2006年7月アーカイブ

台湾資本のDragon Group(騰龍グループ、中国語読みでTenglong)は福建省廈門の海滄投資区で輸入PXによるPTA、PETレジン、繊維の生産を行っているが、このたび大規模芳香族生産計画の最終承認を取得した。

13.5億米ドルを投じて、ベンゼン 228千トン、パラキシレン 800千トン、オルソキシレン228千トン製造設備及び発電所、桟橋、タンク、水処理設備その他を建設する。
(投資額が大きすぎるので情報源に再確認したが、事実とのこと)

子会社Dragon Aromatics (Xiamen) Co.(Tenglong Aromatics in Chinese)が担当する。2009年初めにスタートさせる予定で、原料のナフサと減圧軽油(vacuum gas oil )は輸入する。製品PXは隣接のPTAプラント(Xiang Lu Petrochemical翔鷺石油化学が担当)に供給される。

廈門の海滄投資区はアモイ島対岸にある国務院に認可された大型投資区で、計画上の開発面積は100平方キロメートルある。

Dragon Groupでは2003年に子会社Xiang Lu PetrochemicalPTA第一期450千トンをスタート、その後2005年までに120万トンまで増設、更にでボトルネッキングで現在能力を150万トンとしている。これまで原料PXは日本や韓国から輸入していた。
同社では更に120-150万トンの増設を検討している。

今回原料プラントの建設が承認されたため、PTA増設が承認されるのは確実とみられている。増設が完成すると能力は300万トン程度となり、1拠点では最大級となる。
(今回のBP
珠海ケミカルの増設で増設後の能力は140万トン、BPベルギーもデボトルネッキング後が140万トン、三菱化学の寧波三菱化学は60万トン、三井化学が申請中の三井化学(張家港)も60万トン)

PETレジンについては子会社 Dragon Special Resin Company Tenglong Special Resin in Chinese)がPET ボトルグレードchips 158,400トン PET 産業用グレード or ボトルグレードchips 39, 600トンの能力をもつ。

更に繊維については Xiang Lu Chemical Fibre Companyが担当している。

今回の計画が完成すると廈門の海滄投資区で原料PXからPTA、PETレジン、繊維までの一貫生産体制が完成する。

 

なお、Dragon Group は江蘇省の大手PETメーカー三房巷(Sanfangxiang)グループとの50/50のJV 海倫化学(Hailun Chemical) を設立し、江蘇省江陰で、60万トンPTAプラントの建設を行っている。


2006年6月のナフサの平均輸入価格が48,106円/kl となった。この結果、2Qの平均価格は46,800円/kl となり、これに諸掛(金融費用、備蓄費、税負担等)2,000円/klを加えた国産ナフサ基準価格は48,800円/klとなった。

Naphthagraph これは第二次石油危機後半の1983年4Qの48,900円/kl に次ぐものである。

なお、2006/7/17 「原油、ナフサ価格 急上昇」参照 

 

国産ナフサ基準価格は今では単なる参考価格に過ぎない。

この方式(「四半期ごとのナフサ平均輸入価格+諸掛」)は1982年7月から、石油精製と石油化学の間の「ナフサ戦争」解決のために導入されたものである。

第一次石油危機でナフサ価格は大幅に上昇した。ナフサ価格は石油精製側と石油化学側のチャンピオン交渉で決められていたが、石油化学側は石油業法によりナフサの自主輸入の道を封じられおり(ナフサなど石油類の輸入は石油精製会社しかできなかった)、 交渉力は弱く、ナフサ価格は段階的に上げられた。
日本の国産ナフサ価格は輸入ナフサ価格よりかなり高かった。それに対して米国の石化業界は原料がエタンのため影響が少なく、欧州もナフサが中心ではあったが、市場メカニズムで価格が決まるため、日本の原料価格が最も高いという状況が続いた。石化業界の不満は強く、「第一次ナフサ戦争」、「第二次ナフサ戦争」と呼ばれる抗争状況が続いた。

1982年2月、化学系石油化学メーカー7社の首脳が揃って通商産業省を訪問し、
 ①ナフサ輸入権の獲得など輸入に関する石油政策上の制約の撤廃(ナフサ輸入権の獲得)
 ②輸入ナフサに係る石油税免税措置の延長
 ③国産ナフサの石油税の石化業界への還付
 ④適正な石油価格体系の確立
 ⑤原料ナフサ備蓄義務の撤廃
の5項目を陳情し、石油化学各社が石油業法第12条の規定に基づく輸入業の届出をする用意がある旨を正式に表明した。

これに対して通産省は同年4月、産構審化学工業部会会長、石油審議会会長両氏による「石油化学原料用ナフサ対策に関する提言」を受け、「石油化学原料用ナフサ対策について」を省議決定した。その概要は以下のとおりであった。

国産ナフサの供給:石油企業と石油化学企業とは各年度に先立ち、四半期ごとの国産ナフサの供給・引取量を協議決定し、通商産業省に届け出る。
ナフサの輸入体制:合意した国産ナフサ量を超えて石油化学企業が必要とするナフサは、PEFIC(「石化原料共同輸入株式会社」:化学系センター7社のナフサ共同輸入会社)が石油企業と代理商契約を締結したうえで、同社を経由して実質的に自由に輸入できる。
国産ナフサの価格:個別企業間の国産ナフサ価格は、標準的には各四半期ごとの全国の平均輸入ナフサCIF価格に諸掛かり(金融費用、備蓄費、税負担等)を加えたものを基準とする。
国産ナフサの石油税負担は、1983年度以降実質的に現行輸入ナフサ(免税)と同様の扱いとする。
輸入ナフサの備蓄義務:1982年度分は70日に据え置き、以後は別途協議検討する。
フォローアップ体制等:通商産業省内に連絡会議を設けて、本措置の実施のフォローアップと調整を行う。

この結果、ナフサの輸入完全自由化には至らなかったが、国産ナフサ価格は国際市況を反映した輸入価格に連動して決定されることとなった。

1982年7月からこの方式が採用され、当初の「諸掛」は2,900円/klとなった。その後、1983年4月以降、国産ナフサの石油税が免税となって石化業界に還付され、諸掛は2,000円/klとなった。

これ以降、「参考価格」として「輸入価格平均+2,000円/kl」の計算が継続されている。

政府は21日、京都議定書で約束した温室効果ガスの削減目標を達成するため、民間企業が途上国で得た排出権の買い取りを始める。
排出権については 2006/7/7 「温室効果ガス排出権取引」参照

2005年2月に京都議定書が発効し、我国は2008年~2012年の第一約束期間において90年比で6%の温室効果ガスの排出量を削減することとなった。しかし、国内温室効果ガスの排出削減対策及び国内吸収源対策を基本として最大限努力しても、なお京都議定書の約束達成に対し基準年総排出量比1.6%の不足が見込まれるため、この差分について京都メカニズムの活用により対応するもの。

2006年度の購入費は54億円でNEDOに委託して売り手を募集する。

 

Ondankaco22_1 地球温暖化対策推進本部による「京都議定書目標達成計画の進捗状況」は添付図の通りで、

 京都議定書削減約束は90年比 ▲6.0%
 2004年度排出量実績 90年比 +8.0% (差引 14.0%不足) 
 2010年予想 現行対策のみでは 90年比 +6.0% (差引 12.0%不足)

 追加対策
  国内排出量の削減(民間事業者等による対応)で ▲6.5%
  森林吸収源  ▲3.9%
  残り 
京都メカニズム利用 ▲1.6%
  合計 ▲12.0%

 http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=8254&hou_id=7303

なお、森林吸収源については、林野庁の算定では二酸化炭素を国内の森林などが吸収する量は年間 9500万トンに上る。
これは1990年の温暖化ガス排出量の7.5%にあたるが、整備された森林分しか削減量として認められず、林野庁では、今のままでは、目標の3.9%を下回る2.6%程度しか確保できないとみている。

 

この計画に対して、排出権価格の先高感から目標達成は難しいとの見方が強い。政府が最初から所定の年数に一定量を売るよう確約を求めていること、為替リスクを避けるため円建てしか受け付けないことなども障害になる。

安井至先生の「市民のための環境学ガイド」では
「まったくの無駄。これをやっても、免罪符という紙切れを高いお金で買うだけ」
「支払うつもりの排出権代は、高度な省エネ技術の開発に使用すべき」としている。

Nova ChemicalsのCEOが「米国のスチレン業界は設備を廃棄し、統合を検討し、赤字垂れ流しを止めるために動き出す必要がある」と述べたと伝えられた。

Novaは本年1月にバージニア州のチェサピーク工場を閉鎖すると発表した。同工場には136千トンのPSと77千トンのコンパウンド設備がある。

同社は6月26日にStyrenix事業部を別会社にすると発表した。同事業部はSMとPS事業で、テキサスとカナダのオンタリオにあるSM事業、米国とカナダのPS事業、及び2005年に欧州のPS事業を出してBPとの50/50JVとして設立したNOVA Innovene(その後、JV相手はBP→Innovene→Ineos)の持分を含んでいる。

Novaは事業を「エチレン & PE」、「発泡PS & 機能製品」、及び「Styrenix」の3つに区分しているが、Styrenixはコア事業ではなく、前2者に注力するとしている。将来、売却するか、スピンオフすると見られている。

Novaが7月20日に発表した第2四半期の決算では、前2者が147百万ドルの利益を計上したのに対し、Styrenixは売上高510百万ドルに対して45百万ドルの赤字となった。

上記チェサピーク工場の閉鎖で125人の減員で年間15百万ドルの節減を図るが、これ以外に老年層を中心に250人を減員し、合計65百万ドルの合理化を考えている。このうち、45百万ドルがStyrenix部門からとなる。

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NOVA Innovene(NovaとIneosのJV)は25日、英国Carrington工場を閉鎖すると発表した。欧州のPS能力の6%に相当する。
発表で同社は、「
PS事業では膨大な過剰能力があり、原料の不安定性と相まって、PS事業を不採算としている。今回の決定で、過剰能力に対処し、コスト構造を改善したい」としている。
同工場は能力18万トン。以前はシェルの工場で、PSとEPSを製造していたが、EPSプラントは3年間休止した後、昨年閉鎖した。

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Nova Chemicalsのエチレン、PEのプラントは全てカナダにある。"Alberta advantage" と呼ばれる低コストの天然ガスを原料としている。

機能製品にはPS70%/PE 30%の発泡樹脂Arcel、スチレン-無水マレイン酸共重合体の熱可塑性樹脂 Dylark、マイクロウエーブ用食品包装のスチレンコポリマーDYLARK FG、機能性フィルム用樹脂Surpass、アクリルコポリマーZylar EX などがある。

Novaは先日、中国のJVでのArcelのプラントが生産を開始したと発表した。
寧波市に設立したNingbo Chang-Qiao Engineering Plastics Co., Ltd.が世界最大の発泡ポリスチレンメーカーである中国のLoyal Chemical Industrial Corporationと提携して製造する。

Novaはまた20日、米国のWorthington Industries グループの金属フレームのメーカー Dietrich Metal Framing と50/50JVを設立し、建材事業を始めると発表した。DietrichのフレームとNovaの発泡PSを組み合わせ、住宅及び商業用に耐久性のある省エネルギーの建材を供給する。

BPは韓国のPTA合弁会社Samsung Petrochemical(SPC)の持分を売却することに決めたと発表した。

SPC は1974年に三星が50%、旧Amoco(のち、BPが買収)が35%、三井石油化学が15%の出資で設立された。その後三井化学が離脱し、現在の出資比率は BPが47.41%、三星が47.41%、Shinsegaeが5.18%となっている。
蔚山のSKコンプレックスにPTA 1,100千トン、大山の三星Total コンプレックスに700千トン、合計1,800千トンの能力を持っている。
(大山のプラントは当初、三星綜合化学の40万トン設備をSPCに移管し、その後SPCで増設したもの)

BPは、BPと三星との間でSPCの将来戦略に関して意見の相違が出たため、BPとしては適当な価格で株式を売却できれば、SPCにとっても、株主にとってもベストであるとしている。
BPは明らかにしていないが、同社にとりPTAはコア事業であり、おそらくBPの世界戦略の下でのSPCの運営を希望し、三星グループの意向と食い違ったのではないかと思われる。

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BPは当初、エチレン、アクリロニトリル、HDPE、PP、PTA、パラキシレン、酢酸の7つの事業を化学事業の中でのコア事業としていた。このうち、前4事業をスコットランドとフランスの石油精製とともにInnoveneとして分離、その後、Ineos に売却した。

PTAとその原料であるパラキシレン、酢酸は、その後もBPのコア事業である。BPでは世界のPTA能力の31%(自社枠のみで21%)を占め、アジア、北南米、欧州で21プラント、総能力900万トン以上をもつとしている。

欧州の拠点はベルギーのGeelで、BPは2006年4月に、デボトルネッキングにより35万トンの増設を行い、総能力を140万トンにすると発表した。なお、同地では2005年に技術改良によりパラキシレンの能力を30%アップし、56万トンにしている。

アジアでは韓国のほか、台湾、マレーシア、インドネシア、中国に拠点を持つ。
 
台湾ではChina American Petrochemical Company (CAPCO)の59.02%を所有している。1975年にアモコ(50%)、CPC(25%)、Central Investment Holding Company(CIHC:25%)のJVとして設立されたもので、CIHCから9.02%を譲り受けた。高雄に140万トン、台中に70万トンの6系列合計210万トンの能力をを持つ。

マレーシアのKuantanではBP100%でPTA 60万トンのプラントを持っている。

インドネシアではBP50%、三井化学45%、三井物産5%のJV、P.T. Amoco Mitsui PTA Indonesia が西ジャワのメラクで45万トンのプラントを持っている。

中国ではBP 85%/富華集団 15%のJV・BP珠海ケミカルが広東省珠海で35万トンプラントをもっている。同社はこのたび、90万トンの第二期計画に着工した。BPでは2007年末の第二期完成時には珠海での総能力は140万トンになるとしている。
原料の酢酸はSinopecとBPの二つのJVから供給を受ける。「揚子アセチル社」(Yaraco)は重慶に35万トンの酢酸プラントを持ち、「BP YPCアセチル社」は南京に50万トンプラントを建設中である。もう一つの原料パラキシレンはSinopecの茂名石化が広東省茂名で建設中の60万トンのPXプラントから供給を受ける。

BPは酢酸事業でのSinopecとのJVを重視しており、中国でのエチレンJV、Shanghai Secco Petrochemical(BP50%、Sinopec30%、Sinopec上海sekka20%)は当初、他のオレフィン、ポリオレフィン事業とともにInnoveneに分離する予定であったが、BPの事業として残している。

米国には2つのプラントを持つ。Cooper River plant は南キャロライナ州チャールストン近郊にあり、127万トンの能力を持つ。
Decatur plant はアラバマ州にあり、PTAのほかパラキシレンを生産、このほか世界で唯一ナフタレン・ジカルボン酸を商業生産する。

ブラジルではBP49%/ Rhodia-Ster/M&G 51% のJV、Rhodiaco Ind俍trias Qu匇icas in Paul匤ia がサンパウロに南米唯一のPTAプラント(25万トン)を持っている。
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なお、BPでは韓国で30年以上活動し、成功しており、今後も他の事業は続けるとしている。

BPの韓国の事業は以下のものがある。
・Samsung BP Chemicals  
  三星/BPのJVで蔚山に酢酸45万トンプラントを持つ。
・Asian Acetyls  
  BP 34%/Samsung 33%/Dow 33%のJVで、当初、Samsung BPとUnion CarbideのJVとして設立された。
  蔚山で酢酸を原料に酢ビモノマーを生産。
・K-Power 
  SK65%/BP35%のJVで発電事業を行っている。
・潤滑油事業 
・造船事業

独占禁止法基本問題検討室(内閣府大臣官房)は7月21日、「独占禁止法における違反抑止制度の在り方等に関する論点整理」を発表した。

本年1月に改正独禁法が施行されたが、改正法附則において、「政府は、この法律の施行後2年以内に、新法の施行の状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、課徴金に係る制度の在り方、違反行為を排除するために必要な措置を命ずるための手続の在り方、審判手続の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」とある。

このため、内閣官房長官の私的懇談会として「独占禁止法基本問題懇談会」がつくられ、これまでに、有識者等からのヒアリングを含め、15回の会合が重ねられてきたが、これまでの懇談会における議論を踏まえた「論点整理」を公表したもので、広く各層の意見を求めるとしている。

詳細は以下参照
http://www8.cao.go.jp/chosei/dokkin/kaisaijokyo/publiccomment/publiccomment.pdf

 

なお、これには「資料編」がついており、日本の独禁法の詳細や、欧米諸国の実情が分かり易く記載されている。

 資料 1 独占禁止法違反行為の類型ごとに採られ得る独占禁止法上の執行手段の比較

 資料 2 独占禁止法違反行為(カルテル等)に対する措置等の概要

 資料 3 独占禁止法違反行為に関連してとられ得る措置等の性質、措置(請求)主体等

 資料 4 独占禁止法の課徴金について

 資料 5 課徴金減免制度について

 資料 6 主要国におけるカルテル行為に対する制裁金等

 資料 7 独占禁止法における手続の流れ

 資料 8 行政法審判官制度の概要

 資料 9 主要国における違反抑止制度の概要(一般)

 資料 10 主要国における違反抑止制度(競争法)

 資料 11 不公正な取引方法相当規制(廉売規制、優越的地位濫用規制及び再販売価格拘束規制)の概要

Haifa イスラエル北部でイスラエル軍とヒズボラの戦闘が激しくなっているが、イスラエル北部のハイファ(添付地図)にあるイスラエル唯一のエチレン・ポリオレフィンメーカーのCarmel Olefins が操業を停止した。プラントはヒズボラのカチューシャロケット攻撃を受けているハイファの湾岸地区にある。

操業停止命令はイスラエル軍の民間防衛軍から出された。防衛軍はまた、同社などに在庫を最低限にするよう指示している。

Carmel Olefins 1991年に、イスラエル政府が出資する石油精製会社 Oil Refineries Ltd.の所有するエチレン設備と、Israel Petrochemical Enterprises Ltd.(IPE)のポリエチレン設備を統合して両社の50/50JVとして設立された。IPEは持株会社となった。

同社の現在の能力は、エチレン 185千トン、LDPE 165千トン、PP 205千トンで、他にコンパウンドを生産している。

2004年に同社と両株主とは同社の250百万ドルの増強計画を承認した。
内容は以下の通り。
・クラッカー増強によりエチレン能力を240千トンにアップ
・新しく
Olefins Conversion Unit を設置し、プロピレン150千トンを生産
・PPを1系列新設し、能力を倍増

 

なお、イスラエルには他に石化関係で次ぎの会社がある。

Dor Chemicals
 石油化学事業部ではメタノール、MTBE、フォルムアルデヒドその他を生産
 子会社
The Treofan Group OPPフィルム,CPPフィルムなどを生産
   Dor 51%/Bain Capital 49% のJVで、ドイツに本拠を置き、世界20カ国以上に拠点

Electrochemical Industries (1952) Ltd
 電解、EDC、VCM、PVCの一貫製造会社
 2005年1月にイスラエル環境省が環境問題でPVCを無期限停止とした。(その後不明)

Gadiv Petrochemical Industries Ltd.
 Oil Refineries Ltd. の100%子会社で、芳香族、脂肪族の溶剤、無水フタル酸、その他を生産

韓国と米国の自由貿易協定第2回交渉は10日からソウルで開催されたが、米国が11日、医薬品・医療機器分野の会議を中断した後、他の分科会にも出席せず、最終日の会議も取りやめとなった。次回は9月に米国で開催される。

問題となったのは6月3日に韓国の保健福祉部が発表した「健康保険薬剤費適正化推進案」で、効能が認定された新薬でも価格対比効果が優れた医薬品にのみ保険を適用する方式を早ければ9月から導入するという内容である。韓国政府は医薬品を適切な価格で低所得層に供給できるよう、医薬品の価格引き下げを図っている。

これに対して米国の医薬業界では、この案が導入されれば、米国の主な輸出品である『高価な革新新薬』は保険リストに載らず、差別を受けることとなり、患者が世界で最も進んだ医薬品のほとんどを使えないこととなると反対している。

米国側は、FTA交渉開始前に同案が発表されたことについて不満を示し、「どんな改革も透明かつ公正でなければならない」として、交渉を打ち切った。

報道によると、韓国政府はFTA交渉に先立ち「四大先決条件」を受け入れていたとされる。
四大先決条件とは、薬価政策の現行維持、スクリーンクォータ(韓国映画の義務上映制度)の縮小、牛肉の輸入開放、自動車排ガス基準の緩和で、米国側は、韓国が「健康保険薬剤費適正化推進案」を進めるのは交渉義務違反とみなした。

韓国政府はその後も、「薬剤費適正化方案は30年ぶりに実施される大々的な改革で、断固と推進する」としている。




このほか、韓国と米国の間ではコメ市場の自由化問題がある。米国での第1回の交渉では、韓国のコメ市場の自由化が自由貿易協定の内容に盛り込まれるかどうかに触れなかったが、韓国代表はコメについては協定から除外すべきで、関税率や輸入量の議論をする積りはないとしている。

また韓国側は北朝鮮の開城(ケソン)工業団地に進出した韓国企業の製品を韓国製として認定するよう要請している。
(2006/5/9 「
日本、韓国、中国の自由貿易協定交渉」参照)
米国はこれに対して
北朝鮮勤労者に対する労働搾取などを主張し、否定的であったが、今回の北朝鮮のミサイル発射に関する国連安全保障理事会の決議を受け、ケソンを含めた南北事業に圧力をかけていると伝えられている。

2006/6/21「石炭液化事業」及び 2006/6/23 「中国の石炭化学」で多数のプロジェクトを紹介した。

中国は「第11次五カ年計画」期に炭鉱の機械化生産を全面的に推し進めることとしており、豊富な石炭を原料に石炭化学を推進する。

中国石炭工業協会の範維唐会長は200511中国は2010年には、石炭のオイルへの転化、石炭ガス化を含めた石炭転化製品の生産高500万トンの実現を目指していることを明らかにした。

しかし、中国政府は多数のプロジェクトの乱立で過剰能力となることなどを懸念し、規制を行うことを決めた。

国家発展改革委員会(NDRC)は7日通達を出し、年間300万トン未満の石炭液化計画、年間100万トン未満の石炭からのメタノール又はDMT生産計画、年間60万トン未満の石炭からのオレフィン生産計画を承認しないとしている。

メタノール計画の規制は過剰能力を恐れてのことである。
中国のメタノールの生産能力は2005年末で536万トンとなったが、建設中のものは900万トン、計画中のものは1000万トンに達するとみられており、NDRCでは市場がまだ未成熟のため、これらが完成すると過剰能力になるのは必至とみている。

メタノール計画には石炭原料のもののほか、従来法の天然ガスを原料としたものも多い。

三菱ガス化学は重慶市に現地の重慶化医との合弁(51/49)で 85万トンのメタノールプラントを建設中。同社は伊藤忠とのJVで南京市にLingtian (Nanjing) Fine Chemical を設立し(三菱ガス化学 85.1%)、ジメチルアミン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどメタノール誘導品を生産する。

また中国海洋石油(CNOOC)は海南島で60万トンのメタノールをスタートさせたが、113万トンの第二期計画を検討中。

NRDCでは又、石炭液化計画については技術が未完成であるため、国としての開発計画が完成するまでは認めないとしており、石炭化学については環境基準を満たすのが条件としている。

但し、政府は石炭ベースの化学肥料生産は推奨しており、古い石炭化学であるカーバイドやコークスは規制するが、石炭液化や石油代替については着実に発展させるべきとしている。
ーーー

石炭液化計画については2006/6/21「石炭液化事業記載の国営石炭会社・神華集団の寧夏回族自治区の子会社がこのたび、シェル及びサソールとそれぞれ提携を決めた。

Shenhua Ningxia Coal Industry Companyは11日、Shell Gas & Power Development BVとの間で石炭液化事業の共同研究契約を締結した。
Shellの間接液化技術を使用、50-60億ドルを投じて2009年までに工場を建設、2012年までに年間300万トン(7万バレル/日)のオイルを生産する。
原油価格が25-27ドル/バレル以上であれば採算が取れるとしている。

もう一つはサソールとの提携で、神華は先月、寧夏での8万バレル/日の石炭液化プラント建設の共同開発契約に調印した。上記シェルとの計画とほぼ同時期の完成を目指している。

これらとは別に神華集団は2004年8月、内蒙古自治区鄂爾多斯(オルドス)市で世界最大規模の神華石炭液化プロジェクトに着工した。
こちらは直接液化法で、来年末にもスタートする予定。

 

 

イランの石油化学はBandar Imam のPetrochemical Special Economic Zone と Assaluyeh のPars Special Economic Zone を中心に展開されている。
(現状は 
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/ichiran/iran/index.html 参照) 

National Petrochemical Company (NPC) は2004年に、西部地方の経済発展を図るという政府の方針の下で、両Special Economic Zone から総延長2,285kmのエチレンパイプラインを西部国境沿いに建設した。年間280万トンのエチレンを北部に輸送、現在沿線の10箇所で石化プラントを建設しており、更に5箇所を検討中である。

立地 社名 製品
Mahabad Mahabad Petrochemical LLDPE/HDPE 300,000t/yButene-1 30,000t/y
Miyandoab Miyandoab Petrochemical Co. PVC 300,000t/y、苛性ソーダ190,000t/y
Sanandaj Kordestan Petrochemical LDPE 300,000t/y
Hamedan Hamedan Petrochemical Co. VAM 140,000 t/y、EVA 45,000 t/y
Kermanshah Kermanshah Polymer Company HDPE 300,000t/y
Khoramabad Lorestan Petrochemical LLDPE/HDPE 300,000t/yButene-1 30,000t/y
Andimeshk Andimeshk Petrochemical Co HDPE 300,000 t/y
Chaharmahal-va-Bakhtiyari Charmahal-va-Bakhtiari Petrochemical Co lldPE/hdPE  300,000 t/y
Dehdashtt Dehdasht Petrochemical Co. HDPE 250,000 t/y
Gachsaran Gachsaran Petrochemical EG/EO

検討中:Dehdasht, Andimeshk, Hamedan and Miandoab.

Iranmap2

これに加えて、NPCでは最近、東北部と東部に2本のガスパイプライン建設を検討していることを明らかにした。

一つはAssauyeh から東北部の Khorasan 州へガスを輸送するパイプラインで、沿線に Gas-to-Liquids (GTL) や肥料等を含むいくつかの石化プラントを建設する。

もう一つは東部のSistan and Baluchestan 州にある港市のチャーバハル(Chabahar)へのパイプラインである。チャーバハルはオマーン海に面した自由貿易港で、アジアに最も近い場所にある。現在、2008年の新しい国際ターミナル完成を目指して港の大拡張を行っている。

NPCではここで大規模な一連の投資を行う構想をたてている。

 

ポリオレフィン、塩ビ、PS・ABSの事業統合会社の2005年度の決算(12月及び3月決算)を別紙の通り まとめた。(クリックして下さい)

決算公告しか発表されたものはなく、B/S、P/L以外の記載はないので、詳細は不明である。
(決算公告は探すのが大変で、見つからない会社もある。まさか商法で義務付けられているのをやっていないとは思えないが。)

ポリオレフィン関係では、日本ポリエチレン、日本ポリプロ、サンアロマーは好調で、特に日本ポリエチレンは前年比で大幅増となっている。

それに対して本年度が初年度のプライムポリマーは営業損益、経常損益、当期損益ともに10億円程度の赤字となっている。
統合初年度ということで特別な処理があったのかも分からないが、他のポリオレフィン統合会社と比べて大きな差があり、今後が注目される。

なお、三井化学の連結決算でみると、石油化学(石化原料、PE、PP)では営業損益が前年の254億円から159億円に下落しており、石化では変動費アップが-572億円に対し、値上げは439億円で、差し引き -133億円としている。
(5/17 「総合化学大手 連結決算対比」参照)

塩ビ関係は3社とも黒字である。
この3社は再編により、実質的に大洋塩ビは東ソー、新第一塩ビはトクヤマ、ヴイテックは三菱化学の子会社である。
ヴイテックは電解からの一貫生産で、VCMは自前で、輸出もしているのに対して、大洋塩ビと新第一塩ビのVCMは親会社からの供給であり、仕切り価格にも差があると思われ、直接の損益対比は難しい。

大洋塩ビは1996年スタートの旧会社は精算しており、今の大洋塩ビは2000年4月にスタートした新会社であるが、本年度で累積赤字を一掃している。

新第一塩ビも累積で黒字だが、これは昨年度に60億円の減資をしたことによるもの。
ヴイテックは2年連続の黒字決算だが、累積損失がまだ142億円残っている。

PS、ABSではPSジャパン、テクノポリマーは好調だが、日本ポリスチレン、日本エーアンドエルは累積損失を抱えた状態が続いている。

アラムコは7月10日、サウジ東部のラスタヌラで計画している世界規模の石化・プラスチック・コンプレックスのパートナー候補にダウを選定し、独占的に交渉すると発表した。

世界最大規模のアラムコのラスタヌラ製油所と一体化して建設するもので、完成すれば世界最大級のプラスチックと化学品のコンプレックスになるとしている。

計画の詳細は明らかにされていないが、一部報道によれば120万トンのエチレン、40万トンのプロピレン
、40万トンのベンゼン、46万トンのパラキシレンのほか、ベンゼン、パラキシレン、アクリロニトリル、ABS、SBR、PTA などを生産するとされる。(135万トンのエチレン、90万トンのプロピレン、100万トンの芳香族とする報道もある。)

 

サウジアラムコでは製油所と統合した3つの石油化学計画の構想をもっている。Saudimap

第1はラービグで、住友化学とのJVのペトロラービグを設立した。既存製油所をJVに移管し、石油精製2次処理設備を新設しガソリンを新たに生産するとともに、エタンクラッカーと流動接触分解装置(FCC)、さらにポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィンを中心とするエチレンやプロピレンの誘導品の生産プラントを新設する。
2006/3/25 「ペトロラービグ起工式 参照

第2が本件のラスタヌラ計画で、ラスタヌラの55万バレル/日の製油所に統合した石油化学基地の建設である。
ここでは2004年にJETROがアラムコと組んで、ブタン、ナフサおよび改質ガソリンを原料として、
(1)ベンゼンを抽出することによる既設ガソリンの品質改善および新規に生産されるアルキレートによるオクタン価の向上
(2) 輸出向け石油化学中間製品、エチルベンゼン、クメンおよびターシャルブチルアルコールの生産
の計画の事前FSを実施している。

今回の計画は、エタン分解に加え中東で初のナフサ分解を実施するものである。これによりプロピレン、ブタジェン、芳香族を原料とした各種製品が生産可能となる。2012年の商業生産開始を狙っている。

第3は現在検討中の
Yanbu Petrochemical Master Planである。235千バレル/日のヤンブーの製油所にオレフィン・芳香族コンプレックスを建設するものである。
こちらもラスタヌラと同様にエタンに加えナフサ分解を行う。2014年スタートを仮の目標としている。

 

現在のサウジの既存の石油化学はほとんどがエタンベースであり、PE、MEG、SM等の汎用のエチレン系製品が中心である。
(ラービグ計画ではFCCからのプロピレンでPP、POを生産する)

アラムコでは現在輸出しているナフサを原料として利用することで、プロピレン、ブタジェン、芳香族、及びこれらを原料にした各種製品を生産し、サウジに輸出用の川下産業を興すことを考えている。有利なコストポジションを利用し、高付加価値製品の生産により経済の多様化、雇用機会の増加を目標とするとしている。

サウジのナフサは日本や韓国に輸出されているが、将来はナフサの輸出がなくなる可能性がある。
(サウジのナフサは日本のナフサ輸入の約16%、国産を含めた総供給の約9%を占める)
 

今回のラスタヌラ計画ではパートナー候補にダウが選ばれた。
アラムコはラービグ計画のパートナーとして住友化学、SABIC、ダウの3社と交渉し、最終的に住友化学を選んだ経緯がある。

ダウはSABICの石油化学創設時にSABICとの合弁ペトロケミアを設立し、同じくSABICと日本側の合弁SHARQとの間でエチレン及びEGプラントの共同所有・共同生産契約を締結したが、1982年に突如撤退し、その結果ペトロケミアがSABIC100%となった経緯がある。
2006/4/1 SHARQ (Eastern Petrochemical) の歴史 参照

同社はその後サウジでは活動をしていないが、クウェートでは国営Petrochemical Industries CompanyPIC)と組み、現在第2期計画を遂行している。ダウは更に2004年にPICとの間で、MEG、DEGの製造販売、PET樹脂の製造販売とPTAの製造の2つの海外JV(いずれも50/50)を設立している。
2006/5/31 湾岸諸国の石油化学ー1 クウェート&バーレーン参照

原油価格が急上昇している。Oil_1

NY原油は5日に一時1バレル75.40ドルとなり、4月21日の75.35ドルを超え最高値をつけたが、7日には一時75.78ドル、13日には一時 76.40ドルをつけ、夜の時間外では78.40ドルとなった。イスラエルのレバノン侵攻など中東情勢緊迫で供給不安が広がったのを理由としている。

これを受けて東京市場のドバイ原油も13日1バレル69.90ドル、14日72.00ドルと2日連続で最高値を更新した。

東京市場ナフサ・オープンスペックも13日トン当たり666ドル14日 691ドルとなった。Naphtha_1

石油会社、石油化学会社は製品値上げを打ち上げているが、追いつかない状態である。



因みに今の原油価格72ドル/バレルを115円のレートで換算すると52千円/klとなり、石油ショック時の最高値に近い。
当時は円レートが250円に近かったため円建てでは高かったが、ドル建て価格は現在の半分程度であった。
(グラフは年平均、nowは72ドル/バレル、115円/ドル)

なお2005年平均では51.15ドル/バレル、35,435円/klであった。Oilprice_1

お知らせ

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7月15日までのバックナンバーを見易く整理しました。下記をご覧ください。


http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

7月4日、南米南部共同市場メルコスル(MERCOSUR [Mercado Comun del Sur])加盟国4ヶ国とベネズエラはベネズエラの加盟を認める議定書に調印した。

ベネズエラ加盟により、人口2億5千万人、GDP1兆ドルの巨大経済ブロックが誕生する。Samerica

メルコスールは1995年1月1日に関税同盟として発足した。
正式加盟国はアルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイで、ベネズエラは2005年12月に正式加盟手続きを行った。
準加盟国はチリ、ボリビア、ペルー、エクアドル、コロンビア。

主な内容は
(1)域内関税の原則撤廃 1995年1月より域内関税は原則として撤廃
(2)対外共通関税の適用


なお、南米には共同市場形成を目指したアンデス共同体(Andean Community)がある。
1996年創立で、加盟国はボリビア、コロンビア、エクアドル、ペルー
ベネズエラはメンバーであったが、2006年4月に、ペルーとコロンビアの対米自由貿易協定前進により、関税撤廃等による域内の統合を目していたアンデス共同体の今後の発展の可能性が阻害されたとして脱退を表明した。
準加盟国はアルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、オブザーバー国はメキシコ、パナマ、チリ。
域内人口は約9,600万人、域内GDP合計は約2,048億米ドル。

SINOPECの2005年の決算と2004年の決算を比較すると大きな変化がある。Sinopec1

同社は原油・天然ガス探査・採掘、石油精製、石油製品の販売、石油化学の4部門を持ち、石油・天然ガス探査・採掘では中国で2位、石油精製及び石油化学では中国第1位である。
2005年の決算は原油価格高騰の影響で増収増益となっている。

しかし、部門的には前年と比べ大きな変化がある。
原油・天然ガス探査・採掘部門は大幅増益となっているのに対して、精製部門は赤字となっており、石化部門も前年は大きく伸びたのに対して減益となっている。Sinopec2

中国では政府が石油製品の価格の統制を行っており、精製部門は原油高を製品価格に一部しか転嫁できず、赤字となった。SINOPECの場合、精製部門は製品の内外価格差の補填として政府から9,415百万人民元もの補助金を受けたが、それでも3,505百万人民元の赤字となった。

石油化学部門も原料価格をフルに転嫁できず、減益となっている。

この傾向はペトロチャイナでも同様で、探査・生産部門が6割の営業損益アップになったのに対して、精製部門は前年の119億人民元黒字から199億人民元の赤字となり、石化部門の営業損益も57%の減益となっている。

ーーー

原油価格高騰を受け、中国石油天然気(ペトロチャイナ)、SINOPECや中国海洋石油(CNOOC)が空前の高収益を上げているのに対して、国内産業は原料・燃料価格の高騰で収益を圧迫されている。

このため、中国政府は本年3月26日から、石油採掘企業に対して特別収益金(Windfall-tax)を徴収することを決めた。一般には暴利税と呼ばれている。

原油価格が40ドル/バーレルを超える国産原油を販売する場合に超えた部分について20-40%の税金を課すもので、以下の算式で課せられる。

{(加重平均販売価格-40) 下記比率-下記控除額} 販売数量

原油価格(US$/bbl) 40~45 45~50 50~55 55~60 60以上
比率  20%  25%  30%  35%  40%
控除額(US$)   0  0.25  0.75  1.50  2.50

新聞報道ではペトロチャイナ、SINOPEC、中国海洋石油の3社からの特別収益金は年間で300億人民元に上ると見られている。

これとは別に、国家発展改革委員会は本年3月と5月の2回、ガソリンと軽油の卸売価格の引き上げを行った。石油製品の内外価格差の是正が目的で、段階的に自由化を進める方針といわれている。

なお、特別収益金は国庫に納められ、上記値上げにより打撃を受ける業界に対して補助金などの形で配分されるといわれている。

 

ペトロチャイナとSINOPECは特別収益金徴収で探査・生産部門の利益は減るが、石油製品価格値上げで精製部門の採算は好転する。一方、CNOOCは探査・生産部門のみのため採算は悪化する。

随分昔にポリプロ価格カルテル事件があった。

5年前の2001年5月30日に公正取引委員会が、当時の出光石油化学、住友化学、サンアロマー、トクヤマ、日本ポリケム、グランドポリマー及びチッソの7社に対して「排除勧告」を行った。

これに対して出光石油化学、住友化学、サンアロマー、トクヤマの4社は応諾せず、審判が開始された。

応諾した3社に対しては以下の課徴金納付命令が出された。

事業者名 課徴金額
日本ポリケム  8億4517万円
三井化学
(グランドポリマーを吸収合併)
 7億6008万円
チッソ  4億3513万円
合 計 20億4038万円

まぎらわしい行為があったことも事実であるとして勧告を受諾した三井化学はこれを受諾し課徴金を納付したが、日本ポリケムとチッソはこの課徴金納付命令に対して審判手続き開始を請求した。

なお本件は三井と住友のポリオレフィン事業統合(三井住友ポリオレフィン:後、解散)と、日本ポリケムとチッソのPP事業統合(日本ポリプロ)の公取委審査で、「PP分野におけるメーカーの協調的行動」があるとして問題視され、両グループともに、業界団体会合への出席禁止や制限で独禁法遵守体制を更に徹底すると約束して承認を受けている。
また石油化学工業協会ではこれを機に、ポリプロ委員会など協会内の各種委員会を廃止した。

ーーー

本件はとっくの昔に決着していると思ったが、調べてみると、まだ延々と審判を続けていた。次回の審判予定は以下の通り。

出光興産、住友化学、サンアロマー、トクヤマ 8月4日(第28回)
日本ポリプロ、チッソ 9月4日(第18回)

 * トクヤマはPP事業を出光興産に譲渡したが、会社としては当事者で残る。
 * 日本ポリケムはチッソのPPと統合して日本ポリプロとなった。
  チッソはPPは分離統合して日本ポリプロとなったが、会社としては当事者で残る。

一体なにを延々と議論しているのであろうか。5年前の詳細を誰も覚えていないのではないだろうか。
どう決着させるのだろうか。

本年の独禁法改正で手続きが変わったが、本件は従来手続きで処理される。
4社の場合は審決が出てから課徴金の納付命令となり、場合によればこれについての審判もありうることとなる。
2社の場合は審判手続き開始により、2社に対する課徴金納付命令は失効となり、後に審判で納付命令が確定しても金利を払う必要はない。

裁判に関しては2003年7月に「裁判の迅速化に関する法律」が成立、公布・施行されている。
「第一審の訴訟手続については二年以内のできるだけ短い期間内にこれを終局させ、その他の裁判所における手続についてもそれぞれの手続に応じてできるだけ短い期間内にこれを終局させることを目標」とするものである。

裁判の第一審に当たる審判がこんなに時間がかかるのは問題である。

 

なお、MBSに関する審判も続いている。

2003年11月に公取委はカネカと三菱レイヨンに対して排除勧告を出したが、両社は応諾せず、2004年2月、審判に入った。

クレハも関与したとされたが、同社は2003年1月に事業をローム・アンド・ハースに譲渡していたため、勧告からは除外された。しかし、過去の違反行為に対して2005年7月に2億6849万円の課徴金納付命令が出された。
クレハはこれに応諾せず、審判に入っている。

次回のカネカと三菱レイヨンに対する審判(第11回)、クレハに対する審判(第4回)はいずれも8月4日に行われる。

ーーー

因みに独禁法改正により、手続きは下記の通り変更された。「勧告制度」はなくなる。Ftckaisei

公取委の事前の通知に対して当事者は意見申述・証拠提出機会を与えられ、その後に命令が出されることとなる。これに応諾しない場合に審判手続きが開始される。審判で実体判断をするというのではなくて,原処分が適正かどうか,維持すべきかどうかを判断する審決ということになる。
課徴金納付命令に対する審判の場合は審判手続が開始された場合であっても失効しないこととなった。(確定すれば金利の支払いが必要)

これに加えて悪質かつ重大な事案についてより積極的に刑事告発を行うために,犯則調査権限が導入された。

Ftchansokuchosa

 

SABICはこの度、サウジ金融市場庁から30億リアル(約9千億円)のイスラム債券(Sukuk)の発行の承認を得た。

SABICのスクークはサウジアラビア銀行のイスラム法委員会により承認を得た最初のもので、SABIC自身が発行する。また最初のサウジ金融市場庁承認のスクークであり、サウジ国内で流通しサウジ証券取引所で売買される最初のスクークで、今後の債券発行の見本となる。SABIC発行のため、リスクは極めて低い。

SABICでは最近、子会社YANSABの新規設備投資(Greenfield project)のため35億ドルの海外債券を発行したり、ドイツ銀行と10億ドルの短期商業金融契約(Murabaha finance agreement)を締結するなど、イスラム式ファイナンスの幅を広げている。

SABICは今回のスクーク発行はSABIC投資計画のファイナンスを更に多様化するものであり、経済発展に資するものとしている。

 

イスラム法(シャリア)において、イスラム教徒は利子の授受を禁止している為、イスラム債券(スクーク)では通常「レンタル料、貸出料」を支払う。
バハレーンに本部を置くイスラム金融機関会計・監査基準機構(AAOIFI)は14 のスクークの種類と発行の要件(対象となる資産の種類)を定めている。基本的性格は①資産担保型と②事業出資型に大別できる。

YANSABSABIC55%、同子会社が10%出資し、残り35%を公募する新しい石化会社で、Yanbuにエチレン130万トン、プロピレン40万トン、BTX25万トン、LLDPE50万トン、HDPE40万トン、EG77万トン、PP40万トン等のコンプレックスを建設する。2007年にスタートの予定。

イスラムのシステムで他と異なる点は税金である。

サウジではサウジ法人に対しては所得に対してザカート(Zakat)が課せられる。
ザカートとは喜捨の意味で、
物質的に余裕のあるイスラム信者に対し神より下されたファルド(義務)の一つであり、その人の年間所得と財産から一定比率の金銭や現物を献納することを意味するもの。

企業に対する税率は非常に低く、SABICの2005年決算ではZakat前損益 19,910百万SR に対してZakatの引当は 750百万SR に過ぎない。

外国法人に対しては法人所得税が課せられる。税率は新所得税法が2004/4/30に公布され、一律20%に引き下げられた。
SHARQなどSABICと外国企業との合弁会社においては、利益のうちサウジ法人持分に対してはZakat が、外国企業持分に対しては法人所得税が課せられる。

新所得税に関しては中東協力センターのホームページ参照 
http://www.jccme.or.jp/html/japanese/11/pdf/11-04/11-04-22.pdf

 

BASFの中国戦略-2

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昨日の記事のアップ後、BASFはBASF-YPC Company の5億ドルの増強計画でSINOPECと合意したと発表した。

計画は以下の通りで2008年稼動予定。
1.エチレン能力は60万トンから75万トンに増強
2.エチレンオキサイドを増強し、洗剤用非イオン界面活性剤、溶剤ブチルグリコールエーテルを生産
3.ブタジェン、イソブテン、2プロピルヘプタノール(新世代可塑剤)、ポリイソブテン誘導品(燃料、潤滑油助剤)等のC4系製品
4.高吸水性樹脂生産

両社はまた、南京で隣接する両社の第二のJVの揚子BASFスチレン(Yangzi-BASF Styrenics )をBASF-YPCに統合することでも合意した。

BASF-YPC Company の現状能力は以下の通り。

製品 能力
 千トン
エチレン   600
エチレングリコール   300
LDPE   400
アクリル酸   160
アクリル酸エステル   215
C4オキソアルコール   250
蟻酸    50
プロピオン酸    30
メチルアミン    30
ジメチルホルムアミド(DMF)    40

BASF-YPC Company、Yangzi-BASF Styrenics はSINOPECの揚子石化に隣接している。Ypc_2

BASFの中国戦略

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JETROの最新レポートに「欧州企業の中国戦略 2006年5月」がある。

多くの欧州企業が中国に進出し、地歩を築いている。JETROでは、中国に進出する日本企業にとっての参考とすべく、先行事例である欧州企業の中国における事業展開について、(1)中国事業の位置づけと規模、(2)中国における販売・マーケティング、(3)中国におけるR&D、(4)人材育成(現地化)戦略、(5)知的財産権など経営上の問題についての対処、などについての調査を実施した。
調査対象企業は、電気・電子、消費財、化学・医薬品、金融・保険、物流・流通などの分野の主要欧州企業12社である。
詳細はレポート参照 
http://www.jetro.go.jp/mail/u/l?p=YyktIcDBqxIZ 

化学・医薬品ではアクゾ・ノーベルとBASFの報告が載っている。
これを元に、BASFの中国戦略をまとめた。

BASFの2004年の売上全体に占めるアジア・太平洋地域(アフリカ含む)の比率は約16.8%(63億2千万ユーロ)だが、中国を牽引力とするこの地域の経済成長を基盤として、同社では2010年までに化学事業全体の売上及び営業利益に占める同地域のシェア20%達成を目指している。2004年の同地域への投資額は5億6300万ユーロで、全体の27.6%を占める。

BASFは事業戦略上、中国市場を香港、台湾も含めたグレーター中国として捉えている。
主力事業はポリマー分散、スチレン、ポリスチレン、ポリウレタン、エンジニアリング用プラスチック、コーティング剤、織物・皮革仕上げ剤、中間体、ビタミン、農薬などである。完全子会社14社、合弁会社9社を持ち、従業員数は4,000人を超える。
1996年以来、売上高は年率平均20%以上で伸び、2004年の売上高は約19億ユーロであった。

BASFは2010年までの達成を目指した中国戦略目標を次ぎの通りとしている。
・全社化学事業における中国シェアを10%に拡大
 (アジア・太平洋地域のシェア20%)
・主力製品市場で上位を確保
・現地売上高に占める現地生産シェア70%を達成
・業界で最高の企業チームを作る

同社は中国が今後数年間は基礎化学製品中心の市場にとどまるが、特殊化学製品の市場としても迅速に発展すると予測、特殊化学製品の生産能力拡大を進めている。また急拡大する需要に対応するため、南京化学コンビナートの拡充に投資する計画。

同社のグレーター中国における主な子会社、合弁会社は以下の通り。

完全子会社

BASF Auxiliary Chemicals Co. Ltd. (BACC)
  1994年JVとして設立、2000年完全子会社化
  産業用コーティング、プラスチック、染料、印刷用インク、皮革・織物用助剤に使われる染料、
  織物・皮革用助剤、アクリル系分散剤、共重合体を生産。

BASF Chemicals Co. Ltd. (BACH)
  2002年設立
  上海の化学産業パークにポリテトラヒドロフラン(Poly THF)とテトラヒドロフラン(THF)の統合生産施設として設立。
  年間生産量はPoly THFが6万トン、THFが8万トン。2005年操業開始。

BASF Polyurethanes (China) Co. Ltd. (BAPC)
  1998年設立
  南沙(広東省)にポリウレタンの生産拠点として設立。年間生産能カは3万トン。

BASF Polyurethanes(Taiwan) Co. Ltd. (BAPT)
  1988年設立
  Hsinchu(台湾)にポリウレタン生産拠点として設立。年間生産能カは1万1千トン。

合弁会社

BASF-YPC Co. Ltd.
  2000年設立
  SINOPECとの合弁会社(出資比率 50/50)
  2001年9月末、南京のコンビナート建設に着工、2005年6月稼動開始。総投資額は29億ドル。
 
 エチレン 600千トン、EG 300千トン、LDPE 400千トン、アクリル酸 160千トンほか

・上海イソシアネートコンプレックス
  上海化学産業パークにイソシアネートの統合生産拠点として設立。

 ①Shanghai Lianheng Isocyanate Co., Ltd.
  
BASF、ハンツマン、上海クロールアルカリ、上海華誼公司、SINOPEC上海高橋石化のJV
  
アニリン 160千トン、ニトロベンゼン 240千トン、MDI 240千トン

 ②Shanghai BASF Polyurethane Co., Ltd.
  BASF、上海華誼公司SINOPEC上海高橋石化のJV
  
硝酸 245千トン、DNT 150千トン、TDI 160千トン

 (③Huntsman Polyurethanes Shanghai Ltd.
  ハンツマンと上海クロールアルカリのJV
  MDI
精製

Yangzi-BASF Styrenics Co. Ltd. (YBS)
  1994年設立、
BASF-YPCに隣接
  揚子石油化工(YP)との合弁(BASF60%/YP40%)
  SM、PS、EPS

Shanghai Gaoquiao BASF Dispersions Co., Ltd. (SGBD)
  1988年設立
  上海高橋石化公司との合弁(50/50)
  コーティング加工紙やカーペット用の
スチレンブタジェン分散剤を生産
  2005年初に増設し、21万トン

BASF Shanghai Coatings Co. Ltd. (BSC)
  1995年設立
  Shanghai Coatings Co.Ltd.との合弁(BASF 60%)
  主として自動車装備に使われるコーティング剤の生産
  年間生産能カは17千トン

BASF JCIC Neopentylglycol Co. Ltd. (BJNC)
  1995年設立、立地:吉林
  Jilin Chemical Inustry Ltd.との合弁(BASF60%)
  パウダーコーティング剤、不飽和ポリエステル、可塑剤、薬品の原料Neopentylglycolの生産

BASF Vitamins Co., Ltd. (BVC)
  1995年設立、立地:瀋陽
  東北制薬集団有限責任公司との合弁(BASFシェア 2002年に70%から98%にアップ)
  各種ビタミン、ビタミン混合、非ビタミン飼料添加物、基礎混合物を生産

BASF Tai Ching Crop Protection Chemicals Corp. (BTCC)
  2002年設立
  台湾糖業公司との合弁(BASF 55/TSC 45)
  農薬の生産

ーーーーーー

なお、同じくJETROの5月のレポートに「米国企業の対中国経営戦略 ~日系企業の飛躍に向けて~ 2006年5月」がある。

JETROは、米国、中国、日本でのインタビューや文献調査などを通じ、米国企業の中国拠点運営を検証した。調査項目としては、人事制度(求人市場・求人広告の状況、トップマネジメント・シニアマネジメント・新卒者の採用・登用、中国人帰国者・香港・台湾出身者の採用・登用、報酬、インセンティブ制度、離職率など)、販売・マーケティング戦略(製品開発、マーケティング・広告・PRなど)、流通経路、R&D(実施状況、人事政策など)を取り上げた。また、インテル、モトローラ、マイクロソフトなどのケースを紹介、モンタビスタ、パームソース、エデルマン、そのほか、自動車・部品企業、建材企業、食品企業といった米国企業や中国のメディア研究者などへのインタビューも併せて掲載した。(化学品のケーススタディはない)

詳細は以下を参照 http://www.jetro.go.jp/mail/u/l?p=5LOwaDnH_V4Z

米国最高裁は6月末に、二酸化炭素に関する温室効果ガス規制問題を、最も重要な環境問題の一つであるとし、審議することを決めた。10月に始まる2006-07年度で審議、来年6月頃に判決が出ると見られる。

「マサチュセッツ州 vs 連邦EPA」裁判と呼ばれる裁判で、12の州や環境団体がEPAに対して Clean Air Act に基づき二酸化炭素等の排出規制をするべきだと訴えたもの。

原告側は二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、ハイドロフルオロカーボン(HFC)が気候の変化をもたらし、国民の健康と福祉を損なうとして規制すべきだと主張している。

これに対して自動車メーカー等はディーゼル等と異なり、二酸化炭素は人体に直接害を与えないとして反対、EPAは二酸化炭素はClean Air Actでの汚染物質ではないと主張した。
控訴審は、もっと科学的、技術的な研究が必要であるとの理由で、EPAは
Clean Air Actの下で自動車排気ガス規制を行わなくてもよいと判断した。(判断は2:1)

ッシュ政権は二酸化炭素規制は法律のよるのではなく、産業界の自主規制や新技術開発により行うべきだとしている。

原告側は、Connecticut, Illinois, Maine, Massachusetts, New Jersey, New Mexico, New York, Oregon, Rhode Island, Vermont, Washington の諸州で、Baltimore, New YorkWashington, D.C.などの市、アメリカ領サモア及び Union of Concerned Scientists, Greenpeace, and Friends of the Earth などの団体が加わっている。.

多くの州は地球温暖化の観点に立っているが、ニューヨーク州は発電所の公害規制を主眼にしている。

これに対して中部の10州はブッシュ政権の側に立ち、最高裁が自動車排気ガス問題に関与しないよう要請していた。

最高裁が12州側に立った場合、直接には自動車の排気ガスのみが対象となるが、そのような判断は発電所等からの二酸化炭素規制への圧力となるとみられ、地球温暖化にからむ多くの裁判に影響を与える。
二酸化炭素排出は発電所が全体の4割、自動車やトラックはその半分と推定されている。

12州のうちカリフォルニア州は特異な立場にある。同州は連邦EPAが1970年にClean Air Act に基づき設立されたのに先立ち、1967年にAir Resources Board を設置し、翌年に自動車の公害規制を行っており、そのことから固有の公害規制を行う権利を与えられている。
2004年にカリフォルニア州は自動車の二酸化炭素排出を規制、これに対して自動車メーカーは二酸化炭素を汚染物質と誤って定義しているとして訴訟している。

2006/6/30 「バイオエタノールの状況」に下記を追加します。

米エネルギー省は7月7日、セルロース・エタノールによるガソリン代替へのロードマップを発表した。これは大統領のAdvanced Energy Initiativeに対してBodman長官が発表した「2030年までに2004年の輸送用燃料消費の30%をバイオ燃料に置き換える」という目標達成のためのものである。

タイトルは  Breaking the Biological Barriers to Cellulosic Ethanol: A Joint Research Agenda 
http://www.doegenomestolife.org/biofuels/

6月26日の日本経済新聞は、中国の代替フロン生産に関して、排出権の扱いでEUと中国でもめていると報じた。

代替フロンのHFC22の生産の際に副産物としてHFC23という温室効果ガスが発生するが、現在はこれを回収・破壊すれば温室効果ガスの排出削減等につながるとして排出権が発生する。

HFC23は二酸化炭素に比べて1万倍以上の強力な温室効果がある。EUは「排出権獲得のために代替フロンを過剰生産することになりかねず、本末転倒」と主張し、排出権の対象外とすべしとしている。

2004年に締約国会議からCDM理事会へ示された指針の決定事項には、このようなCDM事業による他の環境条約の目的達成への影響に関して考慮すべきであるという文言が入った。

日本政府は、排出権を目的にした余剰のHFC22生産の場合は認めないが、需要に応じた生産なら新規でも認めてよいとの姿勢をとっている。(国連によると世界の3分の2にあたる約20工場が中国に集中している。2015年のHFC22の世界需要は最大で現在の約2倍とも国連は予測しており、工場増設は必ずしも排出権目当てとはいえない。)

なおHCFC22はモントリオール議定書で、先進国は2020年、途上国は2040年までに生産を中止することが決まっている。

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2005年2月16日に発効した「京都議定書」では、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガス(GHG)による気候変動防止のため、先進国平均で2008年から2012年のGHG平均排出量を1990年レベルより約5%削減(日本は6%削減)することが定められている。

京都議定書には、国際的に協調して、この削減目標を達成するための柔軟性措置(京都メカニズム)として、
「排出量取引」(Emissions Trading)、「クリーン開発メカニズム」(CDM)、及び「共同実施」(JI)が盛り込まれた。

「クリーン開発メカニズム(CDM)」とは、先進国の資金・技術支援により開発途上国において温室効果ガスの排出削減等につながる事業を実施し、その事業により生じる削減量の全部又は一部に相当する量を先進国が排出枠として獲得し、その先進国の削減目標の達成に利用することができる制度。
「共同実施(JI)」とは、CDMと同様に排出削減等につながる事業を互いに削減目標(排出枠)を有する先進国間で実施するもので、その事業によりホスト国で生じる削減量の全部又は一部に相当する量の排出枠を投資国がホスト国から獲得し、投資国の排出枠に加えることができる制度。(以上 地球環境センターホームページから)

6月26日現在、我が国では51のCDMと3つのJIが政府承認を受けている。

これらの案件は、CDM理事会が指定する指定運営機関による事業審査報告書をCDM理事会に提出し、当該CDM事業の登録を申請する。
CDMプロジェクトの実施及びモニタリングの後、運営組織によるCER(認証排出削減量)の検証・認証を経て、CDM理事会がCERを発行し、プロジェクト実施者に分配することとなる。

* CDM/JIプロジェクト一覧(平成18年6月26日現在)
  http://www.meti.go.jp/press/20060626001/press.pdf (P.4-6)

このうち、HFC23破壊案件については、中国で2件のCDM、ロシアで1件のJIが承認を受けている。

承認月日 区分 申請者 実施国 プロジェクト名 プロジェクトの概要 排出削減量
予測(年間)
2005/11/11 CDM 温暖化ガス
削減㈱
中国 浙江巨化公司
HFC23分解
CDMプロジェクト
過熱蒸気分解装置を設置
することにより、HCFC22の
製造工程において複産物として
生じるHFC23を分解する
平均580 万㌧
CO2(年間)
2005/12/14 CDM 三菱商事
新日本製鐵
中国 山東東岳
HFC23破壊
プロジェクト
液中燃焼法による焼却炉を
設置することにより、
HCFC22 の製造工程において
副産物として生じるHFC23を
分解する。
平均1011万㌧
CO2(年間)
2006/3/13 JI 住友商事 ロシア連邦 ロシア連邦における
HFC23 の熱破壊による
温室効果ガス排出削減
HCFC22 製造プラントに、
熱破壊システムを導入し、
現在放散している
HFC23 を回収し破壊する。
平均39 万㌧
CO2

 

 

 

7/6記事 「中国、今年の西部開発12事業を発表」の青蔵鉄道」で、
「将来は支線を3本増設し、そのうち1本は、中印国境のドモ(亜東)を終点とし、インド鉄道に接続させる計画だ。
ドモはインド洋への通路の要衝で、7月中に国境市場も再開される予定。」としたが、Nathula_1
中国・インド両国は6日、チベットの亜東県とインドのシッキムを結ぶ乃堆拉(ナトゥラ)峠(Nathu La Pass) を開放し、40年余り中断されていた国境貿易ルートを再開した。乃堆拉峠はかつて「シルクロード」南側の主要ルートで、中国とインドの貿易ルートだった。ラサとインド東部最大の貿易港コルカタの間の約1000kmが陸路で結ばれた。

中国国家発展改革委員会は30日、本年の西部開発12事業を発表した。総額1,654億元を投じる。
 

西部大開は東部沿海地区の経済発展から取り残された内陸西部地区を経済成長軌道に乗せるために国務院が実施している開発政策で、2000年3月の全国人民代表大会で正式決定された。Chinaseibu

当初は甘粛省、貴州省、寧夏回族自治区、青海省、陝西省、四川省、チベット自治区、新疆ウイグル自治区、雲南省及び重慶市の10省区市が含まれたが、その後、内モンゴル自治区と広西チワン族自治区を追加し、12省区市とした。

これまで70項目の事業が行われたが、目玉には「西気東輸」、「南水北調」、「西電東送」、「青蔵鉄道」がある。

西気東輸」は西部の天然ガスを東部に輸送するもので、新彊のタリム盆地から甘粛、寧夏、陝西、山西、河南、安徽、江蘇、浙江、上海と続く総延長4000キロのパイプラインを建設した。2005年に開通。

南水北調」は長江の上流、中流、下流からそれぞれ取水し、西北地区と華北地区の各地に引水するもので、東線、中央線、西線の3ルートがある。

西線は長江上流にダムを建設して、長江と黄河の分水嶺に輸水トンネルを掘り、長江上流の水を黄河上流に引くもので、青海省、甘粛省、寧夏回族自治区、内モンゴル自治区、陝西省、山西省等の黄河上中流域と渭河関中平原の水不足解消が見込まれる。海抜3000~5000mで工事を行う。

西電東送」は西部の火力、水力発電の電力を東部に3つのルートを用いて送電するもの。

北通道は内蒙古自治区、山西省の火力発電所、黄河中上流域の水力発電所から北京・天津への送電網建設計画。
中通道は2009年完成予定の三峡ダムと金沙江流域の水力発電を中心に、上海、江蘇、浙江への送電網を建設する計画。
南通道は雲南、貴州、広西の境界地帯にある天生橋水力発電所から広東省に送電する計画。

7月1日に完成した「青蔵鉄道」は青海省ゴルムドとチベット自治区ラサを結ぶ鉄道で、これにより北京とラサ間が鉄道で結ばれた。
全長1142キロのうち、960キロが標高4千メートル以上で、唐古拉山の最高地点は標高5072メートルで世界一の標高。年間平均気温は摂氏0度以下で、酸素濃度は平地の半分のため、乗客の酸素不足解消のために車内拡散と酸素マスクの2方式で酸素が供給される。自然環境保護のため、トイレ用に真空保持式の汚物処理装置が設置されたほか、車両下部にも汚水処理装置が設置されている。
553キロは永久凍土層を通過するため、地球温暖化による凍土融解のおそれがあり、線路の安全性を懸念する声もある。

将来は支線を3本増設し、そのうち1本は、中印国境のドモ(亜東)を終点とし、インド鉄道に接続させる計画だ。Nathula
中国・インド両国は6日、チベットの亜東県とインドのシッキムを結ぶ乃堆拉(ナトゥラ)峠(Nathu La Pass) を開放し、40年余り中断されていた国境貿易ルートを再開した。乃堆拉峠はかつて「シルクロード」南側の主要ルートで、中国とインドの貿易ルートだった。ラサとインド東部最大の貿易港コルカタの間の約1000kmが陸路で結ばれた。

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本年度の12計画のなかには資源、化学関連では以下の計画が含まれている。

・西部地域の重点炭鉱プロジェクト(内蒙古自治区の勝利1号露天炭鉱、寧夏自治区の梅花井炭鉱)
・四川省でのエチレン80万トン生産プロジェクト
・新疆自治区・羅布泊(ロブノール)でのカリ肥料120万トン生産プロジェクト
・内蒙古での酸化アルミニウム40万トン生産プロジェクト

エチレン計画はPetroChinaが51%、成都市が49%出資する成都石油化学(
Chengdu Petrochemical Co.)によるもので、本年2月に起工式を行った。
エチレン 800千トン、HDPE 300千トン、LLDPE 300千トン、MEG 360千トンのほか、アクリル酸、フェノール、BPA、ブチルゴム等を生産する。
原料ナフサは
 隣接する甘粛省と陝西省のPetroChinaの製油所から貨車で輸送する。

西部地区のエチレンセンターは現在2つだけ。
新疆ウイグル自治区の新疆独山子石油化学(エチレン
22万トンで100万トン新設中)
甘粛省の蘭州石油化学(エチレン
24万トンで45万トン新設中)

カリ肥料計画は「さまよえる湖」として知られる新疆ウイグル自治区の枯渇したロブノール湖の豊富な塩化カリウムを採掘して年間120万トンの硫酸カリ肥料を生産するというもの。2009年の生産開始を目指す。

Saudi Kayan Petrochemical Company6月末にFlour Company とオフサイトの用役施設の建設で、またKellogg Brown & Root 135万トンのエチレン工場の設計・調達・建設で、覚書を締結した。

昨年7、サウジの商業大臣はアルジュベイルに新しい石化コンプレックスを計画する会社の設立を承認し、10月に Al-Kayan Petrochemical Co. が設立された。

同社は本年1にSABICとの間で覚書を締結し、2ヶ月以内にFSをまとめることとした。その結果、4月末に両社は提携して、新しい石化会社 Saudi Kayan Petrochemical Company を設立することで合意した。

新会社はSABICが35%、Al-Kayan 20%を出資し、45%は公募する。アルジュベイルに石化コンプレックスを建設し、2009年稼動を目指す。

新会社はエチレン(135万トン)、プロピレン、PP、EG、ブテン-1 等に加え、サウジではこれまで生産されていない特殊品を加える。
具体的には、アミノエタノール、アミノメチル、ジメチルフォルムアミド、塩化コリン、ジメチルエタノール、ジメチルエタノールアミン、エトキシレート、フェノール、キュメン、PC等である。

SABICでは新会社は最新の技術を使用し、競争力を高めるとしている。また新会社は応用センターを設置し、PCやサウジの新しい付加価値の高い川下製品のを製品開発、用途開発を行う。

独電機大手のシーメンスは6月29日、バイエルの診断薬事業を買収すると発表した。金額は約42億ユーロ。

バイエルの2005年の診断薬事業の売上高は14億ユーロで、従業員数は約5千人。主に免疫や血液などの検査・分析機器を手掛ける。

バイエルの診断薬事業はヘルスケア事業部門の一部で、同事業部門は動物薬、大衆薬、糖尿病治療、医薬を扱っている。
同社では動物薬を含む医薬品に集中するため売却するとしている。
糖尿病治療と(合併する)シェーリングのX線造影剤は売却対象に入っていない。
同社ではこの売却はシェーリング売却資金確保とは無関係としている。

シーメンスはMedical Solutions Group で以下のような多くの医療機器を扱っている。
血管検査方法、蛍光透視システム、磁気共鳴画像(MR)、核医学診断装置、C型アームがついたX線装置、泌尿器科システムと診察台、断層撮影装置、ヘルスケアに関するIT統合ソリューション、Mammography(乳がん管理)、放射線腫瘍ソリューション、放射線画像システム、超音波診断装置、その他

同社ではこの事業を重点事業に位置づけ、強化を図っている。

2005年にはポジトロン放出断層撮影法(PET)大手のCTI Molecular Imaging, Inc.を買収した。 シーメンスは1987年にCTIとの合弁会社CTI PET Systems を設立している。
また本年
4月には米国の免疫診断大手、Diagnostic Products Corporation (DPC) の買収を発表している。

シーメンスでは医療機関の検査・分析機器に強みがあるバイエルの事業買収により、画像診断、試験診断、ITを統合したヘルスケア産業での最初の統合診断会社になるとしている。

シーメンスは日本では旭化成との合弁のシーメンス旭メディテックで CT、MRI、血管撮影装置などの大型画像診断装置を扱っている。

 

シーメンスは6月に、通信機器大手のフィンランドのノキアのネットワークス事業部とシーメンスのキャリア関連ビジネスを新会社に統合し、50/50の新会社ノキア・シーメンス・ネットワークスを設立すると発表した。固定およびモバイル・ネットワーク・インフラストラクチャとサービスの成長分野で確固たる地位を持つグローバル・リーダー企業を生み出すとしている。

 

SINOPEC天津分公司の100万トンエチレン計画が6月26日、天津浜海新区の大港石油化学基地で着工した。


Tianjintanggu 浜海新区は天津市の東部、渤海湾に面した区域を指す。独立した行政単位ではなく、
塘沽TangGu、漢沽Hangu、大港Dagangの3つの行政区と経済技術開発区、保税区などから構成される一種の大開発区。今回の立地は天津港の南の大港区である。

同社は旧称SINOPEC天津聯合化学(SINOPEC Tianjin United Chemical Co.)で、同地区に500万トンのリファイナリーと石油化学、化学繊維のコンビナートをもっている。

既存能力は以下の通り(単位 千トン)
 エチレン 200、PE 120、PP
60、EO 22、EG 48
 BTX
600、PX 250、PTA 300Polyether Polylol 43
 Polyester 200PET Staple Fibre 100PET Filament 90, Film-grade Chips 80

SINOPECと天津市は大規模石化計画をたて、最初はダウケミカルと中国側(SINOPEC/天津市)の50/50 JV検討された。
エチレン80~90万トン、L-LDPE、VCM、PVC、SM、PO、PG、エポキシ等を生産する計画であったが、ダウが経済性を理由に撤退した。

その後、天津市は外資企業の参加を求め、
サウジアラムコとの合弁の報道もあった。またSABICも2004年4月にSINOPECに対して本計画に関心ありとの意向を示したが、そのときは進展はなかった

SINOPECは昨年末、政府から単独での大拡張計画の承認を受けた。
(本年1月のサウジのアブドゥッラー国王の最初の公式訪中を機に、SABICがSINOPECとの交渉を再開したという報道もある。)

既存の
500万トンの製油所を1250万トンに拡張し、エチレン100万トンを新設するもの。

完成予定は2009年で、完成すれば同施設は、1,250万トンの石油精製能力、120万トンのエチレン生産能力を一体化した生産拠点の1つとなる。人民日報はプロジェクトの着工は、大型エチレン生産基地を独自建設する能力が中国にあることを示すものとしている。

新設するエチレンは100万トンで、誘導品は以下の通り。
 LDPE 300千トン
 HDPE 300千トン(INEOS 
Innovene S Process 
 PP   450千トン
 EOG  420千トン(ダウ技術)
 その他

SINOPECは石油関連のインフラ整備を進める。
まず天津港に377万バレルの貯蔵設備を建設中。

また、北京のSINOPEC北京燕化石油化工(旧称燕山石化)との間に230kmの石油パイプラインを建設し両工場のタンクを接続する。
更に天津港に新しく3つのバースを建設する。

いずれも2007年末に完成させる。Beijintianjinmap

人民日報は以下の通り述べている。
プロジェクトの内容には、エチレン生産施設の建設、石油精製施設の改造、火力発電所の改造が含まれる。
プロジェクトは「地域化、大型化、一体化、専門化」のモデルに沿って進められる。
全体のバランスを考慮しながら、施設の配置をコンパクトにまとめ、生産プロセスの短縮、資材の内部相互供給、用地の集約的利用、投資節約、コストダウンなどを実現している。
建設用地には荒廃したアルカリ土壌の地を選び、工業用水の増加分は、海水の淡水化や水の再利用でほぼまかなう。
また、国内外の進んだクリーン生産技術や効率性の高い設備を採用し、汚染物の分類処理や廃棄物の総合利用を強化して、節約型、生態型かつ環境配慮型の生産工程を実現する。
同プロジェクトはさらに、エチレン生産設備の国産化プロジェクトの側面も持つ。
同分野での国産化水準の向上を図り、設備製造業の進歩や、川下分野である石油化学工業の発展を促すことになる。

 

韓国で7月1日からすべての軽油自動車はバイオディーゼル混合の軽油を使うようになる。

バイオディーゼルは豆、菜の花など植物性の油を原料にして作った燃料で、韓国では2002年から政府主導で試験事業を行ってきた。全羅南道、全羅北道と首都圏の一部のガソリンスタンド334ヶ所で、軽油にバイオディーゼル20%を混ぜたBD20を供給した。

産業資源部は、2011年までに1次エネルギーの5%を代替エネルギーで供給するという計画により、本年3月にSK、GSカルテックスなど精油会社5社とバイオディーゼル普及協約を締結した。
試験事業では20%混合のBD20を使用したが、各精油会社が品質問題を取り上げた結果、軽油に0.5%を混ぜたBD5を7月1日から全国のすべてのガソリンスタンドで販売することとなった。

環境団体は、バイオディーゼルの原液混合割合が低くて、環境改善の効果が疑問視されるとし、バイオディーゼルの普及に逆行していると反発している。

大韓石油協会の分析によると、この混合軽油は既存の軽油に比べ、燃費が8%ほど落ちる。また寒さに弱く、冬に燃料が凍り付き、植物性のためエンジン部品の腐食という短所がある。
現代自動車の関係者は「燃料の問題でエンジン系統などに異常が生じれば、製造会社は責任を負わない」としている。

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6月末までのバックナンバーを見易く整理しました。下記をご覧ください。


http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

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