「no」と一致するもの

韓国のLG Chemが同業のSK Innovationを車載電池の営業秘密の侵害で訴えていた係争で、米国際貿易委員会(ITC)は2月10日、SK Innovationに米国への輸入禁止命令を下した。

SK Innovationは米ジョージア州に持つ車載電池工場で部品調達ができず生産停止を迫られる。

SK Innovationは2018年11月26日、米ジョージア州Commerce市に1兆1396億ウォン(約1140億円)を投資して、電気自動車用バッテリー工場を建設することを明らかにした。

能力は9.8GWhで、2021年に生産を開始、2022年に大量生産に移る。

新工場が完成すれば、SK Innovationは韓国(忠清南道瑞山市)とハンガリーKomárom )、中国(常州)を含めて「グローバルの四角生産体制」を構築することになる。

2018/12/4 SK Innovation、米に電気自動車バッテリー工場を建設、LG & Samsung も各地で増設

同社は2020年に隣接して第二工場を建設することを明らかにした。能力は11.7GWhで2023年稼働を目指す。両工場が稼働すると、年間31万台の電気自動車用の電池を生産できる。


LG Chemは2019年4月30日、SK InnovationがLG技術者を採用することにより、リチウムイオン電池技術を盗用したとし、LGの米国子会社と共同で米国ITCと
Delawareの連邦地裁に提訴したと発表した。
SK InnovationがLGのリチウムイオン電池部門の77人の高度の技術と経験を持つ従業員を雇用し、LGの企業秘密を取得したと主張した。

ITCに対し、LGの企業秘密を侵害するリチウムイオン電池のサンプルと基盤技術を米国に輸入するのを止めるよう求めた。

米国国際貿易委員会は5月29日、調査開始(discovery)を決定した。

2019/5/7 LG Chem、リチウムイオン電池技術の盗用で米国で SK Innovationを提訴 

今回ITCはSK InnovationがLG Chemの営業秘密を侵害したと判断し、関税法第337条の違反を適用し、営業秘密を侵害したバッテリーと部品に対する「アメリカ国内への輸入禁止10年」を命じた。
すでに輸入されたものも、営業秘密侵害に該当する品目であれば今後10年間、アメリカ国内での生産流通や販売が禁じられる。

ITCは2020年3月の予備決定で、「SK Innovationの文書毀損などの証拠隠滅行為は営業秘密奪取を隠すための犯行意図を持って行われたことは明白であり、早期敗訴判決だけが適切な法的制裁だ」とした。今回の最終決定はその延長線上にある。

但し、公益を考慮し例外 を認める限定的排除命令("a limited exclusion order")である。

Ford Motor の電気自動車 F-150 向けのリチウムイオン電池の米国での生産のための部品の輸入は、新しいサプライヤーに移行するまでの4年間、認められる。
Volkswagenの電気自動車の米国での生産のための部品の輸入は2年間、認められる。

また起亜の電気自動車で、SKの電池をつけて米国の需要家に販売されたものについて、EV電池の修理、交換のための部品の輸入を認める。

ITCは、事実上の猶予期間を設定し、LG Chemとの和解を促した。

LG ChemはSK Innovationに2000億円規模の賠償金を要求しており、SK Innovationは「金額が法外」として拒否していた経緯がある。

ITCの第三者判断を踏まえ、両社は和解の金額について交渉を始める。両社の和解が成立すればITC命令は解除され、SKは輸入・生産活動を始められる。


付記

Ford Motor のJim Farley CEO は2月11日、LG Chem とSK Innovationに和解を求めた。

"A voluntary settlement between these two suppliers is ultimately in the best interest of US manufacturers and workers."

長崎大学はサプリメントとして市販されている5-アミノレブリン酸(5-ALA)が、新型コロナウイルスの増殖を100%阻害するとの研究結果を発表した。


長崎大学と、5-アミノレブリン酸を扱っているネオファーマジャパンは、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2を用いて培養細胞における感染実験を行った結果、5-アミノレブリン酸(5-ALA)の強い感染抑制効果を発見した。

ネオファーマジャパンはアラブ首長国連邦(UAE)に本拠地を持つNeopharma LLCとneoALA㈱(旧称 コスモALA㈱)との合弁によって設立された。
2016年10月には、エーピーアイコーポレーションの袋井工場を買収し、医薬品原薬・医薬中間体製造に関する設備と能力を得た。

ネオファーマジャパンでは、5-ALAの生体内における代謝特性を利用した事業を展開している。

5-ALAのヘム代謝領域においては、医薬、健康食品、化粧品及び、動物関連事業を、
植物におけるクロロフィル代謝領域においては、肥料事業を進めている。
各事業において、研究、開発、製造、販売に関する業務を行っており、5-ALAを通じて、人々の豊かな生活に貢献するとしている。

5-アミノレブリン酸(5-ALA)は赤ワインや納豆などの発酵食品に多く含まれているほか、サプリメントとしても市販されるなど、安全性が確認されている。

本研究において、5-ALAがCOVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2の感染を培養細胞において強力に抑制することを示した。
この抗ウイルス効果は、明らかな細胞毒性無しに、ヒト細胞と非ヒト細胞の両方で認められた。

・5-ALAは、培養細胞においてSARS-CoV-2の感染を抑制した。
・5-ALAの抗ウイルス効果は、非ヒト細胞よりもヒト細胞に対してより顕著で あった。
・5-ALAは、細胞毒性もなく濃度依存的に抗ウイルス効果を示した。

VeroE細胞を5-ALAで72時間、前処理した場合は下図の通り。SFC(クエン酸第一鉄ナトリウム)と合わせても同様の効果がでた。

Vero細胞は、アフリカミドリザルの腎臓上皮細胞に由来する、細胞培養に使われる細胞株

但し、48時間の前処理では効果なし。

本研究は2021年2月8日に国際学術誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に正式に掲載された。
   https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006291X2100156X

長崎大学とネオファーマジャパンは、引き続き臨床研究の実施を進める。

ーーー

別途、COVID-19患者に対する5-ALAリン酸塩とSFCを利用した治療の報告がある。

5-ALAに特化して、それを活用・応用する目的で設立されたSBIファーマ(旧称SBIアラプロモ)は1月14日に、半蔵門胃腸クリニックとともに、COVID-19患者に対する5-アミノレブリン酸リン酸塩を利用した治療に関する症例報告を作成し、査読前論文を投稿するサイト「Open Science Framework 」に掲載した。

Title: Safety, Tolerability, and Efficacy of 5-Aminolevulinic Acid Phosphate, an Inducer of Heme Oxygenase 1, in Combination with Sodium Ferrous Citrate for the Treatment of COVID-19 Patients
(COVID-19患者の治療のためのクエン酸第一鉄ナトリウムと組み合わせたヘムオキシゲナーゼ1の誘導物質である5-アミノレブリン酸リン酸塩の安全性、忍容性、および有効性)

概要は次の通り。

COVID-19患者のうち、一部の患者、特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)、糖尿病、高血圧、心血管系の問題などの併発疾患のある患者は、パルスオキシメトリ(SpO2)による動脈血酸素飽和度の低い重度の肺炎と多臓器不全を急速に発症し、突然死に至 る。

これらの症状はすべて、全身のさまざまな臓器で発生する致命的な炎症によって引き起こされ る。
RNAウイルス感染によって引き起こされるさまざまな種類の炎症は、局所組織でのヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)の誘導によって制御できることが知られており、HO-1はRNAウイルス複製を抑制するための重要な酵素でもあることが知られてい る。

したがって、肺炎ウイルス感染症の標準的な医療に加えて、非常に効果的なHO-1誘導物質である5-アミノレブリン酸リン酸塩とクエン酸第一鉄ナトリウム(SFC)を組み合わせてCOVID-19患者の治療を試み た。

COVID-19の典型的な症状と大量喫煙に関連するCOPDの疑いのある6人の患者に、最大耐量(MTD)のSFCを含む5-アミノレブリン酸リン酸塩を3〜7日間経口投与した後、2〜3週間、低用量で治療した。

個々の患者の回復時間は、コロナウイルス感染の標準治療のみを受けた患者について報告されたものよりも有意に短く、これらの結果は、急性期の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の治療サプリメントとして、5-アミノレブリン酸リン酸塩とSFCの安全性、忍容性、および有効性を期待させるもので ある。

米連邦議会上院は2月5日、今会計年度予算の修正の大枠となる予算決議案をハリス副大統領の決定票で51対50の賛成多数で可決した。バイデン大統領が提案した1兆9000億ドル規模の経済対策案が実現へと前進した。

賛成 反対 合計
民主党 48 48
民主系無所属 2 2
共和党 50 50
合計 50 50 100
副大統領
(上院議長)
1 1
再計 51 50 101

下院はこの前に可決していた。下院(未定2)

賛成 反対 棄権 欠席 合計
民主党 219 1 2 222
共和党 208 3 211
合計 219 209 3 2 433

通常、上院の決議は野党のフィリバスターを避けるため、60票の賛成が必要だが、予算決議の形をとることで単純過半数で通すことができる。上院では50/50の場合のみ、上院議長を兼ねる副大統領が投票する。

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バイデン(次期)大統領は1月14日、1兆9千億ドル(約197兆円)規模の追加経済対策案American Rescue Plan を発表した。

2021/1/18 バイデン次期大統領、1兆9千億ドル規模の追加経済対策案を発表

共和党はバイデン大統領の1兆9000億ドル規模の経済対策に反対、6180億ドルの経済対策を提案した上院の共和党10議員がバイデン大統領と話し合う予定であった。

しかし、米議会上下院の民主党指導部は2月1日、1兆9000億ドルの予算措置を提出した。

民主党は、バイデン大統領が新型コロナウイルス追加経済対策を巡り共和党上院議員と協議を行う前に、民主党だけでの法案可決を可能にする措置に踏み切った。
Chuck Schumer上院院内総務は、
「民主党は共和党上院議員の提案や意見を歓迎する」とした上で、「米国をこの緊急事態から脱出させるには規模が不十分で、範囲が狭すぎるような対策案は受け入れられない」と述べた。

予算措置を活用することで、上院で60票の賛成ではなく、財政調整措置(reconciliation)と呼ばれる手続きを通じて過半数の支持で法案を通過させることが可能になる。

トランプ時代に2018会計年度(2018年9月末まで)の予算はこの方法で成立した。

2017/10/24 米上院、下院に続き新年度の予算決議を可決

2021会計年度(2021年9月末まで)の予算は既に通常の議決で通っている。上院も92票の賛成で通った。

これまでの新型コロナウイルス感染拡大の影響に対応する数度の追加経済対策はすべて通常の議決で通っている。(途中では民主党の反対で長く棚上げになっていた。)

2020/12/23 米国の2021会計年度予算案と追加経済対策案、ようやく可決、政府機関閉鎖をぎりぎりで回避

今回の経済対策は、共和党の反対で通る可能性がないため、年度予算ではないが、例外的に予算決議案を通じて、民主党の賛成多数で通す。

野党の反対が多い議案の場合、両院で過半数を占めて初めて実施できる。民主党は上院で50票だが、副大統領の1票を含めて過半数を占める。

ーーー

通常のやり方では60票の賛成がないと予算が決まらないことになる。このため、 Congressional Budget Act of 1974 が成立した。

予算決議案

連邦歳入総額、歳出総額、財政赤字(黒字)額を示した上で、国防、農業、エネルギー等20の政策分野の歳出上限額を規定するほか、当該年度以降の複数年度の財政見通しを示すもの。大統領に送付されず法的拘束力を有するものではない。

予算決議案の審議時間が50時間に限られているためフィリバスターを回避できる。

予算決議案が成立すれば、財政調整法を審議する。

予算決議に各委員会への財政調整指示(歳入、歳出、財政赤字、公的債務上限を変更するために既存の法律を改正する指示)が含まれると、各委員会はこの指示を受けて財政調整法案を策定、策定された法案は予算委員会でまとめられ、一つの包括的な法案として議会で審議され、両院の本会議で可決、大統領の署名を経て成立。

審議時間が20時間に限られているため、上院でのフィリバスター財政調整法には適用されない。

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は2月5日、新型コロナウイルスワクチンの生産量を増やすため、生産能力に余裕がある製薬会社は他社のワクチンを作るよう呼びかけた。
既に仏 Sanofiが米 Pfizerのワクチンを生産すると決めるなど徐々に広がっているが、さらなる協力を促した。

「Sanofi と Pfizerの事例に他社もならってほしい。生産が拡大すれば、低所得国が所得の高い国にワクチンを頼る構図も解消に向かう」などと語った。

Bayer も、ワクチンを開発する独新興企業CureVac のワクチンを生産すると発表している。

ーーー

Sanofiは1月27日、ドイツのBioNTech と米Pfizerが共同開発した新型コロナウイルスワクチンを生産することで合意したと発表した。

Sanofi が BioNTech に対し、125百万回分のワクチンを生産するため設備と技術を供与する。まず、2021年夏からSanofiの独フランクフルトの工場で生産する。


SanofiはGSKと組んで新型コロナワクチンを開発しているが、問題が生じ、実用化は2021年末になる見込みである。世界中でワクチンが不足するなか、BioNTechに協力する。

SanofiとGSKは2020年4月14日、両社の技術を活かし、COVID-19に対するアジュバント添加ワクチンを開発すると発表した。

Sanofiでワクチンを担当するSanofi Pasteurは、遺伝子組換えDNA技術をベースとするS-タンパク質COVID-19抗原を提供する。
遺伝子組換えDNA技術により、ウイルスの表面に検出されたタンパク質と正確に一致する遺伝子配列を作成することができる。抗原をコード化するDNA配列を、Sanofiが米国で開発に成功し承認された遺伝子組換えインフルエンザワクチンの基盤となったバキュロウイルス発現プラットフォームに組み込む。

GSKは、実証済みのパンデミックアジュバント技術を提供する。

Developer/manufacturer Platform Type doses Timing Route
Sanofi Pasteur/GSK Protein Subunit S Protein (baculovirus production)

2

0, 21 days IM


Sanofiの遺伝子組換え技術をベースとするCOVID-19ワクチン候補の開発は、米国保健福祉省(HSS)の一部門である米国生物医学先端研究開発局(BARDA)との協力の下で、同局の資金提供を受けて実施された。

SanofiとGSKのワクチンは、米政府の爆速ワクチン計画(Operation Warp Speed)の対象に選ばれている。2020年7月31日に米政府が21億ドルを支払い、5000万人分を確保した。

しかし、SanofiとGSKは2020年12月11日、試験計画を遅らせると発表した。

第1/2相臨床試験で、18~49歳の被検者においてはCOVID-19から回復した人に匹敵する免疫応答が示されたが、高齢者において十分な免疫応答が得られなかったことから、すべての年齢層において十分な免疫応答を得るために抗原の濃度を改善する必要性が示された。

2021年2月に改善された抗原を用いて第2b相臨床試験を実施する。開発計画が成功すれば、2021年第4四半期に実用化の見込みとしている。

ーーー

Bayerも2月1日、CureVacが開発中の新型コロナウイルスワクチン生産支援に向けた契約を締結し、2022年に1億6000万回分のワクチンを製造すると発表した。

CureVacは1月7日、開発中のワクチンについて、当局の承認獲得や配布で Bayerと提携すると発表した。
Bayerは、臨床、規制対応、医薬品の安全性対策、医療情報、サプライチェーン、特定の国での支援などの分野において専門知識と確立されたインフラを提供する。
EU域内と、域外の特定市場への販売はCureVacが担当し、Bayerはこれを支援する。一方、その他の市場については、Bayerが販売権取得のオプションを付与された。

この時点では生産協力については考えていなかったが、その後、生産面で協力できないか検討してきた。

Bayer はドイツ政府との協議のなかで、ワクチンの製造能力を増やすことが必要ということが明らかになったため、協力することとなった。同社自身はワクチンの生産の経験はないが、バイオ製品の開発で多くの治験を持つ。

ーーー

フランス政府が動いた。

フランスの誇りである医薬大手 Sanofi のワクチンが年末までかかると発表され、ワクチン接種の遅れで政府への批判が高まっている。

このため、Agnès Pannier-Runacher 産業担当大臣が奔走している。業界が知的財産の秘密を共有することに強い抵抗を示したが、それを押切り、幅広いワクチン生産を進めた。

Macron大統領は2月2日、フランスの4か所で間もなくワクチン生産を始めると約束した。

3月に欧州各地に生産設備を持つCDMO(Contract manufacturing organization)大手のスウェーデンのRecipharmがModernaのワクチンを製造

4月にはSanofi とCDMO大手のDelpharmがそれぞれ、BioNTech/Pfizerのワクチンを製造

5月にCDMOのFarevaがCureVacのワクチンを製造する。

別途、フランスはロシアのワクチン Suptnik V の採用も考えている。外相はSputnikが European Medicines Agency で承認を受ければ、なんの障害もないと述べた。

英国の医学誌 Lancet に掲載された論文ではロシアでのテストで約92%の効果があったとしている。

国立ガマレヤ研究所が中心となって実施し、1万9866人の被験者が参加した後期臨床試験で、21日の間隔で2回投与した場合の有効率は91.6%に上ったほか、60歳以上の被験者2144人に対する有効率も91.8%に達し、重篤な副作用などは見られなかった。被験者のうち4人が死亡したが、いずれもワクチン投与とは無関係であった。


日本も状況はフランスと同じだが、政府の動きは鈍い。




ドイツのハノーバー獣医科大学( Hanover University of Veterinary Medicine)で新型コロナウイルスに感染しているかとうかを探知する犬の養成が行われている。

犬は鋭い嗅覚を使って感染者の細胞から発せられる「コロナ臭」を嗅ぎ分ける。人間の唾液の検体から、無症状であっても、1000件のサンプルで94%の確率で感染者を識別できるという。

症状の有無にかかわらず、犬は実際に患者を嗅ぎ分けることができる」とされる。

既にフィンランドのヘルシンキ空港、チリのサンチャゴ空港、UAEのドバイ空港で昨年から試験的に導入されている。

フィンランドの研究チームは2020年10月28日、ヘルシンキ空港で試験導入している「新型コロナウイルス探知犬」を使った即時検査について、結果は有望で、旅行客にも評判が良いとの初期報告を発表した。

到着した乗客の肌を拭いたシートを犬の前に置き、においを嗅がせる。検体が陰性ならば犬はシートの前を素通りするが、陽性ならばシートに反応するという。

検査を受ける乗客は痛い思いをすることもなく、検査結果もすぐに分かる。

3匹の探知犬は、到着ロビーに検査所が設置されてから1か月間に2200人分の検体を嗅ぎ分け、乗客の0.6%が新型コロナに感染していることを嗅ぎつけた。研究チームは、この初期結果について、鼻から採取した検体を調べるPCR検査の陽性率と大枠で合致していると述べた。

米国の男子プロバスケットボールリーグ(NBA) のMiami Heatは1月28日、数カ月ぶりにマイアミのAmerican Airline Arenaに観客をいれ、Los Angeles Clippersとの試合を行った。

観客は距離を取って並び、そこに探知犬が登場。何も異常がなければ探知犬は立ち止まらずに進むが、もしコロナウイルスに感染している可能性がある場合は、その場で立ち止まるという。
犬が立ち止まってしまった場合、その観客と同行者は入場が許可されない。

この試験導入が成功すれば、探知犬が各会場の安全確保のために本格導入される可能性がある。

ヘルシンキ空港などでの探知は乗客の肌を拭いたシートなどの検体を嗅がすものだが、今回は人間を嗅いで判断させる最初の例である。

SNIFF社のAron Shteierman が提案した。Aron Shteiermanは2020年5月にウイルス探知犬を検討している人の記事を読み、イスラエルの企業と提携して、大規模に実施する検討をおこなった。

その後、空港で犬を使って貨物検査を実施しているGlobal K9 Protection Groupと組み、今回の提案を行った。

中国の深圳康泰生物製品股分有限公司 (Shenzhen Kangtai Biological Products)は2月2日、 AstraZenecaが開発した新型コロナウイルスワクチンAZD1222を製造する施設が完成したと発表した。 目標の2倍に当たる年間4億回分のワクチン生産が可能としている。


AstraZenecaは2020年8月6日、深圳康泰生物製品との間でAstraZenecaのワクチン候補AZD1222を中国大陸で供給するための独占的枠組み契約に調印したと発表した。

中国の需要に対応するため、深圳康泰生物製品は2020年末までに試験接種のために年間1億回分の製造能力、2021年末までに最低年間2億回分の能力を確保する義務を持つ。

両社は中国以外の他の地域でも協力する可能性を検討するとしていた。

深圳康泰生物製品は主にワクチンの研究開発、製造および販売に従事する中国を拠点とする会社で、主力製品は、組換えB型肝炎ウイルス、インフルエンザ菌b型混合ワクチン、風疹麻疹弱毒生ワクチン、非細胞性白血病インフルエンザ混合ワクチン、その他の製品である。主に中国国内市場で事業を運営する。

深圳康泰生物製品は同日、「中国でのワクチンの臨床試験と登録のための手続きを積極的に進めている。製造工場が完成し試験生産を開始した」と説明した。

AstraZenecaの中国事業責任者は昨年11月、中国当局の承認は2021年半ばまでに下りる可能性があると述べている。


AstraZenecaは2月5日、日本の厚生労働省に製造販売の承認を申請した。

同社は日本への供給の1億2千万回分のうち、25%分は輸入し、75%の9千万回分を日本でJCRファーマに委託生産する。

2021/1/30 アストラゼネカ、ワクチンを日本で製造委託


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中国の薬品監督当局は2020年12月末、国産品として中国医薬集団(China National Pharmaceutical Group: Sinopharm) のコロナワクチンの一般向け使用を認めた。

Sinopharmのワクチンは、武漢(Wuhan Institute of Biological Products)のものと北京(Beijing Institute of Biological Products)のものがあるが、これは北京のものである。

新たに2021年2月6日にSinovacのワクチンが2例目として承認された。

国家衛生健康委員会は2020年12月に、Sinopharm(武漢と北京)と製薬会社Sinovacが開発する合わせて3種類のワクチンを2020年7月から、国内の医療従事者などに100万回以上、緊急投与し、「これまでのところ目立った問題は起きていない」と述べた。

2020/8/26 中国、新型コロナワクチンの緊急投与を7月に開始

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Developer/manufacturer Platform Type doses Timing Route 承認
University of Oxford/AstraZeneca Non-Replicating Viral Vector ChAdOx1-S  2   IM

UK 2020/12/30
EU 2021/1/29

Sinopharm 北京 Inactivated Inactivated  2 0,14 or
0,21 days
IM

中国 2020/12/31

Sinopharm 武漢 Inactivated Inactivated  2 0,14 or
0,21 days
IM
Sinovac Inactivated Inactivated  2 0, 14 days IM

中国 2021/2/6

CanSinoBiological Inc(康希諾生物)
/ Beijing Institute of Biotechnology
Non-Replicating Viral Vector Adenovirus Type 5 Vector  1   IM  

世界貿易機関(WTO)の事務局長選で最終選考に進んだ韓国の兪明希通商交渉本部長は2月5日、ソウルで記者会見し、選考を辞退する考えを表明した。

兪氏の辞退により、 3月のWTO一般理事会でナイジェリアのオコンジョイウェアラ元財務相が次期事務局長に選出される見通しとなった。

ーーー

Roberto Azevêdo WTO事務局長は2020年5月14日、2020年8月末で退任することを発表した。

WTOは9月18日、事務局長候補者8人のうち5人を第1次として選出した。

10月には最終選考に進む候補者をナイジェリアのヌゴジ・オコンジョイウェアラ元財務相と韓国の兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長の2人に絞った。
選考プロセスの最終段階となる第3ラウンドは10月中に始まり、11月6日まで続く。WTOはコンセンサスに基づいて決定を下すが、全会一致での指名を目指す。

    現職・前歴 1次 2次 最終
Dr Jesús Seade Kuri Mexico 男性 外務次官、WTO事務次長      
Dr Ngozi Okonjo-Iweala Nigeria 女性 財務相、外相、世銀副総裁  
Abdel-Hamid Mamdouh Egypt 男性 弁護士、WTOサービス部長      
Tudor Ulianovschi Moldova 男性 外相、WTO大使      
Yoo Myung-hee  兪明希 Korea 女性 産業通商部通商交渉本部長  
Amina C. Mohamed Kenya 女性 スポーツ・文化相、外相    
Mohammad Maziad Al-Tuwaijri Saudi Arabia 男性 王室顧問(閣僚級)    
Dr Liam Fox UK 男性 貿易相、国防相


WTO一般理事会議長は10月28日夜、兪氏に「ナイジェリアのヌゴジ・オコンジョイウェアラ氏が選好度調査で多くの得票があり、オコンジョイウェアラ氏を推戴することにした」と公式通知した。

全会一致での指名を目指すため、
事実上、兪氏に対して自主的に辞退を勧告する性格を持つ。

しかし、ナイジェリアは中国から多額の経済支援を受けており、米国は中国がWTOで発言力を強めるのを嫌い、オコンジョイウェアラ氏の就任に反対し、韓国の兪氏を支持すると表明した。

WTOは12月16~17日の一般理事会では次期事務局長選出を議題としないことを加盟国に通知し、結論は2021年に持ち越されることが確実となった。

2020/10/30 WTO次期事務局長選 内定するも米国の反対で難航

トランプ前米政権が強力に兪氏を支持(むしろ、中国との関係が深いナイジェリアのオコンジョイウェアラ氏への反対)を表明していたが、バイデン政権の発足で、韓国政府は後ろ盾を失った形となった。

兪氏は「WTOのリーダーシップの空白状態が長期化している。強固な同盟国である米国との緊密な調整と合意を経て、候補を辞退することを決めた」と説明した。

兪氏の発表を受け、米通商代表部(USTR)は、オコンジョイウェアラ元財務相を「バイデン政権が強く支持する」と表明した。

英政府は2月4日、新型コロナウイルス感染症のワクチン2種類を併用した場合、同じ種類を2回接種するよりも高い免疫を得られるかどうかなどを判断する臨床試験(治験)を始めたと発表した。

同じワクチンを2回接種する前提で開発されているが、2回目に他社品を接種しても効果に問題がないか検証する。

Pfizer(A) と AstraZeneca(B)について、A→B、B→A、A→A、B→Bの組み合わせを、4週(28日)間隔と12週間隔で接種する。
合計8種類をテストすることとなる。

目的はワクチン供給に支障が出た場合のsafety net をつくることにある。

EUは1月29日、輸出の透明性を高めるためだとして、域内の工場で生産されたワクチンを輸出する際、事前申告と許可を必要とする措置を導入すると発表した。供給面から、現在の同じワクチンの2回接種が出来ない可能性は十分にあり、このテストは必要とみられている。

1年以上かける治験だが、夏ごろには初期結果が出る見通し。

各社のワクチンの生産能力が異なるため、今後世界中でワクチンを接種する場合に、同じワクチンの2回接種がうまくいかない可能性が強い。
今回のテストが成功すれば、非常に役に立つと見られている。
貧困国・低所得国に
ワクチンの供給を行うWHO主導の「COVAX ファシリティー」も強い関心を持ち、英政府にコンタクトした。

英政府はJohnson & Johnson と Novavax とも本件で協議をしているが、ワクチンの数が増えると組み合わせは多数になり、管理できない。当面は上記の組み合わせでテストを実施する。

ーーー

2種類のワクチンの接種は他に例がある。

ロシア国産の新型コロナウイルスのワクチン「Sputnik V」を開発したGamaleya 国立疫学・微生物学研究所とAstraZenecaは2020年12月21日、ワクチン開発の協力に関する覚書を交わした。

試験 Developer/manufacturer Platform Type doses Timing Route 承認
BioNTech / Pfizer   RNA 3 LNP-mRNAs 2 0, 28days IM

UK 2020/12/2

FDA 2020/12/11

EU 2020/12/21
WHO 2020/12/31

University of Oxford/AstraZeneca Non-Replicating Viral Vector ChAdOx1-S 2   IM

UK 2020/12/30
EU 2021/1/29

Gamaleya Research Institute
(ロシア)
Non-Replicating Viral Vector Adeno-based 2 0, 21 days

 

IM

Sputnik V
ロシア 2020/8
 

今年のノーベル医学・生理学賞受賞者はmRNAワクチンの開発者のKatalin Kariko とDrew Weissmanではないかと言われている。

当初、COVID-19ワクチンの開発は1年では無理と言われていた。

しかし、米国では2020年12月に2つのワクチンが緊急使用許可を得て、接種されている。
BioNTech/Pfizerの「BNT162b2」と、Modernaの「mRNA-1273」である。

いずれもmRNAワクチンで、Katalin KarikoDrew Weissmanの研究が基になっている

Developer/manufacturer Platform Type doses Timing Route 承認
BioNTech(独)/ Pfizer   RNA 3 LNP-mRNAs 2 0, 28days IM

UK 2020/12/2
FDA 2020/12/11
EU 2020/12/21
WHO 2020/12/31

Moderna / NIAID RNA LNP-encapsulated mRNA 2 0, 28 days IM

FDA 2020/12/17
EU 2021/1/6


一般のワクチンは、ウイルスの蛋白質を体内に送り、抗体をつくる。このため、新しいウイルスの場合、手間と時間がかかる。

ウイルスベクターワクチン:ウイルスベクターに抗原たんぱく質の遺伝子を組み込む。
DNAワクチン:抗原たんぱく質の塩基配列を作る情報を持ったプラスミド(環状)DNAのワクチン
組み換えたんぱく質ワクチン:ウイルスの構成成分である抗原たんぱく質を昆虫細胞や植物、哺乳動物細胞などで作り、単離・精製
組み換えVLPワクチン:ウイルスのゲノムを含まない外殻たんぱく質のみを微生物や昆虫細胞、植物で作り、単離、精製
不活化ワクチン:ウイルス自体を培養し、ウイルスの感染性や病原性を消失させたもの

これに対し、mRNAワクチンは、抗原タンパク質を直接導入するのではなく、ウイルスのタンパク質分子の情報を運ぶ。BNT162b2やmRNA-1273はSARS-CoV-2の特徴であるスパイク部分の設計図をコピーしている。

ウイルスの細胞内では核のDNAの情報を転写し、mRNAが合成される。mRNAはタンパク質の合成場所であるリボソームに移動、そこで情報を翻訳して元のタンパク質が合成される。

mRNAワクチンでは、ウイルスのスパイク部分の設計図をもつmRNAを人体に投与し、人体のタンパク質合成機構がこの情報を使ってウイルスのスパイクタンパク質を作成、これが抗体となって、T細胞、B細胞を活性化する。 ワクチンの mRNA そのものはタンパク合成を指令したあと分解されてしまい、ワクチン由来の人工的な遺伝子は体に残らない。


このため、SARS-CoV-2の遺伝子配列さえ分かれば、 その設計図である mRNAワクチンは簡単に作成できる。

実際にBNT162b2はその構造が公表されており、世界のどこの研究室や工場でも、このワクチンを再現できるという。

AGAAΨAAAC ΨAGΨAΨΨCΨΨ ・・・


mRNAは、「アデニンA」「ウラシルU」「シトシンC」「グアニンG」という4種類の塩基からなる。この場合、ウラシルUがシュードウリジン(Ψ)に置き換えられている。(後記)

ウイルスが変異すれば、それに合わせてワクチンを簡単に改良できる。

BioNTech / Pfizer とModernaは、これまでに特定された最も懸念される変異株に対応するため、ワクチンのバージョンアップを検討している。


2019年12月31日、中国武漢で肺炎患者が44人発生したことが報告され、2020年1月5日にはWHOが未知の感染症について警告を発した。

2020年1月11日、新型コロナウイルスSARS-CoV-2の遺伝子配列が読み取られて発表され た。

ModernaがmRNAワクチンの候補数種類を設計したのはそのたった2日後の1月13日とされる(異論もある)。その中には承認されたmRNA-1273が含まれている。

コロナウイルスの拡大を懸念したBioNTechのUğur Şahin CEOは、2020年1月に「倫理的な責任」としてワクチン開発に着手すべきと判断、自らいくつかのワクチン候補を設計したという。

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Katalin Karikoはハンガリー出身で、セゲド大学在学中からRNA研究に取り組んだ。主要研究はRNAの免疫原性を抑制するヌクレオシド修飾プロセスの発見で、mRNA研究の臨床応用への道を開いた。

1985年に夫と娘と共に渡米し、ペンシルベニア州のテンプル大学でポスドク研究員として働き始めた。しかし、テンプル大学の上司が国外退去させようとしたため、4年間務めた同学を辞職してペンシルベニア大学に籍を移した。

mRNAの抗ウイルス応答が癌ワクチンの腫瘍予防に有効であることが分かったが、応募を重ねても研究助成金がまったく得られず、大学では降格された。

"Every night I was working: grant, grant, grant," Karikó remembered, referring to her efforts to obtain funding. "And it came back always no, no, no."

そのなかで学内で免疫学者のDrew Weissmanと知り合い、共同研究から生まれたのが上記の論文である。

Dr. Weissman は現在、University of PennsylvaniaのPerelman School of Medicine の教授。

mRNAはDNAの遺伝情報をたんぱく質に翻訳する橋渡しの分子である。DNAの情報は転写プロセスでmRNAに写し取られ、mRNAは細胞核から細胞質に移動し、リボソームがmRNAをタンパク質に翻訳する。このタンパク質が細胞や組織で各種の役割を担う。

Katalin KarikoはmRNAを直接、体に投与し、治療やワクチンに必要なたんぱく質を細胞に作らせることを狙った。

問題は注射すると身体の免疫系が異物と認識し、炎症反応を引き起こす。

mRNAは、「アデニンA」「ウラシルU」「シトシンC」「グアニンG」という4種類の塩基からなる。その一つ が問題であることが分かり、それをわずかに細工すること(RNA修飾)で免疫系をすり抜け、炎症を回避し、細胞にたんぱく質を作らせる手法 を考えた。

The stumbling block, as Karikó's many grant rejections pointed out, was that injecting synthetic mRNA typically led to that vexing immune response; the body sensed a chemical intruder, and went to war. The solution, Karikó and Weissman discovered, was the biological equivalent of swapping out a tire.

Every strand of mRNA is made up of four molecular building blocks called nucleosides. But in its altered, synthetic form, one of those building blocks, like a misaligned wheel on a car, was throwing everything off by signaling the immune system. So Karikó and Weissman simply subbed it out for a slightly tweaked version, creating a hybrid mRNA that could sneak its way into cells without alerting the body's defenses.

ウラシルから誘導されるヌクレオシドはウリジンであるが、ウリジンをシュードウリジン(Ψ)などに置き換えると、mRNAの二次構造が変化し、効果的な翻訳を可能にしながら、自然免疫系による認識を低下させる 。

mRNAワクチンはこの発明により可能となった。

2005年、ハーバード大学の幹細胞生物学者のDerrick Rossiは、彼らの論文は「根底をくつがえす」ものだとしてノーベル化学賞に匹敵すると述べた。彼は2010年にワクチン開発の可能性を見出してmRNAに焦点を当てたバイオテクノロジー企業Modernaを設立した。

付記 Karikoは次のように述べている。(2021/3/14 毎日新聞オンライン)

幹細胞生物学者のDerrick Rossi当時、山中伸弥教授が発見したiPS細胞を作ろうとする過程で、mRNAを活用しようと考えていた。ところがmRNAを入れた細胞は死に、うまくいかなかった。
さまざまな方法を探る中で私たちの論文に行き着き、実際に私たちが発表した方法に基づいて修飾したmRNAを使えばiPS細胞が樹立できたのです。
もし山中教授がいなければ、もしiPS細胞の発見がなければ、私たちの論文が「発見」されることはなかったかもしれません。

KarikoとWeissman の研究技術のライセンスを受けたBioNTech はmRNAワクチンなどの開発に焦点を絞り取り組んだ。

BioNTechは2008年に、トルコ系ドイツ人の科学者であるUğur Şahinと彼の妻である Özlem Türeciオーストリアの腫瘍学者のChristoph Huberによってドイツで設立された。

2013年にKarikoがBioNTechのSenior Vice President に就任した。

個別化されたがん免疫療法、感染症に対するワクチン、希少疾患のタンパク質補充療法に使われるメッセンジャーRNAをベースとした医薬品候補を開発しているほか、癌の治療オプションとしての細胞療法、新規の抗体、低分子免疫調節剤を開発している。mRNAをベースとした静脈内へ投与するためのヒト向け治療法を開発した。

BioNTechはmRNA技術を使ってがん治療薬を開発していたが、2020年1月に「倫理的な責任」としてワクチン開発に着手すべきと判断した。

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2021年1月30日の毎日新聞で青野由利 専門編集委員が「カタリンの物語」を書いている。

カリコさんはなぜ、mRNA医薬に興味と確信を持ち続けてきたのか。メールでたずねてみた。

「80年代の終わりから焦点があてられた遺伝子治療の目的はDNAを細胞に送り込み永続的に働かせること。でも、多くの病気は遺伝性ではなく、治療は一時的であるべきで、mRNAを使う方が合理的だと思ったのです」。

mRNAは迅速に作ることができ、改良を重ねられたことも利点らしい。

ワクチンの mRNA そのものはタンパク合成を指令したあと分解されてしまい、ワクチン由来の人工的な遺伝子は体に残らない。

バイデン大統領は1月28日、新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、国民に医療保険の加入を促す大統領令に署名した。


ObamaCareと Medicaid をトランプが大統領になる前の状態に戻す。トランプ前大統領は、これらの資格のある人に近づきにくく、より高価に、より難しくしたとし、「トランプ氏が与えた損害を元に戻す (to undo the damage Trump has done)」と述べた。

また、米国と世界の女性と少女の性と生殖に関する健康と権利を支援に関する大統領令を出した。

1. 医療保険

Executive Order on Strengthening Medicaid and the Affordable Care Act

FACT SHEET: President Biden to Sign Executive Orders Strengthening Americans' Access to Quality, Affordable Health Care

2010年3月に医療保険改革法 Affordable Care Act(通称 ObamaCare、正式にはPatient Protection and Affordable Care Act )が成立した。
中・低所得者層に対する政府の補助を拡大し、保険会社が持病を理由に加入を拒否できないよう規制を強化した。

その後の10年間で、新たに2000万人が保険に加入できるようになり、重要な消費者保護を1億人以上に拡大し、国の医療制度を強化および改善した。

しかしながら、本来対象となるべき何百万人もの人々は無保険のままであり、保険給付の取得は必要以上に困難な状態である。
トランプ前大統領は ObamaCareに強く反対し、医療保険に加入するための要件を厳しくするなどした。

このため、MedicaidとAffordable Care Act を守り、強化し、すべてのアメリカ人が高品質の医療を利用しやすく、かつ、手頃な価格にすることが政権の方針であるとする。

コロナ渦のなか、30百万人以上(特に黒人、ラテン系など)が保険に入っていない状況に鑑み、特別加入期間を設定し、国のFederally Facilitated Marketplaceを通して加入させる。

関連省庁の規定、ルールその他をチェックし、不都合があれば改善する。
運営するウェブサイトを再開したり、低所得者向けの公的医療保険 Medicaidへの加入要件を緩和する。

トランプ時代の大統領令で不都合なものを取り消す。

2017/1/20 Minimizing the Economic Burden of the Patient Protection and Affordable Care Act Pending Repeal
2017/10/12 Promoting Healthcare Choice and Competition Across the United States


2.女性と少女の性と生殖に関する健康と権利 

Memorandum on Protecting Women's Health at Home and Abroad

2017年1月23日、トランプ米大統領はいわゆる「メキシコ市政策(Mexico City Policy)」に関する大統領令を出した。共和党選出の前職大統領達が1984年以降採択してきた政策を復活させ、更に拡大させるもので、人工妊娠中絶について米国外で助言や医療機関の紹介を行う国際的な非営利団体(NPO)に米政府が資金援助することを禁じるもの。

1984年にRonald Reagan 大統領が採択したが、同年に人口問題・持続的経済成長・持続可能な開発をテーマとする国連主催の国際人口開発会議がメキシコ市で開催されたので、この名を採った。

バイデン大統領は、この「メキシコ市政策」を撤回する文書に署名した。 「米国と世界の女性と少女の性と生殖に関する健康と権利を支援するのが、わが政権の政策だ」と記されている。

It is the policy of my Administration to support women's and girls' sexual and reproductive health and rights in the United States, as well as globally.

また、中絶に関する援助を規制すれば「女性の健康や、性別に基づく暴力の予防・被害者救済プログラムに対する政府の支援の幅が狭まり、世界で男女平等を推進する米国の取り組みが台無しになる」と指摘している。

署名したのは、毎年恒例の妊娠中絶反対デモ「March for Life(命のための行進)」が行われる前日。

民主党の支持者らの多くは、中絶の権利を支持しているが、バイデン氏は敬虔なカトリック教徒で、これまで中絶問題には慎重な姿勢を取り、中絶という言葉にもめったに言及してこなかった。

中絶は米国の世論を二分する問題で、大統領就任からわずか数日で政治的な反発が広がる恐れもある。

 

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