JETROの最新レポートに「欧州企業の中国戦略 2006年5月」がある。
多くの欧州企業が中国に進出し、地歩を築いている。JETROでは、中国に進出する日本企業にとっての参考とすべく、先行事例である欧州企業の中国における事業展開について、(1)中国事業の位置づけと規模、(2)中国における販売・マーケティング、(3)中国におけるR&D、(4)人材育成(現地化)戦略、(5)知的財産権など経営上の問題についての対処、などについての調査を実施した。
調査対象企業は、電気・電子、消費財、化学・医薬品、金融・保険、物流・流通などの分野の主要欧州企業12社である。
詳細はレポート参照 http://www.jetro.go.jp/mail/u/l?p=YyktIcDBqxIZ
化学・医薬品ではアクゾ・ノーベルとBASFの報告が載っている。
これを元に、BASFの中国戦略をまとめた。
BASFの2004年の売上全体に占めるアジア・太平洋地域(アフリカ含む)の比率は約16.8%(63億2千万ユーロ)だが、中国を牽引力とするこの地域の経済成長を基盤として、同社では2010年までに化学事業全体の売上及び営業利益に占める同地域のシェア20%達成を目指している。2004年の同地域への投資額は5億6300万ユーロで、全体の27.6%を占める。
BASFは事業戦略上、中国市場を香港、台湾も含めたグレーター中国として捉えている。
主力事業はポリマー分散、スチレン、ポリスチレン、ポリウレタン、エンジニアリング用プラスチック、コーティング剤、織物・皮革仕上げ剤、中間体、ビタミン、農薬などである。完全子会社14社、合弁会社9社を持ち、従業員数は4,000人を超える。
1996年以来、売上高は年率平均20%以上で伸び、2004年の売上高は約19億ユーロであった。
BASFは2010年までの達成を目指した中国戦略目標を次ぎの通りとしている。
・全社化学事業における中国シェアを10%に拡大
(アジア・太平洋地域のシェア20%)
・主力製品市場で上位を確保
・現地売上高に占める現地生産シェア70%を達成
・業界で最高の企業チームを作る
同社は中国が今後数年間は基礎化学製品中心の市場にとどまるが、特殊化学製品の市場としても迅速に発展すると予測、特殊化学製品の生産能力拡大を進めている。また急拡大する需要に対応するため、南京化学コンビナートの拡充に投資する計画。
同社のグレーター中国における主な子会社、合弁会社は以下の通り。
完全子会社
・BASF Auxiliary Chemicals Co. Ltd. (BACC)
1994年JVとして設立、2000年完全子会社化
産業用コーティング、プラスチック、染料、印刷用インク、皮革・織物用助剤に使われる染料、
織物・皮革用助剤、アクリル系分散剤、共重合体を生産。
・BASF Chemicals Co. Ltd. (BACH)
2002年設立
上海の化学産業パークにポリテトラヒドロフラン(Poly THF)とテトラヒドロフラン(THF)の統合生産施設として設立。
年間生産量はPoly THFが6万トン、THFが8万トン。2005年操業開始。
・BASF Polyurethanes (China) Co. Ltd. (BAPC)
1998年設立
南沙(広東省)にポリウレタンの生産拠点として設立。年間生産能カは3万トン。
・BASF Polyurethanes(Taiwan) Co. Ltd. (BAPT)
1988年設立
Hsinchu(台湾)にポリウレタン生産拠点として設立。年間生産能カは1万1千トン。
合弁会社
・BASF-YPC Co. Ltd.
2000年設立
SINOPECとの合弁会社(出資比率 50/50)
2001年9月末、南京のコンビナート建設に着工、2005年6月稼動開始。総投資額は29億ドル。
エチレン 600千トン、EG 300千トン、LDPE 400千トン、アクリル酸 160千トンほか
・上海イソシアネートコンプレックス
上海化学産業パークにイソシアネートの統合生産拠点として設立。
①Shanghai Lianheng Isocyanate Co., Ltd.
BASF、ハンツマン、上海クロールアルカリ、上海華誼公司、SINOPEC上海高橋石化のJV
アニリン 160千トン、ニトロベンゼン 240千トン、MDI 240千トン
②Shanghai BASF Polyurethane Co., Ltd.
BASF、上海華誼公司、SINOPEC上海高橋石化のJV
硝酸 245千トン、DNT 150千トン、TDI 160千トン
(③Huntsman Polyurethanes Shanghai Ltd. )
ハンツマンと上海クロールアルカリのJV
MDI精製
・Yangzi-BASF Styrenics Co. Ltd. (YBS)
1994年設立、BASF-YPCに隣接
揚子石油化工(YP)との合弁(BASF60%/YP40%)
SM、PS、EPS
・Shanghai Gaoquiao BASF Dispersions Co., Ltd. (SGBD)
1988年設立
上海高橋石化公司との合弁(50/50)
コーティング加工紙やカーペット用のスチレンブタジェン分散剤を生産
2005年初に増設し、21万トン
・BASF Shanghai Coatings Co. Ltd. (BSC)
1995年設立
Shanghai Coatings Co.Ltd.との合弁(BASF 60%)
主として自動車装備に使われるコーティング剤の生産
年間生産能カは17千トン
・BASF JCIC Neopentylglycol Co. Ltd. (BJNC)
1995年設立、立地:吉林
Jilin Chemical Inustry Ltd.との合弁(BASF60%)
パウダーコーティング剤、不飽和ポリエステル、可塑剤、薬品の原料Neopentylglycolの生産
・BASF Vitamins Co., Ltd. (BVC)
1995年設立、立地:瀋陽
東北制薬集団有限責任公司との合弁(BASFシェア 2002年に70%から98%にアップ)
各種ビタミン、ビタミン混合、非ビタミン飼料添加物、基礎混合物を生産
・BASF Tai Ching Crop Protection Chemicals Corp. (BTCC)
2002年設立
台湾糖業公司との合弁(BASF 55/TSC 45)
農薬の生産
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なお、同じくJETROの5月のレポートに「米国企業の対中国経営戦略 ~日系企業の飛躍に向けて~ 2006年5月」がある。
JETROは、米国、中国、日本でのインタビューや文献調査などを通じ、米国企業の中国拠点運営を検証した。調査項目としては、人事制度(求人市場・求人広告の状況、トップマネジメント・シニアマネジメント・新卒者の採用・登用、中国人帰国者・香港・台湾出身者の採用・登用、報酬、インセンティブ制度、離職率など)、販売・マーケティング戦略(製品開発、マーケティング・広告・PRなど)、流通経路、R&D(実施状況、人事政策など)を取り上げた。また、インテル、モトローラ、マイクロソフトなどのケースを紹介、モンタビスタ、パームソース、エデルマン、そのほか、自動車・部品企業、建材企業、食品企業といった米国企業や中国のメディア研究者などへのインタビューも併せて掲載した。(化学品のケーススタディはない)
詳細は以下を参照 http://www.jetro.go.jp/mail/u/l?p=5LOwaDnH_V4Z
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