2012年9月アーカイブ

9月28日の上海外国為替市場の人民元相場は、対ドルで反発し、一時、1ドル=6.2835人民元を記録した。これは1994年に中国当局が国内の外国為替市場(中国外貨取引センター)を設立して以降の最高値となる。終値も6.2849元で、最高値となった。

米連邦準備理事会による量的緩和第3弾(QE3)に伴う、世界的なドル安圧力の高まりも背景にあるとされる。

終値は2010年6月18日(弾力化前)と比し、8.61%の上昇となる。

最近の動きは次の通りで、中国は本年4月16日から1日の変動幅を従来の0.5%から1.0%に変更したが、その後、5月頃から下降に転じた。
しかし、7月25日に6.3885元となった後、上昇に転じた。

9月28日の終値は基準値の0.88%高となった。

上海外為市場は国慶節休暇で 9月30日から10月7日まで休場する。

 

 




政府は9月19日の閣議で、2030年代に原発ゼロを目指すことなどを盛り込んだ「革新的エネルギー・環境戦略」自体の閣議決定を見送った。

2012/9/20 「革新的エネルギー・環境戦略」 迷走?

原発問題について、発言が相次いでいる。
各紙の報道から、まとめてみた。

野田首相

 再稼働可否判断

規制委が安全基準をしっかりまとめたうえで、それに基づいて判断する。これがルールになっている。
政治が介入して何かを言うと独立性を損なってしまう。

(規制委員長は「政府の問題」としており、この方がリーズナブル)

付記

規制委の田中俊一委員長は10月3日、再稼働について、「電力需給や経済的な観点を含めた稼働の判断、地元への説得や合意形成は事業者かエネルギー政策を担当する省庁があたるべきだ」とし、政府か電力会社に判断する責任があると主張した。4人の委員も同意し、規制委の正式な見解として公表した。
「政治からいろんな意見が出てくる可能性はあるが、けじめは付けた方がいい」と指摘、規制委は政治的な圧力を受けずに独立を保つ考えを示した。

藤村修官房長官は同日、「地元の理解を求めるのはまずは事業者」と指摘し、政府は再稼働の判断に直接関与しない考えを示した。

ーーー

藤村官房長官

 建設中の原発

大間原発と島根原発3号機について設置許可を取り消すということではない。
稼働させるかどうかは、原子力規制委員会が独立の立場から安全性を確認していく。

 40年運転制限

敦賀1号機、美浜1、2号機について原則に基づいてやる。廃炉にされます。

ーーー

枝野経産相

 核燃料サイクル

使用済み核燃料がすでに存在する事実は変えられない。
青森県六ケ所村など自治体との約束や、プルトニウムの管理など国際社会との関係もある。

矛盾を解決できるようにあらゆる政策努力を傾ける。

  再稼働 (9/28)

規制委員会が安全確認し、地元自治体の了解を得れば、重要電源として活用する。(政治判断入れず)
(政府の判断なしで、地元自治体が簡単に了解するだろうか?)

 建設中の原発

大間原発と島根原発3号機は建設継続を容認

東電東通1号は、東電が賠償や福島第一の廃炉に取り組んでいることから、議論できる段階にない。

 原発の新規着工

(9月19日)
 新たに建設を許可するのは新増設しない原則に反する。

(9月21日)
 原則を適用する基本線はぶれないが、地域ごとの要望や事情を丁寧に精査をしたうえで結論を申し上げるべきだ。 

 建設を認めない場合には、原発に代わる地域振興策を新たに講じる。
   政府の政策が変わったため、立地自治体が交付金をまったく受け取れなくなるのは適切ではない。

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原子力規制委員会 田中俊一委員長

 原発

原発は人類が生きる上で大事な技術。

原発のリスクはゼロではない。科学技術がリスクゼロ、という世界はどの社会にもない。 

 大飯原発3、4号機稼働の「暫定基準」

政治的な判断があったと思う。夏の電力需給を考えての判断だったと思う。
暫定基準は法律的に決められたプロセスではなく、政治的なものだから、それにとらわれることはない。
暫定基準が十分かどうかは今後検討したい。

 再稼働

ストレステストは審査しない。
地震と津波に限定した想定がこれでいいのかは議論がある。参考資料であって、こだわることはない。

ストレステスト2次評価は不要(内容は新基準に盛り込む)

来年7月中旬までに新たな安全基準を法制化し、それに基づいて再稼働の可否を判断

避難計画などの整備を重視 
  防災体制がきちんとしていないと、国民の納得はいただけない。
  防災対策ができていない状態での再稼働は、あり得ない。

安全性の評価手法については、国際標準の「確率論的安全評価(PSA)」を重視。
   「想定外」の過酷事態も起きうることを前提に、炉心損傷の確率を見積もる手法

           ↓

(9/26)
新しい安全基準の骨格を今年度末までにまとめる。その時点で基準を満たす原発の再稼働を考えたい。

原子炉を長く止めればトラブルが起きやすいのは承知している。
耐震性を高める補修工事などをすでに終えた原発については、早く安全性を判断できる。

電力需給まで判断すると、規制委が何をやっているか分からなくなる。安全性に特化して判断する。

再稼働を判断する前提条件
①原発事故が起きた際の対策指針

規制委は10月に今の指針を改定、住民の避難区域の拡大などを盛り込む。
原発周辺の自治体は規制委が出した指針をもとに、来年3月までに独自の地域防災計画を作る。

②暫定基準に代わる新しい安全基準

新しい安全基準の骨格を今年度末までにまとめる。

 

 再稼働可否判断

法的には、防災の責任は規制委ではなく県や国にある。

再稼働の科学技術的な判断は規制委がやるが、
原発運転の是非は社会的、政治的判断を伴う。規制委が再稼働を認めた原発を動かすかどうかは政府、政治の問題。

稼働した大飯原発の2基は、国が政治判断として福井県やおおい町と相談して決めたことなので、すぐに止めることはしない 。

 活断層

大飯原発は敷地内の断層が活断層である可能性が指摘されているが、規制委も今後調査し、地震学が専門の島崎邦彦委員を中心に評価する。
新たな調査で活断層の影響があると判断されれば、稼働を認めず、廃炉を求める。

 40年運転制限

40年たった原子炉を、最新の安全基準を満たすように改造するのは大変だ。40年を超えて運転するのは、非常に高いハードルだが、それを甘くしたら規制の根幹が揺らいでしまう 。

 原発の新規着工

新増設をどうするかは、規制委が判断することではない。新増設の申請があり、安全性の判断を求められれば審査をする。

 原発ゼロ

ゼロにするかなどの政策的な判断はしない。結果的に安全上問題があれば、40年を待たずにダメになるかもしれないし、40年を超えても、最新の知見を反映させるバックフィットを満たしていればOKを出す。
 

ーーー

Jパワー(電源開発)は9月28日、東日本大震災後に中断していた大間原発の建設工事を再開する方針を明らかにした。

完成した原発を稼働させるには原子力規制委員会の許認可が必要だが、工事再開には国の認可はいらない。

距離的に近い北海道や函館市などは強く反対。特に、津軽海峡を挟んで大間原発と向き合う函館市は、建設が再開されれば、法的措置で対抗する可能性を示唆している。

ーーー

日本の原子力発電所の状況は以下の通り。(2012/9 現在)

既稼働(「もんじゅ」除く) 54基-4基(福島第一の4基は廃止)、うち稼働中 2基
原発ゼロの会」の即時廃炉要求 50基中、24基
建設中 3基
計画中 9基

 
廃止
 
原発ゼロの会が即時廃炉要求
 
建設中、
 
計画中
発電所名
運転開始 型式 40年
まで
年数
能力
(万KW)
稼働中 原発ゼロの会
危険順
ポイントほど危険
備考
順位 point 理由
北海道電力
 泊
① 1989/6/22   PWR   57.9   17 5.55   耐震性再調査
② 1991/4/12   PWR   57.9   19 5.20  
③ 2009/12/22  PWR   91.2   15 5.75  
Jパワー
 大間
    建設中 ABWR   138.3         建設継続へ
東北電力
 東通
① 2005/12/8  BWR
(Mark-I 改)
  110.0   廃24 5.75 被災  
②計画中 ABWR   138.5         地元同意はまだ
東京電力
東通
①建設中 ABWR   138.5         建設 pending
②計画中 ABWR   138.5          
東北電力
 浪江・小高
 計画中 BWR   82.5         町議会誘致撤回
東北電力
 女川
① 1984/6/1   BWR
(Mark
-I)
  52.4   廃11 7.65 被災  
② 1995/7/28 BWR
(Mark-I 改)
  82.5   廃17 7.00  
③ 2002/1/30 BWR
(Mark-I 改)
  82.5   廃23 5.95  
東京電力
 福島第一
① 1971/3/26  BWR
(Mark
-I)
0 46.0       廃止
12/4/19
 
② 1974/7/18  BWR
(Mark
-I)
2 78.4        
③ 1976/3/27  BWR
(Mark
-I)
4 78.4        
④ 1978/10/12 BWR
(Mark
-I)
6 78.4        
⑤ 1978/4/18 BWR
(Mark
-I)
6 78.4   廃14 7.50 被災  
⑥ 1979/10/24 BWR
(Mark-Ⅱ)
7 110.0   廃18 6.90  
東京電力
 福島第二
① 1982/4/20 BWR
(Mark-Ⅱ)
  110.0   廃19 6.45 被災  
② 1984/2/3 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0   廃20 6.05  
③ 1985/6/21 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0   廃21 6.05  
④ 1987/8/25 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0   廃22 6.05  
日本原子力
 東海
② 1978/11/28 BWR 6 110.0   廃10 8.00 被災 耐震性再調査
東京電力
 柏崎刈羽
① 1985/9/18 BWR
(Mark-Ⅱ)
  110.0   廃13 7.55 中越沖
地震
被災
耐震性再調査
② 1990/9/28 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0   廃7 8.45
③ 1993/8/11 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0   廃9 8.20
④ 1994/8/11 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0   廃6 8.80
⑤ 1990/4/10 BWR
(Mark-Ⅱ改)
  110.0   廃15 7.45
⑥ 1996/11/7 ABWR   135.6   廃12 7.60
⑦ 1997/7/2 ABWR   135.6   廃16 7.20
中部電力
 浜岡
③ 1987/8/28 BWR
(Mark-I 改)
  110.0   廃5 9.45 東海地震震源地  
④ 1993/9/3 BWR
(Mark-I 改)
  113.7   廃4 9.70  
⑤ 2005/1/18 ABWR   138.0   廃5 9.45  
⑥ 計画中 ABWR   138.0      

中電、運転開始時期記載を削除

北陸電力
 志賀
① 1993/7/30 BWR
(Mark-I改)
  54.0   9 6.70   耐震性再調査
② 2006/3/15 ABWR   135.8   12 5.85  
日本原子力
 敦賀
① 1970/3/14 BWR
(Mark
-I)
0 35.7   廃1 12.00

直下
活断層

40年 活断層
調査
② 1987/7/25  PWR   116.0   廃8 8.25  
③ 計画中 APWR   153.8        
④ 計画中 APWR   153.8        
関西電力
 美浜
① 1970/11/28 PWR 0 34.0   3     40年
耐震性再調査
② 1972/7/25 PWR 0 50.0   廃2 10.45

非常用
冷却装置
作動

③ 1976/3/15 PWR 4 82.6   4 9.45    
関西電力
 大飯
① 1979/3/27 PWR 7 117.5   1 10.75     活断層
調査
② 1979/12/5 PWR 7 117.5   1 10.75    
③ 1991/12/18 PWR   118.0 13 5.85   7/9フル
④ 1993/2/2 PWR   118.0 14 5.85   7/25フル
関西電力
 高浜
① 1974/11/14 PWR 2 82.6   6 9.05    
② 1975/11/14 PWR 3 82.6   8 8.55    
③ 1985/1/17 PWR   87.0   10 6.40    
④ 1985/6/5 PWR   87.0   11 6.40    
中国電力
 島根
① 1974/3/29 BWR
(Mark-I)
2 46.0   5 9.30  

耐震性再調査

② 1989/2/10 BWR
(Mark-I改)
  82.0   5 9.05  
③ 建設中 ABWR   137.3         建設継続へ
中国電力
 上関
① 計画中 ABWR   137.3        

妨害禁止命令
埋立免許失効

② 計画中 ABWR   137.3        
四国電力
 伊方
① 1977/9/30 PWR 5 56.6   16 5.60   耐震性再調査
② 1982/3/19 PWR   56.6        
③ 1994/12/15 PWR   89.0   20 4.20    
九州電力
 玄海
① 1975/10/15 PWR 3 55.9   18 5.25    
② 1981/3/30 PWR 9 55.9   24 3.45    
③ 1994/3/18 PWR   118.0   25 2.85    
④ 1997/7/25 PWR   118.0   26 2.75    
九州電力
 川内
① 1984/7/4 PWR   89.0   21 3.90    
② 1985/11/28 PWR   89.0   22 3.70    
③ 計画中 APWR   159.0          
 
高速増殖炉
 もんじゅ
停止中               耐震性再調査

PWR:加圧水型、APWR(Advanced PWR) :改良型加圧水型
BWR:
沸騰水型、
ABWR(Advanced BWR):改良型沸騰水型
 BWRのうち、格納容器がMark-1型は問題とされている。




豊田通商は9月26日、アルゼンチン・オラロス塩湖(Olaroz塩湖)のリチウム資源開発会社の株式25%を取得する旨決定したと発表した。


日本企業として初めてリチウム開発プロジェクトに出資した企業となる。


豊田通商は2010年1月19日、豪州 Orocobre Limited と、アルゼンチンのOlaroz塩湖でのリチウム資源開発のための事業化調査を約する覚書を締結した。
事業化調査の結果をもとに、共同出資会社を設立し2012年より生産を開始する予定で、2014年には、炭酸リチウム年間15,000トン、塩化カリウム年間36,000トンの生産を目指す。

2009/5/5 韓国鉱物資源公社、ボリビアでリチウム鉱開発へ の付記

今般、アルゼンチン・Jujuy州より開発許認可・採掘権取得を受け、資源開発会社を設立し、その株式25%を取得する。

豪州 Orocobreと豊田通商が持株会社を設立し、Project会社の91.5%を普通株で所有する。
(豊田通商はこれを通じ、Project会社の25%を所有することとなる。)

現地Jujuy州政府鉱業公社(JEMSE)が種類株8.5%を所有するが、経営への関与はしない。

2012年10月に、オラロス塩湖からかん水を汲み上げ精製する工場建設に着工し、2014年2月から生産を開始する予定で、炭酸リチウム年間17,500トンの生産を目指す。

 

総事業費用の69.8%をDebt, 30.2%をEquityで調達する予定。
当該プロジェクトの開発資金の一部(約192百万ドル)は、みずほコーポレート銀行より融資を受ける予定で、この借入の約82%(約158百万ドル)に対する債務については、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の債務保証の付与が決定されている。    

 

なお、豊田通商は当該プロジェクトの生産物である炭酸リチウムの100%販売代理権の取得も予定しており、将来に向けてリチウムの上流から下流までのサプライチェーン構築を目指す。

 

 

南米でのリチウム開発については 2009/5/5 韓国鉱物資源公社、ボリビアでリチウム鉱開発へ

 

最大のボリビアについては、韓国知識経済部が6月19日に、韓国の企業連合が、日本、フランス、中国を抜いて、リチウム関連事業権を獲得したことを明らかにしている。

2012/6/27  韓国がボリビアでのリチウム事業権獲得 

 

公取委は9月24日、EPSブロックの製造業者及び販売業者に対し、排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。

「EPSブロック」は、「EPS工法」で使用される発泡スチロールブロックをいう。
「EPS工法」とは、発泡スチロールブロックを、主として、軟弱地盤上の盛土、擁壁、橋台背面の裏込め材としての盛土、地すべり地の盛土、道路拡幅盛土としての盛土、両直型の盛土及び埋設構造物の埋め戻しの盛土として建設工事に使用する工法をいう。

例:ダウ化工 ホームページから

 

公取委によると、各社は官公庁等から発注されたEPSブロックについて、
建設コンサルタント業者に対し設計協力を行った者のうち、EPS工法採用工事に採用されたEPSブロックの使用に係る部分の図面を作成した者を受注予定者とする旨の合意をした。
他の業者は、営業活動を自粛したり、見積依頼があった場合は受注予定者よりも高い価格を提示するか、見積りを断ること等により、特定EPSブロックの取引分野における競争を実質的に制限していた。

EPSブロックは災害復旧に使われることから、公取委は2011年5月、東日本大震災の復旧工事が本格化する前に立ち入り検査に入った。
公取委は「談合を未然に防止する効果があった」としている。

対象事業者数と課徴金額は以下の通り。

  事業者名 排除措置
命令
課徴金
納付命令
課徴金額
 (千円)
1 積水化成品工業 76,180
2 ダウ化工 42,960
3 ジェイエスピー 27,400
4 カネカフォームプラスチックス - 25,240
5 太陽工業 10,980
6 アキレス 9,340
7 積水化成品北海道 6,490
8 カネカケンテック 3,490
9 北海道カネパール - -

  - 

  合 計 202,080
   
カネカフォームプラスチックス(旧称 カネパールサービス)は、2010年10月にカネカケンテックにEPSブロック事業を承継させた。
北海道カネパールは2007年5月にカネパールサービスにEPSブロック事業を承継させた。
  両社とも、以後、同事業を営んでいない。

このうち、積水化成品は7月31日に、公取委から課徴金納付命令書案を受領したとし、第1四半期決算で387百万円の特別損失計上を発表した。
しかし、最終的に同社の課徴金は子会社の積水化成品北海道の分を含め 82百万円となったため、特別損失を305百万円減額する。

積水化成品工業は最終的に製造業ではなく卸売業として認定されたため、課徴金の算定方法が変わり減額された模様。

課徴金額の計算

課徴金額=(カルテル実行期間中の対象商品の売上高)x(課徴金算定率)

課徴金算定率

  大企業 中小企業
製造業ほか 10% 4%
小売業 3% 1.2%
卸売業 2% 1%

それぞれ、早期解消割引、再度違反割り増し、主導的役割割り増し、(再度+主導)割り増しがある。

積水化成品は10%の380,900千円が2%の76,180千円となった。(-304,720千円)

 

 


公正取引委員会は9月21日、電力会社が一体運営している発電、送配電と小売りの3部門を、分社化などの形で切り離すよう求めた報告書 「電力市場における競争の在り方について」を発表した。
  http://www.jftc.go.jp/pressrelease/12.september/12092101.pdf

ーーー  

2012年4月3日の閣議で、「エネルギー分野における規制・制度改革に係る方針」が決められた。
 http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/publication/240403/item240403.pdf

これに基づき、各省庁は割り当てられた項目について検討を行うこととされた。

公取委関連は以下の通り。

エネルギー分野における規制・制度改革に係る方針
番号 事項名 規制・制度改革の内容 実施時期 所管省庁
73 電力市場における
競争活性化策の
検討
①(市場支配力)
①公正取引委員会においては、一般電気事業者の市場支配力及び新電力のシェアが伸びていない状況も踏まえて、経済産業省における検討の状況も勘案しつつ、電力市場における競争実態の把握・分析を行い、検討し、競争政策上の考え方について結論を得る。 ①平成24
年度検討・
結論
②平成23
年度検討
開始、結論
を得次第
措置
①公正取引
委員会
②経済産業省においては、電力市場における競争の活性化策について、電力システム改革全体の中で、予断なく総合的に検討を進める。 ②経済産業
74 電力市場における
競争活性化策の
検討
②(供給区域)
①公正取引委員会においては、一般電気事業者間の供給区域を越えた競争が起きていない状況や、需要家の全国レベルでの一括受電契約が進まない状況も踏まえて、経済産業省における検討の状況も勘案しつつ、電力市場における競争実態の把握・分析を行い、
検討し、競争政策上の考え方について結論を得る。
①平成24
年度検討・
結論
②平成23
年度検討
開始、結論
を得次第
措置
①公正取引
委員会
②経済産業省においては、電力市場における競争の活性化策について、電力システム改革全体の中で、予断なく総合的に検討を進める。 ②経済産業


ーーー

公取委は電力市場の現状について調査を行うとともに、競争政策の観点から検討を行い、考え方を整理した。
公取委によると、主な「現状と問題点」は以下の通り。

小売分野
新電力のシェアは約3.5%と小さい(自由化分野)。特に産業用におけるシェアが業務用に比して小さい。
新電力は、変動費用の高い電力を電源としており 、夜間の電力使用量が大きい需要家との関係等で有利な料金の設定や大量の電力の安定的な供給が困難
高圧の需要家は数が多く、また、小規模な需要家が多いことから、営業及び顧客の管理に費用が掛かる
一方、一般電気事業者(以下 電力会社)による供給区域外への供給事例は1件のみである。
自社の供給区域内の需要への対応に最適化しており、営業範囲を拡大するインセンティブがない
連系線及び周波数変換装置の容量の制約
   
発電・卸売分野
新電力は電力の大半を自家発業者等に依存している。また、新電力は変動費用の高い電源のウエイトが大きい。
新電力は、変動費用の低い発電所の新規建設が困難である。
発電設備の償却期間が長いこと等から、公営企業体を含む自家発業者等は、長期契約によって電力会社に電力を供給している。
電力会社は、新電力と競合していることから、新電力に電力を供給するインセンティブがない。
卸電力取引所は、流動性が小さいなど、新電力が電力調達先として依存することができない。
   
送配電分野
託送料金について、算定方法が規制され、電力会社において会計分離もなされているが、
外部からは、電力会社が過大な託送料金を設定することにより新電力を不利に扱うインセンティブがあるようにみえる。
電力会社は自己の小売部門に係る実際のインバランスを把握しておらず、一定量をインバランス相当量とみなして、託送収支を計上している。 (公平でない)
 

同時同量義務とインバランスに伴う負担:
新電力の発電した電力は、電力会社の送電網に「託送」し、契約したメーカーや自治体などの顧客に送られる。電力はためられないため、需要と供給を一致させる必要があり、電力会社は新電力に対して30分間の需給の総量がプラスマイナス3%以内の同時同量義務を課している。
不足した場合は地域の電力会社が不足分を補い、新電力が料金を支払う義務を負う。


競争政策上の考え方に基づく提言




(1) 電力会社の発電・卸売部門と小売部門の分離

新電力に対する電力供給者である発電・卸売部門
新電力と競争関係に立つ小売部門を分離して、別個の取引主体とすることが考えられる。

電力会社が新電力への電力供給を行うインセンティブを確保

分離された発電・卸売部門が、自社グループ内の小売部門の競争事業者に対して差別的な取扱いを行った場合には、独禁法に違反する可能性。

(2) 電力会社の送配電部門の分離

送配電網を発電・卸売部門及び小売部門から分離

電力会社の送配電網は、新電力を含め、電力供給に関わる事業者が共通して利用する設備であるから、利用者に対する開放性・中立性・ 無差別性を確保することが必要。

独占の弊害に対応するため、託送料金の水準については一定の規制が必要

同時同量義務とインバランスに伴う負担は、競争関係にある電力会社と新電力の間で公平でなければならない。
(電力会社も実際のインバランスの量に基づいたインバランス料金を負担する)

(3) インフラの整備

(1) 連系線・周波数変換装置の増強 
   行政機関等の中立的な立場からの一定の介入・規制も必要

(2) 卸電力取引所の活性化
   参加者にとって更に使い勝手の良い商品設計や取引ルールの見直し

(3) スマートメーターの仕様等
   小売事業者間の競争が阻害されることのないような制度設計

(4) 小売分野における交渉力格差の考慮

(1) 複数の小規模な需要家による電気事業者との一括交渉
   中小規模の事業者が構成する事業者団体による電力調達に係る一括交渉は独占禁止法上問題とならないと考える。

(2) デフォルト・サービス約款の策定・公表の義務付け等
   最低限の取引条件を定めた約款(デフォルト・サービス約款)の策定と公表を義務付けし、
   それよりも需要家にとって不利な条件での契約を禁止することが考えられる。
 



2012年の Ig Nobel 賞の授賞式が9月20日、米マサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード大で行われた。

迷惑を顧みず話し続ける人の話を妨害する装置「スピーチジャマー(SpeechJammer)」を開発した、産業技術総合研究所研究員の栗原一貴氏と科学技術振興機構研究員の塚田浩二氏の2人が「音響賞」を受賞した。

スピーチジャマーは、話し続ける人に対して、その人の音声をわずかな時間をおいて送り返す仕組み。そうすると、発話者はうまく話すことができなくなるという。

スピーチジャマー」は妨害を意味する英語のjam と日本語の「邪魔」を掛けた。

話している人の声をマイクで拾い、約0.2秒後に指向性スピーカーで声を本人に送り返す仕組み。
普段、声は出すのと同時に自分にも聞こえるが、少し遅れて聞こえるようにすると、なぜかうまく話せなくなることが分かっており、この現象を応用した。
スピーカーからの声は最大で約30メートルまで届くという。

日本人はこれまで、2005年までに11件、2007-2011年に1件ずつ計5件、合計16件の研究でイグ・ノーベル賞を受賞している。

2006/10/13 ノーベル賞とイグ・ノーベル賞
2007/10/8  2007年イグ・ノーベル賞
2008/10/4  2008年イグ・ノーベル賞
2009/10/3 
2009年イグ・ノーベル賞
2010/10/7  2010年ノーベル化学賞とイグ・ノーベル賞
2011/10/1  2011年度イグノーベル賞 

日本人の受賞はこれで17件となる。

本年の各賞の受賞者とその内容は以下のとおり。

心理学賞 Anita Eerland and Rolf Zwaan (蘭)and Tulio Guadalupe (ペルー、露、蘭)
体を左に傾けるとエッフェル塔がより小さく見える。「姿勢評価調査」("Posture-Modulated Estimation.")
論文:http://pss.sagepub.com/content/early/2011/11/23/0956797611420731.abstract 
平和賞 The SKN Company(露)
古い弾薬を人造ダイヤモンドに転換する技術
ホームページでの説明:http://www.skn-nd.ru/history_en.html
音響学賞
 
栗原一貴、塚田浩二
SpeechJammerの開発
論文:http://arxiv.org/abs/1202.6106

日本語論文:http://www.wiss.org/WISS2010Proceedings/PDF/P14.pdf
神経科学 Craig Bennett, Abigail Baird, Michael Miller, and George Wolford (米) 
脳科学者は複雑な器具と簡単な統計を使って、どこででも脳の活動を理解できることを実証
(死んだ鮭にMRIスキャナーを当て、テスト)
論文:http://prefrontal.org/files/posters/Bennett-Salmon-2009.pdf
化学賞 Johan Pettersson(スウェーデン)
スウェーデンのAnderslövという町のいくつかの家で、髪の毛が緑色になる理由を解明
論文:http://www.thelocal.se/37994/20111217/
文学賞 US Government General Accountability Office,
報告書:"Actions Needed to Evaluate the Impact of Efforts to Estimate Costs of Reports and Studies"
物理学賞 Joseph Keller (米), and Raymond Goldstein (米、英), Patrick Warren, and Robin Ball (英)
女性の髪形のポニーテールの動きとバランスを計算した研究
論文:http://epubs.siam.org/doi/abs/10.1137/090760477
流体力学賞 Rouslan Krechetnikov (米、露、加)and Hans Mayer (米)
「コーヒーを飲みながら歩くと、何故こぼれるのか?」 液体スロッシング現象の力学の研究
スロッシング現象は揺れの周期によって波が大きくなる現象)
論文:http://pre.aps.org/abstract/PRE/v85/i4/e046117
生体構造賞 Frans de Waal (蘭、米)and Jennifer Pokorny (米)
チンパンジーは自分達の後頭部の写真から、他のチンパンジーを個別に見分けることが出来ることの発見
論文:http://www.emory.edu/LIVING_LINKS/pdf_attachments/FacesBehinds2008.pdf
医学賞 Emmanuel Ben-Soussan and Michel Antonietti (仏)
大腸内視鏡検査で患者を怒らせない方法
論文:http://www.wjgnet.com/1007-9327/13/5295.pdf




京都大学iPS細胞研究所は9月18日、iPS細胞基本技術に関する特許が、日本で1件、米国で3件、新たに成立したと発表した。
この4件のうち、米国特許2件はすでに特許登録されており、残りの2件も、数ヶ月以内に特許登録される予定。

これらの特許4件が成立したことにより、日米両国において、iPS細胞研究や薬剤候補物質のスクリーニングなどの応用研究に、多くの企業が安心して取り組むことができる環境の構築に貢献できると考えているとしている。

ーーー

日本で成立した特許1件は、iPS細胞研究所(CiRA)の研究グループが世界で初めて樹立した人工多能性幹細胞(iPS細胞)の基本技術に関するもの。
今回の特許は、4件目の日本特許となる。

特許請求の範囲:

(A) 特定のOctファミリー遺伝子、Klfファミリー遺伝子、Mycファミリー遺伝子およびSoxファミリー遺伝子を体細胞に導入する、iPS細胞の製造方法
(ただし、初期化される体細胞において、前記遺伝子のいずれかが発現している場合には、その遺伝子は導入する遺伝子から除いてもよい)
(B) 特定のOctファミリー遺伝子、Klfファミリー遺伝子およびSoxファミリー遺伝子が導入された体細胞を、増殖因子bFGFの存在下で培養する、iPS細胞の製造方法
(ただし、初期化される体細胞において、前記遺伝子のいずれかが発現している場合には、その遺伝子は導入する遺伝子から除いてもよい)
(C) 前記(A)または(B)に記載の製造方法によりiPS細胞を製造し、分化誘導する、分化細胞を製造する方法


過去に成立していた日本特許3件では、いずれも導入遺伝子がOct3/4, Sox2, Klf4またはOct3/4, Sox2, Klf4, c-Mycに限定されていた。
今回成立した特許では、導入遺伝子が特定のファミリー遺伝子まで広く認められた。

更に、その特定の初期化遺伝子が体細胞において発現している場合は、その遺伝子を除く初期化遺伝子を導入する方法も含めて成立した。

本特許は、上記で挙げたファミリー遺伝子を用いたiPS細胞の作製方法に加え、iPS細胞の作製および分化誘導の一連の工程により作製された分化細胞を用いた薬剤候補物質スクリーニング等まで、広範囲に権利が及ぶもので、日本国内でのiPS細胞技術を用いた医療応用の研究開発に拍車がかかることが期待できるとしている。


ーーー

米国で成立した特許3件のうち1件は、山中教授のグループが開発した技術に関する特許で、残りの2件は、2011年1月27日付けで、米国のバイオベンチャー企業iPierian社から京都大学に譲渡された特許。

今回の No.4 とiPierian社のNo.5 は、いずれもiPS細胞作製基本技術に関する特許で、作製方法が類似していたため、米国でインターフェアランス( 先発明主義による発明日の争い)に入る可能性があった特許出願で、iPierian社が保有していた米国特許が、京都大学に譲渡されたため、係争が回避された。

No.5は、No.4 のiPS細胞作製方法に、さらに特定の低分子化合物(特定の酵素の阻害剤)を加えた「選択発明」として成立した。

No.6は、Oct3/4, Klf4,Sox2の3遺伝子を含有するiPS細胞から分化させた細胞を、薬剤候補物質等のスクリーニングに使用できるという特許。

2011/2/3  京都大学、米社からiPS細胞関連特許を譲り受け

米国では、これまでに3件のiPS細胞に関する基本技術特許を成立させており、新たに成立した特許を加えると、合計6件の米国特許を取得したことになる。

京大は2011年8月11日、山中伸弥教授らが開発した新型万能細胞(iPS細胞)の作製技術に関する特許(特許番号8,048,999)が米国で成立したと発表した。

2011/8/15  京大のiPS細胞特許、米で成立

京大は2011年11月24日、iPS細胞に関する特許について、4つの遺伝子を用いてiPS細胞を作製する方法に関する米国特許(特許番号8,058,065)が11月15日に成立したと発表した。

京都大学iPS細胞研究所は2012年5月14日、山中伸弥教授らのグループによるiPS細胞の製造方法と分化誘導方法に関する特許(8,129,187)が、3月6日に米国で成立したと発表した。これは京都大学が米国で保有する3件目のiPS細胞関連特許となる。

2012/5/22 米国で3件目のiPS特許成立、iPS研究の現状

 

ビールの原料、ホップに含まれる成分に筋肉の萎縮や老化を抑える効果があることを、徳島大大学院の寺尾純二教授(食品機能学)らの研究チームが発見し、米科学誌PLOS ONE電子版で発表した。
     http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0045048

ホップの効能は昔から知られており、鎮静作用や食欲増進作用を持つ複数の機能性物質があるとされる。
今回調べた成分もその一つで、ビールの製造過程や腸に吸収されるときに増加する。

座骨神経を切除して筋肉が減っていく状態にしたマウスを使った実験で、ホップに含まれるフラボノイド化合物が入った餌を与えたところ、筋肉量の低下が抑制された。
プレニル化されたフラボノイドの方が、そうでないフラボノイドよりも、まひした脚の細胞に約10倍多く蓄積し、効果を示しやすいことも確かめた。

このフラボノイド化合物プレニル化フラボノイド の 8-Prenylnaringenin (8-PN)で、ビールの製造過程やビールを飲んだ人間の腸内で生成される。

ホップ特有のフラボノイドのキサントフモール(Xanthohumol)は、抗菌活性をはじめ数多くの生理活性をもっていることが報告されてい る。

キサントフモールは、ビールの製造過程で大部分がイソキサントフモールに変化する。
これが、脱メチル反応や、体内での微生物の代謝作用で8-PNとなる。

8-Prenylnaringeninはナリンゲニン(Naringenin)をプレニル化したものだが、プレニル化が何故 効果を生むのかは不明という。

 

実験でマウスが1日に摂取した量は、体重50キロの人間で換算すると、ホップの乾燥粉末では毎日1キログラム、この成分を1リットル中最大 0.2mg 含む海外産ビールで 83リットル~2万リットルに相当する。

寺尾教授は「実験では約20日間、大量に与えたが、人間の場合、過剰摂取は必要ない。長期にわたる習慣的なビール摂取でも、筋肉の老化防止効果が期待できる」とし、プレニル化フラボノイドを豊富に含む健康飲料や薬の開発が期待できると話している。




三星グループは、創業以来最大規模となる「飲酒文化改善キャンペーン」を実施、グループ内の全ての組織と連携し、不適切な飲酒を人事に反映していく。韓国各紙が報じた。

「酒を飲めなければ成功はない」、「酒席を避けるのはひきょうだ」、「酒は組織生活に必須だ」という誤った飲酒文化のままでは超一流企業として残れないと判断し、厳しい節酒キャンペーンを行うことにした。

飲酒の悪習を確実に変え、これからは「サムスンで酒が飲めなければ出世できない」などと言われないようにする、今後は会社の飲み会で飲酒による事件や事故が発生した場合、当事者だけでなく飲み会を開いた部署長の責任も問うつもりだと説明している。

また来年1月からは、全系列会社での新入・中途社員教育と役員養成教育で、節酒に関する講義を必須科目に指定するという。
キャンペーンの効果をさらに上げるため、年末までに全社員に「節酒誓約書」を書かせるほか、社内にアルコール相談センターも設ける。

WHOが定めた暴飲基準(一度の飲み会で男性は焼酎7杯、女性は5杯以上)を内部で適用する方針で、次の3つを飲酒の三大悪習と規定し、関連企業全体にタブー事項として周知した。

「罰酒」:飲み会に遅れた社員に罰として酒を飲ませる
「サバル酒」:サバルと呼ばれる大きな器にお酒を注ぎ、チームワークのためとして、数人が飲み合う行為
「一気飲み」:
お酒を一気に飲み干す

ーーー

2004年、サムスンの李健熙会長は内部会議で、「世界の一流企業の中で、朝から酒のにおいをぷんぷんさせながら出勤する社員がこれほど多い企業はない」と話し、「爆弾酒をやめるように」と指示した。

原爆酒:ジョッキに注いだビールの中に、ウイスキーを入れたショットグラスを入れる。
水爆酒:ジョッキに注いだウイスキーの中に、ビール入れたショットグラスを入れる。

李会長のこの発言の直後、サムスンでは大々的な暴飲・爆弾酒禁止キャンペーンが展開されたが、節酒運動は長続きしなかった。
飲酒も業務能力の一部と見なす社会的ムードに押され、うやむやになった。

今回は、「以前のような勧告にとどまらず、人事制度にまで絡め、飲み過ぎの習慣を正さなければ、出世も危うくなるという認識を植え付けたい」としている。

ーーー

専門家は「サラリーマンの飲酒文化が変わらなければ、韓国の飲酒文化そのものを変えることはできない」と指摘する。

企業の多くが志望者に対し、履歴書に飲酒が可能かどうか、あるいは酒量について記載するよう求めている。
採用時の面接が酒の席で行われる。
社員に禁煙を強制する企業は徐々に増加しているが、酒の節制を勧める企業はない。



武田薬品は9月12日、ロシアのヤロスラブリ(Yaroslavl)に建設していた医薬品の生産工場が完成し たと発表した。
本格稼動は2014年を予定している。

ロシアの医薬品市場は2011年には147億ドルとなり、世界で11番目の市場規模にまで成長した。
2016年には 250億ドルになると見込まれている(2012年から2016年までの年平均成長率が約11%)

武田薬品では同期間に市場を上回る約15%の売上高の年平均成長率を見込んでいる。

Yaroslavl はモスクワの北東 280kmにある。

総工費は約7,500万ユーロで、生産品目はロシアでのニーズが高い主力製品 Actovegin(脳・末梢循環障害改善剤)、Cardiomagnyl(心血管疾患予防剤)、Calcium tablets(骨粗鬆症治療剤) で、 生産能力は年間 アンプル製剤9,000万本、固形製剤20億錠以上となっている。

2009年のロシアでの死因の57%が心血管疾患(脳血管障害、高血圧など)で、癌は15%。

同社のロシアの拠点は以下の通り。

ーーー

武田薬品は2011年9月30日にスイスのNycomed A/Sを96億ユーロ(株式価値+純負債ベース)で買収し、同日付で100%子会社とした。

2005-10年の世界の医薬品市場成長の約半分は新興国の成長によるが、Nycomedは新興国(ロシア、中国、ブラジル、トルコ、メキシコ、他)で前年比約30%の成長を実現している。

Nycomed 地域別売上高

武田薬品は買収のメリットの一つに、
「医薬品市場の成長を牽引する新興国における事業拡大」を挙げている。

2010年ベース新興国向け売上高は武田が 178億円だが、Nycomed は1,248億円で、合計は一挙に 1,426億円になる。  

2011/5/23 武田薬品、Nycomed社を買収


買収時のNycomedの製造拠点は以下の通りで、今回のロシアのYaroslavl 工場は同社が2009年9月に建設を決め、2010年に建設を開始したもの。

Contract
 Manufacturing sites
Production
sites
Site
under construction
Joint
Ventures
Austria / Linz
Belgium / Brussels
Brazil / Jaguariúna
Germany / Oranienburg
Germany / Singen
Norway / Elverum
Mexico / Naucalpan
Poland / Łyskowice
Norway / Asker
Denmark / Roskilde
Denmark / Hobro
Estonia / Põlva
Argentina / B.A.
Russia / Yaroslavl India / Mumbai-Vashi
(
Zydus NYCOMED Healthcare)
 ZydusのJV相手の
 ALTANA Pharma を買収

China / Guangdon
( Techpool Bio-Pharma )
 2010年 51.34%を買収


ーーー

武田薬品は8月28日に「新興国事業ミーティング」を開催した。

プレゼンテーション資料:
    ナイコメッド社買収をふまえたグローバルでの事業機会の活用
         - 新興国市場におけるタケダの戦略
         http://www.takeda.co.jp/pdf/usr/default/EMG_Full_J_120829HP_52766_2.pdf




政府は9月19日の閣議で、2030年代に原発ゼロを目指すことなどを盛り込んだ「革新的エネルギー・環境戦略」自体の閣議決定を見送った。

2012/9/17 「革新的エネルギー・環境戦略」 

閣議決定した文章は次の通りで、新戦略自体は参考文書というあいまいな扱いにした。

今後のエネルギー・環境政策については『革新的エネルギー・環境戦略』を踏まえて、関係自治体や国際社会等と責任ある議論を行い、国民の理解を得つつ柔軟性を持って不断の検証と見直しを行いながら遂行する。

閣議決定の文章そのものには、2030年代にゼロにするという表現は入っていない。

古川元久国家戦略担当相は閣議後の会見で、これについて、「実際の政策決定プロセスを見据えたもので、内容を変えたわけではない」と強調。そのうえで「確かな方向性に向けて足元から一つ一つ具体的な政策を詰めていくことが極めて重要で、それが最終的に2030年代に原発ゼロが可能になる状況を作っていくものになる」との認識を示した。

脱原発を打ち出した戦略に反発を強める経団連などの経済界や原発関連施設立地の自治体、米国などに配慮し、政策の調整の余地を残すためとみられる。

閣議決定の効力は、原則としてその後の内閣にも及ぶというのが従来からの取扱いとなっている。
(新たな閣議決定により前の閣議決定に必要な変更等を行うことは可能)

閣議決定見送りにより、次の内閣への拘束力はなくなった。

ーーー

具体的な案件についての閣僚の発言は以下の通りで、矛盾もみられる。

1)40年運転制限制の厳格適用

藤村官房長官は9月18日の記者会見で、40年以上経過している日本原子力発電敦賀原発1号機と関西電力美浜原発1、2号機を廃炉にする方針を示した。

敦賀1号機、美浜1、2号機について「原則に基づいてやる。廃炉にされます」と語った。
実際に廃炉にするかどうかの判断は、9月19日に発足する原子力規制委員会に委ねられる。

このほか、東京電力福島第一1号機が40年以上経過しているが、1~4号機は既に4月19日付で「廃止」されている。
数年以内に40年に達する原発は下表を参照。

原子力規制委員会が9月19日に発足した。
田中委員長は運転開始から40年を超える原発の稼働延長について「相当困難と思っている」と述べた。

原発の再稼働について「ストレステストの評価の前に、防災の基準を作ることが前提となる。ストレステストは一つの政治的な方策で、とらわれることはない」と慎重な姿勢を示した。

2)建設中の原発の扱い

藤村修官房長官は18日午前の記者会見で、現在建設中のJパワーの大間原子力発電所と、中国電力の島根原発3号機について「設置許可を取り消すということではない」と明言した。
稼働させるかどうかは「原子力規制委員会が独立の立場から安全性を確認していく」と指摘した。

枝野経産相は9月15日、Jパワーの大間原発(進捗率38%)と中国電力の島根原発3号機(93.6%)の建設継続を容認する考えを表明した。
東電・東通原発1号機(進捗率9.7%)については、再開は認められないとの考えを示した。

「革新的エネルギー・環境戦略」では、以下の通りとしている。
   2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入
   ① 40年運転制限制を厳格に適用
   ② 原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ、再稼働
   ③ 原発の新設・増設は行わない。

このうち、既に建設を開始している2つについては、「原発の新設」に当たらないとしたもの。

しかし、仮に来年に運転を開始したとしても、(40年運転制限では)2050年代まで稼働できるため、新戦略の「30年代の原発ゼロ」目標と矛盾する。(遅くとも2039年にゼロにする場合、たった26年で停めることとなり、採算面からあり得ないこととなる。)

3)「もんじゅ」

日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」については、
  「もんじゅ」は廃棄物の減容、有害度の低減等を目指した研究を行う。
  年限を区切った研究計画を策定・実行し、成果確認の上、研究を終了。
となっている。

「もんじゅ」はMOX燃料(プルトニウム・ウラン混合酸化物)を使用し、消費した量以上の燃料を生み出すことのできる高速増殖炉の実用化のための原型炉。

1995年にナトリウム漏洩による火災事故を起こし、2010年5月に2年後の本格運転を目指して運転を再開したが、同年8月の炉内中継装置落下事故により停止中。

平野文部科学相は18日に福井県庁で西川一誠知事と会談し、「もんじゅ」の取り扱いについて、「従来の取り組みから変更しているつもりはない」との方針を説明した。「廃棄物の減量などは副次的な目的」と強調した。

一時は研究炉にし、高速増殖炉実用化をやめることも検討されたが、結局は元通りということになる。

ーーー

原発の状況は以下の通り。(2012/9 時点)

超党派の国会議員の「原発ゼロの会」は6月28日、全国の原発50基を経過年数や地盤の状況、周辺人口などで採点した「原発危険度ランキング」を発表した。
その危険度順位別に並べた。 (総合ポイントが高いほど危険)
  2012/6/29 原発危険度ランキング (2012/9)


 
は即時廃炉にすべき24基

原子炉 事業者 形式 能力
万kw
運転開始 40年
まで
年数

総合
ポイント

  備考
敦賀1号 原電 BWR
(Mark
-I)
35.7 1970/3/14 0 12.00 直下活断層の可能性大 40年運転制限
1 大飯1号 関電 PWR 117.5 1979/3/27   7 10.75    
大飯2号 関電 PWR 117.5 1979/12/5 7 10.75    
美浜2号 関電 PWR 50.0 1972/7/25  0 10.45 非常用炉心冷却装置作動実績
(1991)
40年運転制限
3 美浜1号 関電 PWR 34.0 1970/11/28   0 10.35   40年運転制限
浜岡4号 中部 BWR 113.7 1993/9/3   9.70 要請停止中(東海地震震源域)  
浜岡3号 中部 BWR 110.0 1987/8/28   9.45
浜岡5号 中部 ABWR 138.0 2005/1/28   9.45
4 美浜3号 関電 PWR 82.6 1976/3/15 4 9.45    
5 島根1号 中国 BWR
(Mark-I)
46.0 1974/3/29 2 9.30    
6 高浜1号 関電 PWR 82.6 1974/11/14   2 9.05    
島根2号 中国 BWR 82.0 1989/2/10   9.05    
柏崎
刈羽4号
東電 BWR 110.0 1994/8/11   8.80 被災(中越沖地震)  
8 高浜2号 関電 PWR 82.6 1975/11/14  3 8.55    
柏崎
刈羽2号
東電 BWR 110.0 1990/9/28   8.45 被災(中越沖地震)  
敦賀2号 原電 PWR 116.0 1987/7/25   8.25 直下活断層の可能性大  
柏崎
刈羽3号
東電 BWR 110.0 1993/8/11   8.20 被災(中越沖地震)  
東海2号 原電 BWR 110.0 1978/11/28 6 8.00 被災(東日本大地震)  
女川1号 東北 BWR
(Mark
-I)
52.4 1984/6/1     7.65 被災(東日本大地震)  
柏崎
刈羽6号
東電 ABWR 110.0 1996/11/7   7.60 被災(中越沖地震)  
柏崎
刈羽1号
東電 BWR 110.0 1985/9/18   7.55 被災(中越沖地震)  
福島Ⅰ
5号
東電 BWR
(Mark
-I)
78.4 1978/4/18 6 7.50 被災(東日本大地震)  
柏崎
刈羽5号
東電 BWR 110.0 1990/4 /10   7.45 被災(中越沖地震)  
柏崎
刈羽7号
東電 ABWR 135.6 1997/7/2   7.20 被災(中越沖地震)  
女川2号 東北 BWR 82.5 1995/7/28   7.00 被災(東日本大地震)  
福島Ⅰ
6号
東電 BWR 110.0 1979/10/24 7 6.90 被災(東日本大地震)  
9 志賀1号 北陸 BWR 54.0 1993/7/30   6.70    
福島Ⅱ
1号
東電 BWR 110.0 1982/4/20   6.45 被災(東日本大地震)  
10 高浜3号 関電 PWR 87.0 1985/1/17     6.40    
高浜4号 関電 PWR 87.0 1985/6/5     6.40    
福島Ⅱ
2号
東電 BWR 110.0 1984/2/3   6.05 被災(東日本大地震)  
福島Ⅱ
3号
東電 BWR 110.0 1985/6/21   6.05 被災(東日本大地震)  
福島Ⅱ
4号
東電 BWR 110.0 1987/8/25   6.05 被災(東日本大地震)  
女川3号 東北 BWR 82.5 2002/1/30   5.95 被災(東日本大地震)  
12 志賀2号 北陸 ABWR 135.8 2006/3/15   5.85    
大飯3号 関電 PWR 118.0 1991/12/18     5.85   再稼働    7/9フル
大飯4号 関電 PWR 118.0 1993/2/2   5.85   再稼働 7/25フル
東通1号 東北 BWR 110.0 2005/12/8   5.75 被災(東日本大地震)  
15 泊3号 北海 PWR 91.2 2009/12/22     5.75    
16 伊方1号 四国 PWR 56.6 1977/9/30   5 5.60    
17 泊1号 北海 PWR 57.9 1989/6/22      5.55    
18 玄海1号 九電 PWR 55.9 1975/10/15   3 5.25    
19 泊2号 北海 PWR 57.9 1991/4/12     5.20    
20 伊方3号 四国 PWR 89.0 1994/12/15     4.20    
21 川内1号 九電 PWR 89.0 1984/7/4   3.90    
22 川内2号 九電 PWR 89.0 1985/11/28     3.70    
23 伊方2号 四国 PWR 56.6 1982/3/19     3.45    
玄海2号 九電 PWR 55.9 1981/3/30   9 3.45    
25 玄海3号 九電 PWR 118.0 1994/3/18     2.85    
26 玄海4号 九電 PWR 118.0 1997/7/25     2.75    
福島Ⅰ
 1号
東電 BWR
(Mark
-I)
46.0 1971/3/26 0   2012年4月19日付で「廃止」
 2号 78.4 1974/7/18 2  
 3号 78.4 1976/3/27 4  
 4号 78.4 1978/10/12 6  

稼働・休止合計

        54基 - 4基 うち稼働中 2基
  高速増殖炉 
もんじゅ
            休止中 従来計画通り
  大間 Jパワー     ABWR     建設中 建設継続
  島根3号 中国      ABWR     建設中 建設継続
  東通1号 東 電     ABWR     建設中   ?

     PWR:加圧水型、BWR:沸騰水型、ABWR(Advanced BWR):改良型沸騰水型
     BWRのうち、格納容器がMark-1型は問題とされている。

         

コスモ石油は9月14日、 千葉製油所で6月28日に発生した屋外タンクからのアスファルト流出事故について「事故調査委員会」の報告を発表した。

6月28日午前7時18分頃、タンクが破裂してアスファルト 437キロリットル(15℃換算)が 漏洩し、一部が海上に流出した。

海上への流出量は約72キロリットル(15℃換算)、海上へ流出したアスファルトはオイルフェンス内に留まって回収したが、この内約2キロリットルがオイルフェンスの外に漏洩したと推定。

ーーー

千葉製油所は東日本大震災でLPGタンクの火災・爆発事故が起き、法令違反(緊急遮断弁3基をピンで「開」状態で固定していた)も発覚した。

2011/8/6 コスモ石油千葉製油所火災爆発事故の原因

2011/7/2 経産省、東日本大震災の火災事故でコスモ石油に行政処分 

今春に一時的に生産を再開したが、トラブルや今回の事故などで再び停止したままとなっている。記者会見した松村取締役は、「再開時期は見通せない」と述べた。
停止1カ月あたりで15億~30億円のコスト押し上げ要因になる。

同社は2013年7月の坂出製油所の閉鎖を決めたばかり。

2012/8/30  エネルギー供給構造高度化法、進展 

ーーー

アスファルトタンク (505番タンク、容量:1,000キロリットル)は1967年に製造・設置され、10年ごとに検査することになっていたが、2007年の調査を見送ったため、1996年を最後に検査されていない状態が続いていた。

しかし、2011年3月の東日本大震災で同製油所の石油タンクが爆発、炎上する事故があったため、同製油所はすべてのタンクの稼働を停止させ、安全検査を実施。今回のタンクは2011年10月に約15年ぶりに検査された。
屋根板に腐食開孔があり、開孔部については、応急処置した。

今回、同タンクの点検および腐食開孔部の補修を目的に、常温であったアスファルトを6月14日から加温し、他のアスファルトタンクに移送する準備をしていた。

事故発生の直前にアスファルトタンク上部の通気口から多量の水蒸気が目撃され、事故発生時には鈍い破裂音が確認されている。
 

「アスファルト漏洩事故調査委員会」によると、事故原因は以下の通り。

(1)本タンクの屋根板が外面腐食により相当期間開孔し、雨水が浸入する状態になっていたこと

検査計画の策定および確認の手順に不備があり、本タンク屋根板の検査が適切に実施されず、屋根板が腐食により開孔した。

(2)本タンク内部に水が浸入した状態で本アスファルトを常温から加温したこと

本タンク屋根板の腐食開孔部については、応急処置を行っていたため、「本タンク内に水が浸入していたとしても少量であり、加温中に蒸発する。」と判断した。

(推定)
外面腐食による開孔部から雨水がタンク内に混入したが、タンク内のアスファルトは製品アスファルト(1.02~1.04g/cm3) を生産する際のブレンド材として使用するもので、水よりも密度が小さい(0.97g/cm3)ため、水はアスファルト内に沈み込んだ。
タンクは通常170℃を保持しているが、精製装置の稼働停止に伴い1年以上常温期間があったため蒸発せず)

今回、加温によりその水が沸騰し、水蒸気によってアスファルトが上部へ押し上げられ、タンク上部が開口し、水蒸気とともにアスファルトが流出した。

(3)本アスファルトの海上流出を防ぐ体制が不十分であったこと

アスファルトタンクの敷地に囲いを設置していたほか、本アスファルトが漏洩してもアスファルトタンクの敷地内に留まる量の在庫運用を計画していた。

計画実行の前段階である移送作業の準備中に今回のアスファルト漏洩事故が発生し、本アスファルトの一部が囲いを越えて近くの排水溝に流入したため、海上へ流出した。

アスファルトタンクの敷地内にある油水分離槽の入口弁が開状態であったため、本アスファルトの一部が排水溝に流入し、海上に流出した。


再発防止策

(1)の再発防止策

アスファルトタンク屋根板の寿命予測を厳格に実施し、補修基準に達する前に検査を実施する計画を策定
検査履歴を整備し、保全計画が遺漏なく管理されるよう、より具体的な「手順・要領・役割分担」を策定

(2)の再発防止策

アスファルトタンク内に水がある状態で加温する危険性について、運転管理基準等に反映、周知・教育を徹底
今後常温まで冷却された本アスファルトを再加温する際には、水の沸点を超えない運用とし、他のタンクへ移送

(3)の再発防止策

油水分離槽等の設置目的および運用方法を周知徹底
万が一、本アスファルトが漏洩してもアスファルトタンクの敷地内に留まる容量で在庫運用を実施
アスファルトが海上に流出させないよう対策を実施

アスファルトタンクの敷地内に人がいた際に同様な事象が発生した場合でも、速やかに避難できるように歩廊を増設




 

ドイツ憲法裁判所は9月12日、一定条件の下で欧州安定メカニズム(ESM)と欧州財政協定の批准を認める判断を下した。

ーーー

2012年2月、ESM創設条約が署名された。当初の予定を1年繰り上げ、2012年7月発効を目指した。

当初の最大融資能力は、7,000億ユーロの応募資本(800億ユーロの資本金と6,200億ユーロの請求払資本)によって得られる5,000億ユーロ (払込資本金/融資額は15%以上とする)

EU27カ国は3月30日、コペンハーゲンでユーロ圏財務相会合を開き、債務危機に対応するための安全網全体の規模(2013年7月以降)を現在の案の5,000億ユーロから8,000億ユーロ(約88兆円)に拡大することで合意した。

但し、8,000億ユーロの内訳は本年7月に発足する(予定であった)欧州版IMFの欧州安定メカニズム(ESM)の5,000億ユーロに、既に実施済み又は実施予定のものを加えたもの。

2012/4/2 ユーロ圏、金融安全網 8,000億ユーロに拡大で合意 

ドイツ議会は6月29日、深夜近くまで及んだ審議でEU財政協定と欧州安定化メカニズム(ESM)を上下両院とも3分の2の賛成で承認した。

しかし、これに反対する学者や議員、一般国民など3万7千人が、国民の税金がESMを通じて南欧諸国に流れる とし、ESMや欧州財政協定は違憲だとして憲法裁判所に提訴した。
とりわけESMに関する訴えでは、主権がドイツからEUへ不法に移管されるとして批判した。

ガウク大統領は、憲法裁判所が承認するまで署名しない方針を示した。

このため、ESMの発足はドイツの憲法裁判所の承認待ちとなっていた。
ユーロ圏17カ国でドイツ以外は批准している。)

ーーー

今回、憲法裁は、「どの危機対策がドイツと欧州のために良いことか現時点では断言できない」と指摘し、「それを判断するのは有権者から選ばれた政治家だ」と述べた。さらに、「憲法裁は危機対策が有効か検証する機関ではない」とも説明した。

「訴えはおおむね正当な理由を欠く」として退け、憲法違反にならないとの判断を下したが、2つの条件を課した。

1)ESMに対するドイツの負担金の上限を1900億ユーロとし、将来的にこれを超える場合には、下院による事前承認が必要と指摘した。

応募資本合計 7000億ユーロx27.15%(ドイツ負担比率)

2)ESMに関する決定の機密保持を盛り込んだESM条約の条項について
  「上下両院への包括的な情報提供を妨げるものであってはならない」との判断を下した。

ショイブレ独財務相は、上記の2点について補足などの形でESM条約に盛り込み、数週間以内にもESMは稼動できるとの見方を示した。
ユーログループのユンケル議長は、10月8日にESMの初回理事会を開く方針を明らかにした。

ーーー

ESMの概要

安全網規模:8000億ユーロ(ESM 5000億ユーロ+実施済 約3000億ユーロ)

ESMは7,000億ユーロの応募資本(800億ユーロの資本金と6,200億ユーロの請求払資本)をテコにESM債の発行などで金融市場から調達する 。

払込資本金/融資額は15%以上とすると決められており、800億ユーロの資本金で、5,000億ユーロが最大融資能力となる 。
ユーロ圏17カ国は800億ユーロの資本金を分割払いにする。

現在の予定では以下の通り。

資本金払込 金額 累積融資能力 払込/融資
2012年下期  320億ユーロ  2100億ユーロ 15.2%
2013年7月 320億ユーロ 4200億ユーロ 15.2%
2014年上期 160億ユーロ 5000億ユーロ 16.0%
合計 800億ユーロ    

各国の出資比率は以下の通り。

Austria 2.78%
Belgium 3.48%
Cyprus 0.20%
Estonia 0.19%
Finland 1.80%
France 20.39%
Germany 27.15%
Greece 2.82%
Ireland 1.59%
Italy 17.91%
Luxembourg 0.25%
Malta 0.07%
Netherlands 5.72%
Portugal 2.51%
Slovakia 0.82%
Slovenia 0.43%
Spain 11.90%

ーーー

EUの欧州委員会は9月12日、ユーロ圏の銀行を一括して規制する銀行監督一元化案を正式に発表した。
欧州中央銀行(ECB)が2013年初めから、段階的に域内の銀行を監督対象にしていく。

2013年7月には大手銀行を、2014年1月からは域内の全銀行を対象とする計画。

現状では欧州安定メカニズム(ESM)は銀行に直接投資することは出来ず、各国に融資し、国が銀行に投資する。
このため、各国の債務が増えることとなる。

銀行監督一元化が出来れば、企業への直接投資に道を開くこととなる。




政府のエネルギー・環境会議は9月14日、「革新的エネルギー・環境戦略」を決定した。
https://selectra.jp/sites/selectra.jp/files/pdf/20120914_1.pdf

「震災前、エネルギー社会の在り方として「原子力」への依存度を高めることを柱として、安定供給の確保を目指し、地球温暖化問題の依存度を探索してきた。
今回の事故の深刻な現実を直視し、事故の教訓に深く学ぶことを通じて、政府は、これまで進めてきた国家のエネルギー戦略を、白紙から見直すべきであると確信するに至った。」

ーーー

政府は3つのシナリオを考えた。

当初は原発ゼロは考えていなかったが、原発反対の声に押され、民主党主導でゼロに転換した。

しかし、2030年ではなく、「2030年代にゼロ」と曖昧にした。

また、原発ゼロでは核燃料リサイクルは不要となり、再処理工場は未完成だが再処理を前提に使用済み核燃料を預かる青森県と六ケ所村がすぐにもその返還を求める動きを見せたことから、核燃料リサイクルは続けるという矛盾した計画となった。

そもそも、再処理工場が動いたとしても最大処理能力は年800トンに過ぎず、再処理工場内のプールは満杯のため、遅かれ早かれ、各原発での使用済み核燃料の保管が出来なくなり、地中に直接埋める「直接処分」をしなければ行き詰る。
「直接処分」には多くの問題があり、これから研究するという段階。

核燃料リサイクルを前提にした日米原子力協定の問題もある。

また、原発停止による電力料アップは必至であり、財界からは大きな反対が出ている。

ーーー

政府は目標達成に向け、再生可能エネルギー拡大の工程表や、新たな温暖化対策を年末までに決める。

なお、「グリーンエネルギー拡大の状況、国民生活・経済活動に与える影響、国際的なエネルギー環境情勢、原子力や原子力行政に対する国民の信頼の度合い、使用済み核燃料の処理に関する自治体の理解と協力の状況、国際社会との関係などの点について、検証を行い、不断に見直していく」として おり、将来の変更の余地を残した。

野田首相は、「見通せない将来について、あまりに確定的なことを決めてしまうのは、むしろ無責任だ」と説明した。

「革新的エネルギー・環境戦略」は、省エネルギー・再生可能エネルギーといったグリーンエネルギーを最大限に引き上げることを通じて、原発依存度を減らし、化石燃料依存度を抑制することを基本方針とし、次の三本柱を掲げる。

1.原発に依存しない社会の一日も早い実現
2.グリーンエネルギー革命の実現
3.エネルギーの安定供給

三本柱の実現のため、電力システム改革を断行
省エネルギー、再生可能エネルギーの拡大は、地球温暖化対策の着実な実施に直結
    

1.原発に依存しない社会の一日も早い実現

2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入
(その過程で安全性が確認された原発は、重要電源として活用)

① 40年運転制限制を厳格に適用
② 原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ、再稼働
③ 原発の新設・増設は行わない。

枝野経産相は9月15日、Jパワーの大間原発(進捗率38%)と中国電力の島根原発3号機(93.6%)の建設継続を容認する考えを表明した。〔「2030年代の原発ゼロ」目標と矛盾〕
東電・東通原発1号機(進捗率9.7%)については、再開は認められないとの考えを示した。

  5つの政策

1) 核燃料サイクル政策

国際的責務を果たしつつ、引き続き従来の方針に従い再処理事業に取り組みながら、政府として責任を持って議論

当面以下を先行
直接処分の研究に着手
・「もんじゅ」は廃棄物の減容、有害度の低減等を目指した研究を行う。
  年限を区切った研究計画を策定・実行し、成果確認の上、研究を終了
使用済み核燃料の処理技術、専焼炉等の研究開発を推進
・バックエンド(原子炉の廃炉費用や放射性廃棄物の処理、核燃料サイクルなど)に関する事業を国も責任を持つ
・国が関連自治体や電力消費地域と協議する場を設置

2) 人材や技術の維持・強化

3) 国際社会との連携

4) 立地地域対策の強化

5) 原子力事業対策と原子力損害賠償制度

2.グリーンエネルギー革命の実現

発表内容をまとめると、2030年では再生エネルギーは30%となる。(億kWh)

2010年 2015年 2020年 2030年 2030年代
 最終
発電量 11,000
節電

  ー

-250 -500 -1,100
ネット発電量 11,000 10,750 10,500 9,900 9,900
(成長ケース) (11,000) (11,100) (11,200) (10,000)
原子力 26% 2,860 9,350 8,700 70% 6,900 0% 0
化石燃料 63% 6,930 65% 6,435
再生可能エネルギー 10% 1,100 1,400 1,800 30% 3,000 35% 3,465
(うち水力) (8%) (850) (900) (1,000) (11%) (1,100)
( 水力以外) (2%) (250) (500) (800) (19%) (1,900)

   

1) 節電・省エネルギー


                                        * HEMS=Home Energy Management System

2) 再生可能エネルギー


3.エネルギーの安定供給

火力発電の高度利用
コジェネなど熱の高度利用
次世代寝ルギー関連技術 
メタンハイドレート、水素ネットワーク、CCS(二酸化炭素回収)など
安定的かつ安価な化石燃料等の確保及び供給

ーーー

読売新聞社説  エネルギー選択 「原発ゼロ」は戦略に値しない

産経新聞 「主張」 原発ゼロ政策 即時撤回して「25%超」に 世界で孤立し責任果たせぬ

ユーロ問題が複雑化するなか、これまで近い将来のユーロ圏加盟を目指してきた各国が方針を変更しつつある。

ブルガリアはこのたび、ユーロの導入計画を無期限に凍結した。

ボリソフ首相とジャンコフ財務相は9月3日、Wall Street Journalとのインタビューで、歴代政権の長期的な戦略的目標だったユーロ導入計画の棚上げを決定したことを明らかにし、経済情勢の悪化とEUの見通しの不透明さの高まり、それに緊縮政策3年目に入ったブルガリアの世論の決定的な変化に対応したものだ、と指摘した。

「今ではユーロ導入の利益は何もなく、あるのは費用だけだと見ている」、「ブルガリアにとってリスクは大きすぎ、ルールが何であり、それが1年あるいは2年後にどうなってしまうのか、はっきりとしていない」と付け加えた。

現在、EU加盟国は27か国で、うち、17か国がユーロを採用している。

EC条約では、EU加盟国は、基本的に単一通貨ユーロを導入することが想定されている。
但し、適用除外規定Opt out clauseがあり、英国とデンマークは適用除外が認められている。

スウェーデンは適用除外は受けていないが、国民投票で加盟が否決された。
再度、国民投票を行い、その賛成を得て、加盟するとしているが、国民投票時期は明確でない。

その他の7か国は、これまで一定の経済収斂基準を満たしていないとして加盟が認められていなかった。

ブルガリアは賃金と年金の削減によって、2011年の財政赤字の対GDP比を2.1%にまで低下させることに成功し、基準を満たしたが、ブルガリア側からユーロの導入計画を無期限に凍結した。


各国の状況は以下の通り。

EU
加盟
             ユーロ圏
参加
(記載なしは 1999/1)
不参加
1952 フランス、ドイツ、
イタリア、オランダ、
ベルギー、
ルクセンブルグ
   
1973 アイルランド 英国  
デンマーク 2000年9月の国民投票でユーロ参加否決
自国通貨の対ユーロ変動幅を中心交換レートから
上下2.25%内の変動に維持
国民投票の実施は、欧州経済危機もあり適切な時期ではないとし、
先送り。
1981 ギリシャ (2001/1)    
1986 スペイン、
ポルトガル
   
1995 オーストリア、
フィンランド
スウェーデン 2003年9月の国民投票で否決
2004-05 キプロス (2008/1)、
マルタ (2008/1)、
スロベニア (2007/1)、
スロバキア (2009/1)、
エストニア(2011/1)
 
ラトビア 2013年春にユーロ導入のタイムテーブルを決定
(これまでは2014年に導入するとしていた)
リトアニア 「欧州の準備が整った」時にのみ加盟する。
ポーランド 2015年導入説を否定
ユーロが2015年までに十分に安定した通貨になる可能性は
ほとんどない」
チェコ 早くても2017年以降になる」
ハンガリー 2012年1月1日施行の新憲法に、公式通貨を「フォリント」とする旨
明文化
ユーロ導入には憲法改正が必要
2007   ブルガリア 2012年9月、EUの将来をめぐる不透明性が高まっていることを理由に
無期限凍結
(2010年1月の時点では、2013年にユーロを導入する方針)
ルーマニア 2015年のユーロ導入を目標とするが、今後のEU経済及び12年秋の
選挙結果を見つつ、再検討。
合計 17か国 10か国




BPは9月10日、同社がメキシコ湾で生産、開発している油田のうち、非戦略資産を現金 55億5千万ドルで独立石油・ガス企業のPlains Exploration and Productionに売却すると発表した。

年末までに取引を完了する。

この非戦略資産の売却は、巨大油田や深海開発を含むBPの強みを生かすというグローバル戦略に沿ったもので、また、メキシコ湾では少数の大油田で収益を高めるという方針にも合ったもの。

売却するのは以下の油田。 
 Marlin、Dorado、King 油田 (BP 100%)
 Horn Mountain 油田 (BP 100%)
 Holstein 油田 (BP 50%)
 Ram Powell (BP 31%)
 Diana Hoover 油田(BP 33.33%)

BPは四大プラットホーム(Thunder Horse、Atlantis、Mad Dog、Na Kika )での生産を継続する。
また、開発段階の3油田、Mars、Ursa、Great Whiteの権益を保持する。

本年6月にはGalapagos計画をスタートさせた。

Isabela 油田(BP 67%)、Santiago 油田、Santa Cruz油田 (共にBP46.5%)で、BPがオペレーターとなり、それぞれがBPのNa Kita油田のプラットフォームにケーシングで接続している。

BPのCEOは、「メキシコ湾の石油はBPのグローバルの開発・生産ポートフォリオの重要な部分であり、今後の10年間、毎年少なくとも40億ドルを投資する」としている。



     

ーーー

BPは流出事故費用をまかなうため、また、BPの強みと成長機会を生かすため、2010年から2013年の間で380億ドルの資産売却を目標としている。(2010年7月には、2011年末までに300億ドル分の資産を売却するとしていた。)

今回の売却を含めると、累積額は320億ドルを超える。

同社は2010年11月末までに合計140億ドルの売却の契約を締結し た。そのうち、既報分は以下の通り。

2010/7/22  BP、北米とエジプトの石油資産をアパッチに売却 70億ドル
   
2010/8/5  BP、コロンビアの石油関連資産を売却 19億ドル
   
2010/9/2  BP、マレーシアのエチレン、ポリエチレンJV持分をペトロナスに売却 363百万ドル
   
2010/10/22  BP、ベネズエラとベトナムの川上事業を売却 18億ドル
 
2010/10/25  BP、メキシコ湾の4油田の権益を丸紅に売却 650百万ドル

2010年11月には、アルゼンチン最大の原油輸出企業のPan American Energyの持株(60%)を、残り40%を保有するBridas Corporationに70.6億ドルで売却する契約を締結したと発表したが、これは翌年取り消された。

2010/12/1  BP、アルゼンチンのPan American Energy の持株をBridas Corporationに売却 

2011/11/14    BP、Pan American Energy の持株のBridas Corporationへの売却を取り消し

その後の売却のうち、大口のものは以下の通り。

発表 売却資産 売却相手 売却金額
  百万ドル
2010/12 ほとんど全てのパキスタンの権益
 同国南部のSindh provinceの9つのブロック
 アラビア海の4つの海上ブロック
United Energy Group Limited (連合能源集団) 775
2011/3 U.S. Fuel Storage and Pipeline Assets Buckeye Partners L.P 225
2011/3 Wattenberg, Colorado natural gas processing plant Anadarko Petroleum 575.5
2011/4 ARCO Aluminum 住友軽金属等の日本企業連合 680
2011/5 北海油田 Wytch Farm Perenco UK 610
2011/9 Namibia, Botswana, Zambia, Malawi and Tanzania
の燃料販売事業
Puma Energy 296
2011/11 メキシコ湾 Pompano and Mica fields Stone Energy Offshore 204
2011/12 Canadian NGL Business Plains Midstream Canada 1,670
2012/2 Kansas ガス田、精製プラント  LINN Energy 1,200
2012/3 北海 Southern Gas Assets Perenco UK 400
2012/6 Jonah and Pinedale upstream operation(Wyoming)  LINN Energy 1,025
2012/6 北海 Alba and Britannia fields 三井物産 280
2012/8 Texas Midstream Gas Assets Eagle Rock Energy Partners 227.5
2012/8 Carson Refinery
ARCO Retail Network
Tesoro 2,500
今回 メキシコ湾油田 Plains Exploration and Production 5,550

 今回の売却を含めると、累積額は320億ドルを超える。


JX日鉱日石金属と三井金属鉱業は9月10日、両社のJV(JX 66%、三井金属 34%)の銅事業会社パンパシフィック・カッパーが石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)からチリとアルゼンチンにまたがるFrontera 地域における銅・金資源の探鉱権益を譲り受けたと発表した。

パンパシフィック・カッパーでは三井物産とのJVのSCM Minera Lumina Copper Chileで、これに隣接するチリのCaserones 銅・モリヴデン鉱床の開発を行っている。

1)Frontera 計画

JOGMECはカナダのNGEx Resourcesと共同でチリとアルゼンチンにまたがるFrontera 地域で銅と金の探鉱を行ってきた。
(JOGMEC 40%、NGEx Resources 60%)

NGEx Resourcesはカナダ・バンクーバーに本拠を置く非鉄金属探鉱会社 で、南米・カナダに探鉱鉱区を所有している。

Frontera 地域は、両国の国境付近の山岳地帯に位置し、アクセスが困難であることから十分な探鉱が行われてこなかった有望地域の一つ。

チリ共和国第及びアルゼンチン共和国San Juan 州北西部とLa Rioja州南西部にまたがるアンデス山岳地帯に位置する。総面積は約24,000ha、北側はCaserones 銅・モリヴデン鉱床と接している。

JOGMECは、2004年に初期探鉱段階にあった本事業に参画して以降、ボーリング調査等を実施し本地域内のLos Helados地区(チリ)に経済的に採掘可能な銅・金鉱床が賦存する可能性を把握した。現在、Los HeladosとFilo del Sol(アルゼンチン)の2地区において精力的に探鉱活動が行われている(このほかに、アルゼンチンのJosemaria地区でも探鉱を行っている。)

JOGMECではこの時点で、Frontera 地域に係る権益の譲渡に関する入札を実施し、落札者であるパンパシフィック・カッパーに譲渡した。

パンパシフィック・カッパーでは今後、探鉱を実施して埋蔵鉱量を確認のうえ、開発に向けた検討を進めていく。

2)Caserones計画

当時の 日鉱金属と三井金属鉱業の共同出資による銅事業会社パンパシフィック・カッパーは、2006年5月に権益を取得して、チリのCaserones 銅・モリヴデン鉱床開発プロジェクトの鉱量確認探鉱、選鉱試験等に基づく経済性評価を実施した。

その結果、このプロジェクトの開発は充分な経済性が見込まれるとの結論を得て、チリの第3州環境委員会による環境認可が採択されたため、開発への移行を決定 した。

このプロジェクトに三井物産が25%の出資比率で参加することを決め、両社はJVのSCM Minera Lumina Copper Chileを設立した。

当初の投資額は20億米ドルであったが、その後の銅価上昇に伴う対米ドルでのチリ・ペソ高、資機材・工事価格の上昇、詳細設計に基づく工事計画の一部変更等を勘案して投資額の見直しを行い、2011年11月に約30億米ドルに見直した。

概要は以下の通り。

 プロセス

  (銅精鉱・モリブデン精鉱の生産)
 破砕・磨鉱→浮遊選鉱・脱水→銅精鉱・モリブデン精鉱→出荷
採掘(露天掘り)  
 
(溶媒抽出電解採取法=SX-EW法による電気銅の生産)
 ダンプリーチング→SX-EW→電気銅→出荷

生産量(見込み)当初 10 年間平均

   銅: 銅精鉱(量)  約 15 万トン /年
         電気銅       約  3万トン /年
    計       約 18 万トン /年
 モリブデン      約  3千トン /年

 

 

 

 



中国国有大手のAluminum Corp. of China (Chalco) 中国アルミは9月3日、モンゴル石炭大手SouthGobi Resources の買収を断念すると発表した。

SouthGobi ResourcesはモンゴルのOvoot Tolgoi炭鉱を運営しており、そのSouthGobi Resources(カナダで上場)にはカナダのTurquoise Hill Resources が57.6%を出資している。

Turquoise Hill Resources は旧称 Ivanhoe Mines で、2012年8月2日付で改称した。

Rio Tintoが51%を出資する。

Rio Tinto は2009年106日、モンゴル政府との間でモンゴル南部のOyu Tolgoi 銅・金鉱山開発のための投資契約を締結した。

Rio2006年にIvanhoe9.9%を出資したが、モンゴル政府との投資契約締結後に19.7%とし、更に固定株価で43.1%まで、またその後は時価で最終46.65%まで増やす権利を持った。

その後、2012年1月に49%から51%に増やした。

なお、現地で開発を担当するIvanhoe Mines Mongoliaモンゴル政府が34%出資している。

2009/11/28 Rio Tinto、モンゴルの鉱山開発で中国アルミと提携か?

Chalco は本年4月、Ivanhoeに対しSouthGobi の60%を1株当たり C$8.48で買収する提案を行った。
Ivanhoeが持株全部を売れば、898百万米ドルとなる。

Chalco は主力のアルミ精錬が売価ダウンと燃料コストアップで赤字に転落したことから、多角化を図った。

しかし、モンゴル政府は本年5月、外国企業がモンゴルの主要戦略資産の49%以上を取得する場合、国会の承認を必要とするとの法律を通した。

この結果、近い将来に必要な認可を得られる可能性はなくなり、Chalcoは買収を諦めた。

モンゴルをはじめ世界各国では、中国が資源買い占めに走っていることへ警戒が高まっている。

日本経済新聞では、モンゴルは(中国・ロシアに次ぐ)「第三の隣国」と位置付ける日本や欧米との関係強化を進めると見るが、「日米欧企業の投資が増えないまま中国からの投資が減れば、モンゴルの経済成長に悪影響を及ぼす」との見方も紹介している。

ーーー

中国国有石炭大手の神華集団によるTavan Tolgoi 炭鉱の開発参画も、権益保有比率が当初素案の40%から低下する可能性がある。

モンゴル政府はタバントルゴイ石炭地を2ゾーンに分けた。
1ゾーンは国際会社が、2ゾーンはモンゴル国営エルデネスタバントルゴイ会社が掘削する。国営エルデネスタバントルゴイ会社の株式のうち50%を政府、残りの50%を投資家やモンゴル国民が保有する。

2011年7月、国際会社の入札結果として、
 中国神華エナジー(三井物産が加わるとの情報もあり)40%、
 米国のPeabody Energy24%、
 残りの36%は
国営ロシア鉄道韓国の国策資源開発のKorea Resources の連合
    (伊藤忠、住友商事、丸紅、双日の4商社が加わるとの情報もあり)

と発表された。

神華エナジーはモンゴル国境まで鉄道をつなぎ、Oyu Tolgoi と Tavan Tolgoi の石炭と銅を中国に運ぶ計画のコンソーシアムの中心となっている。

三井物産は2010年9月、神華集団と、世界の炭鉱開発や石炭貿易の拡大などで提携することで合意した。
提携の柱の一つが
Tavan Tolgoi 炭鉱への共同応札となる。

2010/9/15  三井物産、神華集団と包括的業務提携

しかし、直後にこれは仮であるとされた。

2012年5月には、外国企業がモンゴルの主要戦略資産の49%以上を取得する場合、国会の承認を必要とするとの法律を通した。

モンゴル工業相は、「2012年の末までに共同開発の新たな枠組みをまとめたい」としている。

ーーー

Turquoise Hill Resources (Ivanhoe Mines) はモンゴルのOyu Tolgoi 銅・金鉱山、Ovoot Tolgoi 炭鉱のほかに、豪州Queensland Cloncurry 酸化鉄・銅・金プロジェクト、カザフスタンのBakyrchik Gold Project などを手掛けている。

同社は2008年、中国のJinshan Gold Minesの権益(全体の42%)を中国黄金集団(CNGC)に譲渡した。
Jinshan Gold Minesは、内モンゴル自治区において2007年から金鉱山の操業を開始しており、現在120oz(3.7t)/年に向け増産体制を整えている。

中国黄金集団は1979年に設立された政府系企業で、Ivanhoe Minesは同社との間で長期的な戦略パートナーシップを目指している。今後、共同で中国での金、銅の探鉱、鉱山開発に集中していく。

Turquoise Hill Resources (Ivanhoe Mines) の活動地域は以下の通り。

 

 

 

 

 

4月22日午前2時15分ごろ、三井化学・岩国大竹工場のレゾルシンプラントで爆発事故が発生した。

2012/4/24 三井化学大竹工場で爆発事故

この事故で隣接するサイメン工場も延焼、損傷した。

事故発生で全工場が停止したが、安全を確認して順次稼働した。

現在の停止プラントは以下の通り。
  レゾルシン(損傷)
  サイメン (損傷)
  メタパラクレゾール (原料サイメンの損傷)
  ハイドロキノン

メタパラクレゾールとハイドロキノンは無傷だが、レゾルシノールの類似施設であるため、再開には地元自治体や消防の承認が必要。

付記

三井化学は9月28日、メタパラクレゾールプラントが稼働を再開したと発表した。(下記)

三井化学は12月25日、岩国大竹工場でのレゾルシン・プラントの再建を断念し、12月末で事業撤退することを決定したと発表した。

「ハイドロキノン」は、発災したレゾルシン・プラントと類似施設のため、事故調査委員会で承認されたレゾルシン・プラントへの再発防止策と同様の改善対策を実施し、当局に改善完了報告書を提出していたが、12月21日に承認を得た。
このため2012年1月をめどに稼働を再開する。

ーーー

1) 事故報告

三井化学では4月24日に事故調査委員会を設置し、原因調査と対策検討を行った。

これに基づき、同社は事故報告書を8月16日に山口県等に提出し、8月20日に受理された。

三井化学は8月29日に事故報告書を発表した。
  
http://jp.mitsuichem.com/release/2012/pdf/120829.pdf


事故の起こったレゾルシンの製造プロセスは以下の通りで、事故は酸化工程で起こった。

事故の原因は以下の通りと推定された。

工場内蒸気系トラブルでレゾルシンプラントを緊急停止した。
インターロック作動で空気の供給が停止され、窒素が投入された。

循環水への切り替えのため、インターロックを解除したが、その結果、攪拌用の窒素が停止し、
液相流動が低下、液相上部の温度が上昇、温度・圧力が急上昇し、爆発した。

これで見ると、これまででも、もしバッチ酸化反応中に緊急停止処置を取れば、同じ事故が発生していたこととなる。

ーーー

レゾルシンの世界のメーカーは以下の通り。
 

能力

 
住友化学  30,000トン 千葉2万トン、大分1万トン(2010/4 新設)
INDSPEC Chemical 20,000トン Occidental Petroleum子会社
Petrolia, Pennsylvaniaに工場
三井化学 7,600トン 岩国大竹
その他 約2千トン インド、中国など
(ロシアメーカーは操業中止)
合計 約6万トン  

住友化学と三井化学はプロピレン、ベンゼンを原料とし、m-DIPBから製造している。
これに対し、INDSPECは1,3-benzenedisulfonic acid から製造する。
 

付記

浙江鴻盛化工Zhejiang Hongsheng Chemical が2万トンの設備を完成させていることが分かった。既に稼働している模様。

同社は染料等のメーカーの浙江龙盛集团Zhejiang Longsheng Groupが75%、香港の万津集団が25%を出資する合弁会社で、浙江省上虞市Shangyu)に自社技術で建設した。

2012/11/30 中国企業がレゾルシン製造 

付記

三井化学は12月25日、岩国大竹工場でのレゾルシン・プラントの再建を断念し、12月末で事業撤退することを決定したと発表した。

ーーー

2) メタパラクレゾールの再開

メタパラクレゾールは、 半導体の製造工程に不可欠なレジスト材料の原料として用いられているほか、液晶パネルの製造工程向け、汎用向け(石けん、ビタミンE)と用途は幅広い。三井化学の半導体用途 の世界シェアは7~8割を占める。

これまで在庫の取り崩しで需要に対応してきたが、10月にも在庫払底の可能性があった。

今回の事故でメタパラクレゾールの生産設備そのものは火災の直接の影響がなく無傷であったが、レゾルシノールの類似施設であるため、再開には地元自治体や消防の承認が必要となる。

三井化学では8月20日にメタパラクレゾール施設の改善計画書を県などに提出、これに基づき8月22日に立ち入り検査が行われた。

これに基づき、三井化学では改善工事を実施し、実質的な再稼働の承認を得た。9月下旬に生産を再開する。
(同じく類似施設のハイドロキノンについても同様の手続きが取られる予定
で、現在、改善計画を策定中)

原料のサイメンについてはプラントが損壊しているため、市原工場でサイメンを生産し、岩国大竹工場に輸送する。

付記

三井化学は9月28日、メタパラクレゾールプラントが稼働を再開したと発表した。


メタパラクレゾールの生産プロセスは以下の通り。

プロピレン     トルエン     para-Cymen
(イソプロピルトルエン)
  メタパラクレゾール
(混合クレゾール)
  副産アセトン
C3H6  

→(酸化)→ 60%

 

40%

   
         

火災でプラント損壊
 千葉で代替生産し
 輸送

 

改善工事を実施 
実質的な再稼働の承認

















日本ではメタパラクレゾールを住化メリゾール(10,000トン)と三井化学(30,000トン)が同じ製法で生産している。
 (他の製法ではメタとパラの比率が異なる)


住化メリゾールは旧称が住化メリケムで、住友化学の大分工場のメタパラクレゾールプラントを住友化学と米国のクレゾールメーカーのMerichemとの50/50 JVとした。
その後、1997年にMerichem と南アのSasol がクレゾール部門を統合してMerisol を設立したため、住化メリケムも住化メリゾールに改称した。
製品は両社が別々に販売している。
(住友化学はメタクレゾールを原料に農薬のスミチオンを生産している。)

オルソクレゾールは旭化成と新日鉄化学のJVの日本クレノールが旭化成の川崎工場で、2,6キシレノールの併産で生産していた(12,000トン)が、旭化成のPPE事業のシンガポール 移転で、日本クレノールを解散した。
(日本クレノールは旭化成70%、新日鐵化学30%で、2,6キシレノールを旭化成が、オルソクレゾールを新日鐵化学が引き取っていた。)

シンガポール計画は以下の通り。

  
  新日鐵化学は旭化成にオルソクレゾール(12,000トン)の製造委託を行っている。

このほかに2社が、コールタール蒸留によりクレゾールを生産している。

シーケム:新日鐵化学とエア・ウォーターケミカル(旧称 住金エア・ウォーター)のタール事業を統合
JFEケミカル:川崎製鉄化学事業部とNKKの化学事業のアドケムコが合併


 



Lanxessは9月5日、江蘇省常州市のChangzhou Yangtze Riverside Industrial Parkに世界最大のEPDMプラントを建設すると発表した。
能力は年産16万トン、投資額は235百万ユーロで、2015年に生産開始の予定で、必要なすべての認可は取得済み。

この投資額は同社の中国への投資で最大のもの。

原料のエチレンとプロピレンは、同地に建設中のMTO(メタノールからのオレフィン製造)プラントから供給を受ける。

付記

MTO計画はDMTO触媒のメーカーの正大能源材料(大連)有限公司 China Tai Energy Materials (Dalian)が行うもので、能力は年産33万トン(メタノール投入量 年100万トン)

同社はこの工場で最新のKeltan ACE技術を使用する。

Lanxessは2011年に DSM から310百万ユーロでDSM Elastomers部門を買収した。

DSM ElastomersはNova ChemicalsのSingle Site触媒技術の独占使用権を取得し、これをベースに効率的にEPDMを製造する触媒技術を開発、これをKeltan ACE と名付けた。
触媒廃棄物がなく、省エネで、Green technologyであるとしている。
また、油展EPDMや特殊高分子量EPDMなど、新しいグレードの生産も可能である。

2010/12/20 Lanxess、DSM Elastomersを買収

Lanxessは中国をグローバルな成長戦略の基盤とみており、香港・台湾・マカオを含めたGreater Chinaで2012年の売上高目標を10億ユーロ以上としている。同社の13部門の全てが、Greater Chinaの10か所で事業を行っている。

常州市では皮革用化学品の工場(能力5万トン)を建設中で、2013年上半期に生産を開始する。

ーーー

LANXESS はEPDMをドイツのMarl(6万トン)、米国のOrange(6万トン)で生産していたが、DSMからのオランダのGeleen(16万トン)、ブラジルのTriunfo(4万トン)を加え、合計能力は年産32万トンとなっている。

DSM1989年に出光とのJVの出光DSMを設立し、千葉でEPDM 年産4万トンの生産をしていたが、20049月末に千葉での生産を停止し、JVを解散した。
DSM
はまた2004年に、老朽化した米国ルイジアナ州Addisの工場を停止している。

LANXESSはGeleen の能力の半分を2013年にKeltan ACEに転換する。

LANXESSは昨年末以来、ブラジルのTriunfoで世界初のバイオベースのEPDM(ブランド:Keltan Eco)を生産している。

Braskemが砂糖キビから製造するバイオベースのエチレンをパイプラインで既存のEPDM工場に運ぶ。

Bayerから分離独立したLanxessEPDMをBayerから引き継いだBuna EPブランドで販売していたが、Buna EPのブランドを廃止し、2013年1月からブランドをKeltanに統一する。

2011/10/5 LANXESS、EPDM事業を強化

ーーー

Lanxessはまた、合成ゴムでのアジア進出を進めている。

同社は2010年5月にシンガポールのジュロン島で年産10万トンのブチルゴム工場の着工式を行った。
2013年第1四半期のスタートを目指している。

Lanxess20082月、シンガポールに年産10万トンのブチルゴム生産拠点を新設すると発表した。

当初は
2010年稼動の予定であったが、需要の減少を受け、二度にわたり、延期し、この期間を利用し、製造技術の更なる改良を行った。
その後
20105月に前倒しでの再開を決定し、20105月に着工式を行った。

Shellは、Jurong島に隣接するブコム島にある同社のコンプレックスのブタジエン抽出設備から、ブタジエン抽出後のラフィネートをパイプラインを通してLanxessに供給する。

また、本年9月11日には、この隣接地で年産14万トンの新しいネオジウム触媒ポリプタジエンゴム (Nd-PBR)の鍬入れ式を行う。

2011/6/6 Lanxess、シンガポールでポリブタジエンゴムを生産


 



韓国知識経済部の趙石第2次官は8月29日に米ヒューストンの総領事館で開かれた記者会見で、北米で開発が進む新型天然ガス「シェールガス」について述べた。

 ・シェールガスの黄金時代が来るだろう。
 ・他国から多くのエネルギーを輸入する韓国にとって、シェールガス開発への参加はエネルギーの円滑な供給に向け非常に重要だ。

 ・全ての輸送費用を含めても従来のガスより30%安いと見込まれる。
 ・韓国ガス公社がこの水準の価格で2017年からガスを輸入する契約を結んだ。

韓国ガス公社は本年3月、ルイジアナ州のSabine Pass で天然ガスのLNG化設備を建設中のCheniereとの間で、2017年から20年間にわたってシェールガスを液化した液化天然ガスを年間350万トン輸入する契約を結んだ。
これは韓国の昨年の輸入量の10%以上に相当する。

FOB価格は、原料ガスコスト(Henry Hub 渡し市況 x 115%)+固定費(ガス化費用など)。

Cheniereは2010年9月に米国がFTAが発効している国に限定して輸出許可を受けたが、異議申し立てを行い、2011年5月に条件付きですべての貿易相手国への輸出が認められた。
この結果、当時はFTAが発効していなかった韓国の韓国ガス公社も認められた。

2012/2/24 米国からのLNG輸入問題 

韓国石油公社(KNOC) は2011 年3 月、独立系大手の石油・天然ガス会社Anadarko Petroleum とテキサス州の Eagle Ford Shale 鉱区の資本参加に15.5 億ドルで合意したと発表した。

KNOC はMaverick 盆地鉱区でのAnadarko の2011年の掘削費用100%とそれ以降2013年末までの90%(合計15.5億ドルまで)を支払い、その見返りに23.67%の権利を取得する。

同鉱区で生産可能なシェールガス量は1億5000万石油換算バレルに達すると見込まれる。

韓国政府は、韓国ガス公社などの公営企業と民間企業による共同体を作って、アメリカとカナダが進めるシェールガス田の開発に参入する方針を決めた。

大統領府青瓦台が7月20日に明らかにしたところによると、アメリカとカナダのシェールガス田の開発に、韓国も政府レベルで参入し、向こう数年間に数十兆ウォンを投じる。

まず、韓国ガス公社や韓国石油公社などの公企業及び民間企業によるコンソーシアムを組織し、米国とカナダのシェールガス田開発に参入するため、シェールガス鉱区買収の検討を進めており、近く具体化する。

韓国はエネルギーの海外依存度が97%に達し、原油やガスの海外鉱区開発・買収により確保した資源の比率を示す自主開発率は13.7%にすぎない。このため、エネルギーの安定的な確保は恒常的な課題になっている。

ーーー

米国はLNGを戦略物質とみなし、輸出を個別の許可制にしている。

唯一の例外は本土48州に輸送不可能だったアラスカのKenai LNGの輸出だった。

日本の各社が米国のシェールガス開発に相次いで参加しているが、日本への輸出には米国政府の個別承認が必要となる。

米国は輸出承認で米国とFTAを締結している国とそれ以外で差をつけており、FTAを結んでいない日本はガス輸入のハードルが高い。

中国との紛争を避けつつ、中国へのLNG輸出を避けるためには、FTA締結を条件にする案が出てくる。

野田首相は4月30日のオバマ米大統領との首脳会談で、LNGの対日輸出拡大などエネルギー面での協力を求めた。

オバマ大統領は首相の輸出要請に対し、「日本のエネルギー安全保障は米国にとっても重要」と理解を示す一方、「(対日輸出は)政策決定プロセスにある」として、明言は避けた。日本政府内には「少なくとも11月の大統領選までは、オバマ大統領が輸出認可に動く可能性は低い」との見方が強い。

これに対し、韓国の場合は米韓FTAが発効しているため、LNGの輸入許可の問題はない。

LNGの輸入問題で韓国に差を付けられる恐れがある。




三井化学は9月5日、国内勝ち残りへ向けて、千葉地区で更なる石化事業の構造改革を実施することを決定したと発表した。

出光興産と共に運営している千葉ケミカル製造有限責任事業組合(LLP)で、低稼働領域で高効率となる改造を行い、2013年8月から稼動する。
合わせてLLPの2基のエチレン製造装置をより柔軟に最適運営出来る対策を進めている。

ーーー

三井化学と出光興産は2010年4月に、「千葉地区における生産最適化」の第1ステップとして両社のエチレンの運営統合を発表した。

中東及び中国を中心とした大型石化設備の新増設、北米におけるシェールガスの台頭などにより、日本の石化事業は抜本的な国際競争力の強化が必須の状況にあるとし、統合により、日本トップレベルの競争力をもつエチレンセンターの構築を目指した。

2010年4月1日付けで両社折半出資で「千葉ケミカル製造有限責任事業組合」(LLP)を設立、同年10月1日に出光の37万トン、三井の55万トン、合計92万トンのエチレン装置を譲渡し、LLPの運営を開始した。

2010/4/3  出光興産と三井化学、千葉のエチレン統合

今般、エチレン装置について、今後の誘導品流入による内需の低下及び輸出市況の低迷による低稼働を見込み、需要動向に柔軟に対応するために改造を行う。

生産能力は変わらないが、稼働率を70%まで落としても高効率な安定運転を維持できるという。

ーーー

合わせて、両社のポリオレフィンJVのプライムポリマーの姉崎工場(旧 出光)の高密度ポリエチレン製造設備1系列(13万トン)を2013年3月に停止することを発表した。

プライムポリマーではポリオレフィン事業で以下のような徹底的な合理化と汎用分野から高付加価値分野へのシフトを進めている。

1)宇部ポリプロ 停止、精算(2010/4/5 発表)

宇部市三井化学西沖工場内 9万トン 2011/3 停止、2012/3 精算


2)ポリプロピレン製造設備 1系列 停止(2012/6/20 発表)

市原工場(旧 三井) 9万トン 2013/6停止


プライムポリマー PP能力 (トン)
    処理前 処理後

徳山ポリプロ

徳山

200,000

 200,000

宇部ポリプロ

宇部

90,000 0

プライムポリマー

出光 千葉

400,000

400,000

三井 千葉

223,000

133,000

三井 大阪

448,000

448,000

合計

(1,071,000)

(981,000)
総合計 1,361,000 1,181,000


3)メタロセン触媒系HAO-LLDPE 「エボリュー」の増強 (2010/2/24発表)

日本エボリュー(出資比率:プライムポリマー 75%、住友化学 25%の生産JV)

三井化学㈱市原工場内 2011/11完工

  当初
 200千トン
増強
 240千トン
増強
 300千トン
プライムポリマー  150  190  250
住友化学   50   50   50


4)高密度ポリエチレン製造設備1系列 停止 (今回発表)

姉崎工場(旧 出光) 13万トン 2013/3 停止

 

プライムポリマー PE能力 (トン)
会社名 工場 LDPE LLDPE LL/HD併産 HDPE 合計 処理後
LL HD

日本エボリュー

千葉

240,000

240,000

  300,000
三井化学 岩国・大竹

3,000

3,000

3,000

プライムポリマー

出光興産千葉

60,000

130,000

190,000

60,000

三井化学千葉

85,000

11,000

87,000

116,000

299,000

 

小計

(145,000)

(11,000)

(87,000)

(246,000)

(489,000)

(359,000)
三井・デュポン
ポリケミカル

千葉

110,000

110,000

 

岩国・大竹

60,000

60,000

 

小計

(170,000)

(170,000)

(170,000)
総合計 170,000 385,000 11,000 87,000 249,000 902,000 832,000
* 日本エボリュー能力には住友化学枠(50千トン)を含む。

 

なお、三菱化学も本年6月29日、日本ポリエチレンと日本ポリプロが川崎市千鳥地区のHDPE及びPP工場(旧 東燃化学)各1系列を2014年4月に停止すると発表している。

  日本ポリエチレン 日本ポリプロ
停止プラント HDPE 第二系列(スラリー法) PP 第3系列(バルクー気相法)
元の所有者 東燃化学(昭電より譲受) 東燃化学
能力 52,000トン/年 89,000トン/年

2012/7/9 三菱化学、旧東燃化学川崎のPEとPPを停止へ

ーーー

三井化学と出光興産は千葉地区のエチレンを統合して千葉ケミカル製造有限責任事業組合(LLP)を設立したが、三菱化学と旭化成も水島地区のエチレンを統合し、西日本エチレン有限責任事業組合を設立している。

定修スキップ年能力は、旭化成は504千トン、三菱化学は494千トン。

西日本エチレン有限責任事業組合の最適化計画は以下の通りで、エチレン需要3割減を前提とした減産体制を取り、更にエチレン需要が縮小すれば、その時点でエチレンを1基に集約するとしている。 

(1) 両社ともエチレンセンター生産設備のダウンサイジング
     エチレン需要3割減を前提とした設備対応(2012年までに実施)
(2) さらなるエチレン需要の縮小時にはエチレンセンターを1基に集約(需要動向にあわせて実施)

            以下略 

2011/3/1  三菱化学と旭化成、水島地区エチレンセンター統合のためのLLP設立 


東西のエチレン統合会社はいずれも、需要減に対応して統合しながら、工場を止めず、双方の工場の 70%操業を前提にした設備対応をとることになる。

最適合理化策は、どちらか1つのエチレンの停止であり、固定費削減により大きな効果が得られる。
仮にエチレンが若干不足すれば、他のエチレンセンターは減産しているため、どこからでも安く購入できる。

これが出来ないのは、雇用問題を中心とする日本の固有事情であるが、敢えてこれに踏み切らない限り、生き残りは難しい。



米電力大手Exelonは8月28日、テキサス州Victoria County Stationの原発申請を取り下げた。
同社は、シェールガスの増産で天然ガスが値下がりし、予想しうる将来にわたって競争力がなくなったと判断した。

同社はさきに、建設を長期間遅らせことを決め、一括許認可(COL)の申請を取り下げていたが、今回、早期立地許可(ESP) の申請取り下げをNuclear Regulatory Commissionに通知した。

米国では原発建設に2種類の認可がある。
早期立地許可(Early site permit for land:ESP)
  炉型を想定し、サイトの立地適性を審査し、立地のみ単独で認可する。

一括許認可(Combined construction and operating license:COL)
  サイト毎に建設許可と運転許可を一括して審査し、認可する。

同社は米国内で合計10カ所(17基)の原発を運営する。

同社はテキサス州南部のビクトリア市近郊に原発2基を新設する方向で検討し、2008年にCOLの申請を行った。
しかし新設決定に至らず、2010年にCOL申請を取り下げ、ESPの申請を行った。これにより、20年間建設決定を延ばすことができる。

今回のESP申請取下げでこの計画は完全取り止めとなる。原子炉のメーカーは決まっていなかった。

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Exelonは、シェールガスの増産で天然ガスの値下がりし、予想しうる将来にわたって競争力がなくなったと判断したと述べているが、ガス価格が約10年ぶりの水準に下落、今後も低位安定すると見られている。


  詳細は  2012/2/21  三菱商事がカナダのシェールガス開発に参加


7月30日付の英 Financial Times は、"Nuclear 'hard to justify', says GE chief" のタイトルでGeneral ElectricのCEOのJeff Immeltのインタビュー記事を掲載した。

シェールガス革命で天然ガスが豊富に供給され、再生可能エネルギーの選択肢も増えたことから、原子力発電を正当化することは難しくなったという。

2012/7/31 原子力発電の正当化困難にーGE会長 

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なお、NRG Energyも2011年4月、福島第1原発事故の影響で「規制動向など先行きが不透明になった」として、東芝との合弁会社でテキサス州で進めていた原発2基の新設計画への投資を打ち切った。同計画の認可申請は取り下げられていないが、事実上計画は宙に浮いている。

NRGは2008年にNuclear Innovation North America(NINA)を設立。同年に東芝が300百万米ドル(12%) 出資し、サウステキサスプロジェクト原子力発電所に改良型沸騰水型原子炉 (ABWR)2基(3号機、4号機)を増設する計画を進めていた。

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米原子力規制委員会は2012年8月7日、最近の連邦控訴裁判所の判決で提起された使用済み核燃料の保管に関する規則を見直すまで原子力発電所建設の認可手続きを停止すると発表した。

連邦高裁は2012年6月、運転をやめた原発の敷地内で60年間、使用済み燃料の保管が認められていることについて、NRCの安全性評価は不十分だとして再検討を命令。原発敷地内ではなく、最終処分場の候補地を検討するよう求めている。

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米国で計画中の原発は以下の通り。

NRCは本年2月9日、Southern Nuclear Operating Companyのジョージア州オーガスタの南東26マイルのVogtle power plantの2機の建設・運転一括許可を承認した。

東芝は3月31日、同社グループ会社のWestinghouseによる新型加圧水型原子炉「AP1000®」の建設運転一括許可(Combined License=COL)を米国原子力規制委員会(NRC) が承認したと発表した。

2012/4/4 米、2件目の原子力発電所新設を承認 

  申請 機種 立地 基数 既存
稼働
 状況
NRG Energy 2007/9/20 ABWR South Texas Project 2 TX 取り止め
NuStart Energy 2007/10/30 AP1000 Bellefonte 2 AL 保留
UNISTAR 2008/3/13 EPR Calvert Cliffs 1 MD 審査中
Dominion 2007/11/27 USAPWR North Anna 1 VA 審査中
Duke 2007/12/13 AP1000 William Lee
 Nuclear Station
2 SC 審査中
Progress Energy 2008/2/19 ESBWR Harris 2 NC 審査中
NuStart Energy 2008/2/27 ESBWR Grand Gulf 1 MS 保留
Southern Nuclear
Operating Co.
2008/3/31 AP1000 Vogtle 2 GA 2012/2 承認
South Carolina
Electric & Gas
2008/3/31 AP1000 Summer 2 SC 2012/3 承認
Progress Energy 2008/7/30 AP1000 Levy County 2 FL 審査中
Exelon Nuclear
Texas Holdings
2008/9/3 ESBWR Victoria County
 Station
2 TX 申請取下げ
Detroit Edison 2008/9/18 ESBWR Fermi 1 MI 審査中
Luminant Power 2008/9/19 USAPWR Comanche Peak 2 TX 審査中
Entergy 2008/9/25 ESBWR River Bend 1 LA 保留
AmerenUE 2008/7/24 EPR Callaway 1 MO 保留
UNISTAR 2008/9/29 EPR Nine Mile Point 1 NY 保留
PPL Generation 2008/10/10 EPR Bell Bend 1 PA 審査中
Florida Power
 & Light
2009/6/30 AP1000 Turkey Point 2 FL 審査中

 

AP1000  Westinghouse Electric(東芝)
EPR  Framatome (Areva), Electricité de France, Siemens
US-APWR  三菱重工業
ESBWR  General Electric   

ソース:http://pbadupws.nrc.gov/docs/ML1200/ML12004A009.pdf



DuPontは8月30日、Carlyle Group にPerformance Coatings事業を現金49億ドルで売却する契約を締結したと発表した。
Carlyleは、250百万ドルのDuPontの同部門の年金積立不足額も継承する。

Performance Coatingsは自動車用及び産業用塗料(液体塗料、粉末塗料)を扱い、2012年の売上高は40億ドル以上で、従業員は11千名を超える。

DuPont CEOのEllen Kullman女史は 「この取引は、デュポンのビジョンである"世界で最もダイナミックなサイエンスカンパニー"に沿っており、また、高い成長率と高収益の事業、すなわち農業・栄養健康・高機能素材・バイオテクノロジー事業に注力するというデュポンの長期戦略にも沿うもの」とし、 「DuPontの変身は続いている」と述べた。

DuPontの部門別実績は以下の通りで、Performance Coatings事業の利益率は6.3%で、Nutrition & Health を除き、 最低である。
同社では全社の長期的な利益率を12%としている。

DuPont200110月に医薬部門Bristol-Myers Squibb 78億ドルで却している。
但し、条件として、抗高血圧薬のCozaarとHyzaarCozaar チアジド系利尿剤 との合剤) の権利は DuPont 維持し、Merckにライセンスした。
現在の「医薬部門」の利益はこの特許料である。

Performance Coatings事業の採算は2010年に経営陣を入れ替え、かなり改善したが、「同事業の将来的な成長はDuPontの外部、すなわちCarlyleへの売却により達成されるとの結論に至った。」(Ellen Kullman)

本事業の売却は昨年秋から噂されていた。
DuPontが売却先探しにCredit Suisseを採用したとの報道も行われた。

本年1月にはオークションを開始した。
Carlyle のほかに、Apollo Global Management と KKR
/Onex Corp.連合が争っていた。

Kullman CEOは、この売却後もDuPontは自動車産業に一層注力することを強調した。
引き続き、自動車業界の需要家と協力し、自動車軽量化、環境負荷を低減する冷媒製品、バイオベースの内装シート表皮材、次世代バイオ燃料など、科学を基礎としたイノベーションを提供するとしている。




アルミニウム圧延品最大手の古河スカイと2位の住友軽金属工業は8月29日、2013年10月1日付で経営統合することで合意したと発表した。

合併比率は古河スカイ1に対し住軽金0.346で、古河スカイが存続会社になる。新会社の社名は未定。

アルミニウム圧延事業を取り巻く環境は急速に変化しており、厳しい状況にある。

国内アルミニウム圧延品需要の減少
  ・ 人口減少・高齢化等
  ・ 需要家の海外への製造拠点移転
東アジア地域における競争激化
  ・ 海外アルミニウム圧延メジャーの攻勢
  ・ 中国、韓国等東アジア地域における新興アルミニウム圧延メーカーの台頭

両社は経営統合により、相乗効果を追求し、アルミニウム圧延市場における競争力と企業体質の強化を図る。

統合の目標は以下の通り。

①新規成長分野・成長市場への積極的なグローバル展開
②企業価値の向上:研究開発・設備投資等への積極的投資、グローバルな供給体制の構築

③経営統合効果


ーーー

住友軽金属は1959年に、住友金属工業の伸銅、アルミ圧延部門が分離して設立された。

現在、住友金属工業が9.32%、住友商事が5.44% 出資している。
(住友金属工業は古河スカイに出資する新日本製鐵と10月1日に統合し、新日鉄住金となる。)

古河スカイは2003年10月1日に、スカイアルミニウムと古河電気工業の軽金属部門の事業統合で設立された。

スカイアルミニウムは1964年に、昭和電工(S)、カイザーアルミナム(K)、八幡製鐵(Y)の3社(SKYの社名の由来)により設立されたアルミニウム板圧延会社。

その後、1973年にカイザーが離脱した。

1998年に古河電工とスカイアルミニウムはアルミニウム事業についての業務提携を開始し、2000年4月にはユニファスアルミニウムを設立して販売部門を統合、全体の事業統合に向けて着実に進め、2003年10月に統合した。

スカイアルミニウム
昭和電工   37.25%
新日本製鐵   36.25%
丸紅   12.75%
三井物産   12.75%
富士銀行   1.00%
 

 

古河電気工業
軽金属部門

 

 

 

 

 

古河スカイ (合併時)
古河電気工業   70.0%
昭和電工   11.2%
新日本製鐵   10.9%
丸紅   3.8%
三井物産   3.8%
みずほコーポレート銀   0.3%
 
古河スカイ (現状)
古河電気工業   53.00%
昭和電工    ー
新日本製鐵   8.23%
丸紅   1.00%
三井物産   1.00%
みずほコーポレート銀     ー

なお、昭和電工は別に50.1%出資の昭和アルミニウムを持っていた。

ユニファスアルミニウム設立による販売部門の統合についての合併審査に当たり、公取委は押出類のシェアに関し、これを問題にした。平成11年度:事例7

古河電工は押出類を製造販売しているが、スカイアルミは製造販売していないことから、当事会社が設立する新会社についてみれば、シェアは増加しないものの、
昭和アルミニウムの販売分を加算した場合、
押出類中、棒における販売数量シェアは40%弱でその順位が第1位となり、上位3社での市場占拠率は80%強となること、
また、管についても合算シェアは30%強となり、その順位が第1位となることから、
新会社と昭和アルミとの間で協調的な関係が生じた場合、競争への影響が懸念される。

これに対し、「新会社と昭和アルミニウムとの間の販売活動の独自性を保持するための具体的措置を講じる」旨の申出があったこと等から、公取委は、押出類の販売分野において、競争を実質的に制限することとはならないと判断した。   

昭和電工は2001年7月1日に昭和アルミニウムを吸収合併し、古河スカイ設立時にはスカイアルミ株主として参加したが、その後、古河スカイ株を売却した。

なお、2009年1月に、「古河電気工業と昭和電工がアルミ事業統合で最終調整しており、同年夏にも両社のアルミ事業を古河スカイに集約する」と観測報道されたことがある。

ーーー

住友軽金属は2011年44日、古河スカイ、住友商事、伊藤忠商事、伊藤忠メタルズとともに、BPからアルミ板圧延品メーカーのARCO Aluminumの全株式を譲り受けることに合意したと発表した。
両社の合併で、新会社は共同持ち株会社の75%を占めることとなる。

2011/4/11 住友軽金属など、BPから米のアルミ板圧延メーカーの株式取得 

ーーー


統合により、新会社の能力は以下の通りとなる。

・古河スカイと住友軽金属の能力は単体ベース
・TAAは上記のARCO(現 Tri-Arrow Aluminum)
・タイ新工場は古河スカイが昨年発表した100%出資のアルミ板圧延工場(能力は1期及び2期分)
・乳源は中国の乳源東陽光精箔、BALは英国のBridgnorth Aluminum。いずれも古河スカイ持分法適用会社で
 能力は持分比率割合。


Novelis   2005年にAlcanからスピンオフ。上記Logan Millのパートナー。
Chinalco   Aluminum Corp. of China
Constellium   Parisに本社を置く大手アルミ圧延会社

 


バージニア州 Richmondの米連邦地裁は8月30日、韓国のKolon Industriesに対し、今後20年間、アラミド繊維を製造販売することを禁じる命令を出した。

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DuPontとKolonは長期間争っている。

DuPont2007年に、同社を2006年初めに退職し、その後Kolonのために Aramid Fiber Systems LLCを設立した技術者の行動に疑念を持ち、FBIと商務省に懸念を伝え、共同で調査を続けた。

問題の技術者は秘密情報を自宅のパソコンに入れており、これをKolonに渡したとされる。
技術者は
200912月に罪を認め、2010年3月に懲役18ヶ月の判決を受けた。

DuPont20092月にKolonを商業秘密盗用で訴えた。

これに対し、KolonDuPont技術の盗用を否定、自社技術で生産していると反論していた。

Kolon 2010年7月、DuPontが米国の需要家にKolonのアラミドを購入しないよう、圧力をかけているとして、連邦裁判所に訴えた。

2010/8/7 韓国Kolon、アラミドの独禁法問題でDuPontを訴え

バージニア州Richmondの連邦裁判所の陪審は2011年9月、Kolonに対し、DuPontのアラミド繊維(Kevlar)に関する商業秘密と秘密資料を盗んだとして、919.9百万ドルの損害額を認定した。
米地裁は11月22日、懲罰賠償として35万ドル、合計920.3百万ドルの支払いを命じた。

2011/9/21  DuPont、アラミド繊維の技術盗用裁判で韓国のKolonに勝訴 

ーーー

今回の判決で裁判官は、Kolonに対し、20年の間、世界中であらゆるパラアラミド製品の製造、使用、マーケティング、販売促進、販売、流通、販売提案、勧誘を禁じた。
同時にDuPontから盗んだ秘密情報の利用を永遠に禁止した。
また、10月1日までに秘密情報をDuPontに返還することを命じた。

裁判官は、Kolonの役員がKevlarの秘密情報を意図的かつ不当に利用し、違法行為を行ったと陪審員が結論付けたとし、盗んだDuPontの秘密情報はKolonのHeracronの製造に肝要で不可欠のものであるとみなした。

更に、Kolonが今後もDuPontの秘密情報を使い続け、DuPontが損害を受けるとすれば、さきの920百万ドルの損害賠償だけでは充分な解決にはならないと述べた。

Kolonは、「アラミド技術を開発するため、過去30年間注いできた努力を水の泡にする結果であり、わが社の従業員の働き場を奪う横暴な判決だ」と、遺憾の意を表明、直ちに控訴手続きに入るとし、その間、この命令を停止するよう求めた。

Kolonは自社のアラミド繊維Heracronは、DuPontのKevlarと製品特性は似ているが、生産工程などは完全に異なる製品だと主張している。

同社は1979年に韓国科学技術研究院の故・尹漢殖博士のアラミド繊維国産化研究を支援し、本事業に進出した。

「DuPontの元社員とコンサルティング契約を結んだのは事実だが、DuPontの営業秘密を侵害した事実は全くない」としている。

米裁判所は全世界での生産・販売を禁止するとの判決を下した。

各国が必ずしもそれに従わなければならないわけではないが、Kolonは控訴審での攻防を念頭に、亀尾工場(年産能力5,000トン)の操業中断に踏み切った。

Kolonの昨年の売上高は約2,810億円で、うちアラミド繊維の売上高は約620億円。
過去 5年間に米国で販売したアラミド繊維は約23億円とされる。

 

付記

米バージニア州の連邦地裁は9月4日、Kolonに対しDuPontの営業秘密に関する全ての書類を10月1日までにDuPontに渡すほか、コンピューターに関連ファイルが残っている場合は全て削除するよう命令した。

裁判所の許可を受けDuPontが雇用した専門家がKolonのコンピューターとコンピューターネットワークに接続し、営業秘密の関連資料が完全に削除されているか確認するよう指示した。

さらに、DuPontの営業秘密を知る社員や営業秘密が保管されている場所、営業秘密について言及した全ての事案を特定し、DuPontに知らせる義務も課した。

これに対し「企業のコンピューターへのアクセスを許可することは、もう一つの営業秘密の侵害ではないか」との批判が出ている。


ーーー

アラミド繊維については9月1日の記事参照。




帝人は8月28日、NASAの無人火星探査機 Curiosityと超音速パラシュートとをつなぐサスペンション・コード(吊り下げ用のコード)の素材として、帝人テクノプロダクツのパラ系アラミド繊維「テクノーラ」が採用されたと発表した。

宇宙船 Mars Science Laboratoryは8月5日、火星の大気圏に接近するにつれて火星の重力に引かれて加速、時速2万1240キロで大気圏に突入した後は、超音速パラシュートによって減速し、降下部分(Decent stage)がロケットエンジンを点火してさらに減速。上空約10mの地点で滞空し、クレーンを使って1トンのCuriosityを火星のGale Craterに吊り降ろした。

2012/8/6 火星探査車Curiosity、着陸に成功

この超音速パラシュートは、「テクノーラ」製のサスペンション・コードを80本装着しており、コードも含めると総重量約60kg、直径約15m、全長は16階建てのビルに匹敵し、これまでに製造されたパラシュートの中で最大のサイズ、最高の強度を誇る。

NASAの計算によると、火星着陸時にこのパラシュートが受けた重力は9Gで、これは80本の「テクノーラ」製サスペンション・コードが、27トンの重量に耐えたということになる。

同コードは、実際に72.5トンの重量に耐え得る強度を備えており、さらに寸法安定性、耐熱性などの「テクノーラ」の優れた特性がNASAに高く評価され、採用された。

ーーー

帝人は「テクノーラ」を独自に開発し、1987年に生産を開始した。

「高強力」、「耐疲労性」、「寸法安定性」、「耐熱性」、「耐薬品性」の特徴を有しており、産業用のロープやケーブル、光ファイバーケーブル、ゴムベルトやホース、コンクリートなど、幅広い製品の補強材として使用されている。

アラミド繊維はDuPont(日本では東レ・デュポン)と帝人が世界の市場を二分している。
(帝人とDuPontはアラミドペーパーで折半出資の合弁会社 デュポン帝人アドバンスドペーパーを設立している。)

韓国のKolonは1979年にアラミドの基礎研究を開始、1994年に完成させ、2005年末から商業生産を開始したが、DuPontに敗訴している。

   
2011/9/21 DuPont、アラミド繊維の技術盗用裁判で韓国のKolonに勝訴

3社の状況は以下の通り。

  パラ系アラミド メタ系アラミド 2009年生産量
(新聞情報)
poly-p-phenylene-
terephthalamide
左に
ジアミノフェニレン-
テラフタルアミドを共重合
poly-m-phenylene-
isophthalamide
DuPont Kevlar®   Nomex® 28,000 t 
帝人    Twaron®
(オランダで生産)
テクノーラ®
 
コーネックス®
 
25,000 t 
Kolon Heracron®     5,000 t  


Twaronについて:

Courtauldsの繊維部門Enkaが開発した。
DuPontとの特許紛争があったが、1988年に和解している。 

1998年にAkzoNobel がCourtauldsを買収、EnkaとCourtauldsの繊維、化学部門を統合して
Acordis設立した。

その後、1999年にCVC CapitalがAcordisを買収した。)

日本では1987年に住友化学とEnkaが日本アラミドを設立した。
2001年に帝人がAcordisのアラミド事業(日本アラミドも)を買収した。



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