「no」と一致するもの

BioNTechは3月30日、米Pfizerと共同開発した新型コロナウイルスワクチンについて、2021年末までにPfizerと合わせた生産能力を25億回分に拡大させると表明した。従来計画より2割高め、各国からの需要に応える。

BioNTechはドイツのMarburgの新製造施設のほか、他の製造業者や供給業者とのネットワーク拡張などで増産が可能になったと説明した。生産能力拡大は需要増に対応したものとし、一段の拡大に向け協議を進めていると明らかにした。

BioNTechは受注残を踏まえるとコロナワクチンの今年の売上高は98億ユーロになるとの見通しを表明した。「コロナワクチンによる売上高を新たなワクチンや治療薬の研究と開発に投資する大きな機会が見え始めている」としている。同社の2020年12月通期の売上高は前の期の4.4倍の4億8232万ユーロだった。2021年の売上高は2019年の売上高の約100倍となる。

状況は次の通り。

 供給

BioNTechのワクチンは現在、緊急承認等を含め65か国以上で承認されている。

BioNTechとPfizerは3月23日時点で2億回分を供給、2021年の供給分として14億回分以上の受注が確定している。

本年2月に米国政府は1億回分の追加のオプションを実行し、19.5億ドルを支払った。米国向けは合計3億回分となった。

同じく2月にECとの間で2億回分の追加の契約を結んだ。2021年末までの供給は合計5億回分となるが、更に1億回分の追加のオプション契約を結んでいる。

 ワクチン生産

BioNTechとPfizerは2021年末までに生産能力を25億回分に引き上げる。

これは、生産プロセスの最適化、最近のBioNTechのドイツ Marburg工場での生産開始、1つの小瓶(vial)からの接種が5回分としていたのを6回分とすることが認められたこと、製造・供給ネットワークの拡大による。更なる改善策が検討されている。

Marburg工場:

 BioNTech は供給量の拡大のため2020年10月にNovartis AGからドイツ のMarburgのGMP製造施設を取得した。

 European Medicines Agencyは2021年3月26日にMarburg工場でのワクチン製造を承認した。
 製造能力は年間10億回分で、世界最大のmRNAワクチン製造施設の一つとなる。4月後半に最初の出荷が行われる。

Marburg 工場は、最先端の multi-platform GMP認定製造施設で、組換えタンパク質の生産設備を完備しており、細胞培養ラボとウイルスベクター生産機能を備えている。 長期的な成長と拡大の余地がある。

工場には100年の伝統がある。ジフテリアと破傷風の抗毒素を開発したEmil von Behringによって1904年に設立された。1901年にノーベル医学賞を受賞した賞金を製造現場の資金として使用した。1904年の設立以来、ワクチンの製造を含む医薬品および生物学的イノベーションの最前線に立っており、その結果、高度に確立されたインフラストラクチャが備わっている。

世界の生産設備

  Pfizerは米国3工場とベルギー工場、BioNTechはドイツ2工場

別途、LNP(脂質ナノ粒子)の生産やワクチン充填については能力を拡張している。

 利益配分

Pfizerとは中国を除く世界全体で利益 (gross profit ) を50:50で配分する。

BioNTechは中国ではFosun Pharma 上海復星医薬)と提携している。
中国でのGross Profit の35~40%を受け取る。

アラブ首長国連邦(UAE)は4月から中国Sinopharmのワクチンの生産を開始する。

Gulf Pharmaceutical Industries(通称Julphar)は3月28日、Sinopharmのこの地域でのdistributor であるAbu DhabiのGroup 42 (通称G42:人工知能とクラウドコンピューティングのリーディングカンパニー)との間でワクチンを生産する契約を締結したと発表した。G42は以前に、この地域での供給のため本年に生産を開始すると述べていた。

SinopharmとG42がJV を設立し、Julphar に生産を委託する形となる。能力は年2億回分になる見通しで、UAEだけでなく、広く中東・アフリカへの供給を考えている。

3月28日にUAEを訪問した中国の王毅国務委員兼外相とアブドラの外務・国際協力相との合意に基づく。

JulpharはRas Al Khaimah首長国にあるUAE初の製薬会社で、インスリンを製造する。


中国はUAEの石油の大顧客であるが、パンデミックの期間に関係を深めてきた。UAEはコロナ危機の初期に武漢に機器を送った。

UAEの保健予防省は2020年12月、中国の北京生物制品研究所が開発したSinopharmの新型コロナウイルス不活化ワクチンを認可したと発表した。

UAE国内でも125の国籍の31千人のボランティアに対して行われたフェーズIII臨床試験で86%の有効性を確認。抗体陽転率は99%、中等症・重症化の予防には100%有効で、安全性に対する深刻な懸念はないとした。

UAEでは既に 感染症対策の最前線に立つ人々に対して同ワクチンの緊急接種が認可されており、感染予防や医療の従事者だけでなく、UAE副大統領兼首相・ドバイ首長をはじめとする政府要人も接種済み、と報じられている。

また、アブダビ政府は12月7日、ロシア製ワクチン「スプートニク5号」のフェーズIII臨床試験を開始すると発表した。

UAEはワクチンの国際的な流通・供給拠点を目指すとの意向も示している。

アブダビでは、アブダビ保険局が関連機関・企業とコンソーシアムを組成し、数十億回分のワクチンを世界中に供給するロジスティクス・ハブを設置すると発表 した。
アブダビ港湾公社が運営するハリーファ工業団地にある最先端の定温倉庫1万9,000平方メートルを貯蔵に使用、輸送にはスイスのスカイセルが開発する次世代の温度管理技術による医薬品コンテナを用いる 。

ドバイでも、航空貨物会社Emirates SkyCargoが、新型コロナワクチンに特化したエアカーゴ・ハブをAl Maktoum International Airportに開設する。同社の航空貨物拠点を用途転換し、医薬品の適正流通基準であるGDPコンプライアンスに準拠する4,000平方メートルの専用定温倉庫を運用する。

(JETRO ビジネス短信より)

王毅外相は、両国は共同して中東とアフリカでのパンデミックと戦うと述べた。

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王毅外相は3月22日、23日と広西チワン族自治区の桂林でロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と会談、事実上の「中ロ準同盟」を宣言した。

その後、3月24日から30日まで、サウジアラビア、トルコ、イラン、UAE、バーレーン、オマーンと6カ国を歴訪する「中東外交」を、精力的にこなしている。

3月24日にサウジを訪問、ムハンマド皇太子と会談した。

王毅外相は 、「サウジアラビアは中国の中東地域における重要な戦略パートナーであり、両国関係を発展させることは、中国の中東政策の優先課題だ。中国はサウジアラビアの国家主権の維持、保護、民族の尊厳、安全安定を固く支持し、いかなる勢力がいかなる口実をもってしてもサウジアラビアに食指を伸ばすことに反対する」と述べ、カショギ事件で米国とサウジの関係が怪しくなるなか、サウジ側に付くことを明確にした。

イランでは、今後25年間にわたって経済など幅広い分野で協力を深めることを盛り込んだ計画に署名した。ロウハニ大統領とも会談し、イラン核合意について意見を交わした。

Novavaxと武田薬品は2020年8月7日、ワクチンに関する提携を発表した。

- Novavaxが新型コロナウイルス感染症ワクチンの製造技術を提供し、武田薬品が日本国内向けにワクチンを製造・流通
- NovavaxがアジュバントMatrix-Mを供給
- 日本政府は本ワクチンの製造技術移転、生産設備の整備、スケールアップに対し助成

武田薬品は Novavaxからのワクチン製造技術の移転、生産設備の整備、およびスケールアップの資金として、厚生労働省から助成金を受領する。
光工場の新型インフルエンザ製造設備を転用、年間2億5千万回分以上のワクチンの生産能力を整備し、
ワクチン原液から充填・包装まで製造する。

両社は2021年3月1日、協力関係の進展について発表した。

両社は独占ライセンス契約を締結しており、
武田薬品はNovavaxのNVX-CoV2373を日本で開発、製造、販売を行う。

武田薬品は2月24日、Novavaxから導入した新型コロナウイルスワクチンの国内臨床試験を開始したと発表した。

武田薬品は別途、Moderna のワクチンの日本でのPhase Ⅰ/Ⅱ 臨床試験開始している。

2021年前半より5000万回の接種分を輸入し、国内で供給する計画で、3月5日に Modernaワクチンについて厚生労働省に製造販売承認を申請した。

同社では今年6月までにModerna製、今夏以降にNovavax製の供給開始を目指す。

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Novavaxがワクチンについて原料不足を理由にEUとの供給契約締結を延期しているニュースで、韓国でもワクチン供給に支障が出ないか懸念の声が出始めている。

韓国は2月26日から新型コロナワクチンの接種を始めた。AstraZenecaワクチンとPfizerワクチンを使用している。

AstraZenecaワクチンはSK BioScienceが韓国で受託生産をしている。

韓国における今年下半期のワクチン接種計画で、Novavaxは非常に重要視されてきた。韓国政府が確保している7900万人分のワクチンのうち、Novavaxは2000万人分を占めている。

NovavaxワクチンはSK BioScienceが技術移転契約を締結し、安東工場で製造される予定で、独自で製造量を決め韓国国内に供給することが可能となっている。

EUが域内で製造したAstraZeneca ワクチンの輸出を規制し、最近はインドもSerum Institute of India製のAstraZenecaワクチンの輸出を止めた。Pfizerのワクチン供給も契約より遅れている 。
このため、韓国にとってNovavaxワクチンの重要性は高まっており、「原料不足」がいつまで続くのか、懸念されている。

原子力規制委員会は3月24日、柏崎刈羽原子力発電所でテロ対策に不備があったとして、東京電力に核燃料の移動を禁止するなどの是正措置を命じる行政処分を行う方針を決めた。
正式に決定すると、事態が改善されたと判断されるまでは再稼働ができない状態が続くことにな る。

付記

原子力規制委員会は4月14日、柏崎刈羽原発のテロ対策の不備を問題視し、原発再稼働に必要な核燃料の移動や装塡を禁じる行政処分の是正措置命令を決定した。
東電に対し原因究明と再発防止策を盛り込んだ報告書を9月までに提出するよう求めている。

付記

この問題を受け、原子力規制委員会が全国の原発を調べたところ、3月に東京電力の福島第二原発でもテロ対策上の不備が相次いで確認された。

福島第二原発の1号機と4号機で、防護区域につながっている通路に管理されていない扉があることが確認され、東京電力は扉を閉鎖する措置をとった。
また福島第二原発では、防護区域の出入り口で金属探知機による点検などの手続きが十分行われていなかった。

更に中部電力浜岡原発では関連会社従業員が手続きなしで原発内に入ったほか、四国電力伊方原発では周辺防護区域に至る場所で閉鎖措置が不十分な開口部があった。



柏崎刈羽原発については昨年来、大きな問題が相次いで発生している。(詳細後記)

2020年9月に社員が中央制御室に不正に入室する問題が発生した。

東電は7号機の新規制基準に基づく安全対策工事が2021年1月12日に完了したと発表したが、その後、施行ミスや未完のものが次々と見つかり、2月26日に検査日程を「未完」と変更した。他の箇所でも問題がないか点検する。

さらに、2020年3月以降、テロリストなどの侵入を検知する複数の設備が壊れ、その後の対策も十分機能していなかったことが明らかになった

原子力規制委員会は3月16日、柏崎刈羽原発の核物質防護設備の機能一部喪失について、安全重要度評価 を「赤」とし、3月23日に「対応区分:第4区分」として扱うことを伝えた。

安全重要度評価
(原子力施設の安全確保に対する劣化程度)
対応区分
(検査指摘事項の重要度評価及び安全実績指標の分類に応じて)


不良
 


安全確保の機能又は性能への影響が大きい水準 第5
区分
監視領域における活動目的を満足していないため、プラントの運転が許容されない状態
安全確保の機能または性能への影響があり、安全裕度の低下が大きい水準 第4
区分
各監視領域における活動目的は満足しているが、事業者が行う安全活動に長期間にわたるまたは重大な劣化がある状態
安全確保の機能または性能への影響があり、安全裕度の低下は小さいものの、規制関与の下で改善を図るべき水準 第3
区分
各監視領域における活動目的は満足しているが、事業者が行う安全活動に中程度の劣化がある状態
安全確保の機能または性能への影響があるが、限定的かつ極めて小さなものであり、事業者の改善措置活動により改善が見込める水準 第2
区分
各監視領域における活動目的は満足しているが、事業者が行う安全活動に軽微な劣化がある状態
第1
区分
各監視領域における活動目的は満足しており、事業者の自律的な改善が見込める状態


また、
同発電所における一連の核物質防護事案について、直接原因や根本的な原因の特定、安全文化および核セキュリティ文化要素の劣化兆候(第3者により実施された評価を含む)を特定し、その内容を踏まえて、改善措置活動の計画を定め、本年9月23日迄に報告するよう指示した。

核セキュリティー分野で「赤」という判定は、日本で初めてというだけでなく、同種の検査制度を20年にわたって運用しているアメリカでも近年例がない という。
東電の核セキュリティーは最低レベルであり、原子力発電事業者としての適格性が問われる。

原子力規制委員会はテロ対策に大きな問題があるとして、3月24日に行政処分について検討が行われた。

更田委員長は、「テロの対象ともなる核燃料を移動させないことが現状では核物質の防護につながる」などとして原子炉に核燃料を入れたり、新しい燃料を運び込んだりといった核燃料の移動を禁止する是正命令を提案し 、委員からは「いまは応急措置が取られているだけで、万全な体制とは言えず、核燃料の移動禁止などは必要。問題の根は深い」などの意見が出され、この処分案を承認した。

規制委員会では今後、内容を詰めて東京電力に処分案を示し、意見を聞いたうえで正式に是正措置の行政処分が決まる が、改善されたと判断されるまでは柏崎刈羽原発は再稼働ができない状態が続くことにな る。

ーーー

1)不正入室問題

2020年9月20日朝、中央制御室員Aが同僚の中央制御室員Bのロッカー(無施錠)よりIDカードを無断で持ち出し 、Bを名乗って中央制御室入域を試みた。委託警備員及び社員警備員Cは違和感を覚えつつも、入域を止めなかった。
社員警備員Cの裁量で、BのIDカードにAの識別情報を登録し、AはBのIDカードを不正に使用し て周辺防護区域及び防護区域を通過し中央制御室まで入域 した。


詳細は発表されていないが、IDカードには個人を識別する情報が登録されており、本人ではないため入れない。しかし、本人だと主張したため、現場にある識別情報登録装置 で、本人の識別情報に入れ替え、入場させた模様。中央制御室に入れる社員は限られており、警備員が本人かどうか分からないだろうか。 そもそも、現場で識別情報を変更できるなら、IDカードの意味はないことになる。

識別情報を変更したため、翌日にBが入域の際、個人を特定する認証にエラーが発生、AのIDカード不正使用が判明した 。


本件は直ちに原子力規制庁に報告したが、原子力規制庁は安全重要度評価は「白」、「対応区分:第2区分」とした。

「赤」とされた検知設備の機能喪失はテロリストの入域の可能性の問題であるのに対し、こちらは実際に他人のIDカードで中央制御室に入っており、はるかに重大である。規制庁の「白」評価はおかしい。

本件について、東電の説明は次の通り。

原因  
 ・核セキュリティに関する重要性の認識不足   
 ・IDカードの保管管理が十分でない。
 ・個人認証エラー時の対応の不十分

背後要因
 ・物質防護のための手段の不足:人定確認のルール不備、設備構成 
 ・核物質防護の重要性の理解不足
 ・厳格な警備業務を行い難い風土

東電自身が核セキュリティに関する重要性の認識不足を認めたというのは恐ろしいことで、核物質を扱う資格がない。他の原発はどうなのか、東電だけの問題とも思えない。

2) 未完工事

東電は7号機の新規制基準に基づく安全対策工事が2021年1月12日に完了したと発表した。

その後、設備の健全性を確認する検査を進めていたが、1月27日に6、7号機中央制御室用の陽圧化空調機が保管されている区域のダンパーの設置工事が完了していないことを確認した。
同様のことが無いかを改めて徹底して確認したところ、火災感知器の設置工事が一部未完了であること、原子炉建屋地下1階の配管床貫通部の止水工事が一部未完了であることが判明した。

未完了と分かった4件には、設計側と工事側の連携の不十分さが共通すると説明している。(福島第一でも昨年来、地震計の故障を放置しており、先月の地震を観測できなかった。)

東電は2月26日、7号機の再稼働に必要な一連の検査の終了時期を従来の6月から「未定」とすると発表した。検査の終了時期が見通せなくなった。

3) 侵入検知装置の不備

2021年1月27日、協力企業が侵入検知装置を誤って損傷させる事案が発生し、同日、原子力規制庁に報告した。

2月12日 に本件侵入検知設備の機能の一部が復旧した状況を報告、その際、他の侵入検知設備の故障状況を問われ、12箇所の故障があり、代替措置を講じていることを説明。

その後、他の侵入検知設備3 箇所の故障を加えた15箇所について進捗状況に関する資料を原子力規制庁に提出したが、規制庁から15箇所の内10箇所で代替措置が不十分な状態で30日以上経過しているという趣旨の指摘があった。

規制庁の聞き取りに対して現場の担当者は代替措置が不十分だと認識していたと答えたというが、発電所の上司には共有されず、本社にも報告されなかった。

2月21日から3月4日まで原子力規制庁による現地検査が行われ、以下の点に関する指摘を受けた。

東電の代替措置が、2020年3月以降、複数箇所で実効性があるとはいえず、不正な侵入を検知できない可能性がある状態が、長期間にわたり改善されていない 。

社員警備員は代替措置に実効性がないことを認識していたにもかかわらず、改善していなかった 。

その結果、不正な侵入を30日を超える期間で検知できない状態になっていた可能性があること

以上のような状態を、組織として十分に把握できていない状況にあること

2018年1月から2020年3月までの期間においても、侵入検知設備の機能の一部喪失が複数箇所発生し、復旧するまでに長期間を要していた 。

東電の報告を受けて規制庁が問題を認識、立ち入り調査で確認して分かった事態であり、それがなければ、今もテロリストが侵入できる状態であったことになる。

原子力規制委員会は3月16日、「柏崎刈羽原子力発電所は、組織的な管理機能が低下しており、防護措置の有効性を長期にわたり適切に把握しておらず、核物質防護上重大な事態になり得る状況にあった」として、暫定評価として「重要度評価:赤」の通知を した。

3月5日 に、故障設備の修理・補修により、全ての故障箇所が復旧していることを確認した旨、原子力規制庁へ報告 した。
当該箇所における不正侵入は確認されていない。 侵入検知設備の故障等が新たに発生した場合において、実効性がある代替措置が実施できる体制を構築済。

ーーー

原子力規制委員会は2020年9月23日、柏崎刈羽6、7号機の再稼働に向けた審査で、東電が保安規定に盛り込んだ安全に対する基本姿勢を了承した。 福島第一原発事故起こした当事者に原発を再び動かす「適格性」が担保されたと認めた。

今回の問題を受け、原子力規制委員会は1年以上かけて追加検査して原因を究明する。

原発を運転する「適格性」も審査し直す必要がある。更田委員長も「(原子炉設置変更許可取り消しの)議論が出てくるということは否定しない」と述べている。

「いま問われているのは東京電力の核物質防護そのものへの姿勢で懸念が消えておらず、少なくとも柏崎刈羽原発では、核燃料の移動をする資格がない疑いがあると思っている。原子力規制委員会の発足後、検査で見つかった事例の中でいちばん重いと言っていいと思う 。」 

今後については「この事案を重大だと思っているからこそ、詳細や背景など、いま明らかにできることは明らかにする必要があり、東京電力にはしっかりした分析を望みたいし、私たちも拙速な判断は避け、しっかりした検査を加えていきたい」と述べ、東京電力による原因分析と、その後の検査に1年以上かかるとする見通しを改めて示した。

仮に原子力規制委員会が再稼働を認めたとしても、地元の了承が得られるとはとても思えない。

米半導体製造装置大手Applied Materials, Inc.は3月22日、旧日立製作所系の同業KOKUSAI ELECTRICの買収計画について、期限の3月19日までに中国の規制当局から承認を得られていないため破談になった 模様だと発表した。3月26日までに承認を確認できなければ、正式に断念し、KKRに解約手数料1億5400万ドルを支払う。

付記 3月29日、断念を発表した。

KOKUSAI ELECTRICは日立国際電気から独立し、2018年6月にKKRファンドの下で半導体製造装置メーカーとしてスタートした。バッチ式プロセス装置製造を得意としており、Applied Materialsは、同社が提供する枚葉式処理装置ラインアップを補完するものと期待していた。

中国の不承認の背後には米国と中国の半導体を巡る対立があるとみられる。

ーーー

日立製作所は、中核事業に経営資源を集中する一方、非中核事業は売却し、収益率を高める選択と集中を徹底するため、黒字の連結子会社 日立国際電気の売却を決めた。

日立国際電気は、日立グループ内で無線通信機器や放送・映像機器の製造販売を手がけていた国際電気・日立電子・八木アンテナの3社が2000年10月1日に合併して誕生した。(八木アンテナはその後、同社の100%子会社として分社化し、現在、日立国際八木ソリューションズと改称している。)

2009年には日立グループの総合力強化と日立国際電気のグローバルな事業拡大をめざし、日立が公開買付により連結子会社とした。

事業は下記の通り。

  • 映像・通信ソリューションセグメント
  • 成膜プロセスソリューションセグメント (半導体製造装置)

日立製作所は2017年4月26日、KKRの所有するHKEホールディングス合同会社及び日本産業パートナーズが出資するHVJホールディングスとの間で、下記の契約を締結した。

①HKEが日立国際電気を完全子会社とする(上場廃止)

②そのうえで、日立国際電気を分割し、
   a. 成膜プロセスソリューション事業を独立させてHKEが吸収
   b. 映像・通信ソリューション事業が残る日立国際電気に、日立製作所とHVJが各 20%の出資を行う。

2017/5/3 日立、子会社の日立国際電気を売却

KKR傘下のHKEホールディングスは2018年6月1日に成膜ソリューション事業(半導体製造装置)を独立させ、㈱KOKUSAI ELECTRICとした。

バッチプロセス装置 (高品質成膜・高性能半導体製造装置など)
枚葉プロセス装置
薄膜形成プロセス技術

ーーー

Applied Materialsは2019年7月1日、KKRが保有するKOKUSAI ELECTRICの全発行済み株式を22億ドルで取得する最終合意に達したことを発表した。

KOKUSAI ELECTRIC は生産効率の高いバッチ式プロセス装置とサービスで業界をリードしており、メモリ、ファウンドリ、ロジック分野の顧客に提供している。
世界トップレベルの成膜技術を生かした半導体製造装置を生産し、世界のトップメーカーに製品とサービスを納入し、半導体の高機能化、高性能化を支えている。
これらの装置は、Applied Materialsが提供する業界トップの枚葉式処理装置ラインアップを補完するもと期待している。

当初は1年以内の手続き完了をめざしていたが、2020年6月末までに許可が出なかったため、一旦2020年9月末まで期限を延ばした。

更に中国当局からの買収承認を得るのに時間を要しているため、2020年12月30日に延ばした。

KOKUSAI ELECTRIC 半導体製造装置の需要改善と、統合後の新会社の業績見通しを反映していると説明した。
また、

中国政府がまだゴーサインを出しておらず、最後の関門となっている。

しかし、買収完了の期限だった3月19日までに中国当局の承認が得られず「買収契約が解除された可能性がある」と発表した。
契約解除料の支払期限である3月26日までに改めて承認が確認できなければ、買収は破談となり、KKRに解約手数料1億5400万ドルを支払う。

現在、欧米で承認されているPfizer/BioNTech と ModernaのワクチンはともにmRNAワクチンである。

Developer/manufacturer Platform Type doses Timing
 
days
Route Phase 承認
Pfizer / BioNTech
+ Fosun Pharma
RNA BNT162 (3 LNP-mRNAs ) 2 0, 28 IM

UK 2020/12/2
FDA 2020/12/11
EU 2020/12/21
WHO 2020/12/31

Moderna / NIAID RNA mRNA -1273 2 0, 28 IM

FDA 2020/12/17
EU 2021/1/6


mRNAワクチンは、Katalin KarikoとDrew Weissmanの研究が基になっている
発表当時、ほとんど無視されていた論文に注目した2人のうちの1人がModernaの創業者
Derrick Rossiである。(もう一人はBioNTechのUğur Şahin社長で、Katalin Karikoは現在、同社のSenior Vice President である。)

Derrick Rossiは カナダのトロントで生まれた。トロント大学で分子遺伝学を学び、 ヘルシンキ大学で博士号をとり、2003年から2007年までスタンフォード大でポスドクを勤めた。

2006年に山中伸弥博士がマウスのiPS細胞作製成功を発表した。

Rossiによると、「山中伸弥教授によるiPS細胞の素晴らしい発見がアイデアの発端になっています。2006年にiPS細胞の論文が発表されたときにすぐに目を通して、ほかのすべての科学者と同様に、感銘を受けました 。ただ、山中氏は当時『山中4因子』をレトロウイルスで運ぶことでiPS細胞を作製していました。実際の治療などに用いられるには、このウイルスを取り除かなければならなかった。 」

当初、iPS細胞は 繊維芽細胞に4因子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc)を、それぞれレトロウイルスやレンチウイルスなどのウイルスベクターで導入することで樹立された。

しかし、再生医療への応用に際して、ゲノムへのウイルスベクター挿入に起因する腫瘍形成が危惧されていた。またウイルスベクターは実験のたびに厳密に管理された実験室で作成する必要があり、iPS細胞技術の普及の障害となった。

Rossiは2007年にHarvard Medical School の助教授に就任、自分のラボを持ったが、iPS細胞を、ウイルスを使わずにmRNAを使って作成することを考えた。4因子をウイルスに運ばせるのではなく、4因子の設計図であるmRNAを導入し、細胞内で4因子を作成するものである。

しかし、mRNAを入れた細胞は死に、うまくいかなかった。免疫系が異物と認識し、炎症反応を引き起こすためで、Katalin Kariko とDrew Weissmanが苦労した点である

mRNAは、「アデニンA」「ウラシルU」「シトシンC」「グアニンG」という4種類の塩基からなる。
Katalin KarikoとDrew Weissmanは、その一つをわずかに細工すること(RNA修飾)で免疫系をすり抜け、炎症を回避し、細胞にたんぱく質を作らせる手法を考えた。

ウラシルから誘導されるヌクレオシドはウリジンであるが、ウリジンをシュードウリジン(Ψ)などに置き換えると、mRNAの二次構造が変化し、効果的な翻訳を可能にしながら、自然免疫系による認識を低下させる。

2021/2/3 今年のノーベル医学・生理学賞は確定? mRNAワクチンの開発

Rossiはさまざまな方法を探る中でKarikoたちの論文に行き着き、実際にKarikoらが発表した方法に基づいて修飾したmRNAを使 い、2009年にmRNAによるiPS細胞の作成に成功した。

山中教授のグループはRossiの成功前の2008年10月10日に、ウイルスを使わずiPS細胞樹立に成功したと発表している。
マウス胎仔線維芽細胞に、3因子(Oct3/4、Klf4、Sox2)をこの順で搭載したプラスミドと、c-Mycのみを搭載したプラスミドを同時に導入し、iPS細胞を樹立した。

Rossiは同僚のTimothy Springerに連絡、SpringerはMIT最高位のInstitute Professorの一人のRobert Langerにコンタクトした。

2人から説明を聞いたRobert Langerは大発明だと考えた。RNAの設計を変えれば、細胞内で多種多様なタンパク質を作り出せる、これを利用すれば新しい医薬品、新しいワクチンが作れると伝えた。

RossiはFlagship VenturesのNoubar Afeyanに説明、数カ月後にRossi、Springer、Langer、Afeyan等が新会社Moderna を設立した。

社名のModerna は発明の基であるmodified mRNAから採った。

RossiのModernaは、iPSをつくるためにウイルスを除去する構想から生まれ、コロナウイルスのワクチンを生んだ。Rossiは当時を振り返り、「今と同じように『ウイルス』がキーワードだった」と述べている。

山中教授は述べている。

モデルナは2010年に、デリック・ロッシという幹細胞研究者が持つ技術を医療に役立てるために誕生したベンチャー企業です。その技術は、メッセンジャーRNAを使ってiPS細胞を樹立するというもので、私たちが10年前から取り組んでいた研究と同種のものでした。

モデルナの研究者は、研究開発をiPS細胞のステージから大きく広げました。だからこそ迅速なワクチンの開発に成功したわけです。

アメリカでは、このように大学から企業へ橋渡しする役割をベンチャーが担う形で、医療応用が次々と実現しています。

https://events.z-holdings.co.jp/tougou/futurevision/031601/

ーーー

Karikoは、Derrick Rossi が山中教授のiPS発明からmRNA利用を思いつき、Karikoらの論文を見付けて成功したことに触れ、「もし山中教授がいなければ、もしiPS細胞の発見がなければ、私たちの論文が 『発見』されることはなかったかもしれません」と述べている。

Karikoの発明がなければ、mRNAワクチンはなかったかも知れない。

Derrick Rossiは、彼ら(Katalin KarikoとDrew Weissman)の論文は「根底をくつがえす」もので、ノーベル化学賞に匹敵すると述べている。

VWは3月15日に"Power Day" を開催、2030年までのEVなどの電動車向けバッテリーとその充電に関する技術ロードマップを発表した。

同社は電気自動車(EV)シフトを一段と加速する。2025年に世界の新車販売の2割をEVにし、2030年に5割、2035年には大半をEVにするロードマップを示した。欧州では2030年に6割を目指す。

本年のEV販売目標を100万台とし、
遅くとも2025年までに世界EV市場のリーダーになることを目指すとした。

最重要部品となるバッテリーについて、電池メーカーとの合弁などを通じて40 GWh の工場を2030年までに欧州で6カ所設ける。規格を統一した電池("Unified Cell")を大量生産しコストを半減、ガソリン車より安いEVを目指す。

これは車載電池メーカーにとって大脅威である。

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今回、VWはスウェーデンのバッテリーメーカー Northvoltとの間で、今後10年にわたるバッテリー製造で140億ドルの契約を結んだ。

Northvoltはリチウムイオンバッテリーを生産する会社で、2016年に元Teslaの幹部のPeter Carlsson氏により設立された。

Northvoltは2019年にVW、BMW、Goldman Sachs、IKEAグループなどから合計10億米ドルの出資を受けた。増資と欧州投資銀行からの4億ドルの融資で、第1号の工場をスウェーデン北部Skellefteaに建設、16GWhの生産から始め、最低32GWh以上の容量まで増やす。

VWは別途、9億ユーロを投資してNorthvoltとのJVで、16GWhのリチウムイオンバッテリー工場を南ドイツのSalzgitterに設立した。VW用のバッテリー供給を2023年終わりから2024年始めにスタートさせ、数年後に24ギガワット時に拡大する。

Northvoltは3月1日に米国のバッテリー技術の企業 Cuberg を買収し、Silicon Valleyに先端技術センターを得た。 Cubergは液体電解質にリチウムメタルアノードを組み合わせる次世代バッテリーを商業展開するためにスタンフォード大学からスピンアウトした。
Cubergのバッテリーは、電動航空機使用向けにデザインされた同程度のリチウムイオン電池に比べて航続距離と容量を70%増やすとされる。

今回の契約で、VWはNorthvoltの株式を追加取得し、Northvoltが欧州のVWグループ向けの主要な電池サプライヤーとなる。

提携の一環として、Northvoltのスウェーデンのプラントは拡張し、40 GWh とする。
NorthvoltはドイツのSalzgitterのJV持ち株をVWに売却することにも同意した。ここも40 GWh に増強する。

今後、2026年には西欧(スペインかフランスかポルトガル)に1工場、2027年には東欧(ポーランドかスロバキアかチェコ)に1工場、2030年までにあと2工場を建設し、合計6工場 240GWh の能力とする。

標準的な電池容量のEV換算で、合計500万台分相当の電池を生産できる。

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2023年以降、自前の工場で統一した規格の角型電池セル"Unified Cell"を生産する。2030年には全体の8割をこの統一セルとし、セルのコストを現在の半分に下げる。

現在のEVやHV、PHEVなどに採用されているバッテリーは、自動車ごとに車両に合わせたデザインの異なる構造、仕組みになっている。
Unified Cellは、1つの仕様で統一してバッテリーの最小単位であるCellを大量生産することでコストダウンを行う。最終的には車種ごとにこれを複数組み合わせて1つのバッテリーを組み立てる。

同社では車種のうち80%はこれでカバーできると考えている。残りの20%(例えばスポーツカーなどの特殊な車両)に関してはより高出力なCellが必要になったりするので、独自のCellを利用する。


独アウディや独ポルシェを含む全ての傘下のブランドで電池やソフトウエアなどの共通化の度合いを深める方針を明らかにした。

同社ではコスト半減をうたっている。1kwhあたり100ユーロより大幅に下げる。

デザインで15%、製造プロセスで10%、カソード/アノード材料で20%、システム概念で5%、合計で50%カットとしている。

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VWは充電インフラへの取り組みも続けている。

今回、BPは、同社がイギリスとドイツに展開するガソリンスタンドチェーンで、VWグループの車両に対して充電ステーション機能を提供するパートナーシップを結んだことを明らかにした。
このほか、スペインのIberdrola、Enelなどとも提携、2025年までに1万8000の公共の充電ステーションを欧州内に設けることを計画している。

中国や米国/カナダでも急速充電ステーションの設置を目指している。

AGC(旧 旭硝子)は3月19日、クロルアルカリ事業のタイの子会社2社とベトナムの子会社の再編統合2022年前半完了目標実施し、統合新社設立すると発表した。

タイにおける大手石油メーカーPTT Global Chemical Public Company Limitedとの連携深化し、インドシナ半島クロル・アルカリ事業基盤強化なる成長目指す。

ロル・アルカリのメーカーのAGCと、エチレンメーカーのPTT Globalが提携し、PVC事業を強化する こととなる。

統合するのは次の3社で、出資比率や製品能力は下図を参照 

タイ AGC Chemicals (Thailand) Co., Ltd 旧称 THASCO Chemical Co., Ltd  (下記)
Vinythai Public Company Limited Solvay Vinyls Holding AGから持分買収
ベトナム AGC Chemicals Vietnam 旧称 Phu My Plastics & Chemicals Co., Ltd.
 現株主3社で買収
  
2013/11/11  旭硝子、ベトナムの塩ビ会社を買収 


旭硝子は1963年に
スリフンフン・パニチュワ・グループとのJVでタイ旭硝子を設立、その後他3社も設立して、東南アジアでの拠点としてきた。
2000年11月、相手持分を取得して経営権を完全に掌握し、経営効率化、コスト削減、高付加価値製品の投入等を通じて競争力を高めるとともに、アジア地域の重要な生産拠点として機能させることとした。

買収による旭硝子出資比率 その後
タイ旭硝子 39.65%→85.2% TOB→100%
バンコクフロートグラス 41.4%→96.3% →100%
タイ安全硝子 45.0%→93.2%
タイ旭エレクトロニックデバイシズ
(旭硝子ファインテクノ子会社)
70.0%→100%


AGCはインドネシアに
P.T. Asahimas Chemicalを持つ。これも含めた統合の噂があったが、今回はこれは含まない。

再編統合は下記による。

PTT GlobalがTOBによりVinythaiの親会社となり、VinythaiとAGC Chemical Thailandを統合してタイに新会社をつくる。
新会社については、AGCが65%、PTT Globalが35-α%の株主となり、他の株主がα%を出資する。

タイの新会社はAGC Chemical Vietnam のAGC持ち株を引取り、78.11%の株主となる。

付記 2022/7/1設立 新会社:AGC Vinythai Public Company Limited
   2022年末に資本構成変更

2022/7/1 2022年末
AGC 70.22% 65.00%
PTT Global Chemical 27.32% 32.72%
その他 2.46% 2.28%



統合する3社(+今回対象外のインドネシア子会社)の製品と能力は下図の通り。

ーーー

PTT Global Chemical Public Companyの歴史は次の通り。

1991年にShellとPTTがRayong Refineryを設立し、145千bpdの製油所を建設した。

2004年にShellは持株をPTTに譲渡し、撤退した。

2007年にRayong Refinery とPTT傘下のAromatics (Thailand)が合併し、PTT Aromatics and Refining とし、2011年にPTT Chemical と合併してPTT Global Chemical となった。


2021年3月時点の製品と能力は次の通り。Refinery以外は単位:1000t/y

Refinery Crude Distillation 145,000bda、Condensate Distillation 135,000bda
Aromatics Benzen:697、Toluen:50、mixed Xylenes:76、PX:1,310、Orthoxylene:86,Cyclohexane:200
Olefins C2:2,376、C3:512、Butadiene:75、Butene-1:25
Plymers HDPE:800、LLDPE:800、LDPE:300、PS:90、Hexene-1:34,PP:336 (41.44%出資のBasell子会社HMC)
EO MEG:423、EA:50
Phenol Phenol:470、Bisphenol-A:150、Aceton:290
Performance
Materials
Hexamethylene Diisocyanate & derivatives:115 (90.82%出資のVencorex )
Acrylonitrile:100、MMA:35 (いずれも50% 出資のPTT Asahi Chemical)
GreenChemicals 子会社Global Green Chemicals Public Company Limited (旧称Thai Oleochemicals)で油脂化学品の製造販売

2月に米国を襲った記録的な寒波とテキサス州の大規模停電の影響が拡大している。

記録的な寒波に伴う米テキサス州全域の停電で、オースティン周辺に集積する半導体工場が操業停止となった。

半導体で世界2位のSamusung電子も2月16日にオースティンの施設で稼働を停止したと発表。半導体の仕掛かり品、ウエハーの損傷は免れたものの、稼働停止が長期化し供給問題が浮上した。

テキサス州にあるオースティン工場は半導体受託生産の拠点で、Qualcommの通信用半導体のほか、自社の有機ELパネルやイメージセンサーの駆動用半導体などを手掛ける。
Samusungは「施設点検と補修など準備を進めているが、正常稼働にはまだ時間がかかる。安全を最優先に早期正常化に努力する」としている。

調査会社によると、「オースティン工場の3月中の正常化は難しい」と し、「5G」対応スマホに限れば、4~6月の世界のスマホ生産落ち込みは30%に達すると推計 する。

車載用半導体でも、オランダのNXP Semiconductorsはオースティン周辺にある2工場の生産を、ドイツのInfineon Technologies AGもオースティン工場の操業を休止した。

世界的な半導体不足に米国生産の停止が加わった。


付記(関連)

半導体大手のルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)で3月19日午前2時47分に火災が発生し、約5時間半後に鎮火した。
被害を受けたのは先端品の量産を担う直径300ミリメートルの半導体ウエハーに対応した生産ラインで、主に自動車の走行を制御するマイコンを生産している。ルネサスは同マイコンの世界首位で約2割のシェアを握る。

同社では「1カ月以内での生産再開にたどりつけるよう尽力する」としているが、操業停止が長引けば世界的に不足が続く車載半導体の供給に影響が出る可能性がある。

テキサス州は全米の石油生産の4割を占め、石油化学 コンビナートも多数ある。メキシコ湾岸沿いに集中する化学プラントが一時軒並み停止に追い込まれた。三菱ケミカルのアクリルモノマープラントや信越化学のテキサスのPVC工場も停止した。それらを使用する部品工場も停止した。

テキサス州は温暖な州のため、プラントの多くが寒波を想定していない設計だったため、凍結で配管の破断が起きた。そこに停電が加わった。

大規模停電から約1カ月が経過したが、破損した配管の復旧などに手間取り、通常稼働に戻っていない。
このため自動車や住宅向けの樹脂不足が深刻化している。ある自動車部品メーカーの幹部は「樹脂材料が通常時の5割程度しか供給されていない。日に日に影響は広がっている」と困惑する。

ホンダは3月16日、米国とカナダの5工場で3月22日から1週間程度、生産を休止すると明らかにした。世界的な車載用半導体不足に加え、部品の供給が滞った 。

トヨタも米国とメキシコで完成車とエンジン生産の計4工場を一部休止して生産調整することが 分かった。DuPont製の樹脂の供給不足が要因とされる。

樹脂不足は住宅業界や医療分野にも広がっている。

米国の化学品市況で、ポリプロピレンが1年前に比べ約3倍に上昇、低密度ポリエチレンも1年で倍になった。

日本にも影響が出た。
東レは3月上旬に、自動車のエアバッグに使うナイロン66の繊維の国内需要家に
フォースマジュール条項を宣言した。
原料アジポニトリルの調達先である米国の化学メーカーINVISTAとAscend Performance Materialsが、2月の寒波の影響で出荷が不安定になっているためとして東レなど需要家に対しフォースマジュール条項を宣言した。

ーーー

2月10日~20日に全米を冬の嵐が襲った。2月16日にはアメリカ本土の73%の面積が雪に覆われ た。

北極にある極渦(北極を覆う冷気)がジェット気流の乱れによって、テキサス州まで蛇行したことによって発生したとされる。

テキサス州は、冬でも氷点下になることはまれであるが、ヒューストンの気温は2月15日の 朝にはセ氏マイナス8度と、アラスカ州アンカレッジと同水準になった。

大寒波の到来で電力需要は冬季過去最高を記録し、州の送電網運営組織が想定していた「異常」需要のシナリオを超えた。 加えて、多数の天然ガス発電所や風力発電所が突如停止状態になり、テキサス州の送電網は危機的状況に陥った。送電網全体の停止を防ぐため、電力事業者に計画停電を指示し、顧客への電力供給を切断した。

テキサス州は450万軒以上の家屋と事業所が停電し、停電は水の処理施設にも影響を与えた。浄水場が停電し、水道管の凍結によって給水網の水圧が下がった。道路は凍結した。

バイデン大統領は2月20日、連邦政府の支援を拡大するため、非常事態宣言に続き、同州で大規模災害を宣言した。


テキサス州の電力ソースは下図の通り。

大寒波による影響で、停止を余儀なくされた発電所の出力規模は合計45GWに上った。

テキサス州知事(共和党)は氷点下で風力発電が稼動停止したのが主因であり、温暖化対応策として風力発電を導入したことが停電につながったと非難した。

しかし、これは誤りである。

1) 風力発電は凍結防止装置など耐寒性を上げれば極寒の北欧でも稼動させることは可能である。温暖なテキサス州 ではそのような対策が講じられなかった。

2) 風力だけでなく、天然ガスによる発電も天然ガスを運ぶパイプラインが凍結 しため、停止した。

大寒波によって失われた発電能力は、風力発電で15GW、天然ガス/石炭発電で30GWで、天然ガスと石炭火力の 停止の影響が風力の停止の2倍になる。

更に、テキサス州独自の電力系統が被害を大きくした。

米国の電力系統は、東部送電網西部送電網テキサス州送電網周波数同期エリアに分かれている。3つの地域の間には、非常に容量が低い直流線があるに過ぎない 。

送電線の運用制御は、従来は送電線を所有する電力会社が実施する形態が大半であった が、1990年代の卸電力市場の自由化に伴い、連邦規制当局により広域系統運用機関の設立が推奨され、 送電線の所有権を電力会社に残しながら、運用制御機能を広域系統運用機関に移管している。

通常であれば、電力が一時的に不足すれば他州から電力を調達することも可能だったはずだが、連邦政府による管理を嫌うテキサス州の電力運営方針が災いし 、他州から供給を受けられなかった。

四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを命じた広島高裁の仮処分決定を巡り、四国電が決定の取り消しを求めた異議審で、広島高裁は3月18日、異議を認めて再稼働を容認する決定を出した。
3号機は現在、テロ対策施設の工事を進めており、10月末にも再稼働する見通し。

付記

四国電力は6月16日、伊方原発3号機を10月12日に再稼働させると発表した。営業運転の開始は11月12日。

再稼働の条件となるテロ対策施設が10月5日に完成し、再稼働に向けた環境が整う。

付記

伊方原発3号機で、重大事故に対応する待機要員1人が2017年3月~19年2月に計5回、宿直勤務中に無断外出し、保安規定上の要員数を一時満たしていなかった問題が6月に判明した。この間、保安規定で22人と定めた待機要員が1人欠けた状態で、原子力規制委員会は9月、保安規定違反と認定した。再稼働は延期になった。


付記

四国電力が保安規定違反を受け延期している伊方原発3号機の再稼働について、愛媛県知事は11月19日、安全性向上などの要請事項の順守を条件に了承する考えを四電の長井社長に伝えた。

ただ「無条件ではない」と強調し、協力会社一人一人に至るまでの原子力事業者としての責任の自覚▽安全性向上と県民の信頼回復への取り組み▽「えひめ方式」(異常事象に関する通報連絡体制)の徹底―の3事項を要請した。

えひめ方式:伊方発電所で発生した正常状態以外の全ての事態について、四国電力が県および伊方町に直ちに通報連絡し、県が全ての事案を公表する)

四国電力は11月22日、伊方原発3号機の運転を12月2日に再開すると発表した。2022年1月4日から商業運転を始める。

付記

広島地裁は2021年10月4日、(停止中の)伊方原発3号機について広島県などの住民が再稼働を認めないよう求めていた仮処分の申し立てを退ける決定を出した。

広島県や愛媛県の住民7人が2020年3月に「大地震で重大な事故が起きる危険がある」として、再稼働を認めないよう求める仮処分を広島地方裁判所に申し立てた。

裁判長は「地震の大きさは、観測地点の地盤ごとに増幅などの特性が異なるため、伊方原発以外での原発で基準を超える揺れが観測されたからといって、危険性があるとは言えない」と指摘して、住民の申し立てを退けた。

仮処分を申し立てたのは伊方原発から50km圏内にある山口県東部の島の住民3人で、原発近くの活断層や阿蘇山の噴火のリスクを主張した。

山口地裁岩国支部は2019年3月15日、仮処分申請を却下した。

活断層については、音波探査で、十分な調査が行われていると認定、佐田岬半島沿岸部には「 活断層が存在するとはいえず、基準地震動の評価に不合理な点はないとした。

阿蘇については、運用期間中、巨大噴火の可能性が十分に小さいと判断できる とした。

住民側の即時抗告審で広島高裁は2020年1月17日、「運転差し止め」を命じた。

中央構造線について、四国電力側の調査は不十分で、横ずれ断層である可能性は否定できない。

破局的噴火に至らない程度の最大規模の噴火を想定すべきで、噴出量を20~30立方キロとしても、噴火規模は四国電力想定の3~5倍に達する。四国電力の降下火砕物や大気中濃度の想定は過少で、これを前提とした規制委の判断は不合理とした。

2020/1/20 広島高裁、伊方原発3号機運転差し止め

今回、広島高裁は、「現在の科学的知見からして、原発の安全性に影響を及ぼす大規模自然災害の発生する危険性が具体的に高いとは認められない」とし、運転を認める決定を出した。

海上音波探査を踏まえて原発敷地の2km圏内に活断層はないとした四国電の判断に「不合理な点があると認められない」とした。

阿蘇山の噴火リスクでは「専門家の間でも意見が分かれている。原発の安全性に影響を及ぼす噴火を引き起こす可能性が高いとは認められない」と結論づけた。

ーーー

伊方3号機については、広島市と松山市の住民4人による仮処分申請で、広島高裁が一旦、運転差し止めの決定をしたが、後に広島高裁がこれを取り消している。

2017/3/30
広島地裁
申し立てを却下

新規制基準は最新の科学的知見を踏まえている。
四国電力の基準地震動も、不合理な点はなく、住民が重大な被害を受ける具体的危険はない。

2017/12/13
広島高裁
(即時抗告審)

運転を差し止める決定
阿蘇山が過去最大規模の噴火をした場合は安全が確保されない。

2017/12/15 広島高裁 

四電が保全異議を申し立て

2018/9/25
広島高裁
(異議審)
四電の保全異議を認め、決定を取り消し

阿蘇の破局的噴火については、頻度は著しく小さく、国民の大多数も問題にしていない。想定しなくても安全性に欠けないとするのが社会通念。
破局的噴火以外で火砕流が伊方原発に達する可能性は十分小さい。
2018/10/27

再稼働

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