を低下させる可能性あり。
N501Y (easily gain access to our cells)
E484K, K417N (affect our immune system)
デルタ B.1.617.2 2020/10
インド
感染力 1.95倍 L452R
オミクロン
(11/26追加)
B.1.1.529 2021/11
南ア
K417N, N440K, G446S, S477N, T478K, E484A, Q493K, G496S, Q498R, N501Y, Y505H
VOI:
Variants
of
Interest
イプシロン B.1.427およびB.1.429 2020/3
米国
従来株よりもやや感染しやすく、一部治療薬の効果を低下させる可能性あり。 L452R
ゼータ P.2
2020/4
ブラジル
   
イータ B.1.525 2020/12
多数国
   
シータ P.3系統
2021/1
フィリピン
従来株よりも感染しやすく、免疫やワクチンの効果を低下させる可能性あり。 N501Y
E484K
イオタ B.1.526 2020/11
米国
   
カッパ B.1.617.1
2020/10
インド
  L452R、E484Q、P681R
ラムダ C.37 2020/8
ペルー
感染力の強さに加え、ワクチン効果が最悪で 1/5落ちる。
南米のほか米国やドイツなど計29カ国で感染が確認
490番目のまったく違う新しいところに変異
ミュー
8/30追加
B.1.621 2021/1
コロンビア


国立感染症研究所による国内における変異株の分類(2021年10月28日時点)はWHOと異なる。 VOC、VOIのほかにVOUがある。

11月26日にオクミロンをVOIに加えた。 (これまでVOIは該当なしだった。) → 11月28日にVOCに引き上げた。

分類

定義

主な対応

該当

変異株

懸念される変異株

(VOC; Variants of Concern)

公衆衛生への影響が大きい感染・伝播性、毒力*、及び治療・ワクチン効果の変化が明らかになった変異株

対応

? 週単位で検出数を公表(IDWR)

? ゲノムサーベイランス(国内・検疫)

? 必要に応じて変異株PCR検査で監視

? 積極的疫学調査

ベータ株

ガンマ株

デルタ株

オクミロン

注目すべき変異株

(VOI; Variants of Interest)

公衆衛生への影響が見込まれる感染・伝播性、毒力、及び治療・ワクチン効果や診断に影響がある可能性がある、又は確実な変異株で、国内侵入・増加の兆候やリスクを認めるもの(以下、例)

・検疫での一定数の検知

・渡航例等と無関係な国内での検出

・国内でのクラスター連鎖

・日本との往来が多い国での急速な増加

警戒

?週単位で検出数を公表(IDWR)

?ゲノムサーベイランス(国内・検疫)で監視

?積極的疫学調査

?必要に応じて変異株PCR検査の準備

オクミロン

監視下の変異株

(VUM; Variants Under Monitoring)

公衆衛生への影響が見込まれる感染・伝播性、毒力、及び診断・治療・ワクチン効果に影響がある可能性がある変異を有する変異株

また、VOCやVOIに分類された変異株であっても、以下のような状況では、本分類に一定期間位置付ける

・世界的に検出数が著しく減少

・追加的な疫学的な影響なし

・国内・検疫等での検出が継続的に僅か

・特に懸念される形質変化なし

監視

?発生状況や基本的性状の情報収集

?ゲノムサーベイランス(国内・検疫)で監視

?(VOC/VOIからVUMに移行後国内発生が継続するものは)週単位で検出数を公表 (IDWR)

アルファ株

(旧)カッパ株

ラムダ株

ミュー株

AY.4.2
(デルタ プラス)

https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2551-cepr/10792-cepr-b11529-2.html

サムスン電子は11月24日、米国テキサス州Austin近郊のTaylor市に最先端の半導体工場を新設すると発表した。
建物、土地、工場設備などを含めた総投資額は170億ドルの見込みで、同社にとり米国最大の投資案件となる。

ホワイトハウスのSullivan大統領補佐官 (安全保障問題担当)と経済政策の取りまとめを担う国家経済会議のBrian Deese委員長は連名で 、「工場の新設はサプライチェーンの保護や製造拠点の活性化、国内の雇用創出につながる」と歓迎、「バイデン政権は二度と半導体不足に直面しないよう、製造能力の拡大をはかるため、同盟国や友好国、民間セクターに働きかけ続けてきた。中間層を支援し、長期にわたる競争力を強化するため、引き続きあらゆる手段で製造やテクノロジー分野に投資していく」と 述べた。

2022年前半に着工し、2024年後半の製造開始を目指す。2,000人以上のハイテク人材の雇用、数千人規模の間接雇用、工場建設で6,500人以上の雇用を見込む。

Samsungは「新工場では先端工程が適用される」としており、半導体性能を左右する回路線幅で3ナノ(ナノは10億分の1)メートルの次世代品を生産するとみられる。
同社が現在量産する最先端は5ナノ品で、2022年に韓国の工場で3ナノ品の生産を始める予定であるが、米国新工場でも同じ性能の半導体を量産する見通し 。

台湾のTSMCは米国アリゾナでは回路線幅が小さい最先端型の工場(5nm)を建設中で、更に3nmの工場の建設を計画している。

2021/10/18 半導体大手、台湾のTSMCが日本で工場建設 に記載

Samsungにとって半導体回路を形成する「前工程工場」の新設は2017年に稼働した韓国平沢工場以来で、6カ所目となる。新工場が稼働すれば、韓国3カ所、米国2カ所、中国1カ所の生産体制となる。

同社は本年5月の韓米首脳会談後、170億ドルを投資し、米国内の第2ファウンドリー工場を建設する方針を発表、 その後、テキサス州Austin、アリゾナ州の2カ所、New Yorkの計4カ所を候補とし検討してきた。

本年2月にテキサス州当局に提出した資料で、Austinと同市のあるトラビス郡から20年間で合計14億8000万ドルの税軽減措置を求めたことが判明した。

トラビス郡から今後20年間で100%の減税(7億1830万ドルの価値がある)を望んでおり、Austin市からの50%の減税(5年間で8720万ドル)も求めているほか、経済開発プロジェクトのための固定資産税の減税を与えることを可能にするテキサス税法の第313条の適用(推定2億5290万ドル相当)も要請しているという。

候補となっているニューヨークやアリゾナ州も不動産税の軽減措置を提供しているという。

最終的に、南西約25キロのAustin市内には1996年開設の同社半導体工場が既にあり、近接する両工場でインフラや資源を共有できる点が大きな決め手となった。

また、半導体産業の集積やインフラの充実度、地元政府の支援なども理由として挙げている。

Austin市周辺にはDell、Apple、Google、Facebookらハイテク企業が集積しており、Silicon Hillsと呼ばれている。最近ではOracleやTeslaがカリフォルニア州からAustinに本社を移転すると表明 している。

ーーー

Samsungの李在鎔副会長が11月14日、5年ぶりに北米に出張し、24日に帰国した。副会長は仮釈放中で、毎週木曜日に開かれる三星物産の合併・サムスンバイオロジックス不正会計疑惑関連の裁判に出席しているが、この時期は裁判がなく、海外出張が可能だった。新工場の発表は帰国後に行われた。

先ずModernaや世界トップの通信事業者Verizonの最高経営陣と会い、18日には米連邦議会を訪れ、半導体投資支援法案を担当する中心議員たちに会った。関連法案の可決などを巡る議会の協力を要請したという。

19日にはホワイトハウスの高官らと会い、半導体供給網問題の解決策や連邦政府レベルでの半導体企業向けインセンティブなどについて話し合った。

その後、西部に移動し、20日にMicrosoftのCEOと会って、半導体やモバイルだけでなく、仮想現実(VR)や増強現実(AR)、メタバースなど、浮上する次世代技術への協力やソフトウェア生態系の拡大について意見を交換、Amazon経営陣とは人工知能やクラウドコンピューティングなど、革新技術協力の拡大案について議論した。

韓国の財界関係者は、「特に今回の出張では、現地企業家だけでなく米国政界の中心人物たちと会って、グローバルサプライチェーン問題の解決および韓米友好増進に寄与するための民間外交官の役割を果たしたという点で、三星トップとしてさらに地位を高めた」と評価した。

米政府は半導体業界へ計520億ドルの補助金を拠出する方針。Samsung は補助金支給条件などを確認した上で、新工場建設を決定したという。

バイデン大統領は2021年3月31日、2兆米ドルを超えるインフラ投資計画 American Job Planを発表した。

そのうち、R&D、製造近代化、中小企業として5,800ドルが含まれている。
 R&D、未来の技術への投資 1,800億ドル
 製造業、中小企業活性化  3,000億ドル
 Workforce Development   1,000億ドル

大統領は、この中から、米国半導体業界の国内生産回帰の実現に向け、500億米ドルを割り当てることを明らかにした。
ホワイトハウスは、「超党派議員グループによって提唱されたCHIPS for America Act、
American Foundries Act of 2020 の要望に従い、半導体の製造および研究に資金を投入する指示も出している」と述べた。

2021/10/22 半導体供給問題:米国の場合 

但し、当初の計画は大幅に削減されており、半導体向けの分がいくら残ったのか明らかでない。

また、競合となる米Intel が外国企業への補助金支出に反対姿勢を強めており、Samsungが予定通り補助金を受け取れるか不透明な面も残る。

バイデン米政権は11月23日、日本や中国、インド、韓国、英国と協調して、今後数カ月かけて戦略石油備蓄(Strategic Petroleum Reserve)を5000万バレル放出すると発表した。

大統領は、他国と協調して備蓄を放出することで供給不足に対処し、値下がりにつながるとし、原油価格を抑える効果を訴えた。

放出量の5000万バレルは6億バレルの備蓄の約8%に相当し、国内需要の約3日分にあたる。

このうち、1800万バレルは議会が承認済みで、速やかに売却する。3200万バレルについては、将来備蓄に戻すのを 条件に今後数カ月間かけて石油会社に貸し出す。

原油価格は最近、7年ぶりの水準に急騰し、ガソリン小売価格は過去1年間で60%余り上昇している。

ここ数日の原油相場は備蓄放出の観測で下げていたが、世界需給への影響は限定的との見方が強く、買いなおす動きが出ている。WTIの24日の終値は78.39ドルとなった。

米政権は「OPECプラス」に対し、十分な原油供給量を維持するよう繰り返し求めてきた。しかし、OPECプラスは12月の原油の追加増産を見送った。

「OPECプラス」は7月18日の閣僚協議で、協調減産を8月から毎月日量40万バレルずつ縮小すると決めている。このままでいけば、2022年9月末に協調減産がほほ終了することになる。

今回の米国他の動きについて、「OPECプラス」の当局者らは、世界の石油消費国が計画する戦略備蓄の放出に対応する可能性が高いと警告した。
現在の市場の環境では備蓄放出は正当化されないとし、来週の会合で現行の生産引き上げ計画を再検討する必要があるかもしれないと述べた。

世界のエネルギー市場の主導権を巡って対立することになる恐れがある。


日本政府はバイデン政権の要請を受けて石油の国家備蓄の一部を放出する方針を決めた。

岸田首相は11月24日午前、石油の国家備蓄を初めて放出すると表明した。「米国と歩調を合わせ、現行の石油備蓄法に反しない形で国家備蓄石油の一部売却を決定した」と語った。原油価格の高騰を受けて上がるガソリンの価格を抑える狙いがある。 「原油価格の安定は経済回復を実現する上で大変重要な課題だ」とした。

萩生田経済産業相は、原油価格の高騰を抑えるために国家備蓄から放出する石油の量は、数十万キロリットルになると明らかにした。時期は精査中とした。必要なら追加も検討する。

その後、420万バレル(67万kl)と報じられた。

2日分の放出のため、国内の需給に与える影響は小さく、価格上昇を抑える効果があるとは思えない。

石油の備蓄放出としては、2011年6月にリビア情勢の悪化を受けて民間備蓄から出したのが最後で、国家備蓄からの放出は初めてとなる。

付記 過去の民間備蓄放出
    1979年 第二次オイルショック
    1991  湾岸戦争
    2005  米国ハリケーン
    2011  東日本震災、リビア情勢

石油の放出は、法律でガソリンなどの供給不足や地震など緊急時に限定されており、価格上昇の対応策としての放出は想定していない。

一方、国内の石油需要は年々減少しており、現在の備蓄量は法律で決められた量をかなり上回っている。

日本の石油備蓄は、国家備蓄、民間備蓄、産油国共同備蓄により実施している。(後記)

石油備蓄法では、国家備蓄は産油国共同備蓄の1/2と合わせ輸入量の90日分程度(IEA基準)、民間備蓄は消費量の70日分以上などと定めている。

2021年9月末現在の備蓄は、国家備蓄は1EA基準で133日分、産油国共同備蓄は6日分で、「産油国共同備蓄の1/2と合わせ輸入量の90日分程度」をはるかに超えている。
なお、民間備蓄はIEA基準で85日分となっている。

このため、政府としては余剰分であれば法律の枠組みの中で放出が可能だと判断し、余剰分を出すという異例の対応により各国と協調して取り組む。

直接の「備蓄の放出」ではなく、タンク内の古い石油を新しいものに入れ替える際に入れ替える量を減らす形をとる。入れ替える量を減らした石油は2022年3月までに入札で売り出す。


ーーー

韓国産業通商資源省の高官は11月18日、米国から石油備蓄を放出するよう要請があったことを確認したが、この時点では、「米国の要請について慎重に検討しているが、価格が上昇したからといって石油備蓄を放出することはない」と語った。韓国の現在の石油備蓄量は9700万バレルで106日分に相当すると明らかにした。

その後、放出を発表、量や時期は他国と相談するとした。量については前回のようなレベルになろうとしている。2011年のリビア危機の際には備蓄の4%、約350万バレルを放出した。

インドは500万バレルを放出する。

英国政府は、企業が自発的に150万バレルまでを放出するのを認めると発表した。  (1バレル=0.158987 kl)

中国の国家食料物資備蓄局はCNNに対し、中国政府が備蓄原油放出の作業をしていると述べた。
中国は、2017に9つの大きな備蓄基地があり、能力が3770万トンであることを明らかにしている。

付記

11月29日夜のBSフジ・プライムニュースがこれを取り上げた。

この問題はバイデン政権の矛盾の解決のため、日本などを巻き込んだものという。

米国消費者にとり、ガソリン値上がりは最大の問題で、政権としては放置できない。

産油国は、脱炭素で将来需要が減るのは必至で、儲かるときに儲ける必要があり、増産に応じない。

本来、産油国である米国が増産すればよいことである。トランプは生産者サイドに立ち、石油増産、パイプライン設置に動いたが、バイデンは脱炭素の立場で、石油・ガスの開発を規制し、パイプライン「キーストーンXL」の建設認可を取り消した。この結果、ガソリン価格上昇につながった。バイデン政策の矛盾が表面化した。

2021/1/29 Biden大統領、温暖化対策の大統領令、石油・ガスの開発規制 

結論として、今後、石油増産の投資はなくなるため、需要が大幅に減らない限り、原油価格アップは必至である。

ーーー

日本の2021年9月末の石油備蓄は以下の通り。IEA基準はLPガス分を含む。

目標

備蓄日数 同 IEA基準 製品換算 保有量
原油 製品
国家備蓄 90日* 145日 133日 4,461万kl 4,545万kl 143万kl
産油国共同 6日 6日 191万kl 201万kl
民間備蓄 70日 90日 85日 2,773万kl 1,142万kl 1,688万kl

* (国家備蓄 + 産油国共同 x 0.5 )でIEAベースで90日

国家備蓄は、国家石油備蓄基地(10基地:合計能力4000万kl)と民間タンク借り上げにより行なわれている、

産油国共同備蓄は、産油国に東アジア向け基地として貸すもので、緊急時には日本に優先的供給をする約束をしている。

現在、下記の2カ所。

 沖縄石油基地 SaudiAramco 130万kl
 JX喜入基地  ADNOC 100万kl

神戸地裁は11月22日、「関西スーパーマーケット」と阪急阪神百貨店などの運営会社エイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)傘下の食品スーパー2社との経営統合の手続きを差し止める仮処分決定をした。

「関西スーパーマーケット」の臨時の株主総会で 食品スーパー2社との経営統合案が承認されたことをめぐり、首都圏のスーパー「オーケー」が賛否の集計に問題があったとして統合に向けた手続きの差し止めを求める仮処分を11月9日に裁判所に申し立てていた。

関西スーパーは同日、下記の通り発表した。

当社の主張が認められなかったことは誠に遺憾であり、当社は上記の決定に対し、保全異議の申立て等を行う予定です。


付記

最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は12月14日、統合手続きの差し止めを求めるオーケー(横浜市)の許可抗告を棄却する決定をした。オーケー側の主張を退け、臨時株主総会での経営統合の議決は有効と判断した。

「議決権行使者の意思が議案に賛成するものであることが明確であったなど、二審が認定した事実関係の下では、二審の判断は結論において是認できる」とした。

最高裁決定を受け、オーケーは同日、関西スーパーの買収を断念すると発表した。関西スーパーと食品スーパー2社(イズミヤ、阪急オアシス)は、12月15日に経営統合に向けて株式交換をする。


付記

関西スーパーマーケットは2022年1月6日、オーケーなど一部株主からの株式買い取り請求について、1株1518円で買い取ると発表した。

オーケーの提示していたTOB価格の2250円は下回る。
臨時株主総会の翌取引日から、それぞれの株主が買い取り請求権を行使した日までの株価終値の平均値(加重平均)を算出し、そのなかで最高値とした。
オーケーなど15人の株主が買い取りを請求しており、1518円で合意した場合、約74億円の資金が必要になる。


ーーー
付記

関西スーパーは11 24 日付で、神戸地裁に保全異議の申立てを行ったが、地裁は11月26日にこれを退けた。

同社は11月30日、大阪高裁に保全抗告の申立てを行った。争いの場は大阪高裁に移る。

H2Oと関西スーパーは、統合予定日を当初の12月1日から12月15日に延期した。


付記

大阪高裁は12月7日、神戸地裁の仮処分決定を取し、経営統合を認めた。

「株主の意思が投票用紙と異なっていたと明確に認められることなどから賛成票として取り扱うことも許容されるべきで、法律に違反するとも、著しく不公正であるとも言えない」とした。

「オーケー」は、最高裁判所の判断を求めたいとして、抗告を行う方針を固めた。

大阪高裁は8日、統合差し止めを求めるオーケーの最高裁への許可抗告を認める決定を出した。

ーーー

阪急阪神百貨店を傘下に持つエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングは8月31日の取締役会で、大阪や兵庫で食品スーパーを展開する「関西スーパーマーケット」を子会社にすることを決め、発表した。
H2O傘下で関西地盤の食品スーパーの「イズミヤ」「阪急オアシス」と12月に統合させる予定で、売上高は4千億円規模、約240店舗を抱える関西でトップクラスのスーパーになる。


H2Oは、関西スーパーの株式を10.66%保有する筆頭株主で、株式交換で保有比率を58%まで引き上げて子会社化する。

関西スーパーはイズミヤ、阪急オアシスを100%出資の子会社にするなどし、3社を経営統合する。関西スーパーの事業については新設する事業子会社に移し、関西スーパーは中間持ち株会社になる。一連の統合作業は来年2月の完了をめざす。

2021年3月期の売上高は、イズミヤが1330億円、阪急オアシス が1107億円。関西スーパーが1289億円。

         ↓

2021年3月末時点での関西スーパーの上位株主は、1位が取引先持株会(保有比率10.07%)、2位が伊藤忠食品(4.94%)、3位が三菱東京UFJ銀行(3.96%)とみずほ銀行(同)。首都圏地盤のオーケーも7%強を出資していた。

そのオーケーは市場を通じて約160万株を約15億9000万円で取得し、9月2日にも追加取得して合計8.04%となった。保有目的は「政策投資、営業関係強化、重要提案行為などを行うこと」としている。

オーケーは9月3日、「関西スーパーマーケット」を買収したい意向を正式発表した。
関西スーパーに対し、時価の2倍超で上場来最高値と同 1株2250円でのTOBを提案した。

以前から経営陣との協議を申し入れていたが、関西スーパーから7月に、特別委員会で検討すると連絡を受けた。その後は数回やりとりがあっただけで「実質的な協議の場」が設けられないまま、関西スーパーは8月末にH2O傘下入りを発表した 。

オーケーは、10月に予定されている関西スーパーの株主総会でH2O子会社化に反対する考えを示し、H2O傘下入りが撤回・否決された場合、TOBを実施したいとし た。

関西スーパーの最近の株価は1000円~1500円であるが、現株主は2,250円で売却できることとなり、利益は確実である。

これに対し、H2O案の場合は「新関西スーパー」(関西スーパーとイズミヤ、阪急オアシスを統合)の株式を受け取ることになるが、株価がいくらになるかは不明である。

統合による相乗効果で株価が上がるかどうか不明であり(下がることもあり得る)、上がるとしても、相乗効果がでるまで時間がかかる。

常識的にはオーケー案が有利だが、関西スーパーの株主の取引先持株会や伊藤忠食品などはH20との取引もあるため、短期の利益だけでは決められない。

ーーー

10月29日の関西スーパーの臨時株主総会(6時間)で、H2Oとの経営統合案が賛成 66.68%で可決された。可決には2/3の賛成が必要 だが、これをわずかに上回った。両方に納入する業者が多く、棄権したと見られた。

これを受け、オーケーは下記により、TOB提案を取り下げた。 オーケーの姿勢は立派である。

たとえ僅差による可決といえども、総会検査役の立会いの下で公正に議事運営された結果と考え、その結果を関西スーパー株主の判断であると真摯に受け止めた。

しかし、オーケーは11月8日、この臨時総会での集計に疑義が判明したことを明らかにした。

総会検査役報告によ ると、一旦は本経営統合にる議案が僅差否決となる集計結果確認した が、その後、関西スーパーの判断って一部「棄権」の投票の取り扱い「賛成」に変更されたことによりその結果が覆され、僅差での可決になったというもの

マークシートによる投票に際しては、当該マークシートには「賛成・反対・棄権のいずれにもご記入がない場合は、棄権として集計いたします。」と明記され、議長からも「マークのご記入のない投票用紙をご提出いただいた場合は、棄権としてお取り扱いいたします。」ということを再三にわたり説明されていた。

集計の結果は僅差の否決であったが、最終的に可決とされた。

ある株主から本来「賛成」する意図だったにもかかわらずマークシートを白紙で提出してしまったため、確認したい旨の申し出を 受けた。

(以下 関西スーパーの発表から)

直ちに、総会検査役の同席を求めたうえで、当該株主から事実確認を行いました。

その結果、以下の諸点が確認されました。

①この株主は、投票用紙に記入を行わなかったものの、投票用紙の回収の際に、本議案全てについて事前に行った賛成の意思表示のとおり議決権行使をする意思である旨を回収担当者に対して述べていたこと

この株主が当日受付に提出した職務代行通知書に本議案に全て賛成の意思表示をする旨が記載されていたこと
③この株主が事前に提出していた委任状及び議決権行使書においても本議案について全て賛成の意思表示がなされていたこと

このような確認を経て、当社は、投票用紙の回収に際して回収担当者に対して述べられた内容については、投票用紙への記載と同様に取り扱うべきであることから、会社法その他の法令に照らし、この株主様は本議案の全てに賛成の投票をされたものと判断し、当該賛成票も含めて最終集計を行ったところ、本議案の承認可決が確定いたしました。

オーケーの主張:

総会検査役による報告を確認したのち慎重を期して、外部の弁護士及び株主総会実務に詳しい専門家の意見を複数確認いたしました。かかる弁護士や専門家全員に共通する意見として、以下の指摘を頂いております。

上場企業における公正な株主総会の運営の在り方として、投票を締め切ったに特定の株主の投票内容のみを自社に有利に変更させること自体決してあってはならないこと

関西スーパーによる総会検査役に対する説明の真偽は確かめようがない上に、仮にその説明のとおりに、ある株主の方本来は「賛成」する意図を有していたにもかかわらず本来の意図となる投票を行ったものだったとしても、投票を締め切った以上議長自身が議場で説明したとおり「棄権」として取り扱われるべきであること

仮に何らかの理由により例外的に当該投票が無効であり「棄権」として扱うべきでないと考えたとしてもその議決権の行使については「賛成」として扱われるべきではなく無効不行使」として扱われるべきであること

オーケーは、11月9日午後、統合手続きの差し止めを求める仮処分を神戸地方裁判所に申し立てた。 

神戸地裁は11月22日、関西スーパーマーケットとエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)傘下の食品スーパー2社との経営統合の手続きを差し止める仮処分決定をした。統合を決めた臨時株主総会の手続きを巡り、食品スーパーのオーケー(横浜市)が示していた疑義を認めた。

裁判所の見解は次の通り。

白紙投票は「棄権」としか解することができない。

(株主の意図について)
総会に出席した株主は投票以外の方法で議決権を行使できない。投票した以上は、誤りがあっても訂正できない。

決議の方法に法令違反または著しい不公正があり、決議に基づく株式交換を差し止める。


12月1日に予定されていた株式交換は一旦差し止められる。関西スーパー側は決定に不服があれば裁判所に異議を申し立てることができる。

関西スーパーは、保全異議の申立て等を行う予定としているが、この裁判所の判断が覆ることはないだろう。

オーケーは22日、仮処分決定を受けて「司法の良識ある判断が示されたものと受け止めている」とのコメントを発表した。同社は、差し止めが認められた場合には完全子会社化を前提にTOB(株式公開買い付け)を行う方針と発表している。

RelianceとAramcoは、AramcoがRelianceのOil-to-Chemicals 部門に出資する契約に間もなく調印するのではと噂されていたが、Relianceが事業の中心をGreen energy に置くことを決めたため、検討中のOil-to-Chemical 事業への投資を再検討することで合意した。11月19日に発表した。

この結果、Oil-to-Chemical 事業をReliance 本体から分離するための会社法審判所(National Company Law Tribunal)への申請を取り下げた。

両社はインド及びサウジにおける投資での提携関係を継続する。

ーーー

Saudi AramcoとインドのReliance Industriesは2019年8月12日、AramcoがRelianceのOil-to-Chemicals 部門に出資する非拘束のLetter of Intent を結んだ。

Oil-to-Chemicals 部門は石油精製と石油化学と燃料のマーケティングの事業で、西海岸GujaratのJamnagar refining complex (精製能力 日量124万バレル)を含む。
燃料の卸事業については、BPとのJV(BPが49%)とすることを決めたため、JVの51%分が対象となる。

Oil-to-Chemicals 部門の事業価値を750億ドル(債務込み)と想定し、これの20%を取得する。150億ドルの投資となり、外国企業によるインドへの投資の最大のものの一つとなる。

2019/8/16 Saudi Aramco、インドのRelianceの石油・化学関連事業へ出資

インド政府がこれを阻止しようとして動いたが、Reliance とAramco は2021年4月、協議を再開した。

Reliance は2021年6月の株主総会で、SaudiAramco のYasir Othman Al-Rumayyan 会長を取締役に選任した。株式取引について年内完了を期待していた。

2020/1/4 インド政府、RelianceとAramcoの提携を阻止

ーーー

RelianceのMukesh Amani会長は2021年6月の株主総会で、同社がgreen energy に投資すること、Jamnagarに創業者の名前を採ったDhirubhai Ambani Green Energy Giga Complex を建設することを明らかにした。

新時代では燃料電池ギガファクトリーが内燃機関に代替し、自動車、トラック、バス、その他を動かすことになると述べた。

精油所のあるJamnagarの5000エーカーの土地に4つのギガファクトリーを建設する。

1. 太陽電池モジュール工場
2.
バッテリー工場
3.
水素の生産のための電解工場
4.
燃料電池工場



米連邦議会下院は11月19日午前、社会的セーフティーネットや気候変動対策、増税といったバイデン米大統領の経済優先施策を盛り込んだ1.75兆ドルの税制・支出法案 Build Back Better Actを賛成220、反対213で可決した。

下院の共和党トップのマッカーシー院内総務が採決を阻止しようと11月18日午後8時半すぎから19日午前5時すぎまで8時間半にわたって法案を批判し続ける異例の演説を行った。下院の歴史における最長時間を更新したと報じられている。(下院にはフィリバスター制度はない。)

  共和党 民主党 合計 欠員
賛成 220 220  
反対 212 1 213  
棄権 1 1  
合計 213 221 434 1

欠員のフロリダ州の議席は2022/1/11に決まる。

同法案は上院に送付されるが、審議の行方はなお不透明な状況だ。


付記 上院では民主党穏健派の
ウエストバージニア州選出のJoe Manchin議員が現状のままの法案賛成に強く難色を示している。

もともと総額3.5兆ドルの予算規模で民主党が単独で起案を進めていたが、Manchin議員の要請でその半分の規模の1.75兆ドルまで圧縮させられた経緯がある。

今回の法案で同議員はChild Tax Credit(児童税額控除)の扱いに反対している。

本法案は財政調整法案に基づくため上院でも過半数の賛成で可決できるが、与野党が50:50のため1議員でも反対すると可決できない。

大統領は党内調整を続ける意向で、採決は来年にずれ込む。

付記

Joe Manchin上院議員は12月19日、法案を支持しないと表明した。法案の行方が更に不透明となった。

ーーー

米下院は11月5日夜、バイデン政権の2つの看板政策のうち、5500億ドル規模の超党派インフラ投資法案を可決した。

これは1兆ドル予算とも呼ばれる。既に予算配分済みの支出を除いた新規支出は約5,500億ドルである。

上院はすでに可決しており、バイデン大統領は11月15日、インフラ投資法案に署名、成立した。

2021/11/8 米インフラ法案、下院で可決、成立へ


子育て支援などに10年で1.75兆ドルを投じる歳出・歳入法案
Build Back Better Actは党内調整になお時間がかかるため採決を先送りした。

これは「10年で3.5兆ドルの予算案」であったが、与党民主党内で意見が対立し、進展していないため、バイデン大統領が10月28日に1.75兆ドルに修正した Build Back Better Act を発表した。

2021/11/1 バイデン大統領、10年間3.5兆ドルの予算案を修正 

6人の中道派議員が、1.75兆ドルの予算法案について「議会予算局による財源の精査が終わっていない」として早期の法案採決に反対した。下院で民主党から4人が反対すれば可決できないため、ペロシ議長は「説得は困難だ」と判断した。

次善の策として、議長はインフラ投資法案を先に成立させる方針に転じたが、今度は左派が、インフラ法案を通してしまうと、大型歳出法案がそのままでは通らない可能性があるとして議決に反対した。

最終的に中道派議員が「議会予算局の精査の結果が政府の推計と矛盾しなければ、大型歳出法案に賛成する」と文書で約束したことで、左派が態度を軟化させ、インフラ投資法案を可決した。

2021/8/11 米上院、5500億ドル規模のインフラ包括法案を可決、下院採決時期は不透明

今回、中道派議員が賛成し(1議員のみ反対)、Build Back Better Act を可決した。

但し、議会予算局(CBO)が11月18日に公表した収支見通しによると、大企業などへの増税だけでは法案の財源がまかなえず、2022~31年の財政赤字が計3671億ドル増加する。ただ、この見通しには主要財源であるIRSの徴税強化の内容が含まれておらず、バイデン政権は徴税強化により収入が4000億ドル増加するとの試算を示し「法案の財源はすべて確保されており、財政赤字は増えない」と説明している。
しかしCBOは収入増が2070億ドルにとどまるとの独自の試算をまとめており、上院で穏健派の妥協を引き出せるか見通せない状況である。

上院では与野党が各50議席で、民主党から1名でも反対すれば否決される。

(賛否同票なら、上院議長を兼ねる副大統領が賛成票を投じると可決される。)


議会ではまだ、本年度(2021/10~2022/9)の予算が通らず、本年12月3日までのつなぎ予算で運営している。

2021/10/2 米、政府機関の閉鎖回避 12月までのつなぎ予算成立

下院は9月21日、連邦政府の債務上限の適用を2022年12月16日まで凍結する民主党提出の法案を可決したが、上院では審議に入れなかった。

その後、債務上限を4,800億ドル引き上げる法案を可決したが、イエレン米財務長官は11月16日、連邦政府の12月15日にも上限に達するとの見通しを議会に示した。

2021/10/12 米上院、債務上限の一時引き上げ可決 

12月3日までに更なるつなぎ予算が可決されないと政府機関の閉鎖もありうる。バイデン政権は、まだ大きな問題を抱えている。

11月18日、中国で国家反独占局(国家反垄断局)が発足した。

これまで独禁法は国家市場監督管理総局が管理していたが、国家市場監督管理総局から分離独立する形で誕生した。同じビルに入居する。

11月15日に国務院は国家市場監督管理総局の甘霖・副局長を独占禁止法担当部門の局長に任命した。この時点で独禁法担当部門の名称が「反壟断局」から「国家反壟断局」に変更されており、部門の地位が格上げされる可能性があると見られていた。

国家市場監督管理総局は今年、オンラインプラットフォーム運営企業を中心に、反競争的行為の取り締まりを強化しており、甘霖氏は大きな役割を果たしてきた。

2021/7/29 中国独禁法当局、規制強化  

ーーー

中国の反壟断法(独占禁止法)は2008年81日施行された。

2008/8/4 中国、独占禁止法施行

当初は独禁法は下記の体制で実施されてきた。
反壟断委員会(国務院直属) 独占禁止政策の調査、市場動向のモニター、執行機関間の政策の調整
実務
機関
発展改革委員会価格調査局 価格独占行為の調査・処分
商務部反独占局 事業者結合行為
国家工商行政管理総局
(工商総局)
独占協定、市場支配的地位の濫用、行政権力を濫用した競争の排除・制限(価格独占を除く)


2018年3月、中国の「構造改革」の一環として、
国家工商行政管理総局、国家品質検験検疫総局、国家食品薬品監督管理総局を統合し、国務院直属機構の国家市場監督管理総局が新設された。

これに合わせ、 これまで分割して管理されていた各省庁の独禁法関連の業務は全て、国家市場監督管理総局の反独占局に移管された。


2018/6/9 中国の独禁法執行体制変更

 

今回、国家市場監督管理総局から分離独立し、独禁法専任の国家反独占局(国家反垄断局)が生まれた。独禁法関連業務をすべて管轄する。

人民網日本語版は次のように報じている。

市場経済が発展するにつれ、公平な競争がますます重要になっている。現在、中国のマーケットエンティティの総数はすでに1億5千万を突破し、反独占の取り組みの強化と資本の無秩序な拡大の防止は、高水準の市場システム構築、質の高い発展推進、共同富裕の促進、高水準の対外開放実現への重要な意義がより一層顕在化している。

国家反独占局が発足したのは、反独占の体制・メカニズムのさらなる改善を体現している。このことは、反独占の監督管理の力を充実させ、市場における競争行為を着実に規範化し、強大な国内市場の建設を促進し、各種のマーケットエンティティの投資と事業展開、規範的で健全な発展のために、公平で透明かつ予測可能な良好な競争環境を創出するだろう。

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