ICIは26日、同社のフレーバー、香料を扱う Quest 部門をスイスに本拠を置く Givaudan に売却すると発表した。
売却額は12億ポンド(約2,680億円)で、うち、約500億円は退職年金不足額に充当、2000億円は負債の返済に充てる。
売却先のGivaudan は1796年開業のフレーバー、香料会社で、1963年にHoffmann-LaRoche の100%子会社となったが、2000年6月に独立し、スイスで上場している。
Givaudan は1976年にダイオキシン事故を起こしたイタリアSevesoのICMESA社の親会社で、スイスより規制の緩いイタリアに進出し、薬用石鹸の有効成分ヘキサクロロフェンの原料用にトリクロロフェノールを製造していた。参考 http://www.sydrose.com/case100/shippai-data/307/
(ダイオキシンは通称で、骨格の化学名は、ジベンゾ-パラ-ジオキシン。この塩素誘導体には75種の異性体があり、このうち、2,3,7,8の位置に塩素が付いた2,3,7,8-TCDDは最も毒性が高い。
2,4,5-トリクロロフェノールは不純物として2,3,7,8-TCDDを微量ながら含む。)
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ICI は6月には、油脂化学、界面活性剤を扱う Uniqema部門 をCroda International に約915億円で売却している。このうち290億円は退職年金不足額に充当、570億円は負債返済に充てられた。売却に当たりICIでは、特にこれを売却する理由はないが、売却収入で他の事業に投資できるとしていた。
売却先のCroda International は英国の化学会社で、界面活性剤や脂肪酸エステル等を扱っている。
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ICI は1997年に、事業を化学品のなかでも、付加価値が高く、投下資本が少なく、景気変動の影響が少なく、研究開発により重点を置いた事業に急速に転換することを決め、英蘭系Unileverの特殊化学品4社を買収するとともに、既存事業のほとんどを売却した。
2006/3/7 「ICIの抜本的構造改革」 参照
Quest とUniqema は共にUniliverから買収した事業。なお、Uniliverから買収したCrosfield(シリカ事業)は2001年に Ineosに売却している。
「新生ICI」は塗料事業と、Unilever から買収したNational Starch、Quest、Uniqema の3事業の合計4事業から成っていたが、本年のQuest と Uniqema の売却により、塗料とNational Starch だけが残ることとなる。このほかにはRegional & Industrial Groupとして主にインド、パキスタン、アルゼンチンでの事業がある。
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